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特許7162642マイクロバイオセンサー及びその測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】マイクロバイオセンサー及びその測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20221021BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20221021BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20221021BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20221021BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
A61B5/1473
G01N27/327 353Z
G01N27/416 338
G01N27/30 A
A61B5/1486
G01N27/416 336B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020131753
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2021036228
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】62/882,162
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/988,549
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518115285
【氏名又は名称】華廣生技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BIONIME CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フアン,チュン-ム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チー-シン
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0053667(US,A1)
【文献】特表2007-537841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/327
G01N 27/30
A61B 5/1473
A61B 5/1486
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するように皮下に埋め込まれるバイオセンサーであって、作用電極、対電極及び補助電極を備え、前記作用電極は、前記分析物と反応するように化学試薬によって少なくとも部分的に覆われ、前記対電極は、銀及びハロゲン化銀を有し、前記バイオセンサーの使用寿命を延長するための、前記分析物を測定する方法であって、
(a)測定を実行する測定ステップであって、
i、前記化学試薬及び前記分析物との電気化学反応を有する前記作用電極で第一酸化反応を起こさせて現在の生理信号を出力するために、前記作用電極が測定期間中に前記対電極の電圧レベルよりも高い電圧レベルを有するように、前記作用電極と前記対電極との間に測定電位差を印加するステップであって、前記対電極の前記ハロゲン化銀は前記現在の生理信号に対応する現在の消耗量を有するサブステップと、
ii、前記測定電位差を除去して前記測定ステップを停止し、前記現在の生理信号を演算して現在の生理パラメータを出力するサブステップと、を含む前記測定ステップと、
(b)補充を実行する補充ステップであって、
i、前記対電極が前記補助電極の前記電圧レベルよりも高い電圧レベルを有するように、補充期間中に前記対電極と前記補助電極の間に補充電位差を印加して、前記対電極上の前記銀に第二酸化反応を引き起こし、その結果、前記ハロゲン化銀は前記消耗量に対応する補充量を獲得し、前記対電極の前記ハロゲン化銀は安全な貯蔵範囲に維持された量を有し、次の測定ステップで得られる次の生理信号及び次の生理パラメータが特定の相関関係に保つサブステップと、
ii、前記補充電位差を除去して、前記補充ステップを停止するサブステップと、を含む前記補充ステップと、
(c)ステップ(a)と同じサブステップを含む次の測定ステップを実行するステップと、
(d)ステップ(b)と同じサブステップを含む次の補充ステップを実行するステップと、を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定電位差と前記補充電位差は、それぞれ測定期間と補充期間に印加され、
前記測定期間は、一定の測定期間値及び可変の測定期間値のいずれかである時間値を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定期間と前記補充期間の合計期間は定数であり、
前記一定の測定期間値は、3秒、5秒、10秒、15秒、30秒、1分、2分、5分、10分からなる群から選択された時間値以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補充電位差は、一定の電圧値を有し、
前記補充期間は、前記ハロゲン化銀の前記消耗量に基づいて動的に調整される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記補充期間は、一定の期間値を有し、
前記補充電位差は、前記ハロゲン化銀の前記消耗量に基づいて動的に調整される値を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記安全な貯蔵範囲内の前記対電極の前記ハロゲン化銀の量は、前記補充量を前記消耗量に近いか等しいように制御することによって維持される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記安全な貯蔵範囲内の前記対電極の前記ハロゲン化銀の量は、前記補充量を前記消耗量よりも大きく又は少なくなるように制御することによって維持される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生体液中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するように皮下に埋め込まれるバイオセンサーであって、作用電極、対電極及び補助電極を備え、前記作用電極は、化学試薬によって少なくとも部分的に覆われ、前記対電極は、銀及びハロゲン化銀を含み、前記ハロゲン化銀の初期量有する前記バイオセンサーの使用寿命を延長するための、前記分析物を測定する方法であって、
測定電圧を印加して前記作用電極を駆動し、前記生理信号を測定することにより、前記生理パラメータを取得し、前記ハロゲン化銀を消耗量で消耗するステップと、
前記測定電圧の印加を停止するステップと、
前記生理パラメータを取得するたびに、前記対電極と前記補助電極との間に補充電圧を印加して前記対電極を駆動し、酸化反応を引き起こすことによって補充量の前記ハロゲン化銀を前記対電極に補充するステップと、を備え、
前記補充量と前記初期量の合計から、前記消耗量を差し引いたガード値は、前記初期量から特定値を増減させた範囲内で制御される、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化銀の量を安全な貯蔵範囲に維持するために、前記ハロゲン化銀の前記補充量を、前記ハロゲン化銀の前記消耗量に近い、等しい、大きい、小さい、等しくない群から選択されたものに制御することにより、ガード値を確保する、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記特定値はXであり、
Xは、0<X <100%の前記初期量という条件を満たす、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
生体内の分析物に関連する生理信号を表す生理パラメータを測定するための皮下埋め込み用のマイクロバイオセンサーであって、
基板と、
化学試薬と、
前記基板に配置され、少なくとも部分的に前記化学試薬で覆われ、測定期間内に第一酸化反応のために駆動されて、前記生理信号を測定して前記生理パラメータを取得する作用電極と、
前記基板に配置され、銀とハロゲン化銀を含む対電極であって、前記ハロゲン化銀が初期量を有し、前記測定期間内に特定の消耗量で消耗される前記対電極と、
基板上に配置される補助電極であって、それぞれの前記生理パラメータを取得するたびに、補充期間内に第二酸化反応のために前記対電極及び前記補助電極が駆動されて、補充量の前記ハロゲン化銀が前記対電極に補充される前記補助電極と、を備え、
前記補充量と前記初期量の合計から、前記消耗量を差し引いたガード値は、前記初期量から特定値を増減させた範囲内で制御される、ことを特徴とするマイクロバイオセンサー。
【請求項12】
前記ガード値は、ハロゲン化銀の量と、銀の量及びハロゲン化銀の量の合計との比率がゼロより大きく1より小さくなるように制御され、
前記マイクロバイオセンサーは、6mm以下の長さを有する短い埋め込み端を更に含み、
前記対電極が前記化学試薬によって少なくとも部分的に覆われ、前記補助電極が白金を含む、ことを特徴とする請求項11に記載のマイクロバイオセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願と優先権主張の相互参照
この出願は、2019年8月2日に提出された米国仮特許出願番号62/882,162及び2020年3月12日に提出された米国仮特許出願番号62/988,549の出願日の利益を主張し、これらの開示は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本発明は、マイクロバイオセンサー及びその測定方法に関し、特に、マイクロバイオセンサーの使用寿命を延ばすためのマイクロバイオセンサー及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病患者の人口は急速に増加しており、人体のグルコースの変化を監視する必要性がますます強調されている。そのため、毎日繰り返される採血と検出による患者の不便を解消するために、多くの研究は、人体に埋め込むことができる持続血糖モニタリング(CGM)システムの開発を始めている。
【0004】
CGMシステムの酵素ベースのバイオセンサーの分野において、分析物の濃度に依存する生化学反応信号が、光学的又は電気化学的信号などの測定可能な物理信号に変換される。グルコースの測定の場合、電気化学反応が起こり、グルコースオキシダーゼ(GOx)がグルコースを触媒して反応し、グルコノラクトンと還元酵素を生成する。次に、還元酵素が電子を生体内の生体液中の酸素に移動させて生成物の過酸化水素(H)を生成し、生成物のH2O2を酸化することによってグルコースの濃度を定量化する。
反応は次のとおりである。
グルコース+GOx(FAD)→GOx(FADH2)+グルコノラクトン
GOx(FADH2)+O→GOx(FAD)+H
ここで、FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)は、GOxの活性中心である。
【0005】
ユーザは通常、CGMシステムを長期間(たとえば少なくとも14日間)着用するため、そのサイズの小型化は必要な開発である。CGMシステムの基本構造は、(a)人体のグルコース濃度に対応する生理信号を測定するバイオセンサー、(b)これらの生理信号を送信するための送信機を備える。バイオセンサーは、二電極システム又は三電極システムであり得る。三電極システムを備えたバイオセンサーは、作用電極(WE)、対電極(CE)及び参照電極(RE)を含む。二電極システムを備えたバイオセンサーは、作用電極(WE)と対電極(CE)を含み、対電極は参照電極としても機能し、従って、参照電極/対電極(R/C)と呼ばれることもある。三電極システムのバイオセンサーの参照電極、及び二電極システムのバイオセンサーの参照電極としても機能する対電極の場合、グルコース濃度の安定した測定に適用できる適切な材料が銀と塩化銀(Ag/AgCl)である。しかし、バイオセンサーが生体に埋め込まれた後、作用電極で酸化反応が起こり、グルコースの濃度が測定されると、対応する参照電極(R)又は参照電極/対電極(R/C)で還元反応が起こし、AgClをAgに還元し、AgClを消耗する。更に、生体に埋め込まれたバイオセンサーが二電極又は三電極システムのバイオセンサーである場合、塩化銀が体液において解離するため、参照電極からの塩化銀を消耗し、参照電極に対するドリフト問題を引き起こす。ただし、二電極システムの参照電極/対電極(R/C)の反応により、塩化銀の消耗量は三電極システムの消耗量よりも更に高くなる。したがって、バイオセンサーの使用寿命は、対電極及び/又は参照電極上の塩化銀の含有量によって制限される。
【0006】
この問題に対処するために提案された多くの発明もある。二電極システムを備えたバイオセンサーを一例として、対電極での消耗量は、20ナノアンペア(nA)の平均検出電流で1日あたり約1.73ミリクーロン(mC)である。対電極の長さ、幅及び高さをそれぞれ3.3mm、0.25mm、0.01mmとし、当初設計された電極容量を6mCとすると、バイオセンサーが提供できる安定の測定は、最大で約1日維持できる。しかし、皮下に埋め込まれたバイオセンサーは16日間の持続血糖モニタリングをサポートできるように、バイオセンサーの使用寿命を更に延長する必要がある場合、対電極の容量は少なくとも27.68mCである必要がある。対電極の幅と厚さを変更せずに、従来技術の対電極の長さは、最大15.2mmである必要がある。したがって、バイオセンサーの対電極の長さは、従来技術では10mmより大きくなるように延長される。しかしながら、そのような種類のバイオセンサーが皮下組織に深く埋め込まれることを回避するために、バイオセンサーは斜めの角度で埋め込まれる必要がある。そのため、埋め込み創傷が大きくなり、患者に感染するリスクが高くなるなどの問題が発生し、埋め込み長さが長いため、埋め込む時の痛みも大きくなる。
【0007】
米国特許第8,620,398号は、主に三電極システムを備えたバイオセンサーを記載している。参照電極は、基本的に化学反応に関与しないが、塩化銀は生体内の環境で自然に徐々に消耗され、消耗速度は二電極システムの対電極よりも遅くなる。その明細書は、AgClがほぼ完全に消耗されると、AgClが再生することを開示している。つまり、測定信号が不安定になるまで、又は測定信号がすべてノイズになるまで、補充プロセスを作動させ、AgClが複数の測定を実行するのに十分な量に回復する。その後、次にノイズが発生するまで、AgClを再度補充する必要がある。米国特許第8,620,398号は、バイオセンサーが故障した場合、AgClが測定及びAgClの補充の時に消耗されると考えているが、故障時の測定値はもはや信頼できないことが理解できる。正しい測定値を取得するために、バイオセンサーがAgCl補充プロセスを完了するのを待つか、血液サンプルを採取して一時的に測定を実行するか、この測定を直接スキップする必要がある。この問題は、患者や現在の血糖値を知る必要がある人にとっては常に厄介である。更に、バイオセンサーは、連続した複数の測定又は数日間にわたる複数の測定を処理する必要があるため、より多くのAgCl容量を準備する必要がある。しかしながら、それは必然的にバイオセンサーのより長い埋め込み長さの問題をもたらすであろう。米国特許第8,620,398号は、中断のない測定、及びバイオセンサーのより短い埋め込み長さ及びより長い使用寿命を提供することができる適時のAgCl補充方法について何も提案していない。
【0008】
US9,351,677は、分析物を測定するためのセンサーを提案し、センサーは主に二電極システムを使用する。参照電極/対電極(R/C)は化学反応に関与するため、塩化銀は電気化学反応によって消耗される。この特許は、AgCl容量が増加する分析物センサーを開示している。センサーはH2O2を使用して、参照電極上にAgClを再生する。しかし、H2O2はH2Oに還元されたり、O2に酸化されたりしやすいため、人体に安定して存在することは容易ではない。したがって、再生/補充期間中、人体のH2O2濃度は、十分な量のAgClを安定して補充するのに十分ではない可能性があり、バイオセンサーには、より大きなAgCl電極サイズを装備する必要があり、埋め込み端も最大12mmの長さである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本開示は、測定後にAgClを補充することにより、中断のない測定を提供すること、AgClを安定して補充し、バイオセンサーの使用寿命を延ばすこと、及びバイオセンサーの埋め込み端をコンパクトなサイズに小型化し、製品の製造コストを削減することという効果を達成することができるバイオセンサーを提供する。これらの効果は、従来技術が克服できないと認めた前述の問題を解決できる。
【0010】
上記を考慮して、先行技術の欠陥のため、本発明者らは、先行技術の不利な点を効果的に克服するために本発明を提供する。本発明の説明は以下の通りである。
【0011】
本発明の補充技術により、本発明のマイクロバイオセンサーは、使用寿命が長く、マイクロバイオセンサーの対電極の信号感知部のサイズを小さくすることができ、生物毒性を低減することができる。更に、電極のサイズの縮小は、具体的には、センサーの埋め込み端の短縮された長さを指し、これは、埋め込み中の使用者の痛みを軽減するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の別の態様によれば、生体液中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するように皮下に埋め込まれるバイオセンサーであって、前記バイオセンサーの使用寿命を延長するために前記バイオセンサーを使用して前記分析物を測定する方法が開示される。前記バイオセンサーは、作用電極、対電極及び補助電極を含み、前記作用電極は、前記分析物と反応するように化学試薬によって少なくとも部分的に覆われ、前記対電極は、銀及びハロゲン化銀を有する。前記方法は、(a)測定を実行する測定ステップであって、i、前記化学試薬及び前記分析物との電気化学反応を有する前記作用電極で第一酸化反応を起こさせて現在の生理信号を出力するために、前記作用電極が測定期間中に前記対電極の電圧レベルよりも高い電圧レベルを有するように、前記作用電極と前記対電極との間に測定電位差を印加するステップであって、前記対電極の前記ハロゲン化銀は前記現在の生理信号に対応する現在の消耗量を有するサブステップと、ii、前記測定電位差を除去して前記測定ステップを停止し、前記現在の生理信号を演算して現在の生理パラメータを出力するサブステップと、を含む前記測定ステップと、(b)補充を実行する補充ステップであって、i、前記対電極が前記補助電極の前記電圧レベルよりも高い電圧レベルを有するように、補充期間中に前記対電極と前記補助電極の間に補充電位差を印加して、前記対電極上の前記銀に第二酸化反応を引き起こし、その結果、前記ハライド銀は前記消耗量に対応する補充量を獲得し、前記対電極の前記ハロゲン化銀は安全な貯蔵範囲に維持された量を有し、次の測定ステップで得られる次の生理信号及び次の生理パラメータが特定の相関関係に保つサブステップと、ii、前記補充電位差を除去して、前記補充ステップを停止するサブステップと、を含む前記補充ステップと、(c)ステップ(a)と同じサブステップを含む次の測定ステップを実行するステップと、(d)ステップ(b)と同じサブステップを含む次の補充ステップを実行するステップと、を含む。
【0013】
本開示のもう一つの態様によれば、生体液中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するように皮下に埋め込まれるバイオセンサーであって、前記バイオセンサーの使用寿命を延長するために前記バイオセンサーを使用して前記分析物を測定する方法が開示される。前記バイオセンサー、作用電極、対電極及び補助電極を含み、前記作用電極は、化学試薬によって少なくとも部分的に覆われ、前記対電極は、銀及びハロゲン化銀を含み、初期量有する。前記方法は、測定電圧を印加して前記作用電極を駆動し、前記生理信号を測定することにより、前記生理パラメータを取得し、前記ハロゲン化銀を消耗量で消耗するステップと、前記測定電圧の印加を停止するステップと、前記生理パラメータを取得するたびに、前記対電極と前記補助電極との間に補充電圧を印加して前記対電極を駆動し、酸化反応を引き起こすことによって補充量の前記ハロゲン化銀を前記対電極に補充するステップと、を含み、前記補充量と前記初期量の合計から、前記消耗量を差し引いたガード値は、前記初期量から特定値を増減した範囲内で制御される。
【0014】
本開示のもう一つの態様によれば、生体内の分析物に関連する生理信号を表す生理パラメータを測定するための皮下埋め込み用のマイクロバイオセンサーを提出する。前記マイクロバイオセンサーは、基板と、化学試薬と、前記基板に配置され、少なくとも部分的に前記化学試薬で覆われ、測定期間内に第一酸化反応のために駆動されて、前記生理信号を測定して前記生理パラメータを取得する作用電極と、前記基板に配置され、銀とハロゲン化銀を含む対電極であって、前記ハロゲン化銀が初期量を有し、前記測定期間内に特定の消耗量で消耗される前記対電極と、基板上に配置される補助電極であって、それぞれの前記生理パラメータを取得するたびに、補充期間内に第二酸化反応のために前記対電極及び前記補助電極が駆動されて、補充量の前記ハロゲン化銀が前記対電極に補充される前記補助電極と、を含み、前記補充量と前記初期量の合計から、前記消耗量を差し引いたガード値は、前記初期量から特定値を増減させた範囲内で制御される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記の実施形態及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討した後に、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
図1】本発明の生理信号測定装置の概略図を示す。
図2A】本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の正面概略図を示す。
図2B】本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の背面概略図を示す。
図2C図2Aの断面線A~A ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図を示す。
図3A】本発明のマイクロバイオセンサーの第二実施形態の断面概略図を示す。
図3B】本発明のマイクロバイオセンサーの第三実施形態の断面概略図を示す。
図3C】本発明のマイクロバイオセンサーの第四実施形態の断面概略図を示す。
図3D】本発明のマイクロバイオセンサーの第五実施形態の断面概略図を示す。
図3E】本発明のマイクロバイオセンサーの第六実施形態の断面概略図を示す。
図3F】本発明のマイクロバイオセンサーの第七実施形態の断面概略図を示す。
図3G】本発明のマイクロバイオセンサーの第八実施形態の断面概略図を示す。
図4A】本発明における測定モードでの定電圧回路を示す。
図4B】本発明における補充モードの定電圧回路を示す。
図5A】第一方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図5B】第二方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図5C】第三方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図5D】第四方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図5E】第五方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図5F】第六方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を示す。
図6A】本発明における測定モードでのセグメント定電流回路を示す。
図6B】本発明における補充モードのセグメント定電流回路を示す。
図7A】本発明における測定モードでの連続可変定電流回路を示す。
図7B】本発明における補充モードの連続可変定電流回路を示す。
図8A】第一方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の電圧概略図を示す。
図8B】第二方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の電圧概略図を示す。
図8C】第三方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の電圧概略図を示す。
図8D】第三方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の概略図を示す。
図9】本発明の一実施形態に係る分析物を測定する方法を示す。
図10】本発明の別の実施形態に係る分析物を測定する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明を読むときは、本発明のすべての図を参照する。本発明のすべての図は、例を示すことによって本発明の異なる実施形態を示し、当業者が本発明を実施する方法を理解するのに役立つ。本実施例は、本発明の精神を実証するのに十分な実施形態を提供し、各実施形態は他の実施形態と矛盾せず、新しい実施形態は、それらの任意の組み合わせを通じて実施することができる。すなわち、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されない。
【0017】
特定の例で定義されている他の制限がない限り、以下の定義が明細書全体で使用される用語に適用される。
【0018】
「量」という用語は、対電極上のハロゲン化銀(AgX)又は塩化銀(AgCl)の容量を指し、好ましくは、マイクロクーロン(μC)、ミリクーロン(mC)又はクーロン(C)の単位で表す。ただし、重量パーセント(wt%)、モル数、モル濃度などによる濃度に限定されない。
【0019】
図1を参照し、図1は、本発明の生理信号測定装置の概略図である。本発明の生理信号測定装置10は、生体液中の分析物に関連する生理学的パラメータを表す生理信号を測定するために皮下に埋め込まれ得る。
本発明の生理信号測定装置10は、マイクロバイオセンサー300及び送信機200を含み、送信機200は、マイクロバイオセンサー300に電気的に接続され、プロセッサ210、電源220、回路スイッチングユニット230、温度感知ユニット240及び通信ユニット250を含む。電源220は、生理信号を測定するために、回路スイッチングユニット230を介してマイクロバイオセンサー300に電圧を提供する。温度感知ユニット240は、生体の体温を測定して、マイクロバイオセンサー300によって測定された温度測定信号及び生理信号を、プロセッサ210に送信する。プロセッサ210は、測定された生理信号を生理パラメータに対して演算する。通信ユニット250は、有線又は無線伝送によってユーザ装置20と通信することができる。
【0020】
図2A図2Bを参照し、図2A図2Bは、それぞれ本発明のマイクロバイオセンサーの第一実施形態の前面と背面の概略図である。本発明のマイクロバイオセンサー300は、基板310と、作用電極320と、基板310上に配置される対電極330と、作用電極320、対電極330及び補助電極340を覆う化学試薬350(図2Cに示す)と、を含む。基板310の材料は、電極基板での使用に適し、柔軟性と絶縁特性を有することが知られている任意の材料であり得、好ましくは、ポリエステル及びポリイミドなどのポリマー材料などであるがこれらに限定されない。前述のポリマー材料は、単独で又は組み合わせて使用することができる。基板310は、表面311(すなわち、第一表面)、表面311と反対側の表面312(すなわち、第二表面)、第一端部313、及び第二端部314を含む。基板310は、それぞれ第一端部313の近くに配置される信号出力領域315、第二端部314の近くに配置される感知領域316、及び信号出力領域315と感知領域316との間に配置される接続領域317との三つの領域に分離される。作用電極320は、基板310の表面311上に配置され、基板310の第一端部313から第二端部314まで延びる。作用電極320は、基板310の信号出力領域315に配置される信号出力部分321と、基板310の感知領域316に配置される信号感知部分322とを含む。
【0021】
対電極330及び補助電極340は、基板310の反対側の表面312上に配置され、基板310の第一端部313から第二端部314まで延びる。対電極330は、基板310の感知領域316に配置される信号感知部分332を含み、補助電極340は、基板310の感知領域316に配置される信号感知部分342を含む。マイクロバイオセンサー300の感知領域316は、皮下に埋め込まれて、信号感知部分322に生体液中の分析物の生理信号を測定させることができる。生理信号は、生理パラメータを得るために、信号出力部分321を介してプロセッサ210に送信される。更に、送信機200とは別に、生理パラメータも有線/無線通信を介してユーザ装置20から取得することができる。一般的なユーザ装置20は、スマートフォン、生理信号受信機、又は血糖計であり得る。
【0022】
対電極330の表面の材料は、銀及びハロゲン化銀、好ましくは塩化銀又はヨウ化銀を含む。本発明の対電極330の電極材料は、銀及びハロゲン化銀(Ag/AgX)を含むので、本発明の対電極330は、当技術分野で周知の対電極及び参照電極の機能を含む。具体的には、本発明の対電極330は、(1)作用電極320と電子回路を形成して、対電極330と作用電極320との間の電流を伝導させて、作用電極320で酸化反応が確実に起こるようにすることができる、(2)基準電位として安定した相対電位を提供する。したがって、本発明の作用電極320及び対電極330は、二電極システムを形成する。本発明のバイオセンサーのコストを更に削減し、生体適合性を改善するために、Ag/AgXをカーボンと共に使用することができ、例えば、Ag/AgXをカーボンペーストに混合し、ハロゲン化銀の含有量は、対電極330が測定ステップを安定して実行できる量である。対向電極330の表面は、ハロゲン化銀が解離するのを防ぎ、対電極330を保護するために、導電性材料によって部分的に覆われ得る。ここで、導電性材料は、作用電極の測定結果に影響を及ぼさない材料から選択され、例えば、導電性材料は炭素である。
【0023】
別の実施形態において、バイオセンサーは、ワイヤータイプ又はスタックタイプの電極構造に限定されない。
【0024】
本開示の別の実施形態によれば、ハロゲン化銀の初期量は、バイオセンサーが販売のために工場から出荷される準備ができる前にゼロであり得る。この場合、バイオセンサーの対電極330はハロゲン化銀を持たない。バイオセンサーが患者に皮下移植された後、及び、最初の測定前の最初の補充期間中に、対電極330にコーティングされた銀を酸化することによってハロゲン化銀の初期量を補充することができる。
【0025】
補助電極340は、補充ステップにおいて対電極330と電子回路を形成し、対電極330と補助電極340との間の電流を伝導させて、対電極330上で酸化反応が確実に起こるようにする。補助電極340の電極材料は、作用電極320の電極材料と同じであってもよく、或いは、炭素などの過酸化水素に対する感度が作用電極320のそれよりも低くてもよい。
【0026】
化学試薬350は、各電極の信号感知部分322、332、342の少なくとも部分的な表面を覆う。別の実施形態において、化学試薬350は、作用電極320の信号感知部分322の少なくとも部分的な表面を覆う(図示されていない)。具体的には、対電極330は、化学試薬350によって覆われていない。マイクロバイオセンサー300の感知領域316は、皮下に埋め込まれて、作用電極320の信号感知部分322に、生体液中の分析物の生理信号を測定させることができる。生理信号は、作用電極320の信号出力部分321を介してプロセッサ210に送信され、生理パラメータを取得する。更に、送信機200とは別に、生理パラメータも有線/無線通信を介してユーザ装置20から取得することができる。
【0027】
図2Cを参照し、図2Cは、図2Aの断面線A~A ’に沿ったマイクロバイオセンサーの断面概略図である。図2Cにおいて、線A~A ’は、マイクロバイオセンサー300の感知領域316の断面線である。
図2Cにおいて、作用電極320は、基板310の表面311上に配置され、対電極330及び補助電極340は、基板310の反対側の表面312上に配置され、作用電極320、対電極330及び補助電極340の表面は、化学試薬350によって覆われている。基本的に、化学試薬350は、少なくとも作用電極320の部分的な表面を覆う。本発明のマイクロバイオセンサー300は、測定期間中に測定ステップを実行し、補充期間中に補充ステップを実行する。測定ステップを実行すると、作用電極320の電圧レベルが対電極330の電圧レベルよりも高くなり、作用電極320から対電極330に電流が流れ、その結果、化学試薬350及び分析物との電気化学反応を有する作用電極320上で酸化反応が起こり、生理信号が測定され、対電極330上で還元反応が起こり、その結果、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X-)に解離される。対電極330内のハロゲン化銀が消耗されるので、次の測定ステップを実行するために、ハロゲン化銀を対電極330内に補充する必要がある。補充ステップを実行すると、対電極330の電圧レベルが補助電極340の電圧レベルよりも高くなり、対電極330から補助電極340に電流が流れ、その結果、対電極330で酸化反応が起こり、銀を生体内のハロゲンイオンと結合させてハロゲン化銀を補充する。詳細な測定ステップ及び詳細な補充ステップが図9に示されている。
【0028】
図3Aを参照し、図3Aは、本発明のマイクロバイオセンサーの第二実施形態の断面概略図である。図3Aにおいて、作用電極320及び補助電極340は、基板310の表面311上に配置されてもよく、対電極330は、基板310の反対側の表面312上に配置され、作用電極320、対電極330及び補助電極340の表面は、化学試薬350によって覆われている。この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流が作用電極320から対電極330に流れ、その結果、酸化反応が作用電極320上で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、対電極330から補助電極340に電流が流れ、対電極330上で酸化反応が起こり、銀イオンとハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0029】
図3Bを参照し、図3Bは、本発明のマイクロバイオセンサーの第三実施形態の断面概略図である。この実施形態において、マイクロバイオセンサー300は、それぞれ第一作用電極323及び第二作用電極324である二つの作用電極を有する。ここで、補助電極は、第二作用電極324によって置き換えられている。図3Bにおいてに、第一作用電極323及び第二作用電極324は、基板310の表面311上に配置され、対電極330は、基板310の反対側の表面312上に配置され、第一作用電極323、第二作用電極324及び対電極330の表面は、化学試薬350によって覆われている。第一作用電極323及び第二作用電極324のうちの一つは、測定ステップにおいて生理信号を測定するために選択され、第一作用電極323又は第二作用電極324は、補充ステップにおいてハロゲン化銀を対電極330に補充するために、対電極330と電子回路を形成する。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流が第一作用電極323又は第二作用電極324から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323又は第二作用電極324で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)及びハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流が対電極330から第一作用電極323又は第二作用電極324に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0030】
図3Cを参照し、図3Cは、本発明のマイクロバイオセンサーの第四実施形態の断面概略図である。この実施形態において、マイクロバイオセンサー300は、それぞれ第一作用電極323及び第二作用電極324である二つの作用電極を有する。ここで、補助電極は、第二作用電極324によって置き換えられている。図3Cにおいて、第一作用電極323は、基板310の表面311上に配置され、対電極330及び第二作用電極324は、基板310の反対側の表面312上に配置され、第一作用電極323、第二作用電極324及び対電極330の表面は、化学試薬350によって覆われている。この実施形態において、測定ステップを実行するために、第一作用電極323の表面積を増加させることができ、補充ステップを実行してハロゲン化銀を対電極330に補充するために、第二作用電極324の表面積を減少させることができる。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流が第一作用電極323から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流が対電極330から第二作用電極324に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0031】
図3Dを参照し、図3Dは、本発明のマイクロバイオセンサーの第五実施形態の断面概略図である。第五実施形態は、第一実施形態における別の作用電極の追加である。具体的には、マイクロバイオセンサー300は、二つの作用電極をそれぞれ有し、第一作用電極323及び第二作用電極324、一つの対電極330及び一つの補助電極340である。図3Dにおいて、第一作用電極323及び第二作用電極324は、基板310の表面311上に配置され、対電極330及び補助電極340は、基板310の反対側の表面312上に配置される。第一作用電極323、第二作用電極324、対電極330及び補助電極340の表面は、化学試薬350によって覆われている。測定ステップにおいて、第一作用電極323及び第二作用電極324のうちの一つは、生理信号を測定するために選択され、補充ステップにおいて、補助電極340は、対電極330と電子回路を形成して、ハロゲン化銀を対電極330に補充する。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流が第一作用電極323又は第二作用電極324から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323又は第二作用電極324で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流が対電極330から補助電極340に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0032】
図3Eを参照し、図3Eは、本発明のマイクロバイオセンサーの第六実施形態の断面概略図である。この実施形態において、マイクロバイオセンサー300は、三つの作用電極を有し、これらの作用電極はそれぞれ、第一作用電極323、第二作用電極324及び第三作用電極325であり、ここで、補助電極は第三作用電極325によって置き換えられる。図3Eにおいて、第一作用電極323及び第二作用電極324は、基板310の表面311上に配置され、対電極330及び第三作用電極325は、基板310の反対側の表面312上に配置され、第一作用電極323、第二作用電極324、第三作用電極325及び対電極330の表面は、化学試薬350によって覆われている。第一作用電極323、第二作用電極324及び第三作用電極325のうちの一つは、測定ステップにおいて生理信号を測定するために選択され、第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325は、補充ステップにおいて対電極330にハロゲン化銀を補充するために対電極330と電子回路を形成する。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流は、第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流は、対電極330から第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0033】
図3Fを参照し、図3Fは、本発明のマイクロバイオセンサーの第七実施形態の断面概略図である。第七実施形態は、第六実施形態の電極構成の変形例である。この実施形態において、図3Fに示すように、第一作用電極323、第二作用電極324及び第三作用電極325は、基板310の表面311上に配置され、対電極330は、基板310の反対側の表面312上に配置される。第一作用電極323、第二作用電極324、第三作用電極325及び対電極330の表面は、化学試薬350によって覆われている。第一作用電極323、第二作用電極324及び第三作用電極325のうちの一つは、測定ステップにおいて生理信号を測定するために選択され、第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325は、補充ステップにおいて対電極330にハロゲン化銀を補充するために対電極330と電子回路を形成する。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流は、第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流は、対電極330から第一作用電極323、第二作用電極324又は第三作用電極325に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0034】
図3Gを参照し、図3Gは、本発明のマイクロバイオセンサーの第八実施形態の断面概略図である。図3Dと比較すると、違いは、図3Gの第二作用電極324はU字型である。第八実施形態において、第一作用電極323及び第二作用電極324は、基板310の表面311上に構成され、第二作用電極324は、第一作用電極323に隣接してその周囲にあり、対電極330及び補助電極340は、基板310の反対側の表面312上に配置されている。したがって、この実施形態において、測定ステップを実行すると、電流は、第一作用電極323から対電極330に流れる。その結果、酸化反応が第一作用電極323で起こり、生理信号が測定され、対電極330におけるハロゲン化銀(AgX)が消耗され、銀(Ag)とハロゲンイオン(X)に解離される。補充ステップを実行すると、電流は、対電極330から補助電極340又は第二作用電極324に流れる。その結果、酸化反応が対電極330上で起こり、銀とハロゲンイオンとの組み合わせでハロゲン化銀を補充する。
【0035】
図2C~3Gの詳細な電極スタックは省略され、電極位置のみが示されている。
【0036】
上記の任意の実施形態において、本発明の基板310は、絶縁体である。本発明の作用電極320及び第一作用電極323の電極材料には、炭素、白金、アルミニウム、ガリウム、金、インジウム、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、オスミウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、チタン、亜鉛、シリコン、ジルコニウム、それらの混合物、又はそれらの誘導体(合金、酸化物又は金属化合物など)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、作用電極320及び第一作用電極323の材料は、貴金属、貴金属誘導体、又はそれらの組み合わせである。より好ましくは、作用電極及び第一作用電極323は、白金含有材料で製造される。第二作用電極324及び第三作用電極325の材料も、上記の作用電極320及び第一作用電極323について例示されるような要素又はそれらの誘導体を使用することができる。別の実施形態において、第二作用電極324及び第三作用電極325の電極材料は、炭素などの第一作用電極323の感度よりも過酸化水素に対する感度が低い材料であり得る。
【0037】
本発明の対極330の電極材料は、銀とハロゲン化銀(Ag/AgX)を含むので、本発明の対電極330は、当技術分野で周知の対電極及び参照電極の機能を含む。具体的には、本発明の対電極330は、(1)作用電極320と電子回路を形成して、対電極330と作用電極320との間の電流を伝導させて、作用電極320で電気化学反応が確実に起こるようにすることができる、(2)補助電極340と電子回路を形成して、対電極330と補助電極340との間の電流を伝導させて、電気化学反応が対電極330上で確実に発生するようにする、(3)基準電位として安定した相対電位を提供する。したがって、本発明の作用電極320、対電極330及び補助電極340は、従来の三電極システムと異なる三電極システムを形成する。
【0038】
本発明の補助電極340の電極材料が白金で覆われている場合、補助電極340も生理信号を測定するための電極として使用することができる。
【0039】
上記の任意の実施形態において、銀電極材料が過剰塩素化によって破損するのを防ぐために、基板310の反対側の表面312と対電極330の銀との間に、炭素などの導電性材料の層を更に配置することができる。しかしながら、対電極330の最下層が炭素である場合、スイッチ位置での抵抗は高すぎる。銀などの導電層は、炭素導電性材料と基板310の反対側の表面312との間に更に配置することができる。したがって、本発明の対電極330の材料は、基板310の反対側の表面312から、順次に、導電層、炭素層、銀/ハロゲン化銀層である。
【0040】
定電圧回路の切り替え応用
図4A~Bと図5A~Dを参照し、図4A図4Bは、それぞれ、本発明における測定モード及び補充モードでの定電圧回路を示し、 図5A~Dは、それぞれ、異なる方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流の概略図を順番に示す。測定モードは、測定電位差V1を印加し、測定電位差V1を除去することで開始及び停止でき、対応する電流はIaで表す。測定モードにおいて、測定期間T1の間に作用電極Wと対電極R/Cの間に測定電位差V1を印加するため、作用電極Wの電圧は対電極R/Cの電圧よりも高くなる。測定モード中、図4Aに示されるように、スイッチS1とS4は閉回路状態にあり、スイッチS2とS3は開回路状態にあり、作用電極Wは+ V1であり、補助電極Auxは開回路状態にあり、対電極R/Cは接地されている。その結果、作用電極Wで酸化反応が起こり、作用電極Wは化学試薬及び分析物と電気化学的に反応して生理信号Iaを出力する。対極R/C中のAgClは、生理信号Iaに対応する消耗量を有する。図5A~5Dに示すように、複数の測定期間T1のうちの任意の二つの間は、測定を実行しない期間T2である。いくつかの好ましい実施形態において、T2は一定値である。
【0041】
補充モードは、補充電位差V2を印加し、補充電位差V2を除去することによってそれぞれ開始及び停止することができ、対応する電流はIbで表す。V2は、0.1V~0.8Vの範囲であり、好ましくは0.2V~0.5Vの範囲にある一定値である。補充モードにおいて、補充期間t2(t2が0~T2の範囲にある)の間に、補充電位差V2が補助電極Auxと対電極R/Cの間に印加されて、対電極R/Cの電圧が補助電極Auxの電圧よりも高くなる。補充モードの間、図4Bに示されるように、スイッチS1とS4は開回路状態にあり、スイッチS2とS3は閉回路状態にあり、作用電極Wは開回路状態にあり、補助電極Auxは接地されており、対電極R/Cは、+V2である。その結果、対電極R/CでAgの酸化反応が起こり、対電極R/Cに補充量だけAgClが補充される。定電圧回路において、補充電位差V2は定電圧であり、測定された出力電流はIbである。本発明では、AgClの容量の量又は値(単位は「クーロン」であり、記号「C」で表す)は、電流曲線の下の面積を計算することによって定義される。したがって、測定モードでのAgClの消耗量はIa*T1であり、補充モードでのAgClの補充量はIb*t2である。このような場合、電位差V2が印加される期間t2を調整することにより、AgClの補充量を制御することができる。換言すれば、対電極R/C上のAgClが安全な貯蔵範囲内に保たれていることを前提として、補充量は、消耗量に等しいか、又は等しくない(ほぼ同様、より大きい、又はより小さいを含む)。
【0042】
図5A~5Dにおいて、横軸は時間を表し、V1の曲線は、測定電位差V1の印加及び除去を表し、V2の曲線は、補充電位差V2の印加及び除去を表す。図5Aを参照する。好ましい実施形態において、V2とT2の両方が一定値であり、V2が印加される期間t2(すなわち、補充期間)は可変値である。補充期間t2は、測定モード及び測定期間T1の間に測定された生理信号Iaに従って、0からT2の範囲で動的に調整される。図5Aに示すように、t2は、t2’、t2’ ’、又はt2’ ’ ’…のいずれかである。つまり、AgClの消耗量に応じて補充期間t2を変更することができる。AgClの消耗量が多い状態では、対電極R/CのAgClを安全な貯蔵範囲内に保つために、対電極R/Cを長時間補充することができる。たとえば、t2’ ’の間に補充されるAgClの量は、t2’の間に補充されるAgClの量よりも多くなる。
【0043】
図5Bを参照し、別の好ましい実施形態において、V2、T2及びt2はすべて一定値であり、ここで、t2 = T2である。つまり、測定モードと補充モードがシームレスに切り替わり、測定が行われない期間が補充期間となる。図5C図5Dを参照し、いくつかの好ましい実施形態において、V2、T2及びt2は一定値であり、ここで、t2は、0より大きく、T2より小さい定数値であり、たとえば、t2=1/2 T2、2/5 T2、3/5 T2などである。図5C図5Dとの違いは、図5Cにおいて、各測定モードの後、補充モードが開始する前に、緩衝時間(緩衝時間=T2-t2)が経過し、図5Dにおいて、各測定モードの後、補充モードは緩衝時間なしで直ちに開始し、各補充モードの終了と次の測定モードの開始との間に期間がある。いくつかの好ましい実施形態において、t2はT2よりも小さく、t2はT2中の任意の期間であり得る。
【0044】
図5Eと5Fを参照し、図5Eと5Fは、異なる方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電圧回路の電流-時間概略図を示す。図5Eと5Fにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流を表し、曲線は、測定された生理信号Iaから演算された生理パラメータ曲線を表す。二つの実施形態において、図5Aと同様であり、V2とT2は一定値であり、補充期間t2は可変値である。図5Eと5Fにおいて、曲線下の白い領域は、測定モードでのAgCl消耗量(Ia * T1)を表し、斜めの領域は、補充モードでのAgCl補充量(Ib * t2)を表す。この図から見れば、Ib * t2を、Ia * T1に近づける、又はIa * T1の特定の範囲内にするために、測定された生理信号Iaと測定期間T1に従って、補充期間t2が0からT2の範囲で動的に調整されることがわかる。必要に応じて、測定モードを実行しない期間(T2)の前部(図5Eに示す)又は後部(図5Fに示す)を選択して、補充モードを実行することができる。
【0045】
セグメント定電流回路の切り替え応用
図6A~6B及び図8A~8Cを参照し、 図6A図6Bは、それぞれ、本発明に係る測定モード及び補充モードにおけるセグメント定電流回路を示し、図8A~8Cは、それぞれ、異なる方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の電圧概略図を示す。測定モードは、測定電位差V1を印加し、測定電位差V1を除去することで、それぞれ開始及び停止でき、対応する電流はIaで表す。測定モードでは、測定電位差V1が、測定期間T1の間に作用電極Wと対電極R/Cの間に印加される。測定モード中、図6Aに示すように、スイッチS1とS4は閉回路状態にあり、残りのスイッチは開回路状態にあり、作用電極Wは+V1であり、補助電極Auxは開回路状態にあり、対電極R/Cが接地されている。その結果、作用電極Wで酸化反応が起こり、作用電極Wは化学試薬及び分析物と電気化学的に反応して生理信号Iaを出力する。対電極R/C中のAgClは、生理信号Iaに対応する消耗量を有する。図8A~8Cに示されるように、複数の測定期間T1のうちの任意の二つの間は、測定を実行しない期間T2である。いくつかの好ましい実施形態において、T2は一定値である。
【0046】
補充モードは、それぞれ可変値である補充電位差V2を印加し、補充電位差V2を除去することにより開始及び停止することができ、対応する電流はIbで表す。補充モードでは、補充期間t2(t2は0からT2の範囲)の間に、補充電位差V2が補助電極Auxと対電極R/Cの間に印加される。補充モードの間、図6Bに示すように、スイッチS1とS4は開回路状態にあり、スイッチS2とI_F1~I_Fnに対応するスイッチの少なくとも一つは閉回路状態にある(図6Bにおいて、I_F1及びI_F3に対応するスイッチが閉回路状態)、作用電極Wは開回路状態にあり、補助電極Auxは接地されており、対電極R/Cは+V2であり、その結果、対電極R/C上で、Agの酸化反応が起こり、対電極R/CにAgClが補充される。補充モードでは、生理信号Iaの大きさ及び測定期間T1に応じて、I_F1からI_Fnに対応するスイッチの少なくとも一つをオンにして定電流Ibを出力するように選択することができ、 AgClの補充量は、電位差V2が印加される期間t2を調整することで制御できる。すなわち、対電極R/C上のAgClが安全な貯蔵範囲内に保たれていることを前提として、補充量は、消耗量に等しいか、又は等しくない(ほぼ同様、より大きい、又はより小さいを含む)。
【0047】
連続可変定電流回路の切り替え応用
図7A~7B及び図7A~7Bを参照し、図7A図7Bは、本発明に係る、それぞれ測定モード及び補充モードでの連続可変定電流回路を示す。この実施形態における測定モード及び補充モードは、図6A~6Bと同様であるので、ここでは繰り返し説明しない。この実施形態は、図6A図6Bの実施形態の補充モードの場合のみと異なり、生理信号Iaに基づいて、定電流Ibは、デジタル-アナログ変換器(DAC)の制御によって出力することができ、AgClの補充量は、電位差V2が印加される期間t2を調整することで制御できる。すなわち、対電極R/C上のAgClが安全な貯蔵範囲内に保たれていることを前提として、補充量は、消耗量に等しいか、又は等しくない(ほぼ同様、より大きい、又はより小さいを含む)。
【0048】
図8A~8Cにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流を表し、V1の曲線は、測定電位差V1の印加及び除去を表し、V2の曲線は、補充電位差V2の印加及び除去を表す。図8Aに示すように、好ましい実施形態において、T2は一定値であり、V2が印加される期間t2(すなわち、補充期間)は可変値である。補充期間t2は、測定期間T1及び測定モードで測定された生理信号Iaに応じて、0からT2の範囲で動的に調整される。図8Aに示すように、t2は、t2’、t2’’、又はt2’’’…のいずれかである。つまり、AgClの消耗量に応じて補充期間t2を変更することができる。AgClの消耗量が多い状態では、対電極R/CのAgClを安全な貯蔵範囲内に保つために、対電極R/Cを長時間補充することができる。
【0049】
図8Bを参照し、別の好ましい実施形態において、V2は可変値であり、T2及びt2は一定値であり、ここで、t2は、0より大きくT2より小さい一定値である。例えば、t2は、1/2 T2、2/5 T2、3/5 T2などであり得る。この実施形態において、V2は、生理学的信号を測定するステップにおいて、AgClの消耗量に従って動的に調整される(即ち、測定モード)。動的調整方法の一例を以下に示す。例えば、セグメント定電流回路が使用される。この回路にはn個の定電流電源とn個のスイッチが含まれており、各定電流電源はスイッチに対応している。補充モードでは、AgClの消耗量に応じて、n個のスイッチの少なくとも一つがオンになり(閉回路状態)、定電流値を出力する。補充期間t2が一定値である場合、異なる定電流出力を選択することにより、AgClの補充量を制御できる。
【0050】
図8Cを参照し、別の好ましい実施形態において、V2は可変値であり、T2及びt2は一定値であり、ここで、t2=T2である。つまり、測定モードと補充モードがシームレスに切り替わり、測定を実行しない期間が補充期間となる。
【0051】
連続可変定電流回路と比較して、セグメント定電流回路では、複数のスイッチで複数の電流経路を制御できるため、必要な電流量に応じてマルチセグメントで補充でき、従って、マルチセグメント定電流は、電力を節約し、コストを削減することができる。更に、定電圧回路であろうと定電流回路であろうと、電位差は、DC電源又はAC電源、好ましくはDC電源から生じることができる。
【0052】
図5A図8Cの実施形態は、すべて、測定ステップと補充ステップを交互に繰り返す操作方法に関与する。これは、任意の二つの測定ステップの間にAgCl補充ステップがあることを意味する。このような方法により、AgClが安全な貯蔵範囲内に維持することがより確実になる。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態において、AgClの累積補充量を依然として安全な貯蔵範囲内に保つことができるように、Y回のAgCl補充をN測定中に任意に実行することができ、ここでY≦Nである。測定ステップと補充ステップは、必ずしも交互のサイクルで実行する必要がない。補充ステップは、いくつかの測定ステップの後、又は所定の測定時間後に実行することもできる。例えば、補充ステップは、10回の測定ステップの後、又は累積測定時間が1時間に達した後に実行できる。
【0053】
図8Dを参照し、図8Dは、図8Cと同様の方法で交互に測定モード及び補充モードで動作する定電流回路の電流-時間概略図を示す。図8Dにおいて、曲線は、測定された生理信号Iaから演算された生理パラメータ曲線を表し、T2及びt2は両方とも一定値であり、V2は可変値である条件は、図8Cの条件と同様である。図8Dにおいて、曲線の下の白い領域は、測定モード(Ia * T1)でのAgClの消耗量を表し、斜めの領域は、補充モード(Ib * t2)でのAgClの補充量を表す。この図から見れば、Ib * t2を、Ia * T1に近づける、又はIa * T1の特定の範囲内にするために、AgClの消耗量に応じて補充電位差V2が動的に調整されることがわかる。
【0054】
更に、図5E、5F及び8Dは、生理信号を測定するための各測定ステップを実行した後の各生理パラメータ値の出力タイミングを示さないが、生理パラメータ値が出力され得る、これに限定されない。測定が完了したとき、又は補充期間中に、すべての生理パラメータが出力された後、又は生理信号を取得した後に、AgCl補充ステップを実行することができるが、これに限定されない。
【0055】
作用電極Wと対電極R/Cを含む二電極システムでは、作用電極Wは、酸化反応の実行と還元反応の実行との間で連続的に切り替わる必要がある。電極の化学反応環境では、酸化反応と還元反応の切り替えは、数秒や数分などの安定化期間を経る必要がある。対照的に、作用電極W、対電極R/C及び補助電極Auxを含む三電極システムでは、作用電極W及び対電極R/Cを含むループを測定ステップに使用することができ、 補助電極Auxと対電極R/Cを含むループは、補充ステップに使用できる。したがって、作用電極Wが安定化期間を必要とするという欠点が回避される。すなわち、補充ステップは、測定ステップの直後に実行することができる。
【0056】
図9を参照し、図9は、本発明に係る分析物を測定する方法を示す。マイクロバイオセンサーの使用寿命は、この方法によって延長することができる。マイクロバイオセンサーは、例えば、図2Aから図3に示すマイクロバイオセンサーであって、生体液(組織液など)中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するために皮下に埋め込まれるために使用される。図9の実施形態において、分析物は組織液中のグルコースであってもよく、生理パラメータは人体のグルコースレベルであり、生理信号は微生物センサーによって測定された電流値である。この実施形態において、分析物を測定するための方法は、測定ステップ(S901)及び補充ステップ(S902)を繰り返し実行することを含む。測定ステップ(S901)は、前述の定電圧回路又は定電流回路を使用して、測定期間T1の間に前述の測定モードを実行して生理信号(すなわち、電流値)を出力し、同時に対電極におけるAgClは電流値に対応する消耗量を有することを含む。測定ステップ(S901)も、測定モードを停止することによって測定ステップを停止することを含み、電流値は、生理パラメータ(すなわち、グルコースレベル)を出力するために演算される。
【0057】
測定ステップ(S901)における化学反応式は以下のとおりである。
以下の酸化反応が作用電極320で起こる。
【化1】
以下の還元反応が対電極330で起こる。
【化2】
【0058】
補充ステップ(S902)は、前述の定電圧回路又は定電流回路を使用して、補充期間中に前述の補充モードを実行することを含み、その結果、対電極上のAgClは、消耗量に対応する補充量を有し、したがって、AgClは、 対電極の量は安全な貯蔵範囲内で管理されている。その結果、作用電極と対電極間の電位差を安定に保つことができるため、得られた電流値はグルコース値との安定した相関関係を維持できる(検出された物質が他の分析物である場合、相関関係は比例する又は逆相関の可能性がある)。言い換えれば、次の測定ステップで得られる次の電流値と次のグルコース値との間の安定した相関関係を維持することが可能である。補充ステップ(S902)は、前述の補充モードを停止することにより補充ステップを停止するステップも含む。補充ステップ(S902)が終了した後、N個の測定ステップ(S901)及びN個の補充ステップ(S902)を実行するまで、方法は測定ステップ(S901)に戻る。
【0059】
補充ステップ(S902)における化学反応式は以下のとおりである。 以下の還元反応が補助電極で起こる。
【化3】
対電極330の正電位は、対電極330で発生する以下の酸化反応を引き起こす。
【化4】
対電極上のAgは、Ag+に酸化され、体内のCl-又はAgClの酸化(又は解離)からCl-と結合してAgClを形成して、測定期間T1の間に消耗されたAgClの一部又は全部が対電極に補充される。
【0060】
人間はヨウ素をドープした塩を通して塩化物イオンとヨウ化物イオンを摂取することができる。利用可能なハロゲンイオンには、対電極にハロゲン化銀を補充するための少なくとも塩化物イオン及びヨウ化物イオンが含まれる。
【0061】
以下の実施形態は、N個の測定ステップ(S901)及びN個の補充ステップ(S902)のサイクルに関する。言及される生理パラメータは、好ましくはグルコース値であり、言及される生理信号は、好ましくは電流値である。いくつかの好ましい実施形態によれば、各測定電位差V1は、測定期間T1の間に印加される。各補充電位差V2は、補充期間t2の間に印加される。測定期間T1は一定値であり、3秒、5秒、10秒、15秒、30秒、1分、2.5分、5分又は10分以内の値にすることができる。いくつかの好ましい実施形態によれば、一定値は、30秒以内の値であってもよい。測定期間T1は一定値であり、2.5秒、5秒、15秒、30秒、1分、2.5分、5分、10分、又は30分、好ましくは30秒である。いくつかの好ましい実施形態によれば、各測定期間T1プラス各補充期間t2は一定値である。 いくつかの好ましい実施形態によれば、各補充電位差V2は一定の電圧値を有し、各補充期間t2は、(図5Aに示すように)AgClの各消耗量に従って動的に調整される。いくつかの好ましい実施形態によれば、各出力の生理パラメータは、各測定期間T1における単一の測定時点での生理信号の演算を通じて得られる。いくつかの好ましい実施形態によれば、各出力の生理パラメータは、各測定期間T1における複数の測定時点での複数の生理信号の数学演算値を通じて得られる。前述の数学演算値は、例えば、累積値、平均値、中央値、中央値の平均値などである。いくつかの好ましい実施形態によれば、対電極上のAgClの補充量は、各補充量が各消耗量に等しいか等しくない(ほぼ同様、より大きい、又はより小さいを含む)ように制御することによって、安全な保管範囲内に制御される。結果として、次の測定ステップ中に得られる次の生理信号は、次の生理パラメータとの安定した比例相関を維持する。いくつかの好ましい実施形態によれば、各測定電位差V1を除去するステップは、作用電極と対電極を接続する回路を切断するか、又は各測定電位差V1をゼロに設定することである。つまり、電源を切って測定回路を開回路状態にすることができ、或いは、作用電極と対電極の間にゼロボルトの電圧を印加することができ、ここで、二つの動作のいずれかの動作時間は、0.01~0.5秒である。測定電位差V1を除去するステップにより、Λ型の生理信号の生成を回避できる。いくつかの好ましい実施形態によれば、各補充電位差V2を除去するステップは、補助電極と対電極を接続するように構成された回路を切断するか、又は各補充電位差V2をゼロに設定することである。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態によれば、バイオセンサーが人体に埋め込まれた後、バイオセンサーが体内で平衡及び安定の状態にあり、分析物濃度と正に相関する生理信号を安定して呈するために、ウォームアップ時間が必要である。したがって、測定ステップ(S901)において、測定電圧は、測定期間T1の終わりまで継続的に印加され、測定期間T1は、分析物の生理信号及び生理パラメータが安定した比例相関を有するように制御される。この目的のために、測定期間T1は、可変値、又は可変値と一定値の組み合わせであり得る(例えば、可変値+一定値であり、可変値は、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間又は24時間であり、一定値は、例えば、30秒であり得る)。
【0063】
図5A~5F、図8A~8D及び図9を参照し、本発明は、ある期間中に対電極R/Cに印加される電圧を使用して対電極の合成電流を測定し、AgClの初期容量は、期間中の合成電流を数学的に計算することによって得られる。例えば、AgClの初期容量は、合成電流の曲線下の面積を計算することによって定義される。AgClの初期容量は、初期量又は初期クーロン量(Cinitial)とも呼ばれ、以下はすべて量で表される。対電極R/CにはAgとAgClが含まれている。AgClの量(X%AgCl)がわかっている場合、Agの量を計算できる(Y%Ag=100%~X%AgCl)。各測定ステップ(S901)において、AgClの消耗量(Cconsumeで示す)は、作用電極Wの電流曲線下の面積を計算することによって定義される。対電極R/CのAgClは、生理信号Iaに対応する消耗量(Cconsume)を有する、すなわち、Cconsume=Ia *T1である。各補充ステップ(S902)において、AgClの各補充量(Creplenishで示す)は、対電極R/Cの電流曲線下の面積を計算することによって定義される。すなわち、Creplenish= Ib * t2、ここで、t2は、0~T2の範囲にある。
【0064】
AgClの安全貯蔵管量の計算方法を以下に示す。いくつかの好ましい実施形態では、安全な貯蔵範囲は、Ag対AgClの比によって表される。本発明は、対電極で測定されたクーロン量(C)を使用して、Ag対AgClの比を反映する。いくつかの好ましい実施形態では、Ag対AgClの比は、99.9%:0.1%、99%:1%、95%:5%、90%:10%、70%:30%、50%:50%、40%:60%又は30:70%であり、これにより、対電極上に一定量のAgClが使い尽くされることなく保証されるため、生理信号を測定するための各測定ステップを安定して実行できる。AgClの残存量は、補充量と初期量の合計から消耗量を差し引いたものである。いくつかの好ましい実施形態では、AgClの残存量は範囲内で変化する、すなわち、AgClの残存量は、初期量から特定値(X値)を増減させた範囲内で制御される。つまり、(Creplenish+Cinitial)-Cconsume =Cinitial±X、ここで0<X<100%Cinitial、10%Cinitial<X≦90%Cinitial、又は0.5%Cinitial<X≦50%Cinitialである。いくつかの好ましい実施形態では、AgClの残存量は、範囲内で、徐々に減少する、徐々に増加する、着実に変化する、又は任意に変化するが、それでも範囲内にあることができる。
【0065】
図10を参照し、図10は、本発明の別の実施形態に係る分析物を測定するための方法を示す。この方法により、マイクロバイオセンサーの使用寿命を延ばすことができ、対電極の銀及びハロゲン化銀材料の量を減らすことができる。マイクロバイオセンサーは、例えば、図2A図3に示すマイクロバイオセンサーであり、生体液(組織液など)中の分析物に関連する生理パラメータを表す生理信号を測定するために皮下に埋め込まれるために使用される。マイクロバイオセンサーの対電極の電極材料は、銀及びハロゲン化銀を含む。図10の実施形態において、分析物は組織液中のグルコースであり、生理パラメータは人体のグルコース値であり、生理信号はマイクロバイオセンサーによって測定された電流値である。この実施形態の一つのサイクルのみを以下に説明する。この実施形態の方法は、測定電圧を印加して作用電極を駆動し、生理パラメータを得るための生理信号を測定するステップから始まり、ここで、特定量のハロゲン化銀が消耗される(以下、「消耗量」という)(S1001)。
【0066】
次に、測定電圧を印加するステップを停止し(S1002)、得られた生理信号を使用して生理パラメータを取得する(S1003)。生理パラメータを取得した後、ハロゲン化銀を補充量によって補充するように、補充電圧を対電極及び補助電極の間に印加して対電極を駆動する(S1004)。ここで、補充量と初期量の合計から消耗量を引いた値(すなわち、前述の「残存量」)は、初期量から特定値を増減させた範囲内で制御される。上記の制御ステップは、ハロゲン化銀の量を安全な保管範囲内に維持するために、補充量を消耗量に等しいか等しくない(ほぼ同じ、多い、又は少ないを含む)ように制御することによって達成する。化学反応式によれば、ハロゲン化銀のモル数の増加又は減少は、銀のモル数の増加又は減少に対応している。したがって、説明を簡単にするために、ハロゲン化銀の消耗量は、シミュレートされた銀の増加量に対応している。いくつかの好ましい実施形態では、残りの量の値は、ハロゲン化銀の量と銀の量の合計に対するハロゲン化銀の量の比(AgCl/Ag+AgCl)がゼロより大きく、1より小さいように制御される(つまり、 対電極には一定量のハロゲン化銀が含まれている必要がある)。前記比は、好ましくは、0.01~0.99、0.1~0.9、0.2~0.8、0.3~0.7又は0.4~0.6の間にある。補充量に達すると、補充電圧を印加するステップを停止する(S1005)。次に、方法はステップS1001に戻り、次のループを実行する。
【0067】
本発明の特定の実施形態を以下に説明する。例として、バイオセンサーの使用寿命は16日に達する必要がある。この目的のために、電極の信号感知部分上のAg/AgCl材料の必要なサイズを計算する方法を以下に説明する。例えば、各測定の分析対象物の測定電流の平均は30nA、測定期間(T1)は30秒、補充期間(t2)は30秒である。AgClの1日あたりの消耗量(Cconsume/day)=1.3mC/日である。バイオセンサーの使用寿命の要求が16日であると仮定すると、16日を使用するために必要なAgClの消耗量は1.3x16=20.8mCである。
【0068】
例えば、対電極の長さは2.5mmであり、AgClの初期量Cinitial=10mCに相当する。
(1)AgClの補充を実行しない状態で、センサーの使用寿命が16日間の場合、対電極の必要な長さは少なくとも次のとおりである。
16day/Cconsume/day=20.8mC/1.3mg/ day=16mm。
(2)したがって、本出願におけるハロゲン化銀の補充方法を実施しない場合、センサーの使用寿命を16日とするためには、対電極の長さが16mmを超える必要がある。
【0069】
この実施形態において、本発明のハロゲン化銀の補充技術を使用しないという条件で、対電極の信号検知部は、16日の使用寿命を達成するために、比較的大きなサイズのAg/AgCl材料で構成する必要がある。本発明におけるハロゲン化銀の補充方法により、ハロゲン化銀の補充ステップは、二つの測定ステップの間に実行する。ハロゲン化銀サイクルの消耗と補充が短時間で繰り返される(使用時に補充される)ため、センサー内のAg/AgCl材料の量を減らすことができ、これによってセンサーが小型化される。したがって、電極の信号感知部分の材料に16日間のAgCl容量を用意して消耗する必要がある。たとえば、AgClの容量を約1~2日間準備すると、センサーの使用時間は16日間になる。したがって、本発明は、センサーの使用寿命を延ばす効果を有する。1~2日間のAgClの容量は、工場出荷前又は最初の測定を実行する前の対電極内のAgClの初期量も指す。AgClの初期量は、例えば、約1.3から2.6mCの間であり得るが、他のより小さな範囲又はより大きな範囲であり得る。他の実施形態において、1~5日、1~3日、6~24時間、及び6~12時間の異なるAgCl容量も調製することができる。対電極の信号検知部分の大きさは、対電極がグルコースの各測定ステップを安定して実行し、測定電流と体内のグルコース濃度との正の相関を可能にする容量を有するように構成することができる。
【0070】
従来技術は、本発明の塩化銀補充技術を使用せずに、センサーが必要な測定日に到達するように電極の長さ/面積を増加させる。例えば、従来技術の埋め込み端の長さは約12mmである。従来技術の埋め込み長さが長いため、埋め込み端が皮下組織に深く移植されて大きな埋め込み創傷を引き起こすことを回避するために、埋め込み端を斜めの角度で皮下に埋め込む必要がある。別の例として、1~2日間のAgClの容量は約1.3~2.6mC、1~2日間の対電極の長さは、2.5~5mmに換算する。したがって、本発明のハロゲン化銀の補充方法を使用しない場合、対電極の長さは16mmを必要とする。上記の例と比較して、本発明が対電極のサイズを短くすることに対してより重要な効果を有することは明らかである。本発明の塩化銀補充ステップによれば、本発明の埋め込み端は、例えば、10mm以下に短縮することができる。図2A~2Cを参照し、本発明のマイクロバイオセンサー300の第二端部314への接続領域317の下半部分は、図2A~2Bに示されるように、短い埋め込み端318を形成する。短い埋め込み端318の埋め込み深さは、少なくとも、組織液中のグルコース濃度を測定できる真皮までの深さである。本発明の塩化銀補充ステップによれば、短い埋め込み端318の最も長い側の長さは6mm以下であり、その結果、マイクロバイオセンサー300の短い埋め込み端318は、生体表皮の下に垂直に埋め込むことができる。好ましくは、短い埋め込み端318の最も長い辺の長さは、5mm、4.5mm、3.5mm、又は2.5mm以下である。本発明の短い埋め込み端318は、対電極330の信号感知部分332を含み、対電極330の信号感知部分332の最長辺の長さは、6mm以下、好ましくは2~6mm、2~5mm、2~4.5mm、2~3.5mm、0.5~2mm、又は0.2~1mmである。
【0071】
したがって、本発明のハロゲン化銀補充技術を使用しない場合と比べて、本発明のハロゲン化銀補充方法は、マイクロセンサーの使用寿命を効果的に延ばすことができ、対電極上にあるAg/AgCl材料の使用を大幅に減らすことができ、対電極の信号検知部のサイズが小さくなる。対電極でのAg/AgCl材料の使用を減らすため、センサーを小型化し、生物毒性を低減できる。更に、電極のサイズの縮小は、具体的には、センサーの埋め込み端の短縮された長さを指し、これは、埋め込み中のユーザーの痛みを軽減するであろう。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0073】
生理信号測定装置10
ユーザ装置20
送信機200
プロセッサ210
電源220
回路スイッチングユニット230
温度感知ユニット240
通信ユニット250
マイクロバイオセンサー300
基板310
表面311
表面312
第一端部313
第二端部314
信号出力領域315
感知領域316
接続領域317
埋め込み端318
作用電極320、W
信号出力部分321
信号感知部分322、332、342
第一作用電極323
第二作用電極324
第三作用電極325
対電極330、R/C
補助電極340、Aux
化学試薬350
生理信号Ia、Ib
スイッチS1、S2、S3、S4、I_F1~I_Fn
測定期間T1
測定電位差V1
補充電位差V2
補充期間t2
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10