(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御システム及び電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20221024BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2020500488
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004900
(87)【国際公開番号】W WO2019159904
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018027178
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】西城 和幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敦
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127085(JP,A)
【文献】特開2012-178935(JP,A)
【文献】特開2017-147833(JP,A)
【文献】特開2018-11452(JP,A)
【文献】特開2015-186290(JP,A)
【文献】国際公開第2014/076832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要量を特定する需要量特定部と、
複数の設備それぞれにおける電力使用状況を特定する状況特定部と、
前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信する主制御部と、
を有する電力制御装置。
【請求項2】
前記主制御部は、前記蓄電装置の蓄積電力量と前記電力使用状況が示す使用電力量との関係に基づいて前記放電要求情報を送信するか否かを判定する、
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
設備に関連付けて電力使用の傾向を記憶する記憶部をさらに有し、
前記状況特定部は、記憶された傾向に基づいて前記電力使用状況を特定する、
請求項1又は2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記状況特定部は、前記電力使用状況を特定する対象となる前記設備が属する地域の気象情報と、前記記憶部に記憶された前記傾向とに基づいて、前記電力使用状況を特定する、
請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記主制御部は、前記電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む前記放電要求情報を前記監視装置に送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項6】
前記主制御部は、前記電力使用状況を特定する対象となる前記設備と関連付けられた電力小売事業者の前記電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む前記放電要求情報を送信する、
請求項5に記載の電力制御装置。
【請求項7】
前記主制御部は、一以上の前記監視装置から受信した放電許可量に基づいて、前記放電許可量を送信した前記一以上の監視装置と異なる前記監視装置に送信する放電要求量を決定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項8】
前記主制御部は、前記蓄電装置からの放電への対価を示す対価情報を含む前記放電要求情報を前記監視装置に送信する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項9】
前記主制御部は、前記電力使用状況を特定する対象となる設備に関連付けられたユーザが当該設備外の所定の充電装置で前記ユーザの電気機器に充電したことを検出した場合に、当該ユーザに関連付けられた監視装置に前記放電要求情報を送信する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項10】
前記状況特定部は、前記設備としての建物それぞれにおける電力使用状況を特定し、
前記主制御部は、前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の建物から選択した一以上の建物内の電気機器が蓄積電力を使用可能な前記蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記蓄電装置を制御する監視装置に送信する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の電力制御装置。
【請求項11】
複数の設備に設置された複数の蓄電装置からの放電動作を制御する電力制御装置と、前記複数の設備に設置され、前記複数の設備それぞれにおける電力使用状況を監視する複数の監視装置と、を備え、
前記監視装置は、
前記設備における前記電力使用状況を監視する電力監視部と、
前記設備に設置された前記蓄電装置からの充放電を制御する副制御部と、
を有し、
前記電力制御装置は、
電力需要量を特定する需要量特定部と、
前記複数の設備それぞれに設置された前記監視装置から取得した前記電力使用状況を取得することにより、前記複数の設備それぞれにおける前記電力使用状況を特定する状況特定部と、
前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信する主制御部と、
を有し、
前記副制御部は、前記主制御部から前記放電要求情報を受信したことに応じて前記蓄電装置に放電させる、
電力制御システム。
【請求項12】
前記監視装置は、前記設備に設置された前記蓄電装置の蓄積電力量を監視する蓄積電力監視部をさらに有し、
前記副制御部は、前記主制御部から前記放電要求情報を受信した時点における前記電力使用状況及び前記蓄積電力量に基づいて、前記蓄電装置から放電するか否かを決定する、
請求項11に記載の電力制御システム。
【請求項13】
前記副制御部は、前記電力使用状況が示す使用電力量に基づいて、前記蓄電装置から商用電力網に放電するか、前記監視装置が設置された設備内の電気機器に放電するかを決定する、
請求項11又は12に記載の電力制御システム。
【請求項14】
前記副制御部は、前記使用電力量に基づいて、前記蓄電装置への充電を開始するまでの間に前記電気機器に電力を供給することにより放電しても余剰電力があると判定した場合に、前記蓄電装置に蓄えられた電力の一部を前記商用電力網に放電させる、
請求項13に記載の電力制御システム。
【請求項15】
前記副制御部は、前記商用電力網への放電中に前記商用電力網からの電力の供給が停止したことを検知した場合に、前記商用電力網への放電を停止して、前記電気機器への電力の供給を開始する、
請求項13又は14に記載の電力制御システム。
【請求項16】
前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備内での前記使用電力量がモード判定閾値以上ある場合に、前記蓄電装置から前記電気機器に電力を供給することにより放電し、前記使用電力量がモード判定閾値未満の場合に前記蓄電装置から前記商用電力網に放電するように制御する、
請求項13から15のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項17】
前記副制御部は、前記主制御部から受信した前記放電要求情報に基づいて、前記モード判定閾値を決定する、
請求項16に記載の電力制御システム。
【請求項18】
前記副制御部は、前記主制御部から受信した前記放電要求情報に含まれる対価情報が示す前記蓄電装置からの放電への対価と、前記商用電力網から電力を購入するための費用との関係に基づいて前記モード判定閾値を決定する、
請求項17に記載の電力制御システム。
【請求項19】
前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備の周辺環境条件に基づいて前記モード判定閾値を決定する、
請求項16から18のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項20】
前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備内の複数の電気機器が有する前記蓄電装置からの充放電を制御する、
請求項11から19のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項21】
前記主制御部は、前記監視装置から前記蓄電装置の蓄積電力量を取得し、取得した前記蓄積電力量が所定量以上である場合に、前記蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を前記監視装置に送信する、
請求項11から20のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項22】
前記副制御部は、前記蓄電装置に充電可能な発電設備から充電された場合の充電量、及び前記蓄電装置が放電した場合の放電量を前記主制御部に通知する、
請求項11から21のいずれか一項に記載の電力制御システム。
【請求項23】
コンピュータが実行する、
電力需要量を特定するステップと、
複数の設備それぞれにおける電力使用状況を特定するステップと、
前記電力需要量がモード判定閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信するステップと、
を有する電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池に蓄積された電力の用途を制御する電力制御装置、電力制御システム及び電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に設置された太陽光発電装置により発電された電力を蓄電池に蓄えて、予め指定された時間に、蓄えられた電力を電力系統に放電するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術により、電気事業者は、電力需要が大きい時間帯に蓄電池に蓄えられた電力の供給を受けることで、発電所を増設することなく最大の電力需要に対応しやすくなる。しかしながら、従来の技術においては、建物内における電力使用状況によらず、電気事業者から送信される指示に基づいて蓄電池から放電していた。したがって、多くの電気機器が電力を消費している家庭において、その家庭に設置されている蓄電池に蓄えられた電力が電力系統に放電される一方で、同じ家庭で使用されている電気機器が電力系統を介して電力の供給を受ける状況が発生していた。その結果、電力システム全体における電力を十分に有効活用できていないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、電力をより有効に活用できるようにするための電力制御装置、電力制御システム及び電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の電力制御装置は、電力需要量を特定する需要量特定部と、複数の設備それぞれにおける電力使用状況を特定する状況特定部と、前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信する主制御部と、を有する。
【0007】
前記主制御部は、前記蓄電装置の蓄積電力量と前記電力使用状況が示す使用電力量との関係に基づいて前記放電要求情報を送信するか否かを判定してもよい。
【0008】
前記電力制御装置は、設備に関連付けて電力使用の傾向を記憶する記憶部をさらに有し、前記状況特定部は、記憶された傾向に基づいて前記電力使用状況を特定してもよい。この場合、前記状況特定部は、前記電力使用状況を特定する対象となる前記設備が属する地域の気象情報と、前記記憶部に記憶された前記傾向とに基づいて、前記電力使用状況を特定してもよい。
【0009】
前記主制御部は、前記電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む前記放電要求情報を前記監視装置に送信してもよい。また、前記主制御部は、前記電力使用状況を特定する対象となる前記設備と関連付けられた電力小売事業者の前記電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む前記放電要求情報を送信してもよい。
【0010】
前記主制御部は、一以上の前記監視装置から受信した放電許可量に基づいて、前記放電許可量を送信した前記一以上の監視装置と異なる前記監視装置に送信する放電要求量を決定してもよい。また、前記主制御部は、前記蓄電装置からの放電への対価を示す対価情報を含む前記放電要求情報を前記監視装置に送信してもよい。
【0011】
前記主制御部は、前記電力使用状況を特定する対象となる設備に関連付けられたユーザが当該設備外の所定の充電装置で前記ユーザの電気機器に充電したことを検出した場合に、当該ユーザに関連付けられた監視装置に前記放電要求情報を送信してもよい。
【0012】
前記状況特定部は、前記設備としての建物それぞれにおける電力使用状況を特定し、前記主制御部は、前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の建物から選択した一以上の建物内の電気機器が蓄積電力を使用可能な前記蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記蓄電装置を制御する監視装置に送信してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の電力制御システムは、複数の設備に設置された複数の蓄電装置からの放電動作を制御する電力制御装置と、前記複数の設備に設置され、前記複数の設備それぞれにおける電力使用状況を監視する複数の監視装置と、を備える。前記監視装置は、前記設備における前記電力使用状況を監視する電力監視部と、前記設備に設置された前記蓄電装置からの充放電を制御する副制御部と、を有する。前記電力制御装置は、電力需要量を特定する需要量特定部と、前記複数の設備それぞれに設置された前記監視装置から取得した前記電力使用状況を取得することにより、前記複数の設備それぞれにおける前記電力使用状況を特定する状況特定部と、前記電力需要量が閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信する主制御部と、を有する。前記副制御部は、前記主制御部から前記放電要求情報を受信したことに応じて前記蓄電装置に放電させる。
【0014】
前記監視装置は、前記設備に設置された蓄電装置の蓄積電力量を監視する蓄積電力監視部をさらに有し、前記副制御部は、前記主制御部から前記放電要求情報を受信した時点における前記電力使用状況及び前記蓄積電力量に基づいて、前記蓄電装置から放電するか否かを決定してもよい。
【0015】
前記副制御部は、前記電力使用状況が示す使用電力量に基づいて、前記蓄電装置から商用電力網に放電するか、前記監視装置が設置された設備内の電気機器に放電するかを決定してもよい。
【0016】
前記副制御部は、前記使用電力量に基づいて、前記蓄電装置への充電を開始するまでの間に前記電気機器に電力を供給することにより放電しても余剰電力があると判定した場合に、前記蓄電装置に蓄えられた電力の一部を前記商用電力網に放電させてもよい。
【0017】
前記副制御部は、前記商用電力網への放電中に前記商用電力網からの電力の供給が停止したことを検知した場合に、前記商用電力網への放電を停止して、前記電気機器への電力の供給を開始してもよい。
【0018】
前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備内での前記使用電力量がモード判定閾値以上ある場合に、前記蓄電装置から前記電気機器に電力を供給することにより放電し、前記使用電力量がモード判定閾値未満の場合に前記蓄電装置から前記商用電力網に放電するように制御してもよい。
【0019】
前記副制御部は、前記主制御部から受信した前記放電要求情報に基づいて、前記モード判定閾値を決定してもよい。前記副制御部は、前記主制御部から受信した前記放電要求情報に含まれる対価情報が示す前記蓄電装置からの放電への対価と、前記商用電力網から電力を購入するための費用との関係に基づいて前記モード判定閾値を決定してもよい。
【0020】
前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備の周辺環境条件に基づいて前記モード判定閾値を決定してもよい。前記副制御部は、前記監視装置が設置された設備内の複数の電気機器が有する前記蓄電装置からの充放電を制御してもよい。
【0021】
前記主制御部は、前記監視装置から前記蓄電装置の蓄積電力量を取得し、取得した前記蓄積電力量が所定量以上である場合に、前記蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を前記監視装置に送信してもよい。
【0022】
前記副制御部は、前記蓄電装置に充電可能な発電設備から充電された場合の充電量、及び前記蓄電装置が放電した場合の放電量を前記主制御部に通知してもよい。
【0023】
本発明の第3の態様の電力制御方法は、コンピュータが実行する、電力需要量を特定するステップと、複数の設備それぞれにおける電力使用状況を特定するステップと、前記電力需要量がモード判定閾値以上になった場合に、前記電力使用状況に基づいて前記複数の設備から選択した一以上の設備に関連付けられた蓄電装置からの放電を要求する放電要求情報を、前記一以上の設備に関連付けられた前記蓄電装置を制御する監視装置に送信するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電力をより有効に活用できるようにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】電力制御システムの概要を説明するための図である。
【
図8】電力使用の傾向を示す電力使用傾向データの一例を模式的に示す図である。
【
図9】電力制御装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】放電モードを選択する動作について説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[電力制御システムSの概要]
図1は、電力制御システムSの概要を説明するための図である。電力制御システムSは、電力制御装置1と、複数の設備それぞれに関連付けられた監視装置2(2-1、2-2、2-3、・・・、2-Nは整数)とを備えている。電力制御システムSは、複数の設備それぞれに関連付けられた蓄電装置3(3-1、3-2、3-3、・・・、3-Nは整数)に蓄積された電力(以下、蓄積電力という場合がある)を放電させるための制御を行うシステムである。電力制御システムSは、蓄積電力の少なくとも一部を商用電力網Nに放電する方法、又は蓄電装置3が設置された設備内の電気機器に蓄積電力の少なくとも一部を供給する方法の少なくともいずれかの方法で、蓄電装置3に蓄積電力を放電させる。
【0027】
本明細書における「設備」は、監視装置2が電力の使用状況を監視する対象となる範囲を画定する物品であり、例えば、建物、施設、又は区画である。以下の説明においては、設備の一例としての建物に監視装置2及び蓄電装置3が設置されている場合を例として説明する。
【0028】
電力制御装置1は、例えば、蓄積電力を放電させる制御を行うサービスを提供するサービス提供業者が管理するサーバである。電力制御装置1は、複数の建物に設置された複数の蓄電装置3からの放電動作を制御する。電力制御装置1は、発電事業者J1が発電可能な量を示す発電量データと、電力小売事業者J2が必要としている電力量を示す必要電力量データとに基づいて特定した電力の需要量が閾値以上になった場合に、複数の建物それぞれにおける電力使用状況に基づいて、蓄積電力を放電することを要求する対象となる監視装置2を選択する。
【0029】
電力制御装置1は、選択した監視装置2に対して、監視装置2が蓄電状態を監視する蓄電装置3に蓄積された電力を放電する要求を含む放電要求情報を送信する。電力制御装置1は、例えば電力使用量が比較的少ない建物に設置された蓄電装置3を監視する監視装置2に対して放電要求情報を送信する。
【0030】
電力制御装置1は、例えば、電力小売事業者J2から取得した売電価格を含む放電要求情報を送信する。売電価格は、蓄積電力の少なくとも一部を商用電力網Nに放電することへの対価である。売電価格は、蓄積電力の少なくとも一部を蓄電装置が設置された建物内の電気機器に供給することで、電気機器による商用電力網Nから供給される電力の使用量が削減されることへの対価であってもよい。
【0031】
監視装置2は、複数の建物それぞれにおける電力使用状況を監視する。監視装置2は、例えば、商用電力網Nから建物内の電気機器に供給されている電力の大きさである使用電力量、及び蓄電装置3に蓄えられた電力の大きさである蓄積電力量の少なくともいずれかを電力使用状況を示す情報として監視する。監視装置2は、所定のタイミング(例えば10分ごとのタイミング)で、建物における電力使用状況を電力制御装置1に通知する。電力制御装置1は、通知された電力使用状況に基づいて、それぞれの蓄積装置3に蓄積された蓄積電力を放電させるかどうかを決定し、放電させる対象とした蓄積装置3に接続された監視装置2に放電要求情報を送信する。監視装置2は、電力制御装置1から放電要求情報を受信したことに応じて、蓄電装置3に蓄積電力を商用電力網Nに放電させるか、建物内の電気機器に蓄積電力を供給させるかを決定し、決定した結果を蓄電装置3に通知する。
【0032】
図2は、監視装置2の概要を説明するための図である。監視装置2は、建物に設置された電力計4及び電力計5により測定された電力に基づいて、建物内の電力使用状況を監視する。電力計4は、建物内の電気機器に対して商用電力網Nから供給されている電力(すなわち、使用電力量)を測定する。電力計5は、建物に設置された太陽光発電装置又は風力発電装置等の発電装置において発電されて蓄電装置3に蓄積される電力、及び蓄電装置3から放電される電力を測定する。監視装置2は、電力計4が測定した使用電力量、並びに電力計5が測定した蓄積電力及び放電電力を積算して得られる蓄積電力量の少なくともいずれかを電力使用状況として電力制御装置1に通知する。
【0033】
図3から
図5は、蓄電装置3について説明するための図である。蓄電装置3は、蓄積した電力を建物内の電気機器が使用できるように、建物内又は建物外に設置されている。蓄電装置3は、例えば太陽光発電を行う発電設備6により得られた電力を蓄積する装置であり、蓄電池31及び制御回路32を有する。蓄電池31は、充電及び放電が可能な電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又は鉛蓄電池である。制御回路32は、蓄電池31に充電する状態と蓄電池31から放電させる状態とを切り替えるための電子回路により構成されている。
【0034】
蓄電装置3は、例えば3つの動作モードを有する。制御回路32は、監視装置2の制御に基づいて蓄電装置3の動作モードを切り替える。監視装置2は、例えば電力使用状況に基づいて蓄積装置3の動作モードを切り替える。
【0035】
第1のモードは、
図3に示すように、建物に設置された発電設備6から供給される電力に基づいて蓄電池31を充電する充電モードである。発電設備6が太陽光発電設備である場合、蓄電装置3は、昼間は充電モードで動作する。
【0036】
第2のモードは、
図4に示すように、蓄電池31に蓄えられた電力の少なくとも一部を商用電力網Nに放電する第1放電モードである。蓄電装置3は、監視装置2の制御に基づいて、建物内での使用電力量が少なく、かつ電力需要量が大きい時間帯に第1放電モードで動作する。
【0037】
第3のモードは、
図5に示すように、蓄電池31に蓄えられた電力の少なくとも一部を建物内の電気機器7に供給する第2放電モードである。蓄電装置3は、監視装置2の制御に基づいて、停電が発生した場合、又は蓄電池31に蓄えられた電力を使用することでコストメリットが生じる場合等に第2放電モードで動作する。なお、図示はしていないが、蓄電装置3は、蓄積電力の一部を商用電力網Nに放電しつつ、蓄積電力の一部を電気機器7に供給する第4のモードをさらに有してもよい。
【0038】
以上の構成により、電力制御システムSは、各建物における電力使用状況を考慮して、放電させる余地がある蓄電装置3が蓄積している電力を放電させることで、商用電力網Nを介して供給する電力を低減させることができる。その結果、電力制御システムSは、電力の需給バランスを改善するとともに、蓄電装置3を設置している建物のユーザに対して、売電による利益を提供することが可能になる。
以下、電力制御装置1及び監視装置2の詳細について説明する。
【0039】
[電力制御装置1及び監視装置2の構成]
図6は、電力制御装置1の構成を示す図である。電力制御装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。制御部13は、需要量特定部131と、状況特定部132と、主制御部133とを有する。
【0040】
通信部11は、外部サーバ及び監視装置2と通信するための通信インターフェースである。通信部11は、例えばネットワークを介してデータを送受信するためのLAN(Local Area Network)コントローラを有する。
【0041】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が監視装置2を制御するために用いる各種のデータを記憶する。記憶部12は、例えば、複数の建物それぞれを識別する建物識別情報に関連付けて、電力使用状況を記憶する。
【0042】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、需要量特定部131、状況特定部132及び主制御部133として機能する。制御部13は、複数の建物における電力使用状況を特定した結果に基づいて、建物内の蓄電装置3に放電させるように監視装置2を制御する。需要量特定部131、状況特定部132及び主制御部133の詳細については後述する。
【0043】
図7は、監視装置2の構成を示す図である。監視装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。通信部21は、電力制御装置1及び蓄電装置3と通信するための通信インターフェースである。通信部21は、例えばネットワークを介してデータを送受信するためのLANコントローラを有する。
【0044】
記憶部22は、ROM、RAM及びハードディスク等の記憶媒体である。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部22は、制御部23が蓄電装置3に充電させたり放電させたりするための制御をするために用いる各種のデータを記憶する。
【0045】
制御部23は、例えばCPUである。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、使用電力監視部231、蓄積電力監視部232及び副制御部233として機能する。制御部23は、蓄電装置3に放電させることを要求するための放電要求情報を電力制御装置1から受信したことに応じて、蓄電装置3が蓄積した電力を放電させるように制御する。使用電力監視部231、蓄積電力監視部232及び副制御部233の詳細については後述する。
【0046】
[電力制御装置1の制御部13の動作]
以下、制御部13の各部の動作について説明する。需要量特定部131は、通信部11を介して発電事業者J1のサーバから取得した発電量データと、電力小売事業者J2のサーバから取得した必要電力量データとに基づいて、電力需要量を特定する。需要量特定部131は、リアルタイムで発電量データ及び必要電力量データを取得してもよく、発電量データ及び必要電力量データを定期的に取得してもよい。需要量特定部131は、特定した電力需要量を主制御部133に通知する。
【0047】
状況特定部132は、通信部11を介して監視装置2から取得した、監視装置2が設置された複数の建物における電力使用状況を示す電力使用状況データに基づいて、複数の建物それぞれにおける電力使用状況を特定する。状況特定部132は、リアルタイムで電力使用状況データを取得してもよく、定期的に電力使用状況データを取得してもよい。状況特定部132は、定期的に電力使用状況データを取得する場合、複数の電力使用状況データに基づいて、電力使用状況データを取得していないタイミングにおける電力使用状況を推定してもよい。
【0048】
主制御部133は、複数の建物それぞれに設置された監視装置2と通信することにより、各建物に設置された蓄電装置3に放電させるか否かを制御する。主制御部133は、需要量特定部131が特定した電力需要量が閾値以上になった場合に、状況特定部132が特定した電力使用状況に基づいて複数の建物から選択した一以上の建物に関連付けられた蓄電装置3からの放電を要求する放電要求情報を、一以上の建物に関連付けられた蓄電装置3を制御する監視装置2に送信する。
【0049】
主制御部133は、例えば、蓄電装置3が設置された建物における電力使用状況が示す使用電力量が所定の放電要求閾値よりも小さい場合に、放電要求情報を送信する。放電要求閾値は、例えば、蓄電装置3の全ての蓄積電力が建物内の電気機器7に使用される可能性が低いと想定される使用電力量の最小値である。
【0050】
主制御部133は、蓄電装置3の蓄積電力量と、蓄電装置3が設置された建物における使用電力量との関係に基づいて、蓄電装置3からの放電を要求する放電要求情報を送信するか否かを判定してもよい。具体的には、主制御部133は、以下のような場合に、放電要求情報を監視装置2に送信する。
(1)建物内の電気機器7による使用電力量が小さく、蓄電装置3に蓄積された電力を建物内の電気機器7が使用する可能性が小さい場合
(2)建物内の電気機器7による使用電力量に比べて蓄電装置3に蓄積された電力量が大きく、蓄電装置3に蓄積された電力の一部を電気機器7が使用したとしても、蓄積電力が余ると予想される場合
【0051】
このように、主制御部133は、状況特定部132が特定した建物における電力使用状況に基づいて、蓄電装置3から放電させてもよいと判定した際に、建物内で使用されずに蓄積された電力を商用電力網Nに放電させることで、建物内で使用される可能性が低い蓄積電力を他の建物で有効活用させることができる。
【0052】
ただし、状況特定部132が、建物に設置された電力計4及び電力計5が測定した電力に基づいて電力使用状況を特定するだけでは、将来の電力使用状況を特定できない。したがって、主制御部133が、蓄電装置3に蓄積された電力の放電を開始させた後に、電気機器7が使用する電力が増加する場合が生じ得る。このような場合、蓄電装置3が商用電力網Nに放電した電力が、商用電力網N内の各種の機器を経由した後に、蓄電装置3が設置されている建物内の電気機器7に供給されるとも考えられる。蓄電装置3が商用電力網Nに放電した電力が、商用電力網N内の各種の機器を経由する間には各種の電力損失が発生するので、電力の使用効率を改善する余地がある。
【0053】
そこで、記憶部12が、建物に関連付けて電力使用の傾向を記憶し、状況特定部132は、記憶された傾向に基づいて電力使用状況を特定してもよい。主制御部133は、このようにして特定された電力使用状況に基づいて、どの建物に設置された蓄電装置3に放電させるかを決定することにより、電力の使用効率を向上させることができる。
【0054】
図8は、記憶部12が記憶する電力使用の傾向を示す電力使用傾向データの一例を模式的に示す図である。
図8に示す電力使用傾向データにおいては、曜日(または休祭日と平日)、時間帯と使用電力量とが関連付けられている。記憶部12は、建物識別情報に関連付けて電力使用傾向データを記憶している。状況特定部132は、電力使用傾向データを参照することにより、曜日又は時間帯ごとの各建物における使用電力量を推定し、主制御部133は、推定された使用電力量に基づいて、放電要求情報を送信するか否かを決定することができる。曜日や時間帯によって、建物の使用状況や建物内にいる人間の人数等が変化し、これらの要因が使用電力量に影響する。例えば、オフィスや工場は、休日・祝日において電力使用量が減少する傾向がある。反対に、一般消費者向け店舗や住宅は、休日・祝日において電力使用量が増加する傾向がある。
【0055】
建物内での電力の使用傾向は、建物の周辺の気象状況によっても変動し得る。例えば、気温が高い場合には空調が使用されることにより使用電力量が増加したり、冷蔵庫の消費電力が増加して使用電力量が増加したりする。そこで、記憶部12は、気象状況に関連する温度、湿度、天候等の気象情報に関連付けて使用電力量を記憶してもよい。
【0056】
この場合、状況特定部132は、電力使用状況を特定する対象となる建物が属する地域の気象情報と、記憶部12に記憶された傾向とに基づいて、電力使用状況を特定する。状況特定部132は、例えば、気象情報を提供する外部のサーバから気象情報を取得することができる。このようにすることで、状況特定部132が特定する電力使用状況の精度が向上するので、主制御部133は、電力の使用効率をさらに向上させることができる。
【0057】
[放電要求情報の例]
主制御部133は、電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む放電要求情報を監視装置2に送信してもよい。主制御部133は、電力使用状況を特定する対象となる建物と関連付けられた電力小売事業者の電力需要量に基づいて決定した放電要求量を含む放電要求情報を送信してもよい。このようにすることで、主制御部133は、電力小売事業者が電力を供給するエリア内の建物に設けられた蓄電装置3の余剰電力を収集し、同じエリア内で電力を必要とする建物に電力を供給することができるので、電力の使用効率を向上させることができる。
【0058】
主制御部133は、監視装置2から受信した放電許可量に基づいて放電要求量を決定してもよい。主制御部133は、放電要求量が放電許可量以下になるようにすることで、放電要求量に相当する電力を蓄電装置3から受けられる確率を向上させることができる。
【0059】
主制御部133は、さらに、一以上の監視装置2から受信した放電許可量に基づいて、放電許可量を送信した一以上の監視装置2と異なる監視装置2に送信する放電要求量を決定してもよい。このようにすることで、主制御部133は、一以上の監視装置2から受信した放電許可量の合計値が、必要な電力(すなわち需要電力量)以上である場合に、他の監視装置2に放電要求情報を送信する必要がない。主制御部133は、一以上の監視装置2から受信した放電許可量の合計値が、必要な電力よりも少ない場合に、他の監視装置2が監視している蓄電装置3に放電要求を送信することで、必要な電力を確保することができる。
【0060】
ところで、電力小売事業者が電力を買い取る場合の電力への対価は、需要と供給との関係に基づいて変動し得る。例えば、多くの家庭における使用電力量が大きい時間帯における対価を、使用電力量が小さい時間帯における対価よりも大きくすることで、蓄電装置3に蓄積された電力を収集しやすくなる。そこで、主制御部133は、蓄電装置3からの放電への対価を示す対価情報を含む放電要求情報を監視装置2に送信してもよい。このようにすることで、監視装置2は、ユーザが所定の金額(例えば、予めユーザにより設定された金額)以上の対価を得られる場合に限って、蓄電装置3に蓄積された電力を放電させることができる。
【0061】
主制御部133は、状況特定部132が特定した電力使用状況が、建物内の電気機器7が、商用電力網Nから供給された電力を使用していることを示しており、かつ蓄電装置3が閾値以上の電力を蓄積している場合に、蓄電装置3に蓄積された電力を電気機器7に供給することを指定する放電要求情報を送信してもよい。このようにすることで、商用電力網Nから建物内の電気機器7に供給される電力が減少するので、商用電力網Nを介して供給できる電力が少ない時間帯に商用電力網Nにおける電力需要量を低減させ、需給バランスを改善することができる。
【0062】
[電力制御装置1の動作フローチャート]
図9は、電力制御装置1の動作手順の一例を示すフローチャートである。主制御部133は、
図9のフローチャートが示す動作を定期的に実行することにより、監視装置2を制御する。
【0063】
主制御部133は、例えば、監視装置2から通知される使用電力状況データに基づいて、蓄電装置3が設置された建物内の電気機器7の使用電力量を特定する(S11)。続いて、主制御部133は、蓄電装置3が設置された建物の周辺の気象情報を取得する(S12)。主制御部133は、特定した使用電力量と、取得した気象情報とに基づいて、次に蓄電装置3への充電が開始されるまでの時間に建物内で使用されると予想される電力の量を推定する(S13)。
【0064】
主制御部133は、推定した使用電力量が閾値未満であるか否かを判定する(S14)。主制御部133は、例えば、推定した電力の量が、蓄電装置3の蓄積電力未満であるか否かを判定する。主制御部133は、推定した電力の量が閾値未満であると判定した場合、使用電力量の推定値と蓄積電力量とに基づいて、放電要求量を決定する(S15)。主制御部133は、使用電力量の推定値に比べて蓄積電力量が大きければ大きいほど、大きな放電要求量とする。主制御部133は、決定した放電要求量を含む放電要求情報を監視装置2に送信する(S16)。
【0065】
[監視装置2の制御部23の動作]
続いて、制御部23の各部の動作を説明する。使用電力監視部231は、建物における使用電力量を監視する。使用電力監視部231は、例えば、建物内の電気機器7による使用電力を
図2に示した電力計4から取得することにより、使用電力量を監視する。使用電力監視部231は、建物における使用電力量を副制御部233に通知する。
【0066】
蓄積電力監視部232は、建物に設置された蓄電装置3の蓄積電力量を監視する。蓄積電力監視部232は、例えば、蓄電装置3に蓄積された電力を示すデータを
図2に示した電力計5から取得することにより、蓄積電力量を監視する。蓄積電力監視部232は、蓄電装置3の蓄積電力量を副制御部233に通知する。
【0067】
副制御部233は、建物に設置された蓄電装置3からの充放電を制御する。また、副制御部233は、使用電力監視部231から通知された使用電力量及び蓄積電力監視部232から通知された蓄積電力量の少なくともいずれかを含む電力使用状況データを電力制御装置1の主制御部133に通知する。副制御部233は、電力制御装置1の主制御部133から蓄電装置3からの放電を要求する放電要求情報を受信したことに応じて蓄電装置3に放電をさせる。
【0068】
副制御部233は、主制御部133から放電要求情報を受信した時点における使用電力量及び蓄積電力量に基づいて、蓄電装置3から放電するか否かを決定してもよい。具体的には、副制御部233は、蓄電装置3に放電させる前に、需要量特定部131から通知された使用電力量と蓄積電力監視部232から通知された蓄積電力量とを比較し、比較結果に基づいて、蓄電装置3に放電させるか否かを判定する。
【0069】
より具体的には、副制御部233は、使用電力監視部231から通知された使用電力量が所定の時間(例えば停電が継続すると推定される時間)にわたって継続したとしても蓄積電力量がゼロにならない場合に、蓄電装置3に放電させると判定する。記憶部22が、
図8に示した電力使用傾向データを記憶しており、副制御部233が、電力使用傾向データに基づいて推定される使用電力量の予測値に基づいて、蓄電装置3に放電させるか否かを判定してもよい。
【0070】
副制御部233は、使用電力量(又は使用電力量の予測値)と蓄積電力量とに基づいて、発電設備6が発電した電力により蓄電装置3への充電を開始するまでの間に電気機器7に電力を供給し続けても余剰電力があると判定した場合に、蓄電装置3に蓄えられた電力の一部を商用電力網Nに放電させてもよい。例えば、副制御部233は、昼間に発電設備6が発電して蓄電装置3の蓄積電力を夜間に電気機器7に供給し、発電設備6による発電が再開される朝までの間に蓄積電力を電気機器7に供給し続けても蓄電装置3の蓄積電力がなくならないと予想される場合に、余剰電力を商用電力網Nに放電させる。
【0071】
また、副制御部233は、商用電力網Nへの放電中(すなわち蓄電装置3が第1放電モードで動作中)に商用電力網Nからの電力の供給が停止したことを検知した場合に、商用電力網Nへの放電を停止して電気機器7への電力の供給を開始し、蓄電装置3を第2放電モードで動作させてもよい。このようにすることで、停電が発生した場合にも電気機器7が継続して動作することが可能になる。
【0072】
さらに、副制御部233は、使用電力監視部231が特定した使用電力量に基づいて、商用電力網Nに放電する第1放電モードで蓄電装置3を動作させるか、監視装置2が設置された建物内の電気機器7に供給する第2放電モードで蓄電装置3を動作させるかを決定してもよい。副制御部233は、例えば、電力制御装置1から放電要求情報を受信しており、かつ使用電力量がモード判定閾値未満である場合に、第1放電モードで蓄電装置3を動作させ、蓄積電力を商用電力網Nに放電させる。また、副制御部233は、電力制御装置1から放電要求情報を受信しており、かつ使用電力量がモード判定閾値以上である場合に、第2放電モードで蓄電装置3を動作させ、蓄積電力を電気機器7に供給させる。
【0073】
図10は、放電モードを選択する動作について説明するためのシーケンス図である。電力制御装置1の主制御部133は、定期的に、電力需要量が所定の発電量(以下、発電量閾値という)よりも大きくなることが見込まれるか否かを判定する(S21)。発電量閾値は、例えば電力制御装置1を使用するサービス提供者がサービスを提供する対象となる電力会社等の発電事業者J1の発電設備で発電可能な電力量である。
【0074】
主制御部133は、電力需要量が発電量閾値以下である場合、ステップS21を繰り返す。主制御部133は、電力需要量が発電量閾値よりも大きい場合、
図9を参照して説明したように放電要求情報を生成し(S22)、生成した放電要求情報を監視装置2に送信する。
【0075】
監視装置2の副制御部233は、放電要求情報を受信すると、監視装置2が設置された建物内での使用電力量がモード判定閾値未満であるか否かを判定する(S23)。副制御部233は、使用電力量がモード判定閾値未満であると判定した場合(S23においてYES)、第1放電モードで蓄電装置3を動作させるために第1放電指示を蓄電装置3に送信する。蓄電装置3は、第1放電指示を受信すると、商用電力網Nへの放電を開始する。
【0076】
副制御部233は、使用電力量がモード判定閾値以上であると判定した場合(S23においてNO)、第2放電モードで蓄電装置3を動作させるために第2放電指示を蓄電装置3に送信する。蓄電装置3は、第2放電指示を受信すると、電気機器7への電力供給を開始する。これにより、商用電力網Nからの電力供給量は減少する。
【0077】
副制御部233は、予め設定されたモード判定閾値を用いてもよく、電力制御装置1から受信した放電要求情報に基づいてモード判定閾値を決定してもよい。副制御部233は、例えば、電力制御装置1から要求された放電要求量に基づいてモード判定閾値を決定する。具体的には、副制御部233は、放電要求量よりも大きな電力量にモード判定閾値を決定する。このようにすることで、蓄電装置3から商用電力網Nに放電しつつ、同等以上の量の電力の供給を商用電力網Nから受けるという状態が生じることを防止できる。
【0078】
副制御部233は、主制御部133から受信した放電要求情報に含まれる対価情報に基づいてモード判定閾値を決定してもよい。副制御部233は、例えば、放電の対価が大きければ大きいほどモード判定閾値を小さくする。このようにすることで、対価が大きい時間帯に蓄積電力が商用電力網Nに放電されやすくなるので、監視装置2を使用するユーザが得られる利益を大きくすることができる。
【0079】
副制御部233は、主制御部133から受信した放電要求情報に含まれる対価情報が示す蓄電装置3からの放電への対価と、商用電力網Nから電力を購入するための費用との関係に基づいてモード判定閾値を決定してもよい。放電への対価と電力購入費用との差が小さい場合、商用電力網Nに放電するよりも、停電等の不慮の事態に備えて蓄電装置3に多くの電力を蓄積しておく方が好ましいとも考え得る。そこで、副制御部233は、単位電力の購入費用から単位電力の放電対価を減算した結果が小さければ小さいほどモード判定閾値を大きくする。このようにすることで、ユーザが得られる利益が小さいときに蓄積電力が商用電力網Nに放電されることを防止できる。
【0080】
副制御部233は、監視装置2が設置された建物の周辺環境条件に基づいてモード判定閾値を決定してもよい。副制御部233は、例えば、気温が高く、電気機器7の消費電力が増加すると予想される場合にも、商用電力網Nに放電するよりも、停電等の不慮の事態に備えて蓄電装置3に多くの電力を蓄積しておく方が好ましいと考えられる。そこで、副制御部233は、周辺環境条件に基づいて、電気機器7の使用電力量が増加する可能性が高ければ高いほどモード判定閾値を大きくする。このようにすることで、ユーザは、停電が発生した場合にも電気機器7を継続して使用することが可能になる。
【0081】
[電力制御システムSの効果]
以上説明したように、電力制御システムSにおいては、電力需要量が閾値以上になった場合に、電力制御装置1が、監視装置2が設置された建物における電力使用状況に基づいて複数の建物から選択した一以上の建物に関連付けられた蓄電装置3からの放電を要求する放電要求情報を送信する。このようにすることで、蓄電装置3に蓄えられた電力を放電可能な場合に、蓄電装置3が商用電力網Nに蓄積電力を放電したり、建物内の電気機器7に蓄積電力を供給したりすることができる。このようにすることで、蓄電装置3に蓄えられた電力を有効活用することが可能になる。
【0082】
なお、主制御部133は、監視装置2から放電量の通知を受けると、通知された放電量と対価とに基づいて、監視装置2に関連付けられたユーザに対して支払う報酬額を算出し、算出した報酬額を監視装置2に通知してもよい。このようにすることで、監視装置2が設置された建物のユーザが、蓄電装置3に蓄えられた電力を放電することで得られた利益を把握することが可能になる。
【0083】
[第1変形例]
蓄積電力監視部232は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線通信チャネルを介して、建物内の携帯端末、コンピュータ及び掃除機のように蓄電池を有する電気機器7から、各電気機器7の使用状況(例えば、動作中のアプリケーションソフトウェアの種類や消費電力)、及び各電気機器7が有する蓄電池の蓄積電力量を取得する。副制御部233は、蓄積電力監視部232が取得した各電気機器7の使用状況及び蓄積電力量に基づいて、各電気機器7から蓄積電力を放電させるか否かを決定する。
【0084】
副制御部233は、動作中でなく、かつ蓄積電力量が所定量以上である電気機器7に対して、放電するように指示する。このように、副制御部233が電気機器7の蓄電池の蓄積電力を放電させることで、電力をさらに有効活用することが可能になる。
【0085】
また、副制御部233は、電気機器7が商用電力網Nに接続された状態、すなわち充電中の状態であることを更なる条件の一つとして、放電するように指示してもよい。このようにすることで、電気機器7が商用電力網Nに放電できるタイミングで、放電するように指示することができる。
【0086】
[第2変形例]
建物内に監視装置2及び蓄電装置3を備えるユーザは、建物外に設置された充電装置において、スマートフォン等の通信端末や電気自動車等の電気機器に充電することがある。このように建物外の充電装置を用いて充電するユーザが増えると、電力の供給可能量が減少してしまう。そこで、主制御部133は、電力使用状況を特定する対象となる建物に関連付けられたユーザが当該建物外の所定の充電装置でユーザの電気機器に充電したことを検出した場合に、当該ユーザに関連付けられた監視装置2に放電要求情報を送信してもよい。この際、主制御部133は、充電装置における充電量に対応する放電要求量を含む放電要求情報を送信してもよい。主制御部133は、ユーザの建物に設置された蓄電装置3から放電することを条件に、ユーザに課金することなく充電装置による充電を許可してもよい。
【0087】
このように、主制御部133が、充電装置で充電された場合に、充電装置を用いて端末等に充電したユーザの建物に設置された監視装置2に放電要求情報を送信することで、電力小売事業者は、充電した電力に相当する電力を蓄電装置3から得ることができるので、電力の供給可能量を一定量に保つことができる。また、ユーザにとってみれば、自宅の蓄電装置3に充電しておくことで、建物外で課金されることなく端末等を充電できるので、利便性が向上する。
【0088】
主制御部133は、ユーザに関連付けて、建物外の充電装置で充電した電力量と、蓄電装置3から放電した電力量との関係に基づいて、ユーザに対する課金額を決定してもよい。具体的には、主制御部133は、充電装置で充電する電力の販売単価に充電量を乗じた額から、蓄電装置3が放電する電力の購入単価に放電量を乗じた額を減算することにより、ユーザに対する課金額を決定する。このようにすることで、ユーザの充電量と、当該ユーザが有する蓄電装置3からの放電量とに基づいてユーザへの課金額が決まるので、ユーザ間の公平性を確保できる。
【0089】
[第3変形例]
以上の説明においては、蓄電装置3の所有者が建物の所有者と同一であることを想定していたが、蓄電装置3の所有者が建物の所有者と異なっていてもよい。この場合、第1モードにおいて、建物に設置された発電設備6から供給される電力に基づいて蓄電池31を充電した場合、監視装置2の副制御部233は、建物識別情報又は建物のユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて、蓄電池31への充電量を電力制御装置1に通知する。蓄電装置3の所有者は、通知された充電量に対応する電力の購入費用を建物のユーザに支払うことができる。
【0090】
そして、電力制御装置1は、建物のユーザからの要求に応じて、監視装置2を介して蓄電装置3を第3のモードで動作させ、蓄電池31に蓄えられた電力を建物内の電気機器7に供給してもよい。この場合、蓄電池31から電気機器7への放電量(すなわち電力供給量)を計測する電力計が設けられており、監視装置2の副制御部233は、建物識別情報又は建物のユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて、蓄電池31から電気機器7への電力供給量を電力制御装置1に通知する。蓄電装置3の所有者は、例えば、通知された電力供給量に対応する電力の供給費用を建物のユーザに請求することができる。
【0091】
電力制御装置1は、発電設備6から供給される電力に基づいて蓄電池31を充電する日時に基づいて、電力の購入費用を決定してもよい。また、電力制御装置1は、蓄電池31に蓄えられた電力を建物内の電気機器7に供給した日時に基づいて、電力の供給費用を決定してもよい。例えば、電力制御装置1は、建物内での電力需要量が少ない時間帯に、電力の購入費用を第1購入料金に決定し、建物内での電力需要量が多い時間帯に、電力の購入費用を、第1購入料金よりも高い第2購入料金に決定する。また、電力制御装置1は、建物内での電力需要量が少ない時間帯に、電力の供給費用を第1供給料金に決定し、建物内での電力需要量が多い時間帯に、電力の供給費用を、第1供給料金よりも高い第2供給料金に決定する。
【0092】
電力制御装置1は、このようにして定めた購入費用と供給費用との差額分を建物のユーザに支払ったり、建物のユーザに請求したりすることができる。例えば、電力制御装置1が、第1購入料金(10円/kWh)で、発電設備6から供給される電力に基づいて蓄電池31を充電し、第1購入料金よりも高い第2供給料金(15円/kWh)で、蓄電池31から電気機器7へ電力を供給したとする。この場合、電力制御装置1は、第2供給料金と電力供給量とを積算した額から第1購入料金と充電量とを積算した額を減算した額を、建物のユーザへの請求額として算出する。このようにすることで、電力制御装置1、監視装置2及び蓄電装置3を使用する事業者が利益を上げるとともに、ユーザの発電設備6を有効活用することが可能になる。
【0093】
なお、電力制御装置1は、蓄電装置3の所有者からの要求に基づいて蓄電装置3を第2のモードで動作させ、監視装置2を介して、蓄電池31に蓄えられた電力を商用電力網Nに放電させてもよい。この場合、監視装置2は、商用電力網Nへの放電量を電力制御装置1に通知する。電力制御装置1は、放電量に基づいて、蓄電装置3の所有者が売電により得られる金額を算出する。
【0094】
このように蓄電装置3の所有者が建物の所有者と異なるという状況で、蓄電池31に蓄えられた電力を商用電力網Nに放電可能とする場合、建物には、発電設備6から商用電力網Nに放電された電力を計測する電力計と、蓄電池31から商用電力網Nに放電された電力を計測する電力計とが設けられており、電力制御装置1がそれぞれの電力計で計測された電力の値を取得してもよい。このように建物に複数の電力計が設けられていることにより、それぞれ所有者が異なる発電設備6と蓄電装置3とが一つの建物に設けられている場合に、電力制御装置1は、発電設備6及び蓄電装置3のそれぞれからの放電量に基づいて売電により得られる金額を算出することができる。その結果、発電設備6の所有者及び蓄電装置3の所有者が、発電設備6及び蓄電装置3のそれぞれからの放電量に応じた額の報酬を得ることが可能になる。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0096】
1 電力制御装置
2 監視装置
3 蓄電装置
4 電力計
5 電力計
6 発電設備
7 電気機器
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
31 蓄電池
32 制御回路
131 需要量特定部
132 状況特定部
133 主制御部
231 使用電力監視部
232 蓄積電力監視部
233 副制御部