(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221021BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2020515519
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017408
(87)【国際公開番号】W WO2019208625
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2018086937
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】川邊 保典
(72)【発明者】
【氏名】大川 善裕
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093467(JP,A)
【文献】特表平10-501925(JP,A)
【文献】特開2017-168818(JP,A)
【文献】特開2000-277596(JP,A)
【文献】特開2001-007189(JP,A)
【文献】特開2006-066857(JP,A)
【文献】特開2002-368069(JP,A)
【文献】特開2007-214339(JP,A)
【文献】特開2016-201411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面を有している絶縁性の基体と、
前記基体内で前記所定面に沿っている層状の電極と、
を有しており、
前記電極の前記所定面側に面する上面と前記基体とは接しており、かつ前記電極の側面と前記基体との間には、真空の、又はガスが満たされている
第1空隙が介在しており、
該
第1空隙は、前記電極および前記基体に囲まれて閉じた空間であ
り、
前記電極の、前記所定面とは反対側に面する下面と前記基体との間には、真空の、又はガスが満たされている第2空隙が介在している
静電チャック。
【請求項2】
前記
第1空隙は、前記所定面の平面視において、前記電極の側面からの幅よりも大きい長さで前記電極の側面に沿って連続している
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記
第1空隙は、前記電極の、前記所定面に沿う方向の両側に形成されている
請求項1又は2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記
第1空隙は、前記所定面に直交する方向の大きさが、前記電極の、前記所定面に直交する方向の大きさよりも小さい部分を含んでいる
請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記
第1空隙は、前記所定面に直交する方向の大きさが、前記電極の、前記所定面に直交する方向の大きさよりも大きい部分を含んでいる
請求項1~4のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記
第1空隙は、
第1高さ部と、
前記第1高さ部に対して前記電極の側面とは反対側に位置しており、前記所定面に直交する方向の大きさが前記第1高さ部よりも小さい第2高さ部と、を含んでいる
請求項1~5のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記
第1空隙は、
第1位置部と、
前記第1位置部に対して前記電極の側面とは反対側かつ前記第1位置部よりも前記所定面とは反対側に位置している第2位置部と、を含んでいる
請求項1~6のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記電極は、前記所定面の平面視において、
接続部と、
前記接続部から互いに並列に延びている2つの延在部と、を有しており、
前記
第1空隙は、
前記延在部の側面に接している第1側方部と、
前記接続部の側面に接しており、前記接続部の側面からの幅が、前記第1側方部の前記延在部の側面からの幅よりも広い第2側方部と、を有している
請求項1~7のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記電極は、前記所定面の平面視において、
接続部と、
前記接続部から互いに並列に延びている2つの延在部と、を有しており、
前記
第1空隙は、
前記接続部の、前記延在部とは反対側の外側側面に接している外側部と、
前記接続部の、前記2つの延在部の間に位置している内側側面に接しており、前記内側側面からの幅が前記外側部の前記外側側面からの幅よりも大きい内側部と、を有している
請求項1~8のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記電極の側面は、凸面を有している
請求項1~8のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記電極の側面は、突部を有しており、
前記突部の前記所定面側の面は、前記基体に接しており、
前記
第1空隙は、前記突部の前記所定面とは反対側の面と前記基体との間に介在する部分を含んでいる
請求項1~10のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項12】
前記電極の側面は、凹部を有している
請求項1~11のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項13】
所定面を有している絶縁性の基体と、
前記基体内で前記所定面に沿っている層状の電極と、
を有しており、
前記電極の前記所定面側に面する上面と前記基体とは接しており、かつ前記電極の前記所定面とは反対側に面する下面と前記基体との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙が介在している
静電チャック。
【請求項14】
2つの前記電極を有しており、
各電極は、
接続部と、
前記接続部から並列に延びている複数の延在部と、を有しており、
一方の前記電極の前記複数の延在部と、他方の前記電極の複数の延在部とが、これらの幅方向に交互に配列されている
請求項1~
13のいずれか1項に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などに用いられる静電チャックが知られている(例えば特許文献1及び2)。このような静電チャックは、例えば、セラミックからなる平板状の基体と、当該基体に埋設された層状の電極とを有している。ウェハは、基体の上面(板形状の最も広い面。主面)に重ねられる。そして、電極に電圧を印加することによって、基体が帯電し、ウェハが吸着される。
【0003】
特許文献1では、基体の上面に直交する断面において電極の側面が尖頭状に形成されている。特許文献2では、ウェハを加熱するためのヒータプレートが基体の下面に重ねられている。ヒータプレートは、2層の樹脂層と、その間に配置された抵抗発熱体とを有しており、抵抗発熱体の側方には空隙が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第01/63972号
【文献】特開2017-168818号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る静電チャックは、絶縁性の基体と、層状の電極とを有している。前記基体は、所定面を有している。前記電極は、前記基体内で前記所定面に沿っている。前記電極の前記所定面側に面する上面と前記基体とは接している。前記電極の側面と前記基体との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙が介在している。
【0006】
本開示の他の態様に係る静電チャックは、絶縁性の基体と、層状の電極とを有している。前記基体は、所定面を有している。前記電極は、前記基体内で前記所定面に沿っている。前記電極の前記所定面側に面する上面と前記基体とは接している。前記電極の前記所定面とは反対側に面する下面と前記基体との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙が介在している。
【0007】
本開示の一態様に係る静電チャックの製造方法は、凹部形成ステップと、材料配置ステップと、積層ステップと、焼成ステップとを有している。前記凹部形成ステップでは、第1セラミックグリーンシートの第1主面又は第2セラミックグリーンシートの第2主面に、所定の平面形状で凹部を形成する。前記材料配置ステップでは、前記第1主面及び前記第2主面の一方に、前記所定の平面形状の外縁よりも内側に位置する外縁を有する平面形状で、電極の材料を配置する。前記積層ステップでは、前記凹部形成ステップ及び前記材料配置ステップの後に、前記第1主面及び前記第2主面を互いに向かい合わせて前記第1セラミックグリーンシートと前記第2セラミックグリーンシートとを重ねる。前記焼成ステップでは、互いに重ねられた前記第1セラミックグリーンシート及び前記第2セラミックグリーンシートを焼成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は第1実施形態に係る静電チャックの構成を示す平面図、
図1(b)は
図1(a)のIb-Ib線における断面図、
図1(c)は
図1(b)の領域Icの拡大図。
【
図2】
図2(a)は
図1(b)のIIa-IIa線における断面図、
図2(b)は
図2(a)の領域IIbの拡大図、
図2(c)は
図2(b)のIIc-IIc線における断面図。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)及び
図3(d)は実施形態に係る静電チャックにおける空隙の横断面形状に係る第1~第4具体例を示す図。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)及び
図4(c)は実施形態に係る静電チャックにおける空隙の横断面形状に係る第5~第7具体例を示す図。
【
図5】第2実施形態に係る静電チャックの電極を示す断面図。
【
図7】
図7(a)は第3実施形態に係る静電チャックの要部を示す断面図、
図7(b)は第4実施形態に係る静電チャックの要部を示す断面図。
【
図8】実施形態に係る静電チャックの製造方法の手順の概要の一例を示すフローチャート。
【
図12】実施形態に係る静電チャックにおける空隙の第8具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る静電チャックについて、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上の模式的なものである。従って、細部は省略されていることがあり、また、寸法比率は必ずしも現実のものとは一致していない。また、静電チャックは、各図に示されていない周知の構成要素をさらに備えていても構わない。
【0010】
<第1実施形態>
(静電チャックの概略構成)
図1(a)は、実施形態に係る静電チャック10(以下、「静電」は省略することがある。)の構成を示す平面図である。
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線における断面図である。
図1(c)は、
図1(b)の領域Icの拡大図である。
図2(a)は、
図1(b)のIIa-IIa線における断面図である。
【0011】
これらの図には、直交座標系XYZを付している。チャック10の使用時においては、例えば、Z軸方向正側が上方とされる。チャック10は、概略平板状のプレート10aを有している。そして、チャック10は、プレート10a上に載置されるウェハ101の保持に利用される。なお、チャック10は、例えば、プレート10aに加えて、プレート10aから垂下されたパイプ10b、プレート10aに接続され不図示のケーブル、及び/又はプレート10aへの電力供給の制御を行う不図示の制御部を有していてもよい。
【0012】
プレート10aの上面1a及び下面1bは、例えば、概ね平面である。プレート10aの平面形状及び各種の寸法は、保持対象物の形状及び寸法等を考慮して適宜に設定されてよい。例えば、平面形状は、円形(図示の例)または矩形である。寸法の一例を示すと、直径は20cm以上35cm以下、厚さは5mm以上30mm以下である。
【0013】
プレート10aは、例えば、絶縁性の基体1と、基体1に埋設されている1対の電極2A及び2B(以下、A及びBを省略することがある。)並びに抵抗発熱体9と、電極2又は抵抗発熱体9に電力を供給するための複数の端子4(1つのみ図示)とを備えている。
【0014】
電極2に電圧が印加されることによって、基体1が帯電し、ウェハ101が基体1の上面1aに吸着される。この吸着力としては、例えば、クーロン力、ジョンソン・ラーベック力又はグラジエント力が挙げられる。いずれの力を利用するかによって、チャック10の細部の構成(例えば、基体1の材料、基体1の電極2上の厚さ及び/又は電極2の形状)が異なる。本開示に係る静電チャックでは、いずれの種類の力が利用されてもよい。
【0015】
抵抗発熱体9が設けられていることから理解されるように、図示の例では、チャック10は、ウェハ101を加熱するヒータを兼ねている。ただし、チャック10がヒータを兼ねることは必須の要件ではなく、抵抗発熱体9は設けられなくてもよい。逆に、チャック10は、加熱以外に、他の機能を有していてもよい。例えば、チャック10は、冷却媒体としての、及び/又はパージガスとしての流体が流れる流路を有していてもよい。
【0016】
特に図示しないが、静電チャック10は、端子4と電極2又は抵抗発熱体9とを接続する配線パターンを電極2及び抵抗発熱体9の層とは別個の層に有していてもよい。
【0017】
基体1の外形は、プレート10aの外形を構成している。従って、上述のプレート10aの形状及び寸法に係る説明は、そのまま基体1の外形及び寸法の説明と捉えられてよい。基体1の材料は、例えば、セラミックスである。セラミックスは、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化珪素(SiC)及び窒化珪素(Si3N4)等を主成分とする焼結体である。基体1は、全体が同一の材料から構成されている必要は無く、例えば、上面1a側と下面1b側とで互いに異なる材料が用いられていてもよい。
【0018】
1対の電極2は、互いに非接続とされており、互いに異なる電位が付与される。すなわち、静電チャック10は、いわゆる双極型のものである。電極2は、基体1の上面1aに沿う(例えば平行な)層状導体である。平面視において、1対の電極2は、例えば、基体1の概ね全面を2等分するようにベタ状に広がっている。その平面形状は、適宜に設定されてよく、図示の例では、各電極2は、概ね半円状となっている。そして、1対の電極2は、直線状部分を互いに平行に対向させている。
【0019】
電極2の厚さ(Z方向)は、例えば、電極2の全面に亘って一定である。その具体的な値は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、電極2の厚さは、0.1μm以上200μm以下である。電極2の基体1の上面1aからの深さは、吸着力として利用する力の種類及び基体1の誘電率等に応じて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、電極2の基体1の上面1aからの深さは、10μm以上10mm以下である。
【0020】
電極2の材料は、例えば、金属である。金属の種類は、適宜に選択されてよく、例えば、タングステン(W)、タングステンカーバイト(WC)もしくはモリブデン(Mo)又はこれらを主成分とする合金である。また、電極2の材料は、前記のような金属を含む導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。すなわち、電極2の材料は、ガラス粉末及び/又はセラミック粉末等の添加剤(別の観点では無機絶縁物)を含むものであってもよい。
【0021】
抵抗発熱体9は、電極2よりも基体1の下面1b側において、概略、基体1の上面1aに沿って(例えば平行に)延びている。また、電極2は、平面視において、例えば、基体1の概ね全面に亘って延びている。抵抗発熱体9に電流が流れることによって、ジュールの法則に従って熱が発生し、ひいては、基体1の上面1aに載置されているウェハ101が加熱される。
【0022】
抵抗発熱体9は、図示の例のように、層状導体からなるものであってもよいし、図示とは異なり、線材がコイル軸回りに螺旋状に巻き回されて構成されたコイルを含み、コイル軸が基体1の上面1aに沿って延びるように配置されたものであってもよい。抵抗発熱体9の平面視におけるパターン(コイル状の場合はコイル軸の経路)は、適宜なものとされてよい。例えば、抵抗発熱体9は、平面視において、ミアンダ状に延びていてもよいし、螺旋状に延びていてもよい。抵抗発熱体9の材料、寸法及び上面1aからの深さ等も適宜に設定されてよい。
【0023】
複数の端子4は、例えば、平面視において基体1の中央側に位置しており、基体1の下面1bから基体1の外部へ露出している。なお、端子4は、平面視において基体1の中央以外に位置していてもよい。複数の端子4は、特に図示しないが、例えば、電極2A及び2Bに個別に接続されている2つの端子、及び抵抗発熱体9の両端に接続されている2つの端子を含んでいる。端子4は、例えば、電極2又は抵抗発熱体9の端子4の直上に位置する部分に直接又はビア導体を介して接続されていてもよいし、基体1内に形成された層状配線を介して、電極2又は抵抗発熱体9の適宜な位置と接続されていてもよい。1つの端子4は、1つの電極2の複数位置に対して接続されていてもよい。
【0024】
(静電チャック内の空隙)
図2(b)は、
図2(a)の領域IIbの拡大図である。
図2(c)は、
図2(b)のIIc-IIc線における断面図である。これらの図は、電極2の外縁(平面視における外縁。以下、同様。)のうち直線状部分における断面拡大図となっている。ただし、電極2の外縁のうち円弧状部分の断面も、基本的には直線状部分の断面と同様とされてよい。
【0025】
各電極2は、基体1の上面1a側に面する上面2aと、基体1の下面1b側に面する下面2bと、上面2aと下面2bとをつなぐ側面2c(平面視における直線状部分及び円弧状部分の2つ)とを有している。図示の例では、上面2a、下面2b及び側面2cは、概ね平面状であり、互いに直交している。なお、図示の例とは異なり、上面2a(又は下面2b)と側面2cとの境界は、必ずしも明瞭でなくてもよい。
【0026】
電極2の上面2a及び下面2bは、基体1に接している。一方、側面2cは、少なくとも一部(図示の例では全部)が基体1に接しておらず、側面2cと基体1との間に空隙3が位置している。なお、電極2の上面2aは、その全体が完全に基体に接している必要は無く、一部に空隙が存在してもよい。この空隙は、例えば、側面2cに接する空隙3に比較して小さい。
【0027】
空隙3は、真空とされ、又はガスが満たされている。ガスは、例えば、空気又は窒素である。理論上の真空の比誘電率は1であり、また、一般にガスの比誘電率は1に近い。例えば、空隙3の比誘電率は、基体1の比誘電率よりも小さい。なお、基体1の比誘電率は、例えば、4~12である。また、理論上、真空の空隙3は、熱を伝えない。また、通常、ガスの熱伝導率は、基体1を構成している絶縁材料よりも熱伝導率が低い。
【0028】
空隙3は、基本的に電極2の外縁の全体に亘って連続的に延びている。ただし、誤差により、又は意図的に、途中に途切れる部分が形成されていても構わない。換言すれば、空隙3は、電極2の外縁に沿って連続的に延びる部分を含んでいる。当該部分の長さは、例えば、空隙3の幅Wよりも長く、幅Wの10倍よりも長く、又は電極2の外縁の長さの8割よりも長い。
【0029】
空隙3の横断面(電極2の外縁に直交する断面)の形状及び大きさは、電極2の外縁に沿って、一定であってもよいし、変化していてもよい。変化は、意図的なものであってもよいし、製造誤差によるものであってもよい。なお、空隙3が電極2の外縁に沿って連続的に延びている部分の長さを空隙3の幅Wと比較するとき、幅Wは、空隙3の長さ全体内の、又は当該部分の長さ内の、平均値であってもよいし、最大値であってもよい。
【0030】
なお、一横断面において、空隙3の幅は、上下方向の位置によって異なることがある(後述する
図4(b)参照)。本開示において、単に空隙3の幅という場合、例えば、
図4(b)の幅Wで示されるように、平面透視したときの各横断面における最大幅を指すものとする。
【0031】
実施形態の説明では、特に断りがない限り、空隙3(並びに電極2の側面2c及びその周辺部)の横断面の形状及び大きさは、基本的に、電極2の外縁に沿って概ね一定であるものとする。すなわち、以下に述べる一横断面における電極2及び空隙3の形状及び寸法に関する説明は、他の横断面においても概ね同様に成り立つものとする(後述する種々の具体例及び第2実施形態以降も同様。)。なお、横断面の形状及び大きさが電極2の外縁に沿って一定でない場合は、以下に述べる説明は、電極2の外縁の所定範囲においてのみ成り立つだけでも構わない。
【0032】
空隙3の横断面の形状は、後述する横断面の形状に係る種々の具体例からも理解されるように、適宜に設定されてよい。
図2(c)では、空隙3の横断面の形状として矩形が例示されている。当該矩形は、基体1の上面1a及び下面1bに概ね平行な2辺と、当該2辺に直交する2辺とを有している。基体1の上面1a及び下面1bに概ね平行な2辺は、例えば、電極2の上面2a及び下面2bに概ね面一である。すなわち、
図2(c)では、空隙3の高さH(Z軸方向の大きさ)は、電極2の厚さと同等とされている。
【0033】
空隙3の高さH及び幅W等の各種の寸法も適宜に設定されてよい。例えば、空隙3の高さH(高さが幅方向に一定でない場合は例えば最大値、平均値又は最小値)は、電極2の厚さ(例えば側面2c付近を除く平均値。特に断りがない限り、本開示において同様。)に対して、小さくてもよいし、同等(例えば両者の差は電極2の厚さの10%未満)でもよいし、大きくてもよい。また、空隙3の幅Wは、空隙3の高さH(高さが一定でない場合は例えば最大高さ)よりも小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。幅Wの一例を挙げると、例えば、10μm以上500μm以下、及び/又は空隙3の最大高さ若しくは電極2の厚さの1/10以上20倍以下である。なお、以下に説明する空隙3の横断面形状に係る種々の具体例においても、高さ及び幅の寸法並びに両者の大小関係は適宜に設定されてよい。
【0034】
(空隙の横断面形状に係る種々の具体例)
図3(a)~
図4(c)は、空隙3の横断面における形状の種々の具体例を示す図であり、
図2(c)の領域IVに対応している。なお、
図2(c)は、空隙3の横断面の形状が矩形である具体例と捉えられてもよいし、以下に説明する種々の具体例を抽象的に示したものと捉えられてもよい。
【0035】
(横断面形状の第1具体例)
図3(a)の例では、空隙3の側面3c(電極2とは反対側の面)と、空隙3の上面3a又は下面3bとの角部は面取りされている。面取り面は、図示のように曲面状であってもよいし、図示とは異なり、平面状であってもよい。なお、特に図示しないが、側面3cの全体が電極2側を凹とする曲面状となっていてもよい。
【0036】
また、
図3(a)の例では、電極2の側面2cは、外側に膨らむ凸面となっている。この凸面は、例えば、概略、曲面である。すなわち、凸面の接線の向きの変化は基本的に連続的である。ただし、側面2cには、空隙3の高さH及び幅Wに比較して微小な凹凸が存在しても構わない。
【0037】
(横断面形状の第2具体例)
図3(b)の例では、空隙3の形状(及び電極2の側面2cの形状)は、
図3(a)の例と同様である。ただし、
図3(a)の例では、空隙3の高さHが電極2の厚さと同等であったのに対して、
図3(b)の例では、空隙3の高さHは、電極2の厚さよりも小さくなっている。換言すれば、空隙3は、電極2の厚さよりも高さが小さい部分(本例では空隙3の全部)を含んでいる。別の観点では、電極2の側面2cは、一部のみが空隙3に接している。側面2cの他の部分は、基体1に接している。
【0038】
このような空隙3のうち電極2の厚さよりも小さい部分の高さ、及び/又は電極2の側面2cのうち空隙3に接する部分の上下方向に平行な長さ(側面2cの湾曲等を無視した長さ)の具体的な値は、適宜に設定されてよい。例えば、これらの値は、電極2の厚さの9/10未満であってもよいし、1/2未満であってもよいし、2/5未満であってもよい。また、これらの値は、例えば、1μm以上、及び/又は電極2の厚さの1%以上である。
【0039】
なお、後述する種々の例においても、空隙3は、電極2の厚さよりも高さが小さい部分を有し、及び/又は電極2の側面2cは、上下方向の一部のみが空隙3に接することがある。そのような例における上下方向の大きさの具体的な値も、上記と同様に適宜に設定されてよい。ただし、後述する種々の例の説明では、基本的に、実際に図示されている例の値の大きさについてのみ言及する。
図3(b)では、空隙3の高さ(側面2cのうち空隙3に接する部分の上下方向の長さ)は、電極2の厚さの1/2以上9/10未満とされている。
【0040】
電極2の側面2cのうち空隙3に接する部分の位置も適宜に設定されてよい。例えば、当該部分は、図示のように、上面2a及び下面2bのいずれにもつながらない部分であってもよいし、図示とは異なり、上面2aにつながる部分であってもよいし、下面2bにつながる部分であってもよい。また、当該部分は、上面2a及び下面2bのいずれにもつながらない場合において、電極2の厚さの概ね中央に位置していてもよいし、図示とは異なり、上面2a側又は下面2b側に寄っていてもよい。
【0041】
なお、後述する種々の例においても、電極2の側面2cのうち一部が空隙3に接することがある。そのような例における側面2cが空隙3に接する位置も上記と同様に種々の位置とされてよい。ただし、後述する種々の例の説明では、基本的に、実際に図示されている例の位置についてのみ言及する。
図3(b)では、側面2cのうち空隙3に接する部分は、電極2の厚さの中央に位置している。空隙3に接する部分が電極2の厚さの中央に位置しているとは、例えば、当該部分の上下方向の中央位置が電極2の厚さの中央側の1/3に収まっている状態である。
【0042】
(横断面形状の第3具体例)
図3(c)の例では、電極2は、側面2cに突部2dを有している。突部2dは、上方側の面が基体1に接しており、下方側の面が基体1から離れている。すなわち、真空の、又はガスが満たされている空隙3は、突部2dの下方側の面と基体1との間に広がっている。
【0043】
突部2dの具体的な形状、厚さ(上下方向)、突出量(横方向、平面視において電極2の外縁に直交する方向)、空隙3に対する相対的な大きさ等は、適宜に設定されてよい。図示の例では、突部2dは、先端側ほど薄くなるテーパ形状とされている。突部2dと空隙3とが接している面の、横方向(平面視において電極2の外縁に直交する方向)における長さは、例えば、空隙3の幅Wの1/3以上である。
【0044】
また、
図3(c)の例では、空隙3は、高さH1の第1高さ部3eと、高さH1よりも低い高さH2の第2高さ部3fとを有している。第2高さ部3fは、第1高さ部3eに対して、電極2の側面2cに対して反対側に位置している。
【0045】
第1高さ部3e及び第2高さ部3fの形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、高さH1は、
図3(b)の例の空隙3の高さHよりも更に小さくなっており、電極2の厚さの2/5以上1/2未満となっている。第1高さ部3eは、突部2dが設けられていないと仮定すると、電極2側から概ね一定の高さで電極2とは反対側へ延びている。図示の例では、空隙3を構成する空間の上方へ突部2dが入り込むことによって、空隙3は、第1高さ部3eよりも電極2側に第1高さ部3eよりも高さが低い部分を含んでいる。第2高さ部3fは、先端側(電極2とは反対側)ほど薄くなるテーパ状とされている。
【0046】
(横断面形状の第4具体例)
図3(d)の例では、電極2が無いものとして考えると、基体1内の空所(空隙3を含む)の形状及び大きさは、概ね、
図3(c)の形状及び大きさと同様である。ただし、
図3(c)の例では、電極2は、側面2cに突部2dを有していたのに対して、
図3(d)の例では、電極2は、側面2cに凹部2eを有している。別の観点では、空隙3は、電極2の側面2cへ入り込む部分を有している。当該部分は、第1高さ部3eよりも高さが低い部分を含む。
【0047】
凹部2eの形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、凹部2eは、底面側(電極2の平面方向内側)ほど上下方向(電極2の厚さ方向)の径が小さくなるテーパ状とされている。凹部2eの上下方向の最大径(開口面における径)は、例えば、電極2の厚さよりも小さく、空隙3の高さの1/3以上1倍以下となっている。
【0048】
(横断面形状の第5具体例)
図4(a)の例では、空隙3は、その全体が電極2とは反対側ほど上下方向の径が小さくなるテーパ状とされている。別の観点では、空隙3は、
図3(c)及び
図3(d)の例と同様に、第1高さ部3eと、第1高さ部3eよりも電極2とは反対側に位置し、第1高さ部3eの高さH1よりも低い高さH2の第2高さ部3fとを有している。
【0049】
ただし、
図3(c)及び
図3(d)の例では、空隙3は、第1高さ部3eよりも電極2側に、第1高さ部3eよりも低い高さの部分(符号省略)を有していたが、本例では、第1高さ部3eが電極2の側面2cに接している。換言すれば、空隙3のうち側面2cに接している部分は、空隙3内で高さが最も大きい部分である。当該部分の高さは、例えば、電極2の厚さよりも小さくされている。
【0050】
(横断面形状の第6具体例)
図4(b)の例では、空隙3は、
図3(c)~
図4(a)と同様に、高さH1の第1高さ部3eと、第1高さ部3eに対して電極2とは反対側に位置しており、高さH1よりも低い高さH2の第2高さ部3fとを有している。また、空隙3は、
図4(a)と同様に、第1高さ部3eが電極2の側面2cに接している。
【0051】
ただし、本例では、既述の他の例のように徐々に空隙3の高さが低くなるのではなく、段階的に空隙3の高さが低くなっている。すなわち、第1高さ部3eと第2高さ部3fとの間の高さの変化は比較的急激であり、第2高さ部3fは、第1高さ部3eから電極2とは反対側へ突出するような形状となっている。
【0052】
第1高さ部3e及び第2高さ部3fの形状及び大きさ等は、適宜に設定されてよい。図示の例では、第1高さ部3eは、電極2の厚さと概ね同等の高さH1を有し、また、電極2の側面2cとは反対側へ膨らむ側面を有している。高さH1は、例えば、電極2の厚さの4/5以上である。第2高さ部3fは、高さH1よりも低い高さH2を有しているとともに、高さH2よりも大きい幅を有している。
【0053】
なお、
図4(b)の高さH1から理解されるように、空隙3が電極2の側面2cの凸面又は突部によって上下に分断されている場合、空隙3の高さHは、分断されたそれぞれではなく、電極2の凸面等による分断がないものとして定義されてよい。
【0054】
(横断面形状の第7具体例)
図4(c)の例では、空隙3は、電極2の側面2cから離れるほど下方に位置するように傾斜している。換言すれば、空隙3は、第1位置部3mと、第1位置部3mに対して側面2cとは反対側かつ第1位置部3mよりも下方に位置している第2位置部3nと、を含んでいる。なお、ここでいう第2位置部3nが第1位置部3mよりも下方に位置しているとは、第2位置部3nの全体が第1位置部3mの全体よりも下方に位置しているという意味ではなく、第2位置部3nの基準位置(例えば上下方向の中央位置)が、第1位置部3mの基準位置(例えば上下方向の中央位置)よりも下方に位置しているという意味である。
【0055】
第1位置部3m及び第2位置部3nの形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、空隙3は、概ね一定の高さHで直線状に延びており、第1位置部3m及び第2位置部3nは互いに同等の形状及び高さである。空隙3は、例えば、電極2の側面2cに対して概ね中央に接しており、空隙3の先端(側面2cとは反対側)は、電極2の下面2bよりもやや上方に位置している。
【0056】
なお、上記のように、第2位置部3nは、その高さHの中央位置が第1位置部3mの高さHの中央位置よりも下方に位置すればよい。従って、例えば、空隙3が、水平な下面と、電極2の側面2cから離れるほど下方に位置するように傾斜した上面とからなる三角形の場合も、第1位置部3m及び第2位置部3nが設けられているといえる。また、例えば、
図4(b)の例において、第2高さ部3fの高さH2の中央位置が第1高さ部3eの高さH1の中央位置よりも下方に位置している場合も、空隙3は、第1位置部3m及び第2位置部3nを有しているといえる。
【0057】
(横断面形状の第8具体例)
図12は、空隙3の横断面における形状の第8具体例を示す図であり、例えば、
図2(c)の左側半分に相当している。ただし、ここでは、電極2の外縁に沿う方向における互いに異なる3位置における断面が示されている。
【0058】
この例では、空隙3の高さHは、電極2の厚さよりも大きくなっている。より詳細には、空隙3は、電極2よりも上方に広がっているとともに、電極2よりも下方に広がっている。換言すれば、空隙3の上面3aは、電極2の上面2aよりも上方に位置し、空隙3の下面3bは、電極2の下面2bよりも下方に位置している。
【0059】
ただし、高さHが電極2の厚さよりも大きい場合において、上面3aが上面2aよりも上方に位置している一方で、下面3bが下面2bと面一となっていたり、下面3bが下面2bと上面2aとの間に位置していたりしてもよい。同様に、高さHが電極2の厚さよりも大きい場合において、下面3bが下面2bよりも下方に位置している一方で、上面3aが上面2aと面一となっていたり、上面3aが上面2aと下面2bとの間に位置していたりしてもよい。
【0060】
高さHが電極2の厚さよりも大きい空隙3において、高さHは、空隙3の幅Wよりも大きくてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、小さくてもよい。また、この具体例における高さH及び幅Wの具体的な値も、
図2(c)を参照して説明した大きさの範囲内とされてよい。例えば、高さHは、電極2の厚さの1.1倍以上20倍以下とされてよい。また、高さHは、電極2の厚さの20倍よりも大きくされてもよい。
【0061】
図2(c)の説明において、誤差により、又は意図的に、電極2の外縁に沿う方向において、空隙3が途切れる部分が存在していてもよいことを述べた。これは、換言すれば、電極2の側面2cが基体1に接する部分が存在してもよいということである。
図12では、側面2cと空隙3との、電極2の幅方向における位置関係について、誤差による、又は意図的なばらつきも示している。
【0062】
具体的には、
図12の左側においては、電極2の側面2cと空隙3の電極2側の側面3dとが概ね面一である構成が示されている。
図12の中央においては、側面2cが空隙3内に位置している(側面3cと側面3dとの間に位置している)構成が示されている。
図12の右側においては、側面2cが空隙3の電極2とは反対側の側面3cに当接している構成が示されている。特に図示しないが、電極2は、空隙3内で屈曲するなどして、側面2c以外の部分が側面3c等に接していてもよい。
【0063】
上記のようなばらつきがある場合において、いずれの構成が電極2の外縁に沿う方向に占める割合が大きくてもよい。また、
図12では、上記の複数の構成が1個の電極2の外縁に沿う方向の互いに異なる位置にあるものとして説明したが、いずれか1つの構成が1個の電極2の外縁の概ね全体に亘っていてもよい。
【0064】
上記の種々の具体例は、適宜に組み合わされてよい。例えば、
図3(a)、
図3(b)及び
図4(a)~
図4(c)の例では、電極2の側面2cは、全面が凸面とされたが、
図3(c)又は
図3(d)のように、突部2d又は凹部2eを有する形状とされてもよい。逆に、
図3(c)及び
図3(d)において、側面2cの全面が凸面とされてもよい。
【0065】
また、例えば、
図3(c)、
図3(d)、
図4(a)及び
図4(c)において、空隙3の電極2の側面2cに接する部分の高さ(別の観点では、高さH1及び/又は最大高さ)は、電極2の厚さよりも小さくされたが、当該部分の厚さは、
図3(a)又は
図4(b)の例と同様に、電極2の厚さと同等であってもよい。
【0066】
また、例えば、
図4(a)の空隙3のテーパ形状と、
図4(b)の空隙3の高さの段階的な変化とが組み合わされてもよいし、
図3(c)~
図4(b)の空隙3の形状と、
図4(c)の空隙3の傾きとが組み合わされてもよい。
【0067】
また、例えば、
図12の例では、
図2(c)と同様に、電極2の側面2cとして平面状のものが示されたが、側面2cの形状として、
図3(a)~
図4(c)の形状又はその組み合わせが適用されてよい。例えば、
図12において、側面2cは、凸面又は凹面を含んでいてよい。また、例えば、
図12の例では、空隙3の横断面の形状として、
図3(a)と同様に、矩形状のものが示されたが、
図3(a)~
図4(c)の形状又はその組み合わせが適用されてよい。例えば、
図12において、空隙3は、角部が面取りされていたり、側面が凸面又は凹面を有していたり、高さ及び/又は位置が連続的若しくは段階的に変化していたりしてよい。
【0068】
以上のとおり、本実施形態では、静電チャック10は、所定面(上面1a)を有している絶縁性の基体1と、基体1内で上面1aに沿っている層状の電極2と、を有している。電極2の上面2aと基体1とは接しており、かつ電極2の側面2cと基体1との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙3が介在している。
【0069】
従って、例えば、電極2に対する電圧印加を停止した後、基体1から残留電荷を迅速に除去できる。その結果、ウェハ101を基体1から速やかに搬出し、生産性を向上させることができる。除電の時間を短くできる理由は、例えば、次の通りである。
【0070】
静電チャック10に使われるセラミックの比誘電率は通常10程度であるのに対し、空隙3(真空またはガス)の比誘電率は1または1に極近い値であるため、空隙3は相対的に帯電しにくい。そのため、基体1全体として、蓄積される電荷は空隙3の体積割合に応じて少なくなる。よって、除電すべき電荷が少なく済むので速く除電される。
【0071】
通常、アースが電極2に電気的につながっている場合、基体1の電極2に当接している部分の電荷はアースに流れやすい。そして、電極2に隣接する部分に空隙3が位置していることにより、基体1の残留電荷が、空隙3の内壁を移動しやすい(内壁を沿面移動しやすい)。よって、基体1の残留電荷が、電極2を介して速く徐電される。
【0072】
電極2の側面2cに空隙が位置していれば、電極2の上下に基体1の厚みを確保したまま(別の観点では、空隙3によって静電チャック10の厚みを増加させることなく)、蓄積される電荷を抑制できる。電極2の上下に基体1の厚みが確保されることによって、例えば、基体1の機械的強度が向上する。
【0073】
電極2と基体1の上面1aとの間に空隙があると、チャック10のウェハ101を吸着する力が低下する。しかし、電極2の上面2aと基体1とは接した状態で、空隙3が存在することから、吸着力を維持することができる。このように、チャック10では、機械的強度及び吸着力を維持しつつ、ウェハ101を外しやすくできる。
【0074】
また、本実施形態では、空隙3は、基体1の上面1aの平面視において、電極2の側面2cからの幅Wよりも大きい長さで電極2の側面2c(電極2の外縁)に沿って連続している。
【0075】
従って、空隙3の幅が小さくとも、空隙3の体積を増やせる。さらに、空隙3が電極2の外縁に沿って連続しているので、除電すべき電荷の分布に偏りが生じにくい。このため、さらに速く除電され、ウェハを外しすい。
【0076】
また、本実施形態では、空隙3は、電極2の、上面1aに沿う方向の両側に形成されている。例えば、電極2の外縁の直線状部分と円弧状部分とのそれぞれに空隙3が形成されている。
【0077】
従って、電極2は、その両側で電荷の移動が促進されるので除電されやすい。一定の方向にのみ電荷が移動して意図しない電流が大きくなるおそれも低減される。
【0078】
また、本実施形態では、空隙3は、上下方向(基体1の上面1aに直交する方向)の大きさが電極2の上下方向の大きさよりも小さい部分を含んでいてよい(例えば
図3(b)~
図4(c))。
【0079】
この場合、例えば、電極2の外縁付近で基体1の体積を確保して絶縁破壊のおそれを低減し、その一方で、沿面移動によって除電を促進することができる長さを長くすることができる。
【0080】
また、本実施形態では、空隙3は、上下方向の大きさが電極2の上下方向の大きさよりも大きい部分を含んでいてよい(
図12)。
【0081】
この場合、例えば、静電チャック10の温度変化が大きい場合に、電極2の外縁において電極2の膨張が許容されやすくなる。例えば、電極2がその平面に沿う方向に膨張したときに、電極2の外縁は、空隙3内で上方又は下方に屈曲して、空隙3の幅W以上に変位することが可能である。その結果、例えば、基体1に加えられる応力が低減される。
【0082】
また、本実施形態では、空隙3は、第1高さ部3eと、第1高さ部3eに対して電極2の側面2cとは反対側に位置しており、上下方向の大きさが第1高さ部3eよりも小さい第2高さ部3fと、を含んでいてよい(
図3(c)~
図4(b))。
【0083】
この場合、例えば、第2高さ部3fが相対的に小さいことにより、絶縁破壊のおそれを低減しつつ、沿面移動によって除電を促進する長さを長くすることができる。一方で、相対的に高さが大きい第1高さ部2eによって電極2の膨張を吸収するという効果も奏される。特に、第1高さ部2eが
図12のように電極2の厚さよりも大きい場合に、当該効果が向上する。
【0084】
また、本実施形態では、空隙3は、第1位置部3mと、第1位置部3mに対して電極2の側面2cとは反対側かつ第1位置部3mよりも下方(基体1の上面1aとは反対側)に位置している第2位置部3nと、を含んでいる。
【0085】
従って、例えば、空隙3がウェハ吸着面と反対側(下方)に曲がっていることで、電極2と基体1の上面1aとの間にある基体1の体積割合を増やしつつ、空隙3を広げることができる。その結果、例えば、電極2と上面1aとの間の絶縁破壊のおそれを低減しつつ、残留電荷を速く徐電できる。
【0086】
また、本実施形態では、電極2の側面2cは、凸面を有していてもよい(例えば
図3(a)~
図4(c))。
【0087】
この場合、例えば、電極2の厚みを厚くしなくても、空隙3に接する電極2の面積を増やすことができるので、電圧遮断後の残留電荷を速く減らすことができる。
【0088】
また、本実施形態では、電極2の側面2cは、突部2dを有していてもよい。突部2dの基体1の上面1a側の面は、基体1に接していてよい。空隙3は、突部2dの基体1の下面1b側の面と基体1との間に介在する部分を含んでいてよい(
図3(c))。
【0089】
この場合、例えば、突部2dは、基体1の下方側部分よりも基体1の上方側部分に電荷を振り分けやすい。その結果、例えば、効率的に吸着力を大きくすることができる。また、別の観点では、空隙3の容積に対して電極2と基体1との接触面積を大きくしたことになるから、除電すべき電荷の減少量を維持しつつ、帯電及び除電が迅速化される。
【0090】
また、本実施形態では、電極2の側面2cは、凹部2eを有していてもよい(
図3(d))。
【0091】
この場合、例えば、別の観点では、凹部2eの両側に電極2の突部を形成したことになるから、空隙3の容積に対して電極2と基体1との接触面積を大きくしたことになる。その結果、例えば、除電すべき電荷の減少量を維持しつつ、帯電及び除電が迅速化される。2つの突部が設けられていることから、同等の大きさの1つの突部が設けられている場合に比較して除電が迅速化される。
【0092】
<第2実施形態>
図5は第2実施形態に係るチャック20を示す断面図であり、
図2(a)に対応している。
【0093】
チャック20は、電極の平面形状のみが第1実施形態と相違する。なお、電極の平面形状の相違に伴って、細部の構成(例えば基体1の電極上の厚さ)が第1実施形態と第2実施形態とで異なっていてもよいことはもちろんである。
【0094】
チャック20の電極12A及び12B(以下、A及びBを省略することがある。)は、例えば、互いに噛み合う1対の櫛型電極とされている。具体的には、各電極12は、バス部12rと、バス部12rから互いに並列(例えば平行)に延びる複数の歯部12sとを有している。なお、特に図示しないが、ウェハは、例えば、その外縁が、バス部12rに重なるように配置される。
【0095】
バス部12rは、例えば、基体1の外縁に沿って一定の幅で延びている。図示の例では、基体1の外縁が円であることに応じて、バス部12rは円弧状である。1対のバス部12rは、基体1の平面視における中央側の領域を挟んで互いに対向している。
【0096】
一方の電極12の歯部12sは、例えば、当該一方の電極12のバス部12rから他方の電極12のバス部12rへ向かって一定の幅で直線状に延びている。そして、一方の電極12の歯部12sと、他方の電極12の歯部12sとは、歯部12sの幅方向へ1つずつ交互に配列されている。互いに隣り合う歯部12sは、互いに離間しつつ対向している。
【0097】
1対の電極12において、Y方向(歯部12sの配列方向)の最も両側に位置する部分は、バス部12rの一部と捉えられてもよいし、幅が一定でない歯部12sと捉えられてもよい。この特異部分を除いて、図示の例では、バス部12rの幅と歯部12sの幅とは同等とされている。ただし、両者の幅は異なっていてもよい。
【0098】
1対の電極12において、例えば、複数の歯部12sの幅は互いに同一であり、また、複数の歯部12sのピッチは一定である。別の観点では、複数の歯部12s間の隙間の大きさは互いに同一である。複数の歯部12sの先端とバス部12rとの隙間の大きさは、例えば、互いに同一であり、また、複数の歯部12s間の隙間の大きさと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0099】
【0100】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、電極12の側面12cと基体1との間には空隙3が形成されている。特に図示しないが、電極12の外縁に直交する断面における空隙3の形状は、第1実施形態と同様でよい。すなわち、
図2(c)、
図3(a)~
図4(c)及び
図12は、電極2の符号を電極12の符号に置き換えて、本実施形態の断面図とされてよい。
【0101】
また、空隙3の、電極12の外縁の長さに対する長さ等も第1実施形態と同様とされてよい。例えば、空隙3は、電極12の外縁の長さの全体に亘って連続的に延びてよい。従って、例えば、空隙3は、バス部12rの幅方向(X方向)両側の側面12c及び歯部12sの幅方向(Y方向)両側の側面12cに沿って延びている部分を含んでいる。
【0102】
第1実施形態と同様に、空隙3の横断面における形状及び寸法は、基本的に電極12の外縁に沿って一定とされてよい。ただし、
図6に示すように、バス部12rと歯部12sとの間で、空隙3の形状及び/又は寸法に差異があってもよい。
【0103】
図6に示す例では、空隙3は、歯部12sの側面12cに接している第1側方部3pと、バス部12rの、複数の歯部12sの間に位置する側面12cに接している第2側方部3qとを有している。そして、第2側方部3qの幅W2は、第1側方部3pの幅W1よりも広くなっている。また、第2側方部3qの幅W2は、バス部12rの歯部12sとは反対側の外側部3rの幅W3よりも広くなっている。なお、外側部3rの幅W3は、第1側方部3pの幅W1よりも広くてもよいし、同等でもよいし、狭くてもよい。
【0104】
なお、空隙3の横断面の形状は、第1側方部3p、第2側方部3q及び外側部3rの3つ又は2つ同士で同一であってもよいし、異なっていてもよい。幅W1~W3の具体的な値等は適宜に設定されてよい。例えば、幅W2は、幅W1又はW3の1.1倍以上又は1.5倍以上である。
【0105】
以上のとおり、本実施形態においても、静電チャック20は、所定面(
図1(a)の上面1a参照)を有している絶縁性の基体1と、基体1内で上面1aに沿っている層状の電極12と、を有している。電極12の上面12aと基体1とは接しており、かつ電極12の側面12cと基体1との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙3が介在している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、除電が迅速化される。
【0106】
また、本実施形態では、電極12は、基体1の上面1aの平面視において、接続部(バス部12r)と、バス部12rから互いに並列に延びている2つの延在部(歯部12s)と、を有している。空隙3は、歯部12sの側面12cに接している第1側方部3pと、バス部12rの側面12cに接しており、バス部12rの側面12cからの幅W2が、第1側方部3pの歯部12sの側面12cからの幅W1よりも広い第2側方部3qと、を有していてよい。
【0107】
複数の歯部12sとバス部12rとの接続部分は、例えば、複数の歯部12sの大部分に比較して、基体1の体積と導体との体積の比が異なることなどから、除電に関して特異点となりやすい。この特異点において空隙3の幅を相対的に大きくして除電を促進することによって、例えば、チャック20の除電の速さを評価するときに、特異点を考慮対象外にしやすくなる。その結果、例えば、設計が容易化される。
【0108】
また、本実施形態では、空隙3は、接続部(バス部12r)の延在部(歯部12s)とは反対側の側面12c(外側側面)に接している外側部3rと、バス部12rの、2つ歯部12sの間に位置している側面12c(内側側面)に接しており、内側側面からの幅W2が外側部3rの外側側面からの幅W3よりも大きい内側部(第2側方部3q)とを有していてよい。
【0109】
実施形態のように円弧状のバス部12rにおいては、内側の曲率半径は外側の曲率半径よりも小さい。このため、空隙3の幅が内側と外側で同じ場合、バス部12rの単位長さ当たりの空隙3の体積は、外側よりも内側が小さくなる。そこで、内側の空隙3の幅W2を外側の幅W3よりも広くすることで、その差を縮小することができる。
【0110】
<第3実施形態>
図7(a)は、第3実施形態に係る静電チャックの要部を示す断面図であり、
図2(c)に対応している。
【0111】
第3実施形態に係る静電チャックは、電極12の下面12bと基体1との間に空隙5が形成されている点のみが第1及び第2実施形態と相違する。空隙5は、電極12の側面12cと基体1との間の空隙3と同様に、真空とされ、又はガスが満たされている空間である。
【0112】
なお、
図7(a)では、電極として、第2実施形態の電極12(より詳細には例えばバス部12r又は歯部12sの長手方向に直交する横断面)が例示されているが、電極は、第1実施形態の電極2であっても構わない。以下の説明では、電極12の符号のみを付すことがあるが、適宜に電極2の符号に置き換えられてよい。後述する第4実施形態(
図7(b))についても同様である。
【0113】
また、
図7(a)では、空隙3の横断面の形状として、
図4(a)に例示したものが図示されている。ただし、空隙3の横断面の形状はこれに限定されず、例えば、第1実施形態で例示した他の具体例が本実施形態に組み合わされてよい。また、
図7(a)では、電極12の横断面の形状として、矩形の角部を面取りした形状が図示されている。ただし、電極12の横断面の形状はこれに限定されず、例えば、第1実施形態で例示した種々の具体例が本実施形態に組み合わされてもよい。
【0114】
既に述べたように、空隙3の横断面の形状及び大きさは、例えば、電極12の外縁の全体に亘って概ね一定である。空隙5も、基本的に電極12の外縁の長さ方向の全体に亘って連続的に延びてよい。例えば、第2実施形態であれば、空隙5は、バス部12r及び/又は歯部12sが延びる方向へ延びていてよいし、第1実施形態であれば、電極2の外縁の直線状部分及び/又は円弧状部分に沿って延びていてよい。ただし、途中に途切れる部分が存在しても構わない。空隙5の、電極12の外縁に沿って連続的に延びる部分の長さは、例えば、空隙5の、電極12の外縁からの幅よりも長く、又はこれらの10倍よりも長い。
【0115】
空隙5の横断面の形状及び大きさ等は適宜に設定されてよい。図示の例では、空隙5は、概略一定の高さ(Z軸方向)で電極12の外縁に交差する方向(例えばバス部12r又は歯部12sの幅方向)に広がっている。空隙5の高さは、例えば、電極12の厚さの1/2以下、及び/又は30μm以下若しくは10μm以下であり、また、1μm以上、及び/又は電極12の厚さの1%以上である。空隙5の、電極12の外縁に交差する方向の幅は、例えば、電極12の前記交差する方向の幅の1/2以上1倍未満である。なお、図示の例では、空隙5は、幅方向の全体に亘って途切れずに広がっているが、製造誤差により、又は意図的に、空隙5が途切れる部分が存在していてもよい。また、空隙5は、例えば、電極12の幅に対して、その中央側に位置している。ただし、電極12に対してその幅方向の一方に寄っていてもよい。
【0116】
空隙3と空隙5とは、例えば、基本的に互いに遮断されている。ただし、電極12の外縁に沿う方向(紙面奥手方向)の一部において、空隙3と空隙5とが通じている横断面が存在していてもよい。例えば、空隙3と空隙5とは、空隙5の、電極12の外縁に沿う長さの8割以上に亘って互いに遮断されている。空隙3の下面3bが
図12の例のように電極12の下面2bよりも下方に位置している場合において、下面3bは、空隙5の下面に対して、上方に位置していてもよいし、面一であってもよいし、下方に位置していてもよい。このことは、後述する第4実施形態においても同様である。
【0117】
以上のとおり、第3実施形態では、静電チャックは、基体1及び電極12を有している。基体1は、絶縁性材料からなり、また、上面1a(第1実施形態参照)を有している。電極12は、基体1内で上面1aに沿う層状である。電極12の上面12aと基体1とは接しており、かつ電極12の下面12bと基体1との間には、真空の、又はガスが満たされている空隙5が介在している。
【0118】
従って、例えば、電極12は、基体1の下方側部分よりも基体1の上方側部分に電荷を振り分けやすい。その結果、例えば、効率的に吸着力を大きくすることができる。また、別の観点では、吸着に寄与しない、又は吸着への寄与度が低い、基体1の下方側部分における除電すべき電荷が低減される。
【0119】
<第4実施形態>
図7(b)は、第4実施形態に係る静電チャックの要部を示す断面図であり、
図7(a)と同様の図である。
【0120】
第4実施形態は、電極12の側面12cと基体1との間の空隙3と、電極12の下面2bと基体1との間の空隙5とが通じている点のみが第3実施形態と相違する。
【0121】
図7(b)では、空隙3の横断面の形状として、概略半円状のものを例示している。すなわち、空隙3の内面は、電極12側を凹とする曲面状に形成されている。また、電極12の横断面の形状として、矩形状のものが例示されている。ただし、第3実施形態と同様に、空隙3及び電極12の横断面の形状は、これに限定されず、例えば、第1実施形態で例示した種々の具体例が本実施形態に組み合わされてよい。
【0122】
空隙3及び空隙5の横断面の大きさ等が適宜に設定されてよいことは、第1及び第3実施形態と同様である。ただし、これらは、空隙3と空隙5とが連通されるように設定されている。例えば、空隙3は、電極12の側面12c側の高さ(Z軸方向)が電極12の厚さ以上となっている(空隙3は
図12の例に類するものである。)、及び/又は電極12側の部分が下方に寄っている。また、空隙5は、電極12の下面12b側の幅が電極12の幅以上となっている。
【0123】
なお、空隙3と空隙5との境界は明確でなくてもよい。また、図示の例では、空隙5は、両側の空隙3の双方に通じているが、一方のみに通じていてもよい。この場合、空隙5は、電極12に対して、その通じている空隙3側に寄っていてもよい。
【0124】
以上の第4実施形態においても、第3実施形態と同様の効果が奏される。例えば、電極12は、基体1の下方側部分よりも基体1の上方側部分に電荷を振り分けやすいから、効率的に吸着力を大きくすることができる。空隙5と空隙3とが通じることにより、例えば、基体1の電極12に対して下方に位置する体積を更に減じて上記効果を向上させることができる。なお、第3実施形態は、第4実施形態に比較して、例えば、空隙3と空隙5とを遮断している部分が基体1に対して電極12を支持することに寄与するから、静電チャックの強度を確保することが容易である。
【0125】
<静電チャックの製造方法>
図8は、チャック10及び20の製造方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。
図9(a)~
図9(d)は、当該フローチャートを補足する模式的な断面図であり、
図5のIV-IV線に対応している。なお、これらの図では、1対の電極12のうち、10本の歯部12sのみが示されている。
図10(a)は
図9(c)の領域Xaの拡大図である。
図10(b)及び
図10(c)は、
図9(d)の領域Xbの拡大図である。
【0126】
なお、ここでは、抵抗発熱体9及び端子4等の存在は無視する。ただし、抵抗発熱体9が設けられる場合も、後述するセラミックグリーンシートの枚数を増やすなどすればよいだけである。また、図面では、電極12を例に取っているが、電極2の場合も同様である。以下の説明では、製造工程の進行に伴って、部材の特性及び形状が変化しても、その変化の前後で同一の符号を用いることがある。
【0127】
ステップST1では、
図9(a)(及び
図9(c))に示すように、基体1となるセラミックグリーンシート6及び7を準備する。上面1a及び下面1bの符号から理解されるように、セラミックグリーンシート6は、基体1のうち下面1b側部分を構成するものであり、セラミックグリーンシート7は、基体1のうち上面1a側部分を構成するものである。ただし、セラミックグリーンシート6及び7と上面1a及び下面1bとの関係は、上記とは逆であってもよい。セラミックグリーンシートの製造方法は、公知の種々の方法と同様でよい。
【0128】
ステップST2では、
図9(b)に示すように、セラミックグリーンシート6に凹部6aを形成する。凹部6aは、基体1において電極12を収容するとともに一部が空隙3(及び空隙5)となる部分であり、平面視において、電極12の平面形状と概ね同一の平面形状で形成されている。凹部6aの形成方法は適宜なものとされてよい。例えば、砥粒をセラミックグリーンシート6に吹き付けてセラミックグリーンシート6を削るブラスト法が用いられてよい。
【0129】
ステップST3では、
図9(c)及び
図10(a)に示すように、セラミックグリーンシート7に電極12となる導電材料8(例えば導電ペースト)を配置する。導電材料8は、平面視において、電極12のパターンと同様のパターンで配置される。導電材料8の配置方法は、公知の種々のものとされてよい。例えば、スクリーン印刷が用いられてよい。なお、特に図示しないが、セラミックグリーンシート7ではなく、セラミックグリーンシート6の凹部6a内に導電材料8を配置することも可能である。
【0130】
ステップST4では、
図9(d)及び
図10(b)に示すように、セラミックグリーンシート6及び7を互いに貼り合わせる。この際、導電材料8は凹部6aに収容される。凹部6aの平面形状は、導電材料8の平面形状よりも大きく、導電材料8の周囲には、空隙3となる空間が構成される。貼り合わせにおいては、
図10(c)に示すように、厚さ方向に圧縮力Fが加えられてもよい。これにより、凹部6a及び導電材料8が潰れて変形してもよい。
【0131】
ステップST5では、セラミックグリーンシート6及び7を焼成する。これにより、電極12(2)が埋設された基体1が作成される。すなわち、チャック20(10)が作製される。
【0132】
上記の製造方法において、凹部6a及び導電材料8の形状及び寸法、セラミックグリーンシートの周囲の雰囲気、セラミックグリーンシートに付与する圧力等の種々の条件を適宜に調整することによって、空隙3の横断面の形状に係る種々の具体例等が実現される。
【0133】
例えば、セラミックグリーンシートの貼り合わせに際して、凹部6aのうち空隙3となる部分を潰し、及び/又はセラミックグリーンシートのうち導電材料8と重なる部分を凹ませて、
図3(b)~
図4(c)に示すような、電極2の厚さよりも薄い空隙3が形成されてよい。このような変形が生じるように、例えば、導電材料8の厚さに対して凹部6aを浅くしたり、圧縮力Fを比較的大きくしたり、セラミックグリーンシートを比較的柔らかくしたり、導電材料8の粘度を比較的高くしたり、及び/又は減圧雰囲気下でセラミックグリーンシートを貼り合わせたり(空隙3を減圧したり)してよい。
【0134】
また、例えば、凹部6aにおいて、外周側に中央側よりも深い部分を形成し、及び/又は、セラミックグリーンシート7の凹部6aの外周側部分に対向する位置に凹溝を形成したりして、
図12に示すような、電極2の厚さよりも厚い空隙3が形成されてよい。
【0135】
また、例えば、凹部6aの横断面の形状を矩形に近づけて、
図2(c)、
図3(a)及び
図3(b)に示す形状が実現されてよい。
【0136】
また、例えば、
図10(a)~
図10(c)から理解されるように、開口側ほど広くなる(拡径する)ように凹部6aを形成して、
図3(c)~
図4(a)に示すような、空隙3の全部又は一部において、電極2から離れるほど高さが小さくなる形状が実現されてよい。なお、このような開口側ほど拡径する凹部6aは、ブラスト法によって形成することができる。
【0137】
また、例えば、焼成後の電極2の収縮量が基体1の収縮量に比較して相対的に大きく、電極2の側面2cが基体1から幅方向中央側へ離れることによって、
図4(b)に示す第1高さ部3eが形成されてよい。
【0138】
また、例えば、セラミックグリーンシートの貼り合わせに際して、セラミックグリーンシート7が導電材料8に押されて凹部が形成されることによって、空隙3が電極2の厚さの中央側に位置するようにされてよい。また、セラミックグリーンシート6及び7の一方を相対的に柔らかくして、空隙3を前記一方側へ寄せてもよい。
【0139】
また、例えば、凹部6aの幅をバス部12rに対応する部分にてバス部12rの内側へ広くすることによって、
図6に示す、相対的に広い第2側方部3qが実現されてよい。なお、特に図示しないが、凹部6aの位置を導電材料8の平面に沿う方向の一方側へ寄せることによって、電極2に沿う方向の一方側にのみ空隙3が形成されたり、一方側の空隙3の幅が他方側の空隙3の幅よりも広くされたりしてもよい。
【0140】
また、例えば、凹部6aの深さを導電材料8の厚さよりも大きくすることによって、空隙5が形成されてよい。又は、焼成後の電極2の収縮量が基体1の収縮量に比較して相対的に大きく、電極2の下面2bが基体1から離れることによって、空隙5が形成されてよい。下面2bが上面2aに優先して離れるように、セラミックグリーンシート6及び/又は7の表面に薬剤を塗布してもよい。また、例えば、凹部6aの底面に凹凸を形成し、凸部が導電材料8に当接し、凹部が導電材料から離れるようにすれば、
図7(a)の空隙3から遮断された空隙5を形成することができる。
【0141】
また、例えば、セラミックグリーンシートの貼り合わせに際して、導電材料8の配置方法を適宜に選択することによって、又は導電材料8を押し潰すことによって、
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)~
図4(c)に示すような、電極2において、曲面(凸面)状の側面2cが実現されてよい。また、押し潰された導電材料8が空隙3へはみ出すことによって、
図3(c)に示すような、突部2dを有する電極2が実現されてよい。また、例えば、焼成後の電極2の収縮量が基体1の収縮量に比較して相対的に大きく、これに起因して基体1に接していない部分が凹んで、
図3(d)に示すような凹部2eを有する電極2が実現されてよい。セラミックグリーンシートの貼合わせ時の雰囲気の減圧を行わず、又は減圧を抑制して、空隙3の気圧によって、
図3(d)に示すような凹部2eを有する電極2が実現されてもよい。
【0142】
図11(a)は、静電チャックの製造方法の変形例を示す図であり、
図10(a)に対応している。また、
図11(b)は、
図11(a)の続きを示す図であり、
図10(b)に対応している。
【0143】
この図に示すように、セラミックグリーンシート6だけでなく、セラミックグリーンシート7にも凹部7aが形成されてもよい。及び/又は凹部6a(凹部7aでもよい)は、側面に凹凸を有していてもよい。そして、
図11(b)から理解されるように、この凹凸があることによって、
図4(b)等の第1高さ部3e及び第2高さ部3fを有している空隙3が実現されてもよい。なお、凹凸は、例えば、ブラスト法を用いることによって実現できる。
【0144】
図11(c)は、静電チャックの製造方法の他の変形例を示す図であり、
図10(a)に対応している。
【0145】
既述のように、凹部6aの底面には凹凸が形成されてよい。
図11(c)は、底面の凹凸の一例を示している。この例では、凹部6aの底面は、当該底面の幅方向中央側に比較して、凹部6aの側面となす角部において深くなっており、その内側において高くなっている。このような凹部6aは、例えば、
図7(a)に示す空隙5を形成しやすい。このような形状は、ブラスト法によって形成可能である。
【0146】
なお、
図4(c)に示すような第1位置部3m及び第2位置部3nを有する電極2は、
図11(c)における凹部6aの側面付近の深くなっている部分が潰れて空隙3となることによって実現されてよい。
【0147】
本開示に係る静電チャックは、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0148】
例えば、静電チャックは、互いに異なる電位が付与される1対の電極を有する双極型のものに限定されず、1つの電極のみ、又は互いに同一の電位が付与される複数の電極を有する単極型のものであってもよい。また、静電チャックは、電極を1層のみ有するものに限定されず、2層以上の電極を有していてもよいし、役割が異なる2種の電極を有していてもよい。例えば、吸着力を生じる主たる電極層と、帯電及び/又は除電を促進するための補助的な電極層とが設けられていてもよい。
【0149】
電極の平面形状も、例示したもの以外の種々のものとされてよい。例えば、単極型の電極は、ウェハの略全面に広がるベタ状であってもよいし、渦巻状若しくはミアンダ状であってもよいし、半径方向に延びる直線状部分と、当該直線状部分から円周方向へ互いに並列に延びる複数の円弧状部分とを有するものであってもよい。この円弧状部分は、C字状であってもよいし、円状であってもよい。
【0150】
また、例えば、双極型の電極は、ウェハの略全面に広がるベタ状の電極が、2分割ではなく、周方向に3分割以上されたものであってもよい。また、双極型の電極は、2つの渦巻状の電極が、同心状に、かつ半径方向に交互に位置するように設けられたものであってもよい。双極型の電極は、各電極が、直線状部分と、当該直線状部分から円周方向へ互いに並列に延びる複数のC字状部分とを有し、両電極の円弧状部分が互いに噛み合う(半径方向に交互に配列される)ものであってもよい。なお、この電極は、櫛型電極と捉えられてもよい。略360°に亘って延びるC字状部分に代えて、180°未満又は90°未満の円弧状部分を有する電極が設けられてもよい。
【0151】
第2実施形態では、接続部及び延在部として、櫛歯電極のバス部12r及び歯部12sを例示した。上記の電極の他の態様の例示から理解されるように、接続部及び延在部はバス部12r及び歯部12sに限定されない。例えば、ミアンダ状の電極において、互いに並列に延びる部分が2つの延在部とされ、その折り返し部分が接続部とされてもよい。
【0152】
静電チャックの製造方法は、積層されたセラミックグリーンシートを焼成するものに限定されず、絶縁層を順次成膜していくものであってもよい。別の観点では、基体を構成する絶縁材料はセラミックに限定されない。
【0153】
第3及び第4実施形態では、電極の側面と基体との間の空隙3と、電極の下面と基体との間の空隙5との組み合わせを示した。ただし、空隙3が形成されずに、空隙5のみが形成されていてもよい。
【0154】
図12の紙面右側に示した、電極2の側方に位置する空隙3に電極2の外縁が入り込み、電極2の側面2cが基体1に当接する構成は、電極2の外縁の全体に亘っていてもよい。この場合、空隙3のうち電極2よりも下方に位置する部分は、第2及び第3実施形態の空隙5と捉えられても構わない。
【0155】
また、
図12の例からは、電極2の側面2cと基体1との間に空隙3が介在することを要件としない技術思想を抽出可能である。例えば、静電チャックは、電極の上面のうち中央側の領域と基体とが接しており、電極の上面のうち外縁側の領域(その少なくとも一部)と基体との間に空隙が介在している構成であってよい。
【符号の説明】
【0156】
1…基体、1a…上面(所定面)、2…電極、2c…側面、3…空隙、101…ウェハ。