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特許7162919HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/10 20120101AFI20221024BHJP
   B60W 30/04 20060101ALI20221024BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221024BHJP
【FI】
B60W40/10
B60W30/04
B60W50/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020571534
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2020133724
(87)【国際公開番号】W WO2021238136
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2020-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519292730
【氏名又は名称】肇▲慶▼学院
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 天軍
(72)【発明者】
【氏名】尹 暁軒
(72)【発明者】
【氏名】蔡 超明
(72)【発明者】
【氏名】梁 建国
(72)【発明者】
【氏名】李 偉豪
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104401323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104951764(CN,A)
【文献】特開2009-113717(JP,A)
【文献】特開平04-191181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両の状態データをリアルタイムで収集するステップ1と、
収集した大型車両状態データから、HMM-RFハイブリッドモデルに基づいて大型車両状態を予測し、大型車両状態予測結果を取得するステップ2と、
大型車両状態予測結果に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、対応する警告情報を発するステップ3とを含み、
前記HMM-RFハイブリッドモデルを構築するステップをさらに含み、
HMM-RFハイブリッドモデルは、6つのHMMモデル及び1つのRFモデルを含み、ここで、6つのHMMモデルはそれぞれ前記大型車両の6つの走行条件に対応し、走行条件は、直線走行、通常左折走行、通常右折走行、左折横転危険走行、右折横転危険走行及び交互走行を含み、
前記車両状態データをそれぞれ6つのHMMモデルに入力した後、各HMMモデルの多次元確率出力をRFモデルの入力ベクトルとし、RFモデル出力の結果を前記大型車両の状態予測結果とし、
ここで、前記HMM-RFハイブリッドモデルの訓練プロセスは、
スライド窓法を用いて訓練データを時系列から時間帯系列に分割し、メンバシップ関数を用いて訓練データ中の各観測値系列をファジィ化した後、各観測値系列を総合的に考慮して時系列セグメントを離散化するステップ1)と、
訓練データを各HMMモデルにそれぞれ入力し、HMMモデルが収束又は最大反復回数に達するまでHMMモデルを反復訓練し、設定した自己回帰モデルの最大次数に基づいて、AR自己回帰モデルを用いてHMMモデルの予測観測可能時系列を計算するステップ2)と、
Viterbi復号アルゴリズムを用いて車両状態のトレンド予測を行うステップ3)と、
各次HMMモデルの予測出力に対応する車両状態と実際の車両計測状態とを比較し、最終的に最適な自己回帰モデルの次数Nを決定し、N次HMM横転推定モデルを作成するステップ4)と、
訓練して各タイプのHMMモデルを得た後、訓練データについて、対応するタイプのHMMモデルの多次元確率出力をランダムフォレストRFモデルの入力ベクトルとしてモデル訓練を行い、最終的なHMM-RFハイブリッドモデルを作成するステップ5)とを含む、
ことを特徴とするHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法。
【請求項2】
前記大型車両の状態データは、大型車両の車速、横加速度、及びハンドル角信号を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法。
【請求項3】
前記ステップ1は、
取得した前記大型車両の状態データに対して、信号調整及びアナログ・デジタル変換処理を含むフィルタリング処理を行うステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法。
【請求項4】
前記ステップ3は、
取得した前記大型車両の状態予測結果及び前時刻の大型車両の状態に基づいて、将来の時刻の大型車両の走行状態を予測し、将来の時刻の大型車両の走行状態に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、対応する警告情報を発するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載のHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法。
【請求項5】
前記ステップ3は、
前記将来の時刻の大型車両走行状態に横転の危険性がないと予測された場合、収集した前記大型車両の状態データに対する大型車両の状態予測処理を停止し、この将来の時刻になると、収集した大型車両の状態データに対する大型車両の状態予測処理を再開するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載のHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両状態予測の技術分野、特にHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
国民経済が長年にわたって高速で発展し、特に国家のインフラ建設への投資が年々増加するに伴い、各種の大型車両を媒体とする道路運送業は爆発的な発展を見せている。大型車両は、輸送効率が高く、輸送コストが安価であるという特徴から、道路交通輸送において好ましく使用されている。予測によると、2020年までに、中国の大型車両の生産販売台数は200万台、売上高は2300億元に達し、世界で大型車両市場の成長が最も速い国となり、大型車両の生産及び開発は中国国内の車両メーカーの競争の焦点となっている。自動車産業のコア技術の進歩及び人民の生活水準の更なる向上により、大型車両のユーザーの車両の性能レベルに対する要求がますます高くなり、大型車両の高速走行時の走行安全性及び操縦安定性をどのように確保するかは、大型車両製品の研究開発機関が注目する重要な課題となっている。
【0003】
大型車両は、重心位置が高く、重量及び体積が大きく、ホイールベースが質量中心高さに対して狭すぎるなどの特徴を有しているため、横転限界が極めて低く、横転事故が極めて発生しやすい。米国ミシガン大学交通研究センター(UMTRI)の統計によると、2016年から2019年まで、米国では毎年、各種大型車両の横転事故が平均6900件発生している。また、大型車両の横転事故で死亡する人も、2016年の5314人から2019年には5537人に増えた。また、車両の横転事故だけでは、人命被害や物的被害に加え、道路や橋梁などの公共施設への破壊など、甚大な損失をもたらし、環境汚染をもたらし、より深刻な間接的結果をもたらすことがある。そのため、大型車両の横転は交通輸送の安全性に悪影響を与える重要な課題となっている。
【0004】
中国のWTOへの加入に伴い、外国の各大手自動車会社は相次いで先進技術がある大型車両製品を中国市場で販売してきて、大型車両市場は価格主導から性能・品質主導へと徐々に変化している。現在、中国は大型車両の生産大国になり、ある程度の独自開発技術を身につけている。しかしながら、高品質の製品及び重要な技術は依然として海外の技術に依存しており、特に大型車両の安全性の点では、能動安全装置の欠如のため、交通事故が頻発し、大きな経済的損失や人命被害をもたらし、2019年、中国の大型車両の事故は32104人の死亡を引き起こし、欧米の先進国の5倍以上である。中国の大型車両の能動安全製品の自主開発能力をできるだけ早く強化するため、自動車産業のコア技術の空洞化を防止することが急務となる。現在車両に対する警告制御方法の研究がいくつかあるが、現在の研究の重点は通常車両の過重量や過速度に対する警告であり、重度車両の横転に対する予測や警告の研究はまだなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に提案された従来の大型車両横転警告技術に欠陥が存在するという課題に対して、本発明は、HMM-RF(HMM:Hidden Markov Model、隠しマルコフ、RF:Random Forest、ランダムフォレスト)ハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法及びシステムを提供することを目のとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術案で実現される。
第1の態様では、
大型車両の状態データをリアルタイムで収集するステップ1と、
収集した大型車両状態データから、HMM-RFハイブリッドモデルに基づいて大型車両状態を予測し、大型車両状態の予測結果を取得するステップ2と、
大型車両状態の予測結果に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、対応する警告情報を発するステップ3とを含む、HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法を提案する。
【0007】
さらに、大型車両の状態データは、大型車両の車速、横加速度、及びハンドル角信号を含む。
【0008】
さらに、ステップ1は、
取得した大型車両の状態データに対して、信号調整及びアナログ・デジタル変換処理を含むフィルタリング処理を行うステップをさらに含む。
【0009】
さらに、該方法は、
HMM-RFハイブリッドモデルを構築するステップをさらに含み、
HMM-RFハイブリッドモデルは、6つのHMMモデル及び1つのRFモデルを含み、ここで、6つのHMMモデル
{HMM1,HMM2,HMM3,HMM4,HMM5,HMM6}はそれぞれ大型車両の6つの走行条件に対応し、走行条件は、直線走行、通常左折走行、通常右折走行、左折横転危険走行、右折横転危険走行及び交互走行を含み、
車両状態データをそれぞれ6つのHMMモデルに入力した後、各HMMモデルの多次元確率出力をRFモデルの入力ベクトルとし、RFモデル出力の結果を大型車両の状態の予測結果とし、
ここで、上記HMM-RFハイブリッドモデルの訓練プロセスは、
スライド窓法を用いて訓練データを時系列から時間帯系列に分割し、メンバシップ関数を用いて訓練データ中の各観測値系列をファジィ化した後、各観測値系列を総合的に考慮して時系列セグメントを離散化するステップ1)と、
訓練データを各HMMモデルにそれぞれ入力し、HMMモデルが収束又は最大反復回数に達するまでHMMモデルを反復訓練し、設定した自己回帰モデルの最大次数に基づいて、AR自己回帰モデルを用いてHMMモデルの予測観測可能時系列を計算するステップ2)と、
Viterbi復号アルゴリズムを用いて車両状態のトレンド予測を行うステップ3)と、
各次HMMモデルの予測出力に対応する車両状態と実際の車両計測状態とを比較し、最終的に最適な自己回帰モデルの次数Nを決定し、N次HMM横転推定モデルを作成するステップ4)と、
訓練して各タイプのHMMモデルを得た後、訓練データについて、対応するタイプのHMMモデルの多次元確率出力をランダムフォレストRFモデルの入力ベクトルとしてモデル訓練を行い、最終的なHMM-RFハイブリッドモデルを作成するステップ5)とを含む。
【0010】
さらに、ステップ3は、
将来の時刻の大型車両走行状態に横転の危険性がないと予測された場合、収集した大型車両の状態データに対する大型車両の状態予測処理を停止し、この将来の時刻になると、収集した大型車両の状態データに対する大型車両の状態予測処理を再開するステップをさらに含む。
【0011】
第2の態様では、データ収集モジュール、処理モジュール及び警報モジュールを備えるHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告システムを提案、
データ収集モジュールは、大型車両状態データをリアルタイムで収集することに用いられ、
処理モジュールは、収集した大型車両状態データに基づいて、HMM-RFハイブリッドモデルに基づいて大型車両状態を予測し、大型車両状態の予測結果を取得し、大型車両状態の予測結果に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、警報モジュールを制御して対応する警告情報を発することに用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は次のとおりである。
1)本発明による大型車両横転警告方法では、厳密な数学的構造と信頼できる計算性能を有するHMM_RFハイブリッドモデルを用いることにより、車両荷重や重心などのパラメータ情報を正確に把握することなく、大型車両の横転危険性を容易、正確かつ迅速に予測することができ、また、このモデルには優れたロバスト性及びリアルタイム性がある。
【0013】
2)従来の車両警告システムは静的警告システムであり、発生しようとする横転の危険度を動的且つ正確に予測することができない。それに対して、本発明で提案されたHMM-RFハイブリッドモデルに基づく動的警告アルゴリズムは、現在の車両走行状態と車両状態遷移確率計算とを用いて、将来のある期間内の大型車両の横転危険の発生をリアルタイムで動的かつ正確に予測することができる。
【0014】
図面を用いて本発明についてさらに説明するが、図面における実施例は、本発明に対するいかなる制限を構成するものではなく、当業者にとっては、進歩性のある労力労働を必要とせずに、以下の図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に示す大型車両横転警告方法の模式図である。
図2】本発明の実施例に示す大型車両横転状態の推定モデルの推定アルゴリズム模式図である。
図3】本発明の実施例に示すHMM-RFモデルの構築フローチャートである。
図4】本発明の実施例に示す階層HMM-RF状態予測ハイブリッドモデルのアルゴリズムフレームの模式図である。
図5図4に示す走行状態確率切り替え層の構造模式図である。
図6】本発明の実施例に示す大型車両横転警告方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の適用シナリオを参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0017】
図1は、HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告方法を示しており、この方法は、ステップ1~ステップ3を含む。
【0018】
ステップ1:大型車両の状態データをリアルタイムで収集する。
【0019】
好ましくは、大型車両状態データは、大型車両の車速、横加速度、及びハンドル角信号を含む。
【0020】
大型車両の車速、横加速度、及びハンドル角信号をセンサでリアルタイムに取得する。
【0021】
上記大型車両状態データをリアルタイムで収集した後、取得した大型車両状態データに対して、信号調整及びアナログ・デジタル変換処理を含むフィルタリング処理を行うステップをさらに含む。
【0022】
ステップ2:収集した大型車両状態データから、HMM-RFハイブリッドモデルに基づいて大型車両状態を予測し、大型車両状態の予測結果を取得する。
【0023】
HMM-RFハイブリッドモデルは、6つのHMMモデル及び1つのRFモデルを含み、ここで、6つのHMMモデル
{HMM1,HMM2,HMM3,HMM4,HMM5,HMM6}ははそれぞれ大型車両の6つの走行条件(大型車両状態)に対応し、その走行条件は直進走行、通常左折走行、通常右折走行、左折横転危険走行、右折横転危険走行及び交互走行を含み、
車両状態データを6つのHMMモデルにそれぞれ入力した後、HMMモデルの多次元確率出力をRFモデルの入力ベクトルとし、RFモデル出力の結果を大型車両の状態の予測結果とする。
【0024】
ここで、上記HMM-RFハイブリッドモデルの訓練プロセスは、
スライド窓法を用いて訓練データを時系列から時間帯系列に分割し、メンバシップ関数を用いて訓練データ中の各観測値系列をファジィ化した後、各観測値系列を総合的に考慮して時系列セグメントを離散化するステップ1)と、
訓練データを各HMMモデルにそれぞれ入力し、HMMモデルが収束又は最大反復回数に達するまでHMMモデルを反復訓練し、設定した自己回帰モデルの最大次数に基づいて、AR自己回帰モデルを用いてHMMモデルの予測観測可能時系列を計算するステップ2)と、
Viterbi復号アルゴリズムを用いて車両状態のトレンド予測を行うステップ3)と、
各次HMMモデルの予測出力に対応する車両状態と実際の車両計測状態とを比較し、最終的に最適な自己回帰モデルの次数Nを決定し、N次HMM横転推定モデルを作成するステップ4)と、
訓練して各タイプのHMMモデルを得た後、訓練データについて、対応するタイプのHMMモデルの多次元確率出力をランダムフォレストRFモデルの入力ベクトルとしてモデル訓練を行い、最終的なHMM-RFハイブリッドモデルを作成するステップ5)とを含む。
【0025】
大型車両状態データのリアルタイム観測系列をHMM-RFハイブリッドモデルに入力し、フォワード比較アルゴリズムにより現在の車両状態を最もよく記述できるHMMモデルを判定し、それに対応する走行条件を現在の大型車両の横転状態とする。
【0026】
6つのHMMモデルにそれぞれ入力し、フォワード比較アルゴリズムにより現在の車両状態を最もよく記述できるHMM-RFモデルを判定し、それに対応する走行条件を現在の大型車両状態の予測結果とする。
【0027】
大型車両の荷重、質量中心位置、慣性モーメントなどの変化範囲が大きいなどの特徴に対しては、本発明では、作成した動力学モデルを用いて車両の運動動力学の安定性及び横転の安定性の影響因子を重点として研究した。実車では、車両の一部の構成部分(サスペンションやタイヤ)が強い非線形特性を示す場合が多く、大型車両の操縦安定性の動的特性に大きな影響を与える。作成されたHMM-RFハイブリッドモデルが車両の定常状態と動的状態の過程を正確に記述できるようにするために、RFランダムフォレストアルゴリズムとHMM隠れMarkovパターン認識技術を選択して、大型車両横転警告モデルを正確に作成するという作業を実現する。ここでは、大型車両横転状態推定モデルの推定アルゴリズムを図2に示す。
【0028】
このアルゴリズムには、大型車両の走行条件に対応する6つのHMMモデルが含まれており、各HMMモデルは、大型車両の直進走行、通常左折走行、通常右折走行、左折横転危険走行、右折横転危険走行及び過渡走行という6つの条件に順次対応している。ここで、交互走行条件とは、車両の直進、左折、右折の間で交互に走行するという条件である。アルゴリズム入力はリアルタイム観測系列であり、Forward Algorithmフォワード比較アルゴリズムにより現在の車両状態を最もよく記述できるHMMモデルを判定し、すなわち現在の車両状態を推定する。
【0029】
ここで、HMM-RFハイブリッドモデルの構築手順を図3に示す。
【0030】
HMM-RFモデルの作成過程は以下のとおりである。(1)スライド窓法を用いて、時系列全体を時系列セグメントに分割し、時系列セグメントと各状態との対応関係を考慮して、各状態に対応する各観測値系列の境界値に応じて、メンバシップ関数を用いて各観測値系列をファジィ化し、各観測値系列を総合的に考慮して時系列セグメントを離散化する。(2)HMMモデルが収束又は最大反復回数に達するまで反復すると同時に、設定した自己回帰モデルの最大次数に基づいて、AR自己回帰モデルを用いてHMMモデルの予測観測可能時系列を計算する。(3)Viterbi復号アルゴリズムを用いて車両状態のトレンド予測を行う。(4)各次HMMモデルの予測出力に対応する車両状態と実際の車両計測状態とを比較し、最終的に最適な自己回帰モデルの次数を決定する。これにより、N次AR-HMM横転推定モデルの作成プロセスが実現される。(5)訓練して対応するタイプのHMMモデルを得た後、元々最大尤度値を計算していた多次元確率出力をランダムフォレストRFモデルの入力ベクトルとしてモデル訓練を行う。HMM-RFハイブリッドモデルを作成した後、異なる車速、横加速度及び各種のステアリング入力でのオンライン実車試験データを用いてこのモデルの推定精度を検証し、大型車両の動的予測アルゴリズムの基礎を築く。
【0031】
ステップ3:大型車両状態の予測結果に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、対応する警告情報を発する。
【0032】
好ましくは、ステップ3は、
取得した大型車両状態の予測結果と前時刻の大型車両状態とに基づいて、将来の時刻の大型車両の走行状態を予測し、将来の時刻の大型車両の走行状態に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、対応する警告情報を発するステップをさらに含む。
【0033】
好ましくは、ステップ3は、
将来の時刻の大型車両の走行状態に横転の危険性がないと予測された場合、収集した大型車両状態データの解析を中止し、将来の時刻になると、収集した大型車両状態データの解析を再開するステップをさらに含む。
【0034】
本願で提案されたHMM-RFハイブリッドモデルに基づいて、本願は、HMM-RFハイブリッドモデルに基づく、最上位層、隠れ層、及び状態観測層を含むアルゴリズムフレームワークを有する大型車両の状態予測アルゴリズムをさらに提案し、
これらのうち、状態観測層は、横運働状態(横加速度)、速度等級(車速)、ステアリング運働状態(ハンドル角)などのセンサデータを収集し、データをベクトル形式の観測系列に分類して処理し、隠れ層のHMMモデルの入力観測系列とする、
隠れ層では、各xノードは1つのHMMモデルとして定義され、HMM-RFハイブリッドモデルの中の1つの大型車両状態のHMMモデルに対応し、各HMMモデルは、出力された多次元確率を最上位層に入力し、最上位層はRFモデルに対応し、RFモデルは、各HMMモデルの多次元確率に基づいて各走行状態の尤度値を取得し、尤度値が最大となる状態を予測された現在車両走行状態として選出し、予測された現在車両走行状態に基づいて大型車両の横転の危険性の有無を判定する。
【0035】
また、最上位層は、現在の車両状態の予測結果と前時刻の車両走行状態とに基づいて、将来の時刻に車両走行状態が切り替わる確率をさらに算出し、それにより、将来の時刻の車両走行状態を精度良く予測することができる。
【0036】
その中で、最上位層で将来の時刻の車両走行状態を予測する構造はViterbiアルゴリズムでよく使われるトレリス(Trellis)構造体形式を採用し、具体的な走行状態確率切り替え層の構造を図5に示す。
【0037】
上記の分析により、HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転状態予測アルゴリズムは、階層構造を利用し、隠れ層から推定された現在時刻の車両状態と走行状態確率切り替え層から将来の時刻の車両走行状態を正確に予測することにより、大型車両の横転の危険性の動的予測機能を実現していることが分かった。
【0038】
上記方法に基づいて、本願は、図6に示すように、大型車両の横転のオンライン警告方法を提案する。
【0039】
車両センサ信号に基づいてリアルタイムで収集された車速、ハンドル角、及び横加速度信号の前処理後(フィルタリング後)の信号に基づいて、大型車両横転状態推定・予測モジュールを経て、訓練されたHMM-RFハイブリッドモデル及びViterbi復号アルゴリズムに基づいて観測系列に対応する状態をオンラインで予測し、横転状態であれば、大型車両の警告装置をトリガーする。
【0040】
モデル計算量を削減し、警告のリアルタイム性を確保するためには、横転警告閾値をX秒(対応する自己回帰モデルの次数が大きい、つまり、多次自己回帰モデル)に設定し、将来予測されるX秒の間、大型車両の走行状態が定常状態であれば、計算を一定時間(例えばX秒)停止し、それを超えると、警告を継続する。
【0041】
1つのシナリオとして、Xは2秒である。
【0042】
以上からわかるように、HMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告アルゴリズムは、車両パラメータ(重量、質量中心位置や慣性モーメント)の変化による影響を受けず、車載センサ信号及び訓練されたHMM-RFハイブリッドモデルに基づき、確率統計方法を利用して車両の横転状態を正確且つ動的に算出し、また、この警告アルゴリズムはリアルタイム性が良く、ロバスト性及び耐干渉性が高く、大型車両横転警告への応用に非常に適しており、大型車両の運転の安全性を高めるのに役立つ。
【0043】
本発明は、上記提案された大型車両横転警告方法に基づいて、データ収集モジュール、処理モジュール、及び警報モジュールを備えるHMM-RFハイブリッドモデルに基づく大型車両横転警告システムをさらに提案し、ここで、
データ収集モジュールは、大型車両状態データをリアルタイムで収集することに用いられ、
処理モジュールは、収集した大型車両状態データに基づいて、HMM-RFハイブリッドモデルに基づいて大型車両状態を予測し、大型車両状態の予測結果を取得し、大型車両状態の予測結果に基づいて横転の危険性があるか否かを判定し、横転の危険性がある場合、警報モジュールを制御して対応する警告情報を発することに用いられる。
【0044】
ここで、データ収集モジュールは、大型車両に配置された横加速度センサ、ハンドルセンサ、及び車速センサを含み、データ収集モジュールと処理モジュールは信号伝送モジュールを介してデータを交換し、車両の走行状態はセンサによりリアルタイムで収集される。
【0045】
処理モジュールは、主に、受信した大型車両状態データを処理し、リアルタイム車両状態に応じてHMM-RFハイブリッドモデルに基づく横転警告方法を実行し、現在の状態で発生しそうな横転の危険性を予測し、警報モジュール(警告灯やブザー)により運転者に適時に誤操作を修正するように警告し、それにより、車両横転事故の発生を回避することに用いられる。
【0046】
好ましくは、処理モジュールは、さらに、HMM-RFハイブリッドモデルを構築することに用いられる。
【0047】
以上提案された大型車両横転警告システムは、さらに、以上提案された大型車両横転警告方法の各ステップ及び各ステップに対応する具体的な実施形態を実現することに用いられる。本願は、ここで、繰り返し説明しない。
【0048】
なお、本発明の各実施例の各機能ユニット/モジュールは、1つの処理ユニット/モジュールに集積されてもよく、各ユニット/モジュールが独立して物理的に存在してもよく、2つ以上のユニット/モジュールが1つのユニット/モジュールに集積されてもよい。上記集積されたユニット/モジュールは、ハードウェアの形態で実現されてもよく、ソフトウェア機能ユニット/モジュールの形態で実現されてもよい。
【0049】
以上の実施形態の説明にて、当業者は、ここで説明された実施例をハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、コードまたはそれらの任意の適当な組合せで実現できることを明瞭に理解すべきである。ハードウェアの実現のために、プロセッサは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号プロセッサ(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサー、ここで説明した機能を実現するように設計されている他の電子ユニット、あるいはこれらを組み合わせたもので実現されてもよい。ソフトウェアの実現のために、実施例の一部または全てのプロセスは、関連するハードウェアが完了するようにコンピュータプログラムに命令することができる。実現された場合、上記プログラムをコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶してもよいか、または、コンピュータ読み取り可能な媒体における1つ以上の命令またはコードとして伝送してもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含み、通信媒体は、1つの方向から他の場所に転送するコンピュータプログラムの任意の媒体であってもよい。記憶媒体は、コンピュータがアクセスできる任意の使用可能な媒体であってもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMまたは他の光ディスク記憶裝置、磁気ディスク記憶裝置または他の磁気記録デバイス、または命令またはデータ構造の形で所望のプログラムコードを搬送または記憶するために使用され、そしてコンピュータによってアクセスできる他の任意の媒体を含むことができる。
【0050】
なお、以上の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を制限するものではなく、好適な実施例を参照しながら本発明について詳細に説明したが、当業者は、本発明の技術案の実質及び範囲から逸脱することなく、本発明の技術案に対して補正や等価置換を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6