(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】生体模倣インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20221024BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20221024BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20221024BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20221024BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221024BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221024BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20221024BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20221024BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20221024BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221024BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20221024BHJP
C12N 5/0793 20100101ALN20221024BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20221024BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20221024BHJP
【FI】
A61F2/44
A61P25/02
A61K35/545
A61K35/30
A61K35/28
A61L27/38 100
A61L27/38 300
A61L27/40
A61L27/56
A61L27/22
A61L27/16
C12N5/0735
C12N5/0793
C12N5/10
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2019551919
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017065857
(87)【国際公開番号】W WO2018111900
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505088684
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】コフラー、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャオチェン
(72)【発明者】
【氏名】タシンスキ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ウェイ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0039676(US,A1)
【文献】国際公開第2015/103149(WO,A1)
【文献】特開2015-089433(JP,A)
【文献】特表2014-526318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0113923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0220672(US,A1)
【文献】特表2010-508126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61P 25/02
A61K 35/545
A61K 35/30
A61K 35/28
A61L 27/38
A61L 27/40
A61L 27/56
A61L 27/22
A61L 27/16
C12N 5/0735
C12N 5/0793
C12N 5/10
C12N 5/0775
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部および第2端部を含み、コアおよびシェルを含み、損傷部位の構造を模倣する3次元(3D)インプラントと、
前記第1端部から始まり前記第2端部で終わる前記シェル内の少なくとも1つのチャネルと、
前記少なくとも1つのチャネルに含まれる少なくとも
1種類の幹細胞と、
を含
み、
前記インプラントは200kPa~300kPaの弾性率を有する、
脊髄または末梢神経損傷用の生体模倣インプラント。
【請求項2】
インプラントは、3Dプリンティングによって製造される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の幹細胞は、神経幹細胞である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記神経幹細胞は、胚性幹細胞、iPSC由来幹細胞、直接分化神経幹細胞、またはそれらの組み合わせである、請求項3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記少なくとも1種類の幹細胞は、間葉系幹細胞である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記幹細胞は、BDNF、NT3、GDNF、またはそれらの組み合わせを発現するように操作される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記3次元プリントされたインプラントは、ポリエチレングリコールジアクリレートもしくはゼラチンメタクリロール、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記インプラントは、脊髄に対する生体模倣物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントは、末梢神経に対する生体模倣物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
前記チャネルは、線形である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
前記チャネルは、互いに平行である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
前記チャネルは、再生軸索を前記第1端部から前記第2端部へ案内する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
前記インプラントは、ハニカム構造としてクラスター化された六角形の断面を有する2つ以上のチャネルを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
神経損傷の治療を必要とする
哺乳動物における前記神経損傷を治療する
ために構成されたインプラントであって、
前記
インプラント
は、前記神経損傷の場所
、またはその近傍に移植する
ように構成され、
前記
インプラントは、その場所での細胞の再生を可能にする
ために構成される、
請求項1に記載のインプラント
。
【請求項15】
前記神経損傷は、脊髄損傷、運動完全脊髄損傷、運動不全脊髄損傷、または末梢神経損傷である、請求項14に記載の
インプラント。
【請求項16】
前記神経損傷は、脊髄損傷である、請求項15に記載の
インプラント。
【請求項17】
前記神経損傷は、末梢神経損傷である、請求項15に記載の
インプラント。
【請求項18】
対象を身体的に訓練し、それによって対象の身体の損傷によって損なわれた部分に追加の神経信号を提供するように構成される
、
請求項
1に記載の
インプラント。
【請求項19】
前記損傷の領域を決定するために治療を必要とする被移植体の脊髄または末梢神経の位置をスキャンすることと、
前記損傷の領域を囲むように前記インプラントを3次元プリントすることと、
を含む、請求項1に記載の生体模倣インプラントを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年12月12日に出願された米国仮特許出願第62/433,142号明細書の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府が後援する研究開発に関する声明)
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号EB014986の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本明細書に開示されるのは、脊髄およびその神経損傷の治療のための幹細胞を含む3次元生体模倣インプラントである。
【背景技術】
【0004】
機能性組織をバイオプリントするための方法は、細胞増殖を誘導しそして組織成熟を促進するために不可欠な複雑な3次元(3D)マイクロアーキテクチャを構築するための適切なバイオファブリケーション技術の欠如である多くの課題に直面している。中枢神経系構造の3次元プリンティングはこれまで成功していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載されているのは、組織修復用の移植型装置またはインプラントである。いくつかの実施形態では、組織は脊髄組織または末梢神経組織であり得る。これらのインプラントは、これらの種類の組織のいずれかに対する損傷を治療するために使用され得る。
【0006】
インプラントは、層なしの3次元プリント構造を含み得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、第1端部および第2端部と、第1端部で始まり第2端部で終わる1つ以上のチャネルと、少なくとも1つのチャネルに含まれる少なくとも1種類の幹細胞とを含む3次元プリント構造を含み得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、インプラントは生体模倣物である。インプラントは、脊髄に対する生体模倣物であり得、コア(脊髄灰白質を表す)およびシェル(脊髄白質を表す)を含み、シェルはチャネルを含む。他の実施形態では、インプラントは、末梢神経に対して生体模倣物であり得、そして一緒に詰め込まれた線形チャネルのハニカム構造を含み得る。脊髄または末梢神経の場合、線形チャネルは再生している軸索を病変の別の側面に導き得る。
【0008】
したがって、本明細書に開示されているのは、脊髄または末梢神経損傷用の生体模倣インプラントであり、該インプラントは、第1端部および第2端部を含み、コアおよびシェルを含み、損傷部位の構造を模倣する3次元(3D)インプラントと、第1端部から始まり第2端部で終わるシェルの少なくとも1つのチャネルと、少なくとも1つのチャネルに含まれる少なくとも1つの種類の幹細胞と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、インプラントは3Dプリンティングによって製造される。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞は神経幹細胞である。いくつかの実施形態では、神経幹細胞は、胚性幹細胞、iPSC由来幹細胞、直接分化神経幹細胞、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞は間葉系幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、BDNF、NT3、GDNF、またはそれらの組み合わせを発現するように操作される。
【0011】
いくつかの実施形態では、3次元プリントされたインプラントは、ポリエチレングリコールジアクリレートもしくはゼラチンメタクリロール、またはそれらの組み合わせを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、インプラントは脊髄に対する生体模倣物である。いくつかの実施形態では、インプラントは末梢神経に対する生体模倣物である。
【0013】
いくつかの実施形態では、チャネルは線形である。いくつかの実施形態では、チャネルは互いに平行である。いくつかの実施形態では、チャネルは、再生軸索を第1端部から第2端部へ案内する。いくつかの実施形態では、インプラントは、ハニカム構造としてクラスター化された六角形の断面を有する2つ以上のチャネルを含む。
【0014】
神経損傷の治療を必要とする被移植体において神経損傷を治療するための方法もまた本明細書に開示され、該方法は、本明細書に開示される生体模倣インプラントを治療を必要とする場所に移植し、損傷部位での細胞の再生を可能にすることを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、神経損傷は、脊髄損傷、運動完全脊髄損傷、運動不全脊髄損傷、または末梢神経損傷である。いくつかの実施形態では、神経損傷は脊髄損傷である。いくつかの実施形態では、神経損傷は末梢神経損傷である。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、被移植体に理学療法を施すことを含む。
【0017】
本明細書に開示される生体模倣インプラントを製造する方法もまた本明細書に開示され、該方法は、損傷の領域を決定するために治療を必要とする被移植体の脊髄または末梢神経の位置をスキャンし、損傷領域を取り囲むようにインプラントを3次元的にプリントすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】脊髄構造を模倣する3Dプリントされたインプラントを示す。
図1Aは、UV光源(365nm波長)、スライス画像フロー生成とシステム同期のためのコンピュータ、光学パターン生成用のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、投影光学系のセット、試料位置制御用ステージ、製造プロセスのオンライン監視のためのCCD画像化システム、を含む、3Dプリンタのセットアップを示す。
【
図1B】脊髄構造を模倣する3Dプリントされたインプラントを示す。
図1Bは、インクジェット3Dプリンタでよく見られるように、離散層のない構造を形成するマイクロスケール連続投影3Dプリント(μCPP)層なし3Dプリンティングを示す。
【
図1C】脊髄構造を模倣する3Dプリントされたインプラントを示す。
図1Cは、無傷のT3ラット脊髄における軸索の重鎖ニューロフィラメント(NF200)標識を示す。画像の左は吻部、右は尾部。白質(パネルの上部)の軸索は吻部から尾部に移動する平行アレイに高度に組織化されているが、灰白質(パネルの下部)の軸索は線形アレイには存在しない。開示されるインプラントは白質の線形組織を模倣している。白線は白質と灰白質との間の境界を画定する。
【
図1D】脊髄構造を模倣する3Dプリントされたインプラントを示す。
図1Dは、T3ラット脊髄の背外側四分円における異なる軸索管(束)の投影を示す。rubro-赤核脊髄路(Ru)、raphe-前縫線脊髄路(Ra)、reticulo-オリーブ脊髄路(Ret)、proprio-脊髄固有束(Pr)、spinothalamic-脊髄視床路(ST)、およびCST-皮質脊髄路(C)が示される。中央の蝶形の部分はインプラントのコア(正常な脊髄の「灰白質」に似ている)であり、図の残りの部分はインプラントのシェル(正常な脊髄の「白質」に似ている)である。
【
図1E】脊髄構造を模倣する3Dプリントされたインプラントを示す。
図1Eは、吻部尾軸で達成され、それによって再生軸索(線)を病変の遠い側のそれらの適切な管に案内する案内を示す。インプラント内の再生軸索の出入り口を指す矢印は、インプラントが病変部位全体にわたって正確な3D座標を維持していることを示し、自然なホストアーキテクチャにマッチングしている。
【
図2】動的機械分析(DMA)を用いたインプラントの弾性率の機械的測定を示す。
【
図3A】本明細書に開示される例示的な脊椎インプラントを示す。
図3Aは、臨床的に完全なヒト(ASIA A)脊髄損傷の矢状中央頸部T1強調磁気共鳴(MR)画像を示す。傷害を受けた被移植体白質の細片は、病変(矢印)の前面(右側)に明らかである。
【
図3B】本明細書に開示される例示的な脊椎インプラントを示す。
図3Bは、
図3Aからの嚢胞性病変腔の追跡された概要を示す。
【
図3C】本明細書に開示される例示的な脊椎インプラントを示す。
図3Cは、正確な病変形状に対応する、3Dプリントされたインプラントのコンピュータ支援設計(CAD)3Dモデルを示す。
【
図3D】本明細書に開示される例示的な脊椎インプラントを示す。
図3Dは、プリントされたインプラントを示す。
【
図3E】本明細書に開示される例示的な脊椎インプラントを示す。
図3Eは、
図3Dのプリントされた3Dインプラントの人間の挫傷腔への仮想的な適合を示す。
【
図4】インプラント移植の4週間後に、脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。
図4は、全体的なインプラント構造が移植後4週間無傷のままであることを示す、軸索(神経フィラメントNF200)について標識された病変部位におけるインプラントの横断面画像を示す(横断面)。スケールバーは500μmである。(core:コア)。
【
図5A】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。移植部位(T3完全切断の部位)のニッスル(Nissl)染色は、アガロース足場の移植部位に反応性細胞層(矢印)を明らかにする(
図5A)。スケールバーは200μmである。左は吻部、右は尾部。中断線は、被移植体脊髄とインプラントとの境界を画定する。(scaffold:足場)。
【
図5B】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。本明細書に開示される3Dプリントされたポリエチレングリコールジアクリレート/ゼラチンメタクリロール(PEGDA/GelMa)インプラントの移植後に実質的に減衰する(
図5B)。スケールバーは200μmである。左は吻部、右は尾部。中断線は、被移植体脊髄とインプラントとの境界を画定する。(scaffold:足場)
【
図5C】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。反応性細胞層(RCL)の厚さの定量化±S.E.Mを示す。*p<0.05(スチューデントのt検定)。
【
図6A】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。病変のみ(インプラントなし)を有する動物におけるグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)免疫反応性によって明らかにされた被移植体グリア瘢痕(
図6A)を示す。
図6Aスケールバーは、
図6Cの250μmおよび100μmである。GFAP標識バリアは3DプリントされたPEGDA/GelMaインプラントの周囲には存在せず、その代わりに、グリア線維は、それらが潜在的に伸長軸索を支持し得る溝の中に縦方向に配置される。(Lesion:損傷)。
【
図6B】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。病変部のアガロース足場(
図6B)を示す。
図6Bのスケールバーは、
図6Cの250μmおよび100μmである。GFAP標識バリアは3DプリントされたPEGDA/GelMaインプラントの周囲には存在せず、その代わりに、グリア線維は、それらが潜在的に伸長軸索を支持し得る溝の中に縦方向に配置される。(Agarose:アガロース)。
【
図6C】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。病変部に3Dプリントされたインプラント(
図6C)(左側が吻部、右側が尾部)を示す。GFAP標識バリアは3DプリントされたPEGDA/GelMaインプラントの周囲には存在せず、その代わりに、グリア線維は、それらが潜在的に伸長軸索を支持し得る溝の中に縦方向に配置される。
【
図6D】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。損傷部位周囲の被移植体脊髄におけるGFAP強度の定量化±S.E.Mを示す。*p<0.05(事後テューキーの検定を伴うANOVA)。
【
図7A】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。インプラントは血管新生が良好である(血管に対するRECA-1免疫標識)(
図7A)。
図7Aのスケールバーは25μmである。
【
図7B】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。トルイジンブルー染色は血管を示している(アスタリスク)(
図7B)。
図7Bのスケールバーは20μmである。
【
図8A】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。NF200標識被移植体軸索はアガロース足場の周囲に存在する瘢痕を横切ることができない(
図8A)。スケールバーは100μmである。破線は病変部位の吻部面からのインプラントの入り口を示す。(Agarose:アガロース)。
【
図8B】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。NF200標識被移植体軸索は3Dプリントされたインプラントを容易に貫通する(
図8B)。スケールバーは100μmである。破線は病変部位の吻部面からのインプラントの入り口を示す。
【
図9A】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。
図9Aは、隣接する鞘を形成するシュワン細胞(Sc)に関連する軸索(アスタリスク)を示すチャネル内の電子顕微鏡写真画像である。スケールバーは1μmである。
【
図9B】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。
図9Bは、NF200標識軸索を包囲するS100標識シュワン細胞(矢印)を示す、
図9Aからの拡大チャネルを示す。スケールバーは5μmである。
【
図9C】移植後4週間で脊髄損傷部位に移植された3Dプリントされたインプラントを示す。
図9Cは、シュワン細胞(SC)を有するインプラント中の有髄軸索を示すチャネルの電子顕微鏡写真である。スケールバーは0.5μmである。
【
図10A】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Aは、GFP発現神経幹細胞(矢印)で満たされているチャネルを示す(水平断面)。スケールバーは200μmである。(Fill:充填物、Wall:壁)。
【
図10B】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Bは、被移植体NF200標識軸索が貫通しているチャネルへの吻部入り口を示し、被移植体細胞は、GFP発現がないことによってグラフト由来軸索と区別される。スケールバーは50μmである。
【
図10C】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Cは、移植された神経幹細胞が、移植線形アーキテクチャによって線形化されたGFP発現軸索を拡張することを示す。
【
図10D】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Dは、病変の吻部(左側)から幹細胞充填チャネルに入り、チャネル内で直線的に再生する(矢印)5HT標識被移植体セロトニン作動性軸索を示す。スケールバーは100μmである。
【
図10E】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Aは、GFP発現神経幹細胞(矢印)で満たされているチャネルを示す(水平断面)。
図10Eは、貫通する軸索の数は減少するが、幹細胞を欠く空のインプラントに直線的に再生するセロトニン作動性軸索を示す。スケールバーは100μmである。
【
図10F】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Fは、幹細胞を含むインプラントの尾部端部に再生し、インプラント構造によって作り出された線形境界を尊重する5HT標識被移植体セロトニン作動性軸索を示す。スケールバーは50μmである。
【
図10G】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Gは、インプラントの尾部に達する5HT軸索の定量化を示す。*p<0.05(ANOVA、+S.E.M.)。
【
図10H】ラットに移植した4週間後に、本明細書に開示され神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを示す。
図10Hは、病変より遠位の被移植体脊髄内に再生するためにチャネルの尾部を出る5HT標識運動軸索を示す(矢印)。この線は、尾部チャネルから尾部脊髄への出口を画定する。スケールバーは50μmである。(Host Caudal:被移植体尾部)、(Spinal Cord:脊髄)。
【
図11】超微細構造レベルで、様々な直径の軸索がチャネル内に存在し、
図10のインプラントの移植後に多くの軸索が髄鞘形成される。スケールバーは500μmである。
【
図12A】移植後4週間の移植部位の超微細構造分析を示す。
図12Aは、様々な直径の軸索(アスタリスク)がチャネル内に存在し、多くの軸索が有髄(M)であることを示し、スケールバーは500nmである。
【
図12B】移植後4週間の移植部位の超微細構造分析を示す。
図12Bは、軸索を髄鞘形成および鞘形成するために複数の突起を送る希突起膠細胞を示す。スケールバーは0.2μmである。
【
図13】移植から4週間後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。シナプス(矢印)は、チャネル内の軸索と移植神経幹細胞の樹状突起との間に形成される。スケールバーは200μmである。シナプスは非対称であり、シナプス前ボタンは丸い小胞を含み、これらが興奮性であることを示す。
【
図14A】移植から4週間後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図14Aは、移植後4週間で移植神経幹細胞(GFP)の樹状突起(Map2で標識)との並置接触(矢印)を形成する移植チャネルに再生する5HT被移植体軸索を示す。スケールバーは10μmである。
【
図14B】移植から4週間後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図14Bは、インプラントの尾部に達する5HT軸索の定量化を示す。*p<0.05(ANOVAp<0.01、両方のNSCインプラントグループとNSCグラフトのみのグループおよび空のインプラント群を比較した事後テューキーの検定P<0.01)。
【
図15A】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Aは、移植後6ヶ月の解剖学的構造を示す。
図15A:チャネルは構造的に無傷のままであり、GFP発現神経幹細胞で満たされている。水平断面、左に吻部。(Fill:充填物、Wall:壁)。
【
図15B】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Bは、移植後6ヶ月の解剖学的構造を示す。
図15B:RFPで順行的に標識された皮質脊髄軸索は、インプラントに入り、そしてインプラント構造によって整列されて、尾方向に直線的に延びる。(Rostral Entrance:頭方入り口)。
【
図15C】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Cは、移植後6ヶ月の解剖学的構造を示す。水平断面
図15C:皮質脊髄軸索(CST)軸索は、チャネル内でNeuN標識ニューロンに集束し、体細胞との潜在的なブートン様接触を形成する。
【
図15D】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Dは、移植後6ヶ月の解剖学的構造を示す。
図15D:GFP免疫反応性軸索は、インプラントから病変の尾部にある白質および灰白質の被移植体に広がる。腹側外側白質、病変から2mm尾部。
【
図15E】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Eは、移植後6ヶ月の解剖学的構造を示す。
図15E:神経幹細胞(NSC)由来のGFP標識軸索は、病変から2mm尾部に位置する灰白質NeuN免疫反応性被移植体ニューロン上に潜在的なボタン様構造を形成する。
【
図15F】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Fは行動研究を示す。
図15F:神経幹細胞/インプラント治療動物は、インプラント後5ヶ月でBBB運動スケールで有意な機能回復を示し、両後肢の3つの関節のそれぞれの一貫した動きを反映している(**p<0.05、*p<0.01)。
【
図15G】長期間のin vivo研究において神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。
図15Gは行動研究を示す。
図15G:移植後6ヶ月に実施された電気生理学的研究の概略図。経頭蓋電気刺激を脳内の運動皮質に適用し、後肢から運動誘発電位(Motor Evoked Potentials:MEP)を記録した。
【
図16A】移植から6ヶ月後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。3Dプリントされた幹細胞移植を施したラットは、MEP応答の部分的回復を示す(
図16A)。
【
図16B】移植から6ヶ月後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。この回復は、インプラント上の臍帯のその後の再切断によって廃止される(
図16B)。
【
図16C】移植から6ヶ月後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。インプラントが空の動物ではMEPの回復は見られない(
図16C)。
【
図16D】移植から6ヶ月後の神経幹細胞を取り込んだプリントされたインプラントを示す。平均MEP振幅が、神経幹細胞含有インプラントを移植した動物において有意に大きいことを示す(p<0.01)。
【
図17】BBB運動スケールで有意な機能的改善を示す幹細胞負荷移植動物を示し、両足の3つの関節のそれぞれの動きを示している(*p<0.05、**p<0.01)。N=8 NSC/インプラントグループおよびN=6 空のインプラントグループ。
【
図18A】異なる長さの(
図18A)2mmのプリントされたインプラントの長手方向の画像を示す。スケールバーは0.5mmである。(Agarose:アガロース)。
【
図18B】異なる長さの(
図18B)4mmのプリントされたインプラントの長手方向の画像を示す。スケールバーは0.5mmである。(Gelatin:ゼラチン)。
【
図19A】アガロース(
図19A)のニッスル染色を示し、4週間後のアガロースおよびPEGDAにおけるインプラント構造の持続、およびヒアルロン酸足場の分解を示す。
【
図19B】PEGDA/GelMa(
図19B)のニッスル染色を示し、4週間後のアガロースおよびPEGDAにおけるインプラント構造の持続、およびヒアルロン酸足場の分解を示す。
【
図19C】ヒアルロン酸インプラント(
図19C)のニッスル染色を示し、4週間後のアガロースおよびPEGDAにおけるインプラント構造の持続、およびヒアルロン酸足場の分解を示す。(Hyaluronan:ヒアルロナン)
【
図19D】RCLの厚さがPEGDA-GelMaインプラントにおいて有意に減少することを示している(p<0.05、ANOVA;PEGDAグループをアガロースおよびHA足場と比較した事後テューキーの検定)。平均±s.e.m.スケールバーは250μmである。
【
図20】壁厚の減少によって測定されたインプラントの分解を示す。*p<0.0001、**p<0.001。(ANOVA;事後テューキーの検定)。
【
図21A】移植後4週間のニューロンの再生を示す。
図21Aは、4つの異なる動物からのGFP標識化インプラントを示し、インプラントと被移植体との間の界面も占めるげっ歯類の神経幹細胞によるチャネルの完全かつ均一な充填を実証する(矢印)。スケールバーは0.5mmである。
【
図21B】移植後4週間のニューロンの再生を示す。
図21Bは、GFPに加えて、ニューロンマーカーHu(
図21B)を発現するチャネル中の幹細胞由来細胞を示す。スケールバーは5μmである。
【
図21C】移植後4週間のニューロンの再生を示す。
図21Cは、GFPに加えて、NeuN(
図21C)のいずれかを発現するチャネル中の幹細胞由来細胞を示す。スケールバーは5μmである。
【
図21D】移植後4週間のニューロンの再生を示す。
図21Dは、それらがGFPと共にオリゴデンドロサイトマーカーOlig2も発現することを示す。
【
図21E】移植後4週間のニューロンの再生を示す。
図21Eは、星状細胞マーカーGFAPをGFPと共に示す。スケールバーは5μmである。
【
図22】チャネル内のグラフト細胞における幹細胞分化マーカーの分布を示す。
【
図23】インプラントなしで病変部位に注入された幹細胞グラフトにおいてセロトニン作動性軸索(矢印)が見えることを示し、軸索は垂直に配向されており、そのため、病変部位の吻部-生殖軸に不整合である。中断された線はグラフト-ホスト界面を画定する。左は吻部、右は尾部(病変部)。スケールバーは50μmである。
【
図24A】幹細胞が一杯にならないチャネル(
図24A)を示し、インプラントの尾部には実質的に少ない5HT標識軸索が含まれています。スケールバーは50μmである。
【
図24B】幹細胞がインプラントのない幹細胞グラフト(
図24B)を示し、インプラントの尾部には実質的に少ない5HT標識軸索が含まれています。スケールバーは50μmである。
【
図25】GFPと共標識しなかった、チャネル内の5HT標識被移植体運動軸索の10μmのzスタックの3Dレンダリングを示し、脊髄由来神経幹細胞グラフトにはセロトニン作動性神経細胞体が存在しないことを示す。
【
図26】(K1、スケールバーは100μm)5HT標識化された運動軸索が、被移植体灰白質、(K2、スケールバーは50μm)被移植体白質、および(K3、スケールバーは25μm)白から灰白質への交差における病変の尾部の被移植体脊髄において見られることを示す。被移植体軸索に対するNF200染色が見られる。
【
図27A】血管新生を示す、神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントの単一チャネルを示す。GFP発現NSCを取り込んだチャネルの内側のGAP43標識軸索(
図27A、スケールバーは25μmである)。
【
図27B】血管新生を示す、神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントの単一チャネルを示す。インプラントの尾部にある被移植体脊髄中のGAP43標識軸索(
図27B、スケールバーは25μmである)。
【
図28A】トルイジンブルー染色を示し、矢印は血管を指す(
図28A、スケールバーは100μmである)。
【
図28B】トルイジンブルー染色を示し、矢印は血管を指す。EM画像では、血管に星印が付されている(
図28B、スケールバーは1μmである)。
【
図29】周皮細胞についてのPDGFR標識が、周囲のRECA-1標識血管を明らかにしたことを示し、BBB回復を示す。スケールバーは15μmである。
【
図30】空のインプラント処理動物と比較して幹細胞インプラントを移植した動物においてMEP潜時がより短く、無傷の動物において観察された潜時に近いことを示す(p<0.01)。
【
図31】幹細胞の有無にかかわらずインプラントを投与された動物からの運動誘発電位記録を示す。
【
図32A】線形チャネルを含むインプラントを示す。
【
図33A】互いに詰め込まれた線形チャネルのハニカム構造を含むインプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に開示されるのは、脊髄または末梢神経の複雑な束状マイクロスケール構造を生体模倣する再生促進インプラントの迅速3次元(3D)マイクロスケールプリンティングのためのインプラントおよび方法である。ポリマーから構成されるインプラントは、迅速にプリントすることができ、臨床的に関連のある脊髄または末梢神経のサイズおよび病変形状に合わせて拡大縮小することができる。負傷した被移植体軸索は、3D生体模倣インプラントに再生され、デバイスに移植された神経幹細胞にシナプス形成し、そして、移植された神経幹細胞は次に、シナプス伝達を回復させ、機能的転帰を有意に改善するために、損傷の下で軸索をインプラントから被移植体の脊髄、または末梢神経の中に延ばす。損傷部位を横切る新たな代替電気生理学的リレーは、著しい機能的運動改善を支持するものを形成する。このように、複雑な3D生体模倣インプラントは、精密医療を通して中枢神経系の再生を促進する手段を提供する。
【0020】
本明細書に記載されているのは、身体機能の回復を助ける医療用インプラントである。機能は、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ(雌牛)、ブル(雄牛)、ヤギ、ヒツジ、イルカ、イヌ、ネコ、ラクダなどを含むことができる哺乳動物において回復され得る。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。本明細書のいくつかの実施形態では、哺乳動物は被移植体と呼ばれる。
【0021】
これらの医療用インプラントは、いくつかの実施形態では、脊髄損傷または末梢神経損傷後の軸索再生を促進するために使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、医療用インプラントは3次元インプラントおよび任意選択で幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、インプラントは3Dプリンティングによって製造される。これらのインプラントは、特定の患者の解剖学的構造に合うようにカスタムデザインされ得る。用語「足場」および「インプラント」は、互換的に使用され、幹細胞を伴うまたは伴わない3Dプリント構造を指す。
【0023】
生体工学的な足場またはインプラントは、脊髄または末梢神経病変部位への軸索再生を支持するが、これらの技術は、移植部位での異物反応、厄介な製造要件、人間規模の損傷への拡大縮小における制限、および天然の脊髄または末梢神経の生物模倣の欠如によって制限されてきた。本明細書に記載されたインプラントおよびインプラントを使用する方法は、脊髄または末梢神経の複雑な束状構造を生体模倣する構造を含む。プリントされ得るインプラントは、簡単かつ迅速に製造され得、異物反応を減少させることができ、および/または病変部位を横切って線状に整列した被移植体軸索再生を支持し得る。さらに、神経幹細胞がインプラントに取り込まれ得る。幹細胞は、それらが病変部位を横切りそしてそれを越えて架橋するように再生する被移植体軸索を支持し得、in vivoでの機能的再生を促進する。
【0024】
脊髄は、脊髄インプラントをデザインするためのテンプレートとして使用される(
図1A)。マイクロチャネルは、損傷の上と下の被移植体軸索管とのインプラントチャネルの位置合わせを提供するために含まれる(
図1D~E)。脊髄の内側の「灰白質」領域は通常、損傷部位の下に突き出ている軸索を含まないため、インプラントのこの構成要素であるコアは、インプラントの構造的完全性を高める固体領域として設計される(
図1D)。アガロースマイクロチャネルインプラントの使用は、病変部位に入る被移植体軸索の80%が、病変の反対側(尾部)の端部に達するように線状または平行な導管によって誘導され得ることを示した。しかしながら、アガロースは、インプラント内の軸索を減弱および捕捉するコラーゲン系反応性細胞層からなる異物反応を誘発し、チャネルを超えた軸索成長を妨げた。このように、異物反応の減少により反応性細胞層を減少させ、被移植体軸索がより良好に病変通過し、それを横切ることさえ可能にする分解性材料の混合物から製造されたインプラントが本明細書に開示される。
【0025】
インプラントを形成するために使用される材料は生物学的に許容されるポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)およびポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミドなどであるがこれらに限定されないポリエチレングリコール系ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーはゼラチンメタクリロール(GelMA)ヒドロゲルを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、およびゼラチンメタクリロールの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびゼラチンメタクリロールの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、およびゼラチンメタクリロールの組み合わせを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、生体適合性材料PEGDAは、インプラント材料として使用される。PEGDA自体は細胞に対して非接着性であり、それ故、ゼラチンメタクリレート(GelMa)、細胞結合リガンドおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ分解部位を保持する光重合性変性コラーゲンが、インプラント壁への細胞の付着と長期の細胞生存率を支持するために含まれる。インプラントと被移植体との間の機械的性質の不一致が、脊髄または末梢神経界面での圧迫または裂傷を招き、統合の失敗を引き起こす可能性があるので、天然脊髄、または末梢神経、組織の機械的性質を模倣する組み合わせが確認されるまで、様々な濃度の各材料およびプリントされたインプラントの架橋密度を試験した。
【0027】
3Dバイオプリンティングの利点は、磁気共鳴画像法(MRI)で識別することができる個々の患者の病変部位に適合するように異なるサイズおよび不規則な形状のインプラントを迅速にプリントし得ることである。
図3A~Eに示されるように、PEGDA/GelMaから形成されたインプラントは、MRIに従ってヒト脊髄病変腔の正確な形状に適合するようにプリントされた。さらに複雑な人間の損傷空洞の形態に適合するインプラントがプリントされている。
【0028】
本明細書に開示されるインプラントは、コアとシェルとを含む。コアは正常な脊髄または末梢神経の「灰白質」部分に類似し、そしてシェルは正常な脊髄または末梢神経の「白質」部分に類似する。
【0029】
インプラントは1つ以上のチャネルを含み得る。いくつかの実施形態では、チャネルはシェル内にある。いくつかの実施形態では、1つ以上チャネルは、第1面から第2面まで延びる。いくつかの実施形態では、第1面は上面であり、第2面は下面である。いくつかの実施形態では、第1面は下面であり、第2面は上面である。いくつかの実施形態では、第1面は第1側面であり、第2面は第2側面である。いくつかの実施形態では、第1面は上面であり、第2面は側面である。いくつかの実施形態では、第1面は下面であり、第2面は側面である。
【0030】
チャネルは、組織の内方成長を助長する断面形状を有し得る。いくつかの実施形態では、断面形状は、正方形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、長方形、台形、楕円、トルクス、任意の数の腕を持つ星形状、クローバー形状、任意の数の腕を持つ葉形状、他の曲線形状もしくは直線形状など、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、1つのグループまたは1つのクラスターのチャネルはハニカム構造を有し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるチャネル断面は、単一のインプラントに使用され得る。いくつかの実施形態では、いくつかのチャネルは断面が長方形であり、いくつかは六角形である(ハニカム構造を作る)。治療的使用を達成する任意の組み合わせが使用され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、インプラントには少なくとも1種類の幹細胞が取り込まれ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞は神経幹細胞である。神経幹細胞は、胚性幹細胞、iPSC由来幹細胞、分化幹細胞、直接分化神経幹細胞(例えば、幹細胞状態を経由せずに皮膚からニューロンへの分化)、GFP発現神経幹細胞、またはそれらの組み合わせである。他の実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞は間葉系幹細胞である。幹細胞は、BDNF、NT3、GDNF、またはそれらの組み合わせを発現するように操作され得る。
【0033】
インプラントは実質的に任意の長さに形成され得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約20mm、約30mm、約40mm、約50mm、約2mm~約4mm、約2mm~約10mm、または約2mm~約20mmの長さを有し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、インプラントは、脊髄構造を模倣した形状および構造で形成され得る。これらの構造は、軸索トラックおよびチャネルを含み得るが、これらに限定されない。軸索トラックは、rubro-赤核脊髄路、raphe-前縫線脊髄路、reticulo-オリーブ脊髄路、proprio-脊髄固有束、spinothalamic-脊髄視床路、およびCST-皮質脊髄路を含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、インプラントは、本明細書で「チャネル」と呼ばれるインプラント内の軸索への入り口および出口を含み得、これは、病変部位全体にわたって3D座標を維持し、天然の被移植体構造と一致する。
【0036】
いくつかの実施形態では、インプラントは、約250kPa超、約200kPa超、約300kPa超、約250kPa~約300kPa、または約200kPa~約300kPaの弾性率を有し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、インプラントは実質的に生物学的安定性がある。実質的に生物学的安定性とは、インプラントが移植後3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、1年後、または5年後に80%、90%、95%、99%または完全無傷であることを意味する。
【0038】
いくつかの実施形態では、インプラントはその表面へのコラーゲン沈着に抵抗し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、別のポリマーまたは金属材料で形成されたインプラントと比較した場合、コラーゲン沈着を約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約95%超低減し得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、インプラントは、移植部位における反応性細胞の堆積に抵抗し得る(または反応性細胞層のサイズを縮小し得る)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、別のポリマーまたは金属材料で形成されたインプラントと比較した場合、反応性細胞層のサイズを約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、または約60%超低減し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、アガロースで形成されたインプラントと比較した場合、反応性細胞層のサイズを約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、または約50%、または約60%超低減し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、インプラントは、移植後に、約400μm未満、約350μm未満、約300μm未満、約250μm未満、または約400μm~約200μmの間の厚さを有する最小反応性細胞層を引き付け得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、インプラントは、別のポリマーまたは金属材料で形成されたインプラントと比較した場合、移植部位でのグリア瘢痕形成を約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超低減し得る。グリア瘢痕形成(神経膠症)は、中枢神経系への損傷後に起こるアストログリオーシスを含む反応性細胞プロセスである。いくつかの実施形態では、インプラントは、アガロースで形成されたインプラントと比較した場合、移植部位のグリア瘢痕形成を約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約50%、または約90%超低減し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、インプラントは、未治療の病変と比較した場合、移植部位でのグリア瘢痕形成を約20%超、約30%超、約40%超、約50%超、または約60%超低減し得る。
【0043】
アガロースインプラントと比較すると、本発明のインプラントは、伸長軸索を潜在的に支持し得る溝内に長手方向に配置されたグリア線維をもたらし得る。
【0044】
本明細書に記載のインプラントは十分に血管新生され得、それによって血管がインプラントに浸潤することを可能にする。
【0045】
さらに、インプラントは、軸索がインプラント材料を貫通することを可能にし得る。この貫通は、軸索がそれらのインプラントの周囲に発生する星状細胞瘢痕を横切ることができないアガロース系インプラントなどの他のインプラントとは対照的である。本明細書に記載のインプラントを貫通する軸索は、隣接する鞘を形成するシュワン(Schwann)細胞と会合し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、インプラントに少なくとも1種類の幹細胞が取り込まれると、被移植体軸索は幹細胞充填チャネルに入り、チャネル内で直線的にまたは平行して再生し得る。他の実施形態では、被移植体セロトニン作動性軸索は、病変の吻側面から幹細胞で満たされたチャネルに入り、チャネル内で直線的にまたは平行して再生し得る。いくつかの実施形態では、セロトニン作動性軸索は、幹細胞が存在しなくても、インプラントに入り込み、チャネル内で直線的にまたは平行して再生し得る。しかしながら、この再生は、幹細胞含有インプラントと比較して、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、または約40%~約50%低減し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、再生中の被移植体軸索はインプラントの尾部に到達し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞を取り込んだ場合、インプラントは、幹細胞を含まないインプラントと比較して、インプラントの尾部に到達する軸索を少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、または少なくとも約120%増加させる。
【0048】
いくつかの実施形態では、インプラントが、運動軸索がチャネルの尾部の側面を出て、病変の遠位側の被移植体脊髄または末梢神経に再生することを可能にし得る。他の実施形態では、運動軸索は、病変を超えて約3.5mmまで、約2.5mmまで、または約4.5mmまで検出可能なままであり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントのチャネルは、様々な直径の軸索を収容または勧誘し得る。さらに、チャネル内で再生する軸索は髄鞘形成され得る。いくつかの実施形態では、軸索がチャネル内に形成されると、チャネル内の軸索と移植神経幹細胞の樹状突起との間にシナプスが形成され得る。シナプスは、丸い小胞を含む非対称および/またはシナプス前ボタンであり得る。いくつかの実施形態では、形成されたシナプスの少なくとも一部は興奮性であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、被移植体軸索はチャネルに再生し、移植された神経幹細胞の樹状突起と並置接触を形成し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、運動誘発電位(MEP)反応の少なくとも部分的な回復をもたらし得る。運動誘発電位は、磁気的または電気的のいずれかで、脊髄を直接刺激した後の筋肉から記録される。いくつかの実施形態では、これらのMEP応答は、指およびつま先を含む腕および/または足にあり得る。幹細胞取込インプラントは、空のインプラントと比較した場合、MEP応答を約4倍~約10倍、約3倍~約10倍、約4倍から約8倍、または約3倍~約8倍増加させ得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、損傷後の運動行動の少なくとも部分的な機能的改善をもたらし得る。げっ歯類における損傷後の運動行動は、Basso、BeattieおよびBresnahan(BBB)運動尺度によって測定される。目盛り(0~21)は、連続的な回復段階を表し、関節の動き、後肢の動き、足踏み、前肢と後肢の協調、体幹の位置と安定性、足の位置、および尾の位置の組み合わせを分類する。
【0053】
いくつかの実施形態では、移植後、移植チャネルは幹細胞で均一に満たされ得る。いくつかの実施形態では、移植後、チャネルは神経幹細胞で均一に満たされ得る。いくつかの実施形態では、幹細胞はインプラントと被移植体の間の界面を占め得る。いくつかの実施形態では、チャネル中の幹細胞由来細胞は、限定はしないが、HuまたはNeuNなどのニューロンマーカーを発現し得る。他の実施形態では、チャネル中の幹細胞由来細胞は、限定はされないが、Olig2のようなオリゴデンドロサイトマーカー、または限定されないが、GFAPのような星状細胞マーカーを発現し得る。いくつかの実施形態では、細胞は上記のうちの2つ以上を発現し得る。
【0054】
驚くことに、いくつかの実施形態では、脊髄由来神経幹細胞グラフトにはセロトニン作動性神経細胞体は存在しない。いくつかの実施形態では、驚くことに、脊髄由来神経幹細胞グラフトにはセロトニン作動性神経細胞体は存在しない。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞を取り込んだ本明細書に記載のインプラントを移植した被移植体は、空のインプラントを移植した被移植体と比較してより短いMEP潜伏期を示し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1種類の幹細胞を取り込んだ本明細書に記載のインプラントを移植した被移植体は、無傷の被移植体で観察される潜伏期に非常に似ているMEP潜伏期を示し得る。いくつかの実施形態では、MEP潜伏期は、約9ms~約12msの間、約8ms~約10msの間、約8ms~約12msの間、約9ms~約10msの間、または約7ms~約13msの間であり得る。
【0056】
上述のように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントはプリントされている。バイオプリンティング機能組織、一般的には、顔は、細胞増殖を誘導しそして組織成熟を促進するために不可欠な複雑な3Dマイクロアーキテクチャを構築するための適切なバイオファブリケーション技術の欠如である多くの課題に直面している。一般的なインクジェットまたは押出系バイオプリンティングアプローチは、皮膚、軟骨などの単純な2D構造および血管、大動脈弁、および気管などの単純な3D構造のプリンティングを可能にする材料を堆積させるためにノズルを使用する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のインプラントは、マイクロスケール連続投影3Dプリンティング(μCPP)を使用して製造され得る。マイクロスケールの連続投影プリンティングは、様々な生体材料や細胞を使って複雑な3Dアーキテクチャを製作し得る。そのようなプリンティングは、(ノズル系アプローチとは対照的に)XおよびY方向の両方にスキャンすることなく達成し得る。このようにして、3次元物体をZ方向に1回の連続プリントで製造し得る。いくつかの実施形態では、インプラント全体をプリントするのに必要な時間はわずか数秒である。いくつかの実施形態では、インプラントは、約1秒、約2秒、約2秒未満、約3秒未満、約4秒未満、約5秒未満、約10秒未満、約20秒未満、または約30秒未満でプリントされ得る。一実施形態では、2mmインプラント全体をプリントするのに約1.6秒しか必要としない。このプリント速度は、従来のノズルプリンタの約1,000倍の速度である。
【0058】
重合のために集束光を使用することは、1μmのプリンティング解像度を生成し、これはノズル系インクジェットプリントに対して50倍の改善である。インクジェットまたは押出系アプローチでは、液滴または線の間の人工的な界面によって機械的完全性が損なわれ得、in vivo適用中または適用後に機械的破損を引き起こし得る。Z方向に層のない解像度を提供することによって、構造は、新しい位置への線形ステージの移動によって引き起こされるこれらの平面アーチファクト(界面)を示し得ない。したがって、本明細書に記載のμCPPは、3Dプリントされたインプラントの機械的完全性を向上させることができ、マイクロスケールの解像度で複雑な3D生体模倣構造の迅速な製造を提供し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、インプラントは、脊髄離断または末梢神経損傷の部位への移植のために単一部分にプリントされる。いくつかの実施形態では、インプラントは2つ以上の部分にプリントされ、それによって損傷を受けたが切断されていない脊髄、または末梢神経は、本明細書に開示されるインプラントを用いて治療され得る。脊髄損傷(SCI)または末梢神経損傷が切断ではない場合、インプラントの1つ以上の部分は、生き残っている組織を囲むように移植され得、そしてこれらの部分は、生物学的に許容される接着剤を使用して互いに接着される。したがって、いかなる生存組織も維持し得、被移植体の脊髄、または末梢神経の再生を損傷部位で促進し得る。
【0060】
インプラントは患者ごとにカスタマイズされる。患者の脊髄、または末梢神経を画像化すると、CADソフトウェアを使用して3Dモデルが作成される。次に、このモデルを使用して、病変部に適合してそれを満たす患者固有のインプラントをプリントする。したがって、場合によっては、
図1Dの設計どおりにインプラント全体をプリントする必要がないことがある。損傷がモデルよりも全体の脊髄(部分的な病変)ほど大きくない場合、
図1Dに示されるものよりも小さくなるであろう。医師は、どの部位、全部、または病変部位にインプラントを満たすかについて最終的な決定を下す。例えば、医師は(蝶の形を除く)チャネル部分のみをプリントすることを決定するかもしれない。
【0061】
他の実施形態では、3Dプリントされた生体模倣インプラントは、脊髄または末梢神経の損傷に基づいてプリントされ、プリントされたインプラントの一部だけが損傷部位に移植される。いくつかの実施形態では、ハニカム部分のみが移植される。
【0062】
本明細書に記載のインプラントは、in vivoでの安定性を示し、重度の(完全な)SCI部位にわたる軸索再生および再髄鞘形成を支持し得る。米国では50万人を超える人々がSCIに罹患しており、その結果、患者と介護者の両方に多大な心理的および経済的コストがかかる。本明細書に記載の装置および方法を使用する3次元プリンティングは、軸索再生を刺激し、誘導し、そして整列させるために個人の損傷の正確な解剖学的構造に「適合する」個別化インプラントの製造を可能にし得る。さらに、インプラントに神経幹細胞を取り込んで、神経修復または再髄鞘形成をさらに支援するインプラントを製造し得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、被移植体運動軸索は再生し、完全な脊髄、または末梢神経、病変部位を越えて生体模倣インプラントを介して遠位脊髄、または末梢神経に架橋し得る。
【0064】
他の実施形態では、本発明のインプラントおよび治療方法は、最も困難なSCIのモデルである完全脊髄切断術における機能の回復を支持し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、迅速な3Dプリンティングと幹細胞生物学の融合である、本発明のインプラントは、患者固有の再生療法を提供することによって、脊髄または末梢神経の治療を提供し得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本インプラントは、脊髄損傷または末梢神経損傷後の軸索再生を促進し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本インプラントは、1~20ミリメートル以上の距離にわたって、損傷を受けた数百を超える被移植体軸索の再生または再髄鞘形成を提供し得る。いくつかの実施形態では、本インプラントは、1~20ミリメートル以上の距離にわたって、損傷を受けた数千を超える被移植体軸索の再生または再髄鞘形成を提供し得る。いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、1~20mm、1~10mm、1~5mm、1~4mm、1~3mm、1~2mm、2~4mm、3~4mm、2~5mm、または3~5mmの距離にわたって被移植体軸索の再生または再髄鞘形成を提供し得る。いくつかの実施形態では、本インプラントは、約50mmを超える、約100mmを超える、約150mmを超える、約200mmを超える、またはそれ以上の距離にわたって延び得る軸索を支持し得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、完全な脊髄切断または末梢神経切断後でさえも被移植体に機能的改善を提供し得る。いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、幹細胞移植後に被移植体に機能的利益を提供し、その結果、損傷した回路を「スプライシング」し、被移植体軸索はグラフト中のニューロンと貫通してシナプス形成し、次にグラフト由来の軸索は病変部位から延出し、損傷に対して尾部の被移植体の脊髄内または末梢神経細胞とシナプスを形成する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、病変部位における神経幹細胞インプラントから出現する軸索の機能的有用性を最適化し得る。いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、接続された回路をそれらの正しい尾部白質突起と整列させ得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明のインプラントは、個々の患者の病変に「カスタムフィット」インプラントを提供し得る。
【0071】
本明細書に記載のインプラントを製造する方法も記載されている。方法は、治療を必要とする領域をスキャンするステップと本明細書に記載のインプラントをプリントするステップとを含み得る。プリントすることは3Dプリンティングによることができる。
【0072】
さらに、本明細書に記載のインプラントを使用して症状を治療する方法が記載される。症状は、限定されないが、神経障害、脊髄損傷、運動性完全脊髄損傷、運動性不全姓脊髄損傷、末梢神経損傷、腸の機能不全、失禁、インポテンツ、その他の性的機能不全、疼痛、しびれ、ニューロパチー、体温が調節されないなど、またはそれらの組み合わせを含み得る。これらの症状のうちのあるものは、脊髄損傷の続発症であり、それ故、損傷部位の治療、および損傷部位での機能の回復は、1つ以上の後遺症を治療するであろう。
【0073】
一実施形態では、神経損傷を治療する方法が記載される。神経損傷を治療する方法は、治療を必要とする領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および神経損傷を治療することを含み得る。
【0074】
一実施形態では、脊髄損傷を治療する方法が記載される。脊髄損傷を治療する方法は、治療を必要とする領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および脊髄損傷を治療することを含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、運動性完全脊髄損傷を治療する方法が記載される。運動性完全脊髄損傷を治療するための方法は、治療を必要とする脊髄の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および運動性脊髄損傷を治療することを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、麻痺を治療するための方法が記載される。麻痺を治療するための方法は、治療を必要とする脊髄の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および麻痺を治療することを含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、脊髄損傷から生じる腸機能不全を治療する方法が記載される。脊髄損傷に起因する腸機能障害を治療する方法は、治療を必要とする脊髄の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および脊髄損傷から生じる腸機能不全を治療することを含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、脊髄損傷から生じるインポテンツを治療する方法が記載される。脊髄損傷に起因するインポテンツを治療する方法は、治療を必要とする脊髄の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および脊髄損傷に起因するインポテンツを治療することを含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、疼痛を治療するための方法が記載される。疼痛を治療するための方法は、治療を必要とする脊髄の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、インプラントを領域内の位置に移植すること、および疼痛を治療することを含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、末梢神経損傷を治療するための方法が記載される。完全または部分的末梢神経損傷を治療するための方法は、治療を必要とする末梢神経部位の領域をスキャンすること、本明細書に記載のインプラントをプリントすること、にインプラントを領域内の位置移植すること、および末梢神経損傷を治療することを含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、場所は脊髄病変であり得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、場所は末梢神経病変であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、治療方法は、個体を他の治療様式にさらすことをさらに含み得る。これらの治療法は、対象を身体的に訓練し、それによって対象の身体の損傷によって損なわれた部分に追加の神経信号を提供するように構成された訓練装置またはシステムを含み得る。訓練装置は、訓練を補助するために、ロボット工学、外骨格、トレッドミル、杖、歩行器、松葉杖、体重支援システム、理学療法、またはそれらの組み合わせを使用し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、治療方法は、インプラントチャネルを通して軸索を成長させることをさらに含み得る。
【0085】
キットについても説明される。キットは、一体化容器でのインプラントおよび使用説明書を含み得る。
【0086】
いくつかのキットは、一体化容器での治療を必要とする領域のスキャンおよび使用説明書を含み得る。
【0087】
他のキットは、一体化容器での、治療を必要とする領域のスキャン、インプラントをプリントするのに必要とされるポリマー、および使用説明書を含み得る。
【0088】
他のキットは、一体化容器での、治療を必要とする領域のスキャン、インプラントをプリントするためのPEGDAおよびGelMa、ならびに使用説明書を含み得る。
【0089】
(実施例1)
ラット脊髄を鋳型として用いて脊髄インプラントをデザインした。
【0090】
この実施例で使用したインプラント材料:PEGDA(Mn=700 Da)はSigma-Aldrich(USA)から購入した。ゼラチンメタクリレート(GelMa)を、以前の報告(Soman, P. et al., Biotechnol Bioeng 110:3038-3047, 2013)に記載されているように合成した。光開始剤フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)を、以前に報告されたように合成した(Fairbanks, B.D. et al., Biomaterials 30:6702-6707, 2009)。インプラントをプリントするために使用されるマトリックス材料は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中に7.5%(w/v)のGelMa、25%(v/v)のPEGDAおよび0.225%(w/v)のLAPを混合することによって作られた。
【0091】
この実施例で使用されているインプラント3Dプリンティング:本明細書に記載の3Dバイオプリンタ(μCPP)は、
図1Aに示すように以下の6つの構成要素を含む:(1)光重合用のUV LED光源(365nm)、(2)光学パターン生成用の1920×1080マイクロミラーからなるデジタルマイクロミラーアレイデバイス(DMD)チップ(Texas Instruments)、(3)DMDチップ上の光学パターンをステージ上の製造平面に画像化するための投影光学系、(4)製造のためのモノマー溶液を保持する自動ステージ、(5)製造工程のリアルタイム監視および画像化用のデジタルカメラ、(6)3Dプリンティングプロセスのために、UV光源、DMDチップ、ステージおよびカメラを調整するコンピュータ。
【0092】
この実施例で使用したラット脊髄インプラントプリンティング:(脊髄の灰白質を表す)コアおよび(脊髄の白質を表す)シェルのデジタル画像は、脊髄の断面画像を処理することによって生成され、これらは後でプリンティングプロセス中にマイクロミラーを制御するためにDMDチップに組み込まれた。軸索再生のための直線的または平行な誘導を提供するために、チャネル(直径200μm)をシェルに組み込んだ。コアは、プリントされたインプラントの機械的強度を高めるために、GelMa、25%(v/v)PEGDA、および0.225%(w/v)LAPの固体ブロックとして設計された。マトリックス材料のモノマー溶液を、プリントされたインプラントのz軸方向の高さを制御するために、2mmのPDMSスペーサーを有する容器に入れた。3Dプリンタを制御するための自社開発ソフトウェアを使用して、連続プリンティングプロセスを開始した。インプラントは、それぞれ0.8秒の長さの2段階でプリントされた。1つはシェル画像用、もう1つはコア画像用である。次いで、プリントしたインプラントをリザーバーから取り出し、滅菌DPBSおよび抗生物質(1%Pen Strep)で3回すすいだ。
【0093】
この実施例で使用したヒト脊髄インプラントプリンティング:頸部MRIスキャンを使用して、典型的な慢性脊髄損傷をモデル化した。病変を追跡し、3次元脊髄コンピュータ支援設計(CAD)モデルを使用してヒトの損傷寸法を一致させた。次いで、3Dモデルを脊髄の長手方向に沿って一連のデジタルマスクにスライスし、それらを順次DMDチップに組み込んだ。ステージの移動に伴ってデジタルマスクを動的に変更することによって、患者固有の脊髄インプラントは上記の方法を使用していた。
【0094】
この実施例で使用されるテンプレート化アガロース足場の製造:多成分線維束(MCFB)テンプレートは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の連続マトリックスによって分離された六方最密配列に配置された直径200μmのポリスチレン線維(Paradigm Optics, Vancouver, WA)から製造された。それらを66μmの間隔をあけてハニカム配列に配列して、66μmの壁サイズおよび200μmのチャネル直径を有する最終インプラントを作製した。ポリスチレン線維が束の長手方向軸に対して平行に配向されるように束を同時に押出しそして融合させた。多成分線維束テンプレートは、長さ2mmならびに横断面の幅および深さ1.5mmにトリミングされた。長さ1.5mmのポリスチレン製エンドキャップをポリスチレン線維を固定するためにシクロヘキサンを使用して線維束末端に結合し、そして外部の剛性多成分線維束テンプレートを形成した。次いで、6個のこのような多成分線維束ユニットを、線形テンプレートアレイに凝集している2個のポリスチレンサイドキャップと直列に整列させた。次いで、ポリ(メチルメタクリレート)マトリックスを99.7%プロピレンカーボネート(Sigma-Aldrich)に3回浸漬し、続いて95%エタノールですすぎ、そして蒸留水ですすぐことによって選択的に除去した。超高純度アガロース(30mg/ml、Sigma-Aldrich)を100℃の蒸留水に溶解した後、65℃に冷却した。多成分線維束テンプレートをアガロース溶液に浸し、遠心分離し(300rpmで30秒間)、充填ポリスチレン線維アレイを通してアガロースを透過させた。次いで、アガロースキャストを室温でゲル化させ、トリミングし、そして室温で24時間、99%テトラヒドロフラン(Sigma-Aldrich)に浸した。これを2回繰り返してポリスチレン製の型を取り除き、個々の浮遊アガロース足場を得た。足場を収集し、アセトン、95%エタノール、および3サイクルの滅菌水で順次洗浄した。それらを使用するまで室温で滅菌水中に保存した。
【0095】
本実施例で使用したE14神経幹細胞の調製:簡潔には、GFP発現E14 F344胚由来脊髄を解剖し、そして髄膜を除去した。組織を15分間トリプシン処理した後、室温で2500rpmで遠心分離した。組織を、2%B27(Gibco)を含有するNeuroBasal培地(Gibco)に再懸濁し、次第に小さくなって火を磨いたパスツールピペットを用いて脊髄組織を穏やかに粉砕した。次に細胞を2,500rpmで2分間遠心分離し、B27を含有するNeuroBasal培地に再懸濁し、そして40μmセルフィルターストレーナーを用いて濾過した。
【0096】
この実施例で使用される外科的処置:実験動物の飼育および安全性に関するNIHガイドラインに厳密に従った。T3脊髄レベルでの完全な横断面に移植されたインプラントを実施した。手短に言えば、動物を深く麻酔し、T3椎弓切除術を行い、続いて、マイクロハサミとマイクロ吸引の組み合わせを用いて脊髄を切断した。1.8mmのブロックを取り除き、そして長さ2mmのインプラントを移植し、従ってインプラントを脊髄の切断されたセグメント間にしっかりと保持した。グループ1(n=14)は空のアガロース足場を受けた、グループ2(n=14)は空の3Dプリントされたインプラントを受けた、グループ3(n=14)は、4成分成長因子カクテルを含有するフィブリンマトリックス中に懸濁したE14神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを受けた。神経幹細胞の生存を支持する50ng/μLのBDNF(Peprotech)、血管新生を促進するための10ng/μLのVEGF(Peprotech)および10ng/μLのbFGF(Peprotech)、ならびに50μMのMDL28170(Sigma)、神経保護のためのカルパイン阻害剤。グループ4(n=8)は、損傷は治療されたがインプラントは移植されない偽手術を受けた。グループ5(n=8)は、以前に記載されたように(Lu, P. et al. Cell 150:1264-1273, 2012)、ラットE14脊髄由来多能性神経前駆細胞のインプラントを受けた。細胞を上記の成長因子カクテルと共に同じフィブリノーゲン/トロンビンマトリックスに懸濁した。移植後、背筋と皮膚を縫合し、抗生物質と鎮痛剤を投与した。
【0097】
マイクロチャネル(直径200μm)は、損傷の上方のそれらの離断点から損傷の下方の無傷の脊髄に再び入るそれらの正しい再侵入点へと軸索を誘導および整列させるように設計された(
図1A~E)。内側コア領域は通常、損傷部位の下に突き出ている軸索を含まない。したがって、インプラントのこの構成要素は、インプラントの構造的支持を強化する固体領域として設計された。アガロースマイクロチャネルインプラントを用いた以前の研究は、病変部位に入る軸索の80%がインプラントによって誘導され、病変の反対側に橋渡しされることを示した。しかしながら、アガロースは、インプラント内の軸索を弱めて捕捉するコラーゲン系反応性細胞層からなる異物反応を誘発し、軸索がチャネルから出るのを防ぐ。したがって、インプラントは、異物反応の減少のために反応性細胞層を減少させることができる分解性材料から製造され、それにより、被移植体軸索が病変をよりよく貫通し横断することを可能にする。インプラント材料として、2つの生体適合性材料、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)およびゼラチンメタクリレート(GelMa)の組み合わせを使用した。PEGDAは細胞に対して非接着性であり、それ故、細胞結合リガンドおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)分解部位を保持する光重合性変性コラーゲンであるGelMaが加えられ、潜在的に長期の細胞生存率を高めた。インプラントと被移植体との間の機械的性質の不一致が、脊髄界面での圧迫または裂傷を招き、統合の失敗を引き起こし得るので、各材料の濃度およびプリントされたインプラントの架橋密度は、天然の脊髄組織の機械的性質を模倣するように設計され得る。
【0098】
動的機械分析(DMA)を用いて、3DプリントされたPEGDA/GelMaインプラントの弾性率を測定した。移植に使用されたバイオプリントされたインプラントの弾性率は、天然の脊髄の弾性率200~600kPaに従った、260kPa~300kPaの範囲内であった(
図2)。
【0099】
免疫標識を行った。脊髄を20μm間隔で設定されたクライオスタットで切片化し、そして以下のために処理した:1)移植細胞の生存および分化ならびに軸索伸長を評価するためのGFP標識(GFPウサギポリクローナル、Invitrogen、1:500の希釈);2)若いニューロンに対するHuを含む神経細胞マーカー(ヒトポリクローナル、1:500希釈)、成熟ニューロン核(マウスモノクローナル、Abcam、1:500希釈)のNeuN、成熟ニューロン用のMAP-2(マウスモノクローナル、BD Biosciences、1:500希釈)、軸索を標識するニューロフィラメント200(マウスモノクローナル、Millipore、1:500の希釈)、成熟ニューロンおよび軸索のセロトニン(5HT、ヤギポリクローナル、ImmunoStar、1:500希釈)、星状細胞用グリア原線維酸性タンパク質(GFAP、ニワトリポリクローナル、Millipore、1:500希釈)、乏突起膠細胞についてのOlig2(Olig2、マウスモノクローナル、IBL、1:200の希釈)。3)シュワン細胞を標識するS100(ウサギポリクローナル、Dako、1:500の希釈)。4)コラーゲンIV型(ウサギポリクローナル、Biogenex、1:500希釈)。切片を一次抗体について室温で一晩インキュベートし、続いてAlexa 488、594、または647結合ヤギまたはロバの二次抗体(1:250、Invitrogen)中で室温で3時間インキュベートした。反応性細胞層の厚さを、ニッスル染色切片において200倍の全倍率で測定した(動物当たり8切片を定量し、結果を平均±SEMとして表した)。GFAP免疫反応性は、GFAP免疫標識切片上で被移植体脊髄-インプラント界面で測定された1ピクセル当たりの平均グレイ値として定量された(動物当たり8切片を定量し、結果は平均±SEMとして表された)。5HT運動軸索定量化を、チャネルの尾部の400μm部分の200倍拡大画像を用いて行った(軸索を手動で計数し、そして動物当たり8切片を定量した)。上記の抗体を用いて、チャネル内の幹細胞の分化を定量した。各スライドをDAPIおよびGFPで対抗標識し、細胞を手動で計数した。各細胞型番号は、チャネル内の全DAPI/GFP標識核に対して正規化された(動物当たり8切片を定量した。定量はImageJを用いて行った。)
【0100】
統計分析-2群間の比較は、指定された有意水準P<0.05で両側スチューデントt検定(JMPソフトウェア)によって検定された。多重群比較は、指定された有意水準P<0.05で片側ANOVA(JMPソフトウェア)によって検定され、続いてテューキーの検定を用いて事後分析が行われた。
【0101】
電子顕微鏡-シナプス形成および軸索の髄鞘形成の詳細な分析は、以下のように電子顕微鏡を使用して実施した:対象は4%のパラホルムアルデヒドと0.25%のグルタルアルデヒドで灌流され、脊髄は1%の四酸化オスミウムで後固定され、脱水され、そしてdurcupan樹脂に移植された。一般的な形態学のために、0.5μmの半薄切片をトルイジンブルーで染色した。次に、ウルトラミクロトームを使用して60nm切片を切断し、UCSD CryoElectron Microscopy Core FacilityのFEI 200KV Sphera顕微鏡を使用して可視化した。
【0102】
走査型電子顕微鏡画像化-走査型電子顕微鏡(SEM、Zeiss Sigma 500)を用いて、患者固有の脊髄インプラントを画像化した。インプラントを一連のエタノール浴中で脱水し、超臨界点乾燥機(Tousimis AutoSamdri 815A)で乾燥させた後、Emitech K575Xを使用して堆積電流85 mAで7秒間イリジウムでスパッタコーティングした。スパッタコーティング後、インプラントをZeiss Sigma 500 SEMを用いて5kVで画像化した。
【0103】
機能解析-BBBのオープンフィールド21点歩行評価尺度を、グループの正体を知らない2人の独立した観察者によって毎週評価した。
【0104】
電気生理学-後肢のMEPを測定した。手短に言えば、プロポフォール(100mg/kg、PropoFlo Abbot)を用いて動物を麻酔した。経皮的に配置された2本の30Gステンレス鋼刺激電極を用いた経頭蓋電気(DS3定電流絶縁刺激装置(Digitimer, Welwyn Garden City, UK)を用いて9mVで1msのパルス幅)。3~5個の最高(安定)記録電位が類似するまで、MEPを両後肢に配置したリング電極により記録した。MEPは移植後26週目に記録された。
【0105】
いくつかの実施形態では、3Dバイオプリンティングの利点は、術前にMRIスキャンで確認されたように、異なるサイズのインプラント(
図17A~B)と異常な形状のインプラントを個々の患者の病変部位に合わせて迅速にプリントできることである。
図3A~Eに示すように、インプラントを患者の慢性病変腔の簡潔な形状およびサイズに適合するようにプリントした。
【0106】
バイオプリントされたインプラントをラット脊髄完全T3切断部位に移植した。これはSCIの最も過酷なモデルであり、脊髄再生の研究にとって最も困難なモデルである。それは、生き残った軸索を有する予備の組織の縁がある挫傷とは異なり、軸索は損傷時に切断されるので、軸索再生を研究するためのモデルでもあり、これは、観察された軸索が本当に軸索を再生しているのか、それとも控えているもしくは発芽している軸索であるのかを決定することを困難にする。19匹のフィッシャー344ラットに、T3完全脊髄切断術を施し、長さ2mmのインプラントを病変部位に直ちに配置した。8匹の対照動物は病変のみを有した。4週間後、脊髄を取り除き、インプラント構造、生体適合性、および軸索再生/再髄鞘形成を評価した。所見を、同じ病変および生存期間を有する鋳型アガロースインプラントを以前に受けた動物と比較した。
【0107】
移植の4週間後、3DプリントされたPEGDA/GelMaインプラントは構造的な完全性を維持した。インプラントのチャネルと固体コアは、すべての動物で破損や変形なしに移植前の構造を維持した。インプラントの生分解は、この4週間の時点ではまだ明白ではなかった。ヒアルロン酸などの他のインプラント材料を使用した初期の努力は、より急速なインプラントの分解と構造の崩壊をもたらした(
図18A)。インプラントの分解は6ヶ月にわたって特徴付けられ、壁厚は44μm減少し、構造の66%が保存されていることを表す(
図19)。インプラント構造の維持は、病変部位にわたって物理的支持を維持し、再生中の軸索の成長を支持、組織化および整列させるために不可欠であると考えられる。
【0108】
6ヶ月後の解剖学的分析は、すべてのインプラントが3Dアーキテクチャを保持していることを示した(
図15A)。しかしながら、インプラント壁の厚さはそれらの移植前のサイズと比較して49%減少し、これは経時的にゆっくりとした分解を示唆する。空のインプラントを移植した動物の中で、被移植体ニューロフィラメント標識軸索は移植後4週間で観察された数(97±8軸索)と同様に比較的少ない数(118±8)でインプラントに再生した。空のインプラントを移植した動物では、被移植体軸索がインプラントを越えて遠位被移植体脊髄に再生することはなかった。神経幹細胞を取り込んだ3D生体模倣PEGDA/GelMaインプラントを移植した動物のうち、移植細胞は6ヶ月間生存し、すべてのチャネルを完全に満たした(
図15)。ネスチン標識は検出されず、移植されたニューロン幹細胞の成熟の完了を示し、そしてKi67標識もまた検出されず、グラフトによる細胞分裂の完了を示した。4週間のインプラントで観察されたように、5HT免疫反応性軸索がインプラントに入った。87±5のセロトニン作動性軸索は、神経幹細胞を取り込んだチャネルの尾部末端に到達し、そして移植後4週間で観察された軸索の数と同様に、尾部脊髄への再生を続けた(
図14B)。この所見は、インプラントへのセロトニン作動性軸索再生が4週間で完了することを示唆する。運動皮質への赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現するAAV2ベクターの注入によって順行的に標識された被移植体皮質脊髄運動軸索もまた幹細胞取込インプラントに再生され(
図15B)、インプラント中間点、1mmの距離まで伸びた。皮質脊髄軸索は、インプラントチャネル内のNeuN標識ニューロン上に推定のボタン様構造を形成した(
図15C)。さらに、グラフト由来のGFP標識軸索は、インプラントから突き出し、そして病変への尾部の被移植体脊髄に入り、病変への尾部の脊髄の被移植体ニューロン上に推定のボタン様構造を形成する(
図15D~E)。インプラントから遠位被移植体脊髄へのグラフト由来軸索伸長の量(
図15D)は、インプラントを越えて再生する被移植体セロトニン作動性軸索の数を大幅に超えた。この所見は、もし存在するならば、病変部位を横切って回復した神経リレーが、移植された神経幹細胞上にシナプス形成する被移植体軸索、および遠位被移植体脊髄に伸びる幹細胞由来軸索によって媒介され得ることを示唆する。
【0109】
反応性細胞層の減衰は、コラーゲン沈着の減少(
図4B)および顆粒化組織の減少(
図5A)を特徴とする鋳型アガロース足場と比較して、3Dプリントされたインプラントを受けた動物の間に存在した。反応性細胞層は340±52μmの厚さであり、アガロース足場と比較して35%の有意な減少を示した(P<0.05;
図5A)。星状細胞の応答は3Dプリントされたインプラントによっても減弱された:対照病変の対象では、星状細胞は反応性になり、病変部位から「はがされて」いた(
図6A)。アガロース足場を有する動物では、星状細胞壁が依然として存在し、そして被移植体脊髄から足場をはがした(
図6B)。対照的に、3Dプリントされたインプラントは、星状細胞瘢痕の厚さの減弱と瘢痕の再編成を示し、被移植体脊髄からインプラントチャネルへの連続性が中断されていなかった(
図6C)。いくつかの実施形態では、星状細胞プロセスは、被移植体との界面に垂直な壁を形成することから、インプラントを直線的に貫通するストランドを形成することに変わり、それに伴って再生中の被移植体軸索同士が会合した。3次元プリントされたインプラントは、アガロース足場と比較して星状細胞免疫反応性において66%の減少、および病変のみの動物と比較して97%の減少を示した(P<0.05;
図6D)。インプラントはその全長に沿って容易かつ広範囲に血管新生した(
図7A~B)。
【0110】
反応性細胞層の厚さの減少に従って、3Dプリントされたインプラントに接近する被移植体軸索は脊髄の吻部-尾部(下降)軸に沿って整列し、そして撓むことなくインプラントのチャネルを容易に貫通した。これは、アガロース足場と被移植体との境界面で起こる軸索の不整列および偏向の頻度とは対照的であった(
図8A~B)。末梢神経系からの被移植体シュワン細胞は、インプラントの中に移動し、再生被移植体軸索を鞘で覆われるか再髄鞘形成された(
図9A~C)。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の脊髄修復用インプラントは、再生または再髄鞘形成を増強することができる細胞を取り込み得る。このように、3Dプリントされたインプラントに、Fischer 344ラットの胚の14日目の脊髄から採取したGFP発現ラット神経幹細胞を取り込んだ。合計3×106個の細胞を、直接注射によって8μlの容量でインプラントに取り込んだ。合計14匹のラットがT3脊髄完全切除を受け、1.8mm長の脊髄セグメントを切除し、神経幹細胞を取り込んだ2mm長の3Dプリントされたインプラントを移植した。動物は4週間生存し、そしてインプラントの完全性、細胞の生存および被移植体の軸索再生および再髄鞘形成を評価するために屠殺した。
【0112】
いくつかの実施形態では、幹細胞はすべての移植動物において生存し、そしてインプラントチャネルを満たした(
図10A、
図20A~D)。神経幹細胞は、インプラントや被移植体の脊髄の構造を歪めることなく、インプラントと被移植体の脊髄の間の界面にも存在した(
図20A~D)。テストしたサンプルのうち、移植幹細胞の47±2%が初期ニューロンマーカーHuを発現し(
図21A)、移植細胞の20±3%が成熟神経細胞マーカーNeuNを発現し(
図521B)、11±2%の細胞が希突起膠細胞マーカーOlig2を発現し(
図21C)、21±3%の細胞が星状細胞マーカーGFAPを発現した(
図21Dおよび22)。幹状態マーカーネスチンは検出されなかった。
【0113】
被移植体軸索はインプラントを容易に貫通した(GFPレポーター発現がないことにより移植由来軸索と区別される)(
図10B)。多くの被移植体の長距離セロトニン作動性軸索もまた、幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを容易に貫通し、チャネルの方向に従って線形化された(
図10C)。幹細胞グラフトは、貫通軸索を線形化することができなかった(
図23)。5HT軸索は、インプラントの尾部端部に再生するように誘導された(
図10E)。対照的に、ほとんどのセロトニン作動性軸索は、空のインプラント(幹細胞充填を欠く)または幹細胞グラフトの尾部に達した。(
図24A~B)。空の3Dプリントされたインプラントにおける11±5軸索と比較して、1動物当たりのインプラント当たり尾部400μmの幹細胞取込チャネル内で平均85±21個のセロトニン作動性軸索を定量した。インプラントを欠く幹細胞グラフトを有する動物では、平均8±4軸索のセロトニン作動性軸索が病変部位の末端に達し、幹細胞グラフトを含むインプラントと比較して軸索数が10分の1に減少した(P<0.05 ANOVA、P<0.05事後テューキーの検定による幹細胞を含むインプラントと含まないインプラントの比較;
図10F)。したがって、神経幹細胞を含む3Dプリントされたインプラントは、いくつかの実施形態では、病変部位の尾部端部への被移植体軸索再生を増強し得る。他の実施形態では、この機能強化は重要かつ実質的なものである。
【0114】
いくつかの実施形態では、被移植体のセロトニン作動性運動軸索は、病変部位/インプラントを通して完全に再生し、そして尾部の脊髄に再進入した(
図10G)。インプラント中の神経幹細胞は5HT(セロトニン)に対しては免疫標識されておらず、これらの軸索はGFPに対して標識されなかったので(
図25)、病変への尾部の被移植体脊髄に位置するセロトニン作動性軸索は、グラフト由来ではなかった。インプラントの尾部から2mm離れたところでは、被移植体の脊髄の白質と灰白質にセロトニン作動性軸索が検出され、灰白質に入るように頻繁に分岐していた(
図26A~C)。被移植体の長い路のセロトニン作動性軸索は、病変部位を超えて3.5mmまで検出されたが(
図10H)、それを超えては検出されず、軸索が再生しているという事実をさらに裏付けていた。いくつかの実施形態では、本インプラントおよび装置は、完全な脊髄離断部位に移植されたインプラントの中およびそれを超えて被移植体運動軸索再生を提供し得る。再生は、チャネルおよび被移植体尾部脊髄におけるGAP43免疫標識軸索の存在によってさらに証明された(
図27A~B)。
【0115】
いくつかの実施形態では、組織工学の障害は臓器血管新生である。トルイジンブルーおよび電子顕微鏡分析は、本明細書に記載のインプラントチャネル内の広範な血管新生を示した(
図28A~B)。これらの血管の周りを免疫標識する血小板由来成長因子受容体(PDGFR)が提示されたことにより、周皮細胞の存在と血液脳関門の回復が確認された(
図29)。神経幹細胞で満たされたチャネル内の軸索の電子顕微鏡分析は、小さく、髄鞘形成されていない軸索(<1μm直径)から大きく髄鞘形成されている軸索(1~3μm、
図11)までの範囲の軸索キャリバーおよび髄鞘形成状態を示した。トルイジンブルー染色は、オリゴデンドロサイトがそれらの軸索を髄鞘形成したことを示した(
図12)。インプラントは成熟ニューロンマーカーNeuNを発現する神経幹細胞を取り込んだので、再生している被移植体軸索とインプラントチャネルのニューロンとの間のシナプス形成の可能性が存在した。いくつかの実施形態では、非対称シナプスは、興奮性シナプスに典型的な丸いシナプス小胞を含む軸索から入力を受け取ることが容易に観察された(
図13)。チャネルへと再生する被移植体セロトニン作動性軸索は幹細胞由来ニューロンの樹状突起と密接に関連している可能性があり、MAP2とGFPの共標識によって同定されており(
図14)、これもまたシナプス形成を示唆する。
【0116】
機能的および行動的転帰は、2つの独立した試験を用いて測定した。移植後26週目に、運動皮質に経頭蓋電気刺激を適用することによって電気生理学的研究を行い、後肢からの運動誘発電位(MEP)を記録した。MEPは、筋肉からのEMG信号を記録することによって末梢神経系における脳の脊髄上制御を試験するために(ヒトおよび動物の両方において)電気生理学的機能回復を試験するために使用され得る。神経幹細胞を取り込んだ3Dプリントされたインプラントを移植した損傷後26週のラットは、C8脊髄レベルでの脊髄の再切断時に消失したMEP応答の回復を示す(移植部位の上;T3)。これらのデータは、後肢の筋肉活動がインプラントを横切る被移植体からのシナプス伝達によって生じたことを示している(
図15A~E、
図31)。したがって、いくつかの実施形態では、記載されているインプラントは、後肢における筋肉活動を提供するために、インプラントを横切って被移植体からシナプス伝達を提供し得る。
【0117】
後肢が除神経され動物が体重を支えていなかったので、筋肉は萎縮し、反応できる筋肉単位は少なくなった。これは無傷の動物と実験動物の大きさの違いを説明している(
図15A~E)。この観察と一致して、MEPの振幅は、空のインプラントを有する動物よりも有意に大きかった(p<0.05、
図15E)。さらに、記録されたMEPの潜伏期(最大振幅までの時間)は幹細胞インプラントでより短く、観察された無傷の潜時により近かった(ANOVAp<0.01、
図30)。
【0118】
3D生体模倣PEGDA/GelMaインプラントによる運動機能回復の程度を決定するために、行動がプラトーになり安定するまで、6ヶ月間Beattie Basso Bresnahan(BBB)自発運動スケールを使用して動物を評価した。神経幹細胞を取り込んだインプラントを受けた動物は、空のインプラントを有する動物と比較して有意な機能回復を示した。
【0119】
損傷後最初の4週間は、後肢の歩行運動は、病変対照および移植患者の両方において損なわれていた(例えば、ひどく)。5週目に、NSCを取り込んだインプラントのレシピエントは、BBBスケールで改善を示し始め、7のレベルに達し、病変を受けた対照においては動きがもしあれば最小であるのに対して、後肢の各関節についての動きを示す(反復測定ANOVAp<0.01;個々の時点*p<0.01;
図16)。
【0120】
機能的スコアは、6ヶ月前にインプラントに神経幹細胞を受けた動物において、BBBスケールで6.6±0.5ポイント(+SEM)の平均値に達し、空のインプラント対照における平均スコア0.3±0.2点とは対照的に、後肢の各関節の周りの動きを示し、1つの関節のみの周りの矛盾した動きを反映する(*p<0.01、反復測定ANOVA;個々の時点および事後テューキーのt検定;
図15F)。神経リレーの形成は、脳の電気刺激に応答して後肢からの筋形成性MEPを測定することによって、完全な横断面を横切る電気生理学的伝達によってさらに調べられた(
図15G、
図16A~C)。
【0121】
損傷の6ヶ月後、神経幹細胞を取り込んだ3D生体模倣PEGDA/GelMaインプラントを移植したラットは、運動誘発反応の回復を示したが、空のインプラントを移植した動物は、ベースラインノイズの範囲内で反応を示した(p<0.01、t検定;
図15Gおよび
図16D)。C8レベル(インプラント部位の上)で脊髄を再切断すると、後肢のすべての誘発電位が失われ(
図16A~C)、病変を横切る新しい電気生理学的リレーの形成が確認された。
【0122】
この研究は、生体模倣中枢神経系構造をプリントするための高速3Dプリンティングの使用を示す。これらのインプラントは、特定の病変の形状と長さに合わせて簡単に個別化され得る。3次元プリントされたPEGDA/GelMaインプラントは、in vivoで少なくとも26週間にわたってそれらの構造を維持し得る。さらに、記載されているプリントされたインプラントは、神経幹細胞の生着を支持し得る。さらになお、記載されているプリントされたインプラントは、新しいシナプスの形成を支持し得る。いくつかの実施形態では、インプラントは十分に血管新生され、一貫した細胞と軸索の生存を支えるために血液、酸素および栄養素の十分な利用可能性を提供する。
【0123】
前述の開示は例示的な実施形態である。本明細書に開示された装置、技術および方法は、本開示の実施において十分に機能する代表的な実施形態を説明することを当業者は理解するはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、それでも本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができる。
【0124】
他に指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、反応条件などの特性を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないと示さない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。最低限、特許請求の範囲と均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも報告された有効桁数と通常の端数切り捨て技術を適用して解釈すべきである。本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載されている数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0125】
本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本発明を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」および「an」および「the」ならびに類似の指示対象は、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における範囲の列挙は、その範囲内の各別個の値を個別に参照する簡略な方法として役立つことを単に意図するものである。本明細書で別段の指示がない限り、個々の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにするためのものであり、さもなくば特許請求される本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0126】
本開示は、代替物および「および/または」のみを指す定義を支持するが、特許請求の範囲における用語「または」の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されていない限り、または代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用される。
【0127】
本明細書で開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはグループ内の他のメンバーまた本明細書に記載されている他の要素と任意の組み合わせで参照され、特許請求され得る。利便性および/または特許性の理由から、1つ以上のグループのメンバーがグループに含まれるか、グループから削除されることが予想される。そのような包含または削除が生じた場合、本明細書は本明細書では修正された群を含有し、それにより添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュ群の書面による説明を満たすとみなされる。
【0128】
本発明を実施するために本発明者らが知っている最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。もちろん、これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外にも本発明を実施することを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題のすべての改変物および均等物を含む。さらに、本明細書中で他に指示されない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、すべての可能な変形例における上記要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0129】
本明細書で開示された特定の実施形態は、言語からなるか、または本質的に言語からなることを使用する特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において使用される場合、出願時または補正で加えられたかにかかわらず、「からなる」という移行用語は、特許請求の範囲に記載されていない要素、工程または成分を排除する。「から本質的になる」という移行用語は、特定の材料または工程、および基本的かつ新規な特性(複数)に重大な影響を及ぼさないものに、特許請求の範囲を限定する。そのように特許請求された発明の実施形態は、本質的にまたは明示的にここで説明され、本明細書で可能にされる。
【0130】
さらに、本明細書に開示された本発明の実施形態は本発明の原理の例示であることが理解されるべきである。使用され得る他の改変も本発明の範囲内である。したがって、限定ではなく例として、本発明の代替構成を本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は図示され説明されたものに厳密に限定されるものではない。
【0131】
(付記)
(付記1)
第1端部および第2端部を含み、コアおよびシェルを含み、損傷部位の構造を模倣する3次元(3D)インプラントと、
前記第1端部から始まり前記第2端部で終わる前記シェル内の少なくとも1つのチャネルと、
前記少なくとも1つのチャネルに含まれる少なくとも1つの種類の幹細胞と、
を含む、脊髄または末梢神経損傷用の生体模倣インプラント。
【0132】
(付記2)
インプラントは、3Dプリンティングによって製造される、付記1に記載のインプラント。
【0133】
(付記3)
前記少なくとも1種類の幹細胞は、神経幹細胞である、付記1に記載のインプラント。
【0134】
(付記4)
前記神経幹細胞は、胚性幹細胞、iPSC由来幹細胞、直接分化神経幹細胞、またはそれらの組み合わせである、付記3に記載のインプラント。
【0135】
(付記5)
前記少なくとも1種類の幹細胞は、間葉系幹細胞である、付記1に記載のインプラント。
【0136】
(付記6)
前記幹細胞は、BDNF、NT3、GDNF、またはそれらの組み合わせを発現するように操作される、付記1に記載のインプラント。
【0137】
(付記7)
前記3次元プリントされたインプラントは、ポリエチレングリコールジアクリレートもしくはゼラチンメタクリロール、またはそれらの組み合わせを含む、付記1に記載のインプラント。
【0138】
(付記8)
前記インプラントは、脊髄に対する生体模倣物である、付記1に記載のインプラント。
【0139】
(付記9)
前記インプラントは、末梢神経に対する生体模倣物である、付記1に記載のインプラント。
【0140】
(付記10)
前記チャネルは、線形である、付記1に記載のインプラント。
【0141】
(付記11)
前記チャネルは、互いに平行である、付記1に記載のインプラント。
【0142】
(付記12)
前記チャネルは、再生軸索を前記第1端部から前記第2端部へ案内する、付記1に記載のインプラント。
【0143】
(付記13)
前記インプラントは、ハニカム構造としてクラスター化された六角形の断面を有する2つ以上のチャネルを含む、付記1に記載のインプラント。
【0144】
(付記14)
神経損傷の治療を必要とする被移植体における前記神経損傷を治療する方法であって、
付記1に記載の生体模倣インプラントを治療を必要とする場所に移植することと、
前記損傷部位における細胞の再生を可能にすることと、
を含む、方法。
【0145】
(付記15)
前記神経損傷は、脊髄損傷、運動完全脊髄損傷、運動不全脊髄損傷、または末梢神経損傷である、付記14に記載の方法。
【0146】
(付記16)
前記神経損傷は、脊髄損傷である、付記15に記載の方法。
【0147】
(付記17)
前記神経損傷は、末梢神経損傷である、付記15に記載の方法。
【0148】
(付記18)
前記被移植体に理学療法を提供することをさらに含む、付記14に記載の方法。
【0149】
(付記19)
前記損傷の領域を決定するために治療を必要とする被移植体の脊髄または末梢神経の位置をスキャンすることと、
前記損傷の領域を囲むように前記インプラントを3次元プリントすることと、
を含む、付記1に記載の生体模倣インプラントを製造する方法。