(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】消臭シートおよび消臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20221024BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221024BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20221024BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20221024BHJP
D04H 1/407 20120101ALI20221024BHJP
【FI】
A61L9/01 B
B01J20/28 Z
B01J20/20 B
A61L9/16 Z
D04H1/407
(21)【出願番号】P 2018078194
(22)【出願日】2018-04-16
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 美怜
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-079642(JP,A)
【文献】特開平04-200634(JP,A)
【文献】特開2001-321426(JP,A)
【文献】特開2005-261709(JP,A)
【文献】特開2001-097501(JP,A)
【文献】特開2012-166137(JP,A)
【文献】特開2011-011201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B01J 20/00-20/28
D04H 1/00- 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプと炭系吸着剤とを含有する消臭シートであって、
前記炭系吸着剤が、スルホ基が導入された炭
および活性炭を含有し、
前記スルホ基が導入された炭と前記活性炭の含有質量比が2:1~1:2であり、
前記炭系吸着剤は平均粒径が20μm~200μmであり、
前記パルプは、繊維径が10μm~30μmのパルプ繊維をパルプの全質量に対して30質量%以上含むものであることを特徴とする消臭シート。
【請求項2】
前記炭系吸着剤を前記消臭シートの全質量に対して5~50質量%含有する請求項
1記載の消臭シート。
【請求項3】
坪量が10~150g/m
2である請求項1
または2記載の消臭シート。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の消臭シートで、生ごみ又は排泄物を包むことによる生ごみ又は排泄物の消臭方法。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれかに記載の消臭シートを靴の中に入れることによる靴の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭シート及びこれを利用した消臭方法に関し、更に詳細には、広範な悪臭に対し優れた消臭効果を発揮する消臭シート及びこれを利用して悪臭を除去する消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種消臭用途に使用可能な消臭剤含有シートとして、活性炭等の炭系吸着性物質をパルプ等からなる繊維シートに担持させたものが知られている。しかし活性炭はメチルメルカプタンや硫化水素などの悪臭成分に対しては優れた消臭効果を発揮するものの、アンモニアやトリメチルアミンなど高極性の悪臭成分に対しては十分な効果が得られなかった。
【0003】
アンモニアやトリメチルアミンに対して消臭効果を上げるため、活性炭に酸等の薬品を添着させ酸処理炭を用いる技術が知られている(非特許文献1)。しかしながら、このような酸処理炭を用いて消臭紙などのシート体を作成する際に、抄紙等シート体の製造工程で水を使用する場合、酸処理炭に添着させた酸は、当該製造工程で使用する水に溶け出てしまい、でき上った消臭紙などのシート体の消臭効果は低いものとなってしまった。
【0004】
そこで、活性炭以外の消臭成分を組合せ、広範な悪臭成分に対して消臭効果を高める技術が開示されている。例えば、特許文献1には、活性炭混抄紙に、金属フタロシアニン錯体、弱アルカリ性金属塩及び水溶性銅化合物を担持させることにより、トイレの三大臭気に対して優れた消臭効果を示すことが開示されている。しかし、この技術では製造方法が煩雑で生産コストの増大が問題となる。
【0005】
一方、近年炭系吸着剤の消臭機能を利用した各種製品が広く普及しており、炭系吸着剤が黒色の物質であることや、炭系吸着剤が高い消臭機能を有していることは、一般消費者に広く知られている。そのため、炭系吸着剤による消臭効果を謳う消臭シートが、通常の紙のような白色ではなく黒乃至は灰色と、炭系吸着剤の黒色が反映された色を有していることは、消臭シートが炭系吸着剤による消臭効力を消費者にアピールすることができるとともに、消費者に消臭シートの消臭効果に対する安心感を与えることができる。従って、炭系吸着剤が担持される消臭シートは、実際の消臭効果のほか外観も重要であり、消費者に優れた消臭効果を期待させるような色を有していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】西野博、「添着活性炭による悪臭成分の除去」、環境技術、p643-645、19巻、10号、(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、広範な悪臭に対して優れた消臭効果を発揮する消臭シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、炭を濃硫酸等のガス中又は液中で加熱処理し、炭自体にスルホ基が導入された炭、を含む炭系吸着剤を、水を使って抄紙することにより担持させたシートが、各種悪臭成分に対して消臭効果が得られることを見出し、さらに、パルプとして、特定の繊維径のパルプ繊維を特定量使用し、炭系吸着剤の平均粒子径が特定の範囲とすることにより、高い含有率で炭系吸着剤を担持できるため、悪臭に対する消臭効果をより高めることができ、外観上も消費者に優れた消臭効果を期待させるような黒色乃至灰色となることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、パルプと炭系吸着剤とを含有する消臭シートであって、炭系吸着剤にスルホ基が導入された炭を含有することを特徴とする消臭シートである。
【0011】
また、本発明は、上記消臭シートで、生ごみ又は排泄物を包むことによる生ごみ又は排泄物の消臭方法である。
【0012】
更に、本発明は、上記消臭シートを靴の中に入れることによる靴の消臭方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の消臭シートは、メチルメルカプタン、硫化水素、イソ吉草酸などの悪臭成分に加え、アンモニアなど塩基性悪臭成分に対しても優れた消臭効果を示す。また、炭系吸着剤の脱落が生じ難く、炭系吸着剤の黒色が反映された色を有するものとすることができる。さらに、本発明の生ごみ又は排泄物の消臭方法によると、生ごみや排泄物を単に消臭シートで包むだけという、極めて容易な方法により、これらの悪臭を消臭することができる。また本発明の靴の消臭方法によると、消臭シートを靴の中に入れておくだけで、靴の中に残っている悪臭を消臭することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の消臭シートについて詳細に説明する。本発明の消臭シート(以下、「本発明シート」ということがある)は、パルプ及び炭系吸着剤で構成され、炭系吸着剤としてスルホ基が導入された炭を含有するものである。
【0015】
上記スルホ基が導入された炭は、ヤシ殻、木材、ウバメガシ、竹等を原料とする炭(炭化物)にスルホ基が導入されたものである。スルホ基が導入された炭は公知の方法によって製造できる(特開2011-11201号公報、特開2016-272652号公報等)。本発明シートにおいて、炭系吸着剤として、スルホ基が導入された炭を単独使用してもよく、他の炭系吸着剤と併用してもよい。他の炭系吸着剤としては、例えば、活性炭、備長炭、竹炭などを挙げることができる。これらの中でも、硫化水素などの悪臭成分に対する消臭効果が向上することから活性炭が好ましい。スルホ基が導入された炭と活性炭を併用する場合、消臭効果向上の点から、これらの含有質量比は1:2~2:1であることが好ましく、1:1がより好ましい。炭系吸着剤の賦活法には、水蒸気や二酸化炭素により高温で処理するガス賦活法、あるいは塩化亜鉛、リン酸、濃硫酸処理等で処理する薬品賦活法があるが、何れの方法により得られたものでも良い。また、上記活性炭は、形状によって繊維状活性炭と粒子状活性炭とに分けられ、更に、粒子状活性炭として破砕炭、造粒炭、顆粒炭、球状炭、その他粉末状の活性炭微粒子等が挙げられるが、何れの形状のものを用いても良い。
【0016】
上記炭系吸着剤は、炭系吸着剤の脱落抑制及び消臭効果の向上の観点から、平均粒径が5~500μmのものを用いることが好ましく、平均粒径が10μm~300μmの炭系吸着剤がより好ましく、平均粒径が15μm~250μmの炭系吸着剤がさらに好ましく、平均粒径が20μm~200μmの炭系吸着剤が特に好ましい。このような平均粒径の炭系吸着剤を用いることにより炭系吸着剤が多く担持されるとともに脱落が効果的に抑制される。また消臭効果が向上すると共に、消臭シート中に均一に分散され、シートの色を黒色乃至灰色とすることができる。なお、炭系吸着剤の平均粒径は、JIS K1474により測定した質量平均粒径の値である。
【0017】
炭系吸着剤の平均粒径が5μm未満では、炭系吸着剤が小さすぎるため、その脱落を抑制し難く、抄紙製造上における炭系吸着剤の歩留まりが低下する場合がある。また、炭系吸着剤の平均粒径が500μmを超えると、炭系吸着剤の保持部として機能するパルプ繊維間の空間内に入り込む炭系吸着剤の割合が低下しやすく、また、外部からの摩擦や衝撃により容易に紙から脱落してしまい、炭系吸着剤の脱落抑制効果が低くなるおそれがある。また、炭系吸着剤の平均粒径が500μmを超えると、臭い物質の吸着性能が低下するため、消臭シートの消臭効果が低下しやすい場合がある。
【0018】
炭系吸着剤の含有量は、脱臭シートの全質量に対して5~50質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは10~45%である。5%未満では脱臭効果が不十分となる場合があり、また炭系吸着剤の黒色が反映されないため消費者への消臭効果の訴求効果が不十分となる場合がある。一方、50%より高いと抄紙工程での排水処理に負荷がかかる場合がある。また炭系吸着剤中のスルホ基が導入された炭の含有率は10~100%であることが好ましく、20~50%がより好ましい。
【0019】
本発明シートに用いるパルプは、繊維径において特に制限されないが、繊維径が10~30μmのパルプ繊維を使用することが好ましく、これを単独で、又は、これ以外の繊維径のパルプ繊維と組み合わせて使用することが好ましい。また、繊維径が10~30μmのパルプ繊維と組み合わせるパルプ繊維の繊維径としては、特に限定されないが、例えば、30μmを超えるものが好ましく、31~50μmがより好ましく、35~45μmが更に好ましい。繊維径が10~30μmのパルプ繊維と、繊維径が30μmを超えるパルプ繊維を組み合わせて使用することにより、消臭効果が早く発揮され、また、シートの強度が増すため、シートをロール状に巻き取る場合等において切れ難くなる。なお、上記繊維径とは、水中で離解させたパルプ繊維を画像計測ソフト付き顕微鏡にて測定した値である。
【0020】
本発明シートにおける繊維径が10~30μmのパルプ繊維としては、特に限定されないが、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、古紙(再生)パルプ、親水性表面を有するパルプ等のパルプを公知の方法により処理して、上記繊維径や後述する平均繊維長にしたものを使用することができる。繊維径が10~30μmのパルプ繊維の含有量としては、本発明シートにおけるパルプの全質量に対して、30%以上が好ましく、より好ましくは30~100%、さらに好ましくは40~90%、特に好ましくは50~80%、最も好ましくは60~70%である。
【0021】
上記繊維径が30μmを超えるパルプ繊維としては、特に制限されないが、例えば、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ;楮、三椏、雁皮等の靱皮パルプ;藁、竹、ケナフ、麻、コットン等の非木材パルプ等のパルプを公知の方法により処理して、上記繊維径や後述する平均繊維長にしたものを使用することができる。繊維径が30μmを超えるパルプ繊維の含有量としては、本発明シートにおけるパルプの全質量に対して、0~70%が好ましく、より好ましくは10~60%、さらに好ましくは20~50%、特に好ましくは30~40%である。
【0022】
なお、本発明シートのパルプにおいて、繊維径が10~30μmのパルプ繊維と繊維径が30μmを超えるパルプ繊維とを組み合わせる場合の、これらの配合量は特に限定されないが、例えば、繊維径が10~30μmのパルプ繊維をパルプの全質量に対して60~70%、繊維径が30μmを超えるパルプ繊維をパルプの全質量に対して30~40%配合するのが特に好ましい。
【0023】
本発明シートで使用するパルプの長さとしては、特に限定されないが、例えば、平均繊維長が0.1~3.0mmが好ましく、0.5~2.0mmがより好ましい。なお、平均繊維長とは、パルプ繊維を水中で離解させ、100本以上のパルプ繊維の繊維長を画像計測ソフト付き顕微鏡にて繊維長を測定し、平均した値である。
【0024】
また、本発明シートの全質量に対するパルプの含有率は、例えば、50~95%が好ましく、55~85%がより好ましい。
【0025】
本発明消臭シートには、炭系吸着剤を多く担持させることができるため、その全体が、炭系吸着剤の黒色が反映された色、より具体的には、黒色から灰色又はその類似色を有するものとすることができる。前述したように、炭系吸着剤による消臭効果を謳う消臭シートが、通常の紙のような白色ではなく、炭系吸着剤の黒色が反映された色を有していることは、消臭シートが炭系吸着剤による消臭機能を備えていることを使用者にアピールすることができるとともに、使用者に消臭効果感を与える。
【0026】
また、本発明の消臭シートには、パルプへの炭系吸着剤の定着を良くしたり、また、シートの湿潤紙力を向上させるために、さらに、添着剤を添加することが好ましい。添着剤としては、例えば、エポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂(PAE)等のカチオン性ポリアミドアミンやポリアクリルアミド等のアクリル系カチオンポリマー等が挙げられ、これらを単独で又は2種組み合わせて用いることができる。これらの添着剤の中でも、特にPAEが好ましい。
【0027】
上記添着剤の添加量は、本発明脱臭シートのパルプの乾燥質量に対して、0.1~3%が好ましく、より好ましくは0.5~2%である。添着剤の含有量が少なすぎると、炭系吸着剤のパルプへの定着効果が出ず、含有量が多すぎると、脱臭効果が低下する恐れがある。
【0028】
本発明シートは、パルプ、炭系吸着剤、及び必要により添着剤を含むものであるが、これら以外のその他の成分を含んでも良い。その他の成分としては、例えば、パルプ以外の他の繊維(ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維等の合成繊維等)、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、凝集剤、定着剤、地合調整剤、剥離剤、タルク等の填料、染料、色顔料、他の吸着剤、抗菌剤、pH調整剤、耐水化剤、消泡剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、本発明シートにおいて、炭系吸着剤以外の他の吸着剤を用いることもできる。他の吸着剤としてはシリカゲル、ゼオライト、アルミノケイ酸亜鉛、焼結多孔質粘度鉱物等を用いることができる。
【0030】
さらに、本発明シートでは、凝集剤、歩留剤、濾水剤、粘剤、サイズ剤、かさ高剤、フィラーなど、従来用いられる添加剤を配合することもできる。
【0031】
本発明シートは、公知の湿式抄紙法によって製造することができる。湿式抄紙法は、パルプ、炭系吸着剤等を含む水分散液からなる紙料(スラリー)を調製する紙料調製工程と、紙料からパルプを抄いて繊維ウエブとしたものを搬送しながら乾燥する抄紙工程とを有するものである。抄紙工程は、通常、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等に分けられ、順次実施される。湿式抄紙法は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機、丸網抄紙機等の抄紙機を用いて常法に従って実施することができる。
【0032】
本発明シートの形態としては、例えば、1枚の単層のシートのみからなる形態や、2枚以上の複数層のシートから構成される形態等が挙げられるが、好ましくは、1枚の単層シートである。本発明における単層シートの坪量は、適宜設定することができるが、坪量が高すぎるとシートの柔軟性や液透過性が損なわれ、また坪量が低すぎると炭系吸着剤の歩留まりが極度に低下することから、好ましくは10~150g/m2、より好ましくは20~130g/m2、さらに好ましくは25~125g/m2である。坪量が10g/m2未満であると、ロール状に巻き取ることが困難になる場合があり、坪量が150g/m2を超えると、消臭シートが硬くなり使用時の対物に対する擦れなどの問題が出る場合がある。
【0033】
斯くして得られる本発明シートは、広範な悪臭成分に対し優れた消臭効果を示すものであり、例えば、硫化水素、アンモニア、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、酢酸やイソ吉草酸など低級脂肪酸といった悪臭成分に対し優れた消臭作用を示す。
【0034】
また、本発明の消臭シートの用途としては、消臭シートを消臭したい場所にそのまま置いたり、丸めて置くことも可能である。具体的にはトイレットペーパータイプに加工された消臭シートを数十cm~数m切り取り、ごみ箱の開口部を被覆したり、ごみ箱の中に敷いたり、濡れた生ごみを包んだり、三角コーナーにかぶせたり、人またはペットの排泄物を包んだり、丸めてブーツや運動靴等の靴の中に入れたりして使用することができる。
【0035】
本発明シートを、生ごみや排泄物を包んで使用した場合は、生ごみや糞尿から生じる悪臭を消臭するとともに、生ごみや糞尿から生じる液体を吸収して液体のにじみ出るのを防止することができる。
【0036】
また、本発明シートを、丸めてブーツ等の靴に入れて使用する場合は、靴内を消臭するとともに、紙が靴内の湿気を吸収して、除湿効果も期待できる。
【0037】
そのほか、本発明シートは、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の液保持性の吸収部材を被覆するシートとして利用することもできる
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0039】
試 作 例 1
スルホ基が導入された炭の試作例:
木粉を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥後、4.7~83meshの篩(粒径180~4000μmに相当)により篩別し、篩別した木粉20gを取り分けた。この木粉20gに1Nの塩酸に溶解した濃度65%(w/w)の塩化亜鉛溶液108gを加えて混合し、この混合物をるつぼに入れて電気炉内に置いた。350℃まで60分間かけて昇温し、その後350℃を60分間維持し焼成した(予備炭化)。冷却後、電気炉からるつぼを取り出して炭化物を濾布の付いた洗浄層に移した。ここに、20%に希釈した塩酸200mLを添加し、1時間煮沸しながら洗浄した。炭化物の水切りをした後、50~60℃の水で水洗した。水洗後の炭化物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥し、10~22meshの篩により篩別し、予備炭化物を得た。予備炭化物10gを300mLの15%発煙硫酸に加えて80℃で10時間加熱しスルホ基を導入した。その後、過剰な濃硫酸を100℃の蒸留水で繰り返し洗浄し、洗浄後の蒸留水中の硫酸が元素分析の検出限界以下になるまで洗浄を繰り返した。水洗後、105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥してスルホ基の導入された炭を得た。
【0040】
実 施 例 1
消臭シートの作成:
下記の表1に示す組成で消臭シートを作成した。炭系吸着剤を100mLのイオン交換水に分散し、これに粉砕したパルプ1g(繊維径が10μm~30μmのパルプ繊維を30質量%以上含むようにしたもの)を加えて分散させた。これを10分間撹拌後、150×100mm長方形の1.5mmメッシュを用い、ろ過物がメッシュ上に均一に広がるようにろ過し、脱水した。このろ過物を130℃に熱したアイロンを用いて最終乾燥させ150×100mmの紙を、坪量がおおよそ100g/m2になるよう調製した。こうして作成した各組成の消臭シートについて以下の消臭試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0041】
(消臭試験方法)
各消臭シートと電池式ファンを10Lのテドラーバックに入れて密封し、10Lの空気を入れた。これに悪臭成分としてアンモニアまたは硫化水素を注入し、2時間後の悪臭成分の濃度を検知管で測定、試験前後の悪臭成分の濃度から消臭率を算出した。
【0042】
【0043】
本発明品1および2においてはアンモニアおよび硫化水素の両方に対して80%以上の高い消臭効果が認められた。比較品2は硫化水素の消臭効果は認められたものの、アンモニアに対しては効果が認められなかった。比較品1および3はアンモニアおよび硫化水素のどちらにも効果が認められなかった。なお、本発明品1および2は炭系吸着剤の黒色が反映されたグレー色のシートであり、使用前に丸めたりしても炭系吸着剤の脱落は生じなかった。
【0044】
実 施 例 2
生ごみの消臭:
実施例1で製造した本発明品1の消臭シート片(10cm×60cm)で、生ごみを包んだところ、生ごみの臭いは軽減され、気にならなくなった。
【0045】
実 施 例 3
靴の消臭:
実施例1で製造した本発明品1の消臭シート片(10cm×60cm)2枚を、履いた後の靴の中に、それぞれ丸めて入れたところ、靴の臭いは軽減され、気にならなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の消臭シートは、広範な悪臭成分に対し優れた消臭効果を発揮するものであり、生活環境中の様々な悪臭を除去するための消臭シートとして利用できる。