(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】発毛及び/又は育毛用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20221024BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20221024BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20221024BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20221024BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221024BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20221024BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/63
A61K8/98
A61K31/685
A61K31/704
A61P17/14
A61Q7/00
(21)【出願番号】P 2020113072
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2020-07-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599035339
【氏名又は名称】株式会社 レオロジー機能食品研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】藤野 武彦
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 志郎
(72)【発明者】
【氏名】本庄 雅則
(72)【発明者】
【氏名】山下 豊春
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】鳥居 敬司
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246279号公報(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1756536号明細書(CN,A)
【文献】特開2019-162042号公報(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106666169号明細書(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, A61K 31/00-31/80, A61K 35/00-35/768, A61P 17/00-17/18, A61Q 7/00-7/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステリルグルコピラノシドと、プラズマローゲンとを含有することを特徴とする発毛及び/又は育毛用組成物
であって、
前記ステリルグルコピラノシドが下記一般式(I)で表される化合物であり、
【化1】
(式中、Zは、コレステロールを示す。)
前記プラズマローゲンがエタノールアミン型プラズマローゲンである、前記組成物。
【請求項2】
前記プラズマローゲンが動物組織由来のものであることを特徴とする
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記動物組織が、貝類、ホヤ及び鳥類から選ばれる動物の組織であることを特徴とする
請求項2記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発毛及び/又は育毛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮増殖因子(VEGF;vascular endothelial growth factor)は、血管内皮細胞に特異的に働いてその増殖を促し、新生血管の形成を促進する。新生血管の形成を促進することで、創傷治療や、発毛及び/又は育毛促進を図ることができる。
【0003】
VEGFの発現を促進し、発毛及び/又は育毛効果を有する物質として、例えば、シクロペンタノヒドロフェナントレン環の3位にステロール残基が結合した構造を有するステリルグルコピラノシドが提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、抗酸化作用を有するリン脂質の一種で、グリセロリン脂質の一つであるプラズマローゲンは、神経新生の促進作用や、リポポリサッカロイド(LPS)による神経炎症の抑制作用、脳内アミロイドβ(Aβ)タンパクの蓄積の抑制作用等を有することが知られており、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、統合失調症などの脳神経病において効果があるといわれている。例えば、非特許文献1では、ホタテ由来精製プラズマローゲンを投与した患者において、軽度アルツハイマー病の記憶機能を改善することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Fujino T.et al, “Efficacy and Blood Plasmalogen Changes by Oral Administration of Plasmalogen in Patients with Mild Alzheimer's Disease and Mild Cognitive Impairment: A Multicenter, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Trial” EBioMedicine, [17] (2017) 199-205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現促進を図る組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ステリルグルコピラノシドにプラズマローゲンを組み合わせることにより、血管内皮増殖因子(VEGF)の発現をより促進させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]ステリルグルコピラノシドと、プラズマローゲンとを含有することを特徴とする血管新生促進用組成物。
[2]ステリルグルコピラノシドと、プラズマローゲンとを含有することを特徴とする発毛及び/又は育毛用組成物。
【0010】
[3]前記ステリルグルコピラノシドが、下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の組成物。
【化1】
(式中、Zは、コレステロールを示す。)
【0011】
[4]前記プラズマローゲンが動物組織由来のものであることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか記載の組成物。
[5]前記動物組織が、貝類、ホヤ及び鳥類から選ばれる動物の組織であることを特徴とする上記[4]記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、優れた血管内皮増殖因子(VEGF)の発現促進効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】HDF-a細胞(ヒト線維芽細胞)におけるVEGFの発現の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物は、ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンを含有することを特徴とする。
本発明の組成物は、ヒト線維芽細胞等での血管内皮増殖因子(VEGF)の発現(分泌)を促進し、血管新生を促進する。血管新生の促進により、発毛及び/又は育毛や創傷の改善を図ることができる。すなわち、頭皮でVEGFが血管内皮細胞に作用することにより、新生血管が増加して効率よく毛根に栄養を与えることができ、発毛及び/又は育毛を図ることができる。また、創傷部位でVEGEが血管内皮細胞に作用することで、新生血管が増加し、肉芽組織が効率よく形成され、創傷の改善を図ることができる。
【0015】
すなわち、本発明の組成物は、VEGF発現促進用組成物や、血管新生促進用組成物や、発毛及び/又は育毛用組成物や、創傷改善用組成物等として用いることができる。ここで、本発明における発毛とは、脱毛症の患者の治療など、消失した毛髪を生やすことをいい、育毛とは、薄毛や脱毛の予防など、現在ある毛髪を強い毛髪に育てることをいう。また、本発明における創傷改善とは、創傷の悪化抑制や創傷の治療をいう。
【0016】
[ステリルグルコピラノシド]
本発明に用いるステリルグルコピラノシドは、下記一般式(I)で表される。
【0017】
【0018】
前記一般式(I)において、Zは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環の3位に結合する水酸基を除いたステロール残基である。
【0019】
前記一般式(I)のZで表されるステロール残基としては、コレステロール、β-シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール及びブラジカステロールの残基を挙げることができ、コレステロールが好ましい。すなわち、一般式(I)で表されるステリルグルコピラノシドとしては、コレステリルグルコピラノシドが好ましい。
また、ステリルグルコピラノシドは、異性体が存在するものもあるが、いずれの異性体でもよく、また、グルコピラノシル結合においては、α体、β体のいずれでもよい。
【0020】
一般式(I)で表されるステリルグルコピラノシドは、天然由来物質であってもよく、合成品であってもよい。一般に、ステリルグルコピラノシドは、鳥類の羽毛等の天然物からの抽出、又はステロールとD-グルコースを用いる化学合成によって得ることができる。具体的には、以下のとおりである。
【0021】
<天然由来のコレステリルグルコピラノシド>
鳥類の羽毛を破砕し、適当な抽出溶媒で処理して、まず全脂質を抽出する。
ついで、この全脂質から、メタノール-水溶解物を取り出したのち、弱アルカリ処理して、アルカリ処理安定な複合脂質画分を得る。
得た複合脂質両分を、ケイ酸カラムクロマトグラフィーや、ケイ酸薄層クロマトグラフィー(ケイ酸TLC)に付し、粗製のコレステリルグルコピラノシドを得た後、さらにケイ酸TLCに付すことにより、精製コレステリルグルコピラノシドが得られる。
【0022】
<ステリルグルコピラノシドの合成法>
適当な溶媒中において、各種ステロールとアセトハロゲノ-α-D-グルコピラノースを、シアン化水銀や酸化銀などの触媒の存在下に室温程度の温度で反応させて、テトラアセチルステリル-β-D-グルコピラノシドを得たのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する。
つぎに、この精製テトラアセチルステリル-β-D-グルコピラノシドを、例えば、メタノール-水溶媒中で室温程度の温度で加水分解処理することにより、目的のステリル-β-D-グルコピラノシドが得られる。
ステリル-α-D-グルコピラノシドを合成する場合には、上記方法において、原料のアセトハロゲノ-α-D-グルコピラノースの代わりに、アセトハロゲノ-β-D-グルコピラノースを用いればよい。
【0023】
[プラズマローゲン]
本発明に用いるプラズマローゲンは、抗酸化作用を有するリン脂質の一種で、グリセロリン脂質の一つである。グリセロール骨格のsn-1位にビニールエーテル結合を有することで特徴づけられるグリセロリン脂質に特有のサブクラスであり、多くの哺乳類の組織の細胞膜中に高濃度で確認されている。プラズマローゲンとしては、sn-2位に脂肪酸エステル結合をもつものが好ましい。
【0024】
本発明に用いるプラズマローゲンは、一般にプラズマローゲンに分類されるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、コリン型プラズマローゲン、エタノールアミン型プラズマローゲン、イノシトール型プラズマローゲン、セリン型プラズマローゲンを挙げることができる。これらの中でも、コリン型プラズマローゲン、エタノールアミン型プラズマローゲンが好ましく、エタノールアミン型プラズマローゲンが特に好ましい。
【0025】
本発明のプラズマローゲンは、動物組織から抽出することができる。動物組織としては、プラズマローゲンを含むものであれば特に制限されるものではなく、貝類、ホヤ、ナマコ、サケ、サンマ、カツオなどの水産動物や、鳥類等を挙げることができる。これらの中でも、貝類、ホヤ、鳥類が好ましく、貝類が特に好ましい。用いる部位としては、食用部位(可食部位)が好ましい。これらの動物組織は、切断物であってもよいが、より効率的にプラズマローゲンを抽出できることから、粉砕物を用いることが好ましい。
【0026】
貝類としては、ホタテ類、ムールガイ、アワビ等の食用の二枚貝や巻貝を例示することができ、ホタテ類が特に好ましい。ホタテ類は、イタヤガイ科に属する食用の二枚貝であり、例えば、Mizuhopecten属、Pecten属に属するものを挙げることができる。具体的には、日本で採取されるホタテガイ(学名:Mizuhopecten yessoensis)や、ヨーロッパで採取されるヨーロッパホタテ(学名:Pectenmaximus(Linnaeus))等を挙げることができる。食用部位としては、貝柱、ひも等を挙げることができる。
【0027】
ホヤは、マボヤ科に属する食用の脊索動物であり、マボヤ属、アカボヤ属に属するものを挙げることができる。具体的には、マボヤ(学名:Halocynthia roretzi)や、アカボヤ(学名:Halocynthia aurantium)等を挙げることができる。食用部位としては、身の部分(筋膜体)を挙げることができる。
【0028】
鳥類は、食用の鳥類であれば特に制限されるものではなく、例えば、鶏、烏骨鶏、鴨等を挙げることができる。食用部位としては、プラズマローゲンを豊富に含むムネ肉が好ましい。
【0029】
プラズマローゲンの抽出は、水、有機溶媒、含水有機溶媒を用いて行うことができ、酵素処理を併用することが好ましい。例えば、エタノール抽出法や、ヘキサン抽出法を挙げることができ、エタノール抽出法が好ましい。
【0030】
エタノール抽出法としては、エタノール(含水エタノールを含む)を用いて抽出する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、特開2019-140919号公報、特開2018-130130号公報、再表2012-039472号公報、特開2010-065167号公報、特開2010-063406号公報等に記載された方法を挙げることができる。
【0031】
ヘキサン抽出法としては、ヘキサンを用いて抽出する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、再表2009-154309、再表2008-146942号公報等に記載された方法を挙げることができる。
【0032】
本発明の組成物は、経口剤又は非経口剤として使用することができる。
非経口用としては、外用剤や注射剤を挙げることができる。外用剤としては、具体的に、皮膚や頭皮に塗布して用いるものであれば、特に制限はなく、その形態としては、軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、ローション剤、乳液剤、パック剤、湿布剤等の皮膚外用剤を挙げることができる。発毛及び/又は育毛剤として用いる場合、具体的には、ヘアトニック、シャンプー、リンス、ポマード、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアトリートメント等を挙げることができる。
【0033】
また、経口剤として用いる場合、その形態としては、例えば、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、液状、粒状、棒状、板状、ブロック状、固体状、丸状、ペースト状、クリーム状、カプレット状、ゲル状、チュアブル状、スティック状等を挙げることができる。これらの中でも、カプセル状の形態が好ましい。
【0034】
本発明の血管新生促進用組成物は、ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンを含有し、血管新生に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、化粧品や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品等を挙げることができる。また、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに、発毛及び/又は育毛効果、創傷改善効果がある旨を表示したものも本発明の範囲に含まれる。
【0035】
本発明の発毛及び/又は育毛用組成物は、ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンを含有し、発毛及び/又は育毛に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、化粧品や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品等を挙げることができる。例えば、化粧品や健康食品においては、具体的に、「髪を生やす」、「発毛を促す」、「毛髪の成長を促す」、「薄毛を防ぐ」、「薄毛が気になる方に」、「抜け毛が気になる方に」等を表示することができる。
【0036】
本発明の組成物におけるステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンの含有量(総量)としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。その形態にもよるが、例えば、ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンが、乾燥質量換算で、本発明の組成物全体の10-10質量%以上であることが好ましく、10-5質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。
【0037】
また、ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンの配合比(質量比)としては、1:0.001~1000であることが好ましく、1:0.01~100であることがより好ましく、1:0.1~10であることがさらに好ましく、1:0.2~5であることが特に好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、必要に応じて、経口剤、外用剤又は注射剤として許容される有効成分(ステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲン)以外の成分を添加して、公知の製剤方法によって製造することができる。
【0039】
本発明の有効成分以外の他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、動物性油、植物性油を挙げることができる。また、発毛及び/又は育毛剤に適用される炭化水素類、ロウ類、油脂類、エステル類、高級脂肪酸、高級アルコール、界面活性剤、香料、色素、防腐剤、抗酸化剤、紫外線防御剤、アルコール類、pH調整剤等、各種目的に応じた種々の成分を配合してもよい。
【0040】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0041】
HDF-a細胞(ヒト線維芽細胞)を用いた試験により、本発明の組成物の有効成分であるステリルグルコピラノシド及びプラズマローゲンの血管内皮増殖因子(VEGF)の発現促進効果を確認した。
【0042】
[コレステリルグルコピラノシド(CG)]
コレステリルグルコピラノシド(sigma社製)は、DMSOに溶解したものを用いた。
【0043】
[エタノールアミン型プラズマローゲン(PlsEtn)]
エタノールアミン型プラズマローゲンは、ホタテガイ(学名:Mizuhopecten yessoensis)をエタノールで抽出し、HPLCで精製したものを用いた。
【0044】
[細胞培養]
ヒト線維芽細胞として、Human Dermal Fibroblasts-adult(HDF-a)細胞(#2320)を用いた。HDF-a細胞は、Fibroblast Medium (FM, #2301)で培養した。継代回数6回までの細胞を実験に用いた。
【0045】
前日から培養したHDF-a細胞を、5μg/ml CG及び5μg/ml PlsEtnの存在下、又は5ng/ml CG及び5μg/ml PlsEtnの存在下で、7時間培養した。
また、比較として、CGのみの存在下、PlsEtnのみの存在下、CG及びPlsEtnの不存在下で、HDF-a細胞を同様に培養した。
【0046】
[VEGFの発現促進解析]
培養したHDF-a細胞を、バッファーA(0.25M スクロース、10mM Hepes-KOH、pH7.5、1mM EDTA)で回収、遠心した。得られた細胞をバッファーAに懸濁し、ソニケーションで破砕、タンパク定量の後、同タンパク量を電気泳動した。次いで、PVDF膜に転写し、抗vascular endothelial growth factor(VEGF)抗体(Protein tech #19003-1-AP)および抗actin抗体 (MBL #M177-3) を用いたウエスタンブロッティングで検出した。得られた各タンパク質のシグナルは、Multi Gauge software version 3.0 software(Fuji Film)で定量し、VEGFのシグナルをactinのシグナルで除することで標準化した。さらに未処理の値を1として各処理時に得られたVEGFのシグナル強度の相対値を2回の試行の平均値と平均値との差で示した。
【0047】
図1に、培養したHDF-a細胞におけるVEGFの発現の結果を示す。
【0048】
図1に示すように、CG及びPlsEtnの存在下で培養したHDF-a細胞は、CGのみを含む培地で培養した細胞よりも、VEGFの発現が亢進された。PlsEtnのみでもVEGFの発現が観察されたが、CGとPlsEtnを含む場合には、VEGFの発現が相乗的に亢進された。したがって、CG及びPlsEtnは、VEGFの生合成を効果的に促進することが期待される。
【0049】
なお、皮膚の創傷治癒において形成される肉芽腫にはVEGFを発現する皮膚表面細胞のケラチノサイトは存在しておらず、肉芽腫を形成する細胞群の中でも最も多様な線維芽細胞からVEGFが分泌されることが知られている。
CG及びPlsEtnで促進されるHDF-a細胞におけるVEGF発現の増加は、創傷治癒、発毛などの血管誘導を介する皮膚の回復・恒常性維持などを効果的になすと考えられる。
【実施例2】
【0050】
[配合例1]
以下に示す配合により、育毛剤(100g)を製造した。
コレステリルグルコピラノシド 0.5mg
ホタテ抽出プラズマローゲン 0.5mg
グリセリン 0.5mg
精製水 残部
【0051】
[配合例2]
以下に示す配合により、ハードカプセル剤を製造した。
コレステリルグルコピラノシド 0.5mg
ホタテ抽出プラズマローゲン 0.5mg
シクロデキストリン 3.3mg
アミノ酸 1.2mg
パインデックス 185.0mg
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の組成物は、外用剤又は経口剤として用いることができるものであり、産業上有用である。