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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】缶蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/28 20060101AFI20221024BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B65D17/28
B65D8/04 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018132192
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020007031
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正博
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 朋彦
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265869(JP,A)
【文献】特開平9-10874(JP,A)
【文献】特開2000-85768(JP,A)
【文献】特開2006-51964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/28
B65D 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部の外周部に前記パネル部の内面側に窪んだ環状溝が形成されるとともに、前記環状溝の外周側に前記パネル部の外面より高く延びているチャックウォールが形成され、前記チャックウォールの先端部に、缶胴の開口端に巻き締めるようにカーリングされたフランジ部が形成されている缶蓋において、
前記パネル部における前記環状溝側の周辺部の複数箇所に、薄肉化されかつ前記外面側に突き出た角出し変形が容易なバックリング誘発部が形成され、
前記パネル部の中心と前記バックリング誘発部の中心部とを結ぶ仮想線に交差する破断し易い線状部分であるスコア線が形成され、
前記スコア線は前記バックリング誘発部を横切り、かつ前記スコア線の両端部が、前記仮想線に前記バックリング誘発部の前記パネル部の中心側の端部で直交する仮想境界線を前記パネル部の中心側に越えて位置しており、
さらに前記パネル部の中央部に、前記スコア線および前記バックリング誘発部に到らない半径でかつ前記パネル部の内面側に窪んだ円形凹部が形成され、
前記バックリング誘発部の前記パネル部の外周側の端部と前記環状溝における内側側壁との間の部分が傾斜平面部とされ、
前記傾斜平面部と前記内側側壁とが、前記パネル部の外側に向けて所定半径で凸となるR部によって繋がれている
ことを特徴とする缶蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の缶蓋において、
前記スコア線と前記仮想線との交点は、前記バックリング誘発部における前記仮想線上での中心より前記パネル部の半径方向で外側に位置していることを特徴とする缶蓋。
【請求項3】
請求項1または2に記載の缶蓋において、
前記R部の半径は、0.5mm以上であることを特徴とする缶蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴の開口端に取り付けられてその開口端を密封する缶蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
缶蓋は、缶容器の密閉を主たる機能とするものであるが、缶詰の品質の良否判定のための打検適性が良好なことや、防爆機能を備えていることを求められることがある。打検検査は、缶蓋に衝撃力を与えることによる缶蓋が発する音(特にその周波数)に基づいて、缶詰の真空度や巻き締めの良否、内容物の過不足など、缶詰の良否を判定する検査であり、そのような缶詰の良否を的確に反映した振動を行う特性が、打検適性である。一方、防爆機能は、缶詰の内圧が異常に上昇した場合に、巻き締め部が開いたり、キャップが吹き飛んだりするブローオフが生じないように、内部の気体や内容物を漏れ出させて圧力を下げる機能である。
【0003】
特許文献1には、打検適性を向上させるように構成された缶蓋が記載されている。その缶蓋は、パネル部の外周側に環状溝を形成するとともに、その環状溝の外周側にチャックウォールを形成した缶蓋であって、環状溝の内側の部分に環状溝に沿ったビード部が形成される一方、パネル部の中央部には内面側(缶の内側)に向けて窪ませた円形の凹パネル部が形成されている。この缶蓋を用いた缶容器の内圧が、レトルト処理などによって高くなると、凹パネル部が外側に向けて凸となるように膨らみ(湾曲し)、またパネル部のうち凹パネル部とビード部との間の部分がビード部を起点として外側に向けて凸となるように膨らむ(湾曲する)。その後、内圧が低下すると、凹パネル部および凹パネル部とビード部との間の部分のそれぞれが、膨らみを解消するように元の形状に戻る。その後に当該缶蓋に打撃力を与えて振動させた場合、缶蓋は元の形状に戻っていて異常な変形や剛性の変化などが生じていないので、缶詰の状態を反映した振動を行って音を発生する。すなわち、打検適性に優れたものとなっている。
【0004】
一方、特許文献2には、防爆機能を備えた缶蓋が記載されている。その缶蓋は、パネル部の外周部に、環状溝およびチャックウォールが形成されている缶蓋であって、パネル部の周辺部の複数箇所(四箇所)にバックリングの起点となるバックリング誘発部が形成され、そのバックリング誘発部の近傍あるいはバックリング誘発部を横切ってスコア線が形成されている。そのバックリング誘発部は、パネル部の外周部における僅かな面積の部分であって、コイニングによって板厚を減じ、かつ外面側に突出させた部分である。缶詰の内圧が高くなると、そのバックリング誘発部が他の部分に先行して外側に膨出変形し、その変形に誘発されてその周囲の部分が外側に凸変形する。スコア線は、このような変形が生じる箇所を横切って形成されており、上述した膨出変形に伴う引張力で破断しやすくなっている。したがって、特許文献2に記載された構成では、バックリングとスコア線の破断とによって内圧が低下させられ、巻き締め部が開いたり、キャップが吹き飛んだりするブローオフを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-17977号公報
【文献】特開2004-238071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製品としての缶詰には、内容物に応じて、打検適性と防爆機能とが共に優れていることが望まれる場合がある。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、パネル部の周辺部分にビード部が形成されてその部分の剛性が高くなっているから、内部圧力による変形荷重が緩和されずに巻き締め部に掛かってしまう。すなわち、特許文献1に記載された構成では、内圧を下げ、あるいは巻き締め部に掛かる荷重を緩和する機能が特にはないので、ブローオフが生じ易く、いわゆる防爆性に劣る可能性がある。一方、特許文献2に記載された構成では、バックリング誘発部を設けてあることによりパネル部が変形し易くなっており、そのため例えばレトルト処理の際の内圧の上昇によってパネル部が盛り上がるように変形した場合、バックリンクが誘発されないとしても、パネル部の変形が元に戻りにくくなる。そのため、特許文献2に記載された構成では、パネル部に打撃力を加えた場合の振動あるいは発する音が、正常製品とは異なったものとなり、異常がないにも拘わらず異常の判定がなされてしまうなど、打検適性が損なわれる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、防爆機能と打検適性とが共に優れた缶蓋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、パネル部の外周部に前記パネル部の内面側に窪んだ環状溝が形成されるとともに、前記環状溝の外周側に前記パネル部の外面より高く延びているチャックウォールが形成され、前記チャックウォールの先端部に、缶胴の開口端に巻き締めるようにカーリングされたフランジ部が形成されている缶蓋において、前記パネル部における前記環状溝側の周辺部の複数箇所に、薄肉化されかつ前記外面側に突き出る角出し変形が容易なバックリング誘発部が形成され、前記パネル部の中心と前記バックリング誘発部の中心部とを結ぶ仮想線に交差する破断し易い線状部分であるスコア線が形成され、前記スコア線は前記バックリング誘発部を横切り、かつ前記スコア線の両端部が、前記仮想線に前記バックリング誘発部の前記パネル部の中心側の端部で直交する仮想境界線を前記パネル部の中心側に越えて位置しており、さらに前記パネル部の中央部に、前記スコア線および前記バックリング誘発部に到らない半径でかつ前記パネル部の内面側に窪んだ円形凹部が形成され、前記バックリング誘発部の前記パネル部の外周側の端部と前記環状溝における内側側壁との間の部分が傾斜平面部とされ、前記傾斜平面部と前記内側側壁とが、前記パネル部の外側に向けて所定半径で凸となるR部によって繋がれていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明では、前記スコア線と前記仮想線との交点は、前記バックリング誘発部における前記仮想線上での中心より前記パネル部の半径方向で外側に位置していてよい。
【0010】
さらに、本発明では、前記R部の半径は、0.5mm以上であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パネル部の外周部分はバックリング誘発部が設けられてビード部となっていないので、内圧によるパネル部の変形が生じ易い。したがって、内圧が過度に高くなった場合にバックリング誘発部を起点としたいわゆる角出し変形が生じて内圧を低下させ、それに伴って巻き締め部が開くなどのブローオフを防止でき、あるいはブローオフを防止する防爆機能を向上させることができる。また、スコア線の両端部を結んだ線すなわちスコア線が開く変形の支点が、凹凸に変形しているバックリング誘発部を外れた平坦な部分になるので、内圧によるスコア線の破断を生じさせて内圧を抜きやすくなる。言い換えれば、内圧を抜いて低下させ易いことにより、バックリング誘発部あるいはパネル部の外周部分の剛性を幾分高くしても防爆機能が損なわれないので、レトルト処理などの際に内圧が一時的に高くなっても、パネル部が元の形状に復帰し、したがって缶蓋に打撃力を与えてその振動や音に基づいて品質を検査する打検適性が優れることになる。すなわち、防爆機能と打検適性とを共に向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明では、バックリング誘発部とその外周側に位置する環状溝の内側側壁との間の部分が傾斜平面部となり、その傾斜平面部が所定半径のR部によって内側側壁に繋がっているので、バックリング誘発部が内圧によって変形する際の抵抗力すなわち剛性を緩和してバックリングの誘発を想定されているとおりに生じさせることができる。すなわち、缶蓋の防爆機能を向上させることができる。特に、R部の半径を0.5mm以上とすることにより、バックリング誘発部を起点とした角出し変形を確実に生じさせることができる。
【0013】
また、本発明によれば、スコア線と前記仮想線との交点を、バックリング誘発部における前記仮想線上での中心より外周側に位置させるようにスコア線を形成すれば、スコア線の両端部を結んだ線すなわちスコア線を破断させる変形の支点とスコア線との距離が長くなってスコア線の破断が生じ易くなる。すなわち、内圧が高くなってバックリング誘発部が変形した場合にスコア線が容易に破断して圧力を抜くことができるので、防爆機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る缶蓋の一例の基本的な構成を示す断面図である。
図2】その環状溝およびその周辺部分の構造を説明するための部分的な断面図である。
図3図1に示す缶蓋の平面図である。
図4】バックリング誘発部および傾斜平面部の拡大断面図である。
図5】バックリング誘発部を示す拡大平面図である。
図6】実施例および各比較例についての評価結果をまとめて示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る缶蓋1は、図1に一例を示すように、キャップが取り付けられるボトル型缶や3ピース缶などの缶胴2の開口端に巻き締められてその開口端を密封するパネル状の部材であり、金属板を素材としている。その金属板は、例えば、純アルミニウムやアルミニウム合金などのアルミ板や、電解クロム酸処理鋼板、ニッケルメッキ鋼板、錫メッキ鋼板などのような鋼板であってよい。また、その金属板の少なくとも内面は樹脂被覆されていることが好ましく、そのための樹脂としては、エポキシ-フェノール樹脂、エポキシ-アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等の塗料や、ポリエチレン,ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アイオノマー等の熱可塑性樹脂の1種または2種以上から構成される樹脂フィルムなどであってよい。
【0016】
缶蓋1の基本的な構成は、従来知られている缶蓋と同様であって、実質的に蓋となるパネル部3と、巻き締めおよび補強のための部分とを備えている。パネル部3は缶胴2の内径より幾分小さい円板状の部分であって、その外周側に環状溝4と巻き締めのためのチャックウォール5およびフランジ部6が設けられている。環状溝4は、パネル部3の内面側に窪んだ溝であって、図2に一部を拡大して示してあるように、チャックウォール5よりもパネル部3の中心側に位置する内側側壁7とチャックウォール5とによって、パネル部3の全周に亘って形成されている。チャックウォール5は、環状溝4の底部からパネル部3の外面(上面)側に立ち上がり、かつ斜め外側に広がっている側壁部分であり、その先端部(上端部)は外側にカーリングされて巻き締めのためのフランジ部6となっている。
【0017】
本発明に係る缶蓋1は、打検適性および防爆機能に優れるように構成されている。打検適性に優れるようにするために、パネル部3の中央部には、円形凹部8が形成されている。この円形凹部8は、前掲の特許文献1(特開2004-17977号公報)に記載されている凹パネル部に相当する部分であり、その凹パネル部と同様の構成とすることができる。具体的には、円形凹部8の形状は円形であり、その深さは、前述した環状溝4の深さより浅く、板厚の130~250%程度、好ましくは213%程度であって、一例として0.4~0.7mm程度、好ましくは0.65mmである。また、円形凹部8とパネル部3との境界部分は、パネル部3の内面側に窪んだ(内面側に凸となった)曲面になっており、その曲面部分の最大径と最小径との平均値を円形凹部8の直径とすると、その直径は、パネル部3の外径の41~46%程度、好ましくは44%程度であり、一例として17.5~21.0mm、好ましくは20.0mmである。
【0018】
さらに円形凹部8の中央部分はほぼ平坦になっている。その平坦な部分の直径(すなわち上記の曲面部分の最小径)は、パネル部3の外径の26~30%程度、好ましくは28%程度であって、一例として12.0~14.0mm、好ましくは12.9mmである。
【0019】
本発明に係る缶蓋1は、ブローオフを防止するためのバックリング誘発部9が設けられている。缶蓋のバックリングとは、缶蓋の一部もしくは全体が外側に盛り上がる(膨出する)ような変形であり、バックリングが生じると缶の内容積が増大するので、内部の圧力が低下し、その結果、巻き締め部が開いたり、キャップが吹き飛んだりするいわゆるブローオフが防止もしくは回避される。そのようなバックリングの起点となる部分がバックリング誘発部9であって、図3に示すように複数(図3の例では、等間隔に4つ)設けられている。
【0020】
バックリング誘発部9は、パネル部3の環状溝4側の一部をコイニングによって薄肉化しかつパネル部3の外面側に突き出させた部分である。その面積は、1~2mm程度であり、形状は円形や楕円形あるいは長円形などの適宜の形状(好ましくは角のない形状)である。図3に示す例は、長軸をパネル部3の半径方向に沿わせた楕円形もしくは長円形である。また、バックリング誘発部9の厚さは、パネル部3の厚さの80%~96%程度であり、より具体的には0.20mm~0.30mm程度である。さらに、パネル部3の外面側へのバックリング誘発部9の突出高さは、0.15mm~0.20mm程度である。
【0021】
図4および図5に示すように、各バックリング誘発部9は、前述した内側側壁7よりも僅かに内側に形成されている。その内側側壁7との間の間隔Dは1mm以上が好ましい。バックリング誘発部9の周囲の剛性を抑制してバックリングを誘発しやすくするためである。そのバックリング誘発部9におけるパネル部3の半径方向での外側の端部と内側側壁7との間の部分に傾斜平面部10が形成されている。傾斜平面部10は、バックリング誘発部9がパネル部3の外面(上面)から突き出て形成されていることに伴って生じる平坦部分であり、複数のバックリング誘発部9がパネル部3の円周方向に等間隔に配置されている場合には、傾斜平面部10はテーパー状に形成された面となる。
【0022】
傾斜平面部10と内側側壁7との境界部分は、パネル部3の外側に向けて凸となるように湾曲したR部11となっており、そのR部11の曲率半径は0.5mm以上に設定されている。なお、缶蓋1の外面で、このR部11と内側側壁7との間の変曲点と、上記の傾斜平面部10とバックリング誘発部9との間の変曲点との間隔が、前述した間隔Dである。R部11の曲率半径は0.5mm以上に設定されているのは、上記の缶蓋1を取り付けた缶容器の内圧が高くなった場合に、巻き締め部が開いたり、あるいはキャップが吹き飛んだりしないように、バックリング誘発部9を先行して角出し変形させるためである。曲率半径を0.5mm以上とすることが好ましい理由は必ずしも定かではないが、0.5mm未満の小さい曲率半径では、傾斜平面部10と内側側壁7との境界部分が角張ってしまい、そのためにバックリング誘発部9の周辺部分の剛性が高くなってバックリング誘発部9が変形しにくくなって本来の機能を果たさず、これに対して曲率半径が0.5mm以上であれば、その境界部分やそれに近い内側側壁7の一部にまで変形が及んでバックリング誘発部9が角出し変形し易くなると考えられる。
【0023】
上記の各バックリング誘発部9を横切るようにスコア線12が形成されている。スコア線12は変形に伴う引張力で破断し易くした部分であって、パネル部3の外面を断面V字状に切り込んだ線状部分である。その切り込み深さあるいは残厚は、バックリングが生じる程度もしくはそれ以上に内圧が増大した場合に破断するように設定され、実験やシミュレーションなどによって定めることができる。スコア線12は直線あるいは曲線のいずれであってもよく、図に示す例では曲線である。そのスコア線12の両端部12aはバックリング誘発部9を外れた箇所でパネル部3の中心側に向けて延びており、かつパネル部3の半径方向においてはバックリング誘発部9よりもパネル部3の中心側に位置している。より具体的には、パネル部3の中心とバックリング誘発部9の中心部(幅方向および長さ方向での中心)Oとを結んだ仮想線L1に直交し、かつバックリング誘発部9のパネル部3における最内周端を通る仮想境界線L2を想定した場合、スコア線12の両端部12aはその仮想境界線L2を越えてパネル部3の中心側に延びて位置している。ここで、バックリング誘発部9のパネル部3における最内周端とは、パネル部3からバックリング誘発部9に向けて次第に盛り上がって傾斜しているいわゆる遷移部分のうちパネル部3側の端部である。したがって、スコア線12の両端部12aを結んだ直線は、その遷移部分やバックリング誘発部9に掛かることがなく、スコア線12が破断する変形がその直線を支点として生じることにより、スコア線12が破断しやすくなっている。
【0024】
また、スコア線12の破断は、変形が最も大きい箇所から生じるから、そのような変形が大きくなるように、すなわちスコア線12の破断が生じ易いように構成されている。具体的には、スコア線12と前記仮想線L1との交点が、バックリング誘発部9の前記仮想線L1上での中心よりもパネル部3の半径方向で外側になるように、スコア線12が形成されている。
【0025】
上記の缶蓋1を巻きしめた缶容器の内圧が、ガスの発生や温度の上昇などによって過度に高くなった場合、パネル部3の全体が盛り上がるように変形する。バックリング誘発部9はパネル部3の限られた複数箇所に形成され、かつパネル部3から突き出た形状になっているので、パネル部3の変形に伴う応力がバックリング誘発部9に集中する。これに加えてバックリング誘発部9はコイニングによって薄肉化されているので、その部分で角出し変形が先行して(優先して)生じる。しかも上記の缶蓋1では、バックリング誘発部9と環状溝4における内側側壁7との間の傾斜平面部10が、曲率半径の大きいR部11を介して内側側壁7に繋がっていてこの部分の剛性が低くなっているから、バックリング誘発部9の変形が阻害されない。このようにして生じる変形がバックリング誘発部9の周囲に派生する。
【0026】
このようなバックリングが生じても、缶容器の内圧が未だ高い場合には、他のバックリング誘発部9の周辺においても同様な変形が生じ、極端な場合にはパネル部3の全体が外側に盛り上がるように変形する。すなわち、内圧の上昇がパネル部3の変形およびそれに伴う内容積の増大によって吸収されるので、巻き締め部が開いたり、キャップが吹き飛んだりするブローオフが防止あるいは回避される。
【0027】
また、バックリング誘発部9がその外側に盛り上がるように変形すると、バックリング誘発部9あるいはパネル部3の引張応力が増大し、またスコア線12に曲げ応力が作用する。スコア線12はコイニングによって薄肉化されているバックリング誘発部9を横切るように形成されているので、内圧による上記の変形に伴う引張応力や曲げ応力によって、それ以外の部分に優先して破断する。本発明に係る上記の缶蓋1では、スコア線12と前述した仮想線L1との交点が、バックリング誘発部9の中心部Oよりも半径方向で外側に設定されていることにより、その交点部分での変形量や変形に伴う引張応力あるいは曲げ応力を大きくすることができる。また、特に、スコア線12に破断を生じさせる変形の支点である前述した両端部12aを結んだ線が、パネル部3に対して盛り上がっているバックリング誘発部9を横切らないので、特に、スコア線12に破断を生じさせる変形が生じ易くなっている。したがって、バックリング誘発部9が内圧によって変形した場合のスコア線12の破断が生じ易く、確実に内部の圧力を逃がすことができる。このようにして、それ以上の内圧の上昇が回避されるから、上記の角だし変形と合わせて、ブローオフを防止もしくは回避することができる。すなわち、防爆機能に優れた缶蓋とすることができる。
【0028】
一方、レトルト処理などによって加熱した場合、上述したバックリングが生じない程度に缶容器の内圧が上昇し、その場合もパネル部3は外側に盛り上がるように変形する。本発明に係る上述した缶蓋1では、その場合の変形は、パネル部3が環状溝4側の周縁部を起点として盛り上がる変形と、円形凹部8がその周縁部を起点として盛り上がる変形とが合わさったものとなる。したがって、各変形のそれぞれの起点からの変形量が、円形凹部8を設けずにパネル部3の全体を一体にして変形させる場合の変形量より小さくなる。そのため、加熱を終了して内圧が低下した場合、パネル部3および円形凹部8が元の形状に確実に戻り、変形が残存することが殆どない。特に、本発明に係る上記の缶蓋1では、上述した傾斜平面部10やR部11を設け、またスコア線12の位置やその両端部12aの位置を特定したことにより、バックリングの誘発やスコア線12の破断が生じ易い。そのため、パネル部3の周縁部の剛性を幾分高くしても防爆機能が損なわれない。言い換えれば、本発明に係る缶蓋1では、パネル部3の盛り上がり変形の起点となる周縁部の剛性を高くすることが可能であるから、パネル部3の一時的な盛り上がり変形およびその変形からの復帰を支障なく生じさせることができる。したがって、元の形状に戻った缶蓋1に打撃力を加えていわゆる打検を行った場合、発生する振動や音は、缶容器の良品と不良品とで明確に異なったものとなる。すなわち、打検適性に優れた缶蓋とすることができる。
【0029】
ここで、本発明の効果を確認するために行った実施例と比較例とについて説明する。実施例の缶蓋は、本発明の構成を全て備えた缶蓋とし、各比較例の缶蓋は、本発明の構成の一部もしくは全部を備えていない缶蓋とした。それぞれの缶蓋を、500mlのアルミニウム製のキャップ付きコーヒー用スリーピース缶の底蓋とし、実施例および各比較例としてそれぞれ5缶用意した。
【0030】
それぞれの供試缶に一般的なコーヒー飲料を窒素充填した後、密封し、市販品と同様のコーヒー飲料缶と同様の構成とした。それらの供試缶を、レトルト殺菌処理装置で加熱した。加熱条件は、120℃~125℃、20分間である。缶内圧は、最高で640kPaであった。加熱後の供試缶を常温中に放置して冷却し、缶内圧が160kPa以下になった状態で打缶音検査を行った。その後、各供試缶の開口部側(ステイオンタブ側)を切り落とし、その供試缶を圧力テスターにクランプセットして、バックリングし始める圧力(バックリング耐圧)である650kPa(0.65MPa)以上の700kPa(0.70MPa)まで空気で加圧した。
【0031】
その加圧の過程(耐圧試験の過程)でブローオフ、バックリング、角出し変形の有無や発生個数に基づいて、防爆機能を評価した。また、レトルト殺菌処理を施した後の打缶音検査で得られた振動(音)の周波数を、正常な正規の缶での周波数と比較して、打検適性の良否を判定した。結果を図6の図表に示してある。なお、図6の図表で「外」は、スコア線12の両端部が前述した仮想境界線L2を越えて位置していること、「内」は、スコア線12の両端部が前述した仮想境界線L2を越えていないことを示す。また、「○」は打検適性が従来一般の正常缶と同様に良好であること、「×」は打検適性が従来一般の正常缶とは異なる周波数の振動を生じることにより不良であることを示す。
【0032】
上記の評価の結果から明らかなように、本発明の構成を全て備えている実施例においては、プローオフが生じないことは勿論のこと、バックリングが生じた缶は1つであり、また角出し変形が生じた缶は1つであり、防爆機能に優れていた。また、打検適性は良好であった。
【0033】
これに対して、比較例1は、スコア線12の両端部が仮想境界線L2を越えていない缶蓋の例である。比較例1では、ブローオフは生じないものの、3缶でバックリングが生じ、また2缶で角出し変形が生じた。したがって、防爆機能を備えているとしても、底蓋の変形が生じ易く、本発明の実施例よりも防爆機能が劣っている。なお、打検適性は従来一般の正常缶と比較して遜色はない。
【0034】
比較例2は、本発明の構成のうち、円形凹部8の構成を欠いている例である。比較例2では、円形凹部8を備えていないことが原因と思われるが、打検適性が不良であった。それだけでなく、4缶でバックリングが生じ、また3缶で角出し変形が生じた。なお、ブローオフは生じなかった。したがって、比較例2は、底蓋の変形が比較例1よりも更に生じ易く、防爆機能が劣っている。
【0035】
比較例3は、本発明の構成のうち、傾斜平面部10の構成を欠いている例である。比較例3では、ブローオフは生じないものの、2缶でバックリングが生じ、また2缶で角出し変形が生じた。したがって、防爆機能を備えているとしても、底蓋の変形が生じ易く、本発明の実施例よりも防爆機能が劣っている。なお、打検適性は従来一般の正常缶と比較して遜色はない。
【0036】
比較例4は、傾斜平面部10および円形凹部8が無く、またスコア線12の両端部が仮想境界線L2を越えていない缶蓋、すなわち本発明の構成の全てを備えていない例である。この比較例4では、少なくとも1缶でブローオフが生じ、そればかりか全ての缶(5缶全て)でバックリングが生じ、また4缶で角出し変形が生じた。したがって、比較例4は、防爆機能が全く不良である。また、円形凹部8を備えていないことが原因と思われるが、打検適性が不良であった。
【0037】
これらの結果から、本発明によれば、防爆機能および打検適性を共に向上させられることが認められた。
【0038】
なお、本発明は上述した具体例に限定されないのであって、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…缶蓋、 2…缶胴、 3…パネル部、 4…環状溝、 5…チャックウォール、 6…フランジ部、 7…内側側壁、 8…円形凹部、 9…バックリング誘発部、 10…傾斜平面部、 11…R部、 12…スコア線、 12a…両端部、 L1…仮想線、 L2…仮想境界線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6