(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】マイクロRNAを抑制する変形核酸及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221024BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2020566930
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2019006626
(87)【国際公開番号】W WO2019231299
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0063047
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0064767
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チ、ソンウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウン-スク
(72)【発明者】
【氏名】ソク、ヒヨン
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/047216(WO,A1)
【文献】特表2017-502665(JP,A)
【文献】特開2017-079776(JP,A)
【文献】国際公開第2014/171526(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047097(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロRNAを抑制する変形核酸において、
前記変形核酸は、少なくとも6個以上のヌクレオチドで構成されたマイクロRNA標的サイト配列を少なくとも2個以上
繰り返して連続的に含み、
前記マイクロRNA標的サイト配列は、
1)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
3)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つで
あり、
前記
少なくとも2個以上繰り返して連続的に含まれたそれぞれのマイクロRNA標的サイト配列
間には、少なくとも1個以上の塩基が非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換されることを特徴とする、マイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項2】
前記マイクロRNAは、miR-1であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項3】
前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、5’-ACAUUCCA-3’又は5’-AAAUUCCA-3’配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項4】
前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、前記5’-ACAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含むことを特徴とする、請求項3に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項5】
前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、5’-AAAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含むことを特徴とする、請求項3に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項6】
前記マイクロRNA標的サイト配列は、マイクロRNAのシード領域(seed region)に相補的なヌクレオチドを6~8個含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項7】
前記シード領域(seed region)は、マイクロRNAの5’末端を基準として1番目から8番目の間の配列であることを特徴とする、請求項6に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項8】
前記非塩基スペーサー(abasic spacer)は、塩基を含まない非塩基リボ核酸スペーサー(rSpacer、rSp)、非塩基核酸スペーサー(dSpacer)、C3 spacer及びC6 spacerからなる群より選択される一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸。
【請求項9】
1)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
3)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つの配列を
少なくとも2個以上繰り返して連続して配列するステップ;及び
前記
少なくとも2個以上繰り返して連続して配列した
それぞれの塩基配列
間に少なくとも1個以上の塩基を非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換して連結するステップ;を含むことを特徴とする、マイクロRNAを抑制する変形核酸の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項8のうちいずれか一項に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸を試験管内(in vitro)細胞に導入させるステップを含むことを特徴とする、マイクロRNAを抑制する方法。
【請求項11】
請求項1~請求項8のうちいずれか一項に記載のマイクロRNAを抑制する変形核酸を含むことを特徴とする、遺伝子伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNAを抑制する変形核酸及びその用途に関するもので、マイクロRNAに相補的に結合してマイクロRNAを抑制する変形核酸及びその用途などに関する。
【0002】
本出願は、2018年5月31日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0063047号及び2019年5月31日に出願された大韓民国許出願第10-2019-0064767号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【0003】
【背景技術】
【0004】
RNA干渉(RNA interference)は、転写後の段階で遺伝子の発現を抑制する現象であって、これを起こすRNA素材を細胞内に導入することで人工的に遺伝子抑制を誘導して所望するターゲット遺伝子を阻害する技術として広く用いられている。このようなRNA干渉現象は、実際に細胞内ではマイクロRNA(miRNA)と呼ばれる~21個の塩基で構成された小さいRNAにより起き、マイクロRNAは、特に5’末端に位置するシード領域(seed region、positions 1-8)の塩基配列を通じて数百個のターゲット遺伝子をmRNAで認識してその発現を抑制して生物学的な機能を示す。
【0005】
具体的に、自然的に存在するRNA干渉誘導核酸であるマイクロRNAは、アルゴノートタンパク質と複合体を成した後に相補的な塩基配列を通じて標的と結合するが、このとき、動物から発見されるマイクロRNAの場合、マイクロRNAのシード領域(seed region)と呼ばれる5’末端を基準として1番目から8番目の間、最も重要には、5’末端を基準として2番目から7番目の間で最小限6個以上の連続的な塩基配列を標的mRNAと成すようになれば、その標的mRNAの発現を抑制する。上記のような形態の塩基配列が最も多く起きるため、このような標的はマイクロRNAの正規標的(canonical target)と定義し、このような形態の相補的塩基配列は、マイクロRNAの正規的な生物学的機能において非常に重要である。しかし、最近には、マイクロRNA標的を実験的にシークエンシングできるAgo HITS-CLIPのような技術により、シード領域のような正規標的認識ではないこのような規則から脱する不正規標的(noncanonical target)も多数存在することが分かるようになった。
【0006】
マイクロRNAは、標的mRNAを認識してその遺伝子の発現を阻害することで生物学的機能を示すので、マイクロRNAシード領域と相補的に配列できる塩基配列は、マイクロRNAに標的mRNAと競争しながら付くことになり、マイクロRNAにより誘導される生物学的機能を阻害する機作として応用され得る(Ebert MS et al、Nat Methods。2007 Sep;4(9):721-6)。特に、マイクロRNAのうち疾病を誘発させる機能を示す場合には、これを特異的に抑制することで治療剤として活用され得る。このようなマイクロRNAの阻害剤は、一般的に、マイクロRNAの全体配列にほとんど完璧に相補的な配列を含んでマイクロRNAに特異的に塩基配列してその機能を抑制する形態で多く用いている。しかし、このような形態は、特定マイクロRNAを抑制することはできるが、マイクロRNAが認識する正規的な標的と不正規的な標的を区別して抑制することはできず、これによって、薬物で用いる場合、生物学的に必要なマイクロRNAの機能も全て抑制するという副作用があり得る。
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、研究の末、実際にマイクロRNAで標的を認識する部分は5’末端を基準として1番目から8番目の間のシード領域、最も重要には、5’末端を基準として2番目から7番目の間の塩基のみを用いるので、このようなシード領域に相補的な配列のみを有していても十分にマイクロRNAと結合が可能であることを確認した。このように8個の核酸程度の短い塩基のみをシード領域に連続的に相補的な配列で有していると、マイクロRNAの正規標的認識のみを競争的に阻害することができるだけでなく、実際にこのような短いマイクロRNA結合サイトが数回繰り返して同一分子に存在するようになると、マイクロRNAと塩基配列において全体塩基が相補的な場合より一層強く結合できることを確認した。実際に、多くのマイクロRNAの標的mRNAでこのような短いシード標的サイトが多数3’UTRに連鎖的に存在することがAgo HITS-CLIP実験から観察された。
【0009】
したがって、上述した確認内容に基づいて本発明が解決しようとする課題は、マイクロRNAの標的認識規則によってマイクロRNAと結合するマイクロRNA標的サイトとして認識され得る短い塩基配列を2個以上含むマイクロRNAを抑制する変形核酸を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、本発明は、次のような特徴を有するマイクロRNAを抑制する変形核酸を提供する。
【0012】
【0013】
本発明は、マイクロRNAを抑制する変形核酸において、
【0014】
前記変形核酸は、少なくとも6個以上のヌクレオチドで構成されたマイクロRNA標的サイト配列を少なくとも2個以上連続して含み、
【0015】
前記マイクロRNA標的サイト配列は、
【0016】
1)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
【0017】
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
【0018】
3)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つであってもよく、
【0019】
前記マイクロRNA標的サイト配列の間には、少なくとも1個以上の塩基が非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換されることを特徴とする、マイクロRNAを抑制する変形核酸を提供する。
【0020】
また、本発明は、1)マイクロRNAで5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
【0021】
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
【0022】
3)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つの配列を連続して配列するステップ;及び
【0023】
前記連続して配列した塩基配列の間に少なくとも1個以上の塩基を非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換して連結するステップ;を含むマイクロRNAを抑制する変形核酸の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸を試験管内(in vitro)細胞に導入させるステップを含むマイクロRNAを抑制する方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸を含む遺伝子伝達システムを提供する。
【0026】
本発明の一具現例として、前記マイクロRNAは、miRNA-1であってもよい。
【0027】
本発明の他の具現例として、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、5’-ACAUUCCA-3’(anti-miR-1-seed site;配列番号1)又は5’-AAAUUCCA-3’(anti-miR-1-7G:A seed site;配列番号2)配列を含むものであってもよい。
【0028】
本発明のまた他の具現例として、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、前記5’-ACAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含むものであってもよい。
【0029】
本発明のまた他の具現例として、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、前記5’-AAAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含むものであってもよい。
【0030】
本発明のまた他の具現例として、前記マイクロRNA標的サイト配列は、マイクロRNAのシード領域(seed region)に相補的なヌクレオチドを6~8個含んでもよい。
【0031】
本発明のまた他の具現例として、前記シード領域(seed region)は、マイクロRNAの5’末端を基準として1番目から8番目の間の配列であってもよい。
【0032】
本発明のまた他の具現例として、前記非塩基スペーサー(abasic spacer)は、塩基を含まない非塩基リボ核酸スペーサー(rSpacer、rSp)、非塩基核酸スペーサー(dSpacer)、C3 spacer及びC6 spacerからなる群より選択される一つ以上であってもよく、塩基がない全てのスペーサー変形の一種であってもよい。
【0033】
【発明の効果】
【0034】
本発明によるマイクロRNAを抑制する変形核酸は、マイクロRNAのシード領域に相補的に結合する最小6個の塩基配列からなるマイクロRNA標的サイトを2個以上連続的に配列してマイクロRNAと強く結合することができ、マイクロRNA標的サイトの間に非塩基スペーサー(abasic spacer)を導入して効率的にマイクロRNAを阻害するだけでなく、変形核酸に導入された配列の境界部分で作られる塩基配列により意図せずに他のマイクロRNAやRNA結合タンパク質と結合して競争的に阻害することを阻むことができる効果がある。
【0035】
また、正規的な標的だけでなくマイクロRNAの非正規標的認識形態であるバルジ標的(nucleation bulge site)及びG:A又はG:Uウォブル(wobble)配列サイトも使用が可能なので、マイクロRNAの非正規標的認識により起きる生物学的機能のみを選択的に阻害することができると期待される。
【0036】
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1は、本発明によるマイクロRNAを抑制する変形核酸である連鎖標的マイクロRNA阻害剤の作用機作を図式化して示した図である。
【0038】
図2の(a)は、miR-1及びmiR-1の正規シード標的サイト(miR-1 seed site)を示し、これを含むルシフェラーゼレポーター(Luc-miR-1-seed)を表示した図であり、
図2の(b)は、ルシフェラーゼレポーターを用いたmiR-1の正規シード標的効率を測定した結果を示した図であり、
図2の(c)は、miR-1の正規シード標的サイトを2個含む連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-seed(2x))と対照群(anti-NT(2x))を示した図であり、
図2の(d)は、本発明による
図2の(c)のanti-miR-1-seed(2x)及びanti-NT(2x)をmiR-1に適用したときのmiR-1の活性阻害効果を確認した結果を示した図である。
【0039】
図3の(a)~
図3の(c)は、本発明による連鎖標的マイクロRNA阻害剤が心臓筋肉母細胞株であるH9c2細胞でmiR-1の正規的なシード(seed)標的サイトを抑制する効果を観察した結果を示した図である。
【0040】
図4の(a)及び
図4の(b)は、マイクロRNAがシード領域を通じて非典型的にウォブル塩基配列(G:A wobble)を形成して標的mRNAに結合できるという事実をマイクロRNAの標的結合配列であるAgo HITS-CLIPデータ分析を通じて確認した結果を示した図であり、
図4の(c)は、miR-124に対する正規シード配列サイト(canonical seed sites)と5’末端を基準として4番目のG(4G:A site)又は5番目のGを通じた非正規G:Aウォブル配列シードサイト(5G:A site)を例示した図である。
【0041】
図5(a)は、心筋梗塞患者の心臓組織で実行したAgo HITS-CLIPデータ分析を簡略に図式化した図であり、
図5(b)は、miR-1がシード領域を通じて非典型的にウォブル塩基配列(G:A wobble)を形成して標的mRNAに結合できることを確認して示した図であり、
図5の(c)は、miR-1で配列変異が当該G:A siteで起きることを確認した結果を示した図である。
【0042】
図6の(a)~
図6の(d)は、
図5で発見したmiR-1の非典型的G:Aウォブルシード標的サイトを通じてmiR-1が標的遺伝子を抑制することのできることを当該蛍光タンパク質レポーター分析を行って心臓筋肉母細胞株であるH9c2細胞から確認した結果を示した図である。
【0043】
図7の(a)及び
図7の(b)は、マイクロRNAの非正規標的認識方式であるバルジ(bulge)塩基配列に対してルシフェラーゼレポーター実験を実施してマイクロRNAの非正規的なバルジ(bulge)塩基配列を通じたマイクロRNAの標的遺伝子発現抑制をmiR-124から確認し、これを通じた抑制剤開発が可能である事実を提示しようと示した図である。
【0044】
図8の(a)~
図8の(c)は、miR-1がシード配列でG:Aウォブル配列標的抑制を通じてmiR-1での機能とは異なり心肥大症を誘導させ得ることを1次心筋細胞(primary rat cardiomyocyte)から観察した結果を示した図である。
【0045】
図9の(a)は、miR-1の非正規G:Aウォブル配列標的認識のみを阻害するための連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(2x))を示した図であり、
図9の(b)は、miR-1の非正規G:Aウォブルシード標的サイト(miR-1-7G:A site)及びこれを含むルシフェラーゼレポーター遺伝子を示した図であり、
図9の(c)は、anti-miR-1-7G:A(2x)がG:Aウォブル配列標的遺伝子を阻害するmiR-1:G7Uに対して阻害効果を示すかを確認した結果を示した図である。
【0046】
図10の(a)は、
図9での連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(2x))が心臓筋肉母細胞株(H9c2)の細胞に存在するmiR-1の非正規G:Aウォブル配列を抑制できるということをルシフェラーゼレポーター実験で確認した結果を示した図であり、
図10の(b)及び
図10の(c)は、これによる生物学的な効果としてanti-miR-1-7G:A(2x)により心臓筋肉母細胞(H9c2)のサイズが小さくなる現象を確認した結果を示した図である。
【0047】
図11の(a)は、9個のmiR-1の非正規G:Aウォブルサイトを有している連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(9x))を示した図であり、
図11の(b)は、anti-miR-1-7G:A(9x)を適用して非正規G:Aウォブルサイトによる遺伝子抑制現象を阻むことができるということをルシフェラーゼレポーター実験から確認した結果を示した図であり、
図11の(c)は、これによってH9c2細胞でPE薬物による心筋肥大誘導現象が抑制されることを確認した結果を示した図である。
【0048】
図12の(a)は、miR-1の非正規G:Aウォブルサイトの間に非塩基スペーサー変形を有している連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(9x))と非塩基スペーサー変形がない対照群(anti-miR-1-7G:A(9x)NS)の配列を示した図であり、
図12の(b)は、当該ターゲットサイトの間に連結された隣接部位の配列に結合するマイクロRNAの場合には、意図せずに連鎖標的マイクロRNA阻害剤がこれを抑制する副作用が現れるが、ターゲットサイトの間に非塩基スペーサー変形がある場合には、そうではない場合を示した図であり、
図12の(c)は、
図12の(b)をルシフェラーゼレポーター実験で証明した結果を示した図である。
【0049】
【発明を実施するための最先の形態】
【0050】
本発明は、多様な変換を加えるかさまざまな実施例を有することができ、特定実施例を図面に例示して詳細な説明で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むことと理解されなければならない。本発明を説明するにおいて関連された公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を濁すと判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0051】
【0052】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0053】
【0054】
本発明者は、既存のマイクロRNA阻害剤で阻害効果を高めようと競争的にマイクロRNAに結合できる配列を多数個配列するようになるが、このとき、導入された多重配列境界で新たに生成される塩基配列の相補性によって意図せずに他のマイクロRNAと結合し得るという副作用が現れ得る。そこで、当該配列の多重性は継続して増加させ得ると共に、境界配列により起きる副作用を解決できるマイクロRNA阻害剤の開発のために努力した結果、マイクロRNAのシード領域に相補的な配列を有したマイクロRNA標的サイトを2個以上連続的に含み、マイクロRNA標的サイトの間に塩基がないので塩基配列できない非塩基スペーサー(abasic spacer)を導入したマイクロRNAを抑制する変形核酸を発明することで、本発明を完成した。
【0055】
【0056】
本発明は、マイクロRNAを抑制する変形核酸において、
【0057】
前記変形核酸は、少なくとも6個以上のヌクレオチドで構成されたマイクロRNA標的サイト配列を少なくとも2個以上連続して含み、
【0058】
前記マイクロRNA標的サイト配列は、
【0059】
1)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
【0060】
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
【0061】
3)マイクロRNAの5’末端で2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つであってもよく、
【0062】
前記マイクロRNA標的サイト配列の間には、少なくとも1個以上の塩基が非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換されることを特徴とするマイクロRNAを抑制する変形核酸を提供する。
【0063】
【0064】
本発明において、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、5’-ACAUUCCA-3’又は5’-AAAUUCCA-3’配列を含むことができるが、前記1)~3)のうちいずれか一つに該当するマイクロRNA標的サイト配列を含む場合であれば、特に制限されない。
【0065】
【0066】
本発明において、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、前記5’-ACAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含む変形核酸を含んでもよく、5’-AAAUUCCA-3’配列を少なくとも2個以上連続して含み、前記配列の前後に非塩基スペーサー(abasic spacer)を少なくとも一つ以上含む変形核酸を含んでもよい。
【0067】
【0068】
本発明による前記マイクロRNAの種類には制限がなく、本発明の具体的な実施例によると、前記マイクロRNAはmiRNA-1であってもよい。
【0069】
【0070】
本発明において、前記マイクロRNA標的サイト配列は、少なくとも6個以上のヌクレオチドを含み、好ましくは、21個以下のヌクレオチドを含み、最も好ましくは、ヌクレオチドを6~8個含むことができるが、これに制限されない。
【0071】
マイクロRNAは、実際に5’末端で1番目から8番目の間の少なくとも6個以上の塩基配列のみを認識するので、前記1番目から8番目の間の塩基配列に相補的な配列のみを有していても十分にマイクロRNAと結合が可能であり、前記マイクロRNA標的サイト配列が6~8個のヌクレオチドを含む場合、マイクロRNAの正規標的認識のみを競争的に阻害することができる。
【0072】
本発明において、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、前記マイクロRNA標的サイト配列を少なくとも2個以上連続して含むことができ、前記マイクロRNA標的サイト配列を連続して2個以上多く含むほどよく、例えば、100個以下を含んでもよく、好ましくは、前記マイクロRNA標的サイト配列は、2個~70個、2個~50個、2個~30個、2個~9個、9個~30個、9個~50個、9個~70個を連続して含んでもよいが、これに制限されない。前記マイクロRNA標的サイト配列を1個のみ含む場合に比べて、2個連続して含む場合、マイクロRNAと一層強く結合でき、本発明の一実施例では、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸がマイクロRNA標的サイト配列を2回連続して含む場合に比べて、9回連続して含む場合、一層増加された阻害効果を示すことを確認した(実施例4-2参照)。
【0073】
前記「連続(して含む)」は、マイクロRNA標的サイト配列が変形核酸の単一鎖に線形に含まれることを意味し、マイクロRNA標的サイト配列の間に離隔して含まれてもよい。
【0074】
本発明において、前記連続して配列したマイクロRNA標的サイト配列の間に少なくとも1個以上の塩基を非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換して連結することができ、好ましくは、1個以上多く置換するほどよく、例えば、10個以下の塩基を非塩基スペーサーに置換することができるが、これに制限されない。
【0075】
マイクロRNAの場合、5’末端で1番目から8番目の間の6個~8個の塩基配列のみ合う場合にも十分に結合できるので、マイクロRNAを抑制する変形核酸に導入された配列が意図しなかった他のマイクロRNAと偶然に塩基配列して作用できるが、前記非塩基スペーサーでマイクロRNA標的サイト配列の間に1個の塩基を置換する場合、マイクロRNA標的サイト配列が結合して新しいサイト(site)を作らないようにして、マイクロRNA標的サイトに導入された配列が意図せずに他のマイクロRNAと結合することを阻むことができる。
【0076】
本発明で用語「非塩基スペーサー(abasic spacer)は、単一ヌクレオチドの代わりにその空間を維持させるための置換体であってもよく、空間を維持させることのできる形態で隣接するヌクレオチドを連結させ得るものであればいずれか一つに限定されるものではないが、好ましくは、有機化合物であってもよく、より好ましくは、リン酸基(-H2PO4)又は硫酸基(-H2PSO4)を含む(連結した)炭化水素鎖であってもよく、最も好ましくは、少なくとも炭素数が3であるアルキル基(C3 spacer)又は6であるアルキル基(C6 spacer)であってもよい。また、前記非塩基スペーサーは、非塩基(abasic)形態のヌクレオチドを含み、このような非塩基ヌクレオチド形態のスペーサーは、一般的に塩基が全くない形態の単一ヌクレオチド類似体を意味するものであって、非塩基ジオキシリボ核酸スペーサー(dSpacer)、非塩基リボ核酸スペーサー(rSpacer)を含み、包括的には、RNAをはじめとするすべての他の生体塩基と結合することのできない形態のすべての変形を意味する。本発明の具体的な実施例によると、前記非塩基スペーサーは、リボヌクレオチド(Ribo nucleotide)をバックボーンとするrSpacer分子であってもよい。
【0077】
【0078】
本発明において、マイクロRNA標的サイト配列は、マイクロRNAのシード領域の塩基配列に相補的である。
【0079】
本発明において、前記シード領域(seed region)は、マイクロRNAの5’末端を基準として1番目から8番目の間の配列を意味する。
【0080】
本発明によるマイクロRNAを抑制する変形核酸は、マイクロRNAの正規標的(canonical target)だけでなく非正規標的認識(non-canonical target recognition)形態であるバルジ標的(nucleation bulge site)及びG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列サイトも使用が可能である。
【0081】
このとき、前記非正規標的認識は、マイクロRNAが標的mRNAと結合するとき、マイクロRNAのシード領域(seed region)と正確に相補関係ではなくともマイクロRNAの標的と認識する場合を言う。
【0082】
本発明において、前記非バルジ標的は、マイクロRNAの5’末端で5番目及び6番目の塩基に相補的な塩基の間に塩基がバルジ状に押し出されたものを言うものであって、マイクロRNAの5’末端で5番目までの塩基とは全て相補関係を有し、6番目の塩基が認識する(マイクロRNAの5’末端で6番目の塩基と配列される)遺伝子は、前記マイクロRNAの5’末端で5番目の塩基と相補関係を有する塩基と直に連続される塩基ではなく、直に連続される塩基は、バルジ状に押し出し、その次に、マイクロRNAと相補関係を有する塩基がマイクロRNAの5’末端で6番目の塩基の認識する塩基になる場合を言う。
【0083】
本発明において、前記G:A又はG:Uウォブル塩基配列は、マイクロRNAとマイクロRNAが認識する標的遺伝子の塩基がA:U、G:C、C:G、U:Aの相補関係の配列外にもG:A又はG:Uの塩基配列を有することを言う。
【0084】
例えば、マイクロRNAとマイクロRNAが認識する標的遺伝子がG:Aのウォブル関係にあるとき、特定マイクロRNAの塩基:前記特定マイクロRNAが認識する標的遺伝子の塩基の配列は、G:Aであり、マイクロRNAとマイクロRNAが認識する標的遺伝子がG:Uのウォブル関係にあるとき、特定マイクロRNAの塩基:前記特定マイクロRNAが認識する標的遺伝子の塩基の配列は、G:Uである。
【0085】
また、マイクロRNAとマイクロRNAが認識する標的遺伝子がG:Aのウォブル関係にあるとき、前記特定マイクロRNAが認識する標的遺伝子:特定マイクロRNAの塩基:特定マイクロRNAを抑制する変形核酸の塩基は、A:G:Aであってもよく、マイクロRNAとマイクロRNAが認識する標的遺伝子がG:Uのウォブル関係にあるとき、前記特定マイクロRNAが認識する標的遺伝子:特定マイクロRNAの塩基:特定マイクロRNAを抑制する変形核酸の塩基は、U:G:Uであってもよい。
【0086】
【0087】
本発明において、マイクロRNAを抑制する変形核酸は、anti-sense RNA、LNA、PNA、UNA、siRNA、miRNA、shRNA、DsiRNA、lsiRNA、ss-siRNA、asiRNA、piRNA又はendo-siRNAなどの核酸及び核酸誘導体であってもよく、これに制限されない。
【0088】
また、本発明は、1)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列;
【0089】
2)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目までの塩基に相補的な配列であると共に5番目と6番目塩基の間にバルジ(bulge)を含む配列;又は
【0090】
3)マイクロRNAの5’末端から2番目から7番目まで又は3番目から8番目までの塩基に相補的な配列であると共にG:A又はG:Uウォブル(wobble)塩基配列を相補的に含む配列;からなる群より選択された一つの配列を連続して配列するステップ;及び
【0091】
前記連続して配列した塩基配列の間に少なくとも1個以上の塩基を非塩基スペーサー(abasic spacer)に置換して連結するステップ;を含むマイクロRNAを抑制する変形核酸の製造方法を提供する。
【0092】
前記マイクロRNAを抑制する変形核酸の製造方法に対しては、上述した内容を繰り返す内容であるため詳しい説明を省略する。
【0093】
また、本発明は、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸を試験管内(in vitro)細胞に導入させるステップを含むマイクロRNAを抑制する方法を提供する。
【0094】
本発明において、前記「細胞」の種類は、脊椎動物、例えば、ヒトを含めた哺乳動物(ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシなど)、鳥類(ニワトリ、ダチョウなど)、両生類(カエルなど)及び魚類、又は無脊椎動物、例えば、昆虫類(カイコ、ガ、ショウジョウバエなど)、植物、酵母のような微生物などが含まれ、好ましくは、ヒトを含めた哺乳動物であってもよいが、これに制限されない。
【0095】
本発明において、前記「導入」は、細胞に核酸を注入して細胞の遺伝形質を変異させることを言い、細胞に核酸を導入させる方法においては、特に制限がなく、例えば、リン酸カルシウムを用いた形質感染(Graham、FLなど、Virology、52:456(1973))、DEAEデキストランによる形質感染、微細注射による形質感染(Capecchi、MR、Cell、22:479(1980))、陽イオン性脂質による形質感染(Wong、TKなど、Gene、10:87(1980))、電気穿孔法(Neumann EなどEMBO J、1:841(1982))、形質導入又はトランスフェクションのように文献(Basic methods in molecular biology、Davisなど、1986及びMolecular cloning:A laboratory manual、Davisなど、1986)に記載されたように、本発明が属した技術分野で通常の知識を有した者によく公知されている方法によって行われ得る。好ましくは、トランスフェクションによることができる。トランスフェクション効率は、細胞の種類だけでなく細胞培養条件、トランスフェクション試薬などによって多くの差があり得る。
【0096】
また、本発明は、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸を含む遺伝子伝達システムを提供する。
【0097】
本発明において、前記「遺伝子伝達(gene transfer)」は、遺伝子が細胞内に運搬されることを意味し、遺伝子の細胞内浸透(transduction)と同一の意味を有することができる。組織レベルで、前記用語「遺伝子伝達」は、遺伝子の拡散(spread)と同一の意味を有することができる。また、本発明で遺伝子伝達システムは、多様な形態で製作でき、例えば、ネイキッド(naked)組換えDNA分子、プラスミド、ウイルスベクター及び前記ネイキッド組換えDNA分子又はプラスミドを内包するリポソーム又はニオソームの形態などで製作できるが、これに制限されない。
【0098】
また、本発明は、マイクロRNAを抑制する変形核酸を含む心筋肥大現象調節用組成物を提供する。本発明の具体的な実施例で、心筋細胞から心筋肥大を誘導したとき、miR-1の正規的な標的認識によって心筋細胞のサイズが減少し、G:Aウォブル配列を通じた非正規的標的認識によっては心筋肥大を誘導した細胞と類似するレベルに大きくなったことを確認した(実施例3参照)。
【0099】
本発明による前記マイクロRNAを抑制する変形核酸は、マイクロRNAに相補的に結合してマイクロRNAが標的mRNAと結合することを競争的に阻害することができ、前記マイクロRNAを抑制する変形核酸である連鎖標的マイクロRNA阻害剤の作用機作は、
図1に図式化して示した。
【0100】
本発明のまた他の実施例では、マイクロRNAがシード配列でG:Aウォブル配列を通じて標的遺伝子を抑制できることを確認し、ルシフェラーゼレポーターによるマイクロRNAの非正規的なバルジ(bulge)塩基配列標的抑制を確認した(実施例2参照)。
【0101】
本発明のまた他の実施例では、マイクロRNAがシード配列でG:Aウォブル配列標的抑制を通じて他の生物学的機能を示すことを確認した(実施例3参照)。
【0102】
本発明のまた他の実施例では、連鎖標的マイクロRNA阻害剤によるマイクロRNAの非正規的G:Aウォブル結合機能抑制効果を確認した(実施例4参照)。
【0103】
本発明のまた他の実施例では、連鎖標的マイクロRNA阻害剤でスペーサー変形導入を通じて標的サイトの間の連結配列による副作用除去効果を確認した(実施例5参照)。
【0104】
【0105】
以下、本発明の好ましい実施例及び実験例を添付図面を参照して詳しく説明する。ただし、これら実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例及び実験例によって制限されると解析してはならない。
【0106】
【0107】
実施例1.連鎖標的マイクロRNA阻害剤によるマイクロRNAの正規的シード結合機能抑制効果の確認
【0108】
【0109】
1-1.連鎖標的マイクロRNA阻害剤の製造方法
【0110】
図1に示した例として、アルゴノートタンパク質に結合されたマイクロRNAの塩基配列のうち5’末端を基準として1番目から8番目までの塩基配列である5’-UAAGGCACG-3’が当該マイクロRNA(miR-124に対する例示)のシード塩基配列として、マイクロRNAは、これを用いて標的mRNAに相補的に結合する。このとき、マイクロRNAシードと相補的に配列できる8個の短い標的塩基配列を2個以上導入してマイクロRNAを抑制する変形核酸である連鎖標的マイクロRNA阻害剤(Tamdem-target miRNA inhibitor)を製造すると、マイクロRNAシード(5’-UAAGGCACG-3’)と連鎖標的マイクロRNA阻害剤の5’-UGCCUU-3’配列が完全相補的に配列するようになり、これによって、実際の標的mRNA塩基との配列が相対的に抑制されてマイクロRNAの正規標的抑制機能が阻害される。連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、より強力で効率的な塩基配列のために当該塩基配列(5’-UGCCUU-3’)を2回以上連続的に配列し、これは、マイクロRNAシードと連鎖標的マイクロRNA阻害剤の間に一回以上の塩基配列結合を可能にする。また、連鎖的に配列した塩基配列(5’-UGCCUU-3’)を非塩基スペーサーで連結することで、当該塩基配列の境界で新たに生成される連続された配列によるオフターゲット阻害効果を基本的に阻むことができる。
【0111】
【0112】
1-2.miR-1の正規シード標的サイトに対する連鎖標的マイクロRNA阻害剤の効果の確認
【0113】
前記実施例1-1で示した連鎖標的マイクロRNA阻害剤の効果を確認するために、これをmiR-1に対して適用し、このとき、miR-1の標的遺伝子阻害効能を実験的に確認するためにルシフェラーゼレポーター実験(Luciferase reporter assay)を行った。このために、
図2の(a)に示したように、miR-1の正規シード標的サイト(miR-1 seed site)として最小基準であるmiR-1の5’末端を基準として2番目から8番目まで連続的に相補的な配列を含んだ標的サイト配列をルシフェラーゼレポーター遺伝子の3’UTRに5個連続的に配置してルシフェラーゼレポーターベクター(psi-check2、Promega社)を製作した(Luc-miR-1-seed)。
【0114】
その後、前記ルシフェラーゼレポーターベクターを用いてmiR-1の濃度変化による正規的標的シードサイト(seed site)を有している遺伝子の阻害能とともに、上記で製作したルシフェラーゼレポーターベクターの作用能を測定するために、複数の濃度(0、0.01、0.1、0.5、2.5、15nM)のmiR-1を細胞に導入させた後、ルシフェラーゼの活性でIC50(inhibitory concentration 50)を測定した。当該濃度のmiR-1は、前記方法で製作されたルシフェラーゼレポーターベクターと一緒にHeLa細胞(ATCC CCL-2)にLipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を用いて製造者のプロトコルによって細胞に伝達(co-transfection)させてその効果を調査した。このときのmiR-1は、ガイド鎖(guide strand)、パッセンジャー鎖(passenger strand)の二つの核酸配列にBioneer社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離し、前記会社で提供した方法によって二重体(duplex)で製造して用いた。HeLa細胞は、10%FBS(fetal bovine serum)、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlステップトマイシンを補充したDulbecco’s改質Eagle’s培地(Invitrogen)で培養し、トランスフェクションの実行時に抗生剤のない完全培地細胞を培養した。このようにトランスフェクションを行った後、24時間後に、Promega社のDual-luciferase reporter assay systemを用いて製造社のプロトコルにしたがってルシフェラーゼの活性を測定した。このとき、レニラルシフェラーゼ活性計測は、promega社のGlomax Luminometerを用いて最小3回以上反復実験を行い、ホタル(firefly)ルシフェラーゼの活性に基づいて標準化して計算した。
【0115】
その結果、
図2の(b)に示したように、miR-1のIC
50値は、2.2nMであることが分かり、製作したルシフェラーゼベクターを用いてmiR-1による標的遺伝子の阻害能力を正確に測定できることが分かった。
【0116】
前記実施例1-1で示した連鎖標的マイクロRNA阻害剤の効果を確認するために、その後、miR-1の正規標的なシード標的サイトを阻害するための連鎖標的マイクロRNA阻害剤であるanti-miR-1-seed(2x)を、
図2の(c)に示した配列によってBioneer社で化学的に合成した後、HPLCによって分離して製作した。このときの塩基配列及び組成は、次のとおりである(anti-miR-1-seed(2x):5’p-dTdT(rSP)ACAUUCCA(rSP)ACAUUCCA(rSP)dTdT-3’、配列番号3)。具体的に、miR-1の塩基配列(5’p-UGGAAUGUAAAGAAGUAUGUAU-3’、配列番号4)のうち、正規的な標的を認識するシード領域塩基配列は、5’-UGGAAUGU-3’であるので、連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、miR-1シード領域塩基配列と完全相補的に配列する塩基配列(5’-ACAUUCCA-3’)を2回繰り返す配列を有し、このような正規的標的配列の間は、塩基を含まない非塩基(abasic)リボ核酸であるrSpacer(rSP)で連結して、二つの標的配列が隣接しながらその境目で連続的に新たに生成され得る潜在的な標的サイトの生成を阻むことで、これによるオフターゲットを阻んだ。
【0117】
上記方法で作ったmiR-1シード(seed)標的を対象とした連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-seed)の配列は、
図2の(c)に示した。また、前記連鎖標的マイクロRNA阻害剤の5’末端と3’末端の先がexonucleaseの攻撃を受けて細胞内で分解されることを阻むために、両先端の2個の核酸はデオキシヌクレノチド(deoxynucleotide)でチミン(thymine)を合成して(dT)付けた。同時に、対照群(control)としては、カエノラブディティス・エレガンス(C.elegans)のマイクロRNAであるcel-miR-67(NT;non-targeting:5’-UCACAACCUCCUAGAAAGAGUAGA-3’、配列番号5)の正規シード標的サイトを用いて同一に対照群として連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-NT(2x))を次のような配列によって考案した(anti-NT(2c):5’p-dTdT(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)dTdT-3’、配列番号6)。連鎖標的マイクロRNA阻害剤もBioneer社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離して用いた。
【0118】
また、
図2の(b)に示したIC
50実験を通じて40%の標的遺伝子発現抑制を示す1nM濃度のmiR-1と、50nM濃度の阻害剤(anti-miR-1-seed(2x)又はanti-NT(2x))を一緒にHeLa細胞(ATCC CCL-2)にLipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を用いて製造者のプロトコルにしたがって細胞に伝達(co-transfection)させてanti-miR-1-seed(2x)のmiR-1の正規シード標的抑制を阻害する効果を調査した。
【0119】
その結果、
図2の(d)に示したように、1nMのmiR-1がトランスフェクションされて観察されたルシフェラーゼ活性値は、miR-1がトランスフェクションされない値に基づいて計算された相対的ルシフェラーゼ活性パーセント値が56.58+/-4.27であって、IC
50で予想したものと類似した~50%レベルのルシフェラーゼ活性を示した。同一濃度のmiR-1が50nMのanti-NT(2x)と一緒に導入された実験群の相対的ルシフェラーゼ活性パーセント値は、54.07+/-3.89であって、miR-1が調節したルシフェラーゼ活性値と有意的に差異がなく、したがって、anti-NT(2x)が与える阻害効果を観察することができなかった。一方で、miR-1とanti-miR-1-seed(2x)が同時に導入された実験群の相対的ルシフェラーゼ活性パーセント値は、96.43+/-8.44であって、miR-1が調節したルシフェラーゼ活性値が完全に回復する効果を確認した。これは、統計的に有意(p=1.0x10
-8)であることを観察した。上記から、anti-miR-1-seed(2x)がmiR-1により誘導される正規シード標的遺伝子の阻害を特異的に完全に阻むことのできることを確認できた。
【0120】
【0121】
1-3.心筋細胞で連鎖標的マイクロRNA阻害剤によるmiR-1の心筋細胞収縮機能の抑制効果の確認
【0122】
【0123】
前記実施例1-1の方法で製造して実施例1―2でマイクロRNAの阻害剤としての効果を確認した連鎖標的マイクロRNA阻害剤がマイクロRNAの生物学的機能を抑制することができるかを確認するために、これをmiR-1の正規シード結合サイトに適用した。まず、心筋細胞でのmiR-1を確認するために、心臓筋肉母細胞株(H9c2)をATCC(American Type Culture Collection)から購入した後、miR-1を導入し、miR-1の心筋細胞での知られた機能である細胞サイズ縮小が誘導されるかを観察した。このとき、前記H9c2細胞は、10%FBS(fetal bovine serum)、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlステップトマイシンを補充したDulbecco’s改質Eagle’s培地(Invitrogen)で培養し、前記miR-1は、マイクロRNAのデータベースであるmiRBase(www.mirbase.org)に現れたヒトのmiR-1配列(MIMAT0000416)の通り二本鎖をBioneer社を通じて化学的に合成し、HPLCによって分離した。また、対照群(control)としては、カエノラブディティス・エレガンス(C.elegans)のマイクロRNAであるcel-miR-67(MIMAT0000039)の配列と同一に合成して用いた。その後、合成された二本鎖のマイクロRNAは、上記会社で提供した方法にしたがってガイド鎖とパッセンジャー鎖の二重体(duplex)で製造し、マイクロRNAのH9c2細胞の導入は、RNAiMAX試薬(Invitrogen社)を用い、50nMのマイクロRNAを製造者のプロトコルにしたがってトランスフェクション(transfection)させてその効果を48時間後に調査した。
【0124】
その結果、
図3の(a)の左図に示したように、対照群に比べてmiR-1が導入されたH9c2細胞のサイズが小さくなったことを観察した。また、これを定量的にイメージJプログラム(NIH)を通じて100個以上の細胞で分析した結果、
図3の(a)の右図に示したように、miR-1二重体が入った細胞のサイズが対照群細胞に比べて約60%レベルに小さくなったことを観察した。
【0125】
また、上記でmiR-1が心筋細胞のサイズを減らすという機能をH9c2細胞で確認した後、前記実施例1-2と同一にmiR-1のシード領域に相補的に配列できる塩基配列2個を連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-seed(2x))で製作し(
図2の(c))、これを心臓筋肉母細胞株(H9c2)にトランスフェクションしてmiR-1の機能を抑制することができるかを確認する実験を進行した。
【0126】
上述した方法と同じ実験方法で、anti-miR-1-seed(2x)とmiR-1を同時にそれぞれ25nMの濃度で一緒にトランスフェクションしてH9c2に導入した場合、
図3の(b)及び
図3の(c)に示したように、対照群(control;NT)とmiR-1を一緒に導入した場合には、依然としてmiR-1が誘導する細胞サイズの減少を観察することができたが、anti-miR-1-seed(2x)の場合には、このような効果が抑制されることを確認した。
【0127】
上記から、anti-miR-1-seed(2x)がmiR-1の機能である心筋細胞のサイズを減らす機能を阻害する現象が観察された。そこからシード領域で認識する8個の塩基で構成された正規結合サイトを活用してこれを2個以上連鎖的に配列したとき、マイクロRNAの正規標的抑制機能を効果的に阻害できることが分かった。
【0128】
【0129】
実施例2.マイクロRNAのシード領域でウォブル(wobble)塩基配列を許容する非正規標的サイトの発見及び検証
【0130】
【0131】
2-1.Ago HITS-CLIP分析を通じた大脳皮質から発現されるマイクロRNAの非正規G:Aウォブル配列サイトの発見
【0132】
マイクロRNAの標的を転写体レベルで分析できる方法としては、Ago HITS-CLIPという実験方法が開発されて広く用いられているが、Ago HITS-CLIP実験は、細胞や組織サンプルにUVを照射して細胞内でRNAとアルゴノートタンパク質の間に共有結合を誘導し、このように生成されたRNA-アルゴノート複合体をアルゴノートを特異的に認識する抗体を用いて免疫沈降法によって分離した後、分離されたRNAを次世代塩基配列(Next-generation sequencing)によって分析する方法である。このように得られた塩基配列データは、生物情報学的分析を通じてマイクロRNAの標的mRNAを同定できるだけではなく、その結合位置と配列も正確に分析できる。Ago HITS-CLIPは、最初にマウスの大脳皮質組織に適用されて脳組織でのマイクロRNAの標的に対する地図を作成し、その後、今まで多様な組織に当該方法が適用された。このような多くのAgo HITS-CLIP分析を通じて多様な組織でのマイクロRNA結合位置が明らかになった。特に、このような標的配列でマイクロRNAのシード結合とは類似しているが、標的mRNAの配列で他の形態の非正規的結合標的が多く存在するという点が知られるようになった。
【0133】
明らかになった非正規的結合法則の一部は、既存の知られている塩基配列以外にG:U塩基配列を通じたウォブル(wobble)で存在することが観察された。ウォブル塩基配列は、既存の塩基配列とは異なり特定のRNAで発見され、よく知られたG:Uウォブルは、マイクロRNAの非正規標的でも配列ができることが提示された。しかし、それに比べて結合が弱くて頻繁に観察されないG:Aウォブルの場合は、特定のRNAで塩基配列を形成することができるが、それ以外では全く調査されなかった。しかし、マイクロRNAのシード配列のような場合には、塩基配列の自由エネルギー(free energy)が構造的にアルゴノートタンパク質により安定化されるので、一般的に弱いG:A塩基配列が相対的に重要であり得る。
【0134】
そこで、まず、G:Aを含んだウォブル(wobble)塩基配列がヒトの脳組織でのマイクロRNA標的に存在するかを確認するために死後脳組織の灰白質(gray matter)にAgo HITS-CLIPを実行したデータを分析した。このときの分析は、Ago HITS-CLIPを開発したときの方法にしたがってアルゴノート-マイクロRNAと一緒に結合したRNA配列をシークエンシングされたFASTQファイルでBowtie2プログラムでヒトゲノム配列に配列して行った。また、同時に当該シークエンシング結果をヒトマイクロRNA配列に配列して、当該脳組織でアルゴノートタンパク質と頻繁に結合している20種類のマイクロRNA(top20 miRNA)も分析した。最終的に、前記方法で把握したtop20 miRNAに対して当該シード(seed)配列である5’末端から2番目から8番目までの配列に対して相補的な配列を有する正規標的(canonical target)サイトをよく観察した。このとき、
図4の(a)に示したように、マイクロRNA結合位置にかなり多数の正規シード標的サイトが発見されることを観察した(中央値1292.5サイト、誤差範囲+/-706.62)。その後、このようなマイクロRNAのシード塩基配列でG:U又はG:Aウォブル塩基配列によって結合できる非正規的標的サイトが存在するかをAgo HITS-CLIPデータで分析した。このとき、分析に対する対照群(Control)としてマイクロRNAシード(seed)塩基配列と同一の塩基配列によって塩基の相補的配列が不可能な標的配列を用いて分析した。
【0135】
その結果、
図4の(a)に示したように、G:Aウォブルが許容された標的(中央値1119.5サイト、誤差範囲+/-526.48)とG:Uウォブルが許容された標的(中央値995サイト、誤差範囲+/-523.22)サイトの両方で対照群(中央値891サイト、誤差範囲+/-410.71)に比べて高い分布を示した。特に、G:Aウォブルが存在するマイクロRNA標的サイトは、G:Uウォブルより約1.1倍多く存在することが示された。
【0136】
また、脳組織で特異的に発現されるmiR-124は、シード領域に2個のGを5’末端から4番目と5番目に有しているので、これを通じたG:U及びG:Aウォブル塩基配列ができる。したがって、このような特定位置のGによるG:A及びG:Uウォブル塩基配列を区別して分析した結果、
図4の(b)に示したように、miR-124の正規シード標的サイト(Seed site)が最も多く発見された(1,992個)。しかし、これと比較できる程度に4番目がG:Uウォブル(1,800個)を成すこと(4G:A site)を発見し、その次には、G:Aウォブル(1,542個)を成すことを観察した。また、5番目のGもG:Uウォブル(1,427個)とG:Aウォブル(1,196個)を成す標的サイト(5G:A site)が多く観察され、このように調査したすべてのサイトは、対照群の個数(647個)よりいずれも多く存在することを確認することができた。miR-124に対するSeed site、4G:A site、5G:A siteの配列と塩基配列は、
図4の(c)に示した。したがって、マイクロRNAは、シード領域の塩基配列を通じた標的mRNAを認識するとき、シード領域を通じた正規的な塩基配列だけでなく非正規的にG:U又はG:Aウォブル塩基配列を許容し、このような結合を通じて標的mRNAと結合できるということが分かった。このようなG:Aウォブル塩基を通じたマイクロRNAの標的認識は、報告されたことがない新しい結果であり、上記で観察したように、多くのマイクロRNAで非正規的な標的と認識されることを確認することができた。
【0137】
【0138】
2-2.心筋梗塞患者の心臓組織でのAgo HITS-CLIP分析結果miR-1の非正規G:Aウォブル配列サイト発見
【0139】
前記実施例2-1で、ヒトの脳組織から得られたAgo HITS-CLIPデータをマイクロRNAのシード領域と標的mRNAの間にG:Aウォブル塩基結合を分析してこれらが非正規標的で存在することを明らかにした。これと同様に、心筋梗塞患者 (Cardiomyopathy)6人の心臓組織から得られたAgo HITS-CLIPデータ(
図5の(a))を分析してG:Aを含んだウォブル(wobble)塩基配列がマイクロRNA標的に存在するかを分析した。このとき、アルゴノート-マイクロRNAと一緒に結合したRNA配列シークエンシング結果をヒトマイクロRNA配列に配列して、当該心臓組織でアルゴノートタンパク質と頻繁に結合しているマイクロRNAのうち心臓-筋組織で特異的に発現されるmiR-1に集中して当該シード領域のG:Aウォブル塩基配列を中心として分析を進行した。特に、miR-1のシード領域には、3個のGを5’末端から2番目、3番目と7番目に有しているので、この3個のG塩基がAと配列されてアルゴノートと一緒に標的遺伝子のmRNAに結合することができる。
【0140】
したがって、このような特定位置のGによるG:Aウォブル塩基配列を区別して分析した結果、
図5の(b)に示したように、2番のG:Aウォブルが27個、3番のG:Aウォブルが19個、7番のG:Aウォブルが26個分析された。このように調査したすべてのサイトは、対照群の個数(9個)より多く存在することを確認することができた。また、このとき、以前の報告と同一にmiR-1の正規シード標的サイトが最も多く発見された(128個)。したがって、心筋細胞で最も多く発現されるmiR-1は、シード領域の塩基配列を通じた標的mRNAを認識するとき、シード領域を通じた正規的な塩基配列だけでなく非正規的にG:Aウォブル塩基配列を許容し、このような結合を通じて標的mRNAと結合できるということが分かった。
【0141】
上記の実施例を通じてマイクロRNAが非正規的にG:Aウォブルサイトと結合して標的遺伝子発現を阻害するという事実を確認した。このように既存のマイクロRNAシード配列にあるGを通じてウォブル配列によって標的mRNAのAと結合することがマイクロRNAの機能を変える場合、このような機作が疾病でマイクロRNAの配列の変異を通じて現れ得ると予想され、心筋梗塞患者の心臓組織でAgo HITS-CLIPを実行した結果からアルゴノートと結合したマイクロRNAの配列を分析して、miR-1のG配列がTに変わった場合があるかを確認した。miR-1のシード領域でmiR-1の5’末端を基準として20番までの塩基のうちすべての変異を分析した結果、
図5の(c)に示したように、miR-1の5’末端を基準として2番目、3番目、7番目、12番目、15番目のGがTに変わった場合があることを観察した。特に、シード領域の2番目、3番目、7番目のGが他の変異より高い頻度でTに変わってシークエンシングされていることは、当該位置のGが標的遺伝子mRNAを認識するとき、既存のmiR-1の配列が非正規的にG:Aウォブル配列を通じて標的mRNAと配列されることから拡張されて心筋梗塞疾病ではGがUに変異されて既存の非正規G;Aウォブル配列を既存の正規シード標的サイトに変えることであることが分かった。
【0142】
【0143】
2-3.心筋細胞のmiR-1シード配列でのG:Aウォブル配列を通じた標的遺伝子の発現抑制の確認
【0144】
前記実施例2-1と2-2で、マイクロRNAが非正規的にシード領域でG:Aウォブル配列を許容して標的mRNAと結合できるという事実を発見した後、このような結合が実際に標的遺伝子の抑制を起こすことができるかを細胞レベルで確認するレポーター実験を進行した。このとき、確認実験は、心臓筋肉母細胞株であるH9c2のように筋肉系細胞で多く発現されることが知られ実施例2-2で確認したmiR-1を対象として進行した。特に、miR-1の5’末端から7番目に存在するGに注目して、これを通じたG:Aウォブル塩基配列を対象として行った。マイクロRNAによる遺伝子抑制は、より精密に個別細胞レベルで測定するために蛍光タンパク質発現レポーターシステムを構築して用いた。蛍光タンパク質発現レポーターシステムは、二つの色の蛍光タンパク質が一つのベクターに発現するように構成され、このとき、SV40プローモーターには、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)が発現されるようにし、その3’UTR(3’untranslated region)部分にマイクロRNAの標的サイトを多数個連続的に配列して、緑色蛍光タンパク質の強度を通じてマイクロRNAによる遺伝子抑制効果を測定するようにし、それと同時に、赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein:RFP)は、Tkプローモーターにより発現されるようにしてその強度程度に緑色蛍光信号を標準化して用いた(
図6の(a))。
【0145】
上記のように構築された蛍光タンパク質発現レポーターベクターにmiR-1の5’ 末端から2番目から8番目までの塩基に対して相補的であると共に、7番目の塩基であるGに対してはG:Aウォブルに塩基配列をする非正規標的サイト(7G:A-site)(5’p-AAAUUCCA-3’、配列番号2)を挿入してレポーターを製作した後(GFP-7G:A site)、これがmiR-1によって抑制されるかを実験を通じて確認した。このとき、実験は、500ng GFP-7G:A siteレポーターベクターと25nMのmiR-1をlipofectamine 2000(Invitrogen社)試薬を用いて会社で提供するプロトコルにしたがって心臓筋肉母細胞株であるH9c2に同時に導入(co-transfection)し、24時間後にフローサイトメーター(Life Technologu社のAttune NxT)を通じてそれぞれの蛍光信号を測定した。
【0146】
その結果、
図6の(a)に示したように、miR-1の発現によりmiR-1の7G:Aサイトが非常に効率的に抑制されることを対照群核酸(cont;NT)を導入した細胞と比較して確認した。すなわち、心臓筋肉母細胞株であるH9c2で二つの蛍光タンパク質の発現程度によって四つの部分(Q5-1、Q5-2、Q5-3、Q5-4)で分析した結果、miR-1が導入された細胞の場合、対照群の核酸が導入された場合より10
3強度の赤色蛍光タンパク質と10
3強度の緑色蛍光タンパク質を示す細胞の分布が59.51%(control:Q5-3)から41.80%(miR-1:Q5-3)に減少したことを観察した。
【0147】
上記から、GFP-7G:A siteレポーターベクターは、miR-1の導入なしでもH9c2細胞である程度抑制されていることが対照群から観察された。これは、H9c2細胞内で既に発現されているmiR-1によりレポーター標的mRNAとのG:Aウォブル塩基配列を通じて抑制されるものと予想できる。前記内容を確認するために、H9c2細胞内のmiR-1の発現を抑制することのできるmiRIDIAN microRNA Hairpin inhibitor(miR-1 inhibitor)をDharmacon社から購入して50nM濃度で細胞にトランスフェクションさせて用いた。
【0148】
その結果、対照群に比べてmiR-1 inhibitorを導入した場合、103強度の赤色蛍光タンパク質と103強度の緑色蛍光タンパク質を示す細胞の分布が81.56%(miR-1 inhibitor:Q5-3)に増加することから、細胞内に存在するmiR-1がmiR-1の7G:Aサイトを通じて遺伝子発現を抑制できることを確認した。
【0149】
また、蛍光タンパク質発現レポーターにマイクロRNA標的サイトを入れない対照群(GFP-no site)とmiR-1の7G:Aサイトが入ったレポーターであるGFP-7G:A siteをH9c2細胞に導入してその活性を比較して確認し、陽性対照群としては、miR-1を一緒に導入した場合と定量的に比較して確認した。このときの分析は、フローサイトメーターで測定した赤色蛍光タンパク質(RFP)値を区間別に分け、このときの緑色蛍光タンパク質(GFP)値を平均してログ割合に変換し、対照群であるGFP-no siteの緑色蛍光タンパク質の数値を1にして(relative log GFP)相対的に計算した。
【0150】
その結果、
図6の(b)に示したのように、miR-1と7番G塩基に対して、G:Aウォブル(wobble)を通じて相補的に塩基配列されるサイトがある場合(GFP-7G:A site)、特に、1.5~2.5値の赤色蛍光タンパク質の発現(log RFP)を示す区間で、G:Aウォブル(wobble)を通じた緑色蛍光タンパク質の発現(relative log GFP)が1より12.5%程度低くなることを確認した。このような抑制は、陽性対照群では、特に1.5~2.5区間の赤色蛍光タンパク質の発現(log RFP)から40%~25%程度緑色蛍光タンパク質の発現(relative log GFP)が抑制されるパターンと同一に現れる点を観察した。
【0151】
上記で観察した結果が当該蛍光タンパク質レポーターで用いた互いに異なるプローモーターの強度と二つ他の蛍光タンパク質が有する蛍光活性度の差により影響を受けないことを確認するために、二つの蛍光タンパク質が互いに変えられている蛍光タンパク質レポーターであるp.UTA.3.0をAddgene(plasmid#82447)から購入して用いた。このとき、レポーター実験は、p.UTA.3.0ベクターでSV40プローモーターによって調節される赤色蛍光タンパク質(red fluorescent protein:RFP)の3’UTR部分にmiR-1-7G:A配列を5回繰り返して挿入した後にレポーターベクター(RFP-7G:A site)を製作して進行し、このとき、赤色蛍光タンパク質発現数値は、Tkプローモーターによって発現される緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)値を細胞内に導入された程度を反映した標準化に用いて変形して用いた。
【0152】
その結果、
図6の(c)に示したように、上記と同一にmiR-1の7G:AサイトがH9c2で発現されるmiR-1により抑制されることを、miRNA標的位置のないレポーター(RFP-no site)の対照群とmiR-1の7G:A siteが入ったレポーター(RFP-7G:A site)の結果を比較して確認し、同時に、
図6の(d)に示したように、陽性対照群がmiR-1とのco-transfectionでも前記
図6の(b)に示した結果のようにmiR-1-7G:Aサイトを抑制する現象を観察した。
【0153】
上記から、Ago HITS-CLIP分析を通じて発見したマイクロRNAの非正規標的が実際にマイクロRNAのシード配列でG:Aウォブル配列を通じて結合できるだけでなく、当該標的遺伝子の発現を抑制できることを確認した。
【0154】
したがって、このような点から判断するとき、G:Aウォブル配列を通じた標的サイトを用いてマイクロRNAと十分に結合することができ、このような結合が競争的に行われてマイクロRNAを抑制することができる場合、G:Aウォブルを通じた非正規的標的抑制によるマイクロRNAの生物学的機能のみを阻害できることを類推することができた。
【0155】
【0156】
2-4.ルシフェラーゼレポーターによるマイクロRNAの非正規的なバルジ(bulge)塩基配列標的の発現抑制の確認
【0157】
マイクロRNAは、シード領域の連続的な塩基配列を通じた正規的な標的認識以外に非正規的に標的を認識することが知られており、そのうち、特に、マイクロRNAのシード領域と標的mRNAが配列されたとき、マイクロRNAの5’末端から5番目と6番目の間で標的mRNAがバルジを成す形態が存在すると報告された。特に、このようなバルジ標的がmiR-124から発見されたとき、5番と6番目の間にGがバルジを成すことが確認されたが、このような標的が既存の知られたシード配列を通じた正規標的に比べてどの程度標的遺伝子の発現を抑制するかは知られていなかった。
【0158】
前記のようにバルジを形成する塩基配列とマイクロRNAが機能的に活性化され得る程度に結合できるかを確認するために、ルシフェラーゼレポーターを用いて調査した。このときに用いた正規標的シードサイト(seed site)は、
図7の(a)の上図に示したように、miRNA-124(5’-UAAGGCACGCGGUGAAUGCCAA-3’、配列番号7)のシード配列のうち5末端から2-7番目の塩基配列である5’-AAGGCAC-3’に完璧に相補的な5’-GUGCCUU-3’(miR-124-seed site、配列番号8)であり、ルシフェラーゼレポーターベクター(psi-check2、Promega社)にあるレニラルシフェラーゼ遺伝子の3’UTR(3’untranslated region)部分に2回連続配列によって挿入した。また、
図7の(a)の下面に示したように、5’末端を基準として6番目塩基と相補的に配列できる塩基配列がシードサイト標的の5番と6番の間にバルジ(bulge)で存在する場合であるバルジサイトは、miR-124で5’-GUGGCCUU-3’(miR-124-bulge site、配列番号9)の塩基配列を有するようになり、したがって、これを同一にレニラルシフェラーゼ遺伝子の3’UTR部分に2回連続配列してレポーターベクターを製作した。
【0159】
上記方法で製作されたルシフェラーゼレポーターベクターは、多くの濃度(0.02、0.1、0.5、2.5、15nM)のmiR-124と一緒にHeLa細胞(ATCC CCL-2)にLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を用いて製造者のプロトコルにしたがって細胞に伝達(co-transfection)させてその効果を調査した。このときのmiR-124は、ガイド鎖(guide strand)、パッセンジャー鎖(passenger strand)の二つの核酸配列にBioneer社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離し、前記会社で提供した方法によって二重体(duplex)で製造して用いた。HeLa細胞は、10%FBS(fetal bovine serum)、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlステップトマイシンを補充したDulbecco’s改質Eagle’s培地(Invitrogen)で培養し、トランスフェクションの実行時は、抗生剤のない完全培地で細胞を培養した。このようにトランスフェクションを行った24時間後、Promega社のDual-luciferase reporter assay systemを用いて製造社のプロトコルにしたがってルシフェラーゼの活性を測定してmiR-124の効果を調査し、ルシフェラーゼ活性計測は、promega社のGlomax Luminometerを用いて最小3回以上の繰り返し実験し、ホタル(firefly)ルシフェラーゼの活性によって標準化して計算した。このようにmiR-124の多くの濃度でバルジ標的の阻害効果を測定し、IC
50(inhibitory concentration 50)をmiR-124の正規的なシードサイトと比較して観察した結果、
図7の(b)に示したように、バルジ標的は、0.8nM、シード標的は、0.4nMとして、バルジ標的を通じた遺伝子発現抑制効率がシード標的より2倍程度低いが、依然としてmiR-124は、バルジ標的のような非正規標的もよく抑制することを観察することができた。
【0160】
上記から、Ago HITS-CLIP分析を通じて非正規標的として以前に報告されたバルジ標的サイトは、マイクロRNAと結合できるだけでなく、これを有している遺伝子の発現を効率的に抑制することが分かった。また、このような点から類推するとき、バルジ標的を用いてマイクロRNAと十分に結合することができ、このような結合が競争的に行われてマイクロRNAを抑制することができる場合、バルジ標的抑制を通じたマイクロRNAの生物学的機能のみを阻害できることを類推することができた。
【0161】
【0162】
実施例3.マイクロRNAのシード配列でG:Aウォブル配列標的抑制を通じた他の生物学的機能調節可能性の確認
【0163】
3-1.実験材料及び方法
【0164】
前記実施例2で、ヒトの脳組織及び心筋梗塞患者の心臓組織から得られたAgo HITS-CLIPデータをマイクロRNAのシード領域と標的mRNAの間G:Aウォブル塩基結合を分析してこれらが非正規標的に存在することを明らかにし、追加的なレポーター実験を通じてこのような非正規標的サイトがマイクロRNAによる遺伝子抑制効果を示すことのできるということを確認した。このような非正規的な遺伝子抑制現象は、G:Aウォブル塩基配列がマイクロRNAの非正規標的として作用して生物学的機能を調節できるという可能性を提示した。したがって、このような可能性を確認しようと、前記実施例で説明した心筋細胞マイクロRNAであるmiR-1を中心として実験を進行した。非正規的なG:Aウォブル標的が特定の生物学的機能を有しているかを調査するためには、miR-1が正規的な標的は認識せずに非正規的なG:Aウォブル配列標的サイトのみを認識するようにしなければならないので、miR-1のシード領域にあるGがCではないAと塩基配列をするように当該GをUに置換して製作した後に実験に用いた。本実験では、より生理学的に心臓と類似した条件で実行するためにラット(rat)の心臓組織から1次心筋細胞(primary rat neonatal cardiomyocyte culture)を培養して行った。このとき、心筋細胞の培養は、生後1日目のラット(rat neonate)の心臓組織から酵素反応を通じて心筋細胞を分離し(Cellutron社のneomyt kit)、心筋細胞は、10%FBS(fetal bovine serum)、5%HS(horse serum)、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlステップトマイシンを補充したDulbecco’s改質Eagle’s培地(Invitrogen)とM199(WellGene)培地を4:1で交ぜて準備した培地にbrdUを添加して、心臓組織に存在する細胞周期を有する他の細胞と区別して培養した。
【0165】
【0166】
3-2.miR-1による心筋細胞サイズ減少の確認
【0167】
上記から得られた1次培養心筋細胞で心筋肥大現象が誘導されるかを優先的に確認した。心筋細胞は、細胞周期を止め、心筋細胞のサイズを増加させ得る特徴を有しているが、これを心筋肥大現象と言う。心筋肥大現象は、心筋細胞の機能低下を補う役目をし、心臓疾病の病理中間段階としても知られており、細胞形態学的観察及び遺伝子発現プロファイルの変化がよく知られた心臓疾病モデルシステムである。心筋肥大症の細胞モデルでは、フェニレフリン(PE)のようなアドレナリン受容体作用剤(agonist)を心筋細胞に処理すると、心筋肥大症を誘導することができる。
【0168】
したがって、培養した心筋細胞に100uMのフェニレフリンを処理して心筋肥大を誘導した。これによって、
図8の(a)に示したように、何も処理しない対照群(rCMC)と比較して心筋細胞のサイズが増加することを形態学的に確認した(+PE)。また、前記実施例1でのように、miR-1が心臓筋肉母細胞株であるH9c2から発現された場合、細胞のサイズを減らす現象が現れ、同じ現象で、培養した1次心筋細胞にmiR-1を導入したときも心筋細胞のサイズが減少することを観察した。これはよく知られた心筋肥大現象とmiR-1の心筋細胞での心筋細胞萎縮機能と一致する。
【0169】
【0170】
3-3.miR-1置換体を用いてマイクロRNAのシード配列でG:Aウォブル配列標的抑制を通じて現れる他の生物学的機能可能性の確認
【0171】
miR-1は、シード領域に3個のGを含んでおり、これによって、正規的な標的は認識せずに、非正規的なG:Aウォブル配列標的サイトのみを認識するようにするために、このようなGをUに置換したmiR-1をデザインし、これをGがある位置によって5’末端を基準として2番目の位置(miR-1-G2U)、3番目の位置(miR-1-G3U)、7番目の位置(miR-1-G7U)に適用してmiR-1置換体を合成した。このとき、用いたmiR-1の置換塩基配列は次のようであり(miR-1-G2U:5’p-UUGAAUGUAAAGAAGUAUGUAU-3’(配列番号10);miR-1-G3U:5’p-UGUAAUGUAAAGAAGUAUGUAU-3’(配列番号11);miR-1-G7U:5’p-UGGAAUUUAAAGAAGUAUGUAU-3’(配列番号12))、これは、ガイド鎖で合成され、前記置換されたmiR-1の5’末端から2、3、7番目塩基に対しては、完全相補的ではないが、ガイド鎖と二重体を形成するパッセンジャー鎖(hsa-miR-1-5p;miRBase accession番号:MIMAT0031892、5’-ACAUACUUCUUUAUAUGCCCAU-3’、配列番号13)は、miRBaseに記録されたヒトのmiR-1塩基配列をデザインしてBioneer社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離し、前記会社で提供した方法によってガイド鎖とパッセンジャー鎖の二重体(duplex)で製造して用いた。当該マイクロRNAの1次心筋細胞株への導入(transfection)は、RNAimax(Invitrogen社)試薬を用いて50nM濃度で実行した。
【0172】
その結果、
図8の(a)に示したように、miR-1-G2U又はmiR-1-G3U又はmiR-1-G7Uを1次心筋細胞培養に導入したとき、心筋細胞の形態が心筋肥大を誘導した細胞(+PE)と類似するレベルに大きくなったことを観察することができた。このとき、それぞれの細胞サイズを定量的に分析するために、100個以上の細胞がイメージJプログラム(NIH)を通じて定量化された。
図8の(b)に示したように、miR-1のG:Aウォブル配列サイトのみを認識するように合成したmiR-1置換体(miR-1-G2U、miR-1-G3U、miR-1-G7U)が全て対照群(NT)核酸を導入したときと比較して約1.5~1.8倍程度そのサイズが大きくなったことが分析された。これは、フェニレフリン(PE)薬物が誘導する心筋細胞肥大症モデルの心筋細胞サイズと同様のレベルであり、miR-1自体は、心筋細胞形態上では細胞サイズを減少させる効果を示すことで、その正規的な標的抑制効果がG:Aウォブルを通じた標的抑制とは細胞形態学上異なる機能を示すことを観察した。また、追加的に本実施例で観察した心筋肥大現象を分子的レベルで確認するために、マーカーによりその発現が増加することが知られたANP(atrial natriuretic peptide)遺伝子の発現をqPCR(Quantitative Polymerase Chain Reaction)実験を通じてGAPDHと比較して相対的な値で測定した。このときの実験は、すべてのRNAをRNeasyキット(Qiagen)で抽出し、当該プロトコルにしたがってSuperscript III RT(Invitrogen)に逆転写し、SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)でqPCRを実行して当該プライマーでANPのmRNAを増幅してその量を測定した。
【0173】
その結果、
図8の(c)に示したように、miR-1のG:Aウォブル配列サイトのみを認識するように合成したmiR-1置換体(miR-1-G2U、miR-1-G3U、miR-1-G7U)を心筋細胞に導入した場合には、全てANP発現量を対照群(NT)に比べて1.2~1.5倍程度有意に増加させたことを4回の実験を通じて確認することができた。このようなANP発現増加は、フェニレフリン(PE)薬物を処理した心筋細胞実験群が対照群に比べてサイズが約2倍程度増加したことよりは少ないが、元々のmiR-1が導入されたときにANP発現が有意に減少する現象とは反対になることで、これを通じて、miR-1はG:Aウォブル配列サイトを通じて完全に異なる生物学的機能を示すと判断できる。
【0174】
上記から、マイクロRNAシード領域でG:Aウォブル配列を通じて抑制する非正規標的は、既存の正規的な標的認識とは生物学的に異なる機能を示すことができるという点が最終的に分かった。このような発見は、マイクロRNAの正規的な標的を通じた機能と非正規的標的を通じた機能が互いに異なることを示し、このような点から類推するとき、マイクロRNAのG:Aウォブル標的のみを抑制することができると、G:Aウォブル標的により起きる生物学的機能のみを選択的に制御できることが予測された。
【0175】
【0176】
実施例4.連鎖標的マイクロRNA阻害剤によるマイクロRNAの非正規的G:Aウォブル結合機能抑制効果の確認
【0177】
【0178】
4-1.miR-1の非正規G:Aシード結合サイトに対する連鎖標的マイクロRNA阻害剤(2x)効果の確認
【0179】
前記実施例1で、miR-1の正規標的なシード標的サイトを阻害するために製作した連鎖標的マイクロRNA阻害剤であるanti-miR-1-seed(2x)(5’p-dTdT(rSP)ACAUUCCA(rSP)ACAUUCCA(rSP)dTdT-3’)は、miR-1の機能である心筋細胞のサイズを減らす機能を阻害する現象を示した。したがって、連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、マイクロRNAと結合できる配列であれば、全て適用が可能であり、これによって、前記実施例2及び3で確認したマイクロRNAの非正規標的配列に対しても使用が可能である。したがって、前記実施例2及び3で確認したG:Aウォブルサイトの生物学的機能のみを抑制しようと、連鎖標的マイクロRNA阻害剤をmiR-1に適用した。
【0180】
まず、
図9の(a)に示した配列のように、miR-1シード配列で5末端から7番目GがUに置換された配列に相補的な配列2個を連鎖標的マイクロRNA阻害剤に導入した(anti-miR-1-7G:A(2x))。すなわち、前記実施例3のmiR-1-G7Uに対するシード配列と相補的に塩基配列ができる5’-AAAUUCCA-3’を連続的に配列し、その配列された配列の間には、前記実施例1でのように非塩基核酸であるrSpacerで構成して、連続的に配列された配列の境界線上の新しいサイト生成によるオフターゲット効果を阻むようにデザインした。
【0181】
このとき、miR-1の非正規G:Aウォブルシード標的遺伝子に対する阻害効能を実験的に確認するために、前記実施例1-2でのようにルシフェラーゼレポーター実験(Luciferase reporter assay)を行った。これのために、
図9の(b)に示したように、miR-1の非正規G:Aウォブルシード標的サイト(miR-1-7G:A site)をルシフェラーゼレポーター遺伝子の3’UTRに5個連続的に配置した(Luc-miR-1-7G:A site)。
【0182】
miR-1の非正規G:Aウォブルシード標的サイトを通じて確実に遺伝子を抑制させた後にこれを当該連鎖標的miR-1G:Aウォブルサイト阻害剤(anti-miR-1-7G:A(2x))が抑制するかを確認するために、miR-1の5’末端の7番目GをUに置換したmiR-1:G7UをBioneer社で前記実施例と同じ方法で合成して5nMを用い、これと共に、50nM濃度の阻害剤(anti-miR-1-7G:A(2x)、配列番号14)を一緒にHeLa細胞(ATCC CCL-2)にLipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を用いて製造者のプロトコルにしたがって細胞に伝達(co-transfection)させてanti-miR-1-7G:A(2x)がmiR-1の非正規G:Aウォブルシード標的抑制を阻害する効果を示すかを調査した。
【0183】
その結果、
図9の(c)に示したように、miR-1:G7Uがトランスフェクションされて観察されたルシフェラーゼ活性値は、miR-1:G7Uがトランスフェクションされない値に基づいて計算された相対的ルシフェラーゼ活性パーセント値の88%に阻害されることを確認し、このとき、miR-1とanti-miR-1-7G:A(2x)が同時に導入された実験群の相対的ルシフェラーゼ活性パーセント値は、95%であって、miR-1:G7Uにより発現が抑制されたルシフェラーゼ活性値が元々の阻害されない値に同様に回復する效果を確認した。これは、統計的に有意(p=0.027)であることを観察した。
【0184】
【0185】
4-2.miR-1の非正規G:Aシード結合サイトによる生物学的機能を連鎖標的マイクロRNA阻害剤(2x)が抑制できることを確認
【0186】
前記実施例で、miR-1の7番G:Aウォブル標的調節機能を特異的に阻害するanti-miR-1-7G:A(2x)の機能をmiR-1-G7U置換塩基を外部からトランスフェクションさせたHeLa細胞(ATCC CCL-2)でルシフェラーゼレポーター活性の調査を通じて確認した。したがって、心筋母細胞で自然的に存在するmiR-1の7番G:Aウォブル標的調節機能を確認するために、前記実施例4-1実験で用いたmiR-1-7G:Aサイトが含まれたルシフェラーゼレポーターベクターであるLuc-miR-1-7G:A siteと50nMのanti-miR-1-7G:A(2x)又は対照群であるanti-NT(2x)をトランスフェクションさせて前記実施例4-1のようにルシフェラーゼ活性を調査した。
【0187】
その結果、
図10の(a)に示したように、miR-1-7G:Aサイトを含むルシフェラーゼ活性値をmiR-1-7G:Aサイトを含まないルシフェラーゼレポーター活性値(Luc-no site)によって標準化して計算した相対的活性パーセント値は、86.28+/-2.59であって、これは心筋母細胞に自然的に存在するmiR-1の7番G:Aウォブル標的調節機能を測定した値に該当する。このとき、anti-miR-1-7G:Aをトランスフェクションした実験群のルシフェラーゼ相対活性パーセント値は、89.96+/-2.13であって、統計的に有意にmiR-1-G7Uの活性が阻害されることを観察した。
【0188】
心臓筋肉母細胞株であるH9c2細胞は、その細胞自体で自然的にmiR-1を発現しており、このようなmiR-1は、7番目G塩基を通じたG:Aウォブル配列で標的遺伝子を抑制できることを示した。また、前記実施例3-3では、miR-1の7番目塩基がAと配列するようにするために7番目GをUに置換したmiR-1-G7Uがその発現を通じて心筋細胞のサイズを増大させるという事実も観察した。したがって、H9c2細胞に存在するmiR-1の7番目Gを通じたG:Aウォブル配列標的を本発明によるマイクロRNAを抑制する変形核酸により抑制することができると、心筋細胞が小さくなる現象を示すものと予測し、これを確認するために、H9c2細胞に対照群(control;anti-NT(2x))とanti-miR-1-7G:A(2x)を前記実施例で実験した方法と同一にトランスフェクションしてその効果を確認した結果、
図10の(b)に示したように、H9c2細胞のサイズを減らすことを観察した。
【0189】
また、追加的にH9c2細胞のサイズは、100個以上イメージJプログラム(NIH)を用いて定量的に分析した。その結果、
図10の(c)に示したように、anti-miR-1-7G:A(2x)が導入された細胞のサイズは、対照群(control;anti-NT(2x))と比較して約40%程度減少するという事実を確認した。このような点から、anti-miR-1-7G:A(2x)は、miR-1の7番目G塩基を通じたG:Aウォブル標的認識機作を競争的に抑制してその当該機能を阻害できることが分かった。
【0190】
前記のように連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、既存の知られたマイクロRNAの正規的なシード標的認識を阻むだけでなく、G:Aウォブル配列のような非正規標的にも適用してマイクロRNAの特定機能を効果的に阻害できることが分かった。
【0191】
【0192】
4-3.miR-1の非正規G:Aシード結合サイトによる生物学的機能を連鎖標的マイクロRNA阻害剤(9x)が抑制できることを確認
【0193】
前記実施例で用いたmiR-1の非正規G:Aシード結合サイトに対する連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(2x))は、特異的に阻害しようとするmiR-1の非正規G:Aシード結合サイトが2回繰り返された形態を有している。これを拡張して、
図11の(a)に示したように、当該サイトの繰り返し形態を9回に増加させた連鎖標的マイクロRNA阻害剤(anti-miR-1-7G:A(9x))を考案し、それの阻害効果を確認するルシフェラーゼレポーター実験を進行した(
図11の(b))。
【0194】
anti-miR-1-7G:A(9x)は、次のような配列にTrilink社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離して用いた(anti-miR-1-7G:A(9x):5’-p-NN(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)NN-3’、配列番号15)。実験に対照群で用いられたcontrol inhibitorも同一にNTの標的サイトが9回繰り返されるように次のような塩基配列にTrilink社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離して用いた(anti-NT(9x):5’-p-NN(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)GGUUGUGA(rSP)NN-3’、配列番号16)。このとき、miR-1-7G:Aサイトが含まれたルシフェラーゼレポーターベクターLuc-miR-1-7G:A siteと25又は50nMのanti-miR-1-7G:A(9x)又は対照群であるanti-NT(9x)を5nMのmiR-1:G7Uと一緒に
図9の(b)実験と同一にHeLa細胞(ATCC CCL-2)にLipofectamine 3000試薬(Invitrogen)を用いて製造者のプロトコルにしたがって細胞にトランスフェクションさせてルシフェラーゼ活性を調査した。
【0195】
その結果、
図11の(b)に示したように、miR-1-G7Uとanti-NT(9x)が一緒にトランスフェクションされた実験群のルシフェラーゼ活性値をmiR-1-G7Uがトランスフェクションされないルシフェラーゼレポーター活性値に標準化して計算した相対的活性パーセント値が74.57+/-6.36であることを観察し、当該マイクロRNAによる遺伝子抑制効果を確認した。このとき、anti-miR-1-7G:A(9x)を一緒に導入した実験群では、相対的活性パーセント値は、87.23+/-5.68であって、25nMのanti-miR-1-7G:A(9x)が統計的に有意にmiR-1-G7Uの活性を阻害することを観察した(P=0.05)。また、anti-miR-1-7G:A(9x)の量を50nMに増加させたときは、相対的なルシフェラーゼレポーターの活性パーセント値が107.15+/-9.58であって、完璧にmiR-1-G7Uによる標的遺伝子抑制を阻害することを統計的に有意に観察した(P=0.0008)。
【0196】
したがって、連鎖標的マイクロRNA阻害剤の阻害効果は、阻害効果をターゲットとする塩基配列の繰り返しが2回であるときからその阻害効果を確認することができるが、9回繰り返したとき一層増加された阻害効果を示すことが分かった。
【0197】
anti-miR-1-7G:A(9x)が効果的にmiR-1の7番G:Aウォブル配列標的に対する抑制を阻害することをルシフェラーゼレポーターを通じて確認した後、anti-miR-1-7G:A(9x)がmiR-1の7番G:Aウォブルシード標的を抑制することで現れる心筋細胞肥大効果に対しても効果的に抑制できるかを確認した。このとき、実験には、心筋母細胞株であるH9c2を用い、anti-miR-1-7G:A(9x)による細胞サイズの変化をトランスフェクションした後、時間差(0、24、48及び60時間)を置いてLumascope 400(Etaluma社)を用いて同一細胞で進行した。当該実験でanti-miR-1-7G:Aの導入は、トランスフェクションと同時にFBSを除去し、100uM濃度のalpha-adrenergic agonistであるPE(Phenylephine、Sigma)を処理して60時間まで培養しながら観察した。
【0198】
その結果、
図11の(c)に示したように、PE処理により誘導される心筋母細胞株の細胞サイズの増加が対照群(control;anti-NT(9x))から観察されるのに比べて、anti-miR-1-7G:A(9x)がトランスフェクションされた実験群では、心筋母細胞株の肥大が全く観察されなかった。
【0199】
上記のように、連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、阻害しようとするマイクロRNAの標的個数が増加するほど阻害効果が増加し、このような阻害能力は、当該マイクロRNAの生物学的機能を抑制できる程度に強力であることが分かった。
【0200】
【0201】
実施例5.連鎖標的マイクロRNA阻害剤でスペーサー変形導入を通じて標的サイトの間の連結配列による副作用除去の確認
【0202】
前記実施例で製作した連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、抑制しようとするマイクロRNAの標的サイトを2回以上連続して配列されるようにデザインされた。したがって、標的サイトの間の連結配列により意図せずに他のマイクロRNA又は他のRNA結合タンパク質と結合して、これを阻害することになる副作用が発生し得る。このような場合をmiR-1の7番目Gを通じた非正規G:Aシード標的を抑制する阻害剤(anti-miR-1-7G:A(9x))配列を通じて例示すると、anti-miR-1-7G:A(9x)塩基配列は、
図12の(a)に示した、繰り返される標的サイトの間に非塩基変形によってrSpacerが入っており、当該配列は次のようである(5’-p-NN(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)AAAUUCCA(rSP)NN-3’)。これに反して、anti-miR-1-7G:A(9x)-NSは、同一な塩基配列を有するが、繰り返される標的サイト配列の間に非塩基が含まれておらず、その塩基配列は次のようである(5’-NNAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCAAAAUUCCANN-3’、配列番号17)。
【0203】
このとき、
図12の(a)のように、連続配列時に相補結合ができる塩基配列は、5’-AAAUUCCA-3’であるが、非塩基変形のないanti-miR-1-7G:A(9x)-NSの場合には、元々の標的サイトである5’-AAAUUCCA-3’のみならずそれぞれのサイトが接合する7個の部位を通じて次のようにマイクロRNAと結合できる配列が意図せずに生成され、その塩基配列は次のようである(5’-AAUUCCAA-3’、5’-AUUCCAAA-3’、5’-UUCCAAAA-3’、5’-UCCAAAAU-3’、5’-CCAAAAUU-3’、5’-CAAAAUUC-3’、5’-AAAAUUCC-3’)。したがって、本発明の実施例で用いたすべての連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、標的サイトの間に非塩基変形であるrSpacerに変形されているが、これは、
図12の(b)に示したように、標的サイトの間の連結配列により発生する新しい配列自体が偶然に他のマイクロRNA(miR-junction)の標的サイトになるか、他のRNA結合タンパク質の結合サイトになることを阻むためである。
【0204】
そこで、本発明の連鎖標的マイクロRNA阻害剤が非塩基変形を通じて上記に列挙した副作用効果を阻むかを確認するためにルシフェラーゼレポーター実験を前記実施例と同じ方法で進行した。これを確認するために、標的サイトの間の連結配列を認識するマイクロRNAであるmiR-junctionを
図12の(b)に示した配列で合成して用いた。これは、標的サイトの間の連結配列に完全相補的な塩基が5’末端を基準として1-8番目に存在し、その後、9番から21番までは、Cel-miR-67-3pの配列を含む(miR-junction:5’-A
AAUUUUG CCUAGAAAGAGUA-3’、配列番号18)。これを二重重合体で作って実験するために、パッセンジャー鎖(miR-junction-passenger:5’-TACTCTTTCTAGGCAAAATTT-3’)と一緒にBioneer社で化学的に合成製作した後、HPLCによって分離して用いた。また、当該miR-junctionの抑制効果を測定するために、miR-junctionの1-8番に対する相補塩基配列である標的サイト(5’-CAAAATT-3’)が5回繰り返されるようにルシフェラーゼレポーターベクターを製作して前記実施例と同じ方法で用いた。
【0205】
miR-junctionによる抑制効果をルシフェラーゼレポーター実験を通じて確認した結果、
図12の(c)に示したように、5nMのmiR-junction発現により~12%抑制された遺伝子抑制効果が、標的サイトの間にスペーサー変形を有しているanti-miR-1-7G:A(9x)の場合には、当該標的サイトがrSpacerによって分けられているので全く統計的に有意に抑制しない一方(P=0.23)、スペーサー変形を有していないanti-miR-1-7G:A(9x)-NSの場合には、miR-junctionによる遺伝子抑制を統計的に有意(P=0.01)に阻害することが現れた。
【0206】
上記のように、連鎖標的マイクロRNA阻害剤は、阻害しようとするマイクロRNAの標的サイトの間に非塩基変形を含むことで、サイトの間の連結配列による副作用を除去できることを確認できた。
【0207】
【0208】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく説明したが、当業界の通常の知識を有した者において、このような具体的技術は、好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。
【0209】
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明によるマイクロRNAを抑制する変形核酸は、マイクロRNA標的サイトの間に非塩基スペーサー(abasic spacer)を導入することで、効率的にマイクロRNAを阻害するだけでなく、変形核酸に導入された配列が意図せずに他のマイクロRNAと結合することを阻むことができるので、マイクロRNAの非正規標的認識により起きる生物学的機能のみを選択的に阻害するのに有用に用いられ得ると期待される。
【配列表】