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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】面状センサおよび面状センサの使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20221024BHJP
   H01L 41/08 20060101ALI20221024BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20221024BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20221024BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20221024BHJP
   H01L 41/47 20130101ALI20221024BHJP
【FI】
G01L1/16 B
H01L41/08
H01L41/047
H01L41/113
H01L41/193
H01L41/47
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018033543
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019138888
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2018021862
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517069066
【氏名又は名称】ロボセンサー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】大村 昌良
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 直人
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-203996(JP,A)
【文献】特開2008-264024(JP,A)
【文献】特開2017-026396(JP,A)
【文献】特開2017-120885(JP,A)
【文献】特開2014-235133(JP,A)
【文献】特開2017-201487(JP,A)
【文献】特開2016-127202(JP,A)
【文献】特開2016-209144(JP,A)
【文献】特開2007-255980(JP,A)
【文献】特表2009-531709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16,5/00,5/167
H01L 41/08,41/047,41/113,41/193,
H01L 41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電性繊維が配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記圧電性繊維は、前記面状センサ内の一部分を除き、前記圧電体の圧電特性を低減させたものであり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする面状センサ。
【請求項2】
複数の圧電性繊維が配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記複数の圧電性繊維には、交差する二本の圧電性繊維である第一のペアと、交差する二本の圧電性繊維である第二のペアが含まれ、
前記第一のペアの圧電性繊維と前記第二のペアの圧電性繊維による交点の数が一以下となるように設けられたものであり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする面状センサ。
【請求項3】
第一の方向と、該第一の方向と交差する第二の方向のそれぞれに沿って、複数の圧電性繊維が網状に配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記第一の方向および前記第二の方向は、前記面状センサの長手方向と斜めに交差する方向であり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする面状センサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の面状センサである第一の面状センサと、
請求項1から3のいずれか一項に記載の面状センサである第二の面状センサと、を用い、
検査対象を前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサで挟んだ状態で、前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサのそれぞれにおける圧力変化の位置を検出する、ことを特徴とする面状センサの使用方法。
【請求項5】
請求項4に記載の面状センサの使用方法であって、
検査対象を前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサで挟んだ状態で、前記第一の面状センサから前記検査対象を介して前記第二の面状センサにまで位置調整用の圧力を加え、
前記位置調整用の圧力を加えたときに、前記第一の面状センサと前記第二の面状センサのそれぞれにおいて前記圧力変化の位置情報を取得し、
前記位置情報に基づいて、前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサによって検出される圧力変化の位置関係を修正する、ことを特徴とする面状センサの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性繊維を用いた面状センサおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電性繊維を用いた面状センサが知られている(例えば、特許文献1等参照)。この線状センサは、力による変形が生じると、内部導体と外部導体との間に電圧が誘起される。この特性を利用して触覚センサや振動センサ等に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-204429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような面状センサは、圧力がかかった場合に、その圧力がどの部位に対するものなのかを判定できない場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、圧力を受けた部位をより正確に判定しやすい面状センサおよびこの面状センサの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の第一の態様の面状センサは、
複数の圧電性繊維が配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記圧電性繊維は、前記面状センサ内の一部分を除き、前記圧電体の圧電特性を低減させたものであり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする。
【0007】
この面状センサによれば、面状センサの所望の場所に圧電性繊維を配置でき、圧力を受
けた部位をより正確に判定することができ、さらにノイズの影響を低減することができる。
【0008】
また、上記目的を解決する本発明の第二の態様の面状センサは、
複数の圧電性繊維が配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記複数の圧電性繊維には、交差する二本の圧電性繊維である第一のペアと、交差する二本の圧電性繊維である第二のペアが含まれ、
前記第一のペアの圧電性繊維と前記第二のペアの圧電性繊維による交点の数が一以下となるように設けられたものであり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする。
【0009】
この面状センサによれば、圧力を受けた部位をより正確に判定することができ、さらにノイズの影響を低減することができる。
【0010】
また、上記目的を解決する本発明の第三の態様の面状センサは、
第一の方向と、該第一の方向と交差する第二の方向のそれぞれに沿って、複数の圧電性繊維が網状に配置された面状センサであって、
前記圧電性繊維は、内部導体と、該内部導体を覆う圧電体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、
前記第一の方向および前記第二の方向は、前記面状センサの長手方向と斜めに交差する方向であり、
前記複数の圧電性繊維の少なくとも一部に対し、圧電性のない導線を隣り合わせに配置したものであり、
前記圧電性のない導線は、内部導体と、該内部導体を覆う絶縁体と、該圧電体を覆う外部導体を有するものであり、且つ隣り合う前記圧電性繊維とインピーダンスが同じものである、
ことを特徴とする。
【0011】
この面状センサによれば、圧力を受けた部位をより正確に判定することができ、さらにノイズの影響を低減することができる。
【0016】
また、上記記載の面状センサは、
外部基板を有し、
前記圧電性繊維は、圧電体と、該圧電体によって絶縁された内部導体および該内部導体よりも外周側に設けられた外部導体と、を有するものであり、
前記圧電性繊維は、前記外部基板に形成された第一の孔と第二の孔を通って前記外部基板に固定されたものであって、
前記第一の孔において、露出した前記外部導体がはんだ付けされ、
前記第一の孔から前記第二の孔に至るまでに前記圧電体が露出し、
前記内部導体が前記圧電体に折り返された状態の端部が前記第二の孔を通った状態で、筒の内部に固定されたものであり、
前記筒は、前記第二の孔においてはんだ付けされたものであってもよい。
【0017】
この面状センサによれば、外部基板に対してしっかり固定することができる。
【0018】
また、上記記載の面状センサは、
設置面と接しない面に、金属製繊維の層を設けたものであってもよい。
【0019】
この面状センサによれば、耐久性を向上させることができる。
【0020】
上記目的を解決する本発明の面状センサの使用方法は、
上記記載の面状センサである第一の面状センサと、
上記記載の面状センサである第二の面状センサと、を用い、
検査対象を前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサで挟んだ状態で、前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサのそれぞれにおける圧力変化の位置を検出する、ことを特徴とする。
【0021】
この面状センサの使用方法によれば、二つの面状センサで挟まれた検査対象の緩衝性能を評価することができる。
【0022】
また、上記記載の面状センサの使用方法は、
検査対象を前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサで挟んだ状態で、前記第一の面状センサから前記検査対象を介して前記第二の面状センサにまで位置調整用の圧力を加え、
前記位置調整用の圧力を加えたときに、前記第一の面状センサと前記第二の面状センサのそれぞれにおいて前記圧力変化の位置情報を取得し、
前記位置情報に基づいて、前記第一の面状センサおよび前記第二の面状センサによって検出される圧力変化の位置関係を修正する、ものであってもよい。
【0023】
この面状センサの使用方法によれば、二つの面状センサによって検出される圧力変化の位置を合わせ、挟まれた検査対象の緩衝性能をより正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、圧力を受けた部位をより正確に判定しやすい面状センサおよびこの面状センサの使用方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(A)は、本発明の面状センサが適用される靴SHを示す図であり、(B)は、この靴SHに設置される面状センサを示す図である。
図2図1(B)に示す面状センサの構成を示す図である。
図3】面状センサ1の圧電性繊維100の構造を模式的に示す断面図である。
図4】圧電性繊維100の内部導体の形状を示す図である。
図5】(A)は、本実施形態の面状センサ1を示す図であり、(B)は、圧電性繊維100の配線方向を本実施形態とは異なる方向にした実施形態の面状センサZを示す図である。
図6】(A)は、本実施形態の面状センサ1を示す図であり、(B)は、図5(B)に示す比較対象の面状センサZを示す図である。
図7】(A)は、手の指用の面状センサ1を示す図であり、(B)は、手の指用の面状センサ1を手HAの人差し指に適用した状態を示す図である。
図8】本実施形態に対し、第一の方向および第二の方向を異ならせた実施形態を示す図である。
図9】第一の方向および第二の方向に沿って配置された圧電性繊維100の間に、一般的な布等に使用される繊維110を配置した面状センサ1Aを示す図である。
図10図9の面状センサ1Aの構造を側面から見た模式図である。
図11】第一の方向に沿って圧電性繊維100が配置された第一の層10と、第二の方向に沿って圧電性繊維100が配置された第二の層11の他に、非圧電性繊維110による第三の層14を加えた面状センサ1Bを示す図である。
図12】隣り合う圧電性繊維100を編み込んだ構成を示す図である。
図13】凸部30を設けた踏み板3を示す図である。
図14】面状センサ1を複数使用した例を示す図である。
図15】基板FLに固定された圧電性繊維100の一例を示す図である。
図16】圧電性繊維100の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図17】圧電性繊維100の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図18】圧電性フィルムの巻き付け方の一例を示す図である。
図19】縦横二本の圧電性繊維の交差の一例を示す図である。
図20】三本の圧電性繊維の交差の一例を示す図である。
図21】一部の領域に圧電性繊維を設けた面状センサの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[全面に圧電性繊維を設けた面状センサについて]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
まず、本発明の面状センサを靴の中敷に適用し、この中敷を足裏の圧力センサとして利用した実施形態について説明する。図1(A)は、本発明の面状センサが適用される靴SHを示す図であり、図1(B)は、この靴SHに設置される面状センサを示す図である。図2は、図1(B)に示す面状センサの構成を示す図である。
【0028】
図1(B)に示す面状センサ1は、図1(A)に示す靴SHに使用可能な中敷の形状をしたものであり、その内部に網状に配置された複数の圧電性繊維100を備えたものである。図1(B)には、この面状センサ1の内部に設けられた複数の圧電性繊維100が点線で示されている。これらの圧電性繊維100は、直角に交差する二方向に沿って配置されているが、この配置の方向は、いずれも面状センサ1の長手方向とは斜めに交差する方向となっている。なお、以下ではこれら直交する二方向をそれぞれ第一の方向、第二の方向と称する。図1(B)には、面状センサ1の長手方向と、第一の方向および第二の方向が、矢印で示されている。
【0029】
本実施形態の面状センサ1は四層で構成されている。具体的には図2に示すように、圧電性繊維100が第一の方向に沿って配置された第一の層10と、圧電性繊維100が第二の方向に沿って配置された第二の層11を重ねた状態で、さらにその上下にフェルト素材の層12、13が設けられている。これらの層は、接着剤(例えば、変性シリコン、シリル化ウレタン)によって接着された状態となっている。ここで、第一の層および第二の層は、方向の異なる圧電性繊維100を織り込まない構成の一例であり、実際には圧電性繊維100の隙間にフェルト素材が入り込んだ状態となっている。なお、第一の方向に沿った圧電性繊維100に第二の方向に沿った圧電性繊維100を織り込んで一層にしてもよいが、織り込むことによって圧電性繊維100に張力がかかったり、面状センサ1にかかる圧力が圧電性繊維100の交差部分に集中してより大きな圧力がかかってしまう場合がある。このため、本実施形態では、第一の方向に沿った圧電性繊維100と、第二の方向に沿った圧電性繊維100とを織り込まずに別の層に分けた構成を採用している。なお、別の層に分けるにあたっては、二層以上であってもよい。
【0030】
面状センサ1の圧電性繊維100は、靴SHの側面に内蔵された記録回路2に接続されており、面状センサ1の信号(圧力によって圧電性繊維100が変形した際に生じる誘起電圧)は記録回路2に挿入された記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ)に記録される。この記憶媒体を取り出して面状センサ1の信号を解析することで、足裏にかかる圧力が変化した位置を判定することができる。なお、靴SHに内蔵するという状況から、記録回路2はフレキシブル基板を用いたものであることが好ましい。また、本実施形態の構成に限らず、例えば面状センサ1と外部の処理装置とを有線あるいは無線で接続し、面状センサ1からの信号をリアルタイムで処理する構成としてもよい。
【0031】
次に、図3図4を用いて面状センサ1の圧電性繊維100の構造について説明する。図3は、面状センサ1の圧電性繊維100の構造を模式的に示す断面図であり、図4は、圧電性繊維100の内部導体の形状を示す図である。
【0032】
図3に示すように、圧電性繊維100は、中心に7本の導体線1000で構成された内部導体101が配置されており、その外周に設けられた圧電体102と、さらにその外周に設けられた外部導体103とを有する。
【0033】
7本の導体線1000は、いずれも直径が10μmのものであって、このうち4本はステンレス製の導体線1000Sであり、残りの3本は銅製の導体線1000Cである。図3では、ステンレス製の導体線1000Sが左下がりのハッチングで、また銅製の導体線1000Cが右下がりのハッチングでそれぞれ示されている。図3に示す内部導体101では、中心に配置される導体線1000には、ステンレス製の導体線1000S(ステンレスワイヤ)が用いられており、外周に配置される導体線1000には、ステンレス製の導体線1000Sと銅製の導体線1000Cが交互に用いられている。銅製の導体線1000Cは、ステンレス製の導体線1000Sに比べて、電気抵抗が低く、かつ柔らかい。反対に、ステンレス製の導体線1000Sは、銅製の導体線1000Cに比べて、電気抵抗は高くなるが、機械的強度(例えば、引張強度等)は高くなる。
【0034】
図3では、7本の導体線1000が、正六角形の各頂点およびその正六角形の中心に配置された状態となっているが、これらの7本の導体線1000は、図4に示すように一本に撚り合わされた状態のものである。すなわち、内部導体101は、7本の導体線1000をその断面において最密構造に配置した上で撚り合わせたものである。なお、この場合の内部導体101の太さは最大30μmとなる。このように複数本の導体線1000を甘撚、あるいは中撚程度に撚っておくことで、撚りの方向とは逆方向の緩みを許容し、この緩みによって圧電性繊維100に柔軟性を与えることができる。
【0035】
なお、導体線1000の直径は10μmに限られず、10μm以上40μm以下であってもよく、20μm以上30μm以下となることが好ましい。導体線1000は、細ければ細いほど柔軟性は高められるが強度が低下し、太ければ太いほど柔軟性は低下するが強度が高められる。また、導体線1000の太さが20μm以上であれば、低コストで製造することができ、且つ製造も容易である。また、導体線1000の太さを同じにする構成に限られるものではなく、異なる太さの導体線1000を撚り合わせて内部導体101を構成してもよい。
【0036】
なお、図3に示す内部導体101は、7本の導体線1000を撚り合わせたものであったが、この数については7本でなくてもよい。また例えば、複数本を撚り合わせた束を複数用意し、これらをさらに撚り合わせる、といったように複数段階に分けて撚り合わせものであってもよい。複数の導体線1000を撚り合わせることにより、圧電性繊維100の柔軟性を高めることができる。なお、複数段階に分けて撚り合わせる場合のように、撚り合わせの工程が複数回ある場合には、撚り合わせる方向を異ならせてもよい。一方、複数の導体線1000を撚り合わせずに、直線状に束にしたものを用いてもよい。また、例えば、撚り合わせない複数の導体線1000の束と、撚り合わせた複数の導体線1000を撚り合わせる、といったように、これらの構成を組み合わせてもよい。これらの場合であっても、圧電材料を塗布することで、複数の導体線1000が互いに接着されて束ねられ、一本の圧電性繊維を製造することができる。
【0037】
以上説明した圧電性繊維100では、内部導体101を構成する導体線1000として、機械的強度や電気抵抗が異なる複数種類の導体線が用いられているが、柔軟性をさらに高める場合や、電気抵抗をさらに低くする場合には、中心の導体線1000を、銅製の導体線1000Cに代えてもよく、あるいは、7本の導体線1000の全てを銅製の導体線1000Cにしてもよい。反対に、機械的強度をさらに高める場合には、7本の導体線1000の全てをステンレス製の導体線1000Sにしてもよい。また、ステンレス製の導体線1000Sに代えて、タングステン製の導体線や、タングステン及びその合金等の高張力鋼材あるいは超高張力鋼からなる導体線を用いてもよいし、銅製の導体線1000Cに代えて、チタン製の導体線や、チタン合金あるいはマグネシウムやマグネシウム合金等からなる導体線を用いてもよい。
【0038】
圧電体102は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電材料を内部導体101に塗布することによって形成されたものである。ポリフッ化ビニリデンは、圧電効果が発生する軽量の高分子材料であり、これに圧力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体102には分極処理が施されており、圧電体102に外部から力が加わったときに内部導体101と外部導体103の間に電圧が誘起される。なお、内部導体101と外部導体103の間に電圧をかけると、圧電体102に変形(歪み)が生じる。
【0039】
圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデンの他に、トリフルオロエチレン(TrEF)や、PVDFとTrEFの混晶材料や、ポリ乳酸、ポリ尿酸、ポリアミノ酸等の双極子モーメントをもつ高分子材料があげられる。また、圧電材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。なお、塗布する構成に限らず、例えば、帯状のPVDFフィルムを内部導体101に螺旋状に巻き付けた構成であってもよい。
【0040】
圧電体102の厚みは、導体線1000の直径以上であることが好ましく、図3に示す圧電体102の厚さは、最も薄い箇所で10μmであるが、10μm以上50μm以下であればよい。なお、圧電体102の厚さは、厚ければ厚いほどセンサ感度が良好になるが、圧電体102の厚さの限界値は、塗布する圧電材料の粘度や塗布方法によって決まってくる。また、圧電体102の厚さが厚すぎると圧電性繊維100が硬くなりすぎてしまい柔軟性に欠けてしまうといった欠点もある。
【0041】
図3に示す内部導体101では、複数の導体線1000を撚り合わせているため、導体線1000同士の境目に窪みがある。この窪みの部分では、より多くの圧電材料を担持することができ、圧電材料の体積が大きく(厚く)なるため、センサ感度が他の部分よりも良好になる。内部導体101には、こうした窪みによって圧電材料が他の部分よりも厚い部分が6か所、周方向に均等間隔で存在するため、どの方向に曲げられても高感度な圧電性繊維として機能する要因になる。
【0042】
なお、図3に示す隣り合う導体線1000は互いにほぼ接しているが、わずかな隙間から毛細管現象によって圧電材料が浸透し、隣り合う導体線1000同士の隙間(内部導体101の内部)が圧電材料によって埋められた状態となっている。しかし、圧電材料の粘度や塗布方法によっては、隣り合う導体線1000同士の隙間に圧電材料が浸透しない場合があるが、少なくとも内部導体101の外周に面した部分に圧電材料が担持された状態となっていればよい。
【0043】
図3に示す外部導体103は、圧電体102の外周に、カーボンナノチューブ等のカーボンを含む高分子導電性材料が塗布されることで形成された層である。外部導体103を形成する導電性材料としては、銀の微粒子を含む高分子導電性材料や銀ペースト等であってもよい。また、この導電性材料を塗布する方式としては、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいしスプレー等による吹き付け塗装であってもよいし含浸塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。外部導体103の厚さは、導体線1000の直径以下であることが好ましく、また、圧電体102の厚さ以下であることも好ましい。図3に示す外部導体103の厚さは、5μmであるが、5μm以上50μm以下であればよい。また、外部導体103に導電性材料を用いずに導線を用いてもよい。
【0044】
なお、上述したように、内部導体101において隣り合う導体線1000の隙間は圧電材料によって埋められた状態となっており、高分子導電性材料が入り込む余地はない。
【0045】
図3に示す圧電性繊維100は、耐摩耗性、耐薬品性、防錆性を高めるためのシース層を設けていないが、このシース層を設けたものであってもよい。このシース層を設けるにあたっては単層であってもよいが、例えば、厚さが6μmのシース層を2回塗布し、内層と外層とからなる2層構造としてもよい。この場合、内層は、外装に比べて柔らかい材料(例えば、ポリアミド合成樹脂やポリ塩化ビニル樹脂)を塗布することで形成し、外層は、内層に比べて耐摩耗性が高い材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4フッ化・6フッ化プロピレン フッ素樹脂(FEP)、4フッ化エチレンエチレン共重合(EPFE)、4フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合 フッ素樹脂(PFA))を塗布することで形成してもよい。ここにいう塗布とは、浸漬(ドブ付け)塗装であってもよいし吹き付け塗装であってもよいしハケ塗りであってもよいし、コーター等による塗布装置による塗布であってもよい。また、ピンホールが発生することを考慮して複数回塗布することが好ましい。また、外層は、内層よりも厚くてもよい。さらに、内層は、可燃性材料で形成されていてもよいが、外層は、難燃性材料、不燃性材料、耐炎性材料で形成されていることが好ましい。また、シース層全体の厚みは5μm以上50μm以下とすることが好ましい。さらに、ポリエステルテープやチューブタイプのシース(単層、複層いずれも)を用いてもよく、その厚みは、20μm以上50μm以下であればよい。
【0046】
図3に示す圧電性繊維100は太さが最大60μmのものであり、厚さ10μmのシース層を二重構造で設けても0.1mmの太さの圧電性繊維となる。ここで、製造が容易で低コストに得ることができる圧電性繊維100の例としては、直径20μmの導体線1000を用いて太さが60μmの内部導体101に、厚さが最大20μmの圧電体102と、厚さが10μmの外部導体103を形成したものがある。この構成では、外部導体103までの太さが0.12mmである。これに、シース層を二重構造で設けても0.15mm以下の電線センサ1を実現することができる。
【0047】
以下、図5を用いて、上記説明した本実施形態の面状センサ1と、圧電性繊維100の配線方向が本実施形態とは異なる実施形態とを比較して、本実施形態の効果の一つについて説明する。図5(A)は、本実施形態の面状センサ1を示す図であり、図5(B)は、圧電性繊維100の配線方向を本実施形態とは異なる方向にした実施形態(以下、比較対象)の面状センサZを示す図である。
【0048】
足裏では、足の指の付け根部分や踵部分に圧力がかかり、歩行(あるいは走行)の際にはこれら複数部分に同時に圧力がかかる場合がある。その一例として、図5(A)(B)に示す足の指の付け根部分の領域A1と、踵部分の領域A2に、同時に圧力がかかった場合について説明する。
【0049】
本実施形態の面状センサ1では、図5(A)に示すように、足の指の付け根部分の領域A1にかかる圧力に対しては、第一の方向に沿った5本の圧電性繊維100(第一グループG1)と、第二の方向に沿った5本の圧電性繊維100(第二グループG2)から信号が検出される。また、踵部分の領域A2にかかる圧力に対しては、第一の方向に沿った5本の圧電性繊維100(第三グループG3)と、第二の方向に沿った5本の圧電性繊維100(第四グループG4)から信号が検出される。このとき、第一グループG1と第二グループG2の交点は領域A1に対応し、第三グループG3と第四グループG4の交点は領域A2に対応する。この場合、これらの信号が検出された圧電性繊維100の交点を求めることで、圧力が変化した領域を判定することができる。
【0050】
一方、比較対象の面状センサZでは、図5(B)に示すように、足の指の付け根部分の領域A1にかかる圧力に対しては、長手方向に沿った5本の圧電性繊維100(第五グループG5)と、短手方向に沿った5本の圧電性繊維100(第六グループG6)から信号が検出される。また、踵部分の領域A2にかかる圧力に対しては、長手方向に沿った5本の圧電性繊維100(第七グループG7)と、短手方向に沿った5本の圧電性繊維100(第八グループG8)から信号が検出される。このとき、第五グループG5と第六グループG6の交点は領域A1に対応し、第七グループG7と第八グループG8の交点は領域A2に対応する。さらに、この比較対象の面状センサZの構成では、上記以外にも、第六グループG6と第七グループG7、あるいは第五グループG5と第八グループG8からも交点を求めることができるが、これらの交点は圧力がかかっていない領域を含むことがある(例えば、点線で示す、第六グループG6と第七グループG7の交点、領域A3)。
【0051】
上記説明したように比較対象の面状センサZの構成では、圧力がかかっている領域を適切に判定することができない場合がある。上記の問題は、面状センサZの長手方向に対して圧電性繊維100を設けたことにより、一本の圧電性繊維100が担当する範囲が広くなることに起因するものである。この点に鑑み本実施形態では、面状センサ1の長手方向に対して圧電性繊維100を斜めに設けた構成を採用している。この構成により、一本の圧電性繊維100が担当する範囲を狭くすることができ、圧力がかかった位置あるいは領域をより正確に判定することができる。なお、例えば、足裏の圧力の変化を検出するにあたって、靴の中底に複数の面状センサを並べる構成と採用した場合には、これらの面状センサの位置関係を合わせることが困難な場合があるが、本実施形態のように一体で構成した場合にはこうした問題が生じないため、設置を容易に行うことができる。
【0052】
本実施形態のように、靴の中底に面状センサを設けた場合、この面状センサは歩行あるいは走行によって長手方向に撓む。ここで、図5(B)に示すような面状センサZを使用した場合、長手方向に沿って設けられた圧電性繊維100に対しては、この撓みによる力が加わり、圧電性繊維100が劣化する。これに対して本実施形態の面状センサ1を使用した場合、圧電性繊維100が長手方向に対して斜めに設けられているため、長手方向に沿って配線した場合と比較して曲がり度合いが抑えられ、面状センサ1が劣化しにくくすることができる。
【0053】
次に、図6を用いて、図5(A)に示した本実施形態の面状センサ1と、図5(B)に示した比較対象の面状センサZを再度示し、外部に配線する際の違いについて説明する。図6(A)は、本実施形態の面状センサ1を示す図であり、図6(B)は、図5(B)に示す比較対象の面状センサZを示す図である。
【0054】
面状センサ1から記録回路2へ配線を設けるにあたり、本実施形態では、面状センサ1内部の圧電性繊維100を面状センサ1の外部に延ばして記録回路2に接続する構成を採用している。ここで、面状センサ1の外部においては、圧電性繊維100のセンサとしての機能は不要であるため、この部分を加熱する(例えば、70°C以上150°C以下の加熱温度で10秒以上10分以下、好ましくは80°C以上120°C以下の加熱温度で10秒以上60秒以下の加熱)ことによって圧電特性を検出できなくなる程度に低減させ、単なる導線として用いている。
【0055】
さらに面状センサ1を靴の中底に適用するにあたっては、面状センサ1から外部に延びた圧電性繊維100を面状センサ1の縁で曲げる必要がある。ここで、図6(B)に示すように、圧電性繊維100が面状センサZの長手方向および短手方向に設けられている場合、圧電性繊維100をそのまま面状センサZの外部に延ばすと、圧電性繊維100の多くが面状センサZの縁に対する角度が垂直になる。図6(B)には、面状センサZの縁に対してほぼ垂直な角度で外部に延びた圧電性繊維100の一例が示されている。これらの圧電性繊維100の束を面状センサZの縁で曲げた場合、その角度は直角に近くなる。一方、図6(A)に示すように、圧電性繊維100が面状センサ1の長手方向に対して斜めに設けられている場合、圧電性繊維100をそのまま面状センサ1の外部に延ばすと、圧電性繊維100の多くが面状センサ1の縁に対して斜めになる。図6(A)には、面状センサ1の縁に対して斜めの角度で外部に延びた圧電性繊維100の一例が示されている。この場合、これらの圧電性繊維100の束を直角に曲げなくとも、面状センサ1の縁で曲げることができるため、図6(B)の場合と比較して圧電性繊維100の曲がり度合いを抑えることができる。
【0056】
圧電性繊維100は、圧力による変形の際に信号が生じるが、設置状況によっては測定対象以外の圧力による信号が生じる可能性がある。そのため、圧電性繊維100を設けるにあたっては外部からの力を可能な限り排除することが好ましい。この点、本実施形態の面状センサ1のように圧電性繊維100が長手方向に対して斜めに設けられている構成では、長手方向および短手方向に沿って配線した場合と比較して配線の曲がり度合いを抑えられるため、面状センサ1のセンサ性能を向上させることができる。
【0057】
以上説明した構成では、長手方向とは斜めに交差する方向に圧電性繊維を配置した面状センサ(面状センサ1)を靴SHに適用する例について説明したが、例えば、図7に示すように手の指(あるいはロボットハンド)にかかる圧力の変化を検出する場合にも適用することができる。図7(A)では、手の指用の面状センサ1が示されており、図7(B)には、これを手HAの人差し指に適用した状態が示されている。これにより、手の指にかかる圧力が変化した位置をより正確に判定することができる。また、図7(A)に示すように圧電性繊維100が面状センサ1から斜めに出ているため、適用した際に指の裏側から手首にかけて負荷をかけることなく配線することができる。なお、この面状センサ1については、指サックのように構成しておくことで、容易に取り換えることができるようにしてもよい。その他、使用者からベッドにかかる圧力の変化を検出する場合においても、長手方向とは斜めに交差する方向に圧電性繊維を配置した面状センサを用いることにより、上記説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、面状センサの設置面が硬い場合であって、且つ面状センサの圧電性繊維がこの設置面に直接接する場合には、圧電性繊維が圧力によって変形せず、信号が検出されなくなる可能性がある。このような場合には、圧電性繊維が圧力によって変形可能になるように、面状センサと設置面との間に緩衝素材を設けたり、面状センサ自体にこうした緩衝素材(例えば、図2のフェルト素材の層13)を設けたりすることが好ましい。
【0059】
以下、本実施形態を基礎として、その他採用可能な構成について説明する。
【0060】
図8は、本実施形態に対し、第一の方向および第二の方向を異ならせた実施形態を示す図である。本実施形態では、第一の方向と第二の方向が直交しているが、例えば、これらの方向が図8(A)に示すように、短手方向により傾いたものであってもよく、また、図8(B)に示すように、長手方向に対する傾き度合いが第一の方向と第二の方向とで異なってもよい。さらに、第一の方向と第二の方向のいずれとも異なる第三の方向に沿って圧電性繊維100を設けてもよい。この場合、さらに圧力を受けた領域を特定する情報が増えるため、より正確な位置を判定することができる。なお、この第三の方向については、長手方向と同じ方向であってもよいし、異なる方向であってもよい。また、第一の方向、第二の方向、第三の方向のそれぞれに沿って圧電性繊維100を配置する際には、図20に示すように、これらの三方向の圧電性繊維100が一点で交差しないように(いずれの交点も圧電性繊維100が二本だけ重なるように)することが好ましい。
【0061】
さらに、第一の方向に沿って配置された複数の圧電性繊維100の間隔と、第二の方向に沿って配置された複数の圧電性繊維100の間隔は、同じ間隔である必要はなく、これらの間隔が異なっていてもよい。また例えば、第一の方向に沿って配置された複数の圧電性繊維100については、あまり重要でない領域については間隔を大きくする、といったようにしてもよい。すなわち、第一の方向に沿って配置された複数の圧電性繊維100の間隔や、第二の方向に沿って配置された複数の圧電性繊維100の間隔については、一定間隔でなくともよい。加えて、圧電性繊維100の方向については、隣り合う圧電性繊維100と交差しない範囲であればその方向がずれたものであってもよい。
【0062】
また、図2では四層構造の面状センサ1が示されているが、この構成は一例であって、圧電性繊維100以外の部分については、様々な形態を適用することができる。以下、図2とは異なる面状センサ1の構成について説明する。
【0063】
図9には、第一の方向および第二の方向に沿って配置された圧電性繊維100の間に、一般的な布等に使用される繊維110を配置した面状センサ1Aが示されている。また、図10には、この面状センサ1Aの構造を側面から見た模式図が示されている。なお、以下の説明では、圧電性繊維100の間に挟まれた繊維110を圧電性繊維100と区別するため、非圧電性繊維110と称する。
【0064】
圧電性繊維100を使用した面状センサを人が触れる部分に適用した場合、人によっては圧電性繊維100の触感を不快に感じる場合がある。こうした点に鑑み、図9に示す面状センサ1Aは、図10に示すように圧電性繊維100よりも太い非圧電性繊維110で圧電性繊維100を挟むように配置したことを特徴とする。なお、圧電性繊維100と非圧電性繊維110は、これらの繊維よりも細い織り糸111で織り込まれて固定された状態となっている。この構成により、圧電性繊維100よりも非圧電性繊維110に触れやすくなるため、圧電性繊維100に触れる機会が減り、触感が向上する。
【0065】
この非圧電性繊維110としては、例えば、直径が0.3mm以上1.2mm以下であることが好ましい。また、素材としてはポリアミドやレーヨンといった合成繊維によるものでもよいし、綿等の天然繊維によるものであってもよく、また、圧電性繊維100よりも柔らかい素材を用いたものであってもよい。なお、圧力によって非圧電性繊維110がつぶれることで圧電性繊維100に触れる場合があるが、非圧電性繊維110を太くすることでこうした事態を生じにくくして触感を向上させることができる。
【0066】
織り糸111としては、圧電性繊維100の直径の1/5以上1/3以下であることが好ましい。また、素材としてはポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、レーヨンといった合成繊維によるものでもよいし、綿等の天然繊維によるものであってもよく、また、圧電性繊維100よりも柔らかい素材を用いたものであってもよい。
【0067】
なお図9の例では、圧電性繊維100の間に非圧電性繊維110が二本配置されているが、例えば二本以上配置してもよいし、一本であってもよく、非圧電性繊維110の本数はこれに限定されるものではない。また、素材が異なる複数の非圧電性繊維110を組み合わせてもよく、太さが異なる複数の非圧電性繊維110を組み合わせてもよい。また、面状センサ1Aを構成するにあたって織り糸111を使用せず、非圧電性繊維110の一部あるいは全部を用いて圧電性繊維100を織り込んでもよい。
【0068】
上記の説明では、図9の構成で触感を向上させる例について説明したが、例えば、ステンレスワイヤ等の金属製繊維を非圧電性繊維110として用いることで、耐久性を向上させることもできる。
【0069】
また、図11に示すように、第一の方向に沿って圧電性繊維100が配置された第一の層10と、第二の方向に沿って圧電性繊維100が配置された第二の層11の他に、非圧電性繊維110による第三の層14を加えて、面状センサ1Bとしてもよい。なお、図2における四層構造の面状センサ1は、第三の層14をフェルト素材で構成した一例である。この構成において第三の層14は、第一の層10および第二の層11に撚り糸等の繊維を用いて固定されていてもよいし、接着されていてもよい。
【0070】
例えば、この第三の層14を、ポリアミドやレーヨンといった合成繊維や綿等の天然繊維によって形成し、人が触れる面にこれを重ねておくことで、触感を向上させることができる。この場合、第一の層10や第二の層11においては、非圧電性繊維110を設けてもよいし、設けなくともよいが、第三の層14と同様の素材の非圧電性繊維110を設けておくことで、より触感を向上させることができる場合がある。このとき、第一の層10や第二の層11は人に触れない状態のため、図10のように非圧電性繊維110の太さを圧電性繊維100よりも太くしなくともよい。
【0071】
また例えば、面状センサ1Bの使用状況によっては、面状センサ1Bが摩耗により損傷する場合がある。このような状況に対しては、第三の層14を、ステンレスワイヤ等の金属製繊維によって形成し、面状センサ1Bの外側の面にこれを重ねておくことで、面状センサ1Bの耐久性を向上させることができる。この場合、第一の層10や第二の層11においては、非圧電性繊維110を設けてもよいし、設けなくともよいが、第三の層14と同様の金属製繊維による非圧電性繊維110を設けておくことで、より耐久性を向上させることができる場合がある。このとき、第一の層10や第二の層11は外部に触れない状態のため、図10のように非圧電性繊維110の太さを圧電性繊維100よりも太くしなくともよいが、太くした場合には面状センサ1Bの内部において圧電性繊維100が摩耗しにくくなり、より耐久性を向上させることができる場合がある。
【0072】
また、面状センサ1においては、圧電性繊維100が第一の方向あるいは第二の方向に沿って真っ直ぐに配線されている。しかし真っ直ぐではなくとも、例えば局所的に規則的な弧を描きつつ、全体として第一の方向あるいは第二の方向に沿って配線されたものであってもよい。例えば図12に示すように、隣り合う圧電性繊維100を編み込んだ場合、局所的に規則的な弧を描きつつも、全体として第一の方向あるいは第二の方向に沿って配線することができる。なお、この例では圧電性繊維100同士が編み込まれているが、圧電性繊維100と非圧電性繊維110とを編み込んでもよい。また、非圧電性繊維110に水溶性の素材を用いた場合、面状センサ1を作成した後にこの非圧電性繊維110を溶かすことで、圧電性繊維100のみを規則的にねじれた状態にすることができる。圧電性繊維100が規則的な弧を有する場合、圧電性繊維100全体がバネのようにしなやかになることで面状センサ1を柔らかくすることができ、曲面に対しても設置を容易にすることができる。
【0073】
図1の例では、歩行あるいは走行によって面状センサ1が靴SHの内部でずれてしまう可能性がある。また、一度面状センサ1を靴から取り外し、再度設置するに際にも、設置位置が前回の位置とずれてしまう可能性がある。このように、上記説明した面状センサ1は、使用中に最初の位置からずれたり、使用の度に位置が異なってしまう場合がある。こうした事態が生じると、同じ位置において圧力を受けたにも関わらず、異なる位置で圧力を受けたかのような解析結果となってしまう。
【0074】
このような場合、設置面の所定の位置に対して直接あるいは間接的に圧力をかけることが可能な位置決め部材を用意し、これを用いて圧力検出の際の基準位置を決定するようにしてもよい。例えば、図1の例の場合には、図13に示すように靴SHの靴底の形状に合わせた大きさで、凸部30を設けた踏み板3を用いて基準位置を決定することができる。具体的には、面状センサ1を設けた靴SHを履いた状態で、踵部分をガイド31に合わせた状態で踏み板3を踏むと、凸部30に対応する位置で足裏に圧力が生じるため、この位置を基準位置と定めておく。面状センサ1を使用した際に検出される信号から位置を判定するにあたっては、この基準位置に対して相対的な位置を導出することで、面状センサ1に生じる位置ずれを無視することができる。
【0075】
また、図1の例では、面状センサ1を一枚用いて足裏の圧力を検出する構成について説明したが、面状センサ1を複数使用することも可能である。例えば、図1の靴SHおよび面状センサ1に加え、図14に示すように面状センサ1’を別途用意し、これを靴SHの底面に設けることで、歩行や走行の際の衝撃(面状センサ1’で検出)がどのように足裏に伝わるかを確認することができる。言い換えると、二つの面状センサ1、1’で挟まれた部分(図14の例ではソールSO)による緩衝性能をみることができるとも言える。なお、面状センサ1、1’を設ける位置については、例えば、ソールSOの中に埋め込んでもよく、上記の例に限定されるものではない。また、上記の例は靴SHに対するものであるが、例えばベッドのマットレスの上下に面状センサ1を設けた場合には、このマットレスの緩衝性能をみることもできる。なお、挟み込む二つの面状センサ1、1’の大きさが異っている場合や、圧電性繊維100の密度が異なっている場合でも、挟まれた部分による緩衝性能をみることができる。
【0076】
二つの面状センサ1、1’のそれぞれから検出される圧力の位置を合わせる際には、図13で説明した踏み板3のような位置決め部材を用いればよい。なお、二つの面状センサ1、1’の位置関係を把握する場合には、ガイド31は用いなくともよい。ガイド31を用いない場合であっても、二つの面状センサ1、1’のそれぞれから凸部30の位置で圧力が検出されるため、これらの位置関係に基づいて検出される圧力の位置を合わせる(修正する)ことができる。
【0077】
なお、図14の例のように、靴SHの底面に設けられる面状センサ1’には、図9図11を用いて説明した金属製繊維によって耐久性を高めた面状センサを用いることが好ましい。
【0078】
また、面状センサ1においては、圧電性繊維100だけを配線する構成に限られるものではなく、例えば、圧電性のない導線を圧電性繊維100とペアにした構成を採用してもよい。面状センサ1においては、圧電性繊維100からの信号にノイズが重畳する場合があるが、ペアにした導線においても同様のノイズが重畳することになる。これを利用して、面状センサ1に圧力がかかっていない状態で圧電性繊維100と導線の出力の差分が最も低くなるように(互いのノイズ成分が相殺されるように)導線からの出力を調整した上で、圧電性繊維100と導線の出力の差分をとることで、ノイズの影響を低減することができる。また、双方のノイズの大きさが等しくなるように、圧電性繊維100とインピーダンスが等しい導線をペアにしてもよい。
【0079】
面状センサ1と記録回路2を接続するにあたり、圧電性繊維100の内部導体101と、外部導体103とをそれぞれはんだ付けする場合がある。このはんだ付けに際しては、例えば図15に示す状態とすることで、確実に接続することができる。なお、この図15では、基板FLが左下がりのハッチングで、基板FLに設けられたランドLAがクロスハッチングで、そして、圧電性繊維100の端部を覆う筒SL(例えば、銅にスズあるいはニッケルのメッキを施したもの)が右下がりのハッチングで示されている。
【0080】
図15の例では、基板FLに設けられた一つ目の孔H1により、圧電性繊維100が表側(図15では上側)から裏側(図15では下側)に通され、さらに二つ目の孔H2により、圧電性繊維100が裏側から表側に通されて、端部が表側に露出した状態となっている。圧電性繊維100は、一つ目の孔H1を通る際には外部導体103が露出した状態となっており、二つ目の孔H2を通る前には外部導体103が除去されて圧電体102が露出した状態となっている。圧電性繊維100の端部は筒SLの内部で、内部導体101が圧電体102に沿って折り返された状態で挿入され、圧着された状態となっている。
【0081】
図3で説明したような細い圧電性繊維100を用いる場合、接続の際に内部導体101が切れてしまう場合がある。一方、圧電性繊維100の圧電体102は、内部導体101を保護することができる。このため、圧電体102を可能な限り残しておくことが好ましいが、その一方で、圧電体102にははんだが付かないため、内部導体101を接続する際の障害となる。このため、図15の例のように、筒SLの内部において内部導体101を圧電体102に沿って折り返した状態の圧電性繊維100の端部を挿入して圧着することで、内部導体101が切れてしまうことを防ぐとともに、はんだ付けしやすくすることができる。この筒SLについては、圧電性繊維100の端部を挿入して圧着した後に基板FLに挿入してもよいし、基板FLに圧電性繊維100の端部を表側に通した後に挿入して圧着してもよい。
【0082】
また、図15の構成のように、基板FLの反対側の面を一度通した上で圧電性繊維100を固定することで、強固に固定して圧電性繊維100を抜けにくくすることができる。
【0083】
さらに図15の構成では、一つ目の孔H1から二つ目の孔H2に至るまでの部分で絶縁体である圧電体102が露出した状態になっている。この構成では、一つ目の孔H1にてはんだ付けされた外部導体103と、二つ目の孔H2にてはんだ付けされた内部導体101との間を確実に絶縁しておくことができる。
【0084】
また、基板FL上において圧電性繊維100を接続する位置に予め磁石を配置しておくとともに、圧電性繊維100を強磁性体を含む素材で構成してもよい。この構成では、圧電性繊維100を基板FLの接続位置に配置することが容易になり、はんだ付けの作業効率や精度を向上させることができる。なお、強磁性体を含ませる対象は、内部導体101、圧電体102、外部導体103のいずれであってもよい。例えば、図3に示すステンレス製の導体線1000Sを400系ステンレス(鉄にクロムを10.5%以上混ぜたステンレス)で構成したものであってもよい。また、圧電性繊維100を強磁性体を含む素材で構成しなくとも、例えば図15の筒SLのような圧電性繊維100の端部を挿入可能な部材を強磁性体を含む素材で構成し、この部材を圧電性繊維100の端部に取り付けることで、圧電性繊維100を基板FLの接続位置に容易に配置することができる。また、磁石を配置するにあたっては、基板FL自体に磁石を設ける構成に限らず、例えば基板FLとは別の板に磁石を設け、この板を基板FLの裏側(圧電性繊維100がはんだ付けされる側)に重ねたときに、基板FL上において圧電性繊維100を接続する位置に磁石が配置されるようにしてもよい。この構成では、圧電性繊維100を基板FLに接続したのち、磁石が設けられた板を取り外すことができるため、基板FLに磁石を設ける構成と比べて軽量化することができる。
【0085】
図3で説明した圧電性繊維100は、導体線1000を撚り合わせて内部導体101にした後、これに圧電材料を塗布して圧電体102を設け、さらに高分子導電性材料を塗布して外部導体103を設けたものである。この製造手順のうち撚り合わせの工程については、順番を変更しても圧電性繊維100を製造することができる。以下、図16を用いて具体的に説明する。
【0086】
例えば、図16(A)に示すように、複数の導体線1000のそれぞれに圧電材料を塗布して圧電体102を設けてからこれらを撚り合わせ、これに高分子導電性材料を塗布して外部導体103を設けて圧電性繊維100Aとしてもよい。この構成でも、複数の導体線1000のそれぞれが内部導体101として機能する。この例では、導体線1000の直径は10μmであり、圧電体102の厚さは10μmであり、外部導体103の厚さは最大5μmである。なお、圧電体102を設けた導体線1000を撚り合わせる際の本数や撚り合わせ方については、図3に示す導体線1000を撚り合わせる場合と同様である。従って例えば、複数の導体線1000のそれぞれに圧電体102を設けてから撚り合わせず、これらに高分子導電性材料を塗布して外部導体103によって束ねることで圧電性繊維100Aを構成してもよい。
【0087】
図16(A)の構成において、導体線1000の直径や本数、素材については、図3に示す圧電性繊維100と同様である。また、圧電体102や外部導体103の厚さや素材、シース層についても図3に示す圧電性繊維100と同様である。
【0088】
図16(A)の構成では、圧電体102を設ける対象は一本の導体線1000に限らず、複数本の導体線1000を撚り合わせたもの、あるいは単に束ねたものであってもよい。
【0089】
また、図16(A)に示す圧電材料が塗布された隣り合う導体線1000は互いにほぼ接しているが、わずかな隙間が高分子導電性材料によって埋められた状態となっている。高分子材料の粘度や塗布方法によっては、この隙間に浸透しない場合があるが、少なくとも圧電材料が塗布された導体線1000の束の外周に面した部分に高分子導電性材料が担持された状態となっていればよい。また、図16(A)の2点鎖線で示すように、圧電材料が塗布された隣り合う導体線1000同士の隙間が埋まる程度に高分子導電性材料を塗布してもよい。
【0090】
なお、図16(A)の構成を採用した場合、導体線1000の直径を20μmとし、圧電体102の厚さを20μmとし、外部導体103の厚さを10μmとした、太さ約0.2mmの圧電性繊維100Aが、低コストで容易に製造できる一例である。
【0091】
また例えば、図16(B)に示すように、複数の導体線1000のそれぞれに圧電材料を塗布して圧電体102を設け、さらに高分子導電性材料を塗布して外部導体103を設けてからこれらを撚り合わせて圧電性繊維100Bとしてもよい。この構成でも、複数の導体線1000のそれぞれが内部導体101として機能する。この例では、導体線1000の直径は10μmであり、圧電体102の厚さは10μmであり、外部導体103の厚さは最大5μmである。なお、圧電体102および外部導体103を設けた導体線1000を撚り合わせる際の本数や撚り合わせ方については、図3に示す導体線1000を撚り合わせる場合と同様である。従って例えば、複数の導体線1000のそれぞれに圧電体102および外部導体103を設けてから撚り合わせず、これらをシースで束ねることで圧電性繊維100Bを構成してもよい。
【0092】
図16(B)の構成では、圧電体102および外部導体103を設ける対象は一本の導体線1000に限らず、複数本の導体線1000を撚り合わせたもの、あるいは単に束ねたものであってもよい。
【0093】
なお、図16(B)の構成を採用した場合、導体線1000の直径を20μmとし、圧電体102の厚さを20μmとし、外部導体103の厚さを10μmとした、太さ約0.24mmの圧電性繊維100Aが、低コストで容易に製造できる一例である。
【0094】
なお、図16(A)および(B)の構成では、導体線1000が圧電体102や外部導体103によって被覆された部分が複数存在する。このため図3に示す圧電性繊維100と比較すると、全体が太くなってしまうものの、センサとしての信頼性を向上させることができる。
【0095】
また、圧電性繊維を製造する際に圧電材料を塗布する場合には、圧電材料の粘度や塗布の方法によって塗布可能な厚さに限界がある。従って、図3の圧電性繊維100の構成では、圧電体102をより厚くしてセンサ感度を向上させることが困難な場合がある。これに対して、図16(A)(B)の圧電性繊維100A、100Bの構成では、図3の圧電性繊維100と圧電体102の厚さが同じであっても、その量を多くすることができるため、センサ感度を向上させることができる。
【0096】
図3あるいは図16では、圧電材料を一回塗布する構成について説明したが、塗布を複数回行ってもよい。またこのとき、圧電材料の塗布された回数の異なる導体線1000を組み合わせて(撚って、あるいは束ねて)、圧電材料を塗布してもよい。このような例として図17には、圧電材料を塗布した4本の導体線1000を、圧電体を塗布していない1本の導体線1000の周囲に配置し、この束にさらに圧電材料を塗布した構成が示されている。この図17においては、一回目の塗布と二回目の塗布の境目が点線で示されている。以上のように、塗布の回数や順番、撚り方や束ね方、を組み合わせることにより、センサ感度や太さを使用状況に合わせて調整することができる。
【0097】
また上述したように圧電性繊維100は、圧電体102として帯状の圧電性フィルム(PVDFフィルム)を内部導体101に螺旋状に巻き付けた構成であってもよい。この構成を採用する場合、圧電性フィルムの幅は0.03mm以上2mm以下のものであることが好ましく、さらには0.05mm以上1.0mm以下のものであることが好ましい。この圧電性フィルムを内部導体101の周面に螺旋状に巻き付ける際には、内部導体101の延在方向に対し、隣り合う圧電性フィルムの幅方向の一端と他端どうしを重ねて隙間が生じないようにする。
【0098】
なお、圧電性フィルムの幅が狭すぎると内部導体101の外周面に螺旋状に巻き付ける際に圧電性フィルムどうしが重ならずに隙間が生じやすくなってしまう。このような隙間があると、圧力によって変形する圧電体102が設けられていない部分が生じてセンシングできなくなるだけでなく、内部導体101と外部導体103が導通して圧力センサとしての機能が失われることになる。一方、圧電性フィルムの幅が広すぎると内部導体101の周面に螺旋状に巻き付ける際に弛みが生じやすくなるため、適切な幅の圧電性フィルムを採用することが好ましい。
【0099】
圧電性フィルムの厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましく、さらには25μm以上80μm以下であることが好ましい。この圧電性フィルムの幅方向の一端と他端どうしを重ね合わせることで圧電性フィルムの体積を大きくすることができ、センサ感度の向上させることができる。このとき、圧電性フィルムの厚さが薄すぎると圧力センサとしての感度が不十分になってしまい、反対に厚すぎると圧電性繊維100が硬くなるため、用途に応じて調整する必要がある。圧電性フィルムは、圧電特性が、長手方向(伸び方向)にしか対応していないものよりも、結晶の配向性により複数方向(伸び方向及び曲げ方向)に対応したものである方が好ましい。
【0100】
なお、内部導体101に巻き付ける圧電性フィルムの数は、一つに限定されるものではなく複数であってもよい。図18には、2枚の帯状の圧電性フィルム102Fを180度ずらしながら同じ方向に巻き付けている様子が示されている。なお、一枚の帯状の圧電性フィルム102Fを巻き付ける際には、内部導体101との間に弛みが生じないように圧電性フィルム102Fに張力をかけると、内部導体101が一方向に引っ張られて巻き付ける際のバランスが狂ってしまうことが考えられる。しかし図18のように複数の帯状の圧電性フィルム102Fを用いる場合には、内部導体101を中心に均等に張力をかけることで一方向に引っ張られることを防止することができる。
【0101】
また、内部導体101が導体線1000を撚り合わせて構成されている場合には、この内部導体101の撚り方向と同じ方向に圧電性フィルム102Fを巻き付けてもよいし、逆方向に巻き付けてもよい。この方向によっては、圧電性繊維100の柔軟性を高めることができる場合がある。
【0102】
上記の構成の他、例えばいわゆる圧電性フィルムを細くして繊維状にしたものを用いて面状センサを構成してもよい。すなわち、面状センサを構成する圧電性繊維は、軸方向と交差する断面において二つの絶縁された導体(内部導体および外部導体)の間に圧電材料が配置された構造を有する繊維であればよい。
【0103】
図1では、靴の中敷の形状をした面状センサ1について説明したが、使用者の足の大きさに応じて異なるサイズの面状センサ1を使い分けることが考えられる。ここで、面状センサ1における圧力の検出状況を比較したりする場合や、圧力の検出状況を表示する領域が決まっている場合など、足の大きさの違いを排除することが好ましい場合がある。このような場合には、面状センサ1の大きさが所定の大きさになるように縦横の長さの拡大、縮小の割合を計算し、圧力の検出座標をこの割合を用いて変換(座標の正規化)することで対応することができる。
【0104】
[圧電性繊維の配置について]
以下、面状センサにおける圧電性繊維の配置について説明する。
【0105】
圧力を検出するにあたって一本の圧電性繊維を使用した場合、この圧電性繊維の信号によって圧電性繊維に圧力がかかったことが判定できる。このとき、圧力がかかった位置が圧電性繊維のどの位置であるかまでは特定することができない。
【0106】
一方、二本の圧電性繊維を交差させた場合には、この交点に圧力がかかると二本の圧電性繊維のいずれからも信号が検出される。このため、複数の圧電性繊維を網目状に配置して、信号が検出された圧電性繊維の交点を求めることで、圧力がかかった位置を特定することができる。
【0107】
ここで図19(A)に示すように、縦方向に二本の圧電性繊維X1、X2が設けられ、さらにこれらと交差する横方向に二本の圧電性繊維Y1、Y2が設けられた状態で、交点P1、P2の二点に同時に圧力がかかった場合について説明する。この場合、縦二本の圧電性繊維X1、X2と、横二本の圧電性繊維Y1、Y2の計四本の圧電性繊維から信号が検出されることになる。ここで、圧力がかかった位置を特定するべく、これらの信号が検出された圧電性繊維の交点を求めると、実際に圧力がかかっている二つの交点P1、P2と、圧力がかかっていない二つの交点P3、P4の、計四つの交点が対象となる。このとき、いずれの圧電性繊維の信号を用いても圧力がかかっている交点を絞り込むことができなくなってしまう。
【0108】
上記の問題は、圧力がかかった二点を通る圧電性繊維が、他の複数の点においても交差している場合に生じる。しかし、この他の交点の数が一以下の場合には、こうした問題が生じない。ここで図19(B)を用いて、圧力がかかった交点P1、P2を通る圧電性繊維X1、X2、Y1、Y2に、他の交点P3がある場合を例に説明する。この場合、縦二本の圧電性繊維X1、X2と、横二本の圧電性繊維Y1、Y2の計四本の圧電性繊維から信号が検出されることになる。
【0109】
ここで、圧力がかかった位置を特定するべく、これらの信号が検出された圧電性繊維の交点を求めると、実際に圧力がかかっている二つの交点P1、P2と、圧力がかかっていない交点P3の、計三つの交点が対象となる。ここで、圧電性繊維X1は、交点P1のみを通るため、この信号から交点P1に圧力がかかったことを推定できる。また、圧電性繊維Y2は、交点P2のみを通るため、この信号から交点P2に圧力がかかったことを推定できる。
【0110】
圧電性繊維Y1では、交点P1と交点P3の二点の圧力による信号が出力されるが、交点P3の圧力の分だけ、圧電性繊維X1の信号との違いが生じることになる。また圧電性繊維X2では、交点P2と交点P3の二点の圧力による信号が出力されるが、交点P3の圧力の分だけ、圧電性繊維Y2の信号との違いが生じることになる。これらの違いによって、交点P3に圧力がかかったかどうかを推定できる。
【0111】
以上のことを踏まえ、圧力がかかる頻度が高いと予測される二つの領域(以下、第一の領域、第二の領域とする)に対して面状センサを設ける場合には、図19(A)で説明したような問題が生じないようにすることが好ましい。具体的には、例えば、第一の領域内で交差する二本の圧電性繊維と、第二の領域内で交差する二本の圧電性繊維との交点の数が一以下となるように圧電性繊維を設けてもよい。例えば図19(B)では、交点P1が第一の領域の一例に相当する交点P1で交差する二本の圧電性繊維X1、Y1と、第二の領域の一例に相当する交点P2で交差する二本の圧電性繊維X2、Y2との交点の数が1(交点P3のみ)となっている。また例えば、第一の領域内で交差する二本の圧電性繊維が第二の領域を通らないようにし、第二の領域内で交差する二本の圧電性繊維が第一の領域を通らないようにしてもよい。このとき、圧電性繊維は真っ直ぐに配線されたものに限らず、曲げて配線されたものであってもよい。なお、図1の面状センサ1は図面の縦方向に長いものであるが、上記の構成を採用するにあたっては長手方向が存在しない正方形や円形の面状センサであってもよい。
【0112】
上記の構成の例として、例えば、第一の領域と第二の領域とを結ぶ基準方向に対し、この基準方向と斜めに交差する第一の方向と、この基準方向と斜めに交差する第二の方向とのそれぞれに沿って圧電性繊維を設けた構成が挙げられる。この構成では、第一の領域内で交差する二本の圧電性繊維と、第二の領域内で交差する二本の圧電性繊維との交点の数が二つ以上になりにくいため、図19(A)で説明した問題が生じにくい。なお図1に示す面状センサ1は上記の構成を適用したものであるとも言え、主に圧力がかかる足の指の付け根部分と踵部分が第一の領域および第二の領域に相当し、面状センサ1の長手方向が基準方向に相当する。この例では、基準方向の一例として面状センサ1の長手方向を採用しているが、測定対象の長手方向であってもよい。
【0113】
[一部の領域に圧電性繊維を設けた面状センサについて]
ここまで説明した、図1の面状センサ1やその他の形態は、面全体に亘って圧電性繊維100を配置することで、面状センサの全体に亘って圧力を受けたことを検出することが可能な構成となっている。一方で、決まった位置における圧力を検出対象とする場合には、その位置に対して圧電性繊維100を設けた構成とすればよく、面状センサの全体に圧電性繊維100を設けなくともよい。以下、具体的に説明する。
【0114】
図21(A)には、右足RFの足裏が示されている。例えば、直立姿勢の際、踵B1、小指球(小指の付け根付近に存在する肉の盛り上がった場所)B2、母指球(親指の付け根付近に存在する肉の盛り上がった場所)B3の三点で荷重を支えることが知られている。また、走行時や歩行時においては、踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4の順で荷重が移動することが知られており、図21(A)には、この荷重の移動が矢印で示されている。なお、以下の説明ではこの荷重の移動のラインを荷重移動ラインと称する。
【0115】
上記のことから、被験者の直立時の姿勢、あるいは歩行時、走行時のフォームの分析、評価をする際には、踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4にかかる圧力の変化をみることが重要であると言える。こうした用途に対しては、例えば図21(B)に示す面状センサ5のように、踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4に対して圧電性繊維100を設けた構成としてもよい。この図21(B)に示す面状センサ5は、図1の面状センサ1とは異なり、面状センサの一部に圧電性繊維100を配置したものである。また、図1の面状センサ1では、図2に示すように二層の圧電性繊維100を重ねた構成としているが、この図21(B)に示す面状センサ5は圧電性繊維100が一層である点が異なる。なお、図21(B)では、踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4において、圧電性繊維100が多重円状に設けられているが、これらの圧電性繊維100は面状センサ5の外部まで配線されている。図21(B)では、これらの圧電性繊維100のうち、実線で示された部分が圧電特性を有する部分であり、それ以外の部分(図では省略した部分)は圧電特性が検出できなくなる程度に熱処理によって低減されている。このように面状センサ5の所望の部分以外に対して圧電性繊維100の圧電特性を一部低減させることで、この所望の部分に圧電特性を有する部分を残すことができ、この部分において圧力がかかったことを検出することができる。
【0116】
図21(B)の例では、踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4に圧力を受けた際に信号が出力されるため、これを用いて被験者の直立時の姿勢、あるいは歩行時、走行時のフォームの分析、評価をすることができる。また、図21(B)の例では、円の内側の圧電性繊維100と外側の圧電性繊維100とを異ならせた構成を採用しているため、円の中央に対して圧力がかかったか否かを判別でき、上記の分析や評価の際に有用な情報を提供することができる。なお、この図21(B)では踵B1、小指球B2、母指球B3、親指B4の4か所に圧電性繊維100を設けているが、用途によってはこのうち1か所に圧電性繊維100を設けた構成としてもよい。また例えば、小指球B2と母指球B3の圧電性繊維100を分けずに、これらを含む指の付け根部分の領域(図21(A)の領域B5)に対応する圧電性繊維100を設けた構成としてもよい。また、図21(B)では圧電性繊維100が多重円状に設けられているが、例えば一重円状であってもよいし、渦巻き状であってもよく、さらには、圧電性繊維100を交差させてもよく、様々な配線の形態を採用することができる。
【0117】
また、図21(B)の構成の他、例えば図21(C)に示す面状センサ6のように、荷重移動ラインに対して間隔を空けて交差する圧電性繊維100を設けた構成としてもよい。この図21(C)に示す面状センサ6は、図1の面状センサ1とは異なり、面状センサの一部に圧電性繊維100を配置したものである。また、図1の面状センサ1では、図2に示すように二層の圧電性繊維100を重ねた構成としているが、この図21(C)に示す面状センサ6は圧電性繊維100が一層である点が異なる。なお、図21(C)では、13本の圧電性繊維100が設けられているが、これらの圧電性繊維100は面状センサ6の外部まで配線されている。図21(C)では、これらの圧電性繊維100のうち、実線で示された部分が圧電特性を有する部分であり、それ以外の部分(図では省略した部分)は圧電特性が検出できなくなる程度に熱処理によって低減されている。このように面状センサ6の所望の部分以外に対して圧電性繊維100の圧電特性を一部低減させることで、この所望の部分に圧電特性を有する部分を残すことができ、この部分において圧力がかかったことを検出することができる。
【0118】
図21(C)の例では、荷重移動ラインに沿って変化する圧力に合わせて信号が出力されるため、これを用いて被験者の歩行時、走行時のフォームの分析、評価をすることができる。また、荷重移動ラインには個人差があり、このラインと直交する方向にずれることが考えられるが、荷重移動ラインと交差するように圧電性繊維100を設けたことにより、こうしたずれが生じた場合でも圧力を検出しやすくすることができる。なお、この図21(C)では13本の圧電性繊維100を設けているが、用途によってはこの本数に限られるものではなく、また設置の間隔についても図21(C)に示す間隔に限定されるものではない。この図21(C)の構成は圧電性繊維100の配線の一例であって、これに限定されず様々な配線の形態を採用することができる。
【0119】
また、上記圧電性繊維100からの信号に基づいて音声を出力する音声出力回路を設けた構成としてもよい。この場合、被験者に対して圧力の状態を把握させることができる。例えば、図21(B)の面状センサ5や、図21(C)の面状センサ6の圧電性繊維100のそれぞれに対して異なる音声を割り当てることで、どの位置に圧力がかかっているかを把握しやすくすることができる。また例えば、図21(A)に示す母指球B3の部分にのみ圧電性繊維100を設け、この圧電性繊維100からの信号を受けて音声が出力される構成を採用した場合には、この音声が出力されるように意識して走ることで、走行時のフォームの改善にあたっての指標とすることができる。このような単純な指標は、例えば子供に対して特に有効である。
【0120】
なお、音声に限らず、圧電性繊維100からの信号に基づいて振動を発生させる振動回路を設けた構成としてもよいし、音声出力回路と組み合わせた構成としてもよい。また、音声を出力する構成に限らず、例えば、通常はBGMが出力されるようにした上で、圧電性繊維100からの信号に基づいてこのBGMの出力が低下する、といった構成にしてもよい。
【0121】
以上説明した図21の例では、足裏にかかる圧力の変化を検出するための面状センサについて説明したが、このような用途に限られるものではない。例として、マットレスにかかる圧力の変化を検出するための面状センサを構成する場合について説明する。マットレスに対しては、頭部、胸部、腰部、脚部に対しての圧力がより大きくなることが知られており、これらの領域にかかる圧力の変化をみることが重要であると言える。このため、図1の面状センサ1のように面状センサ全体に圧電性繊維100を設けずに、これらの領域のそれぞれに対して圧電性繊維100を設けてもよい。この面状センサを用いて例えば、、いずれかの部位からの信号がないことで圧力がかかり続けている時間を計測し、この時間が一定時間を過ぎた時に音声やランプ等で看護師等に知らせることで、褥瘡を防止するための措置を取らせることができる。なお、用途によっては頭部、胸部、腰部、脚部のうち1か所に圧電性繊維100を設けた構成としてもよい。なお、マットレスの頭部の部分に圧電性繊維100を設ける構成については、枕に圧電性繊維100を設けた構成とすることもできる。このような枕を用いた場合にも、就寝したタイミング、寝返りのタイミングを計ることができ、この情報を治療や介護に利用することができる。
【0122】
また例えば、ヨガ等のエクササイズに使用するマットに対して面状センサを適用してもよい。マットを使用したエクササイズでは、使用者が特定の姿勢を一定時間維持するものがあり、このときマットの特定の領域に一定の圧力がかかった状態となる。この特定の領域における圧力は、特定の姿勢が維持されている間は変化せず、特定の姿勢が維持できないと変化する。よって、この特定の領域に圧電性繊維100を設け、この圧電性繊維100からの信号に基づいて特定の姿勢が維持されているか否かの指標として用いることができる。なお、図21の面状センサで説明したように、この圧電性繊維100からの信号を受けて音声が出力されたり、振動が発生したりする構成としてもよい。
【0123】
また、使用者の体型には個人差があり、特定の領域の位置は一つに定まるものではないため、特定の領域の候補となる複数の領域に圧電性繊維100を設けておき、使用者がこれを使い分ける構成としてもよい。
【0124】
なお、一部の領域に圧電性繊維を設けた面状センサについては、全面に圧電性繊維を設けた面状センサと矛盾しないかぎり、図1図20で説明した構成を適用することができる。
【0125】
[圧力の大きさ推定]
圧電性繊維は、圧力による変形の際に誘起電圧が生じるが、その圧力が維持されている状態(新たな変形が生じない状態)では、誘起電圧が生じない。すなわち、圧電性繊維の信号の大きさをそのまま圧力の大きさを示す指標とすることができない。一方、圧電性繊維からの信号を積分することで、圧電性繊維全体の変形量を導出することができる。ここで、圧電性繊維の同じ位置に圧力がかかるとすると、その変形量は圧力の大きさに比例するため、圧電性繊維の信号から圧力の大きさを推定することができる。例えば、図21(B)に示す面状センサ5では、それぞれの圧電性繊維に対して同じ位置で圧力がかかる(靴によって足が固定されるため)。よって、この面状センサ5では、圧電性繊維の信号から圧力の大きさを推定することができる。
【0126】
また、圧電性繊維の信号からこの圧電性繊維にかかる圧力の大きさを推定する場合、この推定値を予め記憶しておいた圧力(以下、基準圧力)の大きさと比較し、この違いに応じて音声を出力する構成としてもよい。例えば、理想的な直立姿勢をとることを目的とする場合、理想的な直立姿勢を持つ者から得られた測定データや、理論上の圧力分布などを参考に基準圧力を設定する。次に、面状センサ5の使用者が直立姿勢をとった場合における圧力の大きさを推定し、上記の基準圧力と比較する。このとき、圧力の大きさの差が所定の閾値を超えた場合には音声を出力し、閾値内であれば音声を出力しないことで、使用者は自分の姿勢と理想的な直立姿勢とのずれを認識でき、姿勢改善に役立てることができる。なお、図21(B)では面状センサ5の複数個所に圧電性繊維100が設けられているが、これらの圧電性繊維100のそれぞれに対して基準圧力を設定する場合には、音声についてもそれぞれ異なる音声を設定するようにしてもよい。この場合、理想的な姿勢とのずれをより具体的に把握することができる。
【0127】
なお、上記のような基準圧力を用いた構成は、理想的な直立姿勢をとることを目的とする場合に限らず、様々な用途に適用することができる。例えば、マットを使用したエクササイズにおいては、使用者自身ではが理想的な姿勢をとれているか否かを判断することが困難である。このため、例えばインストラクターの指示の下で理想的な姿勢をとったときの圧力の大きさを基準圧力として記憶しておくことで、インストラクターがいない場合であってもこれを指標としてエクササイズを行うことができる。
【符号の説明】
【0128】
1 面状センサ
100 圧電性繊維
101 内部導体
102 圧電体
103 外部導体
1000 導体線
2 記憶回路
3 踏み板
5 面状センサ
6 面状センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21