(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】播種装置
(51)【国際特許分類】
A01C 5/06 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A01C5/06 C
(21)【出願番号】P 2018060019
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】597041747
【氏名又は名称】アグリテクノサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖田 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】藤森 誠人
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163893(JP,A)
【文献】実開昭53-025543(JP,U)
【文献】実公昭38-016224(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 5/06
A01C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に種子を播く播種装置であって、
前記種子を収納するホッパと、
前記ホッパ内の種子を繰出す繰出部と、
前記繰出部から繰出された種子の植付け位置とされる前記圃場の溝である播種溝を作成する一対の作溝ディスクと、
前記播種溝を作成するときに前記作溝ディスクの回転動作によって舞上がった前記圃場の土が前記作成した播種溝に積ることを防止する戻り土防止板を備え
、 前記戻り土防止板は、弾性変形可能に構成され、前端部を内側に変形させてその外側面を前記作溝ディスクの後部内側面に当接させるようにして前記作溝ディスクの回動軸の後下方に配置され、
前記戻り土防止板は、前上部と前下部とがそれぞれ切欠かれて、前端が尖るように構成される、
播種装置。
【請求項2】
前記繰出部は、前記種子を繰出す部分である繰出口が下部に設けられ、
前記戻り土防止板は、前記作溝ディスクから前記繰出部の繰出口に亘るように配置される、
請求項1に記載の播種装置。
【請求項3】
前記戻り土防止板における前記作溝ディスク側端部は、前記作溝ディスク間に配置される、
請求項1または請求項2に記載の播種装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタまたは管理機等の走行装置の後部に配置されて、圃場に種子を播く装置である播種装置に関する技術は公知となっている(特許文献1参照)。前記播種装置には、種子を収納するホッパと、ホッパ内の種子を繰出す繰出部と、播種溝(繰出部から繰出された種子の植付け位置とされる圃場の溝)を作成する一対の作溝ディスクとを備えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、播種作業を行う際には、播種溝の深さは種子の植付け深さとして想定されて、播種作業が行われる。もっとも、前記播種装置では、播種溝を作成するときに作溝ディスクの回転動作によって土が舞上がり、当該舞い上がった土が播種溝に積って播種溝が浅くなる場合がある。そして、このように播種溝が浅くなると、播種溝に播かれた種子の深さが所望のものとならない(種子の深さが浅くなる)場合がある。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、作溝ディスクの回転動作によって舞上がった土が播種溝に積って播種溝が浅くなることを防止し、播種溝に播かれた種子の深さを所望のものとすることができる播種装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、圃場に種子を播く播種装置であって、前記種子を収納するホッパと、前記ホッパ内の種子を繰出す繰出部と、前記繰出部から繰出された種子の植付け位置とされる前記圃場の溝である播種溝を作成する一対の作溝ディスクと、前記播種溝を作成するときに前記作溝ディスクの回転動作によって舞上がった前記圃場の土が前記作成した播種溝に積ることを防止する戻り土防止板を備え、前記戻り土防止板は、弾性変形可能に構成され、前端部を内側に変形させてその外側面を前記作溝ディスクの後部内側面に当接させるようにして前記作溝ディスクの回動軸の後下方に配置されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記繰出部は、前記種子を繰出す部分である繰出口が下部に設けられ、前記戻り土防止板は、前記作溝ディスクから前記繰出部の繰出口に亘るように配置されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記戻り土防止板における前記作溝ディスク側端部は、前記作溝ディスク間に配置されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、作溝ディスクの回転動作によって舞上がった土が播種溝に積って播種溝が浅くなることを防止し、播種溝に播かれた種子の深さを所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る播種装置及び作業機装着装置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係る播種装置1について、
図1から
図4を用いて説明する。なお、以下において白色矢印Fは播種装置1の前方(走行装置の進行方向)であるものとして説明する。
【0013】
図1に示すように、播種装置1は、圃場に種子を播く装置であり、トラクタまたは管理機等の走行装置の後部に付設される作業機装着装置20に設けられる。
作業機装着装置20は、油圧式の昇降機構を介して走行装置の後輪の後方に昇降可能に支持される。作業機装着装置20の前後中途部には、走行装置の進行方向と直交する方向に取付ビーム21が支持されている。作業機装着装置20の前部には条単位毎の耕耘装置等の作業機22が設けられ、後部には鎮圧ローラ23が設けられている。
取付ビーム21は断面が略方形の鋼パイプにより構成されており、取付ビーム21の周囲に、条単位毎の播種装置1の取付金具2が播種装置1のユニットの先端部の一部として装着されている。そして、多数条の播種装置1のユニットが取付ビーム21に装着されることにより、多条播種機が構成されている。作業機装着装置20は、播種装置1の後方に覆土板を設ける構成とすることもできる。
【0014】
図2乃至
図4に示すように、播種装置1は、取付金具2と、リンク部3と、吊体4と、フレーム5と、繰出部6と、アーム7と、作溝ディスク8と、ホッパ9と、支持部10と、戻り土防止板11とを備える。
播種装置1では、作溝ディスク8と戻り土防止板11とで作溝部を構成する。作溝部は、播種装置1において播種溝を作成するときに関連する。播種溝は、繰出部6から繰出された種子の植付け位置とされる圃場の溝である。播種溝の深さは種子の植付け深さとして想定されて、播種作業が行われる。
【0015】
取付金具2には、リンク部3が設けられ、リンク部3の後端部には吊体4が設けられる。吊体4は、播種装置1を上下平行移動するように支持している。
フレーム5の上方には種子を繰出す繰出部6が設けられ、繰出部6の上部には種子を収納するホッパ9が設けられる。繰出部6は、内部に目皿が設けられ、種子を繰出す部分である繰出口6aが下部に設けられ、走行装置を走行させながら目皿が回転動作を行うことによって、繰出口6aから種子を点播可能に構成される。繰出部6の繰出口6aの下端(繰出部6の種子の繰出位置)は、圃場から100mm以上150mm以下程度の高さに設定される。
【0016】
繰出部6の前方には、吊体4から下方に延出するアーム7を介して、左右一対の作溝ディスク8・8が設けられる。作溝ディスク8は、圃場に播種溝を作成するものであり、回転可能に構成される。作溝ディスク8の後端同士の幅が前端同士の幅に比べて広くなるように回転軸が傾斜する構成とされて、作溝ディスク8間に詰まった土等が作溝ディスク8が回転して後方に位置するときに脱落し易くされている。
【0017】
フレーム5の下方には、支持部10を介して左右一対の戻り土防止板11が設けられる。戻り土防止板11は、播種溝を作成するときに作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に戻って積ることを防止する。
戻り土防止板11は、弾性変形可能な平板状の部材であり、例えば、厚さが約3mmの軟質の樹脂素材で構成される。戻り土防止板11は、土が付着することを抑制するために、摩擦係数が比較的低い素材(例えば、ニューライト)で構成されることが好ましい。
戻り土防止板11は、作溝ディスク8から繰出部6の繰出口6aに亘るように配置される。戻り土防止板11は、作溝ディスク8の後方(作溝ディスク8の回動軸の後方)に配置される。戻り土防止板11は、繰出部6の繰出口6aの下方において左右に配置される。
【0018】
以上のように、戻り土防止板11は、播種溝を作成するときに作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に積ることを防止することから、作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった土が播種溝に積って播種溝が浅くなることを防止し、播種溝に播かれた種子の深さを所望のものとすることができる。
【0019】
以上のように、戻り土防止板11は、作溝ディスク8から繰出部6の繰出口6aに亘るように配置されることから、播種溝を作成するときに作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に積ることをより確実に防止することができる。
【0020】
以上のように、戻り土防止板11は、作溝ディスク8の後方(作溝ディスク8の回動軸の後方)に配置され、繰出部6の繰出口6aの下方に配置されることから、播種溝を作成するときに作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に積ることをより確実に防止することができる。
【0021】
戻り土防止板11の前端部は、若干内側に変形させてその外側面を作溝ディスク8の後部内側面に当接させるようにして、作溝ディスク8・8間(作溝ディスク8の回動軸の後下方)に配置される。
このように、戻り土防止板11の前端部は作溝ディスク8・8間に配置されることから、播種溝を作成するときに作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に積ることをより確実に防止することができる。
なお、戻り土防止板11は、戻り土防止板11が作溝ディスク8に当接することによって作溝ディスク8の回転動作を阻害せず、且つ、作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が接触しても割れ等の破損が生じない程度の硬さで構成されることが好ましい。
【0022】
戻り土防止板11は、前上部と前下部とがそれぞれ切欠かれて、前端が尖るように構成される。戻り土防止板11の前上部の切欠きは、前下部の切欠きに比べて大きく構成される。
このように、戻り土防止板11が前上部または前下部の切欠きを備えることによって、戻り土防止板11を備える構成であっても、作溝ディスク8に付着した土をそぎ落とすスクレイパーを作溝ディスク8・8間に容易に配置することができる。
【0023】
戻り土防止板11は、ボルトとナット等の固定具12によって高さ調節可能(上下方向の位置を調節可能)に支持部10を介してフレーム5に取付けられる。
戻り土防止板11は、支持部10に固定される。
支持部10は水平方向に張り出す張出部10a・10bを前後に備える。張出部10a・10bは固定具12が挿通される貫通孔をそれぞれ有する。
フレーム5は水平方向に張り出す張出部5a・5bを前後に備える。張出部5a・5bは固定具12が挿通される貫通孔をそれぞれ有する。
張出部5aの貫通孔と張出部10aの貫通孔に固定具12を挿通し、また、張出部5bの貫通孔と張出部10bの貫通孔に固定具12を挿通した状態で、支持部10(戻り土防止板11)を所望の高さにして固定具12によって締め付ける。このようにして支持部10(戻り土防止板11)を所望の高さ(位置)に固定する。支持部10(戻り土防止板11)の高さを変更するときには、固定具12を緩めて、支持部10(戻り土防止板11)を所望の高さに移動させて固定具12によって締め付ける。
このように、戻り土防止板11が高さ調節可能に構成されることから、圃場の質(例えば、圃場が粘土質または硬質等)に応じて戻り土防止板11の高さを変更して、作溝ディスク8の回転動作によって舞上がった圃場の土が作成した播種溝に積ることより確実に防止することができる土調整板の高さとすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 播種装置
2 取付金具
3 リンク部
4 吊体
5 フレーム
6 繰出部
6a 繰出口
7 アーム
8 作溝ディスク
9 ホッパ
10 支持部
11 戻り土防止板