(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-20
(45)【発行日】2022-10-28
(54)【発明の名称】プラスチックを解重合するためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
C08J 11/16 20060101AFI20221021BHJP
C08J 11/26 20060101ALI20221021BHJP
C08J 11/28 20060101ALI20221021BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20221021BHJP
C08J 11/08 20060101ALI20221021BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
C08J11/26
C08J11/28
C08J11/24
C08J11/08
C08J11/10
(21)【出願番号】P 2021540789
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 US2019052263
(87)【国際公開番号】W WO2020061521
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521117861
【氏名又は名称】プレミア プラスティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パロット, マシュー クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ラフト, ジェイムズ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス, マイケル ディーン
(72)【発明者】
【氏名】シューピン, ドナルド ビー.
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-097521(JP,A)
【文献】特開2015-036393(JP,A)
【文献】特表2016-536291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051103(US,A1)
【文献】国際公開第2018/007356(WO,A1)
【文献】特開2011-207822(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087752(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1134211(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00 - 17/04
C08J 11/00 - 11/28
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 -409/44
C08G 63/00 - 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを
連続解重合するための方法であって、前記方法は、
(a)
酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、酢酸マグネシウム、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、アミン、およびトリアルキルアミンから選択される触媒の存在下で、固体
ポリエチレンテレフタレート(PET)粒子と
、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、メタノール、および水から選択される溶媒とを混合して、不均質反応混合物を生成する工程;
(b)前記不均質反応混合物を、第1の熱交換器の第1のセクションを経て送って、前記不均質反応混合物を予備加熱する工程
であって、懸濁物からの前記固体プラスチック粒子の沈降を防止するために、30cm/sを上回る粒子速度を維持するのに十分な所定の流量で、前記不均質反応混合物が、前記第1の熱交換器の前記第1のセクションを経て送られる、工程;
(c)予備加熱した前記不均質反応混合物を、
前記所定の流量で、加熱チャンバの加熱領域へと送る工程;
(d)液化反応生成物を含む均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を開始するために
230℃またははそれより高い反応温度へと、
伝熱流体を使用して前記不均一混合物を間接的に加熱する熱源により前記加熱チャンバの加熱領域内の前記不均質反応混合物を加熱する工程
であって、前記液化反応生成物が、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)モノマーを含む、工程;
(e)前記均質反応溶液を、前記第1の熱交換器の第2のセクションを経て送って、
50℃を下回る温度まで前記均質反応溶液を冷却する工程;
(f)前記均質反応溶液を沈降タンクへと送って、
0.5時間~170時間の間の沈降時間にわたって沈降させ、前記液化反応生成物が固体反応生成物へと転換し、冷却した前記均質反応溶液から沈殿することを可能にする工程、
を包含
し、前記方法が、システム圧を、前記反応温度における前記溶媒の蒸気圧を上回って維持して、前記溶媒が蒸発することを防止する工程をさらに包含する、方法。
【請求項2】
工程(d)において、前記液化反応生成物は、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルを
さらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)の後に、前記方法は、前記液化反応生成物を含む前記均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を完了させるために、
前記不均一反応混合物を前記所定の流量で保持チューブに送り、少なくとも1分間、
前記保持チューブ内で前記反応温度において前記不均質反応混合物を維持する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(e)の後に、前記方法は、前記均質反応溶液を第2の熱交換器を経て送って、前記均質反応溶液を、50℃を下回る温度にさらに冷却する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(f)は、前記固体反応生成物を、デカントする、濾過する、遠心分離する、およびプレスすることによって、前記溶媒から分離する工程をさらに包含する、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
工程(f)の後に、前記方法は、分離した前記溶媒を、新たな不均質反応混合物を生成するためのミキサーへと送る工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレート(PET)の連続解重合のためのシステムであって、前記システムは、
(a)
溶媒中に懸濁された固体プラスチック粒
子を含む不均質反応混合物を生成するためのミキサー;
(b)前記ミキサーへと流動するように連結されたポンプであって、ここで前記ポンプは、前記ミキサーの下流に配置され、前記不均質反応混合物を、
懸濁物からの前記
固体プラスチック粒子
の沈降を防止するために
少なくとも30cm/sの粒子速度
を維持するのに十分な所定の流量で前記システムを経て送るように機能する、ポンプ;
(c)前記ポンプの下流に配置され、かつ冷却セクションおよび加熱セクションを有する第1の熱交換器であって、ここで前記第1の熱交換器の前記加熱セクションは、前記不均質反応混合物を予備加熱するために適合されている、第1の熱交換器;
(d)
伝熱流体(HTF)を使用して前記不均一混合物を間接的に加熱するように構成された熱源を有する加熱チャンバを含む加熱装置であって、前記加熱チャンバは、前記第1の熱交換器の前記加熱セクションの出口へと流動するように連結された入り口を有する材料通路を含み、ここで前記材料通路は、前記不均質反応混合物を、少なくとも、液化反応生成物を含む均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を開始するために十分な反応温度へと加熱するように適合された加熱領域を画定する、加熱装置;
(e)前記不均質反応混合物を、均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を完了させるために、前記反応温度にもしくは前記反応温度を上回って維持するように適合された保持チューブであって、前記保持チューブは、チューブ入り口およびチューブ出口を有し、ここで前記チューブ入り口は、前記加熱チャンバの前記材料通路の出口へと流動するように連結され、前記チューブ出口は、前記第1の熱交換器の前記冷却セクションの入り口へと流動するように連結された、保持チューブ;
(f)前記均質反応溶液を冷却するように適合された第2の熱交換器であって、前記第2の熱交換器は、前記第1の熱交換器の前記冷却セクションの出口へと流動するように連結された入り口を有する冷却セクションを含む、第2の熱交換器;ならびに
(g)冷却した前記均質反応溶液を受容し、前記液化反応生成物を固体反応生成物に変換し、冷却した前記均質反応溶液から沈殿させることを可能にするように適合された沈降タンク、
を含む、システム。
【請求項8】
前記加熱装置は、
(a)前記材料通路に隣接するHTC通路をさらに含み、ここで前記HTC通路は、第1の入り口および第1の出口を含む、前記加熱チャンバ;
(b)第1の端部および第2の端部を有するHTC導管であって、ここで前記HTC導管の前記第1の端部は、前記HTC通路の前記第1の入り口に接続され、前記HTC導管の前記第2の端部は、前記HTC通路の前記第1の出口に接続される、HTC導管;
(c)マイクロ波印加装置を含むマイクロ波アセンブリであって、ここで前記マイクロ波印加装置は、前記HTC導管に隣接している、マイクロ波アセンブリ;ならびに
(d)前記HTC導管内に配置されかつ前記マイクロ波印加装置によって加熱されるように適合された伝熱流体であって、ここで前記伝熱流体は、溶媒およびマイクロ波吸収体を含む、伝熱流体、
をさらに含む、請求項
7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月21日出願の米国仮特許出願第62/734,421号および2019年4月10日出願の米国仮特許出願第62/831,787号(これらはともに、本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
プラスチック、特にPETのようなポリエステルは、従来から、通常は加熱ジャケットおよび撹拌機を備えた大きな反応容器の中で解重合されている。解重合反応は、解重合が完了するまで、上記容器の中で隔離される。解重合後に、上記容器は空にされ、次いで再充填される。各バッチは、解重合を加速するように加熱され、次いで、冷却されて、新たなポリマーのための実行可能な原材料を生成する。上記バッチプロセスは、代表的には、20分~800分の間の時間がかかる。連続稼働は、ラウンドロビン方式で反応容器群を順次空にするおよび再充填することによってシミュレーションされる。充填する、加熱する、冷却する、空にする、および反復することが常に必要であることは、エネルギーを無駄にし、並行バッチプロセスにおける実際の連続フローの錯覚に陥ったままにするにはさらなる装備を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本明細書で開示される発明は、一般に、処理する間に、粒子を不均質混合物中に懸濁して維持するために必要な最小閾値を上回って流量を維持する連続フローシステムを使用する、樹脂、プラスチック、またはポリマー(本明細書中以降、各々、概して「プラスチック」といわれる)の連続解重合のためのプロセスおよびシステムに関する。
【0004】
プラスチックを解重合するための本発明の特徴を具現化するプロセスは、(a)溶媒中に固体プラスチック粒子を含む混合物を、加熱チャンバにおけるラインを経て、プラスチック粒子を上記溶媒中に懸濁して維持しかつ上記プラスチック粒子が集塊化してラインの中で詰まらないように防止するために十分大きい粒子速度において連続して流す工程;および(b)上記混合物を反応温度へと加熱して、上記溶媒中のプラスチック粒子を液化反応生成物を含む均質溶液へと解重合することを開始するために、上記加熱チャンバにおけるラインを経て伝熱する工程、を包含する。
【0005】
プラスチックの連続解重合のための本発明の特徴を具現化するシステムは、ミキサー(必要に応じた)、ポンプ、第1の熱交換器(必要に応じた)、加熱チャンバを含む加熱装置、第2の熱交換器(必要に応じた)、および分離器を含み得る。上記ポンプは、プラスチック粒子および溶媒の不均質混合物を、至適粒子速度を維持するように設計されたポンプ流量において、導管を経て連続して供給するように機能する。上記不均質混合物は、必要に応じて、最初に、上記混合物を予備加熱するために熱交換器の第1の部分を通過し、その後、上記加熱チャンバを経て送られ得る。上記加熱チャンバ(これは、加熱ゾーンを画定する)は、上記導管ラインを通って流れている上記不均質混合物の温度をその反応温度へと上昇させ、それによって、上記プラスチック粒子を含む不均質混合物を、液化反応生成物を含む均質溶液へと変換するプロセスを開始させるように機能する。この変換プロセスは、上記液化反応生成物を冷却するように設計された上記熱交換器の第2の部分を経て戻る前に、保持チューブ内で継続し得る。上記液化反応生成物は、必要に応じて、上記固体反応生成物を上記溶媒から分離するように設計された分離器へと移される前に、第2の熱交換器を経て送られることによってさらに冷却され得る。上記分離した溶媒は、再利用するために、上記ミキサーまたは上記ポンプの取り入れラインへと戻って再循環され得る。
【0006】
本発明のある種の実施形態において、上記システムおよび方法は、プラスチックおよび溶媒の不均質混合物を、間接的マイクロ波照射を介して、上記加熱チャンバ内で加熱することを提供し得る。マイクロ波加熱は、加熱されている材料の誘電特性に大きく依拠する。プラスチック材料の誘電特性は変動し得ることから、ある範囲の材料をマイクロ波によって直接的に加熱することの有効性は、材料間で変動する。そして、上記プラスチック材料に、その誘電特性を改善するために添加される添加剤は、所望の最終製品から除去するのが困難であり得る。本発明のシステムおよび方法は、優れた誘電特性を有するように最適化した伝熱流体(HTF)と組み合わせた加熱チャンバを使用して、標的材料を間接的に加熱するための手段を提供することによって、マイクロ波照射による直接的加熱の本質的欠点を回避する。上記HTFのみが、マイクロ波照射を介する加熱を受けるので、加熱されるべき上記標的材料の誘電特性におけるいかなる変動も、重要ではない。従って、広い範囲の誘電特性を有する標的材料は、間接的マイクロ波照射システムおよびプロセスを使用して、有効かつ効率的に加熱され得る。
【0007】
間接的マイクロ波照射を利用する本発明の実施形態において、上記システムの加熱ゾーンは、加熱チャンバ、マイクロ波印加装置、伝熱流体(HTF)、およびHTF閉鎖ループ導管を特徴とする加熱装置を含み得る。上記加熱チャンバは、第1の入り口から第1の出口へと延びる第1の通路、および上記第1の通路に隣接する加熱領域を有し得る。加熱されるべき材料(すなわち、標的材料)は、上記加熱領域の中に受容され得る。上記HTF導管は、上記マイクロ波印加装置を経て延び、上記第1の入り口に接続する。上記伝熱流体(これは、好ましくは溶媒中に溶解したマイクロ波吸収体を含む)は、上記HTF導管を通過するときに、上記マイクロ波印加装置において加熱される。次いで、上記加熱された伝熱流体は、上記加熱チャンバの第1の通路を通過し、上記加熱チャンバの隣接する加熱領域において標的材料を加熱する。好ましくは、上記システムは、正確に配合され、マイクロ波を効率的に吸収し、これを熱に変換するために、特定のマイクロ波周波数に調整された伝熱流体を使用する。次いで、この熱は、上記加熱チャンバまたは対流もしくは伝導を介して加熱するための任意の他の公知の手段によって標的材料に伝えられ得る。至適誘電特性を有する伝熱流体のマイクロ波照射を介する間接的加熱は、同時にエネルギー消費を標準化および最小限にしながら、優れた温度制御を提供する。本発明のシステムおよび方法は、広く種々の材料(化学反応において使用される反応物が挙げられるが、これらに限定されない)を間接的に加熱するために使用され得る。
【0008】
間接的マイクロ波照射を利用する本発明の実施形態において、上記システムの加熱ゾーンにおいて標的材料を加熱するために本発明の特徴を具現化するプロセスは、(a)加熱チャンバの加熱領域の中に上記標的材料を受容する工程;(b)溶媒およびマイクロ波吸収体を含む伝熱流体を、マイクロ波印加装置においてマイクロ波エネルギーで加熱する工程;(c)上記加熱した伝熱流体を、上記加熱領域を取り囲む第1の通路において上記加熱チャンバを通過させて、上記第1の通路における伝熱流体から、前記加熱領域における標的材料へと伝熱する工程;(e)上記反応混合物を冷却して、反応生成物を固化する工程;ならびに(f)上記反応混合物を分離器に移して、上記固体反応生成物を上記溶媒から分離する工程、を包含する。
【0009】
間接的マイクロ波照射が利用されることになる場合の本発明の原理を例証する別の特定の実施形態において、ポリエチレンテレフタレート(PET)をその反応性中間体であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)へと化学的に分解する方法は、(a)PETとエチレングリコールおよび触媒とを合わせて、不均質反応混合物を生成する工程;(b)上記不均質反応混合物を、第1の熱交換器の第1のセクションを経てポンプ輸送して、上記不均質反応混合物を予備加熱する工程;(c)上記予備加熱した不均質反応混合物を、加熱チャンバの加熱領域へとポンプ輸送する工程;(d)伝熱流体を、マイクロ波印加装置においてマイクロ波エネルギーで加熱する工程であって、ここで上記伝熱流体はマイクロ波吸収体を含む、工程;(e)上記加熱した伝熱流体を、上記加熱チャンバの第1の通路を通過させて、上記反応混合物を、上記加熱チャンバの加熱領域において、上記反応生成物BHETを含む均質反応溶液を生成するために十分な温度へと加熱する工程;(f)上記均質反応溶液を、上記第1の熱交換器の第2のセクションを経てポンプ輸送して、上記均質反応溶液を冷却する工程;(g)必要に応じて、上記均質反応溶液を第2の熱交換器を経てポンプ輸送して、上記均質反応溶液をさらに冷却する工程;ならびに(h)上記反応溶液を分離器に移して、上記固体反応生成物を上記溶媒から分離する工程、によって行われる。次いで、得られるBHETモノマーおよびBHETオリゴマーは、精製され得、新たなバージンPETを形成するために再重合され得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
プラスチックを解重合するための方法であって、前記方法は、
(a)固体プラスチック粒子と溶媒とを混合して、不均質反応混合物を生成する工程;
(b)前記不均質反応混合物を、第1の熱交換器の第1のセクションを経て送って、前記不均質反応混合物を予備加熱する工程;
(c)予備加熱した前記不均質反応混合物を、加熱チャンバの加熱領域へと送る工程;
(d)液化反応生成物を含む均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を開始するために十分な反応温度へと、前記加熱チャンバの加熱領域内の前記不均質反応混合物を加熱する工程;
(e)前記均質反応溶液を、前記第1の熱交換器の第2のセクションを経て送って、前記均質反応溶液を冷却する工程;
(f)前記均質反応溶液を沈降タンクへと送って、前記液化反応生成物が固体反応生成物へと転換し、冷却した前記均質反応溶液から沈殿することを可能にする工程、
を包含する、方法。
(項目2)
前記固体プラスチック粒子はPETであり、前記溶媒はエチレングリコールであり、前記液化反応生成物はBHETモノマーを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記液化反応生成物は、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記反応温度は、少なくとも230℃である、項目2に記載の方法。
(項目5)
工程(d)の後に、前記方法は、前記液化反応生成物を含む前記均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を完了させるために、少なくとも1分間、前記反応温度において前記不均質反応混合物を維持する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記不均質反応混合物は、工程(b)から(d)において、前記固体プラスチック粒子を前記溶媒中に懸濁して維持するために、少なくとも20cm/sの粒子速度において送られる、項目1に記載の方法。
(項目7)
システム圧を、前記反応温度における前記溶媒の蒸気圧を上回って維持して、前記溶媒が蒸発することを防止する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目8)
工程(a)は、前記固体プラスチック粒子および前記溶媒と触媒とを混合して、前記不均質反応混合物を形成する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目9)
工程(e)の後に、前記方法は、前記均質反応溶液を第2の熱交換器を経て送って、前記均質反応溶液を、50℃を下回る温度にさらに冷却する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目10)
工程(f)は、前記均質反応溶液を前記分離器内に約0.5時間~170時間の間にわたって維持して、前記液化反応生成物を固体反応生成物に変換し、冷却した前記均質反応溶液から沈殿させることを可能にする工程をさらに包含する、項目9に記載の方法。
(項目11)
工程(f)は、前記固体反応生成物を、デカントする、濾過する、遠心分離する、およびプレスすることによって、前記溶媒から分離する工程をさらに包含する、項目10に記載の方法。
(項目12)
工程(f)の後に、前記方法は、分離した前記溶媒を、新たな不均質反応混合物を生成するためのミキサーへと送る工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目13)
プラスチックを解重合するための方法であって、前記方法は、
(a)溶媒中に固体プラスチック粒子を含む混合物を、加熱チャンバにおけるラインを経て、前記プラスチック粒子を前記溶媒中に懸濁して維持しかつ前記プラスチック粒子が集塊化して前記ラインを詰まらせるのを防止するために十分な粒子速度においてポンプ輸送して連続して流す工程;
(b)前記混合物を反応温度へと加熱して、前記溶媒中の前記プラスチック粒子を、液化反応生成物を含む均質溶液へと解重合することを開始するために、前記加熱チャンバにおける前記ラインを経て伝熱する工程、
を包含する方法。
(項目14)
前記固体プラスチック粒子はPETであり、前記溶媒はエチレングリコールであり、前記液化反応生成物はBHETモノマーを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記液化反応生成物は、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記反応温度は、少なくとも230℃である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記混合物を、前記反応温度において少なくとも1分間保持する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記混合物を前記加熱チャンバへと流す前に、前記混合物を予備加熱用熱交換器の中で予備加熱する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目19)
前記均質溶液を、前記予備加熱用熱交換器の中の通路を通って流して、前記混合物に伝熱する工程を包含する、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記加熱チャンバは、前記混合物を直接的にまたは間接的に加熱する反応器用熱交換器である、項目13に記載の方法。
(項目21)
システム圧を、前記反応温度における前記溶媒の蒸気圧を上回って維持して、前記溶媒が蒸発することを防止する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目22)
前記固体プラスチック粒子および前記溶媒と触媒とを混合して、前記混合物を形成する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目23)
前記均質溶液を冷却用熱交換器の中で、50℃を下回る温度へと冷却する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目24)
前記冷却用熱交換器の中で冷却した前記均質溶液を、前記液化反応生成物が固体反応生成物へと固化する間に、室温において約0.5時間~170時間の間にわたって沈降させる工程を包含する、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記固体反応生成物を、デカントする、濾過する、遠心分離する、およびプレスすることのうちの1またはこれより多くによって、前記溶媒から分離する工程を包含する、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記方法において前記固体反応生成物から分離した前記溶媒を再利用する工程を包含する、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記プラスチック粒子のサイズは、少なくとも1つの寸法が0.1μm~20,000μmの間である、項目13に記載の方法。
(項目28)
前記ポンプは、前記ラインを経て少なくとも20cm/sの粒子速度を維持する、項目13に記載の方法。
(項目29)
プラスチックの連続解重合のためのシステムであって、前記システムは、
(a)固体プラスチック粒子および溶媒を含む不均質反応混合物を生成するためのミキサー;
(b)前記ミキサーへと流動するように連結されたポンプであって、ここで前記ポンプは、前記ミキサーの下流に配置され、前記不均質反応混合物を、前記プラスチック粒子を前記溶媒中に懸濁状態で維持するために十分な粒子速度において送るように機能する、ポンプ;
(c)前記ポンプの下流に配置され、かつ冷却セクションおよび加熱セクションを有する第1の熱交換器であって、ここで前記第1の熱交換器の前記加熱セクションは、前記不均質反応混合物を予備加熱するために適合されている、第1の熱交換器;
(d)加熱チャンバを含む加熱装置であって、前記加熱チャンバは、前記第1の熱交換器の前記加熱セクションの出口へと流動するように連結された入り口を有する材料通路を含み、ここで前記材料通路は、前記不均質反応混合物を、少なくとも、液化反応生成物を含む均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を開始するために十分な反応温度へと加熱するように適合された加熱領域を画定する、加熱装置;
(e)前記不均質反応混合物を、均質反応溶液への前記不均質反応混合物の変換を完了させるために、前記反応温度にもしくは前記反応温度を上回って維持するように適合された保持チューブであって、前記保持チューブは、チューブ入り口およびチューブ出口を有し、ここで前記チューブ入り口は、前記加熱チャンバの前記材料通路の出口へと流動するように連結され、前記チューブ出口は、前記第1の熱交換器の前記冷却セクションの入り口へと流動するように連結された、保持チューブ;
(f)前記均質反応溶液を冷却するように適合された第2の熱交換器であって、前記第2の熱交換器は、前記第1の熱交換器の前記冷却セクションの出口へと流動するように連結された入り口を有する冷却セクションを含む、第2の熱交換器;ならびに
(g)冷却した前記均質反応溶液を受容し、前記液化反応生成物を固体反応生成物に変換し、冷却した前記均質反応溶液から沈殿させることを可能にするように適合された沈降タンク、
を含む、システム。
(項目30)
前記加熱装置は、
(a)前記材料通路に隣接するHTC通路をさらに含み、ここで前記HTC通路は、第1の入り口および第1の出口を含む、前記加熱チャンバ;
(b)第1の端部および第2の端部を有するHTC導管であって、ここで前記HTC導管の前記第1の端部は、前記HTC通路の前記第1の入り口に接続され、前記HTC導管の前記第2の端部は、前記HTC通路の前記第1の出口に接続される、HTC導管;
(c)マイクロ波印加装置を含むマイクロ波アセンブリであって、ここで前記マイクロ波印加装置は、前記HTC導管に隣接している、マイクロ波アセンブリ;ならびに
(d)前記HTC導管内に配置されかつ前記マイクロ波印加装置によって加熱されるように適合された伝熱流体であって、ここで前記伝熱流体は、溶媒およびマイクロ波吸収体を含む、伝熱流体、
をさらに含む、項目29に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、プラスチックを解重合するために本発明の特徴を具現化するシステムのブロック図である。
【0011】
【
図2】
図2は、
図1のシステムにおいて解重合プロセスを受ける多量のプラスチックの進行を示すフローチャートである。
【0012】
【
図3】
図3は、マイクロ波加熱した伝熱流体でプラスチックを加熱するためのシステムの1つのバージョンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
システム1およびプラスチックを解重合するためのプロセスは、
図1および
図2に示される。システム1は、ミキサー10;ポンプ14;第1の熱交換器16;加熱装置18,20;保持チューブ22;背圧レギュレーター26;第2の熱交換器28、および分離器32を含み得る。システム1およびプロセスは、種々のプラスチックとともに使用され得るが、PETをその反応性中間体へと解重合することが、本発明のシステムおよびプロセスを記載するために、本明細書中で具体例として使用される。
【0014】
廃PET材料の固体プラスチック粒子(フレーク、微粉、または粉末の形態にある)は、ミキサー10の中で溶媒および触媒と混合されて、不均質混合物12を生成する。ミキサー10は、撹拌機(たとえば、プロペラ13、撹拌子、または他の撹拌機)または再循環溶媒を使用して、混合を行い得る。または上記混合物は、予め混合され得る。システム1とともに使用するために適した溶媒の例としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、メタノール、および水が挙げられる。適切な触媒の例としては、酢酸亜鉛;塩化亜鉛;酢酸マンガン;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU);酢酸マグネシウム、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP);アミン;トリアルキルアミン;およびこれらの触媒の組み合わせが挙げられる。しかし、他の溶媒および触媒が利用され得、本発明の範囲内であり得る。利用される溶媒に依存して、異なる解重合された反応生成物が生成され得る。例えば、エチレングリコールが利用される場合、主要な反応生成物はBHETである。ジエチレングリコールが利用される場合、主要な反応生成物はビス(ジエチレングリコール)テレフタレート(BDEGT)である。メタノールが利用される場合、主要な反応生成物はジメチルテレフタレート(DMT)である。水が利用される場合、主要な反応生成物はテレフタル酸(TA)である。簡潔さのために、本発明のシステムおよびプロセスは、エチレングリコールの存在下でPETを解重合して反応生成物BHETを生成する文脈において、本明細書でさらに記載される。しかし、当業者は、PETの代替の反応生成物が、代替の溶媒が利用される場合に、システム1を使用するための本明細書で開示される方法に従って生成され得ることを容易に認識する。
【0015】
なおも
図1および2を参照すると、不均質混合物12は、ポンプ14によって、一連の接続されたライン(例えば、チューブまたはパイプ)を経てポンプ輸送され得る。好ましくは、上記混合物は、ポンプ14のみを利用して、システム1を経て進められる。他の実施形態において、撹拌機、オーガー、および/または押し出し機が、上記混合物を、システム1を経て進めるにあたって、ポンプ14を補助するために利用され得る。ポンプ14は、混合物12を、PET粒子を上記溶媒中に懸濁して維持しかつ上記粒子が集塊化してラインを詰まらせるのを防止するために十分大きな粒子速度でシステム1を経て動かすために十分大きな流量で稼動する。停止することなく連続して稼働することによって、ポンプ14は、バッチシステムにおけるように、PETをBHETに変換させる一定速度(時間の関数というよりむしろ、システム1内の位置の関数)において、上記不均質混合物をシステム1を通って流す。
【0016】
必要に応じた第1の熱交換器(予備加熱器)16は、不均質混合物12を予備加熱するために使用される。予備加熱器16は、熱源(例えば、火炎または循環される伝熱流体)によって、不均質混合物12を加熱し得る。または解重合反応後の上記BHETを含む均質溶液は、上記不均質混合物に伝熱するために、および上記プロセスにおいてそれ自体を冷却するために、予備加熱器16において使用され得る。予備加熱器16を利用する実施形態において、不均質混合物12は、ポンプ14から予備加熱器16を通って流れ、次いで、予備加熱した不均質混合物12’は、上記加熱装置の下流の加熱チャンバ18に連続して流入し、これを通って、解重合プロセスを開始する。予備加熱器16の使用に先行する実施形態において、不均質混合物12は、ポンプ14から直接かつ連続して、上記加熱装置の下流の加熱チャンバ18へ流入し、これを通って、解重合プロセスを開始する。
【0017】
上記加熱装置は、熱源20に稼動するように連結された加熱チャンバ18を含み得る。加熱チャンバ18は、上記不均質混合物の温度を少なくとも230℃の反応温度へと上昇させる反応器用熱交換器として実現され得る。上記不均質混合物は、反応熱交換器18において熱源20によって加熱される。熱源20は、数例挙げると、上記不均質混合物を、マイクロ波照射、直火、電熱パイプ(electrically heated pipe)、誘導加熱パイプ(inductively heated pipe)で、またはオーム性に(ohmically)、直接加熱し得る。あるいは、熱源20は、伝熱流体を使用して、上記不均質混合物を間接的に加熱し得る。このような実施形態において、熱源20は、加熱チャンバ18の外部にある上記伝熱流体を直接加熱し得、次いで、上記加熱した伝熱流体は、熱が上記伝熱流体から上記不均質混合物へと伝えられるように、上記不均質混合物を含むラインに隣接する別個のラインにおいて加熱チャンバ18へとポンプ輸送される。このような配列において、熱は、解重合を開始するために、その2つの流体を別個に維持しながら、上記伝熱流体から上記不均質混合物へと伝えられ得る。適切な伝熱流体の例は、加熱した油、熱流体、溶融塩、および蒸気である。
【0018】
加熱チャンバ18の後の保持チューブ22は、反応温度を少なくとも1分間維持して、主にBHETモノマーを含む均質溶液24への、PETを含む上記不均質混合物の変換を完了させる。保持チューブ22は、パイプもしくはチューブの絶縁スプールもしくはコイルによって、またはジャケット付きパイプとして実現され得る。あるいは上記保持チューブは、独立型構成要素というよりむしろ、上記加熱チャンバの一部であり得る。反応は、保持チューブの中で完了される。出てくる均質溶液は、溶媒、使用済触媒、ならびにBHETモノマー、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルを含む液化反応生成物の形態にある解重合したPETを含む。
【0019】
均質溶液24は、それ自体を冷却しかつ入ってくる不均質混合物12を予備加熱するために、必要に応じた予備加熱用熱交換器16を経て連続してポンプ輸送される。背圧レギュレーター26は、システム圧(例えば、100psi~400psi)を、反応温度における上記溶媒の蒸気圧を上回って維持する。
【0020】
背圧レギュレーター26を通って流れた後に、均質溶液24は、冷却されたレザバ30からの冷水または他の冷却用伝熱流体を使用する必要に応じた冷却用熱交換器(冷却装置)28を通って流れて、予備加熱器16が回収しなかったいかなる過剰な熱をも除去する。
【0021】
上記溶液が、50℃を下回る温度(例えば、約20℃~約40℃の間の温度)へと冷却された後、上記溶液は、沈降タンクへと注がれ、室温において、約0.5時間~170時間の間の沈降時間にわたって沈降され、一方液化したBHETモノマー、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルがタンクの底に集まる固体反応生成物34として沈殿する。次いで、上記固体反応生成物は、上記溶媒からデカントされる。デカントした後、上記固体反応生成物は真空濾過され、次いで、上記固体反応生成物を上記溶液中の溶媒および任意の水からさらに分離するためにプレスされる。溶液24中の固体反応生成物34を上記溶媒36から分離する、上記沈降タンクからのデカント、真空濾過、およびプレスは、
図1において、分離器32によって表される。BHETモノマー、BHETオリゴマー、BHET半エステル、および混合エステルを含む固体反応生成物34は後に、新たなバージンPETを形成するために再重合され得る。遠心分離は、デカントおよび濾過の代わりに、またはこれらに加えて使用され得る分離プロセスの別の例である。分離した溶媒36は、再利用するためにミキサー10へと戻して再循環される。
【0022】
従って、上記システムは、不均質混合物12を以下の4つのゾーンを経て動かす: Z1 上記混合物がポンプ14によって上記システムの中に供給される冷たい入り口ゾーン; Z2 上記混合物が予備加熱器16において加熱される予備加熱ゾーン; Z3 上記混合物がその温度を反応温度へと上昇させるために加熱される加熱ゾーン;およびZ4 均質溶液24への上記不均質混合物の変換を完了させるために、上記混合物が上記反応温度において維持される保持ゾーン。均質溶液24は、上記均質溶液が冷却装置28において冷却されるか、または予備加熱器16において入ってくる不均質混合物12に伝熱することによって、冷却ゾーンZ5を経て動かされる。ポンプ 14は、上記不均質混合物の粒子速度を、粒子を懸濁状態で維持するために十分大きいことを担保する上記システムを通る連続流量を維持する。そのようにして、プラスチック粒子は、上記ラインの中で沈降せず、上記システムを詰まらせない。
【0023】
不均質混合物12において懸濁物からのプラスチック粒子の沈降を防止することは、システム1の連続稼働性にとって極めて重要である。解重合プロセスの間に、PET粒子をエチレングリコール中に懸濁して維持するために、不均質混合物12を、システム1を経て少なくとも10cm/sの速度で維持することは必要であるということが、発見された。システム1を経てポンプ輸送されるプラスチック粒子のサイズは、変動し得るが、それらは代表的には、少なくとも1つの寸法が0.1μm~20,000μmの間である。上記粒子を懸濁状態で維持するために、ポンプ14の流量は、システム1を経て少なくとも10cm/sの粒子速度を担保するように設定されるべきであり、20cm/sまたは30cm/sを上回る粒子速度は、安全マージンを提供するために好ましい。上記不均質混合物の速度は、以下の式に従って近似され得る:
不均質混合物の速度=ポンプ流量/パイプの断面積
従って、上記ポンプ流量は、所望の粒子速度および上記混合物がポンプ輸送される上記ライン(パイプまたはチューブ)の断面積の積に等しいように設定され得る。ミキサーが、ポンプ14とレギュレーター26との間のラインに据えられる場合、10cm/sより低い粒子速度が、沈降および詰まりを経験することなく可能である。
【0024】
加熱ゾーンZ3において、加熱チャンバ18は、反応温度)PETに関しては230℃(またはより高い温度へと温度を上昇させて、解重合反応を開始させる。この解重合反応は、保持ゾーンZ4において完了される。保持ゾーンZ4における保持チューブ22の長さLは、その断面積A、ポンプの流量Q、および上記反応温度において上記反応を完了させるために必要とされる保持時間Tに依存する: L=QT/A。上記保持時間は、5分間~10分間の、またはさらには1分間~60分間の範囲に及び得る。上記ゾーンを通って延びているラインの直径は、1cm~10cmであるが、100cm程度に大きい可能性もある。ジャケット付き配管が使用される場合、上記ジャケットの直径は、上記混合物がポンプ輸送される内側パイプの直径の1.1~5.0倍の範囲に及び得る。
【0025】
本発明のある種の実施形態において、上記システムおよび方法は、加熱チャンバ18内の上記不均質混合物を、間接的マイクロ波照射を介して加熱することを提供し得る。間接的マイクロ波照射を利用するシステム1の加熱ゾーン(Z3)の実施形態は、
図3に示される。示される実施形態において、上記加熱装置の加熱チャンバ18は、シェルアンドチューブ型反応器(shell-and-tube reactor)用の熱交換器を含み、上記加熱装置の熱源20は、マイクロ波アセンブリを含む。加熱チャンバ18は、上記不均質混合物が加熱される加熱領域140を含む。加熱チャンバ18がシェルアンドチューブ型反応器用熱交換器であることによるこのバージョンにおいて、加熱領域140は、加熱チャンバ18を通って入り口ポート180から出口ポート190への通路を画定するチューブ160を含む。チューブ160は、熱伝導性材料(例えば、2つの例として、銅またはステンレス鋼)から作製される。そしてチューブ160によって画定される材料通路は、加熱チャンバ18を真っ直ぐに通る1つの短い経路として
図3に図示されるが、マルチループ螺旋経路、マルチパス蛇行経路、または他の曲がりくねった経路をたどって、上記熱交換器における上記材料の滞留時間を増大させるより遙かに長い通路が、可能である。
【0026】
図3のシェルアンドチューブ型熱交換器の例において、不均質混合物12’は、上記加熱チャンバ18の中へと、かつここを経てポンプ輸送される。導管は、入り口ポート180においてチューブ160に接続する。出口ポート190において加熱チャンバ 18を出る上記加熱した材料は、保持チューブ22を経て下流の処理、すなわち、冷却および回収へと運ばれる。その間に、上記伝熱流体(HTF)は、入り口240を経て加熱チャンバ18に入り、出口250を経て出る。HTFのための通路260は、入り口240から出口250へと延びる。
図3の例におけるHTF通路260は、チューブ160によって取り込まれなかった加熱チャンバ18の内側にある残りの容積である。よって、HTF通路260は、上記チューブの材料通路160によって画定される加熱領域140に隣接し、取り囲む。そのようにして、熱は、上記HTFから不均質混合物12’へと伝えられる。上記HTFは、HTFポンプ280によって、加熱チャンバ18を経て、上記加熱チャンバの外部にある導管300を介してポンプ輸送される。導管300は、閉鎖ループ再循環システムにおける入り口240および出口250に接続する。HTFポンプ280は、モーター320によって駆動され、そのモーターの速度は、可変周波数ドライブ(variable-frequency drive)(VFD)340によって制御される。上記HTFは、導波管400によってマイクロ波印加装置360に接続されたマイクロ波生成器380を含むマイクロ波アセンブリによって加熱される。選り抜きの実施形態において、マイクロ波印加装置360は、Industrial Microwave Systems, L.L.C.,(Morrisville, NC, U.S.A)によって製造および販売されるCHSシリンダー型加熱システムである。導管300のマイクロ波透過チューブセグメントにおいて印加装置360を通過する上記HTFは、導波管400を経て上記印加装置へとマイクロ波生成器380(例えば、マグネトロン)によって伝播されたマイクロ波によって照射される。マイクロ波は、上記HTFが加熱チャンバ18の中に再度入って、材料を加熱する前に、印加装置36を通過するときに、上記HTFを加熱する。入り口240を通って入る上記HTFの温度は、コントローラー440(例えば、プログラム可能なコントローラーまたは他のプログラム可能なコンピューター)に温度シグナルを送る温度センサー420によってモニターされる。コントローラー440は、上記HTF温度が低下しすぎるかまたは上昇しすぎるときに、マイクロ波出力を増大または低下させる。コントローラー440はまた、VFD34を制御することによって、必要な場合にポンプ速度を調節する。誘電体材料におけるマイクロ波の浸透深度は、誘電正接(dielectric loss tangent)(tan δ)の増大とともに減少することから、上記マイクロ波印加装置におけるチューブの直径は、上記HTFの完全な加熱を担保するために選択されるべきである。100W~100kWの間の電力出力を伴うマイクロ波生成器は、好ましくは、マイクロ波印加装置における上記HTFを照射して、その温度を上昇させて、熱交換器において標的材料を加熱するために使用される。
【0027】
間接的マイクロ波照射を利用する、記載されるシステムおよび方法は、正確に配合されかつマイクロ波を効率的に吸収しかつマイクロ波を熱に変換するために、特定のマイクロ波周波数に調整されたHTFを使用する。マイクロ波加熱は、上記加熱されている材料の誘電特性に大きく依拠する。材料が電磁エネルギーを熱に変換する能力は、温度、マイクロ波周波数、および材料の損失係数(tan δ)に依存する。上記損失係数は、以下の式によって決定される:
tan δ=ε”/ε’
材料の誘電率(ε’)は、材料が電場によって分極される能力を定量化する。材料の誘電損(ε”)は、上記材料が電磁エネルギーを熱に変換する能力を定量化する。高いtan δ値を有する材料は、マイクロ波を効率的に吸収し、従って、迅速な加熱を促進することが公知である。誘電特性(ε’、ε”、およびtan δ)は、温度およびマイクロ波周波数とともに劇的に変化し得るが、最も重要なことには、上記加熱されている材料を構成する基本的成分とともに劇的に変化し得る。
【0028】
溶媒中に溶解されたマイクロ波吸収体を含むHTFは、十分な誘電特性、ポンパビリティー(pumpability)、および熱安定性を有する流体を提供して、マイクロ波照射での標的材料の効率的な間接的加熱を可能にすることが発見された。例えば、上記マイクロ波吸収体は、上記HTFの誘電正接(tan δ)を増大させかつ上記HTFをマイクロ波加熱に適合させる能力がある塩を含み得る。1つの実施形態において、上記マイクロ波吸収体は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、およびベリリウム塩を含む。好ましくは、上記マイクロ波吸収体は、NaClまたはKIを含む。これらの塩のうちの1またはこれより多くを溶解し得る適切な溶媒およびそれらのブレンドとしては、水、エチレングリコール、グリセロール、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールのより高次のオリゴマー、シリコーン、ポリオール、およびエリスリトールが挙げられる。
【0029】
1つの実施形態において、上記HTF溶液は、10Hz~10GHzの間のマイクロ波周波数範囲にわたって、ならびに特に、915MHzおよび2.45GHzの商用のマイクロ波周波数において、約0.02~20の間の誘電正接(tan δ)を生じるために十分なマイクロ波吸収添加剤を含む。上記HTFは、一般的添加剤(例えば、貯蔵寿命を増大させる緩衝液)またはHTFの使用期限が切れた時を示すpH指示薬をさらに含み得る。
【実施例】
【0030】
以下の実施例(行われた実験および達成された結果を含む)は、例証目的で提供されるに過ぎず、本発明を限定すると解釈されるべきではない。高沸点溶媒;すなわち、エチレングリコール(沸点=197℃)およびグリセロール(沸点=290℃)中に溶解した容易に入手可能なアルカリ金属塩を使用して、試験を行った。塩の添加は、マイクロ波エネルギーが、吸収され、熱に変換されるように、得られたHTF溶液の誘電特性を改善した。試験した各塩を、0.5mol/Lの濃度へと配合して、100mLの溶媒中で同じモル濃度(イオン数)を維持した。例えば、2.922gの塩化ナトリウム(NaCl)を、100mLのエチレングリコール中に溶解して、0.5Mのモル濃度を与えた。ヨウ化カリウム(KI)に関しては、同じモル濃度を、100mLのエチレングリコール中に8.300gで達成した。
【0031】
実施例1
実施例1は、HTF溶液の誘電正接(tan δ)に対するマイクロ波周波数、マイクロ波吸収体選択、および溶媒選択の効果を示す。各0.5M HTF配合物の誘電特性と溶媒としてのエチレングリコールとを比較するために、Hewlett-Packard 8753E Network Analyzerを、9507B Dielectric Probeに取り付けた。上記プローブを、100mLの各HTF配合物の中に沈め、その誘電正接(tan δ)を、約175℃において測定した。915MHzおよび2.45GHzのマイクロ波周波数での試験の結果を、表Aに示す。上記試験は、上記ナトリウム塩およびカリウム塩がリチウム塩より大きく誘電特性を改善したことを示す。
【表1】
上記試験を、約250℃の100mL グリセロール溶媒中0.5Mのナトリウム塩およびカリウム塩に関して反復した。表Bに示される結果は、約1.6およびこれより高い誘電正接を示す。
【表2】
試験した塩は全て、得られたHTF溶液の誘電正接(tan δ)を改善した。その低コストおよび入手しやすさが原因で、NaClは、魅力的な候補である。より高価ではあるが、酸性溶液の存在下でステンレス鋼の腐食を阻害する能力が原因で、KIは魅力的である。
【0032】
実施例2
実施例2は、上記HTF溶液の誘電正接(tan δ)に対して塩濃度を増大させる効果を示す。これらの試験に関して、4種の異なる塩を、それらの最大溶解度において約175℃のエチレングリコールに添加した。上記4種の塩を添加したHTF溶液に関しておよび純粋なエチレングリコール(EG)に関して得られた誘電正接は、915MHzのマイクロ波周波数に関して表Cに示される。
【表3】
【0033】
実施例3
実施例3は、誘電正接(tan δ)はモル濃度に伴って増大するが、0.05M~0.5Mの間のモル濃度範囲が、上記HTFのより深い浸透深度およびより均一の加熱を生じることを示す。表D1およびD2において表にした結果は、915MHzのマイクロ波エネルギーで加熱したEG中での0.1Mおよび0.5M濃度のNaClに関して、温度に伴う浸透深度D
pの変化を示す。300.0℃の温度を下回る値は全て、測定値または測定値から計算された値である。それらの値を使用して、HTF流体の温度の関数として、最小二乗曲線フィットを使用して、データに浸透深度の曲線をフィットさせた。次いで、その曲線を使用して、300.0℃での浸透深度を外挿した。2つの最小二乗曲線フィットを使用した:(a)指数;および(b)べき乗則(この場合には、二乗則)。
【表4】
結果は、0.1M濃度が、0.5M濃度より大きな浸透深度を提供したことを示す。2.5cmの直径を有する導管に関しては、約0.1MのNaCl濃度に関する浸透深度D
pは、中心部へとおよそ半分放射状に延びた。それらのような浸透深度、すなわち、導管の直径の約1/4の浸透深度は、上記HTFの十分な加熱を提供するはずである。しかし、上記マイクロ波印加装置を経て上記HTFを運ぶマイクロ波透過チューブの直径は、高モル濃度の塩濃度が徹底的に加熱されるために十分薄く作製され得る。
【0034】
実施例4
記載される間接的加熱システムおよび方法は、化学プロセスを含む多くの加熱適用において使用され得る。例えば、熱は、化学反応において多数の重要な役割を果たす。いくつかの場合には、反応は、反応物における原子間の結合を壊し始めるために、開始に熱を必要とする。熱はまた、反応が起こる速度および反応の方向を規定し得る。
【0035】
例示によれば、本発明の間接的加熱システムおよび方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を化学的にリサイクルするために使用され得る。PETは、最も頻繁に使用される消費者用プラスチックのうちの1つである。PETから作製される日用品としては、以下が挙げられる: 水用ボトル、炭酸飲料用ボトル、食品パッケージ、衣類、敷物材料および家具用充填剤。米国単独で年間200万トン超のPETプラスチックが消費され、需要は毎年増大している。PETは石油化学製品から製造されることから、この需要は、地域の埋め立て地にますます負荷をかけ、環境に対する負荷が増大し続けている。PETの解糖は、最も広く研究されている化学的リサイクルプロセスのうちの1つである。解糖によるPET解重合は、PETおよびエチレングリコールを触媒の存在下で加熱することを要する。これは、反応性モノマー(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートモノマー(BHET))へのPETの分解を生じ、このモノマーは、次いで、精製され得、新たなバージンPETを形成するために再重合され得る。
【0036】
ParrottのWO 2017/087752は、マイクロ波照射、ならびに触媒およびマイクロ波吸収体を含む混合触媒システムを使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)を化学的にリサイクルする方法を開示する。しかし、マイクロ波加熱は、加熱されている材料の誘電特性に大きく依拠する。従って、消費者使用後のポリエチレンテレフタレート(pcPET)の特性(例えば、純度)および濃度の変動性は、解糖プロセスの間のエネルギー消費において顕著な変動性をもたらし得る。なぜなら直接的加熱は、不均質反応混合物全体の本質的誘電特性に専ら依拠するからである。
【0037】
本発明の間接的マイクロ波加熱システムは、所定の誘電特性を有するHTFを使用し、それによって、マイクロ波照射加熱プロセスの間に消費されるエネルギーを標準化し、優れた温度制御を可能にする。上記システムが、pcPETをその反応性中間体であるBHETに化学分解するために使用される場合、上記pcPETは、最初に、不均質反応混合物を作製するために、エチレングリコールおよび触媒と混合され得る。適切な触媒の例としては、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、酢酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、およびそれらの触媒の組み合わせが挙げられる。次いで、上記不均質反応混合物は、熱交換器の加熱領域を経てポンプ輸送され得る。その間に、HTF(溶媒中に溶解されたマイクロ波吸収体を含む)は、マイクロ波印加装置によって加熱され、次いで、上記熱交換器の第1の通路を通過する。上記反応器用熱交換器(すなわち、加熱チャンバ18)の第1の通路は、好ましくは、上記熱交換器の加熱領域に隣接し、上記反応混合物が上記加熱領域を通過するときに、上記不均質反応混合物がHTFによって加熱されることを可能にする。上記HTFの温度および上記熱交換器を通る流量は、上記反応混合物が、BHETを含む反応生成物を生成するために十分な温度へと加熱されるように調節され得、ここで例えば、それらのパラメーターは、上記反応生成物において、少なくとも90重量%のpcPETがBHETに変換されるか、または10重量%以下のpcPETがモノ(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(MHET)に変換されるように調節される。例えば、上記反応混合物は、エチレングリコールの沸点より高い温度または少なくともPETの融解点の温度へと加熱され得る。次いで、得られるBHETモノマーおよびBHETオリゴマーは、精製され得、新たなバージンPETを形成するために再重合され得る。そして塩はHTF中にあり、PET混合物中にはないので、塩をBHETから分離する際の困難は、回避される。
【0038】
本明細書に示される本発明の多くの改変および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に示される教示の利益を有する、これらの発明が属する分野の当業者に想起される。従って、本発明が、開示される具体的実施形態に限定されるべきではなく、改変および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることは、理解されるべきである。具体的な用語が本明細書で使用されるが、それらは、一般的かつ記述する意味において使用されるに過ぎず、限定目的で使用されない。特に、間接的マイクロ波加熱を利用する開示されるシステムに関して、他のバージョンおよび適用は、当業者によって即座に想起される(例えば、多数の印加装置を使用して、上記HTFをより大きなマイクロ波加熱エネルギーに供する)。低沸点溶媒(例えば、水(沸点=100℃))は、エチレングリコールまたはグリセロールを使用するHTF配合物より低い温度プロセスにおいて材料を加熱するために、HTF溶液において使用され得る。上記HTF中で上記塩のうちの1またはこれより多くとともに使用され得る他の溶媒の例としては、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールのより高次のオリゴマー、シリコーン、エリスリトール、およびポリオールが挙げられる。溶媒中に溶解された塩の代わりに、上記HTFは、基本流体(例えば、溶媒)中に懸濁したマイクロ波吸収体として、ナノ粒子から構成され得る。よって、これらの数例が示唆するように、特許請求の範囲は、詳細に記載される例示的バージョンに限定されることは意味されない。