(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】ダイレータ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20221021BHJP
A61M 25/06 20060101ALN20221021BHJP
【FI】
A61B17/34
A61M25/06
(21)【出願番号】P 2020547579
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018035090
(87)【国際公開番号】W WO2020059120
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 友希弘
(72)【発明者】
【氏名】都竹 麻里奈
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-177289(JP,A)
【文献】特開昭60-234671(JP,A)
【文献】特表2014-524807(JP,A)
【文献】特開2007-098120(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187446(WO,A1)
【文献】特表2008-540060(JP,A)
【文献】特開2012-235878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
A61M25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状のシャフトと、螺旋状の凸部とを備えているダイレータであって、
前記シャフトは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と、基端が前記テーパ部の先端に位置し前記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部と、先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有し、
前記螺旋状の凸部は、前記テーパ部と、前記先端部と、前記本体部とのそれぞれの外周面上に設けられ、前記シャフトの軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間を有し、
前記螺旋状の凸部の先端を含む当該螺旋状の凸部における先端側の部位が第1の部位であり、この第1の部位よりも基端側に位置し前記螺旋状の凸部の基端を含む当該螺旋状の凸部における基端側の部位が第2の部位であり、
前記第1の部位における前記螺旋状の凸部の高さが先端側に向かうにつれて漸次減少するか、または前記第2の部位における前記螺旋状の凸部の高さが基端側に向かうにつれて漸次減少するか、の少なくともいずれかであ
り、
前記螺旋状の凸部における前記第1の部位または前記第2の部位の少なくともいずれか一方の外周面の形状が、平面形状または凹面形状であることを特徴とするダイレータ。
【請求項2】
中空形状のシャフトと、螺旋状の凸部とを備えているダイレータであって、
前記シャフトは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と、基端が前記テーパ部の先端に位置し前記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部と、先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有し、
前記螺旋状の凸部は、前記テーパ部と、前記先端部と、前記本体部とのそれぞれの外周面上に設けられ、前記シャフトの軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間を有し、
前記螺旋状の凸部の先端を含む当該螺旋状の凸部における先端側の部位が第1の部位であり、この第1の部位よりも基端側に位置し前記螺旋状の凸部の基端を含む当該螺旋状の凸部における基端側の部位が第2の部位であり、
前記第1の部位における前記螺旋状の凸部の高さが先端側に向かうにつれて漸次減少するか、または前記第2の部位における前記螺旋状の凸部の高さが基端側に向かうにつれて漸次減少するか、の少なくともいずれかであ
り、
前記シャフトが、素線を前記シャフトの軸周りへ巻回した第1コイル体で形成されていることを特徴とするダイレータ。
【請求項3】
前記シャフトが、素線を前記シャフトの軸周りへ巻回した第1コイル体で形成されている請求項
1に記載のダイレータ。
【請求項4】
前記螺旋状の凸部が、素線を前記シャフトの外周面上に巻回した第2コイル体で形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のダイレータ。
【請求項5】
前記螺旋状の凸部の先端が、軸方向において前記シャフトの先端から離間している請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のダイレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレータに関する。
【背景技術】
【0002】
治療のために、患者の消化管等における病変部の壁に形成された孔を拡張するダイレータが知られている。このようなダイレータは、例えば、壁に形成された孔にダイレータの先端を挿入してテーパ部を孔に押し込んでいくことで、孔を拡張する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、上述のようなダイレータでは、ロッドのテーパ部にねじ山が設けられている。そして、ダイレータを回転させて、ねじ山が病変部の壁に引っ掛かることにより、ダイレータに推進力が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のダイレータでは、ねじ山の端部(先端や基端)の形状については十分な配慮がなされておらず、例えば、孔等にロッドをねじ込む際にねじ山の先端が抵抗となり、上記孔等へのロッドの円滑な挿入が阻害される虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、臓器等の壁に形成された孔や狭窄部など(以下、「対象物の孔等」ともいう)にシャフト(ロッド)を挿入や抜去する際、上記シャフトを円滑に進退させることが可能なダイレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、
(1)中空形状のシャフトと、螺旋状の凸部とを備えているダイレータであって、
前記シャフトは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と、基端が前記テーパ部の先端に位置し前記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部と、先端が前記テーパ部の基端に位置し前記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有し、
前記螺旋状の凸部は、前記テーパ部と、前記先端部と、前記本体部とのそれぞれの外周面上に設けられ、前記シャフトの軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間を有し、
前記螺旋状の凸部の先端を含む当該螺旋状の凸部における先端側の部位が第1の部位であり、この第1の部位よりも基端側に位置し前記螺旋状の凸部の基端を含む当該螺旋状の凸部における基端側の部位が第2の部位であり、
前記第1の部位における前記螺旋状の凸部の高さが先端側に向かうにつれて漸次減少するか、または前記第2の部位における前記螺旋状の凸部の高さが基端側に向かうにつれて漸次減少するか、の少なくともいずれかであることを特徴とするダイレータ、
(2)前記螺旋状の凸部における前記第1の部位および前記第2の部位の少なくともいずれか一方の外周面の形状が、平面形状または凹面形状である前記(1)に記載のダイレータ、
(3)前記シャフトが、素線を前記シャフトの軸周りへ巻回した第1コイル体で形成されている前記(1)または(2)に記載のダイレータ、
(4)前記螺旋状の凸部が、素線を前記シャフトの外周面上に巻回した第2コイル体で形成されている前記(1)から(3)のいずれか1項に記載のダイレータ、並びに
(5)前記螺旋状の凸部の先端が、軸方向において前記シャフトの先端から離間している前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のダイレータ
である。
【0008】
なお、本明細書において、「先端側」とは、シャフトの軸方向に沿う方向であって、本体部に対してテーパ部が位置する方向を意味する。また、「基端側」とは、ダイレータの軸方向に沿う方向であって、先端側と反対側の方向を意味する。また、「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。また、「凸部の高さ」とは、シャフトの軸方向における前面視で、シャフトの径方向(シャフトの外周面の接線に対して垂直方向)において、螺旋状の凸部が位置するシャフトの外周面から上記螺旋状の凸部の外周端までの寸法を意味し、具体的には、例えば、本明細書の各図において示す螺旋状の凸部の高さtを指す。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、対象物の孔等にシャフトを挿入や抜去する際、上記シャフトを円滑に進退させることが可能なダイレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態の全体を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図2A】
図1のIIA-IIA線で切断した概略的端面図である。
【
図3A】
図1のIIIA-IIIA線で切断した概略的端面図である。
【
図4A】
図1の第1変形例を示す概略的拡大図であって螺旋状の凸部の第1の部位を示す。
【
図4B】
図1の第1変形例を示す概略的拡大図であって螺旋状の凸部の第2の部位を示す。
【
図4C】
図1の第2変形例を示す概略的拡大図であって螺旋状の凸部の第1の部位を示す。
【
図4D】
図1の第2変形例を示す概略的拡大図であって螺旋状の凸部の第2の部位を示す。
【
図4E】
図1の第3変形例を示す概略的拡大図であって螺旋状の凸部の第1の部位を示す。
【
図5】本発明の第2の実施形態の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態の全体を示す概略的側面図である。
【
図7A】
図6のVIIA-VIIA線で切断した概略的端面図である。
【
図8A】
図6のVIIIA-VIIIA線で切断した概略的端面図である。
【
図9】本発明の変形例の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図10A】本発明の変形例の要部を示す概略的側面図である。
【
図10B】本発明の変形例の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図11A】本発明の変形例の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図11B】本発明の変形例の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。
【
図12A】本発明の変形例の要部を示す概略的側面図である。
【
図12B】本発明の変形例の要部を示す概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当該ダイレータは、中空形状のシャフトと、螺旋状の凸部とを備えているダイレータであって、上記シャフトは、先端の外径が基端の外径よりも小さいテーパ部と、基端が上記テーパ部の先端に位置し上記テーパ部の軸方向における先端側に向かって延設された先端部と、先端が上記テーパ部の基端に位置し上記テーパ部の軸方向における基端側に向かって延設された本体部とを有し、上記螺旋状の凸部は、上記テーパ部と、上記先端部と、上記本体部とのそれぞれの外周面上に設けられ、上記シャフトの軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間を有し、上記螺旋状の凸部の先端を含む当該螺旋状の凸部における先端側の部位が第1の部位であり、この第1の部位よりも基端側に位置し上記螺旋状の凸部の基端を含む当該螺旋状の凸部における基端側の部位が第2の部位であり、上記第1の部位における上記螺旋状の凸部の高さが先端側に向かうにつれて漸次減少するか、または上記第2の部位における上記螺旋状の凸部の高さが基端側に向かうにつれて漸次減少するか、の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明の第1~第3の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したダイレータの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の全体を示す一部切り欠き概略的側面図である。当該ダイレータ1は、
図1に示すように、概略的に、シャフト11と、螺旋状の凸部21と、基部31とにより構成されている。
【0014】
シャフト11は、中空形状の部材である。このシャフト11は、具体的には、例えば、中空形状の内腔11hを有しており、この内腔11hによりシャフト11の先端と基端との間を結ぶ連続した空間(貫通孔)が形成される。内腔11hには、例えば、ガイドワイヤ(不図示)等が挿通される。また、シャフト11は、先端部111と、テーパ部112と、本体部113とを有している。
【0015】
先端部111は、基端が後述するテーパ部112の先端に位置しテーパ部112の軸方向における先端側に向かって延設された部位である。この先端部111は、具体的には、例えば、基端がテーパ部112の先端に連続し、かつ先端から基端に亘って略一定の外径を有するように形成されている。
【0016】
テーパ部112は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。このテーパ部112は、基端から先端に向かうにつれて先細る形状(先端の外径が基端の外径よりも小さい形状)をなしている。これにより、シャフト11を押し進める際、対象物の孔等がテーパ部112により拡張される。
【0017】
本体部113は、先端がテーパ部112の基端に位置し、テーパ部112の軸方向における基端側に向かって延設された部位である。この本体部113は、具体的には、例えば、その先端から基端に亘って略一定の外径を有しており、基端に後述する基部31が接続されている。
【0018】
なお、上述した先端部111とテーパ部112、およびテーパ部112と本体部113は、それぞれ一体または別体として形成することができる。本実施形態では、先端部111とテーパ部112と本体部113とが、鋳造等によって一体的に形成されている。
【0019】
上述したシャフト11(先端部111、テーパ部112および本体部113)を構成する材料としては、体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂材料;ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル-チタン合金)などの金属材料等を採用することができる。
【0020】
なお、シャフト11は、外周面11aの側に各種の被膜を有していてもよい。この被膜の例としては、シャフト11の表面の側を保護する保護膜(代表例、めっき膜)や、シャフト11の外周面11aと後述する螺旋状の凸部21との密着性を向上させるための下地膜などが挙げられる。
【0021】
螺旋状の凸部21は、先端部111と、テーパ部112と、本体部113とのそれぞれの外周面11a上に設けられ、シャフト11の軸方向に沿って隣り合う部分に隙間21aを有する。この螺旋状の凸部21は、例えば、シャフト11の外周面11aから径方向外側に向かって突出し、隣り合う凸部21どうしが軸方向に離間するように配置することができる。
【0022】
ここで、螺旋状の凸部21は、この螺旋状の凸部21の先端を含む螺旋状の凸部21における先端側の部位211(以下、「第1の部位211」ともいう)と、この第1の部位211よりも基端側に位置し螺旋状の凸部21の基端を含む螺旋状の凸部21における基端側の部位212(以下、「第2の部位212」ともいう)とを有している。第1の部位211における螺旋状の凸部21の高さは、螺旋状の凸部21に沿って螺旋状の凸部21の先端側に向かうにつれて漸次減少する。第2の部位212における螺旋状の凸部21の高さは、螺旋状の凸部21に沿って螺旋状の凸部21の基端側に向かうにつれて漸次減少する。
【0023】
第1の部位211における凸部21の高さtは、具体的には、例えば、
図2A、
図2Bに示すように、第1の部位211の基端から第1の部位211の先端21bに向かうにつれて次第に低くなる(凸面形状の外周面21c1)ように形成することができる。
【0024】
他方、第2の部位212における凸部21の高さtは、具体的には、例えば、
図3A、
図3Bに示すように、第2の部位212の先端から第2の部位212の基端に向かうにつれて次第に低くなる(凸面形状の外周面21c1)ように形成することができる。
【0025】
ここで、本実施形態のダイレータ1は、第1の部位211の先端の高さtおよび第2の部位212の基端の高さtが、t=0(シャフト11の径方向において、螺旋状の凸部21の先端および基端における当該螺旋状の凸部21の位置とシャフト11の外周面11aの位置とが一致する)となるように形成されている。これにより、螺旋方向における螺旋状の凸部21の接触物との接触抵抗を低減することができ、ダイレータ1をより円滑に進退させることができる。
【0026】
なお、当該ダイレータ1は、螺旋状の凸部21における第1の部位211または第2の部位212の少なくともいずれか一方の外周面の形状が、平面形状(平面形状の外周面21c2)または凹面形状(凹面形状の外周面21c3)であることが好ましい。
【0027】
上述の平面形状の外周面21c2を有する螺旋状の凸部21としては、具体的には、例えば、第1の部位211における螺旋状の凸部21の高さtが、第1の部位211の基端から第1の部位211の先端までの間で直線的に低くなるように形成されているもの(
図4A参照)、第2の部位212における螺旋状の凸部21の高さtが、第2の部位212の先端から第2の部位212の基端までの間で直線的に低くなるように形成されているもの(
図4B参照)等が挙げられる。
【0028】
上述の凹面形状の外周面21c3を有する螺旋状の凸部21としては、具体的には、例えば、第1の部位211における螺旋状の凸部21の高さtの減少率(螺旋状の凸部21の螺旋方向における単位長さ当たりの高さtの減少量、以下同じ)が、第1の部位211の基端から第1の部位211の先端に向かうにつれて漸次小さくなるように形成されているもの(
図4C参照)、第2の部位212における螺旋状の凸部21の高さtの減少率が、第2の部位212の先端から第2の部位212の基端に向かうにつれて漸次小さくなるように形成されているもの(
図4D参照)等が挙げられる。
【0029】
このように、当該ダイレータは、螺旋状の凸部21における第1の部位211または第2の部位212の少なくともいずれか一方が平面形状の外周面21c2または凹面形状の外周面21c3を有することで、ダイレータを挿入および/または抜去する際の接触物との接触抵抗をより低減することができる。
【0030】
螺旋状の凸部21は、連続または断続した一条または多条の突起部として形成することができる。また、螺旋状の凸部21は、シャフト11と一体または別体として形成することができる。
【0031】
本実施形態においては、螺旋状の凸部21が、連続した一条の突起部として形成されており、螺旋状の凸部21と、シャフト11(先端部111、テーパ部112および本体部113)とが鋳造等で一体的に形成されている。
【0032】
螺旋状の凸部21を構成する材料としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金(ニッケル-チタン合金)などの金属材料、ポリアミド樹脂やフッ素樹脂などの生体適合性を有する樹脂材料等を用いることができる。
【0033】
なお、螺旋状の凸部21は、刃物を構成していない(生体組織を切断する形状ではない)ことが好ましい。すなわち、螺旋状の凸部21は、その断面(螺旋状の凸部21の螺旋方向に直交する横断面)の形状において、シャフト11の径方向外側の端部(螺旋状の凸部21の外周面)が、鋭角の角部ではないことが好ましい。このような端部としては、例えば、鈍角の角部、曲線(例、円や楕円の一部を含む曲線)を含む形状で構成された部位等が挙げられる。これにより、当該ダイレータ1は、対象物の孔等の内面の生体組織を損傷することなく、対象物の孔等を拡張することができる。
【0034】
基部31は、手技者が当該ダイレータ1を体内に押し込んだり、回転操作を行う部位である。この基部31は、先端が本体部113の基端に接続されており、シャフト11の内腔11hに連通する内腔31hを有している。手技の際は、基部31の内腔31hを介してガイドワイヤなどが挿通される。
【0035】
当該ダイレータ1の各部における軸方向の長さは、通常、シャフト11全体が1,600mm~2,500mm、先端部111が0mm~100mm、テーパ部112が5mm~100mmである。シャフト11の各部における外径は、通常、先端部111、およびテーパ部112の先端が0.8mm~3.0mmであり、テーパ部112の基端、および本体部113が1.4mm~5.0mmである。シャフト11の内腔11hの内径は、通常、0.4mm~1.0mmである。螺旋状の凸部21における第1および第2の部位211、212以外の部位の高さtは、通常、t=0.1mm~0.5mmである。第1および第2の部位211、212の螺旋方向の長さは、通常、それぞれ0.1mm~5.0mmである。
【0036】
本実施形態のダイレータ1の各部における軸方向の長さは、シャフト11全体が2,000mm、先端部111が10mm、テーパ部112が30mmである。シャフト11の各部における外径は、先端部111、およびテーパ部112の先端が1.84mm、テーパ部112の基端、および本体部113が2.64mmである。シャフト11の内腔11hの内径は0.7mmである。螺旋状の凸部21の高さtは、t=0.36mmである。第1および第2の部位211、212の螺旋方向の長さは、それぞれ2.0mm、2.0mmである。
【0037】
次に、当該ダイレータ1の使用態様の一例について説明する。
【0038】
まず、導入針(不図示)を用いて対象物を穿刺して孔を開ける。次いで、導入針の内腔にガイドワイヤ(不図示)を挿入した後、導入針を抜き取る。
【0039】
次に、ガイドワイヤの基端を当該ダイレータ1の内腔11hに差し入れ、ダイレータ1を対象物の孔等の部位(以下、「穿刺部」ともいう)まで押し進めてシャフト11の先端11bからダイレータ1を対象物の孔等に挿入する。次いで、シャフト11を回転させながらシャフト11を押し進める。この際、シャフト11が先端部111からテーパ部112を経て本体部113まで押し進められることで対象物の孔等が拡張される。なお、対象物の孔等の拡張後は、シャフト11を挿入する際の回転方向と逆方向に回転させることで上記対象物の孔等から抜き出すことができる。
【0040】
以上のように、当該ダイレータ1は、上記構成であるので、対象物の孔等にシャフト11を挿入や抜去する際、螺旋状の凸部21の先端および基端にかかる接触物との接触抵抗を低減することができ、シャフト11を円滑に進退させることができる。
【0041】
なお、当該ダイレータ1は、第1の部位211の先端の高さtおよび第2の部位212の基端の高さtがt=0でなくてもよく、
図4Eに示すように、上記高さtがt>0(シャフトの径方向において、螺旋状の凸部の先端および基端における当該螺旋状の凸部の位置とシャフトの外周面の位置とが離間し、これにより上記先端や基端が上記外周面から径外方に向かって垂直に突出する)であってもよい。
【0042】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の要部を示す一部切り欠き概略的側面図である。当該ダイレータ2は、
図5に示すように、概略的に、シャフト11と、螺旋状の凸部22と、基部31(不図示)とにより構成されている。当該ダイレータ2は、螺旋状の凸部22を備えている点で第1の実施形態と異なっている。なお、シャフト11および基部31は、第1の実施形態のものと同様な構成であるので、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、螺旋状の凸部22のうちの形状以外の構成は、第1の実施形態における螺旋状の凸部21の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
螺旋状の凸部22は、先端部111と、テーパ部112と、本体部113とのそれぞれの外周面11a上に設けられ、シャフト11の軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間22aを有する。この螺旋状の凸部22は、螺旋状の凸部22の先端を含む螺旋状の凸部22における先端側の部位221(以下、「第1の部位221」ともいう)と、この第1の部位221よりも基端側に位置し螺旋状の凸部22の基端を含む螺旋状の凸部22における基端側の部位222(以下、「第2の部位222」ともいう)とを有している。第1の部位221における螺旋状の凸部22の高さは、螺旋状の凸部22に沿って螺旋状の凸部22の先端側に向かうにつれて漸次減少する。第2の部位222における螺旋状の凸部22の高さは、螺旋状の凸部22に沿って螺旋状の凸部22の基端側に向かうにつれて漸次減少する。
【0044】
当該ダイレータ2は、螺旋状の凸部22の先端が、軸方向においてシャフト11の先端から離間している。具体的には、螺旋状の凸部22の先端22bがシャフト11の先端11bから基端側に向かって所定の距離Lだけ離れており、シャフト11が外周面11aに螺旋状の凸部22を有しない先端部111の領域(以下、「凸部非形成部」ともいう)を有している。なお、上述した所定の距離Lとしては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、例えば、先端部111の外径と同じ長さの寸法等を採用することができる。
【0045】
このように、当該ダイレータ2は、螺旋状の凸部22の先端22bが、軸方向においてシャフト11の先端11bから離間していることで、例えば、シャフト11をその先端11bから対象物の孔等に挿入する際、先行して挿入された凸部非形成部に案内されて螺旋状の凸部22を穿刺部に容易かつ確実に噛み込ませることができる。
【0046】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態の全体を示す概略的側面図である。当該ダイレータ3は、
図6に示すように、概略的に、シャフト13と、螺旋状の凸部23と、基部31とにより構成されている。当該ダイレータ3は、シャフト13および螺旋状の凸部23が第1の実施形態と異なっている。なお、基部31は第1の実施形態のものと同様な構成であるので、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、シャフト13および螺旋状の凸部23のうちの形状以外の構成は、それぞれ第1の実施形態におけるシャフト11および螺旋状の凸部21の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
シャフト13は、中空形状の部材である。このシャフト13は、先端部131と、テーパ部132と、本体部133と、内腔13hを有している。テーパ部132は、先端の外径が基端の外径よりも小さい部位である。先端部131は、基端がテーパ部132の先端に位置しテーパ部132の軸方向における先端側に向かって延設された部位である。本体部133は、先端がテーパ部132の基端に位置しテーパ部132の軸方向における基端側に向かって延設された部位である。内腔13hは、中空形状の部位である。
【0048】
当該ダイレータ3のシャフト13は、素線をシャフト13の軸周りへ巻回した第1コイル体13cで形成されている。第1コイル体13cは、具体的には、例えば、1本または複数本の素線を用いて隣り合う素線どうしが軸方向に密着するように螺旋状に巻回されている。第1コイル体13cは、その外周面13aの形状に応じて上述した先端部131、テーパ部132および本体部133とに区画される。なお、
図6では第1コイル体13cの共通内接線が破線で図示されており、この共通内接線で囲まれた領域に内腔13hが形成される。
【0049】
螺旋状の凸部23は、先端部131と、テーパ部132と、本体部133とのそれぞれの外周面13a上に設けられ、シャフト13の軸方向に沿って隣り合う部分の間に隙間23aを有する。この螺旋状の凸部23は、螺旋状の凸部23の先端を含む螺旋状の凸部23における先端側の部位231(以下、「第1の部位231」ともいう)と、この第1の部位231よりも基端側に位置し螺旋状の凸部23の基端を含む螺旋状の凸部23における基端側の部位232(以下、「第2の部位232」ともいう)とを有している。第1の部位231における螺旋状の凸部23の高さは、螺旋状の凸部23に沿って螺旋状の凸部23の先端側に向かうにつれて漸次減少する。第2の部位232における螺旋状の凸部23の高さは、螺旋状の凸部23に沿って螺旋状の凸部23の基端側に向かうにつれて漸次減少する。
【0050】
当該ダイレータ3の螺旋状の凸部23は、1本または複数本の素線をシャフト13の外周面13a上に巻回した第2コイル体23cで形成されている。この第2コイル体23cは、第1の部位231における螺旋状の凸部23の高さ(例えば、第2コイル体23cの素線の外径)が、第2コイル体23cの素線に沿って第2コイル体23cの先端側に向かうにつれて漸次減少する。また、第2コイル体23cは、第2の部位232における螺旋状の凸部23の高さ(例えば、第2コイル体23cの素線の外径)が、第2コイル体23cの素線に沿って第2コイル体23cの基端側に向かうにつれて漸次減少する。
【0051】
第1の部位231における螺旋状の凸部23の高さtは、具体的には、例えば、
図7A、
図7Bに示すように、第1の部位231の基端から第1の部位231の先端23bに向かうにつれて次第に低くなる(凸面形状の外周面23c1)ように形成することができる。
【0052】
他方、第2の部位232における螺旋状の凸部23の高さtは、具体的には、例えば、
図8A、
図8Bに示すように、第2の部位232の先端から第2の部位232の基端に向かうにつれて次第に低くなる(凸面形状の外周面23c1)ように形成することができる。
【0053】
螺旋状の凸部23の高さtの調整方法としては、例えば、第2コイル体23cの各端部(第1の部位231、第2の部位232)のみを伸線することで先端および基端に向かって縮径する方法、第2コイル体23cの各端部(第1の部位231、第2の部位232)のみを先端および基端に向かってテーパ状に研磨する方法等が挙げられる。
【0054】
ここで、第1コイル体13cを構成する素線の直径は、通常、0.1mm~0.5mmであり、第2コイル体23cを構成する素線の直径(第1および第2の部位231、232以外の部位の直径)は、通常、0.1mm~0.5mmである。第1および第2の部位231、232の螺旋方向の長さは、通常、それぞれ0.1mm~5.0mmである。
【0055】
本実施形態では、第1コイル体13cの素線の直径が0.21mmである。第2コイル体23cの第1および第2の部位231、232以外の部位の直径は0.36mmであり、第1および第2の部位231、232の螺旋方向の長さはそれぞれ2.0mm、2.0mmである。また、第1および第2の部位231、232は素線を研磨することで螺旋状の凸部23の高さtが調整されており、第2コイル体23cの先端および基端の高さがt=0となるように形成されている。
【0056】
第1コイル体13cおよび第2コイル体23cを構成する素線の材料としては、例えば、それぞれ第1の実施形態において説明した先端部111、テーパ部112および本体部113を構成する材料、並びに螺旋状の凸部21を構成する材料として例示したものと同様の材料等が挙げられる。
【0057】
第1コイル体13cと第2コイル体23cとの接合方法としては、例えば、第2コイル体23cの両端部をロウ付けする方法、溶接する方法、接着剤により固定する方法、被膜を介して溶着する方法等を採用することができる。本実施形態では、第1コイル体13cと第2コイル体23cとが、第2コイル体23cの両端部にて蝋付けされている。
【0058】
以上のように、当該ダイレータ3は、シャフト13および螺旋状の凸部23がそれぞれ第1コイル体13cおよび第2コイル体23cで形成されているので、シャフト13および螺旋状の凸部23それぞれにおいて柔軟性およびトルク伝達性を向上することができ、更に両者が相俟って柔軟性およびトルク伝達性をより向上することができる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、第1の部位211、221、231および第2の部位212、222、232のいずれもが、螺旋状の凸部の高さが漸次減少するダイレータ1~3について説明したが、当該ダイレータは、高さが漸次減少する螺旋状の凸部が第1の部位および第2の部位の少なくともいずれかにあればよく、例えば、第1の部位および第2の部位のうち、第1の部位のみ螺旋状の凸部の高さが漸次減少するダイレータや、第2の部位のみ螺旋状の凸部の高さが漸次減少するダイレータであってもよい。
【0061】
また、第3の実施形態では、螺旋状の凸部23が凸面形状の外周面23c1を有するダイレータ3について説明したが、第1の実施形態の項で説明したような、平面形状の外周面や凹面形状の外周面(不図示)を有するダイレータであってもよい。
【0062】
また、上述した第1および第2の実施形態ではシャフト11と螺旋状の螺旋状の凸部21、22とが一体的に形成されたダイレータ1、2、第3の実施形態ではシャフト13および螺旋状の凸部23がそれぞれ第1コイル体13cおよび第2コイル体23cで形成されたダイレータ3について説明したが、当該ダイレータは、例えば、シャフト15m1(先端部、テーパ部および本体部)が一体的に形成されかつ螺旋状の凸部25m1が第2コイル体で形成されたダイレータ5m1(
図9参照)であってもよい。
【0063】
また、上述した第2の実施形態では、シャフト11と螺旋状の凸部22とが一体的に形成され、螺旋状の凸部22の先端22bが軸方向においてシャフト11の先端11bから離間しているダイレータ2について説明したが、例えば、シャフト15m2および螺旋状の凸部25m2がそれぞれ第1および第2コイル体で形成され、この第2コイル体の先端25cbm2が軸方向において上記第1コイル体の先端15cbm2から離間しているダイレータ5m2(
図10A参照)、シャフト15m3が一体的に形成されていると共に螺旋状の凸部25m3が第2コイル体で形成され、この第2コイル体の先端25cbm3が軸方向においてシャフト15m3の先端15bm3から離間しているダイレータ5m3(
図10B参照)なども本発明の意図する範囲内である。
【0064】
また、上述した第1~第3の実施形態では、シャフト11、13が先端部111、131、テーパ部112、132、および本体部113、133を有しているダイレータ1~3について説明したが、シャフトが先端部を有さずテーパ部および本体部のみを有するダイレータであってもよい。このようなダイレータとしては、例えば、テーパ部152m4および本体部153m4を有するシャフト15m4と螺旋状の凸部25m4とが一体的に形成されているダイレータ5m4(
図11A参照)、テーパ部152m5および本体部153m5を有するシャフト15m5と螺旋状の凸部25m5とがコイル体(第1および第2コイル体)で形成されているダイレータ5m5(
図12A参照)、更にはテーパ部152m6、152m7の先端から基端側に向かって所定の距離Lm6、Lm7だけ離れているダイレータ5m6、5m7(
図11B、
図12B参照)等が挙げられる。また、図示していないが、このようなダイレータは、シャフトが一体的に形成されかつ螺旋状の凸部が第2コイル体で形成されているものであってもよい。このようなダイレータも、上述した第1~第3の実施形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3、5m1~5m7 ダイレータ
11、13、15m1~15m5 シャフト
111、131 先端部
112、132、152m4~152m7 テーパ部
113、133、153m4、153m5 本体部
13c 第1コイル体
21~23、25m1~25m5 螺旋状の凸部
211、221、231 第1の部位
212、222、232 第2の部位
23c 第2コイル体
31 基部