(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】固定具およびグレーチングユニット
(51)【国際特許分類】
E03F 5/06 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
E03F5/06 Z
(21)【出願番号】P 2021019224
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504281891
【氏名又は名称】株式会社 中央産業
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大
(72)【発明者】
【氏名】安藤 義純
(72)【発明者】
【氏名】小関 勝治
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-140959(JP,A)
【文献】特開2007-085143(JP,A)
【文献】特開2015-212500(JP,A)
【文献】特開2000-204647(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0461763(KR,Y1)
【文献】特開2005-42468(JP,A)
【文献】実開昭55-13291(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製であって、
複数のメインバーを並列して構成された樹脂製のグレーチングにおける
、前記複数のメインバーのうちの1つのメインバーの端部に対して取り付けられる取付部と、
前記取付部の端部に対して前記メインバーの延在方向に突出する、少なくとも一部が弾性変形可能な突出部と、
を有する、固定具。
【請求項2】
前記突出部は、
前記メインバーの延在方向に沿った前記取付部側とは逆側の端部がリブ形状のリブ部によって形成される、請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記メインバーは、水平方向に延びる横板部と、前記横板部から下方に延びる脚部とを有し、
前記突出部は、前記メインバーに対して取り付けた際に前記メインバーの端面に当接するカバー部を有し、
前記リブ部は、
前記カバー部の主面から突出して前記横板部に対応して水平方向に延びる部分と、
前記カバー部の主面から突出して前記脚部に沿って上下方向に延びる部分と、を含む、請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記突出部の端部の下端に、下方へ向かうにつれて突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
前記突出部の少なくとも一部は、Dタイプデュロメータ硬さがD30~D50である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
複数のメインバーを並列して構成されて、前記複数のメインバーの端部が排水流路の側面と対向するように設置される樹脂製のグレーチングと、
前記複数のメインバーのうちの一部のメインバーに対して
、前記メインバー毎に個別に固定される樹脂製の固定具と、
を有し、
前記固定具は、
前記メインバーの端部に対して取り付けられる取付部と、
前記取付部の端部に対して前記メインバーの延在方向に突出する、少なくとも一部が弾性変形可能な突出部と、
を含む、グレーチングユニット。
【請求項7】
前記固定具の前記メインバーに対する突出長は、前記排水流路の側面と前記メインバーの端部との間の距離に対して0.1mm~1mm大きい、請求項6に記載のグレーチングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具およびグレーチングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溝に対して取り付けられるグレーチングとして、金属製または樹脂製のグレーチングが知られている。例えば、特許文献1には、樹脂製の複数のメインバーをジョイントによって連結したグレーチングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、樹脂製のグレーチングは軽く、一般的に受枠に対して載置することで敷設されるため、受枠に対して移動可能(すべる)であり、例えば浮き上がりが発生する可能性があった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、グレーチングを安定して設置することが可能な樹脂製の固定具およびこの固定具を含むグレーチングユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る固定具は、樹脂製であって、複数のメインバーを並列して構成された樹脂製のグレーチングにおける前記メインバーの端部に対して取り付けられる取付部と、前記取付部の端部に対して前記メインバーの延在方向に突出する、少なくとも一部が弾性変形可能な突出部と、を有する。
【0007】
上記の固定具によれば、メインバーの端部に対して取付部が取り付けられ、メインバーの延在方向に突出部が突出する。突出部の少なくとも一部が弾性変形可能であるため、固定具をメインバーに対して取り付けた状態のグレーチングを溝等の排水流路に設置するときに、突出部が排水流路に対して押し当てられるように弾性変形した状態でグレーチングを設置することができる。そのため、グレーチングの浮き上がり等が防がれるため、グレーチングを安定して設置することができる。
【0008】
前記突出部は、前記メインバーの延在方向に沿った前記取付部側とは逆側の端部がリブ形状のリブ部によって形成される態様とすることができる。
【0009】
上記のように、突出部の端部がリブ部によって構成されている場合、固定具をメインバーに対して取り付けた状態のグレーチングを排水流路に設置するときには、リブ部が排水流路に対して押し当てられることになる。このような構成であってもグレーチングを安定して設置することができる。さらに、突出部がリブ部によって構成される場合、固定具の材料を減らすことができるため、コスト削減ができる。
【0010】
前記メインバーは、水平方向に延びる横板部と、前記横板部から下方に延びる脚部とを有し、前記リブ部は、前記横板部に対応して水平方向に延びる部分と、前記脚部に沿って上下方向に延びる部分と、を含む態様とすることができる。
【0011】
上記のように、横板部および脚部を有するメインバーに対応させて、リブ部が水平方向に延びる部分と、上下方向に延びる部分と、を含む場合、リブ部の強度が高められるため、グレーチングが受ける負荷の方向等によらずグレーチングを安定した状態で設置することが可能となる。
【0012】
前記突出部の端部の下端に、下方へ向かうにつれて突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面を有する態様とすることができる。
【0013】
突出部の端部の下端に突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面を有することで、固定具をメインバーに対して取り付けた状態のグレーチングを排水流路に設置する際に突出部が排水流路と干渉することが防がれる。また、傾斜面を利用した設置が可能となるため、作業性が向上する。
【0014】
前記突出部の少なくとも一部は、Dタイプデュロメータ硬さがD30~D50である態様とすることができる。
【0015】
突出部の少なくとも一部が上記の硬度を有している場合、弾性変形が十分に可能であるためグレーチングの安定した設置も実現し、さらに、排水流路への取り付けおよび取り外しを容易に行うことができるため作業性が向上する。
【0016】
本開示の一形態に係るグレーチングユニットは、複数のメインバーを並列して構成されて、前記複数のメインバーの端部が排水流路の側面の対向するように設置される樹脂製のグレーチングと、前記複数のメインバーのうちの一部のメインバーに対して固定される樹脂製の固定具と、を有し、前記固定具は、前記メインバーの端部に対して取り付けられる取付部と、前記取付部の端部に対して前記メインバーの延在方向に突出する、弾性変形が可能な突出部と、を含む。
【0017】
上記のグレーチングユニットによれば、メインバーの端部に対して固定具の取付部が取り付けられ、メインバーの延在方向に固定具の突出部が突出する。突出部が弾性変形可能であるため、グレーチングユニットを排水流路に設置するときに、固定具の突出部が排水流路に対して押し当てられるように弾性変形した状態でグレーチングを設置することができる。そのため、グレーチングの浮き上がり等が防がれるため、グレーチングを安定して設置することができる。
【0018】
前記固定具の前記メインバーに対する突出長は、前記排水流路の側面と前記メインバーの端部との間の距離に対して0.1mm~1mm大きい態様とすることができる。
【0019】
固定具の突出長を上記の範囲に設定することで、排水流路に対するグレーチングユニットの取り付けおよび取り外しがさほど困難でなく、且つ、取り付けた後のグレーチングユニットが排水流路に対して移動することが適切に抑制されるため、安定した設置が実現される。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、安定してグレーチングを設置することが可能な樹脂製の固定具およびこの固定具を含むグレーチングユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るグレーチングユニットの設置状態を説明する図である。
【
図2】
図2は、固定具を適用したグレーチングユニットの設置状態を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に対応するグレーチングの断面図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)は固定具の構成を説明する斜視図である。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)は固定具の構成を説明する図である。
【
図6】
図6は、グレーチングユニットを排水溝に取り付けた状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(グレーチングユニットおよびグレーチング)
図1は、以下の実施形態で説明する固定具を適用したグレーチングユニットの設置状態を説明する図である。また、
図2は、固定具を適用したグレーチングユニットの設置状態を説明する図である。
図3は、
図1のIII-III線に対応するグレーチングの断面図である。
図1~
図3を参照しながら、まず、グレーチングユニット1を構成するグレーチング10について説明し、その後、グレーチング10に取り付けられる固定具20について説明する。なお、グレーチング10とは、排水流路の一部を構成する排水溝、排水桝、排水口等を覆うように取り付けられる部材である。グレーチング10はこれらの対象物に対する蓋として機能し得る。グレーチングユニット1は、グレーチング10に対して固定具20を取り付けた(嵌め込まれた)ものである。
図1では、グレーチングユニット1が排水流路の一例として排水溝90に対して取り付けられる状態を示しているが、グレーチングユニット1は、排水溝90の上方にある状態を示している。グレーチングユニット1の排水溝90への取り付けについては後述する。
【0024】
図1および
図2に示されるように、グレーチングユニット1は、グレーチング10と固定具20とを有する。グレーチング10は、所定の方向に並設された複数のメインバー11と、隣接するメインバー11同士を接続する連結部材12と、を含んで構成される。
【0025】
メインバー11は、断面形状が略T字状の棒状の部材であって、上方において水平方向に延びる横板部111と天板部から下方に延びる脚部112とを含む。横板部111は、メインバー11の上面を構成する部材であり、横板部111の上面には滑り止め用の凸部113が形成されている。凸部113は、長手方向(メインバー11の延在方向)に対して交差する方向(短手方向)に延びている。凸部113の形状は特に限定されないが、例えば、短手方向の長さが互いに異なる2種類の凸部113が交互に設けられていてもよい。脚部112は、横板部111の中央から下方に延びる。
【0026】
脚部112は、断面形状が略長方形となっていて上下方向に延びている。ただし、連結部材12が取り付けられる位置には、連結部材12が嵌合可能な嵌合部114が設けられている。例えば、嵌合部114は、メインバー11の長手方向の端部の近傍に2箇所設けられる。ただし、メインバー11の長さ、メインバー11の形状・強度等に応じて嵌合部114の数は適宜変更される。
【0027】
連結部材12は、平行に配置された複数のメインバー11のうち隣接する2つのメインバー11を連結する部材である。
図2では、一方(図示左側)の嵌合部114の下方に1つの連結部材12を示し、他方(図示右側)の嵌合部114の下方に2つの連結部材12(121,122)を示している。連結部材12は、メインバー11に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に配置される2つの凹部12a,12bと凹部12a,12bの上方端部同士を接続する接続部12cと、を有する。凹部12a,12bの内部は、それぞれ内側に突出する爪部12dが設けられる。一方、嵌合部114には、連結部材12を取り付けた際に、爪部12dに対して対向配置される凹部114dが設けられる(
図3参照)。この結果、嵌合部114が凹部12a,12bに対して入り込んだ状態で、連結部材12が嵌合部114に対して嵌合可能とされている。
【0028】
連結部材12の凹部12a,12bは、互いに異なるメインバー11のそれぞれに設けられた嵌合部114に対して、それぞれ嵌合する。したがって、1つの連結部材12は、隣接するメインバー11のそれぞれに対して凹部12a,12bが嵌合することによって、2つのメインバー11を連結する機能を有する。
【0029】
なお、1つのメインバー11の1つの嵌合部114には、2つの連結部材12の凹部が嵌合する。
図2および
図3では、1つのメインバー11Xの一方の嵌合部114に対して、連結部材121の凹部121bと、連結部材122の凹部122aと、が嵌合する状態を示している。凹部121bと凹部122aとは、1つの嵌合部114に対して、長手方向に沿って互いに異なる位置に嵌合する。
図3に示すように、連結部材121の凹部121aにはメインバー11Xとは異なるメインバー11Yが嵌合し、連結部材122の凹部122bにはメインバー11X,11Yとは異なるメインバー11Zが嵌合する(
図3では不図示)。このように、1つのメインバー11Xの嵌合部114に対して2つの連結部材12が嵌合することによって、1つのメインバー11Xを挟んで2つのメインバー11Y,11Zが連結される。この状態を繰り返すことによって、複数のメインバー11が平行に配列された状態で、連結部材12によって互いに連結されたグレーチング10が構成される。
【0030】
上記のグレーチング10は、所謂樹脂製グレーチングであって、グレーチング10を排水溝90等に設置した際に上面が露出するメインバー11が少なくとも樹脂製である。すなわち、「樹脂製のグレーチング」とは、少なくともメインバー11が樹脂製のグレーチングであり、他の部材の一部(例えばメインバー11を固定するネジ等)に樹脂とは異なる材料(例えば、金属等)が用いられていてもよい。なお、メインバー11を含むグレーチング10に用いられる樹脂としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂等が挙げられる。
【0031】
(固定具)
次に、固定具20について説明する。固定具20は、グレーチング10を排水溝90に対して取り付ける際に、排水溝90の幅方向に対するグレーチング10の移動を規制するための部材である。そのため、固定具20は、
図1、
図2等に示すように、メインバー11の長手方向の端部に取り付けられ得る。
【0032】
図4(a)および
図4(b)は固定具20の構成を示す互いに異なる方向からの斜視図であり、
図5(a)は固定具20の背面図(固定具20をメインバー11に取り付けた際に、露出する側の面を見た図)であり、
図5(b)は固定具20の側面図である。
【0033】
固定具20は、メインバー11に取り付けた際に横板部111の上面を覆う天板部21と、メインバー11の端面115(
図2参照)、すなわち、横板部111および脚部112の端面を覆うカバー部22と、メインバー11の横板部111および脚部112の側面を覆う一対の側壁部23と、を含んで構成される。また、天板部21およびカバー部22には、メインバー11から離間する方向へ突出するリブ形状のリブ部24,25,26が設けられる。天板部21および一対の側壁部23は、メインバー11の端部を覆う取付部201に相当する。また、カバー部22およびリブ部24,25,26は、メインバー11に対して固定具20を取り付けた際に、メインバー11の端面から突出する突出部202に相当する。
図4(a)および
図4(b)では、取付部201と突出部202との境界を破線で示している。なお、固定具20は、メインバー11の端部のうち底面(脚部112の下面)を覆う部材を有していない。すなわち、固定具20の下方は開放した形状とされている(
図4(a)参照)。下方が開放していることによって、内部に水等排水流路を流れる液体が滞留することが防がれる。
【0034】
天板部21は、横板部111の上面に対応した形状の平板状とされている。天板部21の下面21aは、メインバー11に対して固定具20を取り付けた場合にメインバー11の上面と当接するように、メインバー11の上面に対応した形状となっている。また、天板部21には、切り欠き211が設けられていてもよい。切り欠き211は、メインバー11に対して固定具20を取り付けた場合、天板部21が横板部111の上面に形成された凸部113に対して干渉することを防ぐために、凸部113に対応する位置に形成され得る。天板部21の厚みは、例えば、凸部113の高さ(横板部111の上面からの高さ)と同等~凸部113の高さに対して2倍程度とすることができ、例えば、0.5mm~2mm程度とすることができる。なお、天板部21の上面に連続してリブ形状のリブ部24が形成されている。
【0035】
カバー部22は、天板部21に対して下方に延びる平板状であり、メインバー11の端面115に対応した形状とされている。カバー部22の一方の主面22aは、天板部21の下面21aに連続し、メインバー11に対して固定具20を取り付けた場合にメインバー11の端面115と当接するように、メインバー11の端面115に対応した形状となっている。カバー部22の厚みは、例えば、天板部21と同程度とすることができ、例えば、0.5mm~2mm程度とすることができる。なお、カバー部22のメインバー11側の主面22aとは逆側の主面22bには、リブ形状のリブ部25,26が形成されている。
【0036】
一対の側壁部23は、それぞれ天板部21から連続して下方に延びる板状であり、メインバー11の端面115に対応した形状とされている。また、一対の側壁部23は、天板部21およびカバー部22を挟んで対向配置されている。メインバー11の一対の側面は、長手方向に対して直交する断面において上下方向に延びる中心線に沿って対称とされている。したがって、メインバー11の一対の側面に対応して設けられる一対の側壁部23も、対称な形状とされている。一対の側壁部23は、それぞれ、メインバー11に対して固定具20を取り付けた場合にメインバー11の端面115から続く側面に対して当接する形状とされている。具体的には、側壁部23は、それぞれ、天板部21から連続して横板部111の側面に沿って上下方向に延びる第1壁部23aと、第1壁部23aの下側の端部から、横板部111の下面に沿って水平に内側(対向する側壁部23へ近付く方向)へ延びる段差部23bと、段差部23bの内側の端部から脚部112の側面に沿って上下方向に延びる第2壁部23cと、を含む。このように、一対の側壁部23は、段差部23bを挟んで上下方向に延びる2つの壁部を有している。側壁部23の厚みは、例えば、天板部21と同程度とすることができ、例えば、0.5mm~2mm程度とすることができる。なお、側壁部23の第1壁部23aに連続してリブ形状のリブ部25が形成され、第2壁部23cに連続してリブ形状のリブ部26が形成されている。
【0037】
リブ部24は、平板状の天板部21の上面のうちカバー部22の主面22bに連続する直線部分から連続して、主面22bから離間する方向に水平に延びているリブ形状とされている。リブ部24による取付部に対する突出長(カバー部22のうち、メインバー11に対して当接する内側の主面22aに対する突出長)は、グレーチングユニット1と排水溝90との大きさの関係に応じて設定され得るが、例えば、1mm~5mm程度とすることができる。ただし、リブ部24は、カバー部22の主面22aよりも突出した形状となるように、突出長は設定され得る。リブ部24の端面24aは上下方向に平坦とされていてもよい。リブ部24の幅は、例えば、0.5mm~3mm程度とすることができる。ただし、リブ部24の幅は、材料の強度・剛性等に応じて設定される。
【0038】
上述したように、本実施形態で説明する突出長とは、固定具20をメインバー11に対して取り付けた際にメインバー11の延在方向(長手方向)に沿ってメインバー11の端部に対してリブ部24の端部がどの程度突出するかを規定しているものである。したがって、「突出長」とはリブ部の長さを規定するものではなく、カバー部22の厚みを含んでいる場合がある。この点は、後述のリブ部25,26についても同様である。
【0039】
一対のリブ部25は、リブ部24の両方の端部のそれぞれから連続して下方に延びるリブ形状とされている。一対の側壁部23のうち一方の側壁部23の第1壁部23aの主面(外側の主面)に対して一方のリブ部25が連続して設けられ、他方の側壁部23の第1壁部23aの主面(外側の主面)に対して他方のリブ部25が連続して設けられている。一対のリブ部25は、それぞれ第1壁部23aと同じ長さとなるように(第1壁部23aの下端まで)上下方向に延びている。また、一対のリブ部25のそれぞれは、リブ部24の端面24aに連続して上下方向に平坦に延びる端面25aと、端面25aの下方に設けられて端面25aに対して遠ざかるにつれて突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面25bとを有する。端面25aは端面24aに連続して上下方向に延びているので、リブ部25の突出長(カバー部22のうち、メインバー11に対して当接する内側の主面22aに対する突出長)は、端面25aにおいてはリブ部24と同程度となる。また、傾斜面25bが設けられているので、リブ部25は、下方へ向かうにつれて突出長が小さくなるテーパ形状とされている。リブ部25の幅は、リブ部24と同様に例えば、0.5mm~3mm程度とすることができる。
【0040】
一対のリブ部26は、リブ部24からそれぞれ第2壁部23cに沿って延びるように連続して下方に延びるリブ形状とされている。一対の側壁部23のうち一方の側壁部23の第2壁部23cの主面(外側の主面)に対して一方のリブ部26が連続して設けられ、他方の側壁部23の第2壁部23cの主面(外側の主面)に対して他方のリブ部26が連続して設けられている。一対のリブ部26は、それぞれ第2壁部23cと同じ長さだけ(第2壁部23cの下端まで)上下方向に延びている。また、一対のリブ部26のそれぞれは、リブ部24の端面24aに連続して上下方向に平坦に延びる端面26aと、端面26aの下方に設けられて端面26aに対して遠ざかるにつれて突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面26bとを有する。端面26aは端面24aに連続して上下方向に延びているので、リブ部26の突出長(カバー部22のうち、メインバー11に対して当接する内側の主面22aに対する突出長)は、端面26aにおいてはリブ部24と同程度となる。また、傾斜面26bが設けられているので、リブ部26は、下方へ向かうにつれて突出長が小さくなるテーパ形状とされている。なお、傾斜面26bの傾斜角度(先細りとなる角度)は、傾斜面25bの傾斜角度よりも小さい(
図5(b)参照)。ただし、この傾斜角度は特に限定されない。リブ部26の幅は、リブ部24,25と同様に例えば、0.5mm~3mm程度とすることができる。
【0041】
上記の固定具20の色は特に限定されないが、例えば、全体的に、または一部が半透明であってもよい。固定具20が半透明である場合、固定具20を取り付けるメインバー11の状態を固定具20の外側から確認することができる。また、固定具20を取り付けることによるメインバー11の意匠性の低下が防がれる。
【0042】
また、固定具20は、カバー部22およびリブ部24~26に相当する部分がゴム状の弾性体から構成される。このうち、リブ部24~26に相当する部分のみがゴム状の弾性体から構成されていてもよい。
【0043】
固定具20は樹脂製であり、材料としては、下記に示す範囲の硬度を呈するものであれば、その種類は限定されない。例えば、ポリプロピレン/メチルメタクリレートの共重合樹脂(EMMA)、ポリオレフィンゴムなどを用いることができる。ただし、上記の材料は一例であって、固定具20の材料は特に限定されない。固定具20は、後述のようにメインバー11に対して取り付けられた状態で排水溝90等の取り付け位置に設置される。そのため、排水溝90等への取り付けが容易であって、且つ、取り外しもある程度容易に行うことが可能な程度の硬度であると作業性が向上する。一例としては、固定具20の材料となる樹脂の硬度は、JIS K 7215;1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に基づいたDタイプデュロメータ硬さがD30~D50としてもよく、D30~D40としてもよい。
【0044】
なお、固定具20の天板部21、カバー部22、および一対の側壁部23からなる取付部については、リブ部24~26と同じまたは互いに異なるゴム状の弾性体から構成されてもよいし、他の材料から構成されてもよい。上記の天板部21、カバー部22、および一対の側壁部23のうち、取付部に相当する天板部21および一対の側壁部23は、メインバー11に対して取り付けた後はメインバー11から外れないような形状または材料が選択されると、取り扱い性が向上する。また、カバー部22についても、例えば、メインバー11の端面と当接する面を有するため、メインバー11に対して取り付けた後はメインバー11から外れないような形状または材料が選択されていてもよい。また、これらの部分は、リブ部24~26のように弾性を有していなくもよい。
【0045】
固定具20全体が弾性体から構成される場合、例えば、射出成形等を用いて一体的に成形することができる。ただし、固定具20は、複数の部材を組み合わせて成形してもよい。例えば、固定具20に対して天板部21、カバー部22、および一対の側壁部23からなる取付部を予め成形した成型体に対してリブ部24~26に相当する部分を別途形成する手順で作成してもよい。
【0046】
(グレーチングユニットの組み立ておよび設置)
固定具20は、取付部を構成する天板部21、カバー部22、および一対の側壁部23の内面によって形成される空間に、メインバー11の端部を挿入する(嵌め込む)ことで、メインバー11に対して取り付けられる。
図1に示すように、グレーチング10を構成する複数のメインバー11のうちの一部に対して固定具20が取り付けられていればよい。
図1では、1つのメインバー11Xの両端部に固定具20が取り付けられている状態を示している。このように、グレーチング10に含まれる複数のメインバー11の一部に対して固定具20を取り付けることによってグレーチングユニット1が構成される。
【0047】
グレーチングユニット1を排水溝90へ取り付ける手順について、
図1および
図6を参照しながら説明する。排水溝90の一対の縁部には、それぞれ一般的に断面がL形で例えば金属製の受枠91が設けられる。グレーチングユニット1は、
図6に示されるようにメインバー11を連結する連結部材12が受枠91の底面に当接するように受枠91上に載置される。このとき、受枠91の側壁の内面同士の幅L1に対してメインバー11の長さL2は小さく、例えば、L1とL2との差が数mm程度となる場合がある。これに対して、固定具20をメインバー11の端部に取り付けると、固定具20の突出長に応じてグレーチングユニット1におけるメインバー11の延在方向の長さを大きくすることができる。ここで、固定具20の(メインバー11に対する)突出長が受枠91の側壁とメインバー11の端部との間の距離(隙間の間隔)に対して0.1mm~1mm程度大きくなるように固定具20を選択してメインバー11に対して取り付ける。
図6に示す例の場合、メインバー11の両端での受枠91の側壁とメインバー11の端部との間の距離は、それぞれ(L1-L2)/2となる。したがって、固定具20の突出長が(L1-L2)/2に対して0.1mm~1mm大きくなるような固定具20をメインバー11に対して取り付ける。
【0048】
上記のようにして選択された固定具20を含むグレーチングユニット1を受枠91に載置しようとすると、メインバー11を対向する一対の受枠91の間に挿入する際に固定具20が弾性変形する。この状態で一対の受枠91の間にグレーチングユニット1が挿入されるため、グレーチングユニット1を一対の受枠91の間に載置した後は、固定具20が受枠に対して押し付けられた状態となるため、グレーチングユニット1が受枠91に対して移動することが抑制される。なお、固定具20の(メインバー11に対する)突出長が受枠91の側壁とメインバー11の端部との間の距離(隙間の間隔)に対して0.3mm~0.7mm程度大きくなるように固定具20を選択すると、排水溝90に対するグレーチングユニット1の取り付けおよび取り外しがさほど困難でなく、且つ、取り付けた後のグレーチングユニット1が排水溝90に対して移動することが適切に抑制される。
【0049】
なお、固定具20のうち上下方向に延びる一対のリブ部25および一対のリブ部26には、それぞれ下方に傾斜面25b,26bが形成されている。したがって、固定具20が取り付けられた状態のグレーチングユニット1を一対の受枠91の間に挿入する際に、受枠91とリブ部25,26とが干渉することが防がれる。また、傾斜面25b,26bを利用してグレーチングユニット1の挿入を容易に行うことができる。一方、リブ部24~26の端面24a,25a,26aが受枠91と当接する面となる。したがって、端面24a,25a,26aの面積をある程度確保することで、多少グレーチングユニット1が移動したとしても、グレーチングユニット1が排水溝90の受枠91から外れることが防がれ得る。したがって、端面24a,25a,26aの面積をある程度確保することを考慮して傾斜面25b,26bを設計することができる。
【0050】
なお、グレーチングユニット1では全てのメインバー11に対して固定具20を取り付ける必要はなく、例えば、並列に配置された複数のメインバー11のうちの一部に対して取り付けられていればよい。一例としては、一列に並んでいる複数のメインバー11のうち、両端の近傍のメインバー11と、中央付近のメインバー11と、の3つのメインバー11に対して固定具20を取り付けることとしてもよい。これは固定具20を取り付けることによるグレーチングユニット1の移動抑制の効果が高いためである。ただし、固定具20の取り付け位置および数はグレーチング10におけるメインバー11の数、メインバー11の長さ、固定具20の大きさ(特に受枠91の側壁とメインバー11の端部との間の距離に対するリブ部の突出長)によって変動し得る。
【0051】
また、グレーチングユニット1のメインバー11の両端に対して固定具20を取り付けてもよいし、一端のみに固定具20を取り付けてもよい。メインバー11の両端に対して固定具20を取り付ける場合は、1つのメインバー11の両端に対して固定具20が取り付けられる。すなわち、両端に固定具20が取り付けられたメインバー11が1以上含まれるように、グレーチングユニット1が構成される。
【0052】
(作用)
上記の樹脂製の固定具20および固定具20を含むグレーチングユニット1によれば、グレーチング10のメインバー11の端部に対して固定具20の取付部201が取り付けられ、メインバー11の延在方向に固定具20の突出部202が突出する。突出部202の少なくとも一部が弾性変形可能であるため、固定具20をメインバー11に対して取り付けた状態のグレーチング10をグレーチングユニット1として上述の排水溝90等の排水流路に設置するときに、突出部202が排水流路に対して押し当てられるように弾性変形した状態でグレーチング10を設置することができる。そのため、グレーチング10の浮き上がり等が防がれるため、グレーチングを安定して設置することができる。
【0053】
近年、樹脂グレーチングの需要が高まり、種々の環境で用いられている。その際、排水流路に対してグレーチングが移動可能であると、人の移動等によってグレーチングの上面に水平方向の力がかかると、グレーチングが排水流路の受枠上を滑って移動する場合があり、さらに浮き上がり等が生じる場合がある。これに対して上記のグレーチングユニット1では、一部が弾性変形可能な突出部202を有する固定具20がメインバー11の端部に取り付けられた状態で排水流路に対して設定されるため、固定具20が排水流路に対するグレーチング10の滑りを抑制することができ、グレーチング10を安定して設置することができる。
【0054】
また、樹脂製のグレーチングは、一般的に、金属製(例えば、スチール製)のグレーチングを使用しづらい場所に用いられることが多い。このような場所として、例えば、プール施設、温浴施設等のように、人等がその上を通過することが多く、滑りにくさが求められる場所が挙げられる。このような場所では、清掃等の種々の作業のためにグレーチングの取り外しが繰り返される(着脱作用が繰り返される)場所となる場合が多い。これに対して、上記の固定具20は、グレーチング10への取り付けが容易であり、且つ、グレーチングユニット1の取り外しも簡単に行うことができる。そのため、清掃等のグレーチングユニット1を取り扱う際の作業性を低下させることを防ぎながら、上述のグレーチング10の安定した設置を実現することができる。特に、上述のように種々の作業のためにグレーチングの着脱が繰り返されたとしても、グレーチングの固定性を維持することができ、長期間安定した状態を保つことができる。
【0055】
なお、固定具20の材料となる樹脂の硬度が上述の範囲であると、固定具20の有する適度な弾性を利用して、グレーチングユニット1の取り外しを容易に行うことができる。すなわち、グレーチングユニット1としての取扱い性を高めることができる。一般的に、グレーチング10のメインバー11としては、用途を考慮して剛性がある程度高いものが用いられる。それに対してメインバー11に対して取り付ける固定具20の硬度を上記の範囲とした場合、メインバー11と比較すると硬度が低いため、グレーチングユニット1の設置を比較的容易に行うことができながらも、設置後のグレーチング10の安定性が十分に高められる。
【0056】
また、上述の固定具20のように、突出部202の端部がリブ部24~26によって構成されている場合、固定具20をメインバー11に対して取り付けた状態のグレーチング10を排水流路に設置するときには、リブ部24~26が排水流路に対して押し当てられることになる。このような構成であってもグレーチングを安定して設置することができる。さらに、突出部がリブ部24~26によって構成される場合、固定具20の材料を減らすことができるため、コスト削減ができる。また、固定具20自体を小型化できるため、例えば、多数の固定具20をまとめて取り扱う際に、よりコンパクトにすることができる。
【0057】
上記のグレーチング10では、メインバー11は、水平方向に延びる横板部111と、横板部111から下方に延びる脚部112とを有する。また、固定具20のリブ部として横板部111に対応して水平方向に延びるリブ部24と、脚部112に沿って上下方向に延びるリブ部26と、を含む。このように、メインバー11に対応させて、水平方向に延びるリブ部24と、上下方向に延びるリブ部26と、を含む場合、リブ部の強度が高められるため、グレーチングが受ける負荷の方向等によらずグレーチングを安定した状態で設置することが可能となる。さらに、固定具20のように、横板部111の端部に沿って上下方向に延びるリブ部25を有している場合、剛性がさらに向上する。
【0058】
また、固定具20は、突出部202を構成するリブ部25,26の下端に突出長が小さくなるように傾斜した傾斜面25b,26bを有する。そのため、固定具20をメインバー11に対して取り付けた状態のグレーチングを排水流路に設置する際に、突出部(特にリブ部25,26)が排水流路と干渉することが防がれる。また、傾斜面25b,26bを利用した設置が可能となるため、作業性が向上する。
【0059】
突出部の少なくとも一部(例えば、リブ部24~26)は、Dタイプデュロメータ硬さがD30~D50である態様とすることができる。突出部の少なくとも一部が上記の硬度を有している場合、弾性変形が十分に可能であるためグレーチングの安定した設置も実現し、さらに、排水流路への取り付けおよび取り外しを容易に行うことができるため作業性が向上する。
【0060】
グレーチングユニット1では、固定具20のメインバー11に対する突出長は、溝の側面と前記メインバーの端部との間の距離に対して0.1mm~1mm大きい態様とすることができる。突出長を上記の範囲に設定することで、排水流路に対するグレーチングユニット1の取り付けおよび取り外しがさほど困難でなく、且つ、取り付けた後のグレーチングユニット1が排水流路に対して移動することが適切に抑制されるため、安定した設置が実現される。
【0061】
(変形例)
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0062】
例えば、メインバー11の断面形状について、上記実施形態では、横板部111と脚部112とを有するT字状である場合について説明したが、メインバー11の断面形状は上記に限定されない。メインバー11の断面形状の他の例としては、横板部に対して2つの脚部が設けられた形状、円環状、四角環状、等が挙げられる。この場合、固定具20は、断面形状に応じて取付部201の形状を変更することができる。さらに、メインバー11の断面形状に応じて突出部202の形状を変更してもよい。
【0063】
突出部202の形状は上記の構成に限定されず、例えば、リブ部24~26とは異なるブロック体等によって突出部202が構成されていてもよい。リブ部によって突出部を構成する場合、取り付け時の剛性が保たれる範囲でリブ部の配置および形状は変更してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…グレーチングユニット、10…グレーチング、11,11X,11Y,11Z…メインバー、20…固定具、24,25,26…リブ部、25b,26b…傾斜面、111…横板部、112…脚部、201…取付部、202…突出部。