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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】VEGF産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/64 20150101AFI20221024BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20221024BHJP
   A23L 21/20 20160101ALN20221024BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20221024BHJP
   A23L 33/18 20160101ALN20221024BHJP
   A61P 1/14 20060101ALN20221024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20221024BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20221024BHJP
【FI】
A61K35/64
A61K8/98
A61P9/00
A61P17/02
A61P17/14
A61P43/00 105
A61Q7/00
A61Q19/00
A61Q19/02
A23L21/20
A23L33/10
A23L33/18
A61P1/14
A61P25/00
A61P25/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018121296
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002034
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】598162665
【氏名又は名称】株式会社山田養蜂場本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池口 主弥
(72)【発明者】
【氏名】谷 央子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢章
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-249300(JP,A)
【文献】特開2010-030975(JP,A)
【文献】特開2013-245203(JP,A)
【文献】蜂の子を食べて”毛”を増やそう!ただし一つだけクリアすべき問題が…,2017年,https://www.excite.co.jp/news/article/Asagei_88888/
【文献】FOOD STYLE 21,2012年,Vol. 16, No. 5,pp. 90-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/64
A61K 8/98
A61P 9/00
A61P 17/02
A61P 17/14
A61P 43/00
A61Q 7/00
A61Q 19/00
A61Q 19/02
A23L 21/20
A23L 33/10
A23L 33/18
A61P 1/14
A61P 25/00
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂の子を有効成分として含有する、VEGF産生促進剤。
【請求項2】
毛乳頭細胞のVEGF産生促進剤である、請求項1に記載のVEGF産生促進剤。
【請求項3】
蜂の子を有効成分として含有する、血管新生促進剤。
【請求項4】
蜂の子を有効成分として含有する、血管新生を伴う血流改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会、ストレス社会と言われる現代社会では、男性だけでなく、女性も毛髪のトラブルを抱える人が増加しており、これに対応して様々な育毛剤や発毛剤が提案されている。
【0003】
毛髪の本数の減少だけでなく、毛髪の成長サイクルにおいて毛髪の成長時期が短縮し、毛髪の径(太さ)が細くなることで、薄毛状態、髪のハリ及びコシの低下が生じることが明らかになっている。毛髪は、休止期、成長期、及び退行期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長し、そのサイクルは様々な因子によって調整されている。
【0004】
そのため、休止期から成長期へ移行させる因子及び成長期の維持に関与する因子の合成を促進することで、脱毛、薄毛の予防及び改善、更に髪のツヤ及びコシの低下を改善できることが期待される。休止期から成長期へ移行させる因子及び成長期の維持に関与する因子としては、毛乳頭細胞等で産生される、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などが知られている。
【0005】
毛髪の太さを決める要因の一つとして、毛根の先端にある毛球部内の毛乳頭の大きさが挙げられ、VEGFは、毛乳頭細胞周辺の血管を新生して毛髪の成長を促進させること、また毛乳頭細胞を増殖させてVEGFの産生を促進することで、毛髪を太く長く成長させることが知られている。また、特許文献1及び2にも、VEGFは新たな血管を形成することにより血流を改善し育毛・養毛効果を示すこと、VEGFが発毛を促進することが記載されている。
【0006】
このようなVEGFなどの因子の産生を促進させる成分としてミノキシジルやアデノシンが知られている。
【0007】
特許文献3では、アデノシンにより、毛乳頭細胞などのFGF-7の発現を亢進させることができることが報告されている。また、特許文献4では、未成熟の温州ミカンの果皮及び果実が、VEGFの産生促進作用を有することが報告されている。
【0008】
しかしながら、アデノシン及び未成熟の温州ミカンでは十分なVEGF産生促進効果を得ることができない。
【0009】
ところで、蜂の子は古来より様々な国及び地域でタンパク質等の栄養源として食されてきた。近年では、蜂の子を乾燥して粉砕させた粉末を原料とする健康食品が知られている。この健康食品は、蜂の子の有するタンパク質、アミノ酸、ビタミン及びミネラルを豊富に含有している。
【0010】
蜂の子については、特許文献5において、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより、抗酸化作用、ACE阻害活性作用、抗疲労作用、血流改善作用などが高められることが報告されている。
【0011】
また、特許文献6には、蜂の子の育毛効果、養毛効果について記載されている。
【0012】
しかしながら、特許文献5及び6には、蜂の子がVEGFの産生促進作用、発毛作用、血管新生促進作用などを有することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5858561号公報
【文献】特開2015-34157号公報
【文献】国際公開第2005/044205号
【文献】特開2012-236774号公報
【文献】特開2010-30975号公報
【文献】特開2013-249300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、優れたVEGF産生促進作用を有するVEGF産生促進剤、並びに当該VEGF産生促進剤を利用した発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、蜂の子が優れた毛乳頭細胞の増殖効果を有する上に、優れたVEGF産生促進作用も有しているという知見を得た。このようなVEGF産生促進作用に基づく効果としては、発毛促進作用、血管新生促進作用、血管新生を伴う血流改善効果、ニューロン新生促進効果などが挙げられる。
【0016】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、以下のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血流改善剤、及びニューロン新生促進剤を提供するものである。
【0017】
項1.蜂の子を有効成分として含有する、VEGF産生促進剤。
項2.毛乳頭細胞のVEGF産生促進剤である、項1に記載のVEGF産生促進剤
項3.蜂の子を有効成分として含有する、発毛促進剤。
項4.蜂の子を有効成分として含有する、血管新生促進剤。
項5.蜂の子を有効成分として含有する、血管新生を伴う血流改善剤。
項6.蜂の子を有効成分として含有する、ニューロン新生促進剤。
【発明の効果】
【0018】
蜂の子は、優れたVEGF産生促進作用を有することから、VEGF産生促進剤の有効成分として有用である。さらに、このようなVEGF産生促進作用に基づく効果として発毛促進効果、血管新生促進効果、血管新生を伴う血流改善効果、ニューロン新生促進効果などが有るので、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤の有効成分としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】細胞増殖試験の結果を示すグラフである。値は平均±標準誤差、n=5
図2】VEGF産生試験の結果を示すグラフである。値は平均±標準誤差、n=5
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
なお、本明細書において「含む、含有する(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0022】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、蜂の子を有効成分として含有することを特徴とする。
【0023】
ここで蜂の子とは、蜂の幼虫及びさなぎを意味する。蜂の種類は特に制限されず、ニホンミツバチ、西洋ミツバチ等のミツバチ、アフリカ蜂化ミツバチ、スズメバチ(クロスズメバチを含む)、アシナガバチ、マルハナバチ等、公知の蜂を広く用いることができる。好ましくはミツバチであり、より好ましくは入手の容易性から西洋ミツバチである。なお、雄と雌との別は問わず、好ましくは雄である。
【0024】
幼虫及びさなぎは、卵から孵化したものであれば特に制限されない。中でも好ましくは孵化後16~23日経過した蜂の幼虫及びさなぎ、より好ましくは孵化後18~21日経過した蜂の幼虫及びさなぎが用いられる。
【0025】
蜂の子は、体内に栄養素を蓄積している。特に、ミツバチの雄は古くから漢方の素材として使用されており、必須アミノ酸を含む各種アミノ酸をバランスよく含むほか、タンパク質、脂質、糖類、ビタミンB類、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸等のビタミン類、及び亜鉛、セレン(セレニウム)等のミネラルを豊富に含んでいる。蜂の子の生理活性及び薬理作用としては、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗原虫作用、耳鳴り解消作用等が知られている。
【0026】
本発明において蜂の子は、生の蜂の子及び生の蜂の子を加工処理した状態で使用される。蜂の子を加工処理したものとして、具体的には、蜂の子(生又は乾燥物)を粉砕したもの、蜂の子(生又は粉砕物)を乾燥したもの、蜂の子(生、乾燥物又は粉砕物)を加熱処理したもの、蜂の子を水、含水エタノール等により抽出したもの等が含まれる。好ましくは、蜂の子(生)を乾燥した後、粉砕することによって調製される蜂の子の乾燥粉末を挙げることができる。
【0027】
本発明でいう「蜂の子」という用語には、特に言及しない限り、生の蜂の子に加えて、当該蜂の子に乾燥、粉砕又は加熱の処理を施した加工物、蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を水、含水エタノール等により抽出したもの、並びに蜂の子及びその加工物をタンパク質分解酵素(ペプチダーゼ)で処理したものが含まれる。
【0028】
乾燥方法としては、通風乾燥、天日乾燥などの自然乾燥、電気などで加熱して乾燥させる強制乾燥、凍結乾燥など、一般食品加工で採用される公知の方法を使用することができる。好ましくは、凍結乾燥である。なお、乾燥時間は特に制限されず、例えば、通風、天日乾燥などの自然乾燥の場合は、約3日程度、電気等で加熱して強制乾燥させる場合は、50℃程度で1~3日程度を挙げることができる。通常、水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下になるように乾燥させることが好ましい。なお、通風、天日乾燥などの自然乾燥の場合のように水分含量を10質量%以下にすることが難しい場合は、その後、凍結乾燥機にかけて更に水分を下げる処理を行い得る。
【0029】
粉砕処理(粉末化処理)は、粉砕器(ミル)を用いて粉砕する方法、石臼を用いてすりつぶす方法等、公知の方法を使用して行い得る。
【0030】
蜂の子を加熱する方法は、特に制限されず、好ましくは70~120℃で熱処理する方法を挙げることができる。簡便には沸騰した水中に蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)を投入して加熱処理することもでき、各種のビタミン、アミノ酸等の有効成分の溶出をできるだけ避けるためには、加熱処理として蜂の子を蒸気で蒸す方法が好適に使用される。
【0031】
抽出方法は、蜂の子(生、乾燥物及び粉砕物を含む)に水、含水エタノール等を添加し、攪拌した後、遠心分離により上清を得る方法、ろ紙によるろ過を行い、ろ液を得る方法等が用いられる。
【0032】
蜂の子及びその加工物はタンパク質分解酵素で処理されることにより蜂の子及びその加工物に含まれるタンパク質が低分子化され、当該タンパク質に起因するアレルギー反応が抑制されてなる酵素処理物(低アレルゲン化酵素処理物)が得られることが期待される。
【0033】
蜂の子及びその加工物を酵素処理するのに使用されるタンパク質分解酵素としては、ペプチダーゼを好適に挙げることができる。使用されるペプチダーゼは、エンドペプチダーゼ作用及びエキソペプチダーゼ作用の少なくとも一方を有していればよい。
【0034】
少なくともエンドペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素としては、動物由来(例えば、トリプシン、キモトリプシン等)、植物由来(例えば、パパイン等)、微生物(例えば、乳酸菌、酵母、カビ、枯草菌、放線菌等)由来のエンドペプチダーゼなどが挙げられる。
【0035】
少なくともエキソペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解酵素としては、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、微生物(例えば、乳酸菌、アスペルギルス属菌、リゾープス属菌等)由来のエキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ活性も併せて有するパンクレアチン、ペプシン等が挙げられる。
【0036】
このような各種酵素の内、エキソペプチダーゼ活性及びエンドペプチダーゼ活性の両方を有する酵素の好ましい例としては、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)産生ペプチダーゼ、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)産生ペプチダーゼ等を挙げることができる。
【0037】
また、エキソプロテアーゼ作用を有する酵素の好ましい例としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus orizae)産生ペプチダーゼ、アスペルギルス・ソーエ(Aspergillus sojae)産生ペプチダーゼ、アスペルギルス属産生ペプチダーゼ、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)産生ペプチダーゼ等を挙げることができる。
【0038】
さらに、エンドプロテアーゼ作用を有する酵素の好ましい例としては、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)産生ペプチダーゼ、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)産生ペプチダーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)産生ペプチダーゼ、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)産生ペプチダーゼ、バチルス属産生ペプチダーゼ等を挙げることができる。
【0039】
蜂の子及びその加工物のアレルギー性を低減するための酵素処理は、例えば、特開2009-159997号公報の記載に従い行うことができる。
【0040】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、本発明の効果が妨げられない限り、追加の成分を含み得る。かかる追加の成分を含む場合、VEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤中の蜂の子の割合としては、0.01~100質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは20~50質量%を例示することができる。
【0041】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、その形態を特に問うものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状、カプセル状、液状、懸濁液状、乳液状などの製剤形態を有し得る。
【0042】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、食品組成物、化粧品、医薬部外品及び医薬品(特に、経口医薬)の成分として、好適に使用することができる。
【0043】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、保健、健康維持、増進等を目的とする食品組成物(例えば、健康食品、機能性食品、栄養組成物(nutritional composition)、栄養補助食品、サプリメント、保健用食品、特定保健用食品、栄養機能食品、又は機能性表示食品)、化粧品、医薬部外品及び医薬品(特に、経口医薬)の意味も包含するものである。また、本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、VEGF産生促進作用、発毛促進作用、血管新生促進作用、血管新生を伴う血流改善作用、及びニューロン新生促進作用を付与する添加剤についての意味も包含するものである。
【0044】
上記の食品組成物には、必要に応じて、賦形剤、光沢剤、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0045】
上記の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実種のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0046】
サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択でき、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤等が挙げられる。
【0047】
上記の食品組成物に含まれる蜂の子の割合は、例えば、0.01~100質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは20~50質量%の濃度を挙げることができる。
【0048】
上記の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができ、一日当たり蜂の子0.5 g以上、好ましくは0.7 g以上、より好ましくは1 g以上とすることが望ましい。
【0049】
上記の化粧品には、通常化粧品に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0050】
化粧品には、動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、体毛、頭髪、頭皮、爪、歯、顔皮、口唇等に適用されるあらゆる化粧品が含まれる。
【0051】
化粧品の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油2層系、水-油-粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。
【0052】
化粧品の用途も任意であり、例えば、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス、美容液、パック、マスク等が挙げられ、メークアップ化粧品であれば、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等が挙げられ、ネイル化粧料であれば、マニキュア、ベースコート、トップコート、除光液等が挙げられ、その他、洗顔料、(練又は液体)歯磨剤、マウスウォッシュ、マッサージ用剤、クレンジング用剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ボディソープ、石けん、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、整髪料、ヘアートニック剤、発毛剤、育毛剤、養毛剤、制汗剤、入浴剤等が挙げられる。
【0053】
上記の化粧品に含まれる蜂の子の割合は、例えば、0.01~100質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは20~50質量%の濃度を挙げることができる。
【0054】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤を、医薬品として調製する場合、蜂の子製剤と称することができる。医薬品には、上記蜂の子は単体で使用することもでき、ビタミン、生薬など日本薬局方に記載の他の医薬成分と混合して使用することもできる。
【0055】
本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤を、医薬品として調製する場合、蜂の子を、医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペーストなどの形態に調製して、経口用の製剤にすることが可能である。
【0056】
上記の医薬品の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができ、一日当たり蜂の子0.5 g以上、好ましくは0.7 g以上、より好ましくは1 g以上とすることが望ましい。
【0057】
上記の医薬品に含まれる蜂の子の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されず、例えば、0.01~100質量%、好ましくは1~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは20~50質量%の濃度を挙げることができる。
【0058】
なお、本発明の医薬品及び化粧品には、医薬部外品も包含される。
【0059】
以上説明した本発明のVEGF産生促進剤、発毛促進剤、血管新生促進剤、血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤は、ヒトを含む哺乳動物(好ましくはヒト)に対して適用されるものである。
【0060】
後述する試験例で示すように蜂の子は、優れたVEGF産生促進作用を有する。VEGFの産生が促進される結果として、発毛及び育毛作用、血管新生に伴う血流改善作用、ニューロン新生促進作用、認知機能改善作用、創傷治癒作用、肌の血色改善作用、冷え性改善作用、腸内の吸収促進作用などが導かれる。
【0061】
VEGFは、脈管新生及び血管新生に関与しており、血管の最内面を構成する血管内皮細胞の分裂や遊走、分化を刺激し、微小血管の血管透過性を亢進させる働きを持つ。
【0062】
発毛及び育毛作用に関しては、VEGFにより、毛乳頭細胞周辺の血管を新生し血流を改善することで毛髪の成長を促進させること、毛髪を太く長く成長させることが知られている(Kiichiro Yano, et al. Journal of Clinical Investigation, 107, 409-417 (2001)参照)。このことから、VEGFの産生を促進することで、発毛及び育毛作用、血管新生を伴う血流改善作用の促進が期待できる。
【0063】
ニューロン新生促進作用に関しては、ラットの海馬内でVEGFの発現を促進させる実験より、ラットの学習能力と記憶力が向上したことが確認されており、VEGFがニューロン前駆細胞に直接作用することが知られている(Nature genetics, 36, 827-835 (2004)参照)。このことから、VEGFの産生を促進することで、ニューロン新生の促進が期待できる。
【0064】
そのため、蜂の子は、VEGF産生促進剤(特に、毛乳頭細胞のVEGF産生促進剤)、(毛乳頭細胞の)発毛促進剤、(毛乳頭細胞の)血管新生促進剤、(毛乳頭細胞の)血管新生を伴う血流改善剤、及びニューロン新生促進剤の有効成分として有用である。その他、蜂の子は、創傷治癒剤、肌の血色改善剤、冷え性改善剤、腸内の吸収促進剤、認知機能改善剤、学習能力向上剤などの有効成分としても有用である(この場合、前述するVEGF産生促進剤等に関する記載は、これら創傷治癒剤、肌の血色改善剤、冷え性改善剤、腸内の吸収促進剤、認知機能改善剤、学習能力向上剤等にも適用される)。また、蜂の子は、上記の血管新生及びニューロン新生の作用に基づいて、耳鳴り及び難聴の改善にも有効である。
【0065】
上記の食品組成物、化粧品、医薬部外品及び医薬品には、例えば、「発毛を促進する旨」、「育毛を促進する旨」、「毛髪の成長を促進させる旨」、「毛髪を太く長く成長させる旨」、「血管新生を促進する旨」、「ニューロン新生を促進する旨」、「認知機能を改善する旨」、「認知機能を良好にする旨」、「脳の衰えを予防又は改善する旨」、「血流を改善する旨」、「血液の流れを良好にする旨」、「冷え性を改善する旨」、「冬の健康維持に役立つ旨」、「寒い時期の健康維持に役立つ旨」、「寒い季節に負けない旨」、「肌の血色を改善する旨」、「くすみを改善する旨」、「シミを改善する旨」、「傷の治りを早める旨」、「腸内の吸収を促進する旨」、「学習能力を高める旨」、「耳鳴りを改善する旨」、「難聴を改善する」等の表示が付されていてもよい。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0067】
試験例
1.材料
1)使用細胞
ヒト正常毛乳頭細胞(東洋紡株式会社, Cat. No.CA60205a)
【0068】
2)使用培地
専用添加剤添加済みの毛乳頭細胞専用培地(東洋紡株式会社, Cat. No.TMTPGM-250)
【0069】
3)被験物質
未酵素分解蜂の子パウダー
酵素分解蜂の子パウダー
【0070】
4)試薬・機器等
毛乳頭細胞増殖培地(東洋紡株式会社, Cat. No. TMTPGM-250)
D-PBS(-) (日水製薬株式会社, Cat. No. 05913)
エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社, Cat. No. 057-00456)
アデノシン(富士フイルム和光純薬株式会社, Cat. No. 016-10493)
ジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich, Cat. No. 07-4875-5)
ミノキシジル(Sigma-Aldrich, Cat. No. M4145-25MG)
0.05% Trypsin-EDTA (Life technogies, Cat. No. 25300-062)
生細胞数測定試薬SF (ナカライテスク株式会社、Cat. No. 07553-15)
75 cm2 cell culture flask (Corning, Cat. No. 3276)
0.22μm 滅菌フィルター (Whatman, Cat. No. 2010-07)
Type I Collagen-coated 48 well cell culture plate (Corning, Cat. No. 356505)
Type I Collagen-coated 96 well culture plate (Corning, Cat. No. NCO3585)
Human VEGF Quantikine ELISA (R & D Systems, Cat. No. DVE00)
Varioskan MicroPlate Reader (Thermo Fisher Scientific)
顕微鏡(オリンパス株式会社, CK40-32PH)
CO2インキュベーター(株式会社アステック, Cat. No. SCA-165DRS)
【0071】
2.方法
1)細胞前培養
毛乳頭細胞は、付属の毛乳頭細胞専用培地(以下、培地と称する)を用い、T-75フラスコに起眠し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃、湿潤)内で培養した。培地交換は一日おきに行った。細胞の継代には0.05% Trypsin-EDTAを用いて細胞をフラスコより剥離して使用した。試験には3継代目の細胞を用いた。
【0072】
2)サンプル調整
未酵素分解蜂の子パウダーは110 mgを採取し1100μlのエタノールを、酵素分解蜂の子パウダーは98.8 mgを採取し988μlのエタノールを添加して10分間以上振とうし、上澄みを濾過して使用した。当該上清をサンプル濃度30 mg/mlと仮定し、以下の濃度表示にはその値で計算した数値を記した。抽出サンプルは試験まで-20℃で保管し、試験には100倍以上希釈して用いた。
【0073】
3)細胞増殖試験
細胞を5.0×103 cells/0.1 ml/ウェルでType Iコラーゲンコート96ウェルプレートに播種した。COインキュベーター内(5%CO、37℃)で、1日間培養後、被験物質(終濃度3、30、300μg/ml)、溶媒対照添加培地、陽性対照としてFCS添加培地を用いた。その後、3日間培養し、細胞の増殖性(viability)を生細胞数測定試薬SFで比較検討した。n=5にて実施した。
【0074】
4)VEGF産生促進試験
細胞を1.2×104 cells/0.3 ml/ウェルでType Iコラーゲンコート48ウェルプレートに播種した。COインキュベーター内(5%CO、37℃)で、1日間培養後、被験物質(終濃度300μg/ml)、溶媒対照添加培地、参考物質として終濃度100μMアデノシン及び終濃度30μMミノキシジルを含む培地に置換した。その後、3日間培養し、上清を回収して培養上清中のVEGF産生量をELISA kitにて測定した。n=5にて実施した。上清は測定時まで-80℃で保管した。方法はキット付属のプロトコールに従った。
【0075】
5)有意差検定
比較試験区間では有意差検定を行った。検定はStudent's t-testで両側検定を行い、P < 0.05 (帰無仮説が5%未満)のものを有意差ありと判断した。グラフのデータは平均値±標準誤差として示した。
【0076】
3.結果
1)細胞増殖試験
細胞増殖試験の3日目の結果を図1及び表1に示す。酵素分解蜂の子及び未酵素分解蜂の子は共に3日目には溶媒対照培地と比較して有意に生細胞数が多くなっていた。陽性対照であるFCS添加培地においても有意に細胞数が増加したことから、試験自体は問題なく行われたと考えられた。
【0077】
【表1】
【0078】
2)VEGF産生試験
VEGF産生量を図2及び表2に示す。酵素分解蜂の子及び未酵素分解蜂の子はVEGFの顕著な産生促進効果を示した。参考物質であるアデノシン及びミノキシジルにおいても有意に産生量が増加したことから、試験自体は問題なく行われたと考えられた。
【0079】
【表2】
図1
図2