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特許7162963導光デバイスおよびシーンを表すディスプレイデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】導光デバイスおよびシーンを表すディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20221024BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20221024BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20221024BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
G02C11/00
G09F9/00 313
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2019538149
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018053496
(87)【国際公開番号】W WO2018146326
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】17155787.9
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17159510.1
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17181136.7
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507230267
【氏名又は名称】シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ライスター, ノルベルト
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-042136(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156167(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0300311(US,A1)
【文献】特表2014-503836(JP,A)
【文献】特開2012-063638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218481(US,A1)
【文献】特開2015-146025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0003507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0062707(US,A1)
【文献】特開2015-125222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0232651(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27//02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を導くための導光デバイスであって、光ガイドと、光カップリングデバイスと、光デカップリングデバイスと、を備え、前記光が前記光ガイドの境界面における反射を介して前記光ガイド内を伝搬し、前記光デカップリングデバイスによ前記光ガイドから前記光デカップリングし、
前記光デカップリングデバイスは制御可能に設計された複数のセクションに分割され、前記複数のセクションの駆動状態を制御することによって、前記光ガイドの前記境界面における前記光の反射回数が変更可能とされ、前記光デカップリングデバイスの前記複数のセクションの前記駆動状態は、前記光の異なる反射回数に対応する複数のセグメントによって観察者の視野が生成されるように制御される、導光デバイス。
【請求項2】
前記導光デバイスに入射する前記光が複数の光ビームを有する光束または光フィールドとして形成される場合、前記光ビームについての前記光ガイドからのデカップリングが、前記光束または光フィールドの全ての光ビームのそれぞれの場合において等しい回数の、前記光ガイドの前記境界面における反射の後に提供される、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項3】
前記光ガイドの前記境界面のうちのひとつ上において前記光が所定回数の反射の後に到達する光入射位置は、前記光ガイドの幾何特性および光学特性ならびに前記光カップリングデバイスの光学特性から決定可能である、請求項1または2に記載の導光デバイス。
【請求項4】
前記光ガイドの前記境界面の厚さおよび/またはあれば曲率を前記光ガイドの幾何特性として用いることによって、前記光入射位置を決定することができ、前記光ガイドの材質の屈折率は前記光ガイドの光学特性として利用可能である、請求項3に記載の導光デバイス。
【請求項5】
前記光デカップリングデバイスの位置が光入射位置に対応するように前記光デカップリングデバイスが前記光ガイドに設けられ、前記光入射位置は、所定回数の反射の後に前記光が前記光ガイドの前記境界面のうちのひとつの上に到達する位置である、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項6】
前記光デカップリングデバイスが制御可能に設計され、前記光デカップリングデバイスは、前記光デカップリングデバイスの駆動状態において所定回数の反射の後、光がデカップリングされるように、および、前記光デカップリングデバイスの別の駆動状態において前記光が前記光ガイドのなかをさらに伝搬するように、制御可能である、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項7】
ある回数の反射の後に前記光が到達する光入射位置に対応する、前記光デカップリングデバイスの少なくとも1つのセクションの駆動状態によって、および、さらなるある回数の反射の後に前記光が到達する光入射位置に対応する、前記光デカップリングデバイスの少なくとも1つのさらなるセクションの別の駆動状態によって、前記光ガイドの前記境界面における前記光の反射回数を変更できるように、前記光デカップリングデバイスが制御可能である、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項8】
前記光カップリングデバイスが、少なくともひとつの回折格子要素、好ましくは体積格子、または少なくともひとつのミラー要素を備える、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項9】
前記回折格子要素の格子定数または前記光ガイドの表面に対する前記ミラー要素の傾斜角が、所定回数の反射の後に前記光が到達する光入射位置の決定のための前記光カップリングデバイスの光学特性として使用可能である、請求項8に記載の導光デバイス。
【請求項10】
前記光デカップリングデバイスが、少なくともひとつの回折格子要素、特に偏向回折格子要素、好ましくは体積格子、または少なくともひとつのミラー要素を備える、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項11】
前記光デカップリングデバイスが少なくともひとつの制御可能回折格子要素を備える、請求項10に記載の導光デバイス。
【請求項12】
前記光デカップリングデバイスが、スイッチ要素と連携する少なくともひとつの受動的回折格子要素、好ましくは偏光スイッチと連携する偏光選択性回折格子要素を備える、請求項10に記載の導光デバイス。
【請求項13】
前記光デカップリングデバイスの前記少なくともひとつの制御可能回折格子要素が、前記光ガイドの所定領域に亘って延び、前記回折格子要素が、複数の切り替え可能セクションに分割される、請求項11に記載の導光デバイス。
【請求項14】
前記光ガイドが、少なくともセクションにおいて、少なくともある方向にカーブするものとして形成される、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項15】
前記光ガイドが、少なくともセクションにおいて、中空円筒形状を有し、その境界面が前記中空円筒の異なる半径を有する複数のセクションとして形成される、請求項14に記載の導光デバイス。
【請求項16】
前記光ガイドの表面に垂直に入射する光ビームが前記光ガイドから垂直に出て行くように、前記光カップリングデバイスの光偏向角と前記光デカップリングデバイスの光偏向角とが反対になるよう選択される、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項17】
前記光カップリングデバイスの大きさが前記導光デバイスに入射する光束の大きさよりも大きく、光束が前記光ガイドにカップリングされる位置が、前記大きさの前記光カップリングデバイスの境界内で移動可能である、請求項1に記載の導光デバイス。
【請求項18】
少なくともひとつの光源を有する照明デバイスと、少なくともひとつの空間光変調デバイスと、光学システムと、請求項1から17のいずれか一項に記載の導光デバイスと、を備えるディスプレイデバイス、特に目の近くのディスプレイデバイス。
【請求項19】
前記空間光変調デバイスのイメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって生成可能である、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項20】
前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の光源イメージまたは前記空間光変調デバイスのイメージが、前記導光デバイスおよび、前記導光デバイスからの前記光のデカップリング後の光路内の前記光学システムによって生成可能である、請求項18または19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項21】
仮想観測者領域が、前記光源イメージの面内に、または、前記空間光変調デバイスのイメージの面内に、生成可能である、請求項20に記載のディスプレイデバイス。
【請求項22】
前記導光デバイスの前記光ガイドが、少なくともセクションにおいて、中空円筒のセクションとしてカーブしており、仮想観測者領域が、前記中空円筒の円弧の中心点の領域に生成可能である、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項23】
前記イメージの生成が視野を定義し、前記視野内において、前記空間光変調デバイスに符号化されたシーンの情報が仮想観測者領域を通じた観測のために再構築される、請求項19に記載のディスプレイデバイス。
【請求項24】
複数のセグメントからなる、前記空間光変調デバイスの多重イメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって生成され、前記多重イメージが視野を定義し、前記視野内において、前記空間光変調デバイスに符号化されたシーンの情報が光源イメージの面内の仮想観測者領域を通じた観測のために再構築される、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項25】
複数のセグメントからなる単一の回折次数の多重イメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって前記空間光変調デバイスのフーリエ面内に生成され、前記多重イメージが視野を定義し、前記視野内において、前記空間光変調デバイスに符号化されたシーンの情報が前記空間光変調デバイスのイメージ面内の仮想観測者領域を通じた観測のために再構築される、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項26】
前記多重イメージについて、または、前記多重イメージの単一セグメントについて、前記導光デバイスに入った後の前記空間光変調デバイスの種々の画素から来る光の前記デカップリングが、全ての画素のそれぞれの場合において等しい回数である前記光ガイドの境界面における複数回の反射の後に提供される、請求項24または25に記載のディスプレイデバイス。
【請求項27】
前記多重イメージの異なるセグメントについて、あるセグメントの前記生成のための前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の回数が、別のセグメントの前記生成のための前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の回数とは異なる、請求項24または25に記載のディスプレイデバイス。
【請求項28】
前記多重イメージの異なるセグメントについて、前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の回数は等しく、前記光ガイドへの前記光のカップリング位置がこれらのセグメントについて異なる、請求項24または25に記載のディスプレイデバイス。
【請求項29】
光偏向デバイスは、前記光の前記カップリング位置を前記光ガイドの中へとずらすために、前記光の方向において前記導光デバイスの前に提供される、請求項28に記載のディスプレイデバイス。
【請求項30】
前記光学システムが二段光学システムとして設計され、一段目において、前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の中間イメージが前記光学システムの少なくともひとつの第1イメージング要素によって生成され、二段目において、前記光源の前記中間イメージが、前記光学システムの少なくともひとつの第2イメージング要素によって、前記光ガイドからの前記光の前記デカップリング後の光路内の仮想観測者領域内に結像される、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項31】
前記導光デバイスの前記光デカップリングデバイスの前記少なくともひとつの制御可能回折格子要素が少なくともひとつのレンズ機能を備える、請求項18に記載のディスプレイデバイス。
【請求項32】
二つのディスプレイデバイスを有するヘッドマウントディスプレイであって、前記ディスプレイデバイスのそれぞれが請求項18から31のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスにしたがい設計され、かつ、それぞれ観測者の左目および前記観測者の右目に割り当てられるヘッドマウントディスプレイ。
【請求項33】
空間光変調デバイスおよび光ガイドによって再構築されたシーンを生成するための方法であって、
前記空間光変調デバイスが前記シーンの要求される情報で入射光を変調することと、
前記空間光変調デバイスによって前記変調された光が、光カップリングデバイスによって前記光ガイド内へとカップリングされ、光デカップリングデバイスによって前記光ガイドからデカップリングされることと、
を含み、
前記光デカップリングデバイスは制御可能に設計された複数のセクションに分割され、
前記複数のセクションの駆動状態を制御することによって、前記光ガイドの境界面における前記光の反射回数が変更可能とされ、
前記光デカップリングデバイスの前記複数のセクションの前記駆動状態は、前記光の異なる反射回数に対応する複数のセグメントによって観察者の視野が生成されるように制御される、
方法。
【請求項34】
前記空間光変調デバイスのイメージまたは複数のセグメントからなる前記空間光変調デバイスの多重イメージが生成される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記多重イメージの前記セグメントの少なくとも一部について、前記空間変調デバイスの中間イメージが前記光ガイド内に生成される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を導くための導光デバイスおよびそのような導光デバイスを備えるシーン、特に三次元シーン、を表すためのディスプレイデバイスに関する。さらに、本発明はまた、空間光変調デバイスおよび導光デバイスによって再構築されたシーンを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導光デバイスは、特に光学分野において広い用途を有する。特に、それらはレーザの分野で使用される。光ガイドは一般に、内部にコアを有し、このコアは、クラッドまたはクラッド層によって囲まれている。光ガイドに入る光は、通常、全反射を介してその中を伝播する。全反射によるこの導光効果は、クラッド材の屈折率よりもコア材の屈折率が高いために、またはクラッド層が設けられていない場合には、周囲、例えば空気、の屈折率よりも導光材の屈折率が高いために生じる。
【0003】
しかしながら、導光デバイス又は光ガイドは、他の分野、例えば、再構成されたシーンを表す装置、特に、再構成された、好ましくは3次元シーン又はオブジェクトポイントを表す装置にも使用することができる。このような装置は例えば、シーンの観察者の目の近くに配置されたディスプレイ又はディスプレイデバイス、いわゆる目に近いディスプレイとすることができる。1つの目に近いディスプレイは例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)である。
【0004】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)または同様の目に近いディスプレイまたはディスプレイデバイスの場合、コンパクトで軽量な光学構造を使用することが望ましい。このようなディスプレイデバイスは一般に、ユーザの頭部に固定されるので、容積が大きくて重い構成は、ユーザの快適性を不利に損なう。
【0005】
AR(拡張現実)HMDの場合、ユーザは一方ではHMDによる妨害なしに、自分の自然環境を可能な限り知覚することができ、他方では、HMD自体に表示されたコンテンツを良好に知覚することができることがさらに望ましい。
【0006】
空間光変調デバイスおよび空間光変調デバイスをイメージングするための光学構成が使用される場合、この場合、光学構成は、空間光変調デバイスからの光および観察者の自然環境からの光の両方が目に到達することができるように考えられるべきである。
【0007】
可視範囲または視野は、HMDにおけるユーザの快適さにとっても重要である。この場合、可能な限り大きな可視範囲が有利である。しかしながら、一般に、高い解像度と組み合わされた大きな可視範囲の表現は、非常に多数の画素を有する空間光変調デバイスを必要とする。
【0008】
観察者ウィンドウを有するホログラフィックヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、米国特許出願公開第2013/0222384号明細書に開示されている。このようなヘッドマウントディスプレイは図1に概略的に示されており、可視範囲を分割することによって広い可視範囲を達成することができる。この場合、観察者ウィンドウから見える可視範囲の様々な部分が、空間光変調器200および適切な光学系400、500を使用して時系列的に生成される。この構成の利点は、連続的な表現であるために、空間光変調器の多数の画素を必要とすることなく、大きな可視範囲が達成されることである。
【0009】
様々な実施形態が米国特許出願公開第2013/0222384号明細書に記載されており、このようにセグメント又はタイリングから構成される空間光変調器の多重イメージを生成する。しかしながら、いくつかの記載された実施形態は比較的大きな寸法を有する光学コンポーネントを用いるものであり、このような光学コンポーネントは、コンパクトおよび/または軽量設計の要件、またはAR-HMDにおける有用性に、限定的な程度でしか対応しない。
【0010】
例えば、米国特許出願公開第2013/0222384 A1号明細書の構成が図2に示されており、これは観察者の目の前に近接して複数のレンズ800を有する。このような構成は、とりわけ、VR(バーチャルリアリティ)HMDに適している。しかし、AR-HMDでは、観察者がレンズ800を通して自然環境を知覚することができる限りにおいて、これらのレンズ800は、自然環境が歪んだ形で表示される効果を有する。
【0011】
図3は米国特許出願公開第2013/0222384 A1号明細書から取得されたものであり、複数のミラー950、960、970を有するHMD構成を開示している。部分透過素子としてのミラーの適切な設計により、この構成は、原則として、観察者が自分の周囲を知覚することができるのにも適している。これは、この構成が拡張現実(AR)アプリケーションに適し得ることを意味する。しかしながら、大きな可視範囲を生成するためには、比較的大きなミラーが必要とされる。これは、この構成のコンパクトでスペースを節約したバージョンを達成することが困難であり得ることを意味する。
【0012】
実施形態は、導波路を使用する米国特許出願公開第2013/0222384号明細書にも記載されている。このような実施形態は図4に示されており、それぞれ、観察者の左目のための1つの導波路1101と、観察者の右目のための1つの導波路1102とを有する。この構成では空間光変調器201、202および光学ユニット811、812はそれぞれ観察者の頭部に横方向に隣接して設けられ、光はそれぞれの目のための格子1111、1112によって薄い導波路1101、1102に結合される。結合光学ユニットとして使用される格子は好ましくは体積格子として設計され、光はそれらを使用して平坦な角度で薄い導波路に結合され、その結果、全ての結合角度の光は互いに平行に配置された導波路の2つの境界面における全反射を介して、導波路の方向に伝播する。この場合、導波路は完全に平坦である必要はなく、むしろ湾曲面を有することもできる。しかしながら、表面の曲率に関する定量的な仕様は、米国特許出願公開第2013/0222384号明細書には提供されていない。光偏向デバイスは様々な角度スペクトルを生成し、これらの角度スペクトルは、導波路に時系列的に結合される。セグメント化された多重イメージを生成するために、多重イメージの各セグメントに対して異なる角度スペクトルが導波路に結合される。光偏向デバイスによって生成された角度スペクトルのうちの1つの光は、その角度選択性に関して異なる角度範囲のためにそれぞれ設計され、互いに隣接して配置された複数の反射体積格子を介して、観察者の目の方向に導波路からデカップリングされる。
【0013】
米国特許出願公開第2013/0222384 A1号明細書に記載された他の設計に関連する図4によるこのような構成の利点は、導波路が軽量かつコンパクトであり、観察者が導波路を通して見た場合に、観察者も自分の周囲を知覚することができることである。したがって、導波路の使用は、AR構成にとって有利である。しかしながら、導波路の使用は、AR配置に限定されるものではなく、むしろVR配置にも適している。導波路は米国特許出願公開第2013/0222384 A1号明細書では薄いと呼ばれており、厚さには数値が指定されていない。
【0014】
Keigo Iizuka著、Elements of Photonics, Volume II chapter 9 「Planar Optical Guides for Integrated Optics」という本もまた、光ガイドにおける光伝播に関してここで引用される:「集積オプティクスの基礎は平面光ガイドである。光は、周囲の層の屈折率よりも高い屈折率を有する媒体によって導かれる...。幾何学的オプティクスによれば、光は特定の条件が満たされるならば、損失が非常に少ない連続的な全内部反射によって伝播する。これらの条件は、伝播を支持する層が周囲の媒体よりも高い屈折率を有していなければならず、光が上下の境界で全反射を満たす角度内で発射されなければならないことである。この単純な幾何学的光学理論は、導波記録媒体の寸法が光の波長に匹敵する場合には失敗する。この範囲では、ガイドは離散的な数の角度についてのみ伝搬をサポートする。このような離散的な数の角度を「伝搬モード」と称する。」後者の場合、光伝播は波動光学的アプローチによって記述される。次に、用語「導波路」が典型的に使用される。このような導波路には、規定された幾何学的ビームプロファイルは存在しない。
【0015】
これとは対照的に、本出願では、用語「光ガイド」は、光伝播が幾何学的オプティクスによって記述され得る、十分に厚い構成を指すように使用される。このような光ガイドは例えば、数ミリメートル、例えば、2mmまたは3mmの厚さを有することができる。
【0016】
ホログラフィックディスプレイまたはディスプレイデバイスは、とりわけ、空間光変調デバイスの画素のアパーチャにおける回折の効果、および光源によって放出されるコヒーレント光の干渉に基づく。それにもかかわらず、幾何学的オプティクスを使用して仮想観察者ウィンドウを生成するホログラフィックディスプレイのために、いくつかの重要な条件を定式化し、定義することができる。
【0017】
一方では、ディスプレイデバイスにおける照明ビーム経路がこの目的のために重要である。これは、とりわけ、仮想観察者ウィンドウを生成するために使用される。空間光変調デバイスは、少なくとも1つの実光源又は仮想光源を有する照明デバイスによって照明される。この場合、空間光変調デバイスの異なる画素から来る光は、それぞれ仮想観察者ウィンドウに向けられなければならない。この目的のために、空間光変調デバイスを照明する照明デバイスの少なくとも1つの光源は、通常、仮想観察者ウィンドウを有する観察者平面内にイメージングされる。この光源のイメージングは例えば、仮想観察者ウィンドウの中心で行われる。無限遠の光源に対応する平面波を用いて空間光変調デバイスを照明する場合、例えば、空間光変調デバイスの異なる画素からの光は、これらの画素から垂直に出射し、仮想観察者ウィンドウの中心に集束される。各場合において、垂直出射ではないが、空間光変調デバイスの様々な画素から同じ回折角度で発せられる光も、仮想観察者ウィンドウ内のそれぞれの同じ位置に集束される。しかしながら、一般に、仮想観察者ウィンドウは少なくとも1つの光源のイメージに対して横方向に変位させることもでき、例えば、少なくとも1つの光源のイメージの位置は、観察者ウィンドウの左又は右エッジと一致させることができる。
【0018】
他方、イメージングビーム経路は、直視型ディスプレイを除いて、ホログラフィックディスプレイ又はディスプレイデバイスにおいて重要である。HMDでは、一般に、寸法の小さい空間光変調デバイスの拡大像が生成される。これは、しばしば、空間光変調デバイス自体が位置する距離よりも観察者に対してより大きな距離にあるように見える虚像である。空間光変調デバイスの個々の画素は、通常、拡大されてイメージングされる。
【0019】
しかしながら、米国特許出願公開第2013/0222384号明細書は明確なイメージングビーム経路及び明確な照明ビーム経路が提供され、仮想観察者ウィンドウ及び空間光変調器のイメージの両方を所望の方法で生成することができるように、導波路をどのように設計しなければならないかについての教示を含んでいない。特に、上述したように、導波路において、ビーム経路を幾何学的に記述することは一般に不可能である。導波路内を伝播する各種光学モードは、異なる光路に対応することができる。
【0020】
導波路を有する非ホログラフィックHMDの構成は例えば、米国特許出願公開第2009/303212号明細書に記載されている。光変調器は、その中で無限遠にイメージングされる。無限の距離のために、光の光路は、導波路内の伝播において役割を果たさない。簡略化して表現すると、光変調器の画素のイメージから目までの経路全体は、導波路を通って延びる経路成分が異なる長さであっても、常に無限に長い。
【0021】
しかしながら、ホログラフィックディスプレイでは、大きな奥行き領域を有する3次元(3D)シーンの表現を可能にする努力が常になされている。一般に、このようなディスプレイの目的は、観察者から非常に離れた位置にあるコンテンツのみを表すことではない。光変調器のイメージがホログラフィックディスプレイ内の無限遠に位置する場合であっても、一般に、3次元シーンは有限の距離で表される。米国特許出願公開第2009/303212号明細書に記載されているような構成では、特定の状況下では光変調器自体をホログラフィックディスプレイにおいて無限遠に正確にイメージングさせることができる。しかしながら、シーンのオブジェクトポイントの正確な再構成は、有限の距離で、すなわち光変調器のイメージの前で実行することができなかった。
【0022】
仮想観察者ウィンドウを生成するホログラフィック直視型ディスプレイは、照明ビーム経路を含む。ディスプレイは、少なくとも1つの光源を有する照明デバイスを備える。例えば、照明デバイスは、空間光変調デバイスを照明する平行平面波面を生成するバックライトとして設計される。コリメートされた波面は、空間光変調デバイスを無限遠から照明する仮想光源に対応する。また、空間光変調デバイスは発散または収束波面を使用して照明することもできるが、これは空間光変調デバイスの前方または後方の有限距離にある実際のまたは仮想の光源に対応する。フィールドレンズは、空間光変調デバイスから来る光を仮想観察者ウィンドウの位置に集束させる。ホログラムが空間光変調デバイスにおいて符号化されていない場合、光源のイメージは観察者平面となり、より高い回折次数の結果としてこのイメージの周期的な繰り返しが生じる。適切なホログラムが空間光変調デバイスに符号化される場合、仮想観察者ウィンドウはゼロ番目の回折次数に近い結果となる。これは、以下、仮想観察者ウィンドウが光源イメージの平面内に位置することを述べることによって言及される。ホログラフィック直視型ディスプレイでは、光源のイメージを生成するフィールドレンズは通常、空間光変調デバイスの近くに配置される。観察者は、空間光変調デバイスのイメージが存在しない状態で、その実際の距離で空間光変調デバイスを見る。その場合、イメージングビーム経路は存在しない。
【0023】
他のホログラフィックディスプレイデバイス、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、または他の投影ディスプレイでは、既に簡単に述べたように、イメージングビーム経路がさらに存在することができる。観察者が見る空間光変調デバイスの実像又は虚像は、これらのディスプレイデバイスにおいて生成され、照明ビーム経路は仮想観察者ウィンドウの生成にとって依然として重要である。従って、ここでは、ビーム経路、照明ビーム経路及びイメージングビーム経路の両方が重要である。
【0024】
イメージングビーム経路及び照明ビーム経路が存在するケースは、他のディスプレイデバイス、例えば、立体ディスプレイデバイスにおいても発生し得る。スイートスポットを生成するための立体ディスプレイデバイスは例えば、上述のホログラフィックディスプレイと同様の光学構成、すなわち、空間光変調デバイスおよびフィールドレンズのコリメートされた照明を有することができるが、例えば、定義された散乱角度を有する散乱要素などの追加の構成要素も有することができる。散乱要素がディスプレイデバイスから取り除かれた場合、フィールドレンズは、スイートスポットの平面内に光源イメージを生成する。散乱要素を使用することによって、光は代わりに、観察者の瞳孔間距離よりも狭い、拡大されたスイートスポットにわたって分散する。しかしながら、照明ビーム経路は、口径食効果なしに立体イメージを完全に見ることができるために、重要である。この場合、3次元ステレオディスプレイデバイスはまたイメージングビーム経路を有することができ、このイメージングビーム経路を用いて、空間光変調デバイスが観察者から特定の距離において結像される。
【0025】
一般的な場合、ディスプレイデバイスは、ビーム経路、照明ビーム経路、及びイメージングビーム経路の両方に影響を及ぼすレンズ又は他のイメージング素子を含むことができる。例えば、イメージング素子が観察者平面内に空間光変調デバイスのイメージと光源のイメージとの両方を生成するように、空間光変調デバイスと観察者との間に単一のイメージング素子を配置することができる。
【0026】
ホログラフィックディスプレイデバイスにおいて、3次元シーンからのホログラムの演算におけるサブホログラムの典型的なサイズは、空間光変調デバイスのイメージ平面に対する、3次元シーンの空間位置に依存する。大きな寸法を有するサブホログラムは例えば、シーンが観察者に向かって空間光変調デバイスのイメージ平面のはるか前に位置する場合に生じる。しかしながら、大きなサブホログラムは、ホログラム計算中の計算労力を増大させる。本出願人の国際公開第2016/156287号パンフレットには、空間光変調デバイスの仮想平面を算術的に導入することによって計算労力を低減する方法が開示されている。しかしながら、空間光変調デバイスのイメージ平面が好適な位置になるように光学系を選択する選択肢も代替的に望ましく、その結果、小さな寸法を有するサブホログラムを有するホログラムを計算することができる。
【0027】
光学系および/またはイメージング系の制約のために、すべての場合において、サブホログラム演算に有利な点に空間光変調デバイスのイメージを生成することは不可能である。例えば、ヘッドマウントディスプレイにおいて大きな視野を生成する必要性は、短い焦点距離を有するレンズが観察者の目の近くで使用されなければならないという結果をもたらし得る。他方、これは、空間光変調デバイスをレンズに十分に近接して配置することができない場合、ホログラム計算に有利な位置に空間光変調デバイスのイメージ平面を生成することをより困難にしうる。
【0028】
一般的に考えると、照明ビーム経路に必要な光学素子はイメージングビーム経路に不利な影響を及ぼす可能性があり、その逆も同様である。
【0029】
仮想観察者ウィンドウを生成するホログラフィックディスプレイデバイスの代替設計では、空間光変調デバイスの結像を仮想観察者ウィンドウ内で行うこともできる。あるタイプのスクリーンまたは、物理的なスクリーンが存在しない場合には3次元シーンのホログラフィック表現のための基準面が、空間光変調デバイスのフーリエ面、したがって光源のイメージ面に設けられる。従って、このようなディスプレイデバイスにおいては、イメージングビーム経路及び照明ビーム経路も存在する。ただし、ホログラム面についてのその意義と観察者平面についてのその意義とは入れ替えられる。次いで、仮想観察者ウィンドウは、空間光変調デバイスのイメージ平面内に配置され、したがって、イメージングビーム経路を参照する。3次元シーンからホログラムを計算するためのホログラムまたは基準面は空間光変調デバイスのフーリエ平面内に位置し、したがって、照明ビーム経路を基準とする。
【0030】
国際公開第2016/156287号パンフレットによれば、このようなディスプレイデバイスのホログラムを計算するために、空間光変調デバイスのフーリエ面に仮想平面を配置することができる。サブホログラムが計算され、この仮想平面内で合計される。空間光変調デバイスに書き込むことができるホログラムは次に、総和ホログラムからフーリエ変換によって決定される。
【0031】
観察者平面内に空間光変調デバイスのイメージを有するディスプレイデバイスは、左目及び右目のための2つの平面ビューを有する立体3次元ディスプレイデバイスの設計を生成する目的で、修正されたバージョンで使用することもできる。
【0032】
適切に計算されたホログラムが空間光変調デバイスに書き込まれ、ディスプレイデバイスが十分にコヒーレントな光を生成する照明デバイスを含む場合、ホログラムのフーリエ変換として空間光変調デバイスのフーリエ面に2次元イメージが生成される。追加の散乱要素をこの平面内に配置することができる。代替的に、空間光変調デバイスのイメージが、散乱要素のない観察者平面内に生成されたとしたならば、散乱素子を使用してスイートスポットを生じさせることができよう。スイートスポットのサイズは、散乱要素の散乱角度に依存する。このような構成は例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)に使用することができる。
【0033】
以下の説明は主に、仮想観察者ウィンドウ又はスイートスポットが光源イメージの平面内に存在する場合に関する。上記の説明は空間光変調デバイスのイメージを仮想観察者ウィンドウ内に有する実施形態にも適用可能であり、これは、イメージングビーム経路と照明ビーム経路との交換、または、空間光変調デバイスの面とフーリエ面との交換によるものである。したがって、本発明は、光源イメージの面内に仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットを有する場合に限定されるものではない。
【0034】
既に簡単に述べたように、イメージングビーム経路及び照明ビーム経路の両方に問題が生じる可能性のあるホログラフィックディスプレイデバイスは、米国特許出願公開第2013/0222384号明細書のディスプレイデバイスである。選択された光学系に応じて、特定の状況下では、多重イメージの異なるセグメントに異なる光路が生じる。
【0035】
イメージングビーム経路については、これは空間光変調デバイスのイメージ平面が個々のセグメント内の異なる深さに位置することを意味することができる。ホログラフィックディスプレイデバイスの場合、サブホログラムが空間光変調デバイスのそれぞれのイメージ位置に従って個々のセグメントについて計算されるという点で、異なるセグメントにおける空間光変調デバイスの異なるイメージ平面は、原則として補償されうる。観察者から特定の距離にあるオブジェクトポイントは例えば、空間光変調デバイスの非常に遠いイメージを有するセグメントについては空間光変調デバイスの前のオブジェクトポイントのサブホログラムとして符号化することができ、空間光変調デバイスのより近いイメージにおける同様の距離にあるオブジェクトポイントは空間光変調デバイスの後のオブジェクトポイントのサブホログラムとして符号化することができる。観察者からの空間光変調デバイスのイメージの距離が異なるにもかかわらず、コヒーレントな3次元シーンを表すことができる。しかしながら、多重イメージの個々のセグメントについて不都合なイメージ位置は、サブホログラムのサイズを増加させ、従って、計算労力を増加させる可能性があることは不利であり得る。個々のセグメントにおける異なる光路の結果としての仮想観察者ウィンドウの軸方向位置の可能な変位は、個々のセグメントにおける空間光変調デバイスのイメージの変位よりもさらに不利であり得る。セグメント化またはタイリングの目標は、一様な仮想観察者ウィンドウの生成であり、当該ウィンドウから大きな視野を見ることができる。多重イメージの個々のセグメントに対して奥行き方向に変位された仮想観察者ウィンドウの位置は、いずれの場合にも、3次元シーンの知覚に不利に影響を及ぼすことになる。したがって、すべてのセグメントにおいて、同じ観察者平面内の均一な光源イメージが得られることが必要である。さらに、観察者から等しいまたは少なくとも同様の距離にある空間光変調デバイスのイメージが、すべてのセグメントについて追加的に生成される。典型的には、米国特許出願公開第2013/0222384号明細書に開示されているように、ディスプレイデバイスにおいて光源イメージが観察者平面内に生成され、当該ディスプレイデバイスは多重イメージのセグメントを生成するために使用される。セグメントは、空間光変調デバイスのイメージが個々のセグメントの各々において互いにオフセットして生成されることによって生成される。
【0036】
しかしながら、観察者平面内に空間光変調デバイスのイメージを有するディスプレイデバイスに対して、セグメント化又はタイリングを生成することもできる。このようなディスプレイデバイスでは、空間光変調デバイスのイメージは、全てのセグメントに対して一様な仮想観察者ウィンドウを生成するために、全てのセグメントにおいて同じ位置で生成される。代わりに、空間光変調デバイスのフーリエ面は、大きな視野を生成するために、個々のセグメントにおいて互いに対して変位される。より高い回折次数は一般に、空間光変調デバイスのフーリエ面をもたらすので、このような構成は例えば、非変位フーリエ面を第1のステップで生成し、多くてもひとつの回折次数のみが透過し、他の回折次数がフィルタ除去されるようにこのフーリエ面においてフィルタリングを実行することによって、例えば複数のステップで、生成されてもよい。第2のステップにおいて、このフィルタリングされた回折次数のイメージが生成され、このイメージは、大きな視野を生成するために、個々のセグメントにおいて互いに対して変位される。代替案は、可変フィルタを有する単一ステップシステムであり、そこでは、全ての回折次数が第1のステップで変位されるが、フィルタのアパーチャも、それぞれの場合に同じ回折次数が透過されるように変位される。観察者平面内に光源イメージを有するディスプレイデバイスについてなされた記述は、観察者平面内に空間光変調デバイスのイメージを有するディスプレイデバイスにも同様に対応して移すことができる。
【0037】
ディスプレイデバイスにおいて照明ビーム経路及びイメージングビーム経路を生成するための光学系も、一般的な場合に収差を有する。例えば、観察者平面に光源イメージを有するホログラフィックディスプレイデバイスでは、以下の効果が得られる。イメージングビーム経路の収差は空間光変調デバイスのイメージが生成される解像度に影響し、場合によってはホログラフィックディスプレイデバイスにおいて、ホログラムが空間光変調デバイス上で符号化される3次元シーンの鮮鋭度および解像度にも影響する。
【0038】
照明ビーム経路の収差は例えば、鮮明に境界付けられた仮想観察者ウィンドウのイメージングに影響を及ぼす。収差のためにぼやけている仮想観察者ウィンドウは例えば、口径食効果をもたらす可能性があり、その結果、3次元シーン全体は、仮想観察者ウィンドウ内の特定の位置からもはや見ることができない。
【0039】
光学素子が照明ビーム経路及びイメージングビーム経路に影響を及ぼす場合、その収差は一般に、両方のビーム経路にも影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0040】
したがって、本発明の目的はディスプレイデバイスに使用可能であり、明確なイメージングビーム経路および明確な照明ビーム経路をディスプレイデバイス内に実装することができる装置を提供することである。また、このような装置を有するディスプレイデバイス、特に、ユーザの目の近くに設けられたディスプレイデバイスを提供することにより、広い可視範囲または視野を生成することが可能となる。これは、空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージと組み合わせて実施可能であることが好ましい。本発明のさらなる目的はコンパクトで軽量な構造を有し、空間光変調デバイスの多重イメージのすべてのセグメントについて、それぞれの場合に仮想観察者ウィンドウを同じ位置で生成することができるディスプレイデバイスを提供することである。
【0041】
請求項1の特徴による本発明にしたがい、本目的が達成される。
【0042】
本発明によれば、目に近いディスプレイ、特にここではヘッドマウントディスプレイに使用するのに特に適した導光デバイスが提案されるが、その使用はこれらのディスプレイに限定されるものではない。
【0043】
光を導くための本発明に係るそのような導光デバイスは、光ガイドと、光カップリングデバイスと、光デカップリングデバイスと、を備える。光カップリングデバイスによって光ガイドに入る光は、光ガイドの境界面での反射を介して、特に全反射を介して、光ガイド内を伝播する。複数回反射した光の光ガイドからのデカップリングは、光デカップリングデバイスによって実行される。光のデカップリングは、光ガイドの境界面における光の所定の又は事前定義の回数の反射の後に提供される。
【0044】
これは、本発明による導光デバイスによって、光ガイドの境界面での光のそれぞれの所定のまたは固定的に規定された回数の反射の後に、光ガイド内の異なる位置で光のデカップリングがそこから発生することを意味する。したがって、この場合、光の等しい角度範囲は、それぞれの場合において、光ガイドの異なる位置でデカップリングされうる。
【0045】
前記導光デバイスに入射する前記光が複数の光ビームを有する光束または光フィールドとして形成される場合、前記光ビームについての前記光ガイドからのデカップリングが、前記光束または光フィールドの全ての光ビームのそれぞれの場合において等しい回数の、前記光ガイドの前記境界面における反射の後に提供される点で、特に有利でありうる。
【0046】
光フィールドは本発明によれば、特定の領域内の多数の光ビームによって定義される。したがって、光フィールドは、全ての入射光ビームの全体である。
【0047】
例えば、導光デバイスがディスプレイデバイス、例えば、米国特許出願公開第2013/0222384 A1号によるディスプレイデバイスにおいて、空間光変調デバイスの多重イメージの単一のセグメントのために使用される場合、空間光変調デバイスの様々な画素から来る光は、導光デバイスの光ガイドにカップリングされ、全ての画素についてそれぞれの場合に等しい光ガイドの境界面での多数の反射の後に再びデカップリングされる。
【0048】
定義された幾何学的経路が光ガイド内に存在する。したがって、光ガイド内の光の伝播中に、光ガイド内の光路およびその境界面上の反射の回数を特に決定することができる。したがって、このようにして、光ガイドの境界面における予め定められた回数の反射の後に、光がそこからデカップリングされることが予め決定される。
【0049】
したがって、本発明によると、前記光ガイドの前記境界面のうちのひとつ上において前記光が所定回数の反射の後に到達する光入射位置は、前記光ガイドの幾何特性および光学特性ならびに前記光カップリングデバイスの光学特性から決定可能である。この場合、前記光ガイドの前記境界面の厚さおよび/またはあれば曲率を前記光ガイドの幾何特性として用いることによって、好適には、前記光入射位置を決定することができ、前記光ガイドの材質の屈折率は前記光ガイドの光学特性として利用可能でありうる。
【0050】
光ガイドの幾何学的形状は、ここでは、光ガイドの厚さ及び可能な曲率として理解されるべきであり、これは、光ガイドの実施形態に応じて異なり得る。ここで、光カップリングデバイスの光学特性は、光カップリングデバイスに設けられた少なくとも1つの要素、例えば回折格子要素に関する。光カップリング要素が回折格子要素である場合、光ガイド内の光の反射回数に影響を及ぼす光学特性は、回折格子要素の格子周期である。したがって、光ガイド内の所望の反射回数を決定するために、光ガイドの厚さおよび存在する可能性のある曲率、ならびにカップリング要素の光学特性、この例では回折格子要素の格子周期が使用され、考慮される。次に、これらの値から、光ガイド内の光の必要な又は所望の回数の反射が決定され、定義される。回折格子の式は典型的にはsinβout=λ/g+sinβinとして知られ、ここでgは格子周期であり、λは光の波長であり、βinは光の入射角であり、βoutは光の出射角である。しかしながら、この式は、光路内の媒体の屈折率が回折格子要素の前後で等しい場合にのみ適用される。大気からの光を光ガイドの記録媒体にカップリングさせるためにカップリング要素が使用される場合、光ガイドの屈折率nlightguideはさらに考慮されるべきである:nlightguidesinβout=λ/g+nairsinβin
【0051】
例えば、波長λ=532nmの光ビームがカップリング要素に垂直に大気から入射し、カップリング要素が格子周期g=400nmを有し、光ガイド材が屈折率nlightguide=1.6を有する場合、56.2°の角度βoutが計算されてもよく、このとき、光ビームは、光ガイドにカップリングされた後に伝播する。厚さd=3mmの平坦な光ガイドでは、光ビームは、例えば、光ガイドの反対側での反射後に、距離2dtanβout、このケースでは8.96mm、の後に、光ガイドのカップリングされた側の表面に再度到達する。5回の反射の後、光ビームは、カップリング位置から5×8.96=44.8mmの距離で再び光ガイドからデカップリングされる。
【0052】
決定された値は、好ましくは値テーブル(ルックアップテーブル)に保存または記憶され得る。このようにして決定された光の反射回数の値を値テーブルに保存または記憶することは、このようにしてこれらの値を再び決定する必要がなく、したがって計算労力を低減することができるという点で有利であり得る。この場合、値は、単に値テーブルから取り出され、それに応じて使用されることができる。
【0053】
導光デバイスはARアプリケーションにおける自然環境の良好な知覚に寄与するので、例えば、AR(拡張現実)ディスプレイデバイスとして利用されるディスプレイデバイスにも有利に使用することができる。この場合、「拡張現実」は一般に、情報アイテムの視覚的表現として理解され、これは、オーバーレイおよび/または重ね合わせによる、生成された追加の情報アイテム/追加の表現によるイメージ(動画)またはシーンの拡張を意味する。もちろん、本発明によるこのような導光デバイスの使用は、このようなARディスプレイデバイスに限定されるものではない。
【0054】
本発明のさらなる有利な実施形態および改良は、さらなる従属請求項に見出すことができる。
【0055】
本発明のある有利な実施の形態では、前記光デカップリングデバイスの前記位置が前記光入射位置に対応するように前記光デカップリングデバイスが前記光ガイドに設けられ、前記光入射位置は、所定回数の反射の後に前記光が前記光ガイドの前記境界面のうちのひとつの上に到達する位置である。このようにして、光ガイドの所定の位置で光が光ガイドからもデカップリングされることを確実にすることができる。光デカップリングデバイスの寸法はこの場合、光が完全にデカップリングされることが常に保証されるように、光デカップリングデバイスに入射する光束の寸法を含む。
【0056】
本発明のある特定の実施の形態では、前記光デカップリングデバイスが制御可能に設計され、前記光デカップリングデバイスは、前記光デカップリングデバイスの駆動状態において所定回数の反射の後、光がデカップリングされるように、および、前記光デカップリングデバイスの別の駆動状態において前記光が前記光ガイドのなかをさらに伝搬するように、制御可能である。したがって、光が、光ガイド内で何回反射した後に、デカップリングされるべきかを制御することが可能となる。したがって、光ガイドの境界面における反射の回数を変えることができる。
【0057】
前記光デカップリングデバイスが複数のセクションに分割され、前記光デカップリングデバイスがセクションごとに制御可能に設計され、例えば、複数回の反射の後に前記光が到達する前記光入射位置に対応する、前記光デカップリングデバイスのセクションのある第1駆動状態によって、および、例えばさらなる複数回の反射の後に前記光が到達する前記光入射位置に対応する、前記光デカップリングデバイスのさらなるセクションの別の第2駆動状態によって、前記光ガイドの前記境界面における前記光の反射回数を変更できるように、前記光デカップリングデバイスが制御可能であることは、さらに有利でありうる。さらに、光ガイドの境界面における光の反射の回数は、光デカップリングデバイスのセクションの各種駆動状態の間での交替制御によってさらに変化させることができる。反射の回数は、光デカップリングデバイスを複数のセクションに分割することによって、特に有利な方法で変化させることができる。
【0058】
光カップリングデバイスが少なくとも1つの回折格子要素、好ましくは体積格子、または少なくとも1つのミラー要素を備える場合、および光デカップリングデバイスが少なくとも1つの回折格子要素、特に偏向格子要素、好ましくは体積格子、または少なくとも1つのミラー要素を備える場合、特に有利であり得る。
【0059】
光ガイドへの、または光ガイドからの光のカップリングおよびデカップリングは、本発明の1つの好ましい実施形態では回折格子要素、好ましくは制御可能な回折格子要素を使用して、例えば体積格子を使用して実行することができる。導光デバイスが例えば、空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージを生成するディスプレイデバイスに使用される場合、例えば、光デカップリングデバイスの少なくとも1つの制御可能な回折格子要素又は少なくとも1つの制御可能な回折格子要素の個々のセクションがデカップリングのために制御される、すなわち、例えば、オン又はオフに切り替えられるように、光ガイドからの様々なセグメントのデカップリングを制御することができる。デカップリングデバイスのスイッチオフされた回折格子要素は例えば、この回折格子要素に入射する光がカップリングされず、むしろ反射され、光ガイド内をさらに伝播し、追加の反射の後、光ガイドの別の位置でカップリングされ得るという結果を有する。
【0060】
少なくとも1つの制御可能な回折格子要素の代わりに、少なくとも1つのミラー素子を、光のカップリング及びデカップリングのために光デカップリングデバイスに使用することもできる。この目的のために、ミラー素子は、光ガイドの表面に対して傾斜したミラー表面を有することができる。
【0061】
前記回折格子要素の格子定数または前記光ガイドの前記表面に対する前記ミラー要素の傾斜角が、所定回数の反射の後に前記光が到達する前記光入射位置を決定するための前記光カップリングデバイスの光学特性として使用可能である。
【0062】
前記光デカップリングデバイスが、スイッチ要素と連携する少なくともひとつの受動的回折格子要素、好ましくは偏光スイッチと連携する偏光選択性回折格子要素を備えると特に好適でありうる。
【0063】
少なくとも1つの切り替え可能な回折格子要素の代わりに、光デカップリングデバイスは、切り替え可能な要素と組み合わせた受動的回折格子要素を含むこともできる。例えば、受動回折格子要素は偏光選択性回折格子要素として、特に偏光選択性ブラッグ回折格子要素として設計することができ、これは、光のある偏光方向に光を偏光させ、他の偏光方向に光を偏光させない偏光選択性ブラッグ回折格子要素として設計することができる。この場合、偏光選択性回折格子要素は、切り替え可能な要素としての偏光スイッチと組み合わせることができる。この場合、スイッチ要素と関連するこの受動回折格子要素は、光ガイドの外側表面またはクラッド層上に設けることができる。
【0064】
大きな格子周期またはより大きな格子周期を有する偏光回折格子とは対照的に、偏光選択性ブラッグ回折格子要素は、<2μmの格子周期およびブラッグ特性を有する。ビームは入射ビームの円偏光の方向に応じて、回折なしで透過されるか、または回折され、最大回折効率は正しい入射角でのみ達成される。このような偏光選択性ブラッグ回折格子要素の製造は、2つのステップで行われる。第1のステップにおいて、層のホログラフィック構造化は、室温で、ケイ皮酸エステル基の光選択的環状付加によって引き起こされる、液晶ポリマ層のバルク光配向技術によって実行される。最後に、ガラス温度Tgより高温での層の熱焼戻し(より長い時間にわたる加熱)は、層の光誘起光学異方性、したがって回折格子要素の回折効率を高める。
【0065】
高い回折効率(DE>95%)、大きな回折角(例えば、30°より大きい)、および広い角度および波長受容性を有する円偏光選択性ブラッグ回折格子要素が、光架橋性液晶ポリマ(LCP)に基づいて形成される。これらの回折格子要素は、これらの光架橋性液晶ポリマの特定の特性と、2段階の光化学/熱処理との結果である。ホログラフィック構造化は、高い空間分解能および液晶ディレクタの任意の位置合わせを可能にし、また、最終的な回折格子要素の高い光学的品質ならびに熱的および化学的安定性を可能にする。
【0066】
このような回折格子要素は、二値切り替え可能な偏向素子として、および/またはフィールドレンズを使用する事前偏向のためのスイッチ素子として、偏光スイッチと組み合わせて使用することができる。さらに、偏向偏光格子として、または反射偏光フィルタとして使用することもできる。高い回折効率と組み合わされた高い使用可能な回折角は、このタイプの回折格子要素を、AR(拡張現実)/VR(バーチャルリアリティ)アプリケーションと組み合わせたヘッドマウントディスプレイにとって魅力的なものにするが、これはヘッドマウントディスプレイにおいて必要とされるシステム指定の短い焦点距離および大きな開口数のためである。対向する2つの回折格子要素が使用される場合、光の偏向角は倍にされ得る。
【0067】
導光デバイスの光デカップリングデバイスにおいて使用可能な偏光選択性ブラッグ回折格子要素のより広範な説明は、以下の図面の説明において行われる。
【0068】
本発明のさらなる実施の形態では、前記光デカップリングデバイスの前記少なくともひとつの制御可能回折格子要素が、前記光ガイドの所定領域に亘って延び、前記回折格子要素が、複数の切り替え可能セクションに分割される。
【0069】
光ガイドの1つの可能なデカップリング領域において、少なくとも1つの切り替え可能なデカップリング要素が、回折格子要素の形で提供される。この回折格子要素は、切り替え可能なセクションに分割される。回折格子要素の画定された部分をオンまたはオフに切り替えることによって、光ガイドからの光のデカップリングの位置を決定し、定義することができる。これは、スイッチ素子に関連する受動的回折格子要素、すなわち、例えば、偏光スイッチに関連する偏光感応ブラッグ回折格子要素にも当てはまる。受動的回折格子要素は次に、光ガイドの所定の領域にわたって延在し、ここで、スイッチ素子は、個別に切り替え可能なセクションに分割される。
【0070】
切り替え可能な回折格子要素の形態のデカップリング要素は例えば、反射回折格子要素または透過回折格子要素であってもよい。反射回折格子要素は光ガイドの外側に設けることができ、透過回折格子要素は、光ガイドの内側に設けることができる。
【0071】
本発明の1つの特に好ましい実施形態では、少なくともセクションにおいて少なくとも1つの方向に湾曲した光ガイドを提供することができる。
【0072】
特定の実施形態では、光ガイドが平坦または平面または平面的幾何学的形状を有することが好ましい場合がある。これは、例えば、平坦な光ガイドが湾曲した光ガイドよりも少ない設置スペースを占めるので、節約スペースが重要であるアプリケーションの場合である。他の実施形態では特にヘッドマウントディスプレイの場合、例えば、光ガイドは湾曲した幾何学的形状を有することもできる。一般的な場合、光ガイドは、真っ直ぐな部分と湾曲した部分、または異なる強度の曲率を有する部分から構成することもできる。例えば、カップリング領域は平坦に形成することができるが、デカップリング領域は湾曲して形成することができる。例えば、眼鏡のように設計されたヘッドマウントディスプレイの場合、光ガイドの平坦部分は眼鏡テンプルの領域において頭部に対して横方向に配置され、湾曲部分はユーザの目の前に配置され得る。湾曲した光ガイドは光デカップリングデバイスにおける回折格子要素の使用を可能にし、そのデカップリング角度は、光ガイド上/中の回折格子要素の位置に依存しない。
【0073】
本発明によると、本発明のある有利な実施の形態では、前記光ガイドが、少なくともセクションにおいて、中空円筒形状を有し、その境界面が前記中空円筒の異なる半径を有する複数のセクションとして形成される。光ガイドは例えば、半円に類似した形状を有することができる。
【0074】
光カップリングデバイスは、本発明による導光デバイスの光ガイドへの光のカップリング領域に設けられる。光カップリングデバイスは、例えば回折格子要素又はミラー要素の形態の少なくとも1つのカップリング要素を有する。回折格子要素は、制御可能及び/又は切り替え可能であるように設計することができる。さらに、カップリング要素は、光ガイドの外面または内面に設けることができる。カップリング素子の一実施形態では、カップリング素子が光ガイドの内面に設けられた反射回折格子要素として設計することができる。光ガイドに入射した光は最初に、光ガイドを一旦垂直に通過し、反射格子要素またはミラー要素によって光ガイドの内面上で偏向され、次に、光ガイドを通ってジグザグに伝播する。
【0075】
1つの例示的な実施形態ではこの場合、伝播角度は、光ガイドの境界面で周囲の媒体、例えば空気への反射が全反射によって生じるように選択することができる。あるいは、追加の層、例えば、誘電体層スタックを、光ガイドの内側および外側クラッド表面または境界表面上に設けることができる。この誘電体層は、特定の又は所定の角度で入射する光の反射を引き起こす。この場合、誘電体層は好ましくは、本発明による導光デバイスがARアプリケーションのための装置に使用されるとき、周囲光がARアプリケーションの間に光ガイドを通過することができるように設計することができる。
【0076】
したがって、光ガイドがその境界面上に誘電体層を有することをさらに有利に提供することができる。
【0077】
本発明のある特に有利な実施の形態では、前記光ガイドの前記表面に垂直に入射する光ビームが前記光ガイドから垂直に、すなわち直角で、出て行くように、前記光カップリングデバイスの前記光偏向角と前記光デカップリングデバイスの前記光偏向角とが反対になるよう選択されうる。換言すれば、光カップリングデバイスの回折格子要素の光偏向角度は、光ガイドの外面を通って垂直に入射した光ビームが光ガイドの内面から再び垂直に出射するように、光デカップリングデバイスの回折格子要素の光偏向角度と反対にすることができる。
【0078】
代替的に、導光デバイスの光ガイドは、ガラス又は光学プラスチックから構成することができる。
【0079】
光カップリングデバイスおよび/または光デカップリングデバイスの回折格子要素は、透過型または反射型として設計することができる。
【0080】
前記光カップリングデバイスの前記寸法が前記導光デバイスに入射する光束の前記寸法よりも大きいことが好ましい場合があり、光束が前記光ガイドにカップリングされる位置が、前記光カップリングデバイスの前記寸法の前記境界内で移動可能である。光ガイド内での所定の又は指定された回数の反射の間、光束のカップリング位置を変位させることによって、光ガイドから出る光束のデカップリング位置も変位可能である。
【0081】
本目的はさらに、請求項18に記載の発明のディスプレイデバイスによって達成される。
【0082】
本発明によるディスプレイデバイスは、ホログラフィックディスプレイデバイスとして、または自動立体ディスプレイデバイスとしても設計することができる。本発明によるディスプレイデバイスは、特に有利には目に近いディスプレイデバイス、例えばヘッドマウントディスプレイ又はヘッドアップディスプレイとして設計することができる。この場合、ディスプレイデバイスは、照明デバイスと、少なくとも1つの空間光変調デバイスと、光学システムと、本発明による導光デバイスとを備える。
【0083】
本発明によるディスプレイデバイスの特徴の以下の説明のために、ここで最初に留意すべきは、大きな視野の場合、ディスプレイデバイスを使用して生成されたシーンの観察者の瞳孔は、観察者が視野の異なる部分を観察するときに、典型的には異なるように回転することである。広い視野および仮想観察者ウィンドウを有するディスプレイデバイスまたはディスプレイは一般に、観察者の目の瞳孔が回転するときに仮想観察者ウィンドウがその中心点の周りで共に回転するように、本出願の意味で理解されるべきである。仮想観察者ウィンドウが空間光変調デバイスの多重イメージのすべてのセグメントに対して同じ位置で生成されるという要件は一般に、仮想観察者ウィンドウが多重イメージの様々なセグメントのそれぞれに対して互いに対して傾斜され得るが、共通の中心点を有するように理解されるべきである。
【0084】
観察者が大きな視野の様々な部分を観察し、同時に眼を回転させる場合、回転は、瞳孔の約12mm後方に位置する眼のレンズの中心点の周りで行われる。したがって、瞳孔位置の横方向の変位は、眼のレンズの回転時にも自動的に生じる。15°の回転は例えば、瞳孔の約3.2mmの変位量に対応する。したがって、例えば空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージを使用して生成される大きな視野を有するディスプレイデバイスの場合、代替実施形態は多重イメージの個々のセグメントの仮想観察者ウィンドウがそれに応じて互いに対してシフトされるように、眼のレンズの回転時の瞳孔位置のこの変化を意図的に考慮に入れることもできる。視野内で15°の間隔を有するセグメントについては、例えば、仮想観察者ウィンドウの中心点も、眼球回転時の瞳孔中心点に対応するように、互いに対して3.2mmだけ変位される。この場合、各セグメントは故意に、わずかに変位した位置を有し、場合によっては、仮想観察者ウィンドウの傾斜したアライメントをさらに有する。
【0085】
光ガイドの曲率は例えば、この変位量が光ガイド表面から観察者の距離にある光ガイドからの光の垂直デカップリングに帰着するように、適合させることができる。
【0086】
本発明によるディスプレイデバイスでは、光のデカップリングは、光ガイドの境界面での光の対応する所定回数の反射の後に、本発明による導光デバイス内の異なる位置で、生じる。
【0087】
既述の通り、定義された幾何学的経路が光ガイド内に存在する。したがって、光ガイド内の光の伝播中に、光ガイド内の光路および光ガイドの境界面上の反射の回数を定義することができる。したがって、使用される光ガイドの長さは予め定義することができ、光学システムのイメージング要素の焦点距離、および空間光変調デバイスおよび導光デバイスからの仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットの距離は、特定のイメージングビーム経路および/または照明ビーム経路が設定可能であるように設定することができる。使用される用語「観察者領域」は、本発明によるディスプレイデバイスがホログラフィックディスプレイデバイスとして設計されるか、または立体ディスプレイデバイスとして設計されるかに応じて、仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットの両方を含むものとする。
【0088】
本発明に係るディスプレイデバイスのある実施の形態では、前記空間光変調デバイスのイメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって生成可能であってもよい。イメージは、空間光変調デバイス内で符号化されたシーンの情報のアイテムが仮想観察者領域を通じた観察のために再構成され得る視野を定義することができる。
【0089】
前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の光源イメージまたは前記空間光変調デバイスのイメージが、前記導光デバイスおよび、前記導光デバイスからの前記光のデカップリング後の前記光路内の前記光学システムによって生成可能であれば有利であり得る。
【0090】
この場合、仮想観測者領域が、前記光源イメージの面内に、または、前記空間光変調デバイスのイメージの面内に、生成可能である。
【0091】
本発明のさらなる実施の形態では、前記導光デバイスの前記光ガイドが、少なくともセクションにおいて、中空円筒のセクションとしてカーブしており、仮想観測者領域が、前記中空円筒の円弧の中心点の領域に生成可能である。
【0092】
複数のセグメントからなる、前記空間光変調デバイスの多重イメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって生成され、前記多重イメージが視野を定義し、前記視野内において、前記空間光変調デバイスに符号化されたシーンの情報が光源イメージの前記面内の仮想観測者領域を通じた観測のために再構築されると特に好適でありうる。
【0093】
他の実施の形態では、この場合、複数のセグメントからなる単一の回折次数の多重イメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって前記空間光変調デバイスのフーリエ面内に生成され、前記多重イメージが視野を定義し、前記視野内において、前記空間光変調デバイスに符号化されたシーンの情報が前記空間光変調デバイスのイメージ面内の仮想観測者領域を通じた観測のために再構築されてもよい。
【0094】
前記空間光変調デバイスのイメージが前記導光デバイスおよび前記光学システムによって生成可能である。このイメージは、シーンまたはオブジェクトを生成または再構成することができる視野のサイズを定義する。
【0095】
本発明によれば、広い視野を生成するために、少なくとも1つの空間光変調デバイスは、互いに隣接して、および/または上下に、または互いに対して横方向にオフセットして、複数回イメージングされうる。これは、視野の時系列的な合成が観察者によって知覚されないような速度で実行される。しかしながら、イメージは、部分的に又は完全にオーバーラップすることもできる。
【0096】
シーン又はオブジェクトは、空間光変調デバイスの前又は後又は周囲に生成することができる。特に、シーンのホログラフィック再構成では、シーン生成の領域がホログラム内のシーンまたはオブジェクトの深度エンコードに依存する。
【0097】
空間光変調デバイスは、視野内で拡大して結像されうるように生成することができる。空間光変調デバイスの面は、空間光変調デバイスの多重イメージにおいて生成されるべきセグメントの数にしたがって、視野内で拡大されうる。この点で、空間光変調デバイスのイメージは拡大されて生成され、したがって、視野のサイズを定義する。
【0098】
空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージの生成の詳細な開示は例えば、米国特許出願公開第2013/0222384 A1号明細書に見出され、その開示の内容は、その全体がここに組み込まれている。
【0099】
別の実施形態では、光学システムを使用して少なくとも1つの空間光変調デバイスのフーリエ面を生成することができる。これは、例えば、SLMがイメージング要素の物体側焦点面に配置され、フーリエ面がイメージング要素のイメージ側焦点面に現れる、2f構成を使用して実行することができる。フィルタアパーチャはこのフーリエ面内に配置することができ、このフィルタアパーチャは多くても1つの回折次数を透過させ、他の回折次数をフィルタ除去する。フィルタアパーチャを透過した回折次数の1つまたは複数の部分のセグメント化された多重イメージは、次いで、光学システムによって生成され得る。回折次数のこの多重イメージは、シーンまたはオブジェクトを生成または再構成することができる視野のサイズを定義する。
【0100】
本発明によれば、広い視野を生成するために、少なくとも1つの空間光変調デバイスの回折次数は、互いに隣接して、および/または上下に、または互いに対して横方向にオフセットして、複数回イメージングされうる。これは、視野の時系列的な合成が観察者によって知覚されないような速度で実行される。しかしながら、イメージは、部分的に又は完全にオーバーラップすることもできる。
【0101】
シーン又はオブジェクトは、空間光変調デバイスのフーリエ面の前又は後又は周囲に生成することができる。特に、シーンのホログラフィック再構成では、シーン生成の領域がホログラム内のシーンまたはオブジェクトの深度エンコードに依存する。
【0102】
空間光変調デバイスの回折次数は、視野内で拡大して結像されうるように生成することができる。空間光変調デバイスのフーリエ面における回折次数は、視野における空間光変調デバイスの生成されるべきセグメントの数にしたがって拡大することができる。そこでは、回折次数のイメージは空間光変調デバイスのフーリエ面において拡大して生成され、したがって視野のサイズを定義する。
【0103】
少なくとも1つの空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージを有する実施形態を、以下でより詳細に説明する。しかしながら、これらの記述は、空間光変調デバイスのフーリエ面における回折次数のセグメント化された多重イメージの場合にも同様に移行可能である。
【0104】
本発明による、少なくとも1つの空間光変調デバイスのセグメント化された多重イメージの構成における光ガイドの使用は特に、空間光変調デバイスの多重イメージの単一のセグメントについて、空間光変調デバイスの様々なピクセルからの光が導光デバイスにカップリングされ、空間光変調デバイスのすべての画素についてそれぞれの場合に等しい、光ガイドの境界面での光の複数回の反射の後に再びデカップリングされることを意味する。
【0105】
言い換えると、前記イメージについて、または、前記多重イメージの単一セグメントについて、前記導光デバイスに入った後の前記空間光変調デバイスの種々の画素から来る光の前記デカップリングが、全ての画素のそれぞれの場合において等しい回数である前記光ガイドの境界面における複数回の反射の後に提供されうる。
【0106】
さらに、前記多重イメージの異なるセグメントについて、あるセグメントの前記生成のための前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の前記回数が、別のセグメントの前記生成のための前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の前記回数とは異なってもよい。空間光変調デバイスの多重イメージの異なるセグメントは例えば、多重イメージの隣接するセグメントに対して、異なる回数の反射が光ガイドの境界面で実行されるように形成されることができる。しかしながら、例えば、多重イメージの異なるセグメントに対して、光ガイドの境界面での光の等しい回数の反射を生成するが、光の変位されたカップリング位置又は変化されたカップリング角度を使用する、他の構成も可能である。
【0107】
本発明による導光デバイスに関して既に述べたように、例えば、光カップリングデバイスの少なくとも1つの回折格子要素又は少なくとも1つの回折格子要素の個々のセクションが光をデカップリングするためにスイッチオン又はスイッチオフされるように、多重イメージの様々なセグメントを生成するための光のデカップリングを制御することができる。スイッチオフされた回折格子要素は例えば、この回折格子要素に入射する光がデカップリングされず、むしろ反射され、光ガイド内をさらに伝播し、追加の反射後に光ガイドの別の点でデカップリングされうるという結果を有する。
【0108】
回折格子要素の代わりに、光デカップリングデバイス及び光カップリングデバイスは、ミラー素子、特に傾斜したミラー面を有するミラー素子を含むこともできる。これらのミラー素子は導光デバイスに光をカップリングしたり、導光デバイスから光をデカップリングしたりするために使用することもできる。
【0109】
本発明のある実施の形態では、多重イメージの異なるセグメントについて、前記光ガイドの前記境界面における前記光の前記反射の前記回数は等しく、前記光ガイドへの前記光のカップリング位置がこれらのセグメントについて異なってもよい。
【0110】
光偏向デバイスは、前記光の前記カップリング位置を前記光ガイドの中へとずらすために、前記光の方向において前記導光デバイスの前に提供されると有利であり得る。
【0111】
光ガイド上の光のカップリング位置の変位は、好ましくは光偏向デバイスによって実行することができる。光偏向デバイスはこの目的のために、格子周期が設定可能な少なくとも1つの回折格子要素を備えることができる。例えば、光偏向デバイスは、2つの回折格子要素を含むことができる。次に、第1の回折格子要素は入射光を設定可能な角度だけ偏向させ、第2の回折格子要素は第1の回折格子要素によって偏向された光を、等しい絶対値を有するが反対の符号を有する角度だけ反対方向に偏向させ、その結果、光の本質的に平行なオフセットがもたらされるか、または生成される。
【0112】
ディスプレイデバイスのさらに有利な実施の形態では、前記光学システムが二段光学システムとして設計され、一段目において、前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の中間イメージが前記光学システムの少なくともひとつの第1イメージング要素によって生成され、二段目において、前記光源の前記中間イメージが、前記光学システムの少なくともひとつの第2イメージング要素によって、前記光ガイドからの前記光の前記デカップリング後の前記光路内の仮想観測者領域内に結像されてもよい。
【0113】
本発明によれば、導光デバイスを有するディスプレイデバイスに二段光学システムを用いることができる。この目的のために、ディスプレイデバイスは少なくとも1つの空間光変調デバイスと、空間光変調デバイスを照明すると共に少なくとも1つの光源を備える照明デバイスとを備える。第1のステップでは、照明デバイスの中間イメージ、すなわち照明デバイスが備える少なくとも1つの光源の中間イメージ、したがって観察者領域、特に仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットの中間イメージも、少なくとも1つの第1イメージング要素、例えばレンズを使用して、空間光変調デバイスの後の光方向に生成される。第2のステップでは、照明デバイスのこの中間イメージは、観察者平面、より正確には実際の仮想観察者ウィンドウ又はスイートスポットにおいて、レンズであってもよい少なくとも1つの更なる又は第2イメージング要素を使用して結像される。この目的のために、導光デバイスは、ディスプレイデバイス内において、第2イメージング要素と照明ビーム経路の中間イメージとの後のビーム経路内に配置される。少なくとも1つの第1イメージング要素は、空間光変調デバイスのイメージを同時に生成する。照明デバイスおよび仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットをイメージングする第2イメージング要素も、空間光変調デバイスのイメージングに寄与する。光学システムのイメージング要素の焦点距離を適切に選択することにより、空間光変調デバイスの更なるイメージが導光デバイスの内側、特に光ガイドの内側に生じる。導光デバイスの内側の空間光変調デバイスの中間イメージは、円筒イメージング要素を含む本発明の一実施形態における光カップリングデバイスの少なくとも1つの回折格子要素の偏向方向にのみ生成することができ、それに対して垂直な方向には、空間光変調デバイスの中間イメージを導光デバイスの外側に配置することができる。
【0114】
さらに、ディスプレイデバイスの特に有利な一実施形態では、光方向において導光デバイスの前に配置された少なくとも1つの可変イメージングシステムを設けることができる。
【0115】
この少なくともひとつの可変イメージングシステムが前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の中間イメージ面の近くもしくはできる限り近くまたは当該面内に提供され、および/または可変イメージングシステムが前記空間光変調デバイスの近くまたは前記空間光変調デバイスのイメージ面内に設けられうる。
【0116】
前記少なくともひとつの可変イメージングシステムが少なくともひとつのイメージング要素を備えてもよく、当該イメージング要素が、制御可能可変周期を有する回折格子要素として、または、制御可能液晶要素として、または、互いの距離が可変な少なくともふたつのレンズ要素として、設計されてもよい。可変イメージングシステムの少なくとも1つのイメージング要素は、透過型または反射型として設計することができる。例えば、可変イメージングシステムはイメージング要素として2つの制御可能な液晶素子を含むことができ、これらは両方とも反射性として設計することができる。2つの液晶素子の反射性実施形態のために、2つの液晶素子間に一定の距離が必要とされる。したがって、2つの液晶素子は、照明デバイスの中間イメージ面に正確に配置することができない。したがって、可変イメージングシステムは、そのような液晶素子を有する場合、全体として、照明デバイスの中間イメージ面に可能な限り近接してのみ配置されると考えられるべきである。
したがって、照明デバイスの中間イメージ面内またはその非常に近くに可変イメージングシステムを設けることができ、これは同時に仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットの中間イメージ面を表す。可変イメージングシステムは、ここでは焦点距離が可変であるイメージングシステムとして理解されるべきである。また、光学システムの少なくとも1つの第1イメージング要素は、空間光変調デバイスのイメージを生成する。仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットをイメージングする光学システムの少なくとも1つの第2イメージング要素も、空間光変調デバイスのイメージングに寄与する。しかしながら、照明ビーム経路、ならびに仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポット自体の位置およびサイズに影響を及ぼすことなく、照明デバイスまたは仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットの中間イメージ面内またはその近くで、空間光変調デバイスのイメージを、可変イメージングシステムを使用して、深さにおいて変位させることができるので有利である。
【0117】
したがって、本発明によれば、空間光変調デバイスのイメージは可変イメージングシステムによって、空間光変調デバイスの多重イメージの各個別セグメントに対して変位させることができ、この場合、個別の異なるセグメントに対して生じる、導光デバイスの光ガイドを通る光の光路の相違を少なくとも部分的に補償することができる。空間光変調デバイスのイメージを個々のセグメントごとにどれだけ変位させなければならないかの演算は、ディスプレイデバイスが動作する前に行われる。
【0118】
好ましくは、この場合、空間光変調デバイスの仮想観察者ウィンドウ又はスイートスポットから観察者に見えるイメージは、多重イメージの全てのセグメントに対して等しい又は少なくとも同様の深さをもたらす。可変イメージングシステムは例えば、制御可能な可変周期を有する回折格子要素(例えば、液晶格子(LCG))又はエレクトロウェッティングレンズ又は液晶レンズとして設計することができる少なくとも1つのイメージング要素を含む。可変イメージングシステムは例えば、少なくとも2つのレンズの形態の少なくとも2つのイメージング要素からなるシステムを含むこともできるが、その距離は互いに対して可変に設定可能であり、例えば、一種のズーム対物レンズである。
【0119】
可変プリズム関数または可変レンズ関数および/または可変複素位相関数が、前記少なくともひとつの可変イメージングシステムの少なくともひとつの制御可能イメージング要素に書き込まれると有利であり得る。
【0120】
可変イメージングシステムの制御可能なイメージング要素は導光デバイスの光ガイドへの光のカップリング位置を変更するために、照明デバイスの中間イメージ面に配置することができる。制御可能なイメージング要素に特に可変プリズム機能を書き込むことによって、光ガイド上の光のカップリング位置を変位させることができる。このようにして、空間光変調デバイスのイメージを視野内で横方向に変位させることができる。
【0121】
可変イメージングシステムのそのような制御可能なイメージング要素、例えば、制御可能な可変周期を有する回折格子要素(LCG)のような位相変調要素において、さらに、変更可能なレンズ関数またはプリズム関数の代わりに、またはそれに加えて、単純な線形関数または球形関数から逸脱する、変更可能な複素位相関数も書き込むことができる。例えば、収差補正のための位相関数は、多項式とすることができる。収差は例えば、ゼルニケ多項式によって記述することができる。この手順は特に、本発明によるディスプレイデバイスがホログラフィックディスプレイデバイスとして設計される場合に、収差の補償のために有利に使用される。したがって、可変イメージングシステムはイメージングビーム経路内の収差を補正するために、照明デバイスの光源イメージ面、または空間光変調デバイスのフーリエ面に配置されることが有利に提供され得る。
【0122】
光が例えば、回折格子要素の助けを借りて、光ガイドにカップリングされ、光ガイドからデカップリングされる場合、収差が結果として生じる可能性がある。これらの収差は非点収差と同様に、イメージングビーム経路に対して、例えば、水平方向及び垂直方向において、空間光変調デバイスのイメージが観察者に対して異なる距離で生じるという効果を有することができる。さらに、異なるセグメントはカップリング要素とデカップリング要素との間の異なる長さの経路のために、異なる収差を有することもできる。
【0123】
イメージングビーム経路における収差の補正は例えば、仮想観察者ウィンドウから光ガイドを介して空間光変調デバイスの方向への逆算中に、ホログラムの振幅及び位相を決定することと組み合わせて、実行することができる。しかしながら、逆算は最初に、仮想観察者ウィンドウから照明デバイスの中間イメージ面までのみで行われる。特に、本質的にイメージングビーム経路の収差が存在し、照明ビーム経路の収差が全く存在しないか、又は僅かしか存在しない例示的な実施形態では、逆算において、照明デバイスの中間イメージ面内の光ビームは本質的に正しい位置を有するが、収差のために、仮想観察者ウィンドウ内の直接的な光ビームのターゲット位置及び角度と比較して不正確な角度を有する。したがって、個々の光ビームについて、角度は、照明デバイスの中間イメージ面内の可変イメージングシステムの対応する局所イメージング要素、例えば局所偏向回折格子要素、によって補正することができる。例えば、β(x)が位置xにおける光ビームの所望の入射角であるが、β'(x)がこの位置xにおけるこの光ビームの実際の入射角である場合、補正関数Δβ(x)=β(x)-β'(x)はそれを使用して本収差を少なくとも部分的に除去するように決定される。可変イメージングシステムのイメージング要素の局所格子周期は、g(x)=λ/tanΔβ(x)として決定され、ここでλは使用される光の波長である。したがって、照明デバイスの中間イメージ面から仮想観察者ウィンドウまでのイメージングスケールを考慮して、各個別光ビームの位置および所望の入射角が仮想観察者ウィンドウ自体の入射角に対応するように、イメージング要素の格子周期を変更または適合させることができる。
【0124】
照明デバイスの中間イメージ面における位相関数による収差の補正の利点は、この補正が好ましくは3次元(3D)シーンの内容とは無関係であることである。したがって、補正関数は、空間光変調デバイスの多重イメージの各セグメントについて、および光ガイド内の光のカップリング位置の連続変位中の空間光変調デバイスの中間位置について、それぞれの場合に1回計算され、値テーブルに格納され、その後、繰り返し適用され、対応する格子周期を計算することができる。
【0125】
第2の、同様に設計された可変イメージングシステムは、照明ビーム経路内の収差を補正し、同じ位置で多重イメージのすべてのセグメントについて仮想観察者領域を生成するために、空間光変調デバイスのイメージ面内に有利に配置することもできる。
【0126】
空間光変調デバイスのフーリエ面の代わりに、空間光変調デバイスのイメージ面内の可変イメージングシステムを使用することにより、光ガイドへの光のカップリング及び/又は光ガイドからの光のデカップリングの間に、光カップリングデバイス及び/又は光デカップリングデバイスの少なくとも1つの回折格子要素によって生成される照明ビーム経路内の収差を補正することができる。
【0127】
ディスプレイデバイスのさらに有利な実施の形態では、前記導光デバイスの前記光デカップリングデバイスの前記少なくともひとつの制御可能回折格子要素が少なくともひとつのレンズ機能を備えてもよい。
【0128】
可変イメージングシステムに加えて、導光デバイスの光デカップリングデバイス内のディスプレイデバイスは単純な回折格子要素の代わりに、少なくとも1つのレンズ機能を有する回折格子要素を含むこともできる。大きな視野を生成するために、空間光変調デバイスの複数のセグメントが生成される場合、レンズ関数は、個々の異なるセグメントに対して異なることができる。しかしながら、別の実施形態では、多重イメージの全てのセグメントに対して同一のレンズ機能を提供することができる。例えば、複数のセグメントが水平方向に互いに隣接してのみ生成されるが、垂直方向には単一のセグメントのみが存在する光ガイドでは光デカップリングデバイスは、垂直焦点を生成する全てのセグメントに対して同一の円筒レンズ機能を備えることができる。このレンズ機能は、可変イメージングシステムの全焦点距離に寄与する。これにより、可変イメージングシステムの焦点距離をある設定範囲内で変更しなければならない場合に、その設定範囲を小さくすることができる。
【0129】
本発明に係るディスプレイデバイスは、二つのディスプレイデバイスを有するヘッドマウントディスプレイであって、前記ディスプレイデバイスのそれぞれが請求項18から38のいずれか一項に記載のディスプレイデバイスにしたがい設計され、かつ、それぞれ観測者の左目および前記観測者の右目に割り当てられるヘッドマウントディスプレイとして設計されると有利でありうる。
【0130】
本目的はさらに、請求項40の特徴を有する方法により達成される。
【0131】
空間光変調デバイスおよび光ガイドによって再構築されたシーンを生成するための本発明に係る方法は以下のように行われる:
* 前記空間光変調デバイスが前記シーンの要求される情報で入射光を変調し、
* 前記空間光変調デバイスによって変調された前記光が、光カップリングデバイスによって前記光ガイド内へとカップリングされ、光デカップリングデバイスによって前記光ガイドからデカップリングされ、
* 前記光が、前記光ガイドの境界面における所定回数の反射の後に前記光ガイドからデカップリングされる。
【0132】
前記空間光変調デバイスのイメージまたは複数のセグメントからなる前記空間光変調デバイスの多重イメージが生成されると有利である。
【0133】
前記多重イメージの前記セグメントの一部について、前記空間変調デバイスの中間イメージが前記光ガイド内に生成されてもよい。
【0134】
空間光変調デバイスの第1中間イメージは、光方向において導光デバイスの前または光ガイドの前に生成される。空間光変調デバイスのさらなる中間イメージは、少なくとも、空間光変調デバイスの多重イメージのセグメントの一部の中間イメージが光ガイドの内部に位置するように、生成されうる。多重イメージのセグメントの別の部分の中間イメージは、光ガイドの外側に配置することもできる。
【0135】
光ガイドへの光のカップリングの前の光路において照明デバイスの少なくとも1つの光源の光源イメージの面内に配置されることが好ましい少なくとも1つの可変イメージングシステムを使用して、空間光変調デバイスのイメージは、個々のセグメントに対して結果として生じる光ガイド内の異なる光路が少なくとも部分的に補償されるように、多重イメージの各個々のセグメントに対して変位可能である。
【0136】
可変イメージングシステムを用いて、前記多重イメージの個々別々のセグメントについて、前記可変イメージングシステムの少なくともひとつの光学特性を変える方法で、収差補正が実行されてもよく、各セグメントの各場合において一度、補正関数が計算され、格納される。
【0137】
可変イメージングシステムは例えば、制御可能な可変周期を有する回折格子要素(LCG)を含む場合、多項式の形態の位相関数を、収差補正のためにそこに書き込むことができる。
【0138】
前記多重イメージの個々別々のセグメントについての前記収差補正が、前記照明デバイスの前記中間イメージ面内において、および/または前記空間光変調デバイスに符号化されたホログラムの前記振幅および位相曲線において、実行されてもよい。
【0139】
前記補正関数の前記計算が、前記光路の数値反転および、仮想観測者領域から前記光ガイドを通って前記照明デバイスの前記少なくともひとつの光源の前記光源イメージの面への光ビームの逆追跡によって実行されると有利であり得る。
【0140】
有利な方法で本発明の教示を構成し、かつ/または上記および下記の例示的な実施形態および/または構成を互いに組み合わせるための様々な選択肢がある。この目的のために、一方では独立請求項に従属する請求項を参照し、他方では図面に基づく本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明を参照すべきであり、ここでは教示の一般的に好ましい構成も説明される。この場合、原則として、本発明は説明された例示的な実施形態に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図面は以下の通りである:
図1】従来技術によるホログラフィックディスプレイデバイスの概略図を示す。
図2図1によるディスプレイデバイスのさらなる実施形態の概略図を示す。
図3図1によるディスプレイデバイスのさらなる実施形態の概略図を示す。
図4図1によるディスプレイデバイスのさらなる実施形態の概略図を示し、ディスプレイデバイスがヘッドマウントディスプレイとして設計される。
図5】光ガイドを設けない単純なディスプレイデバイスの概略図を示す。
図6】空間光変調デバイスの拡大された仮想イメージの概略図を示す。
図7図6に関連する空間光変調デバイスの位置の変化の概略図を示す。
図8】第1の実施形態における本発明による導光デバイスの概略図を示す。
図9】第2の実施形態における本発明による導光デバイスの概略図を示す。
図10】第3の実施形態における本発明による導光デバイスの概略図を示す。
図11図10にしたがう本発明による導光デバイスの概略図を示し、光ガイドが円筒形状である。
図12】導光デバイスを有するディスプレイデバイスの照明ビーム経路を概略的に示す。
図13】ディスプレイデバイスのイメージングビーム経路を概略的に示し、ここで、焦点は、個々の画素の各々について光ガイドの内側に形成される。
図14】光偏向デバイスにおける光のカップリング位置の変位を概略的に示す。
図15】仮想観察者ウィンドウから光ガイドを介して空間光変調デバイスへ向かう、ホログラムの振幅および位相を決定するための逆算を概略的に示す。
図16図15による逆算に起因するのであろう空間光変調デバイスの面内の強度分布のグラフ表示を示す。
図17】照明デバイスの中間イメージ面における逆算及び収差補正を概略的に示す。
図18】ヘッドマウントディスプレイの形態の本発明によるディスプレイデバイスを概略的に示す。
図19】a)では平坦な光ガイドを示し、b)では、光ガイド内の光の伝播に関連する湾曲した光ガイドを示す。
図20】異なる光ビームが異なる位置で光ガイドにカップリングされる、平坦な光ガイドを概略的に示す。
図21】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの実施形態を概略的に示す。
図22】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの第2実施形態を概略的に示す。
図23】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの第3実施形態を概略的に示す。
図24】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの第4実施形態を概略的に示す。
図25】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの第5実施形態を概略的に示す。
図26】光ガイドおよび光デカップリングデバイスを有する光ガイドデバイスの第6実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0142】
簡単に、図面において同一の要素/部分/コンポーネントは同一の参照符号を有することを注意しておく。
【0143】
ここで説明される例示的な実施形態を理解するために、まず、イメージングビーム経路および照明ビーム経路、ならびに観察者領域、すなわち仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポット、のサイズと、特に光ガイドを使用しない単純なホログラフィックヘッドマウントディスプレイに基づくディスプレイデバイス内の視野と、の関係を説明する。用語「観察者ウィンドウ」が以後使用される場合、これは、アプリケーションが立体ディスプレイデバイスにも適用できる場合、「スイートスポット」として理解することもできる。このディスプレイデバイスは、照明デバイスと、以下SLMと呼ばれる空間光変調デバイスと、ここでの説明のために理想化されたレンズ、すなわちイメージング誤差のない薄いレンズを備える光学システムと、を備える。このようなディスプレイデバイスは、限られた視野しか有さず、したがって、以後ARアプリケーションと呼ばれる拡張現実アプリケーションには適していない。このようなディスプレイデバイスは、図5に概略的に示されている。
【0144】
SLMは、波長λの平面波1を用いて照明される。平面波1は例えば、点光源を備え、点光源とSLMとの間に配置された光学システムのレンズから焦点距離だけ離れた位置に設けられた照明デバイスを用いて生成することができる。次いで、無限遠における点光源の虚像が生成される。SLMは画素ピッチpを有し、焦点距離f1を有するレンズ2から距離dに位置する。平面波を用いてSLMを照明すると、照明デバイスは無限遠に位置する。次に、照明デバイスはレンズ2の焦点面BEに、すなわちレンズ2から距離f1のところでイメージングされるが、これは図5の上図から明らかである。
【0145】
ホログラムがSLMに書き込まれる場合、サイズf1 λ/pの仮想観察者ウィンドウVWがレンズ2の焦点面BEに生成される。これは、図5の下側の図から明らかなように、SLMの画素から発する光ビームを回折角度で観察することによって、幾何学的光学モデリングにおいて考慮に入れることができる。これらの光ビームはそれぞれ、SLMの異なる画素から発するものであり、ここでは異なるグレースケールトーンで示されている。
【0146】
この場合、視野は、SLMの空間寸法をレンズ2の焦点距離f1で割ったものの逆正接から得られる。これは、水平視野がarctan(SLMの幅)/f1として計算され、垂直視野がarctan(SLMの高さ)/f1として計算されることを意味する。
【0147】
SLMがレンズ2から距離d<f1を有する場合、イメージング方程式1/d'-1/d=1/f1に従って、SLMの拡大された虚像3は、倍率β=d'/dを有するレンズから距離d'離れたところに生成される。これは図6に概略的に示される。SLMがレンズ2から距離d>f1を有する場合、虚像の代わりに実像が生成される。
【0148】
レンズ2からのSLMの距離が変更されたが、その焦点距離が変更されないままである場合、仮想観察者ウィンドウVW、仮想観察者ウィンドウVWの位置およびサイズ、ならびに視野4はしたがって、同じままであり、SLMのイメージの位置のみが変更される。これは図7に概略的に示される。しかしながら、例えば、レンズ2の焦点距離が変更された場合、照明デバイスのイメージの位置、及び仮想観察者ウィンドウVWの位置、並びに仮想観察者ウィンドウVWのサイズ、視野4のサイズ、及びSLMのイメージ位置は全て変化する。
【0149】
特に、視野は仮想観察者ウィンドウのサイズに対して固定された関係を有するが、その理由は両方がレンズの焦点距離f1又はディスプレイデバイスの光学システムに依存するからである。仮想観察者ウィンドウが拡大されると、視野はそのサイズが小さくなり、逆もまた同様である。一般に、使用されるレンズ又は光学システムは、照明ビーム経路及びディスプレイデバイス内のイメージングビーム経路の両方に影響を及ぼす。
【0150】
ディスプレイデバイスの光学システムは一般に、複数のレンズ又はイメージング要素を含むこともできる。次に、幾何光学の既知の方法に従って、システムの全焦点距離及び主平面を決定することができる。したがって、上記の説明は、システム全体に適用される。
【0151】
複数のイメージング要素を有する光学システムを有するそのようなディスプレイデバイスに光ガイドが導入され、最初にSLMの単一のイメージのみが使用される場合、したがって、光ガイドに入射し、光ガイド内を伝播する光の固定されたカップリング位置および固定されたデカップリング位置、ならびに光ガイド上の光のカップリング位置とデカップリング位置との間の光路は、したがって、SLMと、光学システムのイメージング要素と、イメージングビーム経路および照明ビーム経路内の仮想観察者ウィンドウとの間の距離において考慮されなければならない。
【0152】
光ガイドが例えば、少なくとも1つのイメージング要素と仮想観察者ウィンドウとの間に導入され、60mmの焦点距離を有するイメージング要素が光ガイドへの光のカップリングに近接して提供され、光ガイドを通る光路が40mmである場合、仮想観察者ウィンドウは、したがって、光ガイドからのデカップリング側から20mmの距離で生成され得る。
【0153】
図8は、導光デバイス5を有する本発明によるディスプレイデバイスのための照明ビーム経路を示す。導光デバイス5は、光ガイド6と、光カップリングデバイス7と、光デカップリングデバイス8とを有する。この場合、光カップリングデバイス7及び光デカップリングデバイス8は、各々、少なくとも1つのミラー要素9、10を有する。図8のミラー要素9、10は、傾斜したミラー要素として設計されている。ミラー要素の代わりに、光カップリングデバイス7及び光デカップリングデバイス8は代替的に、回折格子要素を含むこともできる。光カップリングデバイス7および光デカップリングデバイス8のミラーまたは回折格子要素は、以下でより詳細に説明される。ディスプレイデバイスは、SLMと、少なくとも1つのイメージング要素を有する光学システムと、を備える。少なくとも1つのイメージング要素は、ここではレンズ11として設計されている。SLM及びレンズ11は、光方向において光カップリング要素7の前方に配置されている。簡単にするために、SLMの3つの画素P、P、およびPのみが示されている。SLMの各画素P、P、Pから発する光は、レンズ11を介して導光デバイス5に導かれて、それに入射する。光ガイド6の内部で実行されるべき光の反射の回数は、光ガイド6の幾何学的形状、すなわち、例えば、厚さ又は可能な曲率、及び光カップリングデバイス7の光学特性、特に傾斜ミラー要素の傾斜角度、又は回折格子要素が使用される場合には格子周期から決定することができる。光が光ガイドのどこにカップリングされるべきかに応じて、光ガイド6における光の所定回数の反射が必要であり、これは前もって定義することができる。種々のデカップリング位置についての反射回数のこれらの値は値テーブルに記憶することができ、従って、使用中に利用可能であり、再度計算する必要はない。したがって、それらは一度だけ決定されればよい。図8では、光ガイド6内の光がその境界面で一定回数の反射を行う。この場合、導光デバイス5からの光のデカップリングの後、照明デバイスのイメージは、そこからの所定距離のところに生成される。仮想観察者ウィンドウVWは、照明デバイスのイメージのこの点で生成することができる。
【0154】
導光デバイス5がSLMと光学システム、ここではレンズ11、との間に導入された場合、光ガイド6を通る光路は、SLMのイメージ位置に影響を及ぼす。例えば、SLMがレンズ11から50mmの距離を有する場合、SLMは、光ガイド内の光路が40mmである場合、導光デバイス5から10mm離れて配置され得る。
【0155】
従って、図8はディスプレイデバイスにおける導光デバイス5を示し、そこでは、SLMの全ての画素の光が光ガイド6における所定回数の反射の後に再び導光デバイス5からデカップリングされる。図8に示すディスプレイデバイスは、SLMの単一のイメージを生成するだけである。
【0156】
しかしながら、大きな視野を生成できるようにするためには、SLMのセグメント化された多重イメージが生成されるべきである。大きな視野を生成することができるこのようなディスプレイデバイスでは、SLMの多重イメージの個々のセグメントの光は、異なる位置で導光デバイスからデカップリングされる。
【0157】
例えば、光が固定位置で導光デバイスにカップリングされるが、SLMの多重イメージの異なるセグメントに対して異なる位置で導光デバイスから分離される場合、図9から明らかなように、光ガイド自体を通る異なる光路が各セグメントに対して生成される。これはとりわけ、照明ビーム経路に関連する。特に、これは、固定焦点距離を有するイメージング要素と仮想観察者ウィンドウとの間に配置された導光デバイス内の平坦または平面の光ガイドについて、光ガイドから光をデカップリングするための仮想観察者ウィンドウの距離が、SLMの多重イメージの各セグメントについて変化することを意味する。しかしながら、これは、ディスプレイデバイスを用いて生成されたシーン全体を同じ位置から観察することができないため、不利である。観察者は、生成されたシーンのセクションを様々な位置の各々から見るために、頭を動かさなければならない。したがって、導光デバイスから等しい距離にあるSLMの多重イメージのすべてのセグメントについて、共通の仮想観察者ウィンドウを共通の位置に生成することが重要である。
【0158】
SLMの多重イメージの様々なセグメントについて仮想観察者ウィンドウの位置が異なるというこの欠点を改善するために、ディスプレイデバイスは、ビーム経路内に可変イメージングシステムを備える。可変イメージングシステムは少なくともひとつのイメージング要素を備え、当該イメージング要素は特に、制御可能可変周期を有する回折格子要素、または、制御可能液晶要素、または、互いの距離が可変な少なくともふたつのレンズ要素である。イメージング要素は、可変焦点距離を有する少なくとも1つのレンズであってもよい。この可変イメージングシステムは、光方向において、導光デバイスの光カップリングデバイスの前方に配置されている。可変イメージングシステムの光学特性、すなわち、例えば、焦点距離または格子周期、は、各場合において、仮想観察者ウィンドウが導光デバイスのデカップリング側から等しい距離で生成されるように、SLMの多重イメージの各セグメントに適合される。
【0159】
光デカップリングデバイスは単純な回折格子要素の代わりに、SLMの多重イメージの各セグメントごとに異なり、全焦点距離に寄与するレンズ項またはレンズ機能をさらに含むことができる。これにより、個々のセグメントについて可変イメージングシステムの光学特性をある設定範囲内で変更しなければならない場合に、その設定範囲内での設定を容易にする。しかしながら、可変イメージングシステムの配置に応じて、これは、一般に、ビーム経路、イメージングビーム経路、および照明ビーム経路の両方に影響を及ぼす。照明ビーム経路のみに影響を及ぼすために、可変イメージングシステムは、SLMに直接配置されるか、またはSLMのイメージ面内に配置されるべきである。SLMと光ガイドへの光のカップリングとの間に、SLMに直接配置された可変イメージングシステムを有するディスプレイデバイスでは、一般に、可変イメージングシステムの光学特性を、SLMの多重イメージの様々なセグメントについて変化させることによって、同じ位置に共通の仮想観察者ウィンドウを生成することが可能である。しかしながら、既に述べたように、特に、可変イメージングシステムのこれらの光学特性は、仮想観察者ウィンドウのサイズ及び視野に関連する。したがって、図9によるこの設計では、SLMの多重イメージの個々のセグメントについて異なるサイズの仮想観察者ウィンドウが生成され、視野の部分も個々のセグメントについて異なるサイズのものである。したがって、SLMの多重イメージの個々のセグメントは、異なる重み付けで全視野に寄与する。
【0160】
仮想観察者ウィンドウに関して、SLMの多重イメージのセグメントの個々の1つに対して生じる最小の観察者ウィンドウサイズのみが、この場合にも有効である。
【0161】
特に、光をデカップリングするための光デカップリングデバイスの回折格子要素にレンズ機能も使用され、レンズ機能がSLMの多重イメージの各セグメントごとに異なる場合、さらなる問題が生じる:一般に、SLMの多重イメージの隣接するセグメントも、個々のセグメントに対するこの光のデカップリング時に空間的に重なり合う。したがって、SLMの多重イメージの重なりセグメントを生成するために、切り替え可能な回折格子要素の複数の層が、光デカップリングデバイスにおいて互いに重なって生成されなければならない。したがって、導光デバイスの1つの構成では、SLMの多重イメージの隣接するセグメントは、導光デバイスの光ガイドの前側および後側、または両面/境界面上の回折格子要素によって交互にカップリングされることが提供される。
【0162】
図9は、導光デバイス5と照明ビーム経路とを有するディスプレイデバイスの3つの異なる図を示し、SLMの多重イメージの3つの異なるセグメントが生成される。ここでも、光カップリングデバイス7は、少なくとも1つのミラー要素9、特に傾斜して配置されたミラー要素を含む。光デカップリングデバイス8は、ここではミラー要素の代わりに回折格子要素12、ここでは3つの回折格子要素を含む。回折格子要素12は、切り替え可能または制御可能に設計される。これは、回折格子要素12がオン状態とオフ状態とに切り替え可能であることを意味する。光ガイドの内部を伝播する光が回折格子要素12でデカップリングされる場合、この回折格子要素12は制御され、オフ状態からオン状態に切り替えられる。このようにして、光はもはや回折格子要素12で反射されず、むしろ回折格子要素12によって光ガイドからデカップリングされる。図9から明らかなように、回折格子要素12は、光ガイドの上側又は下側に取り付けることができる。光ガイドの下側は、仮想観察者ウィンドウVWに面する光ガイドの側である。したがって、光ガイドの上側は、光ガイドの下側とは反対側であって、下側よりも仮想観察者窓VWから離れた側である。光ガイドの上側の回折格子要素12は反射回折格子要素として設計され、光ガイドの下側の回折格子要素12は透過回折格子要素として設計される。図9に示されたSLMはそれぞれの場合において、3つの図の全てにおいて、簡略化のために、SLMおよび可変イメージングシステムを表すものである。もちろん、これは、SLM及び可変イメージングシステムが互いに接続されていない2つの独立した構成要素であることを意味する。
【0163】
図9の(a)によれば、照明デバイス(図示せず)から発せられる光はSLMに入射し、それによって、表示対象のセグメントまたはイメージに関する情報で変調される。変調された光は可変イメージングシステムを通過し、導光デバイス5の光カップリングデバイス7のミラー要素9に入射する。ミラー要素9は光を反射し、光は、全反射によって光ガイド6内を伝播する。このようにして光ガイド6内を伝播する光は、光ガイドの境界面で反射されて、オン状態に切り替えられる回折格子要素12に入射する。図9の(a)の説明の後、SLMの多重イメージの中間セグメントに対して、光のデカップリングは、光ガイド6の上側の切り替え可能な反射回折格子要素12で行われる。光ガイド6の上側のこの回折格子要素12は、それに応じて光を偏向させるだけでなく、レンズ機能を付加的に有する。図9の(c)によるSLMの多重イメージの右セグメントに対する光のデカップリング及び(b)による左セグメントに対する光のデカップリングは、いずれの場合も、光ガイドの下側の透過切替可能回折格子要素12を介して行われる。光ガイドの下側のこれらの透過回折格子要素12は、レンズ機能も有する。
【0164】
さらに、可変イメージングシステムの焦点距離は、各セグメントの光を光ガイド6にカップリングする前に変化させることができる。このようにして、図9の(a)~(c)によるSLMの多重イメージの3つのセグメントすべてについて、仮想観察者ウィンドウを同じ位置で生成することができる。しかしながら、この例では図9の(b)によるSLMの多重イメージの左セグメントについて、仮想観察者ウィンドウVWはその寸法がわずかに小さく、したがって、視野は(a)による仮想観察者ウィンドウVWおよび視野と比較してわずかに大きい。SLMの多重イメージの右セグメントについてはそれは反転され、仮想観察者ウィンドウVWはその寸法がわずかに大きく、視野はわずかに小さい。この原因は仮想観察者ウィンドウのサイズがλ D/pに従ってSLMと仮想観察者ウィンドウとの間の光路に依存するからであり、ここで、DはSLMと仮想観察者ウィンドウとの間の経路であり、この経路はさらに、個々のセグメントにおいて異なる長さである。SLMのサイズは等しいが、仮想観察者ウィンドウからの距離Dは大きいので、視野の角度も小さくなる。
【0165】
SLMの多重イメージの個々のセグメントの、光ガイドからのデカップリング点の位置は、デカップリングのために回折格子要素におけるレンズ機能の位置によって固定され、その位置は個々のセグメントについて異なる。例えば、特定の用途、例えば、注視追跡の場合には合理的であるような、個々のセグメントの連続的な変位を実行することは不可能であり、その理由は光は回折格子要素の2つの異なるレンズ機能を使用してデカップリングされるからである。
【0166】
導光デバイスの光ガイドは平坦および/または平面に形成することができ、または湾曲させることもできる。
【0167】
各々が湾曲した光ガイドを有する例示的な実施形態が以下に記載される。SLMの少なくとも1つのイメージを生成するためのディスプレイデバイスにおいて、平面光ガイドの代わりに湾曲した光ガイドは、特別な利点を有することができる。一方では、可変イメージングシステムの使用を必要とせずに、したがって固定光学システムによって、SLMの多重イメージの複数のセグメントについて、仮想観察者ウィンドウを、それぞれの場合に同じ位置またはロケーションで生成することができる照明ビーム経路も可能である。さらに、SLMの多重イメージの複数のセグメントについて、仮想観察者ウィンドウが同じサイズを有することが可能であり、これに伴って、等しいサイズの部分視野が、すべてのセグメントについてそれぞれの場合に生成されることも可能である。したがって、SLMの多重イメージのすべてのセグメントは、全体の視野に同じ程度で寄与する。
【0168】
他方、光デカップリングデバイスを使用することができ、その光のデカップリング角度は、光ガイドまたは導光デバイス上の/中の位置に依存しない。特に、デカップリング角度は、SLMの多重イメージの種々のセグメントのデカップリングの各場合において等しい。特に、これはまた、セグメントのデカップリング位置の光ガイドからの連続的な変位を可能にし、その結果、セグメントの所定のデカップリング位置が提供される必要がない。
【0169】
例示的な一実施形態では導光デバイス内の湾曲した光ガイドは円弧の一部を形成し、仮想観察者ウィンドウは円の中心点を表す。
【0170】
したがって、光ガイドの内側境界面および外側境界面はそれぞれ、円弧を形成し、仮想観察者ウィンドウの近くに位置する内側境界面はより小さい半径を有し、仮想観察者ウィンドウからより離れて位置する外側境界面は、より大きい半径を有する。したがって、2つの境界面は互いに平行でもない。
【0171】
例えば、内側境界面は30mmの半径を有し、仮想観察者ウィンドウの中心から30mmの距離に位置する。光ガイドの対応する厚さが5mmの場合、外側境界面は、35mmの半径を有し、したがって、仮想観察者ウィンドウの中心から35mm離れて配置される。
【0172】
1つの好ましい例示的な実施形態では、光ガイドが円筒形状を有し、すなわち、上述の形態の湾曲は1つの寸法および/または方向に存在し、それに垂直な寸法の直線的延長部を有する。例えば、典型的にはHMDの形態のディスプレイデバイスでは、水平方向の大きな視野には垂直方向よりも大きな重要度が割り当てられるので、光ガイドは好ましくは光ガイドの曲率が水平方向に延在し、光ガイドの非湾曲又は平坦な実施形態が垂直方向に延在するように、ディスプレイデバイスに配置される。
【0173】
光ガイドは、両方の寸法及び/又は両方の方向において湾曲して形成することもできる。この場合、光ガイドの内側境界面および外側境界面は球形シェルの一部の形状を有し、各場合において、仮想観察者ウィンドウの中心は、球の中心点を表す。
【0174】
少なくとも1つの方向に湾曲した光ガイドを備える導光デバイスを有するディスプレイデバイスは、少なくとも1つのSLMと、少なくとも1つの光源を有するSLMを照明する照明デバイスと、少なくとも1つのイメージング要素を有する光学システムと、を備える。照明デバイス、SLM、及び光学システムは光ガイドを有する導光デバイスがない場合に、光学システムが仮想観察者ウィンドウの中心に照明デバイスをイメージングするように、互いに対して配置される。
【0175】
円筒状の光ガイドが使用される場合、光学システムは、好ましくは円筒状のイメージング要素を含む。
【0176】
次に、光学システムによって生成された照明デバイスのイメージが光ガイドの円弧の中心に位置するように、光ガイドを有する導光デバイスがディスプレイデバイスに導入される。照明ビーム経路は光ビームが光ガイドの外面に本質的に垂直に入射するように、このディスプレイデバイスを通って延在する。
【0177】
円筒状光ガイドでは、光ガイドの非湾曲方向において、円筒状レンズ機能が好ましくは導光デバイスの光デカップリングデバイスに提供されるか、または円筒状レンズが光ガイドのデカップリング側に、またはその近くに提供され、これはこの方向において仮想観察者ウィンドウの中心に焦点を有する。
【0178】
しかしながら、単一の視差ホログラム符号化が提供される場合、この垂直焦点の必要性は省略され得る。それにもかかわらず、光ガイドのデカップリング側にレンズを設けることができ、または光デカップリングデバイスにレンズ機能を設けることができ、その場合、レンズ機能は、仮想観察者ウィンドウまでの距離から逸脱する焦点距離を有することもできる。
【0179】
光カップリングデバイスは、光ガイドの外面または内面上のカップリング領域に設けられる。この場合、光カップリングデバイスは、光ガイドから光をデカップリングするための少なくとも1つの回折格子要素を有することができ、この回折格子要素は、一実施形態では光ガイドの内面上の反射回折格子要素である。光は次いで最初に、光ガイドを一旦垂直に通過し、反射格子要素によって内面上で偏向され、次に、光ガイドを通ってジグザグに伝播する。
【0180】
光の伝播角度は、光ガイドの空気に対する境界面において反射が全反射によって生じるように選択することができる。あるいは、光の伝播角度は、その空気に対する境界面において全反射が起こらないように選択することもできる。この場合、追加の層、例えば、誘電体層または層スタックを設けることができ、これは、層または層スタック上に特定の角度で入射する光の反射を引き起こし、したがって、光は層または層スタックでの反射のために、光ガイド内をさらに伝播する。層または層スタックは、好ましくは可能なARアプリケーションにおいて周囲光が光ガイドを通過することができるように設計することができる。この場合、層スタックは小さな角度範囲に対してのみ反射効果を選択的に有し、この角度範囲は、光ガイド内の光の伝播角度に対応する。このように、ディスプレイデバイスは、ARアプリケーションにも使用することができる。
【0181】
光デカップリングデバイスは、光ガイド内の可能な光デカップリング領域に設けられる。光デカップリングデバイスは、少なくとも1つの受動または制御可能または切替可能な回折格子要素を備えることができる。回折格子要素または回折格子要素の画定された部分をスイッチオンまたはスイッチオフすることによって、それが切り替え可能な部分に分割されて具体化される場合、光ガイドからの光のデカップリングの位置を確立することができる。受動回折格子要素が使用される場合、偏光スイッチとの組み合わせで、ある偏光方向の光のみ偏向し他の偏光方向の光は偏向しないさらなるスイッチ可能要素、例えば偏光選択性回折格子要素、がしたがって要求される。
【0182】
全反射による光ガイド内の光の伝播の場合、例えば、角度が全反射角度よりも小さくなり、光が光ガイドから出るように、角度は光デカップリングデバイスの回折格子要素によって変更される。
【0183】
光ガイド内での光の伝播中に、光ビームは、より大きな半径を有する外側境界面と、より小さな半径を有する内側境界面とで交互に反射される。例として、これは、光ガイドを通った複数の光ビームの、これらの光ビームのデカップリング後の経路の長さがそれぞれ異なるにもかかわらず、それぞれの場合において、光ガイドのデカップリング位置から等しい距離で生じる焦点に寄与する。
【0184】
特に、上述のディスプレイデバイスにおける光デカップリングデバイスの回折格子要素の偏向角度は、光ガイドにおける回折格子要素の位置に依存しない。円筒状光ガイドの場合、円筒状レンズ機能が回折格子要素に設けられるか、または円筒状レンズが光のデカップリング位置に近い光ガイドの非湾曲方向に使用され、このレンズまたはレンズ機能の焦点距離も光のデカップリング位置に依存しない。これは例えば、円柱レンズ機能を有する矩形回折格子要素であってもよく、これは円柱光ガイドの内側曲面上に積層され、その結果、焦点機能は曲率方向に対して垂直に作用する。
【0185】
光デカップリングデバイスをON状態またはOFF状態に切り替えることによって、SLMの多重イメージの複数のセグメントの光を、異なる回数の反射の後に湾曲した光ガイドから脱カップリングすることができる。
【0186】
図10は、ディスプレイデバイスに設けられたこのような湾曲した導光デバイス15を示す。このディスプレイデバイスは、光ガイド16を有する導光デバイス15に加えて、SLM及び光学システムを有する。光学システムは、ここではイメージング要素17の形で示されている。光は、光カップリングデバイス18によって光ガイド16にカップリングされ、所定回数の反射の後、光デカップリングデバイス19によって光ガイドから再びデカップリングされる。光カップリングデバイス18及び光デカップリングデバイス19は、各々、少なくとも1つの回折格子要素20、21を有する。光デカップリングデバイス19の少なくとも1つの回折格子要素20は、切り替え可能又は制御可能に設計され、ここでは個々のセクション20-1、20-2に分割される。回折格子要素19のセクション20-1はここではオフ状態にあり、セクション20-2はオン状態にあり、その結果、光ガイド内を伝播する光は、回折格子要素19のセクション20-2で脱カップリングされる。回折格子要素19のセクション20-1がオン状態にあり、セクション20-2がオフ状態にある場合、光は、より少ない回数の反射の後に光ガイドから脱カップリングされる。SLMの個々の画素P、P、Pから発する光ビームはイメージング要素17を通過し、光ガイド16に入射する。次に、光ビームは、光ガイド16の内面に設けられた光カップリングデバイス18に入射する。光カップリングデバイス18は、この例示的な実施形態では反射性であるように設計された少なくとも1つの回折格子要素21を備える。回折格子要素21に入射する光ビームは、光ビームが光ガイド16内で全反射を介して伝播するように反射され、偏向される。次いで、個々の光ビームは回折格子要素19において、ここでは回折格子要素のセクション20-2において、所定の回数の反射の後に、光ガイドデバイス15の光ガイド16から脱カップリングされる。SLMの多重イメージの画像又はセグメントを表すための全ての光ビームは、等しい回数の反射の後にデカップリングされる。
【0187】
しかしながら、SLMの多重イメージの異なるセグメントに対する異なる回数の反射の代わりに、光ガイド上/内の光のデカップリング位置の連続的な変位も可能である。これは、例えば、光ガイドの境界面における光の等しい回数の反射を伴う光のカップリング位置の小さな変位によって達成することができる。
【0188】
例えば、より大きなステップについてはSLMの多重イメージの個々のセグメントを生成するために光ガイドの境界面における異なる回数の反射を用いることによって、および、より小さなステップについては間にあるSLMの多重イメージの個々のセグメントに対する光のカップリング位置の連続的変位によって、大きな視野を生成することができる。例えば、60°のサイズの視野は、重なり合わないそれぞれ10°の6つのセグメントから生成され得る。この場合、光カップリングデバイスの光ガイドおよび回折格子要素は、光ガイドにおける追加の反射によって、光のデカップリング位置が観察者の視点から20°変位するように設計することができる。加えて、カップリング位置の変位によって、デカップリング位置は、固定反射回数で、観察者の視点から10°だけ変位可能であり得る。
【0189】
例えば、第1セグメントは次に、光が変位されていないカップリング位置に対して1回の反射の後にデカップリングされることによって生成される。第2セグメントは、光が10°だけ変位したカップリング位置に対して1回の反射の後にデカップリングされることによって生成される。第3セグメントは、光が変位されていないカップリング位置に対して2回の反射の後にデカップリングされることによって生成される。第4セグメントは、光を10°だけ変位したカップリング位置に対して2回の反射の後にデカップリングすることによって生成される。第5セグメントは、光が変位されていないカップリング位置に対して3回の反射の後にデカップリングされることによって生成される。第6セグメントは、光が10°だけ変位したカップリング位置に対して3回の反射の後にデカップリングされることによって生成される。
【0190】
あるいは、光カップリングデバイス18の回折格子要素20によって生成される光の偏向角度の小さな変化を使用して、大きな視野を生成することもできる。しかしながら、この目的のために、回折格子要素20を制御可能または切り替え可能に設計することも必要である。
【0191】
光ガイド上の光のカップリング位置の変位は、好ましくは少なくとも1つの回折格子要素を含むことができる光偏向デバイス29によって行われる。これは図14に関連してより詳細に説明される。回折格子要素は設定可能な格子周期を有する。例えば、一対の2つの回折格子要素を光偏向デバイスに使用することができ、その第1の回折格子要素はSLMからの光を偏向し、その第2の回折格子要素は光を反対方向に偏向し、その結果、本質的に平行なオフセットが生じる。
【0192】
光の二段階光学システムまたは二段階イメージングシステムを有する、すなわち照明デバイスの中間イメージを生成するディスプレイデバイスでは、光偏向デバイスが照明デバイスの中間イメージ面に配置されうる。一例として、光ガイドの曲率の方向における約60°の視野は、前側及び後側のそれぞれで1回の追加の反射の後に20°の粗いステップが達成され、さらに、カップリング位置が光偏向デバイスによって±10°までシフトすることによって、達成可能である。
【0193】
円筒形の光ガイドでは、非湾曲方向における光ガイド上の光のカップリング位置の変位は、光偏向デバイスによって実行されうる。例えば、サイズが20°の垂直視野は、それぞれ10°の2つのセグメントから構成することができ、光は、垂直カップリング位置を変位させることによって、光ガイドの下半分または上半分のいずれかでカップリングされる。
【0194】
図11は、SLMと、ここでもイメージング要素17の形の光学システムと、円筒状光ガイド23を含む導光デバイス22と、を含むディスプレイデバイスを斜視図で示す。図からわかるように、光ガイド23の非湾曲方向では、SLMの様々な垂直位置V、V、Vからの光は光カップリングデバイス24によって光ガイド23にカップリングされる。その後、全反射を介して光ガイド内を伝播する光は、光デカップリングデバイス25によってデカップリングされ、光デカップリングデバイス25に一体化された垂直円柱状レンズ機能によって、仮想観察者ウィンドウVW内の光ガイド23のデカップリング側に集束される。
【0195】
セグメントの連続的な変位は、とりわけ、表示される好ましくは3次元(3D)シーンの内容に応じて、またはシーンの観察中に観察者の目がどこを見るかに正確に応じて、視野の異なるセクションが表示される場合にも合理的である。
【0196】
したがって、例えば、観察者がシーンのどの部分を見ているかをHMDで正確に検出することができ、例えば、これらのみをホログラフィックに表すことができる。
【0197】
以下、二段階光学システムまたは二段階イメージングを有するディスプレイデバイスについて、より詳細に説明する。
【0198】
ホログラフィックディスプレイデバイス、例えば、HMDでは、一般にSLMがイメージングされる。セグメント化された多重イメージの場合、SLMの1つのイメージは、各セグメントにおいて各場合に生じる。所定の距離におけるSLMのイメージは、光学システムで使用されるイメージング要素の特定の焦点距離と、これらのイメージング要素からのSLMの特定の距離とを仮定する。特に、ディスプレイデバイス内のイメージングビーム経路及び照明ビーム経路は、一般に互いに独立していない。照明ビーム経路のおそらく必要とされる設定は、イメージングビーム経路の変化をもたらす可能性もある。
【0199】
例えば、上述したように、光方向において光ガイドにカップリングする前に、平坦及び/又は平面光ガイド及び少なくとも1つのイメージング要素、例えばレンズを使用するディスプレイデバイスの構成では、SLMの多重イメージの様々なセグメントに対して仮想観察者ウィンドウの同じ位置を設定するために、この少なくとも1つのイメージング要素の焦点距離を変化させる必要性が生じる。イメージング要素からのSLMの距離が固定されている場合、イメージング要素の焦点距離が変化すると、SLMのイメージング位置が変化する。したがって、SLMのセグメント化された多重イメージでは、SLMの異なるイメージ面が各セグメントについて生じる。
【0200】
導光デバイスの光デカップリングデバイスと観察者の目との間に専ら少なくとも1つのレンズを備えるかまたは光デカップリングデバイスの回折格子要素に一体化されたレンズ機能を備える光ガイドを使用するディスプレイデバイスの別の構成では、光のデカップリングと観察者との間の少なくとも1つのレンズの焦点距離がSLMの多重イメージのすべてのセグメントについて等しくなければならない。しかしながら、光ガイドを通るSLMの多重イメージの個々のセグメントの光の光路の長さがそれぞれ異なるために、SLMと、光デカップリングデバイスの回折格子要素内の少なくとも1つのレンズまたはレンズ機能と、の間の距離は、セグメントごとに異なる長さである。したがって、この場合、SLMのイメージは一般に、SLMの多重イメージの各セグメントについて異なる距離または異なる位置にある。
【0201】
ホログラフィックディスプレイデバイスでは、多重イメージの全てのセグメントに対して共通のイメージ面を有することが必ずしも必要というわけではない。3Dシーンは例えば、SLM上のホログラムのサブホログラムの焦点距離が個々のセグメントに適合されることによって、SLMの異なるイメージ面を有するセグメント境界にわたって連続的に表すこともできる。シーンのオブジェクトポイントは例えば、オブジェクトポイントがこのセグメントのSLMのイメージ面の前に位置する場合、SLMの多重イメージのセグメントにおいて、正の焦点距離を有する(凸レンズ)サブホログラムによって表現されうる。観察者に対して同じ深さであるが、別のセグメント内にある隣接するオブジェクトポイントは例えば、オブジェクトポイントがこのセグメントのSLMのイメージの後方に位置する場合、負の焦点距離を有する(凹レンズ)サブホログラムによって表現されうる。しかしながら、他方ではSLMのイメージ面が全てのセグメントについて少なくとも類似している場合、すなわち、例えば、数センチメートルだけ異なるが、数メートルも異ならない場合には、ホログラム計算は単純化される。
【0202】
回折格子要素、特に、例えば1μm以下の範囲の小さな周期を有し、従って、一般に30°を超える、例えば50°と60°との間の大きな偏向角を有する回折格子要素が光ガイドへのまたはからの光のカップリングおよび/またはデカップリングに用いられる場合、一般に光ビーム経路に収差が生じる。
【0203】
収差をできるだけ小さく保つために、光ガイドへのおよびからの光のカップリングおよびデカップリングのために、一対の回折格子要素を使用することが好ましい。これは、1つの回折格子要素が光カップリングデバイスに設けられ、1つの回折格子要素が光デカップリングデバイスに設けられ、2つの回折格子要素が本質的に対向する等しい偏向角度を有することを意味する。第1の回折格子要素、すなわち光カップリングデバイスの回折格子要素では例えば、垂直に入射する光は法線に対して60°の角度だけ偏向される。第2の回折格子要素、すなわち光デカップリングデバイスの回折格子要素では、60°で入射する光が回折格子要素から垂直に出るように偏向される。したがって、両方の回折格子要素を通過した後、第2の回折格子要素からの光の出射角は、第1の回折格子要素への光の入射角に対応する。光ガイドに光をカップリングしたり、光ガイドから光をデカップリングしたりするための導光デバイス内の2つの回折格子要素のこの配置は、ディスプレイデバイス内の、例えばHMD内の、照明ビーム経路の収差を小さく保つか、または低減するのに有利である。残りの収差は、特にイメージングビーム経路に影響を及ぼす。これらの収差のために、SLMのイメージの位置は、光カップリングデバイス及び/又は光デカップリングデバイスにおいて回折格子要素を使用しない場合の導光デバイスと比較して、遠くに変位され得るので好ましくない。特に、SLMのイメージのこの変位は、回折格子要素が光を偏向させる方向に主に生じ、その結果、SLMイメージの非点収差が生じ得る。例えば、水平方向に偏向する回折格子要素の場合、SLMの水平画素イメージは、SLMの垂直画素イメージとは異なる深さになる。
【0204】
SLMのイメージの位置に対する導光デバイス内の回折格子要素の影響を補償または低減するために、SLMの中間イメージを光ガイドおよび/または導光デバイスの内側に生成することができる。
【0205】
ディスプレイデバイスは、SLMの中間イメージを生成するために二段階光学システムを使用することができる。この場合、この二段階光学システムに加えて、ディスプレイデバイスは、少なくとも1つのSLMと、SLMを照明する少なくとも1つの光源を有する1つの照明デバイスと、を備える。第1のステップでは、照明デバイスの中間イメージおよびしたがって生成されるべき仮想観察者ウィンドウの中間イメージも、二段階光学システムの少なくとも1つの第1イメージング要素、例えばレンズを使用して、光方向においてSLMの後に生成される。第2のステップでは、仮想観察者ウィンドウの中間イメージ及び照明デバイスの中間イメージは、実際の仮想観察者ウィンドウ又は観察者平面内に、二段階光学システムの少なくとも1つの第2イメージング要素、例えばレンズ、を使用して結像される。この場合、導光デバイスは、ディスプレイデバイス内において、第2イメージング要素と仮想観察者ウィンドウの中間イメージとの後のビーム経路内に配置される。第1および第2のイメージング要素を有する構成はまた、SLMのイメージを生成する。仮想観察者ウィンドウの中間イメージまたは照明デバイスの中間イメージをそれぞれ結像する第2イメージング要素も、SLMの結像に寄与することができる。イメージング要素の焦点距離を適切に選択することにより、SLMの更なるイメージが導光デバイスの光ガイドの内側に生成される。光ガイド内のSLMのこの中間イメージは例えば、円筒状イメージング要素を使用する光カップリングデバイスおよび/または光デカップリングデバイスの回折格子要素の偏向方向にのみ生成可能であり、一方、SLMの中間イメージは光ガイドの外側に、それに垂直な方向に配置することができる。
【0206】
二段階光学システムを有するディスプレイデバイスが図12に示される。このディスプレイデバイスは、少なくとも1つのSLMと導光デバイス26とをさらに備える。この場合、導光デバイス26は、光方向において、少なくとも2つのイメージング要素27及び28を有する二段階光学システムの後に配置される。第1イメージング要素27は、光方向において、SLMの後方であるが、SLMのすぐ近くに配置される。図12は、この場合、イメージング要素27が照明デバイス(図示せず)の中間イメージZBを生成する、そのようなディスプレイデバイスの照明ビーム経路を概略的に示す。次に、照明デバイスの中間イメージZBは、イメージング要素28によって仮想観察者ウィンドウVW内にイメージングされ、照明デバイスのイメージが再び生成される。中間イメージZBの面内にイメージングシステム30を設けることができるが、これは照明ビーム経路に影響を及ぼさない。イメージングビーム経路に対するその機能を以下に説明する。
【0207】
図13図12によるディスプレイデバイスのためのイメージングビーム経路を示し、イメージングビーム経路の概略図が上の図に示され、上の図の円で囲まれた領域の詳細図が下の図に示される。明確にするために、上の図では、SLMの1つの画素から発する光のみが示されている。図からわかるように、光はイメージング要素27および28ならびにイメージングシステム30を通過した後、導光デバイスの光ガイドに入り、光ガイド内で全反射を介して伝播し、その後、光デカップリングデバイスによって再びデカップリングされる。
【0208】
上の図の円で囲まれた領域は下の図においてより詳細に示されており、ここでは、1つの光ビームだけでなく、SLMの複数の画素から生じる複数の光ビームが示されている。この詳細図から、イメージング要素27、28及びイメージングシステム30によって、光ガイド内の1つの焦点がそれぞれSLMの個々の画素に対して生じることが分かる。これは、SLMの更なるイメージZSが導光デバイス26の光ガイドの内側に生成されることを意味する。照明デバイスの中間イメージZBの面内のイメージングシステム30はイメージングビーム経路にのみ影響を及ぼすが、照明ビーム経路には影響を及ぼさないという有利な特性を有する。
【0209】
イメージングシステム30が例えばレンズ要素である場合、SLMのイメージ面は、このレンズ要素の焦点距離を適切に選択することによって、仮想観察者ウィンドウの位置を不注意に変位させることなく、変位可能である。
【0210】
本例では、イメージング要素28もレンズ要素である。第1に、このレンズ要素の焦点距離は光が光ガイド26から脱カップリングされた後に、仮想観察者ウィンドウが生成されるように選択される。イメージング要素28の焦点距離を考慮して、イメージングシステム30のレンズ要素の焦点距離は、SLMのイメージZSが導光デバイス26の光ガイドの内側に生成されるように選択される。
【0211】
光をカップリングおよびデカップリングするための回折格子要素によって生じるイメージングビーム経路内の収差のサイズは、回折格子要素間の距離、すなわち、光カップリングデバイスの少なくとも1つの回折格子要素の光デカップリングデバイスの少なくとも1つの回折格子要素からの距離、にも依存する。したがって、光ガイド内のSLMの多重イメージの様々なセグメントについて、光が光ガイド内で異なる距離を伝播し、したがって、光をカップリングするための回折格子要素と光をデカップリングするための回折格子要素との間の異なる距離を有するのであるが、そのようなセグメントも、各セグメントごとに異なる、イメージングビーム経路における収差を生じさせる。
【0212】
光ガイド内の光の経路の長さが異なるために、またはカップリングおよびデカップリングのための回折格子要素によって生成される収差のために、光学システムのイメージング要素からのSLMの多重イメージの個々のセグメントの距離が異なるために、仮想観察者ウィンドウの視点からのSLMの多重イメージの個々のセグメントの深さ位置が異なることに対する解決策として、以下が提案される:既述の通り、二段階光学システムに加えて、ディスプレイデバイスは、少なくとも1つのSLMと、SLMを照明する1つの照明デバイスと、を備える。第1のステップでは、照明デバイスの中間イメージおよびしたがって仮想観察者ウィンドウの中間イメージも、少なくとも1つの第1イメージング要素によって、光方向においてSLMの後に生成される。第2のステップでは、照明デバイスの中間イメージおよびしたがって仮想観察者ウィンドウの中間イメージが、実際の仮想観察者ウィンドウ内に、少なくとも1つの第2イメージング要素によって結像される。さらに、このディスプレイデバイスは例えば図15に示すように、可変イメージングシステムを備える。これは、この場合、中間イメージ面ZB内のイメージングシステム30が可変に設計されることを意味する。可変イメージングシステム30は仮想観察者ウィンドウの中間イメージ面ZBに、またはこの中間イメージ面の近くに配置される。可変イメージングシステム30は、制御可能に設計することができる少なくとも1つのイメージング要素を含む。例えば、イメージング要素の焦点距離は可変であってもよい。第1および第2のイメージング要素27、28を有する構成はまた、SLMのイメージを生成する。仮想観察者ウィンドウをイメージングする第2のイメージング要素28も、SLMのイメージングに寄与する。しかしながら、仮想観察者ウィンドウの中間イメージ面内又はそれにできるだけ近くに可変イメージングシステムのイメージング要素を使用することによって、照明ビーム経路及び仮想観察者ウィンドウ自体の位置及びサイズに影響を及ぼすことなく、SLMのイメージを有利に変位させることもできる。SLMのイメージは、個々のセグメントに対して生じる光ガイドを通る光の異なる光路が少なくとも部分的に補償されるように、可変イメージングシステムのイメージング要素によって、SLMの多重イメージの各セグメントに対して変位される。
【0213】
補償により、仮想観察者ウィンドウを介して観察者が観察可能なSLMの可視イメージが、全てのセグメントについて、等しい又は少なくとも同様の深さで得られる。可変イメージングシステム30のイメージング要素は例えば、制御可能な可変周期(LCG-液晶格子)を有する回折格子要素、エレクトロウェッティングレンズ、液晶レンズ、またはズーム対物レンズと同様な、距離が変化するレンズなどの少なくとも2つのイメージング要素からなる系であってもよい。
【0214】
SLMの中間イメージはまた、SLMのこの中間イメージがSLMの多重イメージのセグメントの一部について少なくとも、光ガイドの内側に配置されるように、生成可能である。しかしながら、セグメントの別の部分については、SLMの中間イメージを光ガイドの外側に配置することもできる。
【0215】
この補償により、好ましくは、SLMの中間イメージは、全てのセグメントについて、光ガイドからの光のデカップリングについて同様の距離に生じる。全てのセグメントについて光ガイド内に中間イメージが生じる場合、光ガイドにおいてより多くの回数の反射を有するセグメントについて、光ガイドにおける中間イメージは、光ガイドにおいてより少ない回数の反射を有するセグメントよりも、光のカップリングからより遠く離れていることが真実である。
【0216】
光ガイドに光をカップリングしたり、光ガイドから光をデカップリングしたりするために回折格子要素を使用することに起因して、単一ステップ光学システムにおけるSLMの画素のイメージングにおいて生じうる非点収差は、上述の二段階システムで少なくとも部分的に補償可能である。これは生じうる。すなわち、二段階光学システムにおいて、交差した、すなわち互いに対して垂直に配置された、円柱状イメージング要素(例えば、円柱レンズ)であってそれぞれが可変焦点距離を有する円柱状イメージング要素、または円柱レンズ機能を有する制御可能な回折格子要素が、仮想観察者ウィンドウの中間イメージ面内で使用され、SLMの多重イメージの各セグメントについて、両方の円柱状イメージング要素の焦点距離が、仮想観察者ウィンドウを通して可視のSLMの水平および垂直イメージが同様の深さ面に生じるようにそれぞれ設定されることにおいて、上記が生じうる。
【0217】
さらに、光ガイド上の光のカップリング位置の連続的な変位は光偏向デバイス29によって実行可能であり、当該デバイスは、図14に示されるように、光方向において、光ガイドまたは導光デバイス26の前の可変イメージングシステム30のすぐ近くの仮想観察者ウィンドウおよび/または照明デバイスの中間イメージ面ZBに配置される。光偏向デバイス29はこの目的のために、制御可能または可変であるように設計される少なくとも1つの回折格子要素を備えることができる。したがって、入射光は光偏向デバイス29によってそれに応じて偏向可能であり、すなわち、光偏向デバイスの回折格子要素は、入射光が必要な方向に偏向され、したがって、光偏向デバイス29によるこの光偏向がない場合とは異なる光ガイド上のカップリング位置で光ガイドにカップリングされるように制御されることができる。図12及び図14は共に照明ビーム経路を示す。光偏向デバイスなしでの光ガイドにおける変位されていないカップリング位置が図12に示される。それと比較して変位されたカップリング位置が図14に示されている。
【0218】
このようにして、光ガイド上の光の様々なカップリング位置を生成することができる。光偏向デバイス29の機能及び可変イメージングシステム30の機能は1つの装置又はシステムに組み合わせることもでき、その結果、両方の機能に必要なのは1つの装置のみである。可変イメージングのためのレンズ機能と偏向のためのプリズム機能の両方を、例えば、同じ制御可能な回折格子要素に書き込むことができる。
【0219】
特に、生成されるべき好ましくは3次元シーンに関するSLMのイメージの位置は、SLMに符号化されるべきホログラムの計算にも影響を及ぼす。とりわけ、すべてのサブホログラムが全体のホログラムまたはホログラムを形成する場合、サブホログラムのサイズは、シーンのオブジェクトポイントがSLMのイメージ面の前方または後方にどれだけ離れて配置されているかに依存し、SLMは視野も画定する。観察者が再構成された又は生成されたシーンをそれを通じて観察することができる仮想観察者ウィンドウに非常に近接してSLMのイメージが配置される場合、サブホログラムは、典型的にはその寸法が非常に大きい。対照的に、SLMのイメージが仮想観察者ウィンドウから非常に離れて位置する場合、これはまた、その寸法が大きいサブホログラムを意味し得る。仮想観察者ウィンドウと無限遠との間にSLMのイメージが全く存在せず、代わりにSLMの実像が仮想観察者ウィンドウの背後に存在する場合、3次元シーンを表すこともできる。イメージング要素からのSLMの距離がイメージング要素の焦点距離よりも大きい場合、虚像は生成されない。従って、観察者は、SLMの鮮明な画像を見ることができない。しかしながら、サブホログラムがSLM自体に、すなわち、そのイメージにではなく、符号化される場合であって、その焦点距離がオブジェクトポイントが生成されるのに十分に長く、イメージング要素からのその距離がイメージング要素の焦点距離未満である場合、SLMの虚像は生成されず、オブジェクトポイントの虚像が生成される。しかしながら、この場合、その寸法が非常に大きいサブホログラムも提供される。
【0220】
一般に、SLMのイメージ面は3次元シーン内に配置されることが有利であり得、その結果、シーンのオブジェクトポイントの一部はSLMのイメージの前に配置され、オブジェクトポイントの別の部分はSLMのイメージの後ろに配置され、例えば、イメージ面は仮想観察者ウィンドウから約1mまたは1.5mの距離に配置される。ホログラムの計算のための計算労力は、サブホログラムのサイズと共に増加する。
【0221】
例えば、二段階光学システム及び可変イメージングシステムを有するディスプレイデバイスでは、サブホログラムの典型的な又は最大サイズが最小化されるように可変イメージングシステムのイメージング要素の焦点距離を適合させることによって、SLMのイメージ面の位置をSLMの多重イメージの個々のセグメントにおいて変位させることができる。したがって、ホログラムを計算するための労力が有利に低減される。
【0222】
可変イメージングシステムを使用しないディスプレイデバイスでは、SLMで符号化されるホログラムの計算は、小さい平均サイズのサブホログラムを有する仮想SLM面と、SLMの多重イメージの各セグメントに対するSLMの対応するイメージ面への算術変換と、によって実行することができる。これは、仮想観察者ウィンドウの背後のSLMの実イメージ面への変換も含むことができる。例えば、SLMの仮想面はSLMの多重イメージの全てのセグメントについて同一であるが、変換が実行されるSLMのイメージ面は、光学システムによって生成されるイメージ面に従って、セグメントごとに異なる。
【0223】
以下の説明は、光学システムの収差を考慮してサブホログラムの振幅及び位相を決定するための逆算に関する。既に説明したように、収差はまた、例えば、光ガイドに光をカップリングしたり、光ガイドから光をデカップリングしたりするための回折格子要素に起因して、イメージングビーム経路においても生じ、これは、SLMの画素イメージの望ましくない変位を引き起こすだけでなく、むしろ、SLMの鮮明にイメージングされた画素イメージがもはや全く生じないという結果をもたらす。
【0224】
原則として、ホログラフィックディスプレイデバイスを使用して、SLMが鮮明にイメージングされない場合であっても、空間内のシーンの3次元オブジェクトポイントを鮮明に再構成することが可能である。しかしながら、特定の状況下では、ホログラフィック直視型ディスプレイ又はSLMの鮮明なイメージを有するディスプレイについて典型的に生じるように、サブホログラムの位相曲線は単純な球面レンズ関数からの偏差を有する。サブホログラムの振幅曲線はまた、典型的な曲線からの偏差を有することができ、これは、最も単純な場合にはサブホログラムにわたる一定の振幅である。
【0225】
ここで、サブホログラムがSLM上で正しく表され得るかどうかをチェックし、オブジェクトポイントを再構成するために必要なサブホログラム内の振幅分布および位相分布を決定する方法を説明する。
【0226】
この方法は好ましくは幾何学的光学計算のためのソフトウェアを使用して実行することができ、これは、より複雑な光学システムにおける波動光学計算と比較して実行を単純化する。第1に、好ましくは3次元シーンのオブジェクトポイントから仮想観察者ウィンドウへの光伝播の計算が実行され、これは、オブジェクトポイントが実際に空間内に存在し、光学システムがオブジェクトポイントと仮想観察者ウィンドウとの間に位置していないかのように行われる。したがって、波動光学計算の場合、オブジェクトポイントから発する光の波面は、仮想観察者ウィンドウ内で計算される。単純化された幾何学的計算では、オブジェクトポイントから仮想観察者ウィンドウ内の様々な位置まで光ビームが計算される。次に、波面または光ビームの計算が、仮想観察者ウィンドウから光学システムを通ってSLMまで逆に行われる。
【0227】
これは、例えば、以下のようにして行われる:光学計算において、ビームスプリッタ要素が光方向において仮想観察者ウィンドウの前に導入され、ミラー要素が仮想観察者ウィンドウの位置に導入される。3次元シーンのオブジェクトポイントからの光は、ビームスプリッタ要素の表面でカップリングされ、仮想観察者ウィンドウに向かって偏向され、ミラー要素によって仮想観察者ウィンドウで反射され、再びビームスプリッタ要素に入り、ビームスプリッタ要素の別の表面を通って出て、そこから光学システムを通ってSLMに戻っていく。このようにして、オブジェクトポイントについてのサブホログラムにおける振幅分布および位相分布を決定することができる。
【0228】
あるいは例えば、光学計算では、仮想観察者ウィンドウを後方照明することができ、レンズを仮想観察者ウィンドウ内に配置することができ、これは残りの光学システムがない場合にオブジェクトポイントを生成することになる。例えば、仮想観察者ウィンドウから1m離れたオブジェクトポイントの計算を行うために、仮想観察者ウィンドウを平面波を用いて後方から照明することができ、1mの焦点距離を有するレンズを仮想観察者ウィンドウ内に配置することができる。オブジェクトポイントについてのサブホログラムにおける振幅分布および位相分布を、このようにすることによっても計算することができる。
【0229】
少なくとも1つのSLMと、光学システムの複数のイメージング要素と、導光デバイスとを有するディスプレイデバイスの場合、計算は例えば、仮想観察者ウィンドウから来る光が光のデカップリング位置で導光デバイスの光ガイドに入り、光のカップリング位置で再び光ガイドを出て、次に、光学システムのイメージング要素を通ってSLMにさらに伝播するように、実行することができる。サブホログラムの位置及びサイズは、後方に伝播する光ビームがSLMに入射する位置によって生じる。
【0230】
図15は、SLMと、光学システムのイメージング要素27及び28と、可変イメージングシステム30と、導光デバイス26とを有するディスプレイデバイスを概略的に示し、オブジェクトポイントの振幅分布及び位相分布を決定するための逆算が示されている。この場合、仮想観察者ウィンドウVWから導光デバイス26を介してSLMまでの逆算が行われ、その値が決定される。再構成されるべきオブジェクトポイントは、とりわけ、仮想観察者ウィンドウVW内の全ての位置からの光ビームが逆算においてもSLMに入射する場合、SLM上に正確に表され得る。さらに、光ビームは、SLMの回折角の半分以下の角度でSLMに入射しなければならない。回折角は、使用される波長λと、λ/pとしてのSLMの画素ピッチpとから生じる。この条件は一般に、照明ビーム経路内の収差が小さく、収差が本質的にイメージングビーム経路内にのみ存在する場合に満たされる。
【0231】
波動光学計算の場合、サブホログラム内のオブジェクトポイントの振幅分布および位相分布は、逆算によって直接定義することができる。
【0232】
幾何学的計算では、振幅分布および位相分布が以下のように定義される:光ビームの幾何学的逆算は非常に多数の光ビーム、例えば、100,000の光ビームを使用して実行される。SLMのサブホログラム内の画素の相対強度は、SLM内の画素の領域に入射する光ビームの数に起因する。相対振幅は、この強度の平方根として計算することができる。振幅の絶対値については、サブホログラム内の画素の全ての強度の合計がオブジェクトポイントの強度に等しく設定される。サブホログラムでは一般に振幅が連続的に変化するので、画素毎に個別に計算する必要はなく、単純化された形態では、サンプル点に基づいて補間することもできる。
【0233】
図16は、図15による幾何学的計算による逆算によって得られるSLMの面内の強度分布を概略的に示している。それは、サブホログラム内の強度分布を示している。図示のサブホログラムはこの例では略三角形状であり、下端に高強度の略鎌状の狭い領域を有している。これは、サブホログラムの領域にわたって一定の振幅を有する矩形形状を有するSLM上の従来のサブホログラムから著しく逸脱する。位相値の計算は特に、SLM上の位置とSLMへの光ビームの入射角との間に固有の関連が存在する場合に実行することができる。これは、光ビームが著しく異なる角度でSLM内の同じ位置に入射することができないことを意味する。サブホログラムに書き込まれるレンズ関数は、その位置にわたって変化する格子周期を有する回折格子であると考えることができる。したがって、SLMの2つの隣接する画素の各々について、光の偏向角は局所的に局所格子周期に対応し、それによって2つの画素の位相値の差を定義することができる。したがって、第1の画素について位相値が定義される場合、所望の差に対応する位相値を、隣接する画素のそれぞれについて定義することもできる。したがって、位相値は、1つの画素から始まって隣接する画素の各々まで、段階的に定義することができる。
【0234】
したがって、最初に、局所格子周期が、SLMへの光ビームの入射角から幾何学的逆算において決定される。式tanα=λ/gによれば、αは光ビームの入射角であり、λは光の波長であり、局所格子周期gはg=λ/tanαとして定義される。そして、Δφ=2*πp/g(pはSLMの複素数画素の画素ピッチ)は、この偏向角を設定するために必要な隣接する2画素の位相差を表す。したがって、第1の画素が位相値φ0を有する場合、第2の画素は、位相値φ0+Δφを受け取る。
【0235】
SLMの2次元画素配列では、この場合、入射角は水平成分と垂直成分とに分解される。次いで、上記の式をそれぞれ使用して、局所水平格子周期および垂直格子周期を決定する。隣接する画素の位相差は、複素数画素の画素ピッチpを有する比2*π*p/gから局所格子周期から決定される。例えば、SLMへの光ビームの入射角が回折角の半分に対応する場合、位相差πが隣接する画素間に生じる。SLMへの光ビームの入射角が例えば、回折角の4分の1に対応する場合、π/2の位相差が生じる。サブホログラムの位相曲線は、位相差及び選択可能なオフセット位相値を用いて定義される。例えば、このオフセット位相値は、サブホログラムの左上隅の画素の位相値が0に設定されるように定義することができる。サブホログラムの局所格子周期は、一般に連続的に変化するので、各画素ペアについて個別に計算する必要はなく、むしろサンプル点に基づいて補間することができる。このようにして決定された位相は、平面波を用いて照射されるSLMのサブホログラムにおける位相に対応する。照明波面が平面波からずれている場合、この照明波面もサブホログラムの位相値から減算される。
【0236】
照明波面の位相分布は、上記の説明と同様に、幾何学的光学計算及び照明デバイスからの光ビームのSLMへの入射角から任意に決定することができる。このような計算はオフラインで実行することもでき、決定された値は、ホログラム計算のためにルックアップテーブルに記憶することができる。
【0237】
既に説明したように、照明デバイスの中間イメージ面を生成するディスプレイデバイスには、二段階光学システムを使用することが好ましい。このような二段階光学システムを有する1つの例示的な実施形態では、可変イメージングシステムを仮想観察者ウィンドウの中間イメージ面に設けることができる。この場合、可変イメージングシステムは例えば、制御可能な可変周期(LCG)を有する回折格子要素を含むことができる。
【0238】
照明デバイスの中間イメージを有する二段階光学システムにおいて、プリズム機能を光偏向デバイスの少なくとも1つの回折格子要素に書き込むことによって光ガイド内の光のカップリング位置を変位させるために、光偏向デバイスが照明デバイスの中間イメージ面内に配置される例示的な実施形態も既に説明されている。この回折格子要素は例えば、制御可能な周期を有する回折格子要素として設計することもできる。ここでも、可変イメージングシステムと光偏向デバイスの両方を単一の装置に組み合わせることができる。
【0239】
二段階光学システムを有するディスプレイデバイスのさらなる例示的な実施形態を以下に説明する。この場合、可変イメージングシステムおよび/または光偏向デバイスの少なくとも1つの回折格子要素において、回折格子要素が位相変調要素、例えば、制御可能な可変周期(LCG)を有する回折格子要素である場合、単純なレンズ機能またはプリズム機能の代わりに、またはそれに加えて、収差を補償することができるように複素位相特性を書き込むこともできる。例えば、これは、仮想観察者ウィンドウから光ガイドを介してSLMの方に向かう上述した逆算と組み合わせて実行することができる。しかしながら、逆算は最初に、仮想観察者ウィンドウから照明デバイスの中間イメージ面までのみで行われる。特に、収差が基本的にイメージングビーム経路にのみ存在し、照明ビーム経路には収差が全く存在しないか、又は僅かな収差しか存在しない場合、逆算では照明デバイスの中間イメージ面内の光ビームが本質的に正しい位置を有するが、収差のために、実際の仮想観察者ウィンドウ内の目標位置及び目標角度と比較して不正確な角度を有する。したがって、個々の光ビームについて、角度は、照明デバイスの中間イメージ面内の対応する局所回折格子要素によって補正することができる。例えば、β(x)が位置xにおける光ビームの所望の入射角であり、β'(x)がこの位置xにおけるこの光ビームの実際の入射角である場合、補正値はΔβ(x)=β(x)-β'(x)である。光ビームの位置及び所望の入射角は、照明デバイスの中間イメージ面から仮想観察者ウィンドウまでのイメージングスケールを考慮して、実際の仮想観察者ウィンドウ内のものに対応する。SLMにおける逆算について既に説明したのと同様に、局所格子周期は、g(x)=λ/tanΔβ(x)として定義される。
【0240】
照明デバイスの中間イメージ面における位相関数によるイメージングビーム経路内収差の補正の利点は、この補正が3次元シーンの内容とは無関係であることである。したがって、補正関数および/または補正値はSLMの多重イメージの各セグメントについて、および光のカップリング位置の連続的な変位の場合に可能なデカップリング位置の選択について、それぞれ1回計算され、値テーブルに格納可能であり、したがって、これらの値は必要に応じて、繰り返し使用可能である。
【0241】
SLMへの逆算によるSLM面内のサブホログラムの上述の収差補正は、サブホログラム内の適切な振幅曲線および位相曲線によって、SLMの画素の鮮明なイメージがない場合であっても、空間内のオブジェクトポイントを鮮明な点として生成することができる場合を表す。照明デバイスの中間イメージ面に可変イメージングシステムを使用することは、これも説明されているが、SLMのイメージを変位させるが、それにもかかわらず、ぼやけたイメージが存在することがある。
【0242】
これと比較して、SLM自体のイメージは、照明デバイスの中間イメージ面においてここで説明される収差補正によって改善される。SLM画素のイメージはより鮮明になり、したがって、オブジェクトポイントの再構成のためのサブホログラムは、直視型ディスプレイにも存在するような一定の振幅を有するレンズ関数により類似しうる。したがって、寸法が小さいサブホログラムが理由で、ホログラムの演算のための演算労力も減少する。しかしながら、両方法、すなわち、照明デバイスの中間イメージ面における収差補正と、サブホログラムの振幅曲線及び位相曲線における収差補正と、を互いに組み合わせることもできる。
【0243】
例えば、図17に示すように、最初に、SLMの多重イメージの単一セグメントの視野セクションの中心におけるオブジェクトポイントの光路が、仮想観察者ウィンドウから照明デバイスの中間イメージ面までのSLMイメージの目標距離に対応する仮想観察者ウィンドウからの距離で計算されるように、逆算及び収差補正が照明デバイスの中間イメージ面において実行される。鮮明にイメージングされたSLMでは、オブジェクトポイントが表示面に位置するので、サブホログラムのサイズは1ピクセルに過ぎない。可変イメージングシステム及び/又は照明デバイスの中間イメージ面ZB内の光偏向デバイスの回折格子要素の局所格子周期は、SLMへの更なる逆算中に、光ビームがSLMの中心の1つの画素内で一緒に進むように設定される。図17は、仮想観察者ウィンドウ(ここでは図示せず)内の様々な位置から光ガイドまたは導光デバイス26およびイメージング要素28を通って照明デバイスの中間イメージ面ZBに至り、そこからそこに設けられた回折格子要素の格子周期のマッチングセッティングの後、さらにイメージング要素27を通ってSLMに至る5つの光ビームの例に基づいてこれを示す。仮想観察者ウィンドウから異なる距離にあるが、SLMの多重イメージのセグメントの視野部の中央領域に依然としてあるオブジェクトポイントに対して、サブホログラムはオブジェクトポイントの距離の焦点距離を有する単純なレンズ関数として生じる。しかしながら、セグメントの部分視野のエッジに位置するオブジェクトポイントに対して、照明デバイスの中間イメージ面ZBにおいて同じ補正が使用される場合、それにもかかわらず、残留収差が依然としてSLM面に存在し得る。この目的のために、既存の収差をさらに補正するために、既に説明したように、ホログラム面内の入射角が決定され、そこからサブホログラムの位相関数が計算される。単純化した形で表現すると、SLMサブホログラムの中央領域では画素イメージが鮮明であるため、そこではサブホログラムは補正なしのレンズ関数として使用されるが、SLMのエッジ領域ではSLM面で追加の収差補正を有するサブホログラムが使用され、その理由はそこでは画素イメージが鮮明でないからである。しかしながら、全体として、SLM面におけるサブホログラムの必要な収差補正は、この場合、照明デバイスの中間イメージ面における補正の使用によっても実質的に低減される。
【0244】
照明デバイスの中間イメージ面における可変イメージングシステムの使用について既に説明したように、この実施形態は代替実施形態によって置き換えることができ、すなわち、可変イメージングシステムは、仮想SLM面における演算、仮想観察者ウィンドウへの変換、および実際のSLM面、この場合はSLMの実際のイメージ、への逆変換によって置き換えることができる。仮想SLM面から仮想観察者ウィンドウを有する観察者平面への、およびそこからSLMイメージの面へのこの変換中に、2次位相項が、2つの面(SLM面、観察者平面)からの距離に従って観察者平面内の位相値に加算される。これらの二次位相項は、レンズ関数の等価物である。照明デバイスの中間イメージ面、およびしたがって、仮想観察者ウィンドウの中間イメージ面における可変イメージングシステムをSLMイメージを変位させるための方法として使用すること、またはその代わりに、オブジェクトポイントを観察者面に算術変換し、二次位相項をこの面内の位相値に加算し、SLMの仮想面とSLMの実際のイメージ面との間のSLMイメージの算術変位を目的として逆変換することは、収差補正のための代替処理である。
【0245】
しかし、照明デバイスの中間イメージ面に、位相要素を有する可変イメージングシステムを使用する代わりに、またはそれに加えて、算術変換の形で補正も実行される場合、収差補正に有利であり得る。したがって、サブホログラムは、SLMの実質的に収差のないイメージ面において計算され、そこから照明デバイスの中間イメージ面に算術的に変換される。この中間イメージ面では、逆収差補正が行われ、補正されたデータはこのようにして、SLMの実際の収差に影響されるイメージ面に逆変換される。例えば、可変の制御可能な周期を有するが1次元電極構造を有する回折格子要素が使用される場合、算術補正と位相要素による補正との組み合わせは妥当である。例えば、2つの交差した回折格子要素が可変イメージングシステム又は光偏向デバイスに使用される場合、水平座標のみ又は垂直座標のみに依存する位相曲線は、それぞれ1つの回折格子要素内のハードウェアによって補正することができる。水平方向にも垂直方向にも独立していないさらなる位相項または位相関数は、さらなる算術補正において位相値の2次元行列の形成で考慮に入れることができる。この目的のために、まず、位相曲線としての補正の計算が実行され、次に、位相曲線の個々の成分への分解ph(x,y)=ph1(x)+ph2(y)+ph3(x,y)が実行される。
【0246】
補正値は、収差補正の算術的考慮の場合、あたかも補正要素が照明デバイスの中間イメージ面内に物理的に存在するかのように、角度及び局所格子周期を介した仮想観察者ウィンドウからの逆算によって決定することもできる。
【0247】
図18は、観察者の頭部31を概略的に示しており、ここでは、導光デバイス26を有するディスプレイデバイスが右目RA及び左目LAの前にそれぞれ配置されている。両方のディスプレイデバイスは、観察者の頭部31に取り付けられる、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)を形成する。より良く理解するために、それぞれのディスプレイデバイスのビーム経路は、展開されて示されている。しかしながら、適切なHMDを提供するために、両方のディスプレイデバイスのビーム経路は、実際には折り返されたビーム経路である。この目的のために、例えば、偏向ミラーをSLMと導光デバイス26との間に設けることができ、その結果、各場合において、SLM及び光学システムのイメージング要素は、観察者の頭部31に横方向に隣接して配置される。それぞれの場合において、光は、頭部31の外側からそれぞれの目LA、RAの前に設けられた導光デバイス26にカップリングされ、そこを伝播し、光デカップリングデバイス25によって、観察者の目RA、LAに向けて導光デバイス26の光ガイドからデカップリングされる。次いで、それぞれの仮想観察者ウィンドウは目RA、LAの瞳孔上に結果として生じ、その結果、観察者は生成された、または再構成されたシーンを観察することができる。図18では、湾曲した光ガイドが導光デバイス26に使用されている。原則として、HMDはユーザの頭部31に固定的に接続され、したがってユーザのより大きな位置変化は生じないので、仮想観察者ウィンドウの追跡は、HMDにおいて必要とされない。これは、ユーザが移動すると、HMDも同時にこの位置に搬送されるからである。しかしながら、状況によっては、光方向において観察者追跡デバイスが導光デバイスの後ろに好適に設けられた場合に仮想観察者ウィンドウの微細な追跡は合理的でありえ、当該観察者追跡デバイスは例えば少なくとも1つの液晶回折格子要素を含み、少なくとも1つの方向、好ましくは水平方向に仮想観察者ウィンドウを追跡するように設計される。
【0248】
回折格子要素の使用は、様々なコンテキストでここで言及され、説明される。ディスプレイデバイス、例えば、HMDは典型的にはシーンのカラーによる再構成又は表現のために、複数の波長、例えば、赤、緑、及び青の使用を必要とする。この目的のために、例えば、様々な波長の光が回折格子要素に時間的に連続的に適用され、特に設定可能な周期を有する回折格子要素の場合、それらは各波長に対して別々に設定されることが可能であり、又は回折格子要素が例えば、カップリング回折格子要素及びデカップリング回折格子要素として使用される場合、光をそれぞれ光ガイドに又は光ガイドから案内するために、十分な波長選択性を有する回折格子要素が使用され、その結果、それらは例えば、1つの波長のためだけの回折格子要素として作用する。一般的な場合、複数の回折格子要素のスタックは本発明によるカップリング回折格子要素としても理解されるべきであり、例えば、3つの回折格子要素のスタックであり、各原色の赤、緑、青(RGB)または各波長に対して1つの回折格子要素である。
【0249】
本発明の上記の説明は一般的に、また例示的な実施形態についても、とりわけ、光ガイドおよび/または導光デバイスを有するディスプレイデバイスに関する。しかしながら、明確にするために、特に、二段階光学システムに関連する説明の部分、および逆算によるサブホログラムの決定は、光ガイドまたは導光デバイスを有さないホログラフィックまたはステレオスコピックディスプレイデバイスにもより一般的に適用可能であることに留意されたい。
【0250】
一般に、SLMが照明デバイスによって照明され、仮想観察者ウィンドウの中間イメージが、照明デバイスの中間イメージ面内の光学システムの少なくとも1つの第1イメージング要素によって生成される、二段階光学システムを有するディスプレイデバイスを説明する。仮想観察者ウィンドウのこの中間イメージは、光学システムの少なくとも1つの第2イメージング要素によって実際の仮想観察者ウィンドウの位置にイメージングされる。この場合、少なくとも1つのイメージング要素を有する可変イメージングシステムが、照明デバイスの中間イメージ面に配置される。収差補正のためのプリズム機能および/またはレンズ機能および/または位相曲線は、少なくとも1つのイメージング要素に書き込むことができる。
【0251】
照明デバイスの中間イメージ面における上述の算術収差補正は一般に、光ガイド又は導光デバイスを使用しなくても、二段階光学システムに対して行うことができる。
【0252】
一般的なディスプレイデバイスは例えば、SLMの実像が画面上に生成されるホログラフィック投影システム、又は光ガイドの代わりに従来のレンズ又はミラーのような他の構成要素を有するヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0253】
このようなディスプレイデバイスは有利には例えば、図7及び図8の出願人のPCT/EP2017/071328に記載されているようなシステムと組み合わせることができ、この場合、フィルタリングは、照明デバイスの中間イメージ面内のフィルタリング要素を使用して行われる。このフィルタリングは例えば、ゼロ次スポットをフィルタリングして除去するため、または特定の回折次数をフィルタリングして除去するために使用される。この出願の開示の内容は、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。従って、照明デバイスの中間イメージ面でフィルタリングするための受動的または可変振幅要素を、ここで提案される可変イメージングシステムの少なくとも1つの位相要素と組み合わせることで、収差補正のためのプリズム機能またはレンズ機能を実装することができる。さらに、フィルタリングに加えて、振幅要素を収差補正のために追加的に使用することができる。
【0254】
本出願人のPCT/EP2017/071328に記載されているように、1つまたは2つの回折次数にわたる仮想観察者ウィンドウの横方向変位は、照明デバイスの中間イメージ面内に可変位相要素を有する本明細書に記載の二段階光学システムと組み合わせることもできる。例えば、SLMイメージを深さ方向に変位させるためのレンズ機能が、仮想観察者ウィンドウの横方向に変位された位置のために可変イメージングシステムの位相要素又は回折格子要素を有するように実施される場合、位相要素又は回折格子要素は、その寸法において、考慮される全領域と同じくらい、すなわち、照明デバイスの中間イメージ面における複数の回折次数と同じくらい、大きくなければならない。レンズ関数が回折格子要素に書き込まれる位置はこの回折格子要素上で横方向に変位させることもでき、レンズ関数が書き込まれる回折格子要素上の領域の寸法は、観察者ウィンドウに対応する領域、すなわち最大で1回折次数、と同じ大きさだけでよい。他の回折次数は例えば、照明デバイスの中間イメージ面内でフィルタリングすることによって除去することができる。例えば、各種回折次数を交互にフィルタ除去又は透過させることができる制御可能なフィルタデバイスとすることができる。例えば、収差補正のための、仮想観察者ウィンドウからの逆算の場合、それに応じて変位される最大1回折次数のサイズのセクションのみが、補正の演算のために使用される。横方向に変位した仮想観察者ウィンドウにおける算術補正の場合、これは、計算においてホログラム面またはSLM面における対応する線形位相項によって考慮に入れることができる。
【0255】
一般に、SLMに近い制御可能な可変格子周期を有する追加の回折格子要素を使用することも可能であり、この追加の回折格子要素を使用して、観察者ウィンドウの中間イメージの位置をプリズム機能に書き込むことによって照明デバイスの中間イメージ面内で変位させ、この中間イメージ面内で可変イメージングシステムのより大きな位相要素または回折格子要素を使用することが可能であり、その寸法は観察者ウィンドウの中間イメージを変位させることができる可能な領域全体を含むのに十分に大きく、プリズム機能またはレンズ機能の位相機能または収差補正のための位相機能は仮想観察者ウィンドウの中間イメージの現在位置の領域内に局所的にのみ書き込まれる。
【0256】
仮想観察者ウィンドウから光学システムを介してSLMに向かう逆算は、光ガイドおよび/または導光デバイスと関連する光学システムおよび/または二段階光学システムにのみ適用可能である。しかしながら、二段階光学システムと逆算の方法の組み合わせは、特に有利に適用可能であり、二段階光学システムは第2のイメージングステップにおいて光ガイド、特に湾曲した光ガイドを組み込み、また、照明デバイスの中間イメージ面において制御可能な可変イメージングシステムを備え、可変イメージングシステムにおいて逆算を用いることで可変イメージングシステムに位相関数の形で書き込まれる収差補正を決定する。
【0257】
以下の説明は一般に、光ガイドにおける角度と、導光デバイスの光ガイド上のデカップリング位置の計算とを特に論じる。
【0258】
光ビームが光ガイド内で規定された回数の反射の後にカバーした経路は、光ガイドの幾何学的形状、ならびに光カップリングデバイスおよび光デカップリングデバイスの光学特性に基づいて計算することができる。
【0259】
図19では、平坦なまたは平面の光ガイドLGAの一例が図(a)に示され、湾曲した光ガイドLGBの一例が図(b)に示されている。図19(a)において、光Lは光ガイドLGAの法線に対して角度βで伝播するように、厚さdの光ガイドLGAにカップリングされる。次に、光Lはカップリング位置から距離Δx=dtanβ後にカップリング側と反対側の表面に到達し、距離2Δx=2dtanβの2倍後に光がカップリングされた表面に再び到達する。したがって、N回の反射の後に光ビームLが光ガイドLGAから再び分離される場合、カップリング側と分離側との間の距離はしたがって:2Ndtanβである。
【0260】
図19(b)では、円弧の断面を表す湾曲した光ガイドLGBにおける光伝播が示されている。内面は円中心点Kの周りに半径r1を有し、外面は円中心点Kの周りに大きい半径r2を有し、光ガイドLGBの厚さはd=r2-r1であり、したがって、2つの半径r1およびr2の差である。光ガイドLGBの内面の法線に対して角度βで光Lが伝播するように光Lがカップリングされ、その光Lは、光ガイドLGBの外側の半径r2及びr1が異なるため、法線に対して異なる角度β-γ/2で入射する。光ガイドLGBの外側での反射の後、光ビームLは、γの円弧上の角度セグメントをカバーした後、再び内側に到達する。以下の関係は、正弦定理から生じる:
γ=2*(β-asin(sin(β)r1/r2))
【0261】
数値の例:光ガイドの内径が32mmであり、角度βが51.9°での外半径が36mmである場合、15°の円弧のセクションの角度γは、光が光ガイドの内側に再び入射するまでの光ガイドの外側での光の1回の反射に帰着する。光ガイド内の光の4回の反射に対して、光は例えば、光ガイド内の円弧上を60°伝播する。したがって、上記の式から、定義された回数の反射後の光ガイド上のデカップリング位置は、湾曲した光ガイドの場合にも、光ガイド上の既知のカップリング位置および角度βから計算することができる。
【0262】
回折格子要素を使用して光を光ガイドにカップリングすることについて、既知の回折格子式:sinβout=λ/g+sinβinが得られ、ここでλは波長であり、gは回折格子要素の回折格子定数であり、βinは光の入射角であり、βoutは結果として得られる、光が光ガイド内を伝播するときの光の角度である。格子方程式は、入射媒体と出射媒体が同一である場合、この形式で適用される。空気からの光の入射および屈折率nを有する光ガイド内の伝播については、2つの媒体の境界面上の屈折もさらに考慮されるべきである:sinβinmed=1/n sinβinair、ここでβinmedは屈折率nを有する媒体中の回折格子要素への光の入射角であり、βinairは空気中の光の入射角である。
【0263】
図20は、平坦又は平面の光ガイドLGを示し、ここで、光束の異なる光ビームが、異なる位置又はロケーションで光ガイドLGにカップリングされることが考慮される。これらの種々のカップリング位置は、ここでは間隔Δxinだけ異なっている。図20から明らかなように、カップリング回折格子要素Ginには、例えば、空気中の角度α1、α2が異なった2つの光ビームL1、L2が入射する。したがって、これらの光ビームL1およびL2はまた、このカップリング回折格子要素Ginによって、光ガイドLG内で異なった伝播角度β1およびβ2で偏向される。
【0264】
ディスプレイデバイスでは、光ガイドへの光のカップリングのための角度スペクトルは例えば、所定の画素ピッチを有するSLMの回折角度から生じうる。光ガイド上にデカップリング回折格子要素を適切に配置することによって、この場合、光ガイド内での1回、2回、または3回の反射の後に、両方の光ビームL1およびL2を光ガイドから再びデカップリングすることが可能である。図20は光ガイドLGの境界面での光の2回の反射(N=2)に対するデカップリング回折格子要素Goutの位置を示す。図20に示す例では、光ガイドの境界面での4回の反射の後の光ガイドLGからの光のデカップリングはより困難となるであろう。すなわち、より小さな角度β1で延びる光ビームL1が4回の反射の後に光ガイドの境界面上で到達する位置Pは、より大きな角度β2で延びる光ビームL2が光ガイドLGの境界面での光の3回の反射後に到達する位置と同じである。この位置にデカップリング回折格子要素が設けられた場合、不注意にも、角度β2で延在する光ビームL2が光ガイドでの3回の反射後にすでにデカップリングされてしまっていることが起こり得、したがって、早すぎるのである。デカップリング領域のこのような不都合な重なりは、カップリングされる光束の所与のサイズ及びカップリングされる光の所与の角度スペクトルについて、例えば、光ガイドの厚さ及びカップリング回折格子要素の格子定数の適切な選択によって、回避することができる。
【0265】
以下の説明では、光カップリングデバイスおよび光デカップリングデバイス内の回折格子要素をより広範に説明し、より詳細に説明する。
【0266】
既に述べたように、導光デバイスの光ガイドから光をデカップリングするための光デカップリングデバイスは代替的に、偏光スイッチと組み合わせて、制御可能な回折格子要素又は受動回折格子要素を含むことができる。しかしながら、光デカップリングデバイスが受動回折格子要素のみを含むことも可能である。
【0267】
セグメントから構成されるSLMの多重イメージが導光デバイスによって生成されるディスプレイデバイスは、偏光スイッチと組み合わされた切り替え可能な回折格子要素又は受動回折格子要素を必要とする。したがって、セグメントから構成されていないSLMの単一のイメージのみが導光デバイスによって生成されるディスプレイデバイスは、特定の構成の追加のスイッチ要素なしに受動回折格子要素のみを備えることもできる。このようなディスプレイデバイスのための導光デバイスに使用可能な光デカップリングデバイスの特定の構成は、以下により広く説明される。
【0268】
光カップリングデバイスは、回折格子要素を含むこともできる。回折格子要素の特定の構成は、光カップリングデバイス及び光デカップリングデバイスの両方に同様の形で使用されてもよい。あるいは、制御可能または受動回折格子要素は透過型または反射型として設計することができる。それらは、代替的に、例えば、光ガイドコアと誘電体層スタックなどの外層との間の内側境界面上に、または光ガイドの外面上に配置することができる。光デカップリングデバイスはまた、反射回折格子要素と透過回折格子要素との組み合わせを含むことができる。導光デバイスを有するディスプレイデバイスにおいて、透過回折格子要素は好ましくは観察者に面する光ガイドの境界面又は表面上に配置され、反射回折格子要素は好ましくは光デカップリングデバイスにおいて観察者から離れる向きを向く光ガイドの境界面又は表面上に配置される。
【0269】
また、逆に、光カップリングデバイスは、好ましくは観察者から離れる向きを向く表面又は境界面上に透過回折格子要素を有し、また、好ましくはディスプレイデバイス内の観察者に面する光ガイドの表面又は境界面上に反射回折格子要素を有することができる。
【0270】
回折格子要素は一般に、その偏向角度が波長に依存する。同じ回折格子要素は、典型的には緑色光または青色光よりも大きな角度で赤色光を偏向させる。導光デバイスを有するディスプレイデバイスの場合、異なる波長の光、例えば、赤色、緑色、および青色光(RGB)も、有利には、光ガイド内の光の等しい所定の回数の反射の後に、光ガイドから同じ位置またはロケーションでデカップリングされるべきである。さらに、異なる波長の光は、同じ角度で光ガイドのデカップリング位置から観察者領域、すなわち仮想観察者ウィンドウまたはスイートスポットに伝播する。これは、光のカップリング角度及びデカップリング角度が使用される波長(赤、緑、青(RGB))について等しい場合に最も容易に実現可能である。光ガイドへの光のカップリングのために、例えば、回折格子要素の代わりに、波長とは独立してカップリング角度を実現することができるミラー要素を使用することも可能である。
【0271】
光ガイドへの光のカップリングまたは光ガイドからの光のデカップリングのための回折格子要素の使用、および様々な色または波長について等しい角度の実現は、個々の波長について異なる回折格子要素の使用、または個々の色について格子周期が設定可能である単一の回折格子要素の使用のいずれかを必要とする。体積格子は例えば、それらが制限された角度選択性及び波長選択性を有することができるものとして知られている。例えば、赤色光のみ、または緑色光のみ、または青色光のみのいずれかを有利に本質的に偏向させる体積格子を生成することが可能であり、それは、それらがそれぞれの他の波長において非常に低い回折効率を有するからである。
【0272】
光カップリングデバイスまたは光デカップリングデバイスは3つの回折格子要素、例えば、赤色光用の体積格子、緑色光用の体積格子、および青色光用の体積格子からなるスタックを備えることができる。これらの3つの体積格子はそれぞれが、体積格子上に同じ角度で入射する赤、緑、および青の光を同じ角度で偏向するように設計される。また、体積格子では、複数の格子機能を単一層で露光することが可能であることも知られている。したがって、回折格子要素スタックの代わりに、光カップリングデバイスまたは光デカップリングデバイスは、赤色、緑色、および青色光の偏向のための複数の露光された格子機能を有する単一の回折格子要素を備えることもできる。回折格子要素スタックの場合、すべての回折格子要素は、任意選択で、切り替え可能および/または制御可能として設計することができる。しかしながら、複数の受動回折格子要素は好ましくは単一のスイッチ要素、例えば、偏光スイッチと組み合わせて使用される。
【0273】
様々な波長に対する光のカップリングおよびデカップリングにおいて同じ偏向角度を達成するための別の可能性は、補正回折格子要素と組み合わせて、異なる角度で複数の波長を偏向させる回折格子要素を使用することであり、補正回折格子要素はそれぞれ、単一の波長に対する偏向角度を補正し、その結果、この偏向角度は、別の波長に対する偏向角度に対応する。このような光カップリングデバイスまたは光デカップリングデバイスでは、例えば、複数の波長を偏向させるための第1の回折格子要素を表面レリーフ格子または偏光格子として設計することができ、一方、1つの波長の偏向角を補正するためのさらなる回折格子要素をそれぞれ体積格子として設計することができる。第1の回折格子要素は例えば、赤、緑、青の光を偏向させ、緑の光は所望の角度で偏向されるが、赤の光は過度に大きな角度で偏向され、青の光は過度に小さな角度で偏向される。さらに設けられた回折格子要素は次に、赤、緑、および青の光が同じ偏向角度で光ガイドにカップリングされ、再びデカップリングされるように、青および赤の光の偏向角度の補正を実行する。各波長に対する偏向角度の補正のために、1波長当たり複数の回折格子要素、例えば、各波長当たり2つの回折格子要素を有する体積格子の配置を使用することもできる。偏向角度を補正するための第1の体積格子は、それぞれの場合において予備偏向を実行することができる。次に、第2の体積格子は所望の出射角が実現されるか又は結果として得られるように、予め偏向された光を偏向させることができる。この場合、大きな偏向角を有する体積格子は一般に、小さな偏向角を有する体積格子よりも狭い波長選択性を有するという事実が利用される。より狭い波長選択性によって、1つの波長の光のみを偏向させる体積格子を達成することはより容易である。
【0274】
特に、複数の波長を偏向するための光カップリングデバイスまたは光デカップリングデバイスの第1の回折格子要素は、切り替え可能および/または制御可能として設計することができる。1つの波長の偏向角度を補正するための別の回折格子要素は、それぞれ受動的に設計することができる。しかしながら、光カップリングデバイス又は光デカップリングデバイスの全ての回折格子要素が受動的に設計されることも可能である。光のデカップリングに関して切り替え可能な要素またはスイッチ要素が必要とされる場合、受動回折格子要素は、スイッチ要素としての偏光スイッチと再び組み合わせることができる。しかしながら、全ての回折格子要素は代替的に、切り替え可能及び/又は制御可能として設計することもできる。
【0275】
受動回折格子要素がスイッチ要素、例えば、偏光スイッチと組み合わせて使用される光デカップリングデバイスの構成では、少なくとも1つの回折格子要素自体が偏光選択的なものとして設計される、すなわち、規定された偏光の光のみを偏向するか、または追加の偏光要素が偏光スイッチと回折格子要素との間に配置されるかのいずれかである。
【0276】
スイッチ要素なしの受動回折格子要素のみを有する光デカップリングデバイスの構成では、しかしながら、規定された偏光の光のみがデカップリングされるべきであり、少なくとも1つの回折格子要素は自身が偏光選択性を有するものとして設計されるべきであり、または追加の偏光要素が偏光スイッチと回折格子要素との間に配置されるべきである。
【0277】
偏光選択性、波長選択性、および角度選択性の組み合わせは、例えば、特定のタイプの体積格子を使用して達成され得る。複屈折を有する液晶材料からなる格子構造と、液晶材料の通常屈折率または異常屈折率と同じ屈折率を有する等方性材料とを有する体積格子は、第1の直線偏光に対して回折格子として作用し、かつ、第1の直線偏光に対して垂直な第2の直線偏光に対して等方性材料として作用することができる。このような回折格子の例は、ポリマー分散液晶(PDLC)格子、ポリフェムス格子、またはポリクリプス(polymer liquid crystal polymer slices)格子である。これらの格子は、以下、偏光選択性体積格子(PSVG)と呼ばれる。液晶に基づく偏光選択性体積格子はまた、格子が2つの電極の間に配置され、液晶の配向が電界によって変化されることによって、切り替え可能として設計することができる。以後オンと呼ばれる第1のスイッチング状態では、これらの格子が直線偏光、典型的にはp偏光の光、に対する偏向効果を有するが、それに対して90°回転された直線偏光、典型的にはs偏光、に対する非偏向効果を有する。以後OFFと呼ばれる第2のスイッチング状態では、これらの格子はs偏光またはp偏光に対して影響を及ぼさない。特定のタイプの切り替え可能な偏光選択性体積格子は、文献において「切り替え可能なブラッグ格子(SBG)」とも呼ばれることがある。この文書では、PSVGという名称もこの目的のために使用される。単一の回折次数において高い回折効率を有することができる格子のさらなるタイプは、偏光格子(PG)である。従来の偏光格子は、格子の設計に依存して、例えば、左円偏光を+1回折次数で偏向させ、右円偏光を-1回折次数で偏向させ、またはその逆に偏向させる。体積格子とは対照的に、従来の偏光格子は、様々な波長に対して広角の受光および高い効率を有する。
【0278】
しかしながら、小さい格子周期を有する特別なタイプの偏光格子は、それらが規定された円偏光の光のみを偏向させるが、反対の回転方向を有する円偏光の光を偏向させずに透過させるという特性を有する。偏光選択性体積格子(PSVG)および従来の偏光格子(PG)と区別するために、以下、それらをブラッグ偏光格子(B-PG)と呼ぶ。これらの格子については、以下でより詳細に説明する。
【0279】
追加の偏光要素を有する光デカップリングデバイスの1つの構成では、ワイヤグリッド偏光子(WGP)が光ガイドの内側または外側クラッド層上に提供される。ワイヤグリッド偏光子もフィルムとして入手可能であり、例えば、湾曲した光ガイドのクラッド層のような湾曲した表面上に積層することもできる。回折格子要素は、ワイヤグリッド偏光子の外面上に設けられるか、または適用される。ワイヤグリッド偏光子は第1の直線偏光の光を反射し、それに垂直な第2の直線偏光の光を透過する特性を有する。したがって、第1の偏光の光は光ガイドのクラッド層上のワイヤグリッド偏光子から反射され、その後、光ガイド内をさらに伝播し、したがって、回折格子要素に全く到達しない。それに垂直な第2の直線偏光の光はワイヤグリッド偏光子を通過し、少なくとも1つの回折格子要素、例えば、3つの体積格子で作られた回折格子要素スタック、に入射し、その回折格子要素スタックが提供される場合、回折格子要素または複数の回折格子要素のうちの1つから偏向され、光ガイドからデカップリングされうる。
【0280】
既に述べたように、受動回折格子要素と組み合わせて使用するための切り替え可能または制御可能な回折格子要素または偏光スイッチは、個々のセクションがそれぞれ別個の電極を有するように、セクションに分割することができ、それを使用して、電界を印加することによってセクション内で偏光の切り替えを実行することができる。「セクション」という用語はまた、本発明による粗い構造を含むものとする。例えば、切り替え可能な又は制御可能な回折格子要素又はスイッチ要素、例えば、偏光スイッチ、は、3つ又は4つの粗いセクションにのみ分割することができ、各セクションは個々の電極を有し、数ミリメートル幅、例えば、5mm~10mmである。しかしながら、例えば幅0.5mmの帯状セクションなどの複数の小さなセクションに細かく分割することも可能である。
【0281】
切り替え可能または制御可能な回折格子要素または切り替え要素のセクションへの分割は、SLMの単一のイメージまたはセグメントから構成される多重イメージのいずれかが導光デバイスによって生成されるディスプレイデバイスにおいて、以下のように提供または使用され得る:
【0282】
ディスプレイデバイスの一実施形態では、デカップリングまでの光ガイド内の光の反射の回数は、切り替え可能な又は制御可能な回折格子要素の特定のセクションをオン及びオフに切り替えることによって、すなわち少なくとも1つのスイッチ要素によって、設定される。この目的のために、特定のセクションが1つの駆動状態に設定され、他のセクションが別の駆動状態に設定されることで、光ガイド内の光の反射の回数を変更させるか、変化させるか、または規定することも提供され得る。
【0283】
ディスプレイデバイスの別の実施形態では、光ガイドの境界面における光の固定された回数の反射についても、光のデカップリング位置は、切り替え可能な又は制御可能な回折格子要素の特定のセクションをオン及びオフに切り替えることによって、すなわち少なくとも1つのスイッチ要素によって、又はセクションの各種駆動状態によって、微細なステップで変更される。これは、例えば、SLMの多重イメージの単一のセグメントの位置を細かいステップで変位させるために使用することができる。これは、例えば、観察者の注視方向の中心に多重イメージの特定のセグメントを位置決めするために、注視追跡と組み合わせて使用することができる。
【0284】
図21は、光ガイドLGと光デカップリングデバイスとを有する導光デバイスを概略的に示し、偏光スイッチPSは、光デカップリングデバイスの一方の側に設けられる。偏光スイッチPS自体は例えば、電極間の液晶層から構成することができ、この液晶層に電界を印加することができる。この場合、左円偏光CLは最初に光ガイドLG内を伝播し、そこで、明らかであるが、左円偏光CLは図21の左側の光ガイドLGにカップリングされ、光ガイドLG内での全反射を介して右側に伝播する。図21からさらに分かるように、偏光スイッチPSは2つのセクションに分割され、以下、簡単のためにそれらをそれぞれ左セクションおよび右セクションと呼ぶ。図21の左側に対応する左セクションでは、偏光スイッチPSが入射光の偏光を変化させないように制御される。この左セクションはOFF状態にある。右セクションでは、偏光スイッチが入射する左円偏光CLの偏光を変化させるように制御され、その結果、偏光スイッチPSのこの右セクションを光が通過した後に、右円偏光CRが提供される。偏光スイッチPSの右側はオン状態である。
【0285】
光ガイドLGの外側に、すなわち偏光スイッチPSの後に、体積格子特性を有する偏光回折格子要素したがってブラッグ偏光格子B-PGが配置される。このブラッグ偏光格子B-PGは、ブラッグ偏光格子B-PGの格子周期によって規定される角度だけ右円偏光CRを偏向させるが、左円偏光CLを偏向させないという特性を有する。例えばプラスチックで作られた追加のキャリア基板は、偏光スイッチPSとブラッグ偏光格子B-PGとの間、またブラッグ偏光格子B-PGと導光デバイスの外面との間に設けることができる。このようなキャリア基板は図21に示されているが、必須ではない。
【0286】
導光デバイスの動作において、偏光スイッチPSの左部分を通過する左円偏光CLは次に、ブラッグ偏光格子B-PGに入射し、偏向されずにそれを通過し、全反射TIRが生じるように導光デバイスの光ガイドLGの境界面に入射する。その後、光は光ガイドLG内をさらに伝搬する。偏光スイッチPSの右セクションを通過する右円偏光CRはブラッグ偏光格子B-PGに入射し、このブラッグ偏光格子B-PGによって偏向され、したがって光ガイドLGと周囲媒体空気との境界面に垂直に入射し、光ガイドLGから脱カップリングされる。既述の通り、光ガイドLG内の複数の波長の光を光ガイドから同角にデカップリングするために、ブラッグ偏光格子B-PGの後に補正回折格子要素を設けることができる。
【0287】
図22は、光デカップリングデバイス内にワイヤグリッド偏光子WGPを備える光ガイドデバイスを概略的に示す。直線s偏光Sは、ここでは導光デバイスの光ガイドLG内を伝播する。提供される偏光スイッチPSは、ここでも、右セクションと左セクションとの2つのセクションに分割される。偏光スイッチPSの左セクションの駆動状態またはスイッチオン状態では、入射s偏光Sをp偏光Pに変化させる。オフ状態にある偏光スイッチPSの右セクションに見られるように、入射s偏光Sはこのセクションを変化がないまま通過し、その結果、その後、s偏光Sは依然として存在する。その後、s偏光Sは、ワイヤグリッド偏光子WGPに入射する。ワイヤグリッド偏光子WGPはs偏光Sを反射し、次いで、s偏光Sは矢印によって示されるように、光ガイドLG内をさらに伝播する。これに対して、偏光スイッチPSの左セクションで変換されたp偏光Pはワイヤグリッド偏光子WGPを通過し、1/4波長板QWPに入射する。四分の一波長プレートQWPは入射p偏光Pを右円偏光CRに変換し、右円偏光CRは、次いでブラッグ偏光格子B-PGに入射する。右円偏光CRはこのブラッグ偏光格子B-PGによって偏向された後、光ガイドLGの周囲媒体空気との境界面に垂直に入射し、光ガイドLGから脱カップリングされる。このように構成された光ガイドデバイスの利点は、偏光スイッチPSおよび四分の一波長プレートQWPの不完全な挙動を補償することができることである。
【0288】
偏光スイッチPSによって、100%未満の光がs偏光からp偏光に変化する場合、この光は、したがって、ワイヤグリッド偏光子WPGで反射される。四分の一波長プレートQWPによって100%未満の光が円偏光に変化すると、この光は境界面で全反射によって反射され、光ガイドLG内をさらに伝播する。したがって、誤った偏光を有する干渉光が不注意に光ガイドLGからデカップリングされることが防止される。
【0289】
この導光デバイスは原色RGBの他の波長のための補正回折格子要素と組み合わせて使用することもでき、その結果、様々な波長の光が等しい角度で光ガイドから脱カップリングされる。
【0290】
図23に、図22の導光デバイスと同様に、光デカップリングデバイス内にワイヤグリッド偏光子WGPを含む導光デバイスが概略的に示されている。ブラッグ偏光格子B-PGの代わりに、導光デバイスの光デカップリングデバイスは、ここでは体積格子VGを含む。ここでは、四分の一波長プレートは設けられていない。光ガイドLG及び光デカップリングデバイスを通る光の通過は図22と同様に行われる。明らかなように、偏光スイッチPSの一部がオフ状態にある場合、s偏光Sは、ワイヤグリッド偏光子WGPで既に反射されている。偏光スイッチPSの一部がオン状態である場合、入射したs偏光Sはp偏光Pに変換され、ワイヤグリッド偏光子WGPを通過し、体積格子VGに入射する。この例示的な実施形態では、体積格子VG自体が偏光選択性として設計されていない。これは、例えば、従来のフォトポリマ材料で作られた体積格子とすることができる。p偏光Pは体積格子VPによって偏向された後、光ガイドLGの周囲媒体空気との境界面に垂直に入射し、光ガイドLGから脱カップリングされる。
【0291】
光デカップリングデバイスを有する導光デバイスが図24に概略的に示されており、これは、体積格子VGが反射性として設計されている点のみが図23と異なる。偏光スイッチPSのOFF状態では、入射したs偏光Sはワイヤグリッド偏光子WGPで反射され、光ガイドLGをさらに伝播する。しかしながら、偏光スイッチPSのセクションがON状態である場合、入射したs偏光は偏光スイッチPSによってp偏光Pに変換され、ワイヤグリッド偏光子WGPを通過し、反射型体積格子VGに入射する。p偏光Pは、体積格子VGによって偏向され、反射される。反射されたp偏光Pは光デカップリングデバイスおよび光ガイドLGを再び垂直に通過し、反対側で光ガイドLGから脱カップリングされる。
【0292】
図25には導光デバイスが概略的に示されており、この導光デバイスでは光デカップリングデバイスが例えば液晶に基づく切替可能な偏光選択性体積格子PSVGを含む。切り替え可能な偏光選択性体積格子PSVGがある駆動状態またはオフ状態にある場合、切り替え可能な偏光選択性体積格子PSVGに入射するs偏光Sおよびp偏光Pの両方は偏向されず、むしろ全反射によって光ガイドLGの境界面で反射され、次いで、左端の矢印によって示されるように、光ガイドLG内をさらに伝播する。しかしながら、切り替え可能な偏光選択性体積格子PSVGが別の駆動状態またはオン状態にある場合、p偏光Pは光ガイドLGから脱カップリングされる。しかしながら、s偏光Sは光ガイドLGの境界面で反射され、光ガイドLG内をさらに伝播する。体積格子自体は切り替え可能または制御可能であり、ここで、切り替え可能な偏光選択性体積格子PSVGは図25においてより良く理解するために2つのセクションに分割される。
【0293】
これにより、光路に関連して、切り替え可能な偏光選択性体積格子PSVGを制御する能力をより良く説明することができる。同様に、直線偏光の代わりに円偏光のみを用いて、このような導光デバイスは、切り替え可能なブラッグ偏光格子を用いて実施することもできる。
【0294】
導光デバイスが図26に概略的に示されており、その光デカップリングデバイスは、全ての波長の光を異なる角度で偏向するブラッグ偏光格子B-PGと、複数の体積格子VGとを含む。複数の体積格子VGは、この例示的な実施形態では、4つの体積格子VG1、VG2、VG3、およびVG4を有する体積格子スタックを形成する。赤色波長Rの光、緑色波長Gの光、および青色波長Bの光は、ブラッグ偏光格子B-PGに同じ角度で入射する。緑色波長Gの光はこの場合、光ガイドLGの表面又は境界面に対して垂直にブラッグ偏光格子B-PGから出るように偏向される。赤色波長Rの光及び青色波長Bの光は図26の破線及び実線の矢印に基づいて分かるように、ブラッグ偏光格子B-PGから異なる角度で出る。
【0295】
ブラッグ偏光格子B-PGの後には、4つの体積格子VG1、VG2、VG3、およびVG4を有する体積格子スタックが続く。体積格子スタックのこれらの体積格子VG1、VG2、VG3、およびVG4は、波長選択性として設計される。この例示的な実施形態では、これは、緑色波長の光Gが4つの体積格子VG1、VG2、VG3、およびVG4のすべてを偏向されずに通過し、次に光ガイドLGから脱カップリングされることを意味する。赤色波長の光Rは偏向されずに最初の2つの体積格子VG1およびVG2を通過し、最後の2つの体積格子VG3およびVG4によってのみ偏向され、その結果、緑色波長の光Gと同じ角度で光ガイドLGから出射する。青色波長の光Bは最初の2つの体積格子VG1およびVG2によってのみ偏向され、最後の2つの体積格子VG3およびVG4を偏向されずに通過し、体積格子VG1およびVG2は緑色波長の光Gまたは赤色波長の光と同じ角度で光ガイドLGから出射するように青色波長の光を偏向する。
【0296】
光ガイドからの、青色波長用の光および赤色波長用の光の出射角を補正するために、それぞれの場合で、1対の体積格子が使用される。これは、体積格子のより大きな偏向角に対して、良好な波長選択性をより容易に設定することができるからである。例えば、青色波長の光Bは、最初に、体積格子VG2が青色波長の光を偏向させる前に、体積格子VG1によってより大きな角度で偏向される。その結果、その光はそこから、光ガイドLGの表面又は境界面に対して垂直に出射する。
【0297】
以下の説明は、SLMのフーリエ面又は照明デバイスの光源面又はSLMのイメージ面のいずれかに回折要素を有するディスプレイデバイスにおけるイメージングビーム経路及び照明ビーム経路の別個の影響に関する。
【0298】
ホログラフィックディスプレイデバイス又は別の好ましくは3次元ディスプレイデバイス、例えば立体ディスプレイデバイスでは、少なくとも1つの回折光学要素は、照明ビーム経路のみ又はイメージングビーム経路のみに本質的に影響を及ぼすように使用される。この少なくとも1つの回折光学要素はまた、本発明の上記説明において、可変イメージングシステムと呼ばれた。ここでは、主として、照明ビーム経路およびイメージングビーム経路の影響に関連すると考えられるので、以下では「回折光学要素」という呼称を使用する。
【0299】
照明ビーム経路のみまたはイメージングビーム経路のみの影響は、少なくとも1つの回折光学要素が照明ビーム経路のみに影響を及ぼすように、SLMのイメージ面内またはイメージ面に近接して配置されることによって達成される。その代わりに、少なくとも1つの回折光学要素はイメージングビーム経路のみに影響を及ぼすように、SLMのフーリエ面内又はその近くに配置することができる。図12および図13では、例えば、可変イメージングシステム30として識別される少なくとも1つの回折要素が照明デバイスの光源面内に配置され、その結果、それはイメージングビーム経路のみに影響を及ぼす。これに代えて又はこれに加えて、例えば、SLMの面内に配置された図12及び図13にも示す第1イメージング要素27は、照明ビーム経路にのみ影響を及ぼす少なくとも1つの回折要素を有することができる。
【0300】
照明デバイスの少なくとも1つの光源の光源イメージが観察者平面内に存在する3次元ディスプレイデバイスでは、SLMのフーリエ面内又はその近傍の回折光学要素は、イメージングビーム経路に影響を及ぼし、従って、観察者領域、特に仮想観察者ウィンドウの位置及び寸法を変更することなくSLMのイメージ面に影響を及ぼす。しかしながら、SLMのイメージ面内またはその近傍の回折光学要素は、SLMのイメージ距離に影響を及ぼすことなく、観察者領域の位置および寸法に影響を及ぼす。SLMのイメージが観察者平面内で生成される、またはその逆の三次元ディスプレイデバイスでは、SLMのイメージ面内またはその近傍の回折光学要素は、観察者領域の位置および寸法を変更することなく、例えば、国際公開第2016/156287 A1パンフレットの意味で虚像面として選択されうる、ホログラム計算のための基準平面の位置に影響を及ぼす。国際公開第2016/156287 A1パンフレットの内容は、その全体がここに組み込まれる。SLMのフーリエ面内またはその近傍の回折光学要素は、基準平面の距離に影響を及ぼすことなく、観察者領域の位置および寸法に影響を及ぼす。
【0301】
以下、具体的な構成についてより詳細に説明する:特に、観察者平面内に光源イメージを生成するディスプレイデバイスの1つの構成では、観察者領域の中間イメージまたは光源の中間イメージをSLMのフーリエ面内に生成し、少なくとも1つの回折光学要素がこの中間イメージ面内またはその非常に近くに配置されて、イメージングビーム経路にのみ影響を与え、観察者領域の位置を変更しないままにする二段階システムが使用される。光ガイドを有するこのような構成は図12に示される。この場合、少なくとも1つの回折要素又は可変イメージングシステム30は、照明デバイスの中間イメージ面に配置される。一般に、少なくとも1つの回折要素を有するこのような構成は、光ガイドを有さないデバイスにも使用することができる。
【0302】
特に、観察者平面内に光源イメージを生成するディスプレイデバイスにおいて、SLMのフーリエ面内にある少なくとも1つの回折光学要素は、SLMのイメージ面の位置に影響を及ぼすレンズ機能を有することができる。
【0303】
観察者平面内に光源イメージを生成するディスプレイデバイスでは、SLMのイメージ面の位置は好ましくはSLMのフーリエ面内の少なくとも1つの回折光学要素によって適合させることができ、その結果、好ましくは3次元シーンの演算のためのサブホログラムの平均サイズは、回折光学要素を使用しないディスプレイデバイスと比較して低減される。
【0304】
SLMのフーリエ面内の少なくとも1つの回折光学要素は、イメージングビーム経路内の収差を補正するように設計することができる。少なくとも1つの回折光学要素は、制御可能なものとして設計することができる。さらに、回折光学要素は、液晶格子(LCG)として設計することができる。さらに、水平円柱レンズ関数を1つの回折光学要素に書き込み、垂直円柱レンズ関数を他の回折光学要素に書き込む2つの回折光学要素を用いることもできる
【0305】
観察者平面内に光源イメージを生成し、SLMのセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成するディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素は、SLMのフーリエ面内に配置され、それにより、レンズ関数が多重イメージの各セグメントについて少なくとも1つの回折光学要素に書き込まれ、それにより、SLMのイメージ面が、すべてのセグメントについて観察者から同様のまたは等しい距離で生成される。
【0306】
観察者平面に光源イメージを生成し、SLMのセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成し、SLMの多重イメージの個々のセグメントを生成するために光ガイド内での異なる回数の反射を有する光ガイドを備えるディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素は、様々なセグメントについての光ガイド内での光の異なる光路を等しくし、観察者から同様のまたは等しい距離にあるすべてのセグメントのSLMのイメージ面を生成するために、SLMのフーリエ面内に配置されうる。
【0307】
観察者平面内に光源イメージを生成し、SLMのセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成し、SLMの多重イメージの個々のセグメントを生成するために光ガイド内での異なる回数の反射を有する光ガイドを備え、光ガイドに光をカップリングおよび/または光ガイドから光をデカップリングするための少なくとも1つの回折格子要素とを備えるディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素は少なくとも1つの回折格子要素によって生成されるイメージングビーム経路内の収差を補正するために、SLMのフーリエ面内に配置することができる。
【0308】
観察者平面内に光源イメージを生成し、SLMのセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成し、SLMの多重イメージの個々のセグメントを生成するために光ガイド内での異なる回数の反射を有する光ガイドを備え、光ガイドに光をカップリングおよび/または光ガイドから光をデカップリングするための少なくとも1つの回折格子要素とを備えるディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素は少なくとも1つの回折格子要素によって生成される照明ビーム経路内の収差を補正するために、SLMのイメージ面内に配置することができる。
【0309】
観察者平面に光源イメージを生成し、SLMのセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成し、SLMの多重イメージの個々のセグメントを生成するために光ガイド内での異なる回数の反射を有する光ガイドを備えるディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素は、SLMの多重イメージの様々なセグメントについての光ガイド内での光の異なる光路を等しくし、すべてのセグメントについて同一の位置に観察者領域を生成するために、SLMのイメージ面内に配置することができる。このディスプレイデバイスの構成についても以下に説明する:
【0310】
湾曲した光ガイドが、観察者領域の中心を円の中心点として有する円弧のセクションを形成し、そのような光ガイドについて、光ガイドにおける異なる回数の反射の後の光ガイドからの光のデカップリングが続く場合、SLMのイメージ面における回折光学要素の使用のために、観察者領域は、同じ位置におけるSLMの多重イメージの全てのセグメントに対して既に生じているから有利であり、その結果、この点に関する追加の補正は必要ではない。しかしながら、これは、使用可能な光ガイドの幾何学的形状を制限する。
【0311】
したがって、SLMのイメージ面内に少なくとも1つの回折光学要素を有する記載された実施形態は、他の光ガイド、例えば、曲率が円弧のセクションから逸脱する平坦または平面の光ガイドまたは湾曲した光ガイドを使用することも可能にし、それにもかかわらず、観察者領域を、複数のセグメントに対して同じ位置に生成することができる。
【0312】
観察者平面内に光源イメージを生成するディスプレイデバイスにおいて、観察者の目の焦点距離は、注視追跡によって、ホログラフィック又は立体システム内で検出することができる。SLMのイメージ面の位置は、SLMのフーリエ面内の少なくとも1つの制御可能な回折光学要素を使用して変更することができ、その結果、SLMのイメージ面は、注視追跡によって検出された距離と同様の又は等しい観察者からの距離に位置する。
【0313】
しかしながら、本発明は、ここに図示し説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、ここに記載される例示的な実施形態又は実施形態は、観察者平面内でSLMのイメージを生成するディスプレイデバイスにもそれに応じて転用可能である。
【0314】
以下の実施形態は一例として簡単に説明される:観察者平面内にSLMのイメージを生成し、SLMのフーリエ面内に回折次数のセグメント化された多重イメージを生成することで大きな視野を生成するディスプレイデバイスにおいて、少なくとも1つの制御可能な回折光学要素はSLMのイメージ面内に配置可能であり、その結果、観察者から同様の又は等しい距離にある全てのセグメントについてのホログラム計算のための基準平面としてSLMのフーリエ面が生成されるように、レンズ関数が、各セグメントについての少なくとも1つの回折光学要素に書き込まれる。
【0315】
偏光選択性ブラッグ回折格子要素またはブラッグ偏光格子もまた、以下で一般的に論じられるべきであり、これは、光ガイドから光を脱カップリングするために、導光デバイスの光デカップリングデバイスにおいて有利に使用され得る。この導光デバイスは、ヘッドマウントディスプレイに有利に使用することができる。
【0316】
ブラッグ偏光格子はバルク光配向法によって製造することができ、これは、配向層の各パターン表面の分子配向の独立性を保証し、傾斜した干渉パターンの形成を可能にする。この目的のためには、適切な角度φだけパターンを回転させるだけでよい。この場合、このような傾斜ホログラフィ偏光露光は、追加の化学添加剤(キラルLC添加剤)または配向層を使用することなく、LCポリマの複雑な3D配向をもたらすことができると仮定される。LCディレクタは、平面内の干渉パターンに対して垂直に配置されることが有利である。これは、効率的な局所複屈折が干渉パターンの傾きに依存しないことを意味する。これは、光架橋LCポリマの利点である。
【0317】
右円偏光ビームがブラッグ偏光格子に入射すると、-1回折次数で回折が生じ、そこではブラッグ偏光格子が入射した右円偏光を左円偏光に変換することをシミュレーションによって確立することができた。約98%の回折効率は、この場合、この-1回折次数で生じる。他の回折次数、第ゼロ回折次数、および+1回折次数は、無視できるほどの回折強度を有する。対照的に、ブラッグ偏光回折格子に入射する左円偏光を用いると、回折は-1回折次数及び+1回折次数ではほとんど発生せず、むしろ、光の大部分は、約93%の回折効率が存在する第ゼロ回折次数である。左円偏光は偏向せずに通過し、ブラッグ偏光格子を通って別の偏光状態に変換される。
【0318】
ブラッグ偏光格子はその薄い厚さのために、広いスペクトル受容性および広い角度受容性を有する。例えば、λ=532nmの波長を有する垂直光入射に対して最適化されたブラッグ偏光格子のスペクトル受容度及び角度受容度は、488nm、532nm及び633nmの波長を有する右円偏光レーザビームを用いて測定され、対応する結果が達成された。このとき、緑色波長の1次回折で(η±1)>90%程度の回折効率を有するブラッグ偏光格子は、赤色波長と青色波長でほぼ同じ回折効率を有していた。これは、この回折格子要素を可視スペクトル範囲全体に使用できるという利点を有する。
【0319】
ブラッグ偏光格子の角度受容度は約35°である。
【0320】
このようなブラッグ偏光格子は薄膜の高い光学品質、高い回折効率、および広いまたは広範な角度受容度および大きなスペクトル受容度など、その独特の特性のために、広い応用分野で使用することができる。例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)や、AR(augmented reality)アプリケーションやVR(virtual reality)アプリケーション用のデバイスにも有利に用いることができる。これらの回折格子要素は、偏光スイッチと組み合わせて、コヒーレント光の非常に効率的なビーム偏向を可能にする。ブラッグ偏光回折格子の偏向角、すなわち、2つの「作動」回折次数、すなわち第ゼロ次回折次数と第1次回折次数と、の間の角度は、シミュレーションにおいて、532nmの波長を使用した空気中における42°で達成された。スイッチングコントラスト、すなわち、反対の円偏光を有する回折効率の比は、約100とすることができる。ブラッグ偏光格子の特定の偏光および回折特性は、複数のそのような回折格子要素を1つのスタックに組み合わせる選択肢を提供する。例えば、回折格子要素スタックは、緑色光の垂直光入射のために設計された2つのそのような回折格子要素を含むことができる。動作中、そのような回折格子要素スタックは、光、右円偏光、または左円偏光の偏光状態に応じて、+1回折次数または-1回折次数のいずれかで入射光ビームを偏向させる。回折格子要素スタックの2つの回折格子要素はΛ=0.77μmの同じ周期および同じ傾斜角度を有するが、反対の傾斜の干渉パターンを有する。回転角度φは、ホログラフィック露光によって+28°または-28°のいずれかに保つことができる。ホログラフィック露光及び焼戻しの後、回折格子要素は、UV硬化接着剤を用いて互いに固定される。
【0321】
回折格子要素スタックに入射する右円偏光ビームはその-1回折次数で第1回折格子要素によって回折され、第2回折格子要素のブラッグ角からの大きな角度のずれのために、回折されることなく第2回折格子要素を通過する。回折格子要素スタックに入射する左円偏光ビームは、第1回折格子要素によって回折されるのではなく、むしろ+1の回折次数で第2回折格子要素によって回折される。回折次数±1における回折格子要素スタックの回折効率は約85%である。そのような回折格子要素スタックは532nmの波長で±42°の回折角を提供することができ、その結果、空気中で84°の全偏向角が得られる。そのような有効で、大きく、対称的な1ステップ偏光依存光偏向は、単一のブラッグ偏光格子を使用して達成することができない。
【0322】
特に、本発明による導光デバイスまたはディスプレイデバイスにおいて、そのような回折格子要素スタック、または単一のブラッグ偏光格子のみを有利に使用することができる。
【0323】
さらに、実施形態および/または例示的な実施形態の組み合わせが可能である。最後に、上述の例示的な実施形態は特許請求される教示を説明するためにのみ使用されるが、この教示を例示的な実施形態に限定しないことにも、特に留意されたい。
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