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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ロボット頭部装置及びロボット
(51)【国際特許分類】
   A63H 13/04 20060101AFI20221024BHJP
   A63H 3/36 20060101ALI20221024BHJP
   A63H 3/40 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A63H13/04 J
A63H3/36 C
A63H3/36 L
A63H3/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018233008
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020092842
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507415266
【氏名又は名称】有限会社浅草ギ研
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝佳
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167356(JP,A)
【文献】特開2002-035440(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022635(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0287913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0014831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部形状の支持体に弾性素材から成る外皮を被覆することにより構成されるロボット頭部装置であって、
前記支持体は、前記支持体の頬に相当する領域に左右一対の頬部動作表現機構を備え、
前記頬部動作表現機構は、それぞれ、
前記外皮の頬に相当する領域の内面の一部と面状に接着される頬部接着片と、
前記頬部接着片を保持し、かつ、前記頬部接着片を前記支持体の側面方向に引き上げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の頬に相当する領域を前記支持体の側面方向に引き上げるよう弾性変形させる、頬部接着片変位部材と、を備え、
前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材に対して回動自在に保持されており、それにより、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材による変位に伴って従動的に回動する、ロボット頭部装置。
【請求項2】
前記頬部接着片変位部材は、
動力源へと直接又は間接的に接続されて引き込み又は押し出しされ、前記頬部接着片をその一部に保持するワイヤ部材と、
前記ワイヤ部材を内包して摺動させ、前記ワイヤ部材に保持された前記頬部接着片の変位軌道を定義するガイドパイプと、を含む、請求項1に記載のロボット頭部装置。
【請求項3】
前記頬部接着片は、貫通孔を有し、
前記ワイヤ部材は、1本のワイヤ部材を折り返すことにより形成されたU字の底辺部に、前記貫通孔を介して前記頬部接着片を挿通させることにより、前記頬部接着片を回動自在に保持し、
前記ガイドパイプは、前記U字の残りの2辺に相当する前記ワイヤ部材を内包して摺動させ、前記ワイヤ部材に保持された前記頬部接着片の変位軌道を定義する、1組のガイドパイプを含む、請求項2に記載のロボット頭部装置。
【請求項4】
前記支持体は、さらに、
前記支持体の1又は複数の領域に動作表現機構を備えており、
前記動作表現機構は、それぞれ、
前記外皮の対応する領域の内面の一部と面状に接着される接着片と、
前記接着片を保持し、かつ、前記接着片を所定の軌道で変位させ、それにより、前記外皮の対応する領域を弾性変形させる、接着片変位部材と、を備え、
前記接着片は、前記接着片変位部材へと回動不能に固定されている、請求項1に記載のロボット頭部装置。
【請求項5】
前記外皮及び前記支持体は、口に相当する領域を有し
前記動作表現機構は、さらに、
前記口の直上に左右一対に配置され、前記口の直上を各側面方向に引き上げるか又は中心方向に押し下げる、一対の口上部動作表現機構と、
前記口の中心の直下に配置され、前記口の直下を下向きに引き下げるか又は上向きに押し上げる、口下部動作表現機構と、を備える、請求項4に記載のロボット頭部装置。
【請求項6】
前記支持体は、さらに、
左右一対の眼球部と、
各前記眼球部の正面側に配置され、前記眼球部に沿って前記眼球部の有する球状面の一部をカバーし、上下に開閉可能に構成された一対のカバー部材と、備え、
前記カバー部材の末端には、目に相当する外皮の切り欠き部の周縁部を載せることが可能な突状部が設けられている、請求項1に記載のロボット頭部装置。
【請求項7】
前記眼球の直下に左右一対に配置され、前記目に相当する外皮部分を下方向に引き下げるか又は上方向に押し上げる、一対の目下動作表現機構と、を備える請求項6に記載のロボット頭部装置。
【請求項8】
前記支持体は、さらに、
前記支持体の額に相当する領域に額部動作表現機構を備え、
前記額部動作表現機構は、
前記外皮の額に相当する領域の内面の一部と面状に接着される額部接着片と、
前記額部接着片を保持し、かつ、前記額部接着片を前記支持体形状に沿って上方向に引き上げるか又は下方向に押し下げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の額に相当する領域を前記支持体の形状に沿って上方向に引き上げるよう弾性変形させる、額部接着片変位部材と、を備える請求項1に記載のロボット頭部装置。
【請求項9】
頭部形状の支持体に弾性素材から成る外皮を被覆することにより構成されるロボット頭部装置を備えたロボットであって、
前記支持体は、前記支持体の頬に相当する領域に左右一対の頬部動作表現機構を備え、
前記頬部動作表現機構は、それぞれ、
前記外皮の頬に相当する領域の内面の一部と面状に接着される頬部接着片と、
前記頬部接着片を保持し、かつ、前記頬部接着片を前記支持体の側面方向に引き上げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の頬に相当する領域を前記支持体の側面方向に引き上げるよう弾性変形させる、頬部接着片変位部材と、を備え、
前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材に対して回動自在に保持されており、それにより、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材による変位に伴って従動的に回動する、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、頭部形状を有する支持体へと弾性素材の外皮を被せて成るロボット頭部装置又は当該ロボット頭部装置を備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、人間等の顔の表情をより写実的に表現することが可能なロボットの開発が待たれている。
【0003】
そのようなニーズに応えるため、近年、本願の発明者は、頭部形状を有し各部に所定の動作部を備えた支持体に、シリコン素材等から成る弾性素材の外皮を被せ、様々な表情を表出可能なロボット頭部装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-167356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人間の顔の表情は、各所に配置された筋肉の収縮と弛緩に伴って皮膚が伸長、萎縮することにより形成されており、その動きは非常に複雑である。そのため、モータ等のアクチュエータを用いた工学的な手法で、顔の表情を写実的に表出させようとする場合、多くの工夫が必要となる。
【0006】
しかしながら、上述のロボット頭部装置において頭部のどの部分をどのように動作させれば表情を写実的に表現できるかについて未だ十分な検討がなされていない。
【0007】
本発明は、上述の技術的背景の下になされたものであり、その目的とすることころは、写実的な表情を表出可能なロボット頭部装置、及び、当該ロボット頭部装置を備えたロボットを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する情報処理装置により解決することができる。
【0010】
すなわち、本発明に係るロボット頭部装置は、頭部形状の支持体に弾性素材から成る外皮を被覆することにより構成されるロボット頭部装置であって、前記支持体は、前記支持体の頬に相当する領域に左右一対の頬部動作表現機構を備え、前記頬部動作表現機構は、それぞれ、前記外皮の頬に相当する領域の内面の一部と面状に接着される頬部接着片と、前記頬部接着片を保持し、かつ、前記頬部接着片を前記支持体の側面方向に引き上げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の頬に相当する領域を前記支持体の側面方向に引き上げるよう弾性変形させる、頬部接着片変位部材と、を備え、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材に対して回動自在に保持されており、それにより、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材による変位に伴って従動的に回動する、ものである。
【0011】
このような構成によれば、頬部の外皮に弾性変形をもたらす頬部接着片が、変位に伴って従動的に回動するので、頬にしわが寄ったような三次元的に自然な頬の動きを表現することができる。そのため、例えば、笑顔などの表情を表現する際の頬の動きを三次元的により写実的に表現することができる。なお、ここで、頭部とは、首より上の部分を意味するものである。
【0012】
前記頬部接着片変位部材は、動力源へと直接又は間接的に接続されて引き込み又は押し出しされ、前記頬部接着片をその一部に保持するワイヤ部材と、前記ワイヤ部材を内包して摺動させ、前記ワイヤ部材に保持された前記頬部接着片の変位軌道を定義するガイドパイプと、を含む、ものであってもよい。
【0013】
このような構成によれば、動力源を変位部材の周辺に配置する必要がなく、動作部をコンパクトにまとめることができる。
【0014】
前記頬部接着片は、貫通孔を有し、前記ワイヤ部材は、1本のワイヤ部材を折り返すことにより形成されたU字の底辺部に、前記貫通孔を介して前記頬部接着片を挿通させることにより、前記頬部接着片を回動自在に保持し、前記ガイドパイプは、前記U字の残りの2辺に相当する前記ワイヤ部材を内包して摺動させ、前記ワイヤ部材に保持された前記頬部接着片の変位軌道を定義する、1組のガイドパイプを含む、ものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、比較的簡易な構造でありながら、2本のワイヤで頬部接着片を保持するのと同様の構造となるので、外皮の弾性に負けることなく、より安定的に所望の軌道で頬部の接着片を変位させることができる。
【0016】
前記支持体は、さらに、前記支持体の1又は複数の領域に動作表現機構を備えており、前記動作表現機構は、それぞれ、前記外皮の対応する領域の内面の一部と面状に接着される接着片と、前記接着片を保持し、かつ、前記接着片を所定の軌道で変位させ、それにより、前記外皮の対応する領域を弾性変形させる、接着片変位部材と、を備え、前記接着片は、前記接着片変位部材へと回動不能に固定されている、ものである。
【0017】
このような構成によれば、頬については接着片の従動的な回動を許容して三次元的に自然な頬の動きを表現しつつも、頭部の他の領域については、接着片の回動を敢えて許容しないことで、自然かつ写実的な顔の表現を実現することができる。
【0018】
前記外皮及び前記支持体は、口に相当する領域を有し、前記動作表現機構は、さらに、前記口の直上に左右一対に配置され、前記口の直上を各側面方向に引き上げるか又は中心方向に押し下げる、一対の口上部動作表現機構と、前記口の中心の直下に配置され、前記口の直下を下向きに引き下げるか又は上向きに押し上げる、口下部動作表現機構と、を備える、ものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、口の直上2カ所、口の直下1カ所、頬2カ所の5カ所を動作させることができるので、口の動作を写実的に表現することができる。また、写実的に口を動かすことができるので、例えば、微笑みから大笑いまで様々な種類の笑顔を表現することも可能となる。
【0020】
前記支持体は、さらに、左右一対の眼球部と、各前記眼球部の正面側に配置され、前記眼球部に沿って前記球状面の一部をカバーし、上下に開閉可能に構成された一対のカバー部材と、備え、前記カバー部材の末端には、目に相当する外皮の切り欠き部の周縁部を載せることが可能な突状部が設けられている、ものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、より写実的な目の開閉を実現することができる。
【0022】
前記眼球の直下に左右一対に配置され、前記目に相当する外皮部分を下方向に引き下げるか又は上方向に押し上げる、一対の目下動作表現機構と、を備えるものであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、目の周りの動作をより写実的に表現することができる。
【0024】
前記支持体は、さらに、前記支持体の額に相当する領域に額部動作表現機構を備え、前記額部動作表現機構は、前記外皮の額に相当する領域の内面の一部と面状に接着される額部接着片と、前記額部接着片を保持し、かつ、前記額部接着片を前記支持体形状に沿って上方向に引き上げるか又は下方向に押し下げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の額に相当する領域を前記支持体の形状に沿って上方向に引き上げるか又は下方向に押し下げるよう弾性変形させる、額部接着片変位部材と、を備えるものであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、額部を上方へと引き上げることにより、併せて眉などを引き上げることができ、眉から額にかけての自然な動きを表現することができる。
【0026】
また、本発明は、ロボット頭部装置を備えたロボットとしても観念することができる。すなわち、本発明に係るロボットは、頭部形状の支持体に弾性素材から成る外皮を被覆することにより構成されるロボット頭部装置を備えたロボットであって、前記支持体は、前記支持体の頬に相当する領域に左右一対の頬部動作表現機構を備え、前記頬部動作表現機構は、それぞれ、前記外皮の頬に相当する領域の内面の一部と面状に接着される頬部接着片と、前記頬部接着片を保持し、かつ、前記頬部接着片を前記支持体の側面方向に引き上げるような軌道で変位させ、それにより、前記外皮の頬に相当する領域を前記支持体の側面方向に引き上げるよう弾性変形させる、頬部接着片変位部材と、を備え、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材に対して回動自在に保持されており、それにより、前記頬部接着片は、前記頬部接着片変位部材による変位に伴って従動的に回動する、ものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るロボットによれば、写実的な表情を表出可能なロボット頭部装置、及び、当該ロボット頭部装置を備えたロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、ロボット頭部の外観斜視図である。
図2図2は、頭部支持体の外観斜視図(その1)である。
図3図3は、頭部支持体の外観斜視図(その2)である。
図4図4は、頭部支持体の外観斜視図(その3)である。
図5図5は、電気的全体構成図である。
図6図6は、動作説明図(斜視図)である。
図7図7は、動作説明図(正面図)である。
図8図8は、瞼に関する構造説明図である。
図9図9は、各動作片の動作概略図である。
図10図10は、頬部動作片の動作図である。
図11図11は、表情についての説明図(その1)である。
図12図12は、表情についての説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るロボット頭部装置又は当該ロボット頭部装置を備えたロボットの実施の一形態を、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0030】
<1.構成>
<1.1 外皮と支持体の構成>
図1は、ロボット頭部500の外観斜視図である。同図から明らかな通り、ロボット頭部500は、人間の頭部を模した外観を有している。ロボット頭部500は、後述の頭部支持体700の上に所定の弾性を有するシリコン製の外皮600を被せることにより構成されている。外皮600は、左右の眼部601L、601R、左右の耳部605L、605R(図示せず)を有しており、その前面には鼻部604と口部602とが設けられている。左右の眼部601L、601R及び口部602には、その開閉を許容するよう、それぞれ適当な切り込みが設けられている。
【0031】
図2は、ロボット頭部500内で外皮600を支持する頭部支持体700の外観斜視図である。同図において、斜線で示される領域は、外皮600を被せる際に接着剤を塗布して外皮600の内面側と接着される領域を表している。本実施形態においては、まず、頭部支持体700の斜線の表面領域に接着剤を塗布し、その接着剤が固化するより前に、外皮600を被せて位置合わせを行うことにより、外皮600と頭部支持体700とが固定される。
【0032】
外皮600は、頭部支持体700の前面側乃至側面側を覆いおよその頭部形状を形成する略半球状の外殻体71と、頭部支持体700の前面中央部に配置され鼻の形状を模して前方へと突出した形状を有する鼻部支持体73により支持されている。外殻体71の額から頭頂部にかけての領域には、その曲面に沿って略長方形の開口部710が設けられている。外殻体71及び鼻部支持体73はいずれも所定の構造部材へと固定されており、眼、頬、額及び口の周辺に相当する領域を除いた領域をおよそ被覆している。
【0033】
外殻体71の額から頭頂部にかけて設けられた開口部710の内部には、その曲面に沿って上下動可能なように配置され、外皮と接着される略長方形の額部接着片10が設けられている。
【0034】
ロボット頭部500の眼の位置に相当する領域には、左右一対に、球状の眼球部21L、21Rと、前記眼球部21L、21Rに沿って前記球状面の略上半分をカバーし上下に開閉可能に構成された瞼部材20L、20Rとが設けられている。瞼部材20L、20Rの下端には、外皮600の眼部601L、601Rの切欠き部の周縁部を載せることが可能な程度に前方へと突出した突状部201L、201Rが設けられている。
【0035】
ロボット頭部500の眼に相当する領域の直下には、左右一対に、上下に変位可能に構成された小片である眼下接着片30L、30Rが設けられている。眼下接着片30L、30Rは、外皮600の眼部601L、601Rの直下の背面に接着され、外皮600の左右の眼部601L、601Rの直下部分を略垂直方向に押し上げたり引き下げたりするよう動作する。
【0036】
ロボット頭部500の頬に相当する領域には、左右一対に、変位可能に構成された小片である頬部接着片50L、50Rが設けられている。後述するように、頬部接着片50L、50Rは、外皮600の頬部の背面に接着され、外皮600の頬部を左右の側面方向に引き上げたり中心方向へと押し下げたりするように変位する。
【0037】
ロボット頭部500の口部602の直上領域には、左右一対に、口直上部接着片40L、40Rが設けられている。後述するように、口直上部接着片40L、40Rは、外皮600の口部602の直上領域の背面に接着され、口部602を左右の側面方向に引き上げたり、中心方向へと押し下げたりするように変位する。
【0038】
ロボット頭部500の口部602の直下領域には、変位可能に構成された小片である口直下部接着片60が設けられている。後述するように、口直下部接着片60は、外皮600の口部602の直下領域の背面に接着され、口部602を下から押し上げたり引き下げたりするように変位する。
【0039】
ロボット頭部500の最下端には、ロボット頭部500の輪郭を形成する略U字形状の部材である顎部接着片72が設けられている。後述するように、顎部接着片72は、外皮600の顎の輪郭に相当する領域の背面に接着され、顎の付け根部分に設けられたモータを動作させることで、顎の付け根を起点として口部602の開閉動作を実現するよう変位する。
【0040】
次に、図3及び図4を参照しつつ、頭部支持体700に設けられた各モータと各動作部との連結関係について説明する。
【0041】
図3は、頭部支持体700の外観斜視図(その2)であり、図2の頭部支持体700から外殻体71を取り除いた状態の外観斜視図である。同図から明らかな通り、動作する各接着片は、頭部側面に設けられた7つのモータ(101L、101R~107L、107R)の出力部と接続されている。なお、このような構成によれば、モータ等の動力源を変位する部材の周辺に配置する必要がなく、動作部をコンパクトにまとめることができる。
【0042】
左右一対の瞼部材20L、20Rは、それぞれ、左右一対のモータ101L、101Rへと接続されている。具体的には、瞼部材20L、20Rの上端の小孔と、第1のモータ101L、101Rの回転出力部に接続された回転伝達部品23L、23Rの先端とは、棒部材22L、22Rを介して接続されている。このとき、瞼部材20L、20Rは、左右からそれぞれ回動自在に支持されているので、モータの回転に伴なって、瞼部材20L、20Rは、眼球部21L,21Rの被覆の割合を変えるよう上下動する。
【0043】
眼下接着片30L、30Rは、動力伝達部材31L、31Rを介して、図示しないモータと接続されており、外皮600の眼部601L、601Rの直下部分を上下動させるよう変位する。
【0044】
頬部接着片50L、50Rは、ワイヤ51L、51Rを介して、左右一対のモータ105L、105Rと接続されている。具体的には、頬部接着片50L、50Rに設けられた貫通孔に通されたワイヤ51L、51Rは、U字状に折り返してモータ105L、105Rの出力部に接続された回転伝達部品55L、55Rの先端へと接続されている。このとき、ワイヤ51L、51Rは、ガイドパイプ53L、53Rに挿通されてその経路が定義され、ガイドパイプ53L、53Rは、その両端をガイドパイプ固定部52L、52R、54L、54Rにより固定されている。また、後述するように、頬部接着片50L、50Rは回動可能にU字状のワイヤ51L、51RのU字底辺部に係合している。このような構成により、モータ105L、105Rの回転に伴なって、頬部接着片50L、50Rは、所定の軌道で、側面方向に引き上げられたり、中心方向へと押し下げられたりするよう変位する。
【0045】
口直上部接着片40L、40Rは、ワイヤ41L、41Rを介して、左右一対のモータ104L、104Rと接続されている。具体的には、口直上部接着片40L、40Rに設けられた貫通孔に通されたワイヤ41L、41Rは、U字状に折り返してモータ104L、104Rの出力部に接続された回転伝達部品45L、45Rの先端へと接続されている。このとき、ワイヤ41L、41Rは、ガイドパイプ43L、43Rに挿通されてその経路が定義され、ガイドパイプ43L、43Rは、その両端をガイドパイプ固定部42L、42R、44L、44Rにより固定されている。このような構成により、モータ104L、104Rの回転に伴なって、口直上部接着片40L、40Rは、所定の軌道で、側面方向に引き上げられたり、中心方向へと押し下げられたりするよう変位する。
【0046】
口直下部接着片60は、ワイヤ61を介して、モータ107Lと接続されている。具体的には、口直下部接着片60に設けられた貫通孔に通されたワイヤ61は、U字状に折り返してモータ107Lの出力部に接続された回転伝達部品65Lの先端へと接続されている。このような構成により、モータ107Lの回転に伴なって、口直下部接着片60は、所定の軌道で、上方向に押し上げられたり、下方向へと引き下げられたりするよう変位する。
【0047】
顎部接着片72は、顎の付け根の図示しないモータにより下顎の開閉を行うよう駆動される。
【0048】
図4は、頭部支持体の外観斜視図(その3)であり、具体的には、額部接着片10を後方から観察した斜視図である。同図から明らかな通り、額部接着片10は、モータ103Lと接続されている。具体的には、頭部接着片10の背面に設けられた突部101とスライド部材11の端面とは接合されている。スライド部材11を向かい合う左右の基板90L、90Rの間に挟持した上で、各基板90L、90Rの長孔部901L、901R、902L、902Rと、2つの孔部111、112とを位置合わせしてボルトを挿通することにより、スライド部材11を上下にスライド可能に構成することができる。一方、スライド部材11に設けられた小孔にはワイヤ12がU字状に挿通され、ワイヤ12は、前後をガイドパイプ固定部13、15に固定され下方から支持部材91により支持されたガイドパイプ14へと挿通されている。また、ワイヤ12の端部は、モータ103Lの出力部の回転伝達部品16の先端と連結されている。このような構成により、モータ103Lの回転に伴なって、額部接着片10を上下に変位させることができる。
【0049】
<1.2 電気的構成>
図5は、ロボット頭部500を動作させるための電気的全体構成図である。同図から明らかな通り、頭部支持体700に搭載された基板750は、パーソナルコンピュータ(PC)等から成る情報処理装置300と接続されている。
【0050】
情報処理装置300は、制御部301、通信部302、入出力部303、表示出力部304、音声出力部305及び記憶部306とを備え、それらは互いにバス等介して接続されている。制御部301は、CPU等の演算装置であり各種プログラムの実行処理を行う。通信部302は、無線又は有線通信を行うための通信ユニットである。入出力部303は、外部装置との入出力処理を行うものである。表示出力部304は、図示しないディスプレイの間に介在して表示出力処理を行うものである。音声出力部305は、図示しないスピーカの間に介在して音声出力処理を行うものである。記憶部306は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク等から成り、プログラム又はデータの記憶を行うものである。
【0051】
基板750は、入出力部751、通信部752、制御部753、記憶部754、及び駆動制御部755とを搭載しており、それらは互いにバス等を介して接続されている。入出力部751は、外部装置との間の信号の入出力処理を行うものである。通信部752は、無線又は有線通信を行うための通信ユニットである。制御部753は、MPU等の演算装置であり各種プログラムの実行処理を行う。記憶部754は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク等から成り、プログラム又はデータの記憶を行うものである。駆動制御部は、制御部753からの指令に基づき、接続される第1~第7の左右のモータ101L、101R~107L、107Rの駆動制御を行う。
【0052】
すなわち、情報処理装置300の制御部301からロボットの表情に関する指令信号が基板750へと送信されると、当該指令信号を受けて、制御部753において各モータ101L、101R~107L、107Rへの指令信号が生成され、当該指令信号を受けて、駆動制御部により各モータ101L、101R~107L、107Rが制御される。すなわち、この各モータ101L、101R~107L、107Rの作動により表情が形成される。
【0053】
<2.動作>
<2.1 動作箇所の配置>
図6及び図7を参照しつつ、頭部支持体700の動作箇所の配置について説明する。図6は、頭部支持体700の動作説明図(斜視図)である。図7は、頭部支持体700の動作説明図(正面図)である。
【0054】
頭部支持体700の額部には、一カ所の動作部が設けられている。すなわち、モータの回転に伴なって、頭部支持体700の額部中心に設けられた略長方形の額部接着片10が矢印の通り上下に変位する。
【0055】
頭部支持体700の各眼部601L、601R周辺には、二カ所の動作部が設けられている。すなわち、頭部支持体700の眼部の上下には、その直上部に瞼部材20L、20R、その直下部に眼下接着片30L、30Rが設けられており、連結される各モータの回転に伴なって、それぞれ眼を開閉するよう矢印の通り上下動する。
【0056】
頭部支持体700の口部602周辺には、五カ所の動作部が設けられている。すなわち、口部602の直上には、左右一対の口直上部接着片40L、40R、口部602の両脇から頬部にかけての領域には、左右一対の頬部接着片50L、50R、及び口部602の直下には、口直下部接着片60が設けられている。各モータの回転に伴なって、口直上部接着片40L、40Rは、側面方向に引き上げられたり、中心方向へと押し下げられたりするよう変位する。また、頬部接着片50L、50Rは、各モータの回転に伴なって、側面方向に引き上げられたり、中心方向へと押し下げられたりするよう変位する。さらに、口直下部接着片60は、各モータの回転に伴なって、矢印の通り、上方向に押し上げられたり、下方向へと引き下げられたりするよう変位する。
【0057】
顎部接着片72の付け根には、一カ所の動作部が設けられている。すなわち、顎部接着片72の付け根には、図示しないモータが配置されており、顎部接着片72は、図6のA軸を中心として回転して下顎に相当する部分を開閉させる。
【0058】
なお、いずれの矢印もおよその軌道を示すものであって、その変位量を示すものではない点に注意されたい。
【0059】
<2.2 瞼部材の動作>
図8は、瞼部材21L、21Rに関する構造説明図である。同図においては、頭部支持体700上に外皮600が接着されている。同図から明らかな通り、瞼部材20L、20Rの下端部には、前方へと突出した突状部201L、201Rが設けられている。当該突状部201L、201Rには、外皮600の眼部602の切欠きの周縁部が載せられるか又は覆い被される。従って、瞼部材20L、20Rを上下動させることにより、眼部602の切欠きの周縁部がそれに伴って上下動する。
【0060】
このような構成によれば、写実的な目の開閉を実現することができる。
【0061】
<2.3 動作片の基本動作>
図9は、口直上部接着片40L、40R、及び、頬部接着片50L、50Rの基本的構造を示した動作概略図であり、例示的に頬部接着片50Lが示されている。同図から明らかな通り、頬部接着片50Lに設けられた貫通孔に通された金属製のワイヤ51Lは、U字状に折り返してモータ105Lの出力部に接続された回転伝達部品55Lの先端へと接続されている。このとき、ワイヤ51Lは、ガイドパイプ53Lに挿通されてその経路が定義され、ガイドパイプ53Lは、その両端をガイドパイプ固定部52L、54Lにより固定されている。
【0062】
このようにワイヤ51LのU字の底辺に相当する部分に頬部接着片50Lを設けることで、頬部接着片50Lを実質的に2本のワイヤ51Lで支持することができるので、外皮600の弾性に基づく反力等にも負けず、より安定した軌道で頬部接着片50Lを変位させることができる。
【0063】
また、このような構成によれば、モータ等の動力源を変位する部材の周辺に配置する必要がなく、動作源をコンパクトにまとめて適切に配置することができる。
【0064】
<2.4 頬部接着片の動作>
本実施形態においては、頬部接着片50L、50Rのみワイヤ51L、51Rに対して回動自在に支持されおり、その他の接着片(40L、40R、60)はワイヤに対して回動不能に固定されている。
【0065】
図10は、頬部接着片50L、50Rの動作説明図である。
【0066】
図10(a)は、頬部接着片50Lの基本的動作について示す斜視図である。同図から明らかな通り、ワイヤ51Lが挿通された頬部接着片50Lは、外皮600が接着されない状態においては、その大面積面を外皮600におよそ沿わせる向きで、口部602の内部に配置される歯列部材80におよそ沿うように変位する。
【0067】
図10(b)は、外皮600を頬部接着片50Lに接着した場合の動作前後の状態説明図である。同図から明らかな通り、変位開始時点においては、頬部接着片50Lは、外皮600の内面に沿って配置されている。しかしながら、一定程度変位が進むと、頬部接着片50Lは、外皮600の内面と接着されていることにより、ワイヤ51Lに対して従動的に回動する。このまま、さらに変位が進むと、外皮600がさらに弾性変形していくこととなる。
【0068】
すなわち、このような構成によれば、頬にしわが寄るような三次元的に自然な頬の動きを表現することができる。そのため、例えば、笑顔などの表情を表現する際の頬の動きを三次元的により写実的に表現することができる。
【0069】
<2.5 表情の表出動作>
続いて、図11を参照しつつ、ロボット頭部500を用いた段階的な笑顔の表現について説明する。なお、表情に関する制御指令は前述の情報処理装置300等を介して提供される。
【0070】
初期状態において、同図上段の表情(表情A)が提示されている。このとき、左右一対の口直上部接着片40L、40R、左右一対の頬部接着片50L、50R、口直下部接着片60、及び、顎部接着片72は、それぞれ破線の位置に配置されている。
【0071】
同表情(表情A)において、頬部接着片50L、50Rを矢印の側面方向へとそれぞれ引き上げることで頬に皺が寄った微笑となる(同図下段左の表情B)。
【0072】
同表情(表情B)において、さらに、口直上部接着片40L、40Rを矢印の方向に引き上げると共に、口直下部接着片60を矢印の方向へと引き下げることにより、口部602内の歯列部材80が見えるような笑顔となる(同図下段中央の表情C)。
【0073】
同表情(表情C)において、さらに、顎部接着片72を下方向へと開くことで、口を大きく開けた笑顔となる(同図下段右の表情D)。
【0074】
すなわち、このような構成によれば、口の直上2カ所、口の直下1カ所、頬2カ所の5カ所を動作させることができるので、口の動作を写実的に表現することができる。また、例えば、微笑みから大笑いまで様々な種類の笑顔を表現することも可能となる。
【0075】
なお、本実施形態では、段階的に笑顔を作るように記載したが、このような形態に限定されず、中間表情を設けずに各表情をすぐに生成してもよいことは勿論である。
【0076】
次に、図12を参照しつつ、ロボット頭部500を用いた驚きの表情の表現について説明する。
【0077】
初期状態においては、同図左側の表情(表情A)が提示されている。このとき、左右一対の眼下接着片30L、30R及び額部接着片10とは図の破線の位置に配置されている。また、同図においては、左右一対の眉部605L、605Rが、外皮600の眼部601L、601Rの直上に設けられている。
【0078】
同状態(表情A)において、眼下接着片30L、30Rをそれぞれ矢印の通り下に引き下げ、額部接着片10を矢印の通り情報に引き上げると、眼部601L、601Rが見開かれた状態になると共に額が弾性変形して眉が上がることとなる。
【0079】
このような構成によれば、額部を上方へと引き上げることにより、併せて眉などを引き上げることができ、眉から額にかけての自然な動きを表現することができる。これにより、例えば、自然な驚いた表情等を実現することができる。
【0080】
<3.変形例>
上述の実施形態では、接着片の変位機構として、ワイヤを用いた駆動機構について説明した。しかしながら、本発明はそのような構成に限定されない。従って、既知の種々の駆動方法による変位機構が採用可能である。
【0081】
上述の実施形態では、人間の頭部を模した例について説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、例えば、動物やキャラクタ、空想上の生き物など他の種々の形状を採用してもよいことは勿論である。
【0082】
上述の実施形態では、ロボット頭部のみについて説明したが、本発明はそのような構成に限定されない。従って、例えば、ロボット頭部に対してさらに首から下の装置を取り付け、四肢を備えたロボット等として構成してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、アンドロイド等のロボットを製造等する産業等にて利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
500 ロボット頭部
600 外皮
700 頭部支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12