(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】パルス群を放出するためのレーザ光源
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20221021BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20221021BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20221021BHJP
G01N 21/71 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/00 F
H01S3/067
H01S3/10 Z
G01N21/71
(21)【出願番号】P 2019546172
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018054829
(87)【国際公開番号】W WO2018158261
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-18
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】519301515
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・デ・シアンス・アプリケ-ルーアン
(73)【特許権者】
【識別番号】509017435
【氏名又は名称】ユニベルシテ、ド、ルーアン、ノルマンディー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE ROUEN NORMANDIE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イドゥール,アマール
(72)【発明者】
【氏名】ハボーチャ,アディル
(72)【発明者】
【氏名】ビュルテル,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】イドラーセン,サイード
(72)【発明者】
【氏名】ゴダン,トマ
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0314214(US,A1)
【文献】特開2011-002314(JP,A)
【文献】特開2007-142463(JP,A)
【文献】特開昭58-159514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106159664(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0080467(US,A1)
【文献】特表2016-513989(JP,A)
【文献】特開2006-023662(JP,A)
【文献】特開2004-152932(JP,A)
【文献】特開2003-057702(JP,A)
【文献】特表2011-515588(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014358(WO,A1)
【文献】特開2005-084266(JP,A)
【文献】特表2017-514602(JP,A)
【文献】特開2001-007045(JP,A)
【文献】KIENEL, M., et al.,Multidimensional coherent pulse addition of ultrashort laser pulses,OPTICS LETTERS,米国,Optical Society of America,2015年02月,Vol. 40, No. 4,pp.522-525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G01N 21/71
IEEE Xplore
Optica
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス群を放出するためのレーザ光源であって、
- 少なくとも1つの主レーザパルスを放出するのに適した主レーザ光源(22)と、
- 前記主レーザパルスから、複数の二次レーザパルス(1、2、11、12、13、14)を形成するのに適した1つ又は複数の干渉計(24、44、54、64、74、76)であって、各干渉計が、50ps~10nsに含まれる遅延(Δt、Δt’)だけ、2つの二次レーザパルスを時間的に分離できるようにする少なくとも1つの遅延線を含み、前記1つ又は複数の干渉計が、前記二次レーザパルスの少なくとも1つをスペクトル的に且つ/又は時間的に形成するための手段を含む1つ又は複数の干渉計(24、44、54、64、74、76)と、
- 空間的に重ねられたパルス(3、4、15、16、17、18)の群を出力として形成するために、前記複数の二次レーザパルスを受信するように意図された単一モード増幅光ファイバ(262)と、
を含むレーザ光源。
【請求項2】
前記干渉計の少なくとも1つが、前記二次レーザパルスの相対的な光パワーを制御するための手段を含む、請求項1に記載のレーザ光源。
【請求項3】
- 前記主レーザパルスが、50psより長いパルス幅に伸長されるように、前記単一モード増幅光ファイバの上流に配置されたストレッチャ(32)と、
- 前記パルス群の前記パルスが、500fsより短いパルス幅を有するように、前記パルス群の前記パルスを時間的に圧縮するための、前記単一モード増幅光ファイバの下流の圧縮器(36)と、
を更に含む、請求項1又は2に記載のレーザ光源。
【請求項4】
前記増幅光ファイバの上流に配置された少なくとも1つの光前置増幅器を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項5】
前記単一モード増幅光ファイバ(262)を光学的に励起するためのレーザダイオード(266)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項6】
前記単一モード増幅光ファイバが、飽和利得領域で動作するように意図されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項7】
前記主レーザ光源と前記単一モード増幅光ファイバの入口との間の、前記少なくとも1つの主レーザパルス及び前記二次レーザパルスの経路が、全ファイバである、請求項1~6のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項8】
前記主レーザ光源(22)が、少なくとも2μsの遅延だけ時間的に分離される主レーザパルス列を放出するのに適している、請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項9】
前記1つ又は複数の干渉計(24、44、54、64、74、76)が、少なくとも1つのマッハツェンダー干渉計を含み、前記遅延線が、前記干渉計の1つのアームによって形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載のレーザ光源。
【請求項10】
レーザ誘起破壊分光法(LIBS)解析システムであって、
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の、パルス群を放出するためのレーザ光源(80)と、
- 解析される対象(83)と前記レーザ光源によって放出された前記パルス群との間の相互作用に起因するビームを収集するためのコレクタ(84)と、
- 前記収集されたビームのスペクトル解析に基づいて、解析される前記対象のLIBSスペクトルを取得できるようにする分光計(85)と、
を含む、レーザ誘起破壊分光法(LIBS)解析システム。
【請求項11】
パルス群を生成するための方法であって、以下のステップ、
- 少なくとも1つの主レーザパルスを放出するステップと、
- 50ps~10nsに含まれる遅延だけ時間的に分離される複数の二次レーザパルス(1、2、11、12、13、14)を1つ又は複数の干渉計(24、44、54、64、74、76)によって前記主パルスから生成するステップであって、前記生成ステップが、前記二次レーザパルスの少なくとも1つをスペクトル的に且つ/又は時間的に形成するステップを更に含むステップと、
- 空間的に重ねられたパルス(3、4、15、16、17、18)の群を形成するために、前記二次レーザパルスを単一モード増幅光ファイバ(262)に注入するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
以下のステップ、
- 前記主レーザパルスが、50psより長いパルス幅に伸長されるように、前記主レーザパルスを時間的に伸長するステップと、
- 空間的に重ねられたパルスの前記群における前記パルスが、500fsより短いパルス幅を有するように、空間的に重ねられたパルスの前記群における前記パルスを時間的に圧縮するステップと、
を更に含む、請求項11に記載のパルス群を生成するための方法。
【請求項13】
前記単一モード増幅光ファイバの利得を飽和させることを更に含む、請求項11又は12に記載のパルス群を生成するための方法。
【請求項14】
前記二次レーザパルス間の前記遅延を調整することを更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のパルス群を生成するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、パルス群、例えばダブレット又はトリプレットパルスを放出するための、特にレーザ誘起破壊分光法(LIBS)用のレーザ光源に関する。本明細書はまた、パルス群を生成するための方法、及びかかるレーザ光源を含むLIBS解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ誘起破壊分光法(LIBS)は、エアロゾルにおける様々な固体、液体、又はガス材料の化学組成を定性的及び定量的に解析するための技術である。その技術は、解析される材料とレーザパルスの相互作用に基づく。光/物質相互作用は、材料を蒸発させ、プラズマを形成させる。プラズマに存在する材料の原子及びイオンは、励起エネルギ準位に高められ、且つ脱励起において、原子線で構成されたスペクトルを有する光を放出し、その光の波長は、存在する要素を識別できるようにする。各線の強度は、エミッタ原子の濃度に比例する。従って、材料の元素組成は、そこから推定され得る。
【0003】
しかしながら、放出の特性は、材料に依存するだけでなく、周囲空気に依存する。次に、周囲空気の励起原子によって生成された線は、特に、用いられるレーザのパルスが、ナノ秒の長さである場合に、材料の合成物をマスクし、且つLIBS信号の解析を不正確にする可能性がある。この欠点を軽減するために、LIBSは、フェムト秒レーザ、即ちフェムト秒パルス(幅<1ps)を生成するレーザを用いてもよい。フェムト秒パルスの使用は、周囲ガスとレーザパルスとの間の相互作用(それは、連続放出に帰着し得る)を低減できるようにする。連続放出の低減は、プラズマの輝線をより優れたコントラストで観察できるようにする。フェムト秒パルスの使用はまた、解析される材料の加熱ゾーン及び機械的変形の寸法の最小化を可能にする。これは、より優れた空間分解能及び正確な機械加工だけでなく、より優れた測定再現性に帰着する。
【0004】
しかしながら、フェムト秒パルスによって生成されたプラズマにおけるスペクトル線の強度は、ナノ秒パルスによって生成された強度より低い。利用可能なプラズマ線の強度が、フェムト秒パルスのエネルギと共に増加することが証明されたが、超高速高出力レーザの高コスト及びそれらの技術の複雑さは、特に実験室外の産業環境におけるこの技術の使用を困難にする。
【0005】
2重パルスLIBS(DP-LIBS)技術、及びより正確には共線構成DP-LIBS技術の利用は、フェムト秒レーザを用いてLIBSの性能を改善する試みである。共線構成DP-LIBSは、2つのフェムト秒共線パルスを用いることに存し、パルスの1つは、数十ピコ秒~数ナノ秒だけ、もう一方のパルスに対して遅延される。これらの2つのパルスは、原子線の強度を増加できるような方法で、解析される材料と相互作用する。一般に、第1のパルスは、解析される材料をアブレートできるようにし、第2のパルスは、生成されるプラズマを加熱する役目をするが、これは、LIBS信号の悪化に帰着し、且つ検出感度閾値の改善につながる。Labutin et al.“Femtosecond laser-induced breakdown spectroscopy”,Journal of Analytical Atomic Spectrometry 31,pp.90-118(2016)による評論記事は、提案された様々なDP-LIBS構成、及びそれによって達成される性能を再検討する。フェムト秒領域におけるDP-LIBSに関する研究は、得られた悪化の程度が、フェムト秒パルスによって生成される加熱エネルギの小さな量ゆえに、適度であることを示した。解決法は、プラズマを加熱するためにナノ秒パルスとフェムト秒アブレーションパルスとを組み合わせることだった。この解決法は、Scaffidi et al.,“Observations in collinear femtosecond-nanosecond dual pulse laser-induced breakdown spectroscopy”Applied Spectroscopy,60,pp.65-(2006)による論文で初めて提案されたが、2つの相異なるレーザ光源によって生成された2つのパルスの組み合わせに基づき、実装形態のコスト及び複雑さを増加させる。本明細書は、LIBS信号の悪化に特に適した、且つより優れた解析感度を達成できるようにする2つの非対称のパルス、例えばフェムト秒パルス及び後続のサブナノ秒パルスを直接生成できる単一レーザ光源を提案する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Labutin et al.“Femtosecond laser-induced breakdown spectroscopy”,Journal of Analytical Atomic Spectrometry 31,pp.90-118(2016)
【文献】Scaffidi et al.,“Observations in collinear femtosecond-nanosecond dual pulse laser-induced breakdown spectroscopy”Applied Spectroscopy,60,pp.65-(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本明細書は、パルス群を放出するためのレーザ光源であって、少なくとも1つの主レーザパルスを放出するのに適した主レーザ光源と、前記主レーザパルスから、複数の二次レーザパルスを形成するのに適した1つ又は複数の干渉計であって、各干渉計が、50ps~10nsに含まれる遅延だけ、2つの二次レーザパルスを時間的に分離できるようにする少なくとも1つの遅延線を含む1つ又は複数の干渉計と、空間的に重ねられたパルスの群を出力として形成するために、二次レーザパルスを受信するように意図された単一モード増幅光ファイバと、を含むレーザ光源に関する。
【0008】
このように説明されたレーザ光源は、互いに遅延され、且つ空間的に重ねられた共線パルスの群を生成できるようにする。このようにして、本出願は、90%より高い、有利には95%より高い、且つ有利には99%より高いパルスの空間的重複度を証明した。2つ以上のパルスの重複度は、例えば、前記パルス画像の相互相関を与える関数を用いて定義され、画像は、例えば、単一モード増幅光ファイバの出口に配置された集束レンズの焦点面に形成される。本出願は、このように説明されたレーザ光源の単一モード増幅光ファイバが、二次レーザパルスに対して空間フィルタの役割を果たし、光ファイバの出口で二次レーザパルスを単一モードに投射することを証明した。従って、レーザ光源は、数メートルの距離まで、放出されたパルス群におけるパルス間の非常に優れた空間的重なりを自動的に保証することを可能にする。かかるレーザ光源はまた、コンパクトであるという、且つ先行技術で説明される装置の光学系の調整を非常に単純化するという利点を有する。
【0009】
本明細書において「干渉計」によって意味されるものは、全ファイバであってもなくても、入射光パルスを空間的に分割する手段と、パルスのそれぞれが、分割された後で伝搬する2つのアームと、伝搬後にパルスを空間的に再結合するための手段と、を含む任意の装置であり、そこにおいてアームの1つが、遅延線を形成する。
【0010】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、前記干渉計の少なくとも1つは、二次パルスの少なくとも1つをスペクトル的に且つ/又は時間的に形成するための手段を含む。スペクトル的且つ/又は時間的形成手段は、例えば、スペクトルフィルタ、及び/又は可変ピッチブラッグ格子などの時間的な伸長装置を含む。
【0011】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、前記干渉計の少なくとも1つは、二次レーザパルスの相対的な光パワーを制御するための手段を含む。光パワーを制御するための手段は、例えば、干渉計のアームの1つに配置された可変減衰器を含む。
【0012】
従って、レーザ光源によって生成されたパルス群のパルスのそれぞれにおける光パワー、パルス幅、及び/又はスペクトルを制御することが可能である。LIBS測定の場合に、これは、例えば、LIBS測定用に要求されるプラズマの生成を最適化するために、解析される材料に依存して、又は材料にパルスに集束させるために用いられるシステムにさえ依存して、パルスのパラメータを調整できるようにする。
【0013】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、レーザ光源は、
- 主レーザパルスが、50psより長いパルス幅に伸長されるように、単一モード増幅光ファイバの上流に配置されたストレッチャと、
- パルス群のパルスが、500fsより短いパルス幅を有するように、パルス群のパルスを時間的に圧縮するための、単一モード増幅光ファイバの下流の圧縮器と、
を更に含む。
【0014】
従って、単一モード増幅光ファイバを損傷することも、又は単一モード増幅光ファイバにおける非線形効果を引き起こすこともなく、高エネルギのパルスの群を生成することが可能である。
【0015】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、レーザ光源は、単一モード増幅光ファイバの上流に配置された少なくとも1つの光前置増幅器を更に含む。従って、光ファイバにおける必要な光パワーを保証しながら、より低いエネルギのパルスを送出する主レーザ光源を用いることが可能である。
【0016】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、レーザ光源は、単一モード増幅光ファイバを光学的に励起するためのレーザダイオードを更に含む。
【0017】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、レーザダイオードは、対向伝搬領域において単一モード増幅光ファイバを光学的に励起するために配置される。
【0018】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、単一モード増幅光ファイバは、モードフィルタリングファイバである。
【0019】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、単一モード増幅光ファイバは、大ピッチロッド型フォトニック結晶ファイバである。
【0020】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、単一モード増幅光ファイバは、飽和利得領域で動作するように意図されている。飽和利得領域は、外部環境における変動(機械的変動、熱変動等)、及び生成されたパルスの振幅における変動に対する感度を低減させることを可能にし、これは、1つの測定から次の測定へと、レーザ光源をより安定させることを可能にする。具体的には、単一モード増幅光ファイバが、飽和利得領域で動作する場合に、パルスの強度における変動又はファイバへの二次レーザパルスの結合における変動は、単一モード増幅光ファイバから出力されたパルス群のパルスにおける振幅を変更しない。
【0021】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、容積を低減させて光学調整を簡略化するために、主レーザ光源と単一モード増幅光ファイバの入口との間のパルスの経路は、全ファイバである。
【0022】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、主レーザ光源は、少なくとも2μsの遅延だけ時間的に分離される主レーザパルス列を放出するのに適している。従って、主レーザ光源は、2μs以上の遅延だけ分離されるパルス群の放出を可能にするために、2μs以上の遅延だけ互いに時間的に分離される主レーザパルスを放出する。従って有利なことに、LIBS測定中に、プラズマの励起イオンは、パルスの2つの群の間で完全に平衡状態に戻ることができ、これは、ノイズを低減させる。
【0023】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、主レーザパルスは、長さがサブピコ秒である。
【0024】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、干渉計の少なくとも1つは、マッハツェンダー干渉計であり、遅延線は、干渉計の1つのアームによって形成される。
【0025】
第2の態様によれば、本明細書は、レーザ誘起破壊分光法(LIBS)解析システムであって、第1の態様に従って説明されたような、パルス群を放出するためのレーザ光源と、解析される対象とレーザ光源によって放出されたパルス群との間の相互作用に起因するビームを収集するためのコレクタと、収集されたビームのスペクトル解析に基づいて、解析される対象のLIBSスペクトルを取得できるようにする分光計と、を含むレーザ誘起破壊分光法(LIBS)解析システムに関する。
【0026】
第3の態様によれば、本明細書は、パルス群を生成するための方法であって、以下のステップ、
- 少なくとも1つの主レーザパルスを放出するステップと、
- 1つ又は複数の干渉計によって、50ps~10nsに含まれる遅延だけ時間的に分離される複数の二次レーザパルスを前記主パルスから生成するステップと、
- 空間的に重ねられたパルスの群を形成するために、二次レーザパルスを単一モード増幅光ファイバに注入するステップと、
を含む方法に関する。
【0027】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、複数の二次レーザパルスを生成するステップは、二次パルスの少なくとも1つをスペクトル的に且つ/又は時間的に形成するステップを更に含む。
【0028】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、パルス群を生成するための方法は、以下のステップ、
- 主レーザパルスが、50psより長いパルス幅に伸長されるように、主レーザパルスを時間的に伸長するステップと、
- 空間的に重ねられたパルスの群におけるパルスが、500fsより短いパルス幅を有するように、空間的に重ねられたパルスの群におけるパルスを時間的に圧縮するステップと、
を更に含む。
【0029】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、パルス群を生成するための方法は、単一モード増幅光ファイバの利得を飽和させるステップを更に含む。
【0030】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、パルス群を生成するための方法は、二次レーザパルス間の遅延を調整するステップを更に含む。
【0031】
本明細書の主題の他の利点及び特徴は、説明を読むことによって明白になるであろう。説明は、以下の図によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(既に説明した)先行技術による共線構成DP-LIBSシステムの概略図である。
【
図2】本明細書の一例による、パルス群を放出するためのレーザ光源の概略図である。
【
図3】ストレッチャ及び圧縮器を含む、本明細書の一例による、パルス群を放出するためのレーザ光源の概略図である。
【
図4】本明細書の一例による、パルス群を放出するためのレーザ光源の別の例の概略図であり、前記光源は、全ファイバである。
【
図5】本明細書の例による、2つを超えるパルスで構成されたパルス群を放出するためのレーザ光源の概略図である。
【
図6】本明細書の例による、2つを超えるパルスで構成されたパルス群を放出するためのレーザ光源の概略図である。
【
図7】本明細書の一例による、2つを超えるパルスで構成されたパルス群を放出するためのレーザ光源の概略図であり、レーザ光源は、全ファイバである。
【
図8】本明細書の一例によるLIBS解析システムの概略図である。
【
図9A】本明細書の一例による、パルス群を放出するレーザ光源を用いて、単一パルスLIBS及びDP-LIBSによって取得された特有のアルミニウムスペクトルであり、レーザ光源のパルスは、50ps及び750psのパルス間遅延をそれぞれ有する。
【
図9B】本明細書の一例による、パルス群を放出するレーザ光源を用いて、単一パルスLIBS及びDP-LIBSによって取得された特有のアルミニウムスペクトルであり、レーザ光源のパルスは、50ps及び750psのパルス間遅延をそれぞれ有する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、
図1~3は、指示として与えられ、本発明の実施形態を提示しない。
【0034】
図において、同一の要素は、同じ参照符号を付された。
【0035】
図2は、本明細書に従ってパルス群を放出するためのレーザ光源20の第1の例を示す。それは、主レーザ光源22と、2つの二次レーザパルス1、2を形成するのに適した干渉計24と、空間に重ねられたパルス3、4の群を形成するために、前記二次レーザパルス1、2を受信するように意図された単一モード増幅光ファイバ262を含む増幅モジュール26と、を含む。
【0036】
図2に示されている例において、主レーザ光源22は、例えばサブピコ秒幅及び例えばサブ500fs幅の少なくとも1つの主レーザパルスを放出することに例えば適している。それはまた、1kHz~500kHzに含まれる調整可能な繰り返し率で主レーザパルス列を放出し得る。この場合に、パルスは、2μsから1msだけ離間される。主レーザ光源は、例えば数十MHzの固定繰り返し率で動作する標準モードロックレーザを例えば含んでもよく、これには、主光源の繰り返し率を例えば500kHz未満に低減できるようにするパルス選択器が続いてもよい。主光源は、パルス選択器における挿入損失を補償するために、前置増幅器を含んでもよい。
【0037】
図2の例において、レーザ光源は、主レーザパルスから2つの二次レーザパルスを形成するのに適した干渉計を含む。レーザ光源はまた、以下で説明されるように、パルスの偶数のグループ分けをもたらすために、複数の干渉計を直列に含んでもよい。パルスの奇数のグループ分けをもたらすために、干渉計を互いにインターリーブすることもまた可能である。
【0038】
図2の例において、干渉計は、マッハツェンダー干渉計である。それは、2つのミラー243、244と、2つの半透鏡241及び242と、を含む。半透鏡241を用いて、主レーザパルスは、2つの相異なる光路をたどる2つの二次レーザパルス1、2に分割される。パルス1の光路は、2つの半透鏡243、244によって、パルス2の光路より長くされる。次に、2つの二次レーザパルスは、半透鏡242を用いて再結合される。このように、2つの二次レーザパルスは、遅延Δt=δ/cによって時間的に分離され、cは、光の伝搬速度であり、δは、2つの二次レーザパルス1、2がたどる2つの光路間の差である。この遅延は、光路間の差δ、及び従って光路の1つにおける長さを修正することによって調整されてもよい。光路間の差を修正するために、例えば2つのミラー243及び244の位置を移動することが可能である。遅延Δtが、主パルスの幅以上の長さになるように選択され、その結果、2つの二次レーザパルス1、2が、互いに干渉できないことが注目される。
【0039】
LIBS測定用に、遅延Δtは、約10ピコ秒~数ナノ秒、及び例えば50ps~10nsで調整可能であるのが好ましい。これは、第1のダブレットパルスによって生成されるプラズマの加熱を最適化するために、パルス間遅延を適応させることを可能にし、この遅延は、材料ごとに変化する。
【0040】
干渉計はまた、マイケルソン干渉計又は任意の他のタイプの干渉計であってもよい。例えば、マイケルソン干渉計は、2つのミラーと、プレートビームスプリッタと、を含んでもよい。主レーザパルスは、ビームスプリッタに送られ、ビームスプリッタは、主パルスを2つの二次レーザパルスに分割する。そのうちの1つのパルスは、ミラーの一方に送られ、もう一方のパルスは、他方のミラーに送られる。2つのミラーは、ビームスプリッタから異なる距離にあり、従って、光路差δを導入できるようにし、且つ従って2つの二次レーザパルス間に遅延Δtを導入できるようにする。ミラーの位置の移動は、2つの二次レーザパルス間の遅延を調整できるようにする。
【0041】
1つ又は複数の例示的な実施形態によれば、干渉計は、全ファイバであり、この場合に、干渉計は、後で説明されるように、例えば、圧電ドラムのまわりに配置された1つ又は複数の光ファイバを含んでもよい。
【0042】
図2に示されているように、干渉計24の出口において、2つの二次レーザパルス1、2の空間エネルギ分布(1’及び2’を付されている)は、空間的に完全に重ねられているわけではない。具体的には、干渉計を整列させる際の困難さ、及び環境と関係する混乱ゆえに、オフセットが残る。
【0043】
次に、2つの二次レーザパルスは、増幅モジュール26に注入される。増幅モジュールは、単一モード増幅光ファイバ262を含む。モノリシック全ファイバ構成(
図4を参照)の場合に、例えばレンズ261又はスプライス(2つの溶接されたファイバ)を用いて、単一モード増幅光ファイバ262には、二次レーザパルス1、2が結合される。従って、レンズ261は、単一モード増幅ファイバの単一モードに二次レーザパルスを結合できるようにする。ビーム出力のサイズを増加させ、且つ従って高強度における光損傷の境界を押し返すために、ファイバの端部に溶接されたガラス端部取り付け具262’及び262’’を用いることもまた可能である。
【0044】
導波路のモード-単一モード光ファイバなど-は、光が、導波路内を伝搬する方法を示す。単一モードファイバでは、1つの単一伝搬モードだけが存在する。従って、単一モード増幅光ファイバの単一モード特性は、単一モード増幅光ファイバから出力された二次レーザパルスが、空間的に重ねられることを保証する。換言すれば、単一モード増幅光ファイバは、空間フィルタの役割を果たし、2つの二次レーザパルスを単一モードに投射し、ファイバの単一モードにおいて二次レーザパルスを「クリーニング」する。従って、本出願は、90%以上の空間的重複の程度が、このように形成されたパルス群のパルス間で取得され得ることを示した。
【0045】
パルスの空間的重複は、例えば、単一モード増幅光ファイバに下流に配置された集束レンズの焦点面に形成されたパルス画像の相互相関を与える関数によって測定される。例えば、単一モード増幅ファイバの出口に配置された集束レンズの焦点に形成されたビームの2つの画像間の相互相関を与える関数r(u,v)が計算される。この関数は、次の式によって与えられる。
【数1】
式中、f(x,y)及びg(x,y)は、2つのダブレットパルスに対応する画像であり、
【数2】
及び
【数3】
は、2つの画像の平均強度である。関数「r」の最大値は、2つの画像間の類似度を与え、最大値は、類似度が1に接近するのにつれて増進する。更に、「r」の最大ピークの位置は、2つの画像間の重複度を示す。最大値が、座標のポイントu=0、v=0に集中されればされるほど、重複は、より優れている。従って、最大値が1に近い、例えば0.99より高いピークであって、座標のポイント(0,0)に中心を置くか又は座標のポイント(0,0)に近いピークを有する相互相関を与える関数「r」が、ことによると求められる。
【0046】
単一モード増幅光ファイバはまた、二次レーザパルスの強度を増幅できるようにし、従ってそれほど強力ではない主レーザ光源を使用できるようにする。
【0047】
単一モード増幅ファイバは、反転分布を誘発するために、ダイオード又はレーザなどの励起手段によって放出された光ビームで光学的に励起されてもよい。二次レーザパルスが、単一モード増幅光ファイバを通過する場合に、それらの強度は、活性イオンによって引き起こされた誘導放出効果を介して分離される。活性ファイバの全ての長さにわたる20~30dBの合計利得が、このように達成され得る。
【0048】
単一モード増幅光ファイバの入口における二次パルスの強度は、単一モード増幅光ファイバが飽和利得領域で動作することを保証するために、調整されるのが好ましい。単一モード増幅光ファイバの入口におけるパルスの強度は、主光源によって、又は前置増幅器を挿入することによって、上流で調整される。飽和利得領域は、外部環境に対してレーザ光源を無感応にするという利点を有する。特に、自由空間におけるレーザ光源の動作中に、増幅されたパルスの振幅は、外部環境における変動(機械的変動、熱変動等)にそれほど敏感ではなく、従って1つの測定から次の測定へと、より安定している。従って、単一モード増幅光ファイバが、飽和利得領域で動作する場合に、二次レーザパルスの強度における変動、又はファイバへの二次レーザパルスの結合における変動は、パルスの空間的重なりも、又は単一モード増幅光ファイバから出力されたパルス群におけるパルスの強度も変更しない。
【0049】
図2に示されているように、増幅モジュール26は、前記単一モード増幅ファイバ262において反転分布を達成するために、レーザダイオード266を含んでもよい。この目的で、励起光ビームが、ダイオード266によって放出され、且つレンズ265及び266並びにミラー264などの伝送素子を用いて、光ファイバに注入される。励起光ビームは、対向伝搬方式で単一モード増幅光ファイバに、即ち光ファイバの出口262’’に、又は共伝搬方式で、即ち光ファイバの入口262’に注入されてもよい。
【0050】
単一モード増幅光ファイバは、例えばダブルクラッドファイバであり、そのコアは、希土類イオン(例えば、エルビウム、ネオジム、イッテルビウム、ツリウム、プラセオジム、又はホルミウムイオン)などの活性イオンでドープされる。単一モード増幅光ファイバは、ドープされた大モードエリアファイバ、若しくは例えば最大80μmに及ぶコア直径を備えた、単一モード動作を保証する分散モードフィルタリングを達成するファイバ、又は大ピッチ(LPF)ロッド型フォトニック結晶ファイバでさえあってもよい。単一モード増幅光ファイバは、単一モードを支援し、且つ有利なことに20~30dBに含まれる合計利得を生成する十分な長さを有する。
【0051】
1μmの波長で動作する、イッテルビウムイオンでドープされたコアを備えた単一モード増幅光ファイバの場合に、915又は976nmで発光する励起ダイオードが、例えば用いられてもよい。
【0052】
図2において、次に、光ファイバから出力された二次レーザパルス3、4は、例えばレンズ263を用いて収集される。二次レーザパルス3及び4の空間エネルギ分布(3’)は、
図2の右側における挿入部分に示されているように、今や空間的に重ねられて共線的である。更に、
図2の例の飽和利得領域ゆえに、光ファイバから出力された二次レーザパルス3、4の強度は、ほぼ同一である。
【0053】
図3は、本明細書によるレーザ光源の別の例を示す。
図3のレーザ光源30は、例えば、主レーザ光源22と、パルスストレッチャ32と、1つ又は複数の干渉計(
図3には単一の干渉計24だけが示された)と、単一モード増幅光ファイバを含む増幅モジュール26と、パルス圧縮器36と、を含む。
【0054】
図3の例は、ファイバから出力されるパルスの劣化を引き起こす可能性があるファイバの損傷又は非線形効果の生成のリスクを低減させながら、高強度パルスの群を形成するという利点を更に有する。
【0055】
主レーザ光源22は、サブピコ秒幅の少なくとも1つの主レーザパルスで放出するのに適している。主レーザパルスは、主レーザパルスを時間的に伸長するためにパルスストレッチャ32に送られ、その結果として、その後、主レーザパルスは、50psより長いパルス幅を有する。主パルスの時間的伸長は、50~1000分の1以下に、そのピーク出力を低下させる。ストレッチャは、単一モード増幅光ファイバの上流に配置されてもよい。
図3の例において、ストレッチャ23は、干渉計24の上流に配置される。次に、伸長された主レーザパルスは、単一モード増幅光ファイバの出口へと、
図2の主レーザパルスが従った経路と同じ経路に従う。
【0056】
単一モード増幅光ファイバの下流で、空間的に識別できない二次レーザパルスは、パルス圧縮器36に送られる。パルス圧縮器は、二次レーザパルスを時間的に圧縮できるようにし、その結果、後になって、二次レーザパルスの幅は、それらが主光源から出力される際にサブピコ秒である。増幅された二次レーザパルスの時間的圧縮は、空間的に重ねられた二次レーザパルスのピーク出力における実質的増加をもたらす。
【0057】
ストレッチャは、例えばバルク格子型である。それは、正常分散光ファイバ、又は光ファイバ若しくはバルクガラスにおいて光で刻印された可変ピッチブラッグ格子の問題であり得る。
【0058】
圧縮器は、
図3に示されているように、増幅された二次パルスの直線偏光の向きを修正するための半波長板361と、直線偏光を円偏光に変換するために四分の一波長板を通って可変ピッチ体積ブラッグ格子364の方へ二次レーザパルスを反射するための偏光キューブビームスプリッタ362と、を含んでもよい。可変ピッチ体積ブラッグ格子によって完全に反射された二次レーザパルスは、それらの幅が、主パルスの幅に近いサブピコ秒値に低減されるのを知る。圧縮された二次パルスは、500fsより短いパルス幅及び2MWより高いピーク出力を備えた空間的に重ねられた二次レーザパルスを放出する目的で、四分の一波長板及び偏光ビームスプリッタの結合された行動によって、レーザ光源の出口の方へ導かれる。1対の回折格子などの他のタイプの圧縮器が用いられてもよい。
【0059】
図4は、本明細書の一例に従って、レーザ光源の例を示し、そこではレーザ光源は全ファイバである。この例において、ストレッチャ32及び圧縮器36もまた示されたが、しかしこれら要素は、任意選択である。ストレッチャ32は、全ファイバ干渉計44の上流に配置され、圧縮器36は、増幅モジュール26に下流に配置される。この例において、主レーザ光源22と増幅モジュール26との間のパルス経路は、全ファイバである。同様に、干渉計44は、全ファイバである。この場合に、干渉計は、全ファイバシステムに配置できる、且つ500ビコ秒より長い遅延を取得できるようにする少なくとも1つの電動遅延線463を含んでもよい。要素461及び467は、ファイバカプラである。主パルスは、単一モードファイバカプラ461によって、2つのパルスに分割される。干渉計の2つのアームを通る伝搬後に、2つのアームは、カプラ467において再結合される。
【0060】
ストレッチャを備えた全ファイバレーザ光源の場合に、全ファイバ干渉計を通るパルスの伝搬中に、非線形効果によるパルスの歪みを制限するために、干渉計44の上流にストレッチャ32を配置することが有利になり得る。
【0061】
図4の例において、スペクトル的又は時間的形成手段462もまた示されている。スペクトル的形成システムは、スペクトルフィルタ(誘電体帯域通過フィルタ又は一定ピッチブラッグ格子に基づいたフィルタ)からなってもよい。パルスは、例えば、可変ピッチブラッグ格子に基づいたストレッチャで時間的に形成されてもよい。もちろん、かかる手段は、例えば、幅及び出力において非対称である二次レーザパルスを生成可能にするために、干渉計のアーム(全ファイバでない1つを含む)のいずれか1つに統合されてもよい。この構成は、LIBS測定の感度を改善するという利点を有する。例えば、2つの非対称パルスがレーザ光源によって放出された場合に、高ピーク出力及び短い幅の第1のパルスは、解析される材料をアブレートする役目をし、より低いピーク出力の第2の大いに伸長されたパルスは、群の第1のパルスによって形成されたプラズマを加熱する役目をする。
【0062】
単一モード増幅光ファイバが、飽和利得領域で動作することを保証するために、1つ又は複数の全ファイバ前置増幅器が、単一モード増幅光ファイバの上流に用いられてもよいことが注目される。更に、二次パルスは、システムの主光源が、圧縮ステージまでモノリシックアーキテクチャを有することを可能にするスプライス(溶接によって達成される)を介して、単一モード増幅光ファイバに結合されてもよい。例えば、
図4の実施形態では、ファイバにおいて利得飽和を達成するように出力レベルを調整するために、単一モード増幅光ファイバの上流に前置増幅器を配置することが可能である。
【0063】
図5、
図6及び
図7は、光源が、トリプレット又はクワドラプレット(quadruplet)など、2つを超えるパルスの群を放出し得る他の例示的な実施形態を示す。この目的で、レーザ光源は、偶数のグループ分け(
図5、
図6、
図7)を生成するために直列に配置されるか、又は奇数のグループ分けを生成するために互いにインターリーブされる複数の干渉計を含んでもよい。
【0064】
図5において、本明細書の一例によるレーザ光源は、2つの干渉計を直列に含む。第1の干渉計24からの出力として、2つの二次レーザパルス1、2が生成される。2つの二次レーザパルス1、2は、第2の干渉計54、例えばマッハツェンダー干渉計に送られる。第2の干渉計54は、ちょうど第1の干渉計24のように、2つの完全反射ミラー543、544、並びに2つの半透鏡541及び542を含んでもよい。1つの半透鏡541を用いて、第1の干渉計から出力された2つの二次レーザパルスは、2つの相異なる光路をたどる2つの二次レーザパルスの2つの束11、12及び13、14に分割される。次に、2つの反射ミラー543、544を用いて、二次レーザパルス13及び14の光路は、二次レーザパルス11及び12の光路に対して長くされる。半透鏡542は、4つの二次レーザパルスで構成されたパルス群を形成するために、4つの二次レーザパルスを組み合わすことができるようにする。パルスのエネルギの空間的分布11’、12’、13’及び14’は、
図5の左側底部の挿入部分に示されている。一方で二次レーザパルス11、12、及び他方で二次レーザパルス13、14は、第1の干渉計24によって較正された遅延Δtだけ分離される。パルス11、12の束は、第2の干渉計54によって較正された遅延Δt’だけ、パルス13、14の束に対して時間的にオフセットされる。次に、4つの二次レーザパルスは、
図5の右側底部の挿入部分に示されているように、4つの空間的に重ねられたパルス15、16、17、18の群を形成するために、単一モード増幅光ファイバを含む増幅モジュール26に送られる。
【0065】
もちろん、要件に依存し、本明細書に従って、2つを超える干渉計をレーザ光源に挿入することが可能である。
【0066】
図6は、4つのパルスの群を放出するための全ファイバレーザの光源の、本明細書による例を示す。
図4の要素の幾つかはまた、この例でも見い出される。即ち、主レーザ光源22と、全ファイバの第1の干渉計44と、単一モード増幅ファイバを含む増幅モジュール26と、である。この例は、4つのパルスの群を形成するための、直列に配置された2つの全ファイバ干渉計44、64の事例を示す。動作は、
図5の例の動作に似ている。同様に、全ファイバ要素は、
図4の要素に似ている。具体的には、主レーザ光源から単一モード増幅光ファイバの入口への光路は、完全に全ファイバである。
【0067】
1つ又は複数の実施形態によれば、単一モード増幅光ファイバが、飽和利得領域で動作することを保証するために、任意選択的に1つ又は複数の全ファイバ前置増幅器が、単一モード増幅光ファイバの上流で用いられてもよい。
【0068】
図7は、主光源22の後だが、第1の干渉計74の前に配置されたストレッチャ32と、単一モード増幅光ファイバを含む増幅モジュール26に下流に配置された圧縮器36と、を更に含む、4つのパルスの群を放出するための全ファイバレーザ光源の概略図の本明細書による例を示す。この光源は、
図3の光源と同じ方法で動作する。図に示されているように、第2の干渉計76もまた用いられてもよい。
【0069】
本明細書によるレーザ光源は、LIBS測定に完全に適している。
図8は、本明細書によるLIBS解析システムの例を示す。LIBS解析システムは、パルス群を放出するための、本明細書によるレーザ光源80を含む。パルス群は、例えばレンズ81を用いて解析されるサンプル83上に集束される。パルス群とサンプル83との間の相互作用は、第1にプラズマ82を生成し、次に第2に光放射を生成する。放出された放射の小部分が、例えばレンズ841、842のダブレットなどの光学系84によって収集される。次に、ビームは、収集された放射のスペクトル解析に基づいて、解析される対象のLIBSスペクトルを取得できるようにする分光計85によって検出される。
【0070】
本明細書の1つ又は複数の例によれば、レーザ光源は、パルス群の列を放出し、従って幾つかのショットにわたって平均されたLIBS測定を行うことが可能である。
【0071】
図9A及び
図9Bは、本明細書に従ってLIBS解析システムで取得されたスペクトルを示す。解析システムは、この例において、ダブレットパルスを放出するための
図2に示されているようなレーザ光源を含む。主レーザ光源は、18MHzの繰り返し率及び1040nmの波長で500fs幅のパルスを放出するモードロック全ファイバレーザを含む。それに続くのは、40分の1より小さく繰り返し率を分割するための音響光学変調器、及びパワー増幅器が飽和されることを保証するための全ファイバ前置増幅器である。
図2に示されているようなミラーベースのマッハツェンダー干渉計が、50ps~10nsに含まれる遅延だけ分離された2つの二次パルスを生成するために用いられる。増幅光ファイバは、微細構造ロッド型フォトニック結晶ファイバであり、その80μmの直径のコアは、イッテルビウムイオンでドープされる。ファイバは、全ファイバレーザダイオードによって生成された、976nmを中心とするレーザビームによって対向伝搬モードにおいて励起される。スペクトル92及び96は、
図9A用の50ps及び
図9B用の750psの遅延で、2重パルス領域で取得されたスペクトル範囲375~405nmにおける、アルミニウムから作られたサンプルのアブレーションプラズマの放出スペクトルに対応する。これらのスペクトルは、単一パルス領域で取得された(同一の)スペクトル94、98と比較される。単一パルス領域は、干渉計のアームの1つをブロックすることによって、解析されるサンプルと単一パルスを相互作用させることに存した。これらの実験において、解析されるサンプルに伝送される合計エネルギが、1つの実験から次の実験へと一定に保たれたことが注目される。特に、合計エネルギは、単一パルスLIBSの場合に、パルス当たり2μJに設定され、DP-LIBSの場合に、パルス当たり1μJに設定され、これはまた、合計2μJに対応する。アルミニウムの2つの主な周知の光線は、394.40nm及び396.15nmを中心とするが、測定されたスペクトルにおいてはっきり見ることが可能である。単一パルスLIBS領域において取られた測定値に関して、これらの光線の検出感度は、DP-LIBSにおいて50psのパルス間遅延で10倍に、且つ750psの遅延で20倍に増加する。
【0072】
一定数の例示的な実施形態によって説明したが、パルス群を放出するためのレーザ光源、レーザ誘起破壊分光法解析システム、及びパルス群を生成するための方法は、当業者にとって明白と思われるであろう様々な変形、修正及び改善を有し、従ってこれらの様々な変形、修正、及び改善は、次の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に入る。