(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 15/34 20060101AFI20221021BHJP
B65G 43/00 20060101ALI20221021BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
B65G15/34
B65G43/00 D
B65G43/00 K
B65H5/02 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020206705
(22)【出願日】2020-12-14
(62)【分割の表示】P 2017548863の分割
【原出願日】2016-03-10
【審査請求日】2021-01-05
(32)【優先日】2015-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591270796
【氏名又は名称】ハバシット アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフランコ・マルコン
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・バッシ
(72)【発明者】
【氏名】セルジョ・ベルタッキ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・マペッリ
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-164142(JP,A)
【文献】特開昭55-123806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
5/02
B41J 11/00 - 11/70
B65G 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアベルト移動方向に物品を搬送するためのコンベアベルト(1)を備えた搬送装置であって、コンベアベルトに埋め込まれた磁気マーカー(21,22)、及びカバー層(4)を備え、該磁気マーカー(21,22)は、コンベアベルト移動方向と平行に少なくとも一列(2)に1mmから5mmの分解能(2つの連続した「上向き」又は2つの連続した「下向き」の分極された領域間の最大磁気信号の距離)を有する周期的なマーカーパターンにおいて配置され、
a)前記磁気マーカー(21,22)は、埋め込まれた強磁性体の粒子を備える、エラストマー材料、熱可塑性エラストマー材料または熱可塑性材料のマトリックスのストリップ(2)として形成され、該ストリップ(2)は、コンベアベルト(1)の長手方向に平行に延在し、カバー層(4)に形成された溝(3)に埋め込まれて、上層(10)によってさらに覆われ、
b)前記マトリックスは、マトリックスおよび強磁性体の粒子の合計に基づいて、60体積%~90体積%の前記強磁性体の粒子で満たされ、
c)前記磁気マーカーの形状的な厚さは、コンベアベルトの全厚の30%~70%であり、
d)前記強磁性体は、30kJ/m
3~100kJ/m
3の最大エネルギー積(BH)maxを有し、
コンベアベルト(1)の位置情報は、コンベアベルト(1)の磁気トラック表面から0.5mmから2.5mmの範囲の距離(エアーギャップ)で配置された補間する磁気リニアエンコーダ(13,14)によって磁気マーカー(21,22)により生成された磁気信号に由来し、補間する磁気リニアエンコーダ(13,14)は、シヌソイド磁気信号として磁気信号を検出する、
搬送装置。
【請求項2】
前記マトリックスの材料が、エラストマーまたは熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記エラストマーの材料がNBRまたはEPDMであるか、前記熱可塑性エラストマーの材料がTPUである、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記強磁性体が、バリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトである、請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項5】
搬送装置は、単一パス・ラインヘッド・インクジェットプリンタである、請求項1に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト移動方向と平行に一列に配置されて、ベルトに埋め込まれた磁気マーカーの周期性パターンを備えるコンベアベルトに関する。この発明は、更に、該ベルトを備える搬送装置に関する。特に、この発明は、該ベルトを備える単一パス・インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
他の機械部品または装備に一体化されて、コンベアベルト上のサブストレートの速度および位置が、ピックアンドプレース(pick-and-place)、充填または印刷の用途と同様に、他のデバイスと同期しなければならない、コンベア装置では、正確なコンベアベルト位置制御が必要である。オペレーションの間におけるコンベアベルトの位置を決定する慣習的な方法は、ベルトの搬送表面との非滑動の接触状態にある回転可能な輪が使用されることである。移動するベルトは、輪を回転させ、輪の回転がベルト移動距離に変換される。
【0003】
適切な磁気検出器でベルトの位置の決定を可能にする、磁気マーカーを備えるコンベアベルト、および当該ベルトを使用する搬送装置は、かねてから知られている。例として独国特許出願公開第10 2008 061 732号明細書(DE 10 2008 061 732 A)が参照される。この刊行物の磁気マーカーは、ベルトへ加硫された(vulcanized)スチール線またはスチールケーブルである。
【0004】
単一パス・インクジェットプリンタは、搬送物上に画像を同時に印刷する搬送装置の特別なタイプである。基本色(最も簡単なCMYKモデルでの、黒色、黄色、マゼンタとシアン、より高度なモデルでの、任意選択で淡マゼンタおよび淡シアンのようなより多くの色、いくつかの場合での9つの基本色まで)は、いくらかのオフセットで長手方向に互いに離間した個々の印字ヘッドのノズルから小さなインク・ドットとして放出される。色ノズルを備えた印字ヘッドは、サブストレートの全横幅にわたって延在する。その結果、印字ヘッドの横方向の動きは必要ではない。この配置によって、1つの単一パスでの基本色のすべてをサブストレートに対して連続して印刷することは可能である。すべての色を備えた完全に印刷された画像を得るために、サブストレートが或る印字ヘッドから次の印字ヘッドに運ばれる。このタイプのインクジェットプリンタは、当該技術において、「ラインヘッド・インクジェットプリンタ」に呼ばれる。非基本色は、基本色の2つ以上の混合により形成される。それは異なる基本色のインク滴の重ね合わせにより行われる。したがって、インクジェットプリンタは、サブストレートの同じ部位上に、いくらかのオフセットで長手方向に離間して配置された異なる印字ヘッドから生じる、異なる基本色のインク滴を印刷できなければならない。例えば、600dpi(ドット/インチ)の印刷分解能は、色の各1滴につき±21μmの位置決め公差を意味する。この公差は、印字ヘッド距離間の増加する距離につれて、および基本色の増加につれて増加する印刷プロセス区域長さ全体に沿って維持されなければならない。これは、印刷のドライバーが、印字ヘッドのインク吐出を同期させて、その間できるだけ小さくて、いずれの場合でも印刷分解能を超えない公差で、或る印字ヘッドから次の印字ヘッドまでサブストレートが運ばれる間にサブストレートの位置をいつでも正確に知っていることを必要とする。
【0005】
いくつかの刊行物は、ベルトの位置決定のための磁気マーカーを有するコンベアベルトを備えた単一パス・ラインヘッド・インクジェットプリンタを開示する。これらは、特開昭61-089878号公報(JP 61/089878)、特開2001-125333号公報(JP 2001/125333)、特開2006-096429号公報(JP 2006/096429)、米国特許出願公開第2008-0192076号明細書(US 2008/0192076)および米国特許出願公開第2008-0049054号明細書(US 2008/0049054)である。これらの刊行物は、それに含まれる磁気ストリップの構成に関して何も記載していない。出願人は、これらの刊行物のコンベアベルトが、オーディオ・カセットまたは磁気テープ・リールにおいて使用されるタイプの磁気記録テープを単に含むと考える。具体的には、米国特許出願公開第2008-0192076号明細書(US 2008/0192076)のベルトは、0.1mmの全厚を有し、磁気層の厚さ、本質的にマーカーの形状的な厚さは、0.01mmである(表1を参照)。マーカーの形状的な厚さは、ベルトの全厚のわずか10%である。磁気層および磁気マーカーのこの形状的な厚さは、前述の意味において磁気記録テープにとって特有である。特開昭61-089878号公報(JP 61/089878)は、「磁気テープ」が使用されたことを要約において明示的に言及する。前述の意味における磁気記録テープは、マトリックスに基づいて、100体積%に近い、磁気層マトリックスにおいて強磁性の粒子の非常に高い充填度を有する、および/または100kJ/m3を超えるエネルギー積を備えた強磁性体を備える。これは、磁気層の非常に薄い厚さにもかかわらず、良好な可読性のために必要な磁束を達成するためにある。更に、そのような磁気記録テープは、数GPaの典型的なオーダーの非常に高いヤング率を有する。磁気記録テープが、ある程度まで単に引き伸ばされるだけではなく、プレテンションで単にばらばらになるので、当該磁気記録テープは、コンベアベルトの中にいったん含まれると、その適切なプレテンションを可能にしない。
【0006】
さらに、USBスティック、CDディスク、DVDディスク、ブルーレイディスクおよび大容量ハードディスクドライブのようなさらに高性能な記録媒体の出現により、磁気記録テープの将来の有効性は保証されていない。
【0007】
出願人は、コンベアベルトへの組み込みに適しているとして宣伝される市販の磁気テープまたは磁気ストリップを認識していない。
【0008】
独国特許発明第4139524号明細書(DE 4139524)は、磁気マーカーを備えたコンベアベルトを開示する。磁気マーカーは、ベルトのトップに適用されたフラットなリボン、またはベルトの横方向に適用された円形のコードに埋め込まれた強磁性体のものである。上述したように、前者は、薄い磁気テープのさらなる例であり、全体的なベルトの厚さに関して非常に薄い(
図3を参照)。他方では、後者について、独国特許発明第4139524号明細書(DE 4139524)は、それが、ベルトの全厚に対応する直径を有するべきであることを暗示する(第二段落の52行~61行、
図1および
図2)。
【0009】
この発明の目的は、前述されたタイプの改善されたコンベアベルトを提供することである。
【発明の概要】
【0010】
この発明は、以下のものを提供する。
1.ベルトに埋め込まれた磁気マーカーを備え、該磁気マーカーが、ベルト移動方向と平行に少なくとも一列に配置される、ベルト移動方向に物品を搬送するためのコンベアベルトであって、
a)磁気マーカーは、埋め込まれた強磁性体の粒子を備える、エラストマー材料、熱可塑性エラストマー材料または熱可塑性材料のマトリックスから形成され、
b)マトリックスは、マトリックスおよび強磁性体粒子の合計に基づいて、60体積%~90体積%の強磁性体粒子で満たされ、
c)磁気マーカーの形状的な厚さは、ベルトの全厚の30%~70%であり、
d)強磁性体は、30kJ/m3~100kJ/m3の最大エネルギー積(BH)maxを有する、
コンベアベルト。
2.マトリックスの材料が、エラストマーまたは熱可塑性エラストマーである、上記1に記載のベルト。
3.エラストマー材料がNBRまたはEPDMであるか、熱可塑性エラストマーがTPUである、上記2に記載のベルト。
4.強磁性体が、バリウムフェライトまたはストロンチウムフェライトである、上記1、2または3に記載のベルト。
5.埋め込まれた強磁性体の粒子を備える、エラストマー材料または熱可塑性エラストマー材料のマトリックスは、ベルトの長手方向と平行に延びるストリップの形であり、ストリップがカバー層に形成される溝に埋め込まれる、上記1から4のいずれか1つに記載のベルト。
6.カバー層において、熱可塑性エラストマー材料がTPUまたはTPOであるか、熱可塑性樹脂がPVCである、上記5に記載のベルト。
7.ベルトがモノリシックである、上記1から6のいずれか1つに記載のベルト。
8.上のトラクション層をさらに備え、上のトラクション層が、カバー層の下に配置される、上記5または6に記載のベルト。
9.熱可塑性樹脂(thermoplastic)あるいは熱可塑性エラストマーを備えるかまたは成る、下のトラクション層および中間層をさらに備え、
中間層が上のトラクション層および下のトラクション層の間で挟まれるように、中間層が上のトラクション層の下に配置されるとともに、下のトラクション層が中間層の下に配置される、上記8に記載のベルト。
10.中間層が、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂を備えるかまたは成る、上記9に記載のベルト。
11.中間層において、熱可塑性エラストマーがTPUまたはTPOであるか、熱可塑性樹脂がPVCである、上記10に記載のベルト。
12.熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂を備えるかまたは成るとともに磁気マーカーを覆う上層を備える、上記1から11のいずれか1つに記載のベルト。
13.上層において、熱可塑性エラストマーがTPUまたはTPOであるか、熱可塑性樹脂がPVCである、上記12に記載のベルト。
14.ちょうど1列の磁気マーカーを備える、上記1から13のいずれか1つに記載のベルト。
15.1列内の磁気マーカーが、互いに同じであるとともに、ベルト移動方向に空間周波数ξmを備える周期的なマーカーパターンを形成するようにその列において等距離である、上記1から14のいずれか1つに記載のベルト。
16.ベルトが有端状であって2つの端を有する、上記1から15のいずれか1つに記載のベルト。
17.ベルトが無端であってベルトの長手方向において長さLjの端部結合ゾーンを有する、上記1から15のいずれか1つに記載のベルト。
18.長さLjの端部結合ゾーンにおいて、磁気マーカーがリニアエンコーダ読み取り可能でない、上記17に記載のベルト。
19.上記17または18のうちの1つに記載のベルトを備える単一パス・ラインヘッド・インクジェットプリンタ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明のベルトの好ましい実施形態の斜視および断面の図である。
【
図2】リニアエンコーダ、基準マーカーおよび基準マーカー検出器の可能な配置を示す。
【
図3】基準マーカー検出器からの信号を解釈する(interpret)ために使用されて、一方のリニアエンコーダの信号から他方のリニアエンコーダの信号に切り替える(その逆も成立する)ための例示的なラッチおよび制御手段を示す。
【
図4】この発明のベルトを使用した同期テストの結果を示し、新しいベルトの同期テストからのものである。
【
図5】この発明のベルトを使用した同期テストの結果を示し、同じベルトの同期テストからのものであるが、耐久試験を受けた後である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明のベルトにおいて使用される(形の整った(neat))強磁性体は、室温において30kJ/m3~100kJ/m3の、好ましくは35kJ/m3~70kJ/m3の、より好ましくは40kJ/m3~60kJ/m3の、最大エネルギー積(BH)maxを有する。この発明の目的のために、最大エネルギー積は、B(Y軸)対H(X軸)曲線(つまり固体で(solid)形の整った強磁性体のヒステリシス曲線)の上で決定される。最大エネルギー積は、ヒステリシス曲線の第二の象限の下で内接される(inscribed)、できるだけ大きな長方形のエリアである。第二の象限は、H軸(X軸)の負の部分、およびB軸(Y軸)の正の部分によって取り囲まれた象限である。
【0013】
室温においてこの発明のベルトで使用される(形の整った)強磁性体は、室温で、好ましくは30kA/m~200kA/mの、より好ましくは40kA/m~160kA/mの、保磁力(BHc)を有する。この発明の目的のために、BHcは、該技術分野において通常通りに、すなわちH軸(X軸)の負の部分との前記ヒステリシス曲線の交差の長さとして決定される。
【0014】
この発明のベルトで使用される(形の整った)強磁性体は、室温で、0.5T~3Tの、好ましくは0.8T~2Tの、残留磁束密度あるいは残留磁気(Br)を有する。この発明の目的のために、Brは、該技術分野における通常通りに、すなわちB軸(Y軸)の正の部分との前記ヒステリシス曲線の交差の長さとして決定される。
【0015】
強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料または熱可塑性エラストマー材料のマトリックスは、室温で、好ましくは1kJ/m3~15kJ/m3の、より好ましくは3kJ/m3~10kJ/m3の、最大エネルギー積(BH)maxを有する。
【0016】
強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料、熱可塑性エラストマー材料、または熱可塑性材料のマトリックスは、室温で、好ましくは80kA/m~250kA/mの、より好ましくは90kA/m~200kA/mの保磁力(BHc)を有する。
【0017】
強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料または熱可塑性エラストマー材料のマトリックスは、好ましくは室温で、100mT~300mTの、好ましくは120mT~270mTの、残留磁束密度あるいは残留磁気(Br)を有する。
【0018】
強磁性体は、前述の磁気パラメーターを満たすものであれば特に限定されない。強磁性体は、好ましくはアルカリ土類金属フェライト(例えばバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト)、アルニコ・タイプ、および強磁性の酸化クロムおよび酸化鉄のタイプから成る群から選ばれることができる。好ましくは、強磁性体は異方性である。
【0019】
マトリックスにおける強磁性体の粒子の充填度は、マトリックスおよび強磁性体粒子の合計に基づいて、60体積%~90体積%であり、好ましくは60体積%~80体積%であり、より好ましくは65体積%~75体積%である。
【0020】
強磁性体の粒子が埋め込まれているマトリックス材料は、エラストマー、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂である。
【0021】
エラストマーは、好ましくは架橋されているか加硫されている天然ゴム、または架橋されているか加硫されている合成ゴム(例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン・ゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエン・ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエン・ゴム(EPDM)またはアクリレート・ゴム)である。好ましいエラストマーは、NBRおよびEPDMであり、より好ましいエラストマーは、NBRである。
【0022】
マトリックス材料用の熱可塑性エラストマーは、慣習的に知られているサブグループa)スチレン系ブロック共重合体(TPE-s)、b)ポリオレフィン・ブレンド(TPO)、c)エラストマーの合金(TPE-vまたはTPV)、d)熱可塑性ポリウレタン(TPU)、e)熱可塑性コポリエステルおよびf)熱可塑性ポリアミドのうちの1つから選ばれる。一方では、TPUのものがより好ましく、具体的にはa) 脂肪族鎖延長剤(例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよび3-メチルペンタン-1,5-ジオールのようなC2-C6ジオール、または、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのようなグリコールエーテル、および、エタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのようなアミノアルコール)で芳香族ジイソシアネート(例えば異性体2,2'-、2,4'または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート)を反応させることにより得られた、ハードなセグメントと、b) 柔軟なセグメントとしての脂肪族のポリエステル・ポリオールまたはポリエーテル・ポリオールとからなる。他方では、TPOのものがより好ましい。
【0023】
マトリックス材料用の熱可塑性樹脂は、好ましくは、
a) 構造XHC = CH2のビニルモノマーのホモポリマーおよびコポリマーであって、Xは、クロロ、アセトキシ、フェニルおよびシアノからなる群から選ばれて、共重合したモノマー(コポリマーの場合)は、エチレンおよび/またはプロペンであり、
b) エチレン-アルファオレフィン共重合体であって、アルファオレフィンは、プロペン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテンおよび1-オクテンから成る群から好ましくは選ばれ、
c) 熱可塑性ポリエステルとから成る群から選ばれる。熱可塑性樹脂の中で、ClHC = CH2のホモポリマー(= PVC)、CH3COHC = CH2およびエチレンのコポリマー(= EVA)およびエチレン-1-オクテンコポリマーが好ましい。熱可塑性樹脂のフレキシビリティおよび/または柔軟性は、通例の相溶性の可塑剤を添加することによって向上させることができる。
【0024】
マトリックス用の最も好ましい材料は、エラストマー(具体的にはNBR、EPDM)または熱可塑性エラストマー(具体的にはTPU)である。
【0025】
好ましくは、マトリックスは、混合物を均質にしておくために機械撹拌で懸濁された強磁性体の粒子を備えたエラストマーまたは熱可塑性エラストマーの懸濁重合によって形成される。重合の後段階では、重合する混合物が強磁性体の粒子の沈降を防ぐのに十分な粘性になったとき、機械撹拌を止めることができる。また、強磁性の粒子の磁気配向を所望の好ましい方向に向けるために、外部磁場が重合混合物の代わりに印加されることができる。
【0026】
強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料、熱可塑性エラストマー材料または熱可塑性材料のマトリックスは、予め形作られたストリップの形で、任意選択で適切な下地材と共に提供されることができる。ベルトの表面平面に垂直な方向のストリップの厚さは、好ましくは0.5mm~1.5mmであり、より好ましくは0.8mm~1.2mmである。このタイプの予め形作られたストリップは、静的な(非コンベアベルト)用途での使用のために有端状の(open-ended)(線形の)形態で市販されている。この出願の出願時での例は、Arnold Magnetic Technologies、Norfolk、Newark、USAのPlastiform(登録商標)のストリップ、Max Baermann Holding AG、Bergisch Gladbach、GermanyのTromaflex(登録商標)のストリップである。
【0027】
この発明のベルトは、第一の好ましい実施形態ではモノリシックとすることができる。つまり、それは、1つだけのカバー層の上に塗布されるかまたは埋め込まれた、埋め込まれた強磁性の粒子を備えるマトリックス材料の上述のストリップを備える1つだけのカバー層を備えるとともに、トラクション層を欠いている。ここで、カバー層の材料は、マトリックス材料について上で例示したようなエラストマーまたは熱可塑性エラストマーを備えるかまたは成ることができる。
【0028】
第二の好ましい実施形態では、ベルトは、1つの(上の)トラクション層と、上のトラクション層の上に配置されて上のトラクション層に適用されるカバー層とを備える。ここで、カバー層の材料は、マトリックス材料について上に例示したように、エラストマーまたは熱可塑性エラストマーを備えるかまたは成ることができる。カバー層についての好ましい材料は、マトリックス材料には好ましいものとして上に例示したのと同様に、熱可塑性エラストマー(具体的にはTPUまたはTPO)、または熱可塑性樹脂(具体的にはPVC)である。この実施形態では、上のトラクション層の底部側は、搬送装置のプーリーまたはローラと接触する。
【0029】
前記第二の好ましい実施形態内のより好ましい構成では、この発明のベルトは、更に第二の(下の)トラクション層を備える。上のトラクション層および下のトラクション層は、それらの間で中間層を挟む。この好ましい構成では、下のトラクション層の底部側は、搬送装置のプーリーまたはローラと接触する。
【0030】
強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料、熱可塑性エラストマー材料、または熱可塑性材料のマトリックスは、好ましくは、上述のストリップの形で、ベルトの製造に使用される。一つ以上の当該ストリップは、ベルトに組み込まれることができる。1つの好ましい実施形態では、ちょうど1つの当該ストリップが組み込まれる。ちょうど1つの当該ストリップは、好ましくは、ベルトの側縁のうちの1つの近くに配置される。別の好ましい実施形態では、ちょうど2つの当該ストリップが組み込まれる。各ストリップは、好ましくは、ベルトの側縁のうちの1つの近くに配置される。この後者の配置は、ベルトの左右の側縁の近くでベルトに加えられる不均一なトラクションを生じさせる、プーリー軸のミスアライメントのために、ベルトの左右の側縁の長手方向位置が互いにわずかにずれているかどうかを検出することを可能にする。好ましくは、強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料または熱可塑性エラストマー材料のマトリックスを備えるストリップは、ベルトのカバー層に組み込まれる。具体的には、ストリップは、カバー層へミル加工された(milled)形と一致する溝に埋め込まれることができる。溝は、ベルトの長手方向に延びる。ストリップは、接着または熱可塑性結合によって、ベルトに組み込んだ後に溶接されることができる。好ましくは、カバー層と、カバー層に埋め込まれた強磁性体を備えるマトリックス材料のストリップとは、周辺の塵埃または汚れからストリップを保護するために、上層で更に覆われる。
【0031】
リニアエンコーダ読み取り可能である磁気マーカーは、磁気記録ヘッドを用いる外部磁化によって、強磁性体の粒子を備えるエラストマー材料または熱可塑性エラストマー材料のマトリックスのストリップに形成される。この磁化は、ストリップがベルトに組み込まれる前に、ストリップがベルトに組み込まれた後に、または、ベルトが搬送装置に含まれて無端になった後でさえ、行われることができる。磁化で形成されるマーカーは、好ましくは、「上向き」の磁気的に分極された領域(つまり、N極が、ベルトの搬送表面の近くにあるか近くにあるとともに、S極が、ベルトのプーリー接触表面の近くにあるか近くにあるであろう)と、「下向き」の磁気的に分極された領域(つまり、S極が、ベルトの搬送表面の近くにあるか近くにあるとともに、N極が、ベルトのプーリー接触表面の近くにあるか近くにあるであろう)とを交互にするパターンである。磁化の方向は、ベルトの搬送表面平面に垂直であるかまたは垂直であるであろう。
【0032】
マーカーは、非周期的であるかまたは周期的であることができる。好ましくは、具体的には、ベルト位置情報がマーカーに由来する場合、マーカーパターンは、ベルト移動方向においてマーカー列において等距離の同一のマーカーの周期的パターンである。そして「上向き」の分極された領域および「下向き」の分極された領域は、等しいサイズおよび形状をしている。さらに好ましくは、「上向き」の分極された領域および「下向き」の分極された領域は、本質的にそれらの間に不定の(undefined)またはゼロの磁化のエリアなしで、互いに隣接している。周期的なマーカーパターンの場合における、2つの連続した「上向き」領域の、または、2つの連続した「下向き」領域の、幾何学的中心間での(または最大の磁気信号を生成するそれらのサイト間での)距離の逆数は、「空間周波数ξm」(単位ベルト長さ当たりのマーカーの数)で表される。2で割られた同じ距離は、該技術分野および本明細書において「磁極ピッチ」として表される。
【0033】
そのように導入されるマーカーの形状的な厚さは、ベルトの全厚の30%~60%、好ましくは30%~70%である。
【0034】
そのように導入される磁気マーカーは、ある距離で、または指定範囲内にあるエア・ギャップ(リニアエンコーダと磁気トラック表面との間の距離)で、配置される磁気リニアエンコーダによって検出できるとともに、マーカーパターンが周期的である場合、分解能1/ξmに依存する、生の磁気信号を生成する。例えば、0.5mm~2.5mmのギャップに対して、分解能1/ξmは、典型的には1mm~5mmにすることができる。
【0035】
マーカーパターンが周期的であるならば、生信号はシヌソイドになるであろう。このシヌソイド信号から位置情報を引き出すために、空間周波数ξLE(単位ベルト長さ当たりの矩形波の数)を備える補間された矩形波信号をそれらの出力として生成する磁気リニアエンコーダを使用することは、該技術分野では慣習的である。空間周波数ξLEは、ベルト上のマーカーパターンの上記に規定された空間周波数ξm の整数の倍数である(つまりξLE = ξm×nであって、nは、5、10、100のように1よりも大きな整数、または、nは2の累乗(つまり2m、mは1よりも大きな整数)。この補間された分解能は、ベルト上の周期的な磁気マーカーの分解能よりもn倍微細である。当該補間する磁気リニアエンコーダは、容易に入手可能である。位置生成装置は、矩形波信号のエッジ(立上りエッジなど)をカウントして、エッジのカウント数を既知のξLEで割ることにより、この矩形波信号から位置情報を生成する。生成された位置情報は、連続的ではないが、1/ξLEの離散の(discrete)ステップにある。微細な分解能1/ξLEを可能にするために、ξLEが大きいことは望ましい。最も商業的に利用可能な補間するリニアエンコーダは、「A」チャンネルおよび「B」チャンネルとして典型的に表される2つのチャンネル上で、いわゆる「直角」の矩形波信号(つまり2つの矩形波信号が90°で互いにオフセットされる)を出力する。適切なロジックゲートを使用して、AおよびBの信号が、4ξLEの空間周波数を有する1つの単一の矩形波信号にさらに組み合わせられることができる。これにより、4倍微細な分解能(1/4ξLE)が可能になる。
【0036】
この発明のコンベアベルトは、好ましくは、カバー層および磁気マーカーに加えて、ベルトの引張強度を改善するために、上の(第一の)トラクション層と、そしてより好ましくはさらに下の(第二の)トラクション層とをさらに備えることができる。トラクション層は、織ってあるか不織布のファブリックを好ましくは備えるかまたは成ることができるか、あるいは、ベルトの横方向に延びるコードを備えるかまたは成ることができる。トラクション層が織物を備えるかまたは成る場合、その構造および織りは、コンベアベルトの技術分野において、またはより好ましくは印刷用ブランケットの技術分野において慣習的に使用されることができる。したがって、例は平織物およびツイル織物である。織物の縦糸は、好ましくは紡績ファイバーの糸である。より好ましくは、それらはPETのようなポリエステルである。織物の横糸は、好ましくはモノフィラメントであり、さらに好ましくはPETのようなポリエステルである。上のトラクション層の厚さは、存在する場合、好ましくは0.5mm~1.0mmである。
【0037】
この発明のコンベアベルトが、2つのトラクション層(上のトラクション層および下のトラクション層)を備える場合、その間にはさまれた中間層がさらに存在する。この中間層に対する材料は、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂であり、マトリックス材料に対して上述されるのと同じ材料から選ぶことができる。好ましくは、中間層に対する材料は、TPUおよびTPOから選ばれた熱可塑性エラストマー、またはPVCである熱可塑性樹脂である。中間層の厚さは、好ましくは0.4mm~1.0mmである。
【0038】
この発明のベルトの全厚は、好ましくは1.5mm~3.0mmである。より好ましくは、ベルトの全厚は、2.0mm~2.6mmである。
【0039】
この発明のベルトの個々の層の厚さは、ベルトそれ自体で、または、個々の層に分離すること(切開、ミルオフ(mill off)、あるいは層の剥離)の後に、決定することができる。しかしながら、層のうちの1つが、幾何学的に十分に明瞭な形を有さないことが起こる可能性がある。この場合、形状的な厚さの代わりに、厚さhは、層の単位面積当たりの重さG
L(kg/m
2)を、層におけるすべての材料の質量平均の密度ρ(kg/m
3)で割ったときの商として決定することができる。
【0040】
ここで、miは、層のi番目の材料の量(kg)であり、合計は、層に存在するN個の材料の全体にわたる。
【0041】
この発明のコンベアベルトの層は、好ましくは未発泡である。
【0042】
カバー層、トラクション層、中間層およびトラクション層の結合は、カレンダー加工、押出コーティングまたはラミネートによって、任意選択で、適切なホットメルトまたはデュロプラスチック接着層の併用によって行うことができる。これらの方法および接着剤は、当業者にすべて知られている。
【0043】
ベルト端の結合は、ベルトを無端にするために、好ましくは、いわゆる「指先(fingerend)の」方法を使用して行われることができる。当該方法では、有端状のベルトの2つの端部が、一端の各歯が他端の2つの歯の間の対応する凹部でシームレスに接することができるように鋸歯形状にカットされる。その逆も成立する。いったん、ベルトの一端の歯が、他端の歯とシームレスに係合すると、熱および圧力を使用して、任意選択でホットメルト接着剤を併用して、2つのベルト端が一緒に溶接される。その結果、無端ベルトの全横幅にわたって延在するジグザグ状のベルト結合部(joint)が得られる。
【0044】
端部結合が行われる前に、磁気マーカーが形成されている場合、ベルト結合部は、予め適用される磁気マーカーの列を立体交差する。そのような端部結合の第一の結果として、ベルトの長手方向での長さLjにわたって延在する、その端部結合ゾーンでの磁気マーカーは、不規則に、不定になることがある、それらの磁化を失うことがある、および/または、完全に除去されることさえある。その結果、その端部結合ゾーンでの磁気マーカーは、もはやリニアエンコーダ読み取り可能でない。Ljは、連続する磁気マーカー間の上述の距離と同等以上であるかまたは、連続する磁気マーカーの間の上述の距離よりも数倍大きい。周期的なマーカーパターンの場合、Ljは、1/ξmと同等以上であるかまたは1/ξmよりも数倍大きいことができる。ここで、ξmは、上の規定された通りである。そのような端部結合の第二の結果として、端部結合ゾーンの前にあるマーカーパターンに関して端部結合ゾーンの後ろにあるマーカーパターンのフェーズ・シフトΔmが、存在することができる。これにより、一実施形態では、磁気マーカーが、ベルトの端部結合の後に形成される。別の実施形態では、磁気マーカーが、2つのリニアエンコーダのセットアップを使用して、ベルトの端部結合の前に形成される。2つのリニアエンコーダの少なくとも1つが、以下に説明されるように、常に端部結合ゾーンの外にある。
【0045】
図1は、この発明の例示のベルトの構造を示す。このベルト1は、埋め込まれた強磁性体(具体的にはバリウムフェライトまたはストロンチウムフェライト)の粒子を備えるエラストマー材料(NBRのような)のマトリックスのストリップ2を有する。ストリップは、ベルト移動方向(矢印で示された)と平行に一列に配置される磁気マーカー(これらの2つが、参照数字21および22で表される)の周期性パターンを備える。「ストリップ」が「列」の物理的な実施であるので、「ストリップ」および「列」の両方には、参照数字2が割り当てられる。各磁気マーカーは、「上向き」(つまり、N極(N)がベルトの搬送表面に近い)の磁気的に分極された領域と、「下向き」(つまり、S極(S)がベルトの搬送表面に近い)の磁気的に分極された領域とから成る。磁化の方向は、ベルトの搬送表面平面に垂直である。「上向き」(N)の分極領域および「下向き」(S)の分極領域は、等しいサイズおよび形状であり、本質的にそれらの間に不定の(undefined)またはゼロの磁化のエリアなしで、互いに隣接している。磁気マーカー21,22を備えるストリップ2は、熱可塑性エラストマー(具体的にはTPU)で作られたカバー層4に形成される溝3に埋め込まれている。ベルト1は、PETフィラメントの平織りから成る上のトラクション層5と、PETフィラメントの平織りから成る下のトラクション層6と、熱可塑性エラストマー(具体的にはTPU)で作られた中間層7とをさらに備える。さらに、上のトラクション層5、下のトラクション層6、ならびに中間層7を一緒に接合するために使用される、任意選択の接着層8,9が示される。ベルトは、その主要な機能が環境上の汚れから磁気マーカー21,22を保護することである上層10をさらに備える。そのようなベルトがコンベア・プリンタで使用される場合、搬送される(そして印刷される)サブストレートは、カバー層4の上に存するか、または上層10が存在する場合に上層の上に存するであろう。コンベア装置のプーリーが、下のトラクション層6と接するであろう。もしも下のトラクション層6および中間層7が存在しないならば、プーリーは上のトラクション層5と接するであろう。
【0046】
この発明のベルトは、周期的なマーカーパターンを含む場合、ベルトの高精度位置決定が必要であるあらゆる分野において使用されることができる。この発明のベルトは、例えば、タイミングベルト、正の駆動ベルト、フラットなベルト、正の駆動ベルトまたは動力伝達ベルトとして構成され且つ使用される。しかしながら、周期的なマーカーパターンを備えたこの発明のベルトに対する好ましい用途は、冒頭部に説明されるように、単一パス・ラインヘッド・インクジェットプリンタに、具体的には織物の印刷のために存する。そのようなプリンタは、実際上、少なくとも駆動プーリーおよび従動プーリーとそれらのまわりにループする無端のコンベアベルトとを有する搬送装置であるが、更に、搬送されるサブストレートに同時に印刷する能力を持った搬送装置である。
【0047】
そのようなプリンタにおいて使用されるために、周期的なマーカーパターンで磁化され、前述のように無端で作られて、プリンタの搬送用プーリーに取り付けられたベルトが、好ましくは提供される。
【0048】
取り付けられたベルトは、上述されるように、周期的なマーカーの磁気信号がリニアエンコーダ判読不能である上述の長さLjの端部結合ゾーンを通常有するであろう。端部結合ゾーンを含む無端のベルトの全周にわたって読取可能な磁気信号を保証するために、端部結合ゾーンの長さLjと見なされるものすべてよりも長い距離LLEによってベルトの長手方向において互いに離間する、上述されたタイプの2つの磁気リニアエンコーダを備えるセットアップを提供することは好ましい。2つのリニアエンコーダ間のそのような距離LLEで、2つのリニアエンコーダの少なくとも1つが、明らかにいつでもベルトの端部結合ゾーンの外側にあり、磁気マーカーからの信号を検出でき、補間された矩形波信号をそこから提供できることが、まず初めに保証される。第一のリニアエンコーダは、以下に表される「上流のリニアエンコーダ」LEu(ベルト移動方向に関して第二のリニアエンコーダの上流にあることを意味する)である。第二のリニアエンコーダは、以下に表される「下流のリニアエンコーダ」LEd(ベルト移動方向に関して第一のリニアエンコーダの下流にあることを意味する)である。
【0049】
リニアエンコーダのいずれかを決定するために、LEuまたはLEdは、周期的なマーカーパターンから補間された矩形波信号を提供するために使用されるべきであり、2つのリニアエンコーダのどれが端部結合ゾーンに入る間近である(imminent)かは知られていなければならない。この場合、端部結合ゾーンに入る間近ではない別のリニアエンコーダからの矩形波信号が、使用されなければならない。これを行う最も信頼できる方法は、以下に表される第一の基準マーカー検出器すなわち「上流の」基準マーカー検出器Du(ベルト移動方向に関して第二の基準マーカー検出器の上流にあることを意味する)を使用して、ベルトの端部結合ゾーンの間近であるスタートを示す基準マーカーをベルト上に提供することである。同じ基準マーカーも、以下に表される第二の基準マーカー検出器すなわち「下流の」基準マーカー検出器Dd(ベルト移動方向に関して第一の基準マーカー検出器の下流にあることを意味する)を使用して、ベルトの端部結合ゾーンの端を越えたステッピングを示すために使用されてもよい。これらの2つの基準マーカー検出器DdおよびDuのそれぞれは、基準マーカーを検出するとき、信号パルスを出力する。検出器DdおよびDuも、距離LDでベルトの長手方向と平行に配置され、ベルトの長手方向において互いに離間している。基準マーカーおよび関連する基準マーカー検出器は、好ましくは、磁気タイプ以外のものである。その結果、基準マーカー信号は、磁気マーカーの磁気信号を妨げない。より好ましくは、基準マーカーおよび関連するマーカー検出器は、光学タイプである。光学の基準マーカーおよび関連する基準マーカー検出器の組み合わせの第一の例は、ベルトの搬送表面上に印刷されたスポット、および関連する検出器として2つのオプティカルスキャナである。第二の例は、ベルトに空けられた穴、および関連する検出器として各光源と協働する2つのフォトセルである。基準マーカーは、好ましくは、ベルトの側縁のうちの1つの近くに位置するとともに、磁気マーカーの列の外側に位置する。
【0050】
デフォルトで、上流のリニアエンコーダLE
uからの補間された矩形波信号が、使用されることができる。このデフォルト状況は、上流のリニアエンコーダLE
uおよび下流のリニアエンコーダLE
dのいずれもが、端部結合ゾーン内に無くて、端部結合ゾーンが2つのリニアエンコーダ間に無い場合である。ベルト位置は、好ましくは、搬送装置またはプリンタの起動時間でこのデフォルト状況において初期化されることができる。搬送の間に上流の基準マーカー検出器D
uが基準マーカーを検出するとき、それは、下流のリニアエンコーダLE
dからの矩形波信号が使用されるべきであることを示す信号を生成する。下流の基準マーカー検出器D
dが基準マーカーを検出するとき、それは、デフォルトの上流のリニアエンコーダLE
uからの矩形波信号が再び使用されるべきであることを示す信号を生成する。上述のデフォルト状況において、上流のリニアエンコーダLE
uの矩形波信号は、下流のリニアエンコーダLE
dの補間された矩形波信号に関して距離Δ
0でシフトされたフェーズである。これは、L
LEが、通常、リニアエンコーダの分解能の整数倍数ではないからである。L
LEは1/ξ
LEである。ベルトの端部結合ゾーンが上流のリニアエンコーダおよび下流のリニアエンコーダの間にある特別な状況において、上流のリニアエンコーダの矩形波信号と、下流のリニアエンコーダの矩形波信号との間にフェーズ・シフトΔ
1があり、Δ
1が前記Δ
0に依存するとともに、更に前方に端部結合ゾーンの前後の補間された矩形波信号間にある「true」のフェーズ・シフトΔ
cに依存する。端部結合ゾーンの前後のマーカーパターン間にはフェーズ・シフトΔ
mがあるので(as)、Δ
cは、ベルトの端部結合に起因する、Δ
0およびΔ
1の両方は、2チャンネルのオシロスコープで決定することができる。2つのリニアエンコーダの矩形波信号は、他方(オシロスコープの各チャンネル上の一つ)よりも上に配置されて表示される。また、2つの信号間のフェーズ・シフトは、ディスプレイから直接的に得ることができる。Δ
0およびΔ
1は、プリンタに取り付けられた無端ベルトのプリテンションのときに、ある程度影響を受けることがある。それは、移動可能な軸を有するとともに搬送装置に含まれているプリテンションのローラを使って、慣習的に行われる。プリテンションのとき、ベルトの長さが、わずかに長くなる。これにより、ベルトでの磁気マーカーのパターンがわずかに引き伸ばされるので、ξ
LEがわずかに減少する。
ここで、ξ'
LEおよびξ''
LEは、それぞれ、テンションされていない(あるいはわずかにプリテンションされた)ベルトおよび完全にプリテンションされたベルトの空間のリニアエンコーダ周波数である。また、L'
BおよびL''
Bは、それぞれ、テンションされていない(あるいはわずかにプリテンションされた)ベルトおよび完全にプリテンションされたベルトの長さである。
【0051】
基準マーカーおよび2つの基準マーカー検出器を使用して、上流のリニアエンコーダLE
uと下流のリニアエンコーダLE
dとの間での上述の切り替えが、正確に作動するならば、ベルトの端部結合ゾーンおよび基準マーカー検出器D
uおよびD
dに関する基準マーカーの位置のいくつかの可能な構成を示す
図2を参照して、ベルトの端部結合ゾーン、基準マーカーおよび2つの基準マーカー検出器の相対位置が考慮されなければならない。基準マーカーは、黒色ドットとしてすべての構成において示される。また、ベルト移動方向は、左から右に仮定される。上流のリニアエンコーダおよび下流のリニアエンコーダ間での距離L
LEは、2つのリニアエンコーダの少なくとも1つが、常に、端部結合ゾーンの外側にあることを保証するために、ベルトの端部結合ゾーンの長さL
j(太字の両矢印として示される)よりも大きい。
【0052】
図2の左上は、ベルトの端部接合ゾーンの間近である外観を検出するために使用可能な4つの可能な構成を示す。「間近である」は、ベルトの端部結合ゾーンが上流のリニアエンコーダLE
uに到達間近であることを意味する。ベルトの長手方向に見たとき、構成a/A/aAは、ベルトの端部結合ゾーンの後ろに基準マーカーを有する。構成b/B/bBは、ベルトの端部結合ゾーン内の長手方向の位置で基準マーカーを有する。また、構成c/C/cCおよびd/D/dDは、ベルトの端部結合ゾーンの前に基準マーカーを有する。4つの基準マーカーのうちの1つだけが、参照数字11で示される。ベルトの端部結合ゾーンL
jは、上流のリニアエンコーダLE
uに到達するのにまだ十分に遠くまで移動していないが、上流のリニアエンコーダLE
uに到達間近である。それぞれの上流の基準マーカー検出器D
u(aA)、D
u(bB)、D
u(cC)およびD
u(dD)(それらの1つが参照数字12で示される)と、対応する基準マーカーとの間にある垂線は、上流の検出器D
uが、基準マーカーをちょうど検出して、デフォルトの上流のリニアエンコーダLE
u(13)の矩形波信号から下流のリニアエンコーダLE
d(14)の1つに切り替える信号を生成するであろうことを示す。すべての場合で、ベルト移動方向(これらの第一の距離が、小文字a、b、cまたはdで表される)におけるさらに小さな絶対的な位置を仮定する、基準マーカーの長手方向の位置とベルトの端部結合ゾーンのスタートの長手方向の位置との間の距離が、ベルト移動方向(これらの第二の距離が、大文字A、B、CまたはDで表される)におけるさらに小さな絶対的な位置を再び仮定する、基準マーカーの長手方向の位置と上流のリニアエンコーダLE
uの長手方向の位置との間の距離よりも常に短くなければならないことが明らかになる。前記第一の距離a、b、c、d、及び前記第二の距離A、B、C、Dの両者は、正である(左向き矢印)、ゼロであるかまたは負である(右向き矢印)。
【0053】
図2の右上は、ベルトの端部接合ゾーンの端(あるいは端の踏み越え(overstepping))を検出するために使用可能な4つの可能な構成を示す。「踏み越え」は、ベルトの端部結合ゾーンが、上流のリニアエンコーダLE
u(13)から離れていることを意味する。ベルトの長手方向に見たとき、構成a'/A'/a'A'およびb'/B'/b'B'は、ベルトの端部結合ゾーンの後ろに基準マーカー11を有する。構成c'/C'/c'C'は、ベルトの端部結合ゾーン内の長手方向の位置で基準マーカーを有する。また、構成d'/D'/d'D'は、ベルトの端部結合ゾーンの前に基準マーカーを有する。ベルトの端部結合ゾーンL
jは、上流のリニアエンコーダLE
uを過ぎて移動する。したがって、上流のリニアエンコーダLE
uは、ベルトの端部結合ゾーンを越えて停止する。それぞれの下流の基準マーカー検出器D
d(a'A')、D
d(b'B')、D
d(c'C')およびD
d(d'D')と、対応する基準マーカーとの間にある垂線は、下流の基準マーカー検出器D
d(14)が、基準マーカーをちょうど検出するとともに下流のリニアエンコーダLE
d(15)の矩形波信号からデフォルトの上流のリニアエンコーダLE
u(14)の1つに切り替える信号を生成するであろうことを示す。すべての場合で、ベルト移動方向(これらの第一の距離が、小文字でダッシュ付きのa'、b'、c'、d'で表される)におけるさらに小さな絶対的な位置を仮定する、基準マーカーの長手方向の位置とベルトの端部結合ゾーンの端の長手方向の位置との間の距離が、ベルト移動方向(これらの第二の距離が、大文字でダッシュ付きのA'、B'、C'、D'で表される)におけるさらに小さな絶対的な位置を再び仮定する、基準マーカーの長手方向の位置と上流のリニアエンコーダLE
uの長手方向の位置との間の距離よりも常に大きくなければならないことが明らかになる。前記第一の距離a'、b'、c'、d'及び前記第二の距離A'、B'、C'、D'の両者は、正である(左向き矢印)、ゼロであるかまたは負である(右向き矢印)。
【0054】
図2の左下、中央下、および右下は、ベルトの端部結合ゾーンL
jに関する基準マーカー11の長手方向の位置と、上流の基準マーカー検出器D
u(12)の長手方向の位置と、下流の基準マーカー検出器D
d(15)の長手方向の位置という3つの可能な構成を示す。
図2の左下は、ベルトの端部結合ゾーンの前に基準マーカーを備える構成である。
図2の中央下は、ベルトの端部結合ゾーン内の長手方向の位置で基準マーカーを備える構成である。また、
図2の右下は、ベルトの端部結合ゾーンの後ろに基準マーカーを備える構成である。これら3つの構成の各々は、ベルトの端部結合ゾーンL
jが上流のリニアエンコーダLE
u(13)にまだ到達していない第一の状況(上部)と、ベルトの端部結合ゾーンL
jが上流のリニアエンコーダLE
u(13)をすでに通過している第二の状況(下部)とで示される。第一の状況から第二の状況に移り変わるために、ベルトが左から右に少なくとも移動しなければならない距離は、L
jよりも明らかに長くなければならない。この移り変わりの間に、基準マーカー11も、同時に、同じ最小の距離で左から右に移動する。基準マーカー11が、第一の状況において上流の基準マーカー検出器D
u(12)でちょうど検出されるとともに、第二の状況において下流の基準マーカー検出器D
d(15)でちょうど検出されるので、すべての場合に、上流の基準マーカー検出器D
uと下流の基準マーカー検出器D
dとの間の距離L
Dが、L
jよりも長くなければならないことが明らかになる。
【0055】
図3は、上流の検出器の出力121を持った上流の基準マーカー検出器D
u(12)および下流の検出器の出力151を持った下流の基準マーカー検出器D
d(15)で生成された信号に基づいて、上流のリニアエンコーダLE
u(13)の矩形波信号(上流のリニアエンコーダ出力131で出力される)から、下流のリニアエンコーダLE
d(14)の信号(下流のリニアエンコーダ出力141で出力される)に切り替えるために、そしてこの逆で切り替えるために、使用される例示のラッチを示す。上流のリニアエンコーダおよび下流のリニアエンコーダは、「無効」(例えば、0またはfalse)のレベルから「有効」(例えば、1またはtrue)のレベルに交互に入れ替わる(alternate)、そしてこの逆で交互に入れ替わる信号の形でそれらの矩形波信号を出力することができる。ラッチは、フリップフロップの第一の入力161、フリップフロップの第二の入力162およびフリップフロップの出力163を備えるフリップフロップ16と、NOTゲートの入力171およびNOTゲートの出力172を備えるNOTゲート17と、第一のANDゲートの第一の入力181、第一のANDゲートの第二の入力182および第一のANDゲートの出力183を備える第一のANDゲート18と、第二のANDゲートの第一の入力191、第二のANDゲートの第二の入力192および第二のANDゲートの出力193を備える第二のANDゲート19と、ORゲートの第一の入力201、ORゲートの第二の入力202およびORゲートの出力203を備えるORゲート20とを有する。上流の検出器の出力121および下流の検出器の出力151は、フリップフロップの第一の入力161およびフリップフロップの第二の入力162にそれぞれ接続される。フリップフロップの出力163は、NOTゲートの入力171および第二のANDゲートの第一の入力191の両方に接続される。上流のリニアエンコーダの出力131および下流のリニアエンコーダの出力141は、第一のANDゲートの第二の入力182および第二のANDゲートの第二の入力192にそれぞれ接続される。NOTゲートの出力172は、第一のANDゲートの第一の入力181に接続される。第一のANDゲートの出力183および第二のANDゲートの出力193は、ORゲートの第一の入力201およびORゲートの第二の入力202にそれぞれ接続される。フリップフロップ16は、フリップフロップの第一の入力161(上流の検出器の出力121から)から、またはフリップフロップの第二の入力162(下流の検出器出力151から)から、それがパルスを受け取るかどうかに応じて、「無効」(例えば、0またはfalse)のレベルから「有効」(例えば、1またはtrue)のレベルに切り替える(toggle)、あるいは、その逆に切り替える、出力信号STをそのフリップフロップ出力163で生成することができる。このトグル信号STは、フリップフロップの出力163から第二のANDゲートの第一の入力191を介して第二のANDゲート19に供給され、そして、NOTゲート17によって反転した後、第一のANDゲートの第一の入力181に供給される。トグル信号STが「有効」である場合、第一のANDゲートの第一の入力181の入力信号が、「無効」(NOTゲート17で反転)のレベルであり、第一のANDゲート18が、その第一のANDゲートの出力183で上流の検出器の出力131の信号を出力するのではなく、一定の「無効」(例えば、0またはfalse)のレベルを出力する。トグル信号STが「有効」であると、第二のANDゲートの第一の入力191の入力信号は「有効」のレベルであり、第二のANDゲート19は、その第二のANDゲートの出力193で下流のリニアエンコーダの出力141の信号を出力するであろう。他方で、トグル信号STが「無効」である場合、第一のANDゲートの第一の入力181の入力信号は、「有効」(NOTゲート17で反転)のレベルであり、第一のANDゲート18は、その第一のANDゲートの出力183で上流の検出器の出力131の信号を出力するであろう。トグル信号STが「無効」であると、第二のANDゲートの第一の入力191の入力信号は、「無効」であり、第二のANDゲート19は、その第二のANDゲートの出力193で下流のリニアエンコーダの出力141の信号を出力するのではなく、一定の「無効」(例えば、0またはfalse)のレベルを出力する。第一のANDゲートの出力183および第二のANDゲートの出力193から来る出力レベルは、上流のリニアエンコーダLE
u(13)または下流のリニアエンコーダLE
d(14)のいずれかの矩形波出力を表わす全体的な出力信号EにORゲート20によって最終的に結合される。その全体的な出力信号E、上流の基準マーカー検出器D
u(12)および下流の基準マーカー検出器D
d(15)からの生の出力信号、および、上流のリニアエンコーダLE
u(13)および下流のリニアエンコーダLE
d(14)からの生の出力信号は、以下に詳細に説明されるような基本色C、M、Y・・KのCMYKに対する印字ヘッド信号221、222、223・・22Nを生成する役目を有する制御手段220に入る。
【0056】
以下では、この発明に係るプリンタにおいて、空間周波数ξLEを有する矩形波である前記出力信号Eが、どのようにして1セットの整数の形で位置情報に処理されるかについての例示的な説明が行われる。これらのそれぞれは、例えば、搬送されたサブストレート上に印刷される画像のライン数を表わす。各整数は、対応する個々の処理装置または個々の印字ヘッドに関連した個々の出力ポートに送られる。この説明は、長さLjの端部接合ゾーンを有するベルトを考慮したものであり、磁気マーカーはリニアエンコーダ読取可能ではない。生成されるライン数は、実際には、所定の空間周波数ξp(「ドット/インチ」または「ドット/m」)を有する画像の画像ラインのインデックスを表わす。ξLEは、通常、ξpの非整数倍であり、すなわちξLE = r×ξpであり、rは実数の非整数である。rのさらなる矩形波は、画像ラインインデックスの1の増加に対応する。ξLEがベルトのプリテンションでわずかに減少するので、rは単にプリテンションの後に知られるだけであろう。
【0057】
制御手段220は、a) 信号Eでの矩形波の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジ(好ましくは立ち上がりエッジ)をカウントできる波のカウント手段、b) 保存された整数を1つ増加させることができるラインのカウント手段、及びc) 合計手段に含まれた実数に対して上述のrの端数部分を加えることができるとともに、他の実数をそれに加えるかそれから差し引くことのできる合計手段を備える。搬送の開始時間で、波のカウント手段の内容(content)は、0に初期化される。合計手段の内容は、0.0に初期化される。また、ラインのカウント手段の内容は、任意の初期のライン数L0に初期化される。それは通常0であろう。
【0058】
Eが上に規定された空間周波数ξLE(つまり、リニアエンコーダ間での信号切り替えが生じない)を備える、上流のリニアエンコーダLEuまたは下流のリニアエンコーダLEdのいずれかからの綺麗な矩形波出力である搬送のすべての段階において、波のカウント手段は、Eにおける矩形波をカウントできる。このカウントが上述のr(= [r] )の整数部分まで増加するたびに、制御手段220は、ラインのカウント手段に保存されたラインカウントを1つ増加させ、及び上述のrの端数部分(= r - [r])を合計手段の内容に加え、それは、波のカウント手段の内容を0に再設定する。更に、制御手段220は、合計手段の内容の各変化の後に、その内容が1.0に達したかそれとも1.0を超えるかをチェックする。そうであるならば、制御手段220は、波のカウント手段のカウントを1つ減少させ(その結果、その内容が0の代わりに-1である)、合計手段の内容から1.0を差し引く。一旦、波のカウント手段の内容が-1であるならば、ラインのカウント手段のカウントが再び1つ増加できる前に波のカウント手段で総計されなければならない実際の波のカウントは、[r]ではなく[r]+1である。それは、ラインのカウント手段の1つの増加を多少遅らせる。このアルゴリズムは、rの非整数性のために、Eの[r]の矩形波よりも多少多いものが1つの画像ラインに対応するという事実を説明する。制御手段220がいったん前述のタスクを実行すると、この段落の冒頭に説明したように、波およびラインのカウントが再び進行する。
【0059】
上流のリニアエンコーダの信号から下流のリニアエンコーダにEが切り替わる、あるいは、その逆でEが切り替わる特別なステージにおいて、制御手段220は、好ましくは、さらなるタスクを実行する。これは、切り替え時には、まず初めに、Eの矩形波信号が、それらを考慮に入れるために、必要に応じて、合計手段に加えられるか差し引かれる、フェーズ・シフトを受けて、前の段落で説明したメカニズムにより(over)ラインのカウント手段の1つ早まったり遅れたりする増加を生じさせるからである。制御手段220は、実行された各変更の後に、合計手段の内容をチェックする。第2に、そのような切り替えは、信号Eにおいて余分な半波を引き起こすことがある。余分なエッジは、無視されなければならない。さらなるタスクは、上述のΔ0およびΔ1が、1/2ξLEよりも小さいかまたは等しいかどうかに、または1/2ξLEよりも大きいかに依存する。更に、これらのさらなるタスクは、切り替え時でのリニアエンコーダの信号の状態(ハイまたはロー)に依存する。立ち上がりエッジが波のカウント手段でカウントされると仮定して、これらのさらに行われたタスクは、以下の通りである。
【0060】
Eが、上流のリニアエンコーダ信号から下流のリニアエンコーダ信号に切り替わるとき
a) 0 < Δ
0 ≦ 1/2ξ
LE
b) 1/2ξ
LE < Δ
0 < 1/ξ
LE
【0061】
Eが、下流のリニアエンコーダ信号から上流のリニアエンコーダ信号に切り替わるとき
a) 0 < Δ
1 ≦ 1/2ξ
LE
b) 1/2ξ
LE < Δ
1 < 1/ξ
LE
【0062】
一旦、ξLEが十分に大きいと(例えば、100000 m-1のオーダー)、Δ0およびΔ1が、1/ξLEに関して非常に小さくなり、無視できるので、上述のさらなるタスクは、好ましい。上述のタスクは、高精度を対象にしている、および/またはξLEが十分に大きくないときを対象にしている。
【0063】
制御手段220は、そのラインのカウント手段の内容(整数L)を、所定のインデックスi(1≦ i ≦ N)を持った、整数L
iの形の出力に変換する。数L
iは、同じインデックスiを備えた出力ポートに送られる。
図3に示すように、例えば、数L
1、L
2、・・・、L
Nは、出力ポート221、222、223、・・・、22Nにそれぞれ送られる。この情報を使用するラインヘッド・インクジェットプリンタは、典型的には同じ番号の印字ヘッドを有するであろう。所定のインデックスiを備える各出力ポートに対して、同じインデックスiを備えた関連する印字ヘッドがあるであろう。したがって、
図3において、出力ポート221、222、223、・・・、22Nは、CMYKモデルの基本色の1つにそれぞれ割り当てられている。各L
iの値と、同じインデックスiを備える出力ポートにそれが送られる時間とが、同じインデックスiを備える関連する印字ヘッドが、所定のインデックスL
iを備えたそのそれぞれのCMYK基本色の画像ラインをそのときに印刷するために必要とする情報になるであろう。
【0064】
制御装置は、上述の数Liを再準備し、そのラインのカウント手段の内容Lが1つ(上述されるように)増加する度に、同じインデックスiを備える関連する出力ポートにそれらを再送する。それを行うために、制御装置は、Lが、a) 下の基準ライン番号Lr1、Lr2、・・・、LrNのあらかじめ保存されたセットに含まれた一つ以上の第一の参照番号と少なくとも等しいかを、b) 上の基準ライン番号Ur1、Ur2、・・・、UrNのあらかじめ保存されたセットに含まれた一つ以上の第二の参照番号と等しいかまたは小さいかを、チェックする。制御手段220がLri ≦ L ≦ Uriを決定する各参照番号ペアLri/Uriに対して、制御手段220は、そのインデックスiを備える関連する出力ポートに値L-Lriを送る。この値L-Lriは、求められたLiである。このLiと、同じインデックスiを備える出力ポートにそれが送られる時間とは、同じインデックスiを備える関連する印字ヘッドに対する上述の情報である。有利には、インデックスiは、印字ヘッドが(ベルト移動方向を基準にして)下流にあればあるほどそのインデックスiが大きいように、印字ヘッドに割り当てられる。
【0065】
下の参照番号Lriのそれぞれは、実際に、1/ξpのユニット(ξpは、「ドット/インチ」または「ドット/m」における上述の空間の印刷周波数である)で、任意に選ばれた固定された基準ポイントを基準にして、同じインデックスiを備える関連する印字ヘッドの長手方向のオフセットを表わす。しかしながら、基準ポイントは、ベルト移動方向を基準にして印字ヘッドのすべての上流にある。上の参照番号Uriのそれぞれは、同様にして、印刷される画像に含まれた画像ラインの最大数LTに対応するLriとの合計である。LriおよびUriのこれらの解釈は、印字ヘッドが、長手方向において互いにおよび1/ξpの整数の倍数で前記基準ポイントから離間していると仮定する。
【0066】
上述の制御手段220は、好ましくは、適切にプログラムされたコンピューターである。制御手段220は、上流の基準マーカー検出器および下流の基準マーカー検出器の信号を、例えば割り込み(interrupt)としてみなすことができ、上で説明された好ましいタスクを割り込みハンドラーとして行なうことができる。
【0067】
この発明は、実施例を用いてさらに例示されるだろう。
【0068】
実施例1:同期エラーテスト
【0069】
図のものと類似したベルトがテストされた。ベルトに設けられた磁気ストリップは、5mmの磁気周期長さの周期的な磁気マーカーパターンを形成するために磁化された。磁気マーカーのパターンの空間周波数ξmは、200m-1であった。また、その磁極ピッチは、2.5mmであった。長手方向において1mの長さのセクションにわたって延在する略矩形状の1セットの周期的に繰り返す同一の小さなテスト画像は、ベルトの搬送表面上に印刷された。テスト画像の数Niが200であった。それらの空間周波数ξiが200m-1であった。それはξmと同一であった。
【0070】
準備されたコンベアベルトは、無端で作られて、実験室のコンベアに取り付けられた。コンベアベルト上には、正確な既知の距離LLEで互いに離間する2つのリニアエンコーダが、すなわち、1つの上流のエンコーダと1つの下流のエンコーダ(ベルト移動方向を基準にして)とが、配設された。距離LLEは、1/ξmの整数の倍数であり、1/ξiの同じ整数の倍数であった。リニアエンコーダの各々は、マーカーパターンの検出されたシヌソイド生信号から、AチャンネルおよびBチャンネルでの直角の矩形波信号と、パルス状のインデックス信号Iとを生成できた。パルスは、AチャンネルおよびBチャンネルの各々の立ち上がり斜面または立ち下がり斜面でそれぞれ生成されている。AチャンネルまたはBチャンネルの矩形波信号のいずれかの空間周波数ξLE は、100000 m-1であった、Iチャンネルでの空間周波数は、ξLEの4倍であり、400000 m-1であった。このξLEは、空間分解能1/ξmおよび1/ξiの2000倍であり、これらの2つの空間分解能の整数の倍数である。さらに、2つのリニアエンコーダの各々の近くには、ベルトの搬送表面に合焦できる写真用カメラが配設され、各カメラは、ベルトの搬送表面の上にある小さなテスト画像の写真を撮影できる。関連するリニアエンコーダのIチャンネルで生成された2000パルスごとに、Iチャンネルのパルス状信号の上述の空間周波数ξLEを考慮して(in view of)ベルト移動距離の5mmごとに、ベルトの表面の1つの写真を撮影するように、各カメラは、一つの関連したリニアエンコーダを備える同期ステーションによって、および、制御システムによって、制御された。これにより、各カメラは、カメラを通過する小さなテスト画像ごとに1つの写真を撮るであろう。
【0071】
一旦、小さなテスト画像のパターンのスタートが第一の上流の同期ステーションを通過するならば、制御システムは、関連した上流のリニアエンコーダからのインクリメントの所定の数(n)を待った。その数nが到達した後、それは、その関連する上流のリニアエンコーダから、2000パルスごとに、上流のカメラに対するトリガー信号を生成し始めた。上流のカメラで生成された写真は、口径食効果および明るさに関して修正され、コンピューターに保存された。小さなテスト画像のパターンが、上流の同期ステーションを完全に通過した後、上流のカメラによる写真の取得プロセスが停止された。
【0072】
上流のリニアエンコーダの出力に基づいて、上流のカメラに対する第一のトリガー信号が生成されたとき、制御システムは、下流のリニアエンコーダからのインクリメントの所定の整数を待った。所定の整数はLLE×ξLEであった。インクリメントの所定の数が到達した後、下流のカメラに対するトリガー信号は、下流のエンコーダから、2000パルスごとに生成された。下流のカメラで生成された写真も、口径食効果および明るさに関して修正され、コンピューターに保存された。小さなテスト画像のパターンが下流の同期ステーションを完全に通過した後、下流のカメラによる写真の取得プロセスが停止された。
【0073】
理論上、関連する上流のリニアエンコーダのn×2000パルスのカウントで上流のカメラで得られた所定の小さなテスト画像の各写真は、関連する下流のリニアエンコーダの(n + LLE×ξLE)×2000パルスのカウントで下流のカメラで得られた同じ小さなテスト画像の正確に対応している(同一の)写真を生じさせるべきである。
【0074】
準備されてセットアップされたベルトが、0.25 ms
-1の名目上のベルト移動速度で運ばれた。この速度は、カメラが撮影できる写真の最大数によって、すなわち秒当たり60枚の写真によって定められた。5mmのベルト移動距離(上記参照)ごとに写真を撮影することは、0.25 ms
-1の速度で、秒当たり撮影しなければならない50枚の写真を与える。一連の3つのベルト回転がなされた。インデックスk(前述の段落において説明されるように)を備える所定の小さなテスト画像の上流のカメラおよび下流のカメラの対応する写真は、2つの対応する写真に現われる、テスト画像のセンターが、写真の水平方向(搬送の間におけるベルト移動方向に対応)における或る距離Δxで互いにずれているかを見つけ出すためにコンピューターによって比較された。この距離Δxは、ベルトの長手(移動)方向における同期エラーと見なされた。パルスカウントk×2000で上流のエンコーダに関連する上流のカメラで撮影された、インデックスkを備える各写真に対して、インデックスkはX軸値として使用された。下流のリニアエンコーダに関連した下流のカメラでパルスカウント(k +
L
LE
×ξ
LE)×2000で撮影された、その写真のテスト画像の中心と対応する写真のテスト画像の中心との間で観察された前記ずれ距離Δxは、対応するY軸値として得られた。これらの(x、y)値のペアは、
図4に示されるグラフとしてプロットされた。長手方向のずれ(deviation)Δxは、+20μmから-20μmのオーダーであることがわかる。高解像度プリンタは、典型的には、インチ当たり720ドットの空間の印刷周波数ξ
pを有するであろう。1つの画像ラインの幅であるプリンタ分解能1/ξ
pは、約35μmである。観察されたズレは、1つの該高解像度画像ラインよりも小さい。
【0075】
実施例2:耐久試験
【0076】
図1のものに類似している層構造を備える無端のベルトは、直径250mmの2つのプーリー(1つの駆動プーリー、1つの従動プーリー)を備えるコンベア上の耐久試験を受けた。これらのプーリー直径は、典型的な単一パス・ラインヘッド・インクジェットプリンタにおけるプーリーの直径よりもいくらか小さい(約30%)。ベルトは、180°で2つのプーリーの各々の上で曲がっていた。無端のベルトのプリテンションを可能にするために、従動プーリーに関する(従動プーリーの回転軸に関する)駆動プーリー(その回転軸)の位置を、水平に調節できた。プーリー上の500万回の曲げサイクルが起こるまで、ベルトは20m/sの速度で移動した。カバー層の層間剥離の兆候がなく、カバー層または磁気ストリップのいずれにおいても破損または材料疲労が観察されなかった。磁気マーカーから生成されたシヌソイドの信号の形は、耐久試験の前後と同じであった。
【0077】
実施例3:同期エラーテスト
【0078】
実施例2の耐久試験を受けたベルト試料は、実施例1において説明される同期エラーテストを再び受けた。そのテストから得られた同期エラーは、
図5に示される。長手方向のずれΔxは、耐久試験前よりもいくらか大きいが、まだ受け入れ可能である。示された実施例を考慮して、1000000回から2500000回の曲げサイクルのベルト耐用年数が想定される。