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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221024BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221024BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 B
H02J7/02 H
H01M10/48 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018146002
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020022304
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】森島 洋一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 涼夫
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-033898(JP,A)
【文献】特開2017-112734(JP,A)
【文献】特開2010-148242(JP,A)
【文献】特表2012-516126(JP,A)
【文献】特開2013-99093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/34
H01M 10/42 -10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、複数のセル電池を直列接続した組電池と、前記組電池の組電池電圧値、前記組電池を流れる電流の組電池電流値、および前記組電池の充電量を取得する取得部と、前記組電池の組電池電圧を変換るDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバーを制御する制御部とし、互いに直列接続された複数の組電池モジュールと、
前記複数の組電池モジュールから出力される電流の電流値を検出する電流検出器と、
前記複数の組電池モジュールの出力側の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記複数の組電池モジュールを監視する電池システム監視装置と、を備え、
前記電池システム監視装置は、
要求される電流に基づく直流電流基準、前記複数の組電池モジュールの取得部により取得された組電池電圧値、および前記電圧検出器が検出した電圧値と、を用いて前記複数の組電池モジュールの平均組電池電流基準を求め、
前記求めた平均組電池電流基準を、前記直流電流基準および前記複数の組電池モジュールの取得部により取得された充電量に基づいて補正することで、前記複数の組電池モジュールのそれぞれの組電池電流基準を求め
前記求め電池電流基準を、対応する前記電池モジュールに通知し、
前記複数の組電池モジュールの制御部のそれぞれは、
前記電池システム監視装置から通知された組電池電流基準と前記組電池電流値とを用いて出力電圧基準を求め、
前記DC/DCコンバータによって変換された電圧の電圧値が前記求めた出力電圧基準となるように、前記DC/DCコンバータを制御する
蓄電池システム。
【請求項2】
前記組電池モジュールの放電時、前記電池システム監視装置は、前記電圧検出器が検出した電圧値を前記複数の組電池モジュールの組電池電圧値の合計値で除算し、前記直流電流基準で乗算することにより、前記平均組電池電流基準を求める、請求項1記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記組電池モジュールの充電時、前記電池システム監視装置は、前記複数の組電池モジュールの組電池電圧値の合計値を前記電圧検出器が検出した電圧値で除算し、前記直流電流基準で乗算することにより、前記平均組電池電流基準を求める、請求項1記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記直流電流基準は、要求される直流電圧基準と前記電圧検出器が検出した電圧値とを用いて求められる、請求項1記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記直流電流基準は、前記複数の組電池モジュールの組電池の全体の電力として要求される電力基準と前記電池システム監視装置により得られる前記複数の組電池モジュールの組電池の全体の電力の合計とを用いて求められる、請求項1記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記DC/DCコンバータは、昇圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路、4象限チョッパ回路のいずれかである、請求項1記載の蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池システに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、必要な直流電源の電力量に相当する数のセル電池あるいは組電池を直列接続し、その合計の直流電圧を一括してDC/DCコンバータを用いて必要な直流電圧を得る蓄電池システムがある。
【0003】
図10は、従来の蓄電池システム101の構成を示す図である。
【0004】
図10に示すように、従来の蓄電池システム101は、複数のユニットU-1~kを有する。ユニットU-1~kは、それぞれセル電池を直列に接続した組電池11-1~k及びCMU(Cell Monitoring Unit)12-1~kを有する。
【0005】
各ユニットU-1~kの組電池11-1~kは、直列に接続されており、その出力は、スイッチSを介してDC/DCコンバータ21に接続されている。スイッチSは、蓄電池システム101の制御が開始される場合に、オンにされる。
【0006】
スイッチSとDC/DCコンバータ21との間には、電流検出器13が設けられる。電流検出器13は、複数のユニットU-1~kの組電池11-1~kを流れる組電池電流Ikを検出して、図10に示すように、DCDC制御部52に出力する。
【0007】
DC/DCコンバータ21は、コイル31、トランジスタ及びダイオードからなり、放電モードの際に制御されるスイッチ32B、トランジスタ及びダイオードからなり、充電モードの際に制御されるスイッチ32A及び出力側に接続されるコンデンサ33を有する。
【0008】
DC/DCコンバータ21の出力には、システム電流検出器15とシステム電圧検出器16が設けられ、与えられた基準値に合致するように制御される。
【0009】
CMU12-1~kは、それぞれ組電池11-1~kの電圧、温度などの組電池情報を収集し、これら収集された組電池情報を電池システム監視装置(BMU:Battery Manager Unit)1に送信する。BMU14は、CMU12-1~kから送信された組電池情報及び電流検出器13により検出された組電池11-1~kを流れる組電池電流Ikを基に、充電量SOCの計算を行なう。
【0010】
BMU14は、計算された充電量SOCに基づいて、組電池11-1~kが運転可能範囲に入っているかの判断を行ない、組電池11-1~kが運転可能範囲に入っていると判断された場合、充電量SOC及び運転許可信号を上位制御装置51に出力する。
【0011】
上位制御装置51は、システムにより要求される直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧VdをDCDC制御部52に出力する。DCDC制御部52は、上位制御装置51から出力された直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧Vdに基づいて、DC/DCコンバータ21のスイッチ32A、32Bの制御を行なう。
【0012】
図11は、DCDC制御部52の動作を説明するための機能ブロック図である。
【0013】
DCDC制御部52は、上位制御装置51から蓄電池システム101に要求される直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧Vdが入力されると、これらの差(Vd-Vd)を求める。
【0014】
電圧制御部61aは、これらの差(Vd-Vd)から、直流電流基準Idを求めて出力する。
【0015】
なお、システムによっては、上位制御装置301から電力が指定される場合があるが、その場合は、指定された電力を別途指定された直流電圧で除することにより、直流電流基準Idが算出される。すなわち、DCDC制御部52は、電圧又は電力のいずれかで指定される場合であっても、直流電流基準Idによって制御される。
【0016】
モード判断部61bは、電圧制御部61aから出力された直流電流基準Idの極性に基づいて力行モードか回生モードかを判断し、その判断結果を電池電流制御部61d及び昇圧比/通流率計算部61eに通知する。
【0017】
変換部61cは、電圧制御部61aからの直流電流基準Idを、組電池電流基準|Ik|に変換する。この変換は、
後述する(1)式(=Vk×Ik = Vd×Id)の電力バランスから、VdとIdとが決まると、組電池電流基準|Ik|は、組電池電圧Vkの値に従って、自動的に変換される。ここで、組電池電流基準|Ik|は、組電池電流基準Ikの絶対値を示す。
【0018】
電池電流制御部61dには、組電池電流基準|Ik|と組電池電流|Ik|の差ΔIkが入力され、この入力されたΔIkがゼロになるようにゲート回路61fを制御する。
【0019】
すなわち、ΔIk>0の場合、実際の放電又は充電電流が少ないことになるので、直流電圧基準Vdを少し増加することにより、放電又は充電電流が指令値に制御される。従来例の場合、組電池11-1~kが直列に接続されているので、組電池電流Ikにより制御される。
【0020】
また、電池電流制御部61dは、モード判断部61bにより判断されたモード(カ行モード又は回生モード)に従った制御が行なわれる。すなわち、カ行モードでは、組電池電圧Vkを昇圧して直流電圧Vd側へ電力を放電する。回生モードでは、直流電圧Vdから組電池電圧Vkへ降圧することにより充電を行なう。カ行モード(放電モード)では昇圧チョッパ-制御、回生モード(充電モード)では降圧チョッパ制御が行なわれる。
【0021】
昇圧比/通流率計算部61eは、組電池電圧Vk及び直流電圧Vdに基づいて、昇圧比Vk/Vd、通流率αup(カ行モード)、αdown(回生モード)を計算する。
【0022】
ここで、DC/DCコンバータ21の損失を無視し、
Vk×Ik = Vd×Id …(1)
が成立することを前提にする。
【0023】
昇圧比/通流率計算部61eは、下記(2)、(3)式より、通流率αup、αdownを求める。
【0024】
Vk = (1-αup) × Vd …(2)
Vk = αdown × Vd …(3)
電池電流制御部61dには、昇圧比/通流率計算部61eにより計算された昇圧比Vk/Vd、通流率αup(カ行モード)、αdown(回生モード)が入力される。カ行モード(放電モード)では(2)式の制御目標に従い、スイッチ32Bの制御をゲート回路61に指示し、回生モード(充電モード)では(3)式の制御目標に従い、スイッチ32Aの制御をゲート回路61に指示する。
【0025】
ゲート回路61fは、電池電流制御部61dからの指示に基づいて、モードに従って、スイッチ32A、32Bのスイッチにゲート信号を出力することにより、組電池電流の制御を行なう。
【0026】
なお、個々のセル電池に対して個別にDC/DCコンバータを設けて、その出力をさらに直列接続し、一部のセル電池の電圧が低いときに、他のセル電池の昇圧で必要な直流電圧を得る放電の制御を行なう放電制御方法が提案されている(特許文献1)。
【0027】
また、個々の組電池にHブリッジ変換器を接続してその交流出力をさらに直列接続し、組電池のSOC(State of charge)に合わせて放電時の出力電力を調整する放電制御方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特開2013-192388号公報
【文献】特開平11-98857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
図10及び図11に示した蓄電池システム101では、組電池11-1~kの充電量SOCは、BMU14から上位制御装置51に出力される。
【0030】
一般的な蓄電池システムにおいて、放電時には、SOCが最低SOCに達するまで放電を継続させ、充電時には最大SOCに達するまで充電を継続させる。
【0031】
組電池モジュール間でSOCのばらつきが発生した場合、放電時または充電時において、一番早く最低SOCまたは最大SOCに達すると、その時点で放電または充電を停止させる必要があった。
【0032】
しかしながら、このような制御を行なうと蓄電池システムの稼働時間が短くなってしまうという問題があった。また、個々の組電池に、例えば、使用条件、特性が異なることによって発生する充電量SOCの違いを調整することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0033】
実施形態によれば、各々が、複数のセル電池を直列接続した組電池と、前記組電池の組電池電圧値、前記組電池を流れる電流の組電池電流値、および前記組電池の充電量を取得する取得部と、前記組電池の組電池電圧を変換るDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバーを制御する制御部とし、互いに直列接続された複数の組電池モジュールと、前記複数の組電池モジュールから出力される電流の電流値を検出する電流検出器と、前記複数の組電池モジュールの出力側の電圧値を検出する電圧検出器と、前記複数の組電池モジュールを監視する電池システム監視装置と、を備え、前記電池システム監視装置は、要求される電流に基づく直流電流基準、前記複数の組電池モジュールの取得部により取得された組電池電圧値、および前記電圧検出器が検出した電圧値と、を用いて前記複数の組電池モジュールの平均組電池電流基準を求め、前記求めた平均組電池電流基準を、前記直流電流基準および前記複数の組電池モジュールの取得部により取得された充電量に基づいて補正することで、前記複数の組電池モジュールのそれぞれの組電池電流基準を求め、前記求め電池電流基準を、対応する前記電池モジュールに通知し、前記複数の組電池モジュールの制御部のそれぞれは、前記電池システム監視装置から通知された組電池電流基準と前記組電池電流値とを用いて出力電圧基準を求め、前記DC/DCコンバータによって変換された電圧の電圧値が前記求めた出力電圧基準となるように、前記DC/DCコンバータを制御する、蓄電池システム、である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る蓄電池システム201の構成を示す図である。
図2】BMU302及びDCDC制御部411の動作を説明するための機能ブロック図である。
図3】実施形態に係る蓄電池システム201の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】実施形態に係る蓄電池システム201の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】組電池11-1~kのSOCの時間的推移(放電時)を示す図である。
図6】組電池11-1~kのSOCの時間的推移(充電時)を示す図である。
図7】他の実施形態に係るBMU302及びDCDC制御部411の動作を説明するための機能ブロック図である。
図8】降圧チョッパ回路を示す図である。
図9】4象限チョッパ回路を示す図である。
図10】従来の蓄電池システム101の構成を示す図である。
図11】DCDC制御部52の動作を説明するための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図10と同一部分には同一符号を付して説明する。
【0036】
図1は、本実施形態に係る蓄電池システム201の構成を示す図である。
【0037】
図1に示すように、実施形態の蓄電池システム201は、直列に接続された複数の組電池モジュール303-1~kを有する。
【0038】
複数の組電池モジュール303-1~kは、それぞれセル電池を直列に接続した組電池11-1~k、CMU(Cell Monitoring Unit)312-1~k、DC/DCコンバータ401-1~kを有する。 CMU312-1~kは、BMU302に接続されている。CMU312-1~kは、それぞれ組電池11-1~kの組電池電圧V1~k、電流検出器313-1~kによって検出された組電池電流I1~k、組電池11-1~kの温度などの組電池情報を収集し、これら組電池情報に基づいて充電量SOCを計算する。そして、これら収集された組電池情報及び充電量SOCを電池システム監視装置(BMU)302に送信する。
【0039】
組電池モジュール303-1~kにおいて、組電池11-1~kは、DC/DCコンバータ401-1~kにそれぞれ接続される。具体的には、組電池11-1~kのそれぞれの出力にはDC/DCコンバータ401-1~kのスイッチS-1~kが接続される。組電池11-1~kのそれぞれの出力はスイッチS-1~kを介して、コイル331-1~kの一端に接続される。
【0040】
スイッチS-1~kとコイル331-1~kの一端との間のそれぞれには、電流検出器313-1~kが設けられる。コイル331-1~kの他端には、トランジスタ及びダイオードからなり、放電モードの際に制御されるスイッチ332B-1~k、トランジスタ及びダイオードからなり、充電モードの際に制御されるスイッチ332A-1~kが接続される。また、スイッチ332A-1~kとスイッチ332B-1~kとの間であって、組電池モジュール出力電圧VM1~kが出力される端子間には、コンデンサ333-1~kがそれぞれ接続されている。
DC/DCコンバータ401-1~kは、それぞれ組電池11-1~kの組電池電圧V1~kを組電池モジュール303-1~kの組電池モジュール出力電圧VM1~kに変換して出力する。
【0041】
DC/DCコンバータ401-1~kの出力には、システム電流検出器15とシステム電圧検出器16が設けられる。システム電流検出器15は、BMU302に接続され、直列接続された各組電池モジュール303-1~kに共通の組電池モジュール出力電流Idの値をBMU302に出力する。システム電圧検出器16により検出された直流電圧Vdは、上位制御装置301に入力される。
【0042】
DCDC制御部411-1~kは、BMU302に接続される。DCDC制御部411-1~kは、それぞれ対応するスイッチ332A-1~k及びスイッチ332B-1~kのトランジスタに接続される。DCDC制御部411-1~kは、それぞれBMU302から組電池電流基準I ~I を受信し、この受信した組電池電流基準I ~I を満たすように、スイッチ332A-1~k、332B-1~kを制御する。
【0043】
すなわち、DCDC制御部411-1~kは、BMU302からそれぞれ受信した組電池電流基準I ~I に基づいて、組電池モジュール出力電圧VM1~Mkが組電池出力電圧基準VMk になるようにスイッチ332A-1~k、332B-1~kを制御する。組電池出力電圧基準VMk については後述する。
上位制御装置301は、システムにより要求される直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧VdをBMU302に出力する。
【0044】
BMU302は、上位制御装置301から出力された直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧Vd、CMU312-1~kからの組電池情報及び充電量SOCなどに基づいて、組電池モジュール303-1~kの組電池電流基準I ~I をDCDC制御部411-1~kにそれぞれ出力する。
【0045】
図2は、BMU302及びDCDC制御部411の動作を説明するための機能ブロック図である。実施形態では、図2において、演算器c1、電圧制御部101a~電流基準補正部101e-1~kの動作はBMU302によって行なわれ、演算器c2、組電池電流制御部101f及び昇圧比/通流率計算部101gの動作はDCDC制御部411-1~kによって行なわれる。
【0046】
BMU302は、上位制御装置301から蓄電池システム201に要求される直流電圧基準Vd及び接続先の直流電圧Vdが入力されると、演算器c1により、これらの差(Vd-Vd)を求める。
【0047】
電圧制御部101aは、直流電圧基準Vdと直流電圧Vdの差(Vd-Vd)を増幅し、システム全体に要求される電流(システム出力側に要求される電流)から、直流電流基準Idを求めて出力する。
【0048】
なお、システムによっては、蓄電池システム201からの電力が指定される場合があるが、その場合は、指定された電力を別途指定された直流電圧で除することにより、直流電流基準Idが算出される。すなわち、BMU302は、電圧又は電力のいずれかで指定される場合であっても、直流電流基準Idによって制御される。
【0049】
モード判断部101bは、電圧制御部101aから出力された直流電流基準Idの極性に基づいて力行モードか回生モードかを判断し、その判断結果を組電池電流制御部101f及び昇圧比/通流率計算部101gに通知する。
【0050】
このモード判断部101bによるモードの判断結果に基づいて、DCDC制御部411-1~kによる降圧動作又は昇圧動作という制御内容の相違が発生する。
【0051】
すなわち、カ行モードでは、組電池電圧Vを昇圧して直流電圧Vd側へ電力を放電する。回生モードでは、直流電圧Vdから組電池電圧Vへ降圧することにより充電を行なう。カ行モード(放電モード)では昇圧チョッパ-制御、回生モード(充電モード)では降圧チョッパ制御が行なわれる。この場合、昇圧/降圧動作に伴なう昇圧比、通流率の計算は後述するように異なるが、それ以外は、両モードとも同じ制御フローとなる。
【0052】
平均組電池電流基準算出部101cは、放電時には、システム電圧検出器16により検出された直流電圧Vdを、組電池電圧V1~kの合計電圧Vtotal(=V+V+・・・+V)で除算して平均昇圧比を算出する。次に、この算出された平均昇圧比Vd/(V+V+・・・+V)に電圧制御部101aからの直流電流基準Idを乗算して平均組電池電流基準|I^ |を算出する。ここで、平均組電池電流基準|I^ |は、平均組電池電流基準I^ の絶対値を示す。これにより、各組電池11-1~kの組電池電圧V1~k ばらつきが発生している場合にも平均組電池電流基準|I^ |を設定することができる。
【0053】
なお、充電時には、平均降圧比を計算する。平均降圧比は、平均昇圧比の逆数であり、平均降圧比=(V+V+・・・+V)/Vdである。
【0054】
また、
I^k×(V+V+・・・+Vk) = Vd×Id …(4)
が成立することを前提とする。
【0055】
個別組電池モジュール電流基準計算部150は、電流基準補正量計算部101d-1~k及び電流基準補正部101e-1~kを具備する。
【0056】
電流基準補正量計算部101d-1~kは、各組電池11-1~kのSOCアンバランスを解消するために、平均組電池電流基準|I^ |の電流補正量ΔIを計算する。
【0057】
まず、組電池11-1~kのSOCについては、k番目の組電池11-kが放電して変化するSOC変化量ΔSOCは、現在の時刻t0のSOCをSOC(t0)、将来の時刻t1=t0+ΔtのSOCをSOC(t1)とすると、
ΔSOC = SOC(t0)-SOC(t1)
= SOC(t0)-SOC(t0+Δt) …(5)
の関係が成立する。
【0058】
まず、単純化を考えて、組電池11-1~k及びDC/DCコンバータ401-1~kに損失がないものとする。k番目の組電池電流をI(t)、組電池電圧をVk(SOC(t))、組電池モジュール出力電圧をVMk(t)、直列接続された各組電池モジュール303-1~kに共通の組電池モジュール出力電流を出力電流Idとすれば、(6)式が成り立つ。
【0059】
×I =VMk×Id …(6)
SOCの変化ΔSOCは、組電池11-kに流れる電流の積分で与えられるので、(7)式となる。
【0060】
【数1】
【0061】
ここで、QFCは、組電池11-kの満充電時の総電荷量である。
【0062】
(6)式から、組電池電流をI(t)は、(8)式となる。
【0063】
=(VMk/V)×Id …(8)
出力電流Id(t)は、負荷によって変化するが、制御を考える場合には、負荷電流を想定しないとSOCのアンバランスを解消する目標を設定できないので、電流基準補正量計算部101dは、先ず短期間の目標値を計算するために一定電流Id0を仮定する。
【0064】
DC/DCコンバータ401-kの電圧変換率はVMk/Vであり、たとえSOCの値により組電池電圧V(SOC(t))が変化しても、一定電流Id0に対して組電池電流I(t)が一定に制御されれば、(8)式から、VMk/Vが一定に制御される。
【0065】
従って、(6)式で組電池電流I(t)が一定であれば、
【0066】
【数2】
【0067】
となり、
=-ΔSOC×QFC/Δt …(9)
となる。
【0068】
また、(9)式よりΔSOCの平均値をΔSOC 、Iの平均値をI^ とすると、
I^ =-ΔSOC *×QFC/Δt …(10)
となる。
ただし、ΔSOC<0は放電動作である。
【0069】
すなわち、SOCの変化分ΔSOCとそれにかける時間Δtを決めて、組電池電流Iを流せば、その電流が(9)式を満たす電流となる。同じSOCの変化分ΔSOC でも、かける時間Δtを短くすれば、(9)式から組電池電流Iは大きくなる。すなわち、組電池モジュール出力電圧VMk(t)を大きくする制御になるということである。
【0070】
式(10)を使用して、
電流補正量 ΔIk=(ΔSOC-ΔSOC )X(QFC/Δt)
が得られる。
【0071】
電流基準補正量計算部101d-1~kは、電圧制御部101aから出力された直流電流基準Id、BMU302に格納された制御目標Δt、SOC(t0+Δt)、CMU312-1~kからの組電池11-1~kそれぞれのSOC(t0)、モード判断部101bからのモード判断(カ行モード/回生モード)に基づいて、組電池11-1~kそれぞれの設定された組電池電流|I|を出力する。具体的には、組電池電流Iは、(5)、(9)式に基づいて設定される。
【0072】
電流基準補正部101e-1~kは、電流基準補正量計算部101d-1~kからの組電池電流|I|に基づいて、平均組電池電流基準算出部101cからの平均組電池電流基準|I^ |を補正し、この補正された各組電池11-1~kの平均組電池電流基準|I^ |を組電池電流基準|I |として出力する。
【0073】
各組電池出力電圧基準部151は、演算器c2、組電池電流制御部101f、昇圧比/通流率計算部101g及びゲート回路101hを具備する。
【0074】
昇圧比/通流率計算部101gは、下記(11)、(12)式より、通流率αup、αdownを求める。
【0075】
= (1-αup) × VMk …(11)
= αdown × VMk …(12)
組電池電流制御部101fには、昇圧比/通流率計算部101gにより計算された個別組電池別昇圧比V/VMk、通流率αup(カ行モード)、αdown(回生モード)が入力される。カ行モード(放電モード)では(11)式の制御目標に従い、スイッチ322Bの制御をゲート回路101hに指示し、回生モード(充電モード)では(12)式の制御目標に従い、スイッチ322Aの制御をゲート回路101hに指示する。
【0076】
また、組電池電流基準|I |-組電池電流|I|の差ΔI=|I |-|I|が演算器c2により演算され、組電池電流制御部101fに入力される。組電池電流制御部101fは、この入力された差ΔIがゼロになるようにゲート回路101hを制御する。
【0077】
具体的には、組電池電流制御部101fは、図3及び図4のフローチャートにより決定される各組電池出力電圧基準VMk に基づいて、組電池モジュール出力電圧VM1~MKが組電池出力電圧基準VMk になるようにゲート回路101hを制御する。
【0078】
ゲート回路101hは、組電池電流制御部101fからの指示に基づいて、モードに従って、スイッチ332A-k、332B-kのスイッチにゲート信号を出力することにより、組電池電流の制御を行なう。
【0079】
次に、実施形態に係る蓄電池システム201の動作について、図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。
【0080】
まず、BMU302の電圧制御部101aにより、直流電流基準Idが求められると、平均組電池電流基準算出部101cにより、平均昇圧比(=Vd/(V+V+・・・+V)が算出される(S1)。
【0081】
その後、(4)式の関係から、平均組電池電流基準算出部101cは、平均昇圧比(=Vd/(V+V+・・・+V)に電圧制御部101aにより求められた直流電流基準Idを乗算して平均組電池電流基準|I^ |を設定する(S2)。
【0082】
一方、電流基準補正量計算部101d-1は、各組電池11-1~kのSOCアンバランスをΔt後に吸収するために、(5)、(9)式に従って、組電池電流Iを設定し(S3)、電流基準補正部101e-1~kに出力する。
【0083】
次に、電流基準補正部101e-1~kは、電流基準補正量計算部101d-1~kからの組電池電流|I|と平均組電池電流基準算出部101cからの平均組電池電流基準|I^ |との差をとり(S4)、この差に基づいて、平均組電池電流基準|I^ |を補正し、各組電池11-1~kの組電池電流基準|I |を出力する(S5)。
【0084】
組電池電流基準|I |-組電池電流|I|の差ΔI=|I |-|I|が演算器cにより演算され(S6)、組電池電流制御部101fに入力される。
【0085】
次に組電池電流制御部101fは、自己の組電池11-1~kのSOC(t0)、時間Δt、その時の目標SOC(t1)に基づいて、(5)、(9)式から導かれる(13)式に基づいて、VMkを計算する(S7)。
【0086】
Mk = (-QFC×V/Id×Δt)×ΔSOC…(13)
次に、組電池電流制御部101fは、ΔSOC/ΔSOC(av)>1.1であるかを判断する(S8)。ここで、ΔSOC(av)は、各組電池11-1~kのSOC差の平均値である。
【0087】
S8において、ΔSOC/ΔSOC(av)>1.1でないと判断された場合、VMk =VMkとして設定する。
【0088】
S8において、ΔSOC/ΔSOC(av)>1.1であると判断された場合、
Mk =VMk+K’×ΔSOC/SOC(av)=VMk+ΔV …(14)
として設定する。
【0089】
すなわち、SOC(t0)とSOC(t)とからΔSOCを求め、放電時にΔSOC/SOC(av)が例えば、1.1倍以上(10%以上SOCが高い)のk番目の組電池モジュール303-kに対して、(9)式より目標の時間Δtを考慮して係数K’(たとえば1.15倍とか、1.2倍とか、大きな放電電流とする)を決めて、補正量とする。
【0090】
放電動作の場合、(14)式におけるK’×ΔSOC/SOC(av)=ΔVで表現すると、
ΔI>0(実際の放電電力が少ない)の場合、VMk *´=VMk +ΔV(つまり、ΔIを少なくする制御)。なお、VMk *´は次の制御ルーチンでの補正後の電圧基準とする。
【0091】
ΔI<0(実際の放電電力が多い)の場合、VMk *´=VMk -ΔV(つまりΔIを大きくする制御)。
【0092】
Mk *´=VMk + K’×ΔSOC/SOC(av)=VMk+ΔV …(14)
つまり(14)式での補正を行うことで、目標値に収束させることが可能になる。
【0093】
また、充電動作の場合、前述の昇圧比・通率の計算以外は同様の制御を行い、
ΔI>0(実際の充電電力が少ない)の場合VMk *´=VMk +ΔV(つまり、ΔIを少なくする制御)。なお、ここでVMk *´は補正後の電圧基準とする。
【0094】
ΔI<0(実際の充電電力が多い)の場合、VMk *´=VMk -ΔV(つまりΔIを大きくする制御)。
【0095】
Mk *´を補正後の電圧基準とすると、同様に
Mk *´=VMk + K’ ×ΔSOC/SOC(av)=VMk +ΔV …(14)
つまり(14)式での補正を行うことで、目標値に収束させることが可能になる。
【0096】
図5は、組電池11-1~kのSOCの時間的推移(放電時)を示す図である。図6は、組電池11-1~kのSOCの時間的推移(充電時)を示す図である。
【0097】
図5及び図6に示すように、放電時及び充電時ともに、現在の時刻(to)から目標とする時刻(t1)まで、SOCバランス解消用の制御を実施することにより、時刻t1に、組電池11-1~kのSOCがSOC目標とするSOC(t1)に制御される。この場合、目標とする時刻(t1)までの間、放電制御又は充電制御のモードは継続しているものとする。
【0098】
つまり、組電池電流制御の結果、1番目の組電池モジュール出力電圧VM1、k番目の組電池モジュール出力電圧VMkを時間Δtの間、一定電流Id0で運転を続けると、両方の組電池のSOCが同じ値となることを示している。
【0099】
しかし、合計の直流電圧が主回路の構成からある範囲と決まっていて、計算結果VM1、…、VMkの合計電圧がこの範囲から逸脱する場合などには、制御の目標値が不適切(電池セルに過度の負担をかける運転を強いる)であるので、変数Δt、SOCk(t1)あるいはId0を設定し直して、合計の直流電圧がある範囲内に収まるようにV’M1V’Mkの分担電圧を決めればよく、その電圧で一定電流I’d0で運転を続けると、新たな制御目標の時間Δt’後にSOCが同じ値となる。
<他の実施形態>
図7は、他の実施形態に係るBMU302及びDCDC制御部411の動作を説明するための機能ブロック図である。なお、図2と異なる部分は、上位制御装置301から組電池11-1~k全体の直流電力Pが指令値、及び組電池11-1~k全体の電力PがBMU302に与えられる。
【0100】
組電池11-1~k全体の電力Pは、組電池11-1~kから組電池電圧V1~k及び組電池電流I1~kを収集し、組電池11-1~kそれぞれの電力を合計することにより得られる。
【0101】
その後、組電池11-1~k全体の電力Pと組電池11-1~k全体の電力Pとの差(P-P)がとられ、電力制御部501aにおいて、差(P-P)を直流電圧Vdで除することにより、制御対象を直流電流基準Idに変換する。以降の処理については、図2示した実施形態の処理と同様である。
【0102】
他の実施形態の蓄電池システム501は、組電池11-1~k全体の電力量を制御量として電力制御を行なシステムにおいて有効である。
<変形例>
上述の実施形態においては、一般的な蓄電池システムの例に合わせて、組電池の電圧<出力側直流電圧である昇圧チョッパ回路を例に説明を行ってきたが、適用システムよっては、図8に示す降圧チョッパ回路、図9に示す4象限チョッパ回路を使用しても良い。
【0103】
従来のSOCの異なる組電池を直列に接続したシステムでは、組電池からの出力電流は同一となるため、SOCのアンバランスで最低SOCに達する前に他の組電池が最低SOCに到達する。そのため、まだ放電できる充電量があるにも関わらず、システム全体としては放電を停止せざるを得ない。実施形態の蓄電池システムによれば、このような問題を解決することが可能となる。
【0104】
つまり、SOCアンバランスを解消するように、放電時または充電時に電流制御を最適に行う(例えば、放電動作時において、時刻t1での目標SOCを最低SOC(充電時の場合は最大SOC)に調整する)ことで、各組電池を最低SOCまで使い切ることが可能となった。勿論、この時刻t1は、組電池の電流制御のできる範囲で、任意に設定することが可能で、例えば、t1が一回の放電動作時間より短い時間の場合、一回の放電動作内の時刻t1ですべてのSOCのアンバランスを解消することも可能になる。
【0105】
また、従来例との比較を行うと、特許文献1では、個別のセルに昇圧回路を接続し、その昇圧を合計して制御することが提案されている。ただし、組電池全体での電圧を制御することに関しては述べられていない。
【0106】
さらに、特許文献2にあるように、バッテリーが接続されるパワーセルの出力電力を、バッテリーの残存電力量に合わせて制御できる手段を各パワーセル毎に設置することで、バッテリーの残存電力量を平均化することも試みられている。但し、この場合においても、組電池の組電池電圧を昇圧することについては言及されていない。
【0107】
実施形態は、組電池毎にDC/DCコンバータを設置することで、システム全体に要求される直流電圧から、組電池の個別の電圧基準を与えることが可能になったことで、蓄電池システム全体の設計に際し、従来のようにその都度DC/DCコンバータを設計する必要がなくなる。
【0108】
また、実施形態によれば、組電池の直列数の変更だけで対応できる蓄電池システムの構築も可能となり、システム対応力の強化(都度設計しなくてもよい)にも貢献するシステムへの対応も可能となった。
【0109】
なお、上述の説明では、電圧制御部101a~電流基準補正部101e1~kの動作はBMU302によって行なわれ、組電池電流制御部101f及び昇圧比/通流率計算部101gの動作はDCDC制御部411-1~kによって行なわれるものとして説明したが、これら機能ブロックの配置は柔軟に行なうことが可能である。
【0110】
実施形態の蓄電池システムによれば、直列に接続された組電池モジュール毎に、SOCのばらつきを解消するように、個別の組電池の出力電圧を最適に設定させることを可能にすることで、システム全体としての稼働時間を広げるようなシステムを提供することができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
15…システム電流検出器、16…システム電圧検出器、150…個別組電池モジュール電流基準計算部、151…各組電池出力電圧基準部、201、501…蓄電池システム、301…上位制御装置、302…BMU、303-1~k…組電池モジュール、312-1~k…CMU、313-1~k…電流検出器、401-1~k…DC/DCコンバータ、411-1~k…DCDC制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11