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  • 特許-容量結合型プラズマ処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】容量結合型プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018136055
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020013929
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 浩通
(72)【発明者】
【氏名】西宮 智靖
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-349070(JP,A)
【文献】特開平05-152208(JP,A)
【文献】特開2012-018985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0233016(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 密閉可能な筐体と、
b) 前記筐体内に配置された、ワークが載置される下部電極と、
c) 前記筐体内に配置された、内部に原料ガス保持空間を有し、下面に原料ガス供給孔を有する上部電極と、
d) 前記上部電極を貫く中空筒状体であって、上部に透明窓を、側壁に前記原料ガス保持空間と該中空筒状体の内部空間を連通する第2原料ガス供給孔を有する光路筒と
e) 前記透明窓の外に配置され、前記下部電極に載置されるワークにレーザ光を照射し、該ワークからの反射光を受光することにより該ワークのエッチング深さを測定する光学観測装置と
を備えることを特徴とする容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記光路筒が更に前記筐体の天井壁を貫くことを特徴とする請求項1に記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記光路筒の内部空間のアスペクト比が2~100であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記アスペクト比が3~50であることを特徴とする請求項3に記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記光路筒の下端が前記上部電極の下面と同じ位置にあることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項6】
前記光路筒の内部空間の下端における径が、それよりも上の内部空間の径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【請求項7】
前記原料ガス保持空間が、前記上部電極の前記下面と前記筐体の間に形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の容量結合型プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量結合型プラズマ処理装置、特に、プラズマ処理中に被処理物(ワーク)の状態を観測することのできる装置を備えた容量結合型プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチングや成膜、洗浄等のプラズマ処理を行うためのプラズマ処理装置のうち容量結合型プラズマ処理装置は、密閉可能な筐体内に置かれた2枚の電極間にプラズマの原料となるガスを供給し、その2枚の電極間に高周波電圧を印加することにより、原料ガスをプラズマ化する。2枚の電極は、通常、筐体内に上下に平行に配置され、一方の電極が接地され、他方の電極に高周波電圧が印加される。プラズマ処理の対象となる被処理物(ワーク)は、接地電極上に載置されることもあるし、高周波電圧が印加される電極(これをパワード電極と呼ぶ。)上に載置されることもある。いずれにせよ、通常、ワークは下部の電極上に載置され、上部の電極との間の空間に形成されたプラズマによりエッチング等の処理が行われる。
【0003】
従来の典型的な容量結合型(「平行平板型」ともいう。)プラズマ処理装置80の概略構成を図1に示す。図1は、上部電極82が接地され、下部電極83に高周波電力が投入される装置の例を示している。このプラズマ処理装置では、密閉可能な筐体81内の上下に上部電極82及び下部電極83が平行に配置され、下部電極83上にワーク84が載置される。下部電極83には、載置されたワーク84を静電吸着等で固定するためのワーク固定装置、及びワークの温度上昇を防止するための冷却装置等が内蔵されている。なお、筐体81には排気口85が設けられ、そこには筐体81内部の気体を排出する排気機構(図示せず)が接続されている。
【0004】
上部電極82は内部が空洞86となっており、該空洞86は筐体81の内部空間とは隔離されている一方、そこには図示せぬガス供給源から原料ガス管87を通じて原料ガスが供給される。上部電極82の下面(以下、これをシャワー板88と呼ぶ。)には多数の開口89が設けられており、空洞86内に供給された原料ガスはそれら開口89から上部電極82と下部電極83の間の空間に放出されるようになっている。すなわち、上部電極82は、電極としての機能と共に、原料ガス供給装置としての機能を有する。
【0005】
ワーク84に対してプラズマ処理を行う際は、筐体81内を一旦排気した後、上部電極82内の空洞86に原料ガスを供給し、シャワー板88の開口89からワーク84の上部に原料ガスを送り出す。そして下部電極83(パワード電極)に高周波電力を投入することにより原料ガスをプラズマ化し、該プラズマによりワーク84に対するエッチング等のプラズマ処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-349070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワークに対してエッチングを行う場合、そのエッチング深さを制御しなければならない場合がある。この場合、プラズマによりエッチング処理を行いつつ、ワークにおけるエッチング深さをリアルタイムに測定し、深さが目標となる値に達した時点でプラズマ処理を停止する必要がある。また、エッチング深さに応じてプラズマ条件を変更しなければならない場合もある。いずれの場合にせよ、ワークに対してプラズマによるエッチング処理をしている間に、該ワークにおけるエッチング深さを測定しなければならない。精密なエッチング深さはレーザ測距計により簡易に測定することができるが、レーザ測距計でワークのエッチング部分の深さを測定する場合、レーザ測距計をプラズマ処理装置の筐体内に置くことができないことから、レーザ測距計を筐体外に配置し、そこからレーザをワークに照射し、その反射光を筐体外のレーザ測距計で受光するという方法を取らざるを得ない。すなわち、上部電極及びプラズマ処理装置の筐体(の天井壁)に、レーザが通過する窓を設ける必要がある。
【0008】
このような構成のプラズマ処理装置の一例を図2に示す。この構成のプラズマ処理装置90では、筐体91の天井壁91aに観測窓94を設ける他、上部電極92の下面(シャワー板98)に、前記のような原料ガス供給用の開口99の他に、レーザ測距計100からのレーザ光を通過させるための光通過孔95を設ける。この光通過孔95には、そこからの原料ガスの過大な流出を防ぐために透明板97を設けておく必要があるが、この透明板97の下面にワーク84からの飛散物(蒸気や微粒子)が付着し、レーザ光の透過率が低下するという問題がある。
【0009】
特許文献1には、筐体の内部で上部電極(シャワー板)を貫通し、筐体の外部に突出する筒状の細長い光路を設けることが提案されている。この光路の上端には透明窓が設けられており、測定レーザ光はその窓を通してワークに照射され、ワークで反射したレーザはその窓を通してレーザ測定器に入射する。しかし、この構成では、エッチングにより発生したワークからの飛散物が該光路を通して該透明窓に付着し、やはり測定用レーザ光の透過率が低下するという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、プラズマ処理を行いつつ、レーザ光等によるワークのエッチング深さ測定等の観測を長時間行うことのできるプラズマ処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、
a) 密閉可能な筐体と、
b) 前記筐体内に配置された、ワークが載置される下部電極と、
c) 前記筐体内に配置された、内部に原料ガス保持空間を有し、下面に原料ガス供給孔を有する上部電極と、
d) 前記上部電極を貫く中空筒状体であって、上部に透明窓を、側壁に前記原料ガス保持空間と該中空筒状体の内部空間を連通する第2原料ガス供給孔を有する光路筒と
e) 前記透明窓の外に配置され、前記下部電極に載置されるワークにレーザ光を照射し、該ワークからの反射光を受光することにより該ワークのエッチング深さを測定する光学観測装置と
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置である
【0012】
前記光路筒は、上部電極を貫いた上、更に、プラズマ処理装置の筐体の天井壁を貫くようなものであってもよい。
【0013】
本発明に係るプラズマ処理装置でワークに対してプラズマ処理を行う場合、前記光路筒の上部の透明窓の外(上)にレーザ測距計等の光観測装置を置く。その光観測装置から光(観測光)をワークに対して放射すると、観測光は前記光路筒の上部の透明窓(なお、ここにおける「透明」とは、光観測装置が使用する光に関して透明という意味である。)を通して該光路筒の内部空間を通り、ワークの表面に到達する。ワークの表面で反射された観測光(もちろん、この反射された観測光には、ワークのエッチング深さ等のワークに関する情報が含まれている。)は前記光路筒の内部空間及び前記透明窓を逆行し、前記光観測装置に戻る。これにより、ワークに対するエッチング処理の間にも、ワークのエッチング深さ等のワークに関する情報をリアルタイムに得ることができる。
【0014】
本発明に係るプラズマ処理装置では、この光路筒の側壁に、原料ガス保持空間と該光路筒内部の空間を連通する第2原料ガス供給孔が設けられているため、前記観測光が通過する光路筒の内部空間には、エッチング処理の間、筐体内に供給されると同じ原料ガスが供給される。従って、エッチングにより発生したワークからの飛散物は、光路筒上部の透明窓に届くことはほとんどなく、該透明窓は清浄な状態が保持される。
【0015】
前記光路筒は、その内部空間の径と長さの比(長さ/径。ここで径とは、光路筒の内部空間の断面を円としたときの直径に相当する長さ。)であるアスペクト比を2~100とすることが望ましい。アスペクト比がこの下限値よりも小さいと、ワークからの飛散物が上部の透明窓に到達する可能性が高くなり、上限値よりも大きいと、光路筒が長くなり過ぎて、プラズマ処理装置の全高が大きくなるため、好ましくない。なお、より望ましいアスペクト比の範囲は3~50である。
【0016】
前記光路筒の下端は、上部電極の下面(シャワー板)よりも下の位置にあっても良いが、同じ位置(高さ)としておくことが望ましい。同じ位置にすることにより、下部電極と上部電極の間に形成されるプラズマの分布を乱すことがない。
【0017】
また、前記光路筒の内部空間の下端における径を、それよりも上の内部空間の径よりも小さくしてもよい。原料ガスは上部電極の原料ガス保持空間から第2原料ガス供給孔を通して光路筒の内部空間に供給されるため、該内部空間の下端を狭くすることにより、光路筒の内部空間の圧力をその外側、すなわち下部電極と上部電極の間の空間(プラズマ処理空間)よりも高くすることができる。これにより、原料ガスの流れをより確実に光路筒の内部空間からプラズマ処理空間に向けることができ、ワークからの飛散物の光路筒内部空間への侵入をより良く阻止することができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプラズマ処理装置では、上部電極を貫く光路筒を設け、その上部に透明窓を、側壁に前記原料ガス保持空間とその内部空間を連通する第2原料ガス供給孔を設けたことにより、光路筒の内部空間には、エッチング処理の間、筐体内に供給されると同じ原料ガスが供給される。従って、エッチングにより発生したワークからの飛散物(蒸気、微粒子)は、光路筒上部の透明窓に届くことはほとんどなく、透明窓は清浄な状態が保持される。これにより、光路筒の上部に設けたレーザ測距計等の光観測装置が発する観測光は、ワークに対するエッチング等の処理が行われている間、減衰することなく光路筒の内部空間を通過し、ワークに対するリアルタイムの観測処理を長期間に亘って行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の容量結合型プラズマ処理装置の概略構成図。
図2】課題を解決するために考え得るプラズマ処理装置の概略構成図。
図3】本発明の一実施形態であるプラズマ処理装置の概略構成図。
図4】上部電極の変形例を示す概略構成図。
図5】本発明の別の実施形態であるプラズマ処理装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態である、ワークをリアルタイムに観測することが可能な容量結合型プラズマ処理装置(以下、単にプラズマ処理装置と呼ぶ。)について、図3を参照しつつ説明する。図3のプラズマ処理装置10は図1のプラズマ処理装置80と同様、密閉可能な筐体11内の上方に上部電極12が、下方に下部電極13が配置されており、上部電極12が接地され、下部電極13に高周波電源14が接続されている(すなわち、下部電極13がパワード電極となっている。)。上部電極12及び下部電極13は共に平面形状は一般的に円形であるが、矩形やその他の形状である場合もある。ワーク15が載置される下部電極13には、載置されたワーク15を固定するための静電吸着装置、及び、ワークの温度上昇を防止するためのヘリウムガスを利用した冷却装置等が内蔵されている(共に図示せず)。筐体11の下方床面には、排気機構に接続する排気口16が設けられている。
【0021】
上部電極12は、下部電極13に対向する水平な部分(水平部18)と、中央において垂直に立ち上がっている部分(垂直部19)から成る。垂直部19は、外壁19aと内壁19bの二重の円筒状の壁で構成される中空筒状となっており、その内壁19bが本発明の光路筒に該当する。水平部18も内部は中空状となっており、これら垂直部19の長リング状の内部空洞と水平部18の平板状の内部空洞は連通し、全体として上部電極12の内部に空洞を形成している。この空洞は筐体11の内部空間とは隔離されている一方、そこには図示せぬガス供給源から原料ガス管21を通じてプラズマの原料となるガスが供給される。従って、以下、この空洞を「原料ガス保持空間22」と呼ぶ。なお、図3では原料ガス管21は垂直部19の原料ガス保持空間22に接続されているが、これはもちろん水平部18の原料ガス保持空間22に接続されていてもよい。
【0022】
上部電極12の水平部18の下面壁(シャワー板23)には、原料ガス保持空間22と下部電極13の上部の空間(すなわち、プラズマ形成空間)を連通する多数の開口(第1原料ガス供給孔24)が設けられている。また、前記垂直部19の円筒状の内壁19bにも、原料ガス保持空間22と該内壁19bの内部の円筒状の空間(以下、これを光路空間20と呼ぶ。)を連通する多数の開口(第2原料ガス供給孔25)が設けられている。
【0023】
上部電極12の垂直部19は筐体11の外部に突出しており、垂直部19と筐体11とは気密に閉鎖されている。垂直部19の中央の光路空間20の上端には後述の光学観測装置27が使用する光に関して透明な窓(観測窓28)が形成されており、観測窓28は光路空間20を上部において気密に閉鎖している。なお、図3では光路空間20のアスペクト比(長さ/直径)は4程度となっているが、これは図示の都合のためであり、実際には3~50程度の範囲内とすることが望ましい。
【0024】
観測窓28の上部には、ワーク15を観測又は測定するための光学観測装置27(又は光学測定装置)が設けられている。
【0025】
このような構成を有する本実施形態のプラズマ処理装置10で、リアルタイムにワーク15の観測(又は測定)を行いつつワーク15に対してプラズマ処理を行う際の動作を次に説明する。
【0026】
まず、筐体11内にワーク15を装入し、下部電極13上に載置して、静電吸着装置によりワーク15を下部電極13上に固定する。排気機構により筐体11の内部空間を十分に排気した後、ガス供給源から原料ガス管21を通じて上部電極12の原料ガス保持空間22に原料ガスを所定の流量で供給する。原料ガスの種類はプラズマ処理の目的に応じて適宜選択し、その流量も目的に応じて設定する。原料ガス保持空間22に供給された原料ガスは、上部電極12の水平部18のシャワー板23に設けられた第1原料ガス供給孔24及び垂直部19の内壁19bに設けられた第2原料ガス供給孔25を通じて筐体11の内部空間に放出される。筐体11の内部空間の圧力が所定値に達した時点で下部電極13に高周波電力を投入し、下部電極13と上部電極12の間に存在する原料ガスをプラズマ化する。その後、このプラズマにより、ワーク15に対してエッチング、成膜等のプラズマ処理が行われる。
【0027】
このプラズマによりワーク15に対して目標深さまでエッチングをする場合を考える。ワーク15におけるエッチング深さが目標深さに近づいたとき、エッチング条件を緩やかにしてエッチング速度を低下させると共に、エッチング深さが目標深さに達した時点でエッチング処理(プラズマ処理)を停止しなければならない。そのためには、エッチング処理を行っている間、リアルタイムにワーク15のエッチング深さを測定しなければならない。そこで本実施形態のプラズマ処理装置10では、光学観測装置27からパルスレーザ光を下方に射出し、観測窓28及び光路空間20を通じてワーク15の、エッチング処理が行われている表面に照射する。そこで反射されたパルスレーザ光は光路空間20及び観測窓28を経由して光学観測装置27に戻る。光学観測装置27は、この出射パルスレーザ光と反射パルスレーザ光の時間差により、ワーク15表面までの距離を測定する。これにより、ワーク15のエッチング深さの変化をリアルタイムに測定することができる。
【0028】
このようにワーク15のエッチング深さをリアルタイムに測定している間、エッチングされているワーク15からはワーク15の物質の蒸気又は微粒子(飛散物)が放出される。これらの飛散物は、光路空間20を通って上部の観測窓28に到達し、その表面(下面)に蒸着(付着)する可能性がある。しかし、本実施形態のプラズマ処理装置10では、光路空間20には第2原料ガス供給孔25から原料ガスが供給され続けているため、このような飛散物の観測窓28への到達が阻止され、観測窓28への付着が防止される。これにより、長時間に亘ってワーク15のエッチング深さのリアルタイム観測(測定)を行うことができる。
【0029】
上部電極の別の構成例を図4に示す。この構成の上部電極32では、光路空間40の下端がやや狭くなるように、上部電極32の垂直部39の内壁39bの周囲に、内側に突出するフランジ41が設けられている。こうすることにより、第2原料ガス供給孔35から光路空間40の内部に供給された原料ガスは容易に上部電極上の空間(プラズマ形成空間)に出ることができず、光路空間40内の圧力がプラズマ形成空間の圧力よりも高くなる。そのため、光路空間40内からプラズマ形成空間への原料ガスの流れが強くなり、ワーク物質の飛散物がより強く上方(光路空間40及び観測窓38の方)に向かうことが阻止されるようになる。
【0030】
本発明に係る容量結合型プラズマ処理装置の別の構成例を図5に示す。この構成のプラズマ処理装置50では、原料ガス保持空間62は上部電極52自体の内部に形成されるのではなく、上部電極52とプラズマ処理装置50の筐体51とで形成される空間に形成される。すなわち、この構成におけるプラズマ処理装置50では、プラズマ処理装置50の筐体51の天井壁51aの中央に外部に突出する筒状の突出部54が設けられる。そして上部電極52には、多数の第1原料ガス供給孔64が設けられた下面板(シャワー板63)の中央に、垂直上方に立設された筒状部59が設けられ、該筒状部59が前記突出部54の内部に挿入されるようになっている。この筒状部59の内部が光路空間70となっている。シャワー板63の周囲は筐体51に接続され、上部電極52と筐体51の間に閉空間(原料ガス保持空間62)を形成するようになっている。突出部54の上部と垂直部59の上部は共に光学観測装置27が使用するレーザ光に関して透明な窓(第1観測窓66及び第2観測窓67)が設けられており、筒状部59の内壁には第2原料ガス供給孔65が設けられている。
【0031】
この構成のプラズマ処理装置では、光学観測装置27から出射された光は、第1観測窓66、原料ガス保持空間62、第2観測窓67及び光路空間70を経由してワーク15の上面(プラズマ処理面)を照射し、そこで反射されて光路空間70、第2観測窓67、原料ガス保持空間62、第1観測窓66を経由して光学観測装置27に戻る。このプラズマ処理装置50では、上部電極52の構造が比較的簡単であるため、上部電極52を交換することが容易となる。
【符号の説明】
【0032】
10、50…プラズマ処理装置
11、51…筐体
12、32、52…上部電極
13…下部電極
18…上部電極の水平部
19、39、59…上部電極の垂直部
19a…垂直部の外壁
19b、39b…垂直部の内壁
20、40、70…光路空間
22、62…原料ガス保持空間
23、63…シャワー板
24、64…第1原料ガス供給孔
25、35、65…第2原料ガス供給孔
27…光学観測装置
28、38、66、67…観測窓
41…フランジ
図1
図2
図3
図4
図5