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特許7163072レンズ-パッケージ相互作用が低減したコンタクトレンズパッケージ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】レンズ-パッケージ相互作用が低減したコンタクトレンズパッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/22 20060101AFI20221024BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20221024BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B65D81/22
G02C7/04
G02C11/00
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018105873
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2018205742
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】15/612,090
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント・バレ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・カーニック
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ゴード
(72)【発明者】
【氏名】レスリー・ボス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・マクグラス
(72)【発明者】
【氏名】シドニー・ヒギンボトム
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-110592(JP,A)
【文献】国際公開第2012/168964(WO,A1)
【文献】米国特許第05515964(US,A)
【文献】国際公開第2009/069216(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/22
A45C 11/04
G02C 11/00
G02C 7/04
B65D 85/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置され、可撓性の材料から形成されたカバーと
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、前記カバーが前記球形部にシールされている際に、前記カバー内に窪みが形成されており、前記窪みは、たるみ深さを画定する凹面を有し、
所定の時間に渡って、第1のエンボス加工されたパターンを有する第1のダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、第1のエンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記第1のエンボス加工されたパターンとは異なる第2のエンボス加工されたパターンを有する第2のダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対する第2のエンボス加工を行って、第2のエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項2】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置され、可撓性の材料から形成されたカバーと
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、前記カバーが前記球形部にシールされている際に、前記カバー内に窪みが形成されており、前記窪みは、たるみ深さを画定する凹面を有し、
所定の時間に渡って、エンボス加工されたパターンを有するダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、エンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記ダイに対するカバーの位置を変化させて、前記ダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対するエンボス加工を行って、前記第1のレンズパッケージでの前記第1のカバーにおける前記エンボス加工されたパターンの位置とは異なる位置に配置されたエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項3】
前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターンが、前記窪みに形成されている、請求項1に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項4】
前記エンボス加工されたパターンが前記窪みに形成されている、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項5】
前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターン、装飾されたパターンである、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項6】
前記エンボス加工されたパターン、装飾されたパターンであるである、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項7】
前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項8】
前記エンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項9】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置され、可撓性の材料から形成されたカバーと、
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、
所定の時間に渡って、第1のエンボス加工されたパターンを有する第1のダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、第1のエンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記第1のエンボス加工されたパターンとは異なる第2のエンボス加工されたパターンを有する第2のダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対する第2のエンボス加工を行って、第2のエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項10】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置され、可撓性の材料から形成されたカバーと、
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、
所定の時間に渡って、エンボス加工されたパターンを有するダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、エンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記ダイに対するカバーの位置を変化させて、前記ダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対するエンボス加工を行って、前記第1のレンズパッケージでの前記第1のカバーにおける前記エンボス加工されたパターンの位置とは異なる位置に配置されたエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項11】
前記複数のカバーの各々の上に窪みを更に含み、前記窪みは前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターンを含む、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項12】
前記複数のカバーの各々の上に窪みを更に含み、前記窪みは前記エンボス加工されたパターンを含む、請求項10に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項13】
前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項14】
前記エンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項10に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項15】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、カバーを含み、
所定の時間に渡って、第1のエンボス加工されたパターンを有する第1のダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、第1のエンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記第1のエンボス加工されたパターンとは異なる第2のエンボス加工されたパターンを有する第2のダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対する第2のエンボス加工を行って、第2のエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項16】
偽造防止対策のための加工が施された複数のレンズパッケージを製造する方法であって、
前記複数のレンズパッケージの各々は、カバーを含み、
所定の時間に渡って、エンボス加工されたパターンを有するダイによって、前記複数のレンズパッケージにおける複数のカバーの内の第1のカバーに対するエンボス加工を行って、エンボス加工されたパターンを有する前記第1のカバーを含む第1のレンズパッケージを製造する工程と、
前記所定の時間の後に、前記ダイに対するカバーの位置を変化させて、前記ダイによって、前記複数のカバーの内の第2のカバーに対するエンボス加工を行って、前記第1のレンズパッケージでの前記第1のカバーにおける前記エンボス加工されたパターンの位置とは異なる位置に配置されたエンボス加工されたパターンを有する前記第2のカバーを含む第2のレンズパッケージを製造する工程と、を備える、複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項17】
前記複数のカバーの各々の上に窪みを更に含み、前記窪みは前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターンを含む、請求項15に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項18】
前記複数のカバーの各々の上に窪みを更に含み、前記窪みは前記エンボス加工されたパターンを含む、請求項16に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項19】
前記第1のエンボス加工されたパターン、又は、前記第2のエンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項15に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【請求項20】
前記エンボス加工されたパターン十字形、ヒトデ形、又は、三点星形である、請求項16に記載の複数のレンズパッケージを製造する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は一部継続出願であり、米国特許出願第15/234,354号(2016年8月11日に出願)の利益を主張する。同第15/234,354号は継続出願であり、米国特許出願第14/185,207号(2014年2月20日に出願、今は米国特許第9,439,487号)の利益を主張する。そして米国特許出願第14/185,207号は、米国特許出願第61/788,952号(2013年3月15日に出願)の非仮出願である。前述の関連米国特許出願の開示全体は、全ての目的のために参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、レンズパッケージの開封後、出荷後及び保存後のユーザーエクスペリエンスに関して、コンタクトレンズの能力を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
製造後、コンタクトレンズは、保存又は出荷中にそのパッケージングと相互作用する。これらの相互作用の影響を減らす取り組みが、種々の存在によっておこなわれている。全般的に、レンズとパッケージとの相互作用を最小化させることを最適化しなければならない。
【0004】
場合によっては、眼に装着した場合に折れ曲がらない場合であっても、保存中にレンズが折れ曲がる(又は少なくともわずかに折れ曲がる)例があり得ることが疑われる。レンズ材料の種類に応じて、このような折れ曲がりの影響は、取り扱いの不便さからレンズの光学特性への影響まで多岐にわたる。他の条件下では、レンズはホイルに「吸引カップされる」か、そうでなければホイルとパッケージとの間に貼り付けられる可能性がある。これらはそれぞれ、回避すべきレンズ-パッケージ相互作用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの相互作用を再検討した後、本発明者らは、歩留まり、スループット、及び使用資本に関する領域での高い生産効率を保持しながら、パッケージ内のレンズに対して「低ヘッドスペース」条件を形成することに成功した。言い換えれば、レンズとパッケージのカバーとの間に最小スペース(すなわち、「低い」「ヘッドスペース」)が提供されれば、レンズが折れ曲がるか又はひっくり返る(すなわち、レンズが裏返しになる)可能性を減らすのに有用であると思われる。また本発明者らは、レンズ特性にとって有用であるだけでなく、付加的な偽造防止対策のための検証方式に導入することができる固有の可視パターンをレンズパッケージに与える、低ホイル張り付き条件を考案した。
【0006】
「低ヘッドスペース」を提供するためのプロジェクトに伴うパラメータは、以下のとおりである。
・レンズデザインの保存-製造後のパッケージングとレンズとの相互作用を最小限にしなければならない。
・顧客体験-あらゆる否定的な顧客体験を回避しなければならない。
・滅菌-滅菌バリア(すなわち、ホイルとパッケージとの間のヒートシール)を、製造ライン上及び出荷中の両方について考慮しなければならない。
【0007】
以下の用語が使用される。
窪みのついたパッケージ:用語「窪みのついたパッケージ」は、ホイルをパッケージに結合するヒートシールリングの平面から内側に向けて(すなわち、パッケージボウル内に)ホイルの平面が突き出るように、パッケージのホイル内に凹形を加える行為を指す。これは、所与の溶液用量体積での、パッケージ中の利用可能なヘッドスペースを減少させる。
【0008】
窪み:ダイがホイルをパッケージに貼り付けるときにヒートシールダイの中央の一部がホイル上に押し付けられる場合、得られた凹面は、「窪み」と呼ばれる。
【0009】
たるみは、ヒートシールリングの上部によって画定される平面と窪みの頂点との間の距離を指す。
【0010】
変位量は、窪みの形状によって、ヒートシールリングの上部によって画定される基準面から変位した体積を指す。
【0011】
内径、又はID、又は直径は、ヒートシールリングの上部によって画定される平面と接触する、窪みの外径を指す。
【0012】
外径又はODは、窪みの最も外側の直径を指す。これは、窪みがIDより大きい直径を有するフランジを有する場合、IDと異なっていてもよい。
【0013】
取付特徴部は、窪みをヒートシールダイ内に固定することが可能である設計特徴部を指す。
【0014】
パターン又はエンボスは、パッケージ窪みがもたらす凹面全体よりも小さいスケールで形状を形成し、主要な凹部形状は変えない、ホイル上の形状を指す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
努力の結果として、2つの異なる技術を使用して、ヘッドスペースを減少させたレンズパッケージの配置が生み出された:
-他のパッケージ変化を伴うことなく、パッケージの球形部内の溶液の用量体積を増加させることによって(「過充填」)、又は
-現在の用量を維持しながらパッケージ上に特定形状の窪みを形成することによって。
-両方の選択肢の慎重に制御された組み合わせによって。
【0016】
以上のように、製造後の保存及び取り扱い中のレンズの折れ曲がりを、いずれかの方法を使用して減少させることができる。この改善は、製造中の物理的な実施にかかる時間はわずかであり(好ましくは、30分未満)、提供にかかるコストは非常に小さく、製造に及ぼす影響は実際上全くない。
【0017】
本発明によって記載されたパッケージは、全てヘッドスペースが減少している。これらの種類のパッケージのユーザにより提供された一般的なパラメータの入力から、その中に記載されている窪みと幾何学的に同等の(あるいはそれほど侵入的でない)窪みを含むパッケージを有することが選択された。そして具体的には、1.90mm以下のたるみ又は360μL以下の変位体積を有するパッケージを設計した。このような条件は、既存の主要なパッケージングと組み合わされると、出荷及び取り扱い中のレンズの折れ曲がり率の減少がもたらされることが見出された。また、低ヘッドスペースパッケージの中で「ホイルを下にした」配置で保存された又は長時間あったレンズは、ここで、「ホイルを上にした配置」で保存されたレンズに近い特性を有する。
【0018】
加えて、開示されたパッケージに偽造防止対策を付与するためのプロセスが開示されているため、パッケージを容易にコピーすることはできない。このことがひいては、対象となるコンタクトレンズは既知の製造業者によって調達された原物であるというより良好な保証をユーザに与える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本明細書で提供される特定の窪みを有するダイを示す図である。
図2】共に、球形部中に着座するコンタクトレンズの効果を示し、低ヘッドスペースを有さない(図2)か、低ヘッドスペースを有する(図3)図である。
図3】共に、球形部中に着座するコンタクトレンズの効果を示し、低ヘッドスペースを有さない(図2)か、低ヘッドスペースを有する(図3)図である。
図4】レンズパッケージのカバーと共に使用され、上にエンボス加工されたパターンを有する20mmの直径の窪みを形成する、ダイを示す図である。
図5】より大きいサイズパッケージと比べてより小さいサイズレンズパッケージ内で変位した体積の比較を説明する図である。
図6】本発明を形成するのに有用な他のタイプの窪みダイを示す図である。
図7】本発明を形成するのに有用な他のタイプの窪みダイを示す図である。
図8】本発明で見られる折れ曲がり率対充填体積のグラフである。
図9】窪みサイズ対折れ曲がり率を概説するチャートである。
図10】本発明の2つの構成を用いて得られるレンズ直径の散布プロットである。
図11】本発明の成功率のプロットである。
図12】ホイルパッケージカバーをエンボス加工するために使用するツールを示す図である。
図13a】本発明で説明するように、レンズに対する低ヘッドスペースを得るために使用すると偽造防止対策として有用なエンボス加工されたホイルのタイプの例を説明する図である。
図13b】本発明で説明するように、レンズに対する低ヘッドスペースを得るために使用すると偽造防止対策として有用なエンボス加工されたホイルのタイプの例を説明する図である。
図13c】本発明で説明するように、レンズに対する低ヘッドスペースを得るために使用すると偽造防止対策として有用なエンボス加工されたホイルのタイプの例を説明する図である。
図14a図13a、図13b、及び図13cの窪みのある蓋を含むパッケージを示す図である。
図14b図13a、図13b、及び図13cの窪みのある蓋を含むパッケージを示す図である。
図14c図13a、図13b、及び図13cの窪みのある蓋を含むパッケージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によって記載されるパッケージは、全てヘッドスペースが減少している。ヘッドスペースの減少は、生理食塩水溶液の調整、主要なパッケージのボウル上のホイルの凹部、又はこれらの組み合わせのいずれかによって得られる。特に、低ヘッドスペースを得るために使用される方法にかかわらず、出荷及び取り扱い中に折れ曲がったレンズの比例寸法を管理することは、ヘッドスペース及び特定のパッケージの形状に関連しているという点を理解することが重要である。ヘッドスペース(折れ曲がりの減少を実現するために望ましい空洞体積全体のパーセンテージとして表現される)は空洞形状自体に依存する。したがって、本明細書に含まれる実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ関連性のある実施例の役割を果たしている。
【0021】
これらの種類のパッケージのユーザにより提供された一般的な観察から、その中で記載されている窪みと幾何学的に同等(あるいはそれほど侵入的でない)窪みを含むパッケージを有することが選択された。たるみは、球形部開口よりもかなり小さい直径(即ち、続く実施例の場合、13mm直径の寸法群)の窪みのためのホイルのたわみを規定する、最も関連性のある量であろうと判断した。たるみは、小径の変位量よりも良好な測定基準であることが判明したが、それは、ホイルが、窪みそれ自体の計算幾何学的変位量以上に変位量をよく増加させるからである。計算変位量は、他方では、球形部直径に近い寸法の直径(即ち、20mm群)の窪みのためのホイルのたわみを規定する、最も関連性のある量でなければならない。
【0022】
実験
標準ホイル配置による低ヘッドスペース及び生理食塩水用量体積の増加の評価
実験の第1のセットでは、コンタクトレンズ製造ラインを、種々の量のヘッドスペース(全体積の34%(950μL、又はレンズパッケージで典型的)~7%(1350μL、又はボウルを完全に充填)を含む)を有するパッケージを製造する実験条件下で用いた。これらの実験中、ヘッドスペースの影響対折れ曲がりが評価された。
【0023】
図8のグラフに、異なるレベルのボウル充填(したがって、異なるヘッドスペース)に対して行なった「シミュレートされた出荷」テスト(製造ポイントから顧客への輸送を再現する)の後に折り曲がったレンズを示す。このグラフから、用量体積が約1150μL(又はヘッドスペースが21%)を超えたところで折り曲がったレンズの減少が観察される。
【0024】
パッケージに窪みを形成することによる低ヘッドスペースの評価
実験の第2セットでは、レンズボウル上のホイルにおいて窪みのダイを使用して、低ヘッドスペースを有するパッケージを作製し、その一例を図1に示す。このダイにより、図3に見られるような窪みをパッケージに作製した。図3に見られるように、ホイルカバーのたるみSがあり、これは、図2に見られるような以前の種類のコンタクトレンズパッケージにおいては容易に明らかではない。
【0025】
設計の第1段階中に、種々の窪み形状を、オフラインヒートシールユニットを使用して評価した。パッケージを、機械、及び、ダイがホイルに接近したときにホイルを内側に押し込む中央の部品を有するように変更されたヒートシールダイに送給した。同様に、また、本発明者らは、異なる窪みと用量体積の組み合わせによって、ヘッドスペースを減少させた。各デザインに対して約30レンズの数量を取り扱うことから、任意のタイプのチャンバドーム「バスタブ」容器を伴うレンズを試験して(リッドストック(lidstock)上の中心に置かれているか又は中心に置かれていないかにかかわらず)、レンズの約50%がホイルとボウルとの間に貼り付けられていた(言い換えれば、自由に動かない)と思われる。これらの選択肢は実行可能でないことが決定された。同様に、先細形状(楔)を有して製造されるパッケージは、ホイルに大量のしわを示し、これは、シールの品質及び無菌性に影響を及ぼす。これらの形状もまた、選択肢から排除された。
【0026】
この第1スクリーニングの後、なだらかに変遷する形状が適用に最も適していると決定された。そのような形状の例としては、球形、放物線形、又は楕円形に成形された窪みが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0027】
図9のグラフに表示するのは、パッケージ上のホイルにへこみをつける球形部分を有する窪みに関するヘッドスペースと折り曲がったレンズとの間の関係である。窪みの基準は、わずかに異なる窪みの設計に対応し、全てヘッドスペースを同様の体積だけ変化させる。(表記法として、グラフのx軸は、「外径/内径/たるみ」を示す)。図8のグラフでよく分かるように、より小さいヘッドスペースをもたらす窪みによって、シミュレートされた出荷テスト後の折り曲がりの低減が促進された。
【0028】
実験の第3セットでは、連続的な円形窪み形状のみが作製された。これらを標準の製造装置で測定した。パッケージは、13mmの窪みと20mmの窪みとの組み合わせに絞られた。20mmの窪みは、レンズがホイルに張り付かないことを確認しながらエンボス加工された幾つかの種類のパターンを有する。この研究で主に取り上げられたのは、単純なエンボス加工されたパターン対複雑な繰り返しパターンに注目することである。しかしながら、実際には、これらのパターンは、主要ホイル表面からレンズの端部を持ち上げ、それによって、ホイル上へカップが吸着する可能性を除去することが見出された。
【0029】
ユーザのための付加利益は、パッケージ上に審美的に望ましい形状を有するパターンを作製することが、以下によって可能となることである。
1-小さいパターンの場合、ホイルを「無光沢」にすることによって。
2-ホイル上の幾つかの文字を強調することによって。具体例は、商標名ACUVUE(登録商標)を強調するために、その下に1本のエンボス加工されたラインが引けることである(ACUVUE(登録商標))。
3-その他の審美的な心地よいパターンは、波、図案化された眼の形状である。これらの実施例は、本発明の原理を強調するように意図されており、これらの特定のパターンに限定されるものではない。
【0030】
試験された窪み:
-直径が20mmの球形部分。
-直径部分が13mmの球形部分。
-主な窪み部分上の1本又は複数本のラインのエンボス加工されたパターンによって、ヘッドスペースとホイルに対するレンズ配置とを変えることができる。
-エンボス加工された微細構造によって、ホイルの外観を変えるか(無光沢対光沢あり)又はホイルに対するレンズの位置を変える。
【0031】
図4は、レンズパッケージのカバーと共に使用され、その上にエンボス加工されたパターン(「単線」と呼ばれる)を有する20mmの窪みを形成するダイを示す。パターンを有するパッケージによって、レンズに不規則なホイル表面を与えると、たとえパッケージが「ホイルを下にした」位置に保存されていても、レンズの効果をわずかに変え得る吸引カッピングが回避されるという仮定が確認される。図10の表に、同様のヘッドスペースを有するパッケージに対する本発明の効果を示す。一方のセットのパッケージは、エンボス加工されたパターンを伴う20mm窪みを有し、他方のセットは、パターンを伴わない20mm窪みを有する。
【0032】
レンズとパッケージの相互作用を減少させることに加えて、これらの試験の結果として、幾つかの基本的機能設計についての考察を、窪みのついたパッケージングのために抽出した。これらの設計についての考察は、窪みの処理の更なる改善を強調するが、一般的な本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
-装着して中心に置く:窪みを好ましくは後面装着してヒートシールダイの中心に置かなければならない。前面に装着した窪みでは、組み立てるのが困難であった。後面に取り付けた窪みは、前面の滑らかな窪みを可能にし、センタリングシステムは、ボウルの中央でホイルを窪ませることを可能にする。偏った窪みは、上記のように、レンズが挟まれてパッケージと相互作用する領域を形成する場合がある。
-材料:窪みダイにとって最適な材料はステンレス鋼である。その理由は、ダイ材料と比べて熱伝達が遅いこと、並びにダイ材料と比べて耐磨耗性が高いことである。また、このような使用のために考えられ得るその他の窪みの材料は、セラミックス及びポリエーテルイミド若しくはポリエーテルエーテルケトンのような高耐熱プラスチックであろうが、これらに限定されない。
-外径:20mm直径の窪みの場合、窪みの下方のシャフトは直径が短く、熱伝達が限定されている。窪みとダイとの間のより低い熱伝達は、ヒートシール接触ゾーンの外側の領域においてホイルのポリマー層を溶解させるリスクを減少させるために望ましい。13mm径の窪みの場合、窪みは追加のフランジを有さず、またそれによって窪みとダイとの間により大きな空間を付与するであろうが、これは、熱伝達を制限するのに望ましく、洗浄時のアクセスを容易にするためのより大きな空間を提供する。直径は、ヒートシール径及び形状に固有のものであることに留意すべきである。ヒートシールと窪みとの間の任意の最適なギャップは、断熱性を高め、かつ取付/洗浄を容易にするが、これは、結果として生じる利益である。
【0033】
大きいたるみ/高い変位量の窪みは、パッケージ中のヘッドスペースを減少させるように設計されており、所望の範囲に対して気泡サイズを減少させるのに十分であり、900~1000μLの現在の最適な用量体積を変化させることがない。これを達成るために使用された2つの窪みダイ設計が、図6及び図7に記載されている。
【0034】
用量体積の増加と組み合わされた窪みの評価
レンズとパッケージの相互作用を減少させるのに十分な生理食塩水用量体積の増加は、幾つかの開封技術下で若干の溶液が開封時にパッケージから押し出されるという、幾許かの欠点を有する。これは顧客満足体験にとって最適ではない。また、同一の用量体積での、レンズとパッケージの相互作用を除去するのに十分なホイルの変形も、認識される欠点を有する。ホイル変形は、ヒートシール領域で生じるホイルの波うちのリスクを高めるほどに大きい。両方の技術をそれぞれわずかな程度に用いた解決策を評価した。
【0035】
実験の第4セットでは、より低いたるみ及び低い変位量の窪みを設計し、わずかに増加させた用量体積と対にした。既に述べたように、図3は、1つのこのような低いたるみ/低い変位量の窪みを示す。図11のチャートに表示するのは、2つの低たるみ-低変位の窪みの折れ曲がり率を、特定のヘッドスペース目標になる用量体積と組み合わせたものである。ヘッドスペースは、気泡直径によって定量化されている。これは、定量化の一例であり、本方法は、本発明の範囲を制限するものではない。全ての窪みは、有意な折れ曲がり率の改善を提供する。
【0036】
図12に見られるように、ホイルシートが押圧ステーションにおいて組立ラインに沿って押圧される。当然のことながら、このホイルシートはパッケージの球形部に既にシールされており、内部に、コンタクトレンズがその適切な配置で置かれ、一定量の生理食塩水が入れられている。ホイルシートは、このステーションでエンボス加工されて、本明細書で前述した形状又は美的に望ましい任意の他の形状などの形状にされる。
【0037】
驚くべきことに、エンボス加工を伴う構成によって、ある程度のレンズ安全性がパッケージにもたらされることが見出された。すなわち、エンボス加工自体は、美的であることに加えて、更に、吸引カッピングによってカバーシートにレンズが付着することを防止する。これによって、パッケージを開けたときのレンズ提示が改善される。加えて、いくつかのレンズは、レンズが折り曲げられると性能に影響が出るか、又はレンズがホイルリッドストックに長時間吸引カップされると光学的アーチファクトにさらされる。したがって、これらの蓋がエンボス加工されると光学性能も向上する。
【0038】
当然のことながら、レンズ安全性のこの改善は、ユーザが眼に付ける直前にレンズパッケージを開けたときに、適切な向きにあるレンズを見つけることがより確実になると言い換えることができる。このデザインによって吸引カッピングは小さくなり、デザインは種々のパッケージ構成に対して異なったものにすることができる。前述した実施例は、本発明を特定のパターンのリッドストックに限定することを意図するものではない。
【0039】
他の実施形態では、いくつかのエンボス加工形状を利用可能とすることができ、パッケージ内で使用するために製造する間に「回転させる」ことができる。これは、パッケージ内に配置されたレンズを(コード又はSKU番号によって)同様に回転させる間に行なえるため、エンボス加工形状は、その当時最新のレンズデザインに対する「検証コード」として機能することができる。図6、7に、より詳細には図13a、図13b、図13cに見られるように、ホイルシート上にエンボスを形成するために使用される種々のダイが存在し、結果として、これらのダイを用いながらホイルにエンボス加工がなされる。これらのエンボスは、図14a(十字形エンボス)、図14b(ヒトデ形エンボス)、及び図14c(三点星形エンボス)に見られる。
【0040】
製造時に、エンボスをコピーすることが比較的に容易であることが明らかとなった。その結果、特定のエンボスを用いるのは、その偽造が試みられる前の限定された時間のみでなければならない。この結果、製造業者は、偽造者よりも一歩先を行くことができる。コンタクトレンズは規制制限により貯蔵寿命が限られているため、偽造者がその当時最新のエンボスを模倣可能となるまでに、レンズ自体はその有用な貯蔵寿命を過ぎている(例えば、特定のロット番号が入力されている)。配給業者は、ホイルシート上で用いるその当時「最新」のエンボスのリストの一覧を利用することができる。リストのエンボスがパッケージ上のエンボスと一致する限り、実際にパッケージが本物であるということがより保証される。こうして、エンボスは、パッケージされたコンタクトレンズの信憑性の第2の検証として機能する。
【0041】
容認できる短い時間が経過したら、次に製造業者はエンボスを変えることができるため、任意の特定のエンボスが蓋上で使用されるのは非常に短時間の間のみである。こうして、製造業者は、製造プロセス中の低コストだが効率的な検証システムで、ユーザに信憑性を保証することを助ける。このプロセスによって、製造業者は偽造者の「一歩先を行く」ことができる。
【0042】
前述は、軽微な変更が加えられ得ることが理解されるべきであり、本発明の意図から逸脱せず、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物から理解されるべきである。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 偽造防止対策が内部に含まれたレンズパッケージであって、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置された概ね薄いカバーであって、前記カバーは概ね平坦である、カバーと、
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、前記カバーは概ね可撓性の材料から形成され、前記カバーが前記球形部にシールされると前記カバー内に窪みが形成され、前記窪みは、たるみ深さを画定する凹面を有し、前記凹面は前記球形部の前記体積から体積を変位させ、
前記偽造防止対策は、エンボスを配置するための前記カバー上の場所を含み、前記エンボスを所定の時間に変えることができる、レンズパッケージ。
(2) 前記窪みは前記エンボスを含む、実施態様1に記載のパッケージ。
(3) 前記カバーは、装飾エンボスを伴う窪みを含む、実施態様1に記載のパッケージ。
(4) 前記エンボスは十字形である、実施態様2に記載のパッケージ。
(5) 前記エンボスはヒトデ形である、実施態様2に記載のパッケージ。
【0044】
(6) 前記エンボスは三点星形である、実施態様2に記載のパッケージ。
(7) 前記エンボスは十字形である、実施態様3に記載のパッケージ。
(8) 前記エンボスはヒトデ形である、実施態様3に記載のパッケージ。
(9) 前記エンボスは三点星形である、実施態様3に記載のパッケージ。
(10) 偽造防止対策が内部に含まれたレンズパッケージであって、
周縁を有して体積を含む球形部と、
前記球形部上に配置された概ね薄いカバーであって、前記カバーは概ね平坦である、カバーと、
前記球形部内の溶液中に含まれるコンタクトレンズと、
を備え、
前記カバーは前記周縁において前記球形部にシールされ、前記カバーは概ね可撓性の材料から形成され、
前記偽造防止対策は、エンボスを配置するための前記カバー上の場所を含み、前記エンボスを所定の時間に変えることができる、レンズパッケージ。
【0045】
(11) 前記カバー上に窪みを更に含み、前記窪みは前記エンボスを含む、実施態様10に記載のパッケージ。
(12) 前記エンボスは十字形である、実施態様11に記載のパッケージ。
(13) 前記エンボスはヒトデ形である、実施態様11に記載のパッケージ。
(14) 前記エンボスは三点星形である、実施態様11に記載のパッケージ。
(15) 偽造防止対策が内部に含まれたレンズパッケージであって、前記偽造防止対策は、エンボスでエンボス加工することができる領域を含む前記パッケージ用のカバーを含み、製造業者が所定の時間に渡って前記エンボスを変えることができる、レンズパッケージ。
【0046】
(16) 前記カバー上に窪みを更に含み、前記窪みは前記エンボスを含む、実施態様15に記載のパッケージ。
(17) 前記エンボスは十字形である、実施態様16に記載のパッケージ。
(18) 前記エンボスはヒトデ形である、実施態様16に記載のパッケージ。
(19) 前記エンボスは三点星形である、実施態様16に記載のパッケージ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c