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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】食鳥屠体の冷却方法および冷却装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
A22C21/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020113707
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012122
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-08-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399128611
【氏名又は名称】株式会社平岩熱学
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【弁理士】
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】竹之下 主税
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/181402(WO,A1)
【文献】特表2010-507370(JP,A)
【文献】特開2003-265096(JP,A)
【文献】特開昭61-249340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気冷却室が中間区画壁により前部冷却室と後部冷却室に分けられ、それら前部冷却室および後部冷却室は空気冷却機の作動によりそれぞれ室温を2.5℃以下に保持可能とされており、
前部冷却室の入口および後部冷却室の出口に第1および第2の掛替機が設けられ、前部冷却室の出口と後部冷却室の入口の間に中間掛替機が設けられており、
前工程から送られてくる食鳥屠体を、第1の掛替機を介して、前部冷却室の入口から前部冷却室内の搬送レールに掛け替え、室温が2.5℃以下に保持された前部冷却室内を分速30m以下の低速で通過させるとともに、中間掛替機を介して、前部冷却室の出口から後部冷却室内の搬送レールに掛け替え、室温が2.5℃以下に保持された後部冷却室内を分速30m以下の低速で通過させることにより、当該食鳥屠体を2段階で空気冷却し、
2段階で空気冷却した食鳥屠体を、第2の掛替機を介して、後工程に掛け替えて送るようにした、
ことを特徴とする食鳥屠体の冷却方法。
【請求項2】
前工程から送られてくる食鳥屠体が前部冷却室を分速30m以下の低速で通過する通過時間と、当該食鳥屠体が前部冷却室に続き、後部冷却室を分速30m以下の低速で通過する通過時間を、予め設定した食鳥屠体の冷却時間に合わせて設定することを特徴とする、請求項1記載の食鳥屠体の冷却方法。
【請求項3】
前工程から、当日処理分の最後の食鳥屠体が、第1の掛替機を介して、前部冷却室の搬送レールに掛け替えられたとき、後部冷却室は搬送レールによる食鳥屠体の搬送を継続し、前部冷却室では搬送レールによる食鳥屠体の搬送を停止することを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の食鳥屠体の冷却方法。
【請求項4】
当日処理分の最終の食鳥屠体が、前部冷却室の搬送レールから、中間掛替機を介して、後部冷却室の搬送レールに掛け替えられたとき、後部冷却室の搬送レールによる食鳥屠体の搬送を停止することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の食鳥屠体の冷却方法。
【請求項5】
中間区画壁により前部冷却室と後部冷却室に分けられた空気冷却室と、前部冷却室と後部冷却室をそれぞれ室温2.5℃以下に保持する空気冷却機を備え、
前部冷却室の入口に設けられ、前工程から送られてくる食鳥屠体を、室温が2.5℃以下に保持された前部冷却室内の搬送レールに掛け替える第1掛替機と、前部冷却室の出口と後部冷却室の入口の間に設けられ、前部冷却室内を通過中に空気冷却された食鳥屠体を、室温が2.5℃以下に保持された後部冷却室内の搬送レールに掛け替える中間掛替機と、後部冷却室の出口に設けられ、後部冷却室内を通過中に空気冷却された食鳥屠体を、後工程に掛け替える第2掛替機を備える、
ことを特徴とする食鳥屠体の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食鳥処理施設において、中抜きおよび洗浄後の食鳥屠体を冷却するための冷却方法と冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食鳥処理施設において、食鳥の処理は、一般に、生鳥(食鳥)の受け入れ後、懸鳥、放血、湯漬、脱毛、中抜き(内臓の摘出)を経て、洗浄後に冷却した屠体を重量選別して胸部と脚部の各部位に解体し、整形、計量、包装、製品冷却、梱包を経て保管、出荷される。一連の工程では、法で定められる食鳥検査として、受け入れ直後に生体検査、脱毛後に屠体(自主)検査、中抜き後に内臓検査が実施されている。
【0003】
上記食鳥処理施設において、中抜き後の屠体は、微生物汚染や食中毒菌の増殖を防ぐため、洗浄後直ちに、5℃以下の冷却水を入れた冷却槽に漬け、屠体の内部温度が常に10℃以下(衛生管理指針)に冷却されるように管理している。冷却水を利用して食鳥屠体を冷却する方法は水冷方式と呼ばれ、我が国では従来から広く利用されている。これに対し、空気を冷却して食鳥屠体を冷却する方式を空冷方式と呼ぶ。
【0004】
水冷方式については水を大量に使用するという問題がある。また、水冷式の場合、中抜き後に吊り下げられた屠体を冷却槽に落としてから、冷却終了後に再度ラインに掛け直すという労力が生じる課題もある。一方、空冷方式は水の使用を大幅に削減できる利点があるが、冷却方法の特性上、屠体の冷却時間が長くなり(現状では水冷式が1時間程度であるのに対し空冷式は2.5時間程度を要する)、冷却後の後工程が開始されるまでに生じるタイムラグが大きいという課題がある。
【0005】
従来より、空冷方式の装置(特許文献1)の提案の他、冷水槽と空気冷却庫を組み合わせて冷却を行う方法(特許文献2)、胸部と脚部を別々の冷却工程で冷却する方法(特許文献3)、散水後に空気冷却する方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-22681号公報
【文献】特開2003-265096号公報
【文献】特開2007-300863号公報
【文献】特公表2014/181402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の装置は、冷却時間が長く上記の空冷式の問題を抱え、特許文献2の方法は、冷水槽を組み合わせるため、大量の水の使用や排水処理のコストがかかるなどの水冷方式の問題がある。特許文献3の方法は、一部空冷を用いるが、大部分は水冷方式であり、水冷方式の問題が残り、特許文献4の方法は、散水前の屠体に固体冷却剤を注入するという別の工程が加わり、処理工程が増えるという課題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水冷方式の問題点を解消し得るとともに、空冷方式の課題である後工程が開始されるまでのタイムラグを削減することができ、ひいてはタイムラグに伴う課題を解決することが可能な、食鳥屠体の冷却方法と冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る食鳥屠体の冷却方法は、
空気冷却室が中間区画壁により前部冷却室と後部冷却室に分けられ、それら前部冷却室および後部冷却室は空気冷却機の作動によりそれぞれ室温を2.5℃以下に保持可能とされており、
前部冷却室の入口および後部冷却室の出口に第1および第2の掛替機が設けられ、前部冷却室の出口と後部冷却室の入口の間に中間掛替機が設けられており、
前工程から送られてくる食鳥屠体を、第1の掛替機を介して、前部冷却室の入口から前部冷却室内の搬送レールに掛け替え、室温が2.5℃以下に保持された前部冷却室内を分速30m以下の低速で通過させるとともに、中間掛替機を介して、前部冷却室の出口から後部冷却室内の搬送レールに掛け替え、室温が2.5℃以下に保持された後部冷却室内を分速30m以下の低速で通過させることにより、当該食鳥屠体を2段階で空気冷却し、
2段階で空気冷却した食鳥屠体を、第2の掛替機を介して、後工程に掛け替えて送るようにした、
ことを主要な特徴とする。
【0010】
食鳥屠体を、前部冷却室と後部冷却室の2段階で空気冷却するから、当日処理分の最終の食鳥屠体が前部冷却室から後部冷却室に搬入された後、後部冷却室に保管された食鳥屠体を、翌日の食鳥処理の開始後の前部冷却室への搬入および前部冷却室から後部冷却室への搬入に合わせて、後工程に送ることにより、後工程が開始されるまでのタイムラグが大幅に削減される。なお、低速とは分速30m以下の速度をいう。
【0011】
本発明に係る食鳥屠体の冷却方法は、
前工程から送られてくる食鳥屠体が前部冷却室を分速30m以下の低速で通過する通過時間と、当該食鳥屠体が前部冷却室に続き、後部冷却室を分速30m以下の低速で通過する通過時間を、予め設定した食鳥屠体の冷却時間に合わせて設定することを第2の特徴とする。
【0012】
本発明に係る食鳥屠体の冷却方法は、
前工程から、当日処理分の最後の食鳥屠体が、第1の掛替機を介して、前部冷却室の搬送レールに掛け替えられたとき、後部冷却室は搬送レールによる食鳥屠体の搬送を継続し、前部冷却室では搬送レールによる食鳥屠体の搬送を停止することを第3の特徴とする。
【0013】
当日処理分の最終の食鳥屠体が前工程から前部冷却室の搬送レールに掛け替えられたタイミングで、前部冷却室では搬送レールによる食鳥屠体の搬送を停止し、後部冷却室は搬送レールによる食鳥屠体の搬送と、後部工程への掛け替えを継続し、後部冷却室のみを空状態にすることが可能となる。後部冷却室のみを空状態にして後部冷却室の洗浄作業に直ちに入ることができる。従来のように冷却工程が全て完了してから洗浄作業に入る必要がなくなる。
【0014】
本発明に係る食鳥屠体の冷却方法は、
当日処理分の最終の食鳥屠体が、前部冷却室の搬送レールから、中間掛替機を介して、後部冷却室の搬送レールに掛け替えられたとき、後部冷却室の搬送レールによる食鳥屠体の搬送を停止することを第4の特徴とする。
【0015】
当日処理分の最終の食鳥屠体が後部冷却室の搬送レールに掛け替えられたタイミングで、空の状態になった前部冷却室の洗浄作業に直ちに入ることができる。従来のように冷却工程が全て完了してから洗浄作業に入る必要がなくなる。後部冷却室で最終の食鳥屠体の空気冷却時間と並行して、空状態の前部冷却室を洗浄作業することができる。
【0016】
本発明に係る食鳥屠体の冷却装置は、
中間区画壁により前部冷却室と後部冷却室に分けられた空気冷却室と、前部冷却室と後部冷却室をそれぞれ室温2.5℃以下に保持する空気冷却機を備え、
前部冷却室の入口に設けられ、前工程から送られてくる食鳥屠体を、室温が2.5℃以下に保持された前部冷却室内の搬送レールに掛け替える第1掛替機と、前部冷却室の出口と後部冷却室の入口の間に設けられ、前部冷却室内を通過中に空気冷却された食鳥屠体を、室温が2.5℃以下に保持された後部冷却室内の搬送レールに掛け替える中間掛替機と、
後部冷却室の出口に設けられ、後部冷却室内を通過中に空気冷却された食鳥屠体を、後工程に掛け替える第2掛替機を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る食鳥屠体の冷却方法によれば、従来の水冷方式のように大量の水を使用することがなくなり、また、従来の空冷方式の課題であった後工程が開始されるまでのタイムラグ、あるいは出荷が開始されるまでのタイムラグを、従来の水冷方式の場合のタイムラグに限りなく近付けてこれを大きく改善できるという効果を奏する。
【0018】
これにより従来の空冷方式のタイムラグにより生じる課題、例えば後工程からの勤務体制を、水冷方式の勤務体制に限りなく近付けることができるという効果を奏する。
【0019】
また、食鳥屠体の冷却を、前部冷却室と後部冷却室の2段階の空気冷却で行うようにしたから、食鳥屠体の冷却中に、後部冷却室と前部冷却室を交互に空の状態にして、洗浄作業を交互に行え、洗浄作業を効率的に行えるという効果を奏する。
【0020】
さらに、本発明に係る食鳥屠体の冷却装置によれば、掛替機を使用して食鳥屠体を連続的に冷却することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る食鳥屠体の冷却装置の構成を示す平面図、
図2】(A)は第1掛替機の構成を示す平面図、(B)は中間掛替機の構成を示す平面図、(C)は第2掛替機の構成を示す平面図、
図3】本発明に係る食鳥屠体の冷却方法の運用を示す説明図、
図4】本発明に係る食鳥屠体の冷却方法の運用を示す説明図、
図5】本発明に係る食鳥屠体の冷却方法の運用を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は食鳥屠体の冷却装置の全体構成図を示している。同図において、符号Sは食鳥屠体の冷却装置を示している。
【0023】
図1に示す食鳥屠体の冷却装置Sは、食鳥処理工程の冷却工程に使用される装置で、空気冷却室10と複数の空気冷却機11を備えている。空気冷却室10は平面視して横長の長方形形状をしており、中間仕切壁14により、前部冷却室12と後部冷却室13に区画されている。
【0024】
前部冷却室12は、入口と出口を備え、内部が断熱材により覆われている。また、前部冷却室12は、内部に空気冷却機11が設置され、天井に冷却ラインの搬送レール15が設けられている。搬送レール15は、食鳥屠体Tを吊り下げる多数のフック1が設けられ、駆動装置(図示せず)により食鳥屠体Tを吊り下げた状態のフック1を進行方向に移動させるようになっている。
【0025】
上記前部冷却室12は、空気冷却機11の作動により、室温を2.5℃以下に保持することができ、前工程Aのラインから流れてくる食鳥屠体Tを、第1掛替機21を介して、室内の搬送レール15に掛け替えるとともに、フック1に吊り下げられた状態で、室温が2.5℃以下に保持された室内を冷却ラインの搬送レール15に沿って低速(分速20~30m)で通過させ、その間、フック1に吊り下げられた状態の食鳥屠体Tを、一定時間(約1.25時間)、空気冷却するようになっている。
【0026】
ここで、前工程Aには、上流側から生鳥受入、懸鳥、放血、湯漬、脱毛、中抜き、洗浄の各工程が含まれる。
【0027】
後部冷却室13は、入口と出口を備え、内部が断熱材により覆われている。また、後部冷却室13は、内部に空気冷却機11が設置され、天井に冷却ラインの搬送レール15が設けられている。搬送レール15は、食鳥屠体Tを吊り下げる多数のフック1を備え、駆動装置(図示せず)により食鳥屠体Tを吊り下げた状態のフック1を進行方向に移動させるようになっている。
【0028】
上記後部冷却室13は、空気冷却機11の作動により、室温を2.5℃以下に保持することができ、前部冷却室12内で一定時間(約1.25時間)空気冷却された食鳥屠体Tを、中間掛替機22を介して、室内の搬送レール15に掛け替えるとともに、フック1に吊り下げられた状態で、室温が2.5℃以下に保持された室内を冷却ラインの搬送レール15に沿って低速(分速20~30m)で通過させ、その間、フック1に吊り下げられた状態の食鳥屠体Tを、さらに一定時間(約1.25時間)空気冷却するようになっている。
【0029】
後部冷却室13内で一定時間(約1.25時間)空気冷却された食鳥屠体Tは、後部冷却室13の出口から第2掛替機23を介して、後工程Bのラインに掛け替えられ、送られるようになっている。後工程Bには、重量選別、大ばらし(胸部と脚部の解体)、整形、計量、包装、製品冷却、梱包、保管、出荷の各工程が含まれる。
【0030】
第1掛替機21は、前部冷却室12の入口に設けられ、前工程Aのラインから流れてくる食鳥屠体Tを、前部冷却室12の搬送レール15に掛け替えるもので、図2(A)に示すように、環状の掛け替えレール24と、掛け替えレール24に付属されたフック2と、掛け替えレール24を駆動する駆動装置25を備えている。そして、前工程Aのラインにおける搬送レールaのフック3に吊り下げられた状態で流れてくる食鳥屠体Tを、フック2に受け取り、掛け替えレール24を半周して、さらに前部冷却室12の搬送レール15のフック1に掛け替えるようになっている。
【0031】
中間掛替機22は、前部冷却室12の出口と後部冷却室13の入口の間に設けられ、前部冷却室12の冷却ラインを流れてくる食鳥屠体Tを、搬送レール15の掛け替えポイントから、後部冷却室13の搬送レール15に掛け替えるもので、図2(B)に示すように、第1掛替機21と同様に、環状の掛け替えレール24と、掛け替えレール24に付属されたフック2と、掛け替えレール24を駆動する駆動装置25を備えている。そして、前部冷却室12の搬送レール15に沿って流れてくる食鳥屠体Tを、掛け替えポイントで、フック2に受け取り、掛け替えレール24を半周して、さらに後部冷却室13の搬送レール15のフック1に掛け替えるようになっている。
【0032】
第2掛替機23は、後部冷却室13の出口に設けられ、後部冷却室13の冷却ラインを流れてくる食鳥屠体Tを、搬送レール15の掛け替えポイントから、後工程Bのラインに掛け替えるもので、図2(C)に示すように、中間掛替機22と同様に、環状の掛け替えレール24と、掛け替えレール24に付属されたフック2と、掛け替えレール24を駆動する駆動装置25を備えている。そして、後部冷却室13の搬送レール15に沿って流れてくる食鳥屠体Tを、掛け替えポイントでフック2に受け取り、掛け替えレール24を半周して、後工程Bのラインにおける搬送レールbのフック4に掛け替えて、下流に送るようになっている。
【0033】
各冷却室12、13の空気冷却機11は操作盤から運転と停止の操作を行え、また、室内の温度、運転時間等を設定可能である。各冷却室12、13の冷却ライン(搬送レール15の駆動装置)は操作盤から運転と停止の操作を行える。第1掛替機21、中間掛替機22、第3掛替機23は、同じく操作盤から運転と停止の操作を行えるようになっている。
【0034】
符号50はコンピュータ端末であり、前部冷却室12と後部冷却室13の各室の冷却管理と食鳥屠体の管理を行えるようになっている。上記機器の運転と停止または各種設定はコンピュータ端末50からの指令により行うようにしてよい。
【0035】
次に、上記構成の冷却装置Sを用いた、食鳥屠体の冷却方法について説明する。
【0036】
本実施形態の冷却装置Sは、前部冷却室12および後部冷却室13の室温がともに同じ2.5℃、前部冷却室12および後部冷却室13の通過時間がともに同じ1.25時間に設定されている。なお、前部冷却室12および後部冷却室13の室温はそれぞれ1℃から10℃の範囲で異なる温度に設定し、運用することができる。
【0037】
図1を参照して、前工程Aのラインから、中抜きおよび洗浄後の最初の食鳥屠体Tが送られてくると、前部冷却室12の入口で、第1掛替機21により、前部冷却室12内の搬送レール15に掛け替えられる。食鳥屠体Tはフック1に吊り下げられた状態で、前部冷却室12内を冷却ラインの搬送レール15に沿って入口から出口(中間掛替機22)に向けて低速(分速20~30m)で移動し、その間一定時間(約1.25時間)をかけて空気冷却される。
【0038】
食鳥屠体Tが前部冷却室12の出口に到着すると、中間掛替機22により、後部冷却室13の入口を経由し、後部冷却室13の搬送レール15に掛け替えられる。食鳥屠体Tはフック1に吊り下げられた状態で、後部冷却室13内を冷却ラインの搬送レール15に沿って出口に向けて低速(分速20~30m)で移動し、その間一定時間(約1.25時間)をかけて空気冷却される。
【0039】
食鳥屠体Tが後部冷却室13の出口に到着すると、第2掛替機23により、後工程Bのラインに掛け替えられる。食鳥屠体Tは、前部冷却室12と後部冷却室13を、合計約2.5時間かけて低速(分速20~30m)で通過し、内部温度が10℃以下まで十分に冷却される。
【0040】
後工程Bに送られた食鳥屠体Tは、重量選別、大ばらし(胸部と脚部の解体)、整形、計量、包装、製品冷却、梱包、保管、出荷の各工程を経て順次出荷される。
【0041】
前工程Aのラインから、当日処理分の最後の食鳥屠体Te(図3参照)が流れてきて、第1掛替機21により、前部冷却室12内の搬送レール15に掛け替えられると、このタイミングで、前部冷却室12の冷却ラインを停止する(空気冷却機11の運転は継続する)。後部冷却室13の冷却ラインは運転を継続し、後部冷却室13内で冷却された食鳥屠体Tが後工程Bに掛け替えられ、後部冷却室13が空の状態になると、このタイミングで、図3に示すように、後部冷却室13の冷却ラインと空気冷却機11の運転を停止する。かかる状態で、後部冷却室13の洗浄作業に入ることができる。
【0042】
後部冷却室13の洗浄作業が終わったら、前部冷却室12の冷却ラインの運転と、後部冷却室13の冷却ラインおよび空気冷却機11の運転を再開し、前部冷却室12から、中間掛替機22を介して、食鳥屠体Tを順次、後部冷却室13の搬送レール15に掛け替える。
【0043】
前部冷却室12から、中間掛替機22を介して、当日処理分の最後の食鳥屠体Teが後部冷却室13の搬送レール15に掛け替えられると、前部冷却室12が空の状態になるので、このタイミングで、図4に示すように、後部冷却室13の冷却ラインは停止し(空気冷却機11の運転は継続)、前部冷却室12の冷却ラインと空気冷却機11の運転を停止する。かかる状態で、前部冷却室12の洗浄作業に入ることができる。
【0044】
後部冷却室13には、当日処理分の最後の食鳥屠体Teを含め、搬送レール15の各フック1に食鳥屠体Tが吊り下げられた状態で冷却保管される。後部冷却室13に保管されている分の食鳥屠体Tは、翌日出荷分の食鳥屠体Tとして、翌日の後工程開始に伴い、第2掛替機23を介して、後工程Bに送られる。
【0045】
後部冷却室13に保管された食鳥屠体Tを、翌日、第2掛替機23により、後工程Bに掛け替えるタイミングは、図5に示すように、翌日処理分の最初の食鳥屠体Taが前部冷却室12を低速(分速20~30m)で通過し、中間掛替機22により、後部冷却室13の搬送レール15に掛け替えられるタイミングに合わせる。
【0046】
後部冷却室13に保管された食鳥屠体Tを、翌日の最初の出荷分として、翌日に後工程Bに最初に送るように運用できるので、従来の空冷方式の場合に生じていたタイムラグ(後工程Bの開始時間のタイムラグ)を従来の空冷方式よりも半減し、翌日の出荷時間を水冷方式並みに早めることができる。
【0047】
また、上記した冷却方法の運用は、従来の空冷方式における作業者(第1班と第2班)の勤務時間のタイムラグを、水冷方式における作業者(第1班と第2班)の勤務時間のタイムラグに近付けることができるというメリットがある。
【0048】
従来の空冷方式では、食鳥屠体Tの冷却時間を2.5時間確保する必要があるため、第1班(後工程Bより前を担当)の勤務時間と第2班(後工程B以降を担当)の勤務時間との間に2.5時間の大きなタイムラグがあったが、本実施形態の空冷方式の運用方法によれば、第2班は勤務開始時刻を早めることができ、第1班と第2班の勤務時間のタイムラグを1.25時間に半減し、水冷方式における勤務体制のタイムラグに限りなく近付けることができる。
【0049】
また、当日処理分の食鳥屠体の冷却後は、冷却室を洗浄しなければならず、冷却室10を中間区画壁14により前部冷却室12と後部冷却室13に区画しない場合(従来の空冷方式と同じ場合)は、最後の食鳥屠体Teが後工程Bに送られた後に、空となった状態の冷却室の洗浄に取り掛からなければならないが、本実施形態の冷却方法の運用により、冷却室の洗浄を早期に取り掛かり、早期に終了することが可能となる。
【0050】
すなわち、当日処理分の最後の食鳥屠体Teが前部冷却室12に搬入されたタイミングで、前部冷却室12の冷却ラインを停止し、合わせて後部冷却室13に搬入された食鳥屠体Tを全て後工程Bに搬出させることにより、後部冷却室13を空の状態にして(図3参照)、後部冷却室13の洗浄作業に取り掛かることができる。
【0051】
また、後部冷却室13の洗浄作業後は、前部冷却室12内の食鳥屠体Tをすべて後部冷却室13に搬入することにより、前部冷却室12を空の状態にして(図4参照)、前部冷却室12の洗浄作業に取り掛かることができる。このように、最後の食鳥屠体Teの冷却時間(2.5時間)の満了を待つことなく、後部冷却室13を先行して洗浄作業することができ、洗浄の作業効率を上げることができる。
【0052】
本実施形態では、食鳥屠体Tの冷却時間(2.5時間)に合わせて、前部冷却室12の通過時間(1.25時間)と後部冷却室13の通過時間(1.25時間)を設定した。食鳥屠体Tの冷却時間を変更する場合(例えば3時間)、冷却時間の変更に合わせて、前部冷却室12の通過時間も変更し(例えば1.5時間)、後部冷却室13の冷却時間も変更(例えば1.5時間)すればよい。
【0053】
本実施形態の冷却装置Sは、第1掛替機21、中間掛替機22、第2掛替機23を備え、中抜き後に吊り下げられた食鳥屠体Tを前工程から冷却工程に、冷却工程から後工程に連続して搬送する方式であり、冷却開始前、冷却途中、冷却終了後にラインに掛け直す労力が不要となる。
【0054】
かくして、本発明によると、従来の水冷方式のように大量の水を使用することがなく、また、従来の空冷方式の課題であった後工程が開始されるまでの大きなタイムラグ、あるいは出荷が開始されるまでの大きなタイムラグを改善し、合わせて、食鳥処理施設における勤務時間のタイムラグも改善できるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、食鳥処理施設における食鳥屠体の冷却方法および冷却装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、2、3、4 フック
10 空気冷却室
11 空気冷却機
12 前部冷却室
13 後部冷却室
14 中間仕切壁
15、a、b 搬送レール
21 第1掛替機
22 中間掛替機
23 第2掛替機
24 掛け替えレール
25 駆動装置
50 コンピュータ端末
A 前工程
B 後工程
T 食鳥屠体
Ta 最初の食鳥屠体
Te 最後の食鳥屠体
図1
図2
図3
図4
図5