(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】軸継手
(51)【国際特許分類】
F16D 3/79 20060101AFI20221024BHJP
F16F 15/126 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
F16D3/79 A
F16F15/126 B
(21)【出願番号】P 2020518903
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2018019175
(87)【国際公開番号】W WO2019220598
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592153953
【氏名又は名称】鍋屋バイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】礒部 央
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-180021(JP,U)
【文献】国際公開第2016/084635(WO,A1)
【文献】特開昭63-186048(JP,A)
【文献】特開2015-209884(JP,A)
【文献】特開2006-348992(JP,A)
【文献】特開2010-203469(JP,A)
【文献】特開平5-312220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/79, 3/72
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に対し一体回転可能に連結される駆動ハブと、従動軸に対し一体回転可能に連結される従動ハブと、前記駆動ハブと前記従動ハブとの間で回転を伝動するとともに軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位を有する回転伝動部とを備えた軸継手において、
前記回転伝動部に対して一体に連結された動吸振器を備え
、
前記動吸振器は、慣性体と、前記慣性体と前記回転伝動部との間に介在して前記慣性体を支持する複数の弾性部材とを含み、前記慣性体、及び前記弾性部材は、前記駆動ハブ及び前記従動ハブとは非接触で配置され、
前記回転伝動部の外周面は、周方向に等ピッチで凹設された複数の取付溝を有し、
前記慣性体の内周面は、周方向に等ピッチで設けられた複数の嵌合溝を有し、
前記弾性部材は、ピン状に形成されて、前記取付溝と前記嵌合溝とに嵌合されており、
前記慣性体は、前記弾性部材が相対していない部位では前記回転伝動部とは空隙を有して相対配置されている軸継手。
【請求項2】
前記慣性体は、前記駆動ハブ及び前記従動ハブの少なくともいずれか一方の外周面を覆う覆い
部を有する請求項
1に記載の軸継手。
【請求項3】
前記回転伝動部に取付けられた動吸振器を第1動吸振器とし、
前記駆動ハブ及び前記従動ハブの少なくともいずれか一方のハブの部位であって、該軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に対して一体に連結された第2動吸振器を備える請求項1
又は2に記載の軸継手。
【請求項4】
前記第1動吸振器の慣性体及び弾性部材を第1慣性体及び第1弾性部材とし、
前記第2動吸振器は、第2慣性体と、前記第2慣性体を前記非関与部位に取付ける取付部材と、前記第2慣性体と前記取付部材との間に介在して前記第2慣性体を支持する単数または複数の第2弾性部材とを含み、前記第2慣性体、前記取付部材及び前記第2弾性部材は、前記駆動軸及び前記従動軸とは非接触で配置される請求項
3に記載の軸継手。
【請求項5】
前記ハブは、円柱状に形成されて、前記駆動軸または前記従動軸が嵌合する軸孔と、軸方向に一対の端面とを有しており、
前記非関与部位が前記ハブの何れか一方の端面である請求項
4に記載の軸継手。
【請求項6】
前記第2慣性体は、前記取付部材が取付けられた前記ハブの外周面を覆う覆い部と、前記第2弾性部材に支持される部位であって、前記覆い部と一体に連結された被支持部とを有する請求項
4または請求項
5に記載の軸継手。
【請求項7】
前記駆動ハブ及び前記従動ハブの各々に、前記第2動吸振器が取付けられている請求項
3乃至請求項
6のうちいずれか1項に記載の軸継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、駆動軸と従動軸との間に配置される軸継手は、前記駆動軸に連結される駆動ハブと、前記従動軸に連結される従動ハブと、両ハブの間で回転を伝動する回転伝動部とを有している。
【0003】
特許文献1及び特許文献2では、振動吸収性を高めるために、駆動ハブと従動ハブとの間に、板バネと弾性体とを介在させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-348992号公報
【文献】特開2010-203469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このように駆動ハブと従動ハブとの間に、振動吸収を向上させるための手段を新たに介在させると、軸継手の捩り剛性が低下してしまう。
本発明の目的は、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を持たせることができる軸継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の態様によれば、駆動軸に対し一体回転可能に連結される駆動ハブと、従動軸に対し一体回転可能に連結される従動ハブと、前記駆動ハブと前記従動ハブとの間で回転を伝動するとともに軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位を有する回転伝動部とを備えた軸継手において、前記回転伝動部に対して一体に連結された動吸振器を備える。
【0007】
この構成によれば、動吸振器が回転伝動部に取付けられることにより、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
また、前記動吸振器は、慣性体と、前記慣性体と前記回転伝動部との間に介在して前記慣性体を支持する弾性部材とを含み、前記慣性体、及び前記弾性部材は、前記駆動ハブ及び前記従動ハブとは非接触で配置されることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、動吸振器自体の減衰性と振動吸収性とをより確実に発揮することができる。
前記慣性体は、前記駆動ハブ及び前記従動ハブの少なくともいずれか一方の外周面を覆う覆い部と、前記弾性部材に支持される部位であって、前記覆い部と一体に連結された被支持部とを有することが好ましい。
【0009】
この構成にすれば、ハブの外周面を覆うように配置される慣性体を、例えば円板状に形成した慣性体と振動吸収性を同じくした場合は、該円板状の慣性体に比してその回転軸心からの外径を短くでき、その外形の大きさを小型化できる。
【0010】
また、前記弾性部材及び前記慣性体は、断面リング状をなし、前記回転伝動部に対して同軸に固定されていることが好ましい。
この構成にすれば、弾性部材及び前記慣性体は、断面リング状をなし、前記回転伝動部に対して同軸に固定されていることにより、動吸振器自体の減衰性と振動吸収性とをより確実に発揮することができる。
【0011】
また、前記弾性部材は、前記回転伝動部の外周面の周方向に対して複数個配列されており、前記慣性体は、前記弾性部材を介して前記回転伝動部に対して支持されるとともに、前記弾性部材が相対していない部位では前記回転伝動部とは空隙を有して相対配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成にすれば、弾性部材は、回転伝動部の外周面の周方向に対して複数個配列されており、慣性体が弾性部材を介して回転伝動部に対して支持されるとともに、弾性部材が相対していない部位では回転伝動部とは空隙を有して相対配置されていることにより、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
【0013】
また、前記回転伝動部に取付けられた動吸振器を第1動吸振器とし、前記駆動ハブ及び前記従動ハブの少なくともいずれか一方のハブの部位であって、該軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に対して一体に連結された第2動吸振器を備えていてもよい。
【0014】
この構成にすれば、軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に対して第2動吸振器が取付けられることにより、さらに、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
【0015】
また、前記第1動吸振器の慣性体及び弾性部材を第1慣性体及び第1弾性部材とし、前記第2動吸振器は、第2慣性体と、前記第2慣性体を前記非関与部位に取付ける取付部材と、前記第2慣性体と前記取付部材との間に介在して前記第2慣性体を支持する単数または複数の第2弾性部材とを含み、前記第2慣性体、前記取付部材及び前記第2弾性部材は、前記駆動軸及び前記従動軸とは非接触で配置されていてもよい。
【0016】
この構成にすれば、第2動吸振器によっても、第2動吸振器自体の減衰性と振動吸収性とをより確実に発揮することができる。
また、前記ハブは、円柱状に形成されて、前記駆動軸または前記従動軸が嵌合する軸孔と、軸方向に一対の端面とを有しており、前記非関与部位が前記ハブの何れか一方の端面としてもよい。
【0017】
この構成にすれば、円柱状のハブの端面に第2動吸振器が取付けられることにより、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
また、前記第2慣性体は、前記取付部材が取付けられた前記ハブの外周面を覆う覆い部と、前記第2弾性部材に支持される部位であって、前記覆い部と一体に連結された被支持部とを有する構成とすることが好ましい。
【0018】
この構成にすれば、ハブの外周面を覆うように配置される第2慣性体を、例えば円板状に形成した慣性体と振動吸収性を同じくした場合は、該円板状の慣性体に比してその回転軸心からの外径を短くでき、その外形の大きさを小型化できる。
【0019】
また、前記駆動ハブ及び前記従動ハブの各々に、前記第2動吸振器が取付けられていることが好ましい。
この構成にすれば、1つのハブに第2動吸振器が取付けられている場合に比して、加減速等のパラメータの変動に強く、すなわち、ロバスト性を高くすることができる。また、1つのハブに第2動吸振器を取付けた場合に比して、同じ慣性モーメント比においては、駆動側の変化に対する応答性、例えば、駆動軸がモータの出力軸の場合、モータ指令に対する応答性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の動吸振器付きの軸継手の斜視図。
【
図2】第1実施形態の動吸振器付きの軸継手と連結ネジの斜視図。
【
図3】第1実施形態の動吸振器と軸継手との分解斜視図。
【
図4】第1実施形態の動吸振器を省略した軸継手の分解斜視図。
【
図5】第1実施形態の動吸振器付きの軸継手の断面図。
【
図6】第2実施形態の動吸振器付きの軸継手の斜視図。
【
図7】第2実施形態の動吸振器と軸継手との分解斜視図。
【
図8】第2実施形態の動吸振器付きの軸継手の断面図。
【
図9】第3実施形態の動吸振器付きの軸継手の斜視図。
【
図10】第3実施形態の動吸振器付きの軸継手の斜視図。
【
図11】第4実施形態の動吸振器付きの軸継手の斜視図。
【
図12】第4実施形態の動吸振器と軸継手との分解斜視図。
【
図13】第4実施形態の動吸振器付きの軸継手の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1~
図5を参照して、本発明の軸継手を具体化した第1実施形態について説明する。
図1、
図2に示すように、軸継手10は動吸振器70を有している。
【0022】
図3~
図5に示すように、軸継手10は、駆動軸12に接続される駆動ハブ40と、従動軸14に接続される従動ハブ50と、駆動ハブ40と従動ハブ50との間に配置された伝達部材60と、駆動ハブ40と伝達部材60との間、及び従動ハブ50と伝達部材60との間にそれぞれ配置された一対のディスクユニット80、90を有している。本実施形態の軸継手10は、ディスクユニット80、90を備えたダブルディスクタイプのフレキシブルカップリングである。
【0023】
図4、
図5に示すように駆動ハブ40は、アルミニウムやステンレスなどにより円柱状に形成されている。駆動ハブ40は、断面円形状の外周面41と、円形状の外端面42及び内端面43とを有している。外端面42及び内端面43の中心部には断面円形状の軸孔44が貫通して形成されている。
図5に示すように、駆動ハブ40は、外周面41から軸孔44の内周面に亘って形成されたスリット45と、
図4に示すように外端面42からスリット45に亘って形成されたスリット46を有している。
【0024】
図5に示すように駆動軸12は、軸孔44に対して外端面42側から挿入された状態で、連結ネジ48(
図2参照)によりスリット46が許容する範囲で締め付けられて軸孔44が縮径されていることにより、駆動ハブ40に対して一体回転可能に連結される。
【0025】
図4、
図5に示すように従動ハブ50は、アルミニウムやステンレスなどにより円柱状に形成されている。従動ハブ50は、断面円形状の外周面51と軸方向に円形状の外端面52及び内端面53とを有している。外端面52及び内端面53の中心部には断面円形状の軸孔54が貫通して形成されている。
図5に示すように、従動ハブ50は、外周面51から軸孔54の内周面に亘って形成されたスリット55と、外端面52からスリット55に亘って形成されたスリット56を有している。
図5に示すように従動軸14は、軸孔54に対して外端面52側から挿入された状態で、連結ネジ58(
図2参照)によりスリット56が許容する範囲で締め付けられて軸孔54が縮径されていることにより、従動ハブ50に対して一体回転可能に連結される。
【0026】
ディスクユニット80は、相互に同じ大きさで円板状に形成された金属製の板バネが複数枚重ね合わされている。ディスクユニット80を構成する各板バネには中央に断面円形の透孔82が形成されている。
図5に示すように、ディスクユニット80は、伝達部材60側から挿通された複数の伝動ボルト81により、駆動ハブ40の内端面43に対して締め付けされて固定されている。各伝動ボルト81は、軸継手10の回転中心を中心として、等角度に配置されている。
図5に示すように伝動ボルト81の頭部と、ディスクユニット80との間には、スペーサ85が介在して伝動ボルト81により締め付けられている。
【0027】
伝達部材60は、アルミニウムやステンレスなどにより円柱状に形成されるとともに、透孔61が一対の端面62、63間に透設されている。
図5に示すように、ディスクユニット80は、駆動ハブ40側から挿通された複数の伝動ボルト83により、伝達部材60の端面62に対して締め付けされて一体となるように固定されている。なお、各伝動ボルト83は、ディスクユニット80のリング状の端面において伝動ボルト81間に配置されるとともに、相互に隣接する伝動ボルト81とは、軸継手10の回転中心を中心として等角度となるように離間配置されている。
【0028】
また、伝動ボルト81の頭部は、伝達部材60の端面62に設けられた凹部64に対して遊びを有するように嵌合されている。また、伝動ボルト83の頭部は、駆動ハブ40の凹部47に対して遊びを有するように嵌合されている。
【0029】
ディスクユニット90は、ディスクユニット80の金属製の板バネと同じ大きさであって、相互に同じ大きさで円板状に形成された金属製の板バネが複数枚重ね合わされている。ディスクユニット90を構成する各板バネには中央に断面円形の透孔92が形成されている。
図5に示すようにディスクユニット90は、伝達部材60側から挿通された複数の伝動ボルト91により、従動ハブ50の内端面53に対して締め付けされて固定されている。
【0030】
各伝動ボルト91は、軸継手10の回転中心を中心として、等角度に配置されている。
図5に示すように伝動ボルト91の頭部と、ディスクユニット90との間には、スペーサ95が介在して伝動ボルト91により締め付けられている。
【0031】
図5に示すように、ディスクユニット90は、従動ハブ50側から挿通された複数の伝動ボルト93により、伝達部材60の端面63に対して締め付けされて一体となるように固定されている。
図5に示すように伝動ボルト93の頭部と、ディスクユニット90との間には、スペーサ94が介在して伝動ボルト93により締め付けられている。
【0032】
なお、各伝動ボルト93は、ディスクユニット90のリング状の端面において伝動ボルト91間に配置されるとともに、相互に隣接する伝動ボルト91と、軸継手10の回転中心を中心として等角度となるように離間配置されている。
【0033】
また、伝動ボルト91の頭部は、伝達部材60の端面63に設けられた凹部65に対して遊びを有するように嵌合されている。また、伝動ボルト93の頭部は、従動ハブ50の内端面53に形成された凹部57に対して遊びを有するように嵌合されている。
【0034】
ディスクユニット80、伝動ボルト81、83、伝達部材60、伝動ボルト93、ディスクユニット90、及び伝動ボルト91、93は、回転伝動部を構成している。
図5に示すように使用状態において、軸継手10は、図示しないモータによって駆動軸12が回転されると、この回転運動は、駆動ハブ40を介して複数の伝動ボルト81に伝達される。そして、伝動ボルト81からディスクユニット80を介して複数の伝動ボルト83に伝達され、伝達部材60に伝達される。この伝達部材60に伝達された回転運動は、複数の伝動ボルト93を介して、ディスクユニット90に伝達されるとともに、伝動ボルト91を介して従動ハブ50に伝達される。そして、この従動ハブ50に伝達された回転運動は、従動軸14に伝達される。上述した駆動軸12から従動軸14へのトルクの伝達中において、ディスクユニット80、90の弾性力によって、軸継手10に撓みが生じ、駆動軸12の中心軸線と従動軸14の中心軸線とが同一直線上にない状態においても、回転運動が円滑に伝達される。
【0035】
図2、
図3、
図5に示すように動吸振器70は、伝達部材60に対して取付けられている。
図2に示すように、動吸振器70は、振動減衰体72と、慣性体73とを備えている。動吸振器70は、軸継手10のうち、伝達部材60の振動を抑制するべく、例えば、定点理論、或いは最適同調法により、その質量等のパラメータが設定されている。
【0036】
振動減衰体72は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材により、筒状に形成されている。すなわち、振動減衰体72は、断面リング状、詳しくは、断面円形リング状に形成されて一定の厚みを有するとともに、伝達部材60の長さと同一長さを有している。なお、振動減衰体72の長さは、伝達部材60の長さと同一に限定するものではなく、伝達部材60の長さよりも短く、或いは長くしてもよい。振動減衰体72は、
図5に示すように、駆動ハブ40及び従動ハブ50とは非接触となるように配置されている。振動減衰体72は、弾性部材に相当する。振動減衰体72は、伝達部材60の外周面に対して接着剤により固定されている。伝達部材60の外周面は、軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に相当する。振動減衰体72は、中央部に円形の取付孔72aを有している。取付孔72a、伝達部材60の外径と同径であって、同軸に配置されている。
【0037】
図3、
図5に示すように慣性体73は、ステンレス、鉄等の金属製であって、貫通形成された取付孔73aが振動減衰体72の外周面(取付面)72bに対して接着剤により固定されて、伝達部材60と同軸に配置されている。取付孔73aの内周面は、被支持部に相当する。
【0038】
上記のように構成された動吸振器付きの軸継手10の作用を説明する。
図示しないモータによって駆動軸12が回転されると、この回転運動は、駆動ハブ40、ディスクユニット80、伝達部材60、従動ハブ50等を介して、従動軸14に伝達される。また、伝達部材60に連結された動吸振器70は、慣性体73により、伝達部材60での振動及び振幅に比例した反力を与えて、伝達部材60の振動を吸収する。また、動吸振器70の振動減衰体72は、自身の減衰性能により伝達部材60の振動を減衰する。
【0039】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)軸継手10は、伝達部材60に対して動吸振器70が一体に連結されている。
この結果、軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位を有する伝達部材60に対して動吸振器が取付けられることにより、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
【0040】
(2)動吸振器70は、慣性体73と、慣性体73を非関与部位となる伝達部材60の外周面と慣性体73との間に介在して慣性体73を支持する弾性部材である振動減衰体72とを含む。
【0041】
また、慣性体73及び振動減衰体72は、駆動軸12及び従動軸14とはそれぞれ非接触で配置される。この構成によれば、動吸振器自体の減衰性と振動吸収性とをより確実に発揮することができる。
【0042】
(3)伝達部材60は、円柱状に形成されて、その外周面が軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位としている。この結果、円柱状の伝達部材60に動吸振器70が取付けられることにより、捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
【0043】
次に、
図6~
図13に示す他の実施形態における軸継手について説明する。他の各実施形態の軸継手10は、第1実施形態の軸継手10と同一構成であるが、動吸振器の形状、動吸振器の伝達部材60に対する取付構造、及び動吸振器70以外に動吸振器20、30が設けられているところの構成が第1実施形態と大きく異なっている。
【0044】
以下には、さらに第1実施形態と異なる構成について説明する。
<第2実施形態>
図6~
図8に示す第2実施形態の動吸振器170は、振動減衰体172と、慣性体173とを備えている。
【0045】
振動減衰体172は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材により、筒状に形成されている。すなわち、振動減衰体172は、断面リング状、詳しくは、断面円形リング状に形成されて一定の厚みを有するとともに、伝達部材60の長さと同一長さを有している。
なお、振動減衰体172の長さは、伝達部材60の長さと同一に限定するものではなく、伝達部材60の長さよりも短く、或いは長くしてもよい。振動減衰体172は弾性部材に相当する。
【0046】
図7、
図8に示すように慣性体173は、ステンレス、鉄等の金属製であって、全体が円筒状に形成され、断面リング状、詳しくは、断面円形リング状となっている。
慣性体173は、軸心方向に延びる取付孔173aが貫通されていて、軸心方向の中央部が振動減衰体172の外周面に対して接着剤により固定されて支持される部位と、中央部の長手方向の両端部に一体に連結されて駆動ハブ40及び従動ハブ50において、伝達部材60に相対した端部を覆う覆い部174、175とを有している。すなわち、覆い部174、175は、駆動ハブ40、従動ハブ50と離間して配置されている。慣性体173において、軸心方向の中央部は、被支持部に相当する。
【0047】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)本実施形態の慣性体173は、駆動ハブ40及び従動ハブ50の両方の外周面を覆う覆い部174、175を有している。この結果、駆動ハブ40及び従動ハブ50の外周面を覆うように配置される慣性体173を、例えば円板状に形成した慣性体と振動吸収性を同じくした場合は、該円板状の慣性体に比してその回転軸心からの外径を短くでき、その外形の大きさを小型化できる。
【0048】
<第3実施形態>
図9及び
図10に示す第3実施形態の動吸振器180は、複数の振動減衰体182と、慣性体183とを備えている。
【0049】
振動減衰体182は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材により断面円形をなすとともにピン状に形成されている。振動減衰体182は、
図10に示すように、伝達部材60の外周面に対して軸心方向に延びるとともに周方向に等ピッチで凹設された複数の取付溝66に対して接着剤、或いは圧入等により固定されている。振動減衰体182の取付溝66に対する圧入は、取り外し不能に、或いは取り外し可能に圧入してもよい。振動減衰体182の取付溝66に対する圧入が取り外し可能である場合には、慣性体183の交換、或いは質量や形状が異なる慣性体183に替えることができる。この結果、振動抑制の調整が可能となる。取付溝66の断面は、詳しくは円弧形状となるように凹設されている。
【0050】
複数の取付溝66に対して複数の振動減衰体182が取付けられることにより、振動減衰体182は、伝達部材60の外周面に対して周方向に等ピッチで配列されている。振動減衰体182は、取付溝66の長さ方向において、突出しないように配置されるとともに、取付溝66の径方向においては、振動減衰体182の半周面を超えた周面が取付溝66から露出して配置されている。振動減衰体182は、複数の弾性部材に相当する。
【0051】
慣性体183は、ステンレス、鉄等の金属製であって、全体が円筒状に形成され、断面リング状、詳しくは、断面円形リング状となっている。慣性体183は、その長さが伝達部材60と同じ長さを有しているが、その長さは伝達部材60と同じ長さに限定するものではない。
【0052】
慣性体183は、その内周面183aに設けられた複数の嵌合溝184に振動減衰体182が嵌合されて、接着剤、或いは圧入等により固定されることにより、振動減衰体182を介して、伝達部材60に取付けられている。振動減衰体182の嵌合溝184に対する圧入は、取り外し不能に、或いは取り外し可能に圧入してもよい。振動減衰体182の嵌合溝184に対する圧入が取り外し可能である場合には、慣性体183の交換、或いは質量や形状が異なる慣性体183に替えることができる。この結果、振動抑制の調整が可能となる。嵌合溝184は、慣性体183の内周面183aにおいて、軸心方向に延出されているとともに、周方向に等ピッチで形成されている。
【0053】
慣性体183は、伝達部材60に対しては、慣性体183が介在して径方向に離間して空隙が形成されて、伝達部材60の外周面とは干渉しないように配置されている。
慣性体183の嵌合溝184の内面は、被支持部に相当する。
【0054】
(5)本実施形態では、振動減衰体182は、伝達部材60の外周面の周方向に対して複数個配列されている。慣性体183は、振動減衰体182を介して伝達部材60に対して支持されている。慣性体183において、振動減衰体182が相対していない部位では伝達部材60とは空隙を有して相対配置されている。この結果、軸継手全体の捩り剛性を維持したまま振動吸収性を上げることができる。
【0055】
<第4実施形態>
図11~
図13に示す第4実施形態の軸継手10は、第1実施形態と同様に、伝達部材60に取付けられているとともに、さらに、駆動ハブ40及び従動ハブ50に動吸振器20、30を備えている。
【0056】
以下、動吸振器20及び動吸振器30について説明する。
図11、
図13に示すように動吸振器20は、駆動ハブ40に対して取付けられている。
図12に示すように、動吸振器20は、取付体21と、振動減衰体22と、慣性体23とを備えている。動吸振器20は、軸継手10のうち、駆動ハブ40が位置する側の振動を抑制するべく、例えば、定点理論、或いは最適同調法により、その質量等のパラメータが設定されている。本実施形態では、動吸振器70は第1動吸振器に相当し、動吸振器20は、第2動吸振器に相当する。
【0057】
取付体21はアルミ等の金属製であって、円形リング状に形成されているとともに、一定の厚みを有して剛性を備えている。取付体21は、取付部材に相当する。取付体21は、駆動ハブ40の外端面42に対して、等ピッチに配置された取付ボルト25により、固定されている。外端面42は、軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に相当する。取付体21は、中央部に円形の挿入孔21aを有している。挿入孔21aは、駆動軸12の径よりも内径が大きくされていることにより、挿入された駆動軸12と干渉しないようにされている。取付体21は、挿入孔21aから径方向に延びたスリット24により、周方向に沿って形成された部位の一部が切れている。
【0058】
振動減衰体22は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材により円形リング状に形成されて一定の厚みを有している。振動減衰体22は、単数の第2弾性部材に相当する。振動減衰体22は、取付体21に対して接着剤により固定されている。振動減衰体22は、中央部に円形の挿入孔22aを有している。挿入孔22aは、挿入孔21aと同径であって、同軸に配置されており、駆動軸12の径よりも内径が大きくされていることにより、駆動軸12が干渉しないように挿入されている。なお、挿入孔22aは,駆動軸12の径よりも内径が大きくされていればよく、挿入孔21aと同径である必要はない。
【0059】
振動減衰体22の挿入孔22aの内周面には、該内周面が取付ボルト25の頭部に接触しないように凹部27が形成されている。振動減衰体22は、径方向に延びたスリット26により周方向に沿って形成された部位の一部が切れている。
【0060】
図12、
図13に示すように慣性体23は、ステンレス、鉄等の金属製であって、円板状の板部28と、板部28の周縁部に一体に連結された円筒状の筒部29とを備えている。板部28の内面は、振動減衰体22の取付面22bに対して接着剤により固定されている。板部28は、被支持部に相当する。板部28の中央部には、円形の挿入孔28aが形成されている。挿入孔28aは、挿入孔21aと同径であって、同軸に配置されており、駆動軸12の径よりも内径が大きくされていることにより、駆動軸12が干渉しないように挿入される。なお、挿入孔28aは,駆動軸12の径よりも内径が大きくされていればよく、挿入孔21aと同径である必要はない。挿入孔28aの内周面には、該内周面が取付ボルト25の頭部に接触しないように凹部28bが形成されている。
【0061】
本実施形態では、動吸振器70の慣性体73は第1慣性体に相当し、慣性体23は第2慣性体に相当する。動吸振器70の振動減衰体72は、第1弾性部材に相当する。
図13に示すように筒部29は、駆動ハブ40と同軸となるように、かつ、駆動ハブ40の外周面全体を覆うように配置されている。筒部29は、覆い部に相当する。筒部29には、内周面と外周面との間を貫通する透孔29aが形成され、前記連結ネジ48が挿通可能となっている。
【0062】
図13に示すように動吸振器30は、従動ハブ50に対して取付けられている。
図12に示すように、動吸振器30は、取付体31と、振動減衰体32と、慣性体33とを備えている。動吸振器30は、軸継手10のうち、従動ハブ50が位置する側の振動を抑制するべく、例えば、定点理論、或いは最適同調法により、その質量等のパラメータが設定されている。動吸振器30は、第2動吸振器に相当する。
【0063】
本実施形態では、駆動ハブ40を含めた駆動ハブ側の各種部品は、従動ハブ50を含めた従動ハブ側の各種部品と同等のものを採用しているため、動吸振器30の取付体31、振動減衰体32及び慣性体33の大きさは、動吸振器20の取付体21、振動減衰体22及び慣性体23と同じ大きさ及び重さを有している。
【0064】
取付体31はアルミ等の金属製であって、円形リング状に形成されているとともに、一定の厚みを有して剛性を備えている。取付体31は、取付部材に相当する。取付体31は、従動ハブ50の外端面52に対して等ピッチに配置された取付ボルト35により、従動ハブ50の外端面52に対して固定されている。外端面52は、軸継手全体の捩り剛性に関与しない非関与部位に相当する。取付体31は中央部に円形の挿入孔31aを有している。挿入孔31aは、従動軸14の径よりも内径が大きくされていることにより、挿入された従動軸14と干渉しないようにされている。取付体31は、挿入孔31aから径方向に延びたスリット34により、周方向に沿って形成された部位の一部が切れている。
【0065】
振動減衰体32は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材により円形リング状に形成されて一定の厚みを有している。振動減衰体32は、単数の第2弾性部材に相当する。振動減衰体32は、取付体31に対して接着剤により固定されている。振動減衰体32は、中央部に円形の挿入孔32aを有している。挿入孔32aは、挿入孔31aと同径であって、同軸に配置されており、従動軸14の径よりも内径が大きくされていることにより、従動軸14が干渉しないように挿入されている。なお、挿入孔32aは,従動軸14の径よりも内径が大きくされていればよく、挿入孔31aと同径である必要はない。振動減衰体32の挿入孔32aの内周面には、該内周面が取付ボルト35の頭部に接触しないように凹部27が形成されている。振動減衰体32は、径方向に延びたスリット36により周方向に沿って形成された部位の一部が切れている。
【0066】
図12、
図13に示すように慣性体33は、ステンレス、鉄等の金属製であって、円板状の板部38と、板部38の周縁部に一体に連結された円筒状の筒部39とを備えている。板部38の内面は、振動減衰体32の取付面32bに対して接着剤により固定されている。板部38は、被支持部に相当する。板部38の中央部には、挿入孔38aが形成されている。挿入孔38aは、挿入孔31aと同径であって、同軸に配置されており、従動軸14の径よりも内径が大きくされていることにより、従動軸14が干渉しないように挿入されている。なお、挿入孔38aは,従動軸14の径よりも内径が大きくされていればよく、挿入孔31aと同径である必要はない。挿入孔38aの内周面には、該内周面が取付ボルト35の頭部に接触しないように凹部38bが形成されている。
【0067】
図13に示すように筒部39は、従動ハブ50と同軸となるように、かつ、従動ハブ50の外周面全体を覆うように配置されている。筒部39には、内周面と外周面間を貫通する透孔39aが形成され、前記連結ネジ58が挿通可能となっている。
【0068】
(6)本実施形態では、第1実施形態の効果の他に、駆動ハブ40に連結された動吸振器20は、慣性体23により、駆動ハブ40での振動及び振幅に比例した反力を与えて、駆動ハブ40の振動を吸収する。また、動吸振器20の振動減衰体22及は、自身の減衰性能により駆動ハブ40の振動を減衰する。
【0069】
(7)一方、従動ハブ50に連結された動吸振器30は、慣性体33により、従動ハブ50での振動及び振幅に比例した反力を与えることにより、従動ハブ50の振動を吸収する。また、動吸振器30の振動減衰体32は、自身の減衰性能により従動ハブ50の振動を減衰する。
【0070】
(8)本実施形態では、軸継手10の駆動ハブ40、従動ハブ50に対して、それぞれ動吸振器20、30が取付けられている。このため、本実施形態の軸継手10は、同じ負荷慣性モーメント、すなわち、同じ慣性モーメント比においては、一方の動吸振器のみが軸継手10の駆動ハブ40、従動ハブ50のいずれか一方のハブに取付けられたものに比して、駆動側の変化に対する応答性、例えば、モータ指令に対する応答性を高くすることができる。
【0071】
また、ロバスト性を高くすることができ、トルク伝達系に関するパラメータの変化に強くすることも可能となる。
また、本実施形態では、動吸振器20、30の慣性体23、33の筒部29、39は、駆動ハブ40及び従動ハブ50を覆うように配置されているため、慣性体23、33の全体を円板状に形成する場合に比して、半径方向の大きさを小さくすることができ、小型化することができる。
【0072】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
前記実施形態では、軸継手は、ダブルディスクタイプとしたが、シングルディスクタイプとしてもよい。また、軸継手は、ディスクタイプの軸継手に限定されず、他のタイプの撓み軸継手、或いはリジッドカップリングに代えることも可能である。
【0073】
第2実施形態では、覆い部174、175をそれぞれ設けたが、覆い部部174のみ、或いは覆い部175のみを設けてもよい。
第2実施形態では、覆い部174、175は伝達部材60に相対した駆動ハブ40及び従動ハブ50の端部を覆うようにしたが、駆動ハブ40及び従動ハブ50の外周面の全体をそれぞれ覆うようにしてもよい。
【0074】
第4実施形態では、動吸振器70の他に軸継手10の駆動ハブ40、従動ハブ50に対して、それぞれ動吸振器20、30が取付けたが、動吸振器70の他にいずれか一方のハブに対して動吸振器を取付けてもよい。
【0075】
第4実施形態では、振動減衰体22、32は、単数の第2弾性部材としたが、複数個設けてもよい。
前記伝達部材60の形状は、円柱状としたが、円柱状に限定するものではない。例えば、円錐台等のように、平面図形をその平面上の一直線を軸として、そのまわりに一回転してできる立体の形状である回転体の形状を有していればよい。
【0076】
前記実施形態では、動吸振器を伝達部材60の外周面に一体に連結するようにしたが、伝達部材60の端面に対して一体に連結してもよい。