(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】熱分解油の分離方法
(51)【国際特許分類】
C10G 7/06 20060101AFI20221024BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20221024BHJP
C10G 27/12 20060101ALI20221024BHJP
B01J 23/28 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C10G7/06
C10G1/10
C10G27/12
B01J23/28 M
(21)【出願番号】P 2019547583
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(86)【国際出願番号】 US2017062456
(87)【国際公開番号】W WO2018098051
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-06
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502127766
【氏名又は名称】アールジェイ リー グループ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RJ LEE GROUP,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィストローム,ジョナサン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ビーバー,アール アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウィストローム,スカイラー エル.
(72)【発明者】
【氏名】レバイン,アラン エム.
(72)【発明者】
【氏名】リー,リチャード ジェイ.
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01462504(EP,A1)
【文献】特開2005-015635(JP,A)
【文献】特開2000-282056(JP,A)
【文献】特表平05-509128(JP,A)
【文献】特開昭59-006281(JP,A)
【文献】特表平11-504672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0305786(US,A1)
【文献】米国特許第03565793(US,A)
【文献】米国特許第03060107(US,A)
【文献】米国特許第05208401(US,A)
【文献】Shurong Wang,High-Efficiency Separation of Bio-Oil,Biomass Now-Sustainable Growth and Use,InTech,2013年04月30日,p401-418,DOI: 10.5772/51423,XP055460361,ISBN:978-953-51-1105-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C08J 11/00-11/28
B01J 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油を処理する方法であって、
前記熱分解油を、軽質留分及び重質留分に分離する第1の分離を行うことと、
前記第1の分離を、真空薄膜蒸留を用いて、100~300torrの真空度で行うことと、
前記軽質留分をプレート蒸留処理することと、
前記重質留分から硫黄及び窒素を除去することと、
前記プレート蒸留処理を複数の段階で行うことと、を含み、前記段階が、100~400torrの真空度で下部留分を集める第1の段階と、前記第1の段階よりも高い真空度を有する第2の段階とを含む、方法。
【請求項2】
前記プレート蒸留において10~30個のプレートを用いることを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記プレート蒸留を、還流制御ヘッドを有するカラムの中で行うことを含む、請求項2の方法。
【請求項4】
前記還流制御ヘッドは2:1~10:1の比に設定されて、前記プレート蒸留を行う、請求項3の方法。
【請求項5】
前記プレート蒸留により、メルカプタン、シクロヘキセン及び
アルキル化単環式留分からなる群から選択される少なくとも一種の材料の分離を行うことを含む、請求項3の方法。
【請求項6】
前記重質留分から硫黄及び窒素の除去を、過酸化水素を用いた触媒酸化により行うことを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記重質留分から硫黄及び窒素の除去を、アルミニウムとモリブデンとの混合物である触媒を用いて行うことと、
前記触媒酸化を50℃~75℃の温度で行うことと、を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記触媒は、酸化アルミニウムと三酸化モリブデンとの混合物である、請求項6の方法。
【請求項9】
前記三酸化モリブデンと前記酸化アルミニウムの重量比は、0.5:1~1:0.5である、請求項8の方法。
【請求項10】
硫黄及び窒素を除去した後の重質留分は燃料油として使用可能である、請求項
6の方法。
【請求項11】
前記第1の分離における真空薄膜蒸留を、壁温度が125℃~145℃の反応器を用いて行うことを含み、
前記熱分解油は、前記第1の分離により、前記熱分解油の20~35重量%の軽質留分と、前記熱分解油の65~80重量%の重質留分とに分離される、請求項1の方法。
【請求項12】
前記熱分解油の供給源はスクラップタイヤである、請求項
1の方法。
【請求項13】
熱分解油を処理する方法であって、
熱分解油を、真空薄膜蒸留を用いて、軽質留分及び重質留分に分離する第1の分離を行うことであって、
前記真空薄膜蒸留は、壁温度が125℃~145℃の反応器を用いて、100~300torrの真空度で行うことにより、前記熱分解油を、前記熱分解油の20~35重量%である軽質留分と、前記熱分解油の65~80重量%である重質留分とに分離する、第1の分離を行うことと、
前記軽質留分をプレート蒸留することと、を含み、
前記プレート蒸留が、10~30個のプレートを用いて、複数の段階で行うことを含み、前記段階が、100~400torrの真空度で下部留分を集める第1の段階と、前記第1の段階よりも高い真空度を有する第2の段階と、を含む、方法。
【請求項14】
前記重質留分から硫黄及び窒素を除去することをさらに含み、
硫黄及び窒素を除去した後の重質留分は燃料油として使用可能である、請求項
13の方法。
【請求項15】
前記熱分解油の供給源はスクラップタイヤである、請求項
13の方法。
【請求項16】
前記軽質留分は、メルカプタン及びシクロヘキセンからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む、請求項
13の方法。
【請求項17】
熱分解油を処理する方法であって、
熱分解油を、軽質留分及び重質留分に分離する第1の分離を行うことと、
前記第1の分離を、真空薄膜蒸留を用いて、100~300torrの真空度で行うことと、
前記軽質留分を複数の段階でプレート蒸留することであって、前記段階が、100~400torrの真空度で下部留分を集める第1の段階と、前記第1の段階よりも高い真空度を有する第2の段階とを含む、プレート蒸留することと、
前記重質留分を、過酸化水素を用いて触媒酸化して、前記重質留分から硫黄及び窒素を除去することと、
前記触媒酸化を50℃~75℃の温度で行うことと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の分離における真空薄膜蒸留を、壁温度が125℃~145℃の反応器を用いて行うこと、
を含む、請求項
17の方法。
【請求項19】
硫黄及び窒素を除去後の重質留分は燃料油として使用可能である、請求項
18の方法。
【請求項20】
前記熱分解油は、前記第1の分離により、前記熱分解油の20~35重量%の軽質留分と、前記熱分解油の65~80重量%の重質留分とに分離される、請求項
18の方法。
【請求項21】
前記熱分解油の供給源はスクラップタイヤである、請求項
18の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解油(pyrolysis oil)から蒸留用の改良された供給原料を抽出する方法に関し、より具体的には、軽質留分(lighter fraction)と重質留分(heavier fraction)とを分画する初期分離を実施する方法に関する。軽質留分はプレート蒸留され、重質留分は重質燃料油としての使用を容易にするために硫黄及び窒素化合物が除去される。好ましい出発材料は車両用タイヤから得られる。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックなどの固体留分、液体炭化水素及びガスを製造する方法において、スクラップタイヤのようなゴムを熱分解することは知られている。液体炭化水素は燃料油としての可能性もある。これらについては、米国特許第6,833,485号、第6,835,861号、及び第7,341,646号を参照することができる。
【0003】
米国特許第6,673,236号は、バナジウムが存在する触媒酸化を通じて石油中間留分中の硫黄を減少させることを開示している。しかし、熱分解油の開示はない。エタノールが存在し、そのエタノールが一部分を酸化させて過酢酸を生成し、この過酢酸が更なる酸化に寄与すると言われている。最終的な分離物は、MeOH及びEtOHのアルコールに対して特異性である。
【0004】
米国特許第8,043,495号は、触媒蒸留反応器及び水素化脱硫触媒を使用して炭化水素流れの硫黄を低減させることを開示している。低メルカプタン製品が製造されると言われている。
【0005】
米国特許第4,983,278号は油のリサイクルを利用する2温度熱分解法を開示しており、2温度プロセスにおける軽油、重油及び固体残留物の生成を開示している。
【0006】
米国特許第3,702,292号は、原油を幾種類かの留分に蒸留し、続いてガス油留分を触媒分解してプロパン及び他の留分を生成することを開示している。
【0007】
米国特許第8,293,952号明細書は、塩基性金属酸化物触媒を使用した熱分解プロセスを開示しており、得られた熱分解生成物はアルコール含有量の多いことが記載されている。
【0008】
米国特許第6,444,118号は、ナフサ流れの中の硫黄を低減するのに触媒蒸留技術を使用することを開示している。この技術は、有機硫黄及び水素を含有する石油流れを処理するために蒸留コラム反応器を使用し、前記流れを、水素化脱硫触媒蒸留構造の存在下で接触させるものである。
【0009】
タイヤ由来熱分解油は、有価値テルペン及び他の不飽和物を含むと共に、メルカプタン及び他の硫黄含有化合物を含有することが一般に認識されている。商業的に実行可能な留分の中にこれらの化合物を含む留分を単離する試みはこれまで成功していない。
【0010】
熱分解由来油、特にポリマーの熱分解から得られる油は、飽和炭化水素と不飽和炭化水素との複合混合物であり、硫黄、窒素、及び酸素を含有する極性化合物を含む。ポリマーの種類に応じて、前記化合物はハロゲン化化合物も含み得る。これらの油は、低品位燃料として低収益で販売されることがよくある。これらの油は硫黄含有量が中程度であるため、一般的には、環境にあまり敏感でない作業で使用されたり、それらの排出物をこすり洗いして硫黄が除去される。石油化学産業では、一般的に、金属触媒及び水素ガスを使用した水素化脱硫を行うことにより、有機硫黄化合物を、次の反応によって硫化水素と飽和炭化水素とに転換する。前記反応は、RSH+H2→R+H2Sであり、Rは炭化水素である。硫化水素は元素硫黄又は硫酸塩に変換される。このプロセスは水素ガスを加圧下で使用せねばならず、通常、経済的に実用的なのは、大規模に限られる。
【0011】
タイヤ由来熱分解油は、有価値テルペン及び他の不飽和物を含むと共に、メルカプタン及び他の硫黄含有化合物を含有することが一般的に認識されている。しかしながら、これらの化合物を含有する留分を単離する試みは商業的に価値のある留分の産出に至っていない。これはタイヤ由来の熱分解油の複雑な性質による多くの問題があるためである。熱分解油を直接蒸留すると、蒸留中に、化合物と蒸留物との複雑な混合物を不安定にする。加熱容器内の温度が変動すると、留分の沸点範囲が広くなる。より重大なことは、熱分解油は反応性化合物を生じることであり、前記反応性化合物は、標準的な蒸留に必要とされる高い壁温度では、蒸留中に反応を起こしたりクラックを生じて、発泡を生じたり、温度、圧力及び分離の制御を困難にする。M.Standulescu及びM.Ikuraは、リモネンをナフサと共溶出させ、リモネンをメタノールと反応させて、沸点をシフトさせることで、油から分離することを提案している[Limonene Ethers from Tire Pyrolysis Oil Part 1 : Batch Experiments., J. Anal . Applies Pyrolysis 75, pp 2 1 7-225, 2006.]。これは、リモネンを回収するためにエステルを逆反応させなければならない。Royらは、リモネン+チオフェンと他の硫黄化合物との熱分解生成物はリモネンと共溶出し、リモネンをきれいに分離することは難しいことを報告した[Production of dl-limonene by vacuum pyrolysis of used tires. Journal of Analytical and Applied Pyrolysis 57 pp. 91-107, 2001.]。これは、熱分解油からリモネンを単離することが困難であることを示している。
【0012】
それゆえ、熱分解油を処理して、商業的に所望される留分を、燃料油としての使用に適した留分から分離する方法に対する現実的かつ実質的な必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、燃料油としての使用に適した重質留分から商業的に所望される留分を分離するために、熱分解蒸気の処理を効果的に行う方法を提供することにより、前述の従来技術の欠点を解決するものである。より具体的には、好ましい実施形態において、第1段階は、熱分解ガスを、軽質留分と重質留分とに分離することである。次いで、第2段階は、軽質留分をプレート蒸留に付して、商業的に所望される生成物を分離することである。第3段階では、重質留分を酸化脱硫処理して、窒素含有有機化合物を除去するもので、有効な燃料油生成物を製造するために脱硫プロセスが用いられる。熱分解油の好ましい初期分離は、薄膜蒸留を含む。これは、効果的かつ経済的に、所望の第1段階の分離を生成する。プレート蒸留に関する好ましい幾つかのパラメータを好ましい特徴として開示する。
【0014】
特定用途の具体的な目的によっては、前記方法の3つの段階を全て用いずに、3つの段階のどれかを組み合わせることが、有利な場合もある。
【0015】
別の実施形態において、薄膜蒸留の後、化合物蒸留が行われ、脱硫工程は使用されない。
【0016】
更なる実施形態において、薄膜蒸留の生成物は、酸化触媒脱硫処理され、プレート蒸留工程は使用されない。
【0017】
本発明の目的は、熱分解油を(a)市場性の高い留分と、(b)市場性のある燃料製品を提供する実用的留分と、に分離するための効率的で有効な方法を提供することである。
【0018】
本発明の更なる目的は、大規模と同様に、小規模及び中規模で使用されることができる方法を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、薄膜蒸留を効率的に利用することである。
【0020】
本発明の目的は、熱分解油を商業的に実行可能な蒸留用供給原料に分離することであり、熱分解油と比べて、全体として、引火点の許容範囲が広く、高揮発性化合物が少ない重質留分を提供することである。
【0021】
本発明の更なる目的は、薄膜蒸留を通じて熱分解油を曝露する温度を、バルク蒸留に必要とされるよりも実質的に低い温度で短い時間で行うこと、及び、好ましくないクラッキング及びコーキング反応を生じることなく所望される分離を達成することである。
【0022】
本発明の更なる目的は、硫黄成分及び窒素成分を触媒酸化還元する方法を提供することである。
【0023】
本発明のこれら及び他の目的は、添付の図面を参照した以下の本発明の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、3段階プロセスを用いた本発明の一実施形態を示す概略図である。
【0025】
【
図2】
図2は、段階Iの薄膜蒸留で使用可能な装置の概略図である。
【0026】
【
図3】
図3は、段階IIの蒸留システムで使用可能な装置の概略図である。
【0027】
【
図4】
図4は、段階IIIの脱硫プロセスで使用可能な装置の概略図である。
【0028】
【
図5】
図5は、段階Iと段階IIを使用する本発明の方法の概略図である。
【0029】
【
図6】
図6は、段階Iと段階IIIを使用する本発明の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を再び参照すると、段階Iは、好ましくは薄膜蒸留による熱分解油の初期分離を提供する。
【0031】
初期分離では、(a)商業的に価値のある化合物の多くを含む軽質留分であって、限定するものでないが、テルペン、メルカプタン及びシクロヘキセンを含む軽質留分と、(b)重質留分と、を生成する。
【0032】
段階IIにおいて、段階Iで得られた軽質留分は、プレート蒸留システムに分割された還流(split reflux)を使用し、軽質留分から熱分解油の商業的に価値のある成分を回収するものである。
【0033】
段階IIIは、燃料油留分を受け取り、該燃料油留分を触媒酸化処理して、重質相に含まれる硫黄と窒素を還元するものである。好ましい触媒はモリブデンとアルミニウムを使用し、好ましい触媒は三酸化モリブデンと酸化アルミニウムとの混合物である。混合物は重量ベースで、0.5:1~約1:0.5の比を有することが好ましく、三酸化モリブデンと酸化アルミニウムの最も望ましい比は、約1:1である。
【0034】
図2には、好ましい薄膜蒸留方法と、該方法に使用可能な装置が示されている。モータ10には、ワイパー回転軸アジテータ11が固定して取り付けられ、前記アジテータと共に動作可能である。モータ10により前記アジテータが駆動し、該アジテータと共に複数のワイパー12を回転させる。周囲が加熱されたジャケット13が設けられている。この方法によって処理される熱分解油は原料投入管18を通じて導入され、アジテータ11はモータ10によって回転され、反応器ジャケット13の内面に油の薄層を生成する。駆動速度は、反応器13の内面壁に沿う流路に溜まりが生じないように設定される。システムは、約100~300torrの真空度で作動することが好ましく、運転の全時間に亘って約145~155torrで作動することが最も好ましい。また、反応器の壁温度を約125℃~145℃に維持し、約130℃~140℃に維持することが最も好ましい。この工程により2種類の留分が生成される。軽質留分は軽質用出口14を通って出ていく。それは、精油及び高揮発性溶媒化学物質が富化された蒸留留分であり、更なる処理のために改善された供給原料が生成される。重質留分は重質用の底部出口16を通って出て行き、安定した燃料油として、加熱及びエンジン燃料用原料として潜在的な価値を有する。なお、この明細書に開示された温度及び圧力範囲内で操業が行われる限り、あらゆる薄膜又はワイプ蒸発器形態の水平又は垂直な同時流れ又は対向流れが用いられることができる。システムは、操業が完了するまで、好ましくは約100~300torrの真空度で、より好ましくは約135~155torrの真空度で稼働され、その間、反応器ジャケット13の内壁は約125℃~145℃、より好ましくは約130℃~140℃の温度に維持される。
【0035】
薄膜蒸留の利点は、油の薄膜が素早く均一に加熱され、クラッキングやコーキング反応を起こすことなく、軽質化合物と重質化合物との間の相互作用を破壊することである。これが薄膜蒸留を用いることが好ましい理由であり、油の重留分質又は軽質留分の完全性を損なうことなく改善された供給原料を製造することができる。
【0036】
図3は、段階IIの蒸留システムで使用可能な装置であって、段階Iから出てくる軽質留分を蒸留するための装置を示している。
図3には、還流制御ヘッド20が示されており、前記還流制御ヘッドは、精製された蒸留留分22及び蒸留カラム24と動作可能に連繋されている。カラムは、好ましくは約10~30個のプレートを有し、最も好ましくは約15~20個のプレートを有する。供給材料を加熱するために供給ボム(feed bomb)26が使用される。蒸発した供給物は、還流制御ヘッド20を有する複数プレートカラムに入る。前記還流制御ヘッドは、約2:1~10:1の比率に設定されることが好ましく、約5:1~7:1の比率に設定されることが最も好ましい。産出される蒸留物は出口22で集められる。
【0037】
商業的に価値のある留分が分離され、その成分は、典型的には、熱分解油の開始重量の約20~35重量%であり、重質留分は熱分解油の開始重量の約65~80重量%である。
【実施例】
【0038】
段階IIの実施例について検討する。供給材料は、段階Iの薄膜蒸留から生じた軽質留分である。
【0039】
システムは、最初に、真空度が100~400torrの範囲、好ましくは約300torrに設定され、下部留分は、約20℃~25℃から集められ、蒸留物が約134℃及び145℃に達するまで、より好ましくは139℃~141℃に達するまで集められる。この下部留分は、幾つかの温度区分に分割されることができる。一実施例が表1に示されている。
【0040】
【0041】
記載された区分(cuts)は、幾つかの低沸点高揮発性溶媒化学物質からなる。これらの化学物質は、限定するものでないが、キシレン、トルエン、及びスチレンがあり、個々の溶液の他、これらを組み合わせた溶液が、産業市場で非常に価値のあるものにしている。
【0042】
留分を300torrの好ましい真空度で141±1℃まで集めた後、温度を室温まで冷却し、真空度を100~300torrに上昇させるが、好ましくは150torrに設定する。区分は、前記好ましい真空度にて115℃~125℃、より好ましくは119℃~123℃の間で行われ、先の下部区分に加えられるか、又は揮発性の低い溶媒溶液として分離されて保持される。次の分割は、124℃~127℃、より好ましくは125℃~126℃まで熱を加え続けることによって集められる。好ましい真空度では、この区分はリモネンとp-シメンのバルクを含むことになり、単一留分として集められ、別々に保持される。その後、132℃までの単一留分が除去区分として集められ、高価値材料が全て、この工程で確実に抽出される。分割に対する好ましい条件における一般化された説明が表2に示されている。
【0043】
【0044】
得られた留分は、高揮発性溶媒化学物質及び/又は様々な純度の精油を含む留分にするために、組み合わせられることができるし、又は別個に維持されることができる。
【0045】
図4は、方法の段階III部分に使用可能な装置の形態を示す。段階IIIは、酸化プロセスによって硫黄含有留分を触媒的に脱硫するもので、窒素の除去にも使用されることができる。過酸化水素又は他の酸化剤がポート28を通して導入され、固体触媒がポート30を通して導入される。前記固体触媒は、好ましくは、モリブデン/アルミニウム触媒であり、三酸化モリブデンと酸化アルミニウムとの混合物であってよい。段階Iからの重質留分は、ポート32を通して導入され、脱硫及び窒素除去工程に付される。混合器ブレード36はモータ34によって回転する。反応器容器40内の温度制御は、高温又は低温の流体をジャケット42に加えることによって行われる。
【0046】
重質留分をポート30を通して導入した後、過酸化水素又は他の酸化剤などの強力な酸化剤がポート28を通してゆっくりと加えられ、材料は混合器36によって撹拌される。混合は、好ましくは約50℃~75℃の温度で約1.5~3時間行われる。反応完了後、混合物はポンプ又は重力作用によって出口ポート44を介して油/水セパレータに送られる。前記出口ポート44は含水固体及び有機材料を移送することができ、前記セパレータは遠心分離機が好都合である。処理された留分は、硫黄と窒素が除去されて、出口50から出て行く。液体層は分離され、消費された酸化剤及び触媒の大部分を含む含水層は、再生及ぶ再使用のために有機層から分離される。
【0047】
触媒は、好ましくは三酸化モリブデンと酸化アルミニウムとの混合物であり、該混合物の好ましい三酸化モリブデンと酸化アルミニウムの重量比は0.5:1~1:0.5であり、1:1が最も好ましい。触媒は、強力な酸化剤、硫黄及び窒素含有留分と共に、反応容器40に加えられる。前記酸化剤は約15%V/Vの過酸化水素であってよい。アジテータ36は、混合物を、毎分700回転のレベル、又は反応物を均一に混合するのに適当なレベルで懸濁状態に維持する。混合物の反応は、加熱/冷却ジャケット42を制御することにより、約50℃~75℃、好ましくは約55℃~65℃の穏やかな温度範囲内で行われる。約1.5時間~3時間の反応時間、好ましくは、約3/4時間~1-1/4時間の反応時間の後、混合物は油/水分離器46に送られ、そこで液体層が消費された酸化剤から分離され、触媒は再生及び再使用のために有機層から分離される。
【0048】
本明細書に開示された3つの段階はすべて、
図1に示され、
図1に関して記載された方法において使用されることは理解されるであろう。有利であれば他の組合せを用いることもできる。各変形例では、適当な原料をさらなる処理に供給するために用いられる。幾つかの実施例において、段階II(
図5)は、
図5の実施形態のように、段階IIIを使用せずに段階Iと行うことできるし、段階III(
図6)は、
図6の実施形態のように、段階IIを使用せずに段段階Iと行うことができる。
【0049】
図5において、60で示される段階Iでは、初期分離により、有用な生成物を含む軽質留分が分離され、その後、62で示される段階IIでは、還流蒸留により、更なる分離が行われ、商業的に所望される生成物が生成される。
【0050】
図6において、段階Iは段階IIIと共に用いられ、68で示されるように、酸化触媒脱硫及び窒素化合物除去が行われる。
【0051】
アルミニウム/モリブデン触媒システムは、酸化剤と共に使用され、有機硫黄化合物を硫酸塩に変換し、窒素含有有機化合物を硝酸塩に変換し、それらを油から除去する。
【0052】
本発明の具体的実施形態を例示目的で説明したが、当業者であれば、その詳細については、添付の特許請求の範囲に規定された発明から逸脱することなく多くの変形をなし得ること明らかであろう。