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  • 特許-エアリーク検査装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】エアリーク検査装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20221024BHJP
【FI】
G01M3/26 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022122388
(22)【出願日】2022-07-30
【審査請求日】2022-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516343136
【氏名又は名称】藤山 守
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(74)【代理人】
【識別番号】100121924
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】藤山 守
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特許第7058428(JP,B1)
【文献】特許第6228285(JP,B1)
【文献】特開平08-015078(JP,A)
【文献】特開2000-304644(JP,A)
【文献】特開2001-235387(JP,A)
【文献】特開2001-330534(JP,A)
【文献】特開2005-077310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に接続される排気管と、
前記排気管から開閉弁を介して分岐し、前記排気管より細い径を有する排気細管と、
前記排気管に接続され、前記被検査体内の圧力を検出する真空計と、
前記排気管に遮断弁を介して接続された第1真空ポンプと、
前記排気細管に接続された第2真空ポンプとを備え、
前記開閉弁を閉じ、前記遮断弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気管を介して前記被検査体及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気して、
前記開閉弁を開き、前記遮断弁を閉じたとき、前記真空計の検出圧力が所定の閾値を越えるとリーク有りと判定する検査工程を行う制御部を備えることを特徴とするエアリーク検査装置。
【請求項2】
前記開閉弁は、前記排気細管の排気方向の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検査装置。
【請求項3】
前記第2真空ポンプの到達可能圧力は、前記第1真空ポンプの到達可能圧力と同等又はそれ以下であることを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検査装置。
【請求項4】
前記排気細管は、コンダクタンスが異なる複数の排気細管が並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検査工程の前に、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する準備工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記検査工程でリーク有と判定したとき、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する細管排気工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のエアリーク検査装置。
【請求項7】
被検査体に接続される排気管と、
前記排気管から開閉弁を介して分岐し、前記排気管より細い径を有する排気細管と、
前記排気管に接続され、前記被検査体内の圧力を検出する真空計と、
前記排気管に遮断弁を介して接続された第1真空ポンプと、
前記排気細管に接続された第2真空ポンプとを備え、
前記開閉弁を閉じ、前記遮断弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気管を介して前記被検査体及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する排気工程と、
前記排気工程の後、前記開閉弁を開き、前記遮断弁を閉じたとき、前記真空計の検出圧力が所定の閾値を越えるとリーク有りと判定する検査工程とを有することを特徴とするエアリーク検査方法。
【請求項8】
前記検査工程の前に、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する準備工程を有することを特徴とする請求項7に記載のエアリーク検査方法。
【請求項9】
前記検査工程でリーク有と判定したとき、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する細管排気工程を有することを特徴とする請求項7に記載のエアリーク検査方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空機器、加圧機器、密封機器等の被検査体のリークの有無を検査するエアリーク検査装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リーク検査には、水没式検査のほか、エアリークデテクタ、ヘリウムリークデテクタを用いる検査がある。エアリークデテクタには、加圧式と、吸引式(負圧式)とがある。加圧式は、被検査体に検出ガスを充填して加圧し、圧力の低下により漏れを検査する。吸引式は、被検査体を真空に排気し、圧力の上昇により漏れを検査する。これらのエアリークデテクタは、1×10-3Pa・m/sec(圧力差1気圧に換算)程度までの漏れを検査可能である。ヘリウムリークデテクタは、被検査体にヘリウムを充填し、漏れ出たヘリウムを検出するもので、製造ライン等で許容リーク量未満であるか否かのみを検査する場合には、検査時間短縮および感度維持時間の延長等の理由から1×10-6Pa・m/sec程度までの漏れ検査を行い、研究・調査・解析等に於いては、1×10-10Pa・m/sec程度までの小さな漏れを検査可能である。
【0003】
エアリークデテクタは、安価で扱いやすいが、精度は低い。ヘリウムリークデテクタは、高精度であるが、価格が非常に高く、ヘリウムガスを用いるためにランニングコストも高い。また、近年ではヘリウムガスの枯渇化に対応して、高価な回収設備の併用も普通に行われる。更に、分析管、高真空ポンプ、液体窒素冷却器等の精密で汚れに弱い構成機器を有するので、漏れ量が多く水や油の付着した被検査体を検査すると、精度が低下したり、故障しやすく、修復に非常な手間を要する等の問題がある。
【0004】
特許文献1には、従来のエアリークデテクタと価格が同等以下で、扱いやすく、ヘリウムリークデテクタに近い精度(製造ライン等で許容リーク量未満であるか否かのみを検査するレベル)で漏れを検査することができるエアリーク検査装置が本発明者により提案されている。特許文献1のエアリーク検査装置は、真空ポンプにより排気管を介して被検査体を所定圧力まで排気した後、排気管の遮断弁を閉じて排気細管のみにより排気している間に、排気管の圧力が上昇するか否かによってリークを検出している。
【0005】
特許文献1のエアリーク検査装置では、真空ポンプの到達可能圧力に極力近づくまで排気して遮断弁を閉じることで、排気細管の下流側の圧力が真空ポンプの到達可能圧力になっていると推定していた。また、特許文献1のエアリーク検査装置では、被検査体及び装置内部を検査可能な所定圧力まで排気するのに時間がかかるという問題がある。これは、大気圧から10~1Pa程度の領域まで排気する場合、到達可能圧力が0.5~1Paの真空ポンプを使用するのが一般的であるが、到達可能圧力に近づくほど排気速度が遅くなり、特に10Paから1Paに下がるのに非常に時間がかかるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6228285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる従来の問題点に鑑みてなされたもので、被検査体及び装置内部を検査可能な所定圧力までの排気するために必要な時間を短縮することができるエアリーク検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)被検査体に接続される排気管と、
前記排気管から開閉弁を介して分岐し、前記排気管より細い径を有する排気細管と、
前記排気管に接続され、前記被検査体内の圧力を検出する真空計と、
前記排気管に遮断弁を介して接続された第1真空ポンプと、
前記排気細管に接続された第2真空ポンプとを備え、
前記開閉弁を閉じ、前記遮断弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気管を介して前記被検査体及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気して、
前記開閉弁を開き、前記遮断弁を閉じたとき、前記真空計の検出圧力が所定の閾値を越えるとリーク有りと判定する検査工程を行う制御部を備えることを特徴とするエアリーク検査装置。
【0009】
前記(1)の手段では、第1真空ポンプにより排気管を介して被検査体及び排気管内を排気するとともに、第2真空ポンプにより排気細管内を排気して、排気細管の排気方向の下流側を上流側より低い圧力に排気した後、排気管と排気細管を連通させて、排気細管の上流側と下流側の圧力差により排気細管に微小流量を発生させる。被検査体にリークがあり、その漏れ量が排気細管の排気速度より大きいと、排気管の圧力が上昇する。漏れ量が小さいと、排気細管から排気されるので、排気管の圧力は上昇しない。真空計の圧力が所定の閾値より大きいと、漏れ有り、当該閾値より小さいと漏れ無しと判断できる。
【0010】
第1真空ポンプによる被検査体及び排気管内の排気は、従来のように系全体を1つの真空ポンプで所定の真空度まで排気するのに比べて、短時間で済む。また、第2真空ポンプによる排気細管の排気は、排気細管の内容積が被検査体及び排気管の内容積より小さいので、第1真空ポンプよりも小型で安価なポンプで済む。したがって、遮断弁を閉じ、開閉弁を開いた時点では、既に排気細管の下流側は上流側より低い圧力になっているので、排気細管の上流側と下流側にリーク検査に必要な圧力差を発生させるまでに要する排気時間が速くなり、検査時間を短縮することができる。複数の被検査体について検査が連続して複数回行われる場合には、検査が終了した時点で開閉弁を閉じて排気細管内を排気状態に維持しておくことで、次の検査を行う毎に排気細管内を排気する必要がなく、排気管内を排気するだけでよいので、検査全体の検査時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
(2)前記開閉弁は、前記排気細管の排気方向の上流側に設けられていることを特徴とする(1)に記載のエアリーク検査装置。
【0012】
前記(2)の手段では、開閉弁が排気細管の上流側に設けられているので、検査が終了した時点で開閉弁を閉じることで、複数の被検査体を連続して検査している間、常に排気細管内を排気状態にしておくことができる。一方、特許文献1の方法では、排気細管の上流側に開閉弁を設けた場合でも、V0、Vwを開くや否や、下流側から大量のエアーが排気細管内に侵入するため、新たに被検査物の検査を始める毎に、細管内の排気という手間のかかることを行う必要があった。
【0013】
(3)前記第2真空ポンプの到達可能圧力は、前記第1真空ポンプの到達可能圧力と同等又はそれ以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のエアリーク検査装置。
【0014】
前記(3)の手段では、第2真空ポンプは、被検査体及び排気管より内容積が小さい排気細管内を排気するので、第1真空ポンプの到達可能圧力より低くても、第1真空ポンプよりも小型で比較的安価なポンプを採用できる。
【0015】
(4)前記排気細管は、コンダクタンスが異なる複数の排気細管が並列に接続されていることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のエアリーク検査装置。
【0016】
前記(4)の手段では、コンダクタンスが異なる複数の排気細管のいずれか又は幾つかを組み合わせて選択することで、複数のリークレベルの判定が可能になる。また、コンダクタンスが良い排気細管で被検査値をスクリーニングすることで、排気細管にリークガスが進入したときでも、排気細管内の真空度の回復時間を短縮することができる。
【0017】
(5)前記制御部は、前記検査工程の前に、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する準備工程を行うことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のエアリーク検査装置。
【0018】
前記(5)の手段では、検査工程の前に排気管及び排気細管内を排気する準備工程を行うので、検査工程で最初から排気する必要がなく、直ちに検査を行うことができる。
【0019】
(6)前記制御部は、前記検査工程でリーク有と判定したとき、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する細管排気工程を行うことを特徴とする(1)~(5)のいずれかにエアリーク検査装置。
【0020】
前記(6)の手段では、リーク有りとなった被検査体内のエアーが排気細管に進入するので、排気細管内を排気して、次の被検査体の検査に影響がないように備えることができる。
【0021】
(7)被検査体に接続される排気管と、
前記排気管から開閉弁を介して分岐し、前記排気管より細い径を有する排気細管と、
前記排気管に接続され、前記被検査体内の圧力を検出する真空計と、
前記排気管に遮断弁を介して接続された第1真空ポンプと、
前記排気細管に接続された第2真空ポンプとを備え、
前記開閉弁を閉じ、前記遮断弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気管を介して前記被検査体及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する排気工程と、
前記排気工程の後、前記開閉弁を開き、前記遮断弁を閉じたとき、前記真空計の検出圧力が所定の閾値を越えるとリーク有りと判定する検査工程とを有することを特徴とするエアリーク検査方法。
【0022】
(8)前記検査工程の前に、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する準備工程を有することを特徴とする(7)に記載のエアリーク検査方法。
【0023】
(9)前記検査工程でリーク有と判定したとき、前記遮断弁及び前記開閉弁を開いて、前記第1真空ポンプにより前記排気細管及び前記排気管内を排気するとともに、前記第2真空ポンプにより前記排気細管内を排気する細管排気工程を有することを特徴とする(7)又は(8)に記載のエアリーク検査方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1真空ポンプによる被検査体及び排気管内の排気は、従来のように系全体を1つの真空ポンプで所定の真空度まで排気するのに比べて、短時間で済む。また、第2真空ポンプによる排気細管の排気は、排気細管の内容積が被検査体及び排気管の内容積より小さいので、第1真空ポンプよりも小型で安価なポンプで済む。したがって、排気細管の上流側と下流側にリーク検査に必要な圧力差を発生させるまでに要する排気時間が速くなり、検査時間を短縮することができ、また、次の検査を行う毎に、排気細管内を排気状態にして待機し、排気管内を排気するだけで検査を開始できるので、検査全体の検査時間を大幅に短縮することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るエアリーク検査装置の系統図。
図2A図1のエアリーク検査装置の準備工程の動作を示すフローチャート。
図2B図1のエアリーク検査装置の検査工程の動作を示すフローチャート。
図2C図1のエアリーク検査装置の細管排気工程の動作を示すフローチャート。
図3図1のエアリーク検査装置と従来のエアリーク検査装置の排気時間の差を示す図。
図4図1のエアリーク検査装置による検出圧力の時間的変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係るエアリーク検査装置1を示す。このエアリーク検査装置1は、被検査体2のリークを検査するもので、第1真空ポンプ3a及び第2真空ポンプ3b(両者を合わせて、真空ポンプ3という。)と、排気管4と、第1排気細管5a及び第2排気細管5b(両者を合わせて、排気細管5という。)と、真空計6と、制御部7とを備えている。
【0028】
被検査体2は、エアリーク検査の検査対象である。本発明では、魔法瓶や真空ジャケット等の真空排気された空間を有する真空機器、圧力容器等の加圧空間を有する加圧機器、気密又は液密の密封部分を有する密封機器等、種々のものを検査対象とすることができる。図1は、真空排気される空間2aに連通するチップ管2bが接続された真空容器を示している。
【0029】
第1真空ポンプ3aは、被検査体2及び排気管4内を0.5~1Pa程度の真空に排気できるロータリポンプでよく、メカニカルブースターポンプや拡散ポンプは必要でない。
【0030】
第2真空ポンプ3bは、第1排気細管5a、第2排気細管5b内を0.5~1Pa程度の真空に排気できる真空ポンプであり、ロータリポンプでよい。但し、より感度を高める場合や排気細管の内径を比較的太くしたい場合には、小型の分子ターボポンプ等の高真空ポンプを使用してもよい。
【0031】
排気管4は、ステンレス鋼管からなり、10~100mmの内径を有する。排気管4の内径は、被検査体2の排気容積に応じて選定すればよいが、排気容量が1リットルの場合には20~25mmである。排気管4は一端が被検査体2のチップ管2bに接続され、他端が第1真空ポンプ3aに接続されている。以下、第1真空ポンプ3aにより排気管4を介して被検査体2を排気する場合に、排気管4の排気方向の被検査体側を「上流側」、真空ポンプ側を「下流側」という。排気管4の上流側にはフィルタ8と、フィルタ8の下流側にワーク弁Vwとが設けられ、下流側には遮断弁V0と、遮断弁V0の下流側にリーク弁VLとが設けられている。ワーク弁Vwは、被検査体2の付け替えの際等に閉じることで、排気管4内へ大気等が不用意に進入して排気管4の内面に水や油が付着するのを防止するものである。リーク弁VLは、ロータリポンプである第1真空ポンプ3aの運転を停止する際に開放して、ポンプの作動油が排気管4内に逆流するのを防止するものである。ワーク弁Vwより下流側には枝管4aが設けられている。排気管4の遮断弁V0より上流側には、排気管4、すなわち、被検査体2に清浄ガスとして例えば窒素(N)、炭酸ガス(CO)、アルゴン(Ar)等を導入する清浄ガス導入部9が設けられている。
【0032】
第1排気細管5aと、第2排気細管5bは、ステンレス鋼管または銅管からなり、排気管4よりも細く、1~6mmの内径を有する。実施例では、第1排気細管5aは、内径3mm、長さ50cmで、第2排気細管5bは、内径1mm、長さ1mであるが、これに限るものではない。第1排気細管5aと第2排気細管5bは、並列に設けられている。すなわち、第1排気細管5aの一端は排気管4の枝管4aに第1開閉弁V1を介して接続され、他端は集合管4bを介して第2真空ポンプ3bに接続されている。また、第2排気細管5bの一端は排気管4の枝管4aに第2開閉弁V2を介して接続され、他端は集合管4bを介して第2真空ポンプ3bに接続されている。枝管4aを設けずに、第1排気細管5aと第2排気細管5bをそれぞれ第1開閉弁V1、第2開閉弁V2を介して、排気管4に直接接続してもよい。
【0033】
真空計6は、ピラニ真空計、熱電対真空計が採用できるが、ピラニ真空計が好ましい。ピラニ真空計は、気体分子の衝突により熱を奪われた白金細線の抵抗値の変化から圧力を求めるものである。真空計6のセンサ部6aはフィルタ8より下流側で枝管4aの近傍に接続されている。真空計6の本体6bは、排気管4内、すなわち、被検査体2の圧力(真空度)を検出して表示するとともに、後述する制御部7に検出圧力のデジタル値を出力する。集合管4bにも、真空計6と同様に、センサ部11aと本体11bからなる真空計11が設けられている。真空計11は、第1排気細管5a、第2排気細管5bの下流側の圧力を検出する。なお、真空計6と真空計11は、センサ部6とセンサ部11の2つのセンサ部を設け、本体部6bと本体部11bを共通にして切り替えて制御部7と通信するようにしてもよい。
【0034】
制御部7は、シーケンス制御により、真空計6から出力される検出圧力に基づいて、遮断弁V0、第1開閉弁V1、第2開閉弁V2を開閉制御するとともに、被検査体2のリークの有無を判断して、表示部10にリークの有無を表示する。
【0035】
ここで、排気細管5の径Dと長さLの選定方法について説明する。排気中に管内を気体が流れるときに排気抵抗が生じるが、管の流れやすさ示すために、排気抵抗の逆数をとってこれをコンダクタンスという。コンダクタンスをC[m/s]、配管両端の圧力をP[Pa],P[Pa]とすると、流量Q[Pa・m/s]は、次式で表される。
Q=C(P-P
【0036】
配管の気体の流れを粘性流領域とし、P=(P+P)/2[Pa]、配管の径(内径)をD[m]、配管の長さをL[m]とすると、細くて長い配管のコンダクタンスC[m/s]は、次式で表される(千田裕彦、「粘性流領域における真空排気の理論計算とその応用」、2010年1月・SEIテクニカルレビュー・第176号、2頁参照)。
C=1349DP/L
【0037】
流量Qを被検査体2の許容できる漏れ量とし、排気細管5の両端の圧力P,Pを状況に応じて仮定し、排気細管5の径Dを固定すると、前記2式から、排気細管5の長さLを決定できる。また、排気細管5の長さLを固定すると、排気細管5の径Dを決定できる。排気細管5の径D及び配管の長さLが固定している場合には、許容漏れ量Qを決定できる。
【0038】
例えば、排気細管5の両端の圧力P,Pを、それぞれ、10Pa,1Paと仮定し、排気細管5として、内径1mm、長さ50cmを使用すると、
P=(10+1)/2=5.5[Pa]
D=1.0×10-3[m]
L=0.5[m]
であるから、コンダクタンスC及び流量Qは、次の通りになる。
C=1349×(1.0×10-3)×5.5/0.5
=1.48×10-8[m/s]
Q=1.48×10-8×(10-1)
=1.34×10-7[Pa・m/s]
【0039】
この場合、流量Q=1.34×10-7[Pa・m/s]を基準にして、リークの有無を検査できる。すなわち、本発明において、排気細管5の流量Qを超える漏れ量があれば、排気細管5の被検査体2側の圧力Pの上昇(真空度の低下)がみられ、被検査体2にリーク(漏れ)があると判断できる。逆に、流量Q以下の漏れ量があれば、排気細管5を通って排気されるので、排気細管5の被検査体2側の圧力Pの上昇(真空度の低下)がなく、被検査体2にリーク(漏れ)が無いと判断できる。
【0040】
表1は、排気細管の下流側の圧力Pが1Paのとき、排気細管の長さL、内径D、排気細管の上流側の圧力Pを変化させたときの、排気細管の流量Qを計算したものである。排気細管の流量Qは、排気細管の長さLを長く、内径Dを小さくするほど、小さくなり、-7乗台、-8乗台のリーク検出が可能となることを示している。
【0041】
【表1】
【0042】
本実施形態のリーク検査装置は、Heリーク標準を用いた定期点検を行い、精度を担保する必要がある。細くて長い配管のコンダクタンスC[m/s]と流量Q[Pa・m/s]を表す上記算式は、気体分子を窒素(N)とした場合であるので、NをHeに換算するピラニ補正を行って、表1と同一条件で排気細管の流量Qを計算すると、表2に示す通りとなる。表2から、Heリーク標準を用いて、-7乗台のリーク検出が可能となることを示している。つまり、Heリーク標準による定期点検を行うことで、高価なHeガスを検査ガスとして用いることなくHeリークディテクタと同等の尺度で漏れ検査を行うことができる。
【0043】
【表2】
【0044】
排気細管5として、複数の排気細管5a、5bが並列に接続されている場合、合成コンダクタンスCは、次式で表され、複数の排気細管を組み合わせることで、合成コンダクタンスを大きくすることができる。
C=C1+C2
【0045】
次に、前記実施形態のエアリーク検査装置1の動作を図2A、2B、2Cのフローチャート、図3、4の圧力変化図に基づき説明する。
【0046】
まず、図2Aに示すように、被検査体2のエアリーク検査の前に、準備工程を行う。
図2Aにおいて、ステップ001で遮断弁V0、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開き、ワーク弁Vw及びリーク弁VLを閉じて、ステップ002で第1真空ポンプ3a、第2真空ポンプ3bを駆動する。これにより、排気管4内の空気は、排気管4を通って第1真空ポンプ3aから外部に排気され、第1排気細管5a、第2排気細管5b内の空気は、枝管4a及び排気管4を通って第1真空ポンプ3aから外部に排気されるとともに、集合管4bを通って第2真空ポンプ3bから外部に排気される。
【0047】
図3に従来と本発明の排気時間の差を示す。従来は、一つの真空ポンプで系内全体の空気を排気していたので、排気細管の下流側が1Paになるには系全体の圧力が1Paになるまで待たざるを得ず、tj時間を要していた。また、検査毎に、排気細管と排気管の両方を排気していたので、図3中1点鎖線で示すように、検査毎に排気時間が長くなっていた。
これに対し、本発明では、第1真空ポンプ3aにより、第1排気細管5aと第2排気細管5bの上流側の空気を排気し、第2真空ポンプ3bにより、第1排気細管5aと第2排気細管5bを含むそれらの下流側の空気を排気するので、図3中実線で示すように、従来のtjより短いtp時間で、第1排気細管5aと第2排気細管5bの上流側が2Paに達する。また、第1排気細管5aと第2排気細管5bを含む下流側は、上流側より内容積がはるかに小さいので、図3中破線で示すように、高真空ポンプである第2真空ポンプ3bにより、第1真空ポンプ3aの排気時間tp1よりも短い時間tp0で、第1排気細管5aと第2排気細管5bの下流側が1Paに達する。このため、第1排気細管5aと第2排気細管5bの上流側が2Paに達したtp1時点から、検査工程で直ちに検査を開始することができる。検査工程では、被検査体及び排気管の排気を毎回行うが、排気細管は排気しないので、tp1に相当する時間が短くなるだけである。
【0048】
また、検査工程で被検査体を取り付けることで、第1排気細管5aと第2排気細管5bの上流側(第1開閉弁V1と第2開閉弁V2は閉じられているので、それらの弁部より上流側)の圧力は急激に上昇するが、第1排気細管5aと第2排気細管5bの下流側は1Paを維持したままである。したがって、検査工程では、第1排気細管5aと第2排気細管5bの上流側の圧力上昇分だけ排気すればよいため、検査工程に要する時間を短縮することができる。
【0049】
複数の被検査体について検査が連続して複数回行われる場合には、検査が終了した時点で第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じて、第1排気細管5aと第2排気細管5b内を排気状態に維持しておくことで、次の検査を行う毎に第1排気細管5aと第2排気細管5b内を排気する必要がなく、排気管4内を排気するだけでよいので、検査全体の検査時間を大幅に短縮することができる。
【0050】
ステップ003で、真空ポンプ3を駆動してからt01秒(例えば、10秒)が経過したか否かを判断し、経過していなければ第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bによる排気を継続する。t01秒が経過していれば、ステップ104で、真空計6の圧力P1を読み取る。ステップ005で圧力P1が2Pa以下であるか否かを判断する。圧力P1が2Paを超える場合、装置内のリーク又は第2真空ポンプ3b等の異常のために排気が不十分になっていると考えられ、ステップ006で装置リーク有り(リークレベル:L0)と判断し、準備工程を終える。また、ステップ005で圧力P1が2Pa以下である場合、装置内が漏れなく、排気されていると判断する。さらに、ステップ007で、第1排気細管5aと第2排気細管5bの下流側に設けた真空計11の圧力P0を読み取り、ステップ008で、圧力P0が1Pa以下であるか否かを判断する。圧力P0が1Paを越える場合、第2真空ポンプ3bが不調であると判断し、ステップ009でアラーム等で報知する。また、ステップ008で圧力P0が1Pa以下である場合、第2真空ポンプ3bにより正常に排気できていると判断し、ステップ010で真空ポンプ3を駆動してからt02秒(例えば、20秒)が経過した時点で準備工程を終える。
【0051】
次に、図2Bに示すように、被検査体2のエアリーク検査の検査工程を行う。
図2Bにおいて、ステップ101で、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じ、ステップ102で被検査体2を取り付けた後、ステップ103でワーク弁Vwを開く。このt0時点では、前述の準備工程で第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bの排気により排気管4と排気細管5a、5b内は既に2Paまで排気されているので、直ちに被検査体2のリーク検査を行うことができる。排気管4と排気細管5a、5b内は、引き続き第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bにより排気されるので、図4に示すように、真空計6が検出する圧力は低下してゆく。ステップ104で、ワークバルブVwを開いてからt03秒(例えば、30秒)が経過したか否かを判断し、経過していなければ第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bによる排気を継続する。t03秒が経過していれば、ステップ105で、真空計6の圧力P1を読み取る。ステップ106で圧力P1が所定の第1閾値Pth1以下であるか否かを判断する。第1閾値Pth1は、本実施形態では、1.5Paである。図4中2点鎖線xで示すように圧力P1が第1閾値Pth1を超える場合、被検査体2のリーク(漏れ)のために排気が不十分になっていると考えられ、ステップ107でリーク有り(リークレベル:L1)と判断し、当該被検査体2の検査を終了し、次の被検査体の検査に移行する。圧力P1が第1閾値Pth1以下である場合、大きな漏れがなく排気が十分に行われていることになるので、ステップ108以降において、排気細管5aと5bの微小流量によるリークテストを行う。
【0052】
ステップ108で、第2開閉弁V2を閉じたまま第1開閉弁V1を開き、ステップ109で遮断弁V0を閉じる。t1時点で遮断弁V0を閉じると、被検査体2の内部の断熱膨張により冷却されるが、その後周囲の空気により加熱されて被検査体2の空間2aの水分や油分が蒸発するので、図4に示すように、しばらくの間(ta)、真空計6の検出圧力が上昇する。
【0053】
遮断弁V0の遮断により排気管4による排気は停止するが、第1開閉弁V1は開いているので、第2真空ポンプ3bと排気細管5aによる排気は継続する。しかし、排気細管5aのコンダクタンスは排気管4のコンダクタンスより小さいので、流量が制限される。圧力P1に到達し、遮断弁V0を閉じた時点で、被検査体2に全くリークが無ければ、第1排気細管5aに流れが無く、図4中2点鎖線yで示すように、真空計6が検出する真空度はP1+αを維持する。被検査体2にリークがあり、その漏れ量が第1排気細管5aの許容流量以下であれば、その漏れ量は第1排気細管5aを通って第2真空ポンプ3bから排気されるので、真空計6が検出する圧力の変化は小さい。また、被検査体2にリークがあり、その漏れ量が第1排気細管5aの許容流量以上であれば、その漏れ量は第1排気細管5aを通過しないため、被検査体2及び排気管4内の圧力の変化が大きくなる結果、図4中2点鎖線zで示すように真空計6が検出する圧力は上昇する。
【0054】
そこで、ステップ110で、遮断弁V0を閉じてからt04秒が経過したか否かを判断し、経過していなければそのまま待機し、t04秒が経過していれば、ステップ111で、真空計6の圧力P2を読み取る。ステップ112で圧力P2が所定の第2閾値Pth2以下であるか否かを判断する。図2中2点鎖線zで示すように、圧力P2が第2閾値Pth2を超える場合、被検査体2のリーク(漏れ)のために圧力が増加し、真空度が悪くなっていると考えられ、ステップ113でリーク有り(リークレベル:L2)と判断する。圧力P2が第2閾値Pth2以下である場合、ステップ114以降の排気細管5bの微小流量によるリークテストに移行する。
【0055】
ステップ114で、第1開閉弁V1を閉じ、第2開閉弁V2を開く。ステップ115で、第1開閉弁V1を閉じてからt05秒が経過したか否かを判断し、経過していなければそのまま待機し、t05秒が経過していれば、ステップ116、真空計6の圧力P3を読み取る。ステップ117で圧力P3が所定の第3閾値Pth3以下であるか否かを判断する。圧力P3が第3閾値Pth3を超える場合、被検査体2のリーク(漏れ)のために圧力が増加し、真空度が悪くなっていると考えられ、ステップ118でリーク有り(リークレベル:L2)と判断する。圧力P3が第3閾値Pth3以下である場合、ステップ119で被検査体2のリーク(漏れ)が許容以下であるとし、リーク無と判断し、ステップ120で、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を閉じて、当該被検査体1の検査を終了し、次の被検査体の検査に移行する。
【0056】
ステップ113でリーク有り(リークレベル:L2)と判断し、またステップ118で、リーク有り(リークレベル:L3)と判断すると、ステップ113-1、ステップ118-1で、それぞれ図2Cに示す細管排気工程を行い、次の被検査体の検査に移行する。これは、リーク有りとなった原因がワーク弁Vwを開いたときに被検査体2内のエアーが進入したと考えられるので、排気細管5a、5b内を排気して、次の被検査体の検査に影響がないように備えるためである。
【0057】
図2Cに示すように、細管排気工程では、ステップ201で、遮断弁V0、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開き、ワーク弁Vw及びリーク弁VLを閉じる。これにより、第1真空ポンプ3a、第2真空ポンプ3bにより、第1排気細管5a、第2排気細管5b及び排気管4内の空気は枝管4a及び排気管4を通って第1真空ポンプ3aから外部に排気され、第1排気細管5a、第2排気細管5b内の空気は集合管4bを通って第2真空ポンプ3bから外部に排気される。
【0058】
ステップ202で、ステップ201の各弁を開閉してからt01秒(例えば、10秒)が経過したか否かを判断し、経過していなければ第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bによる細管排気を継続する。t01秒が経過していれば、ステップ203で、真空計6の圧力P1を読み取る。ステップ204で圧力P1が2Pa以下であるか否かを判断する。圧力P1が2Paを超える場合、装置内のリーク又は第2真空ポンプ3b等の異常のために排気が不十分になっていると考えられ、ステップ205で装置リーク有り(リークレベル:L0)と判断し、細管排気工程を終える。また、ステップ206で圧力P1が2Pa以下である場合、装置内が漏れなく、排気されていると判断し、ステップ206で、ステップ204のP1が2Paに都達してからt02秒(例えば、20秒)が経過すると、ステップ207で第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じて、細管排気工程を終える。
【0059】
最初の被検査体についてのリーク検査(1回目)に続き、次の被検査体についてリーク検査(2回目以降)を行う。最初の被検査体についてのリーク検査が終了した時点で、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を閉じ、第1真空ポンプ3aと第2真空ポンプ3bは駆動したままとする。また、ワーク弁Vwを閉じたままの状態で、最初の被検査体を次の検査体に取り換える。これにより、次の被検査体の検査のスタート時点では、排気管4内は、大気圧又はそれに近い圧力となるが、大気暴露はごく短時間で済む。また、第1排気細管5aと第2排気細管5b内は、1Paを維持している。仮に、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を開いていると、被検査体の交換時に排気管4だけでなく第1排気細管5aと第2排気細管5b内にも大気が進入し、次の被検査体の排気に多大な時間を有する。本実施形態では、前の被検査体の検査の終了時に、第1開閉弁V1と第2開閉弁V2を閉じて、第1排気細管5aと第2排気細管5b内を1Paに維持しているので、次の被検査体の検査スタート時には、遮断弁V0を開いて、第1真空ポンプ3aにより被検査体及び排気管4内を排気するだけでよく、大幅に時間を短縮することができる。被検査体及び排気管4内を排気した後の工程は、図2Bのフローチャートに示す同様のステップを繰り返す。
【0060】
仮に、従来のように加圧又は減圧して一定時間後の圧力変化で判定する場合、排気管の遮断弁を閉じた後、本発明に比べて非常に長い時間をかけても同レベルの精度は得られない。更に問題をこじらせるのが断熱膨張又は断熱圧縮の現象であり、リークが無くても圧力が影響を受けるので、短時間で正確な判定は困難であった。しかし、本発明では、第1排気細管5aと第2排気細管5bにより許容リーク以下のときは漏れ量が第1排気細管5aと第2排気細管5bから排気されるので、真空計6の検出圧力は上昇せず、リークなしと判断される。したがって、許容されるリークがあるものでも不良品と判断されていた従来のリーク検査装置に比べて、本発明のリーク検査装置は、許容リーク以下のものを良品と判断することができるという点で、検査精度が高い。
【0061】
被検査体2の空間2aに水や油が付着している場合は、図4中点線で示すように、第1真空ポンプ3aにより、一旦、被検査体2を100Pa以下に排気した後、清浄ガス導入部9を作動させて、排気管4を介して被検査体2に、100,000~110,000Paまで窒素(N)、炭酸ガス(CO)、アルゴン(Ar)等の清浄ガスを導入することができる。清浄ガスの導入により、被検査体2は断熱圧縮により加熱されて、水、油が蒸発し、排出される結果、圧力P1に到達した後の断熱膨張の影響による圧力の上昇を少なくすることができる。
【0062】
本実施形態では、第1真空ポンプ3aによる被検査体2及び排気管4内の排気は、従来のように系全体を1つの真空ポンプで所定の真空度まで排気するのに比べて、短時間で済む。また、第2真空ポンプ3bによる排気細管5の排気は、排気細管5の内容積が被検査体2及び排気管4の内容積より小さいので、第1真空ポンプ3aによる被検査体2及び排気管4内の排気に比べ小型で比較的安価な真空ポンプで済む。したがって、遮断弁V0を閉じ、開閉弁V1,V2を開いた時点では、既に排気細管5の下流側は上流側より低い圧力なっているので、排気細管5の上流側と下流側にリーク検査に必要な圧力差を発生させるまでに要する排気時間が速くなり、検査時間を短縮することができる。
【0063】
また、第2真空ポンプ3bの到達可能圧力は、第1真空ポンプ3aの到達可能圧力と同等又はそれ以下であり、被検査体2及び排気管4より内容積が小さい排気細管5内を排気するので、第1真空ポンプ3aの到達可能圧力より低い圧力まで排気できる高真空ポンプであっても、第1真空ポンプ3aよりも小型で比較的安価なポンプを採用できる。
【0064】
排気細管5a、5bに大気が入らないように封止することで、排気細管5a、5b自体の劣化、及び第2真空ポンプ3bの性能低下に伴うメンテナンス周期を伸ばすことができる。
【0065】
本発明は、以上に実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で変更することができきる。
【0066】
例えば、前記実施形態では、排気細管5として、第1排気細管5aと第2排気細管5bとを設けたが、1本でも、3本でもよい。この場合、コンダクタンスが異なる複数の排気細管のいずれか又は幾つかを組み合わせて選択することで、複数のリークレベルの判定が可能になる。また、コンダクタンスが良い排気細管でスクリーニングすることで、前の検査で他の排気細管にリークガスが進入したときでも、次の検査の待機中に第2真空ポンプによる排気細管内の真空度の回復時間を短縮することができる。
【0067】
また、前記実施形態では、排気細管5の微小流量と同等以下のリークを合格と判定するべく、排気細管5のコンダクタンスおよび検査圧力P1、P0を設定したが、信頼性が確保できる範囲であれば、時間短縮化のために排気細管5の微小流量を超えるリークを合格とするべく、それらを設定することができる。信頼性が確保できるとは、その合否判定ラインよりも、所定のHeリーク標準の点検での流量が明確に有意差があり、大きいことを指す。所定のHeリーク標準とは、単体のリーク標準に限らず、複数個の複合値でもよく、個々の検査ラインの許容リーク量に近くて超えない値が望ましい。
【符号の説明】
【0068】
1…エアリーク検査装置
2…被検査体
2a…空間
2b…チップ管
3a…第1真空ポンプ
3b…第2真空ポンプ
4…排気管
4a…枝管
4b…集合管
5…排気細管
5a…第1排気細管
5b…第2排気細管
6…真空計
7…制御部
8…フィルタ
9…清浄ガス導入部
10…表示部
V0…遮断弁
V…開閉弁
V1…第1開閉弁
V2…第2開閉弁
Vw…ワーク弁

【要約】
【課題】被検査体及び装置内部を検査可能な所定圧力までの排気するために必要な時間を短縮することができるエアリーク検査装置を提供する。
【解決手段】被検査体2に接続される排気管4と、排気管から開閉弁V1,V2を介して分岐し、排気管より細い径を有する排気細管5a、5bと、排気管に接続され、被検査体内の圧力を検出する真空計6と、排気管に遮断弁V0を介して接続された第1真空ポンプ3aと、排気細管に接続された第2真空ポンプ3bとを備える。遮断弁V0を開き、開閉弁V1,V2を閉じて、第1真空ポンプ3aにより排気管4を介して被検査体2及び排気管4内を排気するとともに、第2真空ポンプ3bにより排気細管5a、5b内を排気する。遮断弁V0を閉じ、開閉弁V1、V2を開いて排気管4と排気細管5a、5bを連通させたとき、真空計の検出圧力が所定の閾値を越えるとリーク有りと判定する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4