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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】光電変換素子及び固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221024BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221024BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N5/369
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019558300
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2018045118
(87)【国際公開番号】W WO2019112046
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2017236531
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】川人 祥二
【審査官】柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177191(JP,A)
【文献】特開2010-056345(JP,A)
【文献】国際公開第2010/151299(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0024808(US,A1)
【文献】国際公開第2016/157910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の上部領域を有する空乏層拡大部と、
前記空乏層拡大部の上面に接して設けられ、前記上部領域よりも低不純物密度で第1導電型の光電変換層と、
前記光電変換層の上部の一部に埋め込まれ、前記光電変換層とフォトダイオードをなす第2導電型の表面埋込領域と、
前記光電変換層の上部の他の一部に埋め込まれ、前記光電変換層よりも高不純物密度で第1導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の上部の一部に埋め込まれ、前記表面埋込領域から転送された前記フォトダイオードが生成した信号電荷を一時蓄積する第2導電型の電荷蓄積領域と、
前記ウェル領域の上部の他の一部に集積化され、前記電荷蓄積領域から前記信号電荷を読み出す回路を構成する画素内回路素子と、
前記ウェル領域の少なくとも一部において、前記ウェル領域を少なくとも2分割して複数の分割領域を形成し、前記電荷蓄積領域が埋め込まれた前記一部と前記画素内回路素子が集積化された前記他の一部を互いに異なる分割領域とする第2導電型のタブ領域を有し、前記信号電荷とは反対導電型のキャリアからなる非信号電荷の、前記ウェル領域から前記光電変換層への注入を防ぐ注入阻止部
とを備え、前記上部領域に印加される電圧によって、前記光電変換層中に信号電荷生成領域として予定しているすべての範囲が空乏化されることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記注入阻止部は、前記ウェル領域の少なくとも一部において、前記ウェル領域を3分割する第2導電型の2枚のタブ領域であり、2枚のタブ領域の下端部からそれぞれ延びる電気力線によるポテンシャルによって、前記2枚のタブ領域の間の前記ウェル領域の下に、前記非信号電荷に対し、前記注入を防ぐ電位障壁を生成することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
第1導電型の上部領域を有する空乏層拡大部と、前記空乏層拡大部の上面に接して設けられ、前記上部領域よりも低不純物密度で第1導電型の光電変換層と、前記光電変換層の上部の一部に埋め込まれ、前記光電変換層とフォトダイオードをなす第2導電型の表面埋込領域と、前記光電変換層の上部の他の一部に埋め込まれ、前記光電変換層よりも高不純物密度で第1導電型のウェル領域と、前記ウェル領域の上部の一部に埋め込まれ、前記表面埋込領域から転送された前記フォトダイオードが生成した信号電荷を一時蓄積する第2導電型の電荷蓄積領域と、前記ウェル領域の上部の他の一部に集積化され、前記電荷蓄積領域から前記信号電荷を読み出す回路を構成する画素内回路素子と、前記ウェル領域の少なくとも一部において、前記ウェル領域を少なくとも2分割して複数の分割領域を形成し、前記電荷蓄積領域が埋め込まれた前記一部と前記画素内回路素子が集積化された前記他の一部を互いに異なる分割領域とする第2導電型のタブ領域を有し前記信号電荷とは反対導電型のキャリアからなる非信号電荷の前記ウェル領域から前記光電変換層への注入を防ぐ注入阻止部を有する画素を複数配列した画素アレイ部と、
前記画素を駆動し、前記画素からの信号を処理する周辺回路部
とを同一半導体チップ上に集積化し、前記上部領域に印加される電圧によって、前記光電変換層中に信号電荷生成領域として予定しているすべての範囲が空乏化されることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項4】
前記空乏層拡大部に裏面電圧を供給する裏面電圧供給部を、前記半導体チップの周辺部に更に備え、
該裏面電圧供給部が前記裏面電圧供給部に電源電圧を供給することを特徴とする請求項3に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記裏面電圧供給部は、
前記半導体チップの周辺部に配置された第1導電型のタブ領域と、
前記タブ領域の上部に埋め込まれ、前記タブ領域よりも高不純物密度で第1導電型のタブコンタクト領域
とを有することを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記注入阻止部は、前記ウェル領域の少なくとも一部において、前記ウェル領域を3分割する第2導電型の2枚のタブ領域であり、前記2枚のタブ領域の下端部からそれぞれ延びる電気力線によるポテンシャルによって、前記2枚のタブ領域の間の前記ウェル領域の下に、前記非信号電荷に対し前記注入を防ぐ電位障壁を生成することを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びこの光電変換素子を撮像用の画素として複数個配列した固体撮像装置に係り、特に高速動作が可能な固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、既に光パルスに同期して光電荷検出を行うロックインピクセルの機能をもった測長素子を提案した(特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたような光飛行時間(TOF)型の動作をする距離センサ等において、サブナノ秒レベルの超高速動作を目指す場合、中性領域(エピ層)において拡散速度で移動する遅い電荷による成分が存在するので、この遅い成分が影響して、目的とする超高速動作ができないという不都合がある。
【0003】
この中性領域を拡散速度で移動する遅い電荷は、基板にバイアスを印加すれば発生した電界で高速に移動できるようになる。しかし、基板にバイアスを印加したままでは、ピクセルのフォトダイオード以外の部分のp領域や周辺回路のpウェル領域等からの非信号電荷であるホールの注入により消費電力が増大するという問題があった。
【0004】
画素内に配置されたpウェルとp基板との間の寄生電流を阻止するために、画素のpウェルの下方にpウェルを広くカバーするn型の埋め込み層を画素の一部に設けてpウェルとp基板間の寄生電流を阻止する構造が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の発明では、信号電荷を高速に輸送するためのポテンシャル分布が画素内に実現できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/15791号パンフレット
【文献】特開2015-177191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を鑑み、本発明は、低消費電力で高速動作可能な光電変換素子、及びこの光電変換素子を撮像用の画素として複数個配列した固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(a)第1導電型の上部領域を有する空乏層拡大部と、(b)空乏層拡大部の上面に接して設けられ、上面に露出する上部領域よりも低不純物密度で第1導電型の光電変換層と、(c)光電変換層の上部の一部に埋め込まれ、光電変換層とフォトダイオードをなす第2導電型の表面埋込領域と、(d)光電変換層の上部の他の一部に埋め込まれ、光電変換層よりも高不純物密度で第1導電型のウェル領域と、(e)ウェル領域の上部の一部に埋め込まれ、表面埋込領域から転送されたフォトダイオードが生成した信号電荷を一時蓄積する第2導電型の電荷蓄積領域と、(f)ウェル領域の一部に集積化され、電荷蓄積領域から信号電荷を読み出す回路を構成する画素内回路素子と、(g)ウェル領域の少なくとも一部において、ウェル領域を少なくとも2分割する第2導電型のタブ領域を有し、信号電荷とは反対導電型のキャリアからなる非信号電荷の、ウェル領域から光電変換層への注入を防ぐ注入阻止部を備える光電変換素子であることを要旨とする。本発明の第1の態様に係る光電変換素子では上部領域に印加される電圧によって、光電変換層中に信号電荷生成領域として予定しているすべての範囲が空乏化される。ここで、第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。即ち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型である。又、信号電荷が電子であれば、非信号電荷は正孔(ホール)であり、信号電荷が正孔であれば、非信号電荷は電子である。
【0008】
本発明の第2の態様は、(a)第1導電型の上部領域を有する空乏層拡大部と、空乏層拡大部の上面に接して設けられ、上面に露出する上部領域よりも低不純物密度で第1導電型の光電変換層と、光電変換層の上部の一部に埋め込まれ、光電変換層とフォトダイオードをなす第2導電型の表面埋込領域と、光電変換層の上部の他の一部に埋め込まれ、光電変換層よりも高不純物密度で第1導電型のウェル領域と、ウェル領域の上部の一部に埋め込まれ、表面埋込領域から転送されたフォトダイオードが生成した信号電荷を一時蓄積する第2導電型の電荷蓄積領域と、ウェル領域の一部に集積化され、電荷蓄積領域から信号電荷を読み出す回路を構成する画素内回路素子と、ウェル領域の少なくとも一部においてウェル領域を少なくとも2分割する第2導電型のタブ領域を有し信号電荷とは反対導電型のキャリアからなる非信号電荷のウェル領域から光電変換層への注入を防ぐ注入阻止部を有する画素を複数配列した画素アレイ部と、(b)画素を駆動し、画素からの信号を処理する周辺回路部とを同一半導体チップ上に集積化した固体撮像装置であることを要旨とする。本発明の第2の態様に係る固体撮像装置において、各画素の上部領域に印加される電圧によって、光電変換層中に信号電荷生成領域として予定しているすべての範囲が空乏化される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低消費電力で高速動作可能な光電変換素子、及びこの光電変換素子を撮像用の画素として複数個配列した固体撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る固体撮像装置(2次元イメージセンサ)の半導体チップ上のレイアウトをブロック図を含めて説明する模式的な回路図である。
図2】実施形態に係る固体撮像装置の画素となる光電変換素子の平面構造の一例を、層間絶縁膜を省略して(透視して)上方から見た場合の概略を示す模式的な平面図である。
図3図2に示した画素の平面図のIII-III方向から見た、実施形態に係る固体撮像装置の画素の断面図である。
図4】実施形態に係る固体撮像装置の半導体チップの周辺部に着目した鳥瞰断面図である。
図5】実施形態に係る固体撮像装置の画素の主要部の構造を模式的に説明する断面図である。
図6図5に示した模式的な構造において、裏側バイアス層に印加する裏面バイアス電圧VBを変化させた場合の深さ方向のポテンシャルの変化を示す図である。
図7図5の模式的な構造において、裏面バイアス電圧VBを変化させた場合の光電流の過渡応答を示す図である。
図8】実線は図3のIIIA-IIIA方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示し、破線は、図3のIIIB-IIIB方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。
図9】破線は図3のA-A方向に沿った位置でのポテンシャル分布で、実線は、図3のB-B方向に沿った位置でのポテンシャル分布である。
図10】破線は図3のC-C方向に沿った位置でのポテンシャル分布で、実線は、図3のD-D方向に沿った位置でのポテンシャル分布である。
図11】ストライプ幅3μmのn領域と、ストライプ幅WPW(μm)のp領域が交互周期配列された構造においてp領域(第2pウェル)の下のp型の光電変換層に発生するポテンシャルをWPWの値を変えてシミュレーションするための平面パターンである。
図12】p領域のストライプ幅WPW=3μmであれば、第2pウェルの下のp型の光電変換層に1V程度の電位障壁が発生することを示す図である。
図13図3と等価な断面における、実施形態に係る固体撮像装置の画素の第1及び第2nタブの近傍を拡大して示したポテンシャルの2次元表示である。
図14】実施形態に係る固体撮像装置の製造方法を、画素部分の構造に着目して説明する模式的な工程断面図である。
図15図14に示した一連の製造工程の流れに続く、固体撮像装置の製造方法に係る一連の工程を説明する模式的な工程断面図である。
図16】実施形態の第1変形例に係る固体撮像装置の画素の平面構造の一例を、層間絶縁膜を省略して(透視して)上方から見た場合の概略を示す模式的な平面図である。
図17】実施形態の第2変形例に係る固体撮像装置の画素の平面構造の一例を、層間絶縁膜を省略して(透視して)上方から見た場合の概略を示す模式的な平面図である。
図18図17に示した画素jをマトリクス状に配列した構造の一部となる2×3のマトリクスの部分を示す平面図である。
図19】実施形態の第3変形例に係るTOF型固体撮像装置の画素の平面構造の一例を、層間絶縁膜を省略して(透視して)上方から見た場合の概略を示す模式的な平面図である。
図20図19に示した画素の平面図のXVII-XVII方向から見た、実施形態の第3変形例に係るTOF型固体撮像装置の画素の断面図である。
図21】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の一例を示す模式的な断面図である(その1)。
図22】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の一例を示す模式的な断面図である(その2)。
図23】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の他の例を示す模式的な断面図である(その3)。
図24】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の更に他の例を示す模式的な断面図である(その4)。
図25】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の一例を示す模式的な断面図である(その5)。
図26】その他の実施形態に係る固体撮像装置の画素の概略の断面構造の一例を示す模式的な断面図である(その6)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。また以下の説明では、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明するが、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。またnやpに付す+や-の上付き文字の表記は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物密度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(固体撮像装置のブロック図表現)
本発明の実施形態に係る固体撮像装置(2次元イメージセンサ)は、図1に示すように、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)と周辺回路部(104,105,106,CDS1~CDSm;ADC1~ADCm)とを同一の半導体チップ上に集積化している。半導体チップの中央部に位置する画素アレイ部には、2次元マトリクス状に多数の画素Xij(i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)が配列されており、各画素Xijはそれぞれ方形状の撮像領域を構成している。そして、この画素アレイ部の下辺部には、画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm方向に沿って水平シフトレジスタ106が設けられ、画素アレイ部の左辺部には画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm方向に沿って垂直シフトレジスタ(垂直ドライバ回路)105が設けられている。垂直シフトレジスタ105及び水平シフトレジスタ106には、タイミング発生回路104が接続されている。
【0014】
タイミング発生回路104、水平シフトレジスタ106及び垂直シフトレジスタ105によって画素アレイ部内の画素Xijが順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される。即ち、本発明の実施形態に係る固体撮像装置では、画素アレイ部を各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm単位で垂直方向に走査することにより、各画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmの画素信号を各画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm毎に設けられた垂直信号線B1,B2,B3,…,Bj,…,Bmによって画素信号を読み出す構成となっている。
【0015】
各垂直信号線B1,B2,B3,…,Bj,…,Bmには、それぞれ相関二重サンプリング回路CDS1,CDS2,CDS3,…,CDSj,…,CDSmが接続されている。即ち、1水平ライン毎に、対応するカラムの相関二重サンプリング回路CDS1~CDSmに電荷蓄積領域の蓄積した信号電荷に依存したレベルを読み出し、それぞれの相関二重サンプリング回路CDS1~CDSmにおいて、各垂直信号線B1,B2,B3,…,Bj,…,Bmの信号からアンプ雑音とリセット雑音を除く。相関二重サンプリング回路CDS1,CDS2,CDS3,…,CDSj,…,CDSmの出力側には、それぞれカラム並列A/D変換器ADC1,ADC2,ADC3,…,ADCj,…,ADCmがカラム毎に接続され、各垂直信号線B1,B2,B3,…,Bj,…,Bmの信号がディジタル信号に変換される。
【0016】
(画素等のチップ構造)
以下において、本発明の実施形態に係る固体撮像装置のそれぞれの画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmを、包括的に画素Xijとして表示して説明する。この画素Xijを構成する光電変換素子の平面構造の一例を図2に示し、対応する断面図を図3に示す。図2に示した光電変換素子の平面パターンの中央乃至その左側には、受光カソード領域(電荷生成領域)として機能する表面埋込領域15が矩形の領域として示されている。図3図2に示した画素Xijとしての光電変換素子のIII-III方向から見た断面構造であるが、図3に示されている層間絶縁膜22は、平面パターンを見やすくするために図2においては省略している。
【0017】
表面埋込領域15は、第1導電型(p型)のウェル領域(第1pウェル)14aに囲まれた第2導電型(n型)の半導体領域である。図2の平面パターンのレイアウトにおいて、内側に配置された第1pウェル14aの領域は、第1のn型のタブ領域(第1nタブ)13bに周りを壁状に囲まれている。第1nタブ13bはさらにその外側に配置された中間のp型ウェル領域(第2pウェル)14bに囲まれている。第2pウェル14bの領域が第2のn型のタブ領域(第2nタブ)13dに周りを壁状に囲まれ、第2nタブ13dの領域はさらにその外側に配置された外側のp型ウェル領域(第3pウェル)14cに囲まれて注入阻止部(13b,13d)を構成している。図示を省略しているが、表面埋込領域15の矩形領域内に遮光開口部が設定されるように遮光膜が表面埋込領域15の上方に配置されていても構わない。即ち、遮光膜に設けられた遮光開口部を介して、画素Xijに光が入射する。
【0018】
図3の断面図は例示に過ぎないが、この図3が呈する光電変換素子の構造は、大きなp型のウェル領域が、そのウェル領域の少なくとも一部において、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cに3分割されたトポロジとして表現できる。即ち、図3の断面図に示された局所的範囲では、2枚のn型のタブ領域である第1nタブ13b及び第2nタブ13dによって、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cの3つのp型のウェル領域が構成された構造になる。図3に示すように、第1nタブ13b及び第2nタブ13dのパターン幅に対する深さのアスペクト比が大きな壁状のパターンである。よって、画素内に占める第1nタブ13b及び第2nタブ13dの面積が小さい。このため、実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijの面積効率が高く、画素Xijが微細化できる。また、pウェル、nウェルの横方向の微細構造により、言い換えると、空間電荷の空間微分により、電荷を横方向に高速に輸送できるポテンシャルが生じる。図17を用いて後述するように、局所的に2枚のタブ領域と見なせるn型のタブ領域が構成するトポロジは、図2に示すような2重矩形リング相当の態様に限定されるものではなく、種々のトポロジが実現可能である。例えば、局所的な断面構造としては、4分割以上のトポロジと見なせる部分構造が含まれていても構わない。例えば、局所的な断面構造としては、4分割以上のn分割するトポロジと見なせる部分構造が含まれていても構わない。更に分割する対象は隣の画素との共通となる領域でも構わない。即ち連接する2つの画素に共通の大きなpウェルをn分割するトポロジに対応する分割の仕方でも構わない(nは2以上の正の整数。)。
【0019】
図2の平面パターンでは一対の電界制御電極23r1、23r2がガイド領域16の両側に設けられ、電界制御電極23r1、23r2が呈する横方向電界による静電誘導効果で、ガイド領域16の内部を輸送されてきた信号電荷が電荷蓄積領域18pに転送されるように制御される。電界制御電極23r1、23r2の右側に位置するn+型の電荷蓄積領域18pは、浮遊ドレイン領域として第1pウェル14a中に配置されている。電界制御電極23r1、23r2に印加する電圧により、上側の電界制御電極23r1と下側の電界制御電極23r2の間のガイド領域16の静電ポテンシャルを横方向の電界で制御して、ガイド領域16の内部を輸送されてきた信号電荷を電荷蓄積領域18pに転送する。図2の第1pウェル14aの左上の位置にはp+型のpウェルコンタクト領域46aが配置され、pウェルコンタクト領域46aには表面配線69aを介して低電位側電源電圧VSS3が供給されている。
【0020】
図2の右下のパターンは、リセットトランジスタ、信号読み出しトランジスタ、スイッチングトランジスタ等の「画素内回路素子」を構成するMOSトランジスタ群の一部の平面レイアウトを模式的に示している。画素内回路素子の具体的な回路接続の図示を省略しているが、電荷蓄積領域18pから信号電荷を読み出す信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)のドレイン電極は電源VDDに接続され、ソース電極は画素選択用のスイッチングトランジスタのドレイン電極に接続されている。電荷蓄積領域18pから信号電荷を読み出す回路素子の他の一つである画素選択用のスイッチングトランジスタのソース電極は、垂直信号線Bjに接続され、ゲート電極には水平ラインの選択用制御信号Sが垂直シフトレジスタ105(図1参照。)から与えられる。選択用制御信号Sをハイ(H)レベルにすることにより、スイッチングトランジスタが導通し、信号読み出しトランジスタ(増幅トランジスタ)で増幅された電荷蓄積領域18pの電位に対応する電流が垂直信号線Bjに流れる。
【0021】
即ち、画素内回路素子を構成しているMOSトランジスタ群の一部を模式的に説明するために、図2では、ゲート電極71q,72qが第2pウェル14bに配置されている態様を例示している。さらに、これらのゲート電極71q,72qをそれぞれ挟む態様でMOSトランジスタ群のソース・ドレイン電極91q,92q,93qが配置されている。さらに図2に示すように、第2pウェル14bの右上の位置にはp+型のpウェルコンタクト領域46bが配置され、pウェルコンタクト領域46bには表面配線69bを介して低電位側電源電圧VSS3が供給されている。
【0022】
図3に示すように、実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijは、p型の半導体基板10aと、半導体基板10aの上に配置された、半導体基板10aよりも高不純物密度のp+型の裏側バイアス層11を備える構造で本発明の「空乏層拡大部(10a,11)」を構成している。そして、空乏層拡大部(10a,11)の上部領域をなす裏側バイアス層11の上に、半導体基板10aより低不純物密度のp-型の光電変換層12が配置され、この光電変換層12の上にn型の表面埋込領域15が配置されている。図3に示すように、壁状の第1nタブ13b及び第2nタブ13dは、シャロウ・トレンチ・アイソレーション(STI)構造をなす素子分離絶縁膜21の下に局所的に埋め込まれて注入阻止部(13b,13d)を構成している。
【0023】
さらに、図3から分かるように、素子分離絶縁膜21は、電荷生成領域の上に配置されたピニング層17の矩形パターンをも囲んでいる。STIの技術で素子分離用の浅いトレンチ(溝)にフィールド絶縁膜を埋め込んで素子分離絶縁膜21を形成しても、シリコン局部的酸化(LOCOS)法によって選択酸化でフィールド絶縁膜を形成して素子分離絶縁膜21としても構わない。また、画素Xijの周辺に位置する第3pウェル14cが、素子分離絶縁膜21の下に局所的に埋め込まれていることにより、固体撮像装置の画素分離領域として機能している。
【0024】
図3に示すように表面埋込領域15の右側の上部には、表面埋込領域15の不純物密度n1よりも高不純物密度n2(n2>n1)でn型のガイド領域16が電荷蓄積領域18pに到達するように設けられている。図2から分かるように、ガイド領域16は表面埋込領域15の右側の中央部にステップ状に拡がるパターンで設けられ、ガイド領域16が形成するポテンシャルの勾配によって信号電荷を加速する通路を構成している。表面埋込領域15の上には、第1pウェル14aよりも高不純物密度のp+型のピニング層17が配置され、ガイド領域16はピニング層17と表面埋込領域15の間に挟まれている。
【0025】
受光カソード領域として機能する表面埋込領域15と、表面埋込領域15の直下の受光アノード領域として機能する光電変換層12とでフォトダイオードを構成している。光電変換層12で生成された信号電荷(電子)は、光電変換層12の直上の表面埋込領域15の一部に注入され、ガイド領域16に導かれる。図3の紙面の裏側と手前側にそれぞれ位置するので図示が省略されている電界制御電極23r1、23r2等を覆うように、ピニング層17の上面を含む全面に層間絶縁膜22が被覆している。
【0026】
実施形態に係る固体撮像装置においては、図4に示すように、半導体チップの周辺部に沿ってp型のタブ領域45が配置され、タブ領域45には、p+型のタブコンタクト領域61が埋め込まれる。タブコンタクト領域61に負電位の電源電圧VSS2(=VB)を供給することにより、図4に示すように空乏層12depが光電変換層12中に拡がる。
【0027】
既に図1に示したように、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の周辺には、垂直シフトレジスタ105、水平シフトレジスタ106、タイミング発生回路104等の周辺回路部(104,105,106,CDS1~CDSm;ADC1~ADCm)が集積化されている。図4では周辺回路部(104,105,106,CDS1~CDSm;ADC1~ADCm)の一部の構成をpウェル43及びpウェル43の内側(図4の断面では右側)に隣接したnウェル44で構成されるCMOS回路で模式的に示している。図4の断面部分の右端に示される画素Xijの構造は、図3に示した断面構造と等価であり、重複した説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、pウェル43及びnウェル44は、図4の断面構造部分の右側にその一部を示した画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の周辺を囲う位置に沿って、半導体チップの周辺部側に配置されている。pウェル43にはn+型のソース領域64、n+型のドレイン領域65及びp+型のpウェルコンタクト領域63が配置されている。ソース領域64とドレイン領域65の間にはゲート電極71が配置されているので、ソース領域64、ドレイン領域65及びゲート電極71とで、nMOSトランジスタが構成されることを模式的に例示している。
【0029】
一方、pウェル43より内側に位置するnウェル44にはp+型のソース領域66、p+型のドレイン領域67及びn+型のnウェルコンタクト領域68が配置されている。ソース領域66とドレイン領域67の間にはゲート電極72が配置され、ソース領域66、ドレイン領域67及びゲート電極72でpMOSトランジスタを構成する場合を模式的に例示している。周辺回路部(104,105,106,CDS1~CDSm;ADC1~ADCm)の一部を構成しているpウェル43の外側(図4の断面では左側)には、n型のシンカー領域42が隣接して配置され、シンカー領域42にはn+型のシンカーコンタクト領域62が配置されている。シンカー領域42の下面に接続されたn型のシールド領域41は、周辺回路部(104,105,106,NC1~NCm)の一部をなすpウェル43及びnウェル44の下面をほぼ被覆している。画素Xij側の注入阻止部を構成しているシールド領域13aとは異なり、シールド領域41には中性領域が残っていてもよいので、シールド領域41の不純物密度はシールド領域13aより高い値に設定することが可能である。pウェルコンタクト領域63には電源電圧VSSが供給され、nウェルコンタクト領域68には電源電圧VDDが供給され、シンカーコンタクト領域62には電源電圧VDDが供給されている。
【0030】
なお、図4ではシンカー領域42が最も外側で、シンカー領域42の内側にpウェル43、そのpウェル43のさらに内側にnウェル44が配置された構造を示しているが例示に過ぎない。シンカー領域42、pウェル43、nウェル44の配置・配列の順列組み合わせは任意に選択可能であり、例えばpウェル43が最も外側でも構わない。また、シンカー領域42を省略して、nウェル44にシンカー領域42と等価な機能を付与してもよい。
【0031】
実施形態に係る固体撮像装置においては、図4に示すように、固体撮像装置を構成している半導体チップの周辺部に沿ってp型のタブ領域45がリング状に配置されて「裏面電圧供給部」を構成している。タブ領域45の上部には、p+型のタブコンタクト領域61が上面を露出するように埋め込まれ、タブコンタクト領域61には電源電圧VSS2が供給される。
【0032】
タブ領域45は空乏層拡大部(10a,11)の「上部領域」である裏側バイアス層11に裏面バイアス電圧VBを供給するための部材(裏面電圧供給部)であるので、実質的に裏側バイアス層11に到達可能な距離となるように、なるべく深く形成することが好ましい。図4ではp型の拡散領域として裏面電圧供給部を構成した例を示しているが、裏側バイアス層11に到達する深いトレンチ(貫通孔)をイオンミリングや反応性イオンエッチング(RIE)法で掘って、その貫通孔の側壁にp型の不純物を拡散してもよい。更に、貫通孔にDOPOSやタングステン(W)、チタン(Ti)等の高融点金属を埋め込んでシリコン貫通電極(TSV)を構成して裏面電圧供給部としても良い。
【0033】
実施形態に係る固体撮像装置を構成しているそれぞれの画素Xijに拡がる空乏層12depは、図4に示すように半導体チップの周辺のタブ領域45との境界にまで到達するように設計され、p-型の光電変換層12のほぼ全体を空乏化させていることが分かる。シリコン中の電子の拡散長Lα=18μmとして、波長870nmの光に対する光電変換層12中における光の指数関数的減衰を考慮した場合の、光電変換層12中で発生する電子の数は表1のように計算できる。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、光電変換層12中に中性領域が存在する場合、光電変換層12の表面から6μmまでの速い電子(信号電荷)の成分が28%であり、光電変換層12の深部となる6-10μmに中性領域を拡散速度で移動する遅い信号電荷の成分が14%存在することが分かる。実施形態に係る固体撮像装置を構成しているそれぞれの画素Xijを高速に動作させるためには、各画素Xijの光電変換層12の表面から10μmまでの電子(信号電荷)を高速に転送する必要があるので、光電変換層12の表面から10μmまでを空乏化する必要がある。光電変換層12のほぼ全体を空乏化することにより、光電変換層12で発生した信号電荷はドリフト電界で高速に移動することが可能になる。
【0036】
図3及び図4に示した断面構造において、半導体基板10aの不純物密度や導電型は、特に限定されるものではなく、例示したようなp型であればp-型であっても、p+型であっても構わない。実施形態に係る固体撮像装置においては空乏層拡大部(10a,11)の「上部領域」をなす裏側バイアス層11の不純物密度が重要であり、半導体基板10aの上に設けられる裏側バイアス層11の不純物密度は、3×1018~2×1019cm-3程度のp+型半導体層に設定される。このため、例えば、半導体基板10aのp型の不純物密度を4×1016~1×1018cm-3程度とすれば、電荷生成領域となる光電変換層12の不純物密度は、半導体基板10aの不純物密度よりも低い6×1011~2×1015cm-3程度のp-型の半導体層に設定されることになる。
【0037】
例えば、光電変換層12の不純物密度を6×1013~1.5×1015cm-3程度とした場合、光電変換層12の厚さは4~20μm程度、好ましくは6~15μm程度に設計することが可能である。表面埋込領域15は、不純物密度5×1014~5×1016cm-3程度、代表的には、例えば1×1015cm-3程度の不純物密度の値が採用可能であり、その深さは0.1~3μm程度、好ましくは0.5~1.5μm程度とすることが可能である。
【0038】
図5に示した模式的な構造において、空乏層拡大部(10a,11)の上部領域をなす裏側バイアス層11bに印加する裏面バイアス電圧VBを0V,-1V,-2V,-3Vと変化させた場合の深さ方向のポテンシャルの変化を図6に示す。図6の2点鎖線で示した裏面バイアス電圧VB=0Vの場合、空乏層幅はシリコンエピタキシャル成長層(12,13a、14)の表面から約6μmまで拡がっていると推定できる。一方、図6の1点鎖線で示した裏面バイアス電圧VB=-1Vの場合、空乏層幅はシリコンエピタキシャル成長層(12,13a、14)の表面から約8μmまで拡がっていると推定できる。
【0039】
また、図6において破線で示した裏面バイアス電圧VB=-2Vの場合、空乏層幅はシリコンエピタキシャル成長層(12,13a、14)の表面から約9μmまで、実線で示した裏面バイアス電圧VB=-3Vの場合、表面から約11μmまで拡がっていると推定できる。即ち、裏側バイアス層11bにVB=-2V程度の電圧を印加すれば、表面から深さ方向に約9μmまで空乏層が拡がり、信号電荷生成領域として予定している光電変換層12の深い位置で発生した信号電荷を高速に輸送することが可能と分かる。
【0040】
図5に代表例として模式的に示した構造において、裏側バイアス層11bに印加する裏面バイアス電圧VBを0V,-1V,-2V,-3Vと変化させた場合における光電流応答の変化を図7に示す。図7のデータは波長870nm、パルス幅10nsの平行光をシリコンエピタキシャル成長層(12,13a、14)の表面に照射した場合の光電流の過渡応答を示す。図7で白抜きの菱形(◇)のプロット点を2点鎖線で繋いで示した応答曲線は、裏面バイアス電圧VB=0Vを印加した状態での光電流の過渡応答である。裏面バイアス電圧VB=0Vを印加した場合、立ち下がり時間は表2にも示すように約3.6ns程度で遅いこと分かる。
【0041】
一方、図7で黒塗りの菱形(◆)のプロット点を1点鎖線で繋いで示した応答曲線は、裏面バイアス電圧VB=-1Vを印加した状態での光電流の過渡応答である。裏面バイアス電圧VB=-1Vを印加した場合、立ち下がり時間は表2にも示すように約1.7ns程度と判断できる。また、図7において白抜きの四角形(□)のプロット点を破線で繋いで示した裏面バイアス電圧VB=-2Vを印加した状態での応答曲線の場合、立ち下がり時間は約0.7ns程度、白抜きの三角形(△)のプロット点を実線で繋いで示した裏面バイアス電圧VB=-3Vを印加した状態での応答曲線の場合、立ち下がり時間は約0.5ns程度まで高速化できることが分かる。
【0042】
【表2】
【0043】
表1では光電変換層12の表面から10μmまでを信号電荷生成領域として予定し、信号電荷生成領域のすべてを空乏化する必要があると述べたが、信号電荷生成領域の深さは例示に過ぎない。例えば、光電変換層12の厚さを20μm程度と厚くし、その光電変換層12の信号電荷生成領域として予定している範囲の全体が空乏化するように、表2に示した値よりも大きな裏面バイアス電圧VBを印加するようにしてもよい。
【0044】
(ポテンシャル分布)
図3の上側に平面方向(X方向)の位置座標x,x2,x3、……,x13を示しているが、図8の実線で示す曲線は図3に示した画素XijのIIIA-IIIA方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。また、図8の破線の曲線は、図3に示した画素XijのIIIB-IIIB方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。層間絶縁膜22の位置に近い画素の上面側のIIIA-IIIA方向に沿って、階段状に水平方向に切るポテンシャル分布は、実線で示したとおり、第1pウェル14aに囲まれたピニング層17の領域に含まれる範囲(座標x4-x7間)でほぼ一定の電位を示し、電荷蓄積領域18pの位置(座標x8-x9間)で電位の井戸を示している。さらに、IIIA-IIIA方向に沿った浅い位置での水平方向のポテンシャル分布は、第1nタブ13bの位置(座標x2-x3;x10-x11間)及び第2nタブ13dの位置(座標x12-x13間)で、それぞれ電位の谷を示している。そして、第2pウェル14bの位置(座標x11-x12間)で、2つの電位の谷に挟まれた電位の丘を示している。
【0045】
一方、層間絶縁膜22から離れたIIIB-IIIB方向に沿った深い位置を階段状に水平方向に切るポテンシャル分布は、破線の曲線で示したとおり、第1nタブ13bの位置(座標x2-x3;x10-x11間)及び第2nタブ13dの位置(座標x12-x13間)でそれぞれ浅い電位の谷を示している。そして、第2pウェル14bの位置(座標x11-x12間)で、浅い2つの電位の谷に挟まれて緩やかに変化する比較的低い電位の丘を示している。特に、IIIB-IIIB方向に沿った深い位置での水平方向のポテンシャル分布は、破線で示したとおり、第1pウェル14aに囲まれたピニング層17の範囲(座標x4-x7間)で、電荷蓄積領域18pの位置(座標x8-x9間)に向かって下り勾配の傾斜を示し、電荷蓄積領域18pの直前の位置(座標x7-x8間)に電位障壁を形成している。さらに、IIIB-IIIB方向に沿った深い位置での水平方向のポテンシャル分布は、図8の左側の第1pウェル14aの位置(座標x3-x4間)でもポテンシャルの山を構成している。図8のIIIB-IIIB方向に沿った破線の曲線が示すとおり、座標x4-x7間で、下り勾配の傾斜のポテンシャル分布となることにより、信号電荷を高速に輸送することが可能となる。
【0046】
図3の左側に深さ方向(Z方向)の位置座標z,z2,z3、……,z5を示しているが、図9の破線で示す曲線は図3に示した画素XijのA-A方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。また、図9の実線の曲線は、図3に示した画素XijのB-B方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。A-A方向に沿って、層間絶縁膜22、ピニング層17、ガイド領域16、表面埋込領域15、光電変換層12、裏側バイアス層11及び半導体基板10aを深さ方向に切るポテンシャルは、破線で示すとおり、層間絶縁膜22の下面の深さのレベル(座標z)から電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル(座標z2)まで負の電位であり、電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル近傍で正電位に変わる。図9の破線で示す曲線は電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル近傍から第1pウェル14aの下面の深さのレベル(座標z3)まで正の電位であり、光電変換層12の第1pウェル14aの下面に近い領域のレベルで負の電位に戻る。そして、光電変換層12を深さ方向に進むに従い負の電位が大きくなり、裏側バイアス層11の位置(座標z-z間)で極大値を取るように右に凸となり、半導体基板10a中は一定電位である。
【0047】
一方、B-B方向に沿って、電荷蓄積領域18p、第1pウェル14a、光電変換層12、裏側バイアス層11及び半導体基板10aを深さ方向に切るポテンシャルは、実線で示すとおり、層間絶縁膜22の下面の深さのレベル(座標z)から電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル(座標z2)まで正の電位であり、電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル近傍で負電位に変わる。図9の実線で示す曲線は電荷蓄積領域18pの下面の深さのレベル近傍から第1pウェル14aの下面の深さのレベル(座標z3)まで負の電位である。しかし、B-B方向に沿ったポテンシャルは、光電変換層12の第1pウェル14aの下面に近い領域のレベルで一旦正の電位になり、第1pウェル14aの下面の近傍に、非信号電荷である正孔(ホール)に対する電位障壁を形成していることが分かる。B-B方向に沿ったポテンシャルは、光電変換層12を第1pウェル14aの下面から離れるように深くなるにつれ、負の電位に戻る。そして、光電変換層12を深さ方向に進むに従い負の電位が大きくなり、裏側バイアス層11の位置(座標z-z間)で極大値を取るように右に凸となり、半導体基板10a中は一定電位である。
【0048】
図10の破線で示す曲線は図3に示した画素XijのC-C方向に沿った位置でのポテンシャル分布を、実線の曲線は、図3に示した画素XijのD-D方向に沿った位置でのポテンシャル分布を示す。C-C方向に沿って、層間絶縁膜22、素子分離絶縁膜21、第1nタブ13b、光電変換層12、裏側バイアス層11及び半導体基板10aを深さ方向に切るポテンシャルは、破線で示すとおり、層間絶縁膜22の下面の深さのレベル(座標z)から第1nタブ13bの下面の深さのレベル(座標z3)まで正のほぼ一定電位であり、第1nタブ13bの下面の深さのレベルより深くなるに従いゼロ電位に近くなるように減少する。図10の破線で示す曲線は光電変換層12の第1nタブ13bの下面に近い領域のレベルで負の電位になる。そして、光電変換層12を深さ方向に進むに従い負の電位が大きくなり、裏側バイアス層11の位置(座標z-z間)で極大値を取るように右に凸となり、半導体基板10a中は一定電位である。
【0049】
図3のD-D方向に沿って、層間絶縁膜22、第2pウェル14b、光電変換層12、裏側バイアス層11及び半導体基板10aを深さ方向に切るポテンシャルは、図10の実線で示すとおり、層間絶縁膜22の下面の深さのレベル(座標z)から第2pウェル14bの下面の深さのレベル(座標z3)までゼロ電位で一定電位である。しかし、D-D方向に沿ったポテンシャルは、第2pウェル14bの下面の深さのレベルより深くなるに従い一旦正電位になる領域が発生し、第2pウェル14bの下面の近傍に、非信号電荷である正孔(ホール)に対する電位障壁を形成していることが分かる。その後、D-D方向に沿ったポテンシャルは、さらに深さ方向に進み、光電変換層12の第2pウェル14bの下面に近い領域のレベルで負の電位になる。そして、光電変換層12を深さ方向に進むに従い負の電位が大きくなり、裏側バイアス層11の位置(座標z-z間)で極大値を取るように右に凸となり、半導体基板10a中は一定電位である。
【0050】
図11はストライプ幅3μmのn領域と、ストライプ幅WPW(μm)のp領域が交互周期配列された構造において図3のp領域(第2pウェル)14bの下のp型の光電変換層12に相当する領域に発生するポテンシャルをWPWの値を変えてシミュレーションするための平面パターンである。図12に示すとおり、p領域のストライプ幅WPW=3μmであれば、第2pウェル14bの下のp型の光電変換層12に相当する領域に1V程度の電位障壁が生成できることが分かる。
【0051】
図13は、図3と等価な図11の断面における、実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijの第1nタブ13b及び第2nタブ13dの近傍に相当する領域を拡大して示したポテンシャルの2次元表示である。図13から分かるように、第2pウェル14bを接地電位(=0V)、第1nタブ13b及び第2nタブ13dにそれぞれ+3.6Vを印加し、図13の下側から裏面バイアス電圧VB=-3Vを印加した状態に相当するポテンシャルの等電位線を0.2V置きに示している。図示を省略しているが、ガウスの法則に従い、図13の等電位線に直交するように、第1nタブ13bと第2nタブ13dの下端部から電気力線が下側(裏面)に向かって延びる。図13の等電位線の分布から分かるように、第1nタブ13bと第2nタブ13dの2枚のタブ領域の下端部からそれぞれ延びる電気力線によるポテンシャルによって、約1Vの電位障壁が第1nタブ13bと第2nタブ13dの間に挟まれた第2pウェル14bに相当する領域の直下に生成される。即ち、第1nタブ13bと第2nタブ13dの間に挟まれた第2pウェル14bに相当する領域の直下にも、ポテンシャルが0.2~0.8Vの正の領域が存在しており、第2pウェル14bの下面の近傍に非信号電荷である正孔(ホール)に対する約1Vの電位障壁が形成されて注入阻止部(13b,13d)が構成されていることが分かる。図12に示す電位分布は、図13に等電位線で示した第2pウェル14bの下面の近傍に相当する領域のポテンシャルの2次元分布とも符合する。
【0052】
以上のとおり、実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijの構造によれば、信号電荷を高速に移動させるとともに、非信号電荷である正孔に対する電位障壁を形成して正孔の注入による消費電力の増大を避けることができる。特に、電界制御電極23r1、23r2が呈する横方向電界によって信号電荷を高速に転送させる特徴が、光電変換層12の全体を空乏化することによって、より有効かつ効果的に発揮できる。特に、第1pウェル14aが第1nタブ13bで壁状に囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bに囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブ13dに壁状に囲まれ、第2nタブ13dが第3pウェル14cに囲まれ、第1pウェル14a及び第2pウェル14bの直下に正孔(ホール)の注入を阻止するポテンシャル障壁を生成して注入阻止部(13b,13d)を構成しているので、消費電力が増大することもない。この注入阻止部(13b,13d)の構造が実現するポテンシャル分布は、ガイド領域16に形成されるポテンシャルの勾配を妨げることもないので、より高速に信号電荷を加速した電荷輸送が可能になる。
【0053】
(固体撮像装置の製造方法)
図14図15に示した画素Xij部分の構造に着目した工程断面図を用いて、本発明の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法の概略を説明する。なお、以下に述べる固体撮像装置の製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した固体撮像装置の構造を実現する趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。また以下の説明における「第1~第7注入用マスク」等の名称は製造方法の一連の工程を説明する都合上、一連の工程中の順番の異なる他のフォトマスクと区別するために設定した便宜上の呼称に過ぎず、現実のフォトマスクの名称や順番を規定するものではない。
【0054】
(イ)先ず、0.1~3Ωcm程度の(100)面を主表面とするp型シリコン基板からなる半導体基板10a上に、水素(H2)をキャリアガス、ジボラン(B2)をドーピングガス、モノシラン(SiH4)をソースガスとする気相成長法で、不純物密度が3×1018~2×1019cm-3のp+型裏側バイアス層11aを3~5μmの厚さにエピタキシャル成長する。同一反応管中でB2の流量を下げて、続けてSiH4を用いた気相成長法で、図14(a)に示すように、不純物密度が5×1012~1×1014cm-3のp-型下層光電変換層12aを、8~25μmの厚さに連続エピタキシャル成長する。p+-p-の連続エピタキシャル成長の初期のタイミングで、B2の導入を止め、アルシン(AsH4)若しくはフォスフィン(PH3)を微量に添加してp+-p-の界面のプロファイルを急峻にしてもよい。
【0055】
(ロ)次に、図14(c)に示す構造体をエピタキシャル成長用の反応管から取り出し、酸化炉に投入する。そして、光電変換層12の表面に0.6~1μmのSiO2膜を熱酸化法等によって形成する。このSiO2膜の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術によりフォトレジスト膜を露光現像することで第1nタブ13b及び第2nタブ13dを形成するための第1注入用マスクをパターニングする。この第1注入用マスクの開口部からリンイオン(31+)等のn型を呈する不純物イオンを光電変換層12の上部に、加速電圧を変えながら多段で注入する。第1注入用マスクの除去後、SiO2膜の上面に新たなフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術によりフォトレジスト膜を露光現像することで、第1pウェル14a、第2pウェル14b、第3pウェル14cを形成するための第2注入用マスクをパターニングする。この第2注入用マスクの開口部から硼素イオン(11+)のn型を呈する不純物イオンを光電変換層12の上部に、加速電圧を変えながら多段で注入する。
【0056】
(ハ)第2注入用マスクの除去後、熱処理することにより、図14(c)に示すように、光電変換層12の上部に、第1nタブ13b、第2nタブ13d、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cを選択的に形成する。加速電圧を変えて多段でイオン注入することにより、横方向拡散を抑制されるので、第1nタブ13b、第2nタブ13d、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cのパターン幅に対する深さのアスペクト比の大きなパターンが形成できる。この結果、図2に示したような第1pウェル14aが第1nタブ13bに周りを壁状に囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bに囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブ13dに周りを壁状に囲まれ、第2nタブ13dが第3pウェル14cに囲まれた注入阻止部(13b,13d)の構造が形成される。図14(c)では図示を省略しているが、このとき、図4に示したように、n型のシンカー領域42、pウェル43、nウェル44等も形成される。更に図4に示したように、半導体チップの周辺部に沿ってp型のタブ領域45もリング状に形成される。
【0057】
(ニ)次に、光電変換層12及び第1nタブ13b、第2nタブ13d、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cの表面に0.6~1μmのSiO2膜を熱酸化法等によって形成する。このSiO2膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、素子分離溝形成用のエッチングマスクを形成する。具体的には、フォトレジスト膜をマスクにしてSiO2膜を反応性イオンエッチング(RIE)法でエッチングする。エッチング後にフォトレジスト膜を除去し、SiO2膜をマスクにして、図14(c)の右側では第1nタブ13b、第2nタブ13dの上部を、図14(c)の左側では第1nタブ13b、第2nタブ13d、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cの上部を等、所定のマスクパターンに従って、RIE法で選択的にエッチングすることにより、0.5~1.5μmの深さに素子分離溝を形成する。次いで、シリコン酸化膜等の素子分離絶縁膜21を素子分離溝の深さよりも厚い膜厚で形成することによって素子分離溝を図14(c)の右側では第1nタブ13b、第2nタブ13dの上部を、図14(c)の左側では第1nタブ13b、第2nタブ13d、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cの上部に埋め込む。次いで、化学的機械的研磨(CMP)法等により平坦化を行い、図14(c)の構造断面図を得る。
【0058】
(ホ)さらに、図14(c)に示した構造体の上面に新たなフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術により新たなフォトレジスト膜を露光現像することで、表面埋込領域15を形成するための第3注入用マスクをパターニングする。この第3注入用マスクの開口部からリンイオン(31+)を光電変換層12の上部に注入する。第3注入用マスクを除去後、ガイド領域16を形成するための第4注入用マスクをパターニングする。この第4注入用マスクの開口部からヒ素イオン(75As+)を表面埋込領域15の上部に注入する。第4注入用マスクの除去後、熱処理することで、図15(d)に示すように、表面埋込領域15及び表面埋込領域15の上部のガイド領域16を形成する。
【0059】
(ヘ)さらに、図15(d)に示した構造体の上面に新たなフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術により新たなフォトレジスト膜を露光現像することでピニング層17を形成するための第5注入用マスクをパターニングする。この第5注入用マスクの開口部から硼素イオン(11+)を表面埋込領域15及びガイド領域16の上部に注入する。さらに、第5注入用マスクの除去後、熱処理することにより、図15(e)に示すように、表面埋込領域15及びガイド領域16の上部に不純物密度8×1017~1.5×1019cm-3程度のピニング層17を選択的に形成する。硼素イオン注入後の熱処理の温度と時間は、ピニング層17の深さが0.1~0.7μm程度、好ましくは0.2~0.5μm程度となるように調整する。
【0060】
(ト)次に、図15(e)に示す構造体を熱処理炉から取り出し、酸化炉に投入する。そして、酸化炉中で、ドライ熱酸化法によるSiO2膜をゲート絶縁膜28として、ピニング層17、第1pウェル14a、第2pウェル14b等の上面を含む全面に30nm~80nmの厚さに形成する。さらにゲート絶縁膜28が上面に形成された構造体を酸化炉から取り出し、化学気相成長(CVD)炉に投入する。そして、ゲート絶縁膜28の上にCVD法によってリン(P)ドープの多結晶シリコン(DOPOS)層29を図15(f)に示すように150nm~350nmの厚さに堆積する。
【0061】
(チ)次に、図15(f)に示す構造体の上面に新たなフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術により新たなフォトレジスト膜を露光現像することで電界制御電極23r1、23r2を切り出すためのゲート電極切出用マスクをパターニングする。具体的には、フォトレジスト膜をマスクにしてDOPOS層29をRIE法で切り出してパターニングし、電界制御電極23r1、23r2を形成する。このとき図2の右下に例示したリセットトランジスタ、信号読み出しトランジスタ及びスイッチングトランジスタ等のゲート電極71q,72q等も同様な手順で同時に形成される。エッチング後にゲート電極切出用マスクを除去し、新たなフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術により新たなフォトレジスト膜を露光現像することでリセットトランジスタ、信号読み出しトランジスタ及びスイッチングトランジスタ等のソース・ドレイン電極を形成するために、ゲート電極71q,72qの周辺を開口する窓部を有した第6注入用マスクをパターニングする。
【0062】
(リ)この第6注入用マスクの窓部を利用し、ゲート電極71q,72qを自己整合用マスクとして、砒素イオン(75As+)等のn型を呈する不純物イオンを第1pウェル14、第2pウェル14bの上部に注入する。図14(b)では図示を省略しているが、このとき、図4に示したn型のシンカー領域42、pウェル43、nウェル44等にもn型の不純物イオンが、一部は自己整合を利用して注入される。
【0063】
(ヌ)さらに、第6注入用マスクとしてのフォトレジスト膜を除去した後、別のフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術によりその別のフォトレジスト膜中に第2pウェル14b、pウェル43、nウェル44、p型のタブ領域45等の上部の一部を開口する窓部を有した第7注入用マスクを形成する。この第7注入用マスクを利用し硼素イオン(11+)等のp型を呈する不純物イオンを第2pウェル14b、pウェル43、nウェル44、p型のタブ領域45等の上部の一部に、一部は自己整合を利用して注入する。
【0064】
(ル)そして第7注入用マスクを除去した後、熱処理することにより第1pウェル14bの上部に不純物密度5×1019~1×1021cm-3程度の電荷蓄積領域18が、第2pウェル14bの上部等に不純物密度5×1019~1×1021cm-3程度の画素内回路素子のソース/ドレイン領域91q,92q,93qが形成される。更に、図4に示したpウェル43中のソース領域64、ドレイン領域65、pウェルコンタクト領域63及びnウェル44中のソース領域66、ドレイン領域67、nウェルコンタクト領域68、さらにシンカー領域42中のシンカーコンタクト領域62等もイオン注入後の熱処理によって同時に形成される。
【0065】
(ヲ)そして、電界制御電極23r1、23r2及び画素内回路のゲート電極71q,72q等を含む全面を覆うように層間絶縁膜22を図3に示したように堆積する。層間絶縁膜22としては、「NSG」と称されるリン(P)や硼素(B)等の不純物元素を含まないノンドープのSiO膜が採用可能である。なお、層間絶縁膜22としてはリンを添加したシリコン酸化膜(PSG)、硼素を添加したシリコン酸化膜(BSG)、硼素及びリンを添加したシリコン酸化膜(BPSG)、シリコン窒化物(Si)膜等でもよい。必要に応じてCMP法等により層間絶縁膜22の上面の平坦化を行ってもよい。その後は通常のメタライゼーション技術によって、層間絶縁膜22中に開口されたコンタクトビア71qc,72qcを介し必要な表面配線が接続される。なお、信号読み出しトランジスタ及びスイッチングトランジスタ等の画素内回路素子以外の周辺回路等のソース/ドレイン領域等に対しても同様な手順で表面配線が形成されるので、実際の表面配線のパターンは多層配線構造であるので、層間絶縁膜の堆積工程とメタライゼーション工程が複数回繰り返された後、実施形態に係る固体撮像装置が完成する。
【0066】
以上のとおり、本発明の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法によれば、図2に示したような第1pウェル14aが第1nタブ13bで壁状に囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bで囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブ13dで壁状に囲まれ、第2nタブ13dが第3pウェル14cで囲まれた注入阻止部(13b,13d)を含む画素内構造が従来のCMOSの標準的な製造プロセスで容易かつ高い製造歩留まりで実現できる。このため実施形態に係る固体撮像装置の製造方法によれば、信号電荷を高速に移動させることが可能であるとともに、非信号電荷である正孔の注入を阻止する注入阻止部(13b,13d)を構成して消費電力の増大を抑制した画素Xijの構造が容易かつ高い製造歩留まりで実現できる。
【0067】
=実施形態の第1変形例=
本発明の実施形態の第1変形例に係る固体撮像装置の画素Xijの平面構造の一例を図16に示す。図16の平面パターンの中央乃至その左側には、受光カソード領域(電荷生成領域)として機能する表面埋込領域15が矩形の領域として示されている。図2の平面図の場合と同様に、図3に示した層間絶縁膜22は図16においては省略して、平面パターンを見やすくしている。図2に示した平面構造と同様に、表面埋込領域15は、第1pウェル14aに囲まれ、第1pウェル14aの領域が壁状の第1nタブ13bに囲まれ、第1nタブ13bは第2pウェル14bに囲まれ、第2pウェル14bが壁状の第2nタブ13dに囲まれ、第2nタブ13dが第3pウェル14cに囲まれて注入阻止部(13b,13d)を構成している。図2に例示した構造と同様に、図16の平面パターンでも電界制御電極23r1、23r2が呈する横方向電界による静電誘導効果で、ガイド領域16の内部を輸送されてきた信号電荷が電荷蓄積領域18pに転送されるように制御される。
【0068】
第1pウェル14aに設けられたpウェルコンタクト領域46aには表面配線69aを介して低電位側電源電圧VSS3が供給され、第2pウェル14bのpウェルコンタクト領域46bに表面配線69bを介して低電位側電源電圧VSS3が供給される構造については、図2に例示した構造と同様である。しかし、図16に示すように、第1nタブ13bにnタブコンタクト領域84aが配置され、nタブコンタクト領域84aに表面配線85aを介して高電位側電源電圧VDD2が供給され、第2nタブ13dにnタブコンタクト領域84bが配置され、nタブコンタクト領域84bに表面配線85bを介して高電位側電源電圧VDD2が供給される構造は、図2に例示した構造とは異なる。
【0069】
断面図の図示を省略しているが、図3に示した構造と同様に、実施形態の第1変形例に係る固体撮像装置の画素Xijにおいても、p型の半導体基板10aと、半導体基板10aの上に配置されたp+型の裏側バイアス層11によって空乏層拡大部(10a,11)を構成しており、これらの特徴やそれによる作用・ 効果等は既に実施形態に係る固体撮像装置で説明したとおりであり重複した記載を省略するが、実施形態の第1変形例の固体撮像装置の画素Xijの画素内構造によれば、第1nタブ13b及び第2nタブ13dを含む注入阻止部(13b,13d)が奏するポテンシャル分布が、ガイド領域16に形成されるポテンシャルの勾配を妨げることがないので、より高速に信号電荷を移動させるとともに、非信号電荷(正孔)の注入による消費電力の増大を避けることができる。
【0070】
=実施形態の第2変形例=
本発明の実施形態の第2変形例に係る固体撮像装置の画素Xijの平面構造の一例を図17に示す。図17の平面パターンの中央乃至その左側には、受光カソード領域(電荷生成領域)として機能する表面埋込領域15が八角形の領域として示されている。図2に示した平面構造とは異なり、図2の壁状の第1nタブ13bと第2nタブ13dの一部が重複して、2つの八角形の窓部を有する形状に合体された共通のn型のタブ領域(共通nタブ)13を構成し、非信号電荷(正孔)の注入を阻止する注入阻止部を構成している。
【0071】
図17において、壁状の共通nタブ13の左側の窓部には第1pウェル14aが収納され、共通nタブ13の右側の窓部には第2pウェル14bが収納されている。そして、表面埋込領域15が第1pウェル14aに囲まれるように、共通nタブ13の左側の窓部に収納されている。なお、共通nタブ13の外側は第3pウェル14cに囲まれている。図17に対応する断面図の図示を省略しているが、図3の断面図の右側に対応する断面で考えれば、例えば図3に示したような大きなウェル領域14が、そのウェル領域14の少なくとも一部において、第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cに3分割されたトポロジになる。
【0072】
即ち、図17の平面パターンも、図3の断面図の右側の領域に相当する局所的範囲で観察する限り、2枚のタブ領域として左側に表現される共通nタブ13と右側に表現される共通nタブ13とによって、3つの第1pウェル14a、第2pウェル14b及び第3pウェル14cが構成されたことになる。図17の平面パターンが示す共通nタブ13の構造に関しては、図3の断面図の左側の領域に相当する局所的範囲では、図3とは異なる構造になることは勿論である。
【0073】
図2及び図16に例示した構造と同様に、図17の平面パターンでも電界制御電極23r1、23r2が呈する横方向電界による静電誘導効果で、ガイド領域16の内部を輸送されてきた信号電荷が電荷蓄積領域18pに高速で転送されるように制御される。なお、図2の平面図の場合と同様に、図3の断面構造で図示された層間絶縁膜22は図17においては省略して、平面パターンを見やすくしている。
【0074】
第1pウェル14aに設けられたpウェルコンタクト領域46aには表面配線69aを介して低電位側電源電圧VSS3が供給され、第2pウェル14bのpウェルコンタクト領域46bに表面配線69bを介して低電位側電源電圧VSS3が供給される構造については、図2に例示した構造と同様である。しかし、図17に示すように、壁状の共通nタブ13にnタブコンタクト領域84が配置され、nタブコンタクト領域84に表面配線85を介して高電位側電源電圧VDD2が供給される構造は、図16に例示した構造とは異なる。
【0075】
断面図の図示を省略しているが、図3に示した構造と同様に、実施形態の第2変形例に係る固体撮像装置の画素Xijにおいても、p型の半導体基板10aと、半導体基板10aの上に配置された、半導体基板10aよりも高不純物密度のp+型の裏側バイアス層11によって空乏層拡大部(10a,11)を構成している特徴やそれによる作用・ 効果等は既に実施形態に係る固体撮像装置で説明したとおりであるので、重複した記載を省略する。
【0076】
図17に示した画素Xi,jをマトリクス状に配列した構造の一部となる2×3のマトリクスの部分(Xi,j-2,Xi,j-1,Xi,j;Xi+1,j-2,Xi+1,j-1,Xi+1,j)を図18に示す。第3pウェル14cの部分が画素分離領域として2×3のマトリクスが構成されていることが分かる。実施形態の第2変形例に係る固体撮像装置によれば、壁状の共通nタブ13を含む注入阻止部(13)が奏するポテンシャル分布が、ガイド領域16に形成されるポテンシャルの勾配を妨げることがない。このため、本発明の実施形態の第2変形例に係る固体撮像装置の画素Xijによれば、より高速に信号電荷を高速に移動させることと、注入阻止部によって非信号電荷(正孔)に対する電位障壁を形成し、正孔の注入による消費電力の増大を避けることが両立してできる。
【0077】
=実施形態の第3変形例=
図2に示した実施形態では、一対の電界制御電極23r1、23r2がガイド領域16の両側に設けられ、電界制御電極23r1、23r2が呈する横方向電界による静電誘導効果で、ガイド領域16のポテンシャルが制御され、信号電荷が電荷蓄積領域18pに転送される場合を説明した。しかし、電界制御電極が片側のみに存在しても、電界制御電極が呈する一方向の横方向電界でポテンシャル分布を制御し、電界制御電極の横を走行するチャネル領域における信号電荷の転送を制御できる。
【0078】
本発明の実施形態の第3変形例に係るTOF型固体撮像装置の画素Xijの平面構造の一部を拡大したレイアウトの一例を図19に、対応する断面図を図20に示す。図19の平面パターンは、画素Xijの占める領域の中央から右側を部分的に示す図であり、受光カソード領域(電荷生成領域)として機能する不純物密度n1のn型の表面埋込領域15の中央より右側の領域が示されている。図19では、第1pウェル14aの右側に第1nタブ13bの領域が示され、第1nタブ13bの右側には、第2pウェル14bの領域が示されている。実施形態の第3変形例に係るTOF型固体撮像装置の画素Xijの平面構造も、第1pウェル14aが第1nタブ13bで壁状に囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bに囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブに壁状に囲まれ、第2nタブが第3pウェルに囲まれている。
【0079】
第1pウェル14a及び第2pウェル14bの直下にポテンシャル障壁を生成し、非信号電荷である正孔の注入を阻止する注入阻止部を構成している点では実施形態と同様である。図20図19に示した画素XijのXVII-XVII方向から見た断面構造であるが、図20に示されている層間絶縁膜22は、平面パターンを見やすくするために図19の表現においては省略した透視図になっている。表面埋込領域15は、第1pウェル14aに囲まれたn型の表面埋込領域15である点も図2及び図3に示した構造と同様である。
【0080】
図19に示したTOF型の画素Xijは、遮光膜の遮光開口部を介して入射した光信号を受光する。即ち、第1pウェル14aに囲まれ、受光カソード領域として機能する表面埋込領域15と、表面埋込領域15の直下の受光アノード領域として機能する光電変換層12とでフォトダイオードを構成している。表面埋込領域15の中央右側に配置されたガイド領域16の右側には、末広がりのパターンとして瓢箪型の段差構造をなす不純物密度n2のn型のガイド領域16が設けられている(n1<n2)。光電変換層12で生成された信号電荷(電子)は、光電変換層12の直上の表面埋込領域15の一部に注入され、末広がりのパターンをなすガイド領域16に導かれる。
【0081】
ガイド領域16の右側には扇型に4つの電界制御電極23p,23q,23r,23sが配置されている。平面パターンとして見た場合の電界制御電極23p,23q,23r,23sのそれぞれの真横には、ガイド領域16よりも低不純物密度と不純物密度n3のn型のチャネル領域8p,8q,8r,8sが配置されている(n3>n2)。画素Xijが生成した信号電荷は、ガイド領域16の4つの方向に導かれた後、電界制御電極23p,23q,23r,23sの横方向電界制御による静電誘導効果でチャネル領域8p,8q,8r,8sのポテンシャルが順次制御され、チャネル領域8p,8q,8r,8s中を信号電荷が順次転送される。
【0082】
具体的には、電界制御電極23p,23q,23r,23sに順次印加する電圧により電界制御電極23p,23q,23r,23sの真横のチャネル領域8p,8q,8r,8sの表面に電荷転送チャネルを誘起して、ガイド領域16の内部を輸送されてきた信号電荷を順次転送する。さらに、図19に示すように、電界制御電極23p,23q,23r,23sにより転送された信号電荷を、順次蓄積する4つのn+型の電荷蓄積領域18p,18q,18r,18sがチャネル領域8p,8q,8r,8s内部の右側に浮遊ドレイン領域としてそれぞれ配置されている。
【0083】
扇型の配列の平面パターンにおいて、図19の上方に配置された2つの電界制御電極23p,23qと下方に配置された2つの電界制御電極23r,23sの間には排出ゲート電極23cが配置され、排出ゲート電極23cの右側にはn+型の排出ドレイン領域18cが配置されている。図19に示した画素XijのXVII-XVII方向の断面となる図20での表現では電荷蓄積領域18qが露出している。電荷蓄積領域18qには表面配線33qが接続されている。図19に示す排出ゲート電極23cは、電界制御電極23p,23q,23r,23sとの所定のタイミングで暗電流や背景光等による電荷を排出ドレイン領域18cに排出する。
【0084】
電荷蓄積領域18p,18q,18r,18s及び排出ゲート電極23cのさらに右側には、図2に示した画素内回路素子等を構成するMOSトランジスタ群のゲート電極が配置されているが、図19は拡大図であるのでこれらの図示は紙面の外となり、省略されている。さらに、これらのゲート電極をそれぞれ挟む態様でMOSトランジスタ群のソース/ドレイン電極等も配置されているが図示が省略されている。
【0085】
図20に示すように、実施形態の第3変形例に係る固体撮像装置のそれぞれの画素Xijは、p型の半導体基板10aと、半導体基板10aの上に配置された、半導体基板10aよりも高不純物密度のp+型の裏側バイアス層11を備える構造で空乏層拡大部(10a,11)を構成している点では図3に示した構造と同様である。そして、空乏層拡大部(10a,11)の上部領域をなす裏側バイアス層11の上に、半導体基板10aより低不純物密度のp-型の光電変換層12が配置され、この光電変換層12の上にn型の表面埋込領域15が配置されている。
【0086】
図19から分かるように、ガイド領域16は表面埋込領域15の右側の中央部に末広がりのパターンで設けられ、ガイド領域16が形成する末広がりのポテンシャルの勾配によって信号電荷を加速する通路を構成している。表面埋込領域15の上には、第1pウェル14a及び第2pウェル14bよりも高不純物密度のp+型のピニング層17が配置され、ガイド領域16はピニング層17と表面埋込領域15の間に挟まれている。
【0087】
実施形態の第3変形例に係る固体撮像装置においても、図4に示した構造と同様に、半導体チップの周辺部に沿ってp型のタブ領域45が配置され、タブ領域45には、p+型のタブコンタクト領域61が埋め込まれる。タブコンタクト領域61に負電位の電源電圧VSS2を供給することにより、図4に示したのと同様に空乏層12depが光電変換層12中に拡がる。
【0088】
実施形態の第3変形例に係る固体撮像装置の画素Xijの構造によれば、空乏層12depを光電変換層12の全体に拡がらせることによって、信号電荷を高速に移動させ、ナノ秒を切る高速動作のTOF型のセンサを実現することが可能である。更に、実施形態の第3変形例に係る固体撮像装置の画素Xijの構造では第1pウェル14aが第1nタブ13bで囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bで囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブで囲まれ、第2nタブが第3pウェルに囲まれた構造によって、非信号電荷である正孔の注入を阻止する注入阻止部を構成しているので、第1pウェル1a及び第2pウェル14bからの正孔の注入によるTOF型のセンサの消費電力の増大を避けることができる。
【0089】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0090】
例えば、図21に示す構造は、第1pウェル14aが第1nタブ13bで囲まれ、第1nタブ13bが第2pウェル14bに囲まれ、第2pウェル14bが第2nタブ13dに囲まれ、第2nタブ13dが第3pウェル14cに囲まれた構造である点では、図3と同様である。しかし、図21に示す本発明のその他の実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijの構造では、第1nタブ13bの下面がn型の第1シールド領域13aによって被覆され、第2nタブ13dの下面は、n型の第2シールド領域13cによって被覆されている特徴が、図3に示した構造とは異なる。第1シールド領域13aは第1pウェル14aの下面の一部から、第2pウェル14bの下面の一部までを含んで、第1nタブ13bの下面を被覆している。又、第2シールド領域13cは第2pウェル14bの下面の一部から、第3pウェル14cの下面の一部までを含んで、第2nタブ13dの下面を被覆している。
【0091】
図21に示すように、第1シールド領域13a及び第2シールド領域13cを備えることにより、第1pウェル14a及び第2pウェル14bの直下に正孔の注入を阻止するポテンシャル障壁がより高く形成でき、正孔の注入による消費電力の増大を抑制できる。第1シールド領域13a及び第2シールド領域13cを備える注入阻止部(13a,13b,13c,13d)が実現するポテンシャル分布も、ガイド領域16に形成されるポテンシャルの勾配を妨げることもないので、図21に示すその他の実施形態に係る固体撮像装置の画素Xijの構造によっても、信号電荷を加速した高速な電荷輸送が可能になる。
【0092】
図3を用いて説明した実施形態の説明では、p型の半導体基板10aと、半導体基板10aの上に配置されたp+型の裏側バイアス層11を用いて空乏層拡大部(10a、11)を構成する場合を例示的に説明したが、p型の半導体基板10aに限定されないことは、既に実施形態の説明で述べたとおりである。よって、実施形態に係る固体撮像装置やその変形例においても、p型の半導体基板10aを用いる代わりに、図22に示すn型の半導体基板10bを用いて空乏層拡大部(10b、11)を構成してもよく、図23に示す絶縁体基板10cを用いて空乏層拡大部(10c、11)を構成もよい。
【0093】
さらに、図24に示すように、p+型の半導体基板11dそのものを単体で空乏層拡大部(11d)として採用してもよい。この場合は、空乏層拡大部(11d)の「上部領域」はp+型の半導体基板11dの上部領域が該当するが、半導体基板11dの上部領域とその下の半導体基板11dは同一の領域ということになる。図24に示す構造においては、光の減衰距離を考慮すると、p+型の半導体基板11dの厚さを5~10μm以下となるように研削やCMP等により薄くなるように調整して裏面照射型の固体撮像装置とすることが好ましい。このため、図24に示すように、表面の層間絶縁膜22を介してSi基板等の支持基板9を貼り合わせ法等により、上面に結合して機械強度を担保することが好ましい。図示を省略しているが、チップの周辺において光電変換層12を貫通する深いトレンチ(貫通孔)をイオンミリングやRIE法で掘って、その貫通孔の側壁にp型の不純物を拡散してもよい。更に、貫通孔にDOPOSやW、Ti等の高融点金属を埋め込んでTSVを構成して裏面電圧供給部を構成しても良いことは図4の説明でしたのと同様である。
【0094】
さらに、図25に示すように、表面埋込領域15の直下のp+型の半導体基板11cの領域のみを選択的に5~10μm以下となるような凹部を構成して、半導体基板11cの単体で空乏層拡大部(11c)として採用してもよい。図25に示す構造においては半導体基板11cの裏面に設ける裏面電極88を多結晶シリコン、酸化スズ(SnO2)、インジウム(In)を添加した酸化スズ(ITO)、亜鉛(Zn)を添加した酸化スズ(ZTO)、ガリウム(Ca)を添加した酸化スズ(GTO)、アルミニウム(Al)を添加した酸化スズ(ATO)等の透明電極で構成すれば裏面照射型の固体撮像装置となる。裏面照射型の固体撮像装置とするためには、実効的なフォトダイードとして機能する部分のみの半導体基板11cの厚さが5~10μm以下となっているので、その周りの額縁状の厚い半導体基板11cが機械的強度を担保するので、図24に示すような支持基板9を貼り合わせる必要もない。
【0095】
更に、例えば図26に示すように、遮蔽板1の上側に、対象物からの光を収束して受光領域PDに入射させるマイクロレンズ2を設けてもよい。マイクロレンズ2を介して光を入射させることにより、開口率を向上させることができるので、固体撮像装置の高感度化を図ることができる。図26に示したその他の実施形態に係る光電変換素子によっても、図2図4図16図24等に示した光電変換素子と同様に、信号電荷を高速に輸送するためのポテンシャル分布を画素内に実現して、低消費電力で高速転送が両立できるという効果を奏することができる。尚、マイクロレンズは、図26に例示したような単層構造に限定されることなく、2段以上の複合構造で光電変換素子に組み合わせて、更に微細化を図ることもできる。
【0096】
既に述べた実施形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明したが、第1導電型がn型、第2導電型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。このとき、例えば、図3に示した表面埋込領域15は「受光アノード領域」になるように、対応して適宜極性を反転させればよい。又、実施形態の説明では信号電荷を電子、信号電荷とは反対導電型の非信号電荷を正孔(ホール)として説明したが、極性を反転した場合、信号電荷が正孔、非信号電荷が電子になることは勿論である。
【0097】
実施形態の説明においては、2次元固体撮像装置(エリアセンサ)を例示的に説明したが、本発明の画素Xijは2次元固体撮像装置の画素Xijのみに用いられるように限定して解釈するべきではない。例えば、図1に示した2次元マトリクスにおいて、j=m=1とした1次元固体撮像装置(ラインセンサ)の画素Xijとして複数の画素Xijを1次元に配列してもよいことは、上記開示の内容から、容易に理解できるはずである。
【0098】
以上の説明では、第2導電型(n型)のタブ領域が分割する対象は単一の画素のウェル領域であるとして説明したが例示に過ぎない。例えば、鏡像関係に結合した2つの画素の境界でタブ領域が分割する構造が含まれていてもよい。即ち、図1に示した画素アレイのマトリクスの内から2つずつのペアを選んで実効的な分割の対象とする画素単位としてもよく、その画素単位に共通に存在するウェル領域をタブ領域が分割する構造が含まれていてもよい。したがって、4つの画素からなる集合を画素単位として、画素単位に共通に存在するウェル領域をタブ領域が実効的に分割する構造が含まれていてもよい。したがって、本発明のタブ領域は隣接配置された複数の画素に共通の大きなウェル領域を実効的にn分割するタブ領域の構造が含まれていても構わない(nは2以上の正の整数。)。この場合、タブ領域により分割されたウェル領域は隣接配置された複数の画素にそれぞれ配置される。
【0099】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0100】
1…遮蔽板
2…マイクロレンズ
10a,10b…半導体基板
10c…絶縁体基板
11,11b…裏側バイアス層
12dep…空乏層
12…光電変換層
13b…第1nタブ
13d…第2nタブ
43…pウェル
14a…第1pウェル
14b…第2pウェル
14c…第3pウェル
15…表面埋込領域
16…ガイド領域
17…ピニング層
18p,18q,18r,18s…電荷蓄積領域
28…ゲート絶縁膜
21…素子分離絶縁膜
22…層間絶縁膜
23c,28c…排出ゲート電極
23r1,23r2,23p,23q,23r,23s…電界制御電極
26,26q…リセットゲート電極
29…DOPOS層
32,33,69,69a,69b,85,85a,85b…表面配線
41…シールド領域
42…シンカー領域
44…nウェル
45…タブ領域
46,46a,46b…pウェルコンタクト領域
51,52…フォトレジスト膜
61…タブコンタクト領域
62…シンカーコンタクト領域
63…pウェルコンタクト領域
64、66…ソース領域
65,67…ドレイン領域
68…nウェルコンタクト領域
71,72,71q,72q…ゲート電極
84,84a,84b…nタブコンタクト領域
88…裏面電極
91,92,93,91q,92q,93q…ドレイン電極
104…タイミング発生回路
105…垂直シフトレジスタ
106…水平シフトレジスタ
図1
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