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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】測量方法、測量装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20221024BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
G01C15/06 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018129143
(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公開番号】P2020008406
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138802(JP,A)
【文献】特開平09-105628(JP,A)
【文献】特開2018-048867(JP,A)
【文献】特開2003-214851(JP,A)
【文献】特開2008-286768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全周反射プリズムおよび鉛直方向に配列したコード表示を備えたターゲット装置の検出および識別を、水平回転しつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うレーザースキャナを備えた測量装置により行う測量方法であって、
前記測量装置を水平回転させつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うステップと、
前記レーザースキャンの反射光に基づき、前記コード表示を検出するステップと
を有し、
前記レーザースキャナは、前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子を備え、
前記全周反射プリズムからの前記レーザースキャンの反射光により前記受光素子は飽和し、
前記鉛直面に沿ったレーザースキャンは、前記コード表示の側から前記反射プリズムに向って行なわれることで前記コード表示のコード情報の検出が行われる測量方法。
【請求項2】
前記全周反射プリズムと前記コード表示は、同じ鉛直線上に配置されている請求項1に記載の測量方法。
【請求項3】
前記全周反射プリズムおよび/または前記コード表示を前記レーザースキャンの反射光の強度に基づき検出するステップと、
該ステップの後に、相対的に高いスキャン密度に変更し、前記コード表示に対する再度のレーザースキャンを行うステップと
を有する請求項2に記載の測量方法。
【請求項4】
前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子が飽和した場合に、前記飽和する前の段階で得た点群データを前記コード表示の点群データとして取得するステップを有する請求項に記載の測量方法。
【請求項5】
全周反射プリズムおよび鉛直方向に配列したコード表示を備えたターゲット装置の検出および識別を、水平回転しつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うレーザースキャナを備えた測量装置により行う動作を制御するプログラムであって、
コンピュータに
前記測量装置を水平回転させつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うステップと、
前記レーザースキャンの反射光に基づき、前記コード表示を検出するステップと
を実行させ、
前記レーザースキャナは、前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子を備え、
前記全周反射プリズムからの前記レーザースキャンの反射光により前記受光素子は飽和し、
前記鉛直面に沿ったレーザースキャンは、前記コード表示の側から前記反射プリズムに向って行なわれることで前記コード表示のコード情報の検出が行われるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量に係る作業の自動化に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザースキャナを用いて測量を行う場合、レーザースキャナの外部標定要素(設置位置と姿勢)を正確に確定する必要がある。この作業では、位置が特定された複数のターゲット(反射プリズム)の位置をレーザースキャンにより取得し、後方交会法によりレーザースキャナの外部標定要素の算出が行われる。
【0003】
特許文献1には、TS(トータルステーション)と反射プリズムを用いた測量において、反射プリズムの近傍に画像から識別が可能な識別コードを配置し、画像解析により反射プリズムの識別を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-138802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、作業員が反射プリズムの大凡の視準を行い、その後、TSの探索機能を利用した反射プリズムの自動探索を行い、その上でカメラを用いた識別コードの認識を行っている。
【0006】
通常、反射プリズムを用いた測量では、多数の点の測量が行われるので、上記の作業が繰り返し行われる。この際、最初の大凡の視準は、作業員が行わなくてはならず、その負担が問題となる。なお、TSには、探索光を用いたターゲット(反射プリズム)の自動検出モードを備えたものもあるが、探索に時間がかかり、実際には、作業員による大凡の視準をまず行い、その後に探索の範囲を絞った自動探索が行われる。
【0007】
ターゲットの自動探索のスピードを高める研究も行われているが、探索のスピードを速めると、ターゲットの取りこぼしや誤検出の問題があり、求められる性能が得られていないのが現状である。
【0008】
また、ターゲットは複数の位置に設置され、各ターゲットを識別する必要があるが、特許文献1のような画像を用いた識別では、視準後に拡大画像の撮影を行う必要がある。この場合も視準の作業は必要となる。
【0009】
このような背景において、本発明は、測量装置によるターゲットの検出および識別を自動化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、全周反射プリズムおよび鉛直方向に配列したコード表示を備えたターゲット装置の検出および識別を、水平回転しつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うレーザースキャナを備えた測量装置により行う測量方法であって、前記測量装置を水平回転させつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うステップと、前記レーザースキャンの反射光に基づき、前記コード表示を検出するステップとを有し、前記レーザースキャナは、前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子を備え、前記全周反射プリズムからの前記レーザースキャンの反射光により前記受光素子は飽和し、前記鉛直面に沿ったレーザースキャンは、前記コード表示の側から前記反射プリズムに向って行なわれることで前記コード表示のコード情報の検出が行われる測量方法である。
【0011】
本発明において、前記全周反射プリズムと前記コード表示は、同じ鉛直線上に配置されている態様は好ましい。本発明において、前記全周反射プリズムおよび/または前記コード表示を前記レーザースキャンの反射光の強度に基づき検出するステップと、該ステップの後に、相対的に高いスキャン密度に変更し、前記コード表示に対する再度のレーザースキャンを行うステップとを有する態様は好ましい。
【0012】
発明において、前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子が飽和した場合に、前記飽和する前の段階で得た点群データを前記コード表示の点群データとして取得するステップを有する態様は好ましい。
【0014】
他の本発明は、全周反射プリズムおよび鉛直方向に配列したコード表示を備えたターゲット装置の検出および識別を、水平回転しつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うレーザースキャナを備えた測量装置により行う動作を制御するプログラムであって、コンピュータに前記測量装置を水平回転させつつ鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うステップと、前記レーザースキャンの反射光に基づき、前記コード表示を検出するステップとを実行させ、前記レーザースキャナは、前記レーザースキャンの反射光を受光する受光素子を備え、前記全周反射プリズムからの前記レーザースキャンの反射光により前記受光素子は飽和し、前記鉛直面に沿ったレーザースキャンは、前記コード表示の側から前記反射プリズムに向って行なわれることで前記コード表示のコード情報の検出が行われるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測量装置によるターゲットの検出および識別を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態のターゲット装置の概念図である。
図2】測量装置の外部標定要素を求める作業を行う場合の一例を示す図である。
図3】測量装置の斜視図である。
図4】測量装置の正面図である。
図5】測量装置の処理部のブロック図である。
図6】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1の実施形態
(ターゲット装置)
図1には、ターゲット装置100が示されている。ターゲット装置100は、後述する測量装置400(レーザースキャナを備えたトータルステーション)の外部標定要素を取得する作業に利用される。ターゲット装置100は、棒状の支持部材101を備えている。支持部材101には、全周反射プリズム102、識別表示を構成する全周バーコード表示部103、GNSS装置104が固定されている。
【0018】
ターゲット装置100は、支持部材101の下端101aを地面に接触させ、鉛直方向に沿って立てられた状態で使用される。また、ターゲット装置100は、図示しない電子水準器(電子水平器)を備え、この水準器を用いて鉛直に立てられる。以下、この鉛直方向に沿って立てられた状態におけるターゲット装置100の各部について説明する。
【0019】
支持部材101は、鉛直方向に延在している。全周反射プリズム102は、水平方向の全周(360°の範囲)からの入射光を180°向きを変えて反射する。全周反射プリズム102は、市販されているものを利用している。
【0020】
全周バーコード表示部103は、円筒形状を有している。この円筒形状の表面には、ターゲット装置100を識別し特定するための1次元バーコード表示が形成されている。この1次元バーコード表示は、支持部材101の延在方向、すなわち鉛直方向に沿ってコードが表示されている。このバーコード表示は、環状の光学反射部分と光吸収部分の組み合わせにより構成されている。この例では、白と黒の環状で帯状の模様の組み合わせにより鉛直方向に沿ったバーコード表示が構成されている。光反射性の部材としてアルミ等の金属を利用することもできる。
【0021】
全周バーコード表示部103は、円筒形状を有しているので、水平方向の周囲360°の方向から読み取ることができる。全周バーコード表示部103として、四角柱や六角柱等の多角柱構造のものを採用してもよい。また、バーコードとして2次元バーコードや文字コードを利用することもできる。
【0022】
GNSS装置104は、GNSS航法衛星からの航法信号を受信するアンテナ、当該アンテナが受信した航法信号を受信する電子回路、航法信号に基づき位置情報を算出する位置算出部、算出した位置情報の信号を出力する信号出力回路を備えている。これらの構成は、通常のGNSS装置(所謂GPS受信機)と同じである。この例において、GNSS装置104は、RTK法等の相対測位を利用した高精度の測位を行う。
【0023】
この例において、GNSS装置104は、全周反射プリズム102の位置を計測する。この処理は、以下のようにして行われる。まず、GNSS装置104のアンテナ部分と、全周反射プリズム102の反射中心の位置関係は予め求められている。GNSS装置104は、GNSSから得られた測位データを、上記の位置関係と図示しない電子水準器の出力に基づき補正し、全周反射プリズム102の位置(反射中心の位置)を算出する。
【0024】
GNSS装置104の出力と図示しない電子水準器の出力は、端末105に送信される。通信の方法は、有線または無線(例えば無線LAN等)により行われる。端末105は、携帯型コンピュータであり、例えばタブレットやスマートフォンが利用される。端末105として専用のハードウェアを用意してもよい。
【0025】
この例では、ターゲット装置100の位置として、全周反射プリズム102の位置を用いる。よって、以降の説明において、ターゲット装置100の位置というのは、全周反射プリズム102の位置のことである。
【0026】
端末105は、後述する測量装置400と通信が可能である。端末105は、液晶ディスプレイ等の表示ディスプレイを備え、この表示ディスプレイには、測量装置400から送られてくる各種の情報や地図情報が表示される。例えば、この表示ディスプレイには、電子地図が表示される。この電子地図には、GNSS装置104が計測したターゲット装置100の位置、図示しない電子水準器が計測したターゲット装置100の傾き、ターゲット装置100の設置位置へのガイド表示、ターゲット装置100を携帯する作業者への各種の指示情報等が表示される。
【0027】
(ターゲット装置の利用状況)
図2には、ターゲット装置100を利用して測量装置400の外部標定要素(位置と姿勢)を求める作業を行う場合の一例が示されている。図2には、測量装置400、測量装置400の周囲に設置された複数(この場合は、4つ)のターゲット装置100が示されている。
【0028】
図2の例では、ターゲット装置100を作業者110が手に持って移動し、設置点にターゲット装置100を手で支えた状態で設置し、ターゲット装置100の測位を行う場合が示されている。測量装置400を自立できる構造とし、設置点で自立した状態とする形態も可能である。ここでは、ターゲット装置100の設置点を予め定めておく形態を説明するが、現場で設置点を決める形態も可能である。
【0029】
また、図2の例では、ターゲット装置100が4つ示されているが、4つを同時に配置し、それに対して測量装置400からの測位を行う形態、1つを用いて4ヵ所の測位を順次行う形態、2台を用いてそれぞれ2ヵ所(計4ヵ所)の測位を行う形態も可能である。なお、測量装置400の外部標定要素を求めるには、測位点が最低3ヵ所必要である。通常は、3ヵ所以上のなるべく多くの点を測位点(基準点)として、測量装置400の外部標定要素の算出が行われる。
【0030】
(測量装置)
以下、図2の測量装置400について説明する。図3には、測量装置400の斜視図が示され、図4には、測量装置400の正面図が示されている。測量装置400は、トータルステーションとして機能するTS機能部200と、レーザースキャナとして機能するレーザースキャナ部300を複合化した構造を有している。
【0031】
TS機能部200は、TS(トータルステーション)としての機能を発揮する。TSについては、例えば特開2009-229192号公報、特開2012―202821号公報に記載されている。
【0032】
レーザースキャナ部300は、レーザースキャンにより三次元点群データ(以下、点群データ)を得る。レーザースキャナに係る技術については、例えば特開2010-151682号公報、特開2008-268004号公報、米国特許第8767190号公報等に記載されている。また、レーザースキャナとして、米国公開公報US2015/0293224号公報に記載されているようなスキャンを電子式に行う形態も採用可能である。
【0033】
レーザースキャナ部300は、TS機能部200の測距光の光軸を含む鉛直面(図3のY-Z面)に沿ったレーザースキャン(高低角方向へのレーザースキャン)を行う。水平回転部11を水平回転させながら、上記の鉛直面に沿ったレーザースキャンを行うことで、上方も含めた周囲360°のレーザースキャンが可能となる。勿論、特定の範囲に絞ってのレーザースキャンも可能である。
【0034】
レーザースキャナ部300により得られる点群データは、測量装置400を原点するローカル座標系で得られる。このローカル座標系における原点の位置は、水平回転部11および鉛直回転部13の回転によって位置が変化しない点が予め選ばれている。ここで、測量装置400の絶対座標系における外部標定要素(位置と姿勢)が判れば、絶対座標系における点群データが得られる。絶対座標系とは、例えばGNSSで用いられる座標系である。絶対座標系では、経度、緯度、平均海面からの高度で位置が特定される。
【0035】
測量装置400は、水平回転部11を有している。水平回転部11は、台座12上に水平回転が可能な状態で保持されている。台座12は図示しない三脚の上部に固定される。水平回転部11は、上方に向かって延在する2つの延在部を有する略コの字形状を有し、この2つの延在部の間に鉛直回転部13が高低角(仰角および俯角)の制御が可能な状態で保持されている。
【0036】
水平回転部11は、台座12に対して電動で水平回転する。鉛直回転部13は、電動により鉛直面内で回転する。水平回転部11には、水平回転角制御ダイヤル14aと高低角制御ダイヤル14bが配置されている。水平回転角制御ダイヤル14aを操作することで、水平回転部11の水平回転角の調整が行なわれ、高低角制御ダイヤル14bを操作することで、鉛直回転部13の鉛直面内での高低角(仰角および俯角)の調整が行なわれる。
【0037】
鉛直回転部13の上部には、大凡の照準を付ける照準器15aが配置されている。また、鉛直回転部13には、照準器15aよりも視野が狭い光学式の照準器15bと、より精密な視準が可能な望遠鏡16が配置されている。
【0038】
鉛直回転部13の内部には、照準器15bと望遠鏡16が捉えた像を接眼部17に導く光学系が収納されている。照準器15bと望遠鏡16が捉えた像は、接眼部17を覗くことで視認できる。また、鉛直回転部13の内部にはカメラと、望遠極16が捉えた像をこのカメラに導く光学系が収納されている。望遠鏡16が捉えた像は、上記のカメラによって撮影可能である。
【0039】
望遠鏡16は、測距用のレーザー光と測距対象(全周反射プリズム102)を追尾および捕捉するための追尾光の光学系を兼ねている。測距光と追尾光の光軸は、望遠鏡16の光軸と一致するように光学系の設計が行なわれている。この部分の構造は、市販されているTSと同じである。
【0040】
水平回転部11には、ディスプレイ18と19が取り付けられている。ディスプレイ18は、操作部210と一体化されている。操作部210には、テンキーや十字操作ボタン等が配され、測量装置400に係る各種の操作やデータの入力が行なわれる。ディスプレイ18と19には、測量装置400の操作に必要な各種の情報や測量データ等が表示される。前後に2つディスプレイがあるのは、水平回転部11を回転させなくても前後のいずれの側からでもディスプレイを視認できるようにするためである。
【0041】
水平回転部11の上部には、レーザースキャナ部300が固定されている。レーザースキャナ部300は、第1の塔部301と第2の塔部302を有している。第1の塔部301と第2の塔部302は、結合部303で結合され、結合部303の上方の空間(第1の塔部301と第2の塔部302の間の空間)は、スキャンレーザー光を透過する部材で構成された保護ケース304で覆われている。保護ケース304の内側には、第1の塔部301から水平方向に突出した柱状の回転部305が配置されている。回転部305の先端は、斜めに切り落とされた形状を有し、その先端部には、斜めミラー306が固定されている。
【0042】
回転部305は、第1の塔部301に納められたモータにより駆動され、その延在方向(水平方向)を回転軸として回転する。第1の塔部301には、上記のモータに加え、このモータを駆動する駆動回路、その制御回路、回転部305の回転角を検出するセンサ、該センサの周辺回路が納められている。
【0043】
第2の塔部302の内部には、レーザースキャン光を発光するための発光部、対象物から反射してきたレーザースキャン光を受光する受光部、発光部と受光部に関係する光学系、レーザースキャン点までの距離を算出する距離算出部が納められている。レーザースキャン点の三次元位置は、回転部305の回転角度、水平回転部11の水平回転角およびレーザースキャン点までの距離に基づき算出される。レーザースキャン点の三次元位置の算出は、レーザースキャナ部300または水平回転部11の内部に配置されたレーザースキャン制御部501(図5参照)において行われる。
【0044】
レーザースキャン光は、1条であり、第2の塔部302の内部から斜めミラー306に向けて照射され、そこで反射されて透明なケース304を介して外部に照射される。レーザースキャン光は、数kHz~数百kHzの繰り返し周波数で発光部からパルス発光され、それが回転する回転部305先端の斜めミラー306に水平方向から照射され、そこで直角に反射される。回転部305が水平軸回りに回転することで、レーザースキャン光は、望遠鏡16の光軸を含む鉛直面に沿って(高低角方向に)スキャンされつつ放射状に点々とパルス照射される。
【0045】
上記のレーザースキャンは、TS機能部200の光軸(望遠鏡16の光軸)を含む鉛直面内で行われる。例えば、TS機能部200の光軸がY軸に一致する場合、レーザースキャナ部300から行われるレーザースキャン光はX=0の位置におけるY-Z面に含まれ、当該Y-Z面に沿って行われる。
【0046】
そして、上記のレーザースキャンを、水平回転部11を水平回転させながら行うことで、必要とする範囲での三次元的なレーザースキャンが行われる。
【0047】
対象物から反射したスキャン光は、照射光と逆の経路を辿り、第2の塔部302内部の受光部で受光される。スキャン光の発光タイミングと受光タイミング、さらにその際の回転部305の角度位置(高低角:仰角または俯角)と水平回転部11の水平回転角により、レーザースキャン点(スキャン光の反射点)の測位が行なわれる。測位の原理は、通常のレーザー測距の場合と同じである。
【0048】
上記の測位は、多数のスキャン点それぞれについて行われ、各スキャン点の三次元座標が取得される。この各スキャン点の三次元座標を得ることで点群データが得られる。
【0049】
スキャン対象におけるスキャン点の密度(スキャン密度)は、スキャンレーザー光の発振周波数(パルス間隔)、水平回転部11の回転速度、回転部305の回転速度によって調整できる。
【0050】
(処理部)
測量装置400は、図5の処理部500を備えている。処理部500は、測量装置400に係る各種の処理を行う。処理部500は、コンピュータとしての機能を有し、マイコンや各種の電子回路により構成されている。
【0051】
処理部500は、レーザースキャン制御部501、点群データ取得部502、プリズム反射光判定部505、コード表示検出判定部503、プリズム反射光判定部504、デコード部505、デコードデータ取得部506、点群データに基づくコード表示までの距離Lの算出部507、コード表示までの距離Lに基づくコード表示におけるスキャン間隔Dの算出部508、コード表示の表示パターンの最小間隔dとスキャン間隔Dの関係判定部509、スキャン密度調整部510、TS機能制御部511を有している。
【0052】
レーザースキャン制御部501は、レーザースキャナ部300による点群データの取得に係る制御および処理を行う。この例では、スキャンレーザー光の反射点それぞれの三次元座標と反射光の強度のデータが点群データとして取得される。点群データ取得部502は、レーザースキャナ部300が得た点群データを取得する。
【0053】
コード表示検出判定部503は、点群データに含まれる反射光の強度のデータに基づき、全周バーコード表示部103のバーコード情報の検出状態を判定する。例えば、当該バーコード情報の30%がデコード成功、当該バーコード情報の50%がデコード成功、当該バーコード情報の100%がデコード成功といった判定を行う。
【0054】
プリズム反射光判定部504は、点群データの中に、全周反射プリズム102からの反射光に基づくものがあるか否かを判定する。全周反射プリズム102は、鏡面を用いて構成されており、レーザースキャン光を高い反射効率で反射する。そのため、全周反射プリズム102からの反射光の強度が最も大きい。このことを利用して、全周反射プリズム102からの反射光を検出する。
【0055】
具体的には、検出した光の強度を閾値で判定し、特定の閾値を超える光を全周反射プリズム102からの反射光として検出する形態が挙げられる。また、レーザースキャナの受光素子の飽和状態を検知することで、全周反射プリズム102からの反射光の検出を認識する形態も可能である。
【0056】
一般に、レーザースキャナの受光素子として、フォトダイオードやフォトトランジスタを用いた場合に、耐入力を超える強度の光を受光すると、入力オーバーとなり特性が飽和する。この現象が生じると、数μsec~数十μsec程度の期間、出力が飽和した状態(例えば、異常値が出力された状態)が持続し、正確な光検出ができなくなる。この現象を検出することで、全周反射プリズム102からの反射光の受光があったと判定できる。
【0057】
なお、上記の受光素子の飽和現象を利用する場合、レーザースキャン光の発光強度、利用する全周反射プリズム102、受光部の素子、および光学系の設定等の組み合わせを予め調整し、全周反射プリズム102からの反射光で受光素子が飽和し、そうでない反射光の場合は受光素子が飽和しない条件を探索しておく。
【0058】
デコード部505は、点群データに含まれる反射強度の情報に基づき、全周バーコード表示103のバーコード情報を読み取り、当該バーコード情報から全周バーコード表示103の識別情報(ターゲット装置100の識別情報)をデコードする。バーコードの読み取りは、スキャン光の反射光の強弱のパターンを読み取ることで行われる。これは、通常のバーコードのデコードの場合と同じである。
【0059】
デコードデータ取得部506は、デコード部505でデコードされた全周バーコード表示103のコード情報(ターゲット装置100の識別情報)を取得する。点群データに基づくコード表示までの距離Lの算出部507は、全周バーコード表示部103からの反射光に基づき、測量装置400から全周バーコード表示部103の反射面までの距離Lを算出する。以下、この処理の一例を説明する。まず、コード表示検出判定部503の判定に利用した点、またはコード表示検出判定部503からの反射光に基づくと見なせる点のデータを抽出する。次に、抽出した点のデータに含まれる三次元情報から、測量装置400と当該点との間の距離Lを算出する。
【0060】
「コード表示までの距離Lに基づくコード表示におけるスキャン間隔Dの算出部」508は、上記Lの算出の対象となった点の部分におけるスキャン間隔(隣接するスキャン点の間の距離)Dの算出を行う。この算出は、以下のようにして行われる。まず、スキャン条件から、当該点の取得時における鉛直方向(上下方向)において隣接するスキャンパルス光の光軸の開き角θを取得する。
【0061】
ここで、Dを円弧で近似した場合、半径L、中心角θの円弧Dは、D=θ×Lで示される。Lは、点群データに基づくコード表示までの距離Lの算出部507で算出され、θはスキャン条件から得られるので、上記の関係式を用いて、スキャン間隔Dが算出される。
【0062】
例えば、スキャンレーザー光の発光周波数が50kHz、回転部305の回転数が毎秒5回転、L=50mであるとする。この場合、1回転当たりのパルス数は、10000発となり、θ=2π/10000となる。よって、D=(2π/10000)×50≒3cmとなる。
【0063】
「コード表示の表示パターンの最小間隔dとスキャン間隔Dの関係判定部509」は、dとDの関係が、全周バーコード表示部103のバーコード表示の読み取りが適切に行える関係にあるのか否か、を判定する。
【0064】
例えば、当該バーコード表示のバーの幅および間隔の最小値dが、d<Dの場合、スキャン点が得られないバーまたはバーの隙間が存在する場合が有り得る。この場合、d>Dとすることで、バーおよびバーの隙間にスキャン光が確実に当たり、全周バーコード表示部103のバーコード表示からの反射光を取りこぼし無く得られる。
【0065】
スキャン密度調整部510は、上述したd>Dとなるようにレーザースキャンの条件を調整する。TS機能部制御部511は、測量装置400におけるTS機能部200の動作制御を行う。この動作制御は、市販されているTSの動作制御と同じである。
【0066】
(処理例)
以下、図2の状況において、測量装置400の絶対座標系における外部標定要素を求めるための作業の一例を説明する。勿論、適当なローカル座標系を用い、そこでの外部標定要素を求める処理も可能である。
【0067】
測量装置400の外部標定要素を求めるのは、測量装置400のレーザースキャン機能を用いたレーザースキャンにより、点群データを取得するためである。絶対座標系における測量装置400の外部標定要素を取得することで、レーザースキャンによる絶対座標系における三次元点群データを得ることができる。
【0068】
一般に、レーザースキャンは、死角(オクル―ジョン)をなくすために、複数の視点から行われる。この際、各視点(測量装置400の設置位置)の外部標定要素が絶対座標系上で得られていれば、各視点から得られる三次元点群データを同一の座標系上(絶対座標系上)で統合し易い。
【0069】
異なる視点から得られた三次元点群データ同士のマッチング処理は、処理の負担が大きく、また誤差や演算エラーの問題がある。この点、異なる視点であっても、同一の座標系上で三次元点群データが得られれば、この問題は回避できる。この技術では、複数の視点毎に絶対座標系上におけるレーザースキャナ(この場合は、測量装置400)の外部標定要素を取得する必要がある。この外部標定要素の取得が図6の処理により行われる。
【0070】
ここでは、ターゲット装置100を用いて測量装置400の外部標定要素を求める。この処理では、(1)まず測量装置400を設置する。この段階で、測量装置400の位置と姿勢は未知である。(2)ターゲット装置100を設置する。(3)ターゲット装置100の位置を、GNSSを用いた相対測位によって求める。(4)測量装置400のTS機能を用いてターゲット装置100の測位を行う。
【0071】
ターゲット装置100の設置位置を変えながら、上記の作業を繰り返すことで、測量装置400の周囲に位置が特定された基準点(標定点)が複数得られる。そして、後方交会法により、絶対座標系における測量装置400の位置と姿勢、即ち外部標定要素が特定される。後方交会法については、例えば特開2013―186816号公報に記載されている。測量装置400の絶対座標系における外部標定要素を得た後、測量装置400を用いてレーザースキャンやTSの機能を用いた各種の測量が行われる。
【0072】
上記の測量装置400の外部標定要素の取得に係る作業の際、ターゲット装置100を測量装置400で捕捉し、ロックする必要がある。本実施形態では、点群データを得るためのレーザースキャナ部300のレーザースキャン機能を用いて、ターゲット装置100の捕捉およびコード情報の読み取りを行う。以下、この際の処理の一例を説明する。
【0073】
図6は、ターゲット装置100の捕捉を行うための処理の手順を示すフローチャートである。図7は、図6のステップS104の詳細を示すフローチャートである。図6および図7の処理を実行するためのプログラムは、適当な記憶領域に記憶され、図5の処理部500によって実行される。このプログラムを外部の記憶媒体に記憶させる形態も可能である。
【0074】
まず、測量装置400をレーザースキャンに適した位置に設置する(ステップS101)。この位置は予め大凡定めておくが、その場で決めてもよい。次に、測量装置400から見通せる複数の位置それぞれに、ターゲット装置100を設置する。(ステップS102)。
【0075】
この状態の一例が図2に示されている。この例では、作業員110がターゲット装置100を手に持って移動し、予め定めた位置(基準点)にターゲット装置100を設置する。この際、予めターゲット装置100の設置位置を決めておき、その位置を作業員110が手にした端末105に表示し、作業員110の誘導が行われる。
【0076】
ここで、測量装置400の外部標定要素の精度を高める上で、測量装置400を囲むようにして、複数のターゲット装置100を設置することは好ましい。
【0077】
ターゲット装置100を設置したら、測量装置400のレーザースキャン機能を用いて、周囲のレーザースキャンを行う(ステップS103)。この処理は、レーザースキャン制御部501によって行われる。このレーザースキャンは、スキャン範囲を制限して行う形態も可能である。この際、測量装置400の周囲に設置された複数のターゲット装置100が全てスキャンされるようにスキャン範囲を設定する。
【0078】
ステップS103を実行することで、測量装置400周囲の点群データ(レーザースキャンデータ)が得られる。この点群データは、点群データ取得部502で取得される。なお、レーザースキャンの方向は、上から下にスキャンが行われるように設定される。これは、スキャン光が最初に全周バーコード表示部103に当たり、次いで全周反射プリズム102に当たるようにするためである。
【0079】
以下、レーザースキャンを上から下に向かって行う理由について説明する。本実施形態では、全周反射プリズム102の反射率は、全周バーコード表示部103のバーコード表示の反射面の反射率よりも高くなるように設定されている。また、全周反射プリズム102と全周バーコード表示部103は、鉛直線上に配列されている。
【0080】
全周反射プリズム102の反射率は高いので、そこで反射するレーザースキャン光の強度は大きく、レーザースキャナ部300の受光素子が飽和する場合がある(意図的にそのように設定する形態も可能である)。この受光素子の飽和が発生すると、その飽和状態が暫く持続し、その後のスキャン反射光の検出が正常にできない状態となる。全周バーコード表示部103にスキャン光が当たるタイミングでこの現象が生じると、バーコード情報の検出ができなくなる。この問題の影響を回避するために、最初に全周バーコード表示部103にスキャン光が当たり、その後に全周反射プリズム102にスキャン光が当たりようにしている。
【0081】
レーザースキャンによる点群データを得たら、この点群データ(レーザースキャンデータ)に基づく全周バーコード表示103の検出処理を行う(ステップS104)。この処理の詳細を図7に示す。
【0082】
図7の処理は、点群データを取得しつつ、平行して行われる。勿論、一通り点群データを得た後で、図7の処理を行ってもよい。
【0083】
図7の処理では、まず、全周バーコード表示103のバーコード表示の少なくとも一部が検出できたか否か、の判定が行われる(ステップS201)。この処理は、コード表示検出判定部503で行われる。
【0084】
この処理では、(1)全周バーコード表示103のバーコード表示を構成する反射面からの反射光が検出されたか否か、が閾値を用いて判定され、更に(2)当該反射光が2点以上鉛直方向に存在しているか、が判定される。この2つの判定がYESの場合、ステップS201の判定がYESとなる。
【0085】
ステップS201がYESの場合、上記(1)の反射面からの反射光と同一鉛直線上から反射プリズム102の反射光が得られたか否か、が判定される(ステップS202)。この処理は、プリズム反射光判定部504で行われる。
【0086】
反射プリズム102の反射光が得られている場合、ステップS203に進み、ステップS201で得た全周バーコード表示部103のコード情報(バーコード情報)が不足しているか否か、すなわち当該全周バーコード表示103のバーコード情報を完全にデコードできているか否か、が判定される。この処理は、デコード部505で行われる。
【0087】
ステップS203における判定で、コード情報に不足はなく、全周バーコード表示103を識別できる場合、ステップS209に進む。ステップS209では、当該バーコード情報が取得される。この処理は、デコードデータ取得部506で行われる。
【0088】
ステップS203における判定で、コード情報に不足があり、全周バーコード表示103の固有識別情報を識別できない場合、ステップS204に進む。ステップS204では、ステップS201またはステップS203で判定の対象となった全周バーコード表示103からの反射光に基づく点群データを取得する。すなわち、ステップS204では、全周バーコード表示103の点群データを取得する。
【0089】
全周バーコード表示103の点群データを得たら、当該点群データに基づき、測量装置100から全周バーコード表示103までの距離Lを算出する(ステップS205)。この処理は、点群データがスキャン点までの距離データに基づくことを利用して行われる。この処理は、点群データに基づくコード表示までの距離Lの算出部507で行われる。
【0090】
次に、ステップS205で得た距離Lに基づき、全周バーコード表示103の部分におけるレーザースキャン点の間隔Dを算出する(ステップS206)。Dは、ここで対象となっている全周バーコード表示103のスキャン方向(鉛直方向)における隣接するスキャン点の間隔である。ステップS206の処理は、「コード表示までの距離Lに基づくコード表示におけるスキャン間隔Dの算出部」508で行われる。
【0091】
次に、D<dとなるように条件を変更した上で再レーザースキャンが行われる(ステップS207)。この再レーザースキャンは、全周バーコード表示103が延在する鉛直線上において行われる。
【0092】
上記のスキャン条件の変更は、スキャン光のパルス周波数を高める、回転部305の回転速度を下げる、あるいはその両方により行われる。
【0093】
ステップS207の再レーザースキャンを行ったら、当該再レーザースキャンによる点群データを取得する。そして、各点の反射光強度の強弱から、全周バーコード表示103のバーコード表示の読み取りを行う(ステップS208)。
【0094】
以上の工程により、図6のステップ104における処理が行われる。図6に戻り、ステップS104の後、ステップS105に進む。ステップS105では、ステップS202で検出した全周反射プリズム102の測量装置400から見た方向を取得する。
【0095】
そして、予め登録されているターゲット装置100の中で未検出のものがあれば、ステップS106の判定がNOとなり、S104以下の処理が繰り返される。こうして、測量装置400から見た、複数のターゲット装置100の識別情報と方向が取得される。
【0096】
以下、フローチャートによる説明は行わないが、測量装置400の外部標定要素を求める処理について簡単に説明する。まず、各ターゲット装置100の絶対座標系における位置を、GNSS装置104を用いた相対測位により求める。
【0097】
次に、図6の処理で得られた各ターゲット装置100の識別情報と、測量装置400から見た方向の情報に基づき、測量装置400が有するTSの機能を利用して、全周反射プリズム102の精密な測位が行われる。この際、測量装置400から見たターゲット装置100の方向は既知であるので、TS機能を用いたターゲット装置100の測位は自動でスムーズに行える。なお、TS機能を用いず、ステップS202で得たレーザースキャン情報に基づく全周反射プリズム102の測位データを用いることもできる。
【0098】
そして、各ターゲット装置100と測量装置400を結ぶ方向線、および絶対座標系における各ターゲット装置100の位置に基づき、後方交会法により、測量装置400の外部標定要素を算出する。
【0099】
(優位性)
レーザースキャンによるターゲットの探索および識別が自動で行われ、作業員による視準の作業を必要としない。このため、ターゲットの視準および識別に係る作業を簡素化できる。
【0100】
2.第2の実施形態
全周反射プリズム102からの反射光の強度が大きいことに起因して、レーザースキャナの受光素子が飽和する現象を利用して、全周バーコード表示103への再スキャンを行い、レーザースキャンによる全周バーコード表示部103からのコード情報の読み取りを行う態様も可能である。以下、この態様を説明する。
【0101】
図8に処理の手順の一例を示す。なお、スキャンの方法やステップS205以下の処理は、図7の場合と同じである。また、ハードウェアは、第1の実施形態と同じである。
【0102】
この場合、レーザースキャン反射光を受光した受光素子(レーザースキャナ部300が備える受光部の受光素子)が飽和したか否かの判定を行う(ステップS301)。受光素子が飽和すると、受光素子の出力が歪み、素子が飽和したこと示す出力特性を示す。
【0103】
例えば、受光素子としてフォトダイオードを用いるとする。この場合、フォトダイオードが飽和すると、出力に異常値が現れ、その影響が暫く残る。そのため、以降の数点の点の検出(レーザースキャン光の検出)ができなくなり、点群が欠落する。そして、ある程度の時間経過後に、性能が回復する。この現象が現れた場合に、受光素子(フォトダイオード)が飽和したと判定する。
【0104】
受光素子の飽和が検出された場合、ステップS302に進む。ステップS302では、受光素子が飽和する直前の段階で得られていた点群データを取得する。取得する点群データの数は、数点~数十点とする。
【0105】
レーザースキャンは、鉛直面に沿って行われ、更に上から下に向かって行われる。このため、レーザースキャン光は、まず全周バーコード表示部103に当たり、つぎに全周反射プリズム102に当たる。よって、全周反射プリズム102からの反射光を受光したことを検出した場合、その直前に得られた点群は、全周バーコード表示部103から得られた点群となる。このことを利用して、全周バーコード表示部103の点群データが得られる。
【0106】
全周バーコード表示部103の点群データを得た後のステップS205以下の処理は、図7の場合と同じである。
【0107】
この例の場合、最初の全周スキャンの際に、全周バーコード表示部103のコード情報を読み取らなくてもよいので、全周スキャンでのスキャン密度をある程度粗くしてもよい。
【0108】
(他の例1)
ステップS206の処理を行わずに、単にスキャン密度を高める処理を行う形態も可能である。この場合、例えば、スキャン密度が2倍となるようにスキャン条件を変更し、再スキャンを行う。
【0109】
(他の例2)
図7の処理で、ステップS201とS203を省いたフローも可能である。この例では、全周反射プリズム102からの相対的に強い反射光の検出を契機として、全周バーコード表示部103を検出するための再レーザースキャンが行なわれる。
【0110】
(他の例3)
ターゲット装置100が多少傾いていてもよい。許容される傾きは、全周バーコード表示部103の長手方向におけるレーザースキャンが可能な程度となる。
【0111】
この場合、ターゲット装置100として傾斜計と方位計を備えたものを利用し、測量装置400によるターゲット装置100の測位データを補正する。以下、この技術について説明する。
【0112】
まず、ターゲット装置100が傾いていると、全周反射プリズム102の水平位置(例えば経度と緯度)と、支持部材101の下端101aの水平位置に違いが出る。この違いが、ターゲット装置100の測位データの誤差となる。この水平位置の違い(誤差)は、ターゲット装置100がどの方向にどれだけ傾いているのかが分かれば計算できる。
【0113】
そこで、ターゲット装置100が備える傾斜計と方位計のデータを用いてターゲット装置100の傾きを定量的に求め、それを用いてターゲット装置100の測位データを修正する。
【0114】
(他の例4)
最初の段階で行われるターゲット装置100の測位を測量装置400とは別の外部標定要素が既知のTS(トータルステーション)で行ってもよい。
【符号の説明】
【0115】
100…ターゲット装置、101…支持部材、102…全周反射プリズム、103…全周バーコード表示部、104…GNSS装置、105…端末、400…測量装置、500…処理部、11…水平回転部、12…台座、13…鉛直回転部、14a…水平回転角制御ダイヤル、14b…高低角制御ダイヤル、15a…照準器、15b…照準器、16…望遠鏡、17…接眼部、18,19…ディスプレイ、100…反射プリズム、200…TS機能部、300…レーザースキャナ部、301…第1の塔部、302…第2の塔部、303…結合部、304…保護ケース、305…回転部、306…斜めミラー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8