(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】エンコーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221021BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G01D5/245 110X
G01D5/347 110X
(21)【出願番号】P 2019563826
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 GB2018051306
(87)【国際公開番号】W WO2018211255
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンレー ジョナサン エバンス
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4210094(JP,B2)
【文献】特許第6125898(JP,B2)
【文献】実公平7-12882(JP,Y2)
【文献】独国特許発明第3402613(DE,C1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0046413(US,A1)
【文献】特許第4771788(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相対的に移動可能な部材の相対変位の程度を提供するための密封線形エンコーダ装置であって、
保護ハウジングと少なくとも1つの細長いシーリングリップを備え、前記細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、その長さに沿って緊張状態に保持され、
前記細長いシーリングリップは、自然湾曲を有し、前記細長いシーリングリップは、その自然湾曲から離れ、前記保護ハウジングにより、より小さい湾曲構成になるように変形され、それによって少なくとも前記シーリング部分を緊張状態に保持する密封線形エンコーダ装置。
【請求項2】
保護ハウジングを備え、前記細長いシーリングリップのシール根元部分は、保護ハウジングのシール根元保持部分によって保持され変形される
請求項1に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項3】
前記細長いシーリングリップは、前記細長いシーリングリップ内に前記自然湾曲を誘発するように構成された長手方向の要素を備える請求項
2に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項4】
前記細長いシーリングリップの前記少なくとも1つのシール根元部分は、前記少なくとも1つのシール根元保持部
の湾曲より大きい自然湾曲を有する請求項
2または請求項
3に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項5】
前記自然湾曲は、前記シーリングリップの長さおよび幅に垂直な概念上の軸周りのものである請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項6】
前記細長いシーリングリップは、真っ直ぐな構成になるように変形され、それによって前記少なくとも1つのシーリング部分を緊張状態に置く請求項
1乃至
5のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項7】
前記細長いシーリングリップの少なくとも前記シーリング部分の長さは、前記変形された状態では、その自然湾曲を示すときの前記シーリング部分の長さと比較して長い請求項
1乃至
6のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項8】
細長いシーリングリップの対を備え、前記細長いシーリングリップは、前記細長いシーリングリップの前記シーリング部分間にシールを形成するために保持される請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項9】
前記細長いシーリングリップの少なくとも前記シーリング部分は、エラストマーを含む請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項10】
スケールおよび読み取りヘッド組立体のスケール信号レシーバは、前記少なくとも1つの細長いシーリングリップの第1の側に配置され、前記スケール信号レシーバは、前記細長いシーリングリップの第2の側の一部に連結され得る請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項11】
前記細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、弾性的に伸張された構成に保持され、それによって少なくとも
前記シーリング部分を緊張状態に置く請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【請求項12】
前記緊張状態による少なくとも前記シーリング部分の長さの増大が、少なくとも0.5%である請求項1乃至12のいずれか一項に記載の密封線形エンコーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置に関する。より詳細には、本発明は、封入エンコーダとしても知られている密封エンコーダ装置として一般的に知られているものに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、通常、機械の相対的に移動可能な部分間の相対変位を測定するために使用される。例えば、エンコーダは、機械の制御システムに位置(またはその派生語、例えば速度および/または加速度)フィードバックを提供するために、例えば機械の1つの部分の、機械の別の部分に対する位置/動作のためのフィードバック制御を提供するために数多くの産業において使用されている。通常、エンコーダは、機械の1つの部分上に提供された一連の位置特徴部を有するスケールと、機械の他の部分上に設けられたスケールを読み取るための読み取りヘッドとを備える。機械の第1および第2の部分の相対変位は、エンコーダスケールおよび読み取りヘッドの相対移動を引き起こして、変位の範囲を決定することを可能にする。換言すれば、スケールおよび読み取りヘッドの相対位置、したがって機械部分の相対位置は、エンコーダの測定寸法に沿って読み取りヘッドによって検出され得る。
【0003】
そのようなエンコーダが利用する技術は、これらが使用される環境がきれいで、汚染、例えばほこり、ごみ、および(例えば、油および/または水ベースになり得る)水分が無いことを必要とし得る。スケールおよび/または読み取りヘッド上の汚染は、エンコーダの性能に悪影響を与え得る。数多くの産業では、エンコーダを使用する機械は、十分にきれいな環境で作動し、この場合、「露出エンコーダ」(または「開放エンコーダ」)と一般的に称されるものが使用され得る。
【0004】
1つの例が工作機械環境である、汚染物質が存在する環境内でエンコーダを使用することが、知られている。工作機械環境では機械加工される対象物からの冷却剤、油、削り屑、および/または破片などの汚染物質が、スケールおよび/または読み取りヘッドを汚染し、エンコーダの正しい作動を妨害する可能性がある。これらの状況において、(封入としても知られている)密封エンコーダが使用され得る。汚染を最小限に抑えるために、スケールおよび読み取りヘッドは、工作機械環境などで使用されるとき、被包され得る。通常、スケールは、保護ハウジング内に提供され、(シーリング部材、ストリップ、または要素とも称される)少なくとも1つのシーリングリップが、通常提供され、これは、相対的に移動可能な部材間(例えば保護ハウジングと別の部分との間)にシールを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102004060093号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0338446号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2は、上記で説明したような例となる密封エンコーダを示す。
【0007】
工作機械環境内などで作動する密封エンコーダは、潤滑油を含む汚染物質によってシーリングリップが衝撃を受けるという問題に直面している。時間が経つにつれて、シーリングリップの効果は弱まり、汚染物質が保護ハウジングに入り、エンコーダの正しい作動を妨害する能力を増大させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、改良されたエンコーダ装置に関する。特に、本発明は、改良されたシーリング構成を有する密封/封入エンコーダ装置に関する。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、2つの相対的に移動可能な部材の相対変位の程度を提供するための密封線形エンコーダ装置であって、少なくとも1つの細長いシーリングリップを備え、シーリングリップの少なくともシーリング部分は、その長さに沿って緊張状態に(すなわち、シーリングリップの少なくともシーリング部分がその長さに沿って正味緊張状態にあるように)保持される、密封線形エンコーダ装置が、提供される。
【0010】
シーリングリップの少なくともシーリング部分をその長さに沿って緊張状態に保つことによってシーリングリップの長寿命性を増大できることが、見出されている。シーリングリップはシーリングリップの効果を低減し得る変形を受けにくいことが、見出されている。
【0011】
理解されるように、密封線形エンコーダ装置は、スケールと、スケールを読み取るための読み取りヘッドとを備える。スケールおよび読み取りヘッド組立体の少なくともスケール信号レシーバは、少なくとも1つの細長いシーリングリップの第1の側に配置され得る(例えば、それにより、シーリングリップは、スケールおよび読み取りヘッド組立体の少なくともスケール信号レシーバ部に、少なくとも1つの細長いシーリングリップの第2の側に存在するあらゆる汚染からの少なくとも何らかの保護を提供する)。
【0012】
少なくとも1つの細長いシーリングリップは、根元部分を備えることができ、例えばこれを介して、少なくとも1つの細長いシーリングリップは、機械部分または保護ハウジングなどの第三者の部材に装着され得る(以下により詳細に説明する)。根元部分は、細長いシーリングリップを第三者の部材に装着するための1つまたは複数の特徴部を備えることができる。例えば、根元部分は、例えば、全体的に丸みがあるか、または円形の断面形状を有する細長いシーリングリップの隆起部分を備えることができる。
【0013】
理解されるように、シーリング部分は、別の部材(例えば、以下でより詳細に説明するような別の細長いシーリングリップ)と相互作用する(例えばこれに触れる)細長いシーリングリップの部分を備え、それによって汚染に対する障壁を提供する。シーリング部分は、別の部材と相互作用する(例えば、これに触れる)表面の部分を取り囲む領域を備えることができる。シーリング部分を形成する(したがって、本発明により緊張状態にある)領域は、幅方向にとった細長いシーリング部分の範囲の少なくとも4分の1、任意選択により、幅方向にとった細長いシーリング部分の範囲の少なくとも3分の1、例えば幅方向にとった細長いシーリング部分の範囲の少なくとも半分を備えることができる。
【0014】
少なくとも1つの細長いシーリングリップのシーリング部分は、根元部分の遠位にあり得る。換言すれば、根元部分および細長いシーリングリップのシーリング部分は、細長いシーリングリップの対向縁に向かって配設され得る。シーリング部分は、細長いシーリングリップの自由縁に向かって(または自由縁に)配置されてよく、根元部分は、細長いシーリングリップの固定された(例えば装着された)縁に向かって(またはその縁)に配置されてよい。したがって、本発明によると、任意選択により、細長いシーリングリップの自由縁は、その長さに沿って緊張状態に保持される。任意選択により、細長いシーリングリップの自由縁を備える、細長いシーリングリップの(幅方向にとった)少なくとも4分の1が、その長さに沿って緊張状態に保持される。任意選択により、細長いシーリングリップの自由縁を備える、細長いシーリングリップの(幅方向にとった)少なくとも3分の1が、その長さに沿って緊張状態に保持される。任意選択により、細長いシーリングリップの自由縁を備える、細長いシーリングリップの(幅方向にとった)少なくとも半分が、その長さに沿って緊張状態に保持される。
【0015】
任意選択により、密封線形エンコーダ装置は、細長いシーリングリップの対、例えば第1の細長いシーリングリップおよび第2の細長いシーリングリップを備える。各細長いシーリングリップは、シーリング部分を備えることができる。細長いシーリングリップの対は、そのそれぞれのシーリング部分間にシールを形成するように構成され得る。第1の細長いシーリングリップのシーリング部分は、第2の細長いシーリングリップに接触する第1の細長いシーリングリップの部分を備えることができる。第2の細長いシーリングリップのシーリング部分は、第1の細長いシーリングリップに接触する第2の細長いシーリングリップの部分を備えることができる。第1および/または第2の細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、本発明によると、その長さに沿って緊張状態に保持され得る。
【0016】
細長いシーリングリップの対は、別個の部材によって提供され得る。任意選択により、対の細長いシーリングリップのそれぞれは、同じ部材の部分であってよい。
【0017】
任意選択により、少なくとも1つの細長いシーリングリップのその長さに沿った緊張は、少なくとも1つの細長いシーリングリップの幅にわたって変化する。例えば、その自由縁に向かう緊張は、その固定された縁(例えばシール根元部分)に向かう緊張より大きくなることができる。任意選択により、少なくとも1つの細長いシーリングリップのその長さに沿った緊張は、シーリング部分については根元部分より大きい。任意選択により、少なくとも1つの細長いシーリングリップのシーリング部分は、少なくとも1つの細長いシーリングリップの残りの部分より大きい緊張下にある。
【0018】
任意選択により、細長いシーリングリップは、自然湾曲を有する。任意選択により、細長いシーリングリップは、その自然湾曲から離れるように変形され、それによって少なくともシーリング部分を緊張状態に保持する。自然湾曲は、細長いシーリングリップの長さおよび幅に対して垂直な概念上の軸周りのものであってよい。任意選択により、細長いシーリングリップは、より小さい湾曲構成に、例えば真っ直ぐな構成に変形され、それによって少なくとも1つのシーリング部分を緊張状態に置く。任意選択により、細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の長さは、変形された状態では、その自然湾曲を示すときのシーリング部分の長さと比較して長い。任意選択により、その自然湾曲を示すとき(例えば、細長いシーリングリップが、形が崩れるように強制されないとき、例えば細長いシーリングリップ上に外部力が存在せず、少なくとも、細長いシーリングリップの長さおよび幅に垂直な概念上の軸周りに外部力が存在しないとき)、細長いシーリングリップのシーリング部分の近位またはその内部の縁は、根元部分の近位またはその内部の縁の長さより短い。したがって、任意選択により、その自然湾曲を示すとき、細長いシーリングリップのシーリング部分の長さは、細長いシーリングリップの根元部分の長さより短い。
【0019】
細長いシーリングリップは、要素を備えることができる。要素は、細長くてよい。要素は、長手方向であってよい。任意選択により、要素は、細長いシーリングリップ内に自然湾曲を誘発するように構成される。要素は、ワイヤ、例えば鋼ワイヤなどの金属ワイヤまたはプラスチックワイヤであってよい。任意選択により、要素はコードである。任意選択により、要素は、ガラス繊維コードである。任意選択により、要素は、繊維状フィラメントである。要素は、細長いシーリングリップの根元部分縁に/根元部分縁に向かって/根元部分縁の近位に提供され得る。要素は、細長いシーリングリップの根元部分内に提供され(例えば埋め込まれ)得る。任意選択により、要素は、細長いシーリングリップの残りの部分より硬い。任意選択により、要素の長手方向の圧縮硬度は、細長いシーリングリップの残りの部分より大きい。任意選択により、要素の材料の硬度(例えば圧縮硬度)は、要素を取り囲む細長いシーリングリップの材料のものより大きい。任意選択により、要素は、細長いシーリングリップがその自然湾曲を示すとき、圧縮応力下にある。任意選択により、要素は、細長いシーリングがその自然湾曲を示すとき、細長いシーリングリップの残りの部分と比較して高い引張エネルギーを有する。
【0020】
任意選択により、細長いシーリングリップがその自然湾曲を示すとき、シーリングリップの根元部分縁に向かう細長いシーリングリップの材料は、細長いシーリングリップのシーリング部分縁に向かう細長いシーリングリップの材料より大きい緊張下にある。理解されるように、ワイヤまたはコードなどの要素が存在し、そのような緊張を誘発するために使用されるとき、要素自体は圧縮下にあり、そのため細長いシーリングリップの「材料」は、要素自体ではなく、要素を取り囲む材料を含むことができる。したがって、「材料」は、細長いシーリングリップの主要本体であることができる。任意選択により、「材料」は、(以下により詳細に説明するように)細長いシーリングリップのプラスチック/エラストマー材料であることができる。
【0021】
任意選択により、密封線形エンコーダ装置は、保護ハウジングを備える。任意選択により、細長いシーリングリップは、保護ハウジングによって保持され、変形され、それによってシーリングリップの少なくともシーリング部分を緊張状態に保持する。任意選択により、細長いシーリングリップは、自然湾曲を有し、保護ハウジングは、細長いシーリングリップを、これが細長いシーリングリップをより小さい湾曲構成に、例えば線形構成に変形するように保持する。任意選択により、保護ハウジングは、細長いシーリングリップの根元部分を保持するためのシール根元保持部分を備える。細長いシーリングリップの根元部分は、少なくとも1つのシール根元保持部の湾曲より大きい自然湾曲を有することができる。換言すれば、任意選択により、細長いシーリングリップの根元部分の湾曲の半径は、少なくとも1つのシール根元保持部の湾曲の半径より小さい。任意選択により、シール根元保持部分は、線形である(この場合、湾曲の半径は無限大である)。任意選択により、細長いシーリングリップの根元部分は、湾曲している。
【0022】
任意選択により、スケールおよび読み取りヘッド組立体の少なくともスケール信号レシーバは、保護ハウジング内に(これらが保護ハウジングの外部の汚染から保護されるように)配置され得る。保護ハウジングは、(エンコーダ装置がその相対位置を監視するように構成された)機械の2つの相対的に移動可能な部分の第1のものに連結され得る(またはその一部を形成することができる)。読み取りヘッド組立体は、機械の2つの相対的に移動可能な部分の第2のものに連結され得る(またはその一部を形成することができる)。コネクタ部材が、機械の2つの相対的に移動可能な部分の第2のものと、少なくとも信号レシーバとの間に提供され得る。保護ハウジングは、コネクタ部材がそれに沿って進行することができる長手方向スロットを提供することができる。シールが、長手方向スロットの長さに沿って提供されてスロットをシールし、シールを維持しながらコネクタ部材(したがって少なくともスケール信号レシーバ)がスロットに沿って移動することを可能にすることができる。コネクタ部材は、(例えば剛性の)ブレード様部材を備えることができる。ブレード様部材は、第1および第2の縁(換言すれば、先縁および後縁)を備えることができる。ブレード様部材は、第1および第2の縁に向かってテーパになることができる。
【0023】
細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、プラスチックを含むことができる。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、エラストマーを含むことができる。エラストマーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)であってよい。エラストマーは、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)であってよい。エラストマーは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)であってよい。エラストマーは、(VMQなどの)シリコーンゴムであってよい。エラストマーは、フッ素化エラストマーであってよい。フッ素化エラストマーは、(FKMなどの)フッ素ゴムであってよい。フッ素化エラストマーは、(FFKMなどの)パーフルオロエラストマーであってよい。フッ素系エラストマーは、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム(FEPM)であってよい。エラストマーは、(FVMQなどの)フロロシリコーンゴムであってよい。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、ポリウレタン(PU)を含むことができる。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むことができる。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンであってよい。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ポリエーテルベースの熱可塑性ポリウレタンであってよい。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の本明細書において述べる材料のそれぞれは、任意の本明細書に開示した要素(例えば、鋼ワイヤなどの金属ワイヤ、またはプラスチックワイヤ、またはガラス繊維コードなどのコード、または繊維状フィラメント)と併用され得る。
【0024】
任意選択により、少なくとも1つのシーリングリップの少なくともシーリング部分は、弾性的に変形された状態で保持される。
【0025】
任意選択により、細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、弾性的に伸張された構成で保持され、それによってこれをその長さに沿って緊張させる。すなわち、任意選択により、細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、これがその弾性限界内で伸張されるように保持される。したがって、少なくともシーリング部分の長さは、緊張状態に保持されることによって増大され得る。少なくともシーリング部分の長さの増大は、任意選択により、少なくとも0.1%、任意選択により少なくとも0.5%、任意選択により少なくとも1%、任意選択により少なくとも2%、任意選択により少なくとも3%、任意選択により少なくとも4%、任意選択により少なくとも5%である。
【0026】
理解されるように、本発明の上記で説明した態様の特徴はまた、本発明の以下で述べる態様にも適用可能であり、また逆の形でも適用可能である。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、密封線形エンコーダ装置用のシーリングリップであって、細長いシーリングリップは、これが真っ直ぐな構成に引っ張られたときに細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分がその長さに沿って緊張状態に保持されるような自然湾曲を有する、シーリングリップが、提供される。
任意選択により、真っ直ぐな構成に引っ張られたとき、少なくともシーリング部分の長さは増大され、前記緊張による長さの増大は、任意選択により少なくとも0.1%、任意選択により少なくとも0.5%、任意選択により少なくとも1%、任意選択により少なくとも2%、任意選択により少なくとも3%、任意選択により少なくとも4%、任意選択により少なくとも5%である。
【0028】
任意選択により、細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分は、弾性的に変形可能であってよい。
【0029】
次に、本発明の実施形態を、添付の図を参照して例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1(a)】本発明の態様による細長いシーリングリップを備える密封エンコーダ装置の実施形態の概略図であり、保護ハウジングの一部が切断されて保護ハウジング内部に配置されたスケールおよびスケール信号レシーバを示している。
【
図1(b)】本発明の態様による細長いシーリングリップを備える密封エンコーダ装置の実施形態の概略図であり、保護ハウジングの一部が切断されて保護ハウジング内部に配置されたスケールおよびスケール信号レシーバを示している。
【
図1(c)】
図1(a)および
図1(b)の密封エンコーダ装置を貫通する断面図である。
【
図1(d)】別個のベース部材および側部部材を有する
図1(a)および
図1(b)の密封エンコーダ装置用のハウジングを貫通する断面図である。
【
図2(a)】本発明の実施形態による細長いシーリングリップを貫通する断面図である。
【
図2(b)】保護ハウジング上に装着される前の、平衡状態にある
図2(a)の細長いシーリングリップの概略図である。
【
図2(c)】
図1のエンコーダ装置の保護ハウジングの線形シール根元保持部内に装着されたときの
図2(b)のシール部材の形態の概略図である。
【
図3】本発明による細長いリップシールを備える、密封エンコーダ装置の代替の実施形態を貫通する断面図である。
【
図4】
図2(a)の平面Pで見た細長いシーリングリップを示す図である。
【
図5】本発明による細長いリップシールを備える密封された一体型ベアリングエンコーダを貫通する断面図である。
【
図6】本発明による細長いシーリングリップを作製する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1(a)から
図1(c)を参照すれば、本発明による密封線形エンコーダ装置102が存在する。密封エンコーダ装置102は、複数の特徴部(図示せず)を有するスケール104と、スケールから信号を受け取るためのスケール信号レシーバ106を備える、読み取りヘッド組立体103とを備える。説明する実施形態では、密封エンコーダモジュール102は、読み取りヘッド組立体103が赤外線から紫外線の範囲の電磁放射(EMR)を利用してスケール104を読み取るという点で、光学エンコーダである。特に、この説明する実施形態では、位置測定エンコーダ装置は、光学アブソリュートエンコーダである。したがって、スケールは、一連の一意的に特定可能な特徴部、例えばコードを備え、このコードを読み取りヘッド組立体103が読み取り処理して、スケール104の長さに沿って一意的な位置を決定することができる。しかし、理解されるように、位置測定エンコーダ装置は、必ずしもアブソリュートエンコーダである必要はない。例えば、これは、インクリメンタル光学エンコーダであることができる。さらに、エンコーダ装置は、光学エンコーダである必要はなく、例えば、エンコーダ装置は、磁気的、容量的、または誘導的エンコーダであることができる。
【0032】
スケール104およびスケール信号レシーバ106は、保護ハウジング108の内側に配置され、保護ハウジングは、これらを保護ハウジングの外部の汚染物質から保護する。スケール104は、保護ハウジング108に固定され、一方でスケール信号レシーバ106は、保護ハウジング108内でスケール104の長さに沿って移動することができる。使用時、保護ハウジング108は、機械の(図示せず)の第1の部分に締め付けられ、スケール信号レシーバ106は、機械(図示せず)の第2の部分に締め付けられる。いくつかの場合、
図1(d)に示すように、保護ハウジングは、モジュラーであってよく、スケールが固着されるベース部材108aを備えることができる。ベース部材108aは、側部部材108bとは別個の部材であってよく、側部部材は、ベース部材108aが機械の第1の部分などに固着された後で、ベース部材108aに締め付けられ得る。他の実施形態では、ベース部材108aは、機械の第1の部分の一部を形成することができる。さらなる実施形態では、スケール104は、側部部材108bの任意の1つに取り付けられてよく、さらなる実施形態では、保護ハウジングは、側部部材108bの1つを介して機械に取り付けられてよい。理解されるように、機械の第1および第2の部分は、互いに対して相対的に移動可能である。読み取りヘッド組立体は、(例えば、穴115を通過するねじ付きボルトなどの1つまたは複数の解放可能な締結具を介して)機械の第2の部分に直接締結されるものである装着ブロック114と、装着ブロック114とスケール信号レシーバ106との間に連結され、その間を延びるブレード116とをさらに備えることができる。
【0033】
保護ハウジング108は、(細長いシーリングリップの対を形成する)第1および第2の細長いシーリングリップ112の形のシールをさらに備え、このシールは、スケール104およびスケール信号レシーバ106が内部に位置する保護ハウジング108の内側を、外部汚染物質からシールする。ブレード116は、第1および第2の細長いシーリングリップ112間を通過する。細長いシーリングリップ112は、分かれることができるように柔軟であり、それによってブレード116、故にスケール信号レシーバ106の、保護ハウジング108、したがってスケール104の長さに沿った移動が可能になるが、ブレード116の周りで互いに閉じるように十分弾性でもあり、それによって固体および流体(特に液体および水分)の汚染物質に対する物理的障壁を形成する。換言すれば、ブレード116は、これがシールの長さに沿って、第1および第2の細長いシーリングリップ112間を移動するにつれて、第1および第2の細長いシーリングリップ112を割って開き、第1および第2の細長いシーリングリップ112は、ブレード116が無いときに互いに閉じるのに十分な弾力性を有する。
【0034】
エンコーダハウジング内に装着されとき、第1および第2の細長いシーリングリップ112は、自由縁120と、固定された(例えば装着された)縁122とを有する。第1および第2の細長いシーリングリップ112はそれぞれ、シーリング部分118を有し、このシーリング部分は、空隙を閉じるように別の部材と相互作用する(例えば、これに触れる/係合する)細長いシーリングリップ112の部分である。説明する実施形態では、固体および流体の汚染物質に対する物理的障壁は、細長いシーリングリップ112のシーリング部分118の互いのおよび/またはブレード116が細長いシーリングリップ112間に存在する場合はブレードとの相互作用によって形成される。各細長いシーリングリップ112のシーリング部分118は、使用時、他のシーリングリップ112のシーリング部分118との相互作用によって物理的障壁を形成する細長いシーリングリップ112の部分、ならびにブレード116との相互作用によって物理的障壁を形成する部分を備える。第1の細長いシーリングリップ112のシーリング部分118は、(i)第2の細長いシーリングリップ112と相互作用する第1のシーリング部分と、(ii)ブレード116と相互作用する第2の部分とを有し、それによって固定および流体の汚染物質に対する物理的障壁を形成する。シーリング部分118の第1および第2の部分は、いくつかの実施形態では、境界線を共にするものであってよく、他の実施形態では、シーリング部分118の第1および第2の部分は、重なり合う領域であってよく、さらなる実施形態では、第1の領域は、完全に第2の領域内にあってよく、または第2の領域は、完全に第1の領域内にあってよく、さらなる実施形態では、シーリング部分118の第1および第2の領域は、別々の領域であってよい。
【0035】
図1(c)に示す実施形態は、細長いシーリングリップ112の対を備えるシールを示す。理解されるように、細長いシーリングリップ112の対は、この説明する実施形態の場合のように、例えば別個の部材として別個に提供され得る。換言すれば、シールは、細長いシーリングリップ112をそれぞれが備える、別個のシール部材の対から作製され得る。あるいは、理解されるように、シールは、細長いシーリングリップ112の一体型の対を有する単一シール部材から作製されてよい。
【0036】
細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118は、エラストマー、例えばポリウレタン、またはポリウレタンを含む材料組成物から作製され得る。エラストマーは、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはシリコーンゴム(VMQ)であってよい。エラストマーは、フッ素化エラストマー、例えばフッ素ゴム(FKM)、パーフルオロエラストマー(FFKM)またはテトラフルオロエチレン/プロピレンゴム(FEPM)であってよい。エラストマーは、例えば、フロロシリコーンゴム(FVMQ)であってよい。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、ポリウレタン(PU)および関連する化合物を含むことができる。細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分の材料は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むことができる。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンであってよい。熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ポリエーテルベースの熱可塑性ポリウレタンであってよい。
【0037】
使用時、細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118は、その長さに沿って緊張状態に保持される。少なくともシーリング部分118をその長さに沿って緊張状態に保持することにより、シール111によって形成された、固体および流体の汚染物質に対する物理的障壁の完全性は、シーリング部分118が緊張状態に保持されなかった場合より長い間維持され得ることが、見出されている。
【0038】
冷却剤、油、または他の流体などの汚染への露出時、細長いシーリングリップ112は、汚染物質を吸収し得る。細長いシーリングリップ112のシーリング部分118が緊張状態に保持されない場合、汚染物質の吸収によって材料を膨張させる可能性があり、結果として生じるシーリング部分118の長さの増大は、シールの座屈につながり、物理的な障壁の完全性を損ない得る。しかし、細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118が緊張状態に保持される場合、汚染の吸収時、シーリング部分118が膨張し座屈の可能性を有する前に、シーリング部分118内の内部応力が緩和されるようになり得る。これにより、細長いシーリングリップ112のシーリング部分118が座屈し、物理的障壁の完全性が損なわれるまで、より長い時間作動することが可能になり得る。細長いシーリングリップ112のシーリング部分118を緊張状態に保持することにより、シールまたは少なくともシーリング部分118の材料が、シーリング部分118の座屈が発生する前に汚染物質飽和点に到達し、したがって、物理的障壁がこの機構によって損なわれることを防止するようにもなり得る。シーリング部分の長さの増大が低減され得る場合、シーリングリップは、シールの幾何学形状が不安定になるまでより長い期間作動することができ、またはシールリップの幾何学形状は、汚染の吸収によって不安定になることが防止され得る。
【0039】
シールは、シーリングリップ112の対を有する必要はない。例えば、これは、単一の細長いシーリングリップ112だけを備えることができ、または任意選択により、これは、密封エンコーダモジュール102および保護ハウジング108の要求事項に応じて、3つ以上のシーリングリップを備えることもできる。
【0040】
図2(a)は、例となる細長いシーリングリップ112を断面図で示し、(細長いシーリングリップ112が広く/狭くなり得る)シール幅方向Wおよび(細長いシーリングリップ112が厚く/薄くなり得る)シール厚さ方向Thに延びる細長いシーリングリップ112を示す。細長いシーリングリップ112はまた、幅方向Wおよび厚さ方向Thに直交する(細長いシーリングリップ112が長く/短くなり得る)長さ方向にも延びる。概念上の平面Pが、シール根元部分124を通過して示され、平面Pに直交する概念上の軸Aもまた示される。
図2(b)は、保護ハウジング108上に装着される前の、平衡位置にある、すなわち細長いシーリングリップ112上に外部力が作用していない状態の細長いシーリングリップ112を概略的に示す。特に、
図2(b)は、細長いシーリングリップ112が非線形であり、特に湾曲していることを示す。細長いシーリングリップ112は、細長いシーリングリップ112の細長い縁の1つの(平面P内に位置する)長さL’が、細長いシーリングリップ112の他の細長い縁の長さL”より短くなるように湾曲する。特に、細長いシーリングリップ112のシーリング部分118の近位またはその内部の縁の(平面P内に位置する)長さL’は、細長いシーリングリップ112の根元部分124の近位またはその内部の縁の長さL”より短い。換言すれば、細長いシーリングリップ112の自然湾曲は、細長いシーリングリップ112の長さLおよび幅Wに垂直に延びる概念上の軸A(
図2(a)および
図2(b)を参照)周りのものであり、それにより、細長いシーリングリップ112の長さL’、L”の一方は他方より短い。
【0041】
細長いシーリングリップ112は平衡状態にあるので、
図2(b)に概略的に示す湾曲は、この実施形態の自然湾曲である。他の実施形態は、異なる自然湾曲を有することができる。細長いシーリングリップ112の所望の湾曲は、用途(この場合線形エンコーダの寸法およびエンコーダが作動する環境内に存在する汚染物質)、使用される材料、およびシーリングリップ自体の寸法(厚さ、幅、長さ)によって定められ得る。
図4は、細長いシーリングリップ112の縁(シール幅方向のシール根元部分124の遠位の縁)が、いくつかの実施形態では、平面Pを全体的に横断する方向に波打ち得ることを示す。
【0042】
細長いシーリングリップ112は、形態上制限されなくてよく(すなわち細長いシーリングリップ112は可撓性になり得る)、シール幅方向Wに平行な軸周りを湾曲することができることが、理解されよう。
【0043】
保護ハウジング108にシールを提供するために、細長いシーリングリップ112は、
図1(c)に示す保護ハウジングのそれぞれ第1および第2のシール根元レシーバチャネル126内に装着される。図示する実施形態では、シール根元レシーバチャネル126は線形であり、長さ方向に(
図1(b)の軸xに平行に)延びる。細長いシーリングリップ112を装着するために、細長いシーリングリップ112は、そのそれぞれのシール根元レシーバチャネル126に沿って引き出される。そのようにする際、シール根元部分124は、その自然湾曲から離れるように変形され、これは、ひいては、細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118をその自然湾曲から離れるように変形させ、細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118を緊張状態に置く。
図2(c)は、シール根元部分124が線形形態に適合させられたときの細長いシーリングリップ112の変形を概略的に示す。線形形態によってかけられる効果力は、矢印Fによって概略的に示され、この矢印Fは、効果的には、細長いシーリングリップ112の端部が全体的に下方に引っ張られて、細長いシーリングリップ112を線形になるようにその自然湾曲から外れるように強制することを示す。これにより、細長いシーリングリップ112のシーリング部分118の近位またはその内部の縁の長さを伸張させ、それによって(概念上の平面P内に位置する)長さL’の長さを増大させ、これは、
図2(c)に概略的に示すように、細長いシーリングリップ112のシーリング部分118を緊張状態Tに置く。細長いシーリングリップ112のシーリング部分118の少なくとも材料が、緊張状態に置かれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、シーリング部分118の長さの増大は、
図2(c)では、シール根元部分124が線形形態に適合させられるときの細長いシーリングリップ112の変形により、長さL’が長さL”に実質的に等しくなる場合で示される。
【0045】
少なくともシーリング部分118を含む細長いシーリングリップ112にかけられた緊張量は、シール根元レシーバチャネル126とそれぞれの細長いシーリングリップ112との間の湾曲の相対差に依存する。この実施形態では、シール根元レシーバチャネル126は線形として説明されるが、これはそうである必要はない。例えば、他の実施形態では、シール根元レシーバチャネル126は湾曲していてよい。図示する実施形態では、シール根元レシーバチャネル126は、連続チャネルである。しかし、これはそうである必要はなく、シール根元レシーバチャネル126は、一緒になってチャネルを形成する複数のシール根元レシーバ部材の形をとることができる。上記で説明した実施形態では、第1および第2の細長いシーリングリップ112は、構成上同一であり、シール根元レシーバチャネル126もそうである。しかし、理解されるように、これは、必ずしもそうである必要はない。例えば、第1および第2の細長いシーリングリップ112は、異なる自然湾曲、異なる断面形状、および/または異なるサイズを有することができる。同様に、第1および第2のレシーバチャネル126は、異なる湾曲(例えば、一方は線形であることができ、他方は湾曲することができる)、異なる断面形状、および/または異なるサイズを有することができる。
【0046】
細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118を緊張状態に保持することを
図1から
図4に示す実施形態に関連して説明してきたが、例えば、シーリングリップ112を伸張させ、伸張された状態をクランプを使用して維持することによってなど、細長いシーリングリップの少なくともシーリング部分118を緊張状態に保持する数多くの他の方法が存在することが、理解されよう。そのような場合、細長いシーリングリップ112は、自然湾曲を有する必要はなく、線形の細長いシーリングリップ112の形態をとることができる。
図2に示す実施形態の場合のように緊張Tの所望の方向に垂直な成分を有する力をかけるのではなく、細長い方向に(すなわち
図1の軸xに平行に)力をかけて、線形の細長いシーリングリップ112の端部を所望の緊張Tの方向に引っ張ることができる。
【0047】
1つの実施形態では、細長いシーリングリップ112は、
図6に示す方法200によるものになり得る押し出し成形によって作製され得る。
図2(a)に示す実施形態では、(金属ワイヤ、プラスチックワイヤ、繊維状フィラメント、または任意の他の適切な類似の要素などの)ワイヤ128が、押し出し成形プロセス中にシール根元部分124内に埋め込まれて、埋め込まれた長手方向の要素(202)を有する未硬化の細長いシーリングリップを形成する(202)。ワイヤ128は、
図2(a)に示す方法で埋め込まれなくてよく、ワイヤ128はシール部材112の表面に固定されることによって埋め込まれてよく、またはワイヤ128は他の方法で埋め込まれてよいことが、理解されよう。押し出し成形後、細長いシーリングリップ112を再形成する(弛緩させることを含むことができる)204。再成形204中、ワイヤ128の存在は、シーリングストリップ112の一部の材料が収縮し得る速度を低減する。これは、シール根元部分124の遠位の細長いシーリングリップ112内の材料が、シール根元部分124の材料とは異なる(これより早くなり得る)速度で収縮することができ、収縮のこの速度差がシールを、例えば軸A(204)の周りで湾曲させることを意味する。この収縮差は、
図4に関連して上記で説明したものなどのシール根元部分124の遠位の細長いシーリングリップ112の縁のパッカリング(puckering)を生じさせることができ、これは冷却効果によるものになり得る。細長いシーリングリップ112の所望の湾曲が得られた後、細長いシーリングリップ112の材料は、硬化されて細長いシーリングリップ112の形状を固定する(206)。
【0048】
細長いシーリングリップ112は、(それだけに限定されないが)射出成形または他の成形方法を含む代替の方法で作製されてよいことが、理解されよう。成形方法は、対向する細長いシーリングリップ112の対を有する単一のシール部材からシールが形成される場合に特に有利となり得る。使用される方法に関係なく、例えばエンコーダの組立てを助けるためにシール根元部分124内にワイヤ128を含むことが依然として有利となり得るが、ワイヤの提供は任意選択であることが理解されよう。
【0049】
説明する実施形態では、スケール信号レシーバ106は、スケール104を支承しない。したがって、そのような密封エンコーダは、「一体型ベアリング無し」または「ベアリングレス」のものであると説明することができ、例えば、スケールに対してスケール信号レシーバを付勢し/支承し、スケール信号レシーバとその装着ブロックとの間に柔軟な結合を提供する、密封された「一体型ベアリング」線形エンコーダの知られている構成とは対照的である。そのような「一体型ベアリング」配置の一例が、
図5に示される。本発明は、ベアリングレスエンコーダおよび一体型ベアリングエンコーダの両方に適用可能であることが、理解されよう。
【0050】
本明細書に説明するシーリング配置は、ベアリングレスエンコーダまたは一体型ベアリングエンコーダによって必要とされるような、保護ハウジング108に対するブレード116の移動に対応することができる、固体および液体に対する物理的障壁の形成を可能にする。細長いシーリングリップ112の少なくともシーリング部分118をその長さに沿って緊張状態に置くことにより、細長いシーリングリップ112の使用可能な寿命は延ばされる。これは、シールが必要とされる、より難しい幾何学形状/状況に対処するように設計された、より薄いおよび/またはより広いシールの使用を可能にすることができる。本発明は、より良好な動的特性および/またはより良好な磨耗耐性および/または材料固有の他の改良された特性を有することができるが、流体/汚染物質の吸収によってこれまで損なわれていたため、特定の状況には不適切であるとみなされている材料、例えばポリウレタンなどのより幅広い範囲の使用を可能にすることができる。