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特許7162654駆動装置、電動車両および駆動装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】駆動装置、電動車両および駆動装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20221021BHJP
   H02P 6/08 20160101ALI20221021BHJP
【FI】
H02P27/08
H02P6/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020510294
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012749
(87)【国際公開番号】W WO2019186761
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】目黒 一由希
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雄大
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 吏
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-129379(JP,A)
【文献】特開2004-282954(JP,A)
【文献】特開2017-184426(JP,A)
【文献】特開2011-142721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源端子に接続され、他端がモータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、
一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、
一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、
一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチと、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置され、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出する少なくとも1相のアングルセンサと、
前記第1~第6スイッチを制御することで前記モータの駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替えの直後の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替えの直後の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定し、
前記制御部は、前記アングルセンサによる検出角度に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、前記ロータの検出速度が予め設定された第1基準速度よりも遅い第1の場合には、前記120°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、前記検出速度が前記第1基準速度以上である第2の場合には、前記180°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記制御部は、前記切り替えの直後の通電期間に続く通電期間を、前記切り替えの直後の検出期間に続く検出期間に対して前記配置角度に応じた期間に前記検出速度と前記モータの回転を制御するためのユーザ操作量とに基づいて設定された設定角度に応じた期間を加えた期間ずらして設定することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記アングルセンサは、前記同相のコイルに対して遅角側にずらして配置され、
前記制御部は、前記切り替えの直後の通電期間を前記切り替えの直後の検出期間に対して進角側にずらして設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記120°通電と前記180°通電とを切り替えるときに、前記PWM制御のデューティ比を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1の場合は、前記検出速度と前記モータの回転を制御するためのユーザ操作量とに基づいて設定された設定デューティ比が、予め設定された第1基準デューティ比よりも低い場合であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第2の場合は、前記検出速度が予め設定された第2基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第1基準デューティ比よりも低い予め設定された第2基準デューティ比以上であって予め設定された第3基準デューティ比よりも低く、または、前記検出速度が前記第2基準速度以上であって予め設定された第3基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第3基準デューティ比よりも低い場合であることを特徴とする請求項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の場合には、
前記設定デューティ比の第1相ハイ側PWM信号によって前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第1スイッチと同時に前記第2スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第1相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第1相ロー側PWM信号によって前記第1スイッチに対して相補的に前記第2スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第2相ハイ側PWM信号によって前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第3スイッチと同時に前記第4スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第2相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第2相ロー側PWM信号によって前記第3スイッチに対して相補的に前記第4スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第3相ハイ側PWM信号によって前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第5スイッチと同時に前記第6スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第3相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第3相ロー側PWM信号によって前記第5スイッチに対して相補的に前記第6スイッチのオン/オフを切り替える制御とを行うことを特徴とする請求項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の場合には、
前記第1~第4通電期間に前記第2スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第2および第3通電期間に前記第1スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第3~第6通電期間に前記第4スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第4および第5通電期間に前記第3スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第5および第6通電期間ならびに前記第6通電期間に続く次周期の第1および第2通電期間に前記第6スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第6通電期間および前記次周期の第1通電期間に前記第5スイッチのオン/オフを切り替える制御を行うことを特徴とする請求項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2の場合には、
前記設定デューティ比の第1相ハイ側PWM信号によって前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第1スイッチと同時に前記第2スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第1相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第1相ロー側PWM信号によって前記第1スイッチに対して相補的に前記第2スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第2相ハイ側PWM信号によって前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第3スイッチと同時に前記第4スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第2相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第2相ロー側PWM信号によって前記第3スイッチに対して相補的に前記第4スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第3相ハイ側PWM信号によって前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第5スイッチと同時に前記第6スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第3相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第3相ロー側PWM信号によって前記第5スイッチに対して相補的に前記第6スイッチのオン/オフを切り替える制御とを行うことを特徴とする請求項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2の場合には、
前記第1~第3通電期間に前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記第2スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第3~第5通電期間に前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記第4スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第5および第6通電期間および前記第6通電期間に続く次周期の第1通電期間に前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記第6スイッチのオン/オフを切り替える制御を行うことを特徴とする請求項に記載の駆動装置。
【請求項10】
モータと、駆動装置と、を備える電動車両であって、
前記駆動装置は、
一端が電源端子に接続され、他端が前記モータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、
一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、
一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、
一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチと、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置され、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出する少なくとも1相のアングルセンサと、
前記第1~第6スイッチを制御することで前記モータの駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替えの直後の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替えの直後の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定し、
前記制御部は、前記アングルセンサによる検出角度に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、前記ロータの検出速度が、予め設定された第1基準速度よりも遅く、かつ、前記検出速度とユーザによるアクセル操作量とに基づいて設定された設定デューティ比が、予め設定された第1基準デューティ比よりも低い第1の場合には、前記120°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、前記検出速度が前記第1基準速度以上であって予め設定された第2基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第1基準デューティ比よりも低い予め設定された第2基準デューティ比以上であって予め設定された第3基準デューティ比よりも低く、または、前記検出速度が前記第2基準速度以上であって予め設定された第3基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第3基準デューティ比よりも低い第2の場合には、前記180°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記制御部は、前記切り替えの直後の通電期間に続く通電期間を、前記切り替えの直後の検出期間に続く検出期間に対して前記配置角度に応じた期間に前記検出速度と前記アクセル操作量とに基づいて設定された設定角度に応じた期間を加えた期間ずらして設定することを特徴とする電動車両。
【請求項11】
前記制御部は、
前記ロータの回転速度と、前記アクセル操作量と、前記モータのトルクとの対応関係を示すトルクマップに基づいて、前記検出速度および前記アクセル操作量に対応するトルクを設定し、
前記ロータの回転速度と、前記トルクと、デューティ比との対応関係を示すデューティマップに基づいて、前記検出速度および前記設定されたトルクに対応するデューティ比を前記設定デューティ比として設定することを特徴とする請求項10に記載の電動車両。
【請求項12】
一端が電源端子に接続され、他端がモータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチとを備えた駆動装置の制御方法であって、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置された少なくとも1相のアングルセンサで、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出し、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替えの直後の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替えの直後の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定し、
前記アングルセンサによる検出角度に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、前記ロータの検出速度が予め設定された第1基準速度よりも遅い第1の場合には、前記120°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、前記検出速度が前記第1基準速度以上である第2の場合には、前記180°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記切り替えの直後の通電期間に続く通電期間を、前記切り替えの直後の検出期間に続く検出期間に対して前記配置角度に応じた期間に前記検出速度と前記モータの回転を制御するためのユーザ操作量とに基づいて設定された設定角度に応じた期間を加えた期間ずらして設定することを特徴とする駆動装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、電動車両および駆動装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを電源とし、3相モータ(以下、モータと呼ぶ)を動力源とした電動二輪車が知られている。
【0003】
この種の電動二輪車においては、モータを駆動するため、各相毎にハイサイドおよびローサイドのスイッチを備えた3相フルブリッジ回路(すなわち、インバータ回路)によって、バッテリからモータの各相のコイルへの通電を制御していた。
【0004】
通電の制御においては、スイッチに対して、設定されたデューティ比によるPWM制御を行い、デューティ比に応じたトルクをモータに出力させていた。また、通電方式としては、電気角60°毎に割り振られた通電期間のうち、連続する120°の通電期間に通電を行う120°通電と、連続する180度の期間すなわち全相期間に通電を行う180°通電とが採用されていた。
【0005】
従来は、モータのアングルセンサでロータの回転角度を検出しながら、検出された回転角度が切り替わるタイミングで、120°通電と180°通電とを切替えていた。
【0006】
しかしながら、アングルセンサの取付位置がモータのコイルに対してずれている場合、アングルセンサでロータの回転角度の切り替えが検出されたタイミングで120°通電と180°通電とを切り替えると、アングルセンサの取付位置のずれ分だけ通電パターンの位相が理想的な位相からずれることで、120°通電と180°通電との切替時におけるトルクの変動が大きくなってしまうといった問題が生じていた。
【0007】
なお、特開2002-186274号公報には、120°通電と180°通電とを選択する技術が開示されている。しかしながら、特開2002-186274号公報に開示された技術は、アングルセンサの取付位置のずれを考慮していないため、本発明とは全く異なる技術である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、120°通電と180°通電との切替時におけるトルクの変動を抑制することが可能な駆動装置、電動車両および駆動装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る駆動装置は、
一端が電源端子に接続され、他端がモータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、
一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、
一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、
一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチと、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置され、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出する少なくとも1相のアングルセンサと、
前記第1~第6スイッチを制御することで前記モータの駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替え時の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替え時の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定する。
【0010】
前記駆動装置において、
前記制御部は、前記アングルセンサによる検出角度に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、前記ロータの検出速度が予め設定された第1基準速度よりも遅い第1の場合には、前記120°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記検出速度が前記第1基準速度以上である第2の場合には、前記180°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御してもよい。
【0011】
前記駆動装置において、
前記アングルセンサは、前記同相のコイルに対して遅角側にずらして配置され、
前記制御部は、前記切り替え時の通電期間を前記切り替え時の検出期間に対して進角側にずらして設定してもよい。
【0012】
前記駆動装置において、
前記制御部は、
前記切り替え時の通電期間に続く通電期間を、前記切り替え時の検出期間に続く検出期間に対して前記配置角度に応じた期間に前記検出速度と前記モータの回転を制御するためのユーザ操作量とに基づいて設定された設定角度に応じた期間を加えた期間ずらして設定してもよい。
【0013】
前記駆動装置において、
前記制御部は、
前記120°通電と前記180°通電とを切り替えるときに、前記PWM制御のデューティ比を切り替えてもよい。
【0014】
前記駆動装置において、
前記第1の場合は、前記検出速度と前記モータの回転を制御するためのユーザ操作量とに基づいて設定された設定デューティ比が、予め設定された第1基準デューティ比よりも低い場合であってもよい。
【0015】
前記駆動装置において、
前記第2の場合は、前記検出速度が予め設定された第2基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第1基準デューティ比よりも低い予め設定された第2基準デューティ比以上であって予め設定された第3基準デューティ比よりも低く、または、前記検出速度が前記第2基準速度以上であって予め設定された第3基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第3基準デューティ比よりも低い場合であってもよい。
【0016】
前記駆動装置において、
前記制御部は、前記第1の場合には、
前記設定デューティ比の第1相ハイ側PWM信号によって前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第1スイッチと同時に前記第2スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第1相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第1相ロー側PWM信号によって前記第1スイッチに対して相補的に前記第2スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第2相ハイ側PWM信号によって前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第3スイッチと同時に前記第4スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第2相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第2相ロー側PWM信号によって前記第3スイッチに対して相補的に前記第4スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第3相ハイ側PWM信号によって前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第5スイッチと同時に前記第6スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第3相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第3相ロー側PWM信号によって前記第5スイッチに対して相補的に前記第6スイッチのオン/オフを切り替える制御とを行ってもよい。
【0017】
前記駆動装置において、
前記制御部は、前記第1の場合には、
前記第1~第4通電期間に前記第2スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第2および第3通電期間に前記第1スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第3~第6通電期間に前記第4スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第4および第5通電期間に前記第3スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第5および第6通電期間ならびに前記第6通電期間に続く次周期の第1および第2通電期間に前記第6スイッチのオン/オフを切り替えながら前記第6通電期間および前記次周期の第1通電期間に前記第5スイッチのオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0018】
前記駆動装置において、
前記制御部は、前記第2の場合には、
前記設定デューティ比の第1相ハイ側PWM信号によって前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第1スイッチと同時に前記第2スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第1相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第1相ロー側PWM信号によって前記第1スイッチに対して相補的に前記第2スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第2相ハイ側PWM信号によって前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第3スイッチと同時に前記第4スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第2相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第2相ロー側PWM信号によって前記第3スイッチに対して相補的に前記第4スイッチのオン/オフを切り替える制御と、
前記設定デューティ比の第3相ハイ側PWM信号によって前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに、前記第5スイッチと同時に前記第6スイッチをオンしないデッドタイムを形成するように前記第3相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整された第3相ロー側PWM信号によって前記第5スイッチに対して相補的に前記第6スイッチのオン/オフを切り替える制御とを行ってもよい。
【0019】
前記駆動装置において、
前記制御部は、前記第2の場合には、
前記第1~第3通電期間に前記第1スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記2スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第3~第5通電期間に前記第3スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記4スイッチのオン/オフを切り替える制御を行い、
前記第5および第6通電期間および前記第6通電期間に続く次周期の第1通電期間に前記第5スイッチのオン/オフを切り替えるとともに前記6スイッチのオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る電動車両は、
モータと、駆動装置と、を備える電動車両であって、
前記駆動装置は、
一端が電源端子に接続され、他端が前記モータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、
一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、
一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、
一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、
一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチと、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置され、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出する少なくとも1相のアングルセンサと、
前記第1~第6スイッチを制御することで前記モータの駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替え時の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替え時の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定してもよい。
【0021】
前記電動車両において、
前記制御部は、
前記アングルセンサによる検出角度に基づいて前記ロータの回転速度を検出し、
前記ロータの検出速度が、予め設定された第1基準速度よりも遅く、かつ、前記検出速度とユーザによるアクセル操作量とに基づいて設定された設定デューティ比が、予め設定された第1基準デューティ比よりも低い第1の場合には、前記120°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記検出速度が前記第1基準速度以上であって前記第2基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第2基準デューティ比以上であって予め設定された第3基準デューティ比よりも低く、または、前記検出速度が前記第2基準速度以上であって予め設定された第3基準速度よりも遅く、かつ、前記設定デューティ比が前記第3基準デューティ比よりも低い第2の場合には、前記180°通電を行うように前記第1~第6スイッチをPWM制御してもよい。
【0022】
前記電動車両において、
前記制御部は、
前記ロータの回転速度と、前記アクセル操作量と、前記モータのトルクとの対応関係を示すトルクマップに基づいて、前記検出速度および前記アクセル操作量に対応するトルクを設定し、
前記ロータの回転速度と、前記トルクと、前記デューティ比との対応関係を示すデューティマップに基づいて、前記検出速度および前記設定されたトルクに対応するデューティ比を前記設定デューティ比として設定してもよい。
【0023】
本発明の一態様に係る駆動装置の制御方法は、
一端が電源端子に接続され、他端がモータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、一端が前記第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、一端が前記第2出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第4スイッチと、一端が前記電源端子に接続され、他端が前記モータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、一端が前記第3出力端子に接続され、他端が前記接地端子に接続された第6スイッチとを備えた駆動装置の制御方法であって、
前記第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置された少なくとも1相のアングルセンサで、前記モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、前記ロータの回転角度を検出し、
前記第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、
前記第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、前記第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように前記第1~第6スイッチをPWM制御し、
前記第1~第6通電期間のうちの前記切り替え時の通電期間を、前記第1~第6検出期間のうちの前記切り替え時の検出期間に対して前記配置角度に応じた期間ずらして設定する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様に係る駆動装置は、一端が電源端子に接続され、他端がモータの第1相コイルへの第1出力端子に接続された第1スイッチと、一端が第1出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第2スイッチと、一端が電源端子に接続され、他端がモータの第2相コイルへの第2出力端子に接続された第3スイッチと、一端が第2出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第4スイッチと、一端が電源端子に接続され、他端がモータの第3相コイルへの第3出力端子に接続された第5スイッチと、一端が第3出力端子に接続され、他端が接地端子に接続された第6スイッチと、第1~第3相コイルのうちの同相のコイルに対して予め設定された配置角度でずらして配置され、モータのロータの回転に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6検出期間毎に、ロータの回転角度を検出する少なくとも1相のアングルセンサと、第1~第6スイッチを制御することでモータの駆動を制御する制御部とを備え、制御部は、第1~第6検出期間に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定し、第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように第1~第6スイッチをPWM制御し、第1~第6通電期間のうちの切り替え時の通電期間を、第1~第6検出期間のうちの切り替え時の検出期間に対して配置角度に応じた期間ずらして設定する。
【0025】
このように、本発明によれば、120°通電と180°通電との切り替え時に、検出期間に対して通電期間をアングルセンサの配置角度に応じた期間ずらして設定することで、コイルに対するアングルセンサの配置角度のずれに起因する通電パターンの位相のずれを防止することができる。
【0026】
したがって、本発明によれば、120度通電と180度通電との切替時におけるトルクの変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態に係る電動二輪車100を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る電動二輪車100において、電力変換部30およびモータ3を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る電動二輪車100において、モータ3のロータに設けられた磁石、およびアングルセンサ4を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る電動二輪車100において、ロータアングルと、アングルセンサ4の出力との関係を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、120°上下段矩形波PWM制御を示すタイミングチャートである。
図6】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、120°上下段矩形波PWM制御におけるデッドタイムを示すタイミングチャートである。
図7】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、180°上下段矩形波PWM制御を示すタイミングチャートである。
図8】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、120°通電から180°通電への切り替えを示すタイミングチャートである。
図9】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、180°通電から120°通電への切り替えを示すタイミングチャートである。
図10】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、ロータ回転速度の検出工程およびデューティ比の設定工程を説明するための説明図である。
図11】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、デューティ比の設定工程の実施に用いられるトルクマップの一例を示すグラフである。
図12】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、デューティ比の設定工程の実施に用いられるデューティ比マップの一例を示すグラフである。
図13】第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、角度の設定工程の実施に用いられる角度マップの一例を示すグラフである。
図14】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法を示すフローチャートである。
図15A】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、ロータ回転速度および目標トルクに応じた通電制御方式を示すグラフである。
図15B】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、ロータ回転速度および設定デューティ比に応じた通電制御方式を示すグラフである。
図16】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、120°上段矩形波PWM制御を示すタイミングチャートである。
図17】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、180°上下段台形波PWM制御を示すタイミングチャートである。
図18】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、180°上下段台形波PWM制御におけるデューティ比を示すタイミングチャートである。
図19】第2の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法において、180°上段矩形波PWM制御を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を限定するものではない。また、実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照して、電動車両の一例としての第1の実施形態に係る電動二輪車100について説明する。
【0030】
電動二輪車100は、バッテリから供給される電力を用いてモータを駆動することで走行する電動バイク等の電動二輪車である。より詳しくは、電動二輪車100は、モータと車輪がクラッチを介さずに機械的に接続されたクラッチレスの電動二輪車である。
【0031】
電動二輪車100は、図1に示すように、駆動装置の一例である電動車両制御装置1と、バッテリ2と、モータ3と、回転速度検出部の一例であるアングルセンサ4と、アクセルポジションセンサ5と、メータ7と、車輪8とを備える。
【0032】
以下、電動二輪車100の各構成要素について詳しく説明する。
【0033】
電動車両制御装置1は、電動二輪車100を制御する装置であり、制御部10と、記憶部20と、電力変換部30とを有している。なお、電動車両制御装置1は、電動二輪車100全体を制御するECU(Electronic Control Unit)として構成されてもよい。次に、電動車両制御装置1の各構成要素について詳しく説明する。
【0034】
制御部10は、電動車両制御装置1に接続された各種装置から情報を入力するとともに、電力変換部30を介してモータ3を駆動制御する。制御部10の詳細については後述する。
【0035】
記憶部20は、制御部10が用いる情報や、制御部10が動作するためのプログラムを記憶する。この記憶部20は、例えば不揮発性の半導体メモリであるが、これに限定されない。
【0036】
電力変換部30は、バッテリ2の直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。この電力変換部30は、図2に示すように、インバータ回路、より詳しくは、3相のフルブリッジ回路で構成されている。
【0037】
フルブリッジ回路は、第1スイッチの一例である第1半導体スイッチQ1と、第2スイッチの一例である第2半導体スイッチQ2と、第3スイッチの一例である第3半導体スイッチQ3と、第4スイッチの一例である第4半導体スイッチQ4と、第5スイッチの一例である第5半導体スイッチQ5と、第6スイッチの一例である第6半導体スイッチQ6とを有する。
【0038】
第1半導体スイッチQ1は、一端がバッテリ2の正極に接続される電源端子30aに接続され、他端が第1相コイルの一例であるモータ3のU相コイル31uへの第1出力端子3aに接続されている。
【0039】
第2半導体スイッチQ2は、一端が第1出力端子3aに接続され、他端が接地されたバッテリ2の負極に接続される接地端子30bに接続されている。
【0040】
第3半導体スイッチQ3は、一端が電源端子30aに接続され、他端が第2相コイルの一例であるモータ3のV相コイル31vへの第2出力端子3bに接続されている。
【0041】
第4半導体スイッチQ4は、一端が第2出力端子3bに接続され、他端が接地端子30bに接続されている。
【0042】
第5半導体スイッチQ5は、一端が電源端子30aに接続され、他端が第3相コイルの一例であるモータ3のW相コイル31wへの第3出力端子3cに接続されている。
【0043】
第6半導体スイッチQ6は、一端が第3出力端子3cに接続され、他端が接地端子30bに接続されている。
【0044】
半導体スイッチQ1~Q6の制御端子は、制御部10に電気的に接続されている。電源端子30aと接地端子30bとの間には平滑コンデンサCが設けられている。半導体スイッチQ1~Q6は、例えばMOSFETまたはIGBT等である。
【0045】
バッテリ2は、充放電可能である。具体的には、バッテリ2は、放電時に電力変換部30に直流電力を供給する。また、バッテリ2は、商用電源等の外部の電源から供給された交流電力による充電時に、電源から供給された交流電力を図示しない充電器で変換した直流電力によって充電される。また、バッテリ2は、車輪8の回転にともなってモータ3が出力する交流電力による充電時に、モータ3が出力した交流電力を電力変換装置100で変換した直流電圧によって充電される。
【0046】
このバッテリ2は、バッテリ管理ユニット(BMU)を含む。バッテリ管理ユニットは、バッテリ2の電圧やバッテリ2の状態(充電率等)に関する情報を制御部10に送信する。
【0047】
なお、バッテリ2の数は一つに限らず、複数であってもよい。バッテリ2は、例えばリチウムイオン電池であるが、他の種類のバッテリであってもよい。バッテリ2は、異なる種類(例えば、リチウムイオン電池と鉛電池)のバッテリから構成されてもよい。
【0048】
モータ3は、バッテリ2から供給された電力によって車輪8を駆動するためのトルクを出力する。または、モータ3は、車輪8の回転にともなって電力を出力する。
【0049】
具体的には、モータ3は、電力変換部30から供給される交流電力により駆動されることで、車輪8を駆動するためのトルクを出力する。トルクは、制御部10が電力変換部30の半導体スイッチQ1~Q6に目標トルクに基づいて算出された通電タイミングとデューティ比を有するPWM信号を出力することで制御される。すなわち、トルクは、制御部10がバッテリ2からモータ3に供給される電力を制御することで制御される。
【0050】
モータ3は、車輪8に機械的に接続されており、トルクによって所望の方向に車輪8を回転させる。本実施形態では、モータ3は、クラッチを介さずに車輪8に機械的に接続されている。なお、モータ3の種類は特に限定されない。
【0051】
アングルセンサ4は、モータ3の回転速度を検出するために、モータ3のロータの回転角度を検出するセンサである。図3に示すように、モータ3のロータ3rの周面には、N極とS極の磁石(センサマグネット)が交互に取り付けられている。アングルセンサ4は、例えばホール素子により構成されており、モータ3の回転に伴う磁場の変化を検出する。なお、磁石は、フライホイール(図示せず)の内側に設けられてもよい。
【0052】
図3に示すように、アングルセンサ4は、第1相アングルセンサの一例であるU相アングルセンサ4uと、第2相アングルセンサの一例であるV相アングルセンサ4vと、第3相アングルセンサの一例であるW相アングルセンサ4wとを有している。本実施形態では、U相アングルセンサ4uとV相アングルセンサ4vとはモータ3のロータに対して30°の角度をなすように配置されている。同様に、V相アングルセンサ4vとW相アングルセンサ4wとはモータ3のロータに対して30°の角度をなすように配置されている。
【0053】
また、図3に示すように、アングルセンサ4u、4v、4wは、同相のコイル31u、31v、31wに対して予め設定された配置角度θずらして配置されている。配置角度θは、例えば、コイル31u、31v、31wに対して遅角側に30°であってもよいが、これに限定されない。
【0054】
図4に示すように、U相アングルセンサ4u、V相アングルセンサ4vおよびW相アングルセンサ4wは、ロータアングル(角度位置)に応じた位相のパルス信号(すなわち、回転角度の検出信号)を出力する。
【0055】
また、図4に示すように、所定のロータアングルごとに、モータステージを示す番号(モータステージ番号)が割り振られている。モータステージはモータ3のロータ3rの角度位置を示しており、本実施形態では、電気角で60°ごとにモータステージ番号1,2,3,4,5,6が割り振られている。モータステージは、U相アングルセンサ4u、V相アングルセンサ4vおよびW相アングルセンサ4wの出力信号のレベル(HレベルまたはLレベル)の組合せにより定義されている。例えば、モータステージ番号1は(U相、V相、W相)=(H,L,H)であり、モータステージ番号2は(U相、V相、W相)=(H,L,L)である。
【0056】
図4に示すように、アングルセンサ4u~4wは、ロータ3rの回転角度に応じて周期的に繰り返されるそれぞれが電気角60°に相当する第1番~第6番のモータステージ(検出期間)毎にロータ回転角度を検出する。
【0057】
制御部10は、アングルセンサ4u~4wとともに回転速度検出部として機能し、アングルセンサ4u~4wによる検出信号(検出角度)に基づいて、ロータ回転速度を検出する。一例として、制御部10は、図4に示すように、V相ロータアングルセンサ4vの出力の立下りからU相ロータアングルセンサ4uの出力の立ち上がりまでの時間tに基づいてロータ回転速度を算出する。
【0058】
アクセルポジションセンサ5は、ユーザのアクセル操作により設定されたアクセル操作量を検知し、検知されたアクセル操作量を電気信号として制御部10に送信する。アクセル操作量は、例えば、スロットル開度であってもよい。ユーザが加速したい場合に、アクセル操作量は大きくなる。
【0059】
メータ7は、電動二輪車100に設けられたディスプレイ(例えば液晶パネル)であり、各種情報を表示する。具体的には、電動二輪車100の走行速度、バッテリ2の残量、現在時刻、走行距離などの情報がメータ7に表示される。本実施形態では、メータ7は、電動二輪車100のハンドル(図示せず)に設けられる。
【0060】
次に、電動車両制御装置1の制御部10について詳しく説明する。
【0061】
制御部10は、1番~6番のモータステージに応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間を周期的に設定する。
【0062】
制御部10は、第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように第1半導体スイッチQ1~第6半導体スイッチQ6をPWM制御する。
【0063】
制御部10は、第1~第6通電期間のうちの120°通電と180°通電との切り替え時の通電期間を、1番~6番のモータステージのうちの120°通電と180°通電との切り替え時のモータステージに対して配置角度θに応じた期間ずらして設定する。
【0064】
制御部10は、アングルセンサ4u~4wの検出角度に基づいて検出されたロータ回転速度(以下、検出速度とも呼ぶ)が予め設定された第1基準速度よりも遅い第1の場合には、120°通電を行うように半導体スイッチQ1~Q6をPWM制御してもよい。第1の場合は、更に、検出速度とアクセル操作量とに基づいて設定された設定デューティ比が、予め設定された第1基準デューティ比よりも低い場合であってもよい。
【0065】
一方、制御部10は、検出速度が第1基準速度以上である第2の場合には、180°通電を行うように半導体スイッチQ1~Q6をPWM制御してもよい。第2の場合は、更に、検出速度が予め設定された第2基準速度よりも遅く、かつ、設定デューティ比が第1基準デューティ比よりも低い予め設定された第2基準デューティ比以上であって予め設定された第3基準デューティ比よりも低く、または、検出速度が第2基準速度以上であって予め設定された第3基準速度よりも遅く、かつ、設定デューティ比が第3基準デューティ比よりも低い場合であってもよい。
【0066】
アングルセンサ4u~4wがコイル31u、31v、31wに対して遅角側にずらして配置されている場合、制御部10は、切り替え時の通電期間を切り替え時のモータステージに対して進角側にずらして設定すればよい。
【0067】
制御部10は、切り替え時の通電期間に続く通電期間を、切り替え時のモータステージに続くモータステージ対して、配置角度θに応じた期間に検出速度とモータ3の回転を制御するためのアクセル操作量(すなわち、ユーザ操作量)とに基づいて設定された設定角度に応じた期間を加えた期間ずらして設定してもよい。
【0068】
制御部10は、120°通電を行う第1の場合には、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号(すなわち、第1相ハイ側PWM信号)によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替えるとともに、U相ロー側PWM信号(すなわち、第1相ロー側PWM信号)によって第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第1の場合のU相ロー側PWM信号は、第1半導体スイッチQ1と同時に第2半導体スイッチQ2をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0069】
また、第1の場合に、制御部10は、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号(すなわち、第2相ハイ側PWM信号)によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替えるとともに、V相ロー側PWM信号(すなわち、第2相ロー側PWM信号)によって第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第1の場合のV相ロー側PWM信号は、第3半導体スイッチQ3と同時に第4半導体スイッチQ4をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0070】
また、第1の場合に、制御部10は、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号(すなわち、第3相ハイ側PWM信号)によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替えるとともに、W相ロー側PWM信号(すなわち、第3相ロー側PWM信号)によって第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第1の場合のW相ロー側PWM信号は、第5半導体スイッチQ5と同時に第6半導体スイッチQ6をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0071】
また、制御部10は、第1の場合には、第1~第4通電期間に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替えながら第2および第3通電期間に第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0072】
また、第1の場合に、制御部10は、第3~第6通電期間に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替えながら第4および第5通電期間に第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0073】
また、第1の場合に、制御部10は、第5および第6通電期間ならびに第6通電期間に続く次周期の第1および第2通電期間に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替えながら第6通電期間および次周期の第1通電期間に第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0074】
一方、制御部10は、180°通電を行う第2の場合には、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替えるとともに、U相ロー側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第2の場合のU相ロー側PWM信号も、第1の場合と同様に、第1半導体スイッチQ1と同時に第2半導体スイッチQ2をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0075】
また、第2の場合に、制御部10は、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替えるとともに、V相ロー側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第2の場合のV相ロー側PWM信号も、第1の場合と同様に、第3半導体スイッチQ3と同時に第4半導体スイッチQ4をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0076】
また、第2の場合に、制御部10は、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替えるとともに、W相ロー側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。第2の場合のW相ロー側PWM信号も、第1の場合と同様に、第5半導体スイッチQ5と同時に第6半導体スイッチQ6をオンしないデッドタイムを形成するように設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0077】
また、制御部10は、第2の場合には、第1~第3通電期間に第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替えるとともに第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0078】
また、第2の場合に、制御部10は、第3~第5通電期間に第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替えるとともに第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0079】
また、第2の場合に、制御部10は、第5および第6通電期間および第6通電期間に続く次周期の第1通電期間に第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替えるとともに第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0080】
(電動二輪車100の制御方法)
以下、駆動装置の制御方法の一例として、第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法について説明する。
【0081】
<120°上下段矩形波PWM制御>
図5に示すように、制御部10は、120°通電として、120°上下段矩形波PWM制御を行う。
【0082】
120°上下段矩形波PWM制御は、上段すなわちハイサイドの半導体スイッチQ1、Q3、Q5と下段すなわちローサイドの半導体スイッチQ2、Q4、Q6との双方へのPWM制御をともなう略矩形状の通電波形を生じる120°通電である。
【0083】
図5に示すように、120°上下段矩形波PWM制御においては、1番~6番のモータステージに応じて周期的に設定されたそれぞれが電気角60°の1番~6番の通電ステージ(すなわち、通電期間)のうち、連続する1番および2番の通電ステージ(すなわち、第2、第3通電期間)において、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0084】
ここで、設定デューティ比は、図10に示されるトルクマップおよびデューティ比マップに基づいて設定される。具体的には、図10に示すように、制御部10は、トルクマップを参照してアクセル操作量とロータ回転速度とに対応する目標トルクを取得することで、目標トルクを設定する。
【0085】
トルクマップは、図11に示すように、ロータ回転速度と、アクセル操作量と、目標トルクとの対応関係を示すマップである。トルクマップは、制御部10が読出し可能な状態で記憶部20に記憶されていてもよい。トルクマップは、120°通電用と180°通電用とで異なっていてもよい。
【0086】
目標トルクを設定した後、制御部10は、検出速度と設定された目標トルクとに基づいてデューティ比を設定する。
【0087】
具体的には、図10に示すように、制御部10は、デューティ比マップを参照して検出速度と目標トルクとに対応するデューティ比を取得することで、デューティ比を設定する。
【0088】
デューティ比マップは、図12に示すように、ロータ回転速度と、目標トルクと、デューティ比との対応関係を示すマップである。デューティ比マップは、制御部10が読出し可能な状態で記憶部20に記憶されていてもよい。デューティ比マップは、120°通電用と180°通電用とで異なっていてもよい。
【0089】
また、図5に示すように、120°上下段矩形波PWM制御においては、連続する6番~3番の通電ステージ(すなわち、第1~第4通電期間)において、デットタイムを形成するようにU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたU相ロー側PWM信号によって、第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0090】
なお、6番および3番の通電ステージでは第1半導体スイッチQ1はオフするため、第1半導体スイッチQ1に対して第2半導体スイッチQ2のオン/オフが相補的になるのは、厳密には、連続する6番~3番の通電ステージのうちの1番および2番の通電ステージである。
【0091】
また、ハイサイドの半導体スイッチQ1は信号のハイレベルがオン状態に相当するのに対して、ローサイドの半導体スイッチQ2は信号のローレベルがオン状態に相当するため、図5には、ハイ側PWM信号に“Hi Active”と図示され、ロー側PWM信号に“Lo Active”と図示されている。
【0092】
また、図5中の破線枠部分を拡大した図6に示すように、U相ロー側PWM信号は、第1半導体スイッチQ1と同時に第2半導体スイッチQ2をオンしないデッドタイムDtを形成するようにU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されている。
【0093】
また、図5に示すように、120°上下段矩形波PWM制御においては、連続する3番および4番の通電ステージ(すなわち、第4、第5通電期間)において、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0094】
また、120°上下段矩形波PWM制御においては、連続する2番~5番の通電ステージ(すなわち、第3~第6通電期間)において、デットタイムを形成するようにV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたV相ロー側PWM信号によって、第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0095】
また、120°上下段矩形波PWM制御においては、連続する5番および6番の通電ステージ(すなわち、第6通電期間および次周期の第1通電期間)において、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0096】
また、120°上下段矩形波PWM制御においては、連続する4番~1番の通電ステージ(すなわち、第5、第6通電期間および次周期の第1、第2通電期間)において、デットタイムを形成するようにW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたW相ロー側PWM信号によって、第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0097】
なお、1番および2番以外の通電ステージにおいて、第1半導体スイッチQ1はオフされる。6番~3番以外の通電ステージにおいて、第2半導体スイッチQ2はオフされる。3番および4番以外の通電ステージにおいて、第3半導体スイッチQ3はオフされる。2番~5番以外の通電ステージにおいて、第4半導体スイッチQ4はオフされる。5番および6番以外の通電ステージにおいて、第5半導体スイッチQ5はオフされる。4番~1番以外の通電ステージにおいて、第6半導体スイッチQ6はオフされる。
【0098】
通電ステージは、モータステージに対して、目標トルクとモータ回転速度に応じて設定された角度分のずれを有していてもよい。
【0099】
以上のような120°上下段矩形波PWM制御によれば、ロータ3rの低回転時においては、120°通電を行うことで始動特性を向上させることができる。また、ハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5との間にデッドタイムが形成されるようにローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6をPWM制御することで、貫通電流を防止することができる。
【0100】
<180°上下段矩形波PWM制御>
図7に示すように、制御部10は、180°通電として、180°上下段矩形波PWM制御を行う。
【0101】
180°上下段矩形波PWM制御は、ハイサイドの半導体スイッチQ1、Q3、Q5とローサイドの半導体スイッチQ2、Q4、Q6との双方へのPWM制御をともなう略矩形状の通電波形を生じる180°通電である。
【0102】
図7に示すように、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する1番~3番の通電ステージ(すなわち、第1~第3通電期間)において、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0103】
また、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する1番~3番の通電ステージにおいて、デットタイムを形成するようにU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたU相ロー側PWM信号によって、第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0104】
また、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する3番~5番の通電ステージ(すなわち、第3~第5通電期間)において、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0105】
また、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する3番~5番の通電ステージにおいて、デットタイムを形成するようにV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたV相ロー側PWM信号によって、第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0106】
また、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する5番~1番の通電ステージ(すなわち、第5、第6通電期間および次周期の第1通電期間)において、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0107】
また、180°上下段矩形波PWM制御においては、連続する5番~1番の通電ステージにおいて、デットタイムを形成するようにW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたW相ロー側PWM信号によって、第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0108】
以上のような180°上下段矩形波PWM制御によれば、ロータ3rの高回転時においては、高回転するロータ3rに対してトルクを適切に付与できるように、180°通電によって電源電圧の利用率を高めて十分に大きなトルクを得ることができる。また、ハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5との間にデッドタイムが形成されるようにローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6をPWM制御することで、貫通電流を防止することができる。
【0109】
<120°-180°通電切り替え>
制御部10は、120°通電(すなわち、120°上下段矩形波PWM制御)から180°通電(すなわち、180°上下段矩形波PWM制御)への切り替えの際に、アングルセンサ4u~4wの配置角度θに応じて、モータステージに対して通電ステージすなわち通電パターンをずらして設定する。
【0110】
図8の例において、制御部10は、6番のモータステージから次周期の1番目のモータステージに切り替わるとき、すなわち、6番の通電ステージから次周期の1番の通電ステージに切り替わるときに、120°通電から180通電に切り替える。すなわち、次周期の1番のモータステージが、切り替え時のモータステージであり、次周期の1番の通電ステージが、切り替え時の通電ステージである。
【0111】
制御部10は、次周期の1番のモータステージに対して、次周期の1番の通電ステージを配置角度θに相当する期間ずらして設定する。
【0112】
より具体的には、制御部10は、配置角度θに相当する期間だけ通電ステージを進角方向にずらす。すなわち、制御部10は、配置角度θに相当する角度だけ通電パターンを進角させる。
【0113】
180°通電への切り替え後において、制御部10は、切り替え時の通電ステージに続く通電ステージを、切り替え時のモータステージに続くモータステージに対して、配置角度θに応じた期間に図10に示される角度マップに基づいて設定された設定角度(例えば、図8のDEG1、DEG2)に応じた期間を加えた期間ずらして設定する。
【0114】
すなわち、制御部10は、モータステージに対して、配置角度θと設定角度(DEG1、DEG2)とを加算した角度(θ+DEG1、θ+DEG1+DEG2)に相当する期間だけ通電ステージをずらして設定する。
【0115】
なお、角度マップは、図13に示すように、ロータ回転速度と、目標トルクと、角度との対応関係を示すマップである。角度マップは、制御部10が読出し可能な状態で記憶部20に記憶されていてもよい。角度マップは、120°通電用と180°通電用とで異なっていてもよい。
【0116】
図9に示すように、制御部10は、180°通電から120°通電への切り替えのときも、配置角度θに相当する期間だけ通電ステージを進角方向にずらす。
【0117】
このように120°通電と180°通電との切り替えの際に通電ステージをずらして設定することで、図8および図9に示すように、120°通電と180°通電との切り替えの際におけるトルクの変動が抑制される。また、120°通電と180°通電との切り替え後は、角度マップに基づいて設定された角度にしたがって通電ステージをずらすことで、走行状態に応じた適切なトルクを出力することが可能となる。
【0118】
なお、120°通電と180°通電との切り替えの際に、制御部10は、デューティ比を切替えてもよい。例えば、120°通電から180°通電に切り替えるときは、デューティ比を減少させ、逆に、180°通電から120°通電に切り替えるときは、デューティ比を増加させてもよい。120°通電と180°通電との切り替えの際にデューティ比を切り替えることで、トルクの変動をさらに抑制することができるとともに、過電流の発生を抑制することができる。
【0119】
以上述べたように、第1の実施形態に係る電動二輪車100において、制御部10は、半導体スイッチQ1~Q6を制御することでモータ3の駆動を制御する。制御部10は、第1~第6検出期間(モータステージ)に応じてそれぞれが電気角60°に相当する連続する第1~第6通電期間(通電ステージ)を周期的に設定し、第1~第6通電期間のうちの連続する2つの通電期間に相電流を流す120°通電と、第1~第6通電期間のうちの連続する3つの通電期間に相電流を流す180°通電と、を切り替えるように半導体スイッチQ1~Q6をPWM制御する。制御部10は、第1~第6通電期間のうちの切り替え時の通電期間を、第1~第6検出期間のうちの切り替え時の検出期間に対して配置角度θに応じた期間ずらして設定する。
【0120】
このように、本発明によれば、120°通電と180°通電との切り替え時に、アングルセンサ4u~4wの配置角度θに応じて検出期間に対して通電期間をずらして設定することで、コイルに対するアングルセンサの配置角度のずれに起因する通電パターンの位相のずれを防止することができる。
【0121】
したがって、本発明によれば、120°通電と180°通電との切替時におけるトルクの変動を抑制することができる。
【0122】
(第2の実施形態)
次に、走行状態に応じて通電方式を選択する第2の実施形態について説明する。
【0123】
第2の実施形態において、制御部10は、第1の実施形態の構成に加えて、更に、検出速度が第1基準速度よりも遅く、かつ、設定デューティ比が、第1基準デューティ比以上である第3の場合には、第2半導体スイッチQ2をオフしながら設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号(すなわち、第1相ハイ側PWM信号)によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0124】
また、第3の場合に、制御部10は、第4半導体スイッチQ4をオフしながら設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号(すなわち、第2相ハイ側PWM信号)によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0125】
また、第3の場合に、制御部10は、第6半導体スイッチQ6をオフしながら設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号(すなわち、第3相ハイ側PWM信号)によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0126】
より詳しくは、制御部10は、第3の場合には、第1~第4通電期間に第2半導体スイッチQ2をオフしながら、第2および第3通電期間にU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0127】
また、第3の場合に、制御部10は、第3~第6通電期間に第4半導体スイッチQ4をオフしながら、第4および第5通電期間にV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0128】
また、第3の場合に、制御部10は、第5および第6通電期間ならびに第6通電期間に続く次周期の第1および第2通電期間に第6半導体スイッチQ6をオフしながら、第6通電期間および次周期の第1通電期間にW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0129】
このような第3の場合における制御により、120°通電が行われる。
【0130】
また、制御部10は、検出速度が第1基準速度以上であって第2基準速度よりも遅く、かつ、設定デューティ比が予め設定された第2基準デューティ比よりも低い第4の場合には、台形状の通電波形によるモータ3の駆動制御を行う。
【0131】
台形状の通電波形によるモータ3の駆動制御は、デューティ比ゼロ(すなわち、オフ状態)から設定デューティ比まで段階的に増加し、増加の後に設定デューティ比を維持し、維持の後に設定デューティ比からデューティ比ゼロまで段階的に減少するように調整された調整デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替えるとともに、U相ロー側PWM信号によって、第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を含む。第4の場合のU相ロー側PWM信号は、第1半導体スイッチQ1と同時に第2半導体スイッチQ2をオンしないデッドタイムを形成するように調整デューティ比のU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0132】
また、台形状の通電波形によるモータ3の駆動制御は、調整デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替えるとともに、V相ロー側PWM信号によって、第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を含む。第4の場合のV相ロー側PWM信号は、第3半導体スイッチQ3と同時に第4半導体スイッチQ4をオンしないデッドタイムを形成するように調整デューティ比のV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0133】
また、台形状の通電波形によるモータ3の駆動制御は、調整デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替えるとともに、W相ロー側PWM信号によって、第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を含む。第4の場合のW相ロー側PWM信号は、第5半導体スイッチQ5と同時に第6半導体スイッチQ6をオンしないデッドタイムを形成するように調整デューティ比のW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたPWM信号である。
【0134】
より詳しくは、制御部10は、第4の場合には、第1~第4通電期間に、U相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替えるとともにU相ロー側PWM信号によって第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0135】
また、第4の場合に、制御部10は、第3~第6通電期間に、V相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替えるとともにV相ロー側PWM信号によって第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0136】
また、第4の場合に、制御部10は、第5および第6通電期間ならびに第6通電期間に続く次周期の第1および第2通電期間に、W相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替えるとともにW相ロー側PWM信号によって第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0137】
このような第4の場合における制御により、180°通電が行われる。
【0138】
また、第4の場合に、U相ハイ側PWM信号の調整デューティ比は、第1通電期間に設定デューティ比まで段階的に増加し、第2および第3通電期間に設定デューティ比に維持され、第4通電期間に設定デューティ比から段階的に減少してもよい。
【0139】
また、第4の場合に、V相ハイ側PWM信号の調整デューティ比は、第3通電期間に設定デューティ比まで段階的に増加し、第4および第5通電期間に設定デューティ比に維持され、第6通電期間に設定デューティ比から段階的に減少してもよい。
【0140】
また、第4の場合に、W相ハイ側PWM信号の調整デューティ比は、第5通電期間に設定デューティ比まで段階的に増加し、第6通電期間および次周期の第1通電期間に設定デューティ比に維持され、次周期の第2通電期間に設定デューティ比から段階的に減少してもよい。
【0141】
また、制御部10は、検出速度が第1基準速度以上であって第3基準速度よりも遅く、かつ、設定デューティ比が第3基準デューティ比以上であり、または、検出速度が第3基準速度以上である第5の場合には、第2半導体スイッチQ2をオフしながら設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0142】
また、第5の場合に、制御部10は、第4半導体スイッチQ4をオフしながら設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0143】
また、第5の場合に、制御部10は、第6半導体スイッチQ6をオフしながら設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0144】
より詳しくは、制御部10は、第5の場合には、第1~第3通電期間に、第2半導体スイッチQ2をオフしながらU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0145】
また、第5の場合に、制御部10は、第3~第5通電期間に、第4半導体スイッチQ4をオフしながらV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0146】
また、第5の場合に、制御部10は、第5および第6通電期間ならびに第6通電期間に続く次周期の第1通電期間に、第6半導体スイッチQ6をオフしながらW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行ってもよい。
【0147】
このような第5の場合における制御により、180°通電が行われる。
【0148】
(電動二輪車100の制御方法)
以下、図14のフローチャートを参照して、駆動装置の制御方法の一例として、第1の実施形態に係る電動二輪車100の制御方法について説明する。なお、図14のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0149】
先ず、制御部10は、アクセルポジションセンサ5の検出信号に基づいてアクセル操作量を検出する(ステップS1)。
【0150】
また、制御部10は、アングルセンサ4の検出信号に基づいてロータ回転速度を検出する(ステップS2)。
【0151】
アクセル操作量およびロータ回転速度を検出した後、制御部10は、検出されたアクセル操作量および検出されたロータ回転速度(すなわち、検出速度とも呼ぶ)に基づいて、目標トルクを設定する(ステップS3)。
【0152】
具体的には、図10に示すように、制御部10は、トルクマップを参照してアクセル操作量とロータ回転速度とに対応する目標トルクを取得することで、目標トルクを設定する。
【0153】
トルクマップは、図11に示すように、ロータ回転速度と、アクセル操作量と、目標トルクとの対応関係を示すマップである。トルクマップは、制御部10が読出し可能な状態で記憶部20に記憶されていてもよい。
【0154】
目標トルクを設定した後、図14に示すように、制御部10は、検出速度と設定された目標トルクとに基づいてデューティ比を設定する(ステップS4)。
【0155】
具体的には、図10に示すように、制御部10は、デューティ比マップを参照して検出速度と目標トルクとに対応するデューティ比を取得することで、デューティ比を設定する。デューティ比マップは、図12に示すように、ロータ回転速度と、目標トルクと、デューティ比との対応関係を示すマップである。デューティ比マップは、制御部10が読出し可能な状態で記憶部20に記憶されていてもよい。
【0156】
デューティ比を設定した後、図14に示すように、制御部10は、検出速度が予め設定された第1基準速度以上であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0157】
検出速度が第1基準速度以上でない場合(ステップS5:No)、制御部10は、設定デューティ比が予め設定された第1基準デューティ比以上であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0158】
<120°上下段矩形波PWM制御>
設定デューティ比が第1基準デューティ比以上でない場合(ステップS6:No)、制御部10は、図15Aおよび図15Bに示される第1の領域R1(すなわち、第1の場合)の通電方式として、120°上下段矩形波PWM制御を実行する(ステップS11)。
【0159】
120°上下段矩形波PWM制御の詳細は、図5で説明したとおりである。
【0160】
<120°上段矩形波PWM制御>
図14に示すように、設定デューティ比が第1基準デューティ比以上である場合(ステップS6:Yes)、制御部10は、図15Aおよび図15Bに示される第2の領域R2(すなわち、第3の場合)の通電方式として、120°上段矩形波PWM制御を実行する(ステップS12)。
【0161】
120°上段矩形波PWM制御は、ハイサイドの半導体スイッチQ1、Q3、Q5のみへのPWM制御をともなう略矩形状の通電波形を生じる120°通電である。
【0162】
図16に示すように、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する1番および2番の通電ステージ(すなわち、第2、第3通電期間)において、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0163】
また、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する6番~3番の通電ステージ(すなわち、第1~第4通電期間)において、第2半導体スイッチQ2をオフし続ける制御を行う。
【0164】
また、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する3番および4番の通電ステージ(すなわち、第4、第5通電期間)において、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0165】
また、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する2番~5番の通電ステージ(すなわち、第3~第6通電期間)において、第4半導体スイッチQ4をオフし続ける制御を行う。
【0166】
また、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する5番および6番の通電ステージ(すなわち、第6通電期間および次周期の第1通電期間)において、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0167】
また、120°上段矩形波PWM制御においては、連続する4番~1番の通電ステージ(すなわち、第5、第6通電期間および次周期の第1、第2通電期間)において、第6半導体スイッチQ6をオフし続ける制御を行う。
【0168】
以上のような120°上段矩形波PWM制御によれば、設定デューティ比が高い場合には、ローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6をオフしてハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5のみにPWM制御を行うことで、ハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5とローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6との間でデッドタイムが形成されるように互いのPWM信号のデューティ比を調整することを要しなくなる。
【0169】
これにより、ハイサイドのPWM信号のデューティ比を十分に大きくすることができるので、バッテリ2の充電電圧を最大限利用して可及的に大きなトルクを出力することが可能となる。
【0170】
<180°上下段台形波PWM制御>
図14に示すように、検出速度が第1基準速度以上である場合(ステップS5:Yes)、制御部10は、検出速度が第2基準速度以上であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0171】
検出速度が第2基準速度以上でない場合(ステップS7:No)、制御部10は、設定デューティ比が第2基準デューティ比以上であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0172】
設定デューティ比が第2基準デューティ比以上でない場合(ステップS8:No)、制御部10は、図15Aおよび図15Bに示される第3の領域R3(すなわち、第4の場合)の通電方式として、180°上下段台形波PWM制御を実行する(ステップS13)。
【0173】
180°上下段台形波PWM制御は、ハイサイドの半導体スイッチQ1、Q3、Q5とローサイドの半導体スイッチQ2、Q4、Q6との双方へのPWM制御をともなう略台形状の通電波形を生じる180°通電である。
【0174】
図17に示すように、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する6番~3番の通電ステージ(すなわち、第1~第4通電期間)において、調整デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。より詳しくは、6番の通電ステージにおいて、設定デューティ比まで段階的に増加し、1番および2番の通電ステージにおいて設定デューティ比に維持され、3番の通電ステージにおいて設定デューティ比から段階的に減少するようなデューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0175】
図17中の破線枠部を拡大した図18に示すように、PWM信号は、制御部10で生成される三角波に基づいて、三角波によるキャリア周期毎に生成される。U相の台形波が立ち上がる6番の通電ステージにおいて、U相のPWM信号のデューティ比は、時間経過にしたがって段階的に増加している。また、図示はしないが、U相の台形波が立ち下がる第3番の通電ステージにおいて、U相のPWM信号のデューティ比は、時間経過にしたがって段階的に減少する。
【0176】
また、図17に示すように、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する6番~3番の通電ステージにおいて、第1半導体スイッチQ1と同時に第2半導体スイッチQ2をオンしないデットタイムを形成するようにU相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたU相ロー側PWM信号によって、第1半導体スイッチQ1に対して相補的に第2半導体スイッチQ2のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0177】
また、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する2番~5番の通電ステージ(すなわち、第3~第6通電期間)において、調整デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。より詳しくは、2番の通電ステージにおいて、設定デューティ比まで段階的に増加し、3番および4番の通電ステージにおいて設定デューティ比に維持され、5番の通電ステージにおいて設定デューティ比から段階的に減少するようなデューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0178】
また、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する2番~5番の通電ステージにおいて、第3半導体スイッチQ3と同時に第4半導体スイッチQ4をオンしないデットタイムを形成するようにV相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたV相ロー側PWM信号によって、第3半導体スイッチQ3に対して相補的に第4半導体スイッチQ4のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0179】
また、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する4番~1番の通電ステージ(すなわち、第5、第6通電期間および次周期の第1、第2通電期間)において、調整デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。より詳しくは、4番の通電ステージにおいて、設定デューティ比まで段階的に増加し、5番および6番の通電ステージにおいて設定デューティ比に維持され、1番の通電ステージにおいて設定デューティ比から段階的に減少するようなデューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0180】
また、180°上下段台形波PWM制御においては、連続する4番~1番の通電ステージにおいて、第5半導体スイッチQ5と同時に第6半導体スイッチQ6をオンしないデットタイムを形成するようにW相ハイ側PWM信号との間でデューティ比が調整されたW相ロー側PWM信号によって、第5半導体スイッチQ5に対して相補的に第6半導体スイッチQ6のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0181】
以上のような180°上下段台形波PWM制御によれば、通電波形の立ち上げおよび立ち下げを緩やかに行うことで、リップルを抑制することができる。
【0182】
<180°上下段矩形波PWM制御>
図14に示すように、検出速度が第2基準速度以上である場合(ステップS7:Yes)、制御部10は、検出速度が第3基準速度以上であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0183】
検出速度が第3基準速度以上でない場合(ステップS9:No)、または、設定デューティ比が第2基準デューティ比以上である場合(ステップS8:Yes)、制御部10は、設定デューティ比が第3基準デューティ比以上であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0184】
設定デューティ比が第3基準デューティ比以上でない場合(ステップS10:No)、制御部10は、図15Aおよび図15Bに示される第4の領域R4(すなわち、第2の場合)の通電方式として、180°上下段矩形波PWM制御を実行する(ステップS14)。なお、図15Bの例において、第3基準デューティ比は第1基準デューティ比と一致しているが、第3基準デューティ比は第1基準デューティ比と異なっていてもよい。
【0185】
180°上下段矩形波PWM制御の詳細は、図7で説明した通りである。
【0186】
<180°上段矩形波PWM制御>
図14に示すように、検出速度が第3基準速度以上である場合(ステップS9:Yes)、または、設定デューティ比が第3基準デューティ比以上である場合(ステップS10:Yes)、制御部10は、図15Aおよび図15Bに示される第5の領域R5(すなわち、第5の場合)の通電方式として、180°上段矩形波PWM制御を実行する(ステップS15)。
【0187】
180°上段矩形波PWM制御は、ハイサイドの半導体スイッチQ1、Q3、Q5のみへのPWM制御をともなう略矩形状の通電波形を生じる180°通電である。
【0188】
図19に示すように、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する1番~3番の通電ステージ(すなわち、第1~第3通電期間)において、設定デューティ比のU相ハイ側PWM信号によって第1半導体スイッチQ1のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0189】
また、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する1番~3番の通電ステージにおいて、第2半導体スイッチQ2をオフし続ける制御を行う。
【0190】
また、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する3番~5番の通電ステージ(すなわち、第3~第5通電期間)において、設定デューティ比のV相ハイ側PWM信号によって第3半導体スイッチQ3のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0191】
また、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する3番~5番の通電ステージにおいて、第4半導体スイッチQ4をオフし続ける制御を行う。
【0192】
また、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する5番~1番の通電ステージ(すなわち、第5、第6通電期間および次周期の第1通電期間)において、設定デューティ比のW相ハイ側PWM信号によって第5半導体スイッチQ5のオン/オフを切り替える制御を行う。
【0193】
また、180°上段矩形波PWM制御においては、連続する5番~1番の通電ステージにおいて、第6半導体スイッチQ6をオフし続ける制御を行う。
【0194】
以上のような180°上段矩形波PWM制御によれば、120°上段矩形波PWM制御の場合と同様に、設定デューティ比が高い場合に、ローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6をオフしてハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5のみにPWM制御を行うことで、ハイサイドのスイッチQ1、Q3、Q5とローサイドのスイッチQ2、Q4、Q6との間でデッドタイムが形成されるように互いのPWM信号のデューティ比を調整することを要しなくなる。
【0195】
これにより、ハイサイドのPWM信号のデューティ比を十分に大きくすることができるので、バッテリ2の充電電圧を最大限利用して可及的に大きなトルクを出力することが可能となる。
【0196】
第2の実施形態によれば、検出速度および設定デューティ比に応じて好適なPWM制御を選択することができるので、バッテリ2の充電電圧を最大限利用して可及的に大きなトルクを出力することが可能となる。
【0197】
上述した実施形態で説明した電動車両制御装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、電動車両制御装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0198】
また、電動車両制御装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0199】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0200】
1 電動車両制御装置
3 モータ
4 アングルセンサ
10 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19