IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミサワホーム株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社イングの特許一覧

<>
  • 特許-吊り具 図1
  • 特許-吊り具 図2
  • 特許-吊り具 図3
  • 特許-吊り具 図4
  • 特許-吊り具 図5
  • 特許-吊り具 図6
  • 特許-吊り具 図7
  • 特許-吊り具 図8
  • 特許-吊り具 図9
  • 特許-吊り具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】吊り具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
B66C1/66 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018213428
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079146
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸生
(72)【発明者】
【氏名】潮見 真生
(72)【発明者】
【氏名】土屋 明子
(72)【発明者】
【氏名】大内 和人
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-316395(JP,A)
【文献】実開平03-044185(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に形成された挿通孔に装着される吊り具において、
保持部と、
平行に配置されるとともに前記保持部によって保持され、かつ、それぞれ軸心方向を中心に回動可能な一対の軸部と、
前記一対の軸部それぞれの一端部から前記軸心と交差する方向に突出する係止部と、
前記一対の軸部それぞれの他端部から前記軸心と交差し、かつ前記係止部と交差する方向に突出する吊り部と、を備え、
前記軸部と前記吊り部は一体形成され、
前記吊り部は、
前記軸部に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部と、
当該吊り部が折曲されることで形成され、前記第一折曲部よりも前記軸部の一端部側で、かつ前記第一折曲部よりも前記軸部から遠い側に位置する第二折曲部と、を有しており、
前記吊り部における先端部は、前記第二折曲部から前記軸部に向かって伸長しており、
前記保持部は、
前記吊り部における前記先端部よりも前記軸部の一端部側に位置する第一保持片と、
前記軸部の他端部側に位置する第二保持片と、を有しており、
前記吊り部における前記先端部は、前記軸部の外周面に近接し、かつ前記第一保持片と前記第二保持片との間に配置されており、
各前記係止部は、各前記吊り部が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、記吊り部が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成され、
前記各係止部は、同一方向に揃った状態で前記挿通孔に挿通されることを特徴とする吊り具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り具において、
前記吊り部における前記先端部は、前記軸部の外周面に対して溶接されていない状態となってい ことを特徴とする吊り具。
【請求項3】
対象物に形成された挿通孔に装着される吊り具において、
保持部と、
平行に配置されるとともに前記保持部によって保持され、かつ、それぞれ軸心方向を中心に回動可能な一対の軸部と、
前記一対の軸部それぞれの一端部から前記軸心と交差する方向に突出する係止部と、
前記一対の軸部それぞれの他端部から前記軸心と交差し、かつ前記係止部と交差する方向に突出する吊り部と、
前記対象物における前記挿通孔に装着された場合に、各前記吊り部が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する開き抑制部と、を備え、
前記軸部と前記吊り部は一体形成され、前記吊り部は、前記軸部に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部を有しており、
各前記係止部は、各前記吊り部が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、前記各吊り部が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成され、
前記各係止部は、同一方向に揃った状態で前記挿通孔に挿通される ことを特徴とする吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の吊り上げ作業に用いられる吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属製の建築材料などの重量物を始めとする吊り上げの作業の対象物を、輸送車両に積み込む際や輸送車両から降ろす際はクレーンによって吊り上げられる。
従来、クレーンによって対象物を吊り上げる際に、下端部が対象物に形成された挿通孔に係止され、上端部にクレーンフック又はワイヤーロープ用の連結金具が引っ掛けられる吊り具が用いられる場合がある(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の吊り具は、保持部に平行保持され、かつ、それぞれ軸心方向を中心に回動可能な複数の軸部と、軸部の一端部から軸心と交差する方向に突出する係止部と、軸部の他端部から軸心と交差し、かつ係止部と交差する方向に突出する略環状の吊り部と、を有し、各係止部は、各吊り部が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、各吊り部が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成されている。また、対象物としては、いわゆるユニット式建物の建築に用いられる建物ユニットが挙げられている。
そして、吊り具は、吊り部を開閉させることによって係止部が開閉可能であるため、同一方向に揃えた各係止部を挿通孔に挿通させ、次いで挿通孔裏側で係止部を開くことによって対象物である建物ユニットに取り付け可能となる。ここで、吊り具は、各吊り部を一括して束ねるようにクレーンフック等を連結することによって吊り部の開閉が規制され、これにより係止部が挿通孔から引き抜き不可能となる。したがって、吊り具は、工具等を用いることなく、対象物である建物ユニットへの着脱が容易に行えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-316395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤーロープが引っ掛けられた吊り具は、対象物のうち複数のポイントに装着され、クレーンによって一括に吊り上げられる場合が多い。このような吊り上げ方法は、いわゆる多点吊り(2点吊り、3点吊り、4点吊り等)と呼ばれ、対象物のバランスが崩れないように吊り上げられる。
ところが、図10に示す従来の吊り具100(符号102は係止部)のように吊り部101が略環状に形成されていると、対象物に対する吊り具100の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向と、のベクトルが合わない場合があり、対象物をバランスよく吊り上げる際に都合がよくない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、対象物に対する吊り具の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向とのベクトルを合わせて、対象物をバランスよく吊り上げやすくすることが可能な吊り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図9に示すように、対象物1に形成された挿通孔4aに装着される吊り具10において、
保持部11(21)と、
平行に配置されるとともに前記保持部11(21)によって保持され、かつ、それぞれ軸心方向を中心に回動可能な一対の軸部12,13と、
前記一対の軸部12,13それぞれの一端部から前記軸心と交差する方向に突出する係止部14,15と、
前記一対の軸部12,13それぞれの他端部から前記軸心と交差し、かつ前記係止部14,15と交差する方向に突出する吊り部16,17と、を備え、
前記軸部12,13と前記吊り部16,17は一体形成され、
前記吊り部16,17は、
前記軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aと、
当該吊り部16,17が折曲されることで形成され、前記第一折曲部16a,17aよりも前記軸部12,13の一端部側で、かつ前記第一折曲部16a,17aよりも前記軸部12,13から遠い側に位置する第二折曲部16b,17bと、を有しており、
前記吊り部16,17における先端部16c,17cは、前記第二折曲部16b,17bから前記軸部12,13に向かって伸長しており、
前記保持部11(21)は、
前記吊り部16,17における前記先端部16c,17cよりも前記軸部12,13の一端部側に位置する第一保持片11a(21a)と、
前記軸部12,13の他端部側に位置する第二保持片11b(21b)と、を有しており、
前記吊り部16,17における前記先端部16c,17cは、前記軸部12,13の外周面に近接し、かつ前記第一保持片11a(21a)と前記第二保持片11b(21b)との間に配置されており、
各前記係止部14,15は、各前記吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、記吊り部16,17が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成され、
前記各係止部14,15は、同一方向に揃った状態で前記挿通孔4aに挿通されることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、軸部12,13と吊り部16,17は一体形成され、吊り部16,17は、軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aを有しているので、吊り部16,17に、クレーンフック又はワイヤーロープ8用の連結金具9を引っ掛けて吊り上げ作業を行った場合に、クレーンフック又は連結金具9は、第一折曲部16a,17aが形成された部位に位置取りした状態となる。つまり、吊り上げ作業時にかかる力のポイントが定常的なものとなる。そのため、対象物1に対する吊り具10の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向とのベクトルを合わせることができ、対象物1をバランスよく吊り上げやすくすることが可能となる。
また、吊り部16,17は、当該吊り部16,17が折曲されることで形成され、第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13の一端部側で、かつ第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13から遠い側に位置する第二折曲部16b,17bを有しており、吊り部16,17における先端部16c,17cは、第二折曲部16b,17bから軸部12,13に向かって伸長しているので、吊り部16,17を、略三角形状に形成することができる。これにより、例えば吊り部16,17が略円状に形成される場合とは異なり、吊り上げ作業時に、クレーンフック又はワイヤーロープ8用の連結金具9が吊り部16,17に沿って移動しにくくなるので、対象物1を吊り上げてもバランスを崩しにくくなる。
また、吊り部16,17における先端部16c,17cは、軸部12,13の外周面に近接し、かつ第一保持片11a(21a)と第二保持片11b(21b)との間に配置されているので、吊り部16,17における先端部16c,17cによって、保持部11(21)が、軸部12,13の軸心方向に沿って移動することを抑えることができる。また反対に、軸部12,13を軸心方向に移動させようとした場合に、吊り部16,17における先端部16c,17cが、第一保持片11a(21a)と第二保持片11b(21b)に接する状態となるので、軸部12,13が、軸心方向に移動することを抑えることができる。そのため、一対の軸部12,13が保持部11(21)によって保持された状態を維持することができる。
【0011】
請求項に記載の発明は、例えば図2図9に示すように、請求項に記載の吊り具10において、
前記吊り部16,17における前記先端部16c,17cは、前記軸部12,13の外周面に対して溶接されていない状態となっていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明によれば、吊り部16,17における先端部16c,17cは、軸部12,13の外周面に対して溶接されていない状態となっているので、吊り部16,17は、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が引っ掛けられて吊り上げられた際に弾性力を発揮することになる。
これにより、例えば対象物1の重量によって係止部14,15が変形しようとする前に吊り部16,17の弾性力が働くので、係止部14,15の変形を抑えることができる。係止部14,15よりも先に吊り部16,17が変形した場合であっても、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が第一折曲部16a,17aから第二折曲部16b,17bへと移動して第二折曲部16b,17bに引っ掛けられた状態で、ある程度持ちこたえることが可能となるので安全性に優れる。
【0015】
請求項に記載の発明は、例えば図7図9に示すように、対象物1に形成された挿通孔4aに装着される吊り具10において、
保持部11(21)と、
平行に配置されるとともに前記保持部11(21)によって保持され、かつ、それぞれ軸心方向を中心に回動可能な一対の軸部12,13と、
前記一対の軸部12,13それぞれの一端部から前記軸心と交差する方向に突出する係止部14,15と、
前記一対の軸部12,13それぞれの他端部から前記軸心と交差し、かつ前記係止部14,15と交差する方向に突出する吊り部16,17と、
前記対象物1における前記挿通孔4aに装着された場合に、記吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する開き抑制部18,19,21と、を備え、
前記軸部12,13と前記吊り部16,17は一体形成され、前記吊り部16,17は、前記軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aを有しており、
各前記係止部14,15は、各前記吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、前記各吊り部16,17が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成され、
前記各係止部14,15は、同一方向に揃った状態で前記挿通孔4aに挿通されることを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、軸部12,13と吊り部16,17は一体形成され、吊り部16,17は、軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aを有しているので、吊り部16,17に、クレーンフック又はワイヤーロープ8用の連結金具9を引っ掛けて吊り上げ作業を行った場合に、クレーンフック又は連結金具9は、第一折曲部16a,17aが形成された部位に位置取りした状態となる。つまり、吊り上げ作業時にかかる力のポイントが定常的なものとなる。そのため、対象物1に対する吊り具10の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向とのベクトルを合わせることができ、対象物1をバランスよく吊り上げやすくすることが可能となる。
また、対象物1における挿通孔4aに装着された場合に、各吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する開き抑制部18,19,21を備えるので、例えば対象物1を仮置きした時などに、各吊り部16,17が自重によって互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制することができるので、吊り上げ作業をスムーズに進行させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象物に対する吊り具の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向とのベクトルを合わせることができ、対象物をバランスよく吊り上げやすくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】クレーンによる吊り上げ作業の態様を示す斜視図である。
図2】吊り具が設けられたスリングを示す図である。
図3】吊り具を示す斜視図である。
図4】挿通孔に対して装着される際の吊り具の態様を示す図である。
図5】吊り上げ作業時の吊り具の態様を示す図である。
図6】保持部の表示を省略した吊り具の、クレーンによる吊り上げ作業時における態様を示す図である。
図7】開き抑制部を備えた吊り具の一例を示す図である。
図8】開き抑制部を備えた吊り具の一例を示す図である。
図9】開き抑制部を備えた吊り具の一例を示す図である。
図10】保持部の表示を省略した従来の吊り具の、クレーンによる吊り上げ作業時における態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0020】
図1において符号1は、クレーンによって吊り上げられる対象物を示す。この対象物1は、いわゆるユニット式建物の建築に用いられる建物ユニットであり、重量物とされている。
ここで、ユニット式建物とは、予め工場等で生産された多数の建物ユニット1を輸送車両で搬送し、建築現場において配列積層することによって建築されるものである。また、建物ユニット1は、四隅の柱2における上端部間及び下端部間を、仕口部材4を介して天井梁3及び床梁(図示省略)によってそれぞれ連結した略直方体状フレームである。
【0021】
建物ユニット1は、クレーンによって4点吊りされる。本実施形態においては、四隅の柱2の上端部に設けられた仕口部材4の上面(すなわち、建物ユニット1の上面における四隅)が、本実施形態の吊り具10が取り付けられるポイントP1~P4となっている。
なお、本実施形態における吊り具10は、図2に示すように、スリング6におけるワイヤーロープ8の先に取り付けられている。また、仕口部材4の上面には、吊り具10が装着される長孔状の挿通孔4aが形成されている。
【0022】
スリング6は、調整金具7と、ワイヤーロープ8と、連結金具9と、を備える。
なお、ワイヤーロープ8は、2本であり、各ワイヤーロープ8の両端部それぞれに吊り具10が設けられる。
【0023】
調整金具7は、2本のワイヤーロープ8を保持するものであり、下側板部7aと、上側板部7bと、フック引掛部7cと、締付部7dと、を有する。
下側板部7aは、底板と、この底板の両端部から上方に突出する側板と、からなり、双方の側板には、2本のワイヤーロープ8が挿通されている。また、底板には、逆U字型のフック引掛部7cの両端部が溶接固定されている。
上側板部7bは、天板と、この天板の両側縁から下方に突出する側板と、からなり、天板の両端部には、フック引掛部7cにおける両側の軸が貫通した状態となっている。なお、上側板部7bは、フック引掛部7cにおける両側の軸に沿って上下に移動自在とされている。この上側板部7bにおける両側縁の側板は、ワイヤーロープ8の長さ方向に沿って設けられている。
フック引掛部7cは、クレーンのクレーンフック5が引っ掛けられるものであり、上述のように逆U字型に形成されている。
締付部7dは、下側板部7aと上側板部7bとの間隔を縮めてワイヤーロープ8を挟み込むためのものであり、下側板部7aにおける底板の中央部と、上側板部7bにおける天板の中央部と、の間に挿通されるボルト及びアイナットを有する。すなわち、ボルトが、下側板部7aと上側板部7bとを貫通するように設けられ、ボルトの先端にアイナットが設けられている。そのため、アイナットを締め付けることで下側板部7aと上側板部7bとの間隔が縮まるようになっている。
このような調整金具7を用いることにより、2本のワイヤーロープ8の位置調整を行った後に、当該調整金具7に対するワイヤーロープ8の位置を固定して保持できる。
【0024】
ワイヤーロープ8の両端部は環状に形成されており、後述する連結金具9を装着できるようになっている。
【0025】
連結金具9は、ワイヤーロープ8における環状に形成された両端部に装着されるU字型のシャックルであり、両端部間にボルト9aが挿通固定されている。ボルト9aを取り外すことによって連結金具9をワイヤーロープ8の両端部に設けることができ、さらに、連結金具9に吊り具10を設けることができる。
【0026】
吊り具10は、図2図5に示すように、保持部11と、一対の軸部12,13と、一対の係止部14,15と、一対の吊り部16,17と、を備える。そして、軸部12と係止部14と吊り部16、及び、軸部13と係止部15と吊り部17のそれぞれは、断面正円状に形成された金属製の丸棒が折曲加工されることによって構成されている。
このような吊り具10は、建物ユニット1の上面に設けられるものであって、一対の係止部14,15が下側に、一対の吊り部16,17が上側となるように用いられる。
【0027】
軸部12,13は上下方向に伸びる棒状部であり、一端部(下端部)に係止部14,15が一体形成され、他端部(上端部)に吊り部16,17が一体形成されている。
一対の軸部12,13は、平行に配置されるとともに保持部11によって保持されている。そして、これら一対の軸部12,13は、軸心方向を中心に回動可能となっている。
【0028】
係止部14,15は、軸部12,13の一端部を軸部12,13の軸心と交差する方向に折り曲げ、その先端が軸部12,13の軸心と交差する方向に突出するように形成された部位である。すなわち、吊り具10のうち、軸部12,13から係止部14,15にかけての部位は、略L字状に形成されている。
【0029】
吊り部16,17は、軸部12,13の他端部を軸部12,13の軸心と交差する方向に、かつ係止部14,15の突出方向と交差する方向に突出するように形成された部位である。
より詳細に説明すると、吊り部16,17の突出方向と、係止部14,15の突出方向は、図4(c),図5(c)等に示すように平面視において90度異なる。
さらに、吊り部16,17は、軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aと、当該吊り部16,17が折曲されることで形成され、第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13の一端部(下端部)側で、かつ第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13から遠い側に位置する第二折曲部16b,17bと、を有する。そして、吊り部16,17における先端部16c,17cは、第二折曲部16b,17bから軸部12,13に向かって水平に伸長している。軸部12,13の延在方向と、吊り部16,17における先端部16c,17cの伸長方向は、図3図5に示すように、90度異なる。
すなわち、吊り具10のうち、軸部12,13から吊り部16,17にかけての部位は、あたかも略P字を成すように形成されているが、略P字形状のうち環状の部分は、第一折曲部16a,17aと第二折曲部16b,17bとを有し、先端部16c,17cは、第二折曲部16b,17bから軸部12,13に向かって伸長しているため、“円”や“半円”よりも、“三角形(直角三角形)”に近い形状となっている。
【0030】
また、吊り部16,17における先端部16c,17cは、軸部12,13の外周面に近接して配置されているが、軸部12,13の外周面に対して溶接されていない状態となっている。
より詳細に説明すると、吊り部16,17における先端部16c,17cは、当該先端部16c,17cにおける軸部12,13側の端面が、軸部12,13の外周面に対して極めて近い状態か、若しくは接していてもよい状態で配置されている。ただし、軸部12,13の外周面に対しては溶接されていない状態となっている。そのため、吊り部16,17は、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が引っ掛けられて吊り上げられた際に弾性力を発揮する。
【0031】
保持部11は、一対の軸部12,13を平行に配置した状態で保持するものであり、一対の軸部12,13が、軸心の方向に沿って移動することを抑制する機能も有している。
このような保持部11は、図3図5に示すように、第一保持片11aと、第二保持片11bと、保持板11cと、を有する。
【0032】
保持板11cは、一対の吊り部16,17が同一方向に揃って閉じた状態において、一対の軸部12,13を挟んで当該一対の吊り部16,17とは反対側の位置に配置された金属製の板状体である。そして、この保持板11cは、左右方向よりも上下方向に長く形成され、一対の軸部12,13の外周面に沿って配置されている。
また、この保持板11cにおける下端部の両側縁には、側方に張り出す張出部11dが一体形成されている。つまり、保持板11cは、逆T字型に形成されている。一方の張出部11d先端から他方の張出部11d先端までの寸法は、建物ユニット1に形成された長孔状の挿通孔4aにおける最長孔径寸法よりも長くなるように設定されている。
【0033】
なお、保持板11cの幅寸法は、一対の軸部12,13を並べた場合の寸法よりも広くなるように設定されている。すなわち、保持板11cの幅寸法は、一方の軸部12の直径と他方の軸部13の直径とを足し合わせた寸法よりも長い。
これにより、一対の吊り部16,17を互いに離れる方向に開いた状態にした場合に、先端部16c,17cが保持板11cの側縁部に接触し、それ以上開かないようにすることができる。つまり、保持板11cの側縁部が、一対の吊り部16,17における開き動作のストッパーとして機能することになる。
【0034】
第一保持片11a及び第二保持片11bは、保持板11cの一側縁から他側縁にかけて設けられて、保持板11cと共に一対の軸部12,13を抱えるようにして保持する金属製の板状体である。
そして、第一保持片11aは、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cよりも軸部12,13の一端部(下端部)側に位置しており、第二保持片11bは、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cよりも軸部12,13の他端部(上端部)側に位置している。換言すれば、軸部12,13の外周面に近接して配置された吊り部16,17における先端部16c,17cは、第一保持片11aと第二保持片11bとの間に配置されている。
なお、第一保持片11aと第二保持片11bとの間隔寸法は、保持板11cの一側縁から他側縁にかけて一定であり、当該間隔寸法は、吊り部16,17における先端部16c,17cの直径よりも僅かに長く設定されている。
【0035】
また、第一保持片11a及び第二保持片11bは、保持板11cとは反対側の部分が、一対の軸部12,13における外周面に沿うように湾曲して形成されている。すなわち、本実施形態における第一保持片11a及び第二保持片11bは、平面視又は底面視において略W字型に形成されている。ただし、これに限られるものではなく、第一保持片11a及び第二保持片11bは、平面視又は底面視において略U字型に形成されてもよい。
【0036】
以上のように構成された吊り具10は、図3等に示すように、一対の係止部14,15が、一対の吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態で同一方向に揃い、一対の吊り部16,17が同一方向に揃った状態で互いに離れる方向に突出するように構成されている。
一対の吊り部16,17が互いに離れる方向に開いて、一対の係止部14,15が同一方向に揃った状態で、これら一対の係止部14,15が挿通孔4aに挿通されるようになっている。そして、一対の係止部14,15が挿通孔4aに挿通された状態で、一対の吊り部16,17が同一方向に揃うと、一対の係止部14,15が互いに離れる方向に突出する。これにより、一対の係止部14,15を、対象物である建物ユニット1に取り付けることができる。
【0037】
次に、吊り具10が設けられたスリング6を用いて建物ユニット1を吊り上げる方法について説明する。
【0038】
まず、スリング6における調整金具7の締付部7dを緩めておき、ワイヤーロープ8の長さを、調整金具7からワイヤーロープ8先端までの寸法が、だいたい均等になるように調節する。長さ調節ができたら、締付部7dを締めてワイヤーロープ8が動かないように固定する。
【0039】
続いて、連結金具9のボルト9aを取り外して、連結金具9を、吊り具10の一対の吊り部16,17に通す。そして、環状に形成されたワイヤーロープ8の両端部にボルト9aを通すようにしながらボルト9aを連結金具9に取り付ける。これにより、吊り具10とワイヤーロープ8とを連結金具9によって連結することができる。
2本のワイヤーロープ8における各端部に、合計4つの吊り具10をそれぞれ取り付けるようにする。
【0040】
続いて、吊り具10における一対の係止部14,15を同一方向に揃えて閉じた状態にし、建物ユニット1における仕口部材4の上面に形成された挿通孔4aに挿通させる。そして、建物ユニット1における4つのポイントP1~P4のそれぞれに吊り具10を取り付ける。すなわち、2本のワイヤーロープ8が、四方向に向かって伸びた状態となる。
【0041】
なお、4つの吊り具10を取り付けるにあたって、これら4つの吊り具10の取り付け向きは統一させるようにすることが望ましい。
すなわち、図6(a)に示すように、一対の吊り部16,17を、吊り具10が傾いている方向に向けないようにして取り付けるか、図6(b)に示すように、一対の吊り部16,17を、吊り具10が傾いている方向に向けるようにして取り付けるか、を統一させるようにする。
【0042】
続いて、スリング6における調整金具7のフック引掛部7cにクレーンフック5を引っ掛けてから、クレーンによってクレーン用ワイヤーロープを巻き上げ、クレーンフック5を上方に移動させる。この時、建物ユニット1を完全に吊り上げない状態(建物ユニット1の下面が接地している状態)に保ち、2本のワイヤーロープ8の緊張状態にさせる。
四方向に伸びたワイヤーロープ8の緊張状態が略等しい状態であれば吊り替え作業を開始し、緊張状態が等しくない状態であれば、調整金具7の締付部7dを緩めてワイヤーロープ8の長さ調節を行う。なお、ワイヤーロープ8の長さ調節を行う場合は、クレーンによるクレーン用ワイヤーロープの巻き上げを緩め、ワイヤーロープ8の緊張状態も緩めるようにすることが好ましい(すなわち、仮置きの状態)。長さ調節を行い、四方向に伸びたワイヤーロープ8の緊張状態が略等しい状態となったら吊り替え作業を開始する。
【0043】
なお、クレーンによる吊り上げ作業を開始する前に、4つの吊り具10における一対の係止部14,15が、建物ユニット1における仕口部材4の上面を構成する板部の裏面にしっかりと当たった状態となっているかどうかを確認する。
【0044】
その他にも周囲の状況などの安全性が確認されたら、クレーンによる吊り上げ作業を開始し、建物ユニット1を吊り上げて所望の位置まで運搬して適宜設置する。
以上のような吊り上げ作業は、工場等で生産された建物ユニット1を輸送車両に載せる際と、建築現場において輸送車両から地面に降ろす際、若しくは輸送車両から所定の位置に設置する際に行われる。
【0045】
そして、吊り上げ作業が完了したら、クレーンによるクレーン用ワイヤーロープの巻き上げを緩め、ワイヤーロープ8の緊張状態も緩めるようにし、4つの吊り具10における一対の吊り部16,17を互いに離れる方向に開いた状態とし、一対の係止部14,15を同一方向に揃えて閉じた状態にする。そして、一対の係止部14,15を仕口部材4の上面に形成された挿通孔4aから抜き取るようにする。
以上のようにして、吊り具10が設けられたスリング6を用いて建物ユニット1を吊り上げて所望の位置に置くことができる。
【0046】
なお、本実施形態においては対象物として建物ユニット1が用いられているが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。建物ユニット1と同様に建築材料の一つである建築用パネルや家具、電化製品、物流に用いられるコンテナ、乗用車を始めとする各種の乗物、工場生産ラインを流れる各種の製造物等、様々なものが対象物として挙げられる。
対象物の大きさも特に限定されず、対象物の大きさに合わせて吊り具10の大きさも適宜変更されるものとする。すなわち、対象物は、吊り具10の係止部14,15が挿通される挿通孔4aが形成されていればよく、重量物である必要もない(軽量物であってもよい。)。また、吊り具10は、係止部14,15が、対象物に形成された挿通孔4aに挿通可能であって、かつ対象物1に係止可能なサイズであればよい。
【0047】
本実施の形態によれば、軸部12,13と吊り部16,17は一体形成され、吊り部16,17は、軸部12,13に対して鋭角に折曲形成された第一折曲部16a,17aを有しているので、吊り部16,17に、クレーンフック又はワイヤーロープ8用の連結金具9を引っ掛けて吊り上げ作業を行った場合に、クレーンフック又は連結金具9は、第一折曲部16a,17aが形成された部位に位置取りした状態となる。つまり、吊り上げ作業時にかかる力のポイントが定常的なものとなる。そのため、対象物1に対する吊り具10の傾斜角度と、クレーンによる吊り方向とのベクトルを合わせることができ、対象物1をバランスよく吊り上げやすくすることが可能となる。
【0048】
また、吊り部16,17は、当該吊り部16,17が折曲されることで形成され、第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13の一端部側で、かつ第一折曲部16a,17aよりも軸部12,13から遠い側に位置する第二折曲部16b,17bを有しており、吊り部16,17における先端部16c,17cは、第二折曲部16b,17bから軸部12,13に向かって伸長しているので、吊り部16,17を、略三角形状に形成することができる。
これにより、例えば吊り部16,17が略円状に形成される場合とは異なり、吊り上げ作業時に、クレーンフック又はワイヤーロープ8用の連結金具9が吊り部16,17に沿って移動しにくくなるので、対象物1を吊り上げてもバランスを崩しにくくなる。
【0049】
また、吊り部16,17における先端部16c,17cは、軸部12,13の外周面に対して溶接されていない状態となっているので、吊り部16,17は、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が引っ掛けられて吊り上げられた際に弾性力を発揮することになる。
これにより、例えば対象物1の重量によって係止部14,15が変形しようとする前に吊り部16,17の弾性力が働くので、係止部14,15の変形を抑えることができる。係止部14,15よりも先に吊り部16,17が変形した場合であっても、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が第一折曲部16a,17aから第二折曲部16b,17bへと移動して第二折曲部16b,17bに引っ掛けられた状態で、ある程度持ちこたえることが可能となるので安全性に優れる。
つまり、吊り具10に力がかかった場合の変形ポイントが、一対の係止部14,15ではなく一対の吊り部16,17となり、当該一対の吊り部16,17が、上述のように溶接されていない状態であるために弾性力を発揮するので、例えば一対の吊り部16,17が軸部12,13に溶接された場合に比して、吊り具10自体を変形しにくくすることができる。
【0050】
また、吊り部16,17における先端部16c,17cは、軸部12,13の外周面に近接し、かつ第一保持片11aと第二保持片11bとの間に配置されているので、吊り部16,17における先端部16c,17cによって、保持部11が、軸部12,13の軸心方向に沿って移動することを抑えることができる。また反対に、軸部12,13を軸心方向に移動させようとした場合に、吊り部16,17における先端部16c,17cが、第一保持片11aと第二保持片11bに接する状態となるので、軸部12,13が、軸心方向に移動することを抑えることができる。そのため、一対の軸部12,13が保持部11によって保持された状態を維持することができる。
【0051】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
また、以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0052】
〔変形例1〕
本変形例における吊り具10は、当該吊り具10が建物ユニット1における挿通孔4aに装着された場合に、各吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する開き抑制部18を更に備えている。
開き抑制部18は、図7に示すように、一対の吊り部16,17のうち少なくとも一方の内側面(一対の吊り部16,17が閉じる方向の面を指す。)に固定された磁石とされている。
つまり、本変形例においては、一対の吊り部16,17が同一方向に揃えられて閉じた状態の場合には、一方の吊り部16の内側面に固定された磁石18が、他方の吊り部17の内側面に吸着し、一対の吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制できるようになっている。
なお、図示例においては、一方の吊り部16における第二折曲部16bの内側面に磁石18が固定されている。
【0053】
磁石18が、上述のように一対の吊り部16,17のうち少なくとも一方に固定される場合、吊り部16,17ひいては吊り具10を構成する金属としては強磁性体(例えば鉄やコバルト、ニッケル、各種合金等)のものが採用される。
一対の吊り部16,17の双方に磁石18が固定される場合は、双方の磁石18における異なる極が正対するようにして配置されるか、あえて位置をずらして配置して二か所で磁石18を吸着させるようにしてもよい。
また、磁石18が設けられる数も特に限定されるものではなく、一つでもよいし、複数であってもよい。
【0054】
本変形例によれば、例えば建物ユニット1を仮置きした時などに、磁石18によって、各吊り部16,17が自重によって互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制することができるので、吊り上げ作業をスムーズに進行させることができる。
【0055】
〔変形例2〕
本変形例における吊り具10には、開き抑制部19として、図8に示すように、内側に一対の吊り部16,17が通されるリングが設けられている。
リング19は、無端状ではなく、金属製の線材(例えば針金)が螺旋状に巻かれた状態のものであり、一対の吊り部16,17に対して後付けできるようになっている。
【0056】
このようなリング19は、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cから第一折曲部16a,17aを通過して一対の軸部12,13まで移動可能となっており、最終的には、保持部11の上端に接するまで移動できるようになっている。
リング19の直径は、一方の軸部12の直径と他方の軸部13の直径とを足し合わせた寸法よりも長く、保持部11の幅寸法と略等しく設定されている。
【0057】
リング19によって一対の吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する場合は、図8(b)に示すように、リング19を一対の吊り部16,17側に移動させるようにする。特に、第二折曲部16b,17bの位置や、先端部16c,17cの位置に移動させておくことが望ましい。
このようにリング19を一対の吊り部16,17側に移動させておけば、これら一対の吊り部16,17はリング19の内周面に当たり、互いに離れる方向に開きにくくなる。
【0058】
反対に、リング19を装着したまま一対の吊り部16,17を互いに離れる方向に開いた状態とする場合は、リング19を、一対の軸部12,13側に移動させる。一対の軸部12,13は、それぞれ軸心方向を中心に回動するため、回動動作がリング19に影響されない。これにより、リング19を装着したまま、一対の吊り部16,17を、支障なく互いに離れる方向に開いた状態とすることができる。
【0059】
すなわち、開き抑制部としてリング19を採用する場合は、一対の吊り部16,17を互いに離れる方向に開いた状態とすることができるポイントと、開いた状態とすることを抑制するポイントが生じることになり、必要に応じて、リング19を適宜移動させるようにする。
本変形例によれば、例えば建物ユニット1を仮置きした時などに、リング19によって、各吊り部16,17が自重によって互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制することができるので、吊り上げ作業をスムーズに進行させることができる。
【0060】
〔変形例3〕
本変形例における吊り具10は、当該吊り具10が建物ユニット1における挿通孔4aに装着された場合に、各吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制する開き抑制部21を更に備えている。
開き抑制部21は、図9に示すように、一対の軸部12,13を平行に配置した状態で保持する保持部とされている。
【0061】
本変形例における保持部21は、第一保持片21aと、第二保持片21bと、保持板21cと、を有する。なお、保持板21cは、上記した実施形態における保持板11cと同様に構成されている。本変形例における保持板21cにも、側方に張り出す張出部21dが一体形成されている。
【0062】
第一保持片21a及び第二保持片21bは、図9に示すように同一の方向に傾斜して形成されている。本変形例においては、これら第一保持片21a及び第二保持片21bは、保持板21cから上方に向かって傾斜するように形成されている。
なお、本変形例においては、第一保持片21a及び第二保持片21bの双方が、保持板21cから上方に向かって傾斜するように形成されるものとしたが、少なくとも上側に位置する第二保持片21bが、保持板21cから上方に向かって傾斜するように形成されるものとしてもよい。
【0063】
そして、第一保持片21aと第二保持片21bとの垂直方向における間隔寸法は、保持板21cの一側縁から他側縁にかけて一定であり、当該垂直方向における間隔寸法は、吊り部16,17における先端部16c,17cの直径よりも僅かに長く設定されている。そのため、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cは、第一保持片21aの下縁部には定常的に接した状態となっており、第二保持片21bの上縁部にも接しやすい状態となっている。
例えば吊り具10が、一対の軸部12,13が鉛直方向に沿うように配置された場合において、一対の吊り部16,17が、同一方向に揃った状態から互いに離れる方向に移動する場合は、水平方向に回転することになる。
この時、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cは、第一保持片21aの下縁部を擦るようにしながら移動するため、当該先端部16c,17cと第一保持片21aの下縁部との間には摩擦が生じる。すなわち、この摩擦を利用して、各吊り部16,17が互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制できるようになっている。
【0064】
以上のように一対の吊り部16,17が水平方向に回転する場合、保持部21は、図9に示すように、一対の軸部12,13の軸心方向に沿って上下に移動する。この時、第一保持片21a及び第二保持片21bと、一対の軸部12,13の外周面との間にも摩擦が生じるようになっている。つまり、本変形例においては、保持部21周りに摩擦が生じやすい状態となっている。そのため、一対の吊り部16,17を水平方向に回転させる場合は、必要に応じて、保持部21の上下方向への移動動作を同時的に行うようにする。
【0065】
本変形例によれば、例えば建物ユニット1を仮置きした時などに、保持部21によって、各吊り部16,17が自重によって互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制することができるので、吊り上げ作業をスムーズに進行させることができる。
【0066】
〔参考例〕
以下、参考例について説明する。以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0067】
〔参考例1〕
上記実施形態と変形例3において挙げられた保持部11,21は、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cよりも軸部12,13の下端部側に位置する第一保持片11a,21aと、軸部12,13の上端部側に位置する第二保持片11b,21bとを有している。換言すれば、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cは、第一保持片11a,21aと第二保持片11b,21bとの間に配置されている。
また、一対の吊り部16,17における先端部16c,17cの軸部12,13側端面は、第一保持片11a,21a及び第二保持片11b,21bの外側面よりも奥に入り込んで、軸部12,13の外周面に近接している。
【0068】
このような構成は、上記実施形態において説明したような略三角形に近い形状の吊り部16,17を備えていない吊り具にも適用可能とされている。すなわち、例えば、円や半円に近い形状の吊り部を備えた吊り具(例えば、先行技術文献として挙げられた特許文献1の吊り具)や、その他の形状の吊り部を備えた吊り具にも適用することができる。
より詳細に説明すると、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が引っ掛けられる吊り部における先端部が、軸部に向かって伸長し、保持部11,21における第一保持片11a,21aと第二保持片11b,21bとの間に配置され、かつ、その軸部側端面が、第一保持片11a,21a及び第二保持片11b,21bの外側面よりも奥に入り込んで、軸部12,13の外周面に近接している状態であれば、上記の保持部11,21を適用することが可能となっている。
【0069】
本参考例によれば、吊り部における先端部によって、保持部11,21が、軸部12,13の軸心方向に沿って移動することを抑えることができるとともに、軸部12,13が、軸心方向に移動することを抑えることができる。これに加え、保持部11,21に対して、例えば一対の軸部12,13を同期回動させる同期手段を具備させる必要がないので、保持部11,21の構造を簡素化することができて汎用性を高めることができ、コストの低減を図ることができる。
【0070】
〔参考例2〕
上記の各変形例において挙げられた開き抑制部18,19,21は、上記実施形態において説明したような略三角形に近い形状の吊り部16,17を備えていない吊り具にも適用可能とされている。すなわち、例えば、円や半円に近い形状の吊り部を備えた吊り具(例えば、先行技術文献として挙げられた特許文献1の吊り具)や、その他の形状の吊り部を備えた吊り具にも適用することができる。
より詳細に説明すると、クレーンフック5やワイヤーロープ8の連結金具9が引っ掛けられる吊り部における先端部が、軸部に向かって伸長し、保持部11,21における第一保持片11a,21aと第二保持片11b,21bとの間に配置され、かつ、その軸部側端面が、第一保持片11a,21a及び第二保持片11b,21bの外側面よりも奥に入り込んで、軸部12,13の外周面に近接している状態であれば、上記の開き抑制部18,19,21を適用することが可能となっている。
【0071】
本参考例によれば、吊り具が対象物1における挿通孔4aに装着された場合において例えば対象物1を仮置きした時などに、各吊り部が自重によって互いに離れる方向に開いた状態となることを抑制することができるので、吊り上げ作業をスムーズに進行させることができる。これに加え、吊り部の形状にかかわりなく吊り具に対して開き抑制部18,19,21を具備させることができるので、汎用性に優れる。
【符号の説明】
【0072】
1 建物ユニット
2 柱
3 天井梁
4 仕口部材
4a 挿通孔
5 クレーンフック
6 スリング
7 調整金具
8 ワイヤーロープ
9 連結金具
10 吊り具
11 保持部
11a 第一保持片
11b 第二保持片
11c 保持板
11d 張出部
12 軸部
13 軸部
14 係止部
15 係止部
16 吊り部
16a 第一折曲部
16b 第二折曲部
16c 先端部
17 吊り部
17a 第一折曲部
17b 第二折曲部
17c 先端部
18 磁石
19 リング
21 保持部
21a 第一保持片
21b 第二保持片
21c 保持板
21d 張出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10