(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221024BHJP
G05G 1/01 20080401ALI20221024BHJP
G05G 11/00 20060101ALI20221024BHJP
B60K 26/04 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
E02F9/00 D
G05G1/01 C
G05G11/00
B60K26/04
(21)【出願番号】P 2019140921
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592242327
【氏名又は名称】日本フレックス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 久之
(72)【発明者】
【氏名】池末 隆
(72)【発明者】
【氏名】畠中 光幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 司
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-070056(JP,U)
【文献】特開平08-067168(JP,A)
【文献】特開2006-242110(JP,A)
【文献】特開平11-311134(JP,A)
【文献】実開昭61-192542(JP,U)
【文献】実開昭61-036148(JP,U)
【文献】国際公開第2014/092355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
G05G 1/00-25/04
B60K 25/00-28/16
F02D 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの駆動力により駆動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから圧送される作動油によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを操作不能にするカットオフレバーと、
前記エンジンの回転数を制御するエンジンガバナの調速レバーと、
前記調速レバーを低速回転側に付勢する調速レバー付勢部材と、
前記調速レバー付勢部材の付勢力に抗して前記調速レバーを高速回転側に牽引可能なコントロールケーブルと、
前記コントロールケーブルを牽引方向及び解放方向に作動させるように操作可能なアクセルレバーと、
前記コントロールケーブルの中途部に設けられた中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記アクセルレバーが牽引方向に操作された状態において、前記カットオフレバーを回動させ前記アクチュエータを操作不能にせしめる状態に連動して、前記調速レバーに対する前記コントロールケーブルの牽引力を解放する牽引力解放機構を有する、建設機械。
【請求項2】
前記コントロールケーブルは、前記調速レバーと前記アクセルレバーに接続されるインナケーブルと、前記中継装置よりも前記アクセルレバー側の第1アウタケーブルと、前記中継装置よりも前記調速レバー側の第2アウタケーブルと、を有し、
前記牽引力解放機構は、前記第1アウタケーブルの一部を前記中継装置の内部に引き込むことにより前記インナケーブルの牽引力を解放する、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記中継装置は、
装置筐体と、
前記第1アウタケーブルの前記調速レバー側の端部に固定され、前記装置筐体内で摺動可能なアウタ受けと、
前記アウタ受けを前記アクセルレバー側へ付勢するアウタ受け付勢部材と、を有し、
前記アウタ受けが、前記カットオフレバーの回動に連動して引っ張られるカットオフケーブルによって、前記アウタ受け付勢部材の付勢力に抗して前記調速レバー側に牽引されることで、前記第1アウタケーブルの一部を前記装置筐体内に引き込む、請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記アウタ受け付勢部材の付勢力は、前記調速レバー付勢部材の付勢力よりも大きい、請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記コントロールケーブルの牽引力の解放を解除する牽引力解放機構解除装置を備え、
前記牽引力解放機構解除装置は、前記アウタ受け付勢部材の付勢力に抗して前記調速レバー側に牽引される力から前記アウタ受けを解放する、請求項3又は4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記アウタ受けは、前記第1アウタケーブルの前記調速レバー側の端部に固定されるアウタ受け本体部と、前記カットオフケーブルによって前記アウタ受け付勢部材の付勢力に抗して前記調速レバー側に牽引される付勢部材受け部とで構成されており、
前記牽引力解放機構解除装置は、前記アウタ受け本体部に接続される解除ケーブルと、前記解除ケーブルの前記アウタ受け本体部とは反対側の端部に接続される解除レバーと、を備え、
前記解除レバーの回動位置が前記解除ケーブルを弛緩状態にする場合は、前記カットオフレバーの回動により、前記カットオフケーブルによって前記アウタ受け本体部と前記付勢部材受け部が一体となって前記調速レバー側に牽引され、前記解除レバーの回動位置が前記解除ケーブルを緊張状態にする場合は、前記アウタ受け本体部は、前記解除ケーブルによって前記アクセルレバー側に牽引され、前記付勢部材受け部は、前記カットオフケーブルによって前記調速レバー側に牽引される、請求項5に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、エンジンのガバナを制御する主ロッドを走行用アクセルペダルと作業用スロットルレバーのどちらからでも作動するように構成された油圧式作業機が開示されている。
【0003】
下記特許文献2には、油圧ショベルの操作レバー及び走行レバーが中立状態にあるときに、油圧シリンダを作動させ、アクセルレバーの位置と無関係にガバナレバーを動かしてエンジン回転を下げるようにした油圧ショベルのエンジン制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭55-44931号公報
【文献】実開昭63-26734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧ショベル等の建設機械に使用されるエンジンにおいては、電子式のガバナによる制御が増えたが、特に小型の建設機械では、製造コストの問題から機械式のガバナによりエンジン制御を行う機種も多数存在する。また、近年、小型の建設機械においても、燃費や二酸化炭素の排出量を下げるための技術が求められているが、特許文献1では、作業機アクチュエータの無操作時に、エンジン回転数を低い回転数まで下げる技術は開示されていない。
【0006】
また、特許文献2は、操作レバーの中立状態を検知するためのセンサが必要であり、低コストが求められる小型の建設機械の中でも特に小さい機種においては、コスト的に導入することが困難である。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、低コストで製造でき、燃費がよくかつ二酸化炭素の排出量の少ない建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建設機械は、エンジンと、
前記エンジンの駆動力により駆動する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから圧送される作動油によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを操作不能にするカットオフレバーと、
前記エンジンの回転数を制御するエンジンガバナの調速レバーと、
前記調速レバーを低速回転側に付勢する調速レバー付勢部材と、
前記調速レバー付勢部材の付勢力に抗して前記調速レバーを高速回転側に牽引可能なコントロールケーブルと、
前記コントロールケーブルを牽引方向及び解放方向に作動させるように操作可能なアクセルレバーと、
前記コントロールケーブルの中途部に設けられた中継装置と、を備え、
前記中継装置は、前記アクセルレバーが牽引方向に操作された状態において、前記カットオフレバーを回動させ前記アクチュエータを操作不能にせしめる状態に連動して、前記調速レバーに対する前記コントロールケーブルの牽引力を解放する牽引力解放機構を有する。
【0009】
本発明によれば、低コストで製造でき、燃費がよくかつ二酸化炭素の排出量の少ない建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
【
図2A】操縦席の周りを左前上方から見た斜視図である。
【
図2B】操縦席の周りを右後上方から見た斜視図である。
【
図2C】操縦席の周りを左後上方から見た斜視図である。
【
図2D】操縦席の周りを左後下方から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るエンジン回転数の制御システムの模式図である。
【
図4A】本実施形態に係るエンジン回転数の制御方法を説明するための図である。
【
図4B】本実施形態に係るエンジン回転数の制御方法を説明するための図である。
【
図5】別実施形態に係るエンジン回転数の制御システムの模式図である。
【
図6A】別実施形態に係るエンジン回転数の制御方法を説明するための図である。
【
図6B】別実施形態に係るエンジン回転数の制御方法を説明するための図である。
【
図6C】別実施形態に係るエンジン回転数の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
まず、
図1を参照しながら、建設機械の一例としての油圧ショベル1の概略構造について説明する。ただし、建設機械としては、油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダ等の他の車両でもよい。油圧ショベル1は、下部走行体11と、作業機12と、上部旋回体13とを備える。
【0013】
下部走行体11は、エンジンルーム2の内部に収容されるエンジン3からの動力を受けて駆動し、油圧ショベル1を走行させる。下部走行体11は、左右一対のクローラ11a,11a及び左右一対の走行モータ11b,11bを備える。油圧モータである左右の走行モータ11b,11bが左右のクローラ11a,11aをそれぞれ駆動することで油圧ショベル1の前後進を可能としている。また、下部走行体11には、ブレード11c、及びブレード11cを上下方向に回動させるためのブレードシリンダ11dが設けられている。
【0014】
作業機12は、エンジン3からの動力を受けて駆動し、土砂等の掘削作業を行うものである。作業機12は、ブーム12a、アーム12b、及びバケット12cを備え、これらを独立して駆動することによって掘削作業を可能としている。ブーム12a、アーム12b、及びバケット12cは、それぞれ作業部に相当し、油圧ショベル1は、複数の作業部を有する。
【0015】
ブーム12aは、基端部が上部旋回体13の前部に支持されて、伸縮自在に可動するブームシリンダ12dによって回動される。また、アーム12bは、基端部がブーム12aの先端部に支持されて、伸縮自在に可動するアームシリンダ12eによって回動される。そして、バケット12cは、基端部がアーム12bの先端部に支持されて、伸縮自在に可動するバケットシリンダ12fによって回動される。ブームシリンダ12d、アームシリンダ12e、及びバケットシリンダ12fは、油圧シリンダ(アクチュエータに相当する)により構成される。
【0016】
上部旋回体13は、下部走行体11に対して旋回ベアリング(図示しない)を介して旋回可能に構成されている。上部旋回体13には、操縦部13a、エンジン3、旋回台13b、旋回モータ13c等が配置されている。油圧モータである旋回モータ13cの駆動力で上部旋回体13が旋回ベアリングを介して旋回する。また、上部旋回体13には、エンジン3の駆動力により駆動する油圧ポンプ4が配設される。油圧ポンプ4が、各油圧モータや各油圧シリンダに作動油を供給する。すなわち、油圧モータや油圧シリンダは、油圧ポンプ4から圧送される作動油によって駆動する。
【0017】
操縦部13aには、操縦席131が配置されている。操縦席131の左右に一対の作業操作レバー132L,132R、前方に一対の走行レバー133,133が配置されている。オペレータは、操縦席131に着座して作業操作レバー132L,132R、走行レバー133,133等を操作することによって、エンジン3、各油圧モータ、各油圧シリンダ等の制御を行い、走行、旋回、作業等を行うことができる。
【0018】
また、作業操作レバー132L,132Rは、レバースタンド134,134に一体的に取り付けられ、このレバースタンド134,134からは、作業操作レバー132L,132Rによる作業機12の操作を入・切するためのカットオフレバー135L,135Rが前方に延設されている。カットオフレバー135L,135Rは、上下に回動可能に構成されており、下方に回動操作されると作業操作レバー132L,132Rの操作による作業機12の作動が可能の状態となり、上方に回動操作されると作業操作レバー132L,132Rを操作しても作業機12が作動しないロック状態となるように構成されている。レバースタンド134,134の内部には、作業操作レバー132L,132Rとアクチュエータとの間の油圧回路を連通又は遮断する不図示のカットオフスイッチが設けられている。カットオフスイッチは、カットオフレバー135L,135Rが下方に回動されるとONされ、一方、カットオフレバー135L,135Rが上方に回動されるとOFFされるように構成されている。カットオフスイッチがOFFされると、アクチュエータとの間の油圧回路が遮断され、作業操作レバー132L,132Rを操作しても作業機12が作動しない。
【0019】
次に、本実施形態に係るエンジン回転数の制御システムについて説明する。
図2Aは操縦席131の周りを左前上方から見た斜視図であり、
図2Bは操縦席131の周りを右後上方から見た斜視図であり、
図2Cは操縦席131の周りを左後上方から見た斜視図であり、
図2Dは操縦席131の周りを左後下方から見た斜視図である。
図3は、エンジン回転数の制御システムを模式的に示している。
【0020】
エンジン3は、その後部に不図示のエンジンガバナを操作するための調速レバー31を備えており(
図2Cを参照)、調速レバー31を一方向(
図3では左方向)に回動させることによってエンジン回転数を上昇させ、他方向(
図3では右方向)に回動させることによってエンジン回転数を低下させることができるように構成されている。調速レバー31は、戻しスプリング32(調速レバー付勢部材に相当)によって低速回転側Lに付勢されている。
【0021】
また、調速レバー31にはコントロールケーブル5が接続されており、コントロールケーブル5は戻りスプリング32の付勢力に抗して調速レバー31を牽引することにより、調速レバー31を高速回転側Hに回動操作することができる。
【0022】
アクセルレバー136は、操縦席131の左側に設けられており、前後方向に回動自在に軸支されている。アクセルレバー136は、コントロールケーブル5を介して調速レバー31に接続されている。コントロールケーブル5は、アクセルレバー136の基端部から前方に延びた後、作動油のリザーバタンク137の前方及び下方を通って調速レバー31まで延びている。
【0023】
コントロールケーブル5は、二重構造となっており、調速レバー31とアクセルレバー136に接続されるインナケーブル51と、インナケーブル51を覆う第1アウタケーブル52及び第2アウタケーブル53とを備える。第1アウタケーブル52は、後述する中継装置6よりもアクセルレバー136側のインナケーブル51を覆い、第2アウタケーブル53は中継装置6よりも調速レバー31側のインナケーブル51を覆う。
【0024】
図3に示す通常時には、アクセルレバー136を低速回転側Lから高速回転側Hへ回動させることによって、インナケーブル51が引っ張られて調速レバー31を低速回転側Lから高速回転側Hへ回動させることができる。一方、アクセルレバー136を高速回転側Hから低速回転側Lへ回動させると、調速レバー31に対するインナケーブル51の牽引力が解放されるため、調速レバー31は戻しスプリング32によって高速回転側Hから低速回転側Lへ回動する。すなわち、アクセルレバー136は、インナケーブル51が調速レバー31を牽引する方向(牽引方向T)と、インナケーブル51が調速レバー31を牽引しない方向(解放方向R)とにインナケーブル51を作動させる。
【0025】
コントロールケーブル5の中途部には、中継装置6が設けられている。中継装置6は、リザーバタンク137の下面に固定されている。中継装置6は、装置筐体61と、装置筐体61内で摺動可能なアウタ受け62と、アウタ受け62をアクセルレバー136側へ付勢する圧縮スプリング63(アウタ受け付勢部材に相当)と、を有する。
【0026】
装置筐体61は、箱状をしており、一方の端面61aには、第1アウタケーブル52が挿通される貫通孔61cが形成されている。他方の端面61bには、第2アウタケーブル53の端部53aが固定されている。
【0027】
アウタ受け62には、第1アウタケーブル52の端部のキャップ52aが固定されている。これにより、アウタ受け62が装置筐体61内で摺動すると、キャップ52aはアウタ受け62と一体として移動する。その結果、アウタ受け62が装置筐体61の内方へ移動すると、第1アウタケーブル52が引っ張られてその一部が装置筐体61内に引き込まれる。
【0028】
圧縮スプリング63は、アウタ受け62と装置筐体61の内壁の間に配置され、アウタ受け62をアクセルレバー136側へ付勢している。また、圧縮スプリング63は、後述するカットオフインナケーブル71の周囲に配置されている。通常時にアクセルレバー136による調速レバー31の操作を可能とするためには、圧縮スプリング63の付勢力は、戻しスプリング32の付勢力よりも大きい必要がある。
【0029】
中継装置6には、カットオフケーブル7が接続されている。カットオフケーブル7は、中継装置6からリザーバタンク137の下方を後側へ向かって延びた後、リザーバタンク137の後方を上側へ向かって延びている。カットオフケーブル7は、二重構造となっており、カットオフインナケーブル71と、カットオフインナケーブル71を覆うカットオフアウタケーブル72とを備える。カットオフインナケーブル71の一端部71aは、アウタ受け62に固定されている。また、カットオフアウタケーブル72の一端部72aは、装置筐体61の他方の端面61bに固定されている。
【0030】
カットオフケーブル7には、連結装置8を介して左カットオフケーブル9L及び右カットオフケーブル9Rが接続されている。連結装置8は、リザーバタンク137の後面に固定されている。
【0031】
左カットオフケーブル9Lは、左カットオフレバー135Lの基端部から操縦席131の左側を通って後方へ延びた後、リザーバタンク137の後方を下側へ向かって延びて連結装置8に接続されている。右カットオフケーブル9Rは、右カットオフレバー135Rの基端部から操縦席131の右側と後側と通って延びた後、リザーバタンク137の後方を下側へ向かって延びて連結装置8に接続されている。
【0032】
左カットオフケーブル9Lは、二重構造となっており、左カットオフインナケーブル91Lと、左カットオフインナケーブル91Lを覆う左カットオフアウタケーブル92Lとを備える。同様に、右カットオフケーブル9Rは、右カットオフインナケーブル91Rと右カットオフアウタケーブル92Rとを備える。
【0033】
連結装置8は、左カットオフケーブル9Lと右カットオフケーブル9Rを連結する。連結装置8は、連結ケース81と、連結ケース81内で摺動可能なインナ受け82とを備える。
【0034】
連結ケース81の一端には、カットオフアウタケーブル72の他端部72bが固定されている。また、連結ケース81の他端には、左カットオフアウタケーブル92Lの一端部921L及び右カットオフアウタケーブル92Rの一端部921Rが固定されている。
【0035】
インナ受け82には、カットオフインナケーブル71の他端部71bが固定されている。これにより、インナ受け82が連結ケース81内で摺動すると、カットオフインナケーブル71の他端部71bはインナ受け82と一体として移動する。その結果、インナ受け82が連結ケース81の内方へ移動すると、カットオフインナケーブル71が引っ張られてその一部が連結ケース81内に引き込まれる。
【0036】
また、インナ受け82には、左カットオフインナケーブル91Lが挿通される左挿通孔82aと、右カットオフインナケーブル91Rが挿通される右挿通孔82bとが形成されている。左カットオフインナケーブル91Lの先端部には、左挿通孔82aより大きく左挿通孔82aを通過できない左ケーブルエンド911Lが設けられている。同様に、右カットオフインナケーブル91Rの先端部には、右挿通孔82bより大きく右挿通孔82bを通過できない右ケーブルエンド911Rが設けられている。これにより、例えば右カットオフインナケーブル91Rが右カットオフレバー135R側に引っ張られて右ケーブルエンド911Rとともにインナ受け82が移動する場合にも、左ケーブルエンド911Lは移動しない。
【0037】
左カットオフインナケーブル91Lの基端部912Lは、左カットオフレバー135Lに接続されており、左カットオフレバー135Lを上方に回動することによって、左カットオフインナケーブル91Lが引っ張られる。同様に、右カットオフインナケーブル91Rの基端部912Rは、右カットオフレバー135Rに接続されており、右カットオフレバー135Rを上方に回動することによって、右カットオフインナケーブル91Rが引っ張られる。
【0038】
次に、本実施形態に係るエンジン回転数の制御方法について説明する。
図4Aは、
図3の状態から右カットオフレバー135Rが上方に回動操作された状態(作業機12がロック状態)であり、
図4Bは、
図4Aの状態から右カットオフレバー135Rが下方に回動操作された状態(作業機12が作動可能の状態)である。
【0039】
図3に示すアクセルレバー136が高速回転側H、すなわち牽引方向Tに操作された状態において、右カットオフレバー135Rが上方に回動操作されると、
図4Aに示すように、右カットオフインナケーブル91Rが右カットオフレバー135R側へ引っ張られ、右ケーブルエンド911Rとともにインナ受け82が右カットオフレバー135R側へ移動する。これにより、インナ受け82に接続されたカットオフインナケーブル71が引っ張られて、カットオフインナケーブル71の一端部71aに固定されたアウタ受け62が、圧縮スプリング63を圧縮しながら調速レバー31側へ牽引される。
【0040】
アウタ受け62には第1アウタケーブル52のキャップ52aが固定又は当接されているため、アウタ受け62が調速レバー31側に移動すると、調速レバー31の戻しスプリング32でインナケーブル51を牽引していることでアウタ52に発生するアウタ反力の作用により、第1アウタケーブル52の一部が装置筐体61内に引き込まれる。第1アウタケーブル52のアクセルレバー136側の端部52bは、操縦席131の左側に固定され、中継装置6もリザーバタンク137に固定されているため、第1アウタケーブル52の一部が装置筐体61内に引き込まれることで、
図4Aに示すように第1アウタケーブル52の撓みが減る(通常時の第1アウタケーブル52を2点鎖線で示す)。第1アウタケーブル52の撓みが減ると、同時に中継装置6よりもアクセルレバー136側のインナケーブル51の撓みも減るため、中継装置6よりも調速レバー31側のインナケーブル51が伸びることとなる。これにより、調速レバー31は、インナケーブル51からの牽引力が解放されるため、戻しスプリング32によって低速回転側Lに回動操作されて、エンジン回転数を低下させることができる。
【0041】
一方、右カットオフレバー135Rが下方に回動操作されると、
図4Bに示すように、アウタ受け62は、カットオフインナケーブル71からの牽引力が解放されるため、圧縮スプリング63によって元の位置に戻る。これと同時に、アウタ受け62に固定されている第1アウタケーブル52のキャップ52aも元の位置に戻るため、第1アウタケーブル52の撓みが増える。第1アウタケーブル52の撓みが増えると、同時に中継装置6よりもアクセルレバー136側のインナケーブル51の撓みも増えるため、中継装置6よりも調速レバー31側のインナケーブル51が縮むこととなる。これにより、調速レバー31は、インナケーブル51の牽引力によって高速回転側Hに回動操作されて、エンジン回転数を上昇させることができる。このとき、圧縮スプリング63の付勢力は、戻しスプリング32の付勢力よりも大きい必要がある。また、エンジン回転数の上昇と同時に、アクセルレバー136による調速レバー31の操作系統が復帰する。
【0042】
以上のように本実施形態の油圧ショベル1は、エンジン3と、
エンジン3の駆動力により駆動する油圧ポンプ4と、
油圧ポンプ4から圧送される作動油によって駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを操作不能にするカットオフレバー135L,135Rと、
エンジン3の回転数を制御するエンジンガバナの調速レバー31と、
調速レバー31を低速回転側Lに付勢する戻りスプリング32と、
戻りスプリング32の付勢力に抗して調速レバー31を高速回転側Hに牽引可能なコントロールケーブル5と、
コントロールケーブル5を牽引方向T及び解放方向Rに作動させるように操作可能なアクセルレバー136と、
コントロールケーブル5の中途部に設けられた中継装置6と、を備え、
中継装置6は、アクセルレバー136が牽引方向Tに操作された状態において、カットオフレバー135L,135Rを回動させ前記アクチュエータを操作不能にせしめる状態に連動して、調速レバー31に対するコントロールケーブル5の牽引力を解放する牽引力解放機構を有する。
【0043】
かかる構成によれば、カットオフレバー135L,135Rを回動させアクチュエータを操作不能にしたときに、調速レバー31に対するコントロールケーブル5の牽引力が解放されるため、調速レバー31が戻りスプリング32の付勢力によって低速回転側Lに調整され、エンジンの回転数を低下させることができる。したがって、センサ等を用いないシンプルな構造なため低コストで製造でき、燃費がよくかつ二酸化炭素の排出量の少ない油圧ショベル1を容易に提供することができる。
【0044】
また、コントロールケーブル5は、調速レバー31とアクセルレバー136に接続されるインナケーブル51と、中継装置6よりもアクセルレバー136側の第1アウタケーブル52と、中継装置6よりも調速レバー31側の第2アウタケーブル53と、を有し、
前記牽引力解放機構は、第1アウタケーブル52の一部を中継装置6の内部に引き込むことによりインナケーブル51の牽引力を解放するものでもよい。
【0045】
また、中継装置6は、装置筐体61と、第1アウタケーブル52の調速レバー31側の端部に固定され、装置筐体61内で摺動可能なアウタ受け62と、アウタ受け62をアクセルレバー136側へ付勢する圧縮スプリング63と、を有し、
アウタ受け62が、カットオフレバー135L,135Rの回動に連動して引っ張られるカットオフケーブル7によって、圧縮スプリング63の付勢力に抗して調速レバー31側に牽引されることで、第1アウタケーブル52の一部を装置筐体61内に引き込むものでもよい。
【0046】
また、本実施形態の油圧ショベル1において、圧縮スプリング63の付勢力は、戻りスプリング32の付勢力よりも大きくなっている。
【0047】
[別実施形態]
油圧ショベル1は、調速レバー31に対するコントロールケーブル5の牽引力の解放を解除する牽引力解放機構解除装置64を備えるようにしてもよい。牽引力解放機構解除装置64は、圧縮スプリング63の付勢力に抗して調速レバー31側に牽引される力からアウタ受け62を解放する。
【0048】
図5は、別実施形態に係るエンジン回転数の制御システムを模式的に示している。別実施形態では、アウタ受け62は、第1アウタケーブル52の調速レバー31側の端部に固定されるアウタ受け本体部62aと、カットオフインナケーブル71によって圧縮スプリング63の付勢力に抗して調速レバー31側に牽引される付勢部材受け部62bとで構成されている。
【0049】
アウタ受け本体部62aには、第1アウタケーブル52の端部のキャップ52aが固定又は当接されている。また、アウタ受け本体部62aには、解除ケーブル642が接続されている。解除ケーブル642は、アウタ受け本体部62aを貫通しており、解除ケーブル642のケーブルエンド642aは、アウタ受け本体部62aに形成された貫通孔よりも大きくなっている。
【0050】
付勢部材受け部62bは、調速レバー31側へ突出する突出部62cを有し、突出部62cの周囲に圧縮スプリング63が配置される。付勢部材受け部62bは、圧縮スプリング63によってアクセルレバー136側へ付勢される。
【0051】
突出部62cの内部は空洞となっている。解除ケーブル642のケーブルエンド642aは、突出部62cの内部に形成された空洞の断面よりも小さくなっている。これにより、ケーブルエンド642aは、突出部62cの内部を移動可能となっている。
【0052】
付勢部材受け部62bの突出部62cには、カットオフインナケーブル71の一端部71aが係止されている。付勢部材受け部62bは、カットオフインナケーブル71によって圧縮スプリング63の付勢力に抗して調速レバー31側に牽引される。
【0053】
解除ケーブル642のアウタ受け本体部62aとは反対側の端部642bには、デセルキャンセルレバー641(解除レバーに相当)が接続されている。デセルキャンセルレバー641は、解除ケーブル642を弛緩状態とする位置と、解除ケーブル642を緊張状態とする位置とに回動可能となっている。
【0054】
解除ケーブル642は、第3アウタケーブル643で覆われている。第3アウタケーブル643の一端部643aは、装置筐体61に固定されている。また、第3アウタケーブル643の他端部643bは、操縦席131の周囲等に固定されている。よって、第3アウタケーブル643の長さは変動しない。
【0055】
牽引力解放機構解除装置64は、アウタ受け本体部62aに接続される解除ケーブル642と、解除ケーブル642のアウタ受け本体部62aとは反対側の端部642bに接続されるデセルキャンセルレバー641と、を備える。
【0056】
図5に示す通常時には、デセルキャンセルレバー641はOFFの位置にあり、解除ケーブル642は弛緩状態となっている。また、左右のカットオフレバー135L,135Rは下方に回動操作された状態(作業機12が作動可能の状態)である。このとき、アウタ受け本体部62a及び付勢部材受け部62bは、圧縮スプリング63によりアクセルレバー136側へ付勢されている。通常時には、アクセルレバー136の回動操作によって、調速レバー31を回動させることができる。
【0057】
牽引力解放機構解除装置64は、デセルキャンセルレバー641の回動位置が解除ケーブル642を弛緩状態にする場合は、カットオフレバー135L,135Rの回動により、カットオフインナケーブル71が動作し、アウタ受け本体部62aと付勢部材受け部62bが一体となって調速レバー31側に移動し、デセルキャンセルレバー641の回動位置が解除ケーブル642を緊張状態にする場合は、アウタ受け本体部62aは、解除ケーブル642によってアクセルレバー136側に保持され、付勢部材受け部62bのみ、カットオフインナケーブル71によって調速レバー31側に牽引される。
【0058】
次に、牽引力解放機構解除装置64の具体的な動作を説明する。
図6Aは、
図5の状態から右カットオフレバー135Rが上方に回動操作された状態(作業機12がロック状態)である。このとき、付勢部材受け部62bは、圧縮スプリング63を圧縮しながらカットオフインナケーブル71によって調速レバー31側へ牽引される。また、アウタ受け本体部62aは、第1アウタケーブル52の反力によって付勢部材受け部62bとともに調速レバー31側へ移動する。これにより、前述のように、調速レバー31は、インナケーブル51からの牽引力が解放されるため、戻しスプリング32によって低速回転側Lに回動操作されて、エンジン回転数が低下する。
【0059】
図6Bは、
図6Aの状態からデセルキャンセルレバー641がONの位置に回動操作された状態であり、解除ケーブル642は緊張状態となっている。このとき、アウタ受け本体部62aは、解除ケーブル642によってアクセルレバー136側へ引っ張られて元の位置に戻る。これと同時に、アウタ受け本体部62aに固定又は当接されている第1アウタケーブル52のキャップ52aも元の位置に戻る。これにより、前述のように、調速レバー31は、インナケーブル51の牽引力によって高速回転側Hに回動操作されて、エンジン回転数が上昇する。その結果、カットオフレバー135L,135Rが上方に回動操作され、作業機12がロック状態であっても、エンジン3をハイアイドル状態とすることができる。外気温が低い環境や高地等では、作業をしていない場合であってもエンジン回転数を低下させると、エンジンストールが起こる可能性があるが、外気温が低い環境や高地等では、オペレータの選択により、デセル機能を解除することができる。
【0060】
図6Cは、
図6Bの状態からデセルキャンセルレバー641がOFFの位置に回動操作された状態であり、解除ケーブル642は弛緩状態となっている。このとき、第1アウタケーブル52の反力によってキャップ52aがアウタ受け本体部62aを押して、アウタ受け本体部62aは、付勢部材受け部62bに当接するまで調速レバー31側へ移動する。これにより、調速レバー31は、戻しスプリング32によって低速回転側Lに回動操作されて、エンジン回転数が低下する。なお、解除ケーブル642のデセルキャンセルレバー641側の遊び代は、カットオフレバー135L,135Rのストローク、すなわちカットオフインナケーブル71の移動量よりも長くする必要がある。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 油圧ショベル
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 コントロールケーブル
6 中継装置
7 カットオフケーブル
8 連結装置
9L 左カットオフケーブル
9R 右カットオフケーブル
31 調速レバー
32 戻りスプリング
51 インナケーブル
52 第1アウタケーブル
53 第2アウタケーブル
61 装置筐体
62 アウタ受け
63 圧縮スプリング
135L 左カットオフレバー
135R 右カットオフレバー
136 アクセルレバー