IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社古川リサーチオフィスの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】心拍数低下剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20221024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P9/00
A61P9/04
A61P11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020554965
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042924
(87)【国際公開番号】W WO2020091014
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2018207116
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515044263
【氏名又は名称】株式会社古川リサーチオフィス
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】古川 令
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-246280(JP,A)
【文献】特表2000-516937(JP,A)
【文献】特開2012-126683(JP,A)
【文献】特許第6852920(JP,B2)
【文献】MARTYNOV, A. I. et al.,[Fifteen years experience of the use of magnesium preparations in patients with mitral valve prolapse],[Kardiologiia](英語表記、原文ロシア語),2011年,Vol. 51, No. 6,pp. 60-65,MEDLINE, [online], STN, 検索日 2019. 12. 23, PubMed, PMID: 21878073
【文献】佐藤信紘 ほか,飲酒の肝血流、肝酸素消費、肝チトクロームのredoxレベルに及ぼす影響について,肝臓,1981年,Vol. 22, No. 4,pp. 546-551
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/513
A61P 9/00
A61P 9/04
A61P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロト酸又はその塩(ただし、オロト酸マグネシウムを除く)を有効成分として含有する心拍数低下剤。
【請求項2】
オロト酸又はその塩(ただし、オロト酸マグネシウムを除く)を有効成分として含有する心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤。
【請求項3】
心拍数亢進による動悸若しくは息切れが、運動、加齢、心肺機能の低下又は飲酒によって生じるものである請求項2に記載の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤。
【請求項4】
オロト酸又はその塩(ただし、オロト酸マグネシウムを除く)を有効成分とする運動時の心拍数上昇抑制剤。
【請求項5】
口腔内投与である請求項1~4のいずれか記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オロト酸又はその塩(以下、「オロト酸類」ということがある。)を有効成分として含有する心拍数低下剤、心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤、及び運動時の心拍数上昇抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オロト酸(オロット酸、ウラシル6-カルボン酸、オロチン酸、又はビタミンB13とも呼ばれる)は、ピリミジンヌクレオチド生合成系における主要中間物質であり、ジヒドロオロト酸からジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼによって誘導され、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(PRPP)によってオロチジル酸となる。オロチジル酸は、さらに速やかにウリジン一リン酸(UMP)に変換され、その後ウリジン三リン酸、シチジン三リン酸等のピリミジンヌクレオチドが合成される。
【0003】
近年、オロト酸の生理作用に関する研究が進められている。例えば、オロト酸が血中尿酸値低下作用を有すること(特許文献1)、オロト酸が持久力向上作用を有すること(特許文献2、3)、オロト酸が酸素消費量及びエネルギー消費量を低減させる作用を有すること(特許文献3)、交感神経を活性化し、眠気を改善し、体温を上昇させ、脂肪の分解を促進し又は集中力を維持する作用を有すること(特許文献4)等が知られている。
【0004】
一方、心拍数は、血圧、呼吸数、体温、意識と並んで重要なバイタルサインの1つであるにもかかわらず、これまであまり関心がもたれてこなかったが、心血管疾患の場合に高心拍数ほど予後が不良であること、あるいは心不全や虚血性心疾患等で心拍数が下がれば予後が改善することから、心拍数が心血管疾患の重要なバイオマーカーの1つとして注目されるようになってきた。
【0005】
他方、活性成分として2-[N-(2,6-ジクロロフェニル)-N-アリルアミノ]-2-イミダゾリン又はその酸付加塩を含有する心拍数低下剤が知られている(特許文献5)。また、高血圧や心房細動患者の心拍数コントロール薬として、β受容体遮断薬が用いられていることも知られている。さらに、獣乳カゼインを加水分解して得られる、遊離アミノ酸及びペプチドを含む平均鎖長がアミノ酸残基数として2.1以下のカゼイン加水分解物、又は該加水分解物に含まれる遊離アミノ酸及びペプチド混合物を有効成分として含有する経口投与用の運動時の心拍数上昇抑制組成物が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-98896号公報
【文献】特開2011-136907号公報
【文献】特開2012-246280号公報
【文献】特開2012-126683号公報
【文献】特開昭55-15481号公報
【文献】国際公開2016-182053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在広く使われているβ受容体遮断薬は、心拍数を低下させる効果が大きいものの、副作用も強く、その使用には投与する患者の状態を見て慎重に行う必要があった。また、運動時の心拍数上昇抑制剤としては、特許文献6に記載されている天然物の加水分解物しか知られておらず、その組成を調整するのが困難であるという問題があった。本発明は、そのような事情にかんがみ、より副作用の少ない心拍数低下剤又は新規の運動時の心拍数上昇抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、交感神経を活性化するオロト酸類が、心臓においては、その心拍数を低下させる作用があること、及び運動時において通常であれば心拍数が上昇して運動するのがつらいと感じる場合においても、オロト酸類を服用することで心拍数の上昇が抑制され楽に運動を行うことができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の事項により特定される次のとおりのものである。
(1)オロト酸又はその塩を有効成分として含有する心拍数低下剤。
(2)オロト酸又はその塩を有効成分として含有する心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤。
(3)心拍数亢進による動悸又は息切れが、運動、加齢、心肺機能の低下又は飲酒によって生じるものである上記(2)に記載の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤。
(4)オロト酸又はその塩を有効成分とする運動時の心拍数上昇抑制剤。
(5)口腔内投与である上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の剤。
本発明の他の態様として以下のものを挙げることができる。
(6)オロト酸又はその塩の有効量を対象に投与する心拍数の低下方法。
(7)心拍数低下のために使用するオロト酸又はその塩。
(8)心拍数低下剤を製造するためのオロト酸又はその塩の使用。
(9)オロト酸又はその塩の有効量を対象に投与する心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善方法。
(10)心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善のために使用するオロト酸又はその塩。
(11)心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤を製造するためのオロト酸又はその塩の使用。
(12)オロト酸又はその塩の有効量を対象に投与する運動時の心拍数の上昇抑制方法。
(13)運動時の心拍数の上昇を抑制するために使用するオロト酸又はその塩。
(14)運動時の心拍数上昇抑制剤を製造するためのオロト酸又はその塩の使用。
(15)口腔内に投与する上記(1)に記載の心拍数低下剤、上記(2)に記載の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤、あるいは上記(4)に記載の心拍数上昇抑制剤の投与方法。
(16)上記(1)に記載の心拍数低下剤、上記(2)に記載の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤、あるいは上記(4)に記載の心拍数上昇抑制剤を口腔内投与するために使用するオロト酸又はその塩。
(17)上記(1)に記載の心拍数低下剤、上記(2)に記載の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤、あるいは上記(4)に記載の心拍数上昇抑制剤を口腔内投与剤として製造するためのオロト酸又はその塩の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明の心拍数低下剤を用いることにより、安全で、効率よく心拍数を低下させることができ、心不全や虚血性心疾患の予後の改善を図ることができる。
本発明の心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の予防又は改善剤を用いることにより、運動、加齢、心肺機能の低下、飲酒等によって生じる動悸、息切れ、疲労感等を引き起こさない、症状の発症を軽くすることができる、又はそのような症状を改善することができる。
また、本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤を用いることにより、運動時において心拍数が上昇して通常運動するのがつらいと感じる場合であっても、心拍数の上昇が抑制され、楽に運動を継続することができる。
また、心拍数は自律神経のバランスで調整されており、心拍数の低下は、一般的に副交感神経が優位に働くときに生じる現象であることから、副交感神経が優位になったときに生じる他の現象、例えば、胃酸、唾液の分泌の促進、腸の蠕動の促進、睡眠導入等にも効果が期待でき、消化剤、便秘薬、睡眠導入剤等として効果を発揮することができる可能性がある。
また、ストレスや緊張など交感神経が優位な症状の緩和にも効果がある可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の心拍数低下剤、心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防又は改善剤、あるいは運動時の心拍数上昇抑制剤(以下、「心拍数低下剤等」という。)としては、オロト酸又はその塩を有効成分として含有する剤であれば特に制限されない。上記オロト酸は、ウラシル-6-カルボン酸とも呼ばれるが、IUPAC命名法によると「1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-4-ピリミジンカルボン酸」で表される複素芳香環化合物の一種である。なお、本発明において心拍数低下剤とは、心拍数を低下させる剤に加えて、前記剤を摂取しなかったのであれば心拍数が上昇するところ、前記剤を摂取した場合にはその上昇を抑える(現状を維持する)又は少なくする(上昇はするが、摂取しなった場合の上昇分よりは軽減される)ことができる剤も含まれる。
また、本発明において運動時の心拍数上昇抑制剤とは、該剤を非摂取して運動を行った場合の平常時の心拍数からの増加分に比して、該剤を摂取して運動を行った場合の平常時の心拍数からの増加分を軽減できる剤である。
【0012】
上記オロト酸は、例えば、オロト酸生産能を有するコリネバクテリウム属細菌を培養し、培養物中にオロト酸を生成蓄積させ、これを採取する製造法(特公平7-10235号参照)等、微生物を用いた発酵法により、培養液中に生成蓄積させることが可能であり、上記培養物から、すでに公知の通常の精製手段、例えば、沈殿法、イオン交換樹脂や活性炭等によるクロマトグラフィー法などの分離精製法を用いることにより精製、採取することができる。また、公知の化学合成法等を用いて調製することもできる。さらに市販品を用いることもできる。
【0013】
オロト酸類としては、オロト酸フリー体(遊離体)やオロト酸の塩が挙げられるが、オロト酸フリー体(遊離体)が好ましい。
オロト酸の塩としては、例えば酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α-ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩としては、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩が挙げられる。
【0014】
本発明の心拍数低下剤等としては、オロト酸又はその塩をそのまま投与することも可能であるが、必要に応じ担体等と一緒に混合し、医薬品や飲食品・サプリメントの各種組成物として提供することが好ましい。
上記医薬品として提供されるオロト酸の塩としては、医薬的に許容される塩であれば特に限定されないが、オロト酸塩を水に溶解した場合に、水溶液が中性から弱酸性を示し、保存中に沈殿や析出するおそれが少ないコリン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩を挙げることができ、飲料の場合にはこれら水溶性の塩が好ましい。また、カプセルや錠剤として摂取する場合には水溶性である必要はないことから、難溶性のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等の金属塩を挙げることができる。また、オロト酸はカルニチンと塩を形成し可溶化することができ、カルニチン塩(L-カルニチンオロチン酸)は溶解性がよいが、水溶液は低pHとなるため、必要に応じてグアノシン等のプリン塩基や塩基性アミノ酸を添加することによりpHを弱酸性にして使用することができる。
【0015】
本発明の心拍数低下剤等を医薬品として提供する場合は、オロト酸又はその塩をそのままで、又は医薬上許容され、かつ剤形に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、抗酸化剤、細菌抑制剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口若しくは非経口的に、全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。
【0016】
例えば、経口投与に適当なシロップ剤等の液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して、製剤化することができる。
【0017】
また、経口投与に適当な、錠剤、散剤、顆粒剤等の場合には、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末などの賦形剤;澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコン油等の滑沢剤;ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤;脂肪酸エステル等の界面活性剤;グリセリン等の可塑剤などを添加して、製剤化することができる。
【0018】
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0019】
製剤の投与形態は、経口投与、又は静脈内、腹膜内若しくは皮下投与等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与がより好ましい。投与する剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、縣濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)、吸入剤、経皮・経粘膜吸収剤、軟膏剤、貼付剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤がより好ましく、中でも口腔内投与剤が好ましい。
【0020】
口腔内投与する部位としては、口唇、可動口腔粘膜、非可動口腔粘膜、歯等が挙げられる。
口唇とは上唇と下唇に分けられ、口腔の開口部を取り巻く部位である。可動口腔粘膜とは体性神経により可動する口腔内の粘膜であり、例えば、口唇~鼻唇溝又は口唇~オトガイ隆起の裏側の粘膜、頬粘膜、舌等が含まれる。
また、非可動口腔粘膜とは体性神経によって動かすことができない固定された口腔内の粘膜であり、例えば、歯肉、硬口蓋又は軟口蓋の粘膜、口腔底の粘膜等が含まれる。
また、歯とは顎に植立している硬質の構造物であり、主に食べることにおいて重要な役割を果たすものをいう。
【0021】
本発明の心拍数低下剤等を口腔内投与剤として製剤した場合には、公知の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又はゲル剤等の含嗽用製剤;軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、粘稠剤、粘着剤、顆粒剤、細粒剤又は散剤等の塗布用製剤;テープ剤、パップ剤、フィルム剤等の貼付用製剤;外用エアゾールスプレー剤、ポンプスプレー剤等の噴霧剤;トローチ剤、タブレット剤、バッカル剤、舌下剤、又はガム剤など、口腔内の口唇、可動口腔粘膜、非可動口腔粘膜又は歯に有効成分が比較的長時間にわたって滞留する剤形とすることができる。
【0022】
溶液剤、懸濁剤、乳濁剤、クリーム剤、ゲル剤、粘稠剤については、水、水と無制限の比率で混合可能な水系溶媒及びそれらの混合溶媒を連続層とした剤形であり、外観は透明である場合と半透明若しくは不透明の場合がある。通常、流動性を有するが、クリーム剤や粘稠剤、ゲル剤の一部は保形性を有するものも含まれる。これらの剤は公知の成分を用いて調製することでき、そのような成分として、例えば、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、アルキル硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤、ソルビタン系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、ツィーン系界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プルロニック型界面活性剤、アルカノールアミド等のノニオン界面活性剤、レシチン、サポニン等の自然界に存在する界面活性剤などの界面活性剤;植物油、動物油、硬化油等の油脂類;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素油;ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ミツロウ、ラノリン及びその誘導体等のロウ類;モノアルキル脂肪酸エステル類;多価アルコール脂肪酸エステル類;エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等の高級アルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール等のその他のアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール重合体類;ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリトリトール等の糖アルコール類;コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン等のムコ多糖類;乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩、コラーゲン類等の有機化合物;植物抽出物等の保湿剤;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、アカシア、カラギーナン、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、グアーガム、寒天、アルギン酸類、コラーゲン加水分解物、ゼラチン、カゼイン蛋白質等の天然系高分子類、ジェランガム、キサンタンガム等の微生物産生高分子類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等の合成系高分子類、ステアリン酸アルミニウムゲル、無水ケイ酸、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系増粘剤などの増粘剤(ゲル化剤も含む)や分散剤などが挙げられ、加えて、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネニルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料;サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤;パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の防腐剤;青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等の着色剤(濁剤を含む);クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、これらの化学的に可能な塩、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;必要に応じて他の薬効成分なども配合することができる。
【0023】
顆粒剤、細粒剤及び散剤については粉状の固形剤であり、トローチ剤、タブレット剤、バッカル剤及び舌下剤については塊状の固形剤である。前記の顆粒剤、細粒剤及び散剤は、単に粉末形状の物質を混合することで、又は造粒工程等により所定の粒度とすることで調製することができる。前記の溶液剤、分散剤、懸濁剤等をスプレードライ等により乾燥させることにより調製することもできる。これらの剤形の調製時には、必要に応じ、賦形剤、崩壊剤、結合剤等が配合される。また、口中で溶解させて使用することから、必要に応じて甘味剤、矯味料や香味料を配合することができる。賦形剤としては、例えば、白糖、乳糖、マンニトール、結晶セルロース、デンプン、アルギン酸、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、結晶セルロース等のセルロース誘導体、デンプンなどが挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、アカシア、ゼラチン、デキストリン、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。また、トローチ剤、タブレット剤、バッカル剤及び舌下剤については、粉状原料を混合し造粒加工し調製したものや、前記の顆粒剤、細粒剤や散剤と同様な方法で調製したものを用い、所定の形状に成型することにより調製することができる。口中での咀嚼・溶解使用を妨げない範囲であれば成型後に成型物の表面をコーティング処理することもできる。
【0024】
軟膏剤については、ラノリン類、プラスチベース、白色ワセリン、パラフィン、ミツロウ類、吸水軟膏、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、グリセロゼラチン、植物油、カカオ脂等と混合することにより調製することができる。
【0025】
テープ剤、パップ剤については、支持体と塗布体等から構成されるシート状の剤形である。テープ剤やパップ剤に使用される物質を支持体として使用することができるが、口中で使用することから、使用中に溶解したり、分解・分散したりすることにより形状が最終的に消失する物質を選択することが好ましく、そのような物質として、例えば、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル等が挙げられる。
【0026】
本発明の心拍数低下剤は、その作用機序は明らかではないが、心房の他の機能を阻害することなく心拍数を低下させることができることから、頻脈性心房細動による動悸・息切れ等の症状の改善、心不全・頻拍誘発心筋症の予防、慢性心不全の予後の改善とQOLの改善、高血圧症の治療、心筋虚血による症状のコントロール、急性心筋梗塞や死亡といった重大な心血管イベントの予防等に有効であるが、特に、運動、加齢、心肺機能の低下、飲酒等によって生じる心拍数亢進による動悸、息切れ若しくは疲労感の、予防及び又は改善剤として有効である。
【0027】
「心拍数の亢進」とは、ある時点とその後のある時点を比較した場合に、ある時点の心拍数よりその後のある時点の心拍数が増加した場合を表し、相対的なものであり、具体的には、運動によるものであれば、運動前よりも運動後において心拍数が増加する場合であり、加齢によるものであれば、同じ状態における心拍数が過去に比べて過去から時間が経過した時点での心拍数が増加する場合であり、心肺機能の低下によるものであれば、心肺機能が以前に比べて低下した場合に以前に比べて心肺機能が低下した時点において心拍数が増加する場合であり、飲酒によるものであれば、飲酒前に比べて飲酒後において心拍数が増加する場合等を例示することができる。
【0028】
本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤は、ウォーキング、ジョギング、ランニング、マラソン、水泳、サイクリング、エアロビクス、ボート、野球、テニス、卓球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ダンス、アーチェリー、サイクリング、自転車レース、スキー、スケート、スケートボード、トレッキング、登山、ダイビング、スカイダイビング、オートバイレース、自転車レース等の運動時又は競技時において、運動による身体への負荷に伴う心拍数の上昇を抑制する剤である。
【0029】
上記抑制剤を服用する対象となるのは、健康増進や生活習慣病の予防や改善を目的に又は趣味的に運動に取組む人(以下、「一般運動者」という。)やアスリートと呼ばれる競技運動者である。また、一般運動者の中には、現時点では、特に運動を習慣化していなくても、習慣化したい、習慣化すべきと考えている潜在的運動訴求者(以下、「運動者予備群」という。)も含まれる。
【0030】
運動時の身体的負荷を表す指標として、運動強度があり、例えば心拍数を用いた下記カルボーネンの式より求めることができる。
運動強度(%)=(運動時の心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100
最大心拍数は、個別に測定することも可能であるが、下記式によって推定値として求めることができる。
最大心拍数=220-年齢
また、高齢者の場合には以下の式でも求めることができる。
最大心拍数(高齢者用)=207-(年齢×0.7)
【0031】
上記運動強度は、0%で安静時、20%未満で微軽度、20~39%で軽度、40~59%で中等度、60~84%で強度、85%以上で極強度となる(慶応義塾大学スポーツ医学研究センター紀要、p33-39、1999年参照)。
これを主観的に表現すると、40%未満では軽めの運動となり、40%以上80%未満ではややきつめの運動から非常にきつめの運動となる、80%以上は、限界に近い運動を示すことになる。
【0032】
一般運動者又は運動者予備群においては、運動時の心拍数の上昇に伴う苦しさが運動を継続的に行うことへの障害となることがある。特に高齢者になるほど、脈拍数の増加に対する運動強度の感受性が高くなり、低い心拍数で運動がきついと感じるようになる(運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書 平成25年3月 厚生労働省参照)。したがって、本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤を運動前に服用することによって、一般運動者の場合、高齢になっても引続き運動習慣を楽に維持することができ、運動予備群の場合には、新たに又は再度運動を行うきっかけになる。
【0033】
また、リハビリが必要な人にとっても、本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤をリハビリ前に服用することにより、リハビリ時の身体的な負荷による心拍数上昇に伴う苦しさを軽減することができる。
【0034】
競技者にとっては、特に長時間にわたり身体的負荷により心拍数が上昇した状態が継続するような競技の場合には、その上昇の程度を抑制することができれば、持久力の向上につながる可能性がある。
【0035】
本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤を摂取する場合の運動強度としては、特に制限はなく、0%を超える運動強度であればよく、特に、80%以下の運動強度の運動時に摂取するのが好ましく、60%以下の運動強度の運動時に摂取するのがより好ましく、さらに、10~40%の運動強度の運動時に摂取するのが好ましい。
【0036】
また、運動時間には特に制限はなく、数秒から数時間の運動に、本発明の運動時の心拍数上昇抑制剤を適用することができるが、少なくとも5分~10分程度継続して行う運動に好適に用いることができる。
【0037】
本発明の心拍数低下剤等は、定期的に摂取するのが好ましいが、心拍数の亢進が予測される運動、飲酒等を行う場合には、その3時間前以内に摂取するのが好ましく、2時間前以内に摂取するのがさらに好ましい。
また、運動を30分以上、好ましくは1時間以上行う場合には、運動前に摂取するのみならず、運動中にも摂取することができ、運動終了後にも摂取することができる。
【0038】
本発明の心拍数低下剤等を医薬品として用いる場合の投与量としては、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度又は投与方法等に応じて適宜決定することができるが、通常、成人1日当たり、オロト酸又はその塩として、10mg~10g、好ましくは50mg~5g、より好ましくは100mg~1gとなる量を、1日1回ないし数回投与する。
【0039】
本発明の心拍数低下剤等を医薬品として提供する場合、有効成分であるオロト酸又はその塩の含有量は、医薬品の種類や当該医薬品の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、通常0.01~100質量%、好ましくは0.05~100質量%、より好ましくは0.1~100質量%である。
【0040】
本発明の心拍数低下剤等は、また、飲食品又はサプリメントの添加剤として飲食品又はサプリメントに添加してもよい。この場合、添加量は対象飲食品又はサプリメントの一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコスト等を考慮して適宜設定すればよいが、通常有効成分であるオロト酸又はその塩の飲食品又はサプリメント中の含有量が0.01~100質量%、好ましくは0.05~100質量%、より好ましくは0.1~100質量%となるように添加する。
【0041】
本発明の心拍数低下剤等を飲食品又はサプリメントの添加剤として用いる場合、本発明の効果を損なわない限り、他の成分として各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、クエン酸や酢酸等の有機酸塩などを含有してもよい。また、添加される飲食品又はサプリメントの種類に応じて、飲食品又はサプリメントにおいて許容され、通常使用される添加剤、例えば、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、デキストリン、澱粉等の賦形剤のほか、着色料、香料、苦味料、緩衝剤、増粘安定剤、ゲル化剤、安定剤、ガムベース、結合剤、希釈剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、酸化防止剤、保存料、防腐剤、防かび剤、発色剤、漂白剤、光沢剤、酵素、調味料、香辛料抽出物等を含有してもよい。
【0042】
本発明の心拍数低下剤等の添加の対象となる飲食品としては、茶飲料、ビール系飲料、コーヒー、ミネラルウォーター、乳飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調製用粉末を含む);飯類、麺類、パン類、及びパスタ類等の炭水化物含有品;クッキーやケーキ等の洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、プリン、ゼリー等の冷菓や氷菓などの各種菓子類;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料などがあげられる。
【0043】
本発明の心拍数低下剤等の添加の対象となるサプリメントとしては、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品等のいわゆる健康食品と呼ばれているものであれば特に制限されないが、例えば、体に必要な、ビタミン(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、マルチビタミン等)、ミネラル(例えば鉄、亜鉛等)、アミノ酸又は食物繊維、DHA、EPA等を補うベースサプリメント、イソフラボン、ローヤルゼリー、プロポリス、セサミン、カテキン等を含有する健康維持や美容等のために利用するヘルスサプリメント、ウコン、マカ、ブルーベリー、グルコサミン等を含有する体調の回復のために利用するオプショナルサプリメントなどが挙げられる。
【0044】
本発明の心拍数低下剤等を添加してなる飲食品又はサプリメントの形状は、哺乳動物が摂取可能であり、かつ食用に適した形状であれば特に制限はないが、例えば、固形状、液状、半液体状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状、ゼリー状等が挙げられる。
【0045】
なお、本発明の心拍数低下剤等を添加してなる飲食品は、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品を包含する。中でも、心拍数が低下することによって頻脈性心房細動による動悸・息切れ等の症状の改善、心不全・頻拍誘発心筋症の予防、慢性心不全の予後の改善とQOLの改善、高血圧症の治療、心筋虚血による症状のコントロール、急性心筋梗塞や死亡といった重大な心血管イベントの予防などを期待する消費者に適した食品、すなわち特定保健用食品として提供することが好ましい。
【0046】
また、本発明の心拍数低下剤等は発酵食品の素材として用いることができる。
本発明の心拍数低下剤等を添加してなる飲食品又はサプリメントの摂取量は、心拍数低下作用が発揮できる量であればよく、特に限定はされないが、通常、成人1日当たりの摂取量が、オロト酸又はその塩として、10mg~10g、好ましくは50mg~5g、より好ましくは100mg~1gとなる量が挙げられる。
【実施例
【0047】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【実施例1】
【0048】
オロト酸からなる錠剤を経口摂取して、経口摂取前と経口摂取後で心拍数の変化を測定した。被験者は、62歳の男性であり、健康診断でコレステロールがやや高めの指摘を受けるものの、薬の服用も既往症もなく、血圧は正常値の範囲であり、過去に血圧に問題があると診断されたことはなかった。心拍数は89~92/分程度とやや高めであり、安静時でも心拍数が86/分を下回ることはほとんどなかった。
心拍数は運動や緊張等ですぐに上昇するので、測定日は極力デスクワーク等で過ごし、数分以上椅子に座って安定した状態で測定した。
毎日ビールを2缶、焼酎ダブルを2~3杯を飲酒しており、飲酒後の心拍数は105~115/分程度(まれに120/分)に上昇し、酔いと軽い動悸を感じていた。日によっては眠気を感じることもあった。
【0049】
被験者の男性に、オロト酸200mg含有の錠剤を口腔内投与で摂取してもらい、心拍数の測定を開始した。オロト酸摂取後2時間程度から心拍数が徐々に低下し、4時間後には80/分以下となり、およそ70/分台~80/分台前半の安定した心拍数となった。オロト酸摂取前の状態と比較して摂取後の心拍数低下状態では頭の芯がすっきりする印象で、いつも感じるだるさ感は無くなった。
心拍数低下後にいつもどおりの量のビール、焼酎を飲酒したが、心拍数は90~100/分台前半程度までしか上昇せず、いつもと異なり酔いも動悸もほとんど感じなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から、オロト酸摂取により、明らかに心拍数の低下が観測され、それにより、日頃から感じていた動悸や、疲労感も改善された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の剤を用いることにより、動悸息切れの低減や心肺機能の負担低減だけでなく、リラックス効果、抗ストレス効果等も期待でき、QOLを改善できる安全な薬剤として、医療分野、サプリメント等の健康食品分野で有用である。また、運動時における心拍数の上昇を抑制できることから、一般運動者向け又は競技者向けのサプリメントとしてスポーツ分野においても有用である。