(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ワーク加工用シートおよび加工済みワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221021BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221021BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221021BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20221021BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/08
C09J133/14
(21)【出願番号】P 2019558016
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2018033767
(87)【国際公開番号】W WO2019111481
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2017235377
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 美紗季
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/199787(WO,A1)
【文献】特開2013-067708(JP,A)
【文献】特開2017-069474(JP,A)
【文献】特開2018-172596(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 133/08
C09J 133/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、
前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R
0が、28原子%以下であり、
前記粘着剤層内の位置のうち、前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面から深さ100nmの位置におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R
100が、20原子%以上、29原子%以下である
ことを特徴とするワーク加工用シート。
【請求項2】
前記酸素原子比率R
0の値は、前記酸素原子比率R
100の値よりも大きく、
下記式(1)
酸素原子比率の減少率(%)={(酸素原子比率R
0-酸素原子比率R
100)/酸素原子比率R
0}×100 …(1)
から算出される酸素原子比率の減少率は、0%以上、15%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線重合性分岐重合体を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク加工用シート。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、前記官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる活性エネルギー線硬化性重合体を含有するものであり、
前記アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトールおよび(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールから選択される少なくとも1種を含む
ことを特徴とする請求項
3に記載のワーク加工用シート。
【請求項5】
ダイシングシートであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のワーク加工用シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のワーク加工用シートの前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面と、ワークとを貼合する貼合工程と、
前記ワーク加工用シート上にて前記ワークを加工することで、前記ワーク加工用シート上に積層された加工済みワークを得る加工工程と、
前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させ、前記加工済みワークに対する前記ワーク加工用シートの粘着力を低下させる照射工程と、
活性エネルギー線照射後の前記ワーク加工用シートから、前記加工済みワークを分離する分離工程と
を備えることを特徴とする加工済みワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングに好適に使用することができるワーク加工用シート、および当該ワーク加工用シートを用いた加工済みワークの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類(以下、これらをまとめて「被切断物」と記載することがある。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(以下、「チップ」と記載することがある。)に分離(ダイシング)されるとともに個々に分離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等の被切断物は、基材および粘着剤層を備えるワーク加工用シートに貼着された状態で、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップおよびマウンティングの各工程に付される。
【0003】
上述したダイシング工程では、回転するダイシングブレードと、被切断物やワーク加工用シートとの間で生じる摩擦熱により、ダイシングブレード、被切断物およびワーク加工用シートが加熱される。また、ダイシング工程では、被切断物やワーク加工用シートから切削片が生じ、それがチップに付着することがある。
【0004】
そのため、ダイシング工程を行う際には、通常、切断部分に対して流水を供給して、ダイシングブレード等を冷却するとともに、生じた切削片をチップから除去することが行われる。
【0005】
特許文献1には、このような流水による切削片の除去を促進する目的で、紫外線照射前の粘着剤層における基材と反対側の面の、純水に対する接触角が82°~114°であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が44°~64°であるとともに、紫外線照射前の粘着剤層における、プローブタック試験のピーク値が294~578kPaであるワーク加工用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のワーク加工用シートを使用してダイシング工程を行う場合、ワーク加工用シートの粘着剤層に由来する粘着剤を、加工後のワークから十分に除去することができなかった。
【0008】
また、一般的に、ピックアップ工程においてチップをワーク加工用シートから分離する際には、過度な力を要することなく分離することができ、それによりチップの破損等の不具合が生じないことが求められる。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、加工後のワークに付着した粘着剤層に由来する粘着剤を、流水によって良好に除去することができるとともに、加工後のワークを良好に分離することが可能なワーク加工用シート、および当該ワーク加工用シートを用いた加工済みワークの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0が、28原子%以下であり、前記粘着剤層内の位置のうち、前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面から深さ100nmの位置におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R100が、20原子%以上、29原子%以下であることを特徴とするワーク加工用シートを提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面(以下「粘着面」という場合がある。)におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0が28原子%以下であることにより、粘着面が適度な疎水性を有するものとなり、加工後のワークを良好に分離し易いものとなる。また、粘着剤層内の位置のうち粘着面から深さ100nmの位置におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R100が20原子%以上、29原子%以下であることにより、加工後のワークに付着した粘着剤において、その表面が適度な親水性を有するものとなり、加工後のワークに付着した粘着剤を流水によって良好に除去することが可能となる。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記酸素原子比率R0の値は、前記酸素原子比率R100の値よりも大きく、下記式(1)
酸素原子比率の減少率(%)={(酸素原子比率R0-酸素原子比率R100)/酸素原子比率R0}×100 …(1)
から算出される酸素原子比率の減少率は、0%以上、15%以下であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)において、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線重合性分岐重合体を含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1~3)において、前記粘着剤組成物は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、前記官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる活性エネルギー線硬化性重合体を含有するものであり、前記アクリル系共重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトールおよび(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1~4)においては、ダイシングシートであることが好ましい(発明5)。
【0016】
第2に本発明は、前記ワーク加工用シート(発明1~5)の前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面と、ワークとを貼合する貼合工程と、前記ワーク加工用シート上にて前記ワークを加工することで、前記ワーク加工用シート上に積層された加工済みワークを得る加工工程と、前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させ、前記加工済みワークに対する前記ワーク加工用シートの粘着力を低下させる照射工程と、活性エネルギー線照射後の前記ワーク加工用シートから、前記加工済みワークを分離する分離工程とを備えることを特徴とする加工済みワークの製造方法を提供する(発明6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るワーク加工用シートは、加工後のワークに付着した粘着剤層に由来する粘着剤を、流水によって良好に除去することができるとともに、加工後のワークを良好に分離することができる。また、本発明に係る加工済みワークの製造方法によれば、加工済みワークを効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔ワーク加工用シート〕
本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材と、基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。
【0019】
1.ワーク加工用シートの物性
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面(粘着面)におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0が、28原子%以下である。この酸素原子比率R0が28原子%以下であることで、粘着面が適度な疎水性を有するものとなり、ワーク加工用シートの加工後のワークに対する粘着力が過度に高くなることが抑止される。これにより、ワーク加工用シートから加工後のワークを良好に分離することが可能となる。特に、ワークとしてシリコンウエハを使用する場合、シリコンウエハの表面には比較的親水性の基が多く存在しており、この面に対して、適度な疎水性を有する粘着面が接するものとなることにより、加工後のワークを容易に分離し易いものなる。なお、上述した酸素原子比率R0の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0020】
上述した酸素原子比率R0が28原子%を超えると、粘着面が比較的高い親水性を有するものとなり、ワーク加工用シートの加工後のワークに対する粘着力が過度に高いものとなる。この場合、ワーク加工用シートから加工後のワークを引き離す際に過度な力を要するものとなり、加工後のワークの破損といった不具合が生じる可能性がある。このような問題を回避する観点から、上記酸素原子比率R0は、27原子%以下であることが好ましい。
【0021】
また、上記酸素原子比率R0は、20原子%以上であることが好ましく、特に22原子%以上であることが好ましい。上記酸素原子比率R0が20原子%以上であることにより、粘着面における親水性が適度なものとなり、ワーク加工用シートがワークに対して良好な粘着力を発揮し易くなる。それにより、ワークの加工時やワーク加工用シート上にワークまたは加工後のワークを積層した状態で搬送する時などにおいて、加工前または後のワークの意図しない剥がれを効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層内の位置のうち粘着面から深さ100nmの位置におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R100が、20原子%以上、29原子%以下である。これによって、粘着剤層の内部の粘着剤が適度な親水性を有するものとなる。
【0023】
一般的に、ダイシングブレードを用いたダイシングの際には、切断部分に対して流水の供給を行いながら、回転するダイシングブレードを被切断物にあてて、当該被切断物の切断を行う。このとき、回転するダイシングブレードは、被切断物だけでなく粘着剤層にも接触することがある。このように接触した部分では、粘着剤層の切断や、粘着剤層を構成している粘着剤のダイシングブレードによる巻き上げが生じ、その結果、当該粘着剤の小片が形成されることとなる。当該小片は、被切断物や形成されたチップに付着し、その後のチップの取り扱いに悪影響を与えたり、チップや当該チップが搭載される製品の品質を低下させる原因となる。ここで、粘着剤の小片は、上述したように形成されるため、当該小片の殆どが、粘着剤層を構成していたときには粘着剤層の内部に存在していたものとなっている。
【0024】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、上述したように、粘着剤層の内部の粘着剤が適度な親水性を有するものとなっているため、加工の際に上述したような粘着剤の小片が生じ、当該小片が加工後のワーク(チップ等)に付着した場合であっても、当該小片の表面が適度な親水性を有するものとなる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シートによれば、加工時に供給される流水によって、加工後のワークから、それらに付着した粘着剤を良好に除去することができる。
【0025】
一方、酸素原子比率R100が20原子%未満であると、粘着剤層の内部の粘着剤が水に対して十分な親和性を有するものとならず、粘着剤の小片を加工後のワークから十分に除去することができなくなる。このような問題を回避する観点から、上述した酸素原子比率R100は、21原子%以上であることが好ましい。
【0026】
また、上述した酸素原子比率R100が29原子%を超えると、粘着剤層の内部の粘着剤が水に対して過度に親和性を示すものとなり、それに伴い、粘着剤層の表面においても水に対する親和性が高いものとなる。それによって、水の浸入を抑制することができず、ダイシング時にチップ飛びやチップ欠けが生じる。このような問題を回避する観点から、上述した酸素原子比率R100は、27原子%以下であることが好ましい。なお、当該酸素原子比率R100の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0027】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、酸素原子比率R0および酸素原子比率R100がそれぞれ前述した範囲となる限り、酸素原子比率R100の値が酸素原子比率R0の値よりも大きくなってもよく、または、酸素原子比率R0の値が酸素原子比率R100の値よりも大きくなってもよい。あるいは、酸素原子比率R0と酸素原子比率R100とが同じ値となってもよい。酸素原子比率R0の値が酸素原子比率R100の値よりも大きい場合には、下記式(1)
酸素原子比率の減少率(%)={(酸素原子比率R0-酸素原子比率R100)/酸素原子比率R0}×100 …(1)
から算出される酸素原子比率の減少率が、0%以上であることが好ましく、特に1%以上であることが好ましく、さらには2%以上であることが好ましい。また、上記減少率は、15%以下であることが好ましく、特に12%以下であることが好ましく、さらには10%以下であることが好ましい。酸素原子比率の減少率が上述した範囲であることにより、流水によって粘着剤を良好に除去することと、ワーク加工用シートから加工後のワークを良好に分離することとを両立し易いものとなる。
【0028】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力が、1000mN/25mm以上であることが好ましく、特に1200mN/25mm以上であることが好ましく、さらには1500mN/25mm以上であることが好ましい。ここにおける粘着力は、ワーク加工用シートに対して活性エネルギー線を照射しておらず、粘着剤層の硬化が生じていない状態における粘着力をいうものとする。また、本明細書全体において、活性エネルギー線の照射の有無について言及することなく記述された「粘着力」についても、ワーク加工用シートに対して活性エネルギー線を照射しておらず、粘着剤層の硬化が生じていない状態における粘着力をいうものとする。上述した粘着力が1000mN/25mm以上であることで、加工の対象となるワークをワーク加工用シート上に良好に保持し易くなり、加工時や、ワークまたは加工後のワークをワーク加工用シート上に積層した状態で搬送する時などにおける、加工前または後のワークの剥がれを良好に抑制することができる。特に、加工後のワークがチップである場合には、当該チップがワーク加工用シートから飛散することを良好に抑制することができる。
【0029】
また、ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力は、5000mN/25mm以下であることが好ましく、特に4500mN/25mm以下であることが好ましく、さらには3000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が5000mN/25mm以下であることにより、活性エネルギー線の照射後における粘着力を後述する範囲に調整し易いものとなる。なお、ワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0030】
なお、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、ワーク加工用シートに対して活性エネルギー線を照射した後におけるワーク加工用シートのシリコンウエハに対する粘着力が、65mN/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力が65mN/25mm以下であることで、ワークの加工が完了した後に、ワーク加工用シートに対する活性エネルギー線の照射により、加工後のワークをワーク加工用シートから分離することがより容易となる。
【0031】
2.ワーク加工用シートの構成部材
(1)基材
本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、基材は、ワーク加工用シートの使用工程における所望の機能を発揮し、好ましくは、粘着剤層の硬化のために照射される活性エネルギー線に対して良好な透過性を発揮するものである限り、特に限定されない。
【0032】
例えば、基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましく、その具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。基材としては、上記フィルムの中でも、柔軟性に優れるという観点から、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体フィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0033】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0034】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0035】
基材の厚さは、ワーク加工用シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、通常、20μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、通常、450μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。
【0036】
(2)粘着剤層
本実施形態に係るワーク加工用シートにおいて、粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成され、所望の粘着力を発揮することができるとともに、前述した酸素原子比率R0および酸素原子比率R100がそれぞれ前述した範囲となるものであれば、特に限定されない。
【0037】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されていることで、粘着剤層の粘着面に貼着された加工後のワークと当該粘着面とを分離する際に、活性エネルギー線照射により粘着剤層を硬化させて、ワーク加工用シートの加工後のワークに対する粘着力を低下させることができる。これにより、粘着剤層の粘着面と加工後のワークとの分離が容易となる。
【0038】
本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する粘着剤組成物から形成されたものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する粘着剤組成物から形成されたものであってもよい。
【0039】
最初に、本実施形態における粘着剤層が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する粘着剤組成物から形成されたものである場合について、以下説明する。
【0040】
活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化性重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化性重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0041】
アクリル系共重合体(a1)は、重合体を構成するモノマー単位として、アクリル系共重合体(a1)の親水性を調整するためのモノマー(以下では、「親水性調整モノマー」という場合がある。)を含むことが好ましく、特に、その具体例として、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール((メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル)および(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る粘着シートでは、アクリル系共重合体(a1)が上述した親水性調整モノマーを使用することで、酸素原子比率R100を前述した範囲に調整し易いものとなる。この理由としては、上述した親水性調整モノマーの多くは、酸素原子を比較的多く有しており、当該モノマーから構成されるアクリル系共重合体(a1)を使用することで、粘着剤層の酸素原子の絶対量も多くなり、それにより酸素原子比率R100を前述の範囲に調整し易くなるため、と考えられる。しかしながら、当該理由のみに限定されるものではない。
【0043】
なお、前述した酸素原子比率R100を前述した範囲に調整し易いという観点から、アクリル系共重合体(a1)は、重合体を構成するモノマー単位として、上述したモノマーの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸2-メトキシエチルおよびアクリル酸メトキシエチレングリコールの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0044】
アクリル系共重合体(a1)が重合体を構成するモノマー単位としてアクリル酸メチルを含む場合、アクリル酸メチルの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには30質量%以上であることが好ましい。また、アクリル酸メチルの含有量は、85質量%以下であることが好ましい。これらの含有量であることで、形成される粘着剤層において、前述した酸素原子比率R100を前述した範囲により調整し易くなる。なお、本明細書において、上述したアクリル酸メチルの含有量(質量%)は、アクリル系共重合体(a1)を構成する全モノマーに対する含有量を意味する。また、後述するその他のモノマーの含有量(質量%)についても、アクリル系共重合体(a1)を構成する全モノマーに対する含有量を意味するものとする。
【0045】
また、アクリル系共重合体(a1)が重合体を構成するモノマー単位としてアクリル酸2-メトキシエチルを含む場合、アクリル酸2-メトキシエチルの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましく、さらには30質量%以上であることが好ましい。また、アクリル酸2-メトキシエチルの含有量は、85質量%以下であることが好ましく、特に80質量%以下であることが好ましく、さらには70質量%以下であることが好ましい。これらの含有量であることで、形成される粘着剤層において、前述した酸素原子比率R100を前述した範囲により調整し易くなる。
【0046】
また、アクリル系共重合体(a1)が重合体を構成するモノマー単位として、アクリル酸メチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの両方を含む場合、アクリル酸メチルおよびアクリル酸2-メトキシエチルの含有量の合計値は、10質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましく、さらには50質量%以上であることが好ましい。また、上記合計値は、90質量%以下であることが好ましく、特に85質量%以下であることが好ましい。上記合計値がこれらの範囲であることで、形成される粘着剤層において、前述した酸素原子比率R100を前述した範囲により調整し易くなる。
【0047】
さらに、アクリル系共重合体(a1)が重合体を構成するモノマー単位としてアクリル酸メトキシエチレングリコールを含む場合、アクリル酸メトキシエチレングリコールの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましい。また、アクリル酸メトキシエチレングリコールの含有量は、90質量%以下であることが好ましく、特に85質量%以下であることが好ましい。これらの含有量であることで、形成される粘着剤層において、前述した酸素原子比率R100を前述した範囲により調整し易くなる。
【0048】
アクリル系共重合体(a1)は、上述した親水性調整モノマー以外に、官能基含有モノマーから導かれる構成単位、および(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を含むことが好ましい。
【0049】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーが挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーおよび置換アミノ基含有モノマーの少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0050】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
上記アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
なお、カルボキシ基含有モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。しかしながら、アクリル系共重合体(a1)は、カルボキシ基含有モノマーを含まないことが好ましい。アクリル系共重合体(a1)がカルボキシ基含有モノマーを含まないことにより、水接触角の調整がより容易となる。
【0053】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、1質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、35質量%以下で含有することが好ましく、特に30質量%以下で含有することが好ましい。
【0054】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他、例えば、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)が好ましく用いられる。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
脂環式構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
さらに、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましく、さらには70質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、99質量%以下で含有することが好ましく、特に95質量%以下で含有することが好ましく、さらには90質量%以下で含有することが好ましい。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)は、好ましくは、上述した親水性調整モノマーと、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することで得ることができるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0059】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0060】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0061】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-(1-アジリジニル)エチル、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0062】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
【0063】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0064】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化性重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であるのが好ましく、特に15万以上であるのが好ましく、さらには20万以上であるのが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であるのが好ましく、特に100万以下であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0065】
本実施形態における粘着剤組成物が、活性エネルギー線硬化性重合体(A)といった活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを含有する場合であっても、当該粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0066】
活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0067】
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化性重合体(A)とともに、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0069】
ここで、活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、本実施形態における粘着剤組成物が、光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0070】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
粘着剤組成物中における光重合開始剤(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に6質量部以下であることが好ましい。
【0072】
本実施形態における粘着剤組成物は、粘着剤層における酸素原子比率を調整するための添加剤(D)を含有することが好ましい。このような添加剤の例としては、活性エネルギー線重合性分岐重合体、分岐重合体、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、粘着剤層における酸素原子比率を所望の範囲に調整し易いという観点から、活性エネルギー線重合性分岐重合体を使用することが好ましい。
【0073】
活性エネルギー線重合性分岐重合体とは、活性エネルギー線重合性化合物の一種であって、活性エネルギー線重合性基および分岐構造を有する重合体を意味する。本実施形態における粘着剤層が、活性エネルギー線重合性分岐重合体を含有する粘着剤組成物から形成されていることで、粘着面におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0を28原子%以下に調整することが容易となる。この理由としては、それに限定されないものの、次のことが考えられる。活性エネルギー線重合性分岐重合体を含有する粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成する際、活性エネルギー線重合性分岐重合体は、粘着剤層中の表面側に偏在し易い。そのため、形成された粘着剤層では、内部と比較して表面に近い部分ほど、活性エネルギー線重合性分岐重合体の含有量が多く存在するものとなる。ここで、活性エネルギー線重合性分岐重合体自体は、酸素原子比率が比較的小さい成分であるため、活性エネルギー線重合性分岐重合体がより多く存在する粘着面では、28原子%以下という酸素原子比率を達成し易いものとなる。
【0074】
また、活性エネルギー線重合性分岐重合体は活性エネルギー線重合性基を有することから、ワーク加工用シートに対して活性エネルギー線を照射した際には、活性エネルギー線重合性分岐重合体同士または活性エネルギー線重合性分岐重合体と活性エネルギー線硬化性基を有する成分との間で重合反応することができ、これにより、活性エネルギー線重合性分岐重合体が加工後のワークに移行することが抑制されるとともに、活性エネルギー線照射後の粘着剤層がより硬化するものとなり、加工後のワークのワーク加工用シートからの分離を効果的に行い易くなる。
【0075】
活性エネルギー線重合性分岐重合体は、上述した通り、活性エネルギー線重合性基および分岐構造を有する重合体である限り、具体的な構造(例えば、分岐構造の程度、一分子中に有する活性エネルギー線重合性基の数)は特に限定されない。このような活性エネルギー線重合性分岐重合体を得る方法としては、例えば、2個以上のラジカル重合性二重結合を分子内に有するモノマーと、活性水素基および1個のラジカル重合性二重結合を分子内に有するモノマーと、1個のラジカル重合性二重結合を分子内に有するモノマーとを重合させることにより得られる、分岐構造を有する重合体と、活性水素基と反応して結合を形成可能な官能基および少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を分子内に有する化合物を反応させることにより得ることができる。上述した3種のモノマーは、それぞれ(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸であってもよく、この場合、活性エネルギー線重合性分岐重合体はアクリル系重合体となる。
【0076】
活性エネルギー線重合性分岐重合体の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、特に3000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、100000以下であることが好ましく、特に30000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上述した範囲であることで、粘着面におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0を28原子%以下に調整し易いものとなる。
【0077】
粘着剤組成物中における添加剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)に対して、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましい。添加剤(D)の含有量が上述した範囲であることで、粘着剤層における酸素原子比率を所望の範囲に調整し易いものとなる。
【0078】
本実施形態における粘着剤組成物は、以上説明した成分に加えて、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(E)、架橋剤(F)等が挙げられる。
【0079】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(E)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000~250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(E)を活性エネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(E)の配合量は特に限定されず、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して0質量部超、50質量部以下の範囲で適宜決定される。
【0080】
架橋剤(F)としては、活性エネルギー線硬化性重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0081】
架橋剤(F)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に3質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(F)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に17質量部以下であることが好ましい。
【0082】
次に、本実施形態における粘着剤層が、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する粘着剤組成物から形成されたものである場合について、以下説明する。
【0083】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0084】
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー1質量部以上であるのが好ましく、特に60質量部以上であるのが好ましい。また、当該配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー200質量部以下であるのが好ましく、特に160質量部以下であるのが好ましい。
【0085】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)、添加剤(D)や架橋剤(F)を適宜配合することができる。
【0086】
粘着剤層は、1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、50μm以下であることが好ましく、特に40μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが上記範囲であることで、ワークに対して所望の粘着力を達成し易くなる。
【0087】
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面をワークに貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0088】
(4)その他の部材
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、上述のように接着剤層を備えることで、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。このようなワーク加工用シートでは、接着剤層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0089】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このようなワーク加工用シートでは、保護膜形成層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0090】
なお、本願実施形態に係るワーク加工用シートは、酸素原子比率R0および酸素原子比率R100がそれぞれ前述した範囲となるものであるが、粘着剤層に対して上述した接着剤層または保護膜形成層が積層される場合には、これらの層が積層される前の粘着剤層について、酸素原子比率R0および酸素原子比率R100がそれぞれ前述した範囲となればよい。
【0091】
3.ワーク加工用シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用シートの製造方法は特に限定されず、好ましくは、本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材の片面側に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0092】
基材の片面側への粘着剤層の積層は、公知の方法により行うことができる。例えば、剥離シート上において形成した粘着剤層を、基材の片面側に転写することが好ましい。この場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離処理された面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、ワーク加工用シートをワークに貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するために用いてもよい。
【0093】
粘着剤層を形成するための塗工液が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内の活性エネルギー線硬化性重合体(A)または活性エネルギー線非硬化性ポリマーと架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層させた後、得られたワーク加工用シートを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0094】
上述のように剥離シート上で形成した粘着剤層を基材の片面側に転写する代わりに、基材上で直接粘着剤層を形成してもよい。この場合、前述した粘着剤層を形成するための塗工液を基材の片面側に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成する。
【0095】
4.ワーク加工用シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用シートは、ワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シートの粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用シート上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用することができる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
【0096】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートが、前述した接着剤層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートが、前述した保護膜形成層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。
【0097】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層内の位置のうち粘着面から深さ100nmの位置におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R100が前述した範囲であることにより、粘着剤層を構成する粘着剤が加工後のワークに付着した場合であっても、流水により当該粘着剤を良好に除去することができる。さらに、粘着面におけるX線光電子分光分析で測定した酸素原子比率R0が前述した範囲であることにより、加工後のワークを良好に分離し易いものとなる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シートは、流水が使用される加工に使用することが好適であり、特に、切断部分に対して流水を供給することを伴うダイシングに使用することが好適である。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シートは、ダイシングシートとして使用することが好適である。
【0098】
本実施形態に係るワーク加工用シートをダイシングシートとして使用する場合、ダイシングの条件および流水の供給条件としては、一般的な条件を使用することができる。特に流水の供給条件に関して、使用される水としては、純水等を使用することが好ましい。水の供給量としては、0.5L/min以上であることが好ましく、特に1L/min以上であることが好ましい。また、水の供給量としては、2.5L/min以下であることが好ましく、特に2L/min以下であることが好ましい。なお、水の温度は特に限定されず、例えば室温程度とすることが好ましい。
【0099】
〔加工済みワークの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る加工済みワークの製造方法は、前述したワーク加工用シートの粘着剤層における基材とは反対側の面と、ワークとを貼合する貼合工程と、ワーク加工用シート上にてワークを加工することで、ワーク加工用シート上に積層された加工済みワークを得る加工工程と、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射して、粘着剤層を硬化させ、加工済みワークに対するワーク加工用シートの粘着力を低下させる照射工程と、活性エネルギー線照射後のワーク加工用シートから、加工済みワークを分離する分離工程とを備える。
【0100】
本実施形態の加工済みワークの製造方法に使用されるワーク加工用シートは、粘着剤層を構成する粘着剤が加工後のワークに付着した場合であっても、流水により当該粘着剤を良好に除去することができるとともに、加工済みワークを良好に分離し易いものである。そのため、本実施形態の加工済みワークの製造方法によれば、効率的に加工済みワークを製造することが可能となる。
【0101】
以下、本実施形態の加工済みワークの製造方法における各工程について説明する。
【0102】
(1)貼合工程
貼合工程におけるワークとワーク加工用シートとの貼合は、従来公知の手法により行うことができる。なお、続く加工工程においてワークのダイシングを行う場合には、ワーク加工用シートの粘着剤層側の面における、ワークを貼合する領域の外周側の領域に、リングフレームを貼合することが好ましい。また、使用するワークは、製造しようとする加工済みワークに応じた所望のものであってよく、具体例としては、前述したものを使用することができる。
【0103】
(2)加工工程
加工工程においては、ワークに対して所望の加工を行うことができ、例えばバックグラインド、ダイシング等を行うことができる。これらの加工は、従来公知の手法により行うことができる。
【0104】
なお、上記加工として、回転するブレードを用いたブレードダイシングを行う場合、一般的に、ワークとともに、ワーク加工用シートにおける粘着剤層の一部が切断されるものとなる。その際、粘着剤層を構成する粘着剤がブレードによって巻き上げられ、加工済みワークに付着することがある。しかしながら、本実施形態の加工済みワークの製造方法に使用されるワーク加工用シートでは、前述した通り、付着した粘着剤を流水により良好に除去することができる。この観点から、本実施形態における加工は、ダイシングであることが好適であり、特に回転するブレードを用いたブレードダイシングであることが好適である。
【0105】
(3)照射工程
照射工程では、加工済みワークに対するワーク加工用シートの粘着力を所望の程度低下させることができる限り、活性エネルギー線の照射の条件は限定されず、従来公知の手法に基づいて行うことができる。使用する活性エネルギー線の種類としては、例えば、電離放射線、すなわち、X線、紫外線、電子線などが挙げられ、中でも、比較的照射設備の導入の容易な紫外線が好ましい。
【0106】
(4)分離工程
分離工程では、加工の種類や得られた加工済みワークに応じた方法により、分離を行う。例えば、加工としてダイシングを行い、当該ダイシングによって、ワークが個片化されてなるチップが得られた場合には、従来公知のピックアップ装置を用いて、得られたチップを個々にワーク加工用シートからピックアップする。また、当該ピックアップを容易にするために、ワーク加工用シートをエキスパンドして、加工済みワーク同士を離間させてもよい。
【0107】
(5)その他
本実施形態の加工済みワークの製造方法では、上述した工程以外の工程を設けてもよい。例えば、貼合工程の後に、得られたワークとワーク加工用シートとの積層体を所定の位置に搬送する搬送工程や、当該積層体を所定の期間保管する保管工程等を設けてもよい。また、分離工程の後に、得られた加工済みワークを、所定の基盤等にマウントするマウント工程等を設けてもよい。
【0108】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0109】
例えば、基材と粘着剤層との間、または基材における粘着剤層とは反対側の面には、その他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0111】
〔実施例1〕
(1)粘着剤組成物の調製
アクリル酸メチル20質量部と、アクリル酸2-メトキシエチル60質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを共重合させて得られたアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体100gに対して21.4g(アクリル酸2-ヒドロキシエチルのモル数に対して80モル%に相当する。)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、活性エネルギー線硬化性重合体を得た。この活性エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法で測定したところ、60万であった。
【0112】
得られた活性エネルギー線硬化性重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトルエンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)9.32質量部と、添加剤としての活性エネルギー線重合性分岐重合体(日産化学工業社製,製品名「OD-007」,重量平均分子量:14000)0.18質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
【0113】
(2)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記粘着剤組成物を塗布し、加熱により乾燥させた後、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、剥離シート上に厚さ5μmの粘着剤層を形成した。
【0114】
(3)ワーク加工用シートの作製
上記工程(2)で形成した粘着剤層の剥離シートとは反対側の面と、基材としての厚さ80μmのエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)フィルムの片面とを貼り合わせることで、ワーク加工用シートを得た。
【0115】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0116】
〔実施例2および比較例1~3〕
アクリル系共重合体の組成、架橋剤の含有量および添加剤の含有量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを製造した。
【0117】
〔試験例1〕(酸素原子比率の測定)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面(粘着面)における酸素原子比率(%)および当該露出面から深さ100nmの位置における粘着剤層内の酸素原子比率(%)を、X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ社製,製品名「PHI Quantera SXM」)を用いて測定し、それぞれ「0nmの位置」の酸素原子比率(%)および「100nmの位置」の酸素原子比率(%)とした。結果を表1に示す。
【0118】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面を鏡面加工した6インチシリコンウエハの鏡面に重ね合わせ、2kgのローラーを1往復させることにより荷重をかけて貼合し、20分放置することで、粘着力測定用サンプルを得た。
【0119】
当該粘着力測定用サンプルについて、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、紫外線照射前(UV前)の粘着力として表1に示す。
【0120】
〔試験例3〕(粘着剤の除去性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面に、テープマウンター(リンテック社製,製品名「Adwill RAD2500m/12」)を用いて、#2000研磨した6インチシリコンウエハ(厚さ:150μm)の研磨面を貼付した。続いて、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD-6361」)を用いて、以下のダイシング条件で切断部に流水を供給しながら6インチシリコンウエハ側から切断するダイシングを行った。
【0121】
<ダイシング条件>
・ダイシング装置:ディスコ社製 DFD-6361
・ブレード :ディスコ社製 NBC-2H 2050 27HECC
・ブレード幅 :0.025~0.030mm
・刃先出し量 :0.640~0.760mm
・ブレード回転数:50000rpm
・切削速度 :20mm/sec
・切り込み深さ :ワーク加工用シートにおける粘着剤層側の面から15μm
・流水供給量 :1.0L/min
・流水温度 :室温
・カットサイズ :10mm×10mm
【0122】
上記ダイシングにより得られたチップを、ワーク加工用シートから20個分離し、それらに粘着剤が付着しているかどうかを目視にて確認した。そして、以下の基準に基づいて、粘着剤の除去性を評価した。結果を表1に示す。
〇:粘着剤が付着しているチップが0個であった。
×:粘着剤が付着しているチップが1個以上であった。
【0123】
〔試験例4〕(分離性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用シートを用いて、試験例3と同様にダイシングを行った。ダイシングの完了後、ワーク加工用シート側の面に、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm2,光量:190mJ/cm2)、粘着剤層を硬化させた。その後、得られた全てのチップをワーク加工用シートからピックアップした。このとき、ワーク加工用シートにおけるガラスチップが貼付された面とは反対側の面から、ニードルによる突き上げを行った(ニードル数:4本,突き上げ速度:50mm/秒,突き上げ高さ:0.5mm)。このときのピックアップの状況に基づいて、以下の基準より、チップをワーク加工用シートから分離する際の分離性を評価した。結果を表1に示す。
〇:何の問題もなくピックアップできた。
×:チップの分離ができないか、チップの破損が生じたことにより、良好にピックアップできなかった。
【0124】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
MA:アクリル酸メチル
2MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0125】
【0126】
表1から分かるように、実施例で得られたワーク加工用シートによれば、流水によって粘着剤を良好に除去することが可能であるとともに、加工後のワークを良好に分離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のワーク加工用シートは、ダイシングに好適に使用することができる。