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特許7162973ネリドロン酸ナトリウムの多形Fの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】ネリドロン酸ナトリウムの多形Fの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20221024BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 3/14 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C07F9/38 E
A61K31/663
A61P3/14
A61P5/18
A61P7/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P19/10
A61P21/00
A61P25/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021572271
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 IB2020055304
(87)【国際公開番号】W WO2020245780
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】102019000008391
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505117559
【氏名又は名称】アビオジェン ファルマ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ネッジャーニ ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャッフレーダ ステファノ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ファッブローニ セレーナ
(72)【発明者】
【氏名】キアルッチ ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ポリーティ バルバラ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/004000(WO,A1)
【文献】特開平04-342596(JP,A)
【文献】特許第7042359(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形態半水和物Fのネリドロン酸ナトリウムの製造方法であって、次の工程を含む方法:
a)6-アミノヘキサン酸を亜リン酸およびメタンスルホン酸の混合物と、撹拌下、透明な溶液が得られるまで60~80℃の範囲の温度で反応させること;
b)工程(a)の前記溶液に、撹拌下、60~80℃の範囲の温度で三塩化リンを添加すること;
c)前の工程(b)から得られた反応混合物を水で希釈し、前記水希釈混合物を80~120℃の範囲の温度で加熱すること;
d)工程(c)で得られた加熱混合物を室温まで冷却し、それを水で希釈し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を4.2~4.6の範囲のpHまでゆっくり添加して、中和溶液を得ること;
e)工程(d)の中和溶液を約70℃の温度にし、次いで、工程(d)の中和溶液の初期体積の少なくとも70%が蒸発するまで、70~140℃の範囲の温度に上昇させ、かくして懸濁液を得て、この懸濁液を少なくとも1時間撹拌下に保つこと;
f)工程(e)の懸濁液を約5~25℃の範囲の温度まで冷却すること;および
g)前の工程(f)の懸濁液を濾過することによって半水和物形態Fの結晶性ネリドロン酸ナトリウムを回収すること。
【請求項2】
工程(a)において、6-アミノヘキサン酸を、6-アミノヘキサン酸1g当たり2~4mLの範囲の体積のメタンスルホン酸を用いて、亜リン酸とメタンスルホン酸との混合物と反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、6-アミノヘキサン酸を、6-アミノヘキサン酸1g当たり4mLの体積のメタンスルホン酸を用いて、亜リン酸とメタンスルホン酸との混合物と反応させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
三塩化リンを添加する工程(b)において、化学量論的過剰の三塩化リンが使用される請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
三塩化リンを添加する工程(b)において、化学量論的過剰の三塩化リンが、6-アミノヘキサン酸に対して2当量以上で使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
希釈する工程(c)が工程(a)で使用されるメタンスルホン酸の体積より少なくとも5~10倍多い体積の水を添加することによって実施される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
希釈する工程(c)が工程(a)で使用されるメタンスルホン酸の体積より10~20倍多い体積の水を添加することによって実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)の間に、室温まで冷却された混合物を、混合物の最終体積が工程(a)の6-アミノヘキサン酸1グラム当たり10~70mlの範囲となる体積の水を添加することによって希釈する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)の間に、室温まで冷却された混合物を、混合物の最終体積が工程(a)の6-アミノヘキサン酸1グラム当たり30~60mlの範囲となる体積の水を添加することによって希釈する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(d)の希釈水が少なくとも10%の反応器洗浄水からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)において、工程(d)の中和溶液の初期体積の少なくとも70%の蒸発まで、70~140℃の範囲の温度を上昇させる操作が、4℃/h未満の速度で行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(e)において、工程(d)の中和溶液の初期体積の少なくとも70%の蒸発まで、70~140℃の範囲の温度を上昇させる操作が、2℃/h未満の速度で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(e)の蒸発が、約600mmHg以上の圧力で実施される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)の終了時かつ工程(e)の前に、工程(d)の中和溶液を希釈工程に供し、その後、工程(e)で提供される加熱工程に供する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記希釈工程において、添加される水の体積が、前記添加後、前記溶液の最終体積が工程(a)において反応させた6-アミノヘキサン酸1グラム当たり30~70mlの範囲である体積である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記希釈工程において、添加される水の体積が、前記添加後、前記溶液の最終体積が工程(a)において反応させた6-アミノヘキサン酸1グラム当たり40~60mlの範囲である体積である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネリドロン酸ナトリウムの結晶多形の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネリドロン酸ナトリウムはネリドロン酸のナトリウム塩で、IUPAC名は6-アミノ-1-ヒドロキシ-1,1-ヘキサンジホスホン酸である。
【0003】
ネリドロン酸ナトリウムは、以下の構造式で表される。
【化1】
【0004】
ネリドロン酸は、ビスホスホネート、特にアミノビスホスホネートのグループに属する。
【0005】
ビスホスホン酸、特にアミノビスホスホン酸、およびその薬学的に許容される塩は、筋骨格系およびカルシウム代謝の種々の病理の治療に有用な薬物の重要なクラスである。
【0006】
ビスホスホネートの治療特性は特に、これらの分子が結合してそれらの再吸収を妨げる、骨の主成分であるヒドロキシアパタイト結晶に対するそれらの高い親和性に依存する。
【0007】
したがって、ビスフォスフォネートは、骨粗鬆症(osteoporosis)、副甲状腺機能亢進症(hyperparathyroidism)、悪性腫瘍による高カルシウム血症(hypercalcemia of malignancy)、溶骨性骨転移(osteolytic bone metastases)、進行性骨化性筋炎(myositis ossificans progressiva)、汎発性石灰沈着症(universal calcinosis)、関節炎(arthritis)、神経炎(neuritis)、滑液包炎(bursitis)、腱炎(tendinitis)、ページェット病(Paget's disease)、骨形成不全症(osteogenesis imperfecta)、複合性局所疼痛症候群(CRPS)(Complex Regional Pain Syndrome (CRPS))または疼痛性ジストロフィー(algodystrophy)、およびその他の炎症性疾患などの疾患を治療するために、臨床現場で広く使用されている。
【0008】
ネリドロン酸ナトリウムは、特に筋肉内または静脈内投与用の注射剤として、骨形成不全症、骨ページェット病および疼痛性ジストロフィーの治療に数年にわたって成功裏に使用されている。
【0009】
前記薬物のコンプライアンスを改善し、それにより患者によるそれらの摂取を促すために、経口的に投与される固体形態を有することが望ましい。
【0010】
経口投与のための固体医薬形態を製造する可能性は一般的に、固体状態での安定性の適切な特徴を有する活性医薬成分の利用可能性に関連する。
【0011】
この理由のために、経口投与される固体形態のネリドロン酸ナトリウムに基づく医薬製剤を製造する可能性は、長期的に安定な固体形態の活性成分のネリドロン酸ナトリウムの入手可能性に密接に関連する。
【0012】
同じ出願人により出願された、今日まで未だ秘密である欧州特許出願EP18166508.4は、経口固体形態の製造のために使用され得る、形態Fと呼ばれる、ネリドロン酸ナトリウムの多形安定形態の獲得を導く合成および精製方法を初めて記載している。
【0013】
活性成分のネリドロン酸ナトリウムの前記多形体Fは以前に利用可能であった任意の他の多形体形態に関して、驚くほど長期的に安定であることが証明されている半水和物結晶形態であり、したがって、コンプライアンスの点で患者にはあまり受け入れられていない、従来の形態の筋肉内注射または静脈内注射の代替として使用することができる、活性成分の新しい経口固体形態の製造を可能にする。
【0014】
従って、EP18166508.4に記載された方法は、臨床的に非常に重要なネリドロネートナトリウムの多形半水和物形態Fの製造のための工業的方法の利用可能性に途方もない貢献をした。
【0015】
EP18166508.4に報告されていることによれば、前記方法は、ネリドロン酸ナトリウムの合成工程から出発して実施される場合、以下の工程を含む:
a)6-アミノヘキサン酸を亜リン酸およびメタンスルホン酸の混合物と反応させ、混合物を得ること;
b)工程(a)の前記混合物に、60~80℃の範囲の温度で撹拌しながら、三塩化リンを添加し、得られた混合物を60~70℃の範囲の温度で撹拌しながら少なくとも15時間保持すること;
c)前の工程(b)から得られた反応混合物を水で希釈し、前記水で希釈された混合物を90~120℃の範囲の温度で少なくとも13時間加熱し、加熱混合物を得ること;
d)工程(c)で得られた加熱混合物を75℃未満の温度に冷却し、水酸化ナトリウムを3~5の範囲のpHまでゆっくりと添加して懸濁液を得ること;
e)工程(d)で得られた懸濁液を10~30℃の範囲の温度に冷却し、次いでエタノールをゆっくり添加して、任意の結晶形態のネリドロン酸ナトリウムのナトリウム塩の沈殿を得ること;
f)前の工程(e)で形成された任意の結晶形態のネリドロン酸ナトリウムを回収すること;
g)前の工程(f)のいずれかの結晶形態の固体のネリドロン酸ナトリウムを70~90℃の範囲の温度で水に溶解して、ネリドロン酸ナトリウムの水溶液を得る;
h)工程(g)で得られた水溶液に、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる群より選択される溶媒を、水:溶媒の最終体積比が1:0.5~1:1の範囲になるように添加して、懸濁液を得ること;
i)工程(h)で得られた懸濁液を60~95℃の範囲の温度で機械的に撹拌すること;
l)前の工程(i)で形成された半水和物形態Fの結晶性ネリドロン酸ナトリウムを回収すること。
【0016】
前記工業プロセスは明らかなように、大量の溶媒を必要とする多数の合成および精製工程を含む。
【0017】
したがって、エネルギー消費および化学物質消費の両方に関して、活性成分の工業生産コストおよび環境コストの両方を低減しながら、工程数を低減することを可能にする工業的に最適化されたプロセスを定義することが依然として望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は工業的にスケーラブルで再現性のある新規な方法を提供することであり、この方法は、少ない工程数および低い環境への影響で、多形半水和物形態Fのネリドロン酸ナトリウムを得ることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本特許出願の発明者らは驚くべきことに、以下の工程を含む、ネリドロン酸ナトリウムの半水和物形態Fにおける結晶多形の製造のための最適化された方法を同定した:
a)6-アミノヘキサン酸を亜リン酸およびメタンスルホン酸の混合物と、撹拌下、透明な溶液が得られるまで60~80℃の範囲の温度で反応させること;
b)工程(a)の前記溶液に、撹拌下、60~80℃の範囲の温度で三塩化リンを添加すること;
c)前の工程(b)から得られた反応混合物を水で希釈し、前記水希釈混合物を80~120℃の範囲の温度で加熱すること;
d)工程(c)で得られた加熱混合物を室温まで冷却し、それを水で希釈し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を4.2~4.6の範囲のpHまでゆっくり添加して、中和溶液を得ること;
e)工程(d)の中和溶液を約70℃の温度にし、次いで、工程(d)の中和溶液の初期体積の少なくとも70%が蒸発するまで、70~140℃の範囲の温度に上昇させ、かくして懸濁液を得て、この懸濁液を少なくとも1時間撹拌下に保つこと;
f)工程(e)の懸濁液を約5~25℃の範囲の温度まで冷却すること;および
g)前の工程(f)の懸濁液を濾過することによって半水和物形態Fの結晶性ネリドロン酸ナトリウムを回収すること。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】結晶性多形半水和物形態Fにおけるネリドロン酸ナトリウムのXRPD。
図2】結晶性多形半水和物形態Fにおけるネリドロン酸ナトリウムの赤外スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本特許出願の発明者らは、患者に対して高いコンプライアンスを有する固体経口形態の医薬組成物を製造することが可能である、形態Fと呼ばれるネリドロン酸ナトリウムの結晶性半水和物形態を製造するための新規な方法を同定した。
【0022】
ネリドロン酸ナトリウムの前記半水和物結晶形態Fは、図1で明らかなように、特に、粉末X線回析スペクトル(XRPD)が6.51°、12.02°、16.51°、16.66°、20.80°、22.21°、25.30°、27.65°、30.05°、31.87°の2θ角の特徴的な値でピークを示す、ネリドロン酸ナトリウムの多形体形態である。
【0023】
多形半水和物結晶形態Fの前記ネリドロン酸ナトリウムの結晶は単斜晶系で結晶化し、格子パラメータはa=14.3749(3)Å、b=8.76600(10)Å、c=21.2927(4)Å、α=90°、β=109.339(2)°、γ=90°、V=2531.71(8)Å3であり、空間群はP21/cである。多形半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムは図2に示すように、フーリエ変換(FT-IR)に基づく赤外分光計で得られる典型的な赤外スペクトルによっても特徴付けられる。
【0024】
EP18166508.4に記載されているように、ネリドロン酸ナトリウムの多形半水和物結晶形態Fは、ネリドロン酸ナトリウムの経口固形医薬形態の製造に使用されるのに十分に安定であることが証明されている、今日まで知られている唯一の多形体形態である。
【0025】
従って、工業的に単純で、効果的で、再現性のあるその製造のための方法を開発することが特に重要である。
【0026】
本発明の発明者らは驚くべきことに、EP18166508.4に記載された方法の欠点を克服し、特に、半水和物形態Fのネリドロン酸ナトリウムを得るために必要な工程数の劇的な減少を可能にし、その製造のために使用される時間、エネルギーおよび化学製品の重要な減少を伴う、新規な方法を開発した。
【0027】
前記方法は、以下の工程を含む:
a)6-アミノヘキサン酸を亜リン酸およびメタンスルホン酸の混合物と、撹拌下、透明溶液がえられるまで、60~80℃の範囲の温度で反応させること;
b)工程(a)の前記溶液に、撹拌下、60~80℃の範囲の温度で三塩化リンを添加すること;
c)前の工程(b)から得られた反応混合物を水で希釈し、前記水希釈混合物を80~120℃の範囲の温度で加熱すること;
d)工程(c)で得られた加熱混合物を室温まで冷却し、それを水で希釈し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を4.2~4.6の範囲のpHまでゆっくり添加して、中和溶液を得ること;
e)工程(d)の中和溶液を約70℃の温度にし、次いで、工程(d)の中和溶液の初期体積の少なくとも70%が蒸発するまで、70~140℃の範囲の温度に上昇させ、かくして懸濁液を得て、この懸濁液を少なくとも1時間撹拌下に保つこと;
f)工程(e)の懸濁液を約5~25℃の範囲の温度まで冷却すること;および
g)前の工程(f)の懸濁液を濾過することによって半水和物形態Fの結晶性ネリドロン酸ナトリウムを回収すること。
【0028】
必要に応じて、工程(g)の懸濁液を濾過した後、固体を水/エタノール混合物または純エタノールで洗浄し、続いて、例えば窒素流下で、次いで真空下で、または最新技術の他の方法で乾燥させることができる。
【0029】
本発明の目的のために、室温とは、15~25℃の範囲の温度を意味する。
【0030】
好ましくは、6-アミノヘキサン酸が亜リン酸とメタンスルホン酸との混合物と反応する工程(a)が6-アミノヘキサン酸1g当たり2~4mLの範囲の体積のメタンスルホン酸、好ましくは6-アミノヘキサン酸1g当たり4mLの体積のメタンスルホン酸を用いて行われる。
【0031】
好ましくは、三塩化リンを添加する工程(b)が化学量論的過剰の三塩化リン、好ましくは6-アミノヘキサン酸に対して2当量以上を用いて実施される。
【0032】
好ましくは、希釈する工程(c)が工程(a)で使用されるメタンスルホン酸の体積の少なくとも5~10倍、好ましくは前記体積の10~20倍多い体積の水を添加することによって実施される。
【0033】
好ましくは工程(d)において、工程(c)で得られた加熱混合物が室温まで冷却された後、混合物は水酸化ナトリウム溶液で中和する前の混合物の最終体積が工程(a)で反応させた6-アミノヘキサン酸1グラム当たり10~70ml、好ましくは6-アミノヘキサン酸1グラム当たり30~60mlの範囲になるように、体積の水を添加することによって希釈される。好ましくは、前記希釈水が反応器洗浄水の少なくとも10%からなる。
【0034】
好ましくは工程(e)において、溶液(d)の初期体積の少なくとも70%の蒸発まで、70~140℃の範囲の温度を上昇させる操作は低速、好ましくは4℃/h未満、さらにより好ましくは2℃/h未満で行われる。
【0035】
好ましくは、蒸発工程(e)が約600mmHg以上の圧力値を有する減圧下で実施される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は工程(d)の終わりかつ工程(e)の前に水を添加するさらなる工程を含み、すなわち、工程(d)の中和された溶液は、工程(e)で提供される加熱工程に供される前に希釈工程に供される。さらにより好ましくは前記希釈工程において、添加される水の体積は前記添加後、溶液の最終体積が工程(a)において反応させた6-アミノヘキサン酸1グラム当たり30~70ml、好ましくは6-アミノヘキサン酸1グラム当たり40~60mlの範囲であるようなものである。
【0037】
明らかなように、前記新規な方法は、例えばEP18166508.4に記載された方法と比較して、主な利点として、第1に、F形態のネリドロン酸ナトリウムに変換されるべき、任意の多形体形態の中間固体ネリドロン酸ナトリウムの分離および単離を含む工程の全排除、および第2に、形態Fのネリドロン酸ナトリウムの沈殿を得るための大量の逆溶媒の使用の全排除を有する。
【0038】
本発明の発明者らによって開発された一連の工程により、実際に、上記のように中間蒸発工程(e)を適切に制御することによって達成することができ、形態Fのネリドロン酸ナトリウムを直接得ることができる。
【0039】
結晶形態Fの前記ネリドロン酸ナトリウムは、優れた収率及び純度で得られ、その収率はしばしば90%より高く、従って、非常に単純な方法によって、環境への影響が低減され、工業的に容易に拡張可能である。
【実施例
【0040】
本発明は以下の実施例を参照して記載され、これらの実施例は単なる例示の目的のために提供され、そして本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0041】
実施例1.半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムの製造

20mlのメタンスルホン酸、1当量の亜リン酸、および1当量の6-アミノヘキサン酸(10g)を、アンカー、NaOHブラスト冷却器に接続された蒸気凝縮器、および滴下漏斗を備えたジャケット付き300mL反応器に装填した。混合物を65℃(Tjacket=70℃)に加熱し、完全に溶解するまで撹拌した(75~85rpm)。次いで、2当量の三塩化リンをゆっくりと添加し、滴下漏斗から撹拌しながら、反応混合物を65℃(Tjacket=70℃)に18~24時間加熱した。次いで、50mlの水を反応混合物にゆっくりと添加し、その後、得られた溶液を85~90℃(Tjacket=95℃)に18~24時間加熱し、最後に25℃まで冷却した。次いで、反応混合物を反応器から取り出して室温にし、さらに300mLの水で希釈し、pH値4.4が得られるまで、撹拌下、10%NaOH水溶液を添加した。次いで、70℃に加熱された蒸留装置を備えたジャケット付き反応器に、中和した溶液を移した。減圧下(600 mbar)で水の体積の約75%を留去することにより、温度をTjacket=130℃まで上昇させた。蒸留中に懸濁液が形成され、これをスケールを除去するため高速で数秒間、次いで75~85rpmの速度、Tjacket=125℃(Tinternal=105~110℃)、大気圧で約1時間撹拌した。懸濁液を最後に約15℃の温度に冷却し、次いで紙フィルターを通して真空下で濾過した。フィルター上に残った固体を、水/エタノール(8体積)の1/1混合物、次いで純エタノール(3体積)で洗浄し、最後に真空下で10~15分間取った。まだ湿った生成物の少量を穏やかに粉砕し、XRPDによって分析して結晶の形状を確認した。次いで、湿った固体を40℃および30mbarで少なくとも18時間乾燥して、方法の収率および収集された生成物の結晶形態を決定した。
【0042】
約82%の収率が得られた。
【0043】
XRPD解析は、X'pert PRO PANalytical装置であって、線焦点(管の電圧とアンペア数をそれぞれ40kVと40mAに設定)を有するとともに、1/2°の反散乱スリット、1/2°の発散スリット、5.00mmの受容スリット、0.04radソーラスリット、およびCu-Kalfa1放射線を用いたX'Celerator RTMS検出器を有するX線管を備えた装置で実施した。スキャンは、0.0167°のステップサイズで3~40°の間で実施した。計器の整列はシリコン標準によって定期的にチェックされ、サンプルはガラスサンプルホルダー上に粉末をトップロードすることによって製造された。
【0044】
得られた固形物の回折図は図1に示すように、6.51°、12.02°、16.51°、16.66°、20.80°、22.21°、25.30°、27.65°、30.05°および31.87°に特徴的なピーク2θを示し、本発明の方法により結晶性半水和物形態Fのネリドロン酸ナトリウムを得ることができることが確認された。
【0045】
前記証拠は、Nicolet FT-IR 6700 Thermo Fisher型のフーリエ変換赤外分光計(FT-IR)を用いて得られた、図2に示されるその赤外スペクトルの取得によってさらに確認された。
【0046】
実施例2.半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムの製造

メタンスルホン酸40ml、亜リン酸1当量および6-アミノヘキサン酸1当量(10g)を、アンカーを備えた撹拌シャフト、NaOHブラスト冷却器に接続された蒸気凝縮器および滴下漏斗を備えたジャケット付き300mL反応器に装填した。混合物を65℃(Tjacket=70℃)に加熱し、完全に溶解するまで撹拌した(75~85rpm)。次いで、撹拌下滴下漏斗から、2当量の三塩化リンをゆっくりと添加し、反応混合物を65℃(Tjacket=70℃)に18~24時間加熱した。次いで、約100mlの水を反応混合物にゆっくりと添加し、その後、得られた溶液を85~90℃(Tjacket=95℃)に18~24時間加熱し、最後に25℃に冷却した。次いで、反応混合物を反応器から排出し、室温にし、反応器の洗浄から来る約100mlの水で希釈し、撹拌下、4.2~4.6の範囲のpH値に達するまで30%NaOH水溶液を添加した。中和した溶液を、水で600mLの容量まで希釈し、次いで70℃に加熱された蒸留装置を備えたジャケット付き反応器に移した。水の体積の約75%を留去することにより、温度をTjacket=130℃まで上昇させた。蒸留中、懸濁液が形成され、これをスケールを除去するため高速で数秒間、次いで75~85rpmの速度で約1時間Tjacket=125℃(Tinternal=105~110℃)で撹拌した。懸濁液を最後に約25℃の温度に冷却し、次いで紙フィルターを通して真空下で濾過した。フィルター上に残った固体を、水/エタノール(8体積)の1/1混合物、次いで純エタノール(3体積)で洗浄し、最後に真空下で10~15分間取った。まだ湿った生成物の少量を穏やかに粉砕し、XRPDによって分析して結晶の形状を確認した。次いで、湿った固体を40℃および30mbarで少なくとも18時間乾燥して、方法の収率および収集された生成物の結晶形態を決定した。
約96%の収率が得られた。
【0047】
また、この場合、得られた結晶性固体のXRPDおよび赤外スペクトルの取得により、前記固体が半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムのみからなることが確認された。
【0048】
実施例3.半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムの製造

メタンスルホン酸40ml、亜リン酸1当量および6-アミノヘキサン酸1当量(10g)を、アンカーを備えた撹拌シャフト、NaOHブラスト冷却器に接続された蒸気凝縮器および滴下漏斗を備えたジャケット付き300mL反応器に装填した。混合物を65℃(Tjacket=70℃)に加熱し、完全に溶解するまで撹拌した(75~85rpm)。次いで、撹拌下、滴下漏斗から、4当量の三塩化リンをゆっくりと添加し、反応混合物を65℃(Tjacket=70℃)に18~24時間加熱した。次いで、約100mlの水を反応混合物にゆっくりと添加し、その後、得られた溶液を85~90℃(Tjacket=95℃)に18~24時間加熱し、最後に25℃に冷却した。次いで、反応混合物を反応器から排出し、室温にし、反応器の洗浄から来る約100mlの水で希釈し、撹拌しながら、4.2~4.6の範囲のpH値に達するまで30%NaOH水溶液を添加した。次いで、中和した溶液を水で400mLの容量に希釈し、70℃に加熱された蒸留装置を備えたジャケット付き反応器に移した。水の体積の約75%を留去することにより、温度をTjacket=130℃まで上昇させた。蒸留中、懸濁液が形成され、これをスケールを除去するため高速で数秒間、次いで75~85rpmの速度で約1時間Tjacket=125℃(Tinternal=105~110℃)で撹拌した。懸濁液を最後に約25℃の温度に冷却し、次いで紙フィルターを通して真空下で濾過した。フィルター上に残った固体を、水/エタノール(8体積)の1/1混合物、次いで純エタノール(3体積)で洗浄し、最後に真空下で10~15分間取った。まだ湿った生成物の少量を穏やかに粉砕し、XRPDによって分析して結晶の形状を確認した。次いで、湿った固体を40℃および30mbarで少なくとも18時間乾燥して、方法の収率および収集された生成物の結晶形態を決定した。
【0049】
約92%の収率が得られた。
【0050】
また、この場合、得られた結晶性固体のXRPDおよび赤外スペクトルの取得により、前記固体が半水和物結晶形態Fのネリドロン酸ナトリウムのみからなることが確認された。
【0051】
したがって、実施された実験試験の結果からも明らかなように、本発明の目的は単純で、スケーラブルな方法であり、これは、優れた収率で、半水和物多形体形態Fのネリドロン酸ナトリウムを得ることを可能にし、したがって、前記活性成分の生産のために工業的に使用することに適している。
図1
図2