(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】電気駆動式走行装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20221024BHJP
B60K 11/08 20060101ALI20221024BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20221024BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20221024BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B60K11/06 ZHV
B60K11/08
B60K6/26
B60K6/46
H02K9/06 F
(21)【出願番号】P 2019137422
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 博敏
(72)【発明者】
【氏名】河野 竜治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】福田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴照
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129005(WO,A1)
【文献】実開昭55-130566(JP,U)
【文献】実開昭58-193768(JP,U)
【文献】特開2001-095205(JP,A)
【文献】特開2018-148776(JP,A)
【文献】特開2014-225957(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06 - 11/08
B60K 1/00 - 1/02
B60K 6/26
B60K 6/46
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
前記駆動輪を駆動すべく、前記駆動輪に連結される回転軸を有し、モータフレーム内に、ロータ、ステータ、ステータコイル、および前記ステータを前記モータフレームに固定するステータ固定部が備えられている電動モータと、
前記電動モータを収納するアクスルと、
前記電動モータを冷却すべく、前記アクスル内に冷却空気を供給するブロアと、
前記アクスルの内周壁面と前記モータフレームの外周壁面との間に形成された環状の流路を上流側流路と下流側流路に分割するとともに、前記上流側流路と前記下流側流路を連通する通風孔が形成されており、前記アクスル内で前記電動モータを支持する仕切り部と、を備える電気駆動式走行装置であって、
前記モータフレームに、前記下流側流路と前記ステータコイルの外周空間とを連通するバイパス孔が形成されており、
前記下流側流路に、前記通風孔を通過した冷却空気の一部もしくは全部を前記バイパス孔を介して前記ステータコイルの外周空間に誘導する導風部が設けられていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記ステータ固定部は、前記ステータと前記モータフレームとの間に周方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記バイパス孔は、前記モータフレームにおける前記ステータ固定部の下流側に位置していることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス孔の周方向幅は、前記ステータ固定部の周方向幅以下であることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記通風孔は、前記仕切り部において前記モータフレームの外周壁面に当接する位置、もしくは、前記モータフレームの外周壁面から離間した位置に形成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記導風部は、前記下流側流路において、前記モータフレームの外周壁面における前記バイパス孔より下流側と前記アクスルの内周壁面との間に位置するバイパス用壁部で構成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気駆動式走行装置において、
前記仕切り部と前記バイパス用壁部は、平行に配置されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記導風部は、前記下流側流路において、前記バイパス孔を覆うとともに下流側端部が前記モータフレームにおける前記バイパス孔より下流側に接触する筒形状のバイパス用カバーで構成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス用カバーの上流側端部は、前記仕切り部から間隔をあけて、かつ、前記バイパス孔より上流側に位置していることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電気駆動式走行装置において、
前記通風孔は、前記仕切り部において前記バイパス用カバーの上流側端部よりも内周側に形成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項10】
請求項7に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス用カバーの上流側端部は、前記仕切り部における前記通風孔の外周側に当接しており、前記通風孔を通過した冷却空気の全部が前記バイパス用カバーの内側を介して前記ステータコイルの外周空間に誘導されることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス孔は、前記モータフレームの周方向に複数個設けられており、
前記導風部は、前記下流側流路において、各バイパス孔を個別に覆うとともに下流側端部が前記モータフレームにおける前記バイパス孔より下流側に接触し、かつ、周方向端部が各バイパス孔の周方向外側に接触するバイパス用ダクトで構成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス用ダクトは、前記通風孔の軸方向下流に配置されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項13】
請求項11に記載の電気駆動式走行装置において、
前記通風孔は、前記仕切り部において前記バイパス用ダクトの上流側端部よりも内周側に形成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項14】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記導風部は、上流側端部が前記仕切り部における前記通風孔周りに接続され、下流側端部が前記バイパス孔に挿通されており、前記上流側流路の冷却空気を前記通風孔から直接前記ステータコイルの外周空間に誘導するバイパス管で構成されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス管は複数設けられていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項16】
請求項14に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス管の下流側端部開口は、前記ステータ固定部の下流側に位置し、かつ前記回転軸の軸中心に向かって開口していることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項17】
請求項14に記載の電気駆動式走行装置において、
前記バイパス管の下流側端部開口は、前記ステータ固定部の下流側に位置し、かつ前記ステータコイルの外周面の接線方向に向かって開口していることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項18】
請求項1に記載の電気駆動式走行装置において、
前記上流側流路であって前記モータフレームの外周壁面に放熱部を備えていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項19】
請求項18に記載の電気駆動式走行装置において、
前記ステータ固定部は、前記ステータと前記モータフレームとの間に周方向に間隔をあけて複数設けられており、
前記放熱部は、前記ステータ固定部と接触する前記モータフレームの外周壁面に設置されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【請求項20】
請求項18に記載の電気駆動式走行装置において、
前記放熱部は、前記通風孔の軸方向上流に設置されていることを特徴とする電気駆動式走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動式走行装置に係り、特に鉱山用のダンプトラック等に搭載され、走行用の電動モータをブロアからの冷却風により冷却する冷却システムを備える電気駆動式走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックの電気駆動式走行装置に関する技術として、例えば、特許文献1には、以下の内容が開示されている。
【0003】
エンジンの軸出力により発電機を駆動し、発電機で発電された電力により、インバータ等の制御機器を介して電動モータを励磁させ、車輪であるタイヤを駆動させる。例えば、前記電動モータは、ダンプトラックの駆動輪である後輪タイヤを駆動させるため、左右後輪タイヤの内側付近に左右それぞれ搭載され、後輪タイヤホイールの内側に搭載される減速機と共に、走行装置を構成する。
【0004】
また、前記電動モータは、略円筒形状を有する部材(以下、リアアクスルと称す)の内部に、左右それぞれ1台ずつ収容される。リアアクスルは、車体フレームの後方に懸架されると共に、リアアクスルの略中心位置に、電動モータ冷却用のダクトが接続される。前記ダクトを介して、ブロワによりリアアクスルの略中心位置からリアアクスル内部へ空気(冷却空気)を供給することにより、電動モータを冷却する。
【0005】
なお、ダンプトラックは、例えば、露天掘り工法等による鉱山の採掘現場において、大量の鉱石や土砂を運搬するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、特許文献1では、電動モータ冷却用のダクトがリアアクスルの略中心位置に接続された構造が開示されている。また、ダクトを介してブロワによりリアアクスル内部に送風された冷却空気が、電動モータに吹き付けられることで、電動モータを放熱させる冷却方法が開示されている。しかしながら、特許文献1には、電動モータ内部における冷却構造および手段に関する記載はなく、上記特許文献1に所載の構成では、電動モータの冷却性を向上させることが難しいと思われる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電気駆動式走行装置に搭載される電動モータの冷却性を向上させることのできる電気駆動式走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気駆動式走行装置は、駆動輪と、前記駆動輪を駆動すべく、前記駆動輪に連結される回転軸を有し、モータフレーム内に、ロータ、ステータ、ステータコイル、および前記ステータを前記モータフレームに固定するステータ固定部が備えられている電動モータと、前記電動モータを収納するアクスルと、前記電動モータを冷却すべく、前記アクスル内に冷却空気を供給するブロアと、前記アクスルの内周壁面と前記モータフレームの外周壁面との間に形成された環状の流路を上流側流路と下流側流路に分割するとともに、前記上流側流路と前記下流側流路を連通する通風孔が形成されており、前記アクスル内で前記電動モータを支持する仕切り部と、を備え、前記モータフレームに、前記下流側流路と前記ステータコイルの外周空間とを連通するバイパス孔が形成されており、前記下流側流路に、前記通風孔を通過した冷却空気の一部もしくは全部を前記バイパス孔を介して前記ステータコイルの外周空間に誘導する導風部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動モータの冷却性を向上することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1に係る電気駆動式走行装置を搭載したダンプトラックの外観図(側面図)。
【
図2】前記ダンプトラックの一部を示す外観図(斜視図)。
【
図4】実施例1に係る、電動モータ周囲の構成を示す要部断面図。
【
図7】
図6に示す一点鎖線(F)における要部円筒展開断面図。
【
図9】実施例1に係る、電動モータ周囲の構成および冷却空気の流れを示す要部断面斜視図。
【
図10】本発明の実施例2に係る、
図4に示す(D)部拡大図。
【
図12】本発明の実施例3に係る、
図4に示す(D)部拡大図。
【
図14】実施例3に係る、電動モータ周囲の構成および冷却空気の流れを示す要部断面斜視図。
【
図15】本発明の実施例4に係る、
図4に示す(D)部拡大図。
【
図16】実施例4に係る、電動モータ周囲の構成および冷却空気の流れを示す要部断面斜視図。
【
図18】本発明の実施例5に係る、
図4に示す(D)部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものでは無く、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
本明細書では、鉱山用のダンプトラックを例に説明する。鉱山用ダンプトラックとは、例えば、露天掘り工法等による鉱山の採掘現場において、大量の鉱石や土砂等を運搬するために使用されるダンプトラックである。なお、本発明は、鉱山用ダンプトラック以外のダンプトラックも対象とする。また、ダンプトラック以外の電気駆動式による走行車両も対象とする。
【実施例1】
【0015】
[ダンプトラック全体の概略構成の説明]
図1、
図2、
図3および
図4を用いて、ダンプトラック全体の概略構成について説明する。
図1、
図2、
図3は、本発明の実施例1に係る電気駆動式走行装置(以下、単に走行装置と称す)を搭載したダンプトラック(電気駆動式ダンプトラック)の概略構成を示すための外観図であり、
図1は側面図、
図2は斜視図、
図3は背面図である。
図1では、電動モータを冷却するための空気(冷却空気)の流れを矢印で表示しており、
図2では、鉱石や土砂等の運搬物を積載するためのボディは省略している。また、
図4は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成を示すための説明図である。
【0016】
各図に示すx軸、y軸、z軸は、それぞれが直交する関係にある。ダンプトラック1000の前進方向をx軸の矢印方向とし、車幅方向であって、前進方向に向かって右側をy軸の矢印方向とし、鉛直方向で上向きをz軸の矢印方向とする。また、以下の実施例において、x軸の矢印方向を「前」、その反対方向を「後」、y軸の矢印方向を「右」、その反対方向を「左」、z軸の矢印方向を「上」、その反対方向を「下」と表記する場合がある。
【0017】
ダンプトラック1000の車体フレーム410の前部において、その左右両側には、ダンプトラック1000を左右方向へ操舵することを可能にする、前輪(操舵輪)510が組み付けられている。前輪510は、ゴム製のタイヤ511およびタイヤ内部に組み付けられるタイヤホイール512で構成され、車体フレーム410の前部を支持している。車体フレーム410の後部においては、その左右両側に、ダンプトラック1000の前進および後進を可能にする、車幅方向に互いに並行に配置された2本の後輪(駆動輪)540、つまり後外輪520および後内輪530が組み付けられている。後外輪520、後内輪530は、それぞれ、タイヤホイール522、532に組み付けられたゴム製のタイヤ521、531で構成され、車体フレーム410の後部を支持している。なお、ここでは、後輪540を駆動輪としているが、前輪510もしくは前輪510と後輪540の両方を駆動輪としてもよい。
【0018】
車体フレーム410の中央付近から後部において、その上方には、鉱石や土砂等の運搬物を積載するためのボディ420が搭載される。ボディ420の後部は、連結部(図示せず)により、車体フレーム410に回転自在に支持されており、ボディ420の中央付近の左右両側には、車体フレーム410からボディ420まで伸びる油圧シリンダ装置(図示せず)が連結され、同油圧シリンダ装置の伸縮動作により、ボディ420後部の前記連結部を支点として、ボディ420を起伏駆動させる構造となっている。
【0019】
ダンプトラック1000の前部には、ダンプトラック1000を走行駆動させるための電気駆動式パワーユニットが搭載される。同パワーユニットを構成する主たる機器は、発電用のエンジン330(
図1)、エンジン330の出力軸に連結された発電機320(
図2)、ならびに、インバータ等の制御機器311(
図1)である。このうち、エンジン330および発電機320は、車体フレーム410の前部に組み付けられている。また、制御機器311は、車体フレーム410の前部において、車体フレーム410の上方に組み付けられるフロントデッキ430上であって、その左右方向のどちらか片側に設置されるキャビネット310の内部に、制御機器311の放熱器(図示せず)と共に設置される。なお、フロントデッキ430の左右方向の片側で、キャビネット310が設置されていない側には、ダンプトラック1000の運転操作に必要な各種機器(ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、ボディ操作部、計器盤、オペレータ用シート等)が装備されてなるキャビン440が設けられている。
【0020】
車体フレーム410の後部において、車体フレーム410を支持する左右の後内輪530の内側付近には、特に
図4を参照すればよく分かるように、左右一対の電動モータ110が設置され、電動モータ110は、出力軸111(以下、シャフトと称す)を介して、タイヤホイール522、532の支持部(図示せず)に連結される。そして、電動モータ110は、タイヤホイール522、532の内側に設置される減速機(図示せず)と共に、走行装置を構成する。
【0021】
左右一対の電動モータ110は、車体フレーム410の後方の車幅方向中央位置において、車体フレーム410に対して、上下動可能に懸架される略円筒形状(詳しくは、左右両端に、外側に行くに従って幅狭となる若しくは縮径するテーパ部が設けられた円筒形状)を有する部材100(以下、リアアクスルと称す)の内部の左右両側に固定支持される。このとき、電動モータ110は、第1の仕切り部117によってリアアクスル100に固定される(後で説明)。このように、リアアクスル100の左右外周部に、リアアクスル100に対して回転自在に組み付けられたタイヤホイール支持部(図示せず)を介して、後輪(駆動輪)540である後外輪520および後内輪530が支持される。
【0022】
電動モータ110の主要構成要素は、
図4に示すように、シャフト111、ロータ112、ステータ113、ステータ113(の内周側)に巻き付けられているステータコイル114、モータフレーム115である。モータフレーム115は、軸方向(車幅方向)両端に端部壁(車幅方向中央側(内側)の端部壁115i及び外側の端部壁115j)が形成された略円筒形状を有する。ロータ112、ステータ113等は、略円筒形状のモータフレーム115の内側に配置(収容)されるとともに、ステータ113は、モータフレーム115の内側で、モータフレーム115の周方向に(所定間隔をあけて)複数設けられた矩形板状のステータ固定部116を介して、モータフレーム115に固定される(
図6、
図7、
図9)。なお、ステータコイル114は、軸方向両端部が(ステータ113から)突出するようにしてステータ113に巻き付けられている。
【0023】
また、電動モータ110を冷却するための冷却空気を通過させるため、モータフレーム115の両端部壁115i、115jには、それぞれ、周方向に複数個の(例えば略扇形形状の)モータフレーム通風孔115a、115bを設けている。また、電動モータ110を冷却するための冷却空気の一部または全部を送る通風路として、ロータ112の周方向に複数個、それぞれロータ112の軸方向に貫通する(例えば丸孔からなる)通風孔112aと、ロータ112の外周壁とステータ113の内周壁によって挟まれた(円筒形状の)隙間113aと、モータフレーム115の内周壁とステータ113の外周壁およびステータ固定部116の側壁によって挟まれた隙間115c(
図6、
図7、
図9)とを設けるとともに、リアアクスル100の内部に取り込んだ冷却空気を外気へ排出する排気口101を設けている。排気口101は、図示例では、リアアクスル100の左右両側のテーパ部100tにおけるモータフレーム115(の端部壁115j)より外側に設けている。
【0024】
また、シャフト111には、例えば、パーキング用のブレーキディスク119が取り付けられている。同ブレーキディスク119は、モータフレーム115に組み付けられるブレーキパッド(図示せず)と共に、ダンプトラック1000のパーキングブレーキ機構を構成する。
【0025】
[ダンプトラックの冷却システムの説明]
前述した電動モータ110や発電機320は、キャビネット310内に収容されるインバータ等の制御機器311に電気接続されている。例えば、エンジン330により発電機320を駆動させ、発電機320からの電力をインバータ等の制御機器311にて交流に変換することで、電動モータ110を駆動させ、これにより後輪(駆動輪)540を駆動(回転駆動)する。
【0026】
また、電動モータ110を冷却するため、冷却空気を生成するためのブロワ210が、例えば、車体フレーム410において、リアアクスル100の周辺に位置する穴部415に据え付けられている。ブロワ210の吐き出し部は、ダクト225を介して、リアアクスル100の略中心位置で、且つ、上方側(に設けられた接続口102(
図4))と接続される。また、ブロワ210の吸込み部は、ダクト220を介して、インバータ等の制御機器311を収納するキャビネット310の壁部(に設けられた接続口313(
図1))に接続される。ダクト225、ブロワ210、およびダクト220を介して、リアアクスル100の内部とキャビネット310の内部は連通されている。なお、リアアクスル100は、前述のように車体フレーム410に対して上下動可能に懸架されるため、ダクト225とブロワ210の吹き出し部は、後外輪520および後内輪530の上下動を吸収可能とする部材で形成された接続部(図示せず)で接続されているものとする。
【0027】
また、キャビネット310の壁部、例えば、前面壁の上部には、外気(=冷却空気)(A)を取り込むための吸気口312(
図1)が設けられており、リアアクスル100の左右両側には、取り込んだ空気を排気するための排気口101が設けられている。
【0028】
ダンプトラック1000の走行中もしくは停止中で、電動モータ110の温度が上昇しているとき、ダクト220およびダクト225を介して、ブロワ210により、外気(A)をキャビネット310の吸気口312から取り込み、キャビネット310内、ダクト220、ブロワ210、およびダクト225を通して、リアアクスル100の略中心位置(に設けられた接続口102)からリアアクスル100の内部へ送風することで、リアアクスル100内に収納された電動モータ110を冷却する(
図1)。なお、ここでは、キャビネット310内に収容される制御機器311を冷却した空気(=冷却空気)(B)をリアアクスル100の内部へ送風し(送風空気=冷却空気(C))、電動モータ110を冷却する構造としているが、制御機器311の冷却を介さないで、取り込んだ外気を直接、電動モータ110まで送風して冷却する構造であってもよい。また、ブロワ210の据付位置は、キャビネット310の内部、もしくは、キャビネット310の周辺でダクト220の上流側であってもよい。
【0029】
なお、発電機320については、前記電動モータ110の冷却と同様に、例えば、車体フレーム410に設置したブロワ230により、キャビネット310の内部と連通されたダクト240を介して冷却される(
図2)。ここでも、ブロワ230の据付位置は、キャビネット310の内部、もしくは、キャビネット310の周辺でダクト240の上流側であってもよい。
【0030】
[電動モータの冷却の説明]
図4、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9を用いて、実施例1に係る電動モータの冷却風路構造および冷却方法について説明する。
図4は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための説明図である。
図5は、
図4に示す(D)部拡大図である。
図6は、
図5に示す(E)-(E)断面図であり、下部構造の図示は一部省略する。
図7は、
図6に示す一点鎖線(F)における円筒展開断面図である。
図8は、+Y方向から見た電動モータの外観図であり、下部構造の図示は一部省略する。
図9は、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部断面斜視図である。
【0031】
図4に示すように、ブロワ210で生成された冷却空気は、ダクト225を介してリアアクスル100へ送られる。この時、リアアクスル100内部の構造及び冷却空気の流れは左右対称であると仮定し、その片側について説明する。ただし、このような左右対称の構造に限定するものではない。リアアクスル100に送られた冷却空気の殆どは、モータフレーム115の端部壁115iに貫設されたモータフレーム通風孔115aを通過して電動モータ110内部の各通風路(112a、113a、115c(
図6、
図7、
図9))を流れ、この時に電動モータ110を冷却し、モータフレーム115の反対側の端部壁115jに貫設されたモータフレーム通風孔115bからリアアクスル100の排気口101へ送られて外気へ放出される。
【0032】
ここで、電動モータ110を構成する前記部品の中で、ステータコイル114が最も発熱量が多く高温になりやすい。そのため、ステータコイル114を積極的に冷却することが、電動モータ110の冷却性向上につながる。
【0033】
本実施例での冷却風路構造を、
図4、
図5を用いて説明する。本実施例では、電動モータ110とリアアクスル100を一体に固定する第1の仕切り部117に冷却空気を通す(例えば丸孔からなる)通風孔117aを開口する。なお、第1の仕切り部117は、モータフレーム115の外周壁面(具体的には、その中央部分)とリアアクスル100の内周壁面(具体的には、テーパ部100tの根元部分)とを接続するように電動モータ110またはリアアクスル100の周方向にわたって円環状に形成されており、リアアクスル100の内周壁面とモータフレーム115の外周壁面によって挟まれた円環状の流路をY軸方向(車幅方向)に分割するように配置されている。その分割された流路のうち-Y側(つまり車幅方向内側)を上流側流路100a、+Y側(つまり車幅方向外側)を下流側流路100bと表記する。前記通風孔117aは、この円環状の第1の仕切り部117の周方向に(所定間隔をあけて等間隔に)複数個設けている。なお、図示例では、前記した上流側流路100aと下流側流路100bを連通する通風孔117aは、前記したステータ113をモータフレーム115に固定するステータ固定部116と同数、かつ、周方向(軸周り)で同位置に設けられている(
図6)(後で説明)。
【0034】
そして、下流側流路100bにおいてモータフレーム115の外周壁面(具体的には、その外側端部付近)とリアアクスル100の内周壁面(具体的には、テーパ部100tの中央部分)とを接続するように電動モータ110またはリアアクスル100の周方向にわたって、バイパス用壁部としての円環状の第2の仕切り部501を設けている。本実施例において、第2の仕切り部501は、下流側流路100bにおいて第1の仕切り部117と略平行に配置されているが、必ずしも第1の仕切り部117と平行でなくてもよい。なお、第2の仕切り部501の端部(外端と内端)は必ずしもリアアクスル100の内周壁面とモータフレーム115の外周壁面との両方に接触している必要はなく、第2の仕切り部501の片側のみがリアアクスル100またはモータフレーム115の何れかに接触しているだけでも良い。また、第2の仕切り部501は、必ずしも電動モータ110またはリアアクスル100の周方向の全周にわたって設ける必要はなく、電動モータ110またはリアアクスル100の周方向の一部のみに設けてもよい。
【0035】
なお、本実施例では、モータフレーム115の第2の仕切り部501と接触する部分は、リアアクスル100のテーパ部100tに合わせて(略平行となるように)テーパ形状になっている。
【0036】
そしてさらに、モータフレーム115の一部に、下流側流路100bを通過する冷却空気をステータコイル114(の下流側突出端部)の外表面(換言すれば、ステータコイル114の外周空間)に向かってバイパス供給するための(例えば矩形状の)バイパス孔502を設けている。つまり、このモータフレーム115に形成されたバイパス孔502は、下流側流路100bとステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間とを連通することになる。
【0037】
そのバイパス孔502の位置について
図5、
図6、
図7を用いて説明する。バイパス孔502は、モータフレーム115において、第2の仕切り部501の壁面よりも上流側で下流側流路100b側に面する位置で、ステータ固定部116の直下流側付近で、かつステータコイル114(の下流側突出端部)の外表面付近に位置する(
図5)。また、バイパス孔502は、前記した第1の仕切り部117に開口する通風孔117aの軸方向(車幅方向)に沿う下流側に位置する。
【0038】
そのバイパス孔502の位置とは次のように詳しく説明できる。
図6、
図7に示す通り、通風路としての隙間115cを通過する冷却空気は、モータフレーム115の内周壁面と、ステータ113の外周壁面と、ステータ固定部116の側壁面に沿って流れ、隙間115cを通過した後はステータコイル114外周付近の広い空間へと放出される。その際、粘性流体の性質によって、せん断応力が生じ、ステータ固定部116の直下流付近701では流れがよどみ、低速領域が発生する(
図7)。その低速領域は、流れが弱く圧力も低いため、ステータコイル114に向かって冷却空気をバイパス供給する場所として適している。そのため、この低速領域に対応する位置に、バイパス孔502を設けることが望ましい。
【0039】
バイパス孔502の形状について
図7を用いて説明する。
図7に示すように、バイパス孔502の幅方向の寸法距離(周方向幅)を(G)、ステータ固定部116の幅方向の寸法距離(周方向幅)を(H)とすると、寸法距離の大小関係がG≦Hであることが望ましい。また、本実施例では四角形のバイパス孔502を例に示しているが、四角形に限定するものではなく、その最外寸法がステータ固定部116の幅方向の寸法距離(H)を超えないような形状であれば、どのような形状でも良い。
【0040】
上記のバイパス孔502の設置位置および孔形状によって、モータフレーム115の内周壁面と、ステータ113の外周壁面と、ステータ固定部116の側壁面に沿って下流側に流れる直線的な流れを妨げることなく、効率良くステータコイル114(の下流側突出端部)の外表面(外周面)へ冷却空気を下流側流路100bからバイパス供給できる。
【0041】
なお、本実施例に示す構造では、前述の通りステータ113をモータフレーム115に固定する際、一定の幅を持たせたステータ固定部116を周方向の均等位置(等間隔)に設けている(本実施例では8ヶ所)。そのため、バイパス孔502は、
図8に示すようにステータ固定部116と同数で、かつ周方向同位置に配置している。しかしながら、単に冷却空気をステータコイル114の外面部へバイパス供給するだけで良ければ、ステータコイル114の外面部が面する空間(外側空間)に向かってバイパス孔502をモータフレーム115のどこに開口してもよい。
【0042】
次に、上記冷却風路構造における冷却空気の流れについて説明する。流れの説明には、
図5、
図6、
図7、
図9を適宜用いる。
【0043】
ブロワ210で生成された冷却空気(C)の殆どは、モータフレーム115の端部壁115iに貫設されたモータフレーム通風孔115aに供給され、電動モータ110内部の各通風路(112a、113a、115c)に分配されて流れ、この時に電動モータ110を冷却し、通風路としての通風孔112aと隙間113aから流れ出る冷却空気が合流し、モータフレーム115の端部壁115jに貫設されたモータフレーム通風孔115bへ流れる。
【0044】
一方、その他の冷却空気は、モータフレーム115とリアアクスル100との間の(円環状の流路である)上流側流路100aを通り、第1の仕切り部117の通風孔117aから下流側流路100bへと供給される。下流側流路100bへ流入した冷却空気は、さらに下流側へと進み、第2の仕切り部(バイパス用壁部)501の壁面に衝突した後、流れの向きを変え、モータフレーム115のバイパス孔502を通過してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周部へバイパス供給される。そのバイパス供給された冷却空気によって、ステータコイル114の冷却促進の効果が得られる。すなわち、本実施例の第2の仕切り部(バイパス用壁部)501は、通風孔117aを通過して下流側流路100bへ流入した冷却空気をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間へ誘導する導風部として機能する。
【0045】
さらにバイパス供給された冷却空気の一部は、ステータコイル114(の下流側突出端部)の外周面に衝突することで流れの向きを変え、ステータ後壁面113w(
図5)の付近にも2次的な流れが発生する。この2次的な流れがステータ後壁面113wを通過することにより、ステータ後壁面113wの熱伝達が促進され、更なる冷却性向上の効果を得ることができる。
【0046】
また、ステータコイル114は、複数本のコイルをステータ113(の内周側)に複数回巻き付けて用いられる。コイル束の外周面は円筒状の曲面から形成される。この場合、
図9に示すように、モータフレーム115のバイパス孔502を通過してステータコイル114の外面に衝突した流れの一部は上記の円筒状曲面に沿って流れる(冷却空気の流れ901(901a、901b、901c、901d、901e))。その後、冷却空気の流れ901は通風路としての隙間115cからの流れ902(一点鎖線矢印902a、902b、902c)と合流し、さらに通風路としての通風孔112a、隙間113aからの流れと共にモータフレーム通風路115bを通り、リアアクスル100の排気口101から排出される。
【0047】
以上の構造および冷却方法により、本実施例の効果である電動モータ110の冷却性向上を実現することができる。
【0048】
このように、本実施例1では、モータフレーム115におけるステータコイル114(の下流側突出端部)に対向する部分に、下流側流路100bとステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間とを連通するバイパス孔502が形成されており、下流側流路100bに、通風孔117aを通過して下流側流路100bに流入した冷却空気の一部もしくは全部をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導する導風部として、モータフレーム115の外周壁面におけるバイパス孔502より下流側とリアアクスル100の内周壁面との間に位置する第2の仕切り部(バイパス用壁部)501が設けられているので、電動モータ110の冷却性を向上することができる。
【実施例2】
【0049】
図10、
図11を用いて、本発明の実施例2に係る電動モータの冷却風路構造および冷却方法について説明する。
図10は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部拡大断面図である(実施例1における
図4の(D)部に相当)。
図11は、
図10に示すバイパス用カバー1001の変形例を示すための要部拡大断面図である。
【0050】
なお、ダンプトラック1000全体の概略構成、電動モータ110の通風路(112a、113a、115c)における流路構造および冷却空気の流れ方等は、実施例1とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0051】
本実施例2は、実施例1の第2の仕切り部501の形状を変更したものである。本実施例では、
図10に示すように、第1の仕切り部117と、リアアクスル100内部の上流側流路100aと下流側流路100bをつなぐ通風孔117aと、(第2の仕切り部501に代えて)冷却空気のバイパス用カバー1001と、モータフレーム115の一部に設けられた例えば実施例1で述べたようなバイパス孔502とが備えられている。
【0052】
バイパス用カバー1001は、モータフレーム115の複数個のバイパス孔502(の外周)を覆うように配置し、上流側端部(開口)は開放され、下流側端部(開口)はモータフレーム115の外周壁面の周方向全周にわたって接触している例えば略円筒形状のカバー部材である。なお、バイパス用カバー1001は、必ずしもモータフレーム115の周方向に形成された全てのバイパス孔502を覆う必要はなく、モータフレーム115の周方向に形成された一部(1個もしくは複数個)のバイパス孔502を覆う形状でもよい。バイパス用カバー1001の下流側端部(開口)は、モータフレーム115の外周壁面におけるバイパス孔502より下流側に接触して閉塞されている。また、バイパス用カバー1001の上流側内壁面1001w(換言すれば、上流側端部開口)は、第1の仕切り部117の通風孔117aの内周壁面117wよりも、シャフト111の中心軸から見て外径側に位置した形状であることが望ましい。換言すれば、第1の仕切り部117の通風孔117aは、バイパス用カバー1001の上流側端部開口よりも内周側に形成されていることが望ましい。
【0053】
また、バイパス用カバー1001の上流側端部は、モータフレーム115のバイパス孔502より上流側に位置するとともに、モータフレーム115の壁面とバイパス用カバー1001の壁面の(軸方向の)被り代(I)は、モータフレーム115の外周壁からバイパス用カバー1001の上流側内壁面1001wまでのシャフト111の回転軸から見た半径方向距離(J)と同等か、それ以上の寸法に形成することが好ましい。
【0054】
なお、本実施例のバイパス用カバー1001は、リアアクスル100のテーパ部100tに合わせた(略平行となる)テーパ部1001tを有している。
【0055】
上記の構造によって、第1の仕切り部117の通風孔117aから供給された冷却空気の大半をバイパス用カバー1001で回収することができ、バイパス供給された冷却空気を効率よくステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導することができ、電動モータ110の冷却性が向上する。
【0056】
すなわち、本実施例のバイパス用カバー1001は、通風孔117aを通過して下流側流路100bへ流入した冷却空気をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間へ誘導する導風部として機能する。
【0057】
また、
図10に示す例では、バイパス用カバー1001の上流側端部は、モータフレーム115のバイパス孔502より上流側、かつ、第1の仕切り部117より下流側に位置している(言い換えれば、第1の仕切り部117から間隔をあけて配置されている)が、本実施例2は、
図11に示す通り、バイパス用カバー1101の上流側端部を第1の仕切り部117に接地(当接)する構造でも良い。
【0058】
この
図11に示す構造では、通風孔117aを通過して供給された冷却空気の全部を(バイパス用カバー1101の内側を介して)ステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導することができる。同様にバイパス用カバー1101の上流側内壁面1101w(換言すれば、上流側端部開口)は、第1の仕切り部117の通風孔117aの内周壁面117wよりも、シャフト111の中心軸から見て外径側(外周側)に位置した形状であることが望ましい。
【0059】
なお、本実施例の通風孔117aは、
図10に示す例では、第1の仕切り部117においてモータフレーム115の外周壁面から離間した位置に形成されているが、
図11に示す例では、第1の仕切り部117においてモータフレーム115の外周壁面に当接する位置に形成されている。
【0060】
このように、本実施例2でも、上記実施例1と同様に、モータフレーム115におけるステータコイル114(の下流側突出端部)に対向する部分に、下流側流路100bとステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間とを連通するバイパス孔502が形成されており、下流側流路100bに、通風孔117aを通過して下流側流路100bに流入した冷却空気の一部もしくは全部をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導する導風部として、バイパス孔502を覆うとともに下流側端部(開口)がモータフレーム115におけるバイパス孔502より下流側に接触する略円筒形状のバイパス用カバー1001、1101が設けられているので、電動モータ110の冷却性を向上することができる。
【実施例3】
【0061】
図12、
図13、
図14を用いて、本発明の実施例3に係る電動モータの冷却風路構造および冷却方法について説明する。
図12は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部拡大断面図である(実施例1における
図4の(D)部に相当)。
図13は、
図12に示す(K)-(K)断面図である。
図14は、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部断面斜視図である。
【0062】
なお、ダンプトラック1000全体の概略構成、電動モータ110の通風路(112a、113a、115c)における流路構造および冷却空気の流れ方等は、実施例1および実施例2とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0063】
本実施例3は、実施例1または実施例2に記載の第2の仕切り部501またはバイパス用カバー1001、1101の形状を変更したものである。本実施例では、
図12に示すように、第1の仕切り部117と、リアアクスル100内部の上流側流路100aと下流側流路100bをつなぐ通風孔117aと、(第2の仕切り部501またはバイパス用カバー1001、1101に代えて)冷却空気のバイパス用ダクト1201と、モータフレーム115の一部に設けられた例えば実施例1で述べたようなバイパス孔502とが備えられている。
【0064】
バイパス用ダクト1201は、モータフレーム115の各バイパス孔502(の外周)を覆うように配置し、上流側端部(開口)は開放され、下流側端部(開口)はモータフレーム115の外周壁面に接続され、周方向端部(すなわち、側壁)は各バイパス孔502を個別に囲むように形成されてモータフレーム115の外周壁面に接触している例えば断面略コの字形状のダクト部材である(
図13)。なお、バイパス用ダクト1201の寸法や第1の仕切り部117に開口された通風孔117aとバイパス用ダクト1201との位置関係は、実施例2で述べた構成と同様とし、詳細な説明は省略する。
【0065】
また、バイパス用ダクト1201(および当該バイパス用ダクト1201で囲われるバイパス孔502)は、前述したように、第1の仕切り部117の通風孔117aの軸方向下流に配置されている(
図14)。
【0066】
上記の構造によって、第1の仕切り部117の通風孔117aから供給された冷却空気でモータフレーム115の各バイパス孔502付近を通過する冷却空気を確実に回収し(
図14)、バイパス供給された冷却空気を効率よくステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導することができ、電動モータ110の冷却性が向上する。
【0067】
すなわち、本実施例のバイパス用ダクト1201は、通風孔117aを通過して下流側流路100bへ流入した冷却空気をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間へ誘導する導風部として機能する。
【0068】
このように、本実施例3でも、上記実施例1または実施例2と同様に、モータフレーム115におけるステータコイル114(の下流側突出端部)に対向する部分に、下流側流路100bとステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間とを連通するバイパス孔502が形成されており、下流側流路100bに、通風孔117aを通過して下流側流路100bに流入した冷却空気の一部もしくは全部をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導する導風部として、各バイパス孔502を個別に覆うとともに下流側端部(開口)がモータフレーム115におけるバイパス孔502より下流側に接触し、かつ、周方向端部が各バイパス孔502の周方向外側に接触するバイパス用ダクト1201が設けられているので、電動モータ110の冷却性を向上することができる。
【0069】
また、本実施例3では、実施例1および実施例2のバイパス構造よりも小型かつ軽量で冷却性向上の効果を得られるというメリットがある。
【実施例4】
【0070】
図15、
図16、
図17を用いて、本発明の実施例4に係る電動モータの冷却風路構造および冷却方法について説明する。
図15は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部拡大断面図である(実施例1における
図4の(D)部に相当)。
図16は、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部断面斜視図である。
図17は、
図15および
図16に示すバイパス管1501の変形例を示すための要部断面図である。なお、
図17中の符号1702は、シャフト111の回転方向を示す。
【0071】
なお、ダンプトラック1000全体の概略構成、電動モータ110の通風路(112a、113a、115c)における流路構造および冷却空気の流れ方等は、前に述べたものとほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0072】
本実施例4は、実施例1、実施例2、または実施例3に記載の第2の仕切り部501、バイパス用カバー1001、1101、またはバイパス用ダクト1201とは異なり、上流側流路100aの冷却空気を通風孔117aから直接ステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導するバイパス管1501を設ける。
【0073】
すなわち、本実施例4は、実施例1等と同様に、電動モータ110とリアアクスル100を一体に固定する第1の仕切り部117を設け、第1の仕切り部117に数か所リアアクスル100内部の上流側流路100aと下流側流路100bをつなぐ通風孔117aを開口する。さらに、本実施例4は、通風孔117aの開口部からモータフレーム115のバイパス孔502に向かって冷却空気を誘導するパイプ部材であるバイパス管1501を設ける。つまり、バイパス管1501の入口部(上流側端部開口)は、第1の仕切り部117における通風孔117a周りに接続される。バイパス管1501の出口部(下流側端部開口)は、バイパス孔502からモータフレーム115内部に挿入し、ステータコイル114の外周空間まで延長する。
【0074】
図16に示すように、本実施例に示す構造は、バイパス孔502と第1の仕切り部117に開口した通風孔117aの施工数は同数とし、それぞれに対応する各バイパス管1501を設けるものであるが、少なくとも一つの通風孔117aを設け、そこから各バイパス孔502に分配される分岐型のバイパス管(図示せず)を持つ構造であってもよい。また、バイパス管1501は、周方向に設けられた全てのバイパス孔502および通風孔117aに対応して設ける必要はなく、周方向に設けられた一部(1個もしくは複数個)のバイパス孔502および通風孔117aのみに対応して設けてもよい。
【0075】
上記の構造によって、第1の仕切り部117の通風孔117aから供給された冷却空気はよどむことなくバイパス管1501を通過し、ステータコイル114(の下流側突出端部)に直接吹き付けることができ、電動モータ110の冷却性が向上する。
【0076】
また、
図15および
図16に示す例では、バイパス管1501の出口端面(下流側端部開口)は、シャフト111(ロータ112)の軸中心に向き、かつ、ステータコイル114に向かうように設けている(
図17の一点鎖線を参照)。すなわち、バイパス管1501の出口端面(下流側端部開口)は、前述したように、ステータ固定部116の直下流付近で、かつステータコイル114(の下流側突出端部)の外表面付近に位置し、ステータコイル114(の下流側突出端部)に向かって開口している。それに対し、
図17に示すように、バイパス管1701の出口端面(下流側端部開口)1701aを、ステータコイル114の外周を形成する曲面(外周面)に対して略接線方向にバイパスされた冷却空気が供給されるように設けてもよい。例えば、上記接線方向の向きは、ダンプトラック1000の前進時の電動モータ110の回転方向1702に対して正方向になるようすればよい。この場合、リアアクスル100内には、電動モータ110が左右一対で固定支持されているため(
図4)、左右の電動モータ110に設けられるバイパス管1501(の下流側端部)同士は、リアアクスル100の中心位置を通る平面(x-z平面)に対して対向配置(ミラー配置)されることになる。
【0077】
図17に示すバイパス管1701の構造により、各バイパス管1701の出口端面1701aから供給された冷却空気は、ステータコイル114の外周部の略全周にわたって(すなわち、旋回しながら)通過する。そのため、冷却性能の向上が期待できる。
【0078】
このように、本実施例4でも、上記実施例1~実施例3と同様に、モータフレーム115におけるステータコイル114(の下流側突出端部)に対向する部分に、下流側流路100bとステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間とを連通するバイパス孔502が形成されており、下流側流路100bに、通風孔117aを通過して下流側流路100bに流入した冷却空気の一部もしくは全部をバイパス孔502を介してステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導する導風部として、上流側端部(開口)が第1の仕切り部117における通風孔117a周りに接続され、下流側端部(開口)がバイパス孔502に挿通されており、上流側流路100aの冷却空気を通風孔117aから直接ステータコイル114(の下流側突出端部)の外周空間に誘導するバイパス管1501、1701が設けられているので、電動モータ110の冷却性を向上することができる。
【0079】
また、本実施例4では、実施例1~実施例3のバイパス構造と比べて直接的にステータコイル114(の下流側突出端部)を冷却する冷却性向上の効果を得られるというメリットがある。
【実施例5】
【0080】
図18、
図19を用いて、本発明の実施例5に係る電動モータの冷却風路構造および冷却方法について説明する。
図18は、前記ダンプトラックにおいて、走行装置の一部を構成する電動モータの周囲の概略構成と冷却空気の流れを示すための要部拡大断面図である(実施例1における
図4の(D)部に相当)。
図19は、
図18に示す(J)-(J)断面図である。
【0081】
なお、ダンプトラック1000全体の概略構成等は、前に述べたものとほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0082】
本実施例5は、上記実施例4の冷却風路構造に対して、モータフレーム115の外周壁面、より詳しくは、モータフレーム115の上流側流路100aに面する(言い換えれば、第1の仕切り部117より上流側の)外周壁面に、フィンを備えた放熱部1801(例えばヒートシンクなど)を付加したものである。なお、ここでは、実施例4の冷却風路構造に対して付加しているが、実施例1~3の冷却風路構造に対して同様に付加できることは当然である。
【0083】
電動モータ110を構成する部品の中で比較的高温になりやすい部品は、ステータコイル114を含むステータ113である。そのステータ113は、シャフト111の軸中心から見て周方向に複数のステータ固定部116を介してモータフレーム115に組み付けられている。そのため、ステータ113の発熱は、通風路としての隙間113aや隙間115c(
図6)などを通過する冷却空気によって熱回収されるとともに、ステータ113からステータ固定部116、モータフレーム115へと熱が伝わり、モータフレーム115の外周側表面から冷却空気へと放熱する。したがって、上記の放熱部1801は、ステータ固定部116を組み付けているモータフレーム115の外周側表面(つまり、ステータ固定部116と接触するモータフレーム115の外周側表面)に設置することが望ましい(
図19)。また、放熱部1801を第1の仕切り部117に開口した通風孔117aの直上流側(軸方向上流)に設置することで、上流側流路100aから通風孔117aおよびバイパス管1501を通過して流れる多くの冷却空気を、放熱部1801に通過させることができる(
図18、
図19)。
【0084】
なお、本実施例に示すように、放熱部1801は、必ずしも別部品で構成する必要はなく、モータフレーム115と一体成型して形成してもよい。
【0085】
上記の構造によって、ステータ113の発熱を、放熱部1801による冷却と、ステータコイル114への冷却空気バイパス供給による冷却の両方により効率的に放熱することができ、更なる電動モータ110の冷却性が向上する。
【0086】
[熱流体解析とその結果]
本実施例の効果を説明する。本実施例の構造、具体的には実施例4の構造(
図15)を対象に熱流体解析を実施し、解析結果が示すステータコイル発熱量、ステータコイル温度、外気温度などから、ステータコイル表面の熱抵抗を算出した。
【0087】
ステータコイル114に冷却空気の一部をバイパス供給しない従来構造での熱抵抗と、本実施例の構造での熱抵抗とを比較した結果、本実施例の構造では従来構造に比べて熱抵抗を低減できることが確認された。
【0088】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
100 リアアクスル(アクスル)、100a 上流側流路、100b 下流側流路、101 排気口、110 電動モータ、111 出力軸(シャフト)、112 ロータ、112a 通風孔(通風路)、113 ステータ、113a 隙間(通風路)、114 ステータコイル、115 モータフレーム、115a,115b モータフレーム通風孔、115c 隙間(通風路)、116 ステータ固定部、117 第1の仕切り部、117a 通風孔、210 ブロワ、220,225 ダクト、310 キャビネット、311 制御機器、312 吸気口、320 発電機、330 エンジン、410 車体フレーム、420 ボディ、430 フロントデッキ、440 キャビン、501 第2の仕切り部(バイパス用壁部)(実施例1の導風部)、502 バイパス孔、510 前輪(操舵輪)、520 後外輪、530 後内輪、540 後輪(駆動輪)、1001,1101 バイパス用カバー(実施例2の導風部)、1201 バイパス用ダクト(実施例3の導風部)、1501,1701 バイパス管(実施例4の導風部)、1702 シャフトの回転方向、1801 放熱部、1000 ダンプトラック、(A),(B),(C)冷却空気