(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】アンテナシステム用の改良された測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 29/10 20060101AFI20221021BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20221021BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
G01R29/10 E
H01Q17/00
H01Q15/14 Z
(21)【出願番号】P 2021507673
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019065920
(87)【国際公開番号】W WO2020035193
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519315899
【氏名又は名称】ブルーテスト、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】BLUETEST AB
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】レハマー, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クバーンストランド, ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アルビドソン, クラス
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096743(JP,A)
【文献】特開2010-071847(JP,A)
【文献】特開2002-196027(JP,A)
【文献】特表2017-510144(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102980(WO,A1)
【文献】特開2017-187363(JP,A)
【文献】Per-Simon Kildal,New Approach to OTA Testing: RIMP and pure-LOS Reference Enviroments & Hypothesis,7th European Conference on Antennas and Propagation (EuCAP 2013),IEEE,2022年03月07日,2013,pp.315-318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/10
H01Q 17/00
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域
、および
第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステム(110)の性能を測定するための測定装置(100,200,250,300,400,800,900)であって、前記測定装置は、アンテナシステム(110)を囲むように構成された内向きの無線周波数反射壁(121)を有する外側チャンバ(120)と、外側チャンバ(120)の内部に配置することができる内側チャンバ(140)とを備え、内側チャンバ(140)は、アンテナシステム(110)を囲むように構成された無線周波数吸収壁(141)を有し、第1の試験アンテナ装置(130)が、外側チャンバ(120)の内部に配置され、第1の周波数帯域における測定動作(131)に合わせて構成され、第2の試験アンテナ装置(150,150’)が、外側チャンバ(120)の内部に配置され、第2の周波数帯域における測定動作(151)に合わせて構成され、
内側チャンバ(140)の無線周波数吸収壁(141)が、第1の周波数帯域と比べて第2の周波数帯域において無線周波数信号の減衰が大きくなるように構成されたメタ材料または周波数選択材料を含み、無線周波数吸収壁(141)が、第1の周波数帯域における或るレベルの無線周波数信号透過性を有し、但し、第2の試験アンテナ装置が内側チャンバ(140)の外部に配置された場合、内側チャンバ(140)の無線周波数吸収壁(141)のうちの少なくとも1つは、外側チャンバ(120)への開口部(810)を有し、第2の試験アンテナ装置(150’)は、主ローブ(151’)を有する指向性アンテナとして構成され、主ローブは、第2の試験アンテナ装置(150’)による送信が内側チャンバ(140)の内側に配置されるよう、開口部(810)へと向けられるように配置され、それによって第1の試験アンテナ装置(130)による反射無線周波数環境におけるアンテナシステム(110)の性能の測定および第2の試験アンテナ装置(150)による本質的に無響の無線周波数環境におけるアンテナシステム(110)の性能の測定を可能にする、測定装置(100,200,250,300,400,800,900)。
【請求項2】
外側チャンバ(120)の内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステム(110)を第1の試験アンテナ装置(130)に対して動かすように構成された第1の変位機構(240)を備える、請求項1に記載の測定装置(200,300,400,800,900)。
【請求項3】
内側チャンバ(140)の内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステム(110)を第2の試験アンテナ装置(150)に対して動かすように構成された第2の変位機構(230)または第3の変位機構(260)を備え、第2の変位機構(230)および第3の変位機構(260)は、互いに異なる、請求項1又は2に記載の測定装置(200,250,300,400,800,900)。
【請求項4】
内側チャンバ(140)は、外側チャンバ(120)から取り外すことができるように配置される、請求項1~
3のいずれかに記載の測定装置(100,200,250,300,400,800,900)。
【請求項5】
制御ユニット(160)が、無線周波数試験信号を第1の試験アンテナ装置(130)と第2の試験アンテナ装置(150)との間で分割するように配置され、それによって見通し線(LOS)動作およびリッチ等方性マルチパス(RIMP)動作の両方を含む測定動作を可能にする、請求項1~
4のいずれかに記載の測定装置(100,200,250,300,400,800,900)。
【請求項6】
第2の試験アンテナ装置(150’)は、内側チャンバ(140)の外部に配置され、開口部(810)は、第2の試験アンテナ装置(150’)の一部分から距離D2に配置され、開口部(810)は、距離D2における主ローブのアンテナ図に一致する形状を有する、請求項1~
5のいずれかに記載の測定装置(800)。
【請求項7】
内側チャンバ(140)の無線周波数吸収壁(141)の少なくとも一部分は、外側チャンバ(120)の内向きの無線周波数反射壁(121)に接続して配置された周波数選択反射壁(910)であり、周波数選択反射壁(910)は、第1の周波数帯域の無線周波数信号を反射し、第2の周波数帯域の無線周波数信号を吸収するように構成され、それによって第1の試験アンテナ装置(130)による反射無線周波数環境におけるアンテナシステム(110)の性能の測定および第2の試験アンテナ装置(150’)による本質的に無響の無線周波数環境におけるアンテナシステム(110)の性能の測定を可能にする、請求項1~
6のいずれかに記載の測定装置(900)。
【請求項8】
測定装置(100、200、250、300、400)によって第1の周波数帯域
、および
第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステム(110)の性能を測定するための方法であって、前記方法は、外側チャンバ(120)を、アンテナシステム(110)を囲むように内向きの無線周波数反射壁(121)で構成するステップ(S1)と、外側チャンバ(120)の内部に配置することができる内側チャンバ(140)を、アンテナシステム(110)を囲むように無線周波数吸収壁(141)で構成し、
無線周波数吸収壁(141)が、第1の周波数帯域と比べて第2の周波数帯域において無線周波数信号の減衰が大きくなるように構成されたメタ材料または周波数選択材料を含み、無線周波数吸収壁(141)が、第1の周波数帯域における或るレベルの無線周波数信号透過性を有するステップ(S2)と、第1の試験アンテナ装置(130)を、外側チャンバ(120)の内部で、第1の周波数帯域における測定動作(131)に合わせて構成するステップ(S3)と、第2の試験アンテナ装置(150)を、内側チャンバ(140)の内部でまたは外部で、第2の周波数帯域における測定動作(151)に合わせて構成するステップ(S4)、但し、第2の試験アンテナ装置が内側チャンバ(140)の外部に配置された場合、外側チャンバ(120)への開口部(810)を内側チャンバ(140)の無線周波数吸収壁(141)のうちの少なくとも1つに配置し、第2の試験アンテナ装置(150’)を、主ローブ(151’)を有する指向性アンテナとして構成し、主ローブは、第2の試験アンテナ装置(150’)による送信が内側チャンバ(140)の内側に配置されるよう、開口部(810)へと向けられるように配置される、と、第1の試験アンテナ装置(130)によって反射の無線周波数環境においてアンテナシステム(110)の性能を測定し、第2の試験アンテナ装置(150)によって本質的に無響の無線周波数環境においてアンテナシステム(110)の性能を測定するステップ(S5)とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、アンテナシステムおよび無線装置のための試験設備に関する。アンテナシステムの性能の測定および無線装置の試験のためのシステムおよび方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
電磁残響チャンバ(ERC)またはモードかくはんチャンバ(MSC)としても知られる残響チャンバ(RC)が、アンテナシステムおよび無線装置の無線通信性能を測定するための効果的なツールとなっている。RCは、主として、無線周波数反射環境におけるアンテナシステムの性能、すなわち試験対象装置(DUT)が多重伝播に曝される場合のアンテナシステムの性能を、評価するために使用される。
【0003】
RCにおいて、信号が、試験アンテナ装置によって、内側へと無線周波数を反射させる壁を備えている閉じたチャンバまたはキャビティに注入される。信号は、多数の異なる軌道を通り、複数回の反射の後にDUTに到達する。これにより、受信機において無線周波数信号のフェージング状態が生じる。モードかくはんプレートおよび/またはDUTが配置されたターンテーブルを動かすことによって、チャンバの形状が変化し、したがってアンテナシステムが被るフェージング状態が変化する。したがって、さまざまな入射波組成を有する多数のフェージング状態を試験することができるリッチ等方性マルチパス(RIMP)環境が効率的に生成される。
【0004】
6GHz未満などのより低い無線周波数において、送信された無線信号の伝搬は、通常は、マルチパス伝搬によって支配される。これらの状況においては、送信機と受信機との間に多数の伝搬経路が存在する。これらの伝搬経路のすべてが受信アンテナにおいて結合し、フェージングを引き起こす。したがって、RCにおいて好都合に生成されるこれらの低周波数帯域におけるRIMP環境でのDUTの性能を測定することが、頻繁に望まれる。
【0005】
しかしながら、無線周波数が高くなると、環境による回折、反射、および透過が少なくなるため、散乱およびマルチパス伝搬は弱くなる。このため、14GHzを超えるような高い周波数の無線チャネルは、散乱成分が少なく、見通し線(LOS)がより支配的になる傾向にある。大部分の既知のRCは、LOSが支配的な伝搬環境における性能の測定に適していない。むしろ、LOSが支配的なチャネルにおけるアンテナシステムの性能は、一般に、RCとは本質的に異なる無響チャンバ(AC)において測定される。
【0006】
マルチパス伝搬が支配的な第1の周波数帯域および強いLOS成分が存在する第2の周波数帯域においてアンテナシステムの性能を測定するための同時試験能力を提供することが必要とされている。
【0007】
米国特許第8854246号明細書が、電磁無響試験チャンバを電磁残響試験チャンバに変換する方法を開示している。このやり方で、マルチパス伝搬環境およびLOSが支配的な伝搬環境における性能を試験することができる。しかしながら、この提案の方法は、費用および時間を要し、複数の関連する周波数帯域の同時試験を可能にしていない。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステムの性能を測定するための改善された測定装置、システム、および方法を提供することである。
【0009】
この目的は、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステムの性能を測定するための測定装置によって達成される。測定装置は、アンテナシステムを囲むように構成された内向きの無線周波数反射壁を有する外側チャンバと、外側チャンバの内部に配置することができる内側チャンバとを備える。
【0010】
内側チャンバは、アンテナシステムを囲むように構成された無線周波数吸収壁を有する。第1の試験アンテナ装置が、外側チャンバの内部に配置され、第1の周波数帯域における測定動作に合わせて構成される。第2の試験アンテナ装置が、内側チャンバの内部に配置され、第2の周波数帯域における測定動作に合わせて構成される。無線周波数吸収壁が、或るレベルの無線周波数信号透過性を有し(associated with)、それによって第1の試験アンテナ装置による反射無線周波数環境におけるアンテナシステムの性能の測定および第2の試験アンテナ装置による本質的に無響の無線周波数環境におけるアンテナシステムの性能の測定を可能にする。
【0011】
このようにして、好都合なことに、アンテナシステムの性能を反射伝搬環境および本質的に無響の無線周波数環境において同時に測定および評価することができる。
【0012】
一部の無線通信システムは、キャリアアグリゲーション構成において複数の搬送波を使用し、搬送波は、完全に異なる帯域の周波数に存在することができる。この一例は、New Radio(NR)と呼ばれることもある第5世代セルラー無線システム(5G)である。NRは、6GHz未満の従来からの周波数で動作すると同時に、28GHzなどのミリ波周波数での動作をサポートする。本開示の測定装置は、反射環境およびLOSが支配的な伝搬環境における性能を同時に測定することができるという点で、NR用に設計されたアンテナシステムの試験に適する。
【0013】
好都合なことに、本開示の測定装置は、LOSが支配的な環境のための設備が反射環境のための設備と統合されているため、費用効率の高い測定動作を可能にする。
【0014】
好都合なことに、本開示の測定装置は、反射環境における測定を、LOSが支配的な環境における測定と並行して実行できるため、時間効率の高い測定動作を可能にする。
【0015】
いくつかの態様によれば、無線周波数吸収壁は、第2の周波数帯域において、第1の周波数帯域と比べてより大きな無線周波数信号減衰を有する。したがって、無線周波数吸収壁による第1の周波数帯域における測定動作への影響が、第2の周波数帯域における測定動作の無響性を維持しつつ低減される。結果として、測定動作の精度および分解能が向上する。
【0016】
いくつかの態様によれば、無線周波数吸収壁の少なくとも1つは、内向きの無線周波数反射壁から離して配置されることで、内向きの無線周波数反射壁と内側チャンバとの間に体積を定める。この体積は、第1の周波数帯域の無線周波数信号が、多数の信号伝搬経路に沿って伝搬し、内向きの無線周波数反射壁で反射することを可能にし、したがって外側チャンバの内部に第1の周波数帯域のRIMP環境をもたらすことができる。
【0017】
いくつかの態様によれば、測定装置は、内向きの無線周波数反射壁と内側チャンバとの間の体積に配置された少なくとも1つのモードかくはん装置を備える。少なくとも1つのモードかくはん装置は、測定装置のフェージング状態を決定するように配置される。このようにして、RIMP環境の状態を効率的に変更して、外側チャンバ内に複数の異なる無線周波数信号フェージング状態をもたらすことができる。
【0018】
いくつかの態様によれば、第1の試験アンテナ装置および第2の試験アンテナ装置のいずれも、少なくとも1つのアンテナシステムに対して可動に構成される。試験アンテナ装置がアンテナシステムに対して可動であることにより、さらなる追加のフェージング状態および測定配置を生み出すことができ、好都合である。
【0019】
いくつかの態様によれば、測定装置は、外側チャンバの内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステムを第1の試験アンテナ装置に対して動かすように構成された第1の変位機構を備える。このようにして、さらに多くのフェージング状態および測定配置を生み出すことができ、好都合である。第1の変位機構を、内側チャンバ全体を動かすように構成してもよい。このようにして、少なくとも1つのアンテナシステムは、第1の試験アンテナ装置に対して動かされるが、第2の試験アンテナ装置に対して動かされることがない。これは、外側チャンバおよび内側チャンバの相対的な試験アンテナ装置の配置が互いに独立しているため、アンテナ図を第2の周波数帯域において評価しつつ、第1の周波数帯域においてRIMP測定を実行する場合に好都合であり得る。
【0020】
いくつかの態様によれば、測定装置は、内側チャンバの内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステムを第2の試験アンテナ装置に対して動かすように構成された第2の変位機構を備える。この第2の変位機構を、例えば強力なLOS無線周波数信号成分によって支配される本質的に無響の環境において少なくとも1つのアンテナシステムのアンテナ図を測定するために好都合に使用することができる。
【0021】
いくつかの態様によれば、第2の試験アンテナ装置は、第2の試験アンテナ装置をアンテナシステムに対して位置決めするように構成されたプローブアンテナ位置決め装置上に配置される。プローブアンテナ位置決め装置を、随意により、少なくとも部分的に内側チャンバの外側に配置することができる。これは、プローブアンテナ位置決め装置を取り除くことによって内側チャンバの無響性が改善されるため、好都合である。また、空間が限られている可能性がある内側チャンバ内に収める必要がないため、より複雑なプローブアンテナ位置決め装置を使用することができる。
【0022】
いくつかの態様によれば、内側チャンバの無線周波数吸収壁は、カーボン充てん吸収材料を含み、カーボン充てん吸収材料は、第1および第2の周波数帯域におけるカーボン充てん吸収材料の減衰の要件に応じた厚さで構成される。カーボン充てん吸収材料の無線周波数信号の減衰を、使用される材料のさまざまな厚さを選択することによって制御することができる。厚さが大きいほど減衰が強くなり、厚さが小さいほど減衰が弱くなる。また、減衰は、無線信号の周波数によっても異なり、高い周波数の信号は、低い周波数の信号よりも大きく減衰する。したがって、無線周波数吸収壁に使用されるカーボン充てん材料の厚さを、第1および第2の周波数帯域におけるカーボン充てん吸収材料の減衰に応じて選択することにより、第1の周波数帯域における所望の信号透過性を得ると同時に、第2の周波数帯域における充分な信号の減衰を得ることができる。
【0023】
いくつかの態様によれば、内側チャンバの無線周波数吸収壁は、第1の周波数帯域と比べて第2の周波数帯域において無線周波数信号の減衰が大きくなるように構成されたメタ材料または周波数選択材料を含む。これは、吸収壁による第1の周波数帯域と第2の周波数帯域との間の減衰の差を大きくすることができるため、好都合である。理想的には、いくつかの測定動作に関して、第2の周波数帯域における減衰が無限大である一方で、第1の周波数帯域における減衰は存在しない。
【0024】
いくつかの態様によれば、内側チャンバは、外側チャンバから取り外すことができるように配置される。これにより、測定装置を、外側チャンバから内側チャンバを物理的に取り除くことによって、伝統的なRCに容易に変換することができる。また、第2の周波数帯域におけるさまざまな種類の測定動作のために、さまざまな異なる種類の内側チャンバを共通の外側チャンバに組み合わせて使用することができる。この場合、実行される測定動作の種類に基づいて特定の内側チャンバを選択し、外側チャンバへと挿入することができる。
【0025】
いくつかの態様によれば、内側チャンバは、無線周波数吸収壁を解放可能に保持するように配置されたフレーム構造を備える。内側チャンバが外側チャンバから取り除くことができるように配置される態様と同様に、今や測定装置を、フレーム構造から吸収壁を取り除くことによって伝統的なRCに好都合に変換することができ、好都合である。また、フレーム構造においてさまざまな種類の吸収壁を使用することで、さまざまな測定動作を構成することができ、好都合である。例えば、さまざまな種類の測定動作およびさまざまな無線周波数帯域に合わせて、減衰特性の異なるさまざまな壁を使用することができる。
【0026】
いくつかの態様によれば、内側チャンバは、複数の方向に均一なレベルの無線周波数吸収をもたらすように構成された対称形状を有する。これは、測定の精度および測定の再現性を向上させることができるため、好都合である。
【0027】
いくつかの態様によれば、内側チャンバの無線周波数吸収壁は、内側チャンバの形状に応じて決定される可変の厚さで構成される。内側チャンバの形状に応じて変化する厚さを選択することにより、内側チャンバの形状の不規則性にもかかわらず、複数の方向の無線周波数の吸収のレベルをより均一にすることができ、好都合である。
【0028】
いくつかの態様によれば、内側チャンバは、内側チャンバの外面に配置され、外側チャンバの内向きの無線周波数反射壁に面する1つ以上の無線周波数反射パッチを備える。好都合なことに、パッチは外側チャンバの負荷を減らし、第1の周波数帯域における測定動作の精度を高める。
【0029】
いくつかの態様によれば、測定装置は、内側チャンバの内部の温度レベルを生成および制御するように配置された熱制御ユニットを備える。したがって、内側チャンバが、温度チャンバという追加の目的を果たし、好都合である。随意により、アンテナシステムを囲むように構成された壁は、断熱となるように配置される。断熱壁は、温度チャンバの性能およびエネルギー効率を改善し、好都合である。測定装置に温度機能を組み込むことにより、温度変化を含む第3の測定動作を、第1および第2の測定動作と並行して実行することができる。
【0030】
いくつかの態様によれば、制御ユニットは、第1の周波数帯域における測定動作に関連する時間遅延スプレッドを制御するように構成された無線周波数チャネル伝搬エミュレータを備える。内側チャンバにおける電力遅延スプレッドは、RCにおいて一般的な電力遅延スプレッドよりも小さい。これを補うために、チャネルエミュレータを利用して、時間遅延スプレッドを大きくすることができる。空間遅延スプレッドは、RC環境によって依然としてもたらされる。これにより、測定精度が向上し、好都合である。
【0031】
いくつかの態様によれば、制御ユニットは、無線周波数試験信号を第1の試験アンテナ装置と第2の試験アンテナ装置との間で分割することにより、見通し線(LOS)動作およびリッチ等方性マルチパス(RIMP)動作の両方を含む測定動作を可能にするように構成される。結果として、測定装置は、複雑な伝搬環境のエミュレーションを含む高度な測定動作をサポートすることができ、好都合である。
【0032】
測定装置によって第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステムの性能を測定するための方法も、本明細書に開示される。この方法は、外側チャンバを、アンテナシステムを囲むように内向きの無線周波数反射壁で構成するステップと、外側チャンバの内部に配置することができる内側チャンバを、アンテナシステムを囲むように無線周波数吸収壁で構成するステップとを含む。無線周波数吸収壁は、第1の周波数帯域において或るレベルの無線周波数信号透過性を有する。この方法は、第1の試験アンテナ装置を、外側チャンバの内部で、第1の周波数帯域における測定動作に合わせて構成するステップと、第2の試験アンテナ装置を、内側チャンバの内部で、第2の周波数帯域における測定動作に合わせて構成するステップと、第1の試験アンテナ装置によって反射の無線周波数環境においてアンテナシステムの性能を測定し、第2の試験アンテナ装置によって本質的に無響の無線周波数環境においてアンテナシステムの性能を測定するステップとをさらに含む。
【0033】
本明細書に開示される方法は、種々の測定装置に関連して上述した利点と同じ利点を有する。さらに、本明細書に記載の動作のいくつかを制御するように構成された制御ユニットが、本明細書に開示される。
【0034】
一般に、特許請求の範囲において使用されるすべての用語は、本明細書で別段の定めがない限り、この技術分野におけるそれらの用語の通常の意味に従って解釈されるべきである。「要素、装置、構成要素、手段、ステップ、など」への言及はすべて、とくに明記されない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップ、などの少なくとも1つの実例を指すものとして、非排他的に解釈されるべきである。本明細書に開示されるあらゆる方法のステップは、とくに明示されない限り、開示のとおりの順序で実行される必要はない。本発明のさらなる特徴および利点が、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討することで、明らかになるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のさまざまな特徴を組み合わせて、以下で説明される実施形態以外の実施形態を生み出すことができることを、当業者であれば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
次に、本開示を、添付の図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0036】
【
図1】
図1は、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【
図2A-2B】
図2A-2Bは、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【
図3】
図3は、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【
図4】
図4は、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【0037】
【
図5】
図5は、例示的な制御ユニットを示している。
【0038】
【
図6】
図6は、コンピュータプログラム製品を示している。
【0039】
【
図7】
図7は、方法を説明するフローチャートである。
【0040】
【
図8A-8B】
図8A-8Bは、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【
図9A-9C】
図9A-9Cは、アンテナシステムの性能を測定するための例示的な測定装置を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本開示のいくつかの態様を、添付の図面を参照してさらに充分に説明する。しかしながら、本明細書に開示される種々の装置および方法は、多数の異なる形態で実現可能であり、本明細書に記載される態様に限定されると解釈されるべきではない。図中の同様の番号は、全体を通して、同様の要素を指している。
【0042】
本明細書において使用される用語は、あくまでも本開示の態様を説明するためのものにすぎず、本発明を限定しようとするものではない。本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、そのようでないことが文脈から明らかでない限り、複数形も含むように意図される。
【0043】
上述のように、残響チャンバ(RC)は、マルチパス伝搬の状況において無線システムを試験するための単刀直入な解決策を提供する。RCは、多入力多出力(MIMO)として知られる通信のために送信機および受信機の複数のアンテナ間のマルチパス信号伝搬に依存する装置、および同時にいくつかの周波数帯域を使用して動作する装置の試験にとくに適する。
【0044】
試験信号は、試験対象のアンテナシステムまたはRCの試験アンテナ装置のいずれかによって注入できると理解される。したがって、RCを、アップリンクおよびダウンリンクの両方の無線動作を測定するために使用することができる。
【0045】
無響チャンバ(AC)は、無線通信装置の試験の解決策として長い歴史を有する。ACは、無線信号吸収材料によって囲まれたチャンバまたはキャビティである。その最も顕著な特徴は、反射信号のレベルがきわめて低いことであり、すなわちRCとは反対である。ACは、一般に、試験対象装置が単一の到着方向から入射する無線信号に曝される場合の無線(OTA)性能の測定に使用される。この方法は、装置またはアンテナシステムのアンテナパターンあるいはアンテナパターンに関連する指標の測定が望まれる場合にとくに適する。
【0046】
多数の最近の通信システムは、キャリアアグリゲーションを使用して無線システムの性能を向上させる。キャリアアグリゲーションは、利用可能な帯域幅を増やすために、周波数が充分に離れている場合もある複数の搬送波の使用を含む。この一例が、第3世代パートナーシッププログラム(3GPP)によって定められた第5世代(5G)無線システムであり、New Radio(NR)と呼ばれることもある。NRは、6GHz未満の従来からの周波数で動作すると同時に、28GHzなどのミリ波周波数での動作をサポートする。
【0047】
さらに、いくつかの最新の通信システムにおいては、通信信号の信号対雑音比(SNR)を向上させるために多数のアンテナ素子を使用してビームを形成するさまざまな種類のアンテナアレイが利用されている。これらのシステムの多くにおいて、アンテナポートに使用可能なコネクタが存在しないため、以前は伝導での試験が可能であった多数のパラメータを、今や無線(OTA)で試験しなければならず、すなわち試験対象のアンテナシステムを使用し、装置を動作させて、送信および受信される無線周波数信号を監視することによって試験しなければならない。
【0048】
低い周波数(6GHz未満)において、送信信号の伝搬はマルチパス散乱によって支配される。これらの状況においては、送信機と受信機との間に多数の伝搬経路が存在する。これらの伝搬経路のすべてが受信アンテナにおいて結合し、フェージングを引き起こす。したがって、多くの場合、リッチ等方性マルチパス(RIMP)環境において装置の性能を測定することが望まれ、これはRCにおいて好都合に生成される。
【0049】
他方で、高い周波数においては、散乱がはるかに弱くなる。回折、反射、および透過が少なくなる。このため、高い周波数の無線チャネルは、散乱成分が少なく、見通し線(LOS)がより支配的になる傾向を有する。したがって、アンテナパターンに関連する指標を測定することが望まれ、これはACにおいて便利に行われる。
【0050】
低い周波数および高い周波数の伝搬の挙動が異なるこれらの通信システムのための同時試験機能を提供する必要がある。本開示は、RIMPチャネル特性がRCを使用して生成され、LOSが支配的なチャネル特性が無響チャンバを使用して生成されるそのような解決策のいくつかの態様を説明する。異なるチャネル特性を同時に生成するために、ACが特定の構成にて内部に配置されたRCが利用される。
【0051】
したがって、本明細書で提案される方法および装置の中心的な考え方は、無線周波数信号吸収材料から製作されたACをRCの内部に配置し、DUTをACの内部に配置することである。次いで、AC内の1つの試験アンテナ装置およびRC内の1つの試験アンテナ装置を使用し、試験信号をDUTへと送信し、さらには/あるいはDUTから受信して、測定を実行することができる。
【0052】
結果として、本明細書に開示される測定装置を、少なくとも1つのアンテナシステムのマルチパス動作性能を測定するように構成することができる。
【0053】
したがって、本明細書に開示される測定装置を、少なくとも1つのアンテナシステムのアンテナパターンに関連する試験指標を測定するように構成することができる。
【0054】
図1は、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステム110の性能を測定するための測定装置100を概略的に示している。
【0055】
本明細書において、アンテナシステム110の性能は、例えば、放射図、透過係数、反射係数、および/またはSパラメータなどのアンテナシステムの特性を指すことができる。また、アンテナシステムの性能は、例えば、ビット誤り率(BER)、パケット誤り率(PER)、または瞬断などの信頼性測定などのシステムレベルにおける性能を指すこともできる。さらに、性能は、標準的な準拠性試験などを指すことができる。
【0056】
少なくとも1つのアンテナシステムは、DUTである。無線装置は、異なる帯域における動作のための複数のアンテナシステムを備えることができる。提案される装置において、いくつかのアンテナシステム110を同時に試験し、測定し、あるいは特性評価することができると理解される。
【0057】
第1および第2の周波数帯域は、通常は、異なる周波数帯域であるが、いくつかの例示的な測定の状況においては、同じ周波数帯域であってもよい。
【0058】
例えば、第1の周波数帯域が、例えば約6GHzなどの低い周波数を含むことができる一方で、第2の周波数帯域は、例えば14GHzを超える高い周波数を含むことができる。
【0059】
したがって、いくつかの態様によれば、第1の周波数帯域は、6GHz未満の周波数を含み、第2の周波数帯域は、6GHzを超える周波数を含む。第2の周波数帯域は、例えば、約28GHzのマイクロ波周波数、またはEバンド、すなわち約80GHzの周波数を含み得る。
【0060】
しかしながら、他のいくつかの態様によれば、第1の周波数帯域および第2の周波数帯域は、同じ無線周波数を含む。これは、例えば、エミュレートされる無線伝搬チャネルが、強いLOS成分と、より散乱性のマルチパスとを、同じ帯域内に含むであろう事例に当てはまり得る。
【0061】
測定装置100は、アンテナシステム110を囲むように構成された内向きの無線周波数反射壁121を有する外側チャンバ120を備える。この外側チャンバは、無線周波数反射環境を生成するように構成された既知の残響チャンバと同様である。
【0062】
とりわけ、測定装置100は、外側チャンバ120の内側に配置することができる内側チャンバ140をさらに備える。内側チャンバ140は、アンテナシステム110を囲むように構成された無線周波数吸収壁141を有する。
【0063】
以下でさらに詳しく論じられるように、無線周波数吸収壁は、第1の周波数帯域において或るレベルの無線周波数信号透過性を有する無線周波数吸収材料からなる囲い部分である。したがって、第1の周波数帯域の無線周波数信号は、内側チャンバの壁を或る程度貫通し、少なくとも1つのアンテナシステム110に到達するが、同時に、無線周波数吸収壁は、第2の周波数帯域の無線周波数信号を減衰させる。
【0064】
いくつかの態様によれば、無線周波数吸収壁141は、第2の周波数帯域において、第1の周波数帯域と比べて無線周波数信号の減衰が大きい。
【0065】
例えば、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141は、500MHzの無線周波数において5dBの無線周波数信号の減衰を有し、6000MHzの無線周波数において15dBの無線周波数信号の減衰を有するように構成され得る。
【0066】
例えば、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141は、20GHzを上回る無線周波数について約20dBを上回る無線周波数信号の減衰を有するように構成される。
【0067】
いくつかの態様によれば、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141は、第1の周波数帯域と比べて第2の周波数帯域において無線周波数信号の減衰が大きくなるように構成されたメタ材料または周波数選択材料を含む。
【0068】
本明細書において、「内側に配置することができる」は、内側チャンバが外側チャンバの内部に固定的に取り付けられること、または取り外し可能に取り付けられることを意味する。固定的に取り付けられた内側チャンバは、高水準の再現性を備えた安定した測定の機構をもたらし、これは好都合である。
【0069】
しかしながら、内側チャンバが外側チャンバ120から取り外し可能であるように構成される場合には、測定装置100を、単に内側チャンバを外側チャンバから取り除くだけで、従来からの残響チャンバに変換することが可能である。また、第2の周波数帯域におけるさまざまな種類の測定動作のために、さまざまな異なる種類の内側チャンバを共通の外側チャンバに組み合わせて使用することができる。さまざまな内側チャンバは、例えば、異なる種類の測定動作のための異なる減衰特性を有するように構成された内側チャンバを含み得る。
【0070】
いくつかの態様によれば、内側チャンバ140は、無線周波数吸収壁141を解放可能に保持するように配置されたフレーム構造を備える。
【0071】
これは、外側チャンバから完全に取り外すことができる内側チャンバと外側チャンバの内部に固定的に取り付けられた内側チャンバとの間の折衷案である。この場合、内側チャンバのフレーム構造またはスケルトン構造が、外側チャンバの内部に固定的に取り付けられる一方で、無線周波数吸収壁141を容易に取り外すことが可能である。フレーム構造においてさまざまな種類の吸収壁を使用することにより、さまざまな測定動作を構成することができ、これは好都合である。例えば、減衰などに関して異なる特性を有するさまざまな異なる壁または異なる壁部分を、異なる種類の測定動作および異なる無線周波数帯域に関する試験動作に使用することができる。
【0072】
第1の試験アンテナ装置130が、外側チャンバ120の内部に配置され、第1の周波数帯域における測定動作131に合わせて構成される。
【0073】
第1の試験アンテナ装置130は、残響チャンバを励起し、無線周波数反射環境における測定動作、すなわち伝統的な残響チャンバにおける測定動作と同様の測定動作を可能にする。
【0074】
第2の試験アンテナ装置150が、内側チャンバ140の内部に配置され、第2の周波数帯域における測定動作151に合わせて構成される。したがって、無線周波数吸収壁141が第1の周波数帯域における或るレベルの無線周波数信号透過性を有しており、すなわち第1の周波数帯域の無線信号が吸収壁を通過するがゆえに、第1の試験アンテナ装置130による反射無線周波数環境におけるアンテナシステム110の性能の測定、および第2の試験アンテナ装置150による本質的に無響の無線周波数環境における性能の測定を、同時に行うことが可能になる。
【0075】
本明細書において、内側チャンバ140が、ACと呼ばれることがある一方で、外側チャンバ120は、RCと呼ばれることがある。第1の試験アンテナ装置130が、RCアンテナと呼ばれることがある一方で、第2の試験アンテナ装置150は、ACプローブと呼ばれることがある。
【0076】
いくつかの態様によれば、測定装置は、第1の周波数帯域における測定動作131および第2の周波数帯域における測定動作151を制御するように構成された制御ユニット160を備える。この制御ユニットは、
図5に関連して以下でさらに詳しく説明される。制御ユニットおよび存在し得る他の電子機器を内側チャンバの外側に配置することが有利であり、これにより、制御ユニットおよび関連の電子機器による測定動作への妨害が最小限に抑えられる。
【0077】
いくつかの態様によれば、第1の試験アンテナ装置130は、第1の周波数帯域における多入力多出力(MIMO)動作に適合したアンテナアレイを備える。
【0078】
他のいくつかの態様によれば、第2の試験アンテナ装置150は、第2の周波数帯域におけるMIMO動作に適合したアンテナアレイを備える。
【0079】
したがって、開示される測定装置は、第1および第2の周波数帯域におけるMIMO測定動作に適する。いくつかの態様によれば、第1および/または第2の試験アンテナ装置は、きわめて多数のアンテナ素子を備え、大規模なMIMO測定動作を可能にする。
【0080】
いくつかの態様によれば、無線周波数吸収壁141の少なくとも1つは、内向きの無線周波数反射壁121から距離Dに配置されることで、内向きの無線周波数反射壁121と内側チャンバ140との間に体積Vを定める。残響チャンバは、本質的に、高いQ値を有する空洞共振器である。電界強度および磁界強度の空間分布は、きわめて不均一である(定在波)。この不均一性を低減するために、1つ以上のモードかくはん器(または、モードチューナ)を使用することができる。かくはん器は、外側チャンバ内でさまざまな境界条件を達成するためにさまざまな向きに移動させることができる金属または他の反射要素を備えた構造物である。残響チャンバの最低使用可能周波数(LUF)は、チャンバのサイズおよびチューナの設計に依存する。小さなチャンバは、大きなチャンバよりも高いLUFを有する。結果として、体積Vが、残響チャンバのQ値を或る程度決定し、測定装置のLUF値に影響を与える。
【0081】
図2Aおよび2Bを参照すると、いくつかの態様によれば、測定装置200、250は、内向きの無線周波数反射壁121と内側チャンバ140との間の体積Vに配置された少なくとも1つのモードかくはん装置210、220を備える。少なくとも1つのモードかくはん装置210、220は、測定装置200、250、300のフェージング状態を決定するように配置される。モードかくはん装置は、
図1には示されていないが、設計を大幅に変更することなく測定装置100にも配置することができる。
【0082】
いくつかの態様によれば、再び
図1を参照すると、第1の試験アンテナ装置130は、無線周波数吸収壁141の外側で、内向きの無線周波数反射壁121と内側チャンバ140との間の体積Vに配置される。しかしながら、これは、好ましいが、必須の特徴ではない。随意により、第1の試験アンテナ装置130を、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141によって囲まれるように構成することも可能である。
【0083】
いくつかの態様によれば、第1の試験アンテナ装置130および第2の試験アンテナ装置150のいずれも、少なくとも1つのアンテナシステム110に対して可動に構成される。可動な試験アンテナ装置は、いくつかの利点を有する。例えば、試験アンテナ装置を動かすことにより、反射電波の位相関係が変化するため、残響チャンバのフェージング状態が変化する。したがって、試験アンテナ装置を動かすことにより、モードかくはん器を動かす効果と同様の効果を得ることができる。したがって、モードかくはん器は、本明細書に開示されて
図1に示されている測定装置の本質的な特徴ではないと理解される。また、試験アンテナ装置を少なくとも1つのアンテナシステム110に対して動かすことにより、試験対象の1つ以上のアンテナシステムをさまざまな角度から観測して、少なくとも1つのアンテナシステム110の特性をより正確に明らかにすることができる。
【0084】
図2Aは、外側チャンバ120の内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステム110を第1の試験アンテナ装置130に対して動かすように構成された随意による第1の変位機構240を示している。変位機構は、いくつかの態様によれば、ターンテーブルなどを備えることができる。変位機構は、他の態様によれば、例えば、制御ユニット160から受信される制御信号に従ってアンテナシステム110を変位させるように配置されたロボットアームなどを備えることができる。
【0085】
とりわけ、第1の変位機構240は、アンテナシステム110および第2の試験アンテナ装置150を含む内側チャンバ140全体を変位させるように構成されてよい。これにより、アンテナシステム110を変位させるために第1の変位機構150を動作させても、内側チャンバの内部に配置されたアンテナシステムの相対的形状に影響が及ぶことがなく、これは、例えば同時のアンテナ図の測定が行われている場合に好都合である。
【0086】
図2Aは、内側チャンバ140の内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステム110を第2の試験アンテナ装置150に対して動かすように構成された随意による第2の変位機構230をさらに示している。第2の変位機構は、いくつかの態様によれば、やはりターンテーブルなどを備えることができる。しかしながら、第1の変位機構と同様に、第2の変位機構230は、他の態様によれば、例えば、制御ユニット160から受信されるさらなる制御信号に従ってアンテナシステム110を変位させるように配置されたロボットアームなどを備えることができる。
【0087】
図2Bは、第3の変位機構260が内側チャンバの内側に配置され、少なくとも1つのアンテナシステム110を第1および第2の試験アンテナ装置130、150に対して動かすように構成された例示的な測定装置250を示している。この場合、単一の変位機構を使用して、少なくとも1つのアンテナシステム110を第1および第2の試験アンテナ装置130、150に対して動かすことができる。第3の変位機構は、いくつかの態様によれば、例えば、制御ユニット160から受信されるさらなる制御信号に従ってアンテナシステム110を変位させるように配置されたターンテーブル、ロボットアーム、などを備えることができる。
【0088】
図3は、別の例示的な測定装置300を示している。RCまたは外側チャンバ120は、ここでもやはり、制御ユニット160に接続された1つまたは複数の固定アンテナ130を備える通常のRCとして設計されている。制御ユニットは、例えば、
図5に関連して後述されるような試験機器を含むことができる。モードかくはん器210、220が、RCチャンバ内でさまざまなRCモードをかくはんまたは生成するように構成される。
【0089】
RCの内部に、ACまたは内側チャンバ140が配置される。ACの設計は、いくつかの側面によれば、ACが遮蔽された囲いではなく、基本的に吸収体のみで製作されることを除き、伝統的なACと同様である。制御ユニット160に含まれる任意の試験機器を、AC固定アンテナ/プローブ150ならびにRC試験アンテナ装置130に接続することができる。
【0090】
この構成において、第1の試験アンテナ装置130からDUT110に向かう信号の伝送特性は、マルチパスフェージングを示し、したがってRIMP伝搬チャネルをもたらすと考えられる。しかしながら、第2の試験アンテナ装置150からもたらされる信号の伝送特性は、AC140内の無線周波数信号吸収体ゆえに、マルチパスをほとんど被らないと考えられる。したがって、この構成によれば、少なくとも1つのアンテナシステム110の特性を明らかにするために、RCおよびACの強度をそれぞれ利用して、2つの本質的に独立したチャネル特性を同時に生成することができる。
【0091】
上述のように、RC伝搬経路とAC伝搬経路との間の区別を向上させるために、AC吸収体を、随意により、AC吸収壁を通過するときにACプローブアンテナ150に向けられた周波数がRCアンテナ130に向けられた周波数と比べてより大きく減衰させられるように、周波数選択的にすることができる。
【0092】
いくつかの態様によれば、第2の試験アンテナ装置150は、第2の試験アンテナ装置150をアンテナシステム110に対して位置決めするように構成されたプローブアンテナ位置決め装置350上に配置される。
【0093】
すべてのDUTインターフェースを、ターンテーブルからケーブルを介してACへと使用することができる。そのようなやり方で、追加のノイズ遮蔽がAC壁における減衰によってもたらされる。
【0094】
ポジショナおよび他の機構を、ACの外側の変位機構240上に配置することで、それらのおそらくは金属製の部品によるAC環境への妨害を少なくすることができる。したがって、いくつかの態様によれば、プローブアンテナ位置決め装置350は、少なくとも部分的に内側チャンバ140の外側に配置される。
【0095】
内側チャンバ140は、第3の変位機構260について
図2Bに示されているやり方と同様のやり方で、随意により変位機構240をさらに覆うように延びてもよいと理解される。
【0096】
好ましくは、ACプローブアンテナ150およびAC内に存在し得る他の金属製の物体は、RC伝搬経路からの放射がその特定の方向に関して遮られることがないが、例えばRC異方性が導入されることがないようにこれらの障害物の周囲を回折できるように、充分に小さく製作される。
【0097】
内側チャンバ140に導入された吸収体は、RCモードを変化させることによってRC性能を低下させると考えられる。さらに、ACの外側のRC体積V’がほとんど存在せず、RC伝播経路のための伝播体積がわずかでしかない床などの特定の方向からの放射は、DUTアンテナからのこれらの方向と比べて、より大きく減衰させられると考えられる。これらの影響を低減するために、AC DUTポジショナ350を使用し、AC DUTポジショナによって生成されるその自由度に従って、DUTにモードかくはんを被らせることができる。したがって、AC DUTポジショナに可能な限り多くの自由度を含ませることが、ACプローブアンテナにそれらの自由度を実装させる代わりに、有利である可能性がある。
【0098】
いくつかの態様によれば、第2の試験アンテナ装置150は、プローブアンテナ位置決め装置350上に配置された複数のプローブアンテナを備える。
【0099】
無線周波数吸収壁は、さまざまなやり方で実装可能である。例えば、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141は、カーボン充てん吸収材料を含むことができる。この材料の厚さは、dBで測定される所与の周波数の無線周波数信号の減衰を決定する。厚い吸収性材料は、薄い材料よりも無線周波数信号をより強く減衰させる。所与の厚さの無線周波数信号吸収材料は、より低い無線周波数信号よりも、より高い無線周波数信号をより大きく減衰させる。
【0100】
換言すると、いくつかの態様によれば、カーボン充てん吸収材料は、減衰に依存した厚さで、第1および第2の周波数帯域におけるカーボン充てん吸収材料の減衰の要件に従って構成される。
【0101】
一例によれば、より低い周波数の信号は適度な量の減衰しか被らないが、より高い周波数の信号は吸収体を通過するときにより強く減衰させられるように、限られた厚さのカーボン充てん吸収体が内側チャンバに使用される。この材料の構造は、それ自体は周波数選択性をもたらさないが、薄いため、低い周波数は高い周波数よりも減衰が少なく、或るレベルの無線周波数透過性が得られる。
【0102】
AC140を使用して、電力遅延スプレッドを無負荷のRCにおける約200nsから約35nsまで大幅に減らすことができる。この重い負荷は、チャンバの不確実性を完全に破壊することなく吸収体をRC壁に配置する従来からの吸収方法では達成が困難である。これは、例えば符号間干渉(ISI)または他の理由で長い遅延スプレッドに影響されやすい規格、システム、および無線装置を試験するときにきわめて有用である。そのようなシステムの例として、一連の802.11のシステムなどの無線ローカルエリアネットワークシステム、および全地球測位システム(GPS)が挙げられる。
【0103】
プローブアンテナ、あるいはACまたは内側チャンバ内の第2の試験アンテナ装置150を、ACプローブアンテナポジショナまたはホルダ350のさまざまな場所に取り付けられた異なる特性を有するいくつかの異なるプローブから製作することができる。例えば、遠方界までの距離が短く、したがって無響領域が大きい小型の無指向性アンテナである1つのプローブが存在できる。また、DUTが近接場に配置され、無響領域が存在しないが、無線リンクのためにアンテナ利得が必要な大きな利得のアンテナも存在できる。プローブアンテナは、さらなる利得をもたらすために、そのエネルギーをDUTに集中させることさえ可能である。この技術は、異なる偏波アンテナがAC内の異なる位置に配置される異なる偏波の収集にも使用可能である。
【0104】
内側チャンバのAC吸収体または無線周波数吸収壁は、好ましくは、チャンバのRC伝搬経路に導入される異方性を最小限に抑えるために、無線周波数信号をすべての方向において等しく吸収するように製作される。これは、例えば円筒形または六角形などのチャンバの対称形状を使用することによって、少なくとも部分的に達成することができる。
【0105】
したがって、いくつかの態様によれば、内側チャンバ140は、複数の方向に均一なレベルの無線周波数吸収をもたらすように構成された対称形状を有する。
【0106】
内側チャンバの形状の不規則性は、無線周波数信号吸収材料の選択、および吸収材料の寸法によって、或る程度補償することが可能である。いくつかの態様によれば、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141は、内側チャンバ140の形状に応じて決定される可変の厚さで構成される。
【0107】
図4を参照すると、AC吸収体の負荷を低減するために、それらを、外側の金属パッチ420によって部分的に覆うことができる。これにより、RC伝搬経路の透過が減少するが、外側チャンバの負荷も減少し、RC測定の精度が向上する。換言すると、いくつかの態様によれば、内側チャンバ140は、内側チャンバ140の外面に配置され、外側チャンバ120の内向きの無線周波数反射壁121に面する1つ以上の無線周波数反射パッチ420を備える。
【0108】
試験設備のさらなる統合を可能にするために、内側チャンバを温度試験機能と組み合わせることができる。例えば、測定装置は、内側チャンバ140内の温度レベルを生成および制御するように配置された随意による熱制御ユニット410を備えることができる。
【0109】
いくつかの態様によれば、アンテナシステム110を囲むように構成された壁141は、断熱となるように配置される。
【0110】
壁は、いくつかの態様によれば、無線周波数を著しく吸収することなく、断熱のみであり得ると理解される。このように、本明細書において、少なくとも1つの周波数帯域の少なくとも1つのアンテナシステム110の性能を測定するための測定装置が開示される。測定装置は、アンテナシステム110を囲むように構成された内向きの無線周波数反射壁121を有する外側チャンバ120と、外側チャンバ内に配置することができる内側チャンバとを備え、内側チャンバは、アンテナシステム110を囲むように構成された断熱壁を有する。第1の試験アンテナ装置130は、外側チャンバ120の内部に配置され、或る周波数帯域での測定動作131に合わせて構成される。
【0111】
図5は、本明細書における検討の一実施形態による制御ユニット160の構成要素をいくつかの機能ユニットに関して概略的に示している。処理回路510は、例えば記憶媒体530の形態のコンピュータプログラム製品に格納されたソフトウェア命令を実行することができる適切な中央処理装置CPU、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサDSP、などのうちの1つまたは複数の任意の組み合わせを使用して提供される。処理回路510は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路ASICまたはフィールドプログラマブルゲートアレイFPGAとしてさらに提供されることができる。
【0112】
特に、処理回路510は、制御ユニット160に、
図7に関連して説明される方法などの一式の動作またはステップを実行させるように構成される。例えば、記憶媒体530が一式の動作を格納することができ、処理回路510を、記憶媒体530から一式の動作を取り出して、制御ユニット160に一式の動作を実行させるように構成することができる。一式の動作を、一式の実行可能命令として提供することができる。したがって、処理回路510は、これにより、本明細書に開示の方法を実行するように構成される。
【0113】
さらに、記憶媒体530は、例えば磁気メモリ、光メモリ、半導体メモリ、または遠隔的に取り付けられたメモリのうちの任意のただ1つまたは組み合わせであってよい永続的な記憶装置を備えることができる。
【0114】
制御ユニット160は、第1および第2の試験アンテナ装置130、150ならびに少なくとも1つのアンテナシステム110などの少なくとも1つの外部装置との通信のためのインターフェース520をさらに備えることができる。したがって、インターフェース520は、アナログおよびデジタル構成要素ならびに有線または無線通信のための適切な数のポートを含む1つ以上の送信機および受信機を備えることができる。
【0115】
処理回路510は、例えばデータおよび制御信号をインターフェース520および記憶媒体530に送信し、インターフェース520からデータおよびレポートを受信し、記憶媒体530からデータおよび命令を取り出すことによって、制御ユニット160の全体的な動作を制御する。制御ノードの他の構成要素および関連の機能は、本明細書に提示される概念を曖昧にしてしまうことがないように省略されている。
【0116】
制御ユニット160の中心的な機能は、例えば第1または第2の試験アンテナ装置あるいは少なくとも1つのアンテナシステム110へとインターフェース520を介して試験信号161を送信することである。試験信号は、例えば、制御信号およびデータ信号を含むことができる。試験信号は、ベースバンド信号または無線周波数信号であってよい。
【0117】
さらに、制御ユニットは、所定の変位パターンに従い、あるいは何らかのフィードバック信号に応答して適応的に、種々の変位ユニット230、240の動作を制御するように構成されてよい。
【0118】
測定装置が温度制御機能を含む場合、制御ユニットを、内側チャンバの内部および/または外側チャンバの内部の温度を制御するように構成することができる。
【0119】
制御ユニットが実行するさまざまな制御プログラムを、記憶媒体530に格納することができる。
【0120】
ACにおける電力遅延スプレッドは、RCにおける通常の電力遅延スプレッドよりもはるかに小さい。これを補うために、チャネルエミュレータを利用して、時間遅延スプレッドを大きくすることができる。空間遅延スプレッドは、RC環境によって依然としてもたらされる。換言すると、制御ユニット160は、随意により、第1の周波数帯域における測定動作131に関連する時間遅延スプレッドを制御するように構成された無線周波数チャネル伝搬エミュレータを備える。無線周波数チャネル伝搬エミュレータを、記憶媒体530に格納された命令およびデータにより、処理回路510によって実装することができる。
【0121】
LOS成分およびRIMP成分の両方を含む伝搬環境を生成するために、制御ユニットに含まれる試験機器からの信号を、ACプローブアンテナおよびRC固定アンテナへとa/bの比率で分割することができる。これにより、DUTへの信号の両方の伝搬経路がもたらされる。これは、制御ユニット160が、随意により、無線周波数試験信号161を第1の試験アンテナ装置130と第2の試験アンテナ装置150との間で分割することにより、見通し線(LOS)動作およびリッチ等方性マルチパス(RIMP)動作の両方を含む測定動作を可能にするように構成されることを意味する。
【0122】
制御ユニット160は、いくつかの態様によれば、少なくとも1つのアンテナシステム110について、第1の試験アンテナ装置130へと送信される信号161および第1の試験アンテナ装置130から受信される信号162によるマルチパス環境における試験、ならびに第2の試験アンテナ装置150へと送信される信号161および第2の試験アンテナ装置150から受信される信号162によるLOSが支配的な無線電波環境における試験を、同時に行うように構成される。
【0123】
制御ユニット160は、いくつかの態様によれば、3GPP NRを含む無線装置およびアンテナシステムの試験に適する。
【0124】
要約すると、本明細書において、測定装置100、200、250、300、400によって第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステム110の性能を測定するための制御ユニット160が開示される。測定装置は、アンテナシステム110を囲むように構成された内向きの無線周波数反射壁121を有する外側チャンバ120と、外側チャンバ120の内側に配置することができ、アンテナシステム110を囲むように構成された無線周波数吸収壁141を有する内側チャンバ140と、外側チャンバ120の内側に配置され、第1の周波数帯域における測定動作131に合わせて構成された第1の試験アンテナ装置130と、内側チャンバ140の内側に配置され、第2の周波数帯域における測定動作151に合わせて構成された第2の試験アンテナ装置150とを備え、無線周波数吸収壁141が、第1の周波数帯域において或るレベルの無線周波数信号透過性を有することで、制御ユニット160によって、アンテナシステム110の性能を、第1の試験アンテナ装置130によって反射の無線周波数環境において測定でき、第2の試験アンテナ装置150によって本質的に無響の無線周波数環境において測定することができる。
【0125】
図6は、制御ユニット160によって実行可能な一式の動作610を含むコンピュータプログラム製品600を概略的に示している。一式の動作610を、制御ユニット160内の記憶媒体530へとロードすることができる。一式の動作は、
図7に関連して後述される方法に相当し得る。
【0126】
図6は、本教示によるコンピュータプログラム610と、コンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読記憶媒体620とを含むコンピュータプログラム製品600を示している。コンピュータプログラム610は、制御ユニット160によって実行することができる一式の動作を含む。一式の動作を、制御ユニット160内の記憶媒体530へとロードすることができる。一式の動作は、
図7に関連して後述される方法に相当し得る。
【0127】
図6の例において、コンピュータプログラム製品600は、CD(コンパクトディスク)またはDVD(デジタル多用途ディスク)またはブルーレイディスクなどの光ディスクとして示されている。コンピュータプログラム製品を、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、または電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)などのメモリとして、より具体的にはUSB(ユニバーサルシリアルバス)メモリまたはコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどのフラッシュメモリなどの外部メモリにおける装置の不揮発性記憶媒体ストレージメディアとして、具現化させることも可能である。したがって、コンピュータプログラムは、ここでは、図示の光ディスク上のトラックとして概略的に示されているが、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品に適した任意のやり方で格納されてよい。
【0128】
図7は、測定装置100、200、250、300、400によって第1の周波数帯域および第2の周波数帯域における少なくとも1つのアンテナシステム110の性能を測定するための方法を示すフローチャートである。この方法は、外側チャンバ120を、アンテナシステム110を囲むように内向きの無線周波数反射壁121で構成するステップS1と、外側チャンバ120の内部に配置することができる内側チャンバ140を、アンテナシステム110を囲むように構成し、無線周波数吸収壁141が、第1の周波数帯域において或るレベルの無線周波数信号透過性を有するステップS2と、第1の試験アンテナ装置130を、外側チャンバ120の内部で、第1の周波数帯域における測定動作131に合わせて構成するステップS3と、第2の試験アンテナ装置150を、内側チャンバ140の内部で、第2の周波数帯域における測定動作151に合わせて構成するステップS4と、第1の試験アンテナ装置130によって反射の無線周波数環境においてアンテナシステム110の性能を測定し、第2の試験アンテナ装置150によって本質的に無響の無線周波数環境においてアンテナシステム110の性能を測定するステップS5とを含む。
【0129】
いくつかの態様によれば、この方法は、熱制御ユニット410によって測定装置内の温度を制御するステップS6を含む。温度制御は、
図4に関連してすでに説明されている。
【0130】
いくつかの態様によれば、この方法は、少なくとも1つのモードかくはん器210、220を制御するステップS7を含む。モードかくはん器は、
図3および4に関連してすでに説明されている。
【0131】
いくつかの態様によれば、この方法は、第1および第2の試験アンテナ装置のいずれかに対する少なくとも1つのアンテナシステムの相対位置を調整するために、少なくとも1つの変位機構230、240を制御するステップS8を含む。変位機構は、
図2Aおよび2B、ならびに
図3に関連してすでに説明されている。
【0132】
いくつかの態様によれば、この方法は、第1の周波数帯域における測定動作131に関連する時間遅延スプレッドを制御するために、無線周波数チャネル伝搬環境をエミュレートするステップS9を含む。これは、大きな遅延スプレッドに影響されやすい無線規格について試験が実行されている状況において、好都合であり得る。マルチパス環境においては、異なる伝搬経路が異なる時点に受信機に到達する。これにより、例えば2つの伝搬経路の間の時間差が通信シンボルの持続時間よりも大きい場合に、符号間干渉が発生する可能性がある。この場合、前のシンボルが後のシンボルと干渉し、通信が途絶えたり、損なわれたりする可能性がある。この種の干渉に影響されやすいシステムは、RCにおける試験が困難になり得る。試験を容易にするために、RC内にマイクロ波吸収材料を配置することによって、RC信号の遅延スプレッドを減少させることができる。これは、通常は、「遅延スプレッドの調整」と称される。これを行うために、チャンバの壁に吸収材料を配置することが一般的である。本明細書に記載の内容など、装置を(半)吸収材料で完全に囲むことは、遅延スプレッドを制御された量にて著しく減少させるための新規な代替の方法を呈する。この方法のさらなる利点は、DUTがすべての方向において等しい減衰を被るため、測定精度が低下しないことである。
【0133】
いくつかの態様によれば、この方法は、無線周波数試験信号を第1の試験アンテナ装置130と第2の試験アンテナ装置150との間で分割することにより、見通し線(LOS)動作およびリッチ等方性マルチパス(RIMP)動作の両方を含む測定動作を可能にするステップS10を含む。
【0134】
潜在的に、
図1~4に示される第2の試験アンテナ装置は、きわめて平面な波面を生成しない。これは、おそらくは、平面な波面を必要とする一部の試験の状況において問題となり得る。
【0135】
図8Aは、第2の試験アンテナ装置150’の一部が内側チャンバ140の外へと移動しているが、依然として外側チャンバ120の内側に位置している例示的な測定装置800を示している。第2の試験アンテナ装置は、ここでは、指向性アンテナであり、例えばホーンアンテナ、レンズホーンアンテナ、反射アンテナ、または指向性の放射パターンを有するように構成されたアンテナアレイである。
【0136】
反射アンテナの実施形態は、いわゆるコンパクトアンテナテストレンジ(CATR)に対応し、伝統的な自由空間法を使用したのではアンテナシステム110への遠方界間隔を得ることが実行不可能であると考えられる周波数におけるアンテナシステムの便利な試験を提供するために使用することができる。CATRは、球面の波面を放射するソースアンテナと、1つ以上の2次反射器とを使用して、放射された球面の波面を平行にして、所望の試験ゾーンにおける平面の波面にする。これを達成するために、1つの典型的な実施形態は、ホーンフィードアンテナおよび放物面反射鏡を使用する。CATRは既知であり、ここではこれ以上詳しくは説明しない。
【0137】
開口部810が、第2の試験アンテナ装置150’の主ローブのかなりの部分が比較的妨げられることなく内側チャンバへと入ることができるように、内側チャンバ140の壁に配置される。このようにして、第2の試験アンテナ装置の有効放射は、依然として主に内側チャンバ内にあり、したがって第2の試験アンテナ装置を、すべての実際的な目的に関して内側チャンバ内に含まれていると称することができる。しかしながら、今やアンテナシステム110と第2の試験アンテナ装置との間の距離がより長くなったため、第2の周波数帯域における測定動作151’に関してアンテナ装置110から見た波面は、平面波により近いものになる。換言すると、第2の周波数帯域における測定動作151’が、今や比較的大きな空間的広がりを有する平面波のような波動励起を使用して実行され、これは、いくつかの試験の状況において有利である。
【0138】
要約すると、
図8Aは、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141のうちの少なくとも1つが、外側チャンバ120への開口部810を有する測定装置800を示している。第2の試験アンテナ装置150’の少なくとも一部は、内側チャンバ140の外に配置され、主ローブを有する指向性アンテナとして構成される。この主ローブは、第2の試験アンテナ装置150’による送信が主に内側チャンバ140の内側に配置されるよう、開口部810へと向けられるように配置され、したがって第1の試験アンテナ装置130による反射無線周波数環境におけるアンテナシステム110の性能の測定および第2の試験アンテナ装置150’による本質的に無響の無線周波数環境におけるアンテナシステム110の性能の測定を可能にする。
【0139】
いくつかの態様によれば、開口部810は、第2の試験アンテナ装置150’の一部分から距離D2に配置され、距離D2における主ローブのアンテナ図に一致する形状を有する。これは、開口部が、第2の試験アンテナ装置からの送信エネルギーの大部分を通過させるように充分に大きいが、第2の試験アンテナ装置150’による本質的に無響の無線周波数環境における測定性能を妨げるほどには大きすぎないことを意味する。開口部は、円形である必要はなく、楕円形または他の形状の開口部も可能である。開口部の好ましい形状を、コンピュータシミュレーションの実験によって決定することができる。さらに、開口部を、異なるアンテナ放射パターンを有するさまざまな種類の第2の試験アンテナ装置に適合させることができ、あるいは距離D2の変更に適合させることができるように、構成の変更が可能であるように構成することもできる。
【0140】
図8Bは、外側および内側チャンバを備える例示的な測定装置820を示している。内側チャンバ140は、その壁のうちの1つに開口部810を有する。指向性アンテナ150’が、第2の試験アンテナ装置として配置され、開口部810へと放射を行うように構成される。
【0141】
図8Aおよび8Bに示される例示的な測定装置800は、上記の議論に矛盾しないと理解される。したがって、
図1~4に関連して論じられたすべての特徴は、開口部810が内側チャンバの壁に配置され、第2の試験アンテナ装置が少なくとも部分的に内側チャンバの外に配置される場合にも適用可能である。
【0142】
いくつかの態様によれば、アンテナ装置150または150’を、主反射器を有し、おそらくは副反射器を有する反射アンテナとして配置することができる。この種類または装置は、アンテナ試験においてよく知られている。反射器は、ホーンアンテナからの球面の放射波を平面波に変換するために使用される。この装置は、コンパクトアンテナテストレンジ(CATR)として知られている。この構成は、装置100、200、250、300、400、800、または900と互換性がある。
【0143】
内側チャンバ140を外側チャンバ140の内部に配置する場合の潜在的な問題は、RIMP環境への悪影響である。これは、少なくとも部分的には、外側チャンバの壁と内側チャンバの壁との間に空間があまり残されていないため、利用可能な伝播経路が限られ、したがって伝播経路の分布に影響が及ぶ可能性があるからである。
【0144】
図9Aは、内側チャンバ140の無線周波数吸収壁141の少なくとも一部分が、外側チャンバ120の内向きの無線周波数反射壁121に接続して配置された周波数選択反射壁910である別の例示的な測定装置900を示している。周波数選択反射壁910は、第1の周波数帯域の無線周波数信号を反射し、第2の周波数帯域の無線周波数信号を吸収するように配置されることで、アンテナシステム110について第1の試験アンテナ装置130による反射無線周波数環境における性能の測定および第2の試験アンテナ装置150’による本質的に無響の無線周波数環境における性能の測定を可能にする。
【0145】
このようにして、第2の周波数帯域の信号などの高い周波数の無線信号は、周波数選択反射壁910へと伝播し(921)、そこで減衰させられ、あるいは吸収される。第1の周波数帯域の無線周波数信号などのより低い無線周波数信号は、周波数選択反射壁910によって反射される(920)。したがって、周波数選択反射壁910は、上述の測定装置の例と比較して、外側チャンバ内のRIMP環境に対する影響がより限定的である一方で、第2の周波数帯域の無線周波数信号に対して吸収効果を有し、したがって内側チャンバの他の無線周波数吸収壁141と同じように機能する。
【0146】
【0147】
いくつかの態様によれば、周波数選択反射壁910は、無線周波数吸収材料940の層と、周波数選択反射壁910のうちの内側チャンバ140に面する側、すなわちDUTに面する側に配置されたグレーチング構造930とを備える。グレーチング構造は、第1の周波数帯域の無線周波数信号を反射するが、第2の周波数帯域の無線周波数信号は通過させるように構成された寸法を有する格子またはラチスである。
【0148】
いくつかの態様によれば、グレーチング構造930は、第2の周波数帯域の無線周波数信号を通過させる寸法を有する穴を備えた金属骨格を備える。
【0149】
いくつかの態様によれば、グレーチング構造930は、第2の周波数帯域の無線周波数信号を通過させる寸法を有する開口部を備えたハニカム金属骨格を備える。
【0150】
いくつかの態様によれば、内側チャンバ140の壁141’の少なくとも一部分が、外側チャンバ120の内向きの無線周波数反射壁121に接続して配置された「ステルス」周波数反射壁970である。反射壁970は、無線周波数信号をアンテナシステム110から遠ざかるように反射させ、すなわちステルス面のように作用するように構成されることで、アンテナシステム110について第1の試験アンテナ装置130による反射無線周波数環境における性能の測定および第2の試験アンテナ装置150’による本質的に無響の無線周波数環境における性能の測定を可能にする。
【0151】
これは、第2の試験アンテナ装置150、150’からの電磁放射がただ1つの方向からのみアンテナシステム110に到達するからである。壁141’のこの部分に到達する第2の試験アンテナ装置からの信号は、アンテナシステム110から遠ざかるように反射される。他の方向から到来する信号は、内側チャンバの壁によって減衰させられる。この原理が、
図9Cに示されており、第2の試験アンテナ装置150からの送信960は、アンテナシステム110を通過するが、その後に「ステルス」反射壁970によってアンテナシステム110から遠ざかるように反射される。
【0152】
一例によれば、反射壁970は、入射する信号が、ある角度の出射方向に反射されるように、反射壁上に配置されたピラミッド形状を使用して実現可能である。