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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】特徴検出用のフィルタを含むECG機械
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20221024BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20221024BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/367
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018086354
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2018187381
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】15/582,156
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・イスラエル・シレメイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
(72)【発明者】
【氏名】オレグ・クディッシュ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-284352(JP,A)
【文献】米国特許第06351664(US,B1)
【文献】特開平10-052409(JP,A)
【文献】特表2007-525236(JP,A)
【文献】特表2015-522314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計(ECG)を行うためのシステムであって、
電気信号を捕捉するために被験者に取り付けるための複数のリード線と、
前記捕捉された電気信号を処理するための信号プロセッサであって、
複数の選択された周波数で干渉を強調するために前記捕捉された電気信号にコムフィルタを適用することと、
前記適用されたコムフィルタにかけられた信号の振幅及び位相を推定することと、
特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために、前記適用されたコムフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第1の段階を行うことと、
前記行われた第1の段階が特徴の分類を誤ったかどうかを決定して、特徴検出を使用して電力線干渉を更に除去するために、前記適用されたコムフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第2の段階を行うことと、
前記特徴検出、振幅及び位相を使用して干渉を推定することと、
前記信号から前記推定された干渉を除去して電力線干渉が実質的にない信号を生成することと、によって処理する信号プロセッサと、
前記捕捉され処理された電気信号を出力するための出力装置と、を含み、
前記第1の段階が、
第1の値(R)をピーク振幅(Apeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から決定することと、
前記決定した第1の値(R)のヒストグラムの実行を計算して複数の信号統計を推定し、それに応じて閾値(TH)を決定することと、
前記決定した第1の値(R)を前記決定した閾値(TH)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含み、
前記第2の段階が、干渉が低いレベルか高いレベルかを決定するために前記干渉レベルを推定することと、
前記推定中に低いレベルの干渉があることを条件に、
干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)を決定することと、
前記振幅の前記決定した平方自乗平均(Arms)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THrms)を決定することと、
前記振幅の前記平方自乗平均(Arms)を前記決定した閾値(THrms)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、
前記推定中に高いレベルの干渉があることを条件に、
前記第1の段階の前記適用されたコムフィルタにかけられた信号のピーク振幅(AFilpeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から第1の値(RFil)を決定することと、
前記第1の値(RFil)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THFil)を決定することと、
前記第1の値(RFil)を前記決定した閾値(THFil)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含む、システム。
【請求項2】
前記捕捉された信号が、前記干渉の前記周波数を推定することによって更に処理される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記干渉の前記推定した周波数が、前記コムフィルタの前記適用に用いられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記干渉の前記推定した周波数が、前記振幅及び前記位相の前記推定に用いられる、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記出力装置が、前記ECGのスクリーン表示及びハードコピーのうちの少なくとも1つを提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
心電計(ECG)を行うためのシステムの作動方法であって、
前記システムに備えられるプロセッサが、
複数の選択された周波数で干渉を強調するために、受信した信号にコムフィルタを適用する工程と、
前記適用されたコムフィルタにかけられた信号の振幅及び位相を推定する工程と、
特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために、前記適用されたコムフィルタにかけられた信号にフィルタリングの第1の段階を行う工程と、
前記行われた第1の段階が特徴の分類を誤ったかどうかを決定して、特徴検出を使用して電力線干渉を更に除去するために、前記適用されたコムフィルタにかけられた信号に処理の第2の段階を行う工程と、
前記特徴検出、前記信号の振幅及び位相を使用して干渉を推定する工程と、
前記信号から前記推定された干渉を除去して電力線干渉が実質的にない信号を生成する工程と、を実行し
前記第1の段階が、
ピーク振幅(Apeak)と干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から値(R)を決定することと、
前記決定した値(R)のヒストグラムの実行を計算して累積分布関数(CDF)を計算して閾値(TH)を決定することと、
前記決定した値(R)を前記決定した閾値(TH)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含み、
前記第2の段階が、干渉が低いレベルか高いレベルかを決定するために前記干渉レベルを推定することと、
前記推定中に低いレベルの干渉があることを条件に、
前記干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)を決定することと、
前記振幅の前記決定した平方自乗平均(Arms)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THrms)を決定することと、
前記振幅の前記平方自乗平均(Arms)を前記決定した閾値(THrms)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、
前記推定中に高いレベルの干渉があることを条件に、
前記第1の段階の前記適用されたコムフィルタにかけられた信号のピーク振幅(AFilpeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から第1の値(RFil)を決定することと、
前記第1の値(RFil)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THFil)を決定することと、
前記第1の値(RFil)を前記決定した閾値(THFil)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含む、心電計(ECG)を行うためのシステムの作動方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記干渉の前記周波数を推定することを更に含む、請求項6に記載の心電計(ECG)を行うためのシステムの作動方法。
【請求項8】
前記干渉の前記推定した周波数が前記コムフィルタの前記適用に用いられる、請求項7に記載の心電計(ECG)を行うためのシステムの作動方法。
【請求項9】
前記干渉の前記推定した周波数が前記振幅及び前記位相の前記推定に用いられる、請求項7に記載の心電計(ECG)を行うためのシステムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
心電計(ECG)を行うシステム及び方法が開示される。システム及び方法は、電気信号を捕捉するために被験者に取り付けるための複数のリード線と、捕捉された電気信号を処理するための信号プロセッサであって、複数の選択された周波数で干渉を強調するために捕捉された電気信号にコムフィルタを適用することと、適用されフィルタにかけられた信号の振幅及び位相を推定することと、特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために適用されフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第1の段階を行うことと、特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために適用されフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第2の段階を行うことと、特徴検出、振幅及び位相を使用して干渉を推定することと、信号から推定干渉を除去して電力線干渉が実質的にない信号を生成することと、によって処理する信号プロセッサと、処理された捕捉電気信号を出力するための出力装置と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0002】
例として与えられた以下の説明を添付図面と併せ読むことから、より詳しい理解が得られるものと考えられる。
図1】本発明による電力線干渉相殺ブロック図を示す。
図2】第1のヒストグラム処理を示す。
図3】第2のヒストグラム処理を示す。
図4】定数閾値を使用してフィルタにかけられたデータ、及び適応閾値を使用してフィルタにかけられたデータのECGグラフを示す。
図5】適応閾値を使用してフィルタにかけられたデータ、及び入力データを描いた高い干渉レベルの例を示す。
図6】第1のヒストグラムバッファ、ピーク-RMS比バッファ、及びその対応する適応閾値THを描いた高い干渉レベルの例を示す。
図7】第2のヒストグラムバッファRFil、及び
【0003】
【数1】
を描いた高い干渉レベルの例を示す。
図8】第2のヒストグラムRFilHist及びその対応する累積分布関数(CDF)
【0004】
【数2】
を描いた高い干渉レベルの例を示す。
図9】適応閾値を使用してフィルタにかけられたデータ、及び入力データを描いた低い干渉レベルの例を示す。
図10】第1のヒストグラムバッファ、ピーク-RMS比バッファ、及びその対応する適応閾値THを描いた低い干渉レベルの例を示す。
図11】RMS及びTHrmsを描いた低い干渉レベルの例を示す。
図12】第2のヒストグラムArmsHist及びその対応するCDF、CDFrmsを描いた低い干渉レベルの例を示す。
図13】電力線干渉相殺を行う方法を示す。
図14】第1のヒストグラム用に適応閾値を使用して特徴検出を行う方法を示す。
図15】第2のヒストグラム用に適応閾値を使用して特徴検出を行う方法を示す。
図16】ECGのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、心電図記録に関する。より具体的には、本発明は、特徴検出用のECGフィルタリングに関する。本明細書では集合的にECGと称され、更にEKGとも称され得る、心電図を作成するために心電計によって行われる心電図記録の処理は、AC電力線からの干渉を受ける。ECGを理解し読み取るためには、この干渉が学習され、多くの場合、過大評価される。医師がECGを使用して心臓の活動を分析するとき、心臓からの電気信号を分離するために干渉を考慮する必要性が生じる。この干渉若しくはノイズ、又は信号中の他の特徴もまた、本明細書では特徴として言及される。そのような特徴は更に、高周波及び高調波の領域を含む、鋭い変化、ピーク、及び/又はペーシング信号を有する信号の領域を処理することに起因し得る。特徴は、ECGの読み取りの正確さを不明瞭にする。したがって、そのような特徴の影響をECG分析から除去することができ、それによって心臓の電気信号を観察することができるように、特徴を識別する改善された方法を提供する必要性が存在する。
【0006】
本明細書ではECGと称され、更にEKGとも称され得る、心電図記録は、皮膚上に配置された電極、又は特殊カテーテルを使用して心臓の内部に配置された電極(つまり、心臓内ECG)を使用して、一定期間にわたって心臓の電気活動を記録する処理である。これらの電極は、各心拍中の心筋の脱分極の電気生理学的パターンから発生する小さい電位変化を検出する。ECGは、一般に又は日常的に行われる心臓病学検査である。検査で使用される機械は心電計であり、初期の出力は心電図である。簡潔にするために、心電図記録、心電計、及び心電図は、本明細書ではすべてECGと称され、更にEKGとも称される場合もある。
【0007】
心臓内電位図(ICEG)は、いくつかの追加の心内リード線(すなわち、心臓の内部で)を備えたECGである。そのような電位図は、従来の12誘導心電図と組み合わせて又は代わりに、利用されてもよい。従来の12誘導心電図では、10の電極が、患者の肢上及び胸部の表面上に配置される。次に、心臓の電位の全体の大きさが12の異なる角度(「リード線」)から測定され、一定期間にわたって記録される。従来の12誘導ECGは、例えば、10秒など、一定期間にわたって行われてもよい。これによって、心臓の電気的脱分極の全体の大きさ及び方向が、心周期にわたる各瞬間に捕捉される。この医療手技によって作成された電圧対時間のグラフは心電図と呼ばれる。ICEGは、診断又は治療手技の間に記録されてもよい。処置の持続時間は、数十分から数時間まで様々であり得る。各治療手技中に、通常は、数十回のアブレーションセッションがあり、各セッションは、例えば、数秒から最長で約1分間続く。
【0008】
各心拍中に、健康な心臓は、脱分極の秩序正しい進行を有する。脱分極のこの秩序正しいパターンは、特有のECGトレーシングをもたらす。訓練を受けた臨床医にとって、ECGは、心臓の構造及びその電気伝導系の機能に関する大量の情報を伝達する。とりわけ、ECGは、心拍の速度及びリズム、心腔の寸法及び位置、心臓の筋細胞又は伝導系の損傷の存在、心臓の医薬品の効果、並びに埋め込まれたペースメーカーの機能を測定するために使用することができる。ECGの解読は、基本的に心臓の電気伝導系の理解に関する。正常伝導は予測可能なパターンで始まり、伝播し、このパターンからの逸脱は、正常変動又は病理学的であり得る。
【0009】
しかしながら、心臓の電気伝導系からの信号を確認するためには、測定された信号は、任意の不必要で偽性の信号又はノイズを除去するために、フィルタにかけられる必要がある。そのような偽性で不必要な信号としては、ほんの一例として、AC線のノイズを挙げることができる。
【0010】
図1は、電力線干渉相殺装置100のブロック図である。その最も単純な形態では、電力線干渉相殺装置100は、信号を入力し、干渉を推定し、入力信号から推定干渉を減じて関心信号であるECGに到達する。
【0011】
入力信号110は電力線干渉相殺装置100に提供される。入力信号110は、次のように表すことができる。
x=ECG+I+n
式1、
式中、Iは電力線干渉として定義され、nはランダムノイズである。電力線干渉は、次のように表すことができる。
【0012】
【数3】
式中、fは、基本干渉周波数及び関連する高調波であり、Aは干渉振幅であり、Φは関連する位相である。
【0013】
電力線干渉相殺装置100は、入力信号110がコムフィルタ120へ入力されるのを描写する。概して、コムフィルタは、信号の遅延バージョンをそれ自体に加え、強め合い及び弱め合い干渉を引き起こす。この場合、入力信号110は、周波数推定器170に関して本明細書で説明する推定した周波数
【0014】
【数4】
と共に入力され、次に、遅延され、入力信号110に加えられる。コムフィルタ120の周波数応答は、一連の規則的に間隔を置かれた切欠きであり、櫛の外観を与える。コムフィルタ120は、特定の周波数で干渉を強調し、他のすべての周波数のスペクトル成分を減衰させる。描写された相殺では、特定の周波数は50Hzに設定されてもよく、50Hzで動作しているシステムの関連高調波は、例えば、優位をしめる電力線干渉周波数を表す。当業者には明白であるように、優位をしめる電力線周波数が50Hzであるとき、50Hzの調波周波数、100Hz、...、などはまた、共通であり得る。他の電力線周波数としては、例えば、60Hz、及び60Hzの関連高調波周波数、120Hzなどが挙げられる。コムフィルタ120は、50Hz又は60Hz以外の周波数のものを含む、干渉周期の非整数のサンプルのための改善された正確さを提供する。
【0015】
コムフィルタ120は、干渉周期の非整数のサンプルの干渉の残留効果を計算することによって、一般的なコムフィルタから修正されてもよい。サンプリング周波数をfで表し、(基本)干渉周波数をfで表すと、
【0016】
【数5】
であるとき(式中、Nは自然数の集合を表す)、計算は、例えば、
【0017】
【数6】
(1干渉周期当たりのサンプル数)のように、より正確ではない可能性がある。これは、以前のアルゴリズムの場合である(上述の例では、(2/3)残留値を無視して最初の66のサンプルの計算を行う)。本発明のアルゴリズムでは、非整数残留値は計算に加えられてもよく、より正確な振幅及び位相推定、並びに干渉相殺後の全体的に低い残留ノイズにつながる。
【0018】
コムフィルタ120の出力は、周波数推定器170に関して本明細書で説明する推定した周波数
【0019】
【数7】
と共に、振幅及び位相推定器130への入力として提供される。振幅及び位相推定器130は、コムフィルタ120によって出力された推定干渉の振幅
【0020】
【数8】
及び位相
【0021】
【数9】
を推定する。振幅
【0022】
【数10】
及び位相
【0023】
【数11】
は次に干渉推定器150に出力される。振幅及び位相推定器130は、干渉周期の非整数のサンプルのための改善された精度を提供する。各調波周波数f、に対して、推定した周波数が
【0024】
【数12】
であるとき(式中、
【0025】
【数13】
は推定した基本周波数である)、振幅及び位相の推定が計算され得る。この推定は、次の式で行われてもよい。
【0026】
【数14】
式中、Nは自然数であり、
【0027】
【数15】
は干渉期間である。コムフィルタは、本明細書で上述したように、干渉高調波を強調し、他の周波数を減衰させるので、式3は、異なる周波数での正弦及び余弦は直交するので良好な近似式を表し、整数の周期にわたって積分されるのであればゼロに等しくてもよく、
【0028】
【数16】
の処理を繰り返すことで、
【0029】
【数17】
を提供する。ここで、
【0030】
【数18】
である。
【0031】
離散の場合には、積分は総和割るN・T・fのサンプルによって置き換えられ、それは、非整数のサンプルであり得る。以前のアルゴリズムでは、総和は、整数の部分のみを使用して計算されるので不正確な結果につながり(上述の導出では、積分は整数の周期にわたって行われる)、一方で現在のアルゴリズムでは、非整数の残留が考慮に入れられる。
【0032】
振幅及び位相推定器130の出力は更に、本明細書において後述するように閾値決定を行う特徴検出器140に提供され、特徴決定が行われ、その決定は、次に、干渉推定器150に出力される。特徴検出器140は、干渉振幅レベル推定を提供し、全干渉レベル用の以前の機構の代わりに、低い及び高い干渉レベル用の異なる特徴検出機構を適用する。特徴検出器140は、定数THがより高い干渉レベルでは役に立たない又は不安定である以前のアルゴリズムで以前に使用された定数THと比べて、フィルタにかけられる前及びフィルタにかけられた後の信号を含む、2つの実行ヒストグラムを使用して、適応閾値(TH)を適用してもよい。THは、以下でより詳細に説明するように、ヒストグラムから計算した、必要とする又は所望のパーセントでのレべルの累積分布関数(CDF)を設定することによって計算されてもよい。
【0033】
この方法では、第1のヒストグラムを干渉レベル正規化段階と見なすことができ、この段階では、中程度の特徴検出能力を犠牲にしてほとんどの高いレベルの干渉は推定され減じられる。特徴検出信頼度は、次に第2のヒストグラム/フィルタリング段階によって増大される。特徴検出器140は、例えば、連続する特徴検出でより良好な信号処置を提供する。
【0034】
電力線干渉相殺装置100は、バンドパスフィルタ(BPF)160へ入力される基準信号105を含んでもよい。基準信号105は、
【0035】
【数19】
の形態をとってもよい。デジタルBPFは、ある範囲内の周波数を通し、その範囲外の周波数を拒絶する(減衰させる)計算アルゴリズムである。電力線干渉相殺装置100では、BPF160は、例えば、50Hzが主流である電力線干渉周波数を表す動作系統用に、50Hzで動作するように構成されてもよい。他の電力線干渉周波数としては、例えば、60Hzが挙げられ、これらは、適宜バンドパスフィルタ160で使用されてもよい。
【0036】
バンドパスフィルタ160の出力は、周波数推定器170へ入力されてもよい。周波数推定器170は、周波数
【0037】
【数20】
を出力してもよく、これは干渉推定器150への入力として使用される。基準信号を破損するノイズは、ゼロ平均を有すると仮定されるので、周波数の推定により長い期間を使用することはより多くのノイズを平均することに等しく、仮定されたゼロ平均により近い結果につながる。
【0038】
干渉推定器150は、振幅及び位相推定器130からの入力振幅
【0039】
【数21】
及び位相
【0040】
【数22】
と、周波数推定器170からの周波数
【0041】
【数23】
とを組み合わせて、干渉180を推定してもよい。本明細書で説明する入力に基づいて、干渉180は、次のように表すことができる。
【0042】
【数24】
式中、nは、干渉信号のn番目の高調波を示す。
【0043】
推定干渉180(式4)は次に、入力信号110(式1)から減じられ、出力信号190が発生する。出力信号190は、次のように表すことができる。
y=ECG+eI+n
式5、
ここで、
【0044】
【数25】
は干渉推定誤差であり、Iは式2によって定義され、
【0045】
【数26】
は式4によって定義される。
【0046】
干渉を過大推定する、又は過少推定する、のどちらかの任意の誤差は、出力信号190に影響を及ぼす結果となるという点で、干渉推定器150の重要性は明白である。例えば、干渉(式2)が干渉180(式4)によって表されるものと近いほど、出力信号190は心臓の真実の電気的な挙動をより精密で正確に表す。式2によって定義されるI、及び式4によって定義される
【0047】
【数27】
が、より正確に一致する場合(干渉のより良い推定)、eはより小さくなり、式5によって定義された出力信号190は、ランダムノイズを加えたECGに近づく。
【0048】
特徴検出器140は、例えば、定数閾値を使用して動作してもよい。そのような動作では、各ECGチャネルは、特徴がデータ中に存在するかどうかを判断するために特徴検出器140によってチェックされてもよく、存在する場合は、データは使用されない。ECG信号は、身体の表面のリード線、及び心臓内の電極によって検出される。一般に、これらのチャネルのそれぞれは、異なる量の干渉によって破損され得る。干渉は、例えば、異なる手術室、時刻等を含む、異なる時間及び場所で異なり得る。定数閾値化は、すべての場所及び時間ですべてのチャネルにて適切に適応するように最適化されることができず、適応性のある、学習機構が用いられてもよい。
【0049】
定数閾値は次のように示すことができる。
peak>TH・Arms+nmin
式6、
式中、
【0050】
【数28】
は、各データパケット(50ミリ秒)に対して計算され、THは、例えば、1.25など、定数閾値である。用語Amax、及びAminは、は、コムフィルタからの出力としての現在のデータパケットの最小値及び最大値を指す。特徴検出器140における定数閾値の使用は、数ミリボルト(mV)以上などの高いレベルの干渉において不良な性能を提供し得る。
【0051】
特徴検出器140は、高いレベルの干渉における定数閾値の不良な性能、及び異なるチャネル、場所、及び時間でのばらつきを克服するために、適応閾値を使用して動作してもよい。適応閾値は、後述するように、第1のヒストグラム処理及び第2のヒストグラム処理を採用してもよい。
【0052】
図2は、第1のヒストグラム処理200を示す。第1のヒストグラム処理200は、Rの動的ヒストグラムを含み、ここで、ステップ210で、R=Apeak/Armsである。ステップ220で、Rが実行ヒストグラムに含まれ、THを決定する。Rの実行ヒストグラムは、最後のNを使用して計算される。
【0053】
【数29】
累積分布関数(CDF)は、次の式によって計算される。
CDF=f(Hist
式8
適応閾値はCDFに基づいて計算されてもよい。ここで、
TH=f(CDF)である。
式9
THをステップ230で使用して、R>THであるかが決定され、図1の特徴検出器140の特徴決定が結果として得られる。
【0054】
図3は、第2のヒストグラム処理300を示す。第2のヒストグラム処理300は、ステップ310で干渉レベル推定を行うことを含む。干渉レベルの推定310が低い場合、次に、Armsがステップ320で計算される。低いレベルの干渉は、例えば、ほぼ200μV以下など、事前定義又は所定のレベルである。低いレベルの干渉については、図9図12で以下で更に説明する。ステップ330で、Armsが実行ヒストグラムに含まれ、THrmsを決定する。実行ヒストグラムは、必要な変更を加えて、式7~9と同様な方法で計算される。THrmsをステップ340で使用して、Arms>THrmsであるかが決定され、図1の特徴検出器140の特徴決定が結果として得られる。
【0055】
干渉レベルの推定310が高い場合、次に、
【0056】
【数30】
がステップ350で計算される。式中、
【0057】
【数31】
は、第1のフィルタリング段階で(第1のヒストグラム特徴決定に従って)フィルタにかけられた信号のピーク振幅(最大値と最小値との差の半分)である。高いレベルの干渉は、例えば、ほぼ約3000~13000μV以上の範囲の干渉など、事前定義又は所定のレベルである。高いレベルの干渉については、図5図8で以下で更に説明する。ステップ360で、RFilが実行ヒストグラムに含まれ、必要な変更を加えて、式7~9で上述されたように、
【0058】
【数32】
を決定する。
【0059】
【数33】
をステップ370で使用して、
【0060】
【数34】
であるかが決定され、図1の特徴検出器140の特徴決定が結果として得られる。
【0061】
図4は、定数閾値410を使用してフィルタにかけられたデータ、及び適応閾値420を使用してフィルタにかけられたデータのECGグラフ400を示す。グラフは、μV対時間(秒)として提供される。グラフ400に示されるように、定数閾値410を使用してフィルタにかけられたデータは、適応閾値420を使用してフィルタにかけられたデータでは明らかではない特徴誤検出430、440を含む。例えば、特徴誤検出430は、49.3~49.35秒の時間の間で明らかである。特徴誤検出430は、ほぼ200μVの振幅であり得る。更なる例として、特徴誤検出440は、49.75~49.8秒の時間の間で明らかである。特徴誤検出440は、ほぼ200μVの振幅であり得る。図4中、更に、適応閾値を使用するときは出現しない、QRS複素(ラベルQ、R、S)の両側に小さいリップル450、460がある。
【0062】
図5は、適応閾値を使用してフィルタにかけられたデータ及び入力データを描いた高い干渉レベルの例500を示す。フィルタにかけられたデータは、本明細書に記述する高い干渉レベルの適応閾値を使用して入力データから生成される。このグラフは、フィルタにかけられたデータ信号が、高いレベルの干渉を首尾よく拒絶したことを例証する。
【0063】
図6は、第1のヒストグラムバッファ、すなわち、ピーク-RMS比バッファ、及びその対応する適応閾値THを描いた高い干渉レベルの例600を示す。適応閾値THはピーク-RMS比バッファから計算された第1のヒストグラムを表す。高い干渉レベルの例600のこのグラフは、ピーク-RMS比の値がTHを超えるときに、特徴が検出されることを示す。しかしながら、高いレベルの干渉の存在下でこの機構は特徴を検出することができず、第2の機構の必要性を示している。
【0064】
図7は、第2のヒストグラムバッファ、すなわち、RFilバッファ、及び
【0065】
【数35】
を描いた高い干渉レベルの例700を示す。適応閾値
【0066】
【数36】
は、高い干渉状況で、RFilバッファから計算された第2のヒストグラムを表す。高い干渉レベルの例700のこのグラフは、RFilが、
【0067】
【数37】
を超えるとき、特徴が検出されることを示す。第1のフィルタリング段階(第1のヒストグラム)が干渉レベルを「正規化」し、第2のフィルタリング段階が、高いレベルの干渉の存在下で特徴を検出できるようになることが図7から見ることができる。
【0068】
図8は、RFilHist及び、
【0069】
【数38】
-第2のヒストグラムを描いた高い干渉レベルの例800を示す。高い干渉レベルの例800のこのグラフは、RFilバッファを使用して生成されたヒストグラム、及びその対応する計算されたCDFを示す。ほぼ1~5の数値の大きなクラスタ、及びほぼ23~28の数値のより小さいクラスタの、2つの主な数値クラスタがあることを、図8から見ることができる。これらの2つのクラスタは、それぞれ、特徴なし及び特徴ありの領域を近似して表す。
【0070】
図9は、適応閾値を使用してフィルタにかけられたデータ及び入力データを描いた低い干渉レベルの例900を示す。フィルタにかけられたデータは、本明細書に記述する低い干渉レベルの適応閾値を使用して入力データから生成される。
【0071】
図10は、第1のヒストグラムバッファ、すなわち、ピーク-RMS比バッファ、及びその対応する適応閾値THを描いた低い干渉レベルの例1000を示す。低い干渉レベル例1000のこのグラフは、低いレベルの干渉に対してこの機構が特徴を検出していることを示す。しかしながら、検出は最適ではなく、いくつかの特徴は見逃され得る。
【0072】
図11は、RMSバッファ及びその対応するTHrmsを描いた低い干渉レベルの例1100を示す。適応閾値THrmsは、低い干渉状況のRMSバッファから計算された第2のヒストグラムから計算される。低い干渉レベルの例1100のこのグラフは、第1のフィルタリング段階(第1のヒストグラム)が干渉レベルを「正規化」し、第2のフィルタリング段階が特徴をその環境からより良く区別できるようになることを示しており、より高いダイナミックレンジから分かるように、ここで、特徴は、他の領域より7倍以上高く(20と比較して140より大きい)、第1のヒストグラムでは、この比は2未満であった(2と比較して4)。
【0073】
図12は、第2のヒストグラムArmsHist、及びその対応するCDF、CDFrmsを描いた低い干渉レベルの例1200を示す。低い干渉レベルの例1200のこのグラフは、ArmsHistバッファを使用して生成されたヒストグラム、及びその対応する計算されたCDFを示す。
【0074】
図13は、電力線干渉相殺を行う方法1300を示す。方法1300は、図1の装置100によって行われてもよい。方法1300は、ステップ1310でECGシステムからの信号の入力を含む。ステップ1320で、方法1300はコムフィルタを入力信号へ適用する。ステップ1330で、振幅及び位相は、フィルタにかけられた入力信号から推定され、振幅及び位相が発生する。ステップ1340で、特徴が検出され、特徴決定が提供される。
【0075】
方法1300は、ステップ1350で基準信号を提供する。ステップ1360で、基準信号は帯域通過フィルタを使用してフィルタにかけられる。ステップ1370で、帯域通過フィルタにかけられた基準信号の周波数が推定される。
【0076】
ステップ1380で、推定された振幅及び位相、特徴決定、及び推定した周波数を使用して、干渉が推定される。出力信号は、ステップ1390で、入力信号及び推定干渉から計算される。
【0077】
図13は、周波数推定が振幅及び位相推定に順次であることを含意するが、これらの推定は並列で実行されてもよい。特に、周波数推定は、約60秒の間隔で実行されてもよく、すなわち、ステップ1350~1370で記述するように、60秒毎に周波数が推定される。第1の周波数推定の後、振幅及び位相は、ステップ1310~1340及び1380~1390で記述するように、50ミリ秒毎に、各ECGチャネルに対して個別に推定される。
【0078】
図14は、第1のヒストグラム用に適応閾値を使用して特徴検出を行う方法1400を示す。方法1400は、ステップ1410でApeak/ArmsからRを決定することを含む。ステップ1420で、Rのヒストグラムが計算されてもよい。ヒストグラムが更新された後、そのCDFが計算され、THが、ステップ1430で、このCDFによって決定される。CDFの独立パラメータ(x軸)はR値であり、従属変数(y軸)は、例えば、図8に示されるように、このR値(パーセントで)までの累積的有病率である。THを計算するために、所望のパーセントのレベル、例えば、65%など、が設定されてもよく、CDFが最初にこのレベルを超えるところを探索する。対応するR値がTHである。R値は、最後の間隔、例えば、5秒など、の間に学習され、適切なTHをそれに応じて選択する。他のヒストグラムの閾値が同様のやり方で計算されてもよい。ステップ1440で、RはTHと比較される。ステップ1450で、特徴決定は干渉推定器に出力される。
【0079】
図15は、第2のヒストグラム用に適応閾値を使用して特徴検出を行う方法1500を示す。方法1500は、ステップ1510での干渉レベルの推定を含む。
【0080】
干渉レベルの推定が低い場合、次に、Armsがステップ1520で決定される。ステップ1530で、Armsのヒストグラムが計算され、そのCDFがステップ1535で計算され、THrmsを決定する。ステップ1540でTHrmsを使用して、ArmsがTHrmsと比較され、ステップ1550で特徴決定を出力する。
【0081】
干渉レベルの推定が高い場合、ステップ1560で、RFil
【0082】
【数39】
から決定される。ステップ1570で、RFilのヒストグラムが計算され、そのCDFがステップ1575で計算され、
【0083】
【数40】
を決定する。ステップ1580で
【0084】
【数41】
を使用して、RFil
【0085】
【数42】
と比較され、ステップ1590で特徴決定を出力する。
【0086】
図16は、電力線干渉相殺装置100が利用される装置1600のブロック図を示す。装置1600は、ECG機械の形態をとってもよい。装置1600は一連のリード線1610を含み、それらは単一の多重化入力1615へと漸減する。一連のリード線1610はヒト被験者1605上に配置されてもよい。一連のリード線1610と共に、又はそれとは別に(示すように)含まれてもよい追加のリード線1607は、心内リード線1607であってもよい。
【0087】
心内リード線1607は、患者1605の心臓1626の電位のマッピング用など、診断又は治療処置に使用されてもよい。あるいは、心内リード線1607は、変更すべきところは変更して、心臓内で又は他の人体器官内で、他の治療及び/又は診断目的のために使用されてもよい。
【0088】
リード線1607の遠位端1632が患者の心臓1626の室に入るように、心内リード線1607は患者1605の脈管系に挿入されてもよい。図16は単一の位置センサを備えた単一のリード線1607を示すが、本発明の実施形態は、1つを超える位置センサを備えたプローブを利用してもよい。
【0089】
一連のリード線1610上の信号は、入力マルチプレクサ1620を経由して、アナログフロントエンド1625へ入力される。アナログフロントエンド1625は、プロセッサ1630へ供給され、プロセッサ1630によって制御される。プロセッサ1630は、図のように、ビデオコントローラ1635、デジタル信号プロセッサ1640、マイクロプロセッサ1645、及びマイクロコントローラ1650を含んでもよい。プロセッサ1630はデータ記憶装置1655に結合される。データポート及びプリンタ1660はプロセッサ1630に結合されてもよい。ECGのハードコピー出力を提供するように、プリンタを含む、他の入力/出力装置1665がプロセッサ1630に結合されてもよい。ディスプレイ1670は、医師又は他の医療関係者にECGの信号の出力を提供するために使用されてもよい。装置1600を作動するために電力を供給するために、電力/電池管理システム1675が含まれてもよい。
【0090】
一連のリード線1610は、一般に使用される形態の電極及びリード線の両方を含む。一連のリード線1610は、人体1605と接触する導電性パッドを含んでもよく、それは心電計と電気回路を作る。標準12誘導ECGでは、10本のリード線1610しかない。一連のリード線1610は、肢、増高肢、及び前胸部の3つのセットに分類されてもよい。一般に、12誘導心電図は、合計で、冠状断面(垂直)に車輪のスポーク状に配列された3つの四肢誘導及び3つの増高肢誘導、並びに垂直横断面(水平)上に置かれた6つの胸部誘導を有する。
【0091】
アナログフロントエンド1625は、一連のリード線1610から信号を受け取り、信号のフィルタリングなどのアナログ処理を行う。
【0092】
データ記憶装置1655は、項[0072]のものを含む、情報を記録する任意の装置である。データ記憶装置は、装置1600内、及びプロセッサ1630の計算が記憶されるための場所を含む、信号の記憶媒体を提供してもよい。
【0093】
マイクロプロセッサ1645は、単一の集積回路(IC)、又はいくつかの集積回路にコンピュータの中央処理装置(CPU)の機能が組み込まれたコンピュータプロセッサであってもよい。マイクロプロセッサ1645は、デジタル又はバイナリデータを入力として受け付け、それをそのメモリ又はデータ記憶装置1655に記憶された命令に従って処理し、出力として結果を提供する、多目的、クロック駆動、レジスタベース、プログラマブル電子デバイスであってもよい。マイクロプロセッサ1645は、組合せ論理及び順序デジタル論理の両方を含む。
【0094】
マイクロコントローラ1650は、単一の集積回路上の1つ以上の小さいコンピュータであってもよい。マイクロコントローラ1650は、メモリ及びプログラム可能な入力/出力周辺装置と共に1つ以上のCPUを含んでもよい。強誘電体RAM、NOR型フラッシュ、又はOTP ROMの形態のプログラムメモリ、並びに小量のRAMもまた、多くの場合、チップに含まれている。様々な個別のチップからなるパーソナルコンピュータ又は他の汎用目的アプリケーションで使用されるマイクロプロセッサとは対照的に、マイクロコントローラは埋込みアプリケーション用に設計されている。
【0095】
デジタル信号プロセッサ1640は、デジタル信号処理を行って種々様々の信号処理演算を行ってもよい。このように処理された信号は、時間、空間、又は周波数などのドメインにおける連続変数のサンプルを表す数列である。デジタル信号処理は、線形又は非線形の演算を含むことができる。非線形信号処理は、非線形系識別と密接に関係があり、時間、周波数、及び空間-時間的ドメインで実装できる。デジタル計算の信号処理への応用は、伝送中の誤差検出及び訂正並びにデータ圧縮など多くの用途で、アナログ処理に比べて多くの利点を可能にする。DSPは、流動データ及び静的(記憶された)データの両方に適用可能である。
【0096】
本方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおいて実装することができる。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)回路、任意のその他の種類の集積回路(IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(HDL)命令及びネットリスト等その他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。このような処理の結果はマスクワークであり得、このマスクワークをその後半導体製造プロセスにおいて用いて、本開示の特徴を実装するプロセッサを製造する。
【0097】
本明細書に提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実行のために持続性コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装することができる。持続性コンピュータ可読記憶媒体の例としては、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。
【0098】
〔実施の態様〕
(1) 心電計(ECG)を行うためのシステムであって、
電気信号を捕捉するために被験者に取り付けるための複数のリード線と、
前記捕捉された電気信号を処理するための信号プロセッサであって、
複数の選択された周波数で干渉を強調するために前記捕捉された電気信号にコムフィルタを適用することと、
前記適用されフィルタにかけられた信号の振幅及び位相を推定することと、
特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために前記適用されフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第1の段階を行うことと、
特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために前記適用されフィルタにかけられた信号をフィルタリングする第2の段階を行うことと、
前記特徴検出、振幅及び位相を使用して干渉を推定することと、
前記信号から前記推定干渉を除去して電力線干渉が実質的にない信号を生成することと、によって処理する信号プロセッサと、
前記処理された捕捉電気信号を出力するための出力装置と、を含む、システム。
(2) 前記第1の段階が、
第1の値(R)をピーク振幅(Apeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から決定することと、
前記決定した第1の値(R)のヒストグラムの実行を計算して複数の信号統計を推定し、それに応じて閾値(TH)を決定することと、
前記決定した値(R)を前記決定した閾値(TH)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記第2の段階が、干渉が低いレベルか高いレベルかを決定するために前記干渉レベルを推定することを含む、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記推定中に低いレベルの干渉があることを条件に、
前記干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)を決定することと、
前記振幅の前記決定した平方自乗平均(Arms)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THrms)を決定することと、
前記振幅の前記平方自乗平均(Arms)を前記決定した閾値(THrms)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記推定中に高いレベルの干渉があることを条件に、
(第1の段階の)フィルタにかけられた信号のピーク振幅(AFilpeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から第1の値(RFil)を決定することと、
前記値(RFil)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THFil)を決定することと、
前記値(RFil)を前記決定した閾値(THFil)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様3に記載のシステム。
【0099】
(6) 前記捕捉された信号が、前記干渉の前記周波数を推定することによって更に処理される、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記干渉の前記推定した周波数が、前記コムフィルタの前記適用に用いられる、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記干渉の前記推定した周波数が、前記振幅及び前記位相の前記推定に用いられる、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記出力装置が、前記ECGのスクリーン表示及びハードコピー(printed copy)のうちの少なくとも1つを提供する、実施態様1に記載のシステム。
(10) ECGで使用される方法であって、
複数の選択された周波数で干渉を強調するために、受信した信号にコムフィルタを適用することと、
前記適用されフィルタにかけられた信号の振幅及び位相を推定することと、
特徴検出を使用して電力線干渉を除去するために、前記適用されフィルタにかけられた信号にフィルタリングの第1の段階を行うことと、
前記行われた第1の段階が特徴の分類を誤ったかどうかを決定して、特徴検出を使用して干渉を更に除去するために、前記適用されフィルタにかけられた信号に処理の第2の段階を行うことと、
前記特徴検出、前記信号の振幅及び位相を使用して干渉を推定することと、
前記信号から前記推定干渉を除去して電力線干渉が実質的にない信号を生成することと、を含む、方法。
【0100】
(11) 前記第1の段階が、
ピーク振幅(Apeak)と前記干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から値(R)を決定することと、
前記決定した値(R)のヒストグラムの実行を計算して累積分布関数(CDF)を計算して閾値(TH)を決定することと、
前記決定した値(R)を前記決定した閾値(TH)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記第2の段階が、干渉が低いレベルか高いレベルかを決定するために前記干渉レベルを推定することを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記推定中に低いレベルの干渉があることを条件に、
前記干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)を決定することと、
前記振幅の前記決定した平方自乗平均(Arms)の実行ヒストグラムを計算して累積分布関数(CDF)を計算して閾値(THrms)を決定することと、
前記振幅の前記平方自乗平均(Arms)を前記決定した閾値(THrms)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記推定中に高いレベルの干渉があることを条件に、
(第1の段階の)フィルタにかけられた信号のピーク振幅(AFilpeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から値(RFil)を決定することと、
前記値(RFil)の実行ヒストグラムを計算して累積分布関数(CDF)を計算して閾値(THFil)を決定することと、
前記値(RFil)を前記決定した閾値(THFil)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記第2の段階が、干渉が低いレベルか高いレベルかを決定するために前記干渉レベルを推定することを含む、実施態様10に記載の方法。
【0101】
(16) 前記推定中に低いレベルの干渉があることを条件に、
前記干渉高調波の前記振幅の平方自乗平均(Arms)を決定することと、
前記振幅の前記決定した平方自乗平均(Arms)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THrms)を決定することと、
前記振幅の前記平方自乗平均(Arms)を前記決定した閾値(THrms)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記推定中に高いレベルの干渉があることを条件に、
(第1の段階の)フィルタにかけられた信号のピーク振幅(AFilpeak)と前記振幅の平方自乗平均(Arms)との比から第1の値(RFil)を決定することと、
前記値(RFil)の実行ヒストグラムを計算して閾値(THFil)を決定することと、
前記値(RFil)を前記決定した閾値(THFil)と比較することと、
前記比較に基づいて特徴決定を出力することと、を更に含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記干渉の前記周波数を推定することを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(19) 前記干渉の前記推定した周波数が前記コムフィルタの前記適用に用いられる、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記干渉の前記推定した周波数が前記振幅及び前記位相の前記推定に用いられる、実施態様18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16