(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】お絵描き用の表示制御システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0346 20130101AFI20221024BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20221024BHJP
G06F 3/04883 20220101ALI20221024BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20221024BHJP
【FI】
G06F3/0346 422
G06F3/03 400F
G06F3/04883
G06T7/70 Z
(21)【出願番号】P 2022033486
(22)【出願日】2022-03-04
【審査請求日】2022-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
【審査官】永野 志保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146753(JP,A)
【文献】特開2012-104096(JP,A)
【文献】特開2003-256123(JP,A)
【文献】特開2021-182303(JP,A)
【文献】特開2016-015649(JP,A)
【文献】特開2017-227972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0346
G06F 3/03
G06F 3/04883
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対して立体的に形成された表示面に映像を表示する
表示装置(10)と、
前記表示装置の
前記表示面上における対象物の接触位置を検出する測域センサ(20)と、
前記表示装置の
前記表示面及び前記表示面前面側の床面を含む範囲の画像を取得するように配置された撮像装置(30)と、
前記測域センサが検出した前記対象物の接触位置に関する情報と前記撮像装置が取得した前記画像に基づいて前記対象物が前記表示装置の表示面に接触した位置を決定し、その決定情報に基づいて前記表示装置を制御する制御装置(40)を備える
表示制御システム。
【請求項2】
前記対象物から当該対象物の種類を判別するための情報を取得する判別手段を備え、
前記制御装置(40)は、前記判別手段が取得した情報に基づいて前記対象物の種類を判別するとともに、その対象物の種類に関する情報と前記決定情報に基づいて前記表示装置を制御する
請求項1に記載の表示制御システム。
【請求項3】
前記判別手段は、前記撮像装置(30)であり、
前記制御装置(40)は、前記画像を解析して、前記画像に映り込んだ前記対象物の種類を判別する
請求項2に記載の表示制御システム。
【請求項4】
前記対象物は、種類ごとに異なるパターン又は色で発光する発光部(51)を含むものであり、
前記制御装置(40)は、前記画像に映り込んだ前記発光部の発光パターン又は色を解析して、前記画像に映り込んだ前記対象物の種類を判別する
請求項2に記載の表示制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お絵描き用の表示制御システムに関する。具体的に説明すると、本発明に係る表示制御システムは、例えばお絵描き用の手持ち器具が表示装置の表示面に接触したことを検出して、その手持ち器具の接触位置や軌跡に応じて線やスタンプの画像を表示面に表示することができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーンや大型ディスプレイにユーザが把持するタッチペンが触れたことを検出して、そのタッチペンの軌跡をスクリーン等に表示するためのシステムが知られている(特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のシステムでは、スクリーンの手前の天井にプロジェクタが設置されるとともに、スクリーンの上側隅に複数の赤外線カメラ又はカラーカメラが設置されており、この複数の赤外線カメラ又はカラーカメラによってユーザが把持するタッチペンがスクリーンに接触した位置を特定することとしている。また、このシステムでは、タッチペンにLEDが搭載されており、このタッチペンの発光色をカラーカメラによって認識することで、スクリーン上に表示されるタッチペンの軌跡の色を切り替えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のシステムのように、スクリーンの上側隅に設置された複数のカメラ(赤外線カメラ又はカラーカメラ)によってタッチペンを検出する場合、そのタッチペンがスクリーンに接触あるいは限りなく近づいた状態でしかタッチペンを検出することができない。このため、タッチペンがスクリーンに触れている時間が短い場合、複数のカメラがタッチペンを正常に検出することができず、スクリーンに対するタッチペンの接触位置を誤って検出したり、そもそもスクリーンに対するタッチペンの接触を検知できない場合がある。例えば、ユーザがタッチペンによって線を描くような場合にはタッチペンがスクリーンに比較的長い時間触れていることになるため、カメラによってタッチペンを検出しやすいが、ユーザがタッチペンで点を描くような場合には、タッチペンがスクリーンに触れている時間が短いことから、その点の描画位置を確実に検出できない場合がある。
【0006】
また、特許文献1に記載のシステムでは、スクリーンの上側隅に設置された複数のカラーカメラによってタッチペンに取り付けられたLEDの発光色を認識して、スクリーン上に表示されるタッチペンの軌跡の色を切り替えることとしている。しかし、前述のように、タッチペンがスクリーンに触れている時間が短い場合、カラーカメラによってLEDの発光色を確実に認識できない場合があるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、表示装置の表示面上における対象物の接触位置をより確実に検出できるようにすることを第1の課題とする。また、本発明は、表示装置の表示面上に接触した対象物の種類をより正確に判別できるようにすることを第2の課題とする。本発明は、第1及び第2の課題の両方又は少なくともいずれか一方の解決手段を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表示制御システム100に関する。本発明に係る表示制御システム100は、表示装置10、測域センサ20、撮像装置30、及び制御装置40を備える。表示装置10は、制御装置40からの制御情報に基づいて所定の映像を表示する。表示装置10は、プロジェクタとスクリーンの組み合わせからなるものであってもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置であってもよい。測域センサ20は、表表示装置10の表示面上における対象物の接触位置を検出するためのセンサである。「対象物」とは、物理的な物体である。対象物の例としては、ユーザの腕などの身体の一部や、ユーザが把持している手持ち器具が挙げられる。撮像装置30は、表示装置10の表示面及びその表示面前面側の空間を含む範囲の画像(静止画像及び動画像を含む。以下同じ)を取得する。すなわち、撮像装置30は、表示面前面側であって、その表示面から一定距離離れた位置に配置されている。制御装置40は、測域センサ20が検出した対象物の接触位置に関する情報と撮像装置30が取得した画像に基づいて、その対象物が表示装置10の表示面に接触した位置を決定し、その決定情報に基づいて表示装置10を制御する。つまり、制御装置40は、測域センサ20による検出情報と撮像装置30が取得した画像(具体的はその解析情報)とを統合して、対象物の表示面の接触位置を決定する。ここでの決定情報に基づいて、表示装置10は、表示面上の対象物の接触位置に所定の画像を表示する。
【0009】
上記構成のように、測域センサ20の検出情報に加えて、撮像装置30が取得した表示面前面側の空間を捉えた画像を利用して、表示面上における対象物の接触位置を決定することで、対象物の接触位置を検出することの確実性を向上させることができる。つまり、撮像装置30は、対象物が表示面に接触する前からその対象物を捕捉しており、さらに撮像装置30が取得した画像によれば、その対象物が表示面に接触したことや、その接触位置をある程度の確実性をもって確認できる。また、測域センサ20によれば、対象物が表示面に接触したことと、その接触位置を正確に検出できる。このため、測域センサ20と撮像装置30により得られた情報を組み合わせれば、仮に対象物が表示面に接触している時間が短い場合であっても、対象物が表示面に接触したことやその接触位置をより確実に特定することが可能となる。例えば、対象物が表示面に接触している時間が短く、測域センサ20が表示面上の対象物の接触位置を正確に検出できていない場合であっても、撮像装置30の撮像画像に基づいて対象物の接触位置を特定できていれば、精度よりも確実性を優先して、対象物の接触位置を決定することができる。また、測域センサ20の検出情報だけの場合、ある対象物が測域センサ20の検出範囲(具体的には表示面上)から一度離れた後、再度その検出範囲に戻って来たときに、同じ対象物が表示面に2回に亘って接触したことを認識できない。これに対して、本発明のように、撮像装置30によって表示面前面側の空間を捕捉しておくことで、同じ対象物が表示面に2回に亘って接触したことを認識にすることが可能となる。これにより、例えばある対象物の一度目の接触位置と二度目の接触位置とを線で結ぶといった表示画面の制御も可能となる。
【0010】
本発明に係るシステムは、対象物から当該対象物の種類を判別するための情報を取得する判別手段を備えていてもよい。この判別手段は、前述した撮像装置30であってもよいし、別の装置であってもよい。この場合、制御装置40は、判別手段が取得した情報に基づいて対象物の種類を判別するとともに、その対象物の種類に関する情報と前述した決定情報に基づいて表示装置10を制御する。例えば、対象物の種類に応じて、その対象物の接触位置に表示される画像の種類や色を変化させることができる。
【0011】
本発明に係るシステムにおいて、判別手段は、前述した撮像装置30であることが好ましい。この場合、制御装置40は、撮像装置30が取得した画像を解析して、その画像に映り込んだ対象物の種類を判別する。これにより、制御装置40は、撮像装置30が取得した画像と測域センサ20の検出情報から、表示面上に接触した対象物の種類と、その対象物が接触した表示面上の位置をより確実に特定することができる。具体的には、撮像装置30が取得した画像に基づいて、制御装置40は、対象物が表示面に接触する前からその対象物を捕捉し、その対象物の種類を判別する。そして、対象物が表示面に接触したときには、測域センサ20の検出情報と撮像装置30が取得した画像から得られた情報を統合して、特定の種類の対象物が接触した表示面上の位置を決定することとなる。
【0012】
本発明に係るシステムにおいて、対象物は、種類ごとに異なるパターン又は色で発光する発光部51を含むものであってもよい。この場合、制御装置40は、画像に映り込んだ発光部51の発光パターン又は色を解析して、その画像に映り込んだ対象物の種類を判別することとしてもよい。このように、対象物を発光させることにより、暗い室内であっても対象物の種類を容易に判別できるようになる。
【0013】
本発明に係るシステムにおいて、撮像装置30は、表示装置10の表示面前面側であって、システムのユーザ及び表示面を俯瞰する位置に配置されていることが好ましい。例えば、身長100~200cmの者がユーザとなることを想定した場合、撮像装置30は床面から200cm以上の位置に配置すればよい。これにより、撮像装置30による対象物の捕捉が容易となる。
【0014】
本発明に係るシステムにおいて、撮像装置30は、表示装置10の表示面及び表示面前面側の床面を含む範囲の画像を取得するように配置されていることが好ましい。このように、撮像装置30の撮影範囲を表示面前面側の床面まで広げることで、対象物が表示面に接触する前にその対象物を捕捉することが容易になる。
【0015】
続いて、本発明に係る表示制御システムの別の実施形態について説明する。別の実施形態に係る表示制御システム100は、表示装置10、測域センサ20、判別装置60、及び制御装置40を備える。測域センサ20は、表示装置10の表示面上における対象物の接触位置を検出する。判別装置60は、対象物の種類を判別するとともに対象物の空間上の位置を特定するための情報を取得する。制御装置40は、測域センサ20が検出した対象物の接触位置に関する情報と判別装置60が取得した情報に基づいて、特定の種類の対象物が表示装置10の表示面に接触した位置を決定し、その決定情報に基づいて表示装置10を制御する。判別装置60の例としては、サーモカメラ、対象物に与えられたビーコンタグから発せられる電波を受信する複数のビーコン受信器、及び対象物に与えられたマイクロホンから発せられる音波を受信する複数のマイクロホンのいずれか1つ以上が挙げられる。このような判別装置60を用いることによっても、表示面上における対象物の接触位置やその対象物の種類を判別することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示装置の表示面上における対象物の接触位置をより確実に検出することができる。また、本発明によれば、表示装置の表示面上に接触した対象物の種類をより正確に判別することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示制御システムの全体構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る表示制御システムの構成要素を側面からみた様子を模式的に示している。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る表示制御システムのブロック図の一例を示している。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における手持ち器具(対象物)の例を示している。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る表示制御システムのブロック図の一例を示している。
【
図6】
図6は、第2の実施形態における判別装置と手持ち器具(対象物)の組み合わせの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
本発明は、表示面上における対象物の接触位置を検出して、その接触位置に所定の画像を表示するためのシステムである。
図1及び
図2に示されるように、本発明の第1の実施形態に係る表示制御システム100は、表示装置10、測域センサ20、撮像装置30、及び制御装置40を含む。測域センサ20及び撮像装置30により取得された情報は制御装置40に入力される。制御装置40は、測域センサ20及び撮像装置30が取得した情報を利用して表示装置10の制御を行う。また、ユーザは様々な種類の手持ち器具50(対象物)を把持しており、この手持ち器具50を利用して表示面に自由に文字や絵、図形を描くことができる。
【0020】
本実施形態において、測域センサ20及び撮像装置30により得られた情報に基づいて、スクリーン12に接触した手持ち器具50の種類と接触位置が特定される。そして、スクリーン12上には、手持ち器具50の接触位置に線や点、図形などが出現する。また、手持ち器具50の種類に応じて、スクリーン上に出現する線や点、図形などの種類が変化するようになっている。例えば、
図1に示した例では、ユーザは、ハケ型器具、ペン型器具、スタンプ型器具をそれぞれ把持している。スクリーン12上におけるハケ型器具の接触位置には太めの線が表示され、ペン型器具の接触位置には細めの線が表示され、スタンプ型器具の接触位置には所定のスタンプ図形が表示される。また、手持ち器具50の種類に応じて線や図形の色を変化させることもできる。このように、ユーザは、手持ち器具50を使い分けることで、スクリーン上に表示される線や図形の変化を楽しむことができる。
【0021】
本実施形態において、表示装置10は、映像光を照射するプロジェクタ11と、その映像光が投影されるスクリーン12とを含んで構成されている。プロジェクタ11は、例えばスクリーン12前面側上方の天井面に固定されており、スクリーン12の表示面に対して上方から映像光を照射する。なお、表示装置10としては、プロジェクタ11及びスクリーン12に代えて、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を採用することもできる。
【0022】
測域センサ20は、検査光(レーザ)を出射するとともに、その検査光を走査することで手持ち器具50までの距離と角度を測定する二次元走査型の光測距センサである。測域センサ20により検出された情報は、制御装置40に伝達される。測域センサ20は、スクリーン12に沿って検査光を出射するように、例えばスクリーン12の直上に配置される。実空間における測域センサ20の位置座標が既知であれば、その測域センサ20から出射された光に触れた対象物までの距離と角度を測定することで、実空間における手持ち器具50の位置座標を検出することができる。具体的には、検査光はスクリーン12の表面に沿って出射されているため、手持ち器具50がスクリーン12に触れた位置の座標情報を検出できる。
図2に示されるようにスクリーン12が配置された空間をxyzの3次元座標系で表した場合、この測域センサ20は、
yz平面のスクリーン座標系における手持ち器具50の2次元座標を検出する機能を担うことになる。なお、スクリーン12が大型である場合には、スクリーン12全体が検出範囲となるように複数の測域センサ20を並べればよい。
【0023】
撮像装置30は、手持ち器具50がスクリーン12に接触する前から、この手持ち器具50を含む画像を取得して、その手持ち器具50の種類と位置を特定するために用いられる。撮像装置30としては、一般的な赤外線カメラやカラーカメラを用いることができる。撮像装置30は、例えば、撮影レンズ、メカシャッター、シャッタードライバ、CCDイメージセンサユニットなどの光電変換素子、光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及びICメモリで構成される。撮像装置30によって取得された画像データは、制御装置40に伝達される。
【0024】
また、撮像装置30は、例えばスクリーン12前面側上方の天井面に固定されており、スクリーン12とその付近のユーザとを俯瞰した位置から、スクリーン12及びその前面側の空間を含む画像を取得する。具体的には、
図2に示されるように、撮像装置30の撮像範囲には、スクリーン12全体に加えて、そのスクリーン12前面側の所定範囲の床面が含まれていることが好ましい。例えば、
図2では、撮像装置30の撮像範囲に含まれるスクリーン面(yz面)に対して直交する方向(x軸方向)の長さを符号xで表している。例えば、この長さxは、0.5m以上であることが好ましく、1m以上、2m以上、又は3m以上であることが特に好ましい。長さxの上限に特に制限はないが、例えば10m以下又は5m以下とすればよい。このように、スクリーン12前面の空間を撮像装置30の撮像範囲に含めることで、手持ち器具50がスクリーン12に接触する前に、手持ち器具50の位置を捕捉するとともに、その種類を特定することが可能となる。
【0025】
図3は、主に本実施形態に係る制御装置40の機能構成を示している。制御装置40は、測域センサ20及び撮像装置30からの情報に基づいて表示装置10を制御するためのコンピュータである。制御装置40としては汎用的なコンピュータを利用することができる。制御装置40は、基本的にLANケーブルやUSBケーブル、スイッチングハブなどを介して表示装置10、測域センサ20、及び撮像装置30と有線接続されている。ただし、制御装置40は、無線LANやインターネットを介してこれらの装置と無線接続されていてもよい。
【0026】
図3に示されるように、制御装置40は、制御部41、記憶部42、入力部43、及び出力部44を含む。制御部41としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサを利用することができる。制御部41は、基本的に、記憶部42に記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、このプログラムに従って所定の演算処理を実行する。また、制御部41は、プログラムに従った演算結果を記憶部42に適宜書き込んだり読み出したりすることができる。記憶部42は、制御部41での演算処理等に用いられる情報やその演算結果を記憶するための要素である。記憶部42のストレージ機能は、例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また、記憶部42は、制御部41による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメインメモリとしての機能を有していてもよい。記憶部42のメモリ機能は、RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。入力部43は、測域センサ20及び撮像装置30に接続するための入力用インターフェースである。また、出力部44は、表示装置10に接続するための出力用インターフェースである。
【0027】
本実施形態において、手持ち器具50は、
図3に示されるように、発光部51と発光制御部52を含む。発光部51は、可視光LEDや赤外線LED等の発光素子で構成されている。発光部51は、その発光色を調整できるように、例えば赤色LED、青色LED、緑色LEDを含み、さらに必要に応じて白色LEDを含んでいてもよい。また、赤外線LEDは、波長700~1500nm程度の近赤外線で発光する。発光部51として赤外線LEDを採用する場合は、撮像装置30としては近赤外線に感度を持つ受光器を備える赤外線カメラを採用すればよい。また、発光制御部52は、発光部51の発光パターン(すなわち点滅パターン)や発光色を制御するための制御回路である。発光制御部52は、バッテリ(図示省略)からの電力を発光部51に供給するとともに、各種LED素子の発光強度を調整することにより発光部51全体としての発光色を制御する。また、発光制御部52は、各種LED素子のオン/オフを調整することで発光部51の発光パターンを制御する。手持ち器具50は、予め様々な種類のものが用意されている。手持ち器具50は、その種類ごとに、発光パターンと発光色の両方又は少なくともいずれか一方が異なるように設定されている。
【0028】
また、
図3には、制御部41の機能ブロックが示されている。制御部41は、機能ブロックとして、種類判別部41a、空間位置特定部41b、表示面位置特定部41c、決定部41d、及び描画部41eを含む。これらの機能ブロック41a~41eは、制御部41(プロセッサ)が所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0029】
種類判別部41aは、撮像装置30が取得した画像を解析して、その画像中に映り込んでいる手持ち器具50の種類を判別する。本実施形態では、前述のように、手持ち器具50は、その種類ごとに発光パターン及び/又は発光色が異なるように設定されている。また、記憶部42には、発光パターン及び/又は発光色に関する情報に対応付けて、手持ち器具50の種類を特定するためのデータが記憶されている。このため、種類判別部41aは、撮像装置30が取得した画像を解析して、手持ち器具50の発光パターン及び/又は発光色を識別し、識別した発光パターン及び/又は発光色に対応する手持ち器具50の種類に関する情報を記憶部42から読み出す。これにより、種類判別部41aは手持ち器具50の種類を判別することが可能である。
【0030】
一例を挙げると、種類判別部41aによれば、手持ち器具50ごとに、赤色のペン、青色のペン、赤色のハケ、青色のハケ、赤色のスタンプ、青色のスタンプといった判別が可能である。例えばこれらの種類の手持ち器具50には、それぞれ異なる発光パターンが割り当てられて記憶部42に記憶されている。この場合には、手持ち器具50の発光パターンを解析すれば、手持ち器具50の種類を判別できる。具体的には、手持ち器具50の発光パターンを解析することで、赤色のペンか青色のペンかを判別できる。この場合には、手持ち器具50の発光パターンを解析できれば十分であり、発光色の解析は不要であることから、撮像装置30としてはカラーカメラではなく赤外線カメラで対応可能である。また、発光パターンと発光色の両方に基づいて、手持ち器具50の種類を判別することも可能である。例えば、赤色であるか青色であるかは、手持ち器具50の発光色から判別される。また、ペン、ハケ、スタンプのいずれであるかは、手持ち器具50の発光パターンから判別される。このように、手持ち器具50の種類の判別に発光パターンと発光色の両方の情報を利用することとしてもよい。ただし、発光色を種類の判別に利用するためには、手持ち器具50の発光色を認識する必要があることから、撮像装置30としてはカラーカメラを用いる必要がある。
【0031】
また、
図4は、手持ち器具50の種類の判別方法の様々な例を示している。前述のように、LED等の発光部を備えた手持ち器具50(a)を用いる場合は、種類判別部41aは、その発光パターン及び/又は発光色に基づいて、その種類を特定すればよい。また、種類ごとに異なるQRコード(登録商標)等の二次元コードが付与された手持ち器具50(b)を用いることもできる。この場合、種類判別部41aは、撮像画像に映り込んだ二次元コードを解析し、その二次元コードに埋め込まれた識別情報に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(b)の種類を判別することができる。また、種類ごとに異なる模様が付与された手持ち器具50(c)を用いることもできる。この模様は、撮像装置30による撮像画像に映り込みやすいように、例えば再帰反射材や蛍光塗料で描かれている。この場合、種類判別部41aは、撮像画像に映り込んだ模様を解析し、その模様に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(c)の種類を判別することができる。また、種類ごとに形状そのものが異なる手持ち器具50(d)を用いることもできる。この場合、種類判別部41aは、撮像画像に映り込んだ手持ち器具50(d)の形状を解析し、その形状に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(d)の種類を判別することができる。
【0032】
空間位置特定部41bは、撮像装置30が取得した画像を解析して、その画像中に映り込んでいる手持ち器具50の空間内の位置を大まかに特定する。特に、種類判別部41aでの処理と空間位置特定部41bでの処理を実行することにより、どの種類の手持ち器具50が、空間内のどの位置に存在するのかを特定できる。なお、撮像装置30の撮像画像からは、手持ち器具50の三次元座標を厳密に特定することまでは困難である。このため、空間位置特定部41bは、例えば、特定種類の手持ち器具50がスクリーン12に接触可能な範囲に存在しているか否かを特定できればよい。特に、空間位置特定部41bは、特定種類の手持ち器具50がスクリーン12に接触しているか否かを特定することが好ましい。また、空間位置特定部41bは、特定種類の手持ち器具50がスクリーン12に接触している位置をある程度の精度で特定することが好ましい。
図2に示した例のように、撮像画像に映り込むスクリーン12を幾つかの領域に分割した場合に(図示した例では9分割)、空間位置特定部41bは、特定種類の手持ち器具50がスクリーン12のどの領域に接触しているかを特定できればよい。なお、このスクリーン12の分割領域はより細分化させることができ、その場合には接触位置の特定の精度が向上する。このようにして、空間位置特定部41bは、撮像画像に映り込んでいる一又は複数の手持ち器具50の空間内の位置、具体的にはスクリーン12上の接触位置を大まかに特定することとなる。
【0033】
表示面位置特定部41cは、測域センサ20の検出情報に基づいて、スクリーン12(表示面)に対する手持ち器具50の接触位置を特定する。測域センサ20は、スクリーン12に手持ち器具50が接触したときに、その測域センサ20から手持ち器具50までの距離と角度を検出し、その検出情報を表示面位置特定部41cに伝達する。測域センサ20の位置座標は既知であることから、表示面位置特定部41cは、その測域センサ20から受け取った手持ち器具50までの距離と角度に関する情報に基づいて、スクリーン12上における手持ち器具50の位置座標(yz平面の二次元座標)を特定できる。
【0034】
決定部41dは、種類判別部41a及び空間位置特定部41bが特定した特定種類の手持ち器具50の空間内の位置に関する情報と、表示面位置特定部41cが特定した手持ち器具50のスクリーン12上の位置に関する情報とを統合して、スクリーン12上における特定種類の手持ち器具50が接触した位置を決定する。具体的には、前述したように、種類判別部41a及び空間位置特定部41bの処理により、どの種類の手持ち器具50がスクリーン12上のどの範囲に接触しているのかを特定できる。また、表示面位置特定部41cの処理により、スクリーン12に接触している手持ち器具50の位置座標を特定できる。このため、種類判別部41a及び空間位置特定部41bが特定種類の手持ち器具50がスクリーン12に接触したことを特定したのとほぼ同じタイミング(所定時間以内、例えば1秒以内)及び範囲(所定範囲以内、例えば50cm以内)において、表示面位置特定部41cもスクリーン12に何らかの手持ち器具50が接触していることを検出していれば、決定部41dは、表示面位置特定部41cが特定した手持ち器具50の位置座標は、種類判別部41a及び空間位置特定部41bが特定した種類の手持ち器具50の接触位置の座標であることを推定することができる。つまり、測域センサ20自体に手持ち器具50の種類を特定する機能がなくても、撮像装置30の撮像画像の解析情報を組み合わせれば、測域センサ20が検出した手持ち器具50の種類を特定することが可能となる。
【0035】
また、手持ち器具50がスクリーン12上に接触している時間が短く、測域センサ20の検出情報によって表示面位置特定部41cが手持ち器具50の接触位置を正確に特定できなかった事態も想定される。一方で、このような事態が発生した場合でも、撮像装置30からの撮像画像に基づいて、種類判定部41a及び空間位置特定部41bが、特定種類の手持ち器具50がスクリーン12上に接触していることと、その接触位置を正確に特定できている場合もある。つまり、撮像装置30は、天井寄りの俯瞰位置に配置され、手持ち器具50がスクリーン12に接触する前からそれを捕捉しているため、撮像装置30の撮像画像を解析すれば、測域センサ20ほどの正確さはないものの、スクリーン12に手持ち器具50が接触したことと、その位置あるいは範囲を特定可能である。この場合、決定部41dは、種類判別部41a及び空間位置特定部41bからの情報に基づいて、スクリーン12上の手持ち器具50の接触位置を決定すればよい。この場合、決定部41dは、検出精度よりも確実性を優先して、手持ち器具50の接触位置を決定することとなる。
【0036】
描画部41eは、決定部41dにより決定されたスクリーン12上の手持ち器具50の接触位置に、その手持ち器具50の種類に応じた画像を描画する。具体的には、記憶部42には、手持ち器具50の種類に応じたエフェクト画像のデータが記憶されている。描画部41eは、手持ち器具50の種類ごとにこのエフェクト画像のデータを読み出して、その手持ち器具50の接触位置にエフェクト画像を描画する。例えば、
図1に示されるように、スクリーン12上におけるハケ型器具の接触位置には太めの線が描画され、ペン型器具の接触位置には細めの線が描画され、スタンプ型器具の接触位置には所定のスタンプ図形が描画される。この描画部41eにより描画された画像データは、出力部44を介して表示装置10に伝達される。表示装置10は、この画像データを出力する。本実施形態では、プロジェクタ11が画像をスクリーン12に投影することで、この画像が表示されることとなる。なお、描画部41eは、手持ち器具50に対応したエフェクト画像の他、所定の背景画像などを併せて描画し、表示装置10に出力させることも当然可能である。
【0037】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る表示制御システム100の機能構成を示している。第2の実施形態については、前述した第1の実施形態と同じ構成について同じ符号を用いることでその説明を省略し、第1の実施形態と異なる構成を中心にその説明を行う。
【0038】
図5に示されるように、第2の実施形態に係る表示制御システム100は、第1の実施形態の撮像装置30に代えて、判別装置60を備える。第1の実施形態では、主に撮像部30が、手持ち器具50(対象物)の種類を判別する機能と、手持ち器具50の空間位置を特定する機能を担っていたが、第2の実施形態では、撮像部30に代えて、これらの機能を判別装置60によって行う。
【0039】
図6は、手持ち器具50と判別装置60との組み合わせの例を示している。例えば、手持ち器具50として、種類ごとに表面温度の異なる材質で形成された手持ち器具50(e)を用いることもできる。この場合、判別装置60としては、手持ち器具50(e)の表面温度を検出可能なサーモカメラ60(e)を用いればよい。種類判別部41aは、サーモカメラ60(e)が検出した手持ち器具50(e)の表面温度に基づいて、その表面温度に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(e)の種類を判別することができる。また、空間位置特定部41bは、サーモカメラ60(e)の撮像画像を解析することで、手持ち器具50(e)の空間位置、具体的にはスクリーン12上の接触位置をある程度の精度で特定することができる。
【0040】
また、手持ち器具50として、種類ごとに異なる識別情報を含む電波を発振するビーコンタグが搭載された手持ち器具50(f)を用いることもできる。この場合、判別装置60としては、ビーコンタグから発信された電波を受信する複数のビーコン受信器60(f)を用いればよい。種類判別部41aは、ビーコン受信器60(f)が受信した電波に含まれる識別情報に基づいて、その識別情報に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(f)の種類を判別することができる。また、空間位置特定部41bは、3台以上のビーコン受信器60(f)が受信した電波の強度に基づき、各ビーコン受信器60(f)から手持ち器具50(f)までの距離を測定することで、三角測量法により、手持ち器具50(f)の空間位置、具体的にはスクリーン12上の接触位置をある程度の精度で特定することができる。
【0041】
また、手持ち器具50として、種類ごとに異なる周波数の超音波を出力するスピーカが搭載された手持ち器具50(g)を用いることもできる。この場合、判別装置60としては、スピーカから発信された超音波を集音する複数のマイクロホン60(g)を用いればよい。種類判別部41aは、マイクロホン60(g)が集音した超音波の周波数に基づいて、その周波数に対応する種類を記憶部42から読み出すことで、手持ち器具50(g)の種類を判別することができる。また、空間位置特定部41bは、3台以上のマイクロホン(g)が受信した超音波の強度に基づき、各マイクロホン60(g)から手持ち器具50(g)までの距離を測定することで、三角測量法により、手持ち器具50(g)の空間位置、具体的にはスクリーン12上の接触位置をある程度の精度で特定することができる。
【0042】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
10…表示装置 11…プロジェクタ
12…スクリーン 20…測域センサ
30…撮像装置 40…制御装置
41…制御部 41a…種類判別部
41b…空間位置特定部 41c…表示面位置特定部
41d…決定部 41e…描画部
42…記憶部 43…入力部
44…出力部 50…手持ち器具(対象物)
51…発光部 52…発光制御部
60…判別装置 100…表示制御システム
【要約】
【課題】表示装置の表示面上における対象物の接触位置をより確実に検出する。
【解決手段】表示制御システム100は、表示装置10と、表示装置10の表示面上における対象物の接触位置を検出する測域センサ20と、この表示面及び表示面前面の空間を含む範囲の画像を取得する撮像装置30とを含み、測域センサ20が検出した対象物の接触位置に関する情報と撮像装置30が取得した画像に基づいて対象物が表示装置10の表示面に接触した位置を決定し、その決定情報に基づいて表示装置10を制御する。
【選択図】
図2