(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】生鮮野菜の褐変防止処理方法、及び、生鮮野菜用褐変防止処理液
(51)【国際特許分類】
A23B 7/157 20060101AFI20221024BHJP
A23B 7/154 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A23B7/157
A23B7/154
(21)【出願番号】P 2016149084
(22)【出願日】2016-07-29
【審査請求日】2019-04-05
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591087703
【氏名又は名称】株式会社アロンワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】長村 和典
(72)【発明者】
【氏名】前崎 祐二
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】大久保 元浩
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-299210(JP,A)
【文献】特開平7-107900(JP,A)
【文献】特開平8-024865(JP,A)
【文献】特許第2949322(JP,B2)
【文献】食品と開発,1996,vol.31,no.7,p.17-21
【文献】食品と科学,1983,vol.26,no.1,p.39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00-7/16
A23L 19/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解して得られたpH12以上の強アルカリ性の
電解アルカリイオン水を8~12容量%含有し、かつ、エタノールを3~7容量%含有する水溶液であることを特徴とする生鮮野菜用褐変防止処理液。
【請求項2】
更にイソチオシアネートを10~200ppm添加したことを特徴とする、請求項1に記載の生鮮野菜用褐変防止処理液。
【請求項3】
結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解して得られたpH12以上の強アルカリ性の
電解アルカリイオン水を8~12容量%含有し、かつ、エタノールを3~7容量%含有する水溶液である生鮮野菜用褐変防止処理液に、洗浄及びカット済みの生鮮野菜を浸漬することを特徴とする生鮮野菜の褐変防止処理方法。
【請求項4】
前記生鮮野菜用褐変防止処理液として、更にイソチオシアネートを10~200ppm添加したものを用いることを特徴とする、請求項
3に記載の生鮮野菜の褐変防止処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カット済み生鮮野菜を冷蔵保存した場合に生じる褐変を抑制し乃至は防止するための方法、及び、そのために使用する褐変防止処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、カットレタス等のカット済みの生鮮野菜が、一般消費用及び業務用として広く流通しているが、このようなカット済みの生鮮野菜においては、褐変が生じやすいという問題がある。生鮮野菜において褐変が生じると商品価値が低下してしまうため、従来より生鮮野菜の加工時等において、褐変を抑制乃至は防止するための各種の対策(褐変防止方法)が講じられている。
【0003】
例えば、50℃程度の低温の湯や80~100℃程度の熱水又は蒸気を用いて、カット済み生鮮野菜に対して加熱処理を行い、表面の蝋状物質を溶かして殺菌する方法や、次亜塩素酸Na水溶液等を用いて洗浄する方法等が実施されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-119207号公報
【文献】特開2006-296325号公報
【文献】特開2015-144594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の褐変防止方法は、総じて処理に時間がかかるという問題があり、また、湯或いは蒸気を用いる場合には、加熱のためのエネルギーコストや、大掛かりな専用の機械設備が必要になるという問題がある。
【0006】
また、次亜塩素酸Na水溶液を用いる場合には、低濃度で使用すると十分な褐変防止効果が得られないという問題がある一方で、ある程度高い濃度で使用すると食味に悪影響を与えてしまうという問題があり、浸漬後に洗浄工程が必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、極めて簡単に、しかも短時間で実施することができ、また、食味に悪影響を与えることなく、かつ、従来方法と比較して十分な褐変防止効果を期待することができる生鮮野菜の褐変防止処理方法、及び、そのための処理液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生鮮野菜用褐変防止処理液は、電解アルカリイオン水を8~12容量%含有し、かつ、エタノールを3~7容量%含有する水溶液であることを特徴としている。尚、この水溶液に、更にイソチオシアネートを10~200ppm添加することが好ましく、また、電解アルカリイオン水として、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解して得られたpH12以上の強アルカリ性のものを用いることが好ましい。
【0009】
本発明に係る生鮮野菜の褐変防止処理方法は、電解アルカリイオン水を8~12容量%含有し、かつ、エタノールを3~7容量%含有する水溶液である生鮮野菜用褐変防止処理液に、洗浄及びカット済みの生鮮野菜を1~10分間(より好ましくは2~5分間)浸漬することを特徴としている。尚、生鮮野菜用褐変防止処理液として、更にイソチオシアネートを10~200ppm添加したものを用いることが好ましく、また、電解アルカリイオン水として、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解して得られたpH12以上の強アルカリ性のものを用いた処理液を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る生鮮野菜の褐変防止処理方法は、大掛かりな専用の設備を必要とせず、常温で実施できるためエネルギーコストもかからず、また、処理液への浸漬処理後における再度の洗浄工程は不要であるため極めて簡単に、しかも短時間(1~10分間)で実施することができる。更に、食味に悪影響を与えることなく、かつ、従来方法と比較して十分な褐変防止効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1において、エタノール濃度が0%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図2】
図2は、実施例1において、エタノール濃度が0.5%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図3】
図3は、実施例1において、エタノール濃度が1%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図4】
図4は、実施例1において、エタノール濃度が2%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図5】
図5は、実施例1において、エタノール濃度が5%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図6】
図6は、実施例1において、エタノール濃度が10%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図7】
図7は、実施例1において、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用した、冷蔵(5℃)保存開始後24時間経過時点のレタスの写真である。
【
図8】
図8は、実施例1において、エタノール濃度が0%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図9】
図9は、実施例1において、エタノール濃度が0.5%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図10】
図10は、実施例1において、エタノール濃度が1%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図11】
図11は、実施例1において、エタノール濃度が2%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図12】
図12は、実施例1において、エタノール濃度が5%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図13】
図13は、実施例1において、エタノール濃度が10%、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図14】
図14は、実施例1において、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図15】
図15は、実施例2において、電解アルカリイオン水の濃度が10%、エタノールの濃度が0~10%、イソチオシアネートが0~200ppmの15種類の処理液を使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図16】
図16は、実施例2において、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用した、冷蔵(5℃)保存開始後96時間経過時点のレタスの写真である。
【
図17】
図17は、実施例3において、処理液A(比較例)、処理液B(本発明)、処理液C(比較例)に浸漬した後、冷蔵(10℃)保存開始後0~144時間経過時点のレタスの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、「生鮮野菜用褐変防止処理液」として実施することができるほか、「生鮮野菜の褐変防止処理方法」としても実施することができる。
【0013】
本発明に係る「生鮮野菜用褐変防止処理液」は、電解アルカリイオン水を8~12容量%、エタノールを3~7容量%含有する水溶液であることを特徴とするものであり(第一実施形態)、或いは、電解アルカリイオン水を8~12容量%、エタノールを3~7容量%含有するほか、更にイソチオシアネート(カラシ抽出物の主成分であるアリルイソチオシアネート等)を10~200ppm含有する水溶液であることを特徴とするものである(第二実施形態)。
【0014】
この褐変防止処理液において使用する電解アルカリイオン水としては、化学的なアルカリ剤を用いることなく、物理的に水酸イオンを多くすることにより、酸化還元電位でいうところのアルカリ性を呈するものであれば、どのようなものであっても良いが、結晶性粘土鉱物が溶解した原料水を電気分解して得られたpH12以上の強アルカリ性のもの(特に、特許第2949322号の請求項1に記載されている電解アルカリイオン水)を使用することが好ましい。
【0015】
本発明に係る「生鮮野菜の褐変防止処理方法」は、洗浄及びカット済みの生鮮野菜を、上記第一実施形態又は第二実施形態の生鮮野菜用褐変防止処理液に1~10分間浸漬することを特徴とするものである(第三実施形態)。
【0016】
本発明の第一実施形態に係る生鮮野菜用褐変防止処理液を用いて、洗浄及びカット済みの生鮮野菜に対して浸漬処理を行った場合(第三実施形態に係る方法を実施した場合)、処理した生鮮野菜を冷蔵保存した際に、褐変を比較的長期(少なくとも6日間)にわたって好適に抑制することができる。また、本発明の第二実施形態に係る生鮮野菜用褐変防止処理液を用いて、洗浄及びカット済みの生鮮野菜に対して浸漬処理を行った場合(第三実施形態に係る方法を実施した場合)には、より効果的に褐変を抑制することができる。尚、処理液中への浸漬時間については、1分間未満であると十分な効果が期待できず、また、10分間を超えて浸漬処理を継続しても、それ以上の効果は期待できないため、1~10分間とすることが好適であり、2~5分間とすることが更に好ましい。
【実施例1】
【0017】
本発明の第一実施形態に係る生鮮野菜用褐変防止処理液の有効性を確認すべく、各種の処理液(本発明及び比較例)を用意して、カット済み生鮮野菜の浸漬処理を行い、約5℃で冷蔵した場合の褐変防止効果等について検証を行った。具体的には、カットして水道水で3分間流水洗浄した同一コンディションの生鮮レタスの葉(芯に近い部分、中間部分、及び、葉先部分)を、一つのグループが約40g程度となるように小分けし、各種の処理液にそれぞれ2分間浸漬し、ペーパータオルで表面の水分を拭き取り、チャック付きポリ袋に収容、密閉し、約5℃で冷蔵保存し、外観の経時変化(24時間後、及び、96時間後)を観察した。また、ポリ袋に収容する際に、一部を試食して食味(アルコール臭、苦味、渋味等)を確認した。
【0018】
尚、処理液としては、電解アルカリイオン水の濃度を5段階(0%、0.1%、1%、10%、20%)に変化させるとともに、エタノールの濃度を6段階(0%、0.5%、1%、2%、5%、10%)に変化させることによって30種類の水溶液(本発明及び比較例)をそれぞれ200mlずつ用意して使用したほか、従来例(比較例)として、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を使用した。
【0019】
下記の表1は、電解アルカリイオン水の濃度及びエタノールの濃度を変化させた上記30種類の処理液(本発明及び比較例)に浸漬し、水分を拭き取ったレタスを試食して食味を確認した結果を纏めたものである。
【表1】
【0020】
上表の通り、電解アルカリイオン水濃度が20%以上の処理液にレタスを浸漬すると、渋味(電解アルカリイオン水に由来すると推測される)が感じられ、問題があるということがわかった。また、エタノール濃度が10%以上の処理液に浸漬すると、苦味や刺激臭(エタノールに由来すると推測される)が感じられ、問題があるということがわかった。従って、食味の観点からは、処理液として電解アルカリイオン水濃度20%未満、エタノール濃度10%未満のものを使用すべきであることが確認された。
【0021】
更に、処理液におけるエタノール濃度を2%とした場合であって、電解アルカリイオン水濃度を0%とした場合には、苦味や刺激臭が僅かに感じられたが、電解アルカリイオン水を0.1%以上配合することにより、苦味や刺激臭の問題が改善されることがわかった。また、処理液におけるエタノール濃度を5%とした場合であって、電解アルカリイオン水濃度を0%とした場合には、苦味や刺激臭が顕著に感じられたが、電解アルカリイオン水を0.1~1%配合することにより、苦味や刺激臭が和らげられ、電解アルカリイオン水を10%配合することにより、苦味や刺激臭の問題が改善されることがわかった。
【0022】
図1~
図7は、各種の処理液に浸漬した後、冷蔵保存を開始してから24時間経過時点のレタスの外観を撮影した写真である。より詳細には、
図1は、エタノール濃度が0%で、電解アルカリイオン水濃度が0~20%の5種類の処理液を使用したレタス(芯に近い部分、中間部分、葉先部分)の写真である。
図2は、エタノール濃度を0.5%とした5種類の処理液(電解アルカリイオン水濃度のバリエーションについては
図1の例と同様。以下、
図6の例まで同じ。)を使用したレタスの写真、
図3は、エタノール濃度を1%とした5種類の処理液を使用したレタスの写真、
図4は、エタノール濃度を2%とした5種類の処理液を使用したレタスの写真、
図5は、エタノール濃度を5%とした5種類の処理液を使用したレタスの写真、
図6は、エタノール濃度を10%とした5種類の処理液を使用したレタスの写真である。また、
図7は、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用したレタスの写真である。
【0023】
下記の表2は、
図1~
図7に示すレタスの部位毎の外観(褐変の程度)の評価点、及び、総合評価を纏めたものである。尚、「部位毎の外観の評価点」については、次のような基準に従って判定した。
・褐変が生じていないもの → 0点
・ごく僅かに褐変が認められたもの → 1点
・僅かに褐変が認められたもの → 2点
・やや明確に褐変が認められたもの → 3点
・明確に褐変が認められたもの → 4点
・顕著に褐変が認められたもの → 5点
また、「総合評価」については、部位毎の外観の評価点を加算し、合計点が1点以下のものを「○」、2点のものを「△」、3点以上のものを「×」とした。
【表2】
【0024】
上表の通り、電解アルカリイオン水濃度が20%の処理液、又は、エタノール濃度が5%以上の処理液を使用した場合において、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用した場合と比較して、褐変の発生を効果的に抑制できることが確認された。
【0025】
図8~
図14は、冷蔵保存を開始してから96時間(4日)経過時点のレタスの外観を撮影した写真である。
【0026】
下記の表3は、
図8~
図14に示すレタスの部位毎の外観(褐変の程度)の評価点、及び、総合評価を纏めたものである。尚、「部位毎の外観の評価点」の判定基準は、表2における場合と同様である。一方、「総合評価」については、部位毎の外観の評価点を加算し、合計点が5点以下のものを「○」、6~10点のものを「△」、11点以上のものを「×」とした。
【表3】
【0027】
上表の通り、エタノール濃度が5%以上の処理液を使用した場合には、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用した場合と比較して、褐変の発生を効果的に抑制できることが確認された。
【0028】
下記の表4は、表1~表3に示す評価の結果(処理液として次亜塩素酸Na150ppm水溶液を使用した場合の評価を除く)を纏めたものである。尚ここでは、三つの評価項目(表1に示す食味の評価、表2に示す24時間経過時の外観の評価、及び、表3に示す96時間経過時の外観の評価)のうち、一つでも「×」を含むものについては最終総合評価を「×」とし、一つでも「△」を含むものについては「△」とし、すべてが「○」となったものについては「○」とした。
【表4】
【0029】
上表の通り、エタノール濃度が2%以下の処理液を使用した場合には、十分な褐変防止効果を得ることができないことが判った。また、エタノール濃度が10%の処理液を使用した場合、主として食味の問題から低調な評価となった。また、処理液におけるエタノール濃度を5%とした場合において、電解アルカリイオン水の濃度を1%以下とした場合、及び、20%以上とした場合も、食味の問題をクリアできず、又は、十分な褐変防止効果を得ることができないことが判った。一方、処理液におけるエタノール濃度を5%とした場合において、電解アルカリイオン水の濃度を10%とすることにより、十分な褐変防止効果を得ることができ、また、食味の問題もクリアできることが確認された。
【0030】
尚、表4に纏めた結果をもとに、電解アルカリイオン水濃度10%、エタノール濃度5%の処理液を中心として、各要素を±2%変動させて、つまり、電解アルカリイオン水濃度を8~12%、エタノール濃度を3~7%とした処理液(電解アルカリイオン水濃度10%、エタノール濃度5%としたものを除く)について更に試験を行ったところ、電解アルカリイオン水濃度10%、エタノール濃度5%の処理液とほぼ同様の結果となった。
【実施例2】
【0031】
本発明の第二実施形態に係る生鮮野菜用褐変防止処理液の有効性を確認すべく、各種の処理液(本発明及び比較例)を用意して、生鮮野菜の浸漬処理を行い、約5℃で冷蔵した場合の褐変防止効果等について検証を行った。具体的には、カットして水道水で3分間流水洗浄した生鮮レタスの葉を、各種の処理液に2分間浸漬し、ペーパータオルで表面の水分を拭き取り、チャック付きポリ袋に約40gずつ収容、密閉し、冷蔵(約5℃)保存し、外観の経時変化(96時間後)を観察した。また、冷蔵開始から96時間経過時点で一部を試食して食味(アルコール臭、苦味、渋味等)を確認した。
【0032】
尚、処理液としては、電解アルカリイオン水の濃度を10%に固定し、エタノールの濃度を3段階(0%、5%、10%)に変化させるとともに、アリルイソチオシアネート(イソチオシアン酸アリル)を5段階(0ppm、10ppm、50ppm、100ppm、200ppm)に変化させて添加することによって15種類の水溶液をそれぞれ200mlずつ用意して使用したほか、従来例として、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を使用した。
【0033】
図15は、上記15種類の処理液に浸漬した後、冷蔵保存を開始してから96時間経過時点のレタスの外観を撮影した写真である。また、
図16は、次亜塩素酸Na150ppm水溶液を処理液として使用し、浸漬後、冷蔵保存を開始してから96時間経過時点のレタスの外観の写真である。
【0034】
下記の表5は、
図15、
図16に示すレタス(上記16種類の処理液に浸漬し、冷蔵保存を開始してから96時間経過時点のレタス)を試食して食味を確認した結果と、各レタスの外観(芯に近い部分、及び、葉部分(中間部分及び葉先部分)についての褐変の程度)の評価点、及び、総合評価を纏めたものである。尚、「外観の評価点」の判定基準は、表2における場合と同様である。一方、「総合評価」については、食味に問題があるもの、又は、外観の評価点を加算した合計点が9点以上のものを「×」、食味に問題がなく、かつ、外観の評価点の合計点が6~8点のものを「△」、5点以下のものを「○」、3点以下のものを「◎」とした。
【表5】
【0035】
試食した結果、エタノール濃度を0%としたグループの食味については、いずれも特に問題はなく、エタノール濃度を5%としたグループにおいては、いずれもレタス自体の甘味が感じられた。一方、エタノール濃度を10%としたグループにおいては、アルコールの苦味が感じられ、問題があると判定された。外観(褐変の程度)については、エタノール濃度を5%としたグループにおいて、アリルイソチオシアネートを10ppm以上添加した場合に、アリルイソチオシアネートを添加しなかった場合と比べて、より効果的に褐変を防止できることが確認された。尚、アリルイソチオシアネートの代わりに、他のイソチオシアネート(天然抽出物又は合成物)を添加した場合も、同様の効果が期待できると考えられる。
【実施例3】
【0036】
本発明の第二実施形態に係る生鮮野菜用褐変防止処理液の有効性を確認すべく、各種の処理液(本発明及び比較例)を用意して、生鮮野菜の浸漬処理を行い、約10℃で冷蔵した場合の褐変防止効果等について検証を行った。具体的には、カットして水道水で3分間流水洗浄した生鮮レタスの葉を、各種の処理液に2分間浸漬し、ペーパータオルで表面の水分を拭き取り、シャーレに約30~40gずつ収容し、約10℃で冷蔵保存し、外観の経時変化(0時間後、24時間後、96時間後、144時間後)を観察した。
【0037】
尚、処理液としては、次亜塩素酸Na150ppm水溶液(処理液A)(比較例)と、電解アルカリイオン水濃度10%、エタノール濃度4.5%の水溶液にアリルイソチオシアネート100ppmを添加したもの(処理液B)(本発明)、及び、エタノール濃度4.5%の水溶液にアリルイソチオシアネート100ppmを添加したもの(処理液C)(比較例)の3種類をそれぞれ200mlずつ用意して使用した。
【0038】
図17は、上記3種類の処理液A~Cに浸漬した後、冷蔵保存(約10℃)を開始してから0時間(処理直後)、24時間、96時間、及び、144時間経過時点のレタスの外観をそれぞれ撮影した写真である。尚、次亜塩素酸Na150ppm水溶液(処理液A)(比較例)を用いた試験においては、同水溶液に2分間浸漬した後、水道水に5分間浸漬してから冷蔵保存を行った。
【0039】
下記の表6は、
図17に示すレタスの外観の観察結果を纏めたものである。
【表6】
【0040】
上表の通り、本発明に係る処理液B(電解アルカリイオン水濃度10%、エタノール濃度4.5%の水溶液にアリルイソチオシアネート100ppmを添加したもの)を使用した場合には、10℃で冷蔵保存した場合でも、少なくとも6日間にわたって効果的に褐変を抑制できることが確認された。また、本発明に係る処理液Bを使用した場合には、処理液A(次亜塩素酸Na150ppm水溶液)、及び、処理液C(エタノール濃度4.5%の水溶液にアリルイソチオシアネート100ppmを添加したもの)を使用した場合と比べて、より効果的に褐変を抑制できることが確認された。
【0041】
尚、上記実施例1~3においては、生鮮野菜として「レタス」を用いた場合の試験結果を一例として説明したが、本発明の適用対象はレタスに限定されるものではなく、キャベツやその他の葉物生鮮野菜、或いは、大根等の根菜類や、その他の生鮮野菜類においても、同様の褐変防止効果を期待することができる。