(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】センサデータが損失した場合の閉ループ刺激治療
(51)【国際特許分類】
A61N 1/08 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
A61N1/08
(21)【出願番号】P 2020505243
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 US2018037691
(87)【国際公開番号】W WO2019027578
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-14
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ケメラー,ウィリアム・エフ
(72)【発明者】
【氏名】バージェット,デュアン・エル
(72)【発明者】
【氏名】デニソン,ティモシー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】パンケン,エリック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スタンスラスキ,スコット・アール
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0213926(US,A1)
【文献】特表2007-515200(JP,A)
【文献】特表2010-523226(JP,A)
【文献】特表2015-533526(JP,A)
【文献】特表2007-519441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346548(US,A1)
【文献】国際公開第2017/003815(WO,A1)
【文献】特表2009-536557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/08
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療法を送達するための医療システムであって、
センサデータを生成するように構成された複数のハードウェア検知源と、
処理回路と、を備え、前記処理回路が、
前記複数のハードウェア検知源によって生成された前記センサデータを受け取ることと、
前記複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定することであって、前記検知源のそれぞれからの前記センサデータの前記信頼度レベルのそれぞれが、各検知源から受け取った前記センサデータの正確さの尺度である、決定すること
であって、前記センサデータの正確さの尺度が、前記センサデータ中の有効なセンサデータの値の数の、前記センサデータ中のセンサ値の全体の数に対する比率を含む、ことと、
前記信頼度レベルが、複数の規則の或る規則の条件に適合することを決定することであって、各規則が、それぞれの信頼値レベルに対する利用可能な治療パラメータ値の組のそれぞれと関連付けられる、ことと、
前記規則に関連付けられる、前記利用可能な治療パラメータ値の組に基づいて1つまたは複数の
前記治療パラメータ値を決定することと、
前記決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させることと
を行うように構成されている、医療システム。
【請求項2】
埋込み可能医療装置(IMD)をさらに備え、前記IMDが、前記複数のハードウェア検知源と前記処理回路とを備え、前記IMDが、前記治療法を送達するための信号生成回路をさらに備える、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
埋込み可能医療装置(IMD)と、前記IMDに対して外部の外部装置とをさらに備え、前記外部装置が前記処理回路を備え、前記IMDが、前記複数のハードウェア検知源と、前記治療法を送達するための信号生成回路とを備える、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
前記処理回路が、前記決定された信頼度レベルに基づいて利用可能な複数の制御ポリシー(control policies)を判定するように構成され、前記制御ポリシーのそれぞれが、複数の治療パラメータ値を定義しており、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記利用可能な複数の制御ポリシーおよび前記センサデータに基づいて、前記1つまたは複数の治療パラメータ値を増減させる方式を決定するように構成されており、
治療法を送達させるために、前記処理回路が、前記決定された方式で前記1つまたは複数の治療パラメータ値を増減させるように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記処理回路が、前記信頼度レベルのそれぞれを重み付けするように構成されており、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記重み付けされた信頼度レベルに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項6】
前記処理回路が、
前記信頼度レベルが複数の規則のうちのある規則の条件に適合するまで、前記信頼度レベルが前記複数の規則の条件に適合しているかどうかを繰り返し判定することと、
前記規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットを決定することと、を行うように構成され、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記決定された利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項7】
前記処理回路が、前記信頼度レベルがある規則の条件に適合していることを判定するように構成され、前記規則が、利用可能な治療パラメータ値のセット(set)に関連付けられており、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記規則に関連付けられた前記利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項8】
前記処理回路が、
前記信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないことを判定することであって、前記第1の規則が、利用可能な治療パラメータ値の第1のセットに関連付けられている、判定することと、
前記処理回路が、前記信頼度レベルが前記第1の規則の前記条件に適合していないと判定した後、前記信頼度レベルが第2の規則の条件に適合していることを判定することであって、前記第2の規則が、利用可能な治療パラメータ値の第2のセットに関連付けられている、判定することとを行うように構成されており、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記利用可能な治療パラメータ値の第2のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項9】
前記利用可能な治療パラメータ値の第2のセットが、前記利用可能な治療パラメータ値の第1のセットのサブセットである、請求項8に記載の医療システム。
【請求項10】
前記処理回路が、
前記信頼度レベルが1つまたは複数の規則の条件に適合していないことを判定することと、
前記信頼度レベルが1つまたは複数の規則の条件に適合していないとの判定に応答して、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされたことを判定することとを行うように構成されており、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた前記条件が満たされていることに応答して、前記デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項11】
前記デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するために、前記処理回路が、前記信頼度レベルが最小の信頼度閾値レベルを下回ったことに応答して、前記デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するように構成されている、請求項10に記載の医療システム。
【請求項12】
前記処理回路が、
前記受け取ったセンサデータのエラー箇所を判定ことであって、前記エラー箇所が無効なデータを含む、判定することと、
前記センサデータの非エラー箇所のセンサデータ値に基づいて前記エラー箇所のセンサデータ値を補間することと、を行うように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項13】
前記処理回路が、前記受け取ったセンサデータのエラー箇所の数、または補間されたセンサデータ値の数のうちの少なくとも一方を決定するように構成されており、前記エラー箇所が無効なデータを含み、
前記信頼度レベルを決定するために、前記処理回路が、前記決定されたエラー箇所の数、または前記補間されたセンサデータ値の数のうちの少なくとも一方に基づいて前記信頼度レベルを決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項14】
前記処理回路が、前記受け取ったセンサデータにおけるデータパケット損失の数を決定するように構成されており、
前記信頼度レベルを決定するために、前記処理回路が、前記決定されたデータパケット損失の数に基づいて前記信頼度レベルを決定するように構成されている、
請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項15】
治療法を送達するための医療装置であって、
複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取るための手段と、
前記複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定するための手段であって、前記検知源のそれぞれからの前記センサデータの前記信頼度レベルのそれぞれが、各検知源から受け取った前記センサデータの正確さの尺度で
あって、前記センサデータの正確さの尺度が、前記センサデータ中の有効なセンサデータの値の数の、前記センサデータ中のセンサ値の全体の数に対する比率を含む、手段と、
前記信頼度レベルが、複数の規則の或る規則の条件に適合することを決定する手段であって、各規則が、それぞれの信頼値レベルに対する利用可能な治療パラメータ値の組のそれぞれと関連付けられる、手段と、
前記規則に関連付けられる、前記利用可能な治療パラメータ値の組に基づいて1つまたは複数の
前記治療パラメータ値を決定する、手段と、
前記決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させるための手段と
を備える、医療装置。
【請求項16】
前記信頼度レベルが複数の規則のうちのある規則の条件に適合するまで、前記信頼度レベルが前記複数の規則の条件に適合しているかどうかを繰り返し判定するための手段と、
前記規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットを決定するための手段と
をさらに備え、
前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するための前記手段が、前記決定された利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するための手段を備える、
請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
命令が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、実行されると、治療法送達のための医療装置の処理回路に、
複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取らせ、
前記複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定させ、前記検知源のそれぞれからの前記センサデータの前記信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取った前記センサデータの正確さの尺度であ
って、前記センサデータの正確さの尺度が、前記センサデータ中の有効なセンサデータの値の数の、前記センサデータ中のセンサ値の全体の数に対する比率を含む、ことと、
前記信頼度レベルが、複数の規則の或る規則の条件に適合することを決定させることであって、各規則が、それぞれの信頼値レベルに対する利用可能な治療パラメータ値の組のそれぞれと関連付けられる、ことと、
前記規則に関連付けられる、前記利用可能な治療パラメータ値の組に基づいて1つまたは複数の
前記治療パラメータ値を決定させ、
前記決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させる、
コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記信頼度レベルが複数の規則のうちのある規則の条件に適合するまで、前記信頼度レベルが前記複数の規則の条件に適合しているかどうかを繰り返し判定させることと、
前記規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットを前記処理回路に決定させることと、を前記処理回路に行わせる命令をさらに含み、
前記処理回路に前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定させる前記命令が、前記決定された利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて前記処理回路に前記1つまたは複数の治療パラメータ値を決定させる命令を含む、
請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、医療装置による治療法の送達に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]脳深部刺激療法(DBS)、脊髄刺激療法(SCS)、骨盤刺激、胃刺激、末梢神経刺激、機能的電気刺激、または患者内部の標的組織部位への医薬品、インスリン、鎮痛剤もしくは抗炎症剤の送達などの様々な治療用途で、電気刺激装置または治療薬送達装置などの医療装置が使用される場合がある。医療装置は、治療法を患者に送達して、慢性疼痛、振戦、パーキンソン病、他のタイプの運動障害、発作性疾患(たとえばてんかん)、尿失禁もしくは便失禁、性機能障害、肥満、気分障害、胃不全麻痺、または糖尿病などの種々の症状または患者の容態を治療するように構成され得る。
【0003】
[0003]いくつかの治療システムでは、場合によっては埋込み可能なことがある電気刺激装置が、1つまたは複数の電極を用いて患者内部の標的組織部位に電気的治療法を送達し、これら1つまたは複数の電極は、医療用リード、電気刺激装置のハウジング、またはその両方に配置される場合がある。場合によっては埋込み可能なことがある医療装置は、電気刺激治療法に加えて、または電気刺激治療法の代わりに、カテーテルまたは治療薬溶出パッチなどの1つまたは複数の流体送達要素を用いて、患者内部の標的組織部位に治療薬を送達する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の一実施例は、例えば、センサデータが損失した場合の閉ループ刺激治療に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0004]本開示には、センサデータの損失に応答して治療法を調節するための例示的なシステム、装置、および方法が記載されており、この場合、センサデータの損失にはセンサデータの完全な脱落または部分的な脱落が含まれる。自律適応治療システムでは、検知されたデータを使用してリアルタイムで治療法を適応させる。しかし、センサデータが完全にまたは部分的に脱落していることにより、センサデータの正確さの信頼度が低下する場合がある。正確さが低下したセンサデータの場合、正確でないセンサデータを医療装置が頼りにしたために、普通なら選択されなかったはずの治療プログラム/パラメータを装置が選択する可能性が生じる恐れがある。本開示に記載の例では、医療装置が一連の規則を評価して、治療プログラム/パラメータのどのセットが治療法の送達に利用可能であるかを判定することができる。一連の規則はセンサデータの正確さの信頼度に基づくことができ、この場合、センサデータが完全に損失しているとセンサデータの正確さの信頼度はゼロになり、センサデータが部分的に損失しているとセンサデータの正確さの信頼度はゼロ以外の度合いになる。
【0006】
[0005]一例では、本開示には治療法送達の方法が記載されており、方法は、複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取るステップと、複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定するステップであって、検知源のそれぞれからのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれが、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である、ステップと、決定された信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するステップと、決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させるステップとを含む。
【0007】
[0006]一例では、本開示には、治療法を送達するための医療システムが記載されており、医療システムは、センサデータを生成するように構成された複数のハードウェア検知源と、処理回路とを備える。処理回路は、複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取ることと、複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定することであって、検知源のそれぞれからのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である、決定することと、決定された信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することとを行うように構成され、処理回路は、決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させるように構成される。
【0008】
[0007]一例では、本開示には、治療法を送達するための医療装置が記載されており、医療装置は、複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取るための手段と、複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定するための手段であって、検知源のそれぞれからのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれが、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である、手段と、決定された信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定するための手段と、決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させるための手段とを備える。
【0009】
[0008]一例では、本開示には、命令が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体が記載されており、この命令は、実行されると、治療法を送達するための医療装置の処理回路に、複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取らせ、複数の検知源のそれぞれによって生成されたセンサデータについての信頼度レベルを決定させ、検知源のそれぞれからのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度であり、決定された信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定させ、決定された1つまたは複数の治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させる。
【0010】
[0009]1つまたは複数の例の詳細を、添付図面および以下の説明において説明する。他の特徴、目的および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】[0010]生体電気脳信号を検知し、患者の脳内の組織部位に電気刺激治療法を送達するように構成された、脳深部刺激療法(DBS)システムの一例を示す概念図である。
【
図2】[0011]
図1のシステムの一部を形成することができる医療装置の一例の構成要素を示す機能ブロック図である。
【
図3】[0012]
図2の医療装置の動作を定義する治療プログラムと、治療プログラムの利用可能性を決定するための関連する規則とのヒエラルキーを示す概念図である。
【
図4】[0013]本開示の1つまたは複数の態様による、センサデータの損失に応答して治療法を調節するための例示的技法を示す流れ図である。
【
図5】[0014]
図2の医療装置と通信することができる例示的外部装置の構成要素を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]本開示には、1つまたは複数の検知源からのセンサデータが損失した場合に治療法を送達するためのシステム、装置、および方法の例が記載される。閉ループ治療システムでは、医療装置(たとえば埋込み可能医療装置または外部装置)が1つまたは複数の検知源(たとえばセンサ、検知回路、加速度計などのハードウェア検知源)からセンサデータを受け取り、センサデータに基づいて治療パラメータ値(たとえば電気刺激の場合は振幅、周波数、パルス幅など)を決定する。しかし、リードの破損、加速度計の摩耗、外部センサと医療装置との間の通信を途絶させる電気的干渉などの種々の原因で、センサデータが損失することが考えられ得る。
【0013】
[0016]センサデータの損失とは、センサによって生成されたデータが利用不能な可能性がある、または正確でない可能性がある状態を説明するために一般に使用されている。センサデータの損失の一例はセンサデータの完全な脱落である場合があり、この場合、センサデータがセンサから受け取られていない。センサデータの損失の別の例はセンサデータの間欠的または部分的な脱落である場合があり、この場合、センサデータの一部がセンサから受け取られない。センサデータの損失の別の例は、有効範囲または有効帯域を外れたセンサデータの受領である場合がある。たとえば、(たとえば何が検知されているかに基づいて)センサデータの最大可能値および最小可能値が存在する場合があり、センサデータの損失には、センサデータが(たとえば有効帯域を外れて)最大可能値より大きいかまたは最小可能値より小さい場合が含まれ得る。受け取ったセンサデータが正確でない可能性がある種々の例を含め、センサデータの損失の他の例も考えられる。
【0014】
[0017]医療装置はセンサデータを利用して治療パラメータを決定(たとえば設定または調節)することができるので、受け取ったセンサデータが正確でないとき、受け取ったセンサデータが正確なときと比較して効果に乏しい治療パラメータ値を医療装置が決定する可能性がある。効果に乏しい治療パラメータ値が選択されることを可能な限りなくすために、本開示では、センサデータが損失したときに治療パラメータを決定するための例示的技法を説明する。一例として、本開示では、一連の規則に関連付けられた制御ポリシーのヒエラルキー構成を説明する。制御ポリシーにより、送達すべき治療法の治療パラメータ値の決定に利用可能になり得る治療パラメータ値のセットが特定される。各規則により、複数の条件が特定される。一例として、これら複数の条件は、センサデータの正確さに関連する条件でもよい。
【0015】
[0018]概して、制御ポリシーは、推定されるシステムの状態およびシステムの伝達関数に基づいて治療パラメータ値を選択する方法と考えることができる。制御ポリシーは、システムの現在の状態に基づいてパラメータのセットを決定することができる。たとえば、制御ポリシーは、現在のシステムの状態に基づいて各治療パラメータ値の値を決定することができる。
【0016】
[0019]医療装置が、第1の規則の複数の条件が満たされたと判定した場合、医療装置は、第1の規則に関連付けられた制御ポリシーから治療パラメータ値を決定することができる。しかし、医療装置が第1の規則の複数の条件が満たされていないと判定した場合、医療装置は第2の規則の条件が満たされているかどうか、といったように判定することができる。各規則のいずれにおいても複数の条件が満たされない場合、医療装置は、治療パラメータ値のデフォルトセットを定義する制御ポリシーのデフォルトセットから治療パラメータ値を決定することができる。
【0017】
[0020]いくつかの例では、医療装置は、規則の条件に照らし合わせてセンサデータの信頼度レベルを評価することができる。信頼度レベルは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である。たとえば、信頼値が高いことはセンサデータの正確さが高いことを示し、これは、センサが正常に動作していることを意味する。ゼロを含め、信頼値が低いことはセンサデータの正確さが低いことを示し、これは、センサが正常に動作していないこと、またはセンサデータの脱落があるか、もしくはセンサからのセンサデータの受領の際にエラーがあることを意味し、他の理由も考えられる。医療装置がセンサデータの信頼度レベルを決定し得る種々の様式が存在し得る。一例として、医療装置は受け取ったセンサデータにデータの前処理を実施して、いくつの標本が欠測し、または有効帯域を外れているかを決定することができる。信頼度レベルは、センサデータにおける標本(たとえばセンサデータ値)のうち、欠測し、または有効な帯域を外れている数に反比例し得る(たとえば、欠測標本または帯域外の標本が多くなるほど、信頼度レベルは下がる)。
【0018】
[0021]各規則の条件は、信頼度レベルの閾値との比較に基づくことができる。たとえば、第1の規則の条件は、すべての検知源からのセンサデータについての信頼度レベルが特定の信頼度レベル閾値を上回るべきであるというというものでもよく、第2の規則の条件は、1つを除くすべての検知源からのセンサデータについての信頼度レベルが、第1の信頼度レベル、第2の信頼度レベル、などを上回るべきであるというものでもよい。医療装置は、信頼度レベルに基づいて(たとえば、信頼度レベルが規則のすべての条件に適合した、その規則に関連付けられた制御ポリシーから治療パラメータ値を決定することによって)治療パラメータ値を決定するように構成され得る。
【0019】
[0022]いくつかの例では、欠測標本または帯域外標本が医療装置に治療パラメータ値を調節させる恐れがある。一例として、予想された標本が欠測している場合、医療装置が治療法の振幅が不十分であると判定し、不必要に振幅を増加させる恐れがある。
【0020】
[0023]医療装置は、欠測標本または帯域外標本を置き換えるように構成されてもよく、これにより、治療法の不必要な調節を抑制することができる。医療装置が欠測標本または帯域外標本を置き換えることができる様式の一例は、有効な標本に基づいて値を補間することである。一例として、医療装置は、1つまたは複数の先行する標本との線形補間を欠測標本または帯域外標本に利用し、1つまたは複数の後続の標本との線形補間を欠測標本または帯域外標本に利用して、欠測標本値または帯域外標本値に置き換わる(たとえば埋める)補間標本値を生成することができる。たとえば医療装置は、センサデータの非エラー箇所のセンサデータ値に基づいて、エラー箇所(たとえば欠測標本または帯域外標本)のセンサデータ値を補間することができる。
【0021】
[0024]信頼度レベルを決定する様式の一例は、補間に基づいてもよい。たとえば、補間が実施された標本の数は、信頼度レベルに逆相関し得る(たとえば、補間を用いて埋める必要のある標本が多くなるほど、信頼度レベルは下がる)。閾値を上回る数の標本を補間する必要がある場合(たとえば、閾値を上回る数の補間センサデータ値が存在する場合)、医療装置は、制御ポリシーのデフォルトセットへと落とすことができる。
【0022】
[0025]
図1は、患者12に治療法を送達して患者12の疾患を処置するように構成された治療システム10の一例を示す概念図である。いくつかの例では、治療システム10は患者12に治療法を送達して、患者12の運動障害または神経変性疾患を処置することができる。患者12は、普通は人間の患者であることになる。しかし場合によっては、他の哺乳動物または非哺乳動物の人間でない患者に治療システム10を適用してもよい。運動障害は、筋制御障害、動作障害、または硬直、動作緩慢、周期性運動過多、非周期性運動過多、ジストニア、振戦、無動などの他の運動上の問題であるがこれらに限定はされない1つまたは複数の症状によって特徴付けることができる。場合によっては、運動障害は、パーキンソン病またはハンチントン病の症状であることがある。しかし、運動障害は他の患者の容態に起因する場合もある。
【0023】
[0026]追加の例として、治療システム10は治療法を送達して、運動障害に加え、または運動障害の代わりに、発作性疾患(たとえばてんかん)、精神疾患、行動障害、気分障害、記憶障害、精神状態障害、アルツハイマー病、または他の神経障害もしくは精神障害などであるがこれらに限定はされない他の患者の容態を処置するように構成されてもよい。精神疾患の例には、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、不安障害、心的外傷後ストレス障害、気分変調性障害、および強迫性障害(OCD)が含まれる。患者12の脳28または別の適した標的治療法送達部位に治療法を送達することによる、患者の他の疾患の治療も企図される。
【0024】
[0027]
図1に示した例では、治療システム10は、医療装置プログラマ14と、埋込み可能医療装置(IMD)16と、リード延長部18と、電極24、26の各セットを備えた1つまたは複数のリード20Aおよび20B(総称して「リード20」)とを含む。IMD16は治療モジュールを含み、この治療モジュールは、電気刺激治療法を発生させて、リード20Aの電極24およびリード20Bの電極26のサブセットを介して患者12の脳28の1つまたは複数の領域に電気刺激治療法を送達するように構成された、刺激発生装置を含む。
図1に示した例では、IMD16が脳28内の組織、たとえば脳28の硬膜下の組織部位、あるいは1つまたは複数の分岐部またはノード、あるいは線維トラック(fiber track)の合流点に電気刺激治療法を直接的に与えるので、治療システム10は脳深部刺激療法(DBS)システムと呼ばれる場合がある。他の例では、リード20は、脳28の表面(たとえば脳28の皮質表面)に治療法を送達するように位置決めされてもよい。いくつかの例では、IMD16は、たとえば脳28の皮質の1つまたは複数の組織部位に電気刺激を送達することにより、患者12に皮質刺激治療を提供することができる。いくつかの例では、IMD16は、1つまたは複数の迷走神経組織部位に電気刺激を送達することにより、患者12に迷走神経刺激(VNS)治療を提供することができる。
【0025】
[0028]さらに他の例では、IMD16により脊髄刺激療法(SCS)、骨盤刺激、胃刺激、末梢神経刺激、機能的電気刺激が行われる場合もあり、患者内部の標的組織部位に医薬品、インスリン、鎮痛剤、または抗炎症剤が送達される場合もある。このように、本出願の残りの部分では主に電気刺激治療について参照するが、他の例では、治療システム10は電気刺激治療法に加えて、または電気刺激治療法の代わりに、他のタイプの治療法を送達するように構成されてもよい。
【0026】
[0029]
図1に示した例では、IMD16は患者12の胸部の皮下ポケットに埋め込むことができる。他の例では、IMD16は患者12の腹部もしくは臀部の皮下ポケット、または患者12の頭蓋に近接した皮下ポケットなど、患者12の他の領域に埋め込むことができる。埋込み型のリード延長部18が、(ヘッダとも呼ばれる)コネクタブロック30によってIMD16に結合され、このコネクタブロック30は、たとえば、リード延長部18の各電気接点に電気的に結合する電気接点を含むことができる。電気接点により、リード20によって保持されている電極24、26がIMD16に電気的に結合される。リード延長部18は、患者12の胸腔内のIMD16の埋込み部位から患者12の首に沿って、また患者12の頭蓋を通って辿らされ、脳28へとアクセスする。IMD16は、体液による腐食および劣化に耐える生体適合性材料で構築することができる。IMD16は、プロセッサ、治療モジュール、メモリなどの構成要素を実質的に封入する密封ハウジング34を備えることができる。
【0027】
[0030]
図1に示した例では、リード20は、脳28の1つまたは複数の領域に電気刺激を送達するために脳28の右半球および左半球のそれぞれに埋め込まれており、これら1つまたは複数の領域は、治療システム10が処置するために埋め込まれた患者の容態のタイプなど、多くの要因に基づいて選択することができる。リード20およびIMD16の他の埋込み部位も企図される。たとえばIMD16は頭蓋32の上、または頭蓋32の内部に埋め込まれてもよく、あるいはリード20は同じ半球内で複数の標的組織部位に埋め込まれてもよく、あるいはIMD16は脳28の一方または両方の半球に埋め込まれた単一のリードに結合されてもよい。
【0028】
[0031]リード20は、脳28の内部の1つまたは複数の標的組織部位に電気刺激を送達して、患者12の疾患に関連付けられた患者の症状を処置するように位置決めすることができる。リード20は、頭蓋32の各穴を通して脳28の所望の箇所に電極24、26を位置決めするように埋め込むことができる。リード20は、治療中、電極24、26が脳28内部の標的組織部位に電気刺激を与えることができるように、脳28内部の任意の箇所に配置することができる。様々な神経疾患または精神疾患を脳28の1つまたは複数の領域の活動に関連付けることができ、これは患者間で異なる場合がある。たとえば、患者12の運動障害を制御するのに適した脳28内部の標的治療法送達部位には、脚橋被蓋核(pedunculopontine nucleus)(PPN)、視床、基底核構造体(たとえば淡蒼球、黒質、もしくは視床下核)、不確帯、線維路、レンズ束(およびその分岐部)、レンズ核ワナ、ならびに/またはフォレル野(視床束)のうちの1つまたは複数が含まれる場合がある。PPNは、脚橋被蓋核(pedunculopontine tegmental nucleus)とも呼ばれる場合がある。
【0029】
[0032]別の例として、MDD、双極性障害、OCD、または他の不安障害の場合、脳28の内包の前脚、(VC/VSとも呼ばれる)内包の前脚の腹側部分のみ、(CG25と呼ばれる場合がある)帯状皮質の下側構成要素、前帯状皮質ブロードマン領野32および24、背側外側皮質および内側前頭前皮質(PFC)(たとえばブロードマン領野9)を含む前頭前皮質の種々の部分、腹内側前頭前皮質(たとえばブロードマン領野10)、外側眼窩前頭皮質および内側眼窩前頭皮質(たとえばブロードマン領野11)、内側側坐核もしくは中隔側坐核、視床、視床髄板内核、扁桃体、海馬、視床下部外側野、青斑核、背側縫線核、腹側被蓋、黒質、視床下核、下視床脚、視床の背側内側核、手綱、分界条床核、またはこれらの任意の組合せに電気刺激を送達するように、リード20を埋め込むことができる。患者12の脳28に位置付けられない標的組織部位も企図される。
【0030】
[0033]別の例として、発作性疾患またはアルツハイマー病の場合、たとえば視床前核、内包、帯状皮質、脳弓、乳頭体、乳頭体視床路(乳頭体視床束)、および/または海馬などのパペッツ回路内の領域に電気刺激を送達するようにリード20を埋め込むことができる。たとえば、発作性疾患の場合、IMD16は、電極24、26の選択されたサブセットを介して脳28のある領域に治療法を送達して、視床前核、海馬、または発作の発生に関連付けられる他の脳領域内(たとえば脳28の発作焦点)での皮質の活動を抑制することができる。反対に、アルツハイマー病の場合、IMD16は、電極24、26を介して脳28のある領域に治療法を送達して、視床前核、海馬、またはアルツハイマー病に関連付けられる他の脳領域内での皮質の活動を増加させることができる。別の例として、うつ病(たとえばMDD)の場合、IMD16は、電極24、26を介して脳28のある領域に治療法を送達して、脳28の1つまたは複数の領域内での皮質の活動を増加させ、それによって患者の疾患を効果的に治療することができる。別の例として、IMD16は、電極24、26を介して脳28のある領域に治療法を送達して、たとえば前頭皮質など、脳28の1つまたは複数の領域内での皮質の活動を減少させ、それによって疾患を治療することができる。
【0031】
[0034]リード20は、
図1では共通のリード延長部18に結合されているように示してあるが、他の例では、リード20は個別のリード延長部によってIMD16に結合されてもよく、IMD16に直接結合されてもよい。さらに、
図1には、リード延長部18を介してIMD16に結合された2つのリード20Aおよび20Bを含むシステム10が示してあるが、いくつかの例では、システム10は1つのリードを含む場合もあり、3つ以上のリードを含む場合もある。
【0032】
[0035]リード20は、患者12の頭蓋骨の各穿頭孔を介して、または頭蓋32の共通の穿頭孔を介してなど、任意の適した技法によって脳28の所望の箇所に埋め込むことができる。リード20は、治療中、リード20の電極24、26が標的組織に電気刺激を与えることができるように、脳28内部の任意の箇所に配置することができる。IMD16の治療モジュール内の刺激発生装置(図示せず)から発生する電気刺激は、普通なら困難な場合がある、患者12による運動作業のパフォーマンスを向上させることなどにより、運動障害の症状を緩和する助けとなり得る。これらの作業には、たとえば運動の開始、運動の継続、物体の把持および移動、急激な方向転換に関する歩行およびバランスの改善などのうちの少なくとも1つが含まれる場合がある。運動障害(または患者の他の容態)の症状を緩和する助けとなり得る電気刺激治療の正確な治療パラメータ値は、関係する特定の標的刺激部位(たとえば脳の領域)、ならびに個々の患者および患者の容態に特有である場合がある。
【0033】
[0036]
図1に示した例では、リード20の電極24、26はリング電極として示されている。リング電極は、プログラムするのが比較的簡単である場合があり、通常はリード20に隣接する任意の組織に電場を送達することができる。他の例では、リード20の電極24、26は異なる構成を有してもよい。たとえば、リード20の電極24、26は、交互になる(interleaved)刺激を含め、形状設定された電場を生成することができる、複雑な電極アレイ幾何形状を有してもよい。複雑な電極アレイ幾何形状の一例には、リードの長さに沿った様々な軸方向位置に位置決めされた電極のアレイ、およびリードの周辺部、たとえば辺縁部の周りの様々な角度位置に位置決めされた電極のアレイが含まれ得る。複雑な電極アレイ幾何形状は、リング電極に加えて、またはリング電極の代わりに、各リード20の外辺部の周りに複数の電極(たとえば部分的なリング電極またはセグメント化電極)を含んでもよい。この方式では、電気刺激はリード20から特定の方向に方向付けられて治療の有効性を高め、大量の組織を刺激することから起こり得る不都合な副作用を抑制することができる。標的を囲む同じ半球に複数のリード20が埋め込まれているいくつかの例では、進路操作された電気刺激を2つ以上の電極の間で実施することができる。
【0034】
[0037]いくつかの例では、IMD16の外部ハウジング34は、1つまたは複数の刺激電極および/または検知電極を含むことができる。たとえば、ハウジング34は、IMD16が患者12に埋め込まれるときに患者12の組織に対して露出させられた導電性材料を含んでもよく、あるいはハウジング34に電極が取り付けられてもよい。他の例では、リード20は、アクティブまたはパッシブなチップ構成を備えて、
図1に示すような細長い円筒形以外の形状を有してもよい。たとえば、リード20はパドルリードでもよく、球形のリードでもよく、屈曲可能リードでもよく、患者12の治療に効果的な任意の他のタイプの形状でもよい。
【0035】
[0038]IMD16は、1つまたは複数の刺激治療プログラムに従って、患者12の脳28に電気刺激治療法を送達することができる。刺激治療プログラムは、IMD16の治療モジュールによって生成されてIMD16から患者12の脳28へと送達される治療法についての1つまたは複数の電気刺激パラメータ値を定義することができる。IMD16が電気パルスの形をとる電気刺激を送達する場合、たとえば電気刺激パラメータには振幅モード(定電流または定電圧)、パルス振幅、パルス幅、波形形状などが含まれ得る。加えて、刺激の送達に様々な電極を利用することができる場合、治療プログラムの治療パラメータは電極の組合せによってさらに特徴付けられる場合があり、この電極の組合せは、選択された電極およびそれらの各極性を定義することができる。
【0036】
[0039]いくつかの例では、IMD16は、開ループ方式で患者12の脳28に電気刺激治療法を送達するように構成され、開ループ方式では、IMD16はユーザまたはセンサからの介入なしで刺激治療法を送達する。他の例では、IMD16は閉ループ方式で患者12の脳28に電気刺激治療法を送達するように構成され、閉ループ方式では、IMD16は、ユーザ入力、および1つまたは複数の検知源からの入力のうちの1つまたは複数に基づいて、脳28に電気刺激を送達するタイミング、電気刺激の出力パラメータ、またはこの両方を制御する。検知源は、たとえば、IMD16からの電気刺激出力を制御するために使用することができるフィードバックを提供することができる。たとえば、治療システム10は、患者12に関する検知情報に従ってリアルタイムで変化する方式で患者12に治療法を送達する、自律適応システムの一例である。
【0037】
[0040]たとえば検知源から受け取ったセンサデータにより、治療パラメータ値を制御するために使用されるフィードバックが形成される。一例として、IMD16が検知信号の振幅が予想よりも大きいと判定した(たとえば患者12があまりに多い振戦を経験している)場合、IMD16は、検知信号の振幅を縮小させるように、治療法の振幅、パルス幅、周波数などのうちの1つまたは複数を調節することができる。いくつかの例において、検知信号の振幅の拡大が治療の有効性を示す例などでは、IMD16は、検知信号の振幅を拡大させるように1つまたは複数の治療パラメータ値を調節することができる。
【0038】
[0041]治療法を送達して患者12の疾患を処置するように構成されていることに加えて、治療システム10は、患者12の生体電気信号(たとえば
図1の例では生体電気脳信号)、および他の信号を検知するように構成される。生体電気信号の検知は、すべての例において必要であるとは限らないことを理解されたい。たとえば運動障害においては、信号は加速度計または何らかの他の装置から生成され、必ずしも生体電気信号から生成されない場合がある。一般に、本開示に記載の技法は、1つまたは複数のハードウェア検知源によって測定される患者の容態を示す患者信号が、患者によって生成される例に適用可能である。ハードウェア検知源の例には、IMD16の検知回路、IMD16内の加速度計、患者12によって外部に装着されている加速度計、外部から患者12に結合された電極、および患者の容態を示す情報を検知する種々の他のこうした装置が含まれる。
【0039】
[0042]いくつかの例では、IMD16は、電極24、26のサブセット、別の電極のセット、またはその両方を介して脳28の1つまたは複数の領域内の生体電気信号を検知するように構成された検知モジュールを含むことができる。したがって、いくつかの例では、電極24、26を使用して治療モジュールから脳28内部の標的部位へと電気刺激を送達することができ、かつ脳28内部の脳信号を検知することができる。しかし、IMD16は、別個の検知電極のセットを使用して生体電気脳信号を検知する場合もある。
図1に示した例では、電極24、26によって生成された信号は、各リード20A、20B内部の導体を介してIMD16内部の検知回路へと伝えられる。いくつかの例では、IMD16の検知回路は、脳28に電気刺激を送達するのにも使用される電極24、26のうちの1つまたは複数を介して生体電気信号を検知することができる。他の例では、電極24、26のうちの1つまたは複数は生体電気信号を検知するために使用することができ、1つまたは複数の異なる電極24、26は電気刺激を送達するために使用することができる。
【0040】
[0043]IMD16は、IMD16によって使用される特定の刺激電極および検知電極に応じて、生体電気信号を監視し、脳28の同じ領域または脳28の異なる領域に電気刺激を送達することができる。いくつかの例では、生体電気信号を検知するために使用される電極は、電気刺激を送達するために使用されるのと同じリードに位置付けられている場合があり、他の例では、生体電気信号を検知するために使用される電極は、電気刺激を送達するために使用される電極とは異なるリードに位置付けられている場合がある。いくつかの例では、患者12の生体電気信号は外部電極、たとえば頭皮の電極で監視することができる。さらに、いくつかの例では、脳28の生体電気信号を検知する検知回路(たとえば脳28内部の活動を示す電気信号を生成する検知回路)は、IMD16の外部ハウジング34とは物理的に別個のハウジングに入っている。しかし、
図1に示した例、および説明を簡単にするために本明細書で主に参照する例では、IMD16の検知回路と治療法生成回路とは共通の外部ハウジング34の内部に封入されている。
【0041】
[0044]IMD16によって検知される生体電気信号は、脳組織間の電位差の合計によって生じる電流の変化を反映することができる。生体電気脳信号の例には、脳波(EEG)信号、皮質脳波(ECoG)信号、患者の脳の1つまたは複数の領域内から検知される局所フィールド電位(LFP)、微小電極記録(MER)および/あるいは患者の脳内の単一細胞からの活動電位が含まれるが、これらに限定はされない。いくつかの例では、LFPデータは同側的または対側的に測定され、平均(たとえば最大もしくは最小、またはそれらのヒューリスティックな(heuristic)組合せ)、または何らかの他の値と考えることができる。検知信号を得る箇所は、患者12の身体の疾患が発症している側、または症状の重症度もしくは疾患の持続時間に従って調節することができる。調節は、たとえば現れている臨床症状およびその重症度に基づいて行うことができ、記録されたLFPデータで補強し、またはアノテーションすることができる。臨床医またはIMD16の処理回路は、システムフィードバックを考慮すべき、同側的および/または対側的に測定されたLFPデータに、ヒューリスティックな重みを加えることもできる。
【0042】
[0045]例示的技法は、脳からの生体電気信号に加えて、一例として心臓信号などの他のタイプの信号に適用可能である。たとえば、心臓信号は発作前に変化するので、脳信号と心臓(ECG)信号との両方を併せて使用して、発作を検出することができる場合がある。概して、本開示で説明される技法は、種々のセンサタイプを使用して検知される種々の信号タイプに適用可能である。たとえば、技法は圧力センサ、心電図すなわちECGセンサ、流体フローセンサ、動静脈もしくは組織の酸素、CO2、pH(酸度)センサ、灌流センサ、ヘモグロビンセンサ、加速度計(単一軸もしくは複数軸)、グルコースセンサ、カリウムもしくは同様のプラズマイオンセンサ、温度センサ、および/または他のセンサからのセンサ信号に適用可能である。
【0043】
[0046]外部装置14は、必要に応じてIMD16と無線通信して、治療情報を提供または取得するように構成される。装置14は、ユーザ、たとえば臨床医および/または患者12がIMD16と通信するために使用することができる外部コンピューティング装置である。たとえば装置14は、IMD16と通信してIMD16用の1つまたは複数の治療プログラムをプログラムするために臨床医が使用する臨床医プログラマでもよい。加えて、またはその代わりに、装置14は、患者12がプログラムを選択し、かつ/または治療パラメータ値を閲覧および修正することを可能にする患者プログラマでもよい。臨床医プログラマは、患者プログラマよりも多くのプログラミング機能を含むことができる。言い換えれば、訓練されていない患者が好ましくない変更をIMD16に加えることを防止するために、より複雑な、または慎重な扱いを要する作業は、臨床医プログラマによってしか可能でない場合がある。また、装置14はIMD16から情報を受け取るために使用される装置でもよく、治療をプログラムするための機能性を必ずしも提供しない場合がある。
【0044】
[0047]装置14は、ユーザが閲覧することができるディスプレイと、装置14への入力を可能にするインターフェース(すなわちユーザ入力機構)とを備えるハンドヘルド型のコンピューティング装置でもよい。たとえば、装置14は、ユーザに情報を提示する小型のディスプレイ画面(たとえば液晶表示装置(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイ)を含むことができる。加えて、装置14は、ユーザが装置14のユーザインターフェースを見て回り、入力を行うことを可能にするタッチスクリーンディスプレイ、キーパッド、ボタン、ポイント用周辺装置、または別の入力機構を含むことができる。装置14がボタンおよびキーパッドを含む場合、ボタンがある一定の機能を実施する専用のもの、すなわち電源ボタンである場合もあり、ボタンおよびキーパッドが、ユーザが現在閲覧しているユーザインターフェースのセクションに応じて機能が変化するソフトキーである場合もあり、あるいはこれらの任意の組合せである場合もある。別法として、装置14の画面(図示せず)は、ディスプレイに示されたユーザインターフェースにユーザが直接入力することを可能にするタッチスクリーンでもよい。ユーザは、スタイラスまたは自身の指を使用して、ディスプレイへの入力を行うことができる。
【0045】
[0048]他の例では、装置14は専用のコンピューティング装置ではなく、より大型のワークステーションであっても、別の多機能装置内の個別のアプリケーションであってもよい。たとえば多機能装置は、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、ワークステーション、携帯電話、携帯情報端末、またはコンピューティング装置がセキュアな医療装置14として動作することを可能にするアプリケーションを実行できる別のコンピューティング装置でもよい。コンピューティング装置に結合された無線アダプタにより、コンピューティング装置とIMD16との間のセキュアな通信を可能にすることができる。
【0046】
[0049]装置14が臨床医によって使用されるように構成されているとき、装置14を使用して、初期プログラミング情報をIMD16に送信することができる。この初期情報には、リード20のタイプ、リード20の電極24、26の構成、脳28内部のリード20の位置、治療パラメータ値を定義する初期プログラムなどのハードウェア情報、およびIMD16にプログラムするのに有用であり得る任意の他の情報が含まれ得る。また、装置14は、機能テスト(たとえばリード20の電極24、26のインピーダンスの測定)を完了できる場合がある。
【0047】
[0050]臨床医は、装置14を用いて、IMD16内に治療プログラムを生成および記憶させることもできる。プログラミングセッション中、臨床医は、運動障害(または患者の他の容態)に関連付けられた症状に対処するのに効果的な治療を患者12に提供することができる、1つまたは複数の治療プログラムを決定することができる。たとえば、臨床医は、刺激を脳28に送達する1つまたは複数の電極の組合せを選択することができる。プログラミングセッション中、評価されている特定のプログラムの有効性に関して、患者12が臨床医にフィードバックを提供してもよく、あるいは検知された、もしくは観察可能な1つもしくは複数の患者の生理的パラメータ(たとえば筋活動)に基づいて、または患者12の運動を示す信号を生成する1つもしくは複数のモーションセンサによって検出された運動に基づいて、臨床医が有効性を評価してもよい。装置14は、有益である可能性のある治療パラメータ値を特定するための体系的なシステムを提供することにより、治療プログラムの作成/特定において臨床医を補助することができる。
【0048】
[0051]装置14は、患者12によって使用されるようにも構成することができる。患者プログラマとして構成されたとき、患者12がIMD16の重要な機能を変更し、または患者12にとって害になり得る行動をとることを防止するために、装置14は(臨床医プログラマと比較して)限定的な機能性を有する場合がある。
【0049】
[0052]装置14が臨床医向けに構成されていようと患者向けに構成されていようと、装置14は、無線通信を介してIMD16と、また任意選択で別のコンピューティング装置と通信するように構成される。装置14は、たとえば当技術分野で知られている高周波(RF)テレメトリ技法を使用して、無線通信によってIMD16と通信することができる。装置14は、有線接続または無線接続により、802.11もしくはBluetooth(登録商標)規格セットによるRF通信、IRDA規格セットによる赤外線(IR)通信、または他の標準テレメトリプロトコルもしくは独自テレメトリプロトコルなどの種々のローカル無線通信技法のうちのいずれかを使用して、別のプログラマまたはコンピューティング装置とも通信することができる。装置14は、メモリカードなどのリムーバブルメディアの交換により、他のプログラミング装置またはコンピューティング装置と通信することもできる。さらに、装置14は、当技術分野で知られているリモートテレメトリ技法によってIMD16および別のプログラマと通信し、たとえばローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、または携帯電話ネットワークを介して通信することができる。
【0050】
[0053]本開示で説明される例示的技法によれば、IMD16は、閉ループ方式で患者12に治療法を送達するように構成することができる。たとえば上記のように、IMD16は、患者への治療法が検知情報に従ってリアルタイムで変化する自律適応システムで、治療法を送達することができる。
【0051】
[0054]こうした閉ループシステムでは、治療法を決定する元になるフィードバックを形成する検知情報が損失した、または信頼性が低い場合、システムの挙動および対応する患者12の安全性が制御されるべきである。こうした例において、IMD16は、データの損失の際、「グレースフルな」方式で治療法を調節し、有用な治療法を患者12に安全に送達し続けることができる。
【0052】
[0055]たとえば、センサデータが脱落し、またはセンサデータが帯域外であると、IMD16により、患者特性が実際の患者特性とは異なると判定される恐れがあり、IMD16が治療パラメータ値を不必要に調節する恐れがある。センサデータ中の(たとえば帯域内の)残りの標本値が正確であることの信頼度が低下している場合があるので、脱落した、または帯域外のセンサデータに基づいて治療パラメータ値が決定されるのを避けることは、正しい治療法が選択されることを確実にするのには不十分である場合がある。
【0053】
[0056]本開示で説明される例では、IMD16は、定義済み制御ポリシーのヒエラルキー構造を利用することができ、この場合、制御ポリシーのそれぞれが複数の治療パラメータ値を定義する。一例として、定義済み制御ポリシーのヒエラルキー構造は、治療プログラムの階層化ヒエラルキーでもよく、その下層は、あらゆる状況において送達することができる1つまたは複数の「デフォルト」治療プログラムを含む。
【0054】
[0057]IMD16は、受け取ったセンサデータについての信頼度レベルを決定して、どの制御ポリシーが利用可能であるかを判定することができ、この場合、制御ポリシーのそれぞれにより、治療法の送達に利用可能な治療パラメータ値および/または治療プログラムのセットが定義される。概して、IMD16は、複数のセンサのそれぞれから受け取ったセンサデータについての1つまたは複数の信頼度レベルを決定することができ、この場合、各検知源からのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である。IMD16は、決定された1つまたは複数の信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができ、IMD16が1つまたは複数の治療パラメータ値を決定する様式の一例は、制御ポリシーの使用によるものである。
【0055】
[0058]いくつかの例では、IMD16は、帯域外標本値または欠測標本値に関して、標本値を補間することができる(たとえば線形補間であるが、他の補間タイプも考えられる)。これにより、適当な値が無効な値(たとえば帯域外標本値または欠測標本値)と置き換わるのを可能にすることができ、IMD16が実行している治療プログラムは、治療プログラムを実行する際にエラーを生じさせる可能性のある無効な値のないセンサデータの流れを受け取ることができる。言い換えると、治療プログラムの観点からは、センサデータの変更がなかったことになる。こうすると、治療プログラムは、値が置き換えられ、その結果いかなる無効な値もないセンサデータの流れを受け取るので、無効な値の処理を避けるために治療プログラムを変更することは必要とされ得ない。
【0056】
[0059]IMD16が信頼値を決定することができる種々の様式が存在し得る。一例として、IMD16は、受け取ったセンサデータにおけるエラー箇所の数、または補間標本値の数を決定することができ、この場合、エラー箇所は無効なデータ(たとえば範囲外の標本値または欠測標本値)を含む。IMD16は、決定されたエラー箇所の数、または補間標本値の数のうちの少なくとも一方に基づいて信頼度レベルを決定することができる。別の例として、IMD16は、受け取ったセンサデータにおける(部分的なパケット損失を含めた)データパケット損失の数を決定してもよい。データパケット損失の例には、センサデータの値にかかわらず利用可能であるべきヘッダ情報を含むパケットの損失、コンフィギュレーション中の通信情報のパケットの損失などが含まれる。IMD16は、決定されたデータパケット損失の数に基づいて信頼度レベルを決定することができる。
【0057】
[0060]一例として、無効なデータおよび/または補間されたデータがない場合、信頼度レベルは100%であり、センサデータのうちの1%が無効でありかつ/または補間された場合、信頼度レベルは99%である、といったようになる。別の例として、80%を上回るパケット損失がある場合、信頼度レベルはゼロになる。一般に、信頼度レベルは無効なデータおよび/または補間されたデータの量に逆相関する。また、上記の例では信頼度レベルはパーセンテージの値であるが、例示的技法はそのように限定されない。いくつかの例では、信頼度レベルはバイナリ値でもよい(たとえば1である信頼度レベルはデータが正確であることを示し、ゼロである信頼度レベルはデータが正確でないことを示す)。
【0058】
[0061]ヒエラルキー構造に戻って言及すると、各層のそれぞれを規則(たとえば一連の条件)に関連付けることができ、この場合、IMD16は、信頼度レベルと各条件との比較に基づいて、各条件のそれぞれが真であるか、それとも偽であるかを判定する。規則のすべての条件が真である場合、IMD16は、その規則に関連付けられた層において利用可能な制御ポリシーから治療パラメータ値を選択することができる。規則の条件の1つが偽である場合、IMD16は、次の層に関連付けられた規則の各条件のそれぞれが真であるかどうかを判定し、IMD16が利用可能な制御ポリシーのセットを判定するまでこれらの動作を繰り返すことができる。
【0059】
[0062]IMD16が、1つまたは複数の信頼度レベルがすべての規則の1つまたは複数の条件に適合していないと判定することが考えられ得る。こうした例では、IMD16は、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされているかどうかを判定することができる。デフォルト治療パラメータ値に関連付けられた規則の一例は、選択されている治療パラメータ値を最後に変更してからの時間量である(たとえば条件は、治療パラメータ値がある一定の時間量内に変化したか、それともしていないかになる)。IMD16は、制御された方式で治療パラメータ値をデフォルト治療パラメータ値へと増加または減少させることができ、したがって、センサデータの損失が治療法のあまりに急な変更をもたらす可能性はない。
【0060】
[0063]デフォルト治療パラメータ値に関連付けられた規則の条件が満たされているかどうかは、センサデータに依存しなくてよい。このように、デフォルト治療パラメータ値は、センサデータが完全に損失している、またはセンサデータの信頼度が完全に失われているときでも選択に利用可能である。また、デフォルト治療パラメータ値に関連付けられた規則の条件は、その他の規則のいずれも満たされないときに、その規則のすべての条件が満たされるような規則にすることができる。
【0061】
[0064]
図1に示したシステム10は、本開示に記載の技法を実施するように構成された治療システムの単なる一例である。リード、電極、およびセンサの他の構成を有するシステムも考えられる。たとえば他の実装形態では、IMD16は、異なる標的組織部位に位置決めされた1つまたは複数の電極を有する追加のリードまたはリードセグメントに結合されてもよく、その標的組織部位は脳28の内部でもよく、(たとえば患者12の脊髄、患者12の末梢神経、患者12の筋肉、または任意の他の適した治療法送達部位に近接した)脳の外部でもよい。追加のリードを使用して、患者12内部の各刺激部位に様々な刺激治療法を送達し、または患者12の少なくとも1つの生理的パラメータを監視することができる。
【0062】
[0065]さらに、他の例では、システムは2つ以上のIMDを含んでもよい。たとえばシステムは、それぞれの1つまたは複数のリードに結合された2つのIMDを含んでもよい。いくつかの例では、各IMDが患者12の各外側部に刺激を送達してもよい。
【0063】
[0066]別の例示的構成として、治療システムは、リードのない1つまたは複数の電気刺激装置(たとえばIMD16より小型の形態の要素を有し、いかなる個別のリードにも結合されない場合があるマイクロ刺激装置)を含んでもよい。リードのない電気刺激装置は、電気刺激治療法を生成し、電気刺激装置の外部ハウジングの1つまたは複数の電極を介して、電気刺激治療法を患者12に送達するように構成され得る。リードのない複数の電気刺激装置を含む例では、リードのない電気刺激装置を、患者12内部の様々な標的組織部位に埋め込むことができる。電気刺激装置の1つは、複数の電気刺激装置を介した患者12への刺激の送達を調整する「マスタ」モジュールとして機能することができる。
【0064】
[0067]いくつかの例では、IMD16は患者12の脳に電気刺激治療法を送達するように構成されず、むしろ、患者12の生体電気脳信号を含め、患者12の1つまたは複数の生理的パラメータを検知するようにのみ構成される。このタイプのIMD16は、患者12を診断し、患者12の容態を監視し、または治療法を送達するようにIMD16もしくは別のIMDを指導するのに有用な患者監視装置でもよい。
【0065】
[0068]
図2は、例示的IMD16の構成要素を示す機能ブロック図である。
図2に示した例では、IMD16は、処理回路60、メモリ62、信号生成回路64、電気的検知回路66、スイッチ回路68、テレメトリ回路70、および加速度計80を含む。加えて、
図2にはセンサ74が示してあり、このセンサ74は、患者12が手首などに装着し、または頭部に結合される検知源でもよい。他の例では、センサ74は、IMD16から離れている場合がある患者の体内の1つまたは複数の箇所に埋め込まれた、1つまたは複数の埋込み可能センサを備えてもよい。たとえば、小型の注入可能カプセルに収容されたセンサをIMD16に対して離れた箇所に位置決めし、場合によってはテレメトリ回路70を介してIMDと通信させることができる。
【0066】
[0069]メモリ62、および本明細書に記載の他のメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリなどの任意の揮発性媒体または不揮発性媒体を含むことができる。メモリ62は、処理回路60によって実行されると本明細書に記載の種々の機能をIMD16に実施させるコンピュータ可読命令を記憶することができる。
【0067】
[0070]
図2に示した例では、メモリ62は治療プログラム72、規則および制御ポリシー76、動作命令78、データプリプロセッサアプリケーション82、補間アプリケーション84、信頼度レベルアプリケーション86、ならびに治療法決定アプリケーション88を記憶する。例示の目的で、本開示に記載の例示的技法は、メモリ62に記憶されたアプリケーションを実行する処理回路60に関して説明されており、これらのアプリケーションが処理回路60に例示的技法を実施させる。しかし、処理回路60は、本開示に記載の例示的技法を実施するように配線接続されていてもよい。したがって、例示的技法は処理回路60のプログラマブル回路で実行されるアプリケーションに関して説明されているが、例示的技法は、処理回路60の固定機能回路、または処理回路60の固定機能回路とプログラマブル回路との組合せによって形成されてもよい。
【0068】
[0071]規則および制御ポリシー76は、規則の条件と、規則に関連付けられた制御ポリシーのセットとを示す情報を記憶する。治療プログラム72は、刺激電極の組合せ、電極の極性、電流または電圧の振幅などの電気刺激パラメータの各値という点で治療の特定のプログラムを定義し、また信号生成回路64が刺激パルスを生成および送達する場合、治療プログラムは刺激信号のパルス幅およびパルスレートの値を定義することができる。規則および制御ポリシー76は、治療プログラム72のうちのどれが、またはより一般にはどの治療パラメータ値がどの層に関連付けられており、またどの規則がどの層に関連付けられているかを定義することができる。したがって、規則および制御ポリシー76は、ある特定の規則の条件が満たされた(たとえば信頼度レベルがある規則の条件に適合した)とき、どの治療パラメータ値が選択に利用可能であるかを示す。
【0069】
[0072]いくつかの例では、メモリ62は、電極24、26のうちの少なくとも1つ、また場合によってはIMD16の外部ハウジング34の基準電極または別の基準電極を介して検知回路66によって生成された、脳信号データまたは他の検知データも記憶することができる。加えて、いくつかの例では、処理回路60は、メモリ62内の脳信号データにタイムスタンプまたは日付スタンプを付加することができる。動作命令78は処理回路60の制御下でIMD16の全般的な動作を案内し、また電極24、26を介して1つまたは複数の脳領域内の脳信号を監視し、電気刺激治療法を患者12に送達するための命令を含むことができる。信号生成回路64は、処理回路60の制御下で、選択された電極24、26の組合せによって患者12に送達すべき刺激信号を生成する。いくつかの例では、信号生成回路64は刺激信号を生成し、規則および制御ポリシー76における条件の満足に基づいて利用可能になる、記憶された1つまたは複数の治療プログラム72(またはより一般に治療パラメータ値)に基づいて、選択された電極24、26の組合せにより、脳28(
図1)の1つまたは複数の標的領域に刺激信号を送達する。刺激信号または他のタイプの治療法での脳28内部の標的組織部位は、治療システム10がそれを処置するように実装された患者の容態に依存し得る。刺激パルスについて述べたが、刺激信号は連続時間信号(たとえば正弦波)などの他の形態のものでもよい。
【0070】
[0073]処理回路60を含めた本開示に記載の処理回路は、1つまたは複数のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、または他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路、あるいはこれらの組合せを含むことができる。本明細書に記載の処理回路に帰属する機能は、ハードウェア装置によって提供され、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはこれらの任意の組合せとして具体化されてもよい。処理回路60は、1つまたは複数のプログラムによって指定された特定の刺激パラメータ値を印加するように、メモリ62による治療プログラム72に従って信号生成回路64を制御するように構成される。
【0071】
[0074]
図2に示した例では、リード20Aの電極24のセットは電極24A、24B、24C、および24Dを含み、リード20Bの電極26のセットは電極26A、26B、26C、および26Dを含む。処理回路60は、信号生成回路64によって生成された刺激信号を選択された電極24、26の組合せに印加するようにスイッチ回路68を制御することができる。具体的には、スイッチ回路68は、リード20の内部の選択された導体に刺激信号を結合することができ、選択された導体により、選択された電極24、26の間に刺激信号が送達される。スイッチ回路68は、選択された電極24、26に刺激エネルギーを選択的に結合し、また選択された電極24、26を用いて生体電気脳信号を選択的に検知するように構成された、スイッチアレイ、スイッチマトリクス、マルチプレクサ、または任意の他のタイプのスイッチング回路でもよい。したがって、信号生成回路64は、スイッチモジュール68およびリード20内部の導体を介して電極24、26に結合される。しかし、いくつかの例では、IMD16はスイッチ回路68を含まない。
【0072】
[0075]スイッチ回路68は、単なる一例として示されている。いくつかの例では、IMD16はスイッチ回路68を含まなくてもよい。むしろ、IMD16は電流を吸い込み、または流れ出させる電流源、および/または正の電圧または負の電圧を出力する電圧源など、複数の刺激源を含むことができる。こうした例では、電極24、26のそれぞれを別個の刺激源に結合させることができる。いくつかの例では、1つの刺激源を複数の電極24、26に結合させることが可能な場合、電極24、26のうちのいくつかは同じ刺激源に結合され、他の電極は別の刺激源に結合されてもよい。IMD16がスイッチ回路68を含まない例では、処理回路60および/または信号生成回路64により、刺激源が選択的に刺激を送達することが可能になる。
【0073】
[0076]信号生成回路64は、単一チャネルの刺激発生装置でもよく、複数チャネルの刺激発生装置でもよい。具体的には、信号生成回路64は、単一の電極の組合せを介して所与の時間に単一の刺激パルス、複数の刺激パルス、または複数の周波数成分を含む連続信号を送達するできる場合もあり、複数の電極の組合せを介して所与の時間に複数の刺激パルスを送達できる場合もある。しかし、いくつかの例では、信号生成回路64およびスイッチ回路68は、時間的に交互になる形で複数のチャネルを送達するように構成される場合がある。たとえば、スイッチ回路68は、刺激エネルギーの複数のプログラムまたはチャネルを患者12に送達するために、信号生成回路64の出力を、異なる時間に異なる電極の組合せの間で時間分割するように機能することができる。
【0074】
[0077]検知回路66は、処理回路60の制御下で、また検知源の一例として、電極24、26の選択されたサブセットを介して、あるいは1つまたは複数の電極24、26およびIMD16の導電性外部ハウジング34の少なくとも一部、IMD16の外部ハウジングの電極、または別の基準を用いて、患者12の生体電気信号を検知するように構成される。処理回路60は、選択された電極24、26に検知回路66を電気的に接続させるようにスイッチ回路68を制御することができる。このように、検知回路66は、電極24、26の様々な組合せ(および/または電極24、26以外の基準)を用いて生体電気脳信号を選択的に検知することができる。処理回路60は、検知された生体電気脳信号によってIMD16による治療法送達の有効性を監視し、治療法送達の有効性が変化したかどうかを判定し、それに応答して、(たとえば患者12または患者の世話人への)通知を生成することができる。
【0075】
[0078]
図2では、検知回路66は信号生成回路64および処理回路60と共通のハウジング34に組み込まれているが、他の例では、検知回路66はIMD16の外部ハウジング34とは別個の外部ハウジングに入っており、有線通信技法または無線通信技法によって処理回路60と通信する。本開示に記載の技法では、検知回路66によって検知される患者信号は、患者の容態を示す患者信号の一例である。たとえば、患者信号は検知されたLFP信号でもよい。
【0076】
[0079]加速度計80は、患者の運動に基づいて患者信号を生成することができる。一例として、加速度計80は、患者の振戦と同じ周波数をもつ患者信号を生成することができる。加速度計80は、患者の振戦の検出以外の目的に利用されてもよい。加えて、IMD16は、加速度計80ではなく、または加速度計80に加えて、患者の運動に基づいて患者信号を生成するジャイロスコープなど、別の装置タイプを含んでもよい。別の例として、センサ74がジャイロスコープでもよい。
【0077】
[0080]また、加速度計80(およびことによるとセンサ74)は、すべての例において必要であるとは限らない可能性がある。たとえば、技法が検知回路66からの信号など、検知された患者信号向けである例では、加速度計80およびセンサ74は必要でない可能性があるが、依然として含まれてもよい。加速度計80および/またはセンサ74が使用される例では、加速度計80は必ずしもIMD16の内部に存在する必要はなく、患者12内部の外科的に埋め込まれる箇所を含めて、どこに存在してもよい。場合によっては、加速度計は、注入可能カプセルと同様の小型の注入可能ハウジングに入れられて、患者の体内の選択された箇所に注入されてもよい。こうした加速度計80は、場合によってはテレメトリ回路70を介してIMDと通信することができる。
【0078】
[0081]センサ74は、テレメトリ回路70を介してセンサデータを処理回路60に伝えることができる。たとえば、センサ74は、テレメトリ回路70を介して処理回路60との間の通信セッションを確立することができる。通信セッションを確立することの一部分は、データパケットを互いに転送することである場合がある。通信セッションが確立されると、センサ74は処理回路60にセンサデータを提供することができる。
【0079】
[0082]図示のように、処理回路60は検知回路66からセンサデータ(たとえば生体電気信号)を受け取り、検知回路66は、電極24、26のうちの1つまたは複数を介して生体電気信号を検知するように構成されている。処理回路60は、加速度計80およびセンサ74からもセンサデータを受け取る。上述のように、本開示に記載の技法では、検知された生体電気信号、ならびに加速度計80およびセンサ74から受け取られる信号は、センサデータの例である。患者によって、または挙動に応答して生成される他の信号など、センサデータの追加の例が存在し得る。一般に、処理回路60が受け取るセンサデータにより、患者の容態(たとえば患者の振戦)が示され得る。
【0080】
[0083]3つの検知源が図示されているが(たとえば検知回路66、加速度計80、およびセンサ74がハードウェア検知源の例である)、本発明の技法はそのように限定されない。単一の検知源を含めたより少ない検知源が存在してもよく、
図2に示されているよりも多くの検知源が存在してもよい。
【0081】
[0084]検知回路66、加速度計80、および/またはセンサ74のそれぞれ(たとえば検知源のそれぞれ)は、(たとえばメモリ62との直接接続を介し、処理回路60の制御下で、またはテレメトリ回路70を介して)それぞれのセンサデータをメモリ62に記憶させることができる。本開示に記載の例示的技法では、処理回路60は、データプリプロセッサアプリケーション82を実行することができる。処理回路60は、アプリケーション82の実行に応答して、1つまたは複数の検知源から、ことによるとメモリ62から、センサデータの標本値を受け取ることができる。このように、処理回路60は、1つまたは複数の検知源からセンサデータを受け取ることができる。
【0082】
[0085]処理回路60は、アプリケーション82を介して、各検知源からのセンサデータからの各標本値が有効であるか、それとも無効であるかを判定することができる。一例として、各検知源からの標本値に関しては、メモリ62または処理回路60のメモリに記憶された所定の範囲が存在する場合があり、検知源からの値がこの範囲に収まっている場合、値は有効である。検知源からの値がこの範囲を外れている場合、値は無効である。無効なデータとは、損失した標本値または脱落した標本値のことも指す(たとえばこの場合、ある標本値が期待されるが、何も受け取られていない)。処理回路60は、各検知源からの標本値のそれぞれを各所定の範囲と比較することができる。処理回路60が、値が帯域外である(たとえば有効範囲を外れている)と判定した場合、処理回路60は、アプリケーション82を介して、センサデータ標本値の流れにおいて標本値が無効になっている箇所を特定することができる。任意選択で、処理回路60は有効なセンサデータを特定してもよく、両方の組合せを行ってもよい。
【0083】
[0086]処理回路60は、無効な標本値を特定する情報、もしくは有効な標本値を特定する情報、またはこの両方の情報を記憶することができる。このように、処理回路60は受け取ったセンサデータにおけるエラー箇所を決定することができ、この場合、エラー箇所は無効なデータを含む。処理回路60は、エラー箇所、またはより一般には無効な標本値の数の情報を、メモリ62および/またはローカルメモリに記憶させることができる。
【0084】
[0087]すべての例において必要であるとは限らないが、処理回路60は補間アプリケーション84を実行することができる。処理回路60は、アプリケーション84を介して、無効な値に対する代替値を生成することができる。補間のための種々のアルゴリズムが存在し得る。一例として、処理回路60は、アプリケーション84を介して、センサデータの非エラー箇所のセンサデータ値(たとえば標本値)に基づいて補間し、補間データ値を生成することができる。たとえば、処理回路60は、センサデータの非エラー箇所のセンサデータ値に基づいて、エラー箇所のセンサデータ値を補間することができる。補間は線形補間(たとえば、エラー箇所に対する直前の非エラー箇所のセンサデータ値と、エラー箇所に対する直後の非エラー箇所のセンサデータ値との平均)でもよいが、他の補間技法も考えられ得る。処理回路60は、アプリケーション84を介して、どれが代替値であるかを特定することができる。このように、処理回路60は、アプリケーション82およびアプリケーション84を介して、(たとえば有効な)観察されたデータ点、無効なデータ点、または該当する場合は補間データ点/外挿データ点として、標本値にフラグを付けることができる。
【0085】
[0088]処理回路60は、信頼度レベルアプリケーション86を実行することができる。処理回路60が補間アプリケーション84を実行する例では、処理回路60はアプリケーション84を実行する前にアプリケーション86を実行してもよく、アプリケーション84を実行すると同時にアプリケーション86を実行してもよく、アプリケーション84を実行した後でアプリケーション86を実行してもよい。処理回路60は、アプリケーション86を介して、複数の各検知源から受け取ったセンサデータについての信頼度レベルを決定することができ、この場合、各検知源からのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である。
【0086】
[0089]一例として、処理回路60は、アプリケーション82を介して、センサデータ内の各エラー箇所をマーキングすることができる(たとえば無効な標本値を特定する情報、もしくは有効な標本値を特定する情報、またはこの両方の情報を記憶する)。こうした例では、処理回路60は、アプリケーション86を介して、受け取ったセンサデータにおけるエラー箇所の数、または補間標本値の数のうちの少なくとも一方を決定することができ、この場合、エラー箇所は無効なデータを含む。処理回路60は、アプリケーション86を介して、決定されたエラー箇所の数、または補間標本値の数のうちの少なくとも一方に基づいて、1つまたは複数の信頼度レベルを決定することができる。別の例として、処理回路60は、アプリケーション82を介して、受け取ったセンサデータにおけるデータパケット損失の数を決定することができる。データパケットはセンサの測定標本値を含んでもよいが、必ずしもセンサデータの標本値である必要はない。たとえば、データパケットはヘッダ情報などでもよく、センサデータではないものの、データパケットの損失は、センサとIMD16との間の相互接続が不十分な可能性があるために受け取ったセンサデータが正確でないことを示すことができる。処理回路60は、アプリケーション86を介し、受け取ったセンサデータにおけるデータパケット損失の数に基づいて、1つまたは複数の信頼度レベルを決定することができる。
【0087】
[0090]たとえば、処理回路60は、特定の検知源に関して、データのうちの1%が無効であると決定することができ、この検知源からのセンサデータの信頼度レベルが99%であると決定することができ、特定の検知源に関して、データのうちの2%が無効であると決定することができ、この検知源からのセンサデータの信頼度レベルが98%であると決定することができる、といったようになる。別の例として、処理回路60は、特定の検知源に関して、データのうちの特定のパーセンテージ(たとえば80%)が有効である場合、信頼度レベルが(信頼性を示す)デジタル1であると判定することができ、特定の検知源に関して、データのうちのこの特定のパーセンテージ(たとえば80%)未満が有効である場合、信頼度レベルが(信頼性がないことを示す)デジタル0であると判定することができる。処理回路60は、同様にデータパケットの損失を使用して信頼度レベルを決定することもできる。
【0088】
[0091]処理回路60は、治療法決定アプリケーション88を実行して、1つまたは複数の信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。たとえば処理回路60は、アプリケーション86の実行から生成された信頼度レベルをローカルメモリまたはメモリ62に記憶させることができる。次いで、処理回路60は、信頼度レベルに基づいて治療パラメータ値を決定することができる(たとえば決定された治療パラメータ値に対応する治療プログラムを治療プログラム72から決定することができる)。
【0089】
[0092]治療パラメータ値を決定する様式の1つは、規則および制御ポリシー76に基づくものである。処理回路60は、アプリケーション88を介し、信頼度レベルに基づいて、規則および制御ポリシー76内の利用可能な複数の制御ポリシーを判定することができる。上述のように、規則および制御ポリシー76は複数の治療パラメータ値を定義することができる。いくつかの例では、規則および制御ポリシー76によって定義される複数の治療パラメータ値は治療パラメータ値の範囲を含む場合があり、規則および制御ポリシー76は、最大治療パラメータ値および最小治療パラメータ値、またことによると治療パラメータ値を調節し得る速度を定義することができる。一例では、処理回路60は、アプリケーション88を介し、利用可能な複数の制御ポリシーに基づいて、現在送達されている治療法の治療パラメータ値を増減(たとえば増加または減少)させる方式を決定することができる。
【0090】
[0093]たとえば、利用可能な複数の制御ポリシーに基づいて、処理回路60は、振幅が特定の振幅の最大値に到達してもよいと判定することができる。また、処理回路60は受け取ったセンサデータを利用して、治療法の振幅がどれほどであるべきかを決定することができる。一例として、受け取ったセンサデータにより、治療法が疾患に十分に対処していないことが示された(たとえばセンサデータの振幅が予想よりも大きい、またはセンサデータの振幅が予想よりも小さい)場合、処理回路60は、アプリケーション88を介して、受け取ったセンサデータにより治療法が疾患に十分に対処していることが示されるのは治療法のどれほどの振幅、パルス幅、周波数、および/または他のパラメータ値になるはずかを決定することができる。
【0091】
[0094]処理回路60は、次いで、治療法の治療パラメータ値がどれほどになるべきかの決定、ならびに治療パラメータ値の最大値または最小値の決定に基づいて、治療法の振幅を増減させることができる。この例では、処理回路60が振幅を増加させるべきと判定するのに使用するセンサデータの信頼度レベルが比較的低い場合、利用可能な制御ポリシーは、(たとえばユーザまたは臨床医によって選択される)許容可能最大振幅が、最大振幅よりも小さくなるように制限された制御ポリシーになり得る。この場合、(たとえば十分に正確でない可能性があるセンサデータに基づいて)治療法の振幅がこの許容可能最大振幅よりも大きくなるべきであると処理回路60によって判定された場合でも、利用可能な制御ポリシーにより、許容可能最大振幅を超えないように実際の振幅を制限することができる。
【0092】
[0095]いくつかの例では、規則および制御ポリシー76のどの制御ポリシーが利用可能であるかを判定する際、処理回路60は、アプリケーション88を介して、信頼度レベルのうちの1つまたは複数を様々に重み付けすることができる。たとえば、第1の検知源からのセンサデータが、第2の検知源からのセンサデータと比較して治療法のよりよい指標になっている場合がある。この例において、第1の検知源からのセンサデータの信頼度レベルが第2の検知源からのセンサデータの信頼度レベルよりも低い場合、IMD16は、第2の検知源からのセンサデータの信頼度レベルが第1の検知源からのセンサデータの信頼度レベルよりも低い場合と比較して、利用可能な制御ポリシーをさらに制限することができる。したがって、処理回路60は、利用可能な制御ポリシーを判定する際に、アプリケーション88を介して、第1のセンサからのセンサデータの信頼度レベルを第2のセンサからのセンサデータの信頼度レベルよりも重く重み付けすることができる。ここで、より重く重み付けするとは、どの制御ポリシーが利用可能かを決定する際に、第1のセンサからのセンサデータの信頼度レベルが、第2のセンサからのセンサデータの信頼度レベルと比較してより大きい影響をもつことを意味する。
【0093】
[0096]処理回路60は、治療法決定アプリケーション88を介し、信頼度レベルを使用して、規則および制御ポリシー76におけるどの制御ポリシーが利用可能であるかを決定することができる。本開示では、どの制御ポリシーが利用可能かを決定するために使用される信頼度レベルは、重み付けされていない信頼度レベルが使用される例と、重み付けされた信頼度レベルが使用される例との両方を包含するように使用される。
【0094】
[0097]規則および制御ポリシー76内のどの制御ポリシーが利用可能であるかを決定するために、処理回路60は、アプリケーション88を介して、1つまたは複数の信頼度レベルが複数の規則のうちのある規則の1つまたは複数の条件に適合するまで(たとえばある規則の1つまたは複数の条件が満たされるまで)、1つまたは複数の信頼度レベルが規則および制御ポリシー76内の複数の規則の1つまたは複数の条件に適合しているかどうかを繰り返し判定することができる。処理回路60は、アプリケーション88を介して、ある規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットを決定することができる。たとえば、処理回路60は、アプリケーション88を介して、どの制御ポリシーがその規則に関連付けられており、治療パラメータ値のどのセットが利用可能な制御ポリシーを定義しているかを判定することができる。この例では、処理回路60は、アプリケーション88を介し、決定された利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて、1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。
【0095】
[0098]一例として、処理回路60は、治療法決定アプリケーション88を介して、信頼度レベルが、利用可能な治療パラメータ値のセットに関連付けられた第1の規則の条件に適合しているかどうかを判定することができる。処理回路60は、治療法決定アプリケーション88を介し、第1の規則における利用可能な治療パラメータのセットに基づいて、1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。
【0096】
[0099]しかし、処理回路60が、治療法決定アプリケーション88を介して、信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないと判定する場合がある。この場合、1つまたは複数の信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないと判定された後、処理回路60が、治療法決定アプリケーション88を介して、信頼度レベルが第2の規則の条件に適合していると判定する場合がある。この例では、処理回路は、治療法決定アプリケーション88を介し、第2の規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて、治療パラメータ値を決定することができる。
【0097】
[0100]場合によっては、処理回路60が、治療法決定アプリケーション88を介して、信頼度レベルがどの規則の条件にも適合していないと判定する場合がある。こうした例では、信頼度レベルが各規則の条件に適合していないと判定したのに応答して、処理回路60は、治療法決定アプリケーション88を介して、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされていると判定することができる。一般に、デフォルト治療パラメータ値のセットに関連付けられた条件は、すべての他の規則の条件が満たされない場合、それらの条件が常に満たされるように選択されるべきである。処理回路60は、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされていることに応答して、治療法決定アプリケーション88を介し、デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて治療パラメータ値を決定することができる。
【0098】
[0101]このように、処理回路60は、送達すべき治療法に関する治療パラメータ値を決定することができる。いくつかの例では、処理回路60は、決定した治療パラメータ値に最も近い治療パラメータ値を含む治療プログラムを治療プログラム72から特定する場合もあり、決定した治療パラメータ値を含む新しい治療プログラムを生成する場合もある。次いで、処理回路60は、1つまたは複数の決定した治療パラメータ値に基づいて、信号生成回路64に治療法を送達させることができる。
【0099】
[0102]したがって、処理回路60は、現行の時間範囲内の無効な標本値、または補間標本値/外挿標本値が、治療法の決定にそのセンサデータが有効であるとみなすのに十分に少ない(たとえばエラーの数が十分に少ない)かどうか、それとも利用するにはあまりに不確かである(エラーがあまりに多いので十分に信頼性が高くない)かを示す、(たとえば規則の各条件に対して信頼度レベルを評価する)データ/信号特有の検証基準を利用することができる。たとえば、ある規則の評価に関連するセンサデータが、使用するのにあまりに不確かであると考えられるとき、その規則の条件は一切満たされ得ない(たとえばその規則を決して真であるとみなすことができない)。たとえばセンサデータの信頼度レベルが閾値を下回る場合、センサデータはあまりに不確かであると考えることができ、したがって、治療パラメータ値の決定にそのセンサデータを使用するべきではないということが示される。
【0100】
[0103]テレメトリ回路70は、IMD16と外部装置14、センサ74、または別のコンピューティング装置との間の無線通信を支援するように構成される。IMD16の処理回路60は、テレメトリ回路70を介して、振幅や電極の組合せなど、種々の刺激パラメータに関する値をプログラムの更新として装置14から受け取ることができる。治療プログラムの更新は、メモリ62の治療プログラム72に記憶させることができる。IMD16のテレメトリ回路70、ならびに装置14などの本明細書に記載の他の装置およびシステムのテレメトリ回路は、RF通信技法によって通信を行うことができる。加えて、テレメトリ回路70は、IMD16と装置14との近接誘導相互作用(proximal inductive interaction)により、外部装置14と通信することができる。したがって、テレメトリ回路70は、連続的に、周期的間隔で、またはIMD16もしくは装置14からの要求に応じて、装置14に情報を送ることができる。たとえば処理回路60は、テレメトリ回路70を介して脳の状態の情報を装置14に送信することができる。
【0101】
[0104]図示されていないが、IMD16は、IMD16の種々の構成要素に動作電力を送達する電源を含む。電源は、小型の充電可能バッテリまたは充電不可能バッテリと、動作電力を生成する電力生成回路とを含むことができる。充電は、外部の充電器とIMD16内の誘導充電コイルとの間の近接誘導相互作用によって実現することができる。いくつかの例では、必要電力は、IMD16が患者の運動を利用し、運動エネルギー・スカベンジング装置を実装して充電可能バッテリを少しずつ充電することを可能にするのに十分に小さい場合がある。他の例では、限られた期間において従来のバッテリが使用される場合がある。
【0102】
[0105]
図3は、治療プログラムおよび関連する規則のヒエラルキーを示す概念図である。たとえば、
図3には、メモリ62が記憶することができる規則および制御ポリシー76の例示的データ構造が示してある。各規則について1つまたは複数の関連付けられた条件が存在する場合があり、条件は、真であるときにどの治療パラメータ値が利用可能であるかを示す、ブーリアン型の組合せの術語と考えることができる。
【0103】
[0106]処理回路60は、信頼度レベルが第1の規則の条件に適合しているかどうかを判定することができる。第1の規則は、検知源からのセンサデータの信頼度レベルが80%を上回るという条件を含む場合がある。すべてのセンサ源からのすべての信頼度レベルが80%を上回るというブーリアン条件が真である場合、処理回路60は、A1~D4の任意の制御ポリシーから選択することができる。
【0104】
[0107]処理回路60が、信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないと判定した場合、処理回路60は、信頼度規則が第2の規則の条件に適合しているかどうかを判定する。
図3では、第2の規則は、第1の検知源および第2の検知源からのセンサデータの信頼度レベルが80%を上回り、第3の検知源からの信頼度レベルが80%を下回るという条件を含むことができる。第2の規則の条件のブーリアン型のANDの組合せが真である(すなわち、第1の検知源および第2の検知源からのセンサデータの信頼度レベルが80%を上回り、かつ第3の検知源からの信頼度レベルが80%を下回る)場合、処理回路60は、A1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、およびC2の制御ポリシーから選択することができる。この例では、第2の規則における制御ポリシーは、第1の規則の制御ポリシーのサブセットである。一般に、制御ポリシーのヒエラルキー層におけるより低層の制御ポリシーに関連付けられた第2の規則の治療パラメータ値は、ヒエラルキー層におけるより高層の制御ポリシーに関連付けられた第1の規則の治療パラメータ値のサブセットになり得る。
【0105】
[0108]
図3に示した例では、すべての検知源に関する信頼度レベルが20%を下回る場合、制御ポリシーA1、B1、およびA2のみが利用可能になり得る。この例では、A1、B1、およびA2がデフォルトパラメータに相当する。処理回路60は、信頼度レベルが最小の信頼度閾値レベル(たとえばこの例では20%)を下回ったことに基づいて、A1、B1、およびA2のみが利用可能な制御ポリシーであると判定することができる。
【0106】
[0109]
図4は、本開示の1つまたは複数の態様による例示的技法を示す流れ図である。処理回路60は、1つまたは複数のハードウェア検知源によって生成されたセンサデータを受け取ることができる(90)。一例として、検知源のそれぞれは、各検知源によって生成されたセンサデータをメモリ62、または何らかの他の記憶箇所に記憶させることができる。処理回路60は、データプリプロセッサアプリケーション82を実行して、記憶されたセンサデータを取得することができる。
【0107】
[0110]加えて、処理回路60は、アプリケーション82を介して、センサデータのどの標本値が無効であり、かつ/または有効であるかを特定することができる。いくつかの例では、処理回路60は補間アプリケーション84を実行して、無効なデータを埋める補間値を生成することができる。処理回路60は、アプリケーション84を介して、補間/外挿された標本値を特定することができる。
【0108】
[0111]処理回路60は、複数の各検知源によって生成されたセンサデータについての1つまたは複数の信頼度レベルを決定することができ、この場合、各検知源からのセンサデータの信頼度レベルのそれぞれは、各検知源から受け取ったセンサデータの正確さの尺度である(92)。一例として、処理回路60は、信頼度レベルアプリケーション86を実行して無効な値の数または補間値/外挿値の数を決定し、また無効な値の数または補間値/外挿値の数に基づいて信頼度レベルを決定することができる。別の例として、処理回路60は、信頼度レベルアプリケーション86を実行してデータパケット損失の数を決定し、またデータパケット損失の数に基づいて信頼度レベルを決定することができる。
【0109】
[0112]治療法決定アプリケーション88の実行では、処理回路60は、決定された信頼度レベルに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる(94)。処理回路60は、アプリケーション88を介し、信頼度レベルに加えて標本値(たとえば補間値および実際の値)を利用して、治療パラメータ値を決定することができる。一例として、アプリケーション88は、信頼度レベルに基づいて、利用可能な制御ポリシーを処理回路60に判定させ、利用可能な制御ポリシーおよびセンサデータに基づいて、治療パラメータ値を増減させる(たとえば増加または減少させる)方式を処理回路60に決定させることができる。
【0110】
[0113]一般に、アプリケーション88は、信頼度レベルがある規則の条件に適合するまで、信頼度レベルが規則の条件に適合しているかどうかを処理回路60に繰り返し判定させることができる。処理回路60は、規則に関連付けられた利用可能な治療パラメータ値のセットを決定し、決定された利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて、1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。
【0111】
[0114]たとえば、処理回路60が、信頼度レベルがある規則の条件に適合していると判定する場合があり、この場合、この規則は利用可能な治療パラメータ値のセットに関連付けられている。処理回路60は、利用可能な治療パラメータ値のセットに基づいて、1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。
【0112】
[0115]しかし場合によっては、処理回路60が、信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないと判定する場合があり、この場合、第1の規則は利用可能な治療パラメータ値の第1のセットに関連付けられており、また信頼度レベルが第1の規則の条件に適合していないと判定した後、処理回路60が、信頼度レベルが第2の規則の条件に適合していると判定する場合があり、この場合、第2の規則は利用可能な治療パラメータ値の第2のセットに関連付けられている。この例では、処理回路60は、利用可能な治療パラメータ値の第2のセットに基づいて、1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。利用可能な治療パラメータ値の第2のセットは、利用可能な治療パラメータ値の第1のセットのサブセットになり得る。
【0113】
[0116]場合によっては、処理回路60が、信頼度レベルが1つまたは複数の規則の条件に適合していないと判定する場合があり、信頼度レベルが1つまたは複数の規則の条件に適合していないと判定されたのに応答して、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされていると判定する場合がある。こうした場合、処理回路60は、デフォルト治療パラメータ値のセットを使用することに関連付けられた条件が満たされたことに応答して、デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。処理回路60は、信頼度レベルが最小の信頼度閾値レベルを下回ったことに応答して、デフォルト治療パラメータ値のセットに基づいて1つまたは複数の治療パラメータ値を決定することができる。
【0114】
[0117]処理回路60は、実際の信頼度レベルを使用して1つまたは複数の治療パラメータ値を決定する場合もあるが、例示的技法はそのように限定されない。いくつかの例では、処理回路60により、信頼度レベルのうちの1つまたは複数が重み付けされる(たとえば各信頼度レベルに異なる重み付けがなされる)。次いで、処理回路60は、これらの重み付けされた信頼度レベルに基づいて治療パラメータ値を決定することができる。
【0115】
[0118]一例として、治療パラメータ値を決定する際、第1のセンサからのセンサデータが第2のセンサからのセンサデータと比較してより有用である場合がある。こうした例では、第1のセンサからのセンサデータが正確である(たとえば信頼度レベルが高い)場合、第2のセンサからのセンサデータがあまり正確でない(たとえば信頼度レベルが低い)場合でも、処理回路60は治療パラメータ値を調節する必要がない可能性がある。しかし、第1のセンサからのセンサデータがあまり正確でなく、第2のセンサからのセンサデータが正確である場合、処理回路60は、治療パラメータ値を実質的に調節する場合がある。したがって、治療パラメータに対する異なるセンサからのセンサデータの影響は、すべて同じでない場合がある。
【0116】
[0119]センサデータの重要性が異なることを考慮するために、処理回路60は信頼度レベルを重み付けすることができる。たとえば、処理回路60は、第1のセンサの信頼度レベルを第2のセンサの信頼度レベルよりも重く重み付けすることができる。次いで、処理回路60は、重み付けされた信頼度レベルを平均して、処理回路60が治療パラメータ値を決定するために使用する、重み付けされた平均信頼度レベルを決定することができる。重み付けにより、治療パラメータの決定に対してより大きい影響をもつセンサデータの信頼度レベルが、治療パラメータ値の決定を主導することができる。本開示では、信頼度レベルに基づく治療パラメータ値の決定には、重み付けが使用される例と、重み付けが使用されない例との両方が含まれる。
【0117】
[0120]処理回路60は、決定された治療パラメータ値に基づいて治療法を送達させることができる(96)。たとえば、処理回路60は、決定された治療パラメータ値に基づいて、治療法を送達するように信号生成回路64を制御することができる。一例として、処理回路60は、利用可能な制御ポリシーから決定された方式で、1つまたは複数の治療パラメータ値を信号生成回路64によって増減させることができる。
【0118】
[0121]この方式では、例示的技法は、センサデータの損失または脱落がある場合でも、適切な治療法が送達されることを確実にする様式を起用することができる。たとえば、IMD16は正常に動作し、1つまたは複数のセンサからの測定値に基づいて治療法を送達している場合があるが、患者の運動、またはセンサの調節もしくは破損により、1つまたは複数のセンサからのセンサデータの脱落が生じることがある。例示的技法は、受け取ったセンサデータの信頼度を決定するアルゴリズムを実装することにより、この潜在的課題に対応することができる。受け取ったセンサデータの信頼度が高い場合、IMD16は通常の動作を継続することができる。しかし、受け取ったセンサデータの信頼度が低い場合、IMD16は治療パラメータ値を再決定して、効果的な治療法を提供し、意図していない結果を最小限に抑えることができる。
【0119】
[0122]
図5は、例示的外部装置14の構成要素を示す機能ブロック図である。外部装置14は、ユーザがIMD16の治療パラメータ値をプログラムおよび/または制御することを可能にするように構成された患者プログラマまたは臨床医プログラマとして機能することができる。外部装置14は、処理回路98、メモリ100、テレメトリ回路102、ユーザインターフェース104、および電源106を含む。処理回路98はユーザインターフェース104およびテレメトリ回路102を制御し、メモリ100に情報および命令を記憶し、またメモリ100から情報および命令を取得する。装置14は、臨床医プログラマまたは患者プログラマとして使用されるように構成することができる。処理回路98は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路を含めた1つまたは複数のプロセッサの任意の組合せを備えることができる。したがって処理回路98は、ハードウェアにおいてであれ、ソフトウェアにおいてであれ、ファームウェアにおいてであれ、あるいはこれらの任意の組合せにおいてであれ、任意の適した構造を含んで、本明細書で処理回路98に帰属される機能を実施することができる。
【0120】
[0123]臨床医または患者12などのユーザは、ユーザインターフェース104を介して装置14と相互作用することができる。ユーザインターフェース104はLCDディスプレイもしくはLEDディスプレイ、または他のタイプの画面などのディスプレイ(図示せず)を含み、処理回路98はそれを用いて治療法に関する情報を提示することができる。加えて、ユーザインターフェース104は、ユーザから入力を受け取る入力機構を含むことができる。入力機構には、たとえばボタン、キーパッド(たとえば英数字キーパッド)、ポイント用周辺装置、またはユーザが装置14の処理回路98によって提示されるユーザインターフェースを見て回り、入力を行うことを可能にする別の入力機構が含まれ得る。
【0121】
[0124]装置14がボタンおよびキーパッドを含む場合、ボタンがある一定の機能を実施する専用のもの(すなわち電源ボタン)である場合もあり、ボタンおよびキーパッドが、ユーザが現在閲覧しているユーザインターフェースのセクションに応じて機能を変化させるソフトキーである場合もある。加えて、または代わりに、プログラマ14の画面(図示せず)は、ディスプレイに示されたユーザインターフェースにユーザが直接入力することを可能にするタッチスクリーンでもよい。ユーザは、スタイラスまたは自身の指を使用して、ディスプレイへの入力を行うことができる。他の例では、ユーザインターフェース104は、可聴通知、可聴命令もしくは他の可聴音を患者12に提供し、患者12の運動機能が制限されている場合に有用な場合がある音声コマンドを患者12から受け取り、またはその両方を行うためのオーディオ回路も含む。患者12、臨床医、または別のユーザは、装置14と相互作用して治療プログラムを手動で選択し、新しい治療プログラムを生成し、個々の調節または全体的な調節によって治療プログラムを修正し、新しいプログラムをIMD16に送信することもできる。
【0122】
[0125]いくつかの例では、IMD16による治療法送達制御の少なくとも一部は、装置14の処理回路98によって実施することができる。たとえば、IMD16の処理回路60に関して上に述べた例示的技法は、他の例では少なくとも部分的に処理回路98によって実施されてもよく、あるいは処理回路60と処理回路98の組合せがこの例示的技法を実施することもできる。一例として、処理回路98は、テレメトリ回路70がテレメトリ回路102へと出力したセンサデータを受け取ることができる。処理回路98は信頼度レベルを決定し、信頼度レベルに基づいて治療パラメータ値を決定することができる。次いで、処理回路98は、決定された治療パラメータ値に基づいて、IMD16に治療法を送達させることができる。
【0123】
[0126]メモリ100は、ユーザインターフェース104およびテレメトリ回路102を動作させ、電源106を管理するための命令を含むことができる。いくつかの例では、メモリ100は、治療中にIMD16から受け取った任意の治療データ、バイオマーカ情報、検知した生体電気脳信号なども記憶することができる。場合によっては、臨床医は、患者12の運動障害(または患者の他の容態)のための将来的な治療を計画するために、この治療データを使用して患者の容態の経過を判断することができる。メモリ100は、RAM、ROM、EEPROM、またはフラッシュメモリなどの任意の揮発性メモリまたは不揮発性メモリを含むことができる。メモリ100は、メモリを更新し、またはメモリ容量を増加させるために使用することができるリムーバブルメモリ部分も含む場合がある。リムーバブルメモリにより、装置14が異なる患者によって使用される前に、慎重な扱いを要する患者データを消去することも可能になり得る。
【0124】
[0127]装置14の無線テレメトリは、外部装置14とIMD16とのRF通信または近接誘導相互作用によって実現することができる。この無線通信は、テレメトリ回路102を使用することによって可能になる。したがって、テレメトリ回路102は、IMD16の中に収容されたテレメトリ回路と同様のものでもよい。他の例では、装置14は赤外線通信、または有線接続を介した直接的な通信が可能な場合がある。このように、他の外部装置は、セキュアな無線接続を確立する必要なしに装置14と通信することが可能になり得る。
【0125】
[0128]電源106は、装置14の構成要素に動作電力を送達するように構成される。電源106は、バッテリと、動作電力を生成するための電力生成回路とを含むことができる。いくつかの例では、バッテリは、長時間の動作を可能にするために充電可能であってもよい。充電は、交流(AC)コンセントに接続されたクレードルまたはプラグに電源106を電気的に結合させることによって実現することができる。加えて、充電は、外部の充電器と装置14内部の誘導充電コイルとの間の近接誘導相互作用によって実現されてもよい。他の例では、従来のバッテリ(たとえばニッケルカドミウムバッテリ、またはリチウムイオンバッテリ)が使用されてもよい。加えて、装置14は交流コンセントに直接的に結合されて動作することもできる。
【0126】
[0129]上述の技法は、IMD16の処理回路60によって実施されるものとして主に説明されているが、他の例では、1つまたは複数の他の回路が、単独で、またはプロセッサ60とともに、本明細書に記載の技法の任意の部分を実施してもよい。したがって、「処理回路」という言及は、「1つまたは複数の処理回路」を指している場合がある。同様に、「1つまたは複数の処理回路」は、様々な例において単一の処理回路を指す場合もあり、複数の処理回路を指す場合もある。
【0127】
[0130]IMD16、外部装置14、または種々の部分構成要素に帰属される技法を含めた本開示に記載の技法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せで少なくとも部分的に実装することができる。たとえば、技法の種々の態様は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGAまたは任意の他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路を含めた1つまたは複数の処理回路、および臨床医プログラマもしくは患者プログラマなどのプログラマ、医療装置、または他の装置において具体化される、こうした構成要素の任意の組合せの中で実装することができる。
【0128】
[0131]1つまたは複数の例では、本開示に記載の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せで実装することができる。ソフトウェアに実装される場合、各機能は1つまたは複数の命令またはコードとしてコンピュータ可読媒体に記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行され得る。コンピュータ可読媒体には、一時的でない有形の媒体を形成するコンピュータ可読記憶媒体が含まれ得る。命令は、1つまたは複数のDSP、ASIC、FPGA、汎用マイクロプロセッサ、または他の同等の集積論理回路もしくはディスクリート論理回路などの1つまたは複数のプロセッサによって実行することができる。したがって、本明細書において使用される用語「プロセッサ」または「処理回路」は、前述の構造体のいずれか、または本明細書に記載の技法の実装に適した任意の他の構造体の1つまたは複数を指すことができる。
【0129】
[0132]本開示に記載の技法を利用して患者に治療法を送達し、それによって慢性疼痛、パーキンソン病、他のタイプの運動障害、発作性疾患(たとえばてんかん)、尿失禁もしくは便失禁、性機能障害、肥満、気分障害(たとえばうつ病)、胃不全麻痺、または糖尿病などの種々の症状または患者の容態を治療することができることが理解されよう。さらに、患者の容態を示す患者信号は加速度計またはジャイロスコープによって検知される患者の運動に基づく場合もあるが、別法として、または追加的に、患者信号は他の生理的信号である場合もある。
【0130】
[0133]加えて、いくつかの態様では、本明細書に記載の機能性は、専用のハードウェア、および/またはハードウェアで実行される専用のソフトウェア内に提供される場合がある。様々な特徴の描写は、様々な機能的態様を強調することを意図したものであり、こうした特徴が個別のハードウェア構成要素またはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを必ずしも示唆しない。むしろ、これらの機能性は個別のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実施されてもよく、共通の、または個別のハードウェア構成要素またはソフトウェア構成要素に組み込まれてもよい。また、技法は1つまたは複数の回路または論理要素に全面的に実装されてもよい。本開示の技法は、IMD、外部装置、IMDと外部装置の組合せ、IMDおよび/または外部装置に存在する集積回路(IC)もしくは一連のIC、および/またはディスクリートな電気回路を含めた多種多様な装置または機器に実装することができる。
【0131】
[0134]種々の例が説明されてきた。上記その他の例は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれる。