IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミヤコシの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】インクジェット印字装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20221024BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221024BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221024BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/175 111
B41J2/175 121
B41J2/175 501
B41J2/175 171
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019048805
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147003
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】井沢 秀男
(72)【発明者】
【氏名】板橋 渡
(72)【発明者】
【氏名】菅原 瑞稀
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182725(JP,A)
【文献】特開2013-010219(JP,A)
【文献】特開2014-177070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0273063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを循環させる循環流路を有するインクジェット印字装置であって、
前記インクを吐出させるためのノズルが形成された複数の印字ヘッド、及び、該複数の印字ヘッドに分配する前記インクを貯留するための分配タンク、を有する印字部と、
前記インクを貯留するためのバッファタンクと、
前記インクの温度を調整するための熱交換器と、
前記インクの流路を分岐させるためのマニホールドと、
前記バッファタンク、前記熱交換器、及び、前記マニホールドを順次連結する主流通管と、
前記マニホールド及び前記バッファタンクを連結する副流通管と、
前記マニホールド及び前記印字部を連結する供給流通管と、
前記印字部及び前記バッファタンクを連結する回収流通管と、
前記副流通管、前記供給流通管及び前記回収流通管にそれぞれ設けられ、前記インクを流通させるためのポンプと、
を備え、
前記主流通管及び前記副流通管でインクを循環させる第1循環流路と、
前記主流通管、前記供給流通管及び前記回収流通管でインクを循環させる第2循環流路と、
が形成されており、
前記分配タンクが、第1分配タンクと、第2分配タンクとからなり、
前記第1分配タンクが前記印字ヘッドに供給する前記インクを貯留し、前記第2分配タンクが前記印字ヘッドから回収した前記インクを貯留するものであり、
前記回収流通管が、
前記印字部の第1分配タンク及び前記バッファタンクを連結し、前記第1分配タンクから前記バッファタンクへ前記インクを流通させる第1回収流通管と、
前記印字部の第2分配タンク及び前記バッファタンクを連結し、前記第2分配タンクから前記バッファタンクへ前記インクを流通させる第2回収流通管と、
からなり、
前記第1回収流通管及び前記第2回収流通管にそれぞれ、前記インクを流通させるためのポンプが設けられており、
前記主流通管、前記副流通管、前記供給流通管、前記第1回収流通管及び前記第2回収流通管が、それぞれ互いに独立したものであるインクジェット印字装置。
【請求項2】
前記第1分配タンク及び前記第2分配タンクにはそれぞれ、圧力制御機構が取り付けられており、
前記圧力制御機構による圧力調整により、前記第1分配タンクが前記インクを前記印字ヘッドに供給し、前記第2分配タンクが前記インクを前記印字ヘッドから回収するものである請求項1記載のインクジェット印字装置。
【請求項3】
前記第1分配タンクと前記第2分配タンクとがバイパス管により連結されており、
前記第1分配タンクから前記第2分配タンクに直接的に前記インクを送流可能となっており、
前記バイパス管が、前記主流通管、前記副流通管、前記供給流通管及び前記回収流通管と互いに独立したものである請求項1又は2記載のインクジェット印字装置。
【請求項4】
前記バイパス管には電磁弁が取り付けられている請求項3記載のインクジェット印字装置。
【請求項5】
前記熱交換器が、前記インクと、水とで熱交換を行うものであり、
前記水の温度がチラー装置により制御されている請求項1~4のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【請求項6】
前記印字部を複数備える請求項1~5のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【請求項7】
前記バッファタンクが、その内部に流入するインクを衝突させるための傾斜部を備える請求項1~6のいずれか1項に記載のインクジェット印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印字装置に関し、更に詳しくは、インクを循環させる循環流路を有するインクジェット印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印字装置においては、印字物の品質を維持する観点から、インクの安定した吐出が極めて重要となっている。
ところが、工業的に用いられるインクジェット印字装置においては、印字を長時間継続すると、装置の発熱等の環境の変化に起因して、インクの温度が変化する場合がある。この場合、インクの粘度も温度と共に変化することになるため、結果として、インクの吐出量が変わり、印字される図柄の濃度が時間と共に変化するというインクの濃度ムラが生じる恐れがある。
また、工業的に用いるか否かを問わず、例えば、ノズル端部のインクが、空気と接触することにより乾燥し、その結果、インク成分の凝集が生じる場合がある。この場合、凝集物がノズルを塞いで、目詰まりを引き起こす原因となる。
【0003】
これに対し、インクの温度を調整し、且つ、インクの凝集を防ぐため、インクを循環させる流路を有するインクジェット印字装置が開発されている。
例えば、インクヘッドと上流タンクと下流タンクとの間を流路接続してインクを循環するためのインク循環経路を形成しており、温度検知手段と温度変更手段とインク循環量変更手段とを具備するインクジェットプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、給紙部と、搬送印刷部と、下流側搬送部と、排紙部と、反転部と、制御部とを備え、搬送印刷部の印刷部が、インクを循環させつつ、画像印刷のためにインクを吐出するものであり、4個の供給部と、4個の循環部と、4個のインクジェットヘッドと、熱交換器とを備えている両面印刷装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、インクジェットヘッドと、第1タンクと、第2タンクと、第1タンク、インクジェットヘッド、および第2タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、循環経路に接続され、インクを貯留する第3タンクと、第1タンクおよび第2タンクを密閉状態とする密閉手段とを備えるインクジェット印刷装置が知られている(例えば、特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-196208号公報
【文献】特開2011-83927号公報
【文献】特開2016-215626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のインクジェットプリンタにおいては、インクヘッド、上流タンク、下流タンクの間のみでインク循環経路(循環流路)を形成しているため、インクの供給源であるインクカートリッジ内でインクの温度変化やインクの凝集等の不具合が生じる恐れがある。そうすると、それが循環経路内に流れ込んだとしても、不具合が解消されず、結果として、インクの濃度ムラやノズルの目詰まりが生じる恐れがある。
また、インクを貯留するための上流タンク及び下流タンクを採用しているため、貯留されるインクの量が多く、温度調整に時間を要するという欠点もある。
【0006】
同様に、特許文献2においては、循環部(上部タンク、下部タンク)、インクジェットヘッドの間のみでインク循環経路(循環流路)を形成しているため、インクの供給源である供給部内でインクの温度変化やインクの凝集等の不具合が生じる恐れがある。
また、インクを貯留するための上部タンク及び下部タンクを採用しているため、貯留されるインクの量が多く、温度調整に時間を要するという欠点がある。
【0007】
特許文献3においては、インクカートリッジが接続された第3タンクが循環経路(循環流路)を形成しているものの、ヒートシンクが第2タンクと第3タンクの間、ヒータが第3タンクと第1タンクの間、の循環経路上でのみ作用する構成となっているので、温度調整に時間がかかるという欠点がある。なお、ヒートシンク又はヒータを採用しているため、設置にスペースを要すると共に、温度の微調整が困難という欠点もある。
また、インクを貯留するための第1タンク、第2タンク及び第3タンクを採用しているため、貯留されるインクの量が多く、温度調整に時間を要するという欠点がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インクの温度変化やインクの凝集を抑制することができ、且つ、インクの温度調整を効率良く行うことができるインクジェット印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、バッファタンクを含めた循環流路を、少なくとも2つ形成することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、(1)インクを循環させる循環流路を有するインクジェット印字装置であって、インクを吐出させるためのノズルが形成された複数の印字ヘッド、及び、複数の印字ヘッドに分配するインクを貯留するための分配タンク、を有する印字部と、インクを貯留するためのバッファタンクと、インクの温度を調整するための熱交換器と、インクの流路を分岐させるためのマニホールドと、バッファタンク、熱交換器、及び、マニホールドを順次連結する主流通管と、マニホールド及びバッファタンクを連結する副流通管と、マニホールド及び印字部を連結する供給流通管と、印字部及びバッファタンクを連結する回収流通管と、副流通管、供給流通管及び回収流通管にそれぞれ設けられ、インクを流通させるためのポンプと、を備え、主流通管及び副流通管でインクを循環させる第1循環流路と、主流通管、供給流通管及び回収流通管でインクを循環させる第2循環流路と、が形成されており、分配タンクが、第1分配タンクと、第2分配タンクとからなり、第1分配タンクが印字ヘッドに供給するインクを貯留し、第2分配タンクが印字ヘッドから回収したインクを貯留するものであり、回収流通管が、印字部の第1分配タンク及びバッファタンクを連結し、第1分配タンクからバッファタンクへインクを流通させる第1回収流通管と、印字部の第2分配タンク及びバッファタンクを連結し、第2分配タンクからバッファタンクへインクを流通させる第2回収流通管と、からなり、第1回収流通管及び第2回収流通管にそれぞれ、インクを流通させるためのポンプが設けられており、主流通管、副流通管、供給流通管、第1回収流通管及び第2回収流通管が、それぞれ互いに独立したものであるインクジェット印字装置に存する。
【0013】
本発明は、()第1分配タンク及び第2分配タンクにはそれぞれ、圧力制御機構が取り付けられており、圧力制御機構による圧力調整により、第1分配タンクがインクを印字ヘッドに供給し、第2分配タンクがインクを印字ヘッドから回収する上記(1)記載のインクジェット印字装置に存する。
【0014】
本発明は、()第1分配タンクと第2分配タンクとがバイパス管により連結されており、第1分配タンクから第2分配タンクに直接的にインクを送流可能となっており、バイパス管が、主流通管、副流通管、供給流通管及び回収流通管と互いに独立したものである上記(1)又は(2)記載のインクジェット印字装置に存する。
【0015】
本発明は、()バイパス管には電磁弁が取り付けられている上記()記載のインクジェット印字装置に存する。
【0016】
本発明は、()熱交換器が、インクと、水とで熱交換を行うものであり、水の温度がチラー装置により制御されている上記(1)~()のいずれか1つに記載のインクジェット印字装置に存する。
【0017】
本発明は、()印字部を複数備える上記(1)~()のいずれか1つに記載のインクジェット印字装置に存する。
本発明は、(7)バッファタンクが、その内部に流入するインクを衝突させるための傾斜部を備える上記(1)~(6)のいずれか1つに記載のインクジェット印字装置に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1循環流路及び第2循環流路が形成されているので、インクの温度変化やインクの凝集を抑制することができ、且つ、インクの温度調整を効率良く行うことができる。
すなわち、第1循環流路においては、主流通管と副流通管とからなるので、比較的流通距離が短く、インクを効率良く循環させることができる。これにより、バッファタンク内のインクの温度変化を防止するだけでなく、バッファタンクに貯留されたインクの温度調整を比較的短時間で行うことができる。また、バッファタンク内でのインクの凝集も抑制することができる。
【0019】
第2循環流路においては、バッファタンク及び熱交換器を経由する主流通管と、供給流通管及び回収流通管とからなるので、バッファタンク内の温度調整されたインクが、再度熱交換器により温度調整されることになる。これにより、ノズルから吐出されるインクは、確実に温度調整され、且つ、凝集が十分に抑制されたものとなる。その結果、インクの濃度ムラやノズルの目詰まりが生じることを十分に防止することが可能となる。
【0020】
本発明のインクジェット印字装置においては、分配タンクを、印字ヘッドに供給するインクを貯留する第1分配タンクと、印字ヘッドから回収するインクを貯留する第2分配タンクとに分けることにより、インクを第1分配タンク、印字ヘッド、第2分配タンクの順で、一方向に流通させることが可能となる。その結果、各分配タンク内でインクが滞留することを抑制できると共に、インクをスムーズに流通させることが可能となる。ちなみに、インクが滞留すると、インクの温度が不均一化し、更にインクの凝集が生じ易い。
また、第1分配タンクからインクを供給することにより、第2分配タンクで回収されたインクが再び印字ヘッドに供給されることを防止することができる。
【0021】
このとき、回収流通管を、第1分配タンク及びバッファタンクを連結する第1回収流通管と、第2分配タンク及びバッファタンクを連結する第2回収流通管とからなるものとすることにより、各分配タンク内で仮にインクが滞留したとしても、当該インクをスムーズに回収することができる。すなわち、各分配タンク内でインクが滞留することをより抑制することができる。
【0022】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1分配タンク及び第2分配タンクにそれぞれ、圧力制御機構が取り付けられている場合、当該圧力制御機構による各分配タンク内の圧力調整により、第1分配タンク内のインクが印字ヘッドに供給され、当該インクの内、印字ヘッドから吐出されないインクは印字ヘッドから第2分配タンク内へ回収される。
このように、各分配タンク間におけるインクの流通を、ポンプによらず、圧力制御機構により行うことにより、インクの流通する量を比較的容易にコントロールすることができる。
【0023】
本発明のインクジェット印字装置においては、第1分配タンクと前記第2分配タンクとをバイパス管により連結することにより、各分配タンク内でインクが滞留することを更に抑制することができる。
このとき、バイパス管に電磁弁を取り付けることにより、バイパス管の開閉をコントロールすることができる。
【0024】
本発明のインクジェット印字装置においては、熱交換器が、インクと、水とで熱交換を行うものを採用することにより、熱交換器の温度ムラが少なく、インクの温度調整を穏便に行うことができる。
なお、インクの温度調整において、ヒータによる加熱では、ヒータに接触しているインクと、ヒータに接触していないインクとで温度差が生じる傾向にある。また、ヒータと接触しているインクは、高温となるため、変質する恐れがある。ちなみに、従来においては、分配タンクにヒータを取り付けて、分配タンク内のインクの温度調整をする方法が知られているが、この場合は、インクの対流が起きにくいため、上記温度差が生じ易い。
それに対し、上記熱交換器を採用することにより、設定温度に制御された水によってインク温度が制御されるので、インクの過熱を防止できる。
また、循環経路に設けることによってインクの温度を均一化することができる。
さらに、水の温度がチラー装置により制御されているので、温度の調整をより正確に行うことができる。
【0025】
本発明のインクジェット印字装置においては、印字部を複数備えることにより、インクの温度変化やインクの凝集を抑制しつつ、効率良く印字を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
図2(a)】図2(a)は、本実施形態に係るインクジェット印字装置における熱交換器の概略を示す側面図である。
図2(b)】図2(b)は、図2(a)の上面図である。
図3図3は、本実施形態に係るインクジェット印字装置における熱交換器及びマニホールドを示す部分透過側面図である。
図4図4は、他の実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
図5図5は、他の実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
図1は、本実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット印字装置100は、印字媒体にインクを付与するための印字部1と、インクを貯留するためのバッファタンク2と、インクの温度を調整するための熱交換器3と、インクの流路を分岐させるためのマニホールド4と、これらを連結する流通管とを備える。
そして、当該流通管は、バッファタンク2、熱交換器3、及び、マニホールド4を順次連結する主流通管51と、マニホールド4及びバッファタンク2を連結する副流通管52と、マニホールド4及び印字部1を連結する供給流通管53aと、印字部1及びバッファタンク2を連結する回収流通管53bとを有する。
【0029】
このように、インクジェット印字装置100においては、主流通管51及び副流通管52でインクを循環させる第1循環流路と、主流通管51、供給流通管53a及び回収流通管53bでインクを循環させる第2循環流路とが形成されている。なお、これらの詳細については、後述する。
インクジェット印字装置100においては、第1循環流路及び第2循環流路が形成されているので、インクの温度変化やインクの凝集を抑制することができ、且つ、インクの温度調整を効率良く行うことができる。
【0030】
なお、本明細書において、流通管、後述する連結管、及び、後述するバイパス管の部材としては、公知のチューブ等が適宜用いられる。なお、これらは、互いに同一のものであっても、異なるものであってもよい。
【0031】
インクジェット印字装置100において、副流通管52、供給流通管53a及び回収流通管53bには、それぞれ、ポンプPが設けられており、これらのポンプPにより、流通管におけるインクの流通が行われる。
一方、印字部1内におけるインクの流通は、後述する圧力制御機構により行われる。
このように、各分配タンク間におけるインクの流通を、ポンプによらず、圧力制御機構により行うので、インクの流通する量を比較的容易にコントロールすることができる。
したがって、インクジェット印字装置において、インクは、ポンプP及び圧力制御機構により流通される。
【0032】
インクジェット印字装置100においては、印字部1の複数の印字ヘッド10のノズルから、順次供給される印字媒体(図示しない)に向けて吐出されるようになっている。
ここで、インクとしては、特に限定されず、市販のものを適宜採用することができる。具体的には、例えば、染料、顔料等の着色剤と、水系溶媒と、必要に応じて添加される公知の添加剤とを含むものが用いられる。
また、印字媒体としては、特に限定されず、市販のものを適宜採用することができる。具体的には、例えば、紙、布帛、不織布、フィルム、金属箔等を採用することができる。なお、これらは、インクを受容するためのインク受容層が、インクを付与される側の表面に設けられていてもよい。
なお、インクが印字された印字媒体は、例えば、乾燥装置により乾燥され、その後、回収される。
【0033】
インクジェット印字装置100において、印字部1は、インクを吐出させるためのノズルが形成された複数の印字ヘッド10、及び、複数の印字ヘッド10に分配するインクを貯留するための分配タンク11、を有する。
また、各印字ヘッド10には、ノズルが形成されており、当該ノズルからインクを吐出可能となっている。
ちなみに、例えば、インクに凝集物が含まれている場合、それがノズルの目詰まりを引き起こす原因となる。
【0034】
印字ヘッド10は、ラインヘッド式となっている。すなわち、インクジェット印字装置100は、固定された印刷ヘッド10が、搬送される印字媒体に印字を行う方式となっている。
ラインヘッド式のインクジェット印字装置100においては、印字が高速で行われるため、インクの目詰まりを防止することにより、歩留まりを大きく向上させることが可能となる。
【0035】
分配タンク11は、第1分配タンク11aと、第2分配タンク11bとからなる。
第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bは、それぞれ、内部に、フロートスイッチFが設けられている。
かかるフロートスイッチFは、各分配タンク11a,11b内のインクの液面の上限位置、適正位置、下限位置の3点を検知することが可能となっている。
各分配タンク11a、11bにおいては、フロートスイッチFが検出したインクの液面の位置に応じて、インクの流入又はインクの流出が行われる。
【0036】
インクジェット印字装置100において、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bには、貯留されたインクの温度を測定するための熱電対が設けられている。これにより、各分配タンク11に貯留されたインクの温度を管理することができる。
なお、かかる温度に基づいて、後述する熱交換器によりインクの温度調整が行われる。
【0037】
第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bは、それぞれ、共通する複数の印字ヘッド10に連結管を介して連結されている。換言すると、各印字ヘッド10は、それぞれ、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bに連結管を介して連結されている。
そして、第1分配タンク11a及び各印字ヘッド10は、対応する連結管を介して内部が直接連通しており、各印字ヘッド10及び第2分配タンク11bは、対応する連結管を介して内部が直接連通している。
【0038】
インクジェット印字装置100においては、第1分配タンク11aに貯留されたインクが、複数の印字ヘッド10にそれぞれ供給され、それらの印字ヘッドから吐出されることになる。
また、複数の印字ヘッド10から吐出されなかったインクが、第2分配タンク11bに回収され、第2分配タンク11bに一時的に貯留されることになる。
【0039】
インクジェット印字装置100は、第1分配タンク11aと、第2分配タンク11bとを有するので、インクを一方向に流通させることが可能となっている。これにより、インクをスムーズに流通させることができ、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部でインクが滞留することをより抑制することができる。
また、インクを一方向に流通させることにより、第2分配タンク11bに回収されたインクが再び印字ヘッド10に供給されることを防止することができる。
【0040】
インクジェット印字装置100においては、第1分配タンク11aと、それに連結された各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと、それに連結された各印字ヘッド10との間の連結管に、インクの流路を開閉可能な電磁弁D1が設けられている。このため、インクジェット印字装置100においては、電磁弁D1の開閉をコントロールすることにより、インクを供給する、若しくは、インクを回収する印字ヘッド10を適宜選択することが可能となっている。
【0041】
インクジェット印字装置100において、分配タンク11には、インクを供給するための供給流通管53aと、インクを回収するための回収流通管53bが取り付けられている。
具体的には、分配タンク11のうち、第1分配タンク11aには、供給流通管53aと、回収流通管53b(以下便宜的に「第1回収流通管53b1」という。)とが取り付けられており、第2分配タンク11bには、回収流通管53b(以下便宜的に「第2回収流通管53b2」という。)が取り付けられている。すなわち、インクジェット印字装置100においては、回収流通管53bが、第2分配タンク11bだけでなく、第1分配タンク11aにも取り付けられている。
【0042】
第1分配タンク11aにおいては、供給流通管53aから流入されるインクのうち、一部のインクが印字ヘッド10に供給され、その他の一部のインクが第1回収流通管53b1からバッファタンク2に回収される。これにより、第1分配タンク11a内に貯留されるインクを、フレッシュな状態で維持することが可能となる。なお、第1分配タンク11aにおいては、第1分配タンク11a内でインクを滞留させないようにするため、供給流通管53aと、第1回収流通管53b1とを極力離して取り付けることが好ましい。
一方、第2分配タンク11bにおいては、上述したように、印字ヘッド10から回収されるインクが、第2回収流通管53b2からバッファタンク2に回収される。
【0043】
インクジェット印字装置100においては、第1分配タンク11aと第2分配タンク11bとがバイパス管12により、連結されている。これにより、第1分配タンク11aから第2分配タンク11bに直接的にインクを送流することも可能となる。
インクジェット印字装置100においては、バイパス管12を備えることにより、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部でインクが滞留することをより抑制することができる。
【0044】
ここで、インクジェット印字装置100においては、バイパス管12に、その流路を開閉可能な電磁弁D2が取り付けられている。これにより、バイパス管12の開閉をコントロールすることが可能となる。例えば、通常の印字時には、インクの滞留を抑制するためバイパス管12を開き、パージ時等には、印字ヘッド10に特別な圧力を付与するためバイパス管12を閉じることができる。
【0045】
インクジェット印字装置100においては、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bには、それぞれ、圧力制御機構13a,13bが取り付けられている。
第1分配タンク11aにおいて、圧力制御機構13aは、第1分配タンク11a内において貯留されるインクの上方の空間(以下「内部空間」という。)の圧力を加圧若しくは減圧するための圧力調整装置131と、第1分配タンク11aの内部空間の圧力を大気圧にするための開放弁(図示しない)と、第1分配タンク11aの内部空間の圧力を計測するための圧力計132とを有する。
圧力調整装置131としては、コンプレッサ、真空ポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等が好適に用いられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
圧力制御機構13aにおいては、第1分配タンク11aの内部空間の圧力を圧力計132により測定し、それに応じて、圧力調整装置131により制御することが可能となっている。
【0046】
なお、圧力調整装置131及び開放弁は、第1分配タンク11aの内部空間にそれぞれ独立して直接的に連結されていてもよく、第1分配タンク11aの内部空間に連結され、当該内部空間と圧力が共通する空気室等に連結されていてもよい。
また、第2分配タンク11bに取り付けられている圧力制御機構13bは、第1分配タンク11aに取り付けられている圧力制御機構13aと構成が共通しているので説明を省略する。
【0047】
インクジェット印字装置100においては、圧力制御機構13aにより、第1分配タンク11aの内部空間の圧力を、第2分配タンク11bの内部空間の圧力よりも高くすることにより、インクが第1分配タンク11aから印字ヘッド10に流通し、当該印字ヘッド10から第2分配タンク11bに流通するようになる。
このとき、圧力の調整は、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部空間を共に減圧し、第2分配タンク11bの内部空間をより低圧とすることにより圧力差を設けてもよく、第1分配タンク11aの内部空間を加圧し、第2分配タンク11bの内部空間を減圧することにより圧力差を設けてもよい。
【0048】
バッファタンク2は、インクの供給源となるタンクである。
インクジェット印字装置100において、バッファタンク2には、内部が連通するように連結管を介して、インクパック20が取り付けられている。なお、インクパック20は、連結管から着脱自在となっている。
そして、その連結管には、ポンプP1(以下便宜的に「インクパック用ポンプP1」という。)が取り付けられており、このインクパック用ポンプP1により、連結管におけるインクの流通が行われる。
【0049】
バッファタンク2は、その内部が、エアフィルタ22を介して外気と連通している。すなわち、バッファタンク2内は、大気圧となっている。
また、バッファタンク2は、内部にフロートスイッチFが設けられている。
かかるフロートスイッチFは、バッファタンク2内のインクの液面の上限位置、適正位置、下限位置の3点を検知することが可能となっている。
これにより、バッファタンク2においては、フロートスイッチFが検出したインクの液面の位置に応じて、インクパック20からのインクの流入(補充)が行われる。
【0050】
バッファタンク2は、その内部に、流入するインクを衝突させるための傾斜部21が設けられている。このため、インクパック20から補充されるインクは、傾斜部21に衝突し、当該傾斜部に沿って流下し、バッファタンク2内に貯留されるようになっている。これにより、インクの補充時に、当該インクに空気が含まれることを極力抑制することが可能となる。
ちなみに、インクに空気が一定の量を超えると、それが気泡となり、その気泡が、印字ヘッド10のノズル内で、エアークッションとして作用することで、インク吐出が不安定となる。
【0051】
熱交換器3は、インクの温度を調整するための装置である。
熱交換器3としては、インクと、水とで熱交換を行うものが好適に用いられる。
図2(a)は、本実施形態に係るインクジェット印字装置における熱交換器の概略を示す側面図であり、図2(b)は、図2(a)の上面図であり、図3は、本実施形態に係るインクジェット印字装置における熱交換器及びマニホールドを示す部分透過側面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、熱交換器3は、水を、水流入口31aから流入させ、水流出口31bから流出させる水回路(図示しない)と、インクを、インク流入口32aから流入させ、インク流出口32bから流出させるインク回路(図示しない)とを有している。
【0052】
熱交換器3においては、インク回路を流通するインクの温度調整を、水回路を流通する水により行うようになっている。これにより、熱交換器3は、熱交換器3全体において温度ムラが少なくなり、インクの温度調整も穏便に行うことが可能となる。
なお、熱交換器3に流通させる水の温度は、インクに応じて適宜設定される。例えば、25~40℃の範囲で設定される。
【0053】
図3に示すように、水回路を流通する水の温度は、チラー装置7により制御されている。
ここで、チラー装置7としては、公知のものを使用でき、冷却部と、加熱部と、これらを制御する制御部とを有している。
これにより、水の温度の調整を高精度で行うことができるため、インク回路を流通するインクの温度の調整もより正確に行うことができる。
【0054】
マニホールド4は、熱交換器3の下方に配置されている。
マニホールド4は、複数のチャンネルを有しており、インクの流路を分岐させることが可能となっている。すなわち、マニホールド4に流入するインクを、複数の方向に流出させることができる。なお、使用しないチャンネルは、適宜封じればよい。
【0055】
インクジェット印字装置100においては、マニホールド4のチャンネルに、主流通管51、副流通管52及び供給流通管53aが取り付けられている。このため、熱交換器3のインク流出口32bから主流通管51に流出される温度調整されたインクがマニホールド4に流入され、当該マニホールド4から、副流通管52を介してバッファタンク2や供給流通管53aを介して第1分配タンク11aにインクを流通させている。
【0056】
図1に戻り、インクジェット印字装置100において、主流通管51は、バッファタンク2、熱交換器3及びマニホールド4を、インクが流通可能となるように順次連結している。
また、副流通管52は、マニホールド4及びバッファタンク2を、インクが流通可能となるように連結している。
そして、副流通管52には、インクをマニホールド4からバッファタンク2に送流するためのポンプP2(以下便宜的に「副流通管ポンプP2」という。)が設けられている。
インクジェット印字装置100においては、副流通管ポンプP2を稼動させると、主流通管51及び副流通管52を一方向に連続してインクが流通するようになっている。
【0057】
このように、インクジェット印字装置100においては、主流通管51及び副流通管52でインクを循環させる第1循環流路が形成されている。
第1循環流路は、主流通管51と副流通管52とからなるので、比較的流通距離が短く、インクを効率良く循環させることができる。
また、主流通管51を流通するインクは、熱交換器3を経由するので、温度調整が施される。
これらのことにより、インクジェット印字装置100においては、バッファタンク2内のインクの温度変化を防止するだけでなく、バッファタンク2に貯留されたインクの温度調整を比較的短時間で行うことができる。また、バッファタンク2内でのインクの凝集も抑制することが可能となる。
【0058】
インクジェット印字装置100において、供給流通管53aは、印字部1の第1分配タンク11a及びマニホールド4を、インクが流通可能となるように連結している。
ここで、供給流通管53aは、第1分配タンク11aに連結された下流供給流通管53a1と、当該下流供給流通管53a1から枝分かれし、マニホールド4に連結された2本の上流供給流通管53a2とからなる。
そして、2本の上流供給流通管53a2には、それぞれ、インクをマニホールド4から下流供給流通管53a1に送流するためのポンプP3(以下便宜的に「供給流通管ポンプP3」という。)が設けられている。
また、下流供給流通管53a1には、インクをろ過するためのフィルタ61及びインクに溶けている空気を排出するための脱気装置62が取り付けられている。
【0059】
インクジェット印字装置100においては、流通させたいインクの量に応じて、稼働させる供給流通管ポンプP3を選択することができる。例えば、両方の供給流通管ポンプP3を稼動させると、マニホールド4から2本の上流供給流通管53a2にインクが流入し、次に、2本の上流供給流通管53a2から下流供給流通管53a1にインクが流入することになる。
【0060】
インクジェット印字装置100において、回収流通管53bは、印字部1及びバッファタンク2を、インクが流通可能となるように連結している。
ここで、回収流通管53bは、上述したように、第1分配タンク11a及びバッファタンク2を連結する第1回収流通管53b1と、第2分配タンク11b及びバッファタンク2を連結する第2回収流通管53b2とからなる。
そして、第1回収流通管53b1には、インクを第1分配タンク11aからバッファタンク2に送流するためのポンプP4(以下便宜的に「第1回収流通管ポンプP4」という。)が設けられており、第2回収流通管53b2には、インクを第2分配タンク11bからバッファタンク2に送流するためのポンプP5(以下便宜的に「第2回収流通管ポンプP5」という。)が設けられている。
インクジェット印字装置100においては、第1回収流通管ポンプP4を稼動させると、第1分配タンク11aからバッファタンク2にインクが流通されるようになっており、同様に、第2回収流通管ポンプP5を稼動させると、第2分配タンク11bからバッファタンク2にインクが流通されるようになっている。
【0061】
このように、インクジェット印字装置100においては、上述した主流通管51と、供給流通管53a及び回収流通管53bとでインクを循環させる第2循環流路が形成されている。
第2循環流路は、バッファタンク2及び熱交換器3を経由する主流通管51と、供給流通管53a及び回収流通管53bとからなるので、バッファタンク2内の温度調整されたインクが、主流通管51を流通時に、再度熱交換器3により温度調整され、マニホールド4から供給流通管53aを介して第1分配タンク11aに送流されることになる。このため、ノズルから吐出されるインクは、確実に温度調整され、且つ、凝集が十分に抑制されたものとなる。その結果、インクの濃度ムラやノズルの目詰まりが生じることを十分に防止することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係るインクジェット印字装置100の使用例について説明する。
[通常の印字時]
(第1循環流路におけるインクの流通)
通常の印字時において、副流通管ポンプP2は、例えば、間欠運転で稼働させた状態となっている。これにより、熱交換器3によるインクの温度調整が充分に行われる。
こうして、第1循環流路におけるインクの流通が行われる。
【0063】
(第2循環流路におけるインクの流通)
まず、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと各印字ヘッド10との間の連結管にそれぞれ設けられた電磁弁D1を全て閉じた状態とし、バイパス管12に設けられた電磁弁D2も閉じた状態とする。
そして、圧力制御機構13a,13bの圧力調整装置131により、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部空間を減圧し、第1分配タンク11aの内部空間の圧力の方が、第2分配タンク11bの内部空間の圧力よりも高くなるように設定する。
この状態で、電磁弁D1及び電磁弁D2を開くことにより、インクが第1分配タンク11aから印字ヘッド10に流通すると共に、印字ヘッド10から第2分配タンク11bに流通する。
また、第1分配タンク11aからバイパス管12を介して第2分配タンク11bにインクが流通する。
なお、このとき、印字ヘッド10の圧電素子を駆動させることにより、印字ヘッド10のノズルからインクが吐出される。
【0064】
このように、インクが流通すると、各分配タンク11a,11b内のインクの液面が変動する。
例えば、初期状態として、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11b内のインクの液面が共に、適正位置よりも下回っていることを、フロートスイッチFが検出した場合は、第A1ステップとして、供給流通管ポンプP3を駆動させ、バッファタンク2から第1分配タンク11aに、インクの液面が適正位置になるまでインクを供給する。
これにより、第1分配タンク11aから第2分配タンク11bに、印字ヘッド10若しくはバイパス管12、を介してインクを流通させると、第2分配タンク11b内のインクの液面が適正位置となり、第1分配タンク11a内のインクの液面が適正位置よりも下回るようになる。
【0065】
そして、第A2ステップとして、第2回収流通管ポンプP5を駆動させ、第2分配タンク11bからバッファタンク2に、インクの液面が適正位置を下回るまでインクを回収する。
そうすると、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11b内のインクの液面が共に、適正位置よりも下回るので、上記初期状態となる。なお、初期状態、第A1ステップ、第A2ステップは、順次繰り返される。
こうして、第2循環流路におけるインクの流通が行われる。
【0066】
なお、第1分配タンク11a又は第2分配タンク11b内のインクの液面が上限位置若しくは下限位置にあることを、フロートスイッチFが検出した場合は、全ての電磁弁D1が閉じられ、供給流通管ポンプP3、第1回収流通管ポンプP4及び第2回収流通管ポンプP5が停止し、且つ、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部空間が対応する圧力調整装置131により大気開放されることになる。
【0067】
[インクジェット印字装置の通電直後]
(第1循環流路におけるインクの流通)
通常の印字時においては副流通管ポンプP2を間欠運転で稼働させているが、通電直後は、副流通管ポンプP2の停止時間がより短くなるモードで間欠運転を行う。なお、かかる運転時間と停止時間は任意に設定することができる。
また、チラー装置7により、熱交換器3を流通する水の温度を高くする。
これら以外は通常の印字時と同様にして、第1循環流路におけるインクの流通が行われる。
【0068】
(第2循環流路におけるインクの流通)
インクジェット印字装置100の通電直後においては、上述した「通常の印字時の第2循環流路におけるインクの流通」よりもインクの流通量を増やす。
具体的には、通常の印字時と同様に、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部空間を減圧する。このとき、第1分配タンク11aの内部空間の圧力の方が、第2分配タンク11bの内部空間の圧力よりも、より高くなるように設定する。すなわち、両者の圧力差がより大きくなるようにする。
また、インクの流通量が増えるため、第1回収流通管ポンプP4を駆動させ、第1分配タンク11aからバッファタンク2に、インクの液面が下限位置となるまでインクを回収する。なお、第1回収流通管ポンプP4は、インクの液面が下限位置となった場合、駆動が停止し、インクの液面が適正位置となった場合、駆動が開始される。
これら以外は通常の印字時と同様にして、第2循環流路におけるインクの流通が行われる。
【0069】
[パージ時]
インクジェット印字装置100においては、インクの凝集物によるノズルの目詰まりや
エアによるインクの吐出不良を解消するため、若しくは、当該目詰まりや吐出不良が生じることを予防するため、インクをノズルから強制的に吐出させる、通常パージ又は循環パージが行われる。
これらのパージにおいては、まず、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと各印字ヘッド10との間の連結管にそれぞれ設けられた電磁弁D1を全て閉じた状態とし、バイパス管12に設けられた電磁弁D2も閉じた状態とする。
そして、圧力制御機構13aの圧力調整装置131により、第1分配タンク11aの内部空間を加圧し、圧力制御機構13bの開放弁により、第2分配タンク11bの内部空間を大気圧となるように設定する。
【0070】
(通常パージ)
通常パージにおいては、この状態で、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管に設けられた電磁弁D1を開くことにより、インクが第1分配タンク11aから印字ヘッド10に流通し、印字ヘッド10のノズルからインクが強制的に吐出される。これにより、インクの凝集物によるノズルの目詰まりやエアによるインクの吐出不良を解消することができる。
【0071】
(循環パージ)
循環パージにおいては、この状態で、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと各印字ヘッド10との間の連結管にそれぞれ設けられた電磁弁D1を全て開くことにより、インクが第1分配タンク11aから印字ヘッド10に流通し、印字ヘッド10のノズルからインクが強制的に吐出され、印字ヘッド10から第2分配タンク11bに流通する。これにより、印字ヘッド10内全体におけるインクの凝集物やエアが除去されるので、インクの凝集物によるノズルの目詰まりやエアによるインクの吐出不良を確実に解消することができる。
【0072】
[インク初期充填]
インクを交換する際など、バッファタンク2、第1分配タンク11a、第2分配タンク11b、各流通管、連結管、バイパス管等を空にした状態から、インクを充填させる必要がある。
【0073】
(バッファタンク)
バッファタンク2においては、インクパック用ポンプP1を駆動させることにより、バッファタンク2内のインクの液面が適正位置になるまで、インクパック20からインクの補充が行われる。
また、印字時においてバッファタンク内のインクの液面が適正位置を下回ったことを、フロートスイッチFが検出した場合も同様に、インクパック20からインクの補充が行われる。なお、インクパック20が空になった場合は、インクパック20を適宜交換すればよい。
こうして、バッファタンク2にインクが充填される。
【0074】
(第1分配タンク)
まず、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと各印字ヘッド10との間の連結管を取り外す。これにより、各流通管の初期充填時に印字ヘッド10に大量のエアが混入することを抑制することができる。
なお、これらの連結管は、バルブを内蔵しているカプラ等の接続部材を介して連結されていることが好ましい。この場合、接続部材がバルブを閉じることにより、取り外し時にインクが漏れることを抑制できる。
【0075】
次に、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管に設けられた電磁弁D1を全て閉じた状態とし、バイパス管12に設けられた電磁弁D2も閉じた状態とする。
そして、圧力制御機構13aの開放弁により、第1分配タンク11aの内部空間を大気圧となるように設定する。
この状態で、供給流通管ポンプP3を駆動させることにより、インクがバッファタンク2から、主流通管51及び供給流通管53aを介して、第1分配タンク11aに流通する。
こうして、第1分配タンク11aにインクが充填される。
【0076】
次に、第1分配タンク11aにインクが充填された状態で、第1回収流通管ポンプP4を駆動させることにより、インクが第1分配タンク11aから、第1回収流通管53b1を介して、バッファタンク2に流通する。なお、第1回収流通管ポンプP4は、インクの液面が下限位置となった場合、駆動が停止し、インクの液面が適正位置となった場合、駆動が開始される。
この操作を複数回繰り返すことにより、第1回収流通管53b1にインクが充填される。
【0077】
(第2分配タンク)
第2分配タンクへのインクの初期充填は、第1分配タンク11bへのインクの初期充填に続けて行われる。
まず、第1分配タンク11aに取り付けられた連結管、及び、第2分配タンク11bに取り付けられた連結管、に短絡チューブを取り付ける。すなわち、短絡チューブを取り付けることにより、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bは、印字ヘッド10を経由することなく、直接的に内部が連結される。
次に、第B1ステップとして、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管に設けられた電磁弁D1を全て閉じた状態とし、バイパス管12に設けられた電磁弁D2も閉じた状態とする。
そして、圧力制御機構13a及び圧力制御機構13bの開放弁により、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bの内部空間を大気圧となるように設定する。
【0078】
次に、第B2ステップとして、圧力制御整機構13aの圧力調整装置131により、第1分配タンク11aの内部空間を加圧する。
なお、第2分配タンク11bの内部空間は大気圧を維持する。
この状態で、電磁弁D2を一定時間開き、続けて、第1分配タンク11aに取り付けられた連結管、及び、第2分配タンク11bに取り付けられた連結管にそれぞれ設けられた電磁弁D1、を一定時間開くことにより、インクが第1分配タンク11aから第2分配タンク11bに流通する。なお、このとき、第1分配タンク11aの内部空間は加圧状態を維持する。
そして、第2分配タンク11bにインクが充填された後、第1分配タンク11aの内部空間を圧力制御機構13aで大気圧に開放する。
【0079】
次に、第B3ステップとして、供給流通管ポンプP3を駆動させることにより、インクがバッファタンク2から、主流通管51及び供給流通管53aを介して、第1分配タンク11aに流通する。このインクの充填は、第1分配タンク11a内のインクの液面が適正位置となるまで行われる。
また、第B4ステップとして、第2回収流通管ポンプP5を駆動させることにより、インクが第2分配タンク11bから、第2回収流通管53b2を介して、バッファタンク2に流通する。このインクの回収は、第2分配タンク11b内のインクの液面が下限位置となるまで行われる。
そして、第B1ステップ、第B2ステップ、第B3ステップ及び第B4ステップは、順次繰り返される。
こうして、第1分配タンク11aと各印字ヘッド10との間の連結管、及び、第2分配タンク11bと各印字ヘッド10との間の連結管、第2分配タンク、並びに、第2回収流通管53b2にインクが充填される。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0081】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、バッファタンク2、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bに、それぞれ、インクの液面を検出するためのフロートスイッチFが設けられているが、インクの液面を検出可能であれば、これに限定されない。
例えば、フロートスイッチの代わりに、タンク上面からレーザーにより測定する方法や、タンク側面からセンサーによって検出する方法等を採用することも可能である。
【0082】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bに、貯留されたインクの温度を測定するための熱電対が設けられているが、温度を測定可能であれば、これに限定されない。
例えば、熱電対の代わりに、測温抵抗体等を採用することも可能である。
【0083】
また、本実施形態に係るインクジェット印字装置100において、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bに熱電対が設けられているが、熱電対は、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bのいずれか一方に設けられていればよい。
例えば、熱電対は、第1分配タンク11aのみに設置してもよい。なお、温度管理の観点から、第1分配タンク11a及び第2分配タンク11bに設置するほうが望ましい。
【0084】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、供給流通管53aが、第1分配タンク11aに連結された下流供給流通管53a1と、当該下流供給流通管53a1から枝分かれし、マニホールド4に連結された2本の上流供給流通管53a2とからなっているが、これに限定されない。すなわち、供給流通管53aは1本であってもよく、下流供給流通管53a1が2本に枝分かれしていてもよい。
【0085】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100は、第1分配タンク11aからインクを回収するための第1回収流通管53b1を有しているが、かかる第1回収流通管53b1は、必ずしも必須ではない。
【0086】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100は、第1分配タンク11aと第2分配タンク11bとを連結するバイパス管12を有しているが、かかるバイパス管12は必ずしも必須ではない。
図4は、他の実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
図4に示すように、他の実施形態に係るインクジェット印字装置101においては、バイパス管12を有していない。
なお、バイパス管12を有するインクジェット印字装置100は、バイパス管12を有さないインクジェット印字装置101と比較して、第1分配タンク11a内のインクの温度ムラを早期に解消することが可能となる。
【0087】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100においては、熱交換器3として、インクと、水とで熱交換を行うものを採用しているが、これに限定されない。
また、水の温度をチラー装置7により制御しているが、必ずしも必須ではない。
【0088】
本実施形態に係るインクジェット印字装置100は、1つの印字部1を備えているが、印字部1は、複数あってもよい。すなわち、インクジェット印字装置は、印字部1を複数備えていてもよい。
図5は、他の実施形態に係るインクジェット印字装置を示す概略図である。
図5に示すように、他の実施形態に係るインクジェット印字装置102においては、印字部を2つ有している。
これにより、インクの温度変化やインクの凝集を抑制しつつ、効率良く印字を行うことができる。
したがって、インクジェット印字装置102においては、第2循環流路が、一方の印字部1と、他方の印字部1とにそれぞれ形成されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のインクジェット印字装置は、印刷媒体に対しインクジェット方式にてインクを付与するための装置として利用できる。
本発明のインクジェット印字装置は、少なくとも2つの循環流路を有しているので、インクの温度変化やインクの凝集を抑制することができ、且つ、インクの温度調整を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
1・・・印字部
10・・・印字ヘッド
11・・・分配タンク
11a・・・第1分配タンク
11b・・・第2分配タンク
12・・・バイパス管
131・・・圧力調整装置
132・・・圧力計
13a,13b・・・圧力制御機構
100,101,102・・・インクジェット印字装置
2・・・バッファタンク
20・・・インクパック
21・・・傾斜部
22・・・エアフィルタ
3・・・熱交換器
31a・・・水流入口
31b・・・水流出口
32a・・・インク流入口
32b・・・インク流出口
4・・・マニホールド
51・・・主流通管
52・・・副流通管
53a・・・供給流通管
53a1・・・下流供給流通管
53a2・・・上流供給流通管
53b・・・回収流通管
53b1・・・第1回収流通管(回収流通管)
53b2・・・第2回収流通管(回収流通管)
61・・・フィルタ
62・・・脱気装置
7・・・チラー装置
D1,D2・・・電磁弁
F・・・フロートスイッチ
P・・・ポンプ
P1・・・インクパック用ポンプ(ポンプ)
P2・・・副流通管ポンプ(ポンプ)
P3・・・供給流通管ポンプ(ポンプ)
P4・・・第1回収流通管ポンプ(ポンプ)
P5・・・第2回収流通管ポンプ(ポンプ)
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5