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特許7162904白金族金属およびそれらの合金の無電解析出方法ならびにそれに用いられるめっき浴
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】白金族金属およびそれらの合金の無電解析出方法ならびにそれに用いられるめっき浴
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/44 20060101AFI20221024BHJP
   C23C 18/48 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C23C18/44
C23C18/48
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019567649
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 IB2018054067
(87)【国際公開番号】W WO2018224987
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P.421812
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】518222402
【氏名又は名称】ウニヘルシテット・ワルシャフスキ
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET WARSZAWSKI
【住所又は居所原語表記】krakowskie Przedmiescie 26/28,00-927 Warszawa,Poland
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ポルクジンスキー、ピオトル
(72)【発明者】
【氏名】ジュルクザコフスキー、ラファル
(72)【発明者】
【氏名】リウェラ、アダム
(72)【発明者】
【氏名】バカル、パウエル
(72)【発明者】
【氏名】スロジェフスキー、マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】スザバット、フーベルト
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-516921(JP,A)
【文献】特表2002-540921(JP,A)
【文献】特表2015-511274(JP,A)
【文献】特開2009-079106(JP,A)
【文献】特開平01-195284(JP,A)
【文献】特開2012-077334(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0005378(US,A1)
【文献】SHIN-RU WANG et al.,Aggregate structure and crystallite size of platinum nanoparticles synthesized by ethanol reduction,JOURNAL OF NANOPARTICLE RESEARCH,2008年08月21日,vol.11,No.4,p.947-953
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金の、めっき浴から基材上への無電解析出方法であって、1以上の白金前駆体の還元剤による還元工程を含み、前記還元剤は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび2-ブタノールからなる群より選択されるモノヒドロキシアルコールである、方法。
【請求項2】
前記めっき浴中の前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.02ないし12 Mの範囲である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記めっき浴中の前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.1ないし5 Mの範囲である、請求項2の方法。
【請求項4】
前記1以上の白金前駆体は、H2PtCl6、H6Cl2N2Pt、PtCl2、PtBr2、K2[PtCl4]、Na2[PtCl4]、Li2[PtCl4]、H2Pt(OH)6、Pt(NO3)2、[Pt(NH3)4]Cl2、[Pt(NH3)4](HCO3)2、[Pt(NH3)4](OAc)2、(NH3)4Pt(NO3)2、(NH4)2PtBr6、K2PtCl6、PtSO4、Pt(HSO4)2、Pt(ClO4)2、K2PtI6、K2[Pt(CN)4]、cis-[Pt(NH3)2Cl2]、これらの水和物ならびにこれらの塩および/または水和物の混合物を含む群から選択される、請求項1-3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記めっき浴中の前記白金前駆体の濃度は、1 mMないし1 M、好ましくは5 mMないし100 mM、より好ましくは10 mMないし50 mMの範囲である、請求項1-4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記還元工程を、前記めっき浴の凝固点と沸点との間の温度で行う、請求項1-5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記還元工程を、-10ないし80℃、好ましくは0ないし40℃、より好ましくは10ないし25℃の温度で行う、請求項6の方法。
【請求項8】
前記めっき浴はさらに、pH緩衝剤を含む、請求項1-7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
前記めっき浴のpHが7未満である、請求項1-8のいずれか1項の方法。
【請求項10】
前記めっき浴の前記pHが3ないし5である、請求項9の方法。
【請求項11】
前記めっき浴の前記pHが4である、請求項10の方法。
【請求項12】
前記基材は、金属、金属合金、ポリマー材料、炭素およびシリコンを含む群から選択される、請求項1-11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記基材は、白金、パラジウム、ニッケル、金、スチール、鉄-クロム-アルミニウム合金、ナフィオン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、グラファイトおよびシリコンを含む群から選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
前記白金前駆体の還元工程に先立って、前記基材の表面をシーディングする、請求項1-13のいずれか1項の方法。
【請求項15】
めっき工程を完了した後、めっきされた基材に、700-1000℃の温度で行う高温処理を施すか、火炎アニールする、請求項1-14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記めっき浴はさらに、光沢剤を含む、請求項1-15のいずれか1項の方法。
【請求項17】
前記めっき浴はさらに、追加の還元剤、好ましくは、ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素を含む群から選択される還元剤を含む、請求項1-16のいずれか1項の方法。
【請求項18】
前記めっき浴はさらに、2-メチルプロパン-2-オールを含む、請求項1-17のいずれか1項の方法。
【請求項19】
白金の無電解析出のためのめっき浴であって、前記めっき浴は、還元剤として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールおよび2-ブタノールからなる群より選択されるモノヒドロキシアルコールと、1以上の白金前駆体とを含む水溶液であ、めっき浴。
【請求項20】
前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.02ないし12 Mの範囲、好ましくは0.1ないし5 Mの範囲である、請求項19のめっき浴。
【請求項21】
さらに、追加の還元剤、好ましくは、ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素を含む群から選択される還元剤を含む、請求項19または20のめっき浴。
【請求項22】
前記1以上の白金前駆体は、H2PtCl6、H6Cl2N2Pt、PtCl2、PtBr2、K2[PtCl4]、Na2[PtCl4]、Li2[PtCl4]、H2Pt(OH)6、Pt(NO3)2、[Pt(NH3)4]Cl2、[Pt(NH3)4](HCO3)2、[Pt(NH3)4](OAc)2、(NH3)4Pt(NO3)2、(NH4)2PtBr6、K2PtCl6、PtSO4、Pt(HSO4)2、Pt(ClO4)2、K2PtI6、K2[Pt(CN)4]、cis-[Pt(NH3)2Cl2]、これらの水和物ならびにこれらの塩および/または水和物の混合物を含む群から選択される、請求項19-21のいずれか1項のめっき浴。
【請求項23】
前記前駆体の濃度が、1 mMないし1 Mの範囲である、請求項19-22のいずれか1項のめっき浴。
【請求項24】
前記前駆体の濃度が、5 mMないし100 mMの範囲である、請求項23のめっき浴。
【請求項25】
前記前駆体の濃度が、10 mMないし50 mMの範囲である、請求項24のめっき浴。
【請求項26】
前記めっき浴のpHが7未満である、請求項19-25のいずれか1項のめっき浴。
【請求項27】
前記pHが3ないし5である、請求項26のめっき浴。
【請求項28】
前記めっき浴の前記pHが4である、請求項27のめっき浴。
【請求項29】
さらに、pH緩衝剤を含む、請求項19-28のいずれか1項のめっき浴。
【請求項30】
さらに、光沢剤を含む、請求項19-29のいずれか1項のめっき浴。
【請求項31】
さらに、2-メチルプロパン-2-オールを含む、請求項19-30のいずれか1項のめっき浴。
【請求項32】
請求項19-31のいずれか1項に規定しためっき浴の、白金の無電解析出における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族金属およびそれらの合金の無電解析出方法ならびにそれに用いられるめっき浴を提供する。
【背景技術】
【0002】
白金族金属(PGM)は、6の元素-白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびオスミウムからなる。白金族金属およびPGM合金のめっきにおける関心は、非常に広い範囲のそれらの用途に起因している。PGM層は耐食性を与えることができ、装飾層または変色層としても用いることができる。ロジウムは、典型的には、耐摩耗性の装飾仕上げ層としてめっきされる。PGMは、多くの化学反応に対するそれらの触媒活性も知られている。PGMは、電子デバイスおよび電子部品の製造、ならびに卑金属の腐食に対する保護を与える層として用いられる。たとば、亜鉛めっきのパラジウム、ルテニウムおよびそれらの合金は、コネクタ上の金代用コンタクトおよびプリント配線板として用いられる。
【0003】
白金層はまた、銅上金めっきに取って代わりうる。このような材料では、銅原子が金層を通して拡散する傾向があり、その表面の変色ならびに酸化物層および/または硫化物層の形成を引き起こす。銅上金層については、典型的にはニッケル層を、金層の機械的裏打ちを与えるために用いなければならない。しかし、このように変更した銅上金層では、高い頻度で、ニッケルの高い電気抵抗によるスキン効果が認められる。また、金めっき部品のはんだ付けは、金がはんだに溶けるので、問題になる。2-3 μmの金層は、典型的なウェーブはんだ付け条件の間に1秒以内に完全に溶ける。パラジウムおよびルテニウムは、半導体、たとえばGaAsおよびInP上の金属コンタクトとして用いられる。
【0004】
PGMのめっきは、このアプローチを用いることによって、PGM(およびそれらの合金)を様々な低コスト基板上にめっきできるため、PGMの費用効果のよい使用のために特に適した方法である。無電解PGMめっきは、この方法では、層を非導電性支持体上にめっきできるため、特に適している。プラスチック上へのPGMめっきは、フレキシブル電子部品およびフレキシブル色素増感太陽電池に製造に応用することができる[Dao V-D, et al.: Dry plasma reduction to synthesize 担体ed platinum nanoparticles for flexible dye-sensitized solar cells. J. Mater. Chem. A 2013, 1:4436-4443]。
【0005】
現在まで、少数のPGM無電解析出プロセスが文献に記載されている[Electroless Plating: Fundamentals and Applications; Glenn O. Mallory and Juan B. Hajdu, Ed., William Andrew, 1990]。そのうえ、それらのほとんどは、高い剥離傾向がある、脆弱で不均一な析出物をもたらす。文献調査は、PGMめっきに関するほとんどの研究が、めっき浴添加物の開発に集中しており、還元剤にはより少ししか重点が置かれていないことを示唆している。PGMの無電解析出の実質的にすべての方法において、以下の還元剤のうちの1が用いられている:ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素。これらの還元剤の酸化還元電位は非常に低く、したがってPGMめっきは水素発生を伴い、これはPGM析出にとって好ましくない状態、たとえば水素脆化、剥離、荒れた析出物などをもたらす。
【0006】
白金めっきは複雑で困難なプロセスであることが一般に知られている。白金析出の電気化学的な方法は、粘着性の劣る白金黒析出物の形成をもたらす。KeitelおよびZschiegnerによって導入された伝統的な方法では、Pt析出を「Pt」塩前駆体から行う。これは、比較的滑らかなPtコーティングをもたらす少数の方法の1である[Keitel W and Zschiegner H: Electrodeposition of Platinum, Palladium and Rhodium. Trans. Electrochem. Soc. 1931, 59:273-275]。しかし、このめっきは、高温操作と、典型的には10%未満の、非常に低い陰極電流効率の白金析出を要する。スルファトジニトリト白金(II)を含む溶液がDNS白金めっき溶液の名称の下に業務用途のために調製され、この種のめっき浴をカバーする特許出願が多くの国で出願されている[Hopkin N and Wilson L: Bright platinum plating. Platinum Metals Review 1960, 4:56-58]。現在用いられている白金めっき溶液は、析出物の品質を改善するために多くの添加物を含んでいる。しかし、このアプローチは、高価であり、それ自体の限界と潜在的な問題を有するであろう。
【0007】
白金金属は化学的に不活性であるが、それらの表面は極めて反応性であり、したがってこれらの金属は不均一触媒に広く用いられている。パラジウム、ロジウムおよび他のPGMで合金化した白金は、種々の化学工業スケールのプロセスで用いられている。アンモニア酸化を要する、硝酸および農業肥料の製造は、PGM触媒にとって最高の需要を創出する。しかし、白金触媒にとって重要な用途は、ポリマー材料の製造、たとえばシリコーンおよび酢酸ビニルモノマーの製造においても見出されうる。PGMは、石油工業において改質反応および異性化反応における触媒として用いられる。ロジウム触媒はお基礎アルコールおよび酢酸の製造において用いられ、後者は触媒としてルテニウムおよびイリジウムによっても製造される。ルテニウムまたはルテニウム-イリジウム合金のいずれかでコートされたチタンからなる、寸法的に安定な陽極は、工業スケールでの塩素発生に用いられる。荒れたPGM析出物を燃料電池などに応用しうる。これらの全ての用途にとって、荒れたPGM析出物は、より高い表面積が層のより高い触媒活性をもたらすため、有益である
しかし、光沢剤なしのめっき浴中において得られた白金コーティングは、通常脆弱で粘着性に劣る[Feltham A and Spiro M: Platinized platinum electrodes. Chem. Reviews 1971, 71:177-193]。しばしば、このプロセスは水素発生を伴い、白金が溶液中で還元される。半世紀超のあいだ、少量の酢酸鉛を含む溶液からPt黒析出が行われており、これは水素発生を阻害し、Ptの粘着性を改善する。しかし、この手順において、鉛が層に取り込まれ、得られるPt析出物がPbで汚染され、これは触媒用途にとって特に好ましくない。
【0008】
現在、非常に大きい比表面積上に、かつ基材に強く粘着性のある白金層を製造する技術はない。酸化物またはシリコン上に超薄層または金属クラスターを得ることができる[M.B. Vukmirovic et al., ChemElectroChem 2016, 3: 1-7; A. Munoz-Noval, Electrochemistry Communications, 2016, 71: 9-12]。少数の電解めっきおよび無電解めっき技術が白金について利用できる。蒸着法および無電解めっき法によって得られたグラファイト上の白金-レニウムのバイメタリッククラスターを含む触媒層の比較が、R. P. Galhenage, Phys. Chem. Chem. Phys., 2015, 17, 28354に記載されている。他の公知のめっき方法のほとんどにおいては、白金層のみが得られる(すなわち、他のPGMと組み合わせて白金をめっきする手段は開示されていない)。すべての公知の方法においては、特定の固体担体、たとえば銅またはチタン上でめっきを行うことができる。めっき条件、特に温度およびpHを制御することも必要である。また、このように典型的に用いられるめっき浴は、それらが多くの添加剤および還元剤、たとえばヒドラジンおよびその誘導体または次亜リン酸を含むので、得るのが非常に難しい。最後に、いかなる滑らかな層も、電解めっきにより、しかし非常に低い電流効率でしか得ることができない。
【0009】
一方、白金前駆体の化学的還元は、白金ナノ粒子の製造に広く用いられている。白金ナノ粒子調製のための非常に普及している還元剤は、脂肪族アルコールおよびアルデヒドである。ナノ粒子調製のための必要な条件の1は速い還元工程であり、通常比較的高温で行われる(典型的には還元工程の温度は70℃より高い)。より低い温度では、より強い還元剤、たとえばヒドラジンを用いなければならない[WO2013186740]。
【0010】
燃料電池におけるそれらの考えられる使用のために、アルコールの酸化が広範に研究されている。最も広範な研究がメタノールについて行われ、エタノールについてはより狭い範囲で行われた。他のアルコールの酸化は時たま報告されている。ポリヒドロキシ化合物、すなわち糖および糖誘導体は、たとえばグルコース、アスコルビン酸は、銀および金をめっきするために以前は用いられていた[Kato M et al.: Electroless Gold Plating Bath Using Ascorbic Acid as Reducing Agent-Recent Improvements. In Proceedings of AESF Technical Conf SUR/FIN'95:1995:805-813]。脂肪族および芳香族モノアルコールは、無電解めっきにおける還元剤として、以前に一度も用いられていない。
【0011】
白金および他のPGMで被覆された物品に対する大きな需要のため、良好に粘着する金属層の形成をもたらすであろう、白金および他のPGMの無電解析出のための方法の開発に対する大きなニーズがある。そのうえ、形成される金属層の性質を、単にプロセス条件を変化させることによって簡単に制御できる、PGM無電解めっき方法に対するニーズがある。また、このようなPGM無電解めっきの方法に用いられるめっき浴が光沢剤(たとえばサッカリンおよびポリエチレングリコール)ならびに他の添加剤および還元剤(たとえばヒドラジン、鉛または次亜リン酸塩)を含まないのであれば有利であろう。
【発明の概要】
【0012】
本発明の発明者は、芳香族および脂肪族アルコールを触媒として用いる、白金および他のPGM、ならびにそれらの合金の無電解析出のための方法を開発した。本明細書で用いる限り、PGM層とは、単一金属(たとえば白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびオスミウム)の層および白金族金属を含む金属合金層(たとえば白金-ロジウム、白金-イリジウム、白金-ルテニウムなど)の両方、ならびに白金族金属と他の金属、たとえば金、ニッケルおよび銅とを含む金属合金層(たとえば白金-金、白金-銅、白金-ニッケル、白金-ロジウム-金、ロジウム-ニッケルなど)をいう。最も好ましい本発明の態様においては、合金層が基材上に析出し、前記合金は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、ニッケルおよび銅を含む群からの1以上の金属を含む。
【0013】
本発明の方法においては、第一級および第二級アルコールの両方を用い、金属および合金、ポリマー材料、グラファイトならびにシリコンを含む多種多様な基材上で析出を行う。本発明のPGMめっきのプロセスは、めっき浴の凝固点と沸点との間の温度で行われる。析出される層の層厚および表面形態の両方を、実験条件、特に還元剤、温度、pHならびに還元剤および白金族金属前駆体の両方の濃度を調製することによって、簡単な仕方で制御することができる。
【0014】
特に、本発明によれば、白金族金属およびそれらの合金の、めっき浴から基材上への無電解析出方法は、1以上の白金族金属前駆体の還元剤による還元工程を含み、前記還元剤は、第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールまたは第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールの混合物である。本明細書で用いる限り、用語「モノヒドロキシアルコール」とは、単独のヒドロキシル基を含む脂肪族および芳香族アルコールをいう。用語「第一級モノヒドロキシアルコール」とは、ヒドロキシル基が第一級炭素原子-1隣接炭素原子のみを有する炭素原子に連結しているアルコール(すなわち下記の基「-CH2OH」を有するアルコール)と理解すべきである。用語「第二級モノヒドロキシアルコール」とは、ヒドロキシル基が第二級炭素原子-2隣接炭素原子を有する炭素原子に連結しているアルコール(すなわち下記の基「-CHROH」、式中Rは炭素含有基(脂肪族または芳香族)を有するアルコール)と理解すべきである。本明細書で用いる限り、用語「第一級または第二級モノヒドロキシアルコールの混合物」とは、異なる第一級モノヒドロキシアルコールの混合物、異なる第二級モノヒドロキシアルコールの混合物、ならびに一級モノヒドロキシアルコールおよび第二級モノヒドロキシアルコールの両方を含む混合物をいう。用語「無電解析出」は、当業者によく知られており、外部の電子源を用いることのない、溶液からの金属イオンの還元による基板上への金属析出のプロセスをいう。
【0015】
好ましくは、前記モノヒドロキシアルコールは下記一般式を有する。
【化1】
式中、R1およびR2は同じでも異なっていてもよく、それらの各々は独立に水素原子、直鎖または分枝のC1-7-アルキル基、C3-8-アリール基、C4-8-アラルキル基およびC4-8-アルカリール基を含む群より選択される。「アルキル」は、非環式、分枝または非分枝、飽和の一価のヒドロカルビル基を意味する。アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル、ならびに分枝の飽和の一価のヒドロカルビル基で例示されるが、これらに限定されない。「アリール」は、環式、完全に不飽和なヒドロカルビル基を意味する。アリールは、シクロペンタジエニルおよびアリールで例示されるが、これらに限定されない。「アラルキル」は、ペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。「アルカリール」は、ペンダントおよび/または末端アリール基を有するアルキル基を意味する。
【0016】
好ましくは、上記式中のR1およびR2は独立に、-H、-CH3、-C2H5、-C3H7、-CH(CH3)2、-C4H9、-CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)C2H5、-C(CH3)3、-C5H11、-CH(CH3)C3H7、-CH2CH(CH3)C2H5、-C2H4CH(CH3)2、-C(CH3)2C2H5、-CH(CH3)CH(CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH(C2H5)2、-C6H13、-C7H15、および-CH(C2H5)(C4H9)を含む群より選択される。より好ましくは、前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-2-オール、2-エチルブタン-1-オール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールおよび2-エチルヘキサン-1-オールを含む群より選択される。最も好ましくは、前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールおよび1-オクタノールを含む群より選択される。
【0017】
上述したモノヒドロキシアルコールのいくつかは、特殊な立体異性体の形態で存在する。たとえば2-ブタノールは、2の立体異性体-(R)-(-)-2-ブタノールおよび(S)-(+)-2-ブタノールのいずれかとして得ることができる。本発明は、別個の異性体としてのこのような立体異性体、ならびにそれらのラセミ混合物および他の混合物を想定している。
【0018】
本発明の方法において用いられる前記めっき浴中の前記モノヒドロキシアルコールの濃度は、0.02ないし12 Mの範囲、好ましくは0.1ないし5 Mの範囲である。水に貧溶性のモノヒドロキシアルコールの溶解度を、2-メチルプロパン-2-オールの転化によって増加させることができる。したがって、本発明の一態様において、本発明の方法に用いられるめっき浴はさらに、2-メチルプロパン-2-オールを含む。
【0019】
本発明によれば、本発明の方法に用いられる前記白金族金属前駆体は好ましくは、H2PtCl6、H6Cl2N2Pt、PtCl2、PtBr2、K2[PtCl4]、Na2[PtCl4]、Li2[PtCl4]、H2Pt(OH)6、Pt(NO3)2、[Pt(NH3)4]Cl2、[Pt(NH3)4](HCO3)2、[Pt(NH3)4](OAc)2、(NH3)4Pt(NO3)2、(NH4)2PtBr6、K2PtCl6、PtSO4、Pt(HSO4)2、Pt(ClO4)2、K2PtI6、K2[Pt(CN)4]、cis-[Pt(NH3)2Cl2]、H2PdCl6、H6Cl2N2Pd、PdCl2、PdBr2、K2[PdCl4]、Na2[PdCl4]、Li2[PdCl4]、H2Pd(OH)6、Pd(NO3)2、[Pd(NH3)4]Cl2、[Pd(NH3)4](HCO3)2、[Pd(NH3)4](OAc)2、(NH4)2PdBr6、(NH3)2PdCl6、PdSO4、Pd(HSO4)2、Pd(ClO4)2、Pd(OAc)2、RuCl2 ((CH3)2SO)4、RuCl3、[Ru(NH3)5(N2)]Cl2、Ru(NO3)3、RuBr3、RuF3、Ru(ClO4)3、K2RuCl6、OsI、OsI2、OsBr3、OsCl4、OsF5、OsF6、OsOF5、OsF7、IrF6、IrCl3、IrF4、IrF5、Ir(ClO4)3、K3[IrCl6]、K2[IrCl6]、Na3[IrCl6]、Na2[IrCl6]、Li3[IrCl6]、Li2[IrCl6]、[Ir(NH3)4Cl2]Cl、RhF3、RhF4、RhCl3、[Rh(NH3)5Cl]Cl2、RhCl[P(C6H5)3]3、K[Rh(CO)2Cl2]、Na[Rh(CO)2Cl2] Li[Rh(CO)2Cl2]、Rh2(SO4)3、Rh(HSO4)3、Rh(ClO4)3、これらの水和物ならびにこれらの塩および/または水和物の混合物を含む群から選択される。用語「白金族金属前駆体」は、基材上に析出される金属形態へと還元され得る、めっき浴に可能な、あらゆる白金族金属の塩または錯体と理解すべきである。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明の方法に用いられるめっき浴中の白金族金属前駆体濃度は、1 mMないし1 Mの範囲、より好ましくは5 mMないし100 mMの範囲、最も好ましくは10 mMないし50 mMの範囲である。
【0021】
好ましい実施形態においては、本発明の方法における前記還元工程を、前記めっき浴の凝固点と沸点との間の温度で行う。好ましくは、本発明の方法における前記還元工程の温度は、-10ないし80℃、より好ましくは0ないし40℃、最も好ましくは10ないし25℃である。
【0022】
好ましい実施形態において、本発明の方法に用いられる前記めっき浴のpHは、7未満、好ましくは3ないし5、最も好ましくは約4である。前記めっき浴の前記pHが約4であるときに、最良の析出物が得られる。
【0023】
本明細書で用いる限り、基材または担体は、その上にPGMおよびそれらの合金が析出される、あらゆる材料をいう。好適な基材/単体の例は、金属、たとえば白金、パラジウム、ニッケルおよび金、金属合金、たとえばスチール、鉄-クロム-アルミニウム合金(カンタル(登録商標))、ポリマー材料、たとえばナフィオン(登録商標)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、炭素(たとえばグラファイト)ならびにシリコンである。より好ましくは、本発明の方法に用いられる前記基材は、白金、パラジウム、ニッケル、金、スチール、鉄-クロム-アルミニウム合金、ナフィオン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、グラファイトおよびシリコンを含む群から選択される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態においては、その上にPGMが析出される基材の表面を、還元工程に先立ってシーディングする。本発明によれば、表面シーディングのあらゆる標準的なプロセスを用いることができる。1の好適なシーディング方法は、金属亜鉛の存在下で亜塩酸塩イオンを含む溶液から基材表面に亜鉛を析出させる亜鉛化法である。あるいは、シーディングを、スズ(II)イオンを用いて行ってもよい。
【0025】
PGMを基材上に析出させた後、それに高温処理を施すことができる。この熱処理を用いて、荒れた表面析出物を、滑らかな表面を有する析出物に添加することができる。この工程は、高温に耐えることができる基材(たとえば金属、合金およびシリコン)上に析出されたPGM層に対してのみ行うことができる。したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法はさらに、めっきプロセスが完了した後の高温処理の工程を含む。前記高温処理は、好ましくは700-1000℃の温度で行われる。より好ましくは、PGM析出物をもつ基材を火炎アニールする。最も好ましくは、高温処理を水素火炎中で行う。
【0026】
PGM析出プロセス中のpH変化を避けるために、好ましい実施形態においては、めっき浴はさらに、pH緩衝剤を含んでいる。好ましくは、Britton-Robins緩衝液をめっき浴に用いる。他の緩衝剤を用いることもできる。このような緩衝剤の例は、リン酸、酢酸、クエン酸、およびホウ酸緩衝剤を含む。
【0027】
光沢剤の添加は、本発明の方法では必要ないけれども、本明細書ではそれらの添加も想定されている。したがって、好ましい実施形態においては、本発明の方法に用いられるめっき浴は、さらに光沢剤、たとえばサッカリン、ポリエチレングリコール、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、プロピルスルホン酸ピリジンを含む。そのうえ、本発明の方法においては、第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールまたは第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールの混合物に加えて、別の還元剤を用いることができる。したがって、本発明の別の実施形態においては、本発明の方法に用いられるめっき浴はさらに、追加の還元剤として、ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素を含む。
【0028】
別の態様において、本発明は、白金族金属およびそれらの合金の無電解析出のためのめっき浴を提供し、前記めっき浴は、還元剤として、第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールまたは第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールの混合物と、1以上の白金族金属前駆体とを含む水溶液である。本発明のめっき浴、ならびにその成分は、本発明の方法を参照して上に記載されている。
【0029】
最後に、本発明は、白金族金属の無電解析出における、上で規定しためっき浴の使用を提供する。
【0030】
発明者によって行われた多数の実験に基づけば、白金および他のPGMの析出速度、ならびに同族列のアルコールの分子量に、単純な傾向は認められなかった。周囲温度で、一連の短鎖の水混和性アルコールにおいて、下記の順番の還元剤で無電解析出速度が減少した:エタノール、メタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、2-ブタノール。(エタノールの存在下で、または高温で)PGM析出速度が高いほど、析出物の比表面積が高くなり、これは荒れた析出物に特有である。高い比表面積が有利である、触媒用途については、還元剤としてエタノールを用いるべきである。還元剤として用いられる、水に貧溶性のアルコールたとえば1-ブタノールおよび1-ペンタノールも、非常に荒れた析出物の形成をもたらす。最も光沢のある析出物は、周囲温度で1-プロパノールおよび2-プロパノールについて得られた。
【0031】
本発明の方法に用いられる様々なモノヒドロキシアルコールについて認められた傾向は、下記のようにまとめることができる:
・メタノール-荒れた層の形成をもたらす。
・エタノール-荒れた灰黒色の析出物の形成をもたらす;しかし、析出をより低い温度(約4℃)で行うと、滑らかな析出物の形成をもたらす。
・2-プロパノール-滑らかな析出物の形成をもたらす(滑らかで輝く)。
一般に、本発明の方法を低温で行うと、滑らかな析出物が得られる。そのうえ、本発明の方法を還元剤として第二級アルコールの存在下で行うと、析出物は金属基材上でより形成する見込みがある。第一級アルコールの場合、析出物はポリマー材料上でより形成する見込みがある。このように基材の性質に依存するので、還元剤として適切なモノヒドロキシアルコールを選ぶことによって、選択的な析出を行うことができる。
【0032】
発明者は、本発明の方法に関する下記のメカニズムも認めた:
・温度を、プロセスを制御するために用いることができる;
・プロセスの速度は、析出物の特性にとって決定的である(速度が遅いほど、より滑らかな析出層が得られる)
・本発明の方法では、アルコール酸化反応の中間体の1として一酸化炭素が形成され、これは光沢剤として作用し得る;
・析出物の良好な粘着は、反応の速度よりもむしろ、シーディングプロセスに関連しうる。
【0033】
本発明の方法は多くの利点を有する。まず第一に、PGMおよびそれらの合金の良好な粘着層が得られる。本発明の方法によって析出したPGM層は、非常に安定で耐用性がある(たとえばそれらは析出後12カ月にわたって変化しないままであった;それらは電気化学実験において安定なままであった;それらは機械的応力下で安定なままである)。これらの層は、析出条件に依存して、緻密で均一なこともありうるし、あるいは非常に荒れた表面を有することもありうる。PGM層は、金属(たとえば白金、パラジウム、ニッケルおよび金)、金属合金(スチール、カンタル(登録商標))、ポリマー材料(たとえばナフィオン(登録商標)、PE、PP、PET)、炭素(たとえばグラファイト)ならびにシリコンを含む様々な基材上で得られる。プロセスは広い範囲の温度(-10ないし80℃)で行うことができ、用いる還元剤によっては、温度制御は決定的ではない。したがって、めっきプロセスを室温で行うことができる。そのうえ、本発明のめっき浴は、非常に単純な組成を有し、容易に調製することができ、非常に安定である。
【0034】
その普遍的な性質のおかげで、特に様々な担体上にPGMをめっきすることができるという事実のため、本発明の方法は様々な分野の技術に有用である。たとえば:
・PGMめっきしたナフィオン(登録商標)およびグラファイトを、燃料電池の電極として用いることができる;
・PGMめっきしたプラスチック(ポリマー材料)を、フレキシブル電子機器(フレックス回路)に用いることができる;
・PGMめっきした金属(スチール、カンタル(登録商標))を、触媒として用いることができる;
・PGMめっきしたシリコンを、電気コンタクトとして用いることができる;
・PGMめっきは、非腐食性電気コンタクトの製造のためおよび宝飾工業においても用いることができる。
【0035】
本発明の主題を図面で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、実施例1に記載したように得られた、Ptめっきした白金ホイルの写真を示す。
図2図2は、実施例2に記載したように得られた、Ptめっきした、カンタル(登録商標)(a)、ナフィオン(登録商標)(b)、PP(c)およびPET(d)の写真を示す。
図3図3は、(a)実施例3に記載したように得られた、白金コートした金プレートの写真、および(b)こうして得られた白金層のSEM顕微鏡写真を示す。
図4図4は、(a)白金コートしたグラファイトディスクの写真、および(b)実施例4に記載したように得られた、白金コートしたスチールプレートの写真を示す。
図5図5は、実施例5に記載したように得られた、白金コートした銅ロッド上に析出した白金の写真を示す。
図6図6は、実施例7に記載したように調製された、合金析出物について、Pt 4f/Ir 4f領域におけるXPスペクトルを示す。
図7図7は、実施例8に記載したように得られた、金基材上に得られた合金層のSEM顕微鏡写真を示す:(a)合金Rh-Pt(MeOH);(b)Ru(MeOH)(倍率2,50K x);(c)Ru(MeOH)(倍率100,00K x);(d)合金Pt-Ir(MeOH)(倍率50.00 K x)(e)合金Pt-Ir(MeOH)(倍率1.00 K x);(f)合金Rh-Pt(EtOH);(g)合金Ru-Pt(EtOH);(h)合金Ir-Pt(EtOH);(i)合金Rh-Pt(イソプロパノール)(倍率1K x);(j)合金Ir-Pt(イソプロパノール)(倍率1.00 K x);(k)Ru(イソプロパノール)(倍率5.00 K x);(l)Ru(イソプロパノール)(倍率50.00 K x);(m)合金Pd-Pt(イソプロパノール);(n)合金Ir-Pt(イソプロパノール)(倍率1.00 K x);(o)Ir-Pt(イソプロパノール)(倍率50.00 K x)。
図8図8は、実施例9において、金基材上に得られた合金層の顕微鏡写真を示す:(a)合金Ru-Pt1:2(EtOH)(倍率2.50 K x);(b)合金Ru-Pt1:6(EtOH)(倍率25.00 K x);(c)合金Pt-Ir(BuOH)(倍率1.00 K x);(d)合金Pt-Ir(BuOH)(倍率50.00 K x)。
図9図9は、実施例10に記載したように得られた、PETおよびPP基材上の白金析出物の写真を示す。
図10-1】図10-1は、実施例11に記載したように、様々な還元剤を用いて得られた白金析出物についてのデータを示す:(a)様々な還元剤を用い、本発明に従って無電解析出によってPt上にめっきされた白金層について記録されたサイクリックボルタモグラム。サイクリックボルタモグラムは、0.5 M硫酸中、スキャン速度v = 1 mVs-1で記録した。(b)メタノール含有浴から白金上に析出した白金層の走査電子顕微鏡写真。
図10-2】図10-2は、実施例11に記載したように、様々な還元剤を用いて得られた白金析出物についてのデータを示す:(c)2-プロパノール含有浴から白金上に析出した白金層の走査電子顕微鏡写真;(d)2-ブタノール含有浴から白金上に析出した白金層の走査電子顕微鏡写真。
図11図11は、実施例13に記載したように、様々な還元剤を用いて得られたPt-Ir合金析出物で、0.5 mol dm-3 H2SO4および0.5 mol dm-3 エタノール中で記録されたボルタモグラムを示す。
【実施例
【0037】
実施例1.白金ホイル上への白金析出
0.7 × 0.7 × 0.01 cm径の白金ホイルを水素火炎アニールし、脱イオン水中で急冷した。次に、基材を、2.2 M 2-プロパノール;0.01 M [PtCl4]2-+0.04 M H3BO3, 0.04 M H3PO4および0.04 M CH3COOHを含み、水酸化ナトリウムでpH=4.06に調整したBritton-Robins緩衝液を含む溶液中に浸漬した。めっき浴を、10時間、室温に保持した。こうして、2 μm厚のメタリックシルバーシャインコーティングを、98%の収率で得た。析出層の厚さおよび析出収率は、基材の重量変化に基づいて決定した。図1は、Ptめっきした白金ホイルの写真を示す。
【0038】
実施例2.カンタル(登録商標)、PET、PP、ナフィオン(登録商標)およびシリコン基材上への白金析出
カンタル(登録商標)プレートを、2.2 M 2-プロパノール、0.01 M [PtCl4]2-+0.04 M H3BO3, 0.04 M H3PO4および0.04 M CH3COOHを含み、水酸化ナトリウムでpH=4.06に調整したBritton-Robins緩衝液を含む溶液中に浸漬した。めっき浴を、12時間、室温に保持した。メタリックシルバーシャインコーティングをカンタル(登録商標)表面に得た。図2(a)は、Ptめっきしたカンタル(登録商標)プレートの写真を示す。
【0039】
上の方法を、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナフィオン(登録商標)およびシリコン上への白金析出にも用いた。シリコン、PPおよびPET基材上にメタリックシルバーシャインコーティングを得たが、ナフィオン(登録商標)上には灰黒色コーティングを得た。白金コートしたナフィオン(登録商標)、PPおよびPETを、それぞれ図2b-dに示す。
【0040】
対応する仕方で、2.5 M 1-プロパノールを用い、pH 4を有し、7.5 mMの[PtCl4]2-を含む溶液から、PP 基材上に白金メタリックシルバーシャイン層を得た。
【0041】
実施例3.金基材上への白金析出
0.7 × 0.7 × 0.05 cm径の金プレートを、亜鉛化法を用いてシーディングした(1 MのNa2[Zn(OH)4]中、金属亜鉛の存在下、析出したZnの質量は50 μgに等しかった)。次に、基材を、2.2 M 2-プロパノール;0.01 M [PtCl4]2-+0.04 M H3BO3, 0.04 M H3PO4および0.04 M CH3COOHを含み、水酸化ナトリウムでpH=4.06に調整したBritton-Robins緩衝液を含む溶液中に浸漬した。めっき浴を、12時間、室温に保持した。こうして、2.4 μm厚のメタリックシルバーシャインコーティングを、95%の収率で得た。図3aは、白金コートした金プレートの写真を示す。析出物のSEM顕微鏡写真を、図3bに示す。
【0042】
実施例4.ニッケル、スチールおよびグラファイト基材上への白金析出
ニッケル、スチールおよびグラファイト基材上の白金析出物を、実施例3に記載したように得た。すべての基材上に、メタリックシルバーシャイン白金コーティングを得た。図4は、白金コートしたグラファイトディスク(a)の写真、および白金コートしたスチールプレート(b)の写真を示す。
【0043】
実施例5.銀、パラジウム、PET、PPおよびナフィオン(登録商標)基材上への白金析出
銀、パラジウム、PET、PPおよびナフィオン(登録商標)基材上の白金析出物を、実施例3に記載したように得たが、基材表面のシーディングのために、Na2[Zn(OH)4]の代わりに、塩化スズ(II)(SnCl2)を用いたことが異なる。すべての基材上に、メタリックシルバーシャイン白金コーティングを得た。図5は、200 nmのパラジウムをもつ、白金コートした銅ロッド上の白金析出物の写真を示す。
【0044】
実施例6.触媒用途のための荒れた白金層の調製
0.7 × 0.7 × 0.01 cm径の白金ホイルを水素火炎アニールし、脱イオン水中で急冷した。次に、基材を、2.85 M エタノール;0.01 M [PtCl4]2-+0.04 M H3BO3, 0.04 M H3PO4および0.04 M CH3COOHを含み、水酸化ナトリウムでpH=4.06に調整したBritton-Robins緩衝液を含む溶液中に浸漬した。めっき浴を、1時間、室温に保持した。こうして、0.4 μm厚の粘着性の灰黒色コーティングを、比粗さ係数Rf = Aspecific / Ageometric = 130で得た。ここで、AspecificおよびAgeometricは、それぞれ、析出物の比表面積および幾何学表面積である。析出物の質量m=1.63 mgを考慮すると、これは16.3 m2/gの質量比表面積に相当する。
【0045】
この種の白金析出物は、触媒用途に使用するのに特に好適である。
【0046】
実施例7.金基材上への白金-イリジウム合金の調製
0.2 × 0.05 cm系の金ディスクを、亜鉛化法を用いてシーディングした(1 MのNa2[Zn(OH)4]中、金属亜鉛の存在下、析出したZnの質量は20 μgに等しかった)。次に、基材を、4 M メタノール;0.01 M [PtCl4]2-+0.04 M H3BO3, 0.04 M H3PO4および0.04 M CH3COOHを含み、水酸化ナトリウムでpH=4.06に調整したBritton-Robins緩衝液を含む溶液中に浸漬した。めっき浴を、24時間、室温に保持した。こうして、1 μm厚のメタリックシルバーシャインコーティングを、95%の収率で得た。
【0047】
析出物の化学組成および化学的特性を、X線光電子分光法によって調査した。この方法を用い、イリジウムの金属的特性を確認した。Pt 4f/Ir 4f領域のX線スペクトルは、2の二重線を示した。60.71 eVおよび63.69 eVに成分をもつ二重線は、金属Ir(それぞれIr 4f7/2およびIr 4f5/2の信号)に帰属させることができるが、71.34 eVおよび74.67 eVの信号は、金属Pt(それぞれPt 4f7/2およびPt 4f5/2の信号)に帰属させることができる。金属IrおよびPtについての文献上の位置:それぞれIr 4f7/2およびIr 4f5/2の信号に対する60.81 eVおよび63.76 eVならびにそれぞれPt 4f7/2およびPt 4f5/2の信号に対する71.09 eVおよび74.42 eV (NIST X-ray Photoelectron Spectroscopy Database, Version 4.1 [National Institute of Standards and Technology, Gaithersburg, 2012); http://srdata.nist.gov/xps/.])を垂直線でマークした。測定したピーク位置と文献上のピーク位置と間の少しの差は、最もおそらくは合金形成が原因となっている[Adam Lewera et al.: Core-level Binding Energy Shifts in Pt-Ru nanoparticles: A puzzle resolved. Chem. Phys. Lett. 2007, 44: 39-43)。約76.69 eVおよび80.02 eVの小さい二重線はおそらく、少量の還元されなかったPt、最もおそらくはPt(IV)化合物の形態にあるものの存在に関連している。XPSデータから決定されたPt対Irの比は、75:25原子パーセント(Pt:Ir)に等しい。図6は、Pt 4f/Ir 4f領域におけるXPスペクトルを示す。1はPtについて、第2はIrについての2の信号二重線を明確に見ることができる。完全に還元された金属についてのPtおよびIrの信号の参考文献上の位置を垂直線でマークしている。
【0048】
実施例8.金基材上への白金-ロジウム、-ルテニウム、-パラジウムおよび-イリジウム合金の調製
還元剤として用いられる様々なアルコールについて合金形成の可能性をさらに調査し、その目的のために金基材上に下記の合金層を調製した:白金-ロジウム、白金-ルテニウム、白金-パラジウムおよび白金-イリジウム。実施例7に記載したのに対応する仕方でめっきのプロセスを行ったが、白金前駆体として3 mM K2PtCl6を用い、連続する例において、還元剤として5 M MeOH、3,5 M EtOHおよび2,6 M イソプロパノールを用い、合金中の第2のPGMとして6 mM Rh2+, 6 mM Ru2+, 7 mM Pd2+, および6 mM Ir(IV)を用いた。下の表は、基材の合金めっきに用いた条件、ならびに得られた層の性質をまとめている。合金形成およびそれらの組成をEDSによって決定した(データは表に含まれている)。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例9.カンタル(登録商標)基材上への白金-ロジウム、-ルテニウム、-パラジウムおよび-イリジウム合金の調製
合金である白金-ルテニウムおよび白金-イリジウムの層を、実施例8および9に記載した手順を用いて形成したが、カンタル(登録商標)基材を形成される層の固体担体として用い、様々なアルコール-エタノールおよびsec-ブタノール-を還元剤とした用いたことが異なっている。下の表は、基材の合金めっきに用いた条件、ならびに得られた層の性質をまとめている。合金形成およびそれらの組成をEDSによって決定した(データは表に含まれている)。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例10.エタノールを用いて得られたPETおよびPP基材上の白金層
実施例2に記載したように、PETおよびPP基材上に白金層を得た。しかし、2-プロパノールの代わりに、エタノールを還元剤として用いた。メタリックシルバーシャインコーティングが得られた。図9は、PETおよびPP基材上の白金析出物の写真を示す。
【0053】
実施例11.様々な還元剤を用いた白金基材上への白金層の析出
析出物の性質への様々な還元剤の影響を調べた。したがって、様々な還元剤を用い、白金基材上に白金層を得た。析出に先立って、白金電極を火炎アニールし、脱イオン水中で急冷した。実施例1のようにめっき浴から白金を析出させたが、様々な還元剤を2 Mの濃度で用いた。12時間の析出後、0.5 H2SO4中でサイクリックボルタモグラムを記録した。
【0054】
メタノール含有浴で最も荒れた析出物が得られたが、このことはサイクリックボルタモグラムでの最も高い電流密度に相当する(図10a)。
【0055】
選択した析出物の表面の走査電子顕微鏡写真を、図10b、cおよびdに示す。材料は、マイクロメーターサイズの球状構造からなる典型的な「カリフラワー様」表面を有する。得られた層について規則した高倍率は、材料のナノ結晶/アモルファス用の構造化を示している。より低い倍率では、材料の応力破壊の傾向が見られた(ここでは示さず)。また、コーティングのデンドライト様成長のある程度の傾向が認められる。断面破砕は、成長方向におけるコーティングのある程度の内部繊維状構造化を示している。
【0056】
2-プロパノール含有浴から得られた試料は、他の試料と比較してはるかに滑らかである。高倍率の写真は、ナノメータースケールでの構造化材料を示している。ある程度の破砕の傾向が見られるが、それらの数ははるかに少ない。また、その形状は、このコーティングのより高い可塑性を示唆している。たぶん、見られるいくつかの破砕は、ベース(基材)中の応力に関係している。試料の断面破砕は、コーティングの内部構造化の傾向を示していない。
【0057】
2-ブタノールから得られた試料のモフォロジーを図10cに示す。析出物の表面はかなり滑らかである。メタノールで得られた試料とよく似て、マイクロメータースケールのいくつかの節状構造が見られるが、はるかに少ない数である。断面破砕は、材料の内部構造化がないことを示している。すべての3の試料は、ベース担体のモフォロジーにかなり似ている。そのうえ、破砕したときでさえ、析出物は基材材料に対して粘着性なままである(図10b)。コーティングの欠陥は、メタライゼーションのプロセスにおける添加剤の使用、またはプロセスの物理パラメータ(すなわち温度)のわずかな変化によって除くことができる。
【0058】
実施例12.PET、PPおよびナフィオン(登録商標)基材上の白金層の機械的性質
実施例2および5において得られた、白金コートしたPET、PPおよびナフィオン(登録商標)の基材に機械的ストレステストを施した。すべての白金コートした基材を、手で折り曲げ、伸ばし、捻った。テスト後、全ての基材を白金コーティングの保全性に関して調べた。クラックまたは剥離のような、析出層の変化は認められなかった。白金層が機械的ストレステストの間にそのままであったという事実は、ポリマー材料基材に対する析出した白金層の著しい保全性および非常に良好な粘着性を示している。
【0059】
実施例13.金、カンタル(登録商標)、および白金基材上のPGM析出物層の電気化学的性質
金、カンタル(登録商標)および白金基材上のPGM析出物層の電気化学的性質を調べた。実験の1において、実施例1-11で得られた析出物-基材アセンブリを用い、エタノールの酸化を行った。
【0060】
代表的な結果を図11に示すが、これは、様々な還元剤を用いて得られたPt-Ir合金析出物で、0.5 mol dm-3 H2SO4および0.5 mol dm-3 エタノール中で記録したボルタモグラムを示す:灰色-エタノール;黒色-ブタノール。ボルタモグラムは5 mV s-1のスキャン速度で記録し、電流を幾何学面積に対して規格化した。図11に示したように、無電解析出層は、エタノール酸化の開始電位および相対的ボルタモペロメトリック電流の両方に関して、エタノール酸化に対して非常に活性であることがわかった。還元剤としてエタノールおよびブタノールを用いることによって、最も活性な層が析出した。上述したように、これらの還元剤は、表面粗さを著しく促進し、これは順に酸化電流を増加させる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 白金族金属およびそれらの合金の、めっき浴から基材上への無電解析出方法であって、1以上の白金族金属前駆体の還元剤による還元工程を含み、前記還元剤は、第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールまたは第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールの混合物である、方法。
[2] 前記モノヒドロキシアルコールは下記一般式を有する、[1]の方法。
【化2】
式中、R 1 およびR 2 は同じでも異なっていてもよく、それらの各々は独立に水素原子、直鎖または分枝のC 1-7 -アルキル基、C 3-8 -アリール基、C 4-8 -アラルキル基およびC 4-8 -アルカリール基を含む群より選択される。
[3] R 1 およびR 2 は独立に、-H、-CH 3 、-C 2 H 5 、-C 3 H 7 、-CH(CH 3 ) 2 、-C 4 H 9 、-CH 2 CH(CH 3 ) 2 、-CH(CH 3 )C 2 H 5 、-C(CH 3 ) 3 、-C 5 H 11 、-CH(CH 3 )C 3 H 7 、-CH 2 CH(CH 3 )C 2 H 5 、-C 2 H 4 CH(CH 3 ) 2 、-C(CH 3 ) 2 C 2 H 5 、-CH(CH 3 )CH(CH 3 ) 2 、-CH 2 C(CH 3 ) 3 、-CH(C 2 H 5 ) 2 、-C 6 H 13 、-C 7 H 15 、および-CH(C 2 H 5 )(C 4 H 9 )を含む群より選択される、[1]または[2]の方法。
[4] 前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-2-オール、2-エチルブタン-1-オール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールおよび2-エチルヘキサン-1-オールを含む群より選択される、[1]~[3]のいずれか一つの方法。
[5] 前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールおよび1-オクタノールを含む群より選択される、[1]~[4]のいずれか一つの方法。
[6] 前記めっき浴中の前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.02ないし12 Mの範囲である、[1]~[5]のいずれか一つの方法。
[7] 前記めっき浴中の前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.1ないし5 Mの範囲である、[6]の方法。
[8] 前記白金族金属前駆体は、H 2 PtCl 6 、H 6 Cl 2 N 2 Pt、PtCl 2 、PtBr 2 、K 2 [PtCl 4 ]、Na 2 [PtCl 4 ]、Li 2 [PtCl 4 ]、H 2 Pt(OH) 6 、Pt(NO 3 ) 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ]Cl 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ](HCO 3 ) 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ](OAc) 2 、(NH 3 ) 4 Pt(NO 3 ) 2 、(NH 4 ) 2 PtBr 6 、K 2 PtCl 6 、PtSO 4 、Pt(HSO 4 ) 2 、Pt(ClO 4 ) 2 、K 2 PtI 6 、K 2 [Pt(CN) 4 ]、cis-[Pt(NH 3 ) 2 Cl 2 ]、H 2 PdCl 6 、H 6 Cl 2 N 2 Pd、PdCl 2 、PdBr 2 、K 2 [PdCl 4 ]、Na 2 [PdCl 4 ]、Li 2 [PdCl 4 ]、H 2 Pd(OH) 6 、Pd(NO 3 ) 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ]Cl 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ](HCO 3 ) 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ](OAc) 2 、(NH 4 ) 2 PdBr 6 、(NH 3 ) 2 PdCl 6 、PdSO 4 、Pd(HSO 4 ) 2 、Pd(ClO 4 ) 2 、Pd(OAc) 2 、RuCl 2 ((CH3) 2 SO) 4 、RuCl 3 、[Ru(NH 3 ) 5 (N 2 )]Cl 2 、Ru(NO 3 ) 3 、RuBr 3 、RuF 3 、Ru(ClO 4 ) 3 、K 2 RuCl 6 、OsI、OsI 2 、OsBr 3 、OsCl 4 、OsF 5 、OsF 6 、OsOF 5 、OsF 7 、IrF 6 、IrCl 3 、IrF 4 、IrF 5 、Ir(ClO 4 ) 3 、K 3 [IrCl 6 ]、K 2 [IrCl 6 ]、Na 3 [IrCl 6 ]、Na 2 [IrCl 6 ]、Li 3 [IrCl 6 ]、Li 2 [IrCl 6 ]、[Ir(NH 3 ) 4 Cl 2 ]Cl、RhF 3 、RhF 4 、RhCl 3 、[Rh(NH 3 ) 5 Cl]Cl 2 、RhCl[P(C 6 H 5 ) 3 ] 3 、K[Rh(CO) 2 Cl 2 ]、Na[Rh(CO) 2 Cl 2 ] Li[Rh(CO) 2 Cl 2 ]、Rh 2 (SO 4 ) 3 、Rh(HSO 4 ) 3 、Rh(ClO 4 ) 3 、これらの水和物ならびにこれらの塩および/または水和物の混合物を含む群から選択される、[1]~[7]のいずれか一つの方法。
[9] 1以上の白金族金属前駆体の前記還元工程を、異なる金属の1または複数の前駆体の存在下で行い、それによって1以上の白金族金属および異なる金属を含む合金を形成する、[1]~[8]のいずれか一つの方法。
[10] 形成した合金は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、金、ニッケルおよび銅を含む群から選択される2以上の金属を含む、[9]の方法。
[11] 前記めっき浴中の前記前駆体の濃度は、1 mMないし1 M、好ましくは5 mMないし100 mM、より好ましくは10 mMないし50 mMの範囲である、[1]~[10]のいずれか一つの方法。
[12] 前記還元工程を、前記めっき浴の凝固点と沸点との間の温度で行う、[1]~[10]のいずれか一つの方法。
[13] 前記還元工程を、-10ないし80℃、好ましくは0ないし40℃、より好ましくは10ないし25℃の温度で行う、[12]の方法。
[14] 前記めっき浴はさらに、pH緩衝剤を含む、[1]~[13]のいずれか一つの方法。
[15] 前記めっき浴のpHが7未満である、[1]~[14]のいずれか一つの方法。
[16] 前記めっき浴の前記pHが3ないし5である、[15]の方法。
[17] 前記めっき浴の前記pHが約4である、[16]の方法。
[18] 前記基材は、金属、金属合金、ポリマー材料、炭素およびシリコンを含む群から選択される、[1]~[17]のいずれか一つの方法。
[19] 前記基材は、白金、パラジウム、ニッケル、金、スチール、鉄-クロム-アルミニウム合金、ナフィオン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、グラファイトおよびシリコンを含む群から選択される、[18]の方法。
[20] 前記白金族金属前駆体の還元工程に先立って、前記基材の表面をシーディングする、[1]~[19]のいずれか一つの方法。
[21] めっき工程を完了した後、めっきされた基材に高温処理を施す、[1]~[20]のいずれか一つの方法。
[22] 前記めっき浴はさらに、光沢剤を含む、[1]~[21]のいずれか一つの方法。
[23] 前記めっき浴はさらに、追加の還元剤、好ましくは、ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素を含む群から選択される還元剤を含む、[1]~[22]のいずれか一つの方法。
[24] 前記めっき浴はさらに、2-メチルプロパン-2-オールを含む、[1]~[23]のいずれか一つの方法。
[25] 白金族金属およびそれらの合金の無電解析出のためのめっき浴であって、前記めっき浴は、還元剤として、第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールまたは第一級もしくは第二級モノヒドロキシアルコールの混合物と、1以上の白金族金属前駆体とを含む水溶液である、めっき浴。
[26] 前記モノヒドロキシアルコールは下記一般式を有する、[25]のめっき浴。
【化3】
式中、R 1 およびR 2 は同じでも異なっていてもよく、それらの各々は独立に水素原子、直鎖または分枝のC 1-7 -アルキル基、C 3-8 -アリール基、C 4-8 -アラルキル基およびC 4-8 -アルカリール基を含む群より選択される。
[27] R 1 およびR 2 は独立に、-H、-CH 3 、-C 2 H 5 、-C 3 H 7 、-CH(CH 3 ) 2 、-C 4 H 9 、-CH 2 CH(CH 3 ) 2 、-CH(CH 3 )C 2 H 5 、-C(CH 3 ) 3 、-C 5 H 11 、-CH(CH 3 )C 3 H 7 、-CH 2 CH(CH 3 )C 2 H 5 、-C 2 H 4 CH(CH 3 ) 2 、-C(CH 3 ) 2 C 2 H 5 、-CH(CH 3 )CH(CH 3 ) 2 、-CH 2 C(CH 3 ) 3 、-CH(C 2 H 5 ) 2 、-C 6 H 13 、-C 7 H 15 、および-CH(C 2 H 5 )(C 4 H 9 )を含む群より選択される、[26]のめっき浴。
[28] 前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチルブタン-1-オール、2,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-1-オール、3,3-ジメチルブタン-2-オール、2-エチルブタン-1-オール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、4-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノールおよび2-エチルヘキサン-1-オールを含む群より選択される、[27]のめっき浴。
[29] 前記モノヒドロキシアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパン-1-オール、1-ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール、2-メチルブタン-1-オール、2,2-ジメチルプロパン-1-オール、3-ペンタノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールおよび1-オクタノールを含む群より選択される、[28]のめっき浴。
[30] 前記モノヒドロキシアルコールの濃度が0.02ないし12 Mの範囲、好ましくは0.1ないし5 Mの範囲である、[25]~[29]のいずれか一つのめっき浴。
[31] さらに、追加の還元剤、好ましくは、ヒドラジンおよびその誘導体、水素化ホウ素または次亜リン酸水素を含む群から選択される還元剤を含む、[25]~[30]のいずれか一つのめっき浴。
[32] 前記白金族金属前駆体は、H 2 PtCl 6 、H 6 Cl 2 N 2 Pt、PtCl 2 、PtBr 2 、K 2 [PtCl 4 ]、Na 2 [PtCl 4 ]、Li 2 [PtCl 4 ]、H 2 Pt(OH) 6 、Pt(NO 3 ) 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ]Cl 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ](HCO 3 ) 2 、[Pt(NH 3 ) 4 ](OAc) 2 、(NH 3 ) 4 Pt(NO 3 ) 2 、(NH 4 ) 2 PtBr 6 、K 2 PtCl 6 、PtSO 4 、Pt(HSO 4 ) 2 、Pt(ClO 4 ) 2 、K 2 PtI 6 、K 2 [Pt(CN) 4 ]、cis-[Pt(NH 3 ) 2 Cl 2 ]、H 2 PdCl 6 、H 6 Cl 2 N 2 Pd、PdCl 2 、PdBr 2 、K 2 [PdCl 4 ]、Na 2 [PdCl 4 ]、Li 2 [PdCl 4 ]、H 2 Pd(OH) 6 、Pd(NO 3 ) 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ]Cl 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ](HCO 3 ) 2 、[Pd(NH 3 ) 4 ](OAc) 2 、(NH 4 ) 2 PdBr 6 、(NH 3 ) 2 PdCl 6 、PdSO 4 、Pd(HSO 4 ) 2 、Pd(ClO 4 ) 2 、Pd(OAc) 2 、RuCl 2 ((CH3) 2 SO) 4 、RuCl 3 、[Ru(NH 3 ) 5 (N 2 )]Cl 2 、Ru(NO 3 ) 3 、RuBr 3 、RuF 3 、Ru(ClO 4 ) 3 、K 2 RuCl 6 、OsI、OsI 2 、OsBr 3 、OsCl 4 、OsF 5 、OsF 6 、OsOF 5 、OsF 7 、IrF 6 、IrCl 3 、IrF 4 、IrF 5 、Ir(ClO 4 ) 3 、K 3 [IrCl 6 ]、K 2 [IrCl 6 ]、Na 3 [IrCl 6 ]、Na 2 [IrCl 6 ]、Li 3 [IrCl 6 ]、Li 2 [IrCl 6 ]、[Ir(NH 3 ) 4 Cl 2 ]Cl、RhF 3 、RhF 4 、RhCl 3 、[Rh(NH 3 ) 5 Cl]Cl 2 、RhCl[P(C 6 H 5 ) 3 ] 3 、K[Rh(CO) 2 Cl 2 ]、Na[Rh(CO) 2 Cl 2 ] Li[Rh(CO) 2 Cl 2 ]、Rh 2 (SO 4 ) 3 、Rh(HSO 4 ) 3 、Rh(ClO 4 ) 3 、これらの水和物ならびにこれらの塩および/または水和物の混合物を含む群から選択される、[25]~[31]のいずれか一つのめっき浴。
[33] 前記前駆体の濃度が、1 mMないし1 Mの範囲である、[25]~[32]のいずれか一つのめっき浴。
[34] 前記前駆体の濃度が、5 mMないし100 mMの範囲である、[33]のめっき浴。
[35] 前記前駆体の濃度が、10 mMないし50 mMの範囲である、[34]のめっき浴。
[36] 前記めっき浴のpHが7未満である、[25]~[36]のいずれか一つのめっき浴。
[37] 前記pHが3ないし5である、[36]のめっき浴。
[38] 前記めっき浴の前記pHが約4である、[37]のめっき浴。
[39] さらに、pH緩衝剤を含む、[25]~[21]のいずれか一つの方法。
[40] さらに、光沢剤を含む、[25]~[39]のいずれか一つのめっき浴。
[41] さらに、2-メチルプロパン-2-オールを含む、[25]~[40]のいずれか一つのめっき浴。
[42] [25]~[41]のいずれか一つに規定しためっき浴の、白金族金属の無電解析出における使用。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図7g
図7h
図7i
図7j
図7k
図7l
図7m
図7n
図7o
図8a
図8b
図8c
図8d
図9
図10-1】
図10-2】
図11