(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】鉱山管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20120101AFI20221021BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20221021BHJP
【FI】
G06Q10/04 310
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2021015132
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】飯星 洋一
(72)【発明者】
【氏名】津久井 洋
(72)【発明者】
【氏名】江尻 孝一郎
(72)【発明者】
【氏名】安島 健一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 健二
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238875(JP,A)
【文献】特開2019-200462(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097909(WO,A1)
【文献】CHOI, Y.,Multi-criteria evaluation and least-cost path analysis for optimal haulage routing of dump trucks in,International Journal of Geographical Information Science,2009年,Vol.23, No.12,p.1541-1567
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山車両の位置情報および稼働情報を基に鉱山の生産性を管理する鉱山管理システムにおいて、
演算機能を有する処理装置と、
前記処理装置の演算結果を表示可能な表示端末装置と、
前記鉱山において前記鉱山車両が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの複数の経路のメッシュ情報と経路別の生産性基準値とを記憶する記憶装置とを備え、
前記処理装置は、
前記鉱山車両の位置情報を基に、前記鉱山車両が排土してから積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの走行サイクルのメッシュ情報を生成し、
前記走行サイクルのメッシュ情報と前記記憶装置に記憶された前記複数の経路のメッシュ情報とを比較して前記走行サイクルを前記複数の経路のいずれか一つの経路に分類し、
前記鉱山車両の稼働情報を基に前記走行サイクルの生産性指標を算出し、
前記走行サイクルの生産性指標と前記一つの経路の生産性基準値とを比較して前記一つの経路の生産性低下を検知し、その検知結果を前記表示端末装置へ出力
し、
前記処理装置は、前記走行サイクルのメッシュ情報と前記一つの経路のメッシュ情報との類似度に基づいて、前記走行サイクルが前記一つの経路に分類されるか否かを判別し、
前記一つの経路のメッシュ情報は、前記一つの経路を構成するメッシュの集合である第1メッシュ群の情報と、前記第1メッシュ群に隣接する全方位の情報を含むメッシュの集合である第2メッシュ群の情報とを含む
ことを特徴とする鉱山管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の鉱山管理システムにおいて、
前記処理装置は、前記一つの経路の生産性低下を検知した場合に、前記一つの経路の過去の生産性指標を運転者別、日付別、前記経路を構成するメッシュ別、または鉱山車両別に集計した結果を前記表示端末装置へ出力する
ことを特徴とする鉱山管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の鉱山管理システムにおいて、
前記生産性指標は、前記鉱山車両の単位時間当たりの運搬量である時間効率と単位燃料当たりの運搬量である燃料効率とを含み、
前記記憶装置は、前記時間効率および前記燃料効率の適正範囲を前記生産性基準値として記憶しており、
前記処理装置は、前記一つの経路における前記時間効率および前記燃料効率の少なくとも一方が前記適正範囲から外れた場合に、前記一つの経路の生産性低下を検知すると共に生産性低下要因を前記表示端末装置へ出力する
ことを特徴とする鉱山管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の鉱山管理システムにおいて、
前記記憶装置は、経路別にクラスタ化された過去の適正な走行サイクルの走行距離および生産性指標を前記生産性基準値として記憶しており、
前記処理装置は、生産性低下の判定対象である走行サイクルの走行距離および生産性指標からなるデータの最寄りのクラスタからの距離に基づいて生産性低下を検知する
ことを特徴とする鉱山管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の鉱山管理システムにおいて、
前記処理装置は、経路別の走行割合と経路別の生産性指標との積算値を前記鉱山車両の運行条件別に算出し、前記表示端末装置へ出力する。
ことを特徴とする鉱山管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山の生産性を管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉱山車両のデータを収集・分析し、鉱山車両が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの経路に基づいて様々な管理指標を算出するシステム(特許文献1)、あるいは経路中の特定区間の稼働状況に基づいて様々な管理指標を算出するシステム(特許文献2)が開示されている。具体的には特許文献1では路面凸凹に関する路面指標、走行車両の燃費指標、走行速度の改善指標、車両の点検指標、運転者の疲労指標、運搬経路の変更指標、積載量の改善指標等を経路に関連付けて算出するシステムおよび方法が開示されている。また特許文献2では経路上の隣接するリンクが所定条件を満たす特定区間において、単位時間当たりの燃料消費量もしくは積荷運搬量といった鉱山車両の生産効率に関する指標等を算出するシステムおよび方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5596661号公報
【文献】再公表特許WO2015/029229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2では鉱山車両の位置を特定するGPSセンサの誤差、もしくは他の車両や悪路をさける際の走行路のずれが考慮されていない。このためGPSセンサ誤差や走行路のずれにより、特許文献1では本来の経路とは異なる経路に分類されることに起因する管理指標のずれが発生し、さらには特許文献2では管理指標を計算する区間を直線かつ勾配小かつ交差点ではない場所に限定しているため、管理指標を計算する頻度が低下する恐れがある。これに加えて、従来の方法では鉱山の生産性とシステムが提供する管理指標が直接リンクせず、鉱山の生産性を維持・改善することが困難であった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉱山の生産性を正確に維持・管理することが可能な鉱山管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、鉱山車両の位置情報および稼働情報を基に鉱山の生産性を管理する鉱山管理システムにおいて、演算機能を有する処理装置と、前記処理装置の演算結果を表示可能な表示端末装置と、前記鉱山において前記鉱山車両が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの複数の経路のメッシュ情報と経路別の生産性基準値とを記憶する記憶装置とを備え、前記処理装置は、前記鉱山車両の位置情報を基に、前記鉱山車両が排土してから積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの走行サイクルのメッシュ情報を生成し、前記走行サイクルのメッシュ情報と前記記憶装置に記憶された前記複数の経路のメッシュ情報とを比較して前記走行サイクルを前記複数の経路のいずれか一つの経路に分類し、前記鉱山車両の稼働情報を基に前記走行サイクルの生産性指標を算出し、前記走行サイクルの生産性指標と前記一つの経路の生産性基準値とを比較して前記一つの経路の生産性低下を検知し、その検知結果を前記表示端末装置へ出力し、前記処理装置は、前記走行サイクルのメッシュ情報と前記一つの経路のメッシュ情報との類似度に基づいて、前記走行サイクルが前記一つの経路に分類されるか否かを判別し、前記一つの経路のメッシュ情報は、前記一つの経路を構成するメッシュの集合である第1メッシュ群の情報と、前記第1メッシュ群に隣接する全方位の情報を含むメッシュの集合である第2メッシュ群の情報とを含むものとする。
【0007】
以上のように構成した本発明によれば、稼働データから得た走行サイクルのメッシュ情報を記憶装置に記憶されている複数の経路のメッシュ情報と比較することで、走行サイクルをいずれか一つの経路に正確に分類することができる。また、走行サイクルの生産性指標を該当する経路の生産性基準値と比較することで、走行サイクルの生産性低下を正確に検知することができる。これにより、鉱山の生産性を正確に維持・管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鉱山管理システムよれば、鉱山の生産性を正確に維持・管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】処理装置の演算ブロックの一例を示す図である。
【
図3】生産性低下判別部の処理の一例を示す図である。
【
図4】経路判別部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】鉱山車両の位置情報から算出されるメッシュ情報の一例を示す図である。
【
図6】経路判別対象である走行サイクルのメッシュ情報と経路のメッシュ情報との類似度の計算方法の一例を示す図である。
【
図7】生産性低下要因分離部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】生産性指標としての燃料効率を経路別に集計した結果の一例を示すボックスチャートである。
【
図9】ドライバ指導管理ダッシュボードの一例を示す図である。
【
図10】運転計画管理ダッシュボードの一例を示す図である。
【
図11】路面管理ダッシュボードの一例を示す図である。
【
図12】車両管理ダッシュボードの一例を示す図である。
【
図13】経路別の走行回数を所定期間で集計した結果の一例を示す図である。
【
図14】二つの生産性指標(燃料効率および時間効率)を経路別に集計した結果の一例を示す図である。
【
図15】本発明の第2の実施例における生産性低下要因分離部の処理を示すフローチャートである。
【
図16】生産性指標(燃料効率)と走行距離を経路別に集計した結果の一例を示す図である。
【
図17】本発明の第3の実施例における生産性低下判別部および生産性低下要因分離部の処理を示すフローチャートである。
【
図18】設定を変更した車両の生産性指標(燃料効率)を経路別および設定別に集計した結果の一例を示すボックスチャートである。
【
図19】鉱山車両の設定を選択する際に用いる生産性指標の比較表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1の実施例に係る鉱山管理システムについて
図1から
図11を用いて説明する。
【0012】
図1は、本実施例に係る鉱山管理システムの全体像を示す図である。鉱山管理システム200は、まとめて管理される同一の鉱山エリア100を走行する複数の鉱山車両101から各車両の位置情報および稼働情報を集約する記憶装置201(例えばデータベース)と、鉱山車両101の位置情報および稼働情報を基に鉱山の生産性指標を算出して生産性低下要因を判別する処理装置202(例えばサーバ)と、生産性指標とその低下要因を表示する表示端末装置203(表示手段を備える例えばノートパソコンや携帯端末)とを備えている。また、記憶装置201には、鉱山において鉱山車両101が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの複数の経路の識別情報である経路IDと、各経路の生産性基準値とが登録されている。ここで、鉱山車両101の稼働データは鉱山管理システム200に逐次送信されることが望ましいが、通信状況および通信コストを考えると必ずしも逐次送信できるとはかぎらない。そこで本実施例における処理装置202は、ある程度まとまった量の稼働データをバッファリングした後に処理を開始するものとする。ある程度まとまった量とは、例えば、鉱山において鉱山車両101が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまで走行動作を1サイクルとし、過去最長サイクルに相当する時間あるいは、最長サイクルに相当するデータ量によって決めることができる。
【0013】
鉱山管理システム200のユーザーは、表示端末装置203に表示される情報(ダッシュボード情報)を用いて鉱山の生産性低下を早期に検知し、生産性の低下要因に基づいた対策を実施することで鉱山の生産性を維持・管理できる。例えば、鉱山の運行管理者301は、ダッシュボード情報を用いて鉱山車両101の運行計画を修正することができる。ドライバ指導者302は、ダッシュボード情報から運転を改善すべきドライバを発見し、運転指導を行うことができる。路面保守員303は、ダッシュボード情報から生産性低下につながっている路面個所を早期に特定して修理を行うことができる。車両保守員304は、ダッシュボード情報から車両パワトレ部品の異常を検知し、部品ディーラ305に必要な部品をあらかじめ準備するように伝えることができる。また、インターネット400を介して取得した天候情報(履歴・予測)や鉱物価格(履歴・予測)とダッシュボード情報とを組み合わせることにより、採掘責任者306が採掘・保守計画を修正したり、部品ディーラ305が独自にダッシュボード情報を用いて部品の故障予兆をとらえることで、部品手配を先行実施することが可能となる。なお、表示端末装置203の表示形式はダッシュボード形式に限られず、レポート形式やメール形式であっても良い。
【0014】
図2に処理装置202の演算ブロックの一例を示す。
図2において、処理装置202の演算ブロックは、メッシュ処理部202aと、経路判別部202bと、生産性低下判別部202cと、生産性低下要因分離部202dとで構成される。
【0015】
メッシュ処理部202aは、鉱山車両101に搭載されたGPSセンサ等から得られる位置情報からメッシュ情報を算出する。経路判別部202bは、1サイクル分のメッシュ群とデータベース201に登録された経路IDに割り当てられたメッシュ群とを比較することで経路を判別する。
【0016】
図3に、生産性低下判別部202cによる処理の一例を示す。
図3において、生産性低下判別部202cは、稼働情報(燃料消費量、運搬量、走行距離、走行時間等)から、メッシュ処理部202aが判別した経路毎の生産性指標を算出する。本実施例では、燃料1リットルあたりの運搬量である燃料効率(T/L)を生産性指標として算出するが、単位時間あたりの運搬量である時間効率(T/h)やこれらの逆数を生産性指標として算出してもよい。そして、生産性低下判別部202cは、経路毎に生産性指標と生産性基準値とを比較し、生産性指標が生産性基準値を下回る経路が存する場合に、当該経路の生産性が低下していると判別する。
【0017】
図2に戻り、生産性低下要因分離部202dは、生産性指標を生産性低下の要因に応じて集計し、さらに各生産性低下要因に関連する車両情報を表示端末装置203に表示させる。なお好ましくは生産性を改善するための推奨手段として、過去の類似事例と対策を検索し最も近いケースから順に表示しても良い。本構成により、鉱山の生産性の維持・改善が可能となり、かつ生産性の低下要因を表示端末装置203に表示させることで速やかな対策の実施が可能となる。
【0018】
図4は、経路判別部202bの処理の一例を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0019】
経路判別部202bは、まず、1サイクル分のメッシュ情報を抽出する(ステップS301)。ここでいう排土とは鉱山車両101の積載重量検知手段(例えばサスペンションのダンパー圧力センサ)において積載重量が所定値よりも減少した場合を意味しており、積載しているものが土だけではなく鉄鋼石や石炭等の鉱物でも構わない。また、メッシュ情報とは例えばquadkeyやgeohashなどの位置(緯度、経度)とメッシュサイズによって一意にきまる固有ID(メッシュID)であり、メッシュIDが同じであれば同じメッシュであると判断できる。なおメッシュ情報は固有IDに限られず、例えばメッシュの2次元座標といったメッシュ同士の位置関係を判断できる情報であれば良い。
【0020】
ステップS301に続き、当該サイクルのメッシュ群(C)とデータベース201に登録済みの経路IDと結びつけられたメッシュ群(R)との類似度を算出し、類似度が最大となる経路の類似度を最大類似度として算出する(ステップS302)。これにより類似度が最も大きい経路IDを抽出される。本実施例では後述するように経路IDに結び付けられた複数メッシュの固有ID群(R)と当該サイクルから抽出した複数メッシュの固有ID群(C)のジャガード距離(R&C)/Rを類似度とする。なおこの計算に先立ち、ID群(C)とID群(R)の固有ID数を比較し、その差もしくは比が所定値よりも大きい場合は無駄な計算を避けるために類似度計算を行わないことが好ましい。
【0021】
ステップS302に続き、最大類似度が閾値(例えばジャガード距離で0.8、すなわちサイクル中の8割のメッシュが登録された経路と一致)よりも小さいか否かを判定する(ステップS303)。
【0022】
ステップS303でNO(最大類似度が閾値以上)と判定された場合は、当該サイクルに対して最大類似度が算出された経路ID情報を当該サイクルに付与することで、当該サイクルをデータベース201に登録された経路に分類する(ステップS304)。
【0023】
ステップS303でYES(最大類似度が閾値より小さい)と判定された場合は、該当経路なしとして、新経路IDと当該サイクルのメッシュID群を新たな経路情報としてデータベース201に登録し(ステップS305)、当該サイクルに新経路ID情報を付与することで同じくデータベース201に登録された経路に分類する(ステップS306)。
【0024】
ステップS306に続き、ステップS301~S306の処理がバッファから抽出したすべてのサイクルに対して行われたか否か(残サイクルがあるかないか)を判定する(ステップS307)。ステップS307でYES(残サイクルなし)と判定された場合は当該フローを終了し、NO(残サイクルあり)と判定された場合はステップS301へ戻る。本構成により、鉱山車両101の稼働データに経路IDとメッシュ情報を速やかに割り付けることが可能となる。
【0025】
図5に鉱山車両101の位置情報から算出されるメッシュ情報の一例を示す。
図3で説明した通り、鉱山車両101の稼働情報はGPSセンサ等から得られた車両位置をもとにメッシュの固有IDと結びつけられる。ここではその固有IDをAとおく。B1からB8はAに隣接するメッシュ(隣接メッシュ)の固有IDであり、本実施例ではこの隣接メッシュを既定の経路のメッシュ群に含めることにより、GPS誤差や走行路ずれにロバストな経路判別を実施できる。なおメッシュのサイズは、車両の大きさと車両最大速度と稼働情報のサンプリング間隔に基づいて決めることが好ましい。具体的には、次回のサンプリングで得られる位置情報が隣接メッシュを飛び越えないようにメッシュのサイズを設定すればよい。例えば1秒サンプリングで車両の最大速度が20m/sの場合は最小のメッシュサイズは20mであり、車両寸法が15×10mであればGPS搭載位置やGPS精度も考慮してメッシュの一辺をおおよそ30m程度に設定すればよい。また隣接メッシュとまるめ処理との違いは、まるめ処理は例えばB1-B3のように車両に対して斜めの一区画のメッシュ情報しか含まないのに対し、隣接メッシュは全方位の情報を含むことである。隣接メッシュを用いることにより、位置情報が前後、左右、斜めどの方向に誤差を持ったとしても正しい経路判別ができる。
【0026】
図6に経路判別対象である走行サイクルのメッシュ情報と経路のメッシュ情報との類似度の計算方法の一例を示す。図中のRは、データベース201に登録された経路のメッシュ群であり、R’は
図5の関係に基づいて算出されたメッシュ群Rの隣接メッシュ群であり、Cは走行サイクルのメッシュ群である。メッシュ群R,Cの類似度は、例えばRとCとで重複するメッシュの数をRのメッシュ数で除算した値として定義される(類似度1)。その他、メッシュ群Rに隣接メッシュ群R’に加えたメッシュ群R+R’とメッシュ群Cとで重複するメッシュの数をメッシュ群Cのメッシュ数で除算した値としても良い(類似度2)。これにより、GPS誤差や走行路ずれの影響を低減した経路判別が可能となる。なお、本実施例では経路判別に隣接メッシュ情報を用いるものの、稼働情報は固有メッシュIDと経路IDに紐づけされているため、まるめ処理とは異なり隣接経路を走行したときの稼働データを誤って集計することはない。
【0027】
図7は、生産性低下要因分離部202dの処理の一例を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0028】
生産性低下要因分離部202dは、まず、経路別に集計された生産性指標のいずれか一つがあらかじめ設定された所定値よりも小さいか否か(生産性が低下しているか否か)を判定する(ステップS601)。ステップS601でNOと判定した場合は、当該フローを終了する。ステップS601でYESと判定した場合は、生産性が低下した経路が単一経路か否かを判定する(ステップS602)。
【0029】
ステップS602でNOと判定した場合は、後述するステップS607へ移行する。ステップS602でYESと判定した場合は、生産性指標をドライバ別に集計し、特定ドライバの生産性指標が低下しているか否かを判定する(ステップS603)。ステップS603でYESと判定した場合は、ドライバ指導管理のために表示端末装置203にドライバ毎の生産性指標とその低下要因を表示し(ステップS604)、当該フローを終了する。ステップS603でNO(特定ドライバの生産性指標が低下していない)と判定した場合は、時間帯別に生産性指標を集計し、特定時間帯で生産性指標が低下しているか否かを判定する(ステップS605)。
【0030】
ステップS605でYESと判定した場合は、運行計画管理のために表示端末装置203に時間帯毎の生産性指標とその低下要因を表示し(ステップS606)、当該フローを終了する。ステップS605でNOと判定した場合は、メッシュ別に生産性指標を集計し、特定メッシュの生産性指標が低下しているか否かを判別する(ステップS607)。
【0031】
ステップS607でYESと判定した場合は、路面管理のために表示端末装置203に特定メッシュの生産性指標とその低下要因を表示し(ステップS608)、当該フローを終了する。ステップS607でNOと判定した場合は、車両別に生産性指標を集計し、特定車両の生産性指標が低下している否かを判定する(ステップS609)。
【0032】
ステップS609でNOと判定した場合は、当該フローを終了する。ステップS609でYESと判定した場合は、車両管理のために表示端末装置203に車両別の生産性集計情報とその低下要因を表示し(ステップS610)、当該フローを終了する。
【0033】
このように経路別に生産性指標を算出・集計し、さらに単一経路に着目して生産性の低下要因に関連した分析を行うことで、生産性低下の要因を分離できる。なおステップS609で特定車両の生産性低下がみられない場合は対策不明として処理を終了している。本フローチャートでは図示していないが、例えばこの不明要因と判断された回数をカウントし、所定回数よりも大きい場合は、経路別の生産性基準値や特定ドライバ、特定時間帯、特手メッシュ、特定車両の生産性低下を判断する基準を見直すことで、対策不明と判断される回数を減らすことができる。
【0034】
図8は、生産性指標としての燃料効率(T/L)を経路別に集計した結果の一例を示すボックスチャートである。本図では分かりやすさのため、経路別生産性指標を値の小さいものから順に図中左から右へ並べて表示している。生産性低下を検知する方法はいくつか考えられるが、例えば生産性基準値よりも小さい外れ値(経路R3の星印で示すデータ)の増加や生産性基準値と中央値との比較により生産性の低下を検知できる。なお、この際の集計は判定時刻にいたるまでの特定データ個数もしくは特定時間に基づいて集計すればよく、好ましくは特定時間において特定以上のデータ個数がある経路だけで生産性指標を集計し、基準値と比較する。また、経路別生産性指標の表示方法としては、経路の距離の小さい順に左から右へ並べて表示する方法もあり、この場合も経路の高度差が同じであれば左から右へ向かって経路別生産性基準値が小さくなる。また、データベース206に登録される経路別生産性基準値は例えば過去の経路別生産性指標の平均値から決めればよく、その場合は鉱山の過去の標準的な生産性からの低下を検知することができる。あるいは運転が上手なベテランドライバや路面状況が良い等の経路別生産性指標が良いデータの平均値をデータベース206に登録することで、過去の高水準の生産性からの低下を検知することができる。
【0035】
図9にドライバ指導管理ダッシュボードの一例を示す。本事例ではドライバ別に週毎に集計した生産性指標の平均値を表示すると共に、生産性低下の要因となるパラメータ(本例では減速回数)の変化履歴を表示している。本図によると、ドライバD2の生産性が他のドライバよりも低く、ドライバD2の減速回数が増加傾向にあることが分かる。ドライバが改善すべき点(本例ではブレーキの踏みすぎ)を把握したドライバ指導者103は、ドライバD2に対して適切なドライバ指導を実施することで生産性低下を早急に改善できる。また、ドライバ指導者103は、ドライバ指導後にドライバ指導管理ダッシュボードを再度確認することで改善効果の有無を把握できる。このように生産性指標と合わせて生産性低下の要因となるパラメータの変化履歴を示すことで、生産性低下に対する適切な改善策を講じることが可能となる。
【0036】
図10に運転計画管理ダッシュボードの一例を示す。本事例では日毎に集計した生産性指標(T/L)を表示すると共に、生産性低下の要因となるパラメータ(本例ではアイドル時間)の変化履歴を表示している。運行管理者102は、生産性指標を直近数日間の平均値と比較することで生産性低下を検知できる。また、生産性低下の要因であるアイドル時間の増加を確認した運行管理者102は、運行計画を修正することで生産性低下の要因を早期に解消することができる。
【0037】
図11に路面管理ダッシュボードの一例を示す。本事例では日毎に集計した生産性指標(T/L)を表示すると共に、生産性が低下した経路を構成するメッシュ毎に生産性低下の要因となるパラメータ(本例では減速回数)の変化履歴を表示している。路面保守員104は、メッシュ毎の減速回数の変化を確認することにより、路面悪化の進展度合いを把握できる。また、図中に示すように、経路を構成するメッシュ群の位置情報を可視化し、どのメッシュの路面が悪化しているかを示すことにより、路面の改善個所を速やかに把握することが可能となる。
【0038】
図12に車両管理ダッシュボードの一例を示す。本事例では車両別に週毎に集計した生産性指標(T/L)を表示すると共に、生産性指標低下の要因となるパラメータ(本例ではパワトレ効率)の変化履歴を表示している。車両保守員304は、パワトレ効率の変化履歴を他の車両と比較し、その進展度合いや差を把握することにより、車両のパワトレ(エンジン・発電機・変換機・モータ等)の点検の要否を早期に判断し、調整または部品交換を適切に行うことで生産性低下を早期に改善4できる。なお、
図9~
図12は一例に過ぎず、生産性指標の集計および表示は週毎または日毎に限られず、任意に設定してもよい。
【0039】
(まとめ)
本実施例では、鉱山車両101の位置情報および稼働情報を基に鉱山の生産性を管理する鉱山管理システム200において、演算機能を有する処理装置202と、処理装置202の演算結果を表示可能な表示端末装置203と、前記鉱山において鉱山車両101が排土した場所から積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの複数の経路のメッシュ情報と経路別の生産性基準値とを記憶する記憶装置201とを備え、処理装置202は、鉱山車両101の位置情報を基に鉱山車両101が排土してから積荷を積み込む場所に移動し、再び排土する場所に移動するまでの走行サイクルのメッシュ情報を生成し、前記走行サイクルのメッシュ情報と記憶装置201に記憶された複数の経路のメッシュ情報とを比較して前記走行サイクルを複数の経路のいずれか一つの経路に分類し、鉱山車両101の稼働情報を基に前記走行サイクルの生産性指標を算出し、前記走行サイクルの生産性指標と前記一つの経路の生産性基準値とを比較して前記一つの経路の生産性低下を検知し、その検知結果を表示端末装置203へ出力する。
【0040】
以上のように構成された本実施例によれば、稼働データから得た走行サイクルのメッシュ情報を記憶装置201に記憶されている複数の経路のメッシュ情報と比較することで、走行サイクルをいずれか一つの経路に正確に分類することができる。また、走行サイクルの生産性指標を該当する経路の生産性基準値と比較することで、走行サイクルの生産性低下を正確に検知することができる。これにより、鉱山の生産性を正確に維持・管理することが可能となる。
【0041】
また、処理装置202は、前記走行サイクルのメッシュ情報と前記一つの経路のメッシュ情報との類似度に基づいて、前記走行サイクルが前記一つの経路に分類されるか否かを判別する。これにより、走行サイクルの経路判別精度を向上させることが可能となる。
【0042】
また、前記一つの経路のメッシュ情報は、前記一つの経路を構成するメッシュの集合である第1メッシュ群Rの情報と、第1メッシュ群Rに隣接するメッシュの集合である第2メッシュ群R’の情報とを含む。これにより、鉱山車両101のGPS誤差や走行路ずれにロバストな経路判別を実施することが可能となる。
【0043】
また、処理装置202は、前記一つの経路の生産性低下を検知した場合に、前記一つの経路の過去の生産性指標を運転者別、日付別、前記経路を構成するメッシュ別、または鉱山車両別に集計した結果を表示端末装置203へ出力する。これにより、生産性の低下要因に応じた対策を速やかに実施することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
本発明の第2の実施例に係る鉱山管理システムについて、
図13および
図15を用いて説明する。本実施例では、二つの生産性指標を用いた生産性の早期改善方法について説明する。
【0045】
図13に経路別の走行回数を所定期間で集計した結果の一例を示す。図中の折れ線は累積度数を示しており、ここに示した20個の経路の走行回数の合計が所定期間の全走行回数の8割を占めている。そこで本実施例では、全ての経路ではなく走行回数の多い経路(すなわち、鉱山全体の生産性への影響が大きい経路)についてのみ生産性の低下を検知することとする。これにより、鉱山の生産性の維持・改善を効率的に実現することが可能となる。
【0046】
図14に二つの生産性指標(燃料効率および時間効率)を経路別に集計した結果の一例を示す。
図14において、横軸は第1の生産性指標である燃料効率(T/L)を示し、縦軸は第2の生産性指標である時間効率(T/h)を示す。また、各データのプロットの大きさは当該経路の走行回数を表し、プロットの色の濃さは当該経路の平均距離を表す。
図14は
図13に示したデータを日付毎に再集計した結果であり、経路A,Bは
図13に示した走行回数の多い上位二つの経路を示している。
図14に示すように、一般に経路の距離が長くなるほど(プロットの色が濃くなるほど)左下に位置し、短くなるほど(プロットの色が薄くなるほど)右上に位置する傾向がある。そこで図中に示すように、経路別にそれぞれの生産性指標の下限値(経路Aについてのみ図示)を設定し、生産性指標がこの下限値を下回ったことをもって、生産性の低下を検知する。例えばケース1では燃料効率(T/L)は向上しているが時間効率(T/h)は逆に悪化しており、ケース2ではこれとは逆に時間効率(T/h)は向上しているが燃料効率(T/L)は逆に悪化している。このように燃料効率(T/L)が悪化している場合と時間効率(T/h)が悪化している場合とでは対策は異なるため、次に示す方法でそれぞれに対して適切な分析・改善策を実施する。
【0047】
図15は、本実施例における生産性低下要因分離部202dの処理を示すフローチャートである。以下、第1の実施例(
図7に示す)との相違点を中心に説明する。
【0048】
生産性低下要因分離部202dは、まず、経路別に集計した生産性指標が経路別に設定した生産性指標の下限値よりも大きいか否かを判定する(ステップS1401)。ステップS1401でYESと判定した場合は、当該フローを終了する。ステップS1401でNOと判定した場合は、燃料効率(T/L)があらかじめ設定した下限値より小さいか否かを判定する(ステップS1402)。ここで、経路別生産性指標が下限値以下(ステップS1401の判定がNO)でかつ燃料効率(T/L)が下限値以上(ステップS1402の判定がNO)の場合は、時間効率(T/h)が低下していることを意味する。
【0049】
ステップS1402でYESと判定した場合は、ドライバ指導管理または車両管理のために燃料効率(T/L)への感度が大きい要因を表示端末装置203に表示させ(ステップS604またはステップS610)、当該フローを終了する。ステップS1402でNOと判定した場合は、路面管理または運行計画管理のために時間効率(T/h)への感度が大きい要因を表示端末装置203に表示させる(ステップS608またはステップS606)。
【0050】
(まとめ)
本実施例における生産性指標は、鉱山車両101の単位時間当たりの運搬量である時間効率(T/h)と単位燃料当たりの運搬量である燃料効率(T/L)とを含み、記憶装置201は、鉱山車両101の時間効率(T/h)および燃料効率(T/L)の適正範囲を生産性基準値として記憶しており、処理装置202は、走行サイクルが分類された一つの経路における時間効率(T/h)および燃料効率(T/L)の少なくとも一方が前記適正範囲から外れた場合に、前記一つの経路の生産性低下を検知すると共に生産性低下要因を表示端末装置203へ出力する。
【0051】
以上のように構成した本実施例によれば、鉱山車両101の時間効率(T/h)および燃料効率(T/L)を生産性指標として監視し、それぞれの低下要因を表示端末装置203に表示させることにより、いずれの生産性指標の低下に対しても適切な対策を実施することが可能となる。
【実施例3】
【0052】
本発明の第3の実施例に係る鉱山管理システムについて、
図16および
図17を用いて説明する。本実施例では、クラスタ距離を用いた生産性低下の検知方法について説明する。なお、以下の説明では簡単のため、走行距離と燃料効率(T/L)をパラメータとするクラスタ距離を用いるが、時間効率(T/h)等をパラメータに含めても良い。
【0053】
図16に生産性指標(燃料効率)と走行距離を経路別に集計した結果の一例を示す。
図16は、燃料効率(T/L)を縦軸、走行距離を横軸とした散布図であり、日毎に集計したデータをプロットしている。プロットの色の濃さは経路IDを表す。
図16に示すように、生産性指標(T/L)は走行距離が長くなるほど低下する傾向がある。同一経路の集計データを例えばk-means等のクラスタリング手法を用いてクラスタリング(クラスタ化)し、対象データの最寄のクラスタからの距離(クラスタ距離)を計算することで生産性の低下を早期に検知することが可能となる。クラスタ距離の算出方法はいくつかあるが、
図16には重心法を用いた例を示しており、クラスタの重心座標から対象データまでの距離(図中、両矢印で示す)をクラスタ距離とする。
【0054】
図16は、本実施例における生産性低下判別部202cおよび生産性低下要因分離部202dの処理を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0055】
生産性低下判別部202cは、まず、生産性指標を経路別に算出し(ステップS1601)、あらかじめ設定したクラスタに対して最小のクラスタ距離を算出し(ステップS1602)、クラスタ距離が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS1603)。
【0056】
ステップS1603でNOと判定した場合は、生産性低下はないと判断し、当該フローを終了する。ステップS1603でYESと判定した場合は、経路別に算出した生産性指標が低下しているか否かを判定する(ステップS1604)。ここでは経路別に算出した過去の生産性指標(例えば過去の平均値)を基準に生産性低下を判別してもよいし、あるいはあらかじめ別の方法で設定した経路別の基準値から生産性の低下を検知しても良い。
【0057】
ステップS1604でYESと判定した場合は、燃料効率(T/L)の低下要因を算出する(ステップS1605)。
図16に示す対象データ1はこの場合のデータの一例を示している。ステップS1605は、例えば
図7のステップS603~S610で構成される。
【0058】
ステップS1604でNOと判定した場合は、クラスタの構成データが適正でないことを意味しているため、本データを含めた最新のデータでクラスタを更新し(ステップS1606)、当該フローを終了する。
図16に示す対象データ2はこの場合のデータの一例を示している。
【0059】
(まとめ)
本実施例における処理装置202は、記憶装置201は、経路別にクラスタ化された過去の適正な走行サイクルの走行距離および生産性指標からなるデータを生産性基準値として記憶しており、処理装置202は、生産性低下の判定対象である走行サイクルの走行距離および生産性指標からなるデータの最寄りのクラスタからの距離に基づいて生産性低下を検知する。
【0060】
以上のように構成した本実施例によれば、走行サイクルの走行距離および生産性指標からなるデータの最寄りのクラスタからの距離に基づいて生産性低下を検知することにより、生産性低下の検知精度を向上させることが可能となる。
【実施例4】
【0061】
本発明の第4の実施例に係る鉱山管理システム200について、
図18および
図19を用いて説明する。本実施例では、経路別の生産性指標を生産性低下要因があらかじめ分かっている場合、すなわち鉱山管理システム200を生産性改善活動に適用する場合について説明する。本実施例ではその一例として、鉱山車両101の設定値を変えた場合について説明する。生産性指標である燃料効率(T/L)に影響する車両設定値としては、例えばエンジンやモータ・発電機の上下限回転数や出力制限値などが考えられる。
【0062】
図18は、設定を変更した車両の生産性指標(T/L)を経路別および設定別に集計した結果の一例を示すボックスチャートである。この図からは、設定Bの生産性効率(T/L)が設定A,Cよりも全体的に低いことが読み取れる。このボックスチャートはできるだけ同じ条件で走行した車両のデータから作成することが好ましい。例えば同じ日に走行させた複数の車両のデータを集計することにより天候や路面などの環境影響を取り除くことができ、複数ドライバが運転した車両のデータを集計することによりドライバの違いによる影響を取り除くことができる。
【0063】
図19に鉱山車両101の設定を選択する際に用いる生産性指標の比較表の一例を示す。図中の走行割合は生産性指標(T/L)のシミュレーションをするための経路の走行割合であり、過去の走行履歴から算出しても良いし、今後の掘削計画から見積もっても良い。また、それぞれの経路には
図18で説明したように経路毎の生産性指標(T/L)の代表値(本例では平均値)が記載されており、それぞれの生産性指標(T/L)と走行割合を積算し、経路1~4について集計した値が計の行に記載されている。この計欄では7割の走行割合でどの程度の生産効率となるかが設定毎に示されており、この中で最も生産性効率が大きい設定Aが最も良い設定だと判断することができる。また、設定Aと設定Cの生産性効率は同程度でありどちらが良いか判断が難しいが、例えば時間効率(T/h)などの他の生産性指標を使って同様の表を作成し、複数の表から最も良い設定値を選択してもよい。なお、本事例では車両の設定を比較しているが、例えば生産性指標(T/L)に影響するタイヤやエアコンなどの部品の比較、ドライバの運転比較、運行指令条件の比較等にも適用できる。
【0064】
(まとめ)
本実施例における処理装置202は、経路別の走行割合と経路別の生産性指標との積算値を鉱山車両101の運行条件(車両設定値、部品、ドライバ、運行指令条件等)別に算出し、表示端末装置203へ出力する。
【0065】
以上のように構成した本実施例によれば、経路別の走行割合と経路別の生産性指標との積算値を鉱山車両101の運行条件別に比較することにより、生産性の改善に最も寄与する運行条件を選択することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
100…鉱山エリア、101…鉱山車両、200…鉱山管理システム、201…データベース(記憶装置)、202…サーバ(処理装置)、202a…メッシュ処理部、202b…経路判別部、202c…生産性低下判別部、202d…生産性低下要因分離部、203…表示端末装置、301…運行管理者、302…ドライバ指導者、303…路面保守員、304…車両保守員、305…部品ディーラ、306…採掘責任者、400…インターネット。