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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】被覆鋼基材
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20221021BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20221021BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20221021BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20221021BHJP
   C09D 1/02 20060101ALI20221021BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221021BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221021BHJP
【FI】
C23C26/00 C
C22C38/60
C22C38/00 301Z
C09D1/00
C09D1/02
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020531616
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2018059869
(87)【国際公開番号】W WO2019123104
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2017/058106
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラリエナ・イランソ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ペレス・ロドリゲス,マルコス
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223011(JP,A)
【文献】特開昭55-006413(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196645(WO,A1)
【文献】特開2016-125118(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147594(WO,A1)
【文献】特開昭53-121033(JP,A)
【文献】特開平06-279923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00- 30/00
C09D 1/00- 10/00
C09D 101/00-201/10
C21D 1/02- 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向のサイズが1~60μmの片状ナノグラファイトと、バインダーとを含むコーティングを含む被覆鋼基材であって、当該バインダーは、ケイ酸ナトリウムからなるバインダー、又はケイ酸ナトリウム及び有機金属化合物を含有する組成物からなるバインダー、又は硫酸アルミニウム及び添加剤であるアルミナからなるバインダーのいずれかであり、
当該有機金属化合物を含有する組成物が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(CH OC OC OH)、1,2-エタンジオール(HOCH CH OH)及び2-エチルヘキサン酸マンガン塩(C 16 MnO )からなり、
前記鋼基材が重量パーセントで次の組成:
0.31≦C≦1.2%、
0.1≦Si≦1.7%、
0.15≦Mn≦3.0%、
P≦0.01%、
S≦0.1%、
Cr≦1.0%、
Ni≦1.0%、
Mo≦0.1%、及び
純粋に任意基準で、次のような1つ以上の元素:
Nb≦0.05%、
B≦0.003%、
Ti≦0.06%、
Cu≦0.1%、
Co≦0.1%、
N≦0.01%、
V≦0.05%、
を含み、
前記組成の残部は、鉄及び生成から生じる不可避の不純物からなる、
被覆鋼基材。
【請求項2】
ナノ粒子の横方向のサイズが20~55μmである、請求項1に記載の被覆鋼基材。
【請求項3】
ナノ粒子の横方向のサイズが30~55μmである、請求項2に記載の被覆鋼基材。
【請求項4】
コーティングの厚さが10~250μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆鋼基材。
【請求項5】
鋼基材がスラブ、ビレット又はブルームである、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆鋼基材。
【請求項6】
連続する以下の工程:
A.請求項1に記載の鋼基材の提供;
B.請求項1~のいずれか一項に記載のコーティングを形成するために水性混合物を使用するコーティング堆積;
C.任意に、工程B)で得られた被覆鋼基材の乾燥
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆鋼基材の製造方法。
【請求項7】
工程B)において、コーティングの堆積が、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はブラシコーティングによって行われる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程B)において、水性混合物が、1~60g/Lのナノグラファイト及び150~250g/Lのバインダーを含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
工程B)において、水性混合物が95重量%を超えるCを含むナノグラファイトを含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程B)において、水性混合物が99重量%以上の量のCを含むナノグラファイトを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程B)において、バインダーに対するナノグラファイトの重量比が0.3以下である、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程B)において、水性混合物が有機金属化合物を含有する組成物を含み、当該有機金属化合物を含有する組成物が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(CH OC OC OH)、1,2-エタンジオール(HOCH CH OH)及び2-エチルヘキサン酸マンガン塩(C 16 MnO )からなる、
請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程B)において、当該有機金属化合物を含有する組成物の濃度が0.12重量%以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程C)において、乾燥が適用される場合、前記乾燥が50~150℃の温度又は室温で行われる、請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程C)において、乾燥が適用される場合、乾燥工程が熱風で行われる、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程C)において、乾燥が適用される場合、前記乾燥が5~60分間行われる、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
以下の連続工程:
I.請求項1~のいずれか一項に記載の、又は請求項16のいずれか一項に記載の方法に従って得られる被覆鋼基材の提供;
II.750~1300℃の温度で再加熱炉内での前記被覆鋼基材の再加熱;
III.工程II)で得られた再加熱された被覆鋼板の脱スケール処理;及び
IV.脱スケール処理された鋼製品の熱間圧延
を含む、熱間圧延鋼製品の製造方法。
【請求項18】
工程II)において、再加熱が750~900℃又は900~1300℃の温度で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程III)において、脱スケール処理が圧力下で水を使用して行われるか、又は前記脱スケール処理が機械的に行われる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
工程III)において、水圧が100~150バールである、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の横方向のサイズのナノグラファイト及びバインダーを含むコーティングで被覆された鋼基材、この被覆鋼基材の製造方法に関する。それは、特に鉄鋼業界に適している。
【背景技術】
【0002】
鋼のルート製造では、製鋼工程後、連続鋳造により鋼を鋳造する。このようにして、スラブ、ビレット又はブルームなどの半製品が得られる。通常、半製品は再加熱炉において高温で再加熱され、連続鋳造中に形成された析出物を溶解し、熱間加工性を得る。次いで、半製品は、脱スケール処理、熱間圧延される。しかし、再加熱工程中に、半製品は、スケールの形態での酸化又は脱炭などのいくつかの問題を抱えることがある。
【0003】
これらの問題を克服するために、半製品にコーティングを堆積させることが知られており、このコーティングは、再加熱工程中に良好な保護を可能にする。
【0004】
中国特許出願第101696328号明細書は、高温での表面の酸化と脱炭を防止し、硬度と耐摩耗性を向上させ、最終的には鋼製ワークピースの全体的な耐用年数を延ばすための、鋼片の表面の保護コーティングを開示しており、鋼製ワークピースの表面(基材)の高温での酸化と脱炭、及び加熱処理、鍛造、熱間圧延、ロール成形加熱時の酸化雰囲気下での表面酸化脱炭の場合、特に、鋼製ワークピースが加熱処理により高温で容易に酸化及び脱炭される場合に、炭素原子と炭素含有量が減少し、表面(基材)の微細構造が変化すると、硬度が低下し、耐摩耗性が低下し、全体の耐用年数が短くなる。
【0005】
この特許では、コーティングの組成はグラファイト、水ガラス、表面浸透剤であり、グラファイトとケイ酸ナトリウムの体積比は1:3~1:7であり、表面浸透剤はコーティングの量の0.05%~0.15%を構成する。しかし、コーティングの付着特性については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第101696328号明細書
【0007】
したがって、本発明の目的は、再加熱中に鋼に十分に付着する保護コーティングを含む鋼基材を提供することである。
【0008】
これは、請求項1に記載の被覆鋼基材を提供することにより達成される。被覆鋼基材は、また、請求項2~7のいずれかの特徴を含むこともできる。
【0009】
本発明は、また、請求項8~18に記載の被覆鋼基材の製造方法に及ぶ。
【0010】
本発明は、また、請求項19~22に記載の熱間圧延鋼製品の製造方法に及ぶ。
【0011】
最後に、本発明は、請求項23に記載の熱間圧延鋼製品の使用に及ぶ。
【0012】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態及び試験を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による被覆鋼基材の例を示す。
図2】本発明による1つの片状ナノグラファイトの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明は、横方向のサイズが1~60μmのナノグラファイトと、ケイ酸ナトリウムを含むバインダー又は硫酸アルミニウム及び添加剤であるアルミナを含むバインダーとを含むコーティングを含む被覆鋼基材であって、鋼基材が重量パーセントで次の組成:
0.31≦C≦1.2%、
0.1≦Si≦1.7%、
0.15≦Mn≦3.0%、
P≦0.01%、
S≦0.1%、
Cr≦0.5%、
Ni≦0.5%、
Mo≦0.1%、
及び純粋に任意に、次のような1つ以上の元素:
Nb≦0.05%、
B≦0.003%、
Ti≦0.06%、
Cu≦0.1%、
Co≦0.1%、
N≦0.01%、
V≦0.05%、
を含み、
組成の残部は、鉄及び生成から生じる不可避の不純物からなる
被覆鋼基材に関する。
【0016】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、上記特定の鋼組成を有する鋼基材上に1~60μmの横方向のサイズのナノグラファイトと、ケイ酸ナトリウムを含むバインダー又は硫酸アルミニウム及び添加剤であるアルミナを含むバインダーとを含むコーティングは、鋼基材が十分に保護されるように、鋼基材に十分に付着する。発明者らは、鋼の組成だけでなくコーティングの性質もまた、コーティングの付着に重要な役割を果たすことを発見した。実際、コーティングが鋼基材に付着しない場合、コーティングが割れて、分離し、鋼基材が特に酸化及び/又は脱炭にさらされるという重大なリスクがある。
【0017】
図1に示すように、コーティング(1)では、この特定の横方向のサイズの片状ナノグラファイト(2)が、蛇行した経路(4)の形態でバインダー(3)に十分に分散していると考えられる。したがって、酸化や脱炭などの問題が回避される。最後に、横方向のサイズが1~60μmのナノグラファイトを使用すると、大量の片状ナノグラファイトを含むクラスターが可能になり、各ナノグラファイト粒子間のスペースが狭くなると考えられる。このように、蛇行した経路は横断することがより困難であり、鋼基材(5)の高い保護を可能にする。
【0018】
鋼の化学組成に関して、好ましくは、C量は0.31~1.0重量%である。
【0019】
好ましくは、Mn量は、0.15~2.0重量%、より好ましくは0.15~1.5重量%、有利には0.15~0.7重量%である。
【0020】
有利には、Crの量は0.3重量%以下である。
【0021】
好ましくは、Niの量は0.1重量%以下である。
【0022】
有利には、Moの量は0.1%以下である。
【0023】
図2は、本発明によるナノグラファイトの例を示す。この例では、横方向のサイズはX軸を通るナノプレートレットの最高長さを意味し、厚さはZ軸を通るナノプレートレットの高さを意味する。ナノプレートレットの幅はY軸を通って示されている。
【0024】
好ましくは、ナノ粒子の横方向のサイズは、20~55μm、より好ましくは30~55μmである。
【0025】
好ましくは、コーティングの厚さは10~250μmである。例えば、コーティングの厚さは10~100μm又は100~250μmである。
【0026】
好ましくは、コーティングはさらに有機金属化合物を含む。例えば、有機金属化合物は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(CHOCOCOH)、1,2-エタンジオール(HOCHCHOH)、2-エチルヘキサン酸、マンガン塩(C16MnO)を含む。実際、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、有機金属化合物は、コーティングの迅速な硬化を可能にし、高温での乾燥工程を回避すると考えられる。
【0027】
有利には、鋼基材は、スラブ、ビレット又はブルームである。
【0028】
また、本発明は、連続する以下の工程:
A.上記の鋼組成を有する鋼基材の提供、
B.コーティングを形成するために水性混合物を使用したコーティング堆積、
C.任意に、工程B)で得られた被覆鋼基材の乾燥
を含む、本発明による被覆鋼基材の製造方法に関する。
【0029】
好ましくは、工程B)において、コーティングの堆積は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング又はブラシコーティングによって行われる。
【0030】
有利には、工程B)において、水性混合物は、1~60g/Lのナノグラファイト及び150~250g/Lのバインダーを含む。より好ましくは、水性混合物は、1~35g/Lのナノグラファイトを含む。
【0031】
好ましくは、工程B)において、水性混合物は、95重量%を超える、有利には99重量%のCを含むナノグラファイトを含む。
【0032】
有利には、工程B)において、バインダーに対するナノグラファイトの重量比は、0.3以下である。
【0033】
好ましくは、工程B)において、水性混合物は有機金属化合物を含む。より好ましくは、有機金属化合物の濃度は、0.12重量%以下である。実際、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、この濃度により、いかなる硬化なしで、又は室温での硬化で、最適化されたコーティングが可能になると考えられる。
【0034】
好ましい実施形態では、コーティングは工程C)で乾燥される。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、乾燥工程は、コーティングの付着の改善を可能にするものと考えられる。実際、水が蒸発するため、バインダーは粘着性が増し、粘度が増して硬化状態になる。好ましい実施形態では、工程C)において、乾燥は、室温又は50~150℃、好ましくは80~120℃の温度で行われる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、乾燥工程は行われない。
【0036】
好ましくは、工程C)において、乾燥が適用される場合、乾燥工程は熱風で行われる。
【0037】
有利には、工程C)において、乾燥が適用される場合、乾燥は、5~60分間、例えば15~45分間行われる。
【0038】
本発明は、また、以下の連続工程:
I.本発明に記載の被覆鋼基材の提供;
II.750~1300℃の温度での再加熱炉内の被覆鋼基材の再加熱;
III.工程II)で得られた再加熱された被覆鋼板の脱スケール処理;及び
IV.脱スケール処理された鋼製品の熱間圧延
を含む熱間圧延鋼製品の製造方法に関する。
【0039】
好ましくは、工程II)において、再加熱は750~900℃又は900~1300℃の温度で行われる。
【0040】
好ましくは、工程III)において、脱スケール処理は、圧力下で水を使用して行われる。例えば、水圧は100~150バールである。別の実施形態では、脱スケール処理は、例えば、スケール層を引っ掻くか、又はブラッシングすることにより機械的に行われる。
【0041】
本発明による方法を用いて、従来技術と比較して、重量が大きい熱間圧延鋼製品が得られる。
【0042】
例えば、熱間圧延後、熱間製品をコイル状にし、冷間圧延し、焼鈍炉で焼鈍し、さらに金属コーティングを被覆することができる。
【0043】
最後に、本発明は、本発明による方法から得られる熱間圧延鋼製品の、自動車両の部品、レール、ワイヤー又はばねの製造のための使用に関する。
【0044】
本発明は、ここで、データのみに関して行われた試験において説明される。それら試験は限定的ではない。
【実施例
【0045】
実施例では、重量パーセントで次の鋼組成を有する鋼基材を使用した。
【0046】
【表1】
【0047】
試験2はスラブの形態で鋳造され、試験1及び3はビレットの形態で鋳造された。
【0048】
[実施例1]
付着テスト
このテストでは、ナノグラファイト及びバインダーを含む様々な水性混合物を鋼2に堆積した。水性混合物を鋼2に噴霧した。次に、コーティングを100℃で30分間乾燥させた。水溶液の懸濁液を目視検査で評価し、コーティングの付着を光学顕微鏡で評価して、厚さ及びカバレッジの観点での均一性も確認した。結果を次の表1に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
本発明による試験1及び6は、安定性及び噴霧性が高く、すなわち容易に噴霧することができ、鋼基材への付着力が高い。
【0051】
[実施例2]
酸化試験
試験1、3、5及び7の場合、鋼2及び3は、実施例1の水性混合物1又は6を鋼に噴霧することによって被覆された。次に、コーティングを100℃で30分間乾燥させた。
【0052】
次に、被覆されていない鋼(試験2、4、6及び8)と被覆鋼(試験1、3、5及び7)を、800℃、1000℃で再加熱した。再加熱後、すべての試験の重量を測定した。各試験で、Δ重量は、再加熱前の重量から再加熱後の重量を差し引いて決定した。次いで、被覆試験の重量増加の割合を次の式で計算した。
【0053】
【数1】
【0054】
結果を次の表2に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
本発明による試験は、重量増加の割合の大幅な増加を示す。実際、本発明による特定の鋼組成を有する鋼基材は、再加熱工程の間、水性混合物1及び6で十分に保護される。
【0057】
[実施例3]
脱炭試験
試験9、10、12、13、14、15及び17の場合、実施例1の水性混合物1を鋼に噴霧することにより鋼1又は2を被覆した。次いで、任意に、コーティングを室温で、又は100℃で30分間乾燥させた。
【0058】
次に、被覆されていない鋼(試験11、16、18)と被覆鋼(試験9、10、12、13、14、15、17)を1250℃で再加熱した。再加熱後、試験は光学顕微鏡(OM)によって分析された。0は、再加熱中に脱炭領域が試験表面にほとんどないこと、つまり、脱炭がほとんど起こらないことを意味し、1は、試験表面に多くの脱炭領域が存在することを意味する。
【0059】
結果を次の表3に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
本発明による試験の場合、非常に少量の炭素が試験表面で除去された。それどころか、比較試験では、多くの脱炭領域が存在し、微細構造、したがって機械的特性を変化させることができた。実際、多くの炭素が欠乏している領域、すなわち脱炭領域では、パーライトの代わりにフェライトが形成される。
【0062】
[実施例4]
微小硬度試験
この場合、1250℃で再加熱した後、一部の試験を水中で急冷してマルテンサイトを形成し、高温鋼製品の表面から1500μmの深さまでの微小硬度の変化を微小硬度測定によって測定した。実際、マルテンサイトが形成されると、マルテンサイトの炭素含有量は、微細構造内の炭素の量に正比例する。したがって、微小硬度が高いほど、炭素含有量は高くなる。
【0063】
結果を次の表4に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
試験12及び17の微小硬度は、脱炭が、試験16及び18と比較して、本発明による被覆鋼基材を用いて大幅に低下されたことを明らかに示す。
図1
図2