(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】可撓性および形状適合性のロープ型スーパーキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/26 20130101AFI20221021BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/02 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20221021BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20221021BHJP
【FI】
H01G11/26
H01G11/36
H01G11/32
H01G11/86
H01G11/52
H01G11/02
H01G11/30
H01G11/46
H01G11/06
(21)【出願番号】P 2019536311
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 US2017067076
(87)【国際公開番号】W WO2018128788
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-30
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06785118(US,B1)
【文献】特開2016-033974(JP,A)
【文献】特開2016-066520(JP,A)
【文献】特表2015-518641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/26
H01G 11/36
H01G 11/32
H01G 11/86
H01G 11/52
H01G 11/02
H01G 11/30
H01G 11/46
H01G 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ型スーパーキャパシタにおいて:
(a)細孔を有する第1の電気伝導性多孔質ロッドと、第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物とを含む第1の電極において、前記第1の混合物が前記第1の電気伝導性多孔質ロッドの前記細孔中に存在する第1の電極と;
(b)セパレータで保護された第1の電極を形成するための、前記第1の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータと;
(c)細孔を有する第2の電気伝導性多孔質ロッドと、第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物とを含む第2の電極において、前記第2の混合物が前記第2の電気伝導性多孔質ロッドの前記細孔中に存在し;前記セパレータで保護された第1の電極と前記第2の電極とが、互いに組み合わされて、または織り合わされて、ひもまたは撚り糸が形成される、第2の電極と;
(d)前記ひもまたは糸を包み込むまたは覆う保護ケーシングまたはシースを含み;
前記第1および/または前記第2の電極活性材料が、炭素材料の複数の粒子および/または複数のグラフェンシートを含み、前記複数のグラフェンシートが、それぞれ1~10のグラフェン面を有する単層グラフェンまたは数層グラフェンを含み、前記炭素材料の複数の粒子またはグラフェンシートが、乾燥状態で測定した場合に、500m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、複数の前記第1の電極および/または複数の前記第2の電極を含み、前記電極の少なくとも1つがアノードであり、少なくとも1つがカソードであることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項3】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、セパレータで保護された第2の電極を形成するための、前記第2の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータをさらに含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項4】
請求項3に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記ひもまたは糸と前記保護ケーシングまたはシースとの間に配置された第3の電解質をさらに含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項5】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電極活性材料が、前記第1または第2の電極の前記細孔中に含浸させるために1μm未満の長さまたは幅を有する活性炭の粒子または単離グラフェンシートを含み、前記グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ素化グラフェン、窒素化されたまたは窒素ドープされたグラフェン、水素化されたまたは水素ドープされたグラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項6】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、第1または第2の電極が、前記第1または第2の電極中の唯一の電極活性材料として:(a)グラフェンシート単独;(b)多孔質炭素材料と混合されたグラフェンシート;(c)擬似容量を得るためにグラフェンシートとの酸化還元対を形成する相手材料と混合されたグラフェンシート;または(d)擬似容量を得るために前記グラフェンシートまたは前記多孔質炭素材料との酸化還元対を形成する相手材料と混合されたグラフェンシートおよび多孔質炭素材料の材料を含み、前記第1または第2の電極中に別の電極活性材料は存在しないことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項7】
長さ対直径または長さ対厚さのアスペクト比が10を超えるロープ型スーパーキャパシタにおいて;前記スーパーキャパシタが:
(a)第1の電気伝導性ロッドと、第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物とを含む第1の電極において、前記第1の混合物が前記第1の電気伝導性ロッドの上または中に堆積される第1の電極と;
(b)セパレータで保護された第1の電極を形成するための、前記第1の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータと;
(c)細孔を有する第2の電気伝導性多孔質ロッドと、第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物とを含む第2の電極において、前記第2の混合物が、前記第2の電気伝導性多孔質ロッドの前記細孔中に存在し;前記セパレータで保護された第1の電極と第2の電極とが、ねじれたまたはらせん状の方法で織り合わされ、または組み合わされて、ひもまたは糸が形成される、第2の電極と;
(d)前記糸またはひもを包み込むまたは覆う保護ケーシングまたはシースを含み、
前記第1の活性材料および/または前記第2の活性材料が、炭素材料の複数の粒子および/または複数のグラフェンシートを含み、前記複数のグラフェンシートが、それぞれ1~10のグラフェン面を有する単層グラフェンまたは数層グラフェンを含み、前記炭素材料の複数の粒子または前記グラフェンシートが、乾燥状態で測定した場合に、500m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項8】
請求項7に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、セパレータで保護された第2の電極を形成するための、前記第2の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータをさらに含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項9】
請求項8に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記ひもまたは糸と前記保護シースとの間に配置された第3の電解質をさらに含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項10】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記ロープ型
スーパーキャパシタが第1の末端および第2の末端を有し、前記第1の電極が、前記第1の電極中に埋め込まれる、前記第1の電極に接続される、または前記第1の電極と一体となる、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維を含む第1の端子コネクタを含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項11】
請求項10に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記少なくとも1つ金属ワイヤ、伝導性の炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維が、ほぼ前記第1の末端から前記第2の末端まで及ぶことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項12】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドが、金属発泡体、金属ウェブ、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、伝導性ポリマー繊維マット、伝導性ポリマー発泡体、伝導性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェンエアロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、およびそれらの組合せから選択される多孔質発泡体を含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項13】
請求項12に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記多孔質発泡体が、円形、楕円形、長方形、正方形、六角形、中空、または不規則な形状の断面を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項14】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記スーパーキャパシタが、10を超える長さ/厚さまたは長さ/直径のアスペクト比を有するロープ形状を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項15】
請求項5に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電極が、金属酸化物、伝導性ポリマー、有機材料、非グラフェン炭素材料、無機材料、またはそれらの組合せから選択される酸化還元対の相手材料をさらに含み、前記相手材料を、グラフェンまたは活性炭と組み合わせることで、擬似容量のための酸化還元対が形成されることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項16】
請求項15に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記金属酸化物が、RuO
2、IrO
2、NiO、MnO
2、VO
2、V
2O
5、V
3O
8、TiO
2、Cr
2O
3、Co
2O
3、Co
3O
4、PbO
2、Ag
2O、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項17】
請求項15に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記無機材料が、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項18】
請求項15に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記金属酸化物または無機材料が、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、またはナノプレートレットの形態の、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素の酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、またはテルル化物から選択されることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項19】
請求項15に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記無機材料が、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のセレン化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のテルル化物、窒化ホウ素、およびそれらの組合せを含む群から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートから選択され;前記ナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートが100nm未満の厚さを有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項20】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電極活性材料が、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のセレン化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のテルル化物、窒化ホウ素、およびそれらの組合せを含む群から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートを含み、前記ディスク、プレートレット、コーティング、またはシートが、乾燥状態で測定した場合に、100nm未満の厚さおよび200m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項21】
リチウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタである、請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電極活性材料が:
(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、および炭素のプレリチウム化およびプレナトリウム化された粒子;
(b)プレリチウム化およびプレナトリウム化されたケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、およびカドミウム(Cd);
(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、またはCdと別の元素とのプレリチウム化およびプレナトリウム化された合金または金属間化合物において、化学量論的または非化学量論的である合金または化合物;
(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、またはCd、ならびにそれらの混合物または複合材料のプレリチウム化およびプレナトリウム化された酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物;ならびに
(e)それらの組合せ
からなる群から選択されるアノードであることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項22】
リチウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタである、請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1の電極または第2の電極が、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的または化学的に活性化またはエッチングされたバージョン、およびそれらの組合せのプレリチウム化またはプレナトリウム化されたバージョンを含むアノードであることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項23】
ナトリウムイオンキャパシタである、請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電極が、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、またはチタン酸ナトリウム、NaTi
2(PO
4)
3、Na
2Ti
3O
7、Na
2C
8H
4O
4、Na
2TP、Na
xTiO
2(x=0.2~1.0)、Na
2C
8H
4O
4、カルボキシレート系材料、C
8H
4Na
2O
4、C
8H
6O
4、C
8H
5NaO
4、C
8Na
2F
4O
4、C
10H
2Na
4O
8、C
14H
4O
6、C
14H
4Na
4O
8、およびそれらの組合せのプレナトリウム化されたバージョンから選択されるアノード活性材料を含むアノードであることを特徴とするスーパーキャパシタ。
【請求項24】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドが70~99体積%の細孔を有することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項25】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記スーパーキャパシタの長さが1mを超えることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項26】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記スーパーキャパシタが10cmを超える曲率半径で曲げられることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項27】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記スーパーキャパシタが、乗り物内の間隙または内部区画の形状に実質的に適合するように曲げることができ、前記間隙または内部区画が、トランク、ドア、ハッチ、スペアタイヤ区画、シート下の領域、またはダッシュボード下の領域を含むことを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項28】
請求項27に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記スーパーキャパシタが、が、乗り物から取り外し可能であり、異なる間隙または内部区画の形状に適合させるために曲げることができることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項29】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記
ロープ型スーパーキャパシタの1つ以上のユニットが、衣類、ベルト、運搬用ストラップ、かばんのストラップ、兵器のストラップ、楽器のストラップ、ヘルメット、帽子、ブーツ、フットカバー、手袋、リストカバー、時計のバンド、宝石類、動物用カラー、または動物用ハーネスの中に組み込まれることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項30】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記
ロープ型スーパーキャパシタの1つ以上のユニットが、衣類、ベルト、運搬用ストラップ、かばんのストラップ、兵器のストラップ、楽器のストラップ、ヘルメット、帽子、ブーツ、フットカバー、手袋、リストカバー、時計のバンド、宝石類、動物用カラー、または動物用ハーネスに取り外し可能に組み込まれることを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。「0124」
【請求項31】
請求項1に記載のロープ型スーパーキャパシタにおいて、前記
ロープ型スーパーキャパシタが中空の自転車フレームの内径に適合することを特徴とするロープ型スーパーキャパシタ。
【請求項32】
ロープ型スーパーキャパシタの製造方法において:
(e)第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物を、第1の電気伝導性多孔質ロッドの細孔中に含浸させて、第1の電極を形成するステップと;
(f)前記第1の電極の周囲を多孔質セパレータで包むまたは覆うことで、セパレータで保護された第1の電極を形成するステップと;
(g)第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物を、第2の電気伝導性多孔質ロッドの細孔中に含浸させて、第2の電極を形成するステップと;
(h)前記セパレータで保護された第1の電極および前記第2の電極を互いに組み合わせて、または織り合わせて、ひもまたは撚り糸を形成するステップと;
(i)前記ひもまたは撚り糸の周囲を保護ケーシングまたはシースで包むまたは覆うことで、前記ロープ型スーパーキャパシタを形成するステップを含み;
前記第1および/または前記第2の電極活性材料が、炭素材料の複数の粒子および/または複数のグラフェンシートを含み、前記複数のグラフェンシートが、それぞれ1~10のグラフェン面を有する単層グラフェンまたは数層グラフェンを含み、前記炭素材料の複数の粒子またはグラフェンシートが、乾燥状態で測定した場合に、500m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、複数の前記第1の電極および/または複数の前記第2の電極を組み合わせて前記スーパーキャパシタを形成する手順を含み、前記電極の少なくとも1つがアノードであり、少なくとも1つがカソードであることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法において、前記第2の電極の周囲を多孔質セパレータで包むまたは覆うことで、セパレータで保護された第2の電極を形成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記ひもまたは糸と前記保護シースとの間に第3の電解質を配置するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法において、前記第1または第2の電極活性材料が、前記第1または第2の電極の前記細孔中に含浸させるために1μm未満の長さまたは幅を有する活性炭の粒子または単離グラフェンシートを含み、前記グラフェンシートが、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ素化グラフェン、窒素化されたまたは窒素ドープされたグラフェン、水素化されたまたは水素ドープされたグラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項37】
長さ対直径または長さ対厚さのアスペクト比が10を超えるロープ型スーパーキャパシタの製造方法であって:
(e)第1の電気伝導性ロッドと、第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物とを含む第1の電極を提供するステップにおいて、前記第1の混合物が前記第1のロッドの上または中に堆積されるステップと;
(f)前記第1の電極の周囲を多孔質セパレータで包むまたは覆うことで、セパレータで保護された第1の電極を形成するステップと;
(g)第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物を、第2の電気伝導性ロッドの細孔中に含浸させて、第2の電極を形成するステップと;
(h)前記セパレータで保護された第1の電極と第2の電極とを、ねじれたまたはらせん状の方法で織り合わせて、または組み合わせて、ひもまたは糸を形成するステップと;
(i)前記ひもまたは撚り糸の周囲を保護ケーシングまたはシースで包むまたは覆うことで、前記スーパーキャパシタを形成するステップを含み;
前記第1の活性材料および/または前記第2の活性材料が、炭素材料の複数の粒子および/または複数のグラフェンシートを含み、前記複数のグラフェンシートが、それぞれ1~10のグラフェン面を有する単層グラフェンまたは数層グラフェンを含み、前記炭素材料の複数の粒子またはグラフェンシートが、乾燥状態で測定した場合に、500m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記第2の電極の周囲を多孔質セパレータで包むまたは覆うことで、セパレータで保護された第2の電極を形成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項32に記載の方法において、前記ロープ型
スーパーキャパシタが第1の末端および第2の末端を有し、前記方法が、第1の端子コネクタを前記第1の電極に接続するステップをさらに含み、前記第1の端子コネクタが、前記第1の電極中に埋め込まれる、前記第1の電極に接続される、または前記第1の電極と一体となる、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維を含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記少なくとも1つ金属ワイヤ、伝導性の炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維が、ほぼ前記第1の末端から前記第2の末端まで及ぶことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項32に記載の方法において、前記第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドが、金属発泡体、金属ウェブ、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、伝導性ポリマー繊維マット、伝導性ポリマー発泡体、伝導性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェンエアロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体およびそれらの組合せから選択される多孔質発泡体を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項32に記載の方法において、前記スーパーキャパシタが、10を超える長さ/厚さまたは長さ/直径のアスペクト比を有するロープ形状を有することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項36に記載の方法において、前記第1または第2の電極が、金属酸化物、伝導性ポリマー、有機材料、非グラフェン炭素材料、無機材料、またはそれらの組合せから選択される酸化還元対の相手材料をさらに含み、前記相手材料を、グラフェンまたは活性炭と組み合わせることで、擬似容量のための酸化還元対が形成されることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、前記金属酸化物がRuO
2、IrO
2、NiO、MnO
2、VO
2、V
2O
5、V
3O
8、TiO
2、Cr
2O
3、Co
2O
3、Co
3O
4、PbO
2、Ag
2O、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法において、前記無機材料が、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項43に記載の方法において、前記金属酸化物または無機材料が、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、またはナノプレートレットの形態の、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、またはニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、またはテルル化物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項43に記載の方法において、前記無機材料が、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のセレン化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のテルル化物、窒化ホウ素、およびそれらの組合せを含む群から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートから選択され;前記ディスク、プレートレット、またはシートが100nm未満の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項32に記載の方法において、前記第1または第2の電極活性材料が、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のセレン化物、ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属のテルル化物、窒化ホウ素、およびそれらの組合せを含む群から選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートを含み、前記ディスク、プレートレット、コーティング、またはシートが、乾燥状態で測定した場合に、100nm未満の厚さおよび200m
2/g以上の比表面積を有することを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項32に記載の方法において、前記第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドが70~99体積%の細孔を有することを特徴とする方法。
【請求項50】
請求項32に記載の方法において、前記ステップ
(e)が、(i)前記電気伝導性多孔質ロッドを第1の電極活性材料含浸区域内に連続的に供給する作業において、前記電気伝導性多孔質ロッドが、相互接続された電子伝導経路を含み、少なくとも1つの多孔質表面を有する作業と;(ii)前記少なくとも1つの多孔質表面から前記電気伝導性多孔質ロッドの中に前記第1の混合物を含浸させて前記第1の電極を形成する作業とを含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法において、前記ステップ
(e)が、噴霧、印刷、コーティング、キャスティング、コンベヤフィルム送給、および/またはローラー表面送給によって、前記第1の混合物を前記少なくとも1つの多孔質表面に、要求に応じて連続的または断続的に送給するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項32に記載の方法において、前記ステップ
(g)が、(i)前記電気伝導性多孔質ロッドを前記第2の電極活性材料の含浸区域まで連続的に供給する作業において、前記電気伝導性多孔質ロッドが、相互接続された電子伝導経路を含み、少なくとも1つの多孔質表面を有する作業と;(ii)前記少なくとも1つの多孔質表面から前記電気伝導性多孔質ロッドの中に前記第2の混合物を含浸させて前記第2の電極を形成する作業とを含むことを特徴とする方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法において、前記ステップ
(g)が、噴霧、印刷、コーティング、キャスティング、コンベヤフィルム送給、および/またはローラー表面送給によって、前記第2の混合物を前記少なくとも1つの多孔質表面に、要求に応じて連続的または断続的に送給するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項32に記載の方法において、前記ステップ
(f)が、前記第1の電極を多孔質セパレータのバンドでコイル状またはらせん状に包み込んで、前記多孔質セパレータで保護された前記第1の電極を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項32に記載の方法において、前記ステップ
(f)が、電気絶縁性材料を噴霧して前記第1の電極を覆い、前記第1の電極を覆う多孔質シェル構造を形成して、前記多孔質セパレータで保護された構造を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2017年1月4日に出願された米国特許出願第15/398,416号明細書、および2017年1月4日に出願された米国特許出願第15/398,421号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタの分野に関し、特に、可撓性および形状適合性のロープ型スーパーキャパシタに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のスーパーキャパシタおよび電池(例えば18650型円筒形セル、長方形パウチセルおよび角形セル)は機械的に硬質であり、この非可撓性の特徴のために、限定された空間内での実装、またはウェアラブルデバイス中での使用の場合に、その適合性または実現可能性が大きく制約される。これらの設計上の制限を克服するために、可撓性および形状適合性の電源を使用することができる。この新しい電源によって、スマートモバイルガジェット、巻き取り式ディスプレイ、ウェアラブルデバイス、および生物医学センサーなどの次世代電子デバイスの開発が可能となる。可撓性で適合性の電源によって、電気自動車中の重量および空間も節約される。
【0004】
ウルトラキャパシタまたはスーパーキャパシタとしても知られている電気化学キャパシタ(EC)は、ハイブリッド車(EV)中での使用が考慮されており、それによって、急速な加速に必要な爆発的電力を提供するために電気自動車中に使用される電池を補うことが可能となるが、電池式自動車を商業的に実現可能にするための最大の技術的課題である。電池は低速の場合には依然として使用されるが、合流、追い越し、緊急操作、および登坂のために車の加速が必要な場合には常に、スーパーキャパシタ(電池よりもはるかに迅速にエネルギーを放出できる能力を有する)によって加速される。ECは、許容できる運転範囲を得るために十分なエネルギーを貯蔵することも必要となる。電池容量の追加と比較してコスト、体積、および重量の効率が高くなるために、これらは十分なエネルギー密度(体積および重量)および電力密度と長いサイクル寿命とを兼ね備える必要があり、さらにコスト目標に適合する必要がある。
【0005】
ECは、システム設計者がそれらの性質および利点に詳しくなるにつれて、エレクトロニクス産業においても受け入れられるようになっている。ECは、本来、軌道レーザーの大きな爆発的駆動エネルギーを得るために開発された。相補型金属酸化物半導体(CMOS)メモリバックアップ用途では、例えば、わずか1/2立方インチの体積を有する1ファラドのECは、ニッケルカドミウム電池またはリチウム電池の代わりに使用することができ、数か月間のバックアップ電源となることができる。特定の印加電圧の場合、特定の電荷と関連してEC中に貯蔵されるエネルギーは、同じ電荷を流す場合に対応する電池システム中に貯蔵可能なエネルギーの半分である。にもかかわらず、ECは非常に魅力的な電源である。電池と比較すると、これらはメンテナンスが不要であり、はるかに長いサイクル寿命が得られ、非常に単純な充電回路を必要とし、「メモリー効果」が生じず、一般にはるかに安全性が高い。化学的ではなく物理的にエネルギーを貯蔵することが、それらの安全な動作およびきわめて長いサイクル寿命の主要な理由である。おそらく最も重要なことには、キャパシタによって、電池よりも高い電力密度が得られる。
【0006】
従来のキャパシタよりも高いECの体積静電容量密度(従来のキャパシタの10~100倍)は、大きく有効な「板領域」を形成するための多孔質電極の使用と、拡散二重層中の貯蔵エネルギーとによって得られる。電圧が印加されるときに固体-電解質界面で自然に形成されるこの二重層の厚さはわずか約1nmであり、そのため非常に小さく有効な「板分離」が形成される。このようなスーパーキャパシタは一般に電気二重層キャパシタ(EDLC)と呼ばれる。二重層キャパシタは、液体電解質に浸漬した活性炭などの高表面積の電極材料に基づいている。電極-電解質界面において分極した二重層が形成されて、高い静電容量が得られる。これは、スーパーキャパシタの比静電容量が、電極材料の比表面積に正比例することを示している。この表面積は、電解質によって到達可能となる必要があり、結果として得られる界面領域は、いわゆる電気二重層電荷を収容するのに十分な大きさである必要がある。
【0007】
幾つかのECでは、貯蔵されるエネルギーは、酸化還元電荷移動などの電気化学的現象によってこれも固体-電解質界面において生じる擬似容量効果によってさらに増加する。
【0008】
しかし、現在の最先端のECまたはスーパーキャパシタに関連する幾つかの重大な技術的課題が存在する:
(1)活性炭電極に基づくECを用いた経験では、実験的に測定される静電容量は、常に、測定表面積および双極子層の幅から計算される幾何学的な静電容量よりもはるかに小さいことが示される。非常に高表面積の炭素の場合、典型的には「理論的」静電容量のわずか約10~20パーセントが観察された。この残念な性能は、ミクロ細孔(<2nm、大部分は<1nm)の存在と関連しており、一部の細孔には電解質が到達できないこと、不十分なぬれ、および/または反対に帯電した表面が約1~2nm未満離れて存在する細孔中で二重層を首尾良く形成できないことに起因する。活性炭中では、炭素源および熱処理温度によって左右されるが、驚くべき量の表面がこのようなミクロ細孔の形態となりうる。
【0009】
(2)公開される文献および特許文献において頻繁に主張されるように、(活性材料重量のみに基づく)電極レベルにおいては重量静電容量が大きいにもかかわらず、これらの電極では、残念ながら、(全セル重量またはパック重量に基づく)スーパーキャパシタセルまたはパックレベルにおいて高い容量を有するエネルギー貯蔵装置は得られない。これらの報告では、これは、電極の実際の質量負荷および活性材料の見掛けの密度が低すぎるという見解によるものである。ほとんどの場合、電極の活性材料質量負荷(面密度)は10mg/cm2をはるかに下回り(面密度=電極の厚さ方向に沿った電極断面積当たりの活性材料量)、活性材料の見掛けの体積密度またはタップ密度は、活性炭の比較的大きな粒子の場合でさえも、典型的には0.75g/cm-3未満(より典型的には0.5g/cm-3未満、最も典型的には0.3g/cm-3未満)である。
【0010】
低い質量負荷は、主として、従来のスラリコーティング手順を使用して比較的厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないことが原因である。これは、思うほど簡単な作業ではなく、現実には、電極の厚さは、セル性能を最適化するために任意にかつ自由に変えることができる設計パラメーターではない。一方、より厚い試料は、非常に脆くなりやすく、または構造的完全性が低くなりやすく、また大量の粘結剤樹脂の使用を必要とする。これらの問題は、グラフェン材料ベースの電極の場合に特に重大となる。150μmよりも厚く、高多孔質のままであり、細孔に液体電解質が完全に到達可能なままであるグラフェンベースの電極の製造は従来不可能であった。低い面密度および低い体積密度(薄い電極および不十分な充填密度に関連する)のために、スーパーキャパシタセルの体積静電容量は比較的小さくなり、体積エネルギー密度は低くなる。
【0011】
より小型で携帯用のエネルギー貯蔵システムに対する需要が高まるにつれて、エネルギー貯蔵装置の体積の利用を増加させることに強い関心が持たれている。改善されたセルの体積静電容量およびエネルギー密度を実現するためには、高い体積静電容量および高い質量負荷を実現可能な新規な電極材料および設計が重要となる。
【0012】
(3)過去十年間で、グラフェン、カーボンナノチューブベースの複合材料、多孔質酸化黒鉛、および多孔質メソカーボンなどの多孔質炭素ベースの材料を利用して体積静電容量が増加した電極材料を開発するために多くの研究が行われてきた。このような電極材料を特徴とするこれらの実験的スーパーキャパシタは、高レートでの充電および放電が可能であり、大きな体積電極静電容量(ほとんどの場合、電極体積を基準として100~200F/cm3)も示すことができるが、それらの典型的な<1mg/cm2の活性質量負荷、<0.2g/cm-3のタップ密度、および最大数十マイクロメートル(<<100μm)の電極厚さは、ほとんどの市販の電気化学キャパシタ中に使用される値(すなわち10mg/cm2、100~200μm)よりも依然としてはるかに小さく、結果として、比較的小さい面および体積静電容量ならびに低い体積エネルギー密度を有するエネルギー貯蔵装置が得られる。
【0013】
(4)グラフェンベースのスーパーキャパシタの場合、以下に説明されるまだ解決されていないさらなる問題が存在する:
ナノグラフェン材料は、非常に高い熱伝導率、高い電気伝導率、および高強度を示すことが最近発見された。グラフェンの別の顕著な特徴の1つは、その非常に大きい比表面積である。1つのグラフェンシートは、(液体電解質が到達可能な)外部比表面積が約2,675m2/gとなり、対応する単層CNT(内面には電解質が到達できない)によって得られる外部表面積の約1,300m2/gとは対照的である。グラフェンの電気伝導率はCNTよりもわずかに高い。
【0014】
本出願人(A.ZhamuおよびB.Z.Jang)およびその共同研究者は、スーパーキャパシタ用途のグラフェンベースおよび別のナノ黒鉛ベースのナノ材料を最初に研究した[以下の参考文献1~5を参照されたい;最初の特許出願は2006年に提出され、2009年に発行された]。2008年以降、研究者はスーパーキャパシタ用途ナノグラフェン材料の重要性を認識し始めた。
【0015】
List of References:
1.Lulu Song,A.Zhamu,Jiusheng Guo,and B.Z.Jang“Nano-scaled Graphene Plate Nanocomposites for Supercapacitor Electrodes” US Pat.No.7,623,340(11/24/2009).
2.Aruna Zhamu and Bor Z.Jang,“Process for Producing Nano-scaled Graphene Platelet Nanocomposite Electrodes for Supercapacitors,” U.S.Patent Appl.No.11/906,786(10/04/2007).
3.Aruna Zhamu and Bor Z.Jang,“Graphite-Carbon Composite Electrodes for Supercapacitors”US Pat.Appl.No.11/895,657(08/27/2007).
4.Aruna Zhamu and Bor Z.Jang,“Method of Producing Graphite-Carbon Composite Electrodes for Supercapacitors”US Pat.Appl.No.11/895,588(08/27/2007).
5.Aruna Zhamu and Bor Z.Jang,“Graphene Nanocomposites for Electrochemical cell Electrodes,”U.S.Patent Appl.No.12/220,651(07/28/2008).
【0016】
しかし、個々のナノグラフェンシートは、それ自体と再積層する傾向が大きく、スーパーキャパシタ電極中の電解質が到達可能な比表面積が事実上減少する。このグラフェンシートが重なり合う問題の重要性は以下のように説明することができる:寸法l(長さ)×w(幅)×t(厚さ)および密度ρのナノグラフェンプレートレットの場合、概算される単位質量当たりの表面積はS/m=(2/ρ)(1/l+1/w+1/t)である。ρ≒2.2g/cm3、l=100nm、w=100nm、およびt=0.34nm(単層)の場合、2,675m2/gの印象的なS/m値が得られ、これは、最先端のスーパーキャパシタにおいて使用される大部分の市販のカーボンブラックまたは活性炭材料の値よりもはるかに大きい。2つの単層グラフェンシートが積層されて二重層グラフェンが形成される場合、比表面積は1,345m2/gまで減少する。3層グラフェンの場合、t=1nmであり、S/m=906m2/gとなる。より多くの層が互いに積層される場合、比表面積はさらに大幅に減少する。
【0017】
これらの計算は、個別のグラフェンシートの再積層を防止する方法を発見することが非常に重要であることを示唆しており、部分的に再積層するとしても、結果として得られる複数層構造は、十分なサイズの層間細孔を依然として有する。これらの細孔は、電解質が到達可能となり、電気二重層電荷の形成が可能となるのに十分大きいことが必要であり、典型的には少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nmの細孔径が必要となる。しかし、これらの細孔またはグラフェン間隔は、高いタップ密度を保証するために十分小さいことも必要である。残念ながら、グラフェンベースの電極の典型的なタップ密度は0.3g/cm3未満、最も典型的には<<0.1g/cm3である。かなりの程度で、大きな細孔径および高い多孔率レベルを有することの要求と、高いタップ密度を有することの要求とは、スーパーキャパシタにおいて相互排他的であると考えられる。
【0018】
スーパーキャパシタの電極活性材料としてのグラフェンシートの使用の別の主要な技術的障壁の1つは、従来のグラフェン-溶媒スラリコーティング手順を用いて固体集電体(例えばAl箔)の表面上に厚い活性材料層を堆積することの課題である。このような電極では、グラフェン電極には典型的には、多量のバインダー樹脂が必要である(したがって不活性またはオーバーヘッド材料/成分に対する活性材料の比率が大幅に減少する)。さらに、50μmを超える厚さでこの方法で作製されたあらゆる電極は脆く弱い。これらの問題の有効な解決策はこれまで存在しない。
【0019】
したがって、高い活性材料質量負荷(高い面密度)と、高い見掛けの密度(高いタップ密度)を有する活性材料と、電子およびイオンの輸送速度を大きく低下させない(例えば長い電子輸送距離を有さない)厚い電極厚さと、高い体積静電容量と、高い体積エネルギー密度とを有するスーパーキャパシタが明らかに緊急に必要とされている。グラフェンベースの電極の場合、グラフェンシートの再積層、高い比率のバインダー樹脂の必要性、および厚いグラフェン電極層の製造の難しさなどの問題も克服する必要がある。
【0020】
さらに、従来のスーパーキャパシタ中の厚い電極は、機械的に剛性でもあり、可撓性ではなく、曲げることができず、所望の形状に適合しない。そのため、従来のスーパーキャパシタの場合、高い体積/重量エネルギー密度と機械的可撓性とは相互排他的であると思われる。
【0021】
より小型で携帯型のエネルギー貯蔵システムに対する需要が高まるにつれて、スーパーキャパシタの体積の利用を増加させることに強い関心が持たれている。スーパーキャパシタの改善されたセルの体積静電容量およびエネルギー密度を実現するためには、高い体積静電容量および高い質量負荷を実現可能な新規な電極材料および設計が重要となる。
【0022】
したがって、高い活性材料質量負荷(高い面密度)と、高い見掛けの密度(高いタップ密度)を有する活性材料と、電子およびイオンの輸送速度を大きく低下させない(例えば高い電子輸送抵抗および長いイオン拡散経路を有さない)厚い電極厚さと、高い重量エネルギー密度と、高い体積エネルギー密度とを有するスーパーキャパシタが明らかに緊急に必要とされている。これらの性質が、結果として得られるスーパーキャパシタの改善された可撓性および形状適合性とともに実現される必要がある。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、組み合わされてひもまたは撚り糸形状(例えば2本、3本、4本、5本が撚られた糸またはひもなど)を形成するフィラメント状またはロッド状のアノード電極およびカソード電極を含むロープ型スーパーキャパシタを提供する。このスーパーキャパシタは、電気二重層キャパシタ(EDLC、対称または非対称)、擬似キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、またはナトリウムイオンキャパシタであってよい。リチウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタは、プレリチウム化またはプレナトリウム化されたアノード活性材料(すなわち電池型アノード)と、活性炭またはグラフェンシートなどの高表面積炭素材料を含むカソード(すなわちEDLC型カソード)とを含む。
【0024】
このスーパーキャパシタは:(a)細孔を有する第1の電気伝導性多孔質ロッド(またはフィラメント)と、第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物とを含む第1の電極において、第1の混合物が第1の多孔質ロッド(例えばフィラメント形状の発泡体)の細孔中に存在する第1の電極と;(b)セパレータで保護された第1の電極を形成するための、第1の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータと;(c)細孔を有する第2の電気伝導性多孔質ロッド(例えばフィラメント形状の発泡体)と、第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物を含む第2の電極において、第2の混合物が第2の多孔質ロッドの細孔中に存在し;セパレータで保護された第1の電極と第2の電極とが、らせん状に組み合わされて、ひもまたは撚り糸が形成される、第2の電極と;(d)上記ひもまたは撚り糸を包み込むまたは覆う保護ケーシングまたはシースとを含む。第2の電解質は、第1の電解質と同じ場合も異なる場合もある。第1または第2の電極の中の細孔は、好ましくは相互接続された細孔を含み、多孔質ロッド/フィラメントは、好ましくはオープンセル発泡体である。
【0025】
第1の活性材料および/または第2の活性材料は、炭素材料の複数の粒子および/または複数の単離グラフェンシートを含み、複数のグラフェンシートは、それぞれ1~10のグラフェン面を有する単層グラフェンまたは数層グラフェンを含み、前記炭素材料の複数の粒子またはグラフェンシートは、乾燥状態で測定した場合に500m2/g以上(好ましくは>1,000m2/g、より好ましくは>2,000m2/g)の比表面積を有する。これらの単離グラフェンシートは、グラフェン発泡体の一部ではない(多孔質ロッドがグラフェンベースの発泡体構造である場合)。多孔質ロッドとは別に、またはこれに加えて、これらの単離グラフェンシートは、真の電極活性材料である。
【0026】
幾つかの好ましい実施形態では、第1または第2の電極活性材料は、第1または第2の電極の細孔中に容易に含浸させるために1μm未満の長さまたは幅を有する活性炭の粒子または単離グラフェンシートを含み、このグラフェンシートは、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ素化グラフェン、窒素化されたもしくは窒素ドープされたグラフェン、水素化されたもしくは水素ドープされたグラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される
【0027】
幾つかの実施形態では、第1または第2の電極は、金属酸化物、伝導性ポリマー、有機材料、非グラフェン炭素材料、無機材料、またはそれらの組合せから選択される酸化還元対の相手材料をさらに含むことができる。この相手材料は、グラフェンまたは活性炭と組み合わせることで、擬似容量を得るための酸化還元対を形成する。
【0028】
ある実施形態では、第1または第2の電極は、第1または第2の電極中の唯一の電極活性材料として:(a)グラフェンシート単独;(b)多孔質炭素材料(例えば活性炭)と混合されたグラフェンシート;(c)擬似容量を得るためにグラフェンシートとの酸化還元対を形成する相手材料と混合されたグラフェンシート;または(d)擬似容量を得るためにグラフェンシートまたは多孔質炭素材料との酸化還元対を形成する相手材料と混合されたグラフェンシートおよび多孔質炭素材料の材料を含み、第1または第2の電極中に別の電極活性材料は存在しない。
【0029】
本発明によるスーパーキャパシタは、セパレータで保護された第2の電極を形成するための、第2の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータをさらに含むことができる。したがって、第1および第2の電極の両方は(それぞれが、多孔質ロッドの細孔中にあらかじめ含浸させた材料-電解質混合物を有する)は、ひもまたは撚り糸を形成するために互いに編まれたり織り合わされたりする前に、多孔質セパレータによって覆われる。好ましくは、2つの電極は、電極間の接触または界面領域を最大化するためにできるだけ密接に充填される。
【0030】
ある実施形態では、ロープ型スーパーキャパシタは、ひもまたは糸と保護シースとの間に配置された第3の電解質をさらに含む。第3の電解質は、第1の電解質または第2の電解質と同じ場合も異なる場合もある。
【0031】
このスーパーキャパシタでは、第1の電極が負極(またはアノード)であってよく、第2の電極が正極(またはカソード)であってよい。あるいは、第2の電極が負極またはアノードであり、第1の電極が正極またはカソードである。
【0032】
スーパーキャパシタは、複数の第1の電極および/または複数の第2の電極を含むことができる。言い換えると、スーパーキャパシタは、ひもまたは撚り糸構造を形成するために互いに組み合わされた複数のアノードおよび/または複数のカソードのフィラメント/ロッドを有することができる。電極の少なくとも1つはアノードであり、電極の少なくとも1つはカソードである。
【0033】
ある実施形態では、ロープ型スーパーキャパシタは、長さ対直径または長さ対厚さのアスペクト比が少なくとも5、好ましくは少なくとも10、およびより好ましくは少なくとも20となる長さと直径または厚さとを有する。
【0034】
幾つかの実施形態では、スーパーキャパシタは:(a)第1の電気伝導性ロッド(多孔質発泡体ではない)と、第1の電極活性材料および第1の電解質の第1の混合物とを含む第1の電極において、第1の混合物が第1のロッドの上または中に堆積される第1の電極と;(b)セパレータで保護された第1の電極を形成するための、第1の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータと;(c)多孔質であり細孔を有する第2の電気伝導性ロッドと、第2の電極活性材料および第2の電解質の第2の混合物とを含む第2の電極において、第2の混合物が、多孔質である第2のロッドの細孔中に存在し;セパレータで保護された第1の電極と第2の電極とが、らせん状またはねじれた方法で織り合わされ、または組み合わされて、ひもまたは糸が形成される第2の電極と;(d)上記糸またはひもを包み込むまたは覆う保護ケーシングまたはシースとを含む。
【0035】
第1の活性材料および/または第2の活性材料は、高比表面積(500m2/g以上、好ましくは>1,000m2/g、より好ましくは>2,000m2/g)を有する炭素材料の複数の粒子および/または複数の単離グラフェンシートを含むことができる。この場合も、これらの単離グラフェンシートはグラフェン発泡体の一部ではない(多孔質ロッドがグラフェンベースの発泡体構造である場合)。多孔質ロッドとは別に、またはこれに加えて、これらの単離グラフェンシートは真の電極活性材料である。この場合も、第1または第2の電極は、金属酸化物、伝導性ポリマー、有機材料、非グラフェン炭素材料、無機材料、またはそれらの組合せから選択される酸化還元対の相手材料をさらに含むことができる。この相手材料は、グラフェンまたは活性炭と組み合わせることで、擬似容量を得るための酸化還元対を形成する。
【0036】
この場合も、本発明によるスーパーキャパシタは、セパレータで保護された第2の電極を形成するための、第2の電極を包み込むまたは覆う多孔質セパレータをさらに含むことができる。ある実施形態では、スーパーキャパシタは、ひもまたは糸と保護シースとの間に配置された第3の電解質をさらに含む。第3の電解質は、第1の電解質または第2の電解質と同じ場合も異なる場合もある。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、第1または第2の電極(両方ではない)は伝導性ロッド(発泡体ではない)を含み、第1または第2の混合物は、この伝導性ロッドの表面の上に被覆または堆積される。このロッドは、金属ワイヤ、伝導性ポリマーの繊維もしくは糸、炭素もしくは黒鉛の繊維もしくは糸、または複数のワイヤ、繊維、もしくは糸などの単純なものであってよい。
【0038】
ある実施形態では、ロープ型スーパーキャパシタは、第1の末端および第2の末端を有し、第1の電極は、第1の電極中に埋め込まれる、第1の電極に接続される、または第1の電極と一体となる、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維を含む第1の端子コネクタを含む。ある好ましい実施形態では、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維は、ほぼ第1の末端から第2の末端まで及ぶ。このワイヤまたは繊維は、好ましくは、電子デバイスまたは外部回路または負荷に接続するための端子タブとなるために第1の末端または第2の末端から突出している。
【0039】
これとは別に、またはこれに加えて、ロープ型スーパーキャパシタは、第1の末端および第2の末端を有し、第2の電極は、第2の電極中に埋め込まれる、第2の電極に接続される、または第2の電極と一体となる、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維を含む第2の端子コネクタを含む。ある実施形態では、少なくとも1つの金属ワイヤ、伝導性炭素/黒鉛繊維、または伝導性ポリマー繊維は、ほぼ第1の末端から第2の末端まで及ぶ。このワイヤまたは繊維は、好ましくは、電子デバイスまたは外部回路または負荷に接続するための端子タブとなるために第1の末端または第2の末端から突出している。
【0040】
第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドは、金属発泡体、金属ウェブ、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、金属ワイヤひも、伝導性ポリマー繊維マット、伝導性ポリマー発泡体、伝導性ポリマー繊維ひも、伝導性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、グラフェンエアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択される多孔質発泡体を含むことができる。これらの発泡体から、高度な変形性および適合性の構造を得ることができる。
【0041】
これらの発泡体構造は、容易に、>50%、典型的には、好ましくは>70%、より典型的には、好ましくは>80%、さらにより典型的で好ましくは>90%、最も好ましくは>95%の多孔率レベルにすることができる(グラフェンエアロゲルは99%の多孔率レベルを超えることができる)。これらの発泡体中の骨格構造(細孔壁)は電子伝導経路の3Dネットワークを形成し、同時に、細孔は、伝導性添加剤およびバインダー樹脂を全く使用せずに大きな比率の電極活性材料(アノード中のアノード活性材料、またはカソード中のカソード活性材料)の大きな比率に適合させることができる。
【0042】
発泡体ロッド/フィラメントは、円形、楕円形、長方形、正方形、六角形、中空、または不規則な形状の断面を有することができる。発泡体構造の断面形状に対して特に制限はない。スーパーキャパシタは、ある長さおよび直径または厚さ、ならびに10を超え、好ましくは15を超え、より好ましくは20を超え、さらに好ましくは30を超え、さらにより好ましくは50または100を超えるアスペクト比(長さ/厚さまたは長さ/直径の比)を有するロープ形状を有する。ロープ電池の長さまたは直径(または厚さ)に対して特に制限はない。厚さまたは直径は典型的で好ましくは100nm~10cm、より好ましく典型的には1μm~1cm、最も典型的には10μm~1mmである。長さは、1μm~数十メートル、またはさらには数百メートル(そのように望む場合)に及ぶことができる。
【0043】
本発明のある実施形態では、スーパーキャパシタは、(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、および炭素の粒子;(b)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、およびカドミウム(Cd);(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、またはCdと別の元素との合金または金属間化合物において、化学量論的または非化学量論的である合金または化合物;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、またはCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物、ならびにそれらの混合物または複合物;ならびにそれらの組合せのプレリチウム化またはプレナトリウム化されたバージョンからなる群から選択されるアノード活性材料を有するリチウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタである。
【0044】
リチウムイオンキャパシタまたはナトリウムイオンキャパシタは、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープされたグラフェン、窒素ドープされたグラフェン、化学官能化グラフェン、それらの物理的もしくは化学的に活性化もしくはエッチングされたバージョン、またはそれらの組合せのプレリチウム化またはプレナトリウム化されたバージョンから選択される、プレリチウム化またはプレナトリウム化されたグラフェンシートをアノード活性材料として含むことができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、スーパーキャパシタは、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、チタン酸ナトリウム、NaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7、Na2C8H4O4、Na2TP、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、Na2C8H4O4、カルボキシレート系材料、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、またはそれらの組合せから選択されるアノード活性材料を有するナトリウムイオンキャパシタである。
【0046】
幾つかの好ましい実施形態では、第1または第2の電極活性材料は、コバルト酸リチウム、ドープされたコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ドープされたニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ドープされたマンガン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ドープされた酸リチウム、リチウム混合金属酸化物、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リチウム混合金属リン酸塩、金属硫化物、リチウムセレニド、リチウムポリスルフィド、およびそれらの組合せからなる群から選択されるリチウムインターカレーション化合物またはリチウム吸収性化合物を含有する。
【0047】
幾つかの実施形態では、第1または第2の電極活性材料は、NaFePO4、Na(1-x)KxPO4、KFePO4、Na0.7FePO4、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、Na3V2(PO4)2F3、Na2FePO4F、NaFeF3、NaVPO4F、KVPO4F、Na3V2(PO4)2F3、Na1.5VOPO4F0.5、Na3V2(PO4)3、NaV6O15、NaxVO2、Na0.33V2O5、NaxCoO2、Na2/3[Ni1/3Mn2/3]O2、Nax(Fe1/2Mn1/2)O2、NaxMnO2、λ-MnO2、NaxK(1-x)MnO2、Na0.44MnO2、Na0.44MnO2/C、Na4Mn9O18、NaFe2Mn(PO4)3、Na2Ti3O7、Ni1/3Mn1/3Co1/3O2、Cu0.56Ni0.44HCF、NiHCF、NaxMnO2、NaCrO2、KCrO2、Na3Ti2(PO4)3、NiCo2O4、Ni3S2/FeS2、Sb2O4、Na4Fe(CN)6/C、NaV1-xCrxPO4F、SezSy、y/z=0.01~100、Se、ナトリウムポリスルフィド、硫黄、アルオード石、またはそれらの組合せ(式中、xは0.1~1.0である)から選択されるナトリウムインターカレーション化合物またはカリウムインターカレーション化合物を含有する。
【0048】
第1の電解質および/または第2の電解質は、液体溶媒中に溶解したリチウム塩またはナトリウム塩を含むことができ、この液体溶媒は、水、有機溶媒、イオン液体、または有機溶媒とイオン液体との混合物である。液体溶媒をポリマーと混合してポリマーゲルを形成することができる。
【0049】
第1の電解質および/または第2の電解質は、好ましくは、液体溶媒中に溶解し2.5Mを超える(好ましくは>3.0M、さらに好ましくは>3.5M、さらにより好ましくは>5.0M、さらにより好ましくは>7.0M、最も好ましくは>10M、15Mまで)塩濃度を有するリチウム塩またはナトリウム塩を含む。
【0050】
アルカリ金属電池において、第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドは、少なくとも90体積%の細孔を有し、第1または第2の電極は、200μm以上の直径もしくは厚さを有する、または電池セル全体の少なくとも30重量%もしくは体積%を占める活性質量負荷(アノードまたはカソード活性材料)を有する、または第1および第2の電極活性材料の合計は、電池セル全体の少なくとも50重量%もしくは体積%を占める。
【0051】
幾つかの好ましい実施形態では、第1または第2の電気伝導性多孔質ロッドは、少なくとも95体積%の細孔を有し、第1または第2の電極は、300μm以上の直径もしくは厚さを有する、または電池セル全体の少なくとも35重量%または質量%を占める活性質量負荷を有する、または第1および第2の電極活性材料の合計は、電池セル全体の少なくとも60重量%または体積%を占める。
【0052】
幾つかの好ましい実施形態では、第1または第2の電極活性材料は、無機材料、有機もしくはポリマー材料、金属酸化物/リン酸塩/硫化物、またはそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物またはアルカリ金属吸収性化合物を含有する。この化合物は、リチウムイオンキャパシタ中のアノード活性材料(例えばチタン酸リチウムまたはリチウム化黒鉛)であってよく、カソードは高比表面積を有するEDLC型(例えば活性炭)である。金属酸化物/リン酸塩/硫化物は、VO2、LixVO2、V2O5、LixV2O5、V3O8、LixV3O8、LixV3O7、V4O9、LixV4O9、V6O13、LixV6O13、それらのドープされたバージョン、それらの誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される酸化バナジウムを含み、式中、0.1<x<5である。
【0053】
この化合物は、遷移金属ダイカルコゲナイド、遷移金属トリカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択される無機材料であってよい。好ましくは、無機材料は、TiS2、TaS2、MoS2、NbSe3、MnO2、CoO2、酸化鉄、酸化バナジウム、またはそれらの組合せから選択される。幾つかの特定の実施形態では、無機材料は:(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイドもしくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)それらの組合せから選択される。
【0054】
酸化還元対の相手材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物またはアルカリ金属吸収性化合物から選択することができる。さらに特に、カソードは、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、またはナノプレートレットの形態のニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、またはニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、またはテルル化物から選択されるアルカリ金属インターカレーション化合物またはアルカリ金属吸収性化合物を含む。
【0055】
幾つかの実施形態、酸化還元対の相手材料は:(a)セレン化ビスマスもしくはテルル化ビスマス、(b)遷移金属ダイカルコゲナイドもしくはトリカルコゲナイド、(c)ニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、もしくは遷移金属の硫化物、セレン化物、もしくはテルル化物;(d)窒化ホウ素、または(e)それらの組合せから選択される無機材料のナノディスク、ナノプレートレット、ナノコーティング、またはナノシートを含み;これらのディスク、プレートレット、またはシートは、高比表面積を保証するために100nm未満(好ましくは<10nm、より好ましくは<3nm)の厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】
図1(A)は、アノード集電体(例えば炭素被覆Al箔)、アノード電極(例えば樹脂バインダーによって結合させた活性炭粒子および伝導性添加剤の層)、多孔質セパレータ、カソード電極(例えば樹脂バインダーによって結合させた活性炭粒子および伝導性添加剤の層)、およびカソード集電体(例えばAl箔)から構成される従来技術のスーパーキャパシタの概略図である。
【
図1B】
図1(B)は、ロープ型の可撓性および形状適合性のスーパーキャパシタの製造方法の概略図である。
【
図1C】
図1(C)は、電極(ロッド型のアノードまたはカソード)を連続的で自動化された方法で製造するための手順の4つの例である。
【
図1D】
図1(D)は、アルカリ金属イオン電池電極を連続的に製造するための本発明の方法の概略図である。
【
図2】
図2は、単離されたグラフェンシートの電子顕微鏡画像である。
【
図3A】
図3(A)は、導電性多孔質層の例の金属グリッド/メッシュおよびカーボンナノファイバマットである。
【
図3B】
図3(B)は、導電性多孔質層の例のグラフェン発泡体および炭素発泡体である。
【
図3C】
図3(C)は、導電性多孔質層の例の黒鉛発泡体およびNi発泡体である。
【
図3D】
図3(D)は、導電性多孔質層の例のCu発泡体およびステンレス鋼発泡体である。
【
図4A】
図4(A)は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク(厚さ>100nm)、およびグラフェンシート(厚さ<100nm、より典型的には<10nmであり、0.34nmの薄さでもよい)を製造するための一般に使用されている方法の概略図である。
【
図4B】
図4(B)は、剥離黒鉛、膨張黒鉛フレーク、および単離されたグラフェンシートを製造するための方法を示す概略図である。
【
図5】
図5は、電極活性材料としての還元酸化グラフェン(RGO)シートとEMIMBF
4イオン液体電解質とを含む対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)である。ロープ型スーパーキャパシタと、比較のための、電極の従来のスラリコーティングによって作製した従来技術のスーパーキャパシタとの両方からデータを得た。
【
図6】
図6は、電極活性材料としての活性炭(AC)粒子と有機液体電解質とを含む対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)である。
【
図7A】
図7(A)は、電極活性材料としての純粋なグラフェンシートとリチウム塩-PC/DEC有機液体電解質とを含むリチウムイオンキャパシタ(LIC)セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)である。
【
図7B】
図7(B)は、電極活性材料としての純粋なグラフェンシートとナトリウム塩-PC/DEC有機液体電解質とを含むナトリウムイオンキャパシタ(NIC)セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)である。
【
図8】
図8は、従来方法および本発明による方法によって作製されたACベースのEDLCスーパーキャパシタの実現可能な電極直径範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度である。本発明による方法では、実現可能な電極直径に対する理論的制限は存在しない。典型的には、実際の電極厚さは10μm~5,000μm、より典型的には100μm~1,000μm、最も典型的には200μm~800μmである。
【
図9】
図9は、従来方法によって作製されたRGOベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質)および本発明による方法によって作製されたロープ型セル(約0.75g/cm
3の電極タップ密度が容易に実現された)の実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度である。
【
図10】
図10は、従来方法によって作製された純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質)および本発明による方法によって作製されたそれらのロープ型セル(約0.85g/cm
3の電極タップ密度)の実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度である。
【
図11】
図11は、従来方法によって作製された純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(イオン液体電解質)および本発明による方法によるそれらのロープ型セル(約0.85g/cm
3の電極タップ密度)の実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度である。
【
図12】
図12は、活性炭ベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質を有する)の実現可能な活性材料の比率(活性材料重量/全セル重量)にわたってプロットしたセルレベルの重量エネルギー密度である。
【
図13】
図13は、2つのシリーズの純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(全て有機液体電解質を有する)のスーパーキャパシタセル中の実現可能な活性材料の比率(活性材料重量/全セル重量)にわたってプロットしたセルレベルの重量エネルギー密度である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、従来のスーパーキャパシタと比較して非常に高い体積エネルギー密度および高い重量エネルギー密度を示す可撓性および形状適合性のロープ状スーパーキャパシタを対象とする。このスーパーキャパシタは、EDLCスーパーキャパシタ(対称または非対称)、レドックスもしくは擬似キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(リチウムイオン電池ではない)、またはナトリウムイオンキャパシタ(ナトリウムイオン電池ではない)であってよい。スーパーキャパシタは、水性電解質、非水性もしくは有機電解質、ゲル電解質、イオン液体電解質、または有機およびイオン液体の混合物に基づいている。
【0058】
図1(A)中に概略的に示されるように、従来技術のスーパーキャパシタセルは、典型的には、アノード集電体202(例えば厚さ12~15μmのAl箔)、集電体上にコーティングされたアノード活性材料層204(PVDFなどの樹脂バインダーによって結合される活性炭粒子232などのアノード活性材料と伝導性添加剤とを含む)、多孔質セパレータ230、カソード活性材料層208(活性炭粒子234などのカソード活性材料と、伝導性添加剤とを含み、図示されていない樹脂バインダーによって全てが結合される)、カソード集電体206(例えばAl箔)、およびアノード活性材料層204(単に「アノード層」とも呼ばれる)およびカソード活性材料層208(または単に「カソード層」)との両方の中に配置される液体電解質から構成される。セル全体は、薄いプラスチック-アルミニウム箔積層体をベースとするエンベロープなどの保護ハウジング中に入れられる。従来技術のスーパーキャパシタセルは、典型的には以下のステップを含む方法によって製造される:
a)第1のステップは、アノード活性材料(例えば活性炭)の粒子、伝導性フィラー(例えば黒鉛フレーク)、樹脂バインダー(例えばPVDF)を溶媒(例えばNMP)中で混合してアノードスラリを形成するステップである。これとは別に、カソード活性材料(例えば活性炭)の粒子、伝導性フィラー(例えばアセチレンブラック)、樹脂バインダー(例えばPVDF)を溶媒(例えばNMP)中で混合して分散させてカソードスラリが形成される。
(b)第2のステップは、アノード集電体(例えば、CuまたはAl箔)の一方または両方の主面にアノードスラリをコーティングし、溶媒(例えば、NMP)を蒸発させることによってコーティングされた層を乾燥させて、CuまたはAl箔上にコーティングされた乾燥アノード電極を形成することである。同様に、カソードスラリをコーティングして乾燥させて、Al箔上にコーティングされた乾燥カソード電極を形成する。
(c)第3のステップは、アノード/Al箔シート、多孔質セパレータ層、およびカソード/Al箔シートを積層し合わせて、3層または5層アセンブリを形成し、これを所望のサイズに切断してまたは細く裂いて積層し、(形状の一例として)矩形の構造を形成するか、または巻いて円筒形のセル構造にすることを含む。
(d)次いで、矩形または円筒形の積層構造を、アルミニウムプラスチック積層エンベロープまたはスチールケーシングに収容する。
e)次に液体電解質が積層構造中に注入されてスーパーキャパシタセルが形成される。
【0059】
この従来方法および結果として得られるスーパーキャパシタセルに関連する幾つかの重大な問題が存在する:
1)100μmよりも厚い活性炭ベースの電極層(アノード層またはカソード層)の製造は非常に困難であり、200μmよりも厚い電極層の製造は現実的には不可能または非現実的である。これには幾つかの理由がある:
a.100μmの厚さの電極には、典型的にはスラリコーティング設備中に30~50メートルの長さの加熱ゾーンが必要となり、これは時間がかかりすぎ、エネルギー消費が多すぎ、費用対効果が低い。
b.より厚い電極は、層間剥離および亀裂が生じる傾向が高い。
c.グラフェンシートなどの一部の電極活性材料の場合、実際の製造環境で連続的に50μmを超える厚さの電極を製造することは不可能であった。幾つかのより厚い電極が公開文献または特許文献において主張されているという見解にもかかわらずこのことが言えるが;これらの電極は小規模で実験室中で作製されている。実験室の設定では、おそらくは、繰り返し新しい材料を層に加えて、手作業で層を固化させて電極の厚さを増加させることが可能であった。しかし、このような手作業を用いてさえも(大量生産には適していない)、結果として得られる電極は非常に壊れやすく脆くなる。
d.繰り返される圧縮によってグラフェンシートの再積層が起こり、したがって、大幅に比表面積が減少し、比静電容量が減少するので、この問題はグラフェンベースの電極の場合にはさらに悪化する。
2)
図1(A)中に示されるような従来方法では、電極の実際の質量負荷および活性材料の見掛けの密度が小さすぎる。ほとんどの場合、電極の活性材料質量負荷(面密度)は10mg/cm
2を大きく下回り、活性材料見掛けの体積密度またはタップ密度は、活性炭の比較的大きな粒子の場合でさえも、典型的には0.75g/cm
3未満(より典型的には0.5g/cm
3未満、最も典型的には0.3g/cm
3未満)となる。さらに、電池容量に寄与せずに電極に追加の重量および体積を加える他の非活性材料(例えば、導電性添加剤および樹脂粘結剤)が存在する。これらの低い面密度および低い体積密度は、比較的低い体積静電容量および低い体積エネルギー密度をもたらす。
3)従来の方法は、電極活性材料(アノード活性材料およびカソード活性材料)を液体溶媒(例えば、NMP)中で分散させてスラリにする必要があり、集電体表面にコーティングした後に液体溶媒を除去して電極層を乾燥させなければならない。アノードおよびカソード層をセパレータ層と共に積層し合わせて、ハウジング内にパッケージングしてスーパーキャパシタセルを形成した後、セル内に液体電解質を注入する。実際には、2つの電極を濡らし、次いで電極を乾燥させ、最後に再び濡らす。そのような湿潤-乾燥-湿潤プロセスは、良好なプロセスとは思えない。
4)NMPは環境に優しい溶媒ではなく、先天性異常を引き起こす場合があることが知られている。
5)現行のスーパーキャパシタ(例えば対称スーパーキャパシタまたは電気二重層キャパシタEDLC)は、比較的低い重量エネルギー密度および低い体積エネルギー密度が依然として問題となっている。市販のEDLCは約6Wh/kgの重量エネルギー密度を示し、室温で10Wh/kg(全セル重量に基づく)を超えるエネルギー密度を示す実験用EDLCセルは報告されていない。実験用スーパーキャパシタは、大きな堆積電極静電容量(ほとんどの場合100~200F/cm
3)を電極レベルで(セルレベルではない)示すが、それらの典型的な<1mg/cm
2の活性質量負荷、<0.1g/cm
-3のタップ密度、および最大数十マイクロメートルの電極厚さは、ほとんどの市販の電気化学キャパシタ中に使用される値よりも依然としてはるかに小さく、その結果、セル(デバイス)の重量を基準として比較的低い面および体積容量、並びに低い体積エネルギー密度を有するエネルギー貯蔵装置が得られる。
【0060】
文献では、活性材料重量のみまたは電極重量に基づいて報告されたエネルギー密度データから、実用的なスーパーキャパシタセルまたはデバイスのエネルギー密度を直接導くことはできない。「オーバーヘッド重量」、すなわち他のデバイス構成要素(粘結剤、導電性添加剤、集電体、セパレータ、電解質、およびパッケージング)の重量も考慮に入れる必要がある。従来の製造方法では、活性材料の比率が全セル重量の30重量%未満(場合により<15%;例えばグラフェンベースの活性材料の場合)となる。
【0061】
本発明は、ロープ形状、高い活性材料質量負荷、少ないオーバーヘッド重量および体積、高い重量エネルギー密度、ならびに高い体積エネルギー密度を有する可撓性および形状適合性のスーパーキャパシタの製造方法を提供する。さらに、本発明による方法によって製造されたスーパーキャパシタの製造コストは、従来方法よりもはるかに低くすることができ、はるかに環境に優しい。
【0062】
本発明の一実施形態では、
図1(C)中に示されるように、ひも型または糸型の電極を含む本発明のロープ型スーパーキャパシタは、第1の電極活性材料(例えば、多孔質ロッドの細孔径よりも小さいサイズを有する活性炭粒子または単離/分離したグラフェンシート)と第1の電解質との混合物が部分的または完全に充填される細孔を有する電気伝導性多孔質ロッド(例えば炭素発泡体、グラフェン発泡体、金属ナノワイヤマットなど)から構成される第1の電極11を供給する第1のステップを含む方法によって製造することができる。伝導性添加剤または樹脂バインダーを場合によりこの混合物中に加えることができるが、これは必要ではないか、またはさらには望ましくない。この第1の電極11は、スーパーキャパシタを外部負荷に接続するための端子タブとして機能できる、活性材料を含まず電解質を含まない末端部分13を場合により含むことができる。この第1の電極は、あらゆる形状;例えば円形、長方形、楕円形、正方形、六角形、中空、または不規則な形状の断面を仮定することができる。
【0063】
あるいは、第1のステップでは、第1の電極は、伝導性ロッド(多孔質発泡体ではない)を含み、この伝導性ロッドの表面上に第1の混合物のコーティングまたは堆積が行われる。このロッドは、金属ワイヤ、伝導性ポリマー繊維もしくはヤーン、炭素もしくは黒鉛の繊維もしくはヤーン、または複数の細いワイヤ、繊維、もしくはヤーンのように単純なものであってよい。しかし、この状況では、第2の電極は、多孔質発泡体構造を含まなければならない。
【0064】
第2のステップは、電解質中のイオンが透過性となる多孔質セパレータ15(例えば多孔質プラスチックフィルム、紙、繊維マット、不織布、ガラス繊維布など)の薄層で第1の電極11を包み込むまたは覆うステップを含む。このステップは、第1の電極に薄い多孔質プラスチックテープを1周もしくはわずかに1周を超えて、またはらせん状に巻き付けるステップなどの単純なものであってよい。この主な目的は、内部短絡を防止するためにアノードとカソードとを電子的に分離することである。多孔質セパレータ層は、噴霧、印刷、コーティング、ディップキャスティングなどによって第1の電極の周囲全体に単に堆積することができる。
【0065】
第3のステップは、第2の活性材料および第2の電解質、ならびに場合により伝導性添加剤または樹脂バインダー(必要ではなく、望ましくもない)の混合物を含む第2の電極17を作製するステップを含む。この第2の電極17は、外部負荷に接続するための端子タブとして機能できる、活性材料を含まず電解質を含まない末端部分を場合により含むことができる。第2の電極は、場合により、しかし望ましくは、多孔質セパレータ層18によって覆われるまたは包み込まれることができる。
【0066】
多孔質セパレータ層で覆われるまたは覆われていないこの第2の電極は、次に、ブレーディングまたは製糸手順を用いて第1の電極と組み合わせることで、2本が撚り合わされた糸またはひもが製造される。第1の電極がアノードである場合は、第2の電極はカソードであり、またはその逆となる。1つの糸またはひもは、1つのカソードまたは複数のカソードと組み合わされた複数のアノード(すなわち、それぞれがアノード活性材料および電解質を含む複数のフィラメントまたはロッド)を含むことができる。1つの糸またはひもは、1つのアノードまたは複数のアノードフィラメントと組み合わされた複数のカソード(すなわち、それぞれがカソード活性材料および電解質を含む複数のフィラメントまたはロッド)を含むことができる。最終ステップとして、このひもまたは糸構造は、電気的に絶縁される保護ケーシングまたはシース19(例えばプラスチックのシースまたはゴムのシェル)に入れられる、またはそれによって保護される。
【0067】
n本が撚り合わされたひも/糸(n≧2)と保護シースとの間に幾つかのさらなる電解質が含まれてよいことに留意することができる。しかし、全ての電極ロッドまたはフィラメントは、それらの細孔中に既に活性材料および電解質を含むので、これは必要ではない。
【0068】
幾つかの実施形態では、電極の1つは、活性材料-電解質混合物を収容するための細孔を有する多孔質ロッドを含み、少なくとも1つの電極は、その表面上にコーティングされた活性材料-電解質混合物を有する非多孔質ロッド(フィラメント、繊維、ワイヤなど)である。
【0069】
本発明のスーパーキャパシタの電極はロールツーロール方法によって製造することができる。一実施形態では、
図1(C)および
図1(D)に示されるように、本発明による方法は、電気伝導性多孔質ロッド/フィラメント(例えば304、310、322、または330)を、フィーダーローラー(図示せず)から、活性材料含浸区域中に連続的に供給するステップを含み、ここで、互いに十分に混合された電極活性材料(例えば活性炭粒子および/またはグラフェンシート)および電解質、ならびに任意選択の伝導性添加剤を含む湿潤活性材料-電解質混合物(例えばスラリ、懸濁液、またはゲル状塊、例えば306a、306b、312a、312b)が、多孔質層の多孔質表面(例えばそれぞれ
図1(C)の概略
図Aおよび概略
図B中の304または310)に送給される。一例として概略
図Aを用いると、1組または2組のローラー(302a、302b、302c、および302d)を用いて、湿潤活性材料-電解質混合物(306a、306b)を両側から多孔質層中に強制的に含浸させることで、含浸させた活性電極308(アノードまたはカソード)が形成される。伝導性多孔質層は、相互接続された電子伝導経路と、好ましくは少なくとも70体積%(好ましくは>80体積%、より好ましくは>90体積%)の細孔とを含む。発泡体ロッド/フィラメントは典型的には50%~約99%の細孔容積を有する。
【0070】
概略
図Bでは、湿潤活性材料-電解質混合物ロッド/フィラメント312a、312bを支持する2つの保護フィルム314a、314bを連続的に繰り出すために2つのフィーダーローラー316a、316bが使用される。これらの湿潤活性材料-電解質混合物ロッド/フィラメント312a、312bは、多岐にわたる手順(例えば、当技術分野においてよく知られている印刷、噴霧、キャスティング、コーティングなど)を用いて保護(支持)フィルム314a、314bに送給することができる。伝導性多孔質層110が2組のローラー(318a、318b、318c、318d)の間の間隙を通って移動するときに、湿潤活性材料-電解質混合物が多孔質ロッドまたはフィラメント310の細孔中に含浸されて、2つの保護フィルム314a、314bによって一時的に覆われた活性材料電極320(アノードまたはカソード電極)が形成される。
【0071】
別の例として概略
図Cを用いると、導電性多孔質層322の2つの反対側の多孔質表面に湿潤活性材料-電解質混合物(325a、325b)を供給するために、2つの噴霧装置324a、324bを使用した。1組または2組のローラーを用いて両側から多孔質ロッド中に湿潤活性材料-電解質混合物を含浸させることで、含浸させた活性電極326(アノードまたはカソード)が形成される。同様に、概略
図Dでは、導電性多孔質ロッド330の多孔質表面に湿潤活性材料-電解質混合物(333a、333b)を供給するために、2つの噴霧装置332a、332bを使用した。1組または2組のローラーを用いて多孔質ロッド中に湿潤活性材料-電解質混合物を含浸させることで、含浸させた活性電極338(アノードまたはカソード)が形成される。
【0072】
図1(D)の概略
図E中に示されるような別の例において、電極製造プロセスは、フィーダーローラー340からの導電性多孔質ロッド356を連続的に供給するステップによって開始する。ローラー342によって、多孔質ロッド356を容器344中の湿潤活性材料-電解質混合物346(スラリ、懸濁液、ゲルなど)中に浸漬させる。ローラー342bに向かって移動するときに、活性材料-電解質混合物は多孔質ロッド356の細孔中に含浸され始め、容器から出て2つのローラー348a、348bの間の間隙中に供給される。2つの保護フィルム350a、350bが2つのそれぞれのローラー352a、352bから同時に供給されて、含浸させた多孔質ロッド354を覆い、これは回転ドラム(巻き取りローラー355)上に連続的に収集することができる。このプロセスは、アノードおよびカソード電極の両方に適用可能である。
【0073】
結果として得られる電極ロッド/フィラメント(アノードまたはカソード電極)は、100nm~数センチメートルの(または希望するなら、より大きい)厚さまたは直径を有することができる。マイクロケーブルの場合(例えばマイクロ電子デバイスの可撓性電源として)、電極の厚さまたは直径は、100nm~100μm、より典型的には1μm~50μm、最も典型的には10μm~30μmである。目に見える大きさの可撓性で適合性のケーブル電池の場合(例えば電気自動車EV中の閉じ込められた空間中に使用する場合)、電極は、典型的で望ましくは、100μm以上の厚さを有する(好ましくは>200μm、さらに好ましくは>300μm、より好ましくは>400μm;さらにより好ましくは>500μm、600μm、またはさらには>1,000μm;電極の厚さに理論的な制限はない。
【0074】
以上は、本発明による可撓性で形状適合性のロープ状アルカリ金属電池をどのようにして製造できるかを示す単なる幾つかの例である。これらの例は、本発明の範囲を限定するために用いるべきではない。
【0075】
導電性多孔質ロッドまたはフィラメントは、金属発泡体、金属ウェブもしくはスクリーン、穴あき金属シートに基づく構造、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバマット、導電性ポリマー発泡体、導電性ポリマー被覆繊維発泡体、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素ゼロックスゲル、グラフェンエアロゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、剥離黒鉛発泡体、またはそれらの組合せから選択することができる。多孔質ロッドまたはフィラメントは、高多孔質のマット、スクリーン/グリッド、不織布、発泡体などの形態の、炭素、黒鉛、金属、金属被覆繊維、導電性ポリマー、または導電性ポリマー被覆繊維などの導電性材料でできている必要がある。導電性多孔質層の例を
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、および
図3(D)に示している。多孔率レベルは、少なくとも50体積%、好ましくは70体積%を超え、さらに好ましくは90体積%を超え、最も好ましくは95体積%を超える必要がある。発泡体の骨格または発泡体壁は、電気伝導経路の一体となった3Dネットワークを形成する。
【0076】
グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、またはグラフェンエアロゲル発泡体構造の中のグラフェンまたは酸化グラフェン材料は、発泡体の細孔壁を構成することに留意することができる。この形態中のこのグラフェンまたは酸化グラフェン材料は、単離または分離されたグラフェンシートを含まない。発泡体中のこのグラフェンまたは酸化グラフェン材料は、発泡体の細孔中に含浸される活性材料-電解質混合物の一部ではない。この混合物は、発泡体構造の一部ではない活性炭粒子または単離グラフェンシートを含むことができる。これらの活性炭粒子または単離グラフェンシートは、スーパーキャパシタの主要な電極活性材料となる。
【0077】
これらの発泡体構造は、容易にあらゆる断面形状にすることができる。これらは非常に可撓性となることもでき、典型的には、非金属発泡体は金属発泡体よりも可撓性となる。しかし、金属ナノ繊維は、非常に可撓性の発泡体になることができる。電解質は液体またはゲル状態のいずれかであるので、結果として得られるケーブル電池は、非常に可撓性となることができ、実質的にあらゆる特殊な形状に対して適合性にすることができる。液体溶媒中の塩濃度が高い(例えば2.5M~15M)場合でさえも、細孔中に電解質を含む発泡体構造は、依然として、変形可能であり、曲げることができ、ねじることができ、特殊な形状にさえも適合可能なままである。
【0078】
幾つかの実施形態では、第1または第2の電極中の電気伝導性多孔質ロッドは、伝導性ポリマー繊維マット、炭素/黒鉛繊維マット、繊維間に細孔を有する繊維トウ、複数の繊維および細孔を有する伝導性繊維ニット構造または不織構造を含む。これらの複数の繊維は、伝導性ポリマー繊維、金属被覆繊維、炭素被覆ポリマー繊維、炭素繊維、または黒鉛繊維を含むことができる。
【0079】
好ましくは、元の伝導性多孔質ロッドまたはフィラメント中の実質的に全ての細孔に、電極活性材料(アノードまたはカソード)、電解質、および任意選択の伝導性添加剤(バインダー樹脂は不要である)が満たされる。細孔壁または伝導性経路(1~30%)に対して多量の細孔(より典型的には70~99%、または好ましくより典型的には85%~99%)が存在するので、無駄になる空間は非常にわずかであり(「無駄になる」は電極活性材料および電解質によって占有されないことを意味する)、結果として電極活性材料-電解質混合物の比率が高くなる(高活性材料負荷質量)。
【0080】
このようなスーパーキャパシタ電極の構成では(例えば
図1(B))、細孔壁が電極構造全体(伝導性発泡体が集電体として機能する)のあらゆるところに存在するので、電子は、細孔壁によって収集される前に、短い距離(平均で細孔径の半分;例えば数ナノメートルまたは数マイクロメートル)しか移動する必要がない。これらの細孔壁は、最小限の抵抗を有する相互接続された電子輸送経路の3Dネットワークを形成する。さらに、それぞれのアノード電極またはカソード電極において、すべての電極活性材料粒子は液体電解質中にあらかじめ分散し(ぬれ性の問題がない)、湿式コーティング、乾燥、パッキング、および電解質注入の従来方法によって作製される電極中に一般に存在する乾燥ポケットが存在しなくなる。したがって、本発明による方法は、従来のスーパーキャパシタセル製造法に勝る全く予想外の利点をもたらす。
【0081】
好ましい一実施形態では、(活性炭の代わりの)グラフェン電極活性材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。上記グラフェン材料のいずれか1つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択することができる。
【0082】
本発明は、セル中の2つの電極の少なくとも1つが本発明による方法によって製造されるリチウムイオンキャパシタ(LIC)またはナトリウムイオンキャパシタ(NIC)も提供する。より好ましくは、本発明によるLICまたはNICのアノード電極およびカソード電極の両方が、前述の本発明による方法によって製造される。本発明の方法は、(A)電気伝導性多孔質ロッド/フィラメントをアノード材料含浸区域に連続的に供給するステップにおいて、伝導性多孔質ロッド/フィラメントが、多孔質表面を有し、相互接続された電子伝導経路、および好ましくは少なくとも70体積%の細孔を含むステップと;(B)湿潤アノード活性材料-電解質混合物を少なくとも1つの多孔質表面から電気伝導性多孔質ロッド中に含浸させて電極を形成するステップとを含む。例えば、湿潤アノード活性材料混合物は、液体電解質と、黒鉛粒子、炭素粒子、Siナノ粒子、Snナノ粒子、またはリチウムイオン電池もしくはナトリウムイオン電池のあらゆる他の一般に使用されるアノード活性材料のプレリチウム化またはプレナトリウム化されたバージョンから好ましくは選択されるアノード活性材料とを含む。これらのアノード活性材料は、伝導性添加剤粒子とともに微粒子形態および複数の粒子にすることができ、容易に液体電解質と混合して、伝導性多孔質層中に含浸させるための湿潤アノード活性材料混合物(例えばスラリ形態)を形成することができる。対応するカソードは、EDLC型活性材料(例えば活性炭または単離グラフェンシート)を含むことができ、酸化還元対の相手材料(本質的に伝導性の共役ポリマーまたは遷移金属酸化物など)を含む場合も含まない場合もある。
【0083】
リチウムイオンキャパシタ(LIC)では、アノード活性材料は:(a)天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、および炭素のプレリチウム化された粒子;(b)ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、およびカドミウム(Cd)のプレリチウム化された粒子またはコーティング;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、またはCdと別の元素とのプレリチウム化された合金または金属間化合物において、化学量論的または非化学量論的である合金または化合物;(d)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn、またはCd、およびそれらの混合物もしくは複合材料のプレリチウム化された酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、およびテルル化物;ならびに(e)プレリチウム化されたグラフェンシート;ならびにそれらの組合せからなる群から選択することができる。プレリチウム化は、作用電極としてグラフェンシートの圧縮塊および対極としてリチウム金属を使用することによって電気化学的に行うことができる。プレリチウム化は、リチウムの粉末またはチップをアノード活性材料(例えばSi粒子)および伝導性添加剤粒子とともに液体電解質中に加えることによって行うこともできる。
【0084】
ナトリウムイオンキャパシタでは、アノード活性材料は、石油コークス、カーボンブラック、非晶質炭素、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、鋳型炭素、中空カーボンナノワイヤ、中空炭素球、もしくはチタネートのプレナトリウム化されたバージョン、またはNaTi2(PO4)3、Na2Ti3O7、Na2C8H4O4、Na2TP、NaxTiO2(x=0.2~1.0)、Na2C8H4O4、カルボキシレート系材料、C8H4Na2O4、C8H6O4、C8H5NaO4、C8Na2F4O4、C10H2Na4O8、C14H4O6、C14H4Na4O8、またはそれらの組合せから選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含む。
【0085】
ナトリウムイオンキャパシタでは、アノード活性材料は:(a)ナトリウムドープされたケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、カドミウム(Cd)、およびそれらの混合物;(b)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物のナトリウムを含有する合金または金属間化合物;(c)Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ti、Co、Ni、Mn、Cd、およびそれらの混合物もしくは複合材料のナトリウムを含有する酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物、テルル化物、またはアンチモン化物;(d)ナトリウム塩;ならびに(e)ナトリウムまたはカリウムがあらかじめ充填されたグラフェンシートの材料の群から選択されるナトリウムインターカレーション化合物を含む。プレナトリウム化は、作用電極としてグラフェンシートの圧縮塊および対極としてナトリウム金属を使用することによって行うことができる。プレナトリウム化は、リチウムの粉末またはチップをアノード活性材料(例えばSn粒子)および伝導性添加剤粒子とともに液体電解質中に加えることによって行うこともできる。
【0086】
バルクの天然黒鉛は、各黒鉛粒子が、隣接する黒鉛単結晶との境界を定める結晶粒界(非晶質または欠陥の領域)を有する複数の結晶粒(結晶粒は黒鉛単結晶または微結晶である)から構成される3D黒鉛材料である。各結晶粒は、互いに平行に配向する複数のグラフェン面から構成される。黒鉛微結晶中のグラフェン面は2次元の六角形格子を占有する炭素原子から構成される。特定の結晶粒または単結晶中では、グラフェン面は、結晶学的c方向(グラフェン面または底面に対して垂直)に積層されvan der Waal力によって結合する。1つの結晶粒中の全てのグラフェン面が互いに平行であるが、典型的には、ある結晶粒中のグラフェン面と、隣接する結晶粒中のグラフェン面とは、異なる方向に傾いている。言い換えると、黒鉛粒子中の種々の結晶粒の方向は、典型的には結晶粒ごとに異なる。
【0087】
面間ファンデルワールス力を克服することができると仮定して、天然または人造黒鉛粒子中の黒鉛結晶の構成グラフェン面を剥離し、抽出または単離して、六角形を成す炭素原子の個々のグラフェンシートを得ることができ、これらのシートは単原子厚である。炭素原子の単離された個々のグラフェン面は、一般に、単層グラフェンと呼ばれる。厚さ方向で約0.3354nmのグラフェン面間隔でファンデルワールス力によって結合された複数のグラフェン面の積層は、一般に多層グラフェンと呼ばれる。多層グラフェンプレートレットは、最大300層のグラフェン面(100nm未満の厚さ)、しかしより典型的には最大30層のグラフェン面(10nm未満の厚さ)、さらにより典型的には最大20層のグラフェン面(7nm未満の厚さ)、および最も典型的には最大10層のグラフェン面(科学界では一般に数層グラフェンと呼ばれる)を有する。単層グラフェンおよび多層グラフェンシートは、
図2に示す通り、総称して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンシート/プレートレット(総称してNGP)は、0Dフラーレン、1D CNTまたはCNF、および3D黒鉛とは異なる新しいクラスのカーボンナノ材料(2Dナノカーボン)である。特許請求の範囲を定義する目的で、また当技術分野で一般に理解されるように、グラフェン材料(単離されたグラフェンシート)は、カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノファイバ(CNF)ではない(それらを含まない)。
【0088】
本発明者らの研究グループは、2002年にはグラフェン材料および関連する製造方法の開発の先駆者であった:(1)B.Z.JangおよびW.C.Huang、“Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許第7,071,258号明細書(07/04/2006)、2002年10月21日に出願;(2)B.Z.Jangら、“Process for Producing Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許出願第10/858,814号明細書(06/03/2004);および(3)B.Z.Jang、A.Zhamu、およびJ.Guo、“Process for Producing Nano-scaled Platelets and Nanocomposites”、米国特許出願第11/509,424号明細書(08/25/2006)。
【0089】
1つの方法では、
図4(A)および
図4(B)(概略図)に示されるように、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸および/または酸化剤でインターカレーションして黒鉛インターカレーション化合物(GIC)または酸化黒鉛(GO)を得ることによって得られる。GICまたはGO中のグラフェン面間の間隙空間に化学種または官能基が存在することが、グラフェン間隔(d
002;X線回折によって決定される)を増加させる働きをし、それにより、通常であればc軸方向に沿ってグラフェン面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に減少させる。GICまたはGOは、硫酸、硝酸(酸化剤)、および別の酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウム)の混合物中に天然黒鉛粉末(
図4(B)での参照番号100)を浸漬することによって生成されることが最も多い。インターカレーション手順中に酸化剤が存在する場合、得られるGIC(102)は、実際には、ある種の酸化黒鉛(GO)粒子である。次いで、このGICまたはGOを繰り返し洗浄し、水中ですすいで余剰の酸を除去すると、酸化黒鉛懸濁液または分散液が得られ、これは、水中に分散された、離散した視覚的に区別可能な酸化黒鉛粒子を含む。グラフェン材料を製造するために、このすすぎステップ後に2つの処理ルートの一方をたどることができ、以下に簡単に説明する。
【0090】
ルート1は、本質的に乾燥GICまたは乾燥酸化黒鉛粒子の塊である「膨張黒鉛」を得るために懸濁液から水を除去することを含む。膨張黒鉛を典型的には800~1,050℃の範囲内の温度に約30秒~2分間曝すと、GICは、30~300倍に急速に体積膨張して、「黒鉛ワーム」(104)を形成する。黒鉛ワーム(104)はそれぞれ、剥離されてはいるがほとんど分離されておらず、相互接続されたままの黒鉛フレークの集合である。
【0091】
ルート1Aでは、これらの黒鉛ワーム(剥離された黒鉛または「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークのネットワーク」)を再び圧縮して、典型的には0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲内の厚さを有する可撓性黒鉛シートまたは箔(106)を得ることができる。代替として、100nmよりも厚い(したがって定義によりナノ材料ではない)黒鉛フレークまたはプレートレットを主として含むいわゆる「膨張黒鉛フレーク」(108)を製造する目的で、低強度エアミルまたはせん断機を使用して黒鉛ワームを単に破砕することを選択することもできる。
【0092】
ルート1Bでは、同一出願人の米国特許出願第10/858,814号明細書(2004年3月6日)に開示されているように、剥離された黒鉛は、(例えば、超音波装置、高せん断ミキサ、高強度エアジェットミル、または高エネルギーボールミルを使用した)高強度の機械的せん断を受けて、分離された単層および多層グラフェンシート(総称してNGP112と呼ぶ)を形成する。単層グラフェンが0.34nmの薄さであり得る一方、多層グラフェンは、最大100nm、しかしより典型的には10nm未満の厚さを有することがある(一般に数層グラフェンと呼ばれる)。複数のグラフェンシートまたはプレートレットが、製紙法を使用して1枚のNGP紙として形成されることがある。このNGP紙は、本発明による方法で利用される多孔質グラフェン構造層の一例である。
【0093】
ルート2は、個々の酸化グラフェンシートを酸化黒鉛粒子から分離/単離する目的で、酸化黒鉛懸濁液(例えば、水中に分散された酸化黒鉛粒子)を超音波処理することを含む。これは、グラフェン面の離間距離が天然黒鉛での0.3354nmから高度に酸化された酸化黒鉛での0.6~1.1nmに増加されており、隣接する面を一体に保持するファンデルワールス力を大幅に弱めるという見解に基づいている。超音波出力は、完全に分離された、単離された、または離散した酸化グラフェン(GO)シートを形成するために、グラフェン面シートをさらに分離するのに十分なものでよい。次いで、これらの酸化グラフェンシートを化学的または熱的に還元して、「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができ、これは、典型的には、0.001重量%~10重量%、より典型的には0.01重量%~5重量%の酸素含有量を有し、最も典型的にはかつ好ましくは2重量%未満の酸素を含む。
【0094】
本出願の特許請求の範囲を定義する目的で、NGPまたはグラフェン材料は、単層および多層(典型的には10層未満)の純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープされた(例えば、BまたはNをドープされた)グラフェンの離散シート/プレートレットを含む。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは、典型的には0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOを含む)は、0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェンを除き、全てのグラフェン材料が、非炭素元素(例えば、O、H、N、B、F、Cl、Br、Iなど)を0.001重量%~50重量%含む。本明細書では、これらの材料を不純グラフェン材料と呼ぶ。
【0095】
純粋なグラフェンは、より小さい離散グラフェンシート(典型的には0.3μm~10μm)として、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相剥離または生成としても知られている)または超臨界流体剥離によって製造することができる。これらの方法は、当技術分野でよく知られている。
【0096】
酸化グラフェン(GO)は、反応容器内で、ある期間(出発材料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的には0.5~96時間)にわたって所望の温度で、出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば、天然黒鉛粉末)を酸化性液体媒体(例えば、硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に浸漬することによって得ることができる。上述したように、次いで、得られた酸化黒鉛粒子に熱剥離または超音波誘発剥離を施して、単離GOシートを生成することができる。次いで、これらのGOシートは、OH基を他の化学基(例えば、BrやNH2など)で置換することによって様々なグラフェン材料に変換することができる。
【0097】
本明細書では、ハロゲン化グラフェン材料群の一例として、フッ素化グラフェンまたはフッ化グラフェンが使用される。フッ素化グラフェンを生成するために採用されている2つの異なる手法がある。(1)あらかじめ合成されたグラフェンのフッ素化:この手法は、機械的剥離またはCVD成長によって用意されたグラフェンをXeF2またはFベースのプラズマなどのフッ素化剤で処理することを必要とする。(2)多層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離と液相剥離の両方を容易に達成することができる。
【0098】
低温で黒鉛インターカレーション化合物(GIC)CxF(2≦x≦24)が生成されるのに対し、高温でのF2と黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)nまたは(C2F)nをもたらす。(CF)nでは、炭素原子はsp3混成であり、したがって、フルオロカーボン層は波形であり、トランスリンクされたシクロヘキサンのいす型立体配座からなる。(C2F)nでは、C原子の半分のみがフッ素化され、隣接する炭素シートの対はどれもC-C共有結合により結合される。フッ素化反応に関する系統的研究から、得られたF/C比が、フッ素化温度、フッ素化ガス中のフッ素の分圧、ならびに黒鉛前駆体の物理的特性、例えば黒鉛化度、粒度、および比表面積に大きく依存することが示された。フッ素(F2)に加え、他のフッ素化剤も使用することができるが、入手できる文献のほとんどは、時としてフッ化物の存在下で、F2ガスによるフッ素化を含む。
【0099】
層状の前駆体材料を個々の層または数層の状態に剥離するためには、隣接する層間の引力を克服すること、および層をさらに安定させることが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によって、または特定の溶媒、界面活性剤、ポリマー、もしくはドナー-アクセプタ芳香族分子を使用する非共有結合修飾によって実現されることがある。液相剥離のプロセスは、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理を含む。
【0100】
グラフェンの窒素化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)でアンモニアに曝すことによって行うことができる。窒素化グラフェンは、水熱法によって、より低温で生成することもできる。これは、例えば、オートクレーブ内にGOおよびアンモニアを封止し、次いで温度を150~250℃に上昇させることによって行われる。窒素ドープされたグラフェンを合成する他の方法は、グラフェンに対する窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件下での酸化グラフェンのアンモノリシス、および様々な温度での酸化グラフェンおよび尿素の水熱処理を含む。
【0101】
上記の特徴は、以下のようにさらに詳細に記述および説明される。
図4(B)に示されるように、黒鉛粒子(例えば、100)は、典型的には、複数の黒鉛結晶または微粒子からなる。黒鉛結晶は、炭素原子の六方晶ネットワークの層面から構成されている。六角形状に配列された炭素原子のこれらの層平面は実質的に平坦であり、特定の結晶において互いに実質的に平行かつ等距離になるように配向または秩序化されている。一般にグラフェン層または基底面と呼ばれる六方晶構造の炭素原子のこれらの層は、弱いファンデルワールス力によってそれらの厚さ方向(結晶学的c軸方向)で弱く結合され、これらのグラフェン層の群は結晶として配列される。黒鉛結晶構造は通常、2つの軸または方向に関して特徴付けられる。すなわち、c軸方向およびa軸(またはb軸)方向である。c軸は、基底面に垂直な方向である。a軸またはb軸は、基底面に平行(c軸方向に垂直)な方向である。
【0102】
高配向黒鉛粒子は、結晶学的a軸方向に沿った長さL
a、結晶学的b軸方向に沿った幅L
b、および結晶学的c軸方向に沿った厚さL
cを有する相当なサイズの微結晶からなることができる。微結晶の構成グラフェン面は、互いに対して高度に配列または配向しており、したがって、これらの異方性構造によって、高度に方向性の多くの性質が生じる。例えば、微結晶の熱伝導率および電気伝導率は、面方向(a軸またはb軸方向)に沿っては大きいが、垂直方向(c軸)では比較的小さい。
図4(B)の左上部分に示されるように、黒鉛粒子中の異なる微結晶は典型的には異なる方向に配向し、したがって、複数の微結晶黒鉛粒子の特定の性質は、全ての構成微結晶の方向での平均値となる。
【0103】
平行なグラフェン層を保持する弱いファンデルワールス力により、天然黒鉛を処理してグラフェン層間の間隔をかなり開き、それにより、c軸方向での顕著な膨張を可能にし、したがって炭素層の層状特性が実質的に保持された膨張黒鉛構造を形成することができる。可撓性黒鉛を製造するための方法は、当技術分野でよく知られている。一般に、天然黒鉛のフレーク(例えば、
図4(B)での参照番号100)を酸溶液中にインターカレーションして、黒鉛インターカレーション化合物(GIC、102)を生成する。GICを洗浄し、乾燥させ、次いで、高温に短時間曝すことによって剥離させる。これにより、フレークは、それらの元の寸法の80~300倍まで黒鉛のc軸方向で膨張または剥離する。剥離された黒鉛フレークは、見た目が虫のようであり、したがって一般に黒鉛ワーム104と呼ばれる。大きく膨張されている黒鉛フレークのこれらのワームは、ほとんどの用途に関して、粘結剤を使用せずに、約0.04~2.0g/cm
3の典型的な密度を有する膨張黒鉛の粘着性または一体型のシート、例えばウェブ、紙、ストリップ、テープ、箔、マットなど(典型的には「可撓性黒鉛」106と呼ばれる)として形成することができる。
【0104】
硫酸などの酸は、GICを得るためにグラフェン面間の空間に浸透する唯一のタイプのインターカレーション剤(インターカラント)というわけではない。黒鉛をステージ1、ステージ2、ステージ3などにインターカレーションするために、アルカリ金属(Li、K、Na、Cs、およびそれらの合金または共晶)など多くの他のタイプのインターカレート剤を使用することができる。ステージnは、n個のグラフェン面ごとに1つのインターカラント層があることを示唆する。例えば、ステージ1のカリウムインターカレーションされたGICは、グラフェン面ごとに1つのK層があることを意味する。すなわち、G/K/G/K/G/KG…の順列で2つの隣接するグラフェン面間に挿入された1つのK原子層を見つけることができる。ここで、Gはグラフェン面であり、Kはカリウム原子面である。ステージ2のGICは、GG/K/GG/K/GG/K/GG…の順列を有する。ステージ3のGICは、GGG/K/GGG/K/GGG…の順列を有する。以下同様である。次いで、これらのGICを水または水-アルコール混合物と接触させて、剥離された黒鉛および/または分離/単離されたグラフェンシートを生成することができる。
【0105】
剥離された黒鉛ワームに、高強度エアジェットミル、高強度ボールミル、または超音波デバイスを使用した高強度の機械的せん断/分離処理を施して、分離されたナノグラフェンプレートレット(NGP)を生成することができ、グラフェンプレートレットは全て、100nmよりも薄く、大抵は10nmよりも薄く、多くの場合には単層グラフェンである(
図4(B)では参照番号112としても示されている)。NGPは、グラフェンシートまたは複数のグラフェンシートから構成され、各シートは、炭素原子の2次元の六角形構造である。フィルムまたは紙製造方法を使用して、単層および/または数層のグラフェンまたは酸化グラフェンの離散シート/プレートレットを含む複数のNGPの塊をグラフェンフィルム/紙(
図4(B)の参照番号114)に形成することができる。代替として、低強度せん断では、黒鉛ワームは、厚さ100nm超のいわゆる膨張黒鉛フレーク(
図4(B)での参照番号108)に分離される傾向がある。樹脂バインダーを使用し、または使用せずに、製紙またはマット製造方法を用いて、これらのフレークから黒鉛紙またはマット106を形成することができる。
【0106】
個別のグラフェンシートは非常に高い比表面積を有するにもかかわらず、グラフェンシートは互いに再積層、または互いに重なり合う傾向が強く、それによって、電解質が到達可能な比表面積が大幅に減少するため、比静電容量が大幅に減少する。この再積層の傾向は、スーパーキャパシタセル電極の製造プロセス中に特に強くなる。このプロセス中、グラフェンシートは、別の伝導性添加剤および樹脂バインダー(例えばPVDF)とともに、溶媒(典型的にはNMP)中に分散させることでスラリが形成され、次にこれが固体集電体(例えばAl箔)の表面上にコーティングされる。次に溶媒を除去する(蒸発させる)と、活性材料電極の乾燥層が形成され、次にこれを圧縮機中のローラーの組に通して、電極層を固化させる。これらの乾燥および圧縮の手順によって、激しいグラフェン再積層が誘発される。多くの科学報告書では、元の粉末形態のグラフェンシートでも非常に高い比表面積を示すことが見出されているが、結果として得られる電極のみは予期せぬ低い比静電容量を示す。理論的には、単層グラフェンベースのスーパーキャパシタの最大比静電容量は550F/gであるが(EDLC構造に基づき、酸化還元対または擬似容量は含まない)、実験的に実現された値はわずか90~170F/gの範囲内であった。これはスーパーキャパシタの分野における長年にわたる課題となっている。
【0107】
本発明は、このグラフェンシートの再積層の問題を克服するための非常に革新的で明快な方法を提供する。本発明による方法では、スラリコーティング、乾燥、および圧縮の手順を行う必要が完全になくなる。環境に望ましくない溶媒(すなわちNMP)を含むスラリを形成する代わりに、本方法は、グラフェンシートを液体電解質中に分散させて、電極活性材料-液体電解質混合物のスラリを形成することを伴う。次にこの混合物スラリが伝導性発泡体ベースの集電体の細孔中に注入され、後の乾燥および圧縮は不要であり、グラフェンシートが互いに再積層する可能性はほとんどまたは全くない。さらに、グラフェンシートは、液体電解質中に既にあらかじめ分散しており、これは実質的に全てのグラフェン表面が必然的に電解質に到達可能であり、「乾燥ポケット」が残らないことを意味する。この方法によって、非常に圧縮された方法でグラフェンシート(間に電解質を有する)を充填することも可能であり、それによって予期せぬ高い電極活性材料タップ密度を得ることができる。
【0108】
上記方法に使用されるグラフェンシートは、別々にまたは組み合わせて、以下の処理を行うことができる:
(a)原子種、イオン種、または分子種を用いた化学官能化またはドーピング。有用な表面官能基としては、キノン、ヒドロキノン、第4級化芳香族アミン、メルカプタン、またはジスルフィドを挙げることができる。この種類の官能基はグラフェンベースのスーパーキャパシタに擬似容量を付与することができる。
(b)本来伝導性のポリマー(ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびそれらの誘導体などの伝導性ポリマーは本発明における使用のための良い選択となる)を用いたコーティングまたはグラフト;これらの処理は、酸化還元反応などの擬似容量効果によって静電容量値をさらに増加させることを意図している。
(c)グラフェンシートと酸化還元対を形成し、それによって電極に擬似容量を付与するための、RuO2、TiO2、MnO2、Cr2O3、およびCo2O3などの遷移金属酸化物または硫化物の堆積;および
(d)さらなる表面を形成し、場合によりこれらの表面に官能性化学基を付与するための活性化処理(カーボンブラック材料の活性化と類似)の実施。この活性化処理は、CO2の物理的活性化、KOHの化学的活性化、または硝酸、フッ素、もしくはアンモニアプラズマへの曝露によって行うことができる。
【0109】
本発明者らは、本発明による活性材料-電解質混合物含浸方法によって製造される本発明によるスーパーキャパシタ中に多種多様の2次元(2D)無機材料を使用できることを発見した。層状材料は、予期せぬ電子特性と、スーパーキャパシタ用途に重要な高比表面積とを示すことができる2D系の種々の供給源となる。黒鉛は最もよく知られた層状材料であるが、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、遷移金属酸化物(TMO)、および広範囲の他の化合物、例えばBN、Bi2Te3、およびBi2Se3も2D材料の可能性のある供給源である。
【0110】
単層または数層(最大20層)の非グラフェン2Dナノ材料は、以下のような幾つかの方法によって製造することができる。機械的切断、レーザーアブレーション(例えば、レーザパルスを使用してTMDを単一層までアブレーションする)、液相剥離、および薄膜技法の合成、例えば、PVD(例えば、スパッタリング)、蒸着、気相エピタキシ、液相エピタキシ、化学蒸着エピタキシ、分子線エピタキシ(MBE)、原子層エピタキシ(ALE)、およびそれらのプラズマ型。
【0111】
驚くべきことに本発明者らは、これらの無機材料は、通常は電気非伝導性であると考えられ、スーパーキャパシタ電極材料の候補と見なされないが、これらの無機材料の大部分は、2Dナノディスク、ナノプレートレット、ナノベルト、またはナノリボンの形態である場合に、顕著なEDLC値を示すことを発見した。これらのスーパーキャパシタンス値は、これらの2Dナノ材料が少量のナノグラフェンシート(特に単層グラフェン)とともに使用される場合に非常に高くなる。必要な単層グラフェンは、0.1重量%~50重量%、より好ましくは0.5重量%~25重量%、最も好ましくは1重量%~15重量%となりうる。
【0112】
本発明では、スーパーキャパシタ中に使用できる液体電解質の種類:水性、有機、ゲル、およびイオン液体に対する制限はない。典型的には、スーパーキャパシタの電解質は、溶媒と、陽イオン(カチオン)および陰イオン(アニオン)に解離して電解質を電気伝導性にする溶存化学物質(例えば塩)とからなる。電解質が含むイオンが多いほど、伝導性が良好になり、これも静電容量に影響する。スーパーキャパシタ中で、電解質は、ヘルムホルツ二重層(電気二重層)中の単層を分離するための分子を供給し、擬似容量のためのイオンを送給する。
【0113】
水は、無機化学物質を溶解させるための比較的良好な溶媒である。(H2SO4)などの酸、水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ、または第4級ホスホニウム塩、過塩素酸ナトリウム(NaClO4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、もしくは六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)などの塩とともに加えると、水によって比較的高い伝導率値が得られる。水性電解質は、電極当たり1.15Vの解離電圧、および比較的低い動作温度範囲を有する。水電解質ベースのスーパーキャパシタは、低いエネルギー密度を示す。
【0114】
あるいは、電解質は、有機溶媒、例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトンと、第4級アンモニウム塩またはアルキルアンモニウム塩を有する溶質、たとえばテトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(N(Et)4BF4)またはテトラフルオロホウ酸トリエチル(メチル(metyl))(NMe(Et)3BF4)とを含むことができる。有機電解質は、水性電解質よりも費用がかかるが、典型的には電極当たり1.35Vのより高い解離電圧(2.7Vのキャパシタ電圧)、およびより高い温度範囲を有する。有機溶媒の電気伝導率が低い(10~60mS/cm)ために電力密度が低くなるが、エネルギー密度は電圧の2乗に比例するので、エネルギー密度はより高くなる。
【0115】
イオン液体はイオンのみから構成されている。イオン液体は、所望の温度を超えたときには融解状態または液体状態になる低融解温度の塩である。例えば、塩は、その融点が100℃未満である場合にイオン液体とみなされる。融解温度が室温(25℃)以下である場合、塩は室温イオン液体(RTIL)と呼ばれる。IL塩は、大きなカチオンと電荷非局在化アニオンとの組合せによる弱い相互作用によって特徴付けられる。これは、可撓性(アニオン)および非対称性(カチオン)による結晶化の傾向を低減する。
【0116】
典型的なよく知られているイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)カチオンと、N,N-ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(TFSI)アニオンとの組合せによって形成される。この組合せにより、最大約300~400℃で、多くの有機電解質溶液と同等のイオン導電率、ならびに低い分解性および低い蒸気圧を有する流体が得られる。これは、一般に低い揮発性および非引火性、したがって電池に関してはるかに安全な電解質を示唆する。
【0117】
イオン液体は、基本的には、多様な成分の調製が容易であることにより、本質的に無制限の数の構造変化を生じる有機イオンから構成される。したがって、様々な種類の塩を使用して、所与の用途に合わせて所望の特性を有するイオン液体を設計することができる。これらは、とりわけ、カチオンとしてのイミダゾリウム、ピロリジニウム、および第四級アンモニウム塩と、アニオンとしてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、およびヘキサフルオロホスフェートとを含む。それらの組成に基づいて、イオン液体は、基本的には非プロトン性型、プロトン性型、および双性イオン型を含む異なるクラスに入り、それぞれが特定の用途に適している。
【0118】
室温イオン液体(RTIL)の一般的なカチオンとしては、限定はしないが、テトラアルキルアンモニウム、ジ-、トリ-、およびテトラ-アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、ジアルキルピペリジニウム、テトラアルキルホスホニウム、ならびにトリアルキルスルホニウムが挙げられる。RTILの一般的なアニオンとしては、限定はしないが、BF4
-、B(CN)4
-、CH3BF3
-、CH2CHBF3
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、n-C3F7BF3
-、n-C4F9BF3
-、PF6
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、N(SO2CF3)2
-、N(COCF3)(SO2CF3)-、N(SO2F)2
-、N(CN)2
-、C(CN)3
-、SCN-、SeCN-、CuCl2
-、AlCl4
-、F(HF)2.3
-などが挙げられる。相対的に言えば、イミダゾリウムまたはスルホニウムベースのカチオンと、AlCl4
-、BF4
-、CF3CO2
-、CF3SO3
-、NTf2
-、N(SO2F)2
-、またはF(HF)2.3
-などの錯体ハロゲン化物アニオンとの組合せが、良好な動作伝導率を有するRTILをもたらす。
【0119】
RTILは、高い固有のイオン導電率、高い熱安定性、低い揮発性、低い(実質的にゼロの)蒸気圧、非引火性、室温よりも上および下の広い温度範囲で液体を維持する機能、高い極性、高い粘度、および広い電気化学的窓など、典型的な特性を有することができる。高い粘度を除いて、これらの特性は、スーパーキャパシタにおける電解質成分(塩および/または溶媒)としてRTILを使用する際に望ましい特性である。
【0120】
擬似キャパシタ(酸化還元対の形成により擬似容量が生じるように作用するスーパーキャパシタ)を形成するためにアノード活性材料またはカソード活性材料は、グラフェンシートと、金属酸化物、伝導性ポリマー、有機材料、非グラフェン炭素材料、無機材料、またはそれらの組合せから選択される酸化還元対の相手材料とを含むように計画することができる。還元酸化グラフェンシートと対を形成できる多くの材料が当技術分野において周知である。この研究において、本発明者らは、グラフェンハロゲン化物(例えばフッ化グラフェン)、グラフェン水素化物、および窒素化グラフェンが多種多様の相手材料とともに機能して、擬似容量を得るための酸化還元対を形成できることに気付いた。
【0121】
例えば、このような役割を果たす金属酸化物または無機材料としては、RuO2、IrO2、NiO、MnO2、VO2、V2O5、V3O8、TiO2、Cr2O3、Co2O3、Co3O4、PbO2、Ag2O、MoCx、Mo2N、またはそれらの組合せが挙げられる。一般に、無機材料は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属ダイカルコゲナイド、またはそれらの組合せから選択することができる。好ましくは、所望の金属酸化物または無機材料は、ナノワイヤ、ナノディスク、ナノリボン、またはナノプレートレットの形態のニオブ、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タンタル、タングステン、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、マンガン、鉄、またはニッケルの酸化物、ダイカルコゲナイド、トリカルコゲナイド、硫化物、セレン化物、またはテルル化物から選択される。これらの材料は、グラフェン材料のシートとの単純な混合物の形態であってよいが、好ましくは湿潤活性材料混合物(例えばスラリ形態)を形成し伝導性多孔質層の細孔中に含浸される前にグラフェンシート表面に物理的または化学的に結合するナノ粒子またはナノコーティングの形態であってよい。
【0122】
本発明によるロープ型電池は、多くの独自の特徴を有し、これらの特徴および利点の一部を以下にまとめている:
定義によると、ロープ型スーパーキャパシタは、少なくとも1つのロッド形状もしくはフィラメント形状のアノードと、1つのロッド形状もしくはフィラメント形状のカソードとが組み合わされてひもまたは撚り糸となったものを含むスーパーキャパシタを意味する。このスーパーキャパシタは、アスペクト比(長さ対直径または長さ対厚さの比)が少なくとも10および好ましくは少なくとも20となる長さと直径または厚さとを有する。ロープ型スーパーキャパシタは1mを超え、またはさらには100mを超える長さを有することができる。この長さは1μmの短さであってよいが、典型的には10μm~10m、より典型的には数マイクロメートル~数メートルであってよい。実際に、この種類のロープ型スーパーキャパシタの長さに対する理論的制限はない。
【0123】
本発明によるロープ型スーパーキャパシタは可撓性であるので、このスーパーキャパシタは、10cmを超える曲率半径を有するように容易に曲げることができる。このスーパーキャパシタは、乗り物内の間隙または内部区画の形状に実質的に適合するように曲げることができる。この間隙または内部区画は、トランク、ドア、ハッチ、スペアタイヤ区画、シート下の領域、またはダッシュボード下の領域であってよい。スーパーキャパシタは、乗り物から取り外し可能であり、異なる間隙または内部区画の形状に適合するように曲げることができる。
【0124】
本発明のロープ型スーパーキャパシタの1つ以上のユニットを衣類、ベルト、運搬用ストラップ、かばんのストラップ、兵器のストラップ、楽器のストラップ、ヘルメット、帽子、ブーツ、フットカバー、手袋、リストカバー、時計のバンド、宝石類、動物用カラー、または動物用ハーネスの中に組み込むことができる。
【0125】
本発明のロープ型スーパーキャパシタの1つ以上のユニットは、取り外し可能に組み込まれた衣類、ベルト、運搬用ストラップ、かばんのストラップ、兵器のストラップ、楽器のストラップ、ヘルメット、帽子、ブーツ、フットカバー、手袋、リストカバー、時計のバンド、宝石類、動物用カラー、または動物用ハーネスであってよい。
【0126】
さらに、本発明によるロープスーパーキャパシタは、中空の自転車フレームの内半径に適合する。
【0127】
以下では、本発明を実施する最良の形態を示すために、多数の異なるタイプのアノード活性材料、カソード活性材料、および導電性多孔質ロッド(例えば、黒鉛発泡体、グラフェン発泡体、および金属発泡体)の例を提供する。これらの例示的な実施例、ならびに本明細書および図面の他の箇所は、個別にまたは組合せて、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分すぎるものである。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0128】
実施例1:活性材料-電解質混合物を収容するための多孔質集電体としての電子伝導性多孔質ロッドまたはフィラメントの説明的な例
様々な種類の金属発泡体、炭素発泡体および微細金属ウェブは、アノードまたはカソード中の導電性多孔質ロッド(集電体として機能する)として使用するために市販されており;例えばNi発泡体、Cu発泡体、Al発泡体、Ti発泡体、Niメッシュ/ウェブ、ステンレス鋼繊維メッシュなどである。金属被覆ポリマー発泡体および炭素発泡体も集電体として使用され得る。目に見える大きさのロープ型の可撓性で形状適合性のスーパーキャパシタを製造する場合、これらの伝導性多孔質ロッドの最も望ましい厚さ/直径は50~1000μmであり、好ましくは100~800μmであり、より好ましくは200~600μmである。微細なロープ型スーパーキャパシタ(例えば100nm~100μmの直径を有する)を製造する場合、グラフェン発泡体、グラフェンエアロゲル発泡体、多孔質炭素繊維(例えば、ポリマー繊維のエレクトロスピニング、そのポリマー繊維の炭化、および得られた炭素繊維の活性化によって製造される)、および多孔質黒鉛繊維を用いて、電極活性材料および電解質の混合物を収容することができる。
【0129】
実施例2:Ni発泡体テンプレート上に支持されたNi発泡体およびCVDグラフェン発泡体ベースの多孔質ロッド
CVDグラフェン発泡体を製造するための手順は、以下の公開されている文献で開示されるものから適合した:Chen,Z.et al.“Three-dimensional flexible and conductive interconnected graphene networks grown by chemical vapor deposition,”Nature Materials,10,424-428(2011)。ニッケル発泡体、ニッケルの相互接続された3D足場を有する多孔質構造を、グラフェン発泡体の成長のためのテンプレートとして選択した。簡潔には、周囲圧力下にて1000℃でCH4を分解することによって炭素をニッケル発泡体に導入し、次いでニッケル発泡体の表面にグラフェンフィルムを堆積させた。ニッケルとグラフェンの熱膨張係数の相違により、グラフェンフィルムに波形や皺が生じた。この実施例で形成された4つのタイプの発泡体、すなわちNi発泡体、CVDグラフェン被覆Ni発泡体、CVDグラフェン発泡体(Niはエッチング除去される)、および導電性ポリマー結合CVDグラフェン発泡体を、本発明によるリチウム電池での集電体として使用した。
【0130】
支持Ni発泡体からグラフェン発泡体を回収(分離)するために、Niフレームをエッチング除去した。Chenらによって提案された手順では、高温HCl(またはFeCl3)溶液によってニッケル骨格をエッチング除去する前に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の薄層を支持体としてグラフェンフィルムの表面に堆積して、ニッケルエッチング中にグラフェンネットワークが崩壊するのを防止した。高温のアセトンによってPMMA層を注意深く除去した後、脆弱なグラフェン発泡体試料が得られた。PMMA支持層の使用は、グラフェン発泡体の自立フィルムの作製に重要であると考えられていた。その代わりに、粘結剤樹脂として導電性ポリマーを使用して、グラフェンを一体に保持するとともに、Niをエッチングで除去した。グラフェン発泡体またはNi発泡体の厚さ/直径の範囲は35μm~600μmであった。
【0131】
本発明において使用されるNi発泡体またはCVDグラフェン発泡体は、アノードまたはカソードまたはその両方の構成要素(アノードまたはカソードの活性材料+任意選択の導電性添加剤+液体電解質)を収容するための導電性多孔質ロッド(CPR)として意図される。例えば、有機液体電解質(例えばPC-EC中に溶解させた1~5.5MのLiPF
6)中に分散させたプレリチウム化Siナノ粒子(リチウムイオンキャパシタのアノード活性材料として)からゲル状塊を形成し、これをフィーダーローラーから連続的に供給されるNi発泡体の多孔質表面に送給して、アノード電極(
図1(D)の概略
図Aのように)を作製した。
【0132】
同じ液体電解質中に分散させたグラフェンシート(長さ300~750nm)からカソードスラリを形成し、これを連続Ni発泡体ロッドの多孔質表面上に噴霧してカソード電極を形成した。発泡体細孔中に含浸させたプレリチウム化ナノ粒子-電解質混合物を含む多孔質発泡体ロッド(第1の電極)を多孔質セパレータ層(多孔質PE-PPコポリマー)で包み込んだ。次にこれら2つの電極を組み合わせて撚り糸を形成し、次に薄いポリマーシース中に入れてロープ型リチウムイオンキャパシタを得た。
【0133】
これとは別に、単離グラフェンシートと液体電解質との混合物をグラフェン発泡体のロッドの細孔中に含浸させ、次にこれをセパレータフィルムで包み込んで、1つの電極を作製した。同じ多孔質ロッドおよび同じ混合物の別の電極を同様の方法で作成した。次にこれら2つのロッドを組み合わせて撚り糸を作製し、次にこれをプラスチックシース中に入れた。
【0134】
実施例3:ピッチベースの炭素発泡体からの黒鉛発泡体ベースの導電性多孔質ロッド
ピッチパウダー、顆粒、またはペレットを、発泡体の所望の最終形状を有するアルミニウム鋳型に入れる。Mitsubishi ARA-24メソフェーズピッチを利用した。試料を1トール未満に排気し、次いで約300℃の温度に加熱する。この時点で、真空を解放して窒素ブランケットとし、次いで1,000psiまでの圧力を加えた。次いで、系の温度を800℃に上昇させた。これは2℃/分の速度で行った。温度を少なくとも15分間保って浸漬を実現し、次いで炉の電力を切って約1.5℃/分の速度で室温まで冷却し、それと共に約2psi/分の速度で圧力を解放した。最終的な発泡体の温度は、630℃および800℃であった。冷却サイクル中、圧力は大気条件まで徐々に解放される。次いで、発泡体を窒素ブランケット下で1050℃まで熱処理(炭化)し、次いで、黒鉛るつぼ内で、アルゴン中で2500℃および2800℃(黒鉛化)まで別々に熱処理した。黒鉛発泡体ロッドは75~500μmの厚さ範囲で利用可能である。
【0135】
実施例4:天然黒鉛粉末からの酸化グラフェン(GO)および還元酸化グラフェン(RGO)ナノシートの調製
Huadong Graphite Co.(中国、青島)製の天然黒鉛を出発材料として使用した。よく知られているmodified Hummers法に従うことによってGOが得られた。この方法は、2つの酸化段階を含んでいた。典型的な手順において、以下の条件で第1の酸化を実現した。1100mgの黒鉛を1000mLの沸騰フラスコに入れた。次いで、K2S2O8、20gのP2O5、および400mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)をフラスコに加えた。混合物を還流下で6時間加熱し、次いで室温で20時間安置した。酸化黒鉛を濾過し、中性pHになるまで多量の蒸留水ですすいだ。この最初の酸化の終わりに、ウェットケーキ状物質が回収された。
【0136】
第2の酸化プロセスでは、前に収集されたウェットケーキを、69mLの濃縮H2SO4水溶液(96%)を含む沸騰フラスコに入れた。9gのKMnO4をゆっくりと加えながら、フラスコを氷浴内で保った。過熱を避けるように注意した。得られた混合物を35℃で2時間撹拌し(試料の色が暗い緑色に変わった)、続いて140mLの水を加えた。15分後、420mLの水および15mLの30wt%H2O2水溶液を加えることによって反応を停止させた。この段階での試料の色は、明るい黄色に変わった。金属イオンを除去するために、混合物を濾過し、1:10HCl水溶液ですすいだ。収集した物質を2700gで穏やかに遠心分離し、脱イオン水ですすいだ。最終生成物は、乾燥抽出物から推定されるように、1.4wt%のGOを含むウェットケーキであった。その後、脱イオン水で希釈したウェットケーキ物質を軽く超音波処理することによって、GOシートの液体分散液を得た。
【0137】
純水の代わりに界面活性剤水溶液でウェットケーキを希釈することによって、界面活性剤で安定化されたRGO(RGO-BS)を得た。Sigma Aldrichによって提供されているコール酸ナトリウム(50wt%)とデオキシコール酸ナトリウム(50wt%)の塩の市販の混合物を使用した。界面活性剤の重量画分は、0.5wt%であった。全ての試料に関してこの画分を一定に保った。13mmステップディストラクタホーンと、3mmテーパ付きマイクロチップとを備え、20kHzの周波数で動作するBranson Sonifier S-250Aを使用して超音波処理を行った。例えば、0.1wt%のGOを含む水溶液10mLを10分間超音波処理し、その後、2700gで30分間遠心分離して、溶解していない大きな粒子、凝集物、および不純物を除去した。0.1wt%のGO水溶液10mLを50mL沸騰フラスコに入れることを含む方法に従うことによって、RGOを生成するために、上記のようにして得られたGOの化学的還元を行った。次いで、界面活性剤によって安定化させた混合物に、35wt%のN2H4(ヒドラジン)水溶液10μLおよび28wt%のNH4OH(アンモニア)水溶液70mLを加えた。溶液を90℃に加熱し、1時間還流させた。反応後に測定されたpH値は約9だった。還元反応中、試料の色は暗黒色に変わった。
【0138】
幾つかの本発明によるスーパーキャパシタではアノードおよびカソードのいずれかまたは両方の電極活性材料としてRGOを使用した(単独または酸化還元対の相手材料との併用)。アノードおよびカソードをそれぞれ形成するために、湿潤アノード活性-電解質混合物およびカソード活性材料-電解質混合物を黒鉛発泡体の表面に別々に送給した。次に、1つのフィラメント状電極(例えばアノード)と1つのフィラメント状電極(カソード)とを組み合わせてひも、撚り糸などを形成して、ロープ型電池を製造した。
【0139】
比較のために、従来の電極を製造するためにスラリコーティングおよび乾燥手順を行った。次いで、電極と、2つの乾燥した電極間に配設されたセパレータとを組み立てて、Al-プラスチック積層パッケージングエンベロープ内に入れ、続いて液体電解質を注入して、従来のスーパーキャパシタセルを形成した。
【0140】
実施例5:純粋なグラフェンのシート(酸素0%)の調製
個別のグラフェン面の伝導率を低下させるように作用するGOシート中の高欠陥の集団の可能性を認識しているので、本発明者らは、純粋なグラフェンシート(酸化されず酸素を含まず、ハロゲン化されずハロゲンを含まない、など)を使用して、電気二重層キャパシタ(EDLCスーパーキャパシタ)中に組み込むための高い電気伝導率および熱伝導率を有する活性材料を得ることができるかどうかを調べることにした。プレリチウム化された純粋なグラフェンおよびプレナトリウム化された純粋なグラフェンも、それぞれリチウムイオンキャパシタおよびナトリウムイオンキャパシタのアノード活性材料として使用した。直接超音波処理または液相製造法を使用することによって、純粋なグラフェンのシートを製造した。
【0141】
典型的な手順では、約20μm以下のサイズに粉砕した5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(0.1重量%の分散剤を含む。DuPont社製のZonyl(登録商標)FSO)中に分散させて、懸濁液を得た。グラフェンシートの剥離、分離、およびサイズ減少のために、85Wの超音波エネルギーレベル(Branson S450 Ultrasonicator)を15分~2時間の期間にわたって使用した。得られたグラフェンシートは、一度も酸化されておらず、酸素を含まず、比較的欠陥のない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、非炭素元素を本質的に含まない。
【0142】
本発明による手順と、スラリコーティング、乾燥、および層の積層の従来手順との両方を用いて、純粋なグラフェンシートを電解質とともに、スーパーキャパシタ中に組み込んだ。
【0143】
実施例6:擬似スーパーキャパシタのカソード活性材料としてのMoS2/RGOハイブリッド材料の調製
この実施例では、多様な無機材料を調べた。例えば、200℃で、酸化された酸化グラフェン(GO)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液中での(NH4)2MoS4とヒドラジンとの1段階のソルボサーマル反応により、超薄MoS2/RGOハイブリッドを合成した。典型的な手順では、10mlのDMF中に分散された10mgのDMFに22mgの(NH4)2MoS4を加えた。混合物を、室温で約10分間、透明で均質な溶液が得られるまで超音波処理した。その後、0.1mlのN2H4・H2Oを加えた。反応溶液をさらに30分間超音波処理した後、テフロンライニングされた40mLのオートクレーブに移した。オーブン内で、系を200℃で10時間加熱した。生成物を8000rpmで5分間の遠心分離によって収集し、DI水で洗浄し、遠心分離により再収集した。ほとんどのDMFが確実に除去されるように、洗浄ステップを少なくとも5回繰り返した。最後に、生成物を乾燥させ、液体電解質と混合して、炭素発泡体含浸用の活性カソード混合物スラリを形成した。
【0144】
実施例7:スーパーキャパシタ活性材料としてのフッ化グラフェン(GF)シートの調製
GFを製造するために本発明者らは幾つかの方法を使用してきたが、一例として1つの方法のみを本明細書に記載する。典型的な手順の1つでは、インターカレートした化合物С2F・xClF3から大きく剥離した黒鉛(HEG)を調製した。三フッ化塩素の蒸気によってHEGをさらにフッ素化して、フッ素化され大きく剥離した剥離黒鉛(FHEG)を得た。あらかじめ冷却したTeflon反応器に、液体のあらかじめ冷却された20~30mLのClF3を入れ、反応器を閉じて液体窒素温度まで冷却した。次に、ClF3ガスが通るための孔を有し反応器の内側に配置された容器中に、1g以下のHEGを入れた。7~10日で、近似的に式C2Fで表されるグレーベージュ色の生成物が形成された。
【0145】
続いて、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶媒(別々にメタノールおよびエタノール)と混合し、超音波処理(280W)を30分分間行うと、均一な黄色がかった分散体が形成された。溶媒を除去すると、この分散体は茶色がかったGF粉末になった。
【0146】
実施例8:スーパーキャパシタ電極活性材料としての窒素化グラフェンシートの調製
実施例2で合成した酸化グラフェン(GO)を、種々の比率の尿素とともに微粉砕し、ペレット化した混合物をマイクロ波反応器(900W)中で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法では、酸化グラフェンは、同時に還元および窒素のドープが行われる。1:0.5、1:1、および1:2のグラフェン:尿素質量比で得られた生成物をそれぞれNGO-1、NGO-2、およびNGO-3と呼び、これらの試料の窒素含有量は、それぞれ14.7、18.2、および17.5重量%であることが元素分析によって分かった。これらの窒素化グラフェンシートは、依然として水に対して分散性である。次に得られた懸濁液を乾燥させて、窒素化グラフェン粉末を得た。この粉末を液体電解質中で混合して、伝導性多孔質ロッド/フィラメントの細孔中に含浸させるためのスラリを形成した。
【0147】
実施例9:2次元(2D)層状のBi2Se3カルコゲナイドナノリボンの調製
(2D)層状のBi2Se3カルコゲナイドナノリボンの調製は、当技術分野でよく知られている。例えば、蒸気-液体-固体(VLS)法を用いてBi2Se3ナノリボンを成長させた。本明細書で製造されるナノリボンは、平均で厚さが30~55nmであり、幅および長さが数百ナノメートル~数マイクロメートルの範囲である。比較的大きいナノリボンにはボールミル加工を施し、横方向寸法(長さおよび幅)を200nm未満に減少させた。スーパーキャパシタ電極活性材料として、(グラフェンシートまたは剥離された黒鉛フレーク有りまたは無しの)これらの手順によって調製されたナノリボンを使用した。
【0148】
実施例10:MXene粉末+化学活性化RGO
Ti3AlC2など金属炭化物の層状構造から特定の元素を部分的にエッチング除去することによって、選択されたMXeneを生成した。例えば、Ti3AlC2用のエッチャントとして、1MのNH4HF2水溶液を室温で使用した。典型的には、MXene表面の末端にはO、OH、および/またはF基が存在し、このことが、これらが通常Mn+1XnTxと記載される理由であり、式中、Mは早期遷移金属であり、XはCおよび/またはNであり、Tは末端基(O、OH、および/またはF)を表し、n=1、2、または3であり、xは末端基の数である。研究を行ったMXene材料としては、Ti2CTx、Nb2CTx、V2CTx、Ti3CNTx、およびTa4C3Txが挙げられる。典型的には、35~95%のMXeneと5~65%のグラフェンシートとを液体電解質中で混合し、伝導性多孔質フィラメントの細孔中に含浸させた。
【0149】
実施例11:擬似容量活性材料としてのMnO2-グラフェン酸化還元対の調製
MnO2粉末を2つの方法(それぞれグラフェンシート有りまたは無し)で合成した。一方の方法では、過マンガン酸カリウムを脱イオン水中に溶解させることによって0.1mol/LのKMnO4水溶液を調製した。一方、13.32gの界面活性剤の高純度ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを300mLのイソオクタン(油)中に加え、十分に撹拌して、光学的に透明な溶液を得た。次いで、その溶液中に、0.1mol/LのKMnO4溶液32.4mLと、選択された量のGO溶液とを加え、それを30分間超音波処理して、暗褐色の沈殿物を調製した。生成物を分離し、蒸留水およびエタノールで数回洗浄し、80℃で12時間乾燥させた。試料を、粉末状のグラフェン担持MnO2として、これを液体電解質中に分散させてスラリを生成し、発泡集電体の細孔中に含浸させた。
【0150】
実施例12:種々のスーパーキャパシタセルの評価
研究したほとんどの例では、本発明のスーパーキャパシタセルおよびそれらの従来の相当物の両方を製造し評価した。比較の目的の後者のセルは、電極のスラリコーティングと、電極の乾燥と、アノード層、セパレータ、およびカソード層の組み立てと、組み立てた積層体のパッケージングと、液体電解質の注入との従来手順によって作製した。従来のセルでは、電極(カソードまたはアノード)は、典型的には85%の電極活性材料(例えばグラフェン、活性炭、無機ナノディスクなど)、5%のSuper-P(アセチレンブラックベースの伝導性添加剤)、および10%のPTFEから構成され、これらを混合してAl箔上にコーティングした。電極の厚さは約100μmである。各試料について、コインサイズおよびパウチセルの両方をグローブボックス中で組み立てた。Arbin SCTS電気化学試験機器を用いて定電流実験で容量を測定した。サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を電気化学ワークステーション(CHI 660 System、USA)上で行った。
【0151】
電気化学的性能を評価するために、試料の定電流充電/放電試験を行った。定電流試験では、比容量(q)は、
q=I×t/m (1)
として計算され、式中、IはmAの単位での一定電流であり、tは時間の単位での時間であり、およびmはグラムの単位でのカソード活性材料の質量である。電圧がVであると、比エネルギー(E)は、
E=∫Vdq (2)
として計算される。比電力(P)は、
P=(E/t)(W/kg) (3)
として計算することができ、式中、tは、時間単位での全充電または放電ステップ時間である。
セルの比静電容量(C)は、電圧対比容量のプロットの各点における傾きとして表される
C=dq/dV (4)
各試料で、幾つかの電流密度(充電/放電速度を表す)を用いて電気化学的応答を測定することで、Ragoneプロット(電力密度対エネルギー密度)を構成するために必要なエネルギー密度および電力密度の値を計算することができる。
【0152】
電極活性材料としての還元酸化グラフェン(RGO)シートと、電解質としてのEMIMBF4イオン液体とを含む2組の対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのRagoneプロット(重量および体積電力密度対エネルギー密度)を
図5中に示している。これら2つのシリーズのスーパーキャパシタの一方は、発明の一実施形態により作製し、他方は従来の電極のスラリコーティングによって作製した。これらのデータから数箇所の重要な観察を行うことができる:
(A)本発明による方法によって作製したスーパーキャパシタセル(ロープ型セル)の重量および体積の両方のエネルギー密度および電力密度が、従来方法によって作製したそれらの相当物(「従来」と示される)よりもはるかに高い。これらの差は非常に顕著であり、その理由は主として、本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(>20mg/cm
2)、活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)成分の比率の減少、バインダー樹脂が不要であること、発泡集電体の細孔中により効率的にグラフェンシートが充填される本発明の方法の性質のためである。
(B)従来方法によって作製されたセルの場合、体積エネルギー密度および体積電力密度の絶対量は、それらの重量エネルギー密度および重量電力密度の絶対量よりもはるかに小さく、これは、従来のスラリコーティング方法によって作製されたRGOベースの電極の非常に低いタップ密度(0.25g/cm
3の充填密度)のためである。
(C)対照的に、本発明による方法によって作製されたセルの場合、体積エネルギー密度(23.8Wh/L)および体積電力密度(9,156W/L)の絶対量は、それらの重量エネルギー密度および重量電力密度の絶対量よりも大きく、これは、本発明による方法によって作製されたRGOベースの電極の比較的高いタップ密度(1.05g/cm
3の充填密度)のためである。
(D)従来方法によって製造された対応するスーパーキャパシタの体積エネルギー密度および体積電力密度は、それぞれ3.1Wh/Lおよび1,139W/Lであり、これらは1桁小さい。これらは重要で予期せぬことである。
【0153】
図6は、電極活性材料としての活性炭(AC)粒子と有機液体電解質とを含む対称スーパーキャパシタ(EDLC)セルのRagoneプロット(重量および体積の両方の電力密度の対エネルギー密度)を示している。本発明による方法によって作製されたスーパーキャパシタ(ロープ型セル)と、従来の電極のスラリコーティングによって作製されたスーパーキャパシタとから実験データを得た。
【0154】
これらのデータも、本発明による方法によって製造されたスーパーキャパシタセルの重量および体積の両方のエネルギー密度と電力密度とが、従来方法によって製造されたそれらの相当物よりもはるかに高いことを示している。この場合も、差が非常に大きく、その理由は主として、本発明によるロープ型セルに関連する高い活性材料質量負荷(>15mg/cm2)、活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)成分の比率の減少、バインダー樹脂が不要であること、発泡集電体の細孔中により効率的にグラフェンシートが充填される本発明の方法の性質のためである。高多孔質活性炭粒子は、グラフェンシートほど、より密集した充填に適していない。したがって、ACベースのスーパーキャパシタの場合、体積エネルギー密度および体積電力密度の絶対量は、対応する重量エネルギー密度および重量電力密度の絶対量よりも小さい。しかし、本発明による方法は、依然として驚くべきことに、この研究において従来のスラリコーティングプロセスで実現される(0.55g/cm3)よりもはるかに高いタップ密度(0.75g/cm3)でAC粒子を充填することができる。
【0155】
カソード活性材料としての純粋なグラフェンシートと、アノード活性材料としてのプレリチウム化黒鉛粒子と、有機液体電解質としてのリチウム塩(LiPF
6)-PC/DECとを含むリチウムイオンキャパシタ(LIC)セルのRagoneプロットを
図7(A)中に示している。これらのデータは、本発明による方法によって製造されたLICと、従来の電極のスラリコーティングによって製造されたLICとの両方の場合のものある。これらのデータは、本発明による方法によって製造されたLICセルの重量および体積の両方のエネルギー密度および電力密度が、従来方法によって製造されたそれらの相当物よりもはるかに高いことを示している。この場合も、差が非常に大きく、主として、本発明によるロープ型セルに関連する高い(アノード側で>15mg/cm
2、カソード側で>25mg/cm
2)、活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)成分の比率の減少、バインダー樹脂がないこと、発泡集電体の細孔中により効率的にグラフェンシートが充填される本発明の方法の性質に起因する。
【0156】
従来方法によって製造されたLICセルの場合、体積エネルギー密度および体積電力密度の絶対量は、それらの重量エネルギー密度および重量電力密度の絶対量よりもはるかに小さく、その理由は、従来のスラリコーティング方法によって製造された純粋なグラフェンベースのカソードの非常に低いタップ密度(0.75g/cm3の平均充填密度)のためである。対照的に、本発明の方法によって製造されたロープ型LICセルの場合、体積エネルギー密度および体積電力密度の絶対量は、それらの重量エネルギー密度および重量電力密度の絶対量よりも大きく、その理由は、本発明による方法によって製造された純粋なグラフェンベースのカソードの比較的高いタップ密度のためである。
【0157】
カソード活性材料としての純粋なグラフェンシートと、アノード活性材料としてのプレナトリウム化黒鉛粒子と、有機液体電解質としてのナトリウム塩(NaPF
6)-PC/DECとを含むナトリウムイオンキャパシタ(NIC)セルのRagoneプロットを
図7(B)中に示している。これらのデータは、本発明による方法、および従来の電極のスラリコーティングによって製造された両方のLICの場合のものである。これらのデータは、本発明による方法によって製造されたNICセル(ロープ型セル)の重量および体積の両方のエネルギー密度および電力密度が、従来方法によって製造されたそれらの相当物よりもはるかに高いことを示している。この場合も、差が大きく、その理由は主として、本発明によるセルに関連する高い活性材料質量負荷(アノード側で>15mg/cm
2、カソード側で>25mg/cm
2)、活性材料重量/体積に対するオーバーヘッド(非活性)成分の比率の減少、バインダー樹脂が不要であること、発泡集電体の細孔中により効率的にグラフェンシートが充填される本発明の方法の性質のためである。
【0158】
多くの研究者が行っているようなRagoneプロット上での活性材料のみの重量当たりのエネルギーおよび電力密度の報告は、組み立てられたスーパーキャパシタセルの性能の現実的な状況を示さないことがあることを指摘しておくことは重要であろう。他のデバイス構成要素の重量も考慮に入れなければならない。集電体、電解質、セパレータ、粘結剤、コネクタ、およびパッケージングを含むこれらのオーバーヘッド構成要素は、非活性材料であり、電荷蓄積量に寄与しない。これらの構成要素は、デバイスに重量および体積を追加するだけである。したがって、オーバーヘッド構成要素の重量の相対比を減少し、活性材料の割合を増加させることが望ましい。しかしながら、従来のスーパーキャパシタ製造法を使用してこの目的を達成することは可能でなかった。本発明は、スーパーキャパシタの技術分野におけるこの長年にわたる最も重大な問題を克服する。
【0159】
電極厚さが150~200μm(Al箔集電体のそれぞれの側の上に75~100μm)である市販のスーパーキャパシタでは、活性材料(すなわち活性炭)の重量は、パッケージングされたセルの全質量の約25~30%を占める。したがって、活性材料重量のみに基づく特性から、デバイス(セル)のエネルギーまたは電力密度を外挿するために、係数3~4が頻繁に使用される。大抵の科学論文では、報告されている特性は、典型的には活性材料重量のみに基づいており、電極は典型的には非常に薄い(<<100μm、および大抵は<<50μm)。活性材料重量は、典型的には総デバイス重量の5%~10%であり、これは、対応する活性材料重量ベース値を係数10~20で割ることによって実際のセル(デバイス)エネルギーまたは電力密度を得ることができることを示唆する。この係数が考慮された後では、これらの論文で報告されている特性は、商用スーパーキャパシタの特性よりも良いものとは思えない。したがって、科学論文および特許出願で報告されているスーパーキャパシタの性能データを読んで解釈するに当たっては非常に慎重でなければならない。
【0160】
実施例13:実現可能な電極厚さ、およびスーパーキャパシタセルの電気化学的性能に対するその影響
スーパーキャパシタの電極厚さは、デバイス性能を最適化するために自由に調製可能な設計パラメーターであると考えがちであるが、実際には、スーパーキャパシタ厚さには製造の制限があり、ある厚さレベルを超えて良好な構造完全性の電極を製造することはできない。本発明者らの研究によって、グラフェンベースの電極の場合にこの問題がさらに重大となることがさらに示されている。本発明は、スーパーキャパシタに関連するこの非常に重要な課題を解決する。
【0161】
従来方法によって作製された活性炭ベースの対称DLCスーパーキャパシタおよび本発明による方法によって作製されたそれらのロープ型セルの実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量(Wh/kg)および体積エネルギー密度(Wh/L)を
図8中に示している。活性炭ベースの電極は、従来のスラリコーティングプロセスを用いて最大100~200μmの厚さまで製造可能である。しかし、対照的に、本発明による方法を用いて実現可能な電極厚さに理論的な制限はない。典型的には、実際の電極厚さは、10μm~5000μm、より典型的には50μm~2,000μm、さらにより典型的には100μm~1,000μm、最も典型的には200μm~800μmである。
【0162】
これらのデータは、以前は実現できなかった超厚スーパーキャパシタ電極の製造における本発明による方法の驚くべき有効性をさらに裏付けている。これらの超厚電極によって、非常に高い活性材料質量負荷、典型的には顕著に>10mg/cm2(より典型的には>15mg/cm2、さらに典型的には>20mg/cm2、多くの場合>25mg/cm2、さらには>30mg/cm2)が得られる。これらの高い活性材料質量負荷は、スラリコーティング方法によって製造される従来のスーパーキャパシタでは得ることはできなかった。
【0163】
さらに顕著なことには、市販のACベースのスーパーキャパシタの典型的なセルレベルのエネルギー密度は、3~8Wh/kgおよび1~4Wh/Lである。対照的に、本発明による方法では、同じ種類の電極活性材料(AC)を含むスーパーキャパシタが最大19.5Wh/kgまたは14.6Wh/Lのエネルギー密度を送給可能である。このようなエネルギー密度の増加は、スーパーキャパシタ産業において可能であるとは考えられていなかった。
【0164】
還元酸化グラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタに関して
図9中にまとめたデータも非常に重要で予期せぬことである。従来方法および本発明による方法によって製造されたRGOベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質)のセルレベルの重量および体積エネルギー密度を実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットした。この図中、従来のスーパーキャパシタの重量(◆)および体積(▲)エネルギー密度は、実現した最高電極タップ密度の約0.25g/cm
3に基づいており、本発明によるロープ型スーパーキャパシタの重量(■)および体積(X)エネルギー密度は、約0.75g/cm
3の電極タップ密度を有するものから得られ、決して最高値ではない。未処理で活性化させていないRGO電極の場合にこのような高いタップ密度はこれまで報告されていない。
【0165】
これらのデータは、従来のスラリコーティング方法によって製造されたRGOベースのEDLCスーパーキャパシタセルで実現された最高重量エネルギー密度は約12Wh/kgであるが、本発明による方法によって製造されたものは室温で25.6Wh/kgの高い重量エネルギー密度を示すことを示している。これは、EDLCスーパーキャパシタの前例のない高いエネルギー密度値(全セル重量に基づき、電極重量または活性材料重量単独に基づくものではない)である。さらにより印象的なことは、本発明によるスーパーキャパシタセルの体積エネルギー密度が19.2Wh/Lの高さであるということであり、これは従来の相当物によって実現された3.0Wh/Lの6倍を超える。
【0166】
従来方法によって製造された純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質)および本発明による方法によって製造されたそれらのロープ型セルの実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度のデータを
図10にまとめている。凡例は、従来のスーパーキャパシタ(実現した最高電極タップ密度が約0.25g/cm
3)の重量(◆)および体積(▲)エネルギー密度、ならびに本発明によるスーパーキャパシタ(電極タップ密度が約0.85g/cm
3)の重量(■)および体積(X)エネルギー密度を含んでいる。
【0167】
非常に顕著なことには、これらのEDLCスーパーキャパシタ(酸化還元容量または擬似容量を有さない)は、32.3Wh/kgの高い重量エネルギー密度を送給し、これらは既に高性能の鉛蓄電池のエネルギー密度(20~40Wh/kg)における値である。これは非常に有用な値であり、その理由は、EDLCスーパーキャパシタは250,000~500,000サイクルの充電および放電が可能であり、鉛蓄電池の典型的な100~400サイクルとは対照的であるからである。この実現は、スーパーキャパシタの分野において非常に重要で全く予期せぬことである。さらに、炭素ベースまたはグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタは、数秒間で再充電可能であり、鉛蓄電池に必要な再充電時間が典型的には数時間であることと対照的である。鉛蓄電池は、環境への悪影響が大きいことで知られているが、本発明のスーパーキャパシタは環境に優しい。
【0168】
さらに顕著な例として、従来方法によって製造された純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(イオン液体電解質)、および本発明による方法によって製造されたそれらのロープ型セルの実現可能な電極厚さ範囲にわたってプロットしたセルレベルの重量および体積エネルギー密度に関して
図11中にまとめたデータが挙げられる。重量(◆)および体積(▲)エネルギー密度は、従来のスーパーキャパシタ(達成した最高電極タップ密度が約0.25g/cm
3)のものであり、重量(■)および体積(X)エネルギー密度は、約0.85g/cm
3の電極タップ密度を有する本発明のスーパーキャパシタのものである。本発明による純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタは38.6Wh/kgのセルレベルのエネルギー密度を貯蔵可能であり、従来のACベースのEDLCスーパーキャパシタによって実現可能であったエネルギー密度の6倍である。32.8Wh/Lの体積エネルギー密度値も前例がなく、市販のACベースのスーパーキャパシタの3~4Wh/Lの10倍である。
【0169】
実施例14:セル中で実現可能な活性材料重量パーセント値、およびスーパーキャパシタセルの電気化学的性能に対するその影響
活性材料の重量はパッケージングされた市販のスーパーキャパシタの全質量の最大約30%を占めるので、活性材料単独の性能データからデバイスのエネルギー密度または電力密度を外挿するためには、30%の係数を使用する必要がある。したがって、活性炭(すなわち活性材料重量のみに基づく)の20Wh/kgのエネルギー密度は、パッケージングされたセルの約6Wh/kgに変換される。しかし、この外挿は、市販の電極(150μmまたは約10mg/cm2の炭素電極)と同様の厚さおよび密度を有する電極の場合にのみ有効である。より薄または軽い同じ活性材料の電極では、セル重量に基づいたエネルギー密度または電力密度はさらに低くなる。したがって、高い活性材料比率を有するスーパーキャパシタセルを製造することが望ましい。残念ながら、活性炭ベースのスーパーキャパシタの場合に30重量%を超える、またはグラフェンベースのスーパーキャパシタの場合に15重量%を超える活性材料の比率の実現はこれまで不可能であった。
【0170】
本発明による方法では、スーパーキャパシタは、調査した全ての活性材料でこれらの制限を超えることができる。実際、本発明によって希望するなら90%を超えるまで活性材料の比率を増加させることが可能であるが、典型的には15%~85%、より典型的には30%~80%、さらにより典型的には40%~75%、最も典型的には50%~70%である。
【0171】
図12中に示されるように、活性炭ベースのEDLCスーパーキャパシタ(有機液体電解質を有する)のセルレベルの重量エネルギー密度を、4.2%~33.3%の実現可能な活性材料の比率(活性材料重量/全セル重量)にわたってプロットしており、1.3~8.4Wh/kgのエネルギー密度が得られる。本発明によって、17.5重量%~79重量%のスーパーキャパシタセル中の純粋なグラフェン含有量が可能であり、これによって4.9~19.5Wh/kgの重量エネルギー密度が得られる。例えば、
図13は、2つのシリーズの純粋なグラフェンベースのEDLCスーパーキャパシタ(全て有機液体電解質を有する)のスーパーキャパシタセル中の実現可能な活性材料の比率(活性材料重量/全セル重量)にわたってプロットしたセルレベルの重量エネルギー密度を示している。この場合も、活性材料-電解質混合物をあらかじめ含浸させたフィラメント状電極を含む本発明によるロープ型セルは、非常に高い活性材料の比率を有することができ、したがって非常に高いエネルギー密度を有することができる。
【0172】
実施例15:種々の電極活性材料、および/または集電体としての異なる多孔質もしくは発泡構造に基づくスーパーキャパシタセルの電気化学的性能
発泡体構造の効果を評価するために、本発明者らは、電極活性材料の一例としてRGOの使用を選択しているが、集電体(多孔質のロッドsまたはフィラメント)の種類および性質を変更する。金属発泡体(例えばNiおよびTiの発泡体)、金属ウェブ(例えばステンレス鋼ウェブ)、穿孔された金属シートベースの3D構造、金属繊維マット(鋼繊維)、金属ナノワイヤマット(Cuナノワイヤ)、伝導性ポリマーナノ繊維マット(ポリアニリン)、伝導性ポリマー発泡体(例えばPEDOT)、伝導性ポリマー被覆繊維発泡体(ポリピロー(polypyrroe)被覆ナイロン繊維)、炭素発泡体、黒鉛発泡体、炭素エアロゲル、炭素キセロゲル、グラフェン発泡体(Niに支持されたCVDグラフェンから)、酸化グラフェン発泡体(GO水溶液の凍結乾燥によって得た)、還元酸化グラフェン発泡体(RGOをポリマーと混合し、次に炭化させた)、炭素繊維発泡体、黒鉛繊維発泡体、および剥離黒鉛発泡体(炭化させた樹脂によって結合した剥離黒鉛ワーム)の範囲の多種多様の発泡体を選択した。この広範囲で徹底的な研究によって、以下の重要な観察が得られる:
(A)発泡体材料の電気伝導率は重要なパラメーターであり、伝導率が高いほど、高い電力密度およびより速いスーパーキャパシタ応答時間が得られる傾向にある。
(B)多孔率レベルも重要なパラメーターであり、細孔含有率が高いほど、同じ体積で活性材料の量が多くなり、より高いエネルギー密度が得られる。しかし、多孔率レベルがより高いと、場合により、電子伝導能力が低くなるために応答時間が遅くなりうる。
(C)黒鉛発泡体およびグラフェン発泡体によって、スーパーキャパシタのより良好な応答時間が得られる。しかし、金属発泡体によって、より容易にタブ(端子リード)の形成またはそれへの接続が可能となる。各セルには2つのリードが必要である。
【0173】
水性、有機、およびイオン液体の電解質とともに、有機および無機材料に及ぶ、EDLCおよび酸化還元スーパーキャパシタの両方の多種多様の電極活性材料について調査した。説明の目的で異なる種類のスーパーキャパシタの幾つかの例を以下の表(表1)にまとめている。これらは、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0174】
これらのデータは、質量負荷(比率)、電極直径/厚さ、重量エネルギー密度、および体積エネルギー密度の顕著な改善に関する、本発明によるロープ型スーパーキャパシタセルおよび製造方法の驚くべき優位性をさらに裏付けている。活性材料/電解質をあらかじめ含浸させたひも/糸の電極を有する本発明によるロープ型スーパーキャパシタは、電気化学的性質において従来のスーパーキャパシタよりも一貫してはるかに良好である。これらの差は驚くほど顕著である。
【0175】
結論として、本発明者らは、可撓性および形状適合性であり、予期せぬ高い活性材料質量負荷(これまで実現できていない)、顕著な重量エネルギー密度(これまで実現できていない)、および前例のない高い体積エネルギー密度を有する新しい新規な種類のスーパーキャパシタを首尾良く開発した。活性材料-電解質混合物を発泡集電体中にあらかじめ含浸させて電極を形成する本発明による方法によって、グラフェンシートベースのスーパーキャパシタに関連する長年にわたる課題(すなわち、厚い電極を作製できないこと、グラフェンシートの再積層の防止が困難なこと、低いタップ密度、および低い体積エネルギー密度)も克服される。