(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】熱処理設備
(51)【国際特許分類】
C21D 1/00 20060101AFI20221024BHJP
C21D 11/00 20060101ALI20221024BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
C21D1/00 112M
C21D1/00 117
C21D11/00 105
C21D1/00 112L
F27B9/40
(21)【出願番号】P 2021137737
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】藤野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森岡 福次郎
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-337032(JP,A)
【文献】特開平10-046231(JP,A)
【文献】特開平11-264026(JP,A)
【文献】特表平06-501288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00
C21D 11/00
F27B 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、前記の処理装置において熱処理されて搬送室に装入された被処理物を高温状態で保持する保温室と、前記の装入装置から搬送室に装入された被処理物を次の処理装置に装入させる前に待機させる待機室とを備え、前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間と、前記の搬送装置を熱処理された被処理物を抽出させる処理装置に移動させる時間と、前記の処理装置において熱処理された被処理物を前記の搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させると共に、この搬送装置の待機室に装入されている熱処理する前の被処理物を、搬送室を通して前記の処理装置に装入させる入替時間と、保温室に熱処理された被処理物が装入された前記の搬送装置を前記の抽出装置の位置に移動させる時間と、前記の搬送装置の保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して前記の抽出装置に装入させる時間と、熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間との合計時間を搬送サイクル時間とし、前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、それぞれ制御装置により前記の搬送サイクル時間の倍数から前記の入替時間を引いた時間に調整すると共に、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御することを特徴とする熱処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置は、装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行わないようにし、1搬送サイクル時間後に再度判定する一方、重ならない場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行うようにすることを特徴とする熱処理設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱処理設備において、前記の抽出装置によって熱処理された被処理物を冷却させる
ものであって、この抽出装置において熱処理された被処理物を冷却して抽出装置から搬出終了するまでの時間が、前記の搬送サイクル時間よりも短くなっていることを特徴とする熱処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備に関するものである。特に、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させるにあたり、処理時間が異なる各種の被処理物を前記のように熱処理する場合においても、熱処理する前の被処理物を適切なタイミングで搬送装置により処理装置に搬入させて、処理時間が異なる被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理物を熱処理する熱処理設備としては、被処理物を長い連続処理炉内に順々に装入させて、この連続処理炉内において被処理物を順々に移動させ、被処理物に対して加熱、均熱、冷却等の熱処理を連続的に行うようにした連続式の熱処理設備と、独立したバッチ式の処理装置内に被処理物を装入させ、この処理装置内において、前記の被処理物に対して、加熱、均熱、冷却等の熱処理を個別に行うようにしたバッチ式の熱処理設備とが知られている。
【0003】
また、近年においては、特許文献1に示されるように、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備が示されている。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、搬送装置に保温室と待機室を設け、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置に抽出する動作と、搬送装置から被処理物を各搬送装置に装入させる動作とを続けて行なって入替できるようにした熱処理設備が示されている。
【0005】
ここで、前記の熱処理設備において、各処理装置において処理する被処理物の処理時間が同じ場合には、前記の搬送装置から処理物を各処理装置に一定時間の間隔で順々に装入して熱処理し、このように熱処理された被処理物を各処理装置から一定時間の間隔で順々に搬送装置に装入させ、搬送装置に装入された被処理物を前記の抽出装置に順々に抽出させるようにして、被処理物を一定した時間で順々に処理させることができる。
【0006】
しかし、近年では被処理物が多品種におよび、熱処理時間がそれぞれ規則性無く異なったものを連続して生産する必要がでてきている。そのように処理時間が異なる被処理物を前記のように搬送装置から各処理装置に被処理物を順々に搬出させて熱処理し、このように熱処理された被処理物を各処理装置から搬送装置に装入させて、搬送装置に装入された被処理物を抽出装置に抽出させるようにした場合、搬送装置が1台しかないことから、装入装置から搬送装置に装入された被処理物を搬送させて処理装置に装入させる動作時間と、他の処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置により抽出装置に搬送させて、抽出装置に抽出させる動作時間とが重なる場合がある。
【0007】
また、後述する搬送サイクル時間は動作開始から動作完了までに一定の時間が必要なことから、異なる熱処理時間の被処理材を搬送サイクル時間と無関係に処理装置に装入すると、処理装置へ装入する時刻や各処理装置から抽出する時刻が近い場合には、これらの動作時間が重なってしまう。
【0008】
このような場合において、搬送装置に装入された被処理物を搬送させて処理装置に装入させる動作を優先すると、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させるタイミングを遅らせる必要が生じ、被処理物の熱処理時間が予定よりも長くなって製品不良が発生するという問題が生じる一方、処理装置において熱処理された被処理物を搬送させて抽出装置に抽出させる動作を優先させると、装入装置から被処理物を処理装置に装入させるタイミングを遅らせる必要が生じ、処理装置が空いた時間が長くなって、生産性が低下するという問題が生じ、これらが数多く複合されると、装入装置から搬送装置に装入された被処理物を搬送させて各処理装置に装入させるタイミングや、各処理装置において熱処理された被処理物を抽出するタイミングか非常に複雑になり、被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成することが非常に困難になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5669981号公報
【文献】特許第5686918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明は、前記のような熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させるにあたり、処理時間が異なる各種の被処理物を前記のように熱処理する場合においても、熱処理する前の被処理物を適切なタイミングで搬送装置により処理装置に搬入させて、処理時間が異なる被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における熱処理設備においては、前記のような課題を解決するため、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、前記の処理装置において熱処理されて搬送室に装入された被処理物を高温状態で保持する保温室と、前記の装入装置から搬送室に装入された被処理物を次の処理装置に装入させる前に待機させる待機室とを備え、前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間と、前記の搬送装置を熱処理された被処理物を抽出させる処理装置に移動させる時間と、前記の処理装置において熱処理された被処理物を前記の搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させると共に、この搬送装置の待機室に装入されている熱処理する前の被処理物を、搬送室を通して前記の処理装置に装入させる入替時間と、保温室に熱処理された被処理物が装入された前記の搬送装置を前記の抽出装置の位置に移動させる時間と、前記の搬送装置の保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して前記の抽出装置に装入させる時間と、熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間との合計時間を搬送サイクル時間とし、前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、それぞれ制御装置により前記の搬送サイクル時間の倍数から前記の入替時間を引いた時間に調整すると共に、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御するようにした。
【0013】
ここで、前記のように制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理させる時間に基づいて、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように搬送サイクル時間ごとに制御するにあたっては、装入装置から前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行わないようにし、1搬送サイクル時間後に再度判定する一方、重ならない場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行うようにする。
【0014】
また、装入装置から前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合において、前記の処理装置内に熱処理が完了した被処理物が存在している処理装置から熱処理が完了した被処理物を搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させ、この搬送装置により熱処理が完了した被処理物を前記の抽出装置に装入させるようにする。
【0015】
また、前記のように装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行わないようにする方法としては、装入装置から搬送装置に被処理物を装入させないようにする他、装入装置から搬送装置の待機室に被処理物を装入させた状態で、待機室から処理装置に被処理物を装入させないようにすることもできる。
【0016】
このようにすると、各処理装置において処理時間が異なる被処理物を熱処理する場合であっても、被処理物の熱処理が完了した処理装置から熱処理された被処理物を適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物を搬送サイクル時間に対応した適切なタイミングで装入装置から搬送装置を介して処理装置内に装入させて熱処理することができ、処理時間が異なる被処理物についても、各処理装置において効率のよい熱処理の熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、本発明の熱処理装置の制御装置により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートが自動的に作成できるようになる。
【0017】
また、本発明の熱処理設備において、前記のように処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置から抽出装置に装入させた後、この抽出装置において、熱処理された被処理物を冷却(例えば焼入処理)させるものであって、この抽出装置において熱処理された被処理物を冷却して抽出装置から搬出終了するまでの時間は、前記の搬送サイクル時間よりも短くなっており、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置から順々に抽出装置に装入させることができるようになっている。
【発明の効果】
【0018】
本発明における熱処理設備においては、前記のように各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、それぞれ制御装置により前記の搬送サイクル時間の倍数から入替時間を引いた時間に調整すると共に、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないようにして、搬送サイクル時間ごとに制御するようにしたため、各処理装置において処理時間が異なる被処理物を熱処理する場合であっても、被処理物の熱処理が完了した処理装置から熱処理された被処理物を、搬送サイクル時間に対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物を、搬送サイクル時間に対応した適切なタイミングで装入装置から搬送装置を介して処理装置内に装入させて熱処理することができ、処理時間が異なる被処理物についても、各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させ、この搬送装置を熱処理された被処理物を抽出させる処理装置に移動させて、この処理装置において熱処理された被処理物を、搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させると共に、この搬送装置の待機室に装入されている熱処理する前の被処理物を、搬送室を通して前記の処理装置に装入させ、保温室に熱処理された被処理物が装入された搬送装置を抽出装置の位置に移動させ、搬送装置の保温室における熱処理された被処理物を、搬送室を通して抽出装置に装入させた後、搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる工程を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態に係る熱処理設備において、被処理物の熱処理が完了した1つの処理装置に、新たな被処理物を装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、(A)は被処理物の熱処理が完了した処理装置に装入させて熱処理する新たな被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なって搬送がうまくいかない状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートであり、(B)は新たな被処理物を処理装置に装入させるタイミングを抽出時刻が重なる判定により1搬送サイクル時間ずらせるにあたって、搬送装置によって熱処理が完了した被処理物を処理装置から取り出して抽出装置に装入し、1搬送時間の待ち時間を空けてから、抽出時刻が重ならない判定により新たな被処理物を装入装置から取り出して処理装置に装入させる本発明の状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【
図3】前記の実施形態に係る熱処理設備において、被処理物の熱処理が完了した1つの処理装置に、新たな被処理物を装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合に、新たな被処理物を前記の処理装置に装入させずに、この処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置に装入させ、この搬送装置から熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた後、搬送装置を装入装置の位置に移動させる工程を示した概略説明図である。
【
図4】前記の実施形態に係る熱処理設備において、
図3に示す工程を行った後、前記の処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重ならない場合に、装入装置から新たな被処理物を搬送装置に装入させ、この搬送装置を被処理物が取り出された前記の処理装置に移動させて、この搬送装置から新たな被処理物を処理装置に装入させる動作を行い、この搬送装置を抽出装置の位置に移動させ、さらに搬送装置を装入装置に位置に移動させる工程を示した概略説明図である。
【
図5】処理装置20dの入替時間の開始までに処理物が装入装置に準備できなかった場合に、最短時間で回復させた状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る熱処理設備を、添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る熱処理設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0021】
この実施形態に係る熱処理設備においては、
図1に示すように、熱処理する被処理物Wを装入させる装入装置10と、被処理物Wを熱処理する複数(図に示す例では5つ)の処理装置20(20a~20e)と、処理装置20において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置30と、前記の装入装置10と処理装置20と抽出装置30との間で移動して、装入装置10における被処理物Wを処理装置20に装入させ、処理装置20において熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる搬送装置40とを備えている。
【0022】
また、前記の搬送装置40においては、搬送室41と、前記の処理装置20において熱処理されて搬送室41に装入された被処理物Wを高温状態で保持する保温室42と、前記の保温室42の搬送室41を挟んで反対側に装入装置10から搬送室41に装入された被処理物Wを次の処理装置20に装入させる前に待機させる待機室43とを備えている。搬送室41では、被処理物Wを前記の処理装置20と装入装置10と抽出装置30と保温室42と待機室43との間で出し入れされる。
【0023】
そして、この実施形態に係る熱処理設備においては、まず熱処理する前の被処理物Wが装入装置10に準備される。このようにして準備された熱処理する前の被処理物Wを装入装置10から搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させる時間Ts1と、待機室43に被処理物Wが装入された搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20に移動させる時間Ts2と、処理装置20において熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入させる時間Ts3と、この搬送装置40の待機室43に装入されている熱処理する前の被処理物Wを、搬送室41を通して処理装置20に装入させる時間Ts4と、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させる時間Ts5と、搬送装置40の保温室42に装入された熱処理された被処理物Wを、搬送室41を通しての抽出装置30に装入される時間Ts6と、熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動させる時間Ts7とを合わせた合計時間(Ts1+Ts2+Ts3+Ts4+Ts5+Ts6+Ts7)を搬送サイクル時間TSとする。
【0024】
処理装置20において、熱処理はTs3の開始と同時に終了し、次の熱処理はTs4の終了と同時に始まり、その間の時間に被処理物Wの入れ替えが行なわれて、そのTs3とTs4の合計を「入替時間」とする。
【0025】
そして、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理させる時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、それぞれ制御装置50により前記の搬送サイクル時間TSの倍数(n倍)から前記の入替時間を引いた時間になるように調整している。
【0026】
ゆえに、熱処理時間(T)=(Ts5+Ts6+Ts7+Ts1+Ts2+Ts3+Ts4)×n-(Ts3+Ts4)の式で表すことができる。(熱処理はTs5から始まるため、便宜上、Ts5を先頭にして並び変えた。)
【0027】
このように従来はバラバラであった熱処理時間を、搬送サイクル時間TSを用いて規則性を持たせた。
【0028】
図2では搬送装置40の動作の様子と各処理装置20(20a~20e)における熱処理の様子を、時間の流れを横軸(行)として示している。図中の「搬送」は1台の搬送装置40であり、どの行も同じものを示している。
【0029】
ここで、この実施形態に係る熱処理設備では、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理するにあたり、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了すると、制御装置50により、この処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かを判定する。
【0030】
そして、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならない場合には、
図1に示すように、装入装置10から熱処理する被処理物Wを搬送装置40の搬送室41を通して待機室43に装入(Ts1)し、この搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動(Ts2)させて、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入(Ts3)した後、この搬送装置40の待機室43に装入されている前記の被処理物Wを、搬送室41を通して処理装置20cに装入(Ts4)する。次いで、前記のように保温室42に熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動(Ts5)させて、この搬送装置40の保温室42に装入されている被処理物Wを、搬送装置40の搬送室41を通して抽出装置30に装入(Ts6)した後、この搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動(Ts7)させる。それを、
図2では、Ts1+Ts2を搬送A、Ts3+Ts4を搬送B(入替時間)、Ts5+Ts6+Ts7を搬送Cとして示した。
【0031】
一方、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なる場合、例えば、
図2(A)に示すように、他の処理装置20aにおいて熱処理されている被処理物Wの熱処理完了時間Taと重なってしまう場合には、
図3に示すように、装入装置10から熱処理する被処理物Wを搬送装置40に装入させないで、この搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動(Ts2)させ、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入(Ts3)した後、この搬送装置40を抽出装置30の位置に移動(Ts5)させて、この搬送装置40の保温室42に装入されている被処理物Wを、搬送装置40の搬送室41を通して抽出装置30に装入(Ts6)し、その後、この搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動(Ts7)させる。
【0032】
すなわち、搬送装置40は、
図2(B)の「待ち時間」で示された時間の最初の部分で、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wの抽出する操作のみを行い、装入装置10の位置で待機する。ここではTs1が省略されるので、搬送装置40はTs3の開始が処理装置20cにおける熱処理の終了と同時になるように時間を調整して動かされる。それを、
図2(B)では、Ts2を搬送D、Ts3+Ts5+Ts6+Ts7を搬送Eとして示した。
【0033】
また、このように処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを、搬送装置40を介して抽出装置30に装入させて、搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動させる工程を行った後は、搬送装置を待機しながら前記のように制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かを搬送サイクル時間ごとに判定する。
【0034】
そして、
図2(B)に示すように、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならない場合には、
図4に示すように、前記の装入装置10から熱処理する被処理物Wを搬送装置40の搬送室41を通して待機室43に装入(Ts1)し、搬送装置40を、熱処理された被処理物Wを取り出した前記の処理装置20cの位置に移動(Ts2)させて、この搬送装置40の待機室43に装入されている被処理物Wを、搬送室41を通して処理装置20cに装入(Ts4)した後、この搬送装置40を空の状態で抽出装置30の位置に移動(Ts5)させ、さらにこの搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動(Ts7)させる。
【0035】
すなわち、待機していた搬送装置40は、
図2(B)の「待ち時間」で示された時間の最後の部分で、装入装置10から熱処理する被処理物Wを処理装置20cに装入する操作のみを行う。
【0036】
ここではTs3が省略されるので、搬送装置40はTs4の終了が処理装置20cにおける熱処理の開始と同時になるように時間を調整して動かされる。それを、
図2(B)では、Ts1+Ts2+Ts4を搬送F、Ts5+Ts7を搬送Gとして示す。
【0037】
なお、搬送Fでは被処理物Wを搬送装置40の搬送室41を通して待機室43に装入(Ts1)し、待機室43に装入されている被処理物Wを、搬送室41を通して処理装置20cに装入(Ts4)するようにしたが、被処理物Wを待機室43に装入させず搬送室41に入れたまま搬送してもよい。(
図4ではその様子を示している。)
【0038】
また、搬送Gでは搬送装置40を空の状態で抽出装置30の位置に移動(Ts5)させ、さらにこの搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動(Ts7)させるようにした(
図4ではその様子を示している。)が、搬送装置40は被処理物Wの処理装置20cへの装入(Ts4)が終われば空の状態で前記の装入装置10の位置に移動させてもよい。
【0039】
また、図示していないが、前記の処理装置20c以外の他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいても、被処理物Wの熱処理が完了した場合には、前記の処理装置20cの場合と同様に、前記の制御装置50により、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重なるか否かを判定し、前記の処理装置20cの場合と同様にして、各処理装置20a,20b,20d,20eにおいて被処理物Wを熱処理させるようにする。
【0040】
そして、この実施形態に示すように、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理させる時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、それぞれ制御装置50により前記の搬送サイクル時間TSの倍数から入替時間を引いた時間になるように調整すると共に、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により各処理装置20(20a~20e)に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置50により、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wが熱処理される時間に基づいて、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように、搬送サイクル時間TSごとに制御することにより、各処理装置20(20a~20e)において処理時間が異なる被処理物Wを熱処理する場合であっても、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20(20a~20e)から熱処理された被処理物Wを搬送サイクル時間TSに対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物Wを搬送サイクル時間TSに対応した適切なタイミングで装入装置10から搬送装置40を介して処理装置20(20a~20e)内に装入させて熱処理することができ、処理時間が異なる被処理物Wについても、各処理装置20(20a~20e)において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、本発明の熱処理設備の制御装置50により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成して、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになる。
【0041】
なお、被処理物Wが熱処理される時間やタイミングによっては、搬送装置40は、搬送サイクル時間TSの全時間、装入装置10の位置で止まっていることもある。
【0042】
また、突発的に被処理物Wを装入装置10に準備するタイミングが遅れた場合でも、搬送サイクル時間TSを採用したことによって、回復が簡単に考えられるようになる。
【0043】
例えば、
図2(B)の処理装置20dにおいて、三角印(▲)の時刻に被処理物Wが装入装置10に準備できなかった場合、以下、
図5に示すように、処理装置20dで熱処理が完了した被処理物Wの抽出のみを行ない、その後に装入装置10に準備できた被処理物WはTe’で示す時刻にTeと入替を行い、処理装置20eで熱処理される。そして、処理装置20dでは、他の処理装置20a,20b,20c,20eで被処理物Wの入替が行われない最初の搬送サイクル時間TSを利用して、被処理物Wを星印(★)で示す時刻に装入のみを行なう。
【0044】
つまり、被処理物Wの準備が遅れても、装入を予定していた処理装置20に故意に待ち時間2(
図5参照)をつくり、被処理物Wを装入する処理装置20を他の処理装置20にずらすことにより、全ての処理装置20(20a~20e)の空き時間を総合的に最短にしながら操業を回復することができる。
【0045】
また、前記の実施形態において、前記のように処理装置20(20a~20e)において熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた後、この抽出装置30において、熱処理された被処理物Wを焼入処理のような冷却をさせる場合には、この抽出装置30において熱処理された被処理物Wを冷却して抽出装置30から搬出終了するまでの時間が、前記の搬送サイクル時間TSよりも短くなるようにしており、各処理装置20(20a~20e)において熱処理された被処理物Wが、搬送装置40から詰まることなく順々に抽出装置30に装入できるようにしている。
【0046】
以上のような制御を行うために、設備および熱処理の条件、例えば搬送サイクル時間(TS)、入替時間(Ts3+Ts4)、各被処理物Wの熱処理時間(T)などを制御装置50へ入力することにより適切な搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにすれば、簡単に処理装置20(20a~20e)での処理時間が異なる被処理物Wを効率良く熱処理できるようになる。
【符号の説明】
【0047】
10 :装入装置
20(20a~20e) :処理装置
30 :抽出装置
40 :搬送装置
41 :搬送室
42 :保温室
43 :待機室
50 :制御装置
TS :搬送サイクル時間
Ta :処理装置20a内の被処理物の熱処理時間
Tb :処理装置20b内の被処理物の熱処理時間
Tc :処理装置20c内の被処理物の熱処理時間
Td :処理装置20d内の被処理物の熱処理時間
Te :処理装置20e内の被処理物の熱処理時間
Ta’ :処理装置20a内の被処理物の熱処理完了時刻
Tb’ :処理装置20b内の被処理物の熱処理完了時刻
Tc’ :処理装置20c内の被処理物の熱処理完了時刻
Td’ :処理装置20d内の被処理物の熱処理完了時刻
Te’ :処理装置20e内の被処理物の熱処理完了時刻
W :被処理物
【要約】
【課題】 被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置で熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、被処理物を装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、処理時間が異なる被処理物も効率よく熱処理できるようにする。
【解決手段】 装入装置10から搬送装置40に装入された熱処理前の被処理物Wを処理装置20において熱処理する場合に、制御装置50により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、被処理物を搬送装置により装入装置と処理装置と抽出装置30との間で移動させる搬送サイクル時間TSの倍数から入替時間を引いた時間に調整すると共に、各処理装置において被処理物が熱処理される時間に基づいて、各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御する。
【選択図】
図2