(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】過給機付き内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 37/00 20060101AFI20221021BHJP
F01N 13/10 20100101ALI20221021BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20221021BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
F02B37/00 301H
F01N13/10
F02F1/24 A
F02F1/42 B
(21)【出願番号】P 2019567824
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2018002807
(87)【国際公開番号】W WO2019146125
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 誠
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】水野 治彦
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150543(WO,A1)
【文献】特開昭62-162728(JP,A)
【文献】実開昭63-17832(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/25044(US,A1)
【文献】特開2016-70273(JP,A)
【文献】特開2002-303145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B37/00
F01N13/10
F02F1/24
F02F1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を内部に有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの上部に設けられ、前記複数の気筒の各々から排出される排気が流れる複数の排気流路を内部に有するシリンダヘッドと、
回転軸、前記回転軸の一端に設けられるタービンホイール、及び前記回転軸の他端に設けられるコンプレッサホイールを有する過給機と、
を備える過給機付き内燃機関であって、
前記過給機のうち少なくとも前記タービンホイールは、前記シリンダヘッドの内部に配置され、
前記シリンダヘッドは、前記複数の排気流路を流れた前記排気を前記タービンホイールに導入するための複数のスクロール通路であって、前記タービンホイールの周方向における第1範囲から前記タービンホイールに対して前記排気を導入する第1スクロール通路、及び前記タービンホイールの周方向における前記第1範囲とは異なる第2範囲から前記タービンホイールに対して前記排気を導入する第2スクロール通路、を含む複数のスクロール通路を内部に有し、
前記複数の気筒は第1方向に沿って配置され、
前記気筒の軸方向に沿って視認した場合に、前記回転軸は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って延在し、
前記第1方向に沿って配置された前記複数の気筒を挟んで一方の側に前記タービンホイールが配置され、他方の側に前記コンプレッサホイールが配置さ
れ、
前記タービンホイールの回転軸線は前記第2方向に沿って延在
し、
前記回転軸は、前記第1方向において前記複数の気筒の中央部に配置され、
前記複数の気筒は、前記第1方向における前記回転軸に対する一方側において前記回転軸から最も離れて配置される一方側気筒と、前記第1方向における前記回転軸に対する他方側において前記回転軸から最も離れて配置される他方側気筒と、を含み、
前記第1スクロール通路は、前記第2方向に沿って視認した場合に、前記タービンホイールの周方向に沿って延在するとともに、前記第1方向における前記回転軸に対する前記一方側に向かって延在し、
前記第2スクロール通路は、前記第2方向に沿って視認した場合に、前記タービンホイールの周方向において前記第1スクロール通路と同一方向に沿って延在するとともに、前記第1方向における前記回転軸に対する前記他方側に向かって延在し、
前記複数の排気流路は、前記一方側気筒と前記第1スクロール通路とを接続する第1排気流路と、前記他方側気筒と前記第2スクロール通路とを接続する第2排気流路と、を含むことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項2】
前記第1スクロール通路及び前記第2スクロール通路の少なくとも一方には、前記複数の排気流路のうち2以上の排気流路を流れた前記排気が導入されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関。
【請求項3】
前記複数のスクロール通路の各々には、前記複数の排気流路の各々を流れた前記排気が導入されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関。
【請求項4】
前記過給機は、前記回転軸を回転可能に支持する軸受部を有し、
前記軸受部は、前記シリンダヘッドの内部に配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の過給機付き内燃機関。
【請求項5】
前記コンプレッサホイールは、前記シリンダヘッドの内部に配置されることを特徴とする請求項4に記載の過給機付き内燃機関。
【請求項6】
前記コンプレッサホイールは、前記シリンダヘッドの外部に配置されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の過給機付き内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機付き内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の気筒を有する内燃機関は、給気マニホールド及び排気マニホールドを通して給排気がなされるために、給排気流路の構成が複雑化する。そのため、これらマニホールドをシリンダヘッドの内部に組み込んでコンパクト化を図る試みがなされている。特許文献1には、排気マニホールドをシリンダヘッドの内部に組み込んだ構成が開示されている。
【0003】
複数の気筒に加えて過給機を備える内燃機関は、シリンダヘッド周辺の構造がさらに複雑化するため、過給機もシリンダヘッドの内部に組み込んでコンパクト化を図る提案がなされている。例えば、特許文献2には、過給機をシリンダヘッド内に配置することで、排気流路の容積を少なくした内燃機関が開示されている。また、特許文献3には、過給機をシリンダヘッド内に配置するに当たり、タービンスクロール部をシリンダブロックの表面に形成し、コンプレッサスクロール部をシリンダカバーの表面に形成することで、スクロール部の製作を容易にした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2011-530666号公報
【文献】特開2002-303145号公報
【文献】特開2006-249945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び3に開示されたシリンダヘッドは、複数の排気流路が過給機のタービンスクロール部の上流側で合流し、1本の排気流路となってタービンスクロール部に接続する従来型の排気マニホールドであり、この従来型の排気マニホールドがシリンダヘッドの内部に配置されているため、コンパクト化には限界があり、シリンダヘッドの容積は大きなものとなっている。
さらに、特許文献3に開示された過給機は回転軸が鉛直方向に沿って配置されているため、回転軸を軸支するための軸受部に新たな工夫や対策が必要となるという問題がある。
【0006】
幾つかの実施形態は、複数の気筒及び過給機を備える内燃機関のシリンダヘッド及びその周辺構造をコンパクト化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)一実施形態に係る過給機付き内燃機関は、
複数の気筒を内部に有するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの上部に設けられ、前記複数の気筒の各々から排出される排気が流れる複数の排気流路を内部に有するシリンダヘッドと、
回転軸、前記回転軸の一端に設けられるタービンホイール、及び前記回転軸の他端に設けられるコンプレッサホイールを有する過給機と、
を備える過給機付き内燃機関であって、
前記過給機のうち少なくとも前記タービンホイールは、前記シリンダヘッドの内部に配置され、
前記シリンダヘッドは、前記複数の排気流路を流れた前記排気を前記タービンホイールに導入するための複数のスクロール通路であって、前記タービンホイールの周方向における第1範囲から前記タービンホイールに対して前記排気を導入する第1スクロール通路、及び前記タービンホイールの周方向における前記第1範囲とは異なる第2範囲から前記タービンホイールに対して前記排気を導入する第2スクロール通路、を含む複数のスクロール通路を内部に有する。
【0008】
上記(1)の構成によれば、複数のスクロール通路が、タービンホイールの周方向において異なる範囲に排気を導入するため、複数のスクロール通路はタービンホイールの周囲で分散配置される。そのため、タービンホイールの周方向で複数のスクロール通路は各排気流路が最短となる位置を選ぶことができる。これによって、シリンダヘッド内で排気流路をコンパクト化できる。
【0009】
また、過給機のうち少なくともタービンホイールは、シリンダヘッドの内部に配置される。このため、シリンダヘッドの外部に配置される別体の過給機をシリンダヘッドに取り付けるために形成される結合部などが不要になるため、シリンダヘッド及びその周辺構造をコンパクト化できる。また、タービンホイールをシリンダヘッド内に設けることで、気筒とタービンホイールとの距離を短縮できるため、排気流路の容積を低減できる。これによって、シリンダヘッドをコンパクト化できると共に、過給機の応答性能を向上できる。
【0010】
また、上記(1)の構成において、複数の排気流路を流れた排気をタービンホイールに導入するための複数のスクロール通路が、タービンホイールの周方向において異なる範囲に排気を導入する。即ち、各スクロール通路からタービンホイールに流入する排気の流れる範囲はタービンホイールの周方向でノズル流路の一部の範囲に限定される。このようにノズル流路の一部の範囲に排気を導入する場合には、ノズル流路の全範囲に排気を導入する場合と比べて、排気が分散されないので、タービンホイールを通過する際の排気の流速や圧力を高めることができる。これによって、タービンホイールをさらに迅速に駆動できる。
【0011】
また、上記(1)の構成では、複数のスクロール通路の各々がノズル流路の周方向において重複しないように構成される。ツインスクロールと呼ばれるように、スクロール通路の各々が周方向において重複するように構成される場合、排気がスクロール通路からタービンホイールに流入するノズル流路を分割する必要があるため、製造が容易ではない。上記(1)の構成によれば、ツインスクロールと比べて、スクロール通路の製造が容易になる。
【0012】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記第1スクロール通路及び前記第2スクロール通路の少なくとも一方には、前記複数の排気流路のうち2以上の排気流路を流れた前記排気が導入されるように構成される。
上記(2)の構成によれば、タービンホイールより上流側で1つのスクロール通路に2以上の排気流路が合流するため、排気流路を構成する配管群をコンパクト化できる。
【0013】
(3)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記複数のスクロール通路の各々には、前記複数の排気流路の各々を流れた前記排気が導入されるように構成される。
上記(3)の構成によれば、1個の排気流路が1個のスクロール通路に連通するので、排気流路と同数のスクロール通路をタービンホイールの周方向に分散配置できる。これによって、シリンダヘッド内で各排気流路の長さをさらに最短化でき、コンパクト化が可能になると共に、タービンホイールの駆動力を高めることができる。
【0014】
(4)一実施形態では、前記(1)~(3)の何れかの構成において、
前記過給機は、前記回転軸を回転可能に支持する軸受部を有し、
前記軸受部は、前記シリンダヘッドの内部に配置される。
上記(4)の構成によれば、タービンホイールだけでなく軸受部をもシリンダヘッドの内部に配置することで、シリンダヘッド及びその周辺構造をよりコンパクト化できる。
【0015】
(5)一実施形態では、前記(4)の構成において、
前記コンプレッサホイールは、前記シリンダヘッドの内部に配置される。
上記(5)の構成によれば、タービンホイール及び軸受部だけでなくコンプレッサホイールをもシリンダヘッドの内部に配置されることで、シリンダヘッド及びその周辺構造をさらにコンパクト化できる。
【0016】
(6)一実施形態では、前記(1)~(4)の何れかの構成において、
前記コンプレッサホイールは、前記シリンダヘッドの外部に配置される。
上記(6)の構成によれば、コンプレッサホイールがシリンダヘッドの外部に配置されることで、コンプレッサホイールに流入する給気が排気流路を流れる排気の熱の影響を受けなくて済む。これによって、給気の昇温を抑制できるため、燃焼室に過給される給気の冷却効率を向上でき、この結果、機関出力の限界を高く保持できる。
【0017】
(7)一実施形態では、前記(1)~(6)の何れかの構成において、
前記複数の気筒は第1方向に沿って配置され、
前記気筒の軸方向に沿って視認した場合(気筒の軸が上下方向に沿って配置される場合平面視となる。)に、前記回転軸は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って延在する。
上記(7)の構成によれば、回転軸を第2方向に沿って延在させることで、タービンホイールの周囲に配置されるスクロール部は大きなスペースを有する第1方向に沿って配置できる。従って、スクロール部の形状を排気流に適した形状に形成し易くなるため、タービン効率及び過給効率の低下を抑制できる。
【0018】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記回転軸は、前記複数の気筒の配列方向において前記複数の気筒の中央部に配置される。
上記(8)の構成によれば、回転軸は複数の気筒の配列方向において複数の気筒の中央部に配置されるため、タービンホイール及びコンプレッサホイールが複数の気筒の配列方向の中央部に配置される。従って、各気筒からタービンホイール又はコンプレッサホイールまで導設される排気流路又は給気流路の長さを平均的に短縮できる。これによって、排気流路及び給気流路を収容するシリンダヘッドの容積をコンパクト化できる。また、内燃機関の燃焼室からタービンホイールまでの排気流路の合計容積が少なくなり、内燃機関が搭載された車両の加速時等における過給機の応答特性を向上でき、ターボラグを改善できる。
【0019】
(9)一実施形態では、前記(7)又は(8)の構成において、
前記第1方向に沿って配置された前記複数の気筒を挟んで一方の側に前記タービンホイールが配置され、他方の側に前記コンプレッサホイールが配置される。
上記(9)の構成によれば、タービンホイールが複数の気筒の配列に対して一方側に配置されるため、各気筒からタービンホイールに導設される排気流路の配置が容易になり、各排気流路の長さを短縮できる。給気流路についても同様のことが言える。
さらに、タービンホイール及びコンプレッサホイールを第1方向に沿って配置された複数の気筒を挟んでその両側に配置することで、コンプレッサ部が排気流路を流れる排気の熱の影響を受けにくくなる。これによって、燃焼室に過給する給気の冷却効果を向上できるため、機関出力の限界を高く保持できる。
【発明の効果】
【0020】
幾つかの実施形態によれば、複数の気筒と過給機を備える内燃機関のシリンダヘッド及びその周辺構造をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0023】
図1~
図5は幾つかの実施形態に係る過給機付き内燃機関10(10A、10B、10C)を示す。
図1~
図5において、内燃機関10(10A~10C)は、複数の気筒14(14a、14b、14c、14d)を内部に有するシリンダブロック12を備える。シリンダブロック12の上方にはシリンダヘッド16が設けられる。シリンダブロック12の内部には、各気筒14(14a~14d)から排出される排気eが流れる複数の排気流路18(18a、18b、18c、18d)が設けられる。また、内燃機関10は過給機20を備え、過給機20は回転軸22を有し、回転軸22の一端側にタービン部が形成され、回転軸22の他端側にコンプレッサ部が形成される。タービン部では回転軸22にタービンホイール24が設けられ、コンプレッサ部では回転軸22にコンプレッサホイール26が設けられる。
【0024】
過給機20のうち少なくともタービンホイール24は、シリンダヘッド16の内部に配置される。シリンダヘッド16は、第1スクロール通路28(28A)及び第2スクロール通路28(28B)を含む複数のスクロール通路28を有する。
【0025】
図2に示す実施形態では、第1スクロール通路28(28A)は、複数の排気流路18(18a、18b)を流れた排気をタービンホイール24に導入し、かつタービンホイール24の周方向における第1範囲
RAからタービンホイール24に対して排気を導入するように構成される。第2スクロール通路28(28B)は、複数の排気流路18(18c、18d)を流れた排気をタービンホイール24に導入し、かつタービンホイール24の周方向における第1範囲RAとは異なる第2範囲RBからタービンホイール24に対して排気を導入するように構成される。
【0026】
図4に示す実施形態では、複数のスクロール通路28(28a、28b、28c、28d)の各々には、複数の排気流路18(18a、18b、18c、18d)の各々を流れた排気eが導入されるように構成される。各スクロール通路28(28a~28d)は、タービンホイール24の周方向における夫々異なる範囲Ra、Rb、Rc及びRdからタービンホイール24に対して排気を導入するように構成される。
【0027】
上記構成によれば、複数のスクロール通路28が、タービンホイール24の周方向において異なる範囲に排気を導入するため、複数のスクロール通路28はタービンホイールの周囲で分散配置される。そのため、タービンホイール24の周方向で複数のスクロール通路28は各排気流路18が最短となる位置を選ぶことができる。これによって、シリンダヘッド内で排気流路18をコンパクト化できる。
【0028】
また、過給機20のうち少なくともタービンホイール24は、シリンダヘッド16の内部に配置される。このため、シリンダヘッド16の外部に配置される別体の過給機をシリンダヘッド16に取り付けるために形成される結合部などが不要になる。従って、シリンダヘッド16及びその周辺構造をコンパクト化できる。また、タービンホイール24をシリンダヘッド内に設けることで、気筒14とタービンホイール24との距離を短縮できるため、排気流路18の容積を低減できる。これによって、シリンダヘッド16をコンパクト化できると共に、過給機20の応答性能を向上できる。
【0029】
タービンホイール24に排気eが流入するスクロール通路28の出口開口は、狭い開口面積を有するノズル流路Fnを形成する。上記構成においては、複数のスクロール通路28(28a、28b)は、タービンホイール24の周方向において、夫々重複しない異なる範囲(第1範囲Ra、第2範囲Rb)に排気eを導入する。即ち、各スクロール通路28(28a、28b)からタービンホイール24に流入する排気eの流れる範囲はタービンホイール24の周方向でノズル流路Fnの一部の範囲に限定される。このようにノズル流路Fnの一部の範囲に排気を導入する場合には、ノズル流路Fnの全範囲に排気を導入する場合と比べて、排気が分散されないので、タービンホイール24を通過する際の排気の流速や圧力を高めることができる。これによって、タービンホイール24をより迅速に駆動できる。
【0030】
比較例として、ツインスクロールといったスクロール通路の各々が周方向において重複するように構成される場合、ノズル流路Fnを分割する必要があるため、製造が容易ではない。
これに対し、上記実施形態は、各スクロール通路28がノズル流路Fnの周方向において重複しないように構成されるため、ツインスクロールと比べて、スクロール通路28の製造が容易になる。
なお、スクロール通路の各々が周方向において重複するように構成される構造はツインスクロール構造と称され、上記実施形態のように、スクロール通路の各々が周方向において重複しないように構成される構造はダブルスクロール構造と称される。
【0031】
一実施形態では、タービンホイール24から排出される排気eは出口流路30を経てシリンダヘッド16の外部に排出される。
一実施形態では、複数の気筒14に夫々給気aを供給するための給気流路32(32a、32b、32c、32d)が設けられる。排気eによって回転するタービンホイール24と連動して回転するコンプレッサホイール26によって入口流路34から給気aが吸引され、各給気流路32を通して各気筒14に給気aが供給される。
図1~
図4に示す内燃機関10(10A、10B)では、コンプレッサホイール26がシリンダヘッド16の内部に配置されるため、入口流路34は、入口がシリンダヘッド16の外部に配置され、コンプレッサホイール26まで導設される。
【0032】
一実施形態では、
図1及び
図2に示す内燃機関10(10A)では、第1スクロール通路28(28A)及び第2スクロール通路28(28B)の少なくとも一方に、複数の排気流路18のうち2以上の排気流路を流れた排気eが導入されるように構成される。即ち、第1スクロール通路28(28A)及び第2スクロール通路28(28B)の少なくとも一方に、スクロール通路の出口より上流側で排気流路の合流部が存在する。
この実施形態によれば、タービンホイール24より上流側で1つのスクロール通路に2以上の排気流路が合流するため、排気流路を構成する配管群をコンパクト化できる。また、スクロール通路28がタービンホイール24の周方向に沿って2つに分割されるため、排気脈動が拡散せずに排気がタービンホイール24に流入する。これによって、タービンホイール24に流入する排気の圧力を高めることができるため、タービンホイール24をより迅速に駆動できる。
【0033】
図1及び
図2に示す内燃機関10(10A)では、第1スクロール通路28(28A)は、第1スクロール通路28(28A)の出口より上流側で排気流路18(18a、18b)の合流部が存在し、第2スクロール通路28(28B)は、第2スクロール通路28(28B)の出口より上流側で排気流路18(18c、18d)の合流部が存在する。これらの合流部で合流した排気は、夫々第1範囲RA及び第2範囲RBからタービンホイール24に流入する。
この実施形態では、スクロール通路28は第1スクロール通路28(28A)と第2スクロール通路28(28B)とに分割されるため、個々のスクロール通路の容積を小さくできる。従って、同じ排気流量でもタービンホイール24に流入する排気の圧力を高めることができる。さらに、前述のように排気脈動が拡散しないため、排気の圧力をさらに高めることができる。
【0034】
複数の気筒の排気圧を共に上昇させるとポンピングロスが増加し、燃費が悪化してしまう場合がある。また、一部の気筒の排気圧を上昇させたとき、一部の気筒の排気圧の上昇がこの気筒と排気流路で連通した他の気筒に影響を及ぼすおそれがある。
一実施形態では、ノズル流路Fnの上流側で合流する複数の排気流路18は、複数の気筒14のうち、排気行程が隣り合わない気筒14から排気eが排出される排気流路18を選択するようにする。
このように、排気行程が隣り合わない気筒の排気流路同士を合流させることで、排気脈動の干渉を抑制できる。
【0035】
例えば、一例として、
図2において、着火はNO.1の気筒14(14a)、NO.3の気筒14(14c)、NO.2の気筒14(14b)、NO.4の気筒14(14d)の順に行われる。この場合、NO.1の気筒とNO.3の気筒とが排気行程が隣り合い、NO.2の気筒とNO.4の気筒とが排気行程が隣り合う。一方、NO.1の気筒とNO.2の気筒とは排気行程が隣り合わず、NO.3の気筒とNO.4の気筒とは排気行程が隣り合わない。そのため、NO.1の気筒とNO.2の気筒とは排気弁の開弁期間が重ならず、NO.3の気筒とNO.4の気筒とは排気弁の開弁期間が重ならない。排気行程が隣り合わないNO.1の気筒とNO.2の気筒とは、これらの排気流路18をノズル流路Fnの上流側で合流させても排気脈動の干渉が生じない。同様に、NO.3の気筒とNO.4の気筒とは、これらの排気流路18をノズル流路Fnの上流側で合流させても排気脈動の干渉が生じない。
【0036】
一実施形態では、
図3及び
図4に示す内燃機関10(10B)では、複数のスクロール通路28(28a~28d)の各々には、複数の排気流路18(18a~18d)の各々を流れた排気eが導入されるように構成される。即ち、各スクロール通路28(28a~28d)の出口より上流側で排気流路の合流部は存在しない。
【0037】
この実施形態によれば、1個の排気流路が1個のスクロール通路に連通するので、排気流路と同数のスクロール通路をタービンホイールの周方向に分散配置できる。これによって、
図4に示すように、タービンホイール24の周方向で排気eが流入する互いに重複しない4つの範囲(第1範囲Ra、第2範囲Rb、第3範囲Rc及び第4範囲Rd)を形成できる。従って、各気筒14から導設される排気流路18を最も近い範囲に排気eを流入するスクロール通路28に接続することで、各排気流路18の長さを最短化でき、さらなるコンパクト化が可能になる。また、各スクロール通路28から排気eが流入する範囲を細分化することで、排気脈動が拡散せずに排気がタービンホイール24に流入する。これによって、タービンホイール24に流入する排気の圧力を高めることができるため、タービンホイール24をより迅速に駆動でき、タービンホイール24の駆動力を高めることができる。
【0038】
一実施形態では、
図1~
図5に示すように、過給機20は、回転軸22を回転可能に支持する軸受部36を有する。軸受部36はシリンダヘッド16の内部に配置される。
この実施形態によれば、タービンホイール24だけでなく軸受部36をもシリンダヘッド16の内部に配置することで、シリンダヘッド16及びその周辺構造をよりコンパクト化できる。
【0039】
一実施形態では、
図1~
図4に示す内燃機関10(10A、10B)では、コンプレッサホイール26はシリンダヘッド16の内部に配置される。
この実施形態によれば、タービンホイール24及び軸受部36だけでなく、コンプレッサホイール26をもシリンダヘッド16の内部に配置されることで、シリンダヘッド16及びその周辺構造をさらにコンパクト化できる。
【0040】
一実施形態では、
図5に示す内燃機関10(10C)では、コンプレッサホイール26はシリンダヘッド16の外部に配置される。
この実施形態によれば、コンプレッサホイール26がシリンダヘッド16の外部に配置されることで、コンプレッサホイール26に流入する給気aが排気流路18を流れる排気の熱の影響を受けなくて済む。これによって、給気aの昇温を抑制できるため、気筒14内に形成される燃焼室に過給される給気aの冷却効率を向上でき、この結果、機関出力の限界を高く保持できる。
【0041】
一実施形態では、
図1~
図5に示す内燃機関10(10A~10C)では、気筒14の軸方向に沿って視認した場合、複数の気筒14は第1方向(矢印x方向)に沿って配置される。回転軸22は、複数の気筒14の上方において、第1方向に対して直交する第2方向(矢印y方向)に沿って延在する。
この実施形態によれば、回転軸22を第2方向に沿って延在させることで、タービンホイール24の周囲に配置されるスクロール部は大きなスペースを有する第1方向に沿って配置できる。従って、スクロール部の形状を排気流に適した形状に形成し易くなるため、タービン効率及び過給効率の低下を抑制できる。
【0042】
ここで、上記「第2方向に沿う方向」とは、第1方向に直交する方向に対して±15°以内の範囲で傾斜する方向をも含むものとする。
【0043】
一実施形態では、
図1~
図5に示す内燃機関10(10A~10C)では、上記実施形態の構成に加えて、回転軸22は、複数の気筒14の配列方向において、気筒14の上方でかつ複数の気筒14の中央部に配置される。
ここで、「複数の気筒14の中央部」とは、気筒が偶数配列される場合、配列の中央部に配置される2つの気筒の間の領域を意味し、気筒が奇数配列される場合、配列の真中に配置される気筒の配置領域を意味する。
【0044】
この実施形態によれば、回転軸22は複数の気筒14の配列方向において複数の気筒14の中央部に配置されるため、タービンホイール24及びコンプレッサホイール26が複数の気筒14の配列方向の中央部に配置される。従って、各気筒からタービンホイール24又はコンプレッサホイール26まで導設される各排気流路18又は各給気流路32の長さを平均的に短縮できる。これによって、排気流路18及び給気流路32を収容するシリンダヘッド16の容積をコンパクト化できる。また、気筒14内の燃焼室からタービンホイール24までの排気流路18の合計容積が少なくなり、内燃機関10が搭載された車両の加速時等における過給機20の応答特性を向上でき、ターボラグを改善できる。
【0045】
一実施形態では、
図1~
図5に示す内燃機関10(10A~10C)では、気筒14の軸方向に沿って視認した場合(気筒14の軸が上下方向に沿って配置される場合平面視となる。)、第1方向(矢印x方向)に沿って配置された複数の気筒14を挟んで一方の側にタービンホイール24が配置され、他方の側にコンプレッサホイール26が配置される。
この実施形態において、
図1~
図5に示すように、排気ポート19はタービンホイール24に近い気筒の部位に設けられ、給気ポート33はコンプレッサホイール26に近い気筒の部位に設けられる。従って、各気筒からタービンホイール24に導設される排気流路18の配置が容易になり、排気流路18の長さを短縮できる。給気流路32について同様のことが言える。
【0046】
また、タービンホイール24及びコンプレッサホイール26を第1方向に沿って配置された複数の気筒を挟んでその両側に配置することで、コンプレッサ部が排気流路18を流れる排気の熱の影響を受けにくくなる。これによって、気筒14内の燃焼室に過給する給気aの冷却効果を向上できるため、機関出力の限界を高く保持できる。
【0047】
一実施形態では、
図1~
図5に示すように、出口流路30はタービンホイール24から第2方向(矢印y方向)に沿って導設され、出口流路30の排出口はシリンダヘッド16の外部まで導設される。また、入口流路34はシリンダヘッド16の外部からコンプレッサホイール26に導設され、入口流路34の入口はシリンダヘッド16の外部に配置される。
この実施形態によれば、複数の気筒14の配列方向において複数の気筒14の中央部で、出口流路30及び入口流路34を第2方向に沿って配置することで、排気eの流れ抵抗を増大させずに排気eをタービンホイール24から排出できると共に、給気aの流れ抵抗を増大させずに給気aをコンプレッサホイール26に供給できる。また、出口流路30及び入口流路34を他の機器類のじゃまにならずに配置さきる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
幾つかの実施形態によれば、複数の気筒と過給機を備える内燃機関のシリンダヘッド及びその周辺構造のコンパクト化を実現できる。
【符号の説明】
【0049】
10(10A、10B、10C) 内燃機関
12 シリンダブロック
14(14a、14b、14c14d) 気筒
16 シリンダヘッド
18(18a、18b、18c、18d) 排気流路
19 排気ポート
20 過給機
22 回転軸
24 タービンホイール
26 コンプレッサホイール
28(28A) 第1スクロール通路
28(28B) 第2スクロール通路
28(28a、28b、28c、28d) スクロール通路
30 出口流路
32(32a、32b、32c、32d) 給気流路
33 給気ポート
34 入口流路
36 軸受部
Fn ノズル流路
RA、Ra 第1範囲
RB、Rb 第2範囲
Rc 第3範囲
Rd 第4範囲
a 給気
e 排気