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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】引戸等の移動物体の自動閉止装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E05F1/16 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018241415
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020101047
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000205476
【氏名又は名称】大阪金具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】南 卓司
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-186987(JP,A)
【文献】特開2008-223456(JP,A)
【文献】特開2007-160079(JP,A)
【文献】特開2006-336242(JP,A)
【文献】特開平08-038281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0369548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 - 13/04
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸等の移動物体及び固定側の一方に配設されるスライダ、該スライダを案内するガイド部材及びスライダを付勢するばねを備えた第1部材と、他方に配設されるトリガーを備えた第2部材とからなる引戸等の移動物体の自動閉止装置において、前記移動物体が移動することによって、第1部材が、スライダにトリガーが最初に当接したときに、スライダとガイド部材とが一時的に係止されて移動物体が停止するとともに該移動物体が停止することによって、前記スライダとガイド部材との一時的な係止状態が解除されるようにするための、スライダの第1突起にばねの付勢力を受けて突出するように配設される押圧片と、押圧片にトリガーが当接したときに、押圧片の先端に形成した尖鋭部によって側方に押し出されるように付勢されるボールと、押し出されたボールが入り込むガイド部材に形成された凹部とからなる係止機構を備えてなることを特徴とする引戸等の移動物体の自動閉止装置。
【請求項2】
前記ガイド部材が、スライダを挟んで平行に位置する2枚の板状片からなり、該板状片にガイド溝を形成し、該ガイド溝に沿って移動する2本のガイド軸をスライダに両端をかしめて設けることによって、該スライダを案内するようにしてなることを特徴とする請求項1に記載の引戸等の移動物体の自動閉止装置。
【請求項3】
前記第2部材が、トリガーを付勢するばねを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の引戸等の移動物体の自動閉止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸、引き出し等の摺動して移動する物体の自動閉止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸、引き出し等の摺動して移動する物体(本明細書において、「移動物体」という。)を閉止する際に、移動物体に加えた力が大きすぎた場合、戸枠等の固定側に移動物体が衝突して衝撃音が発生したり、指を挟んだり、跳ね返って完全に閉止できないことがあった。
逆に移動物体に加える力が小さすぎた場合、完全に移動物体が閉まらずに途中で止まってしまうことがあった。
【0003】
このような問題に対処すべく、移動物体を所定の開放位置から閉止位置まで自動的に閉じるようにした移動物体の自動閉止装置が提案され、実用化されている(特許文献1~2参照。)。
この種の移動物体の自動閉止装置は、ばねとダンパーとを併用することによって、移動物体の急激な閉じ動作を防止するとともに、移動物体を閉止位置まで自動的に閉じるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-63767号公報
【文献】特開2009-79392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の移動物体の自動閉止装置は、ダンパーの力が大きくなるため、移動物体を開けるときに大きな力が必要となるほか、装置の製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の移動物体の自動閉止装置が有する問題点に鑑み、移動物体を開けるときに大きな力が必要となるとともに、装置の製造コストが高くなる要因であるダンパーを用いることなく、移動物体の急激な閉じ動作を防止するとともに、移動物体を閉止位置まで自動的に閉じるようにすることができる引戸等の移動物体の自動閉止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置は、引戸等の移動物体及び固定側の一方に配設されるスライダ、該スライダを案内するガイド部材及びスライダを付勢するばねを備えた第1部材と、他方に配設されるトリガーを備えた第2部材とからなる引戸等の移動物体の自動閉止装置において、前記第1部材が、スライダにトリガーが最初に当接したときに、スライダとガイド部材とが一時的に係止され、非当接状態になったときに係止状態が解除される係止機構を備えてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記ガイド部材が、スライダを挟んで平行に位置する2枚の板状片からなり、該板状片にガイド溝を形成し、該ガイド溝に沿って移動する2本のガイド軸をスライダに両端をかしめて設けることによって、該スライダを案内するようにしてなるようにすることができる。
【0009】
また、前記第2部材が、トリガーを付勢するばねを備えてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置によれば、引戸等の移動物体及び固定側の一方に配設されるスライダ、該スライダを案内するガイド部材及びスライダを付勢するばねを備えた第1部材と、他方に配設されるトリガーを備えた第2部材とからなる引戸等の移動物体の自動閉止装置において、前記第1部材が、スライダにトリガーが最初に当接したときに、スライダとガイド部材とが一時的に係止され、非当接状態になったときに係止状態が解除される係止機構を備えてなるようにすることで、ダンパーを用いないようにするとともに、ばねの付勢力を移動物体を閉止位置まで自動的に閉じるために必要最小限の大きさに設定することによって、移動物体を閉止位置まで自動的に閉じるようにしながら、移動物体を開けるときに大きな力を必要とせず、装置の製造コストを低廉にすることができる。
【0011】
また、前記ガイド部材が、スライダを挟んで平行に位置する2枚の板状片からなり、該板状片にガイド溝を形成し、該ガイド溝に沿って移動する2本のガイド軸をスライダに両端をかしめて設けることによって、該スライダを案内するようにしてなるようにすることにより、ガイド部材を構成する2枚の板状片の間隔をガイド軸によって保持することでガイド部材の変形を防止し、安定してスライダを案内するようにすることができる。
【0012】
また、前記第2部材が、トリガーを付勢するばねを備えてなるようにすることにより、スライダにトリガーが当接したときの衝撃を緩衝することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置の一実施例の引戸を開状態から閉状態にするときの正面図である。
図2】同引戸等の移動物体の自動閉止装置の引戸が閉状態のときの正面図である。平面図である。
図3】同引戸等の移動物体の自動閉止装置のスライダの作動状態を示す正面図である。
図4】同引戸等の移動物体の自動閉止装置のスライダと係止機構の凹部との位置関係を示す正面図である。
図5】同引戸等の移動物体の自動閉止装置のスライダ及び係止機構の作動状態を示す断面図で、(a)は係止機構が非係止状態のとき、(b)は係止機構が係止状態のときを示す。
図6】同引戸等の移動物体の自動閉止装置の第2部材の本体を示す説明図である。
図7】同引戸等の移動物体の自動閉止装置の第2部材のトリガーを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図7に、本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置の一実施例を示す。
この引戸等の移動物体の自動閉止装置は、引戸等の移動物体D及び固定側Fの一方、例えば、固定側である戸枠の上框Fに配設されるスライダ11、該スライダ11を案内するガイド部材12及びスライダ11を付勢するばね13を備えた第1部材1と、他方、例えば、移動物体である引戸Dに配設されるトリガー21を備えた第2部材2とからなり、第1部材1が、スライダ11にトリガー21が最初に当接したときに、スライダ11とガイド部材12とが一時的に係止され、非当接状態になったときに係止状態が解除される係止機構14を備えるようにしている。
【0016】
スライダ11は、トリガー21が当接する第1突起11a及び第2突起11bを、第1突起11aと第2突起11bの間にトリガー21が入り込むことができる間隔をあけて備えるようにしている。
【0017】
ガイド部材12は、両端部をスペーサ(図示省略)を介して固定することで、スライダ11を挟んで平行に位置する2枚の板状片12aからなり、板状片12aにガイド溝12bをそれぞれ形成し、ガイド溝12bに沿って移動する2本のガイド軸15をスライダ11に両端をかしめて設けることによって、スライダ11を案内するようにしている。
これにより、ガイド部材12を構成する2枚の板状片12aの間隔をガイド軸15によって保持することでガイド部材12の変形を防止し、安定してスライダ11を案内するようにすることができる。
【0018】
ガイド溝12bは、直線状をなし、その一端側が湾曲した形状に形成することで、スライダ11を、トリガー21が当接するスライダ11の第1突起11aがガイド部材12から突出し、第2突起11bがガイド部材12内に格納される待機位置(図1及び図3(a))と、第1突起11a及び第2突起11bがガイド部材12から突出する作動位置(図2及び図3(b)~(d))とに位置させることができるようにしている。
【0019】
ばね13は、スライダ11をガイド溝12bの直線状の端部側に引き寄せる方向に付勢するもので、その付勢力を引戸Dを閉止位置まで自動的に閉じるために必要最小限の大きさに設定するようにすることが好ましい。
これにより、引戸Dを開けるときに大きな力を必要としないようにすることができる。
ここで、待機位置(図1及び図3(a))では、ガイド軸15が湾曲した形状に形成されたガイド溝12bに引っ掛かることで、ばね13の付勢力を受けたスライダ11が移動することなく、安定して保持されるようにしている。
【0020】
係止機構14は、待機位置(図1及び図3(a))にあるスライダ11の第1突起11aにトリガー21が最初に当接したときに、スライダ11とガイド部材12とが一時的に係止され、非当接状態になったときに係止状態が解除されるようにするもので、第1突起11aにばね14bの付勢力を受けて突出するように配設される押圧片14aと、押圧片14aにトリガー21が当接したときに、押圧片14aの先端に形成した尖鋭部によって側方に押し出されるように付勢されるボール14cと、押し出されたボール14cが入り込むガイド部材12を構成する板状片12aに形成された凹部14dとからなるようにしている。
ここで、ボール14cが入り込む凹部14dを形成する位置、すなわち、スライダ11とガイド部材12とが一時的に係止される位置は、スライダ11の第1突起11aにトリガー21が最初に当接する位置の近傍に設定することができるが、本実施例においては、待機位置(図1及び図3(a))にあるスライダ11の第1突起11aの押圧片14aにトリガー21が当接することによって、スライダ11がガイド部材12から引き出され(図3(b))、ガイド溝12bの湾曲した部分から直線状の部分に移行する位置(図3(c))に形成するようにしている。
【0021】
第2部材2は、トリガー21を、スライダ11の第1突起11aの押圧片14aに向けて付勢するばね22を備えるようにしている。
これにより、スライダ11にトリガー21が当接したときの衝撃を緩衝することができる。
【0022】
次に、この引戸等の移動物体の自動閉止装置の作動について説明する。
まず、引戸Dを開状態から閉状態にするときの作動について説明する。
引戸Dを開状態から閉じる方向に移動させると、待機位置(図1及び図3(a))にあるスライダ11の第1突起11a(係止機構14の押圧片14a)にトリガー21が当接し、スライダ11がガイド部材12から引き出され(図3(b))、ガイド溝12bの湾曲した部分から直線状の部分に移行する位置(図3(c))まで移動する。
スライダ11の第1突起11aにトリガー21が当接したときの衝撃は、第2部材2に備えた、トリガー21を、スライダ11の第1突起11aの押圧片14aに向けて付勢するばね22によって緩衝することができる。
【0023】
スライダ11がガイド溝12bの湾曲した部分から直線状の部分に移行する位置(図3(c))まで移動したときに、係止機構14の押圧片14aが、トリガー21から受ける押圧力によってばね14bの付勢力に抗して押し込まれ、押圧片14aの先端部に位置するボール14cが、押圧片14aの先端に形成した尖鋭部によって側方に押し出され、ガイド部材12を構成する板状片12aに形成された凹部14dに入り込むことで、スライダ11とガイド部材12とが一時的に係止されることで、引戸Dは停止する。
これにより、引戸Dを閉じる方向に加えた力が大きすぎた場合でも、戸枠等の固定側に引戸Dが衝突して衝撃音が発生したり、指を挟んだり、跳ね返って完全に閉止できないことを防止することができる。
【0024】
引戸Dが停止すると、その反動及び係止機構14のばね14bの付勢力の作用によって、押し込まれた押圧片14aが元の状態に復帰し、スライダ11とガイド部材12との一時的な係止状態が解除され、スライダ11は、ばね13の付勢力によって、ガイド溝12bの直線状の端部側に引き寄せられるように移動する(図3(d))。
このとき、トリガー21は、スライダ11に備えた第1突起11aと第2突起11bの間に入り込むようになっているため、スライダ11の移動に合わせて、第2突起11bに当接することで、引戸Dを閉じる方向に移動させることができるようにしている。
【0025】
ここで、第1部材1の戸枠の上框Fに配設する位置は、図2に示す本実施例のように、スライダ11がガイド溝12bの直線状の端部に達した状態で、トリガー21と第2突起11bの当接状態が解除されるようにする(引戸Dを慣性力で閉状態まで移動させるようにする。)ほか、トリガー21と第2突起11bの当接状態が維持されるようにしたり(引戸Dをばね13の付勢力で閉状態まで移動させるようにする。)、スライダ11がガイド溝12bの直線状の端部に達する前に、引戸Dが閉状態となり、トリガー21と第2突起11bの当接状態が維持されるようにしたりする(引戸Dにばね13の付勢力がかかった状態にする。)ことができる。
【0026】
次に、引戸Dを閉状態から開状態にするときの作動について説明する。
引戸Dを閉状態から開く方向に移動させると、作動位置(図2)にあるスライダ11の第2突起11bにトリガー21が当接し、スライダ11がガイド溝12bの直線状の部分から湾曲した部分(待機位置(図1及び図3(a)))まで移動し、トリガー21と第2突起11bとの当接状態が解除される。
このとき、第1部材1のばね13の付勢力を引戸Dを閉止位置まで自動的に閉じるために必要最小限の大きさに設定することによって、引戸Dを開けるときに大きな力を必要としないようにすることができる。
【0027】
そして、トリガー21と第2突起11bとの当接状態が解除されることで、スライダ11は、待機位置(図1及び図3(a))で安定して保持され、引戸Dは、自由に開く方向に移動させることができる。
【0028】
以下、同様の作動で、引戸Dを開状態から閉状態に、そして、閉状態から開状態にすることができる。
【0029】
この引戸等の移動物体の自動閉止装置は、ダンパーを用いないようにするとともに、第1部材1のばね13の付勢力を移動物体である引戸Dを閉止位置まで自動的に閉じるために必要最小限の大きさに設定することによって、引戸Dを閉止位置まで自動的に閉じるようにしながら、引戸Dを開けるときに大きな力を必要とせず、装置の製造コストを低廉にすることができる。
【0030】
以上、本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、例えば、第1部材1を移動物体である引戸Dに配設し、第2部材2を固定側である戸枠の上框Fに配設するようにしたり、引戸D以外の引き出し等の摺動して移動する物体に適用するものとする等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の引戸等の移動物体の自動閉止装置は、移動物体を開けるときに大きな力が必要となるとともに、装置の製造コストが高くなる要因であるダンパーを用いることなく、移動物体の急激な閉じ動作を防止するとともに、移動物体を閉止位置まで自動的に閉じるようにすることができる特性を有していることから、引戸、引き出し等の摺動して移動する物体の自動閉止装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
D 引戸(移動物体)
F 戸枠の上框(固定側)
1 第1部材
11 スライダ
11a 第1突起
11b 第2突起
12 ガイド部材
12a 板状片
12b ガイド溝
13 ばね
14 係止機構
14a 押圧片
14b ばね
14c ボール
14d 凹部
2 第2部材
21 トリガー
22 ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7