(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-21
(45)【発行日】2022-10-31
(54)【発明の名称】回路板の加工方法、そのための加工装置及びそれに使用する回路板保持器
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20221024BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20221024BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20221024BHJP
B23K 26/04 20140101ALI20221024BHJP
【FI】
H05K3/00 K
H05K13/04 P
H05K3/00 N
B23K26/38 Z
B23K26/04
(21)【出願番号】P 2018162312
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2017221554
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時永 勝典
(72)【発明者】
【氏名】堀田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】中桐 一章
(72)【発明者】
【氏名】薗田 耕平
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166543(WO,A1)
【文献】特開2000-299501(JP,A)
【文献】特開2000-183492(JP,A)
【文献】特開2005-349437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 13/04
B23K 26/38
B23K 26/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載された回路板の加工位置指定情報で指定された位置を加工する回路板の加工方法において、前記電子部品の平面画像をカメラで読取り、当該カメラからの画像データを処理して前記回路板の加工のための基準位置を求め、当該基準位置を基準にして前記加工位置指定情報で指定された位置を加工する;
ここで、
前記電子部品の平面画像の面積重心から求めた前記電子部品の中心を前記基準位置とし、
前記加工位置指定情報は、前記電子部品の前記中心に対する加工位置の相対位置を示す座標情報であり、
前記回路板
の同一面に前記電子部品が複数搭載されている場合、
前記同一面に搭載された前記複数の電子部品の各々の平面画像の面積重心から求めた各々の前記電子部品の中心のなかでの中心を前記基準位置とすることを特徴とする回路板の加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回路板の加工方法において、前記電子部品は発光できるものであり、前記カメラは発光状態の前記電子部品の平面画像を読取ることを特徴とする回路板の加工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の回路板の加工方法において、複数の回路板を順次加工する場合、前記電子部品をそれぞれの回路板毎に順次発光状態にすることを特徴とする回路板の加工方法。
【請求項4】
電子部品が搭載された回路板の加工位置指定情報で指定された位置を加工するようにした回路板の加工装置において、前記電子部品の平面画像を読取るカメラと、当該カメラからの画像データを処理して前記回路板の加工のための基準位置を求める画像処理部とを備え、前記基準位置を基準にして前記加工位置指定情報で指定された位置を加工する;
ここで、
前記画像処理部は、前記電子部品の平面画像の面積重心から求めた前記電子部品の中心を前記基準位置として検出し、
前記加工位置指定情報は、前記電子部品の前記中心に対する加工位置の相対位置を示す座標情報であり、
前記電子部品が前記回路板
の同一面に複数搭載されている場合、前記画像処理部は、
前記同一面に搭載された前記複数の電子部品の各々の平面画像の面積重心から求めた各々の前記電子部品の中心のなかでの中心を前記基準位置として検出することを特徴とする回路板の加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路板の加工装置において、前記電子部品は発光できるものであり、前記カメラは発光状態の前記電子部品の平面画像を読取ることを特徴とする回路板の加工装置。
【請求項6】
請求項4に記載の回路板の加工装置に用いられる回路板保持器において、発光できる前記電子部品が搭載された前記回路板が複数並べられて載置され、かつ前記回路板を加工するための加工装置に備えられた加工テーブル上にセットされて前記回路板の各々が順次加工されるに際し、前記電子部品をそれぞれの回路板毎に順次発光状態にするための電源供給制御機能を備えたことを特徴とする回路板保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLSI等の電子部品が搭載されたプリント基板の如き回路板に加工を行うための回路板の加工方法、そのための加工装置及びそれに使用する回路板保持器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板への穴あけは、例えば、特許文献1に開示されているように、プリント基板に設けられたアライメントマークを読取り、それを基準にして行われる。
しかし、アライメントマークを基準にして穴の加工を行なう方法では、すでに電子部品が搭載されているプリント基板に穴あけを行う場合で、電子部品が必ずしもアライメントマークを基準にして実装されている保証はないので、電子部品の搭載位置に対して穴の位置がずれてしまう場合があり、電子部品の実際の位置と穴位置との関係が重要になるときには、加工位置精度が悪くなる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、例えばLSI等の電子部品が搭載されたプリント基板の如き回路板に加工を行う場合に、加工位置精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される代表的な基板の加工方法は、電子部品が搭載された回路板の加工位置指定情報で指定された位置を加工する回路板の加工方法において、前記電子部品の平面画像をカメラで読取り、当該カメラからの画像データを処理して前記回路板の加工のための基準位置を求め、当該基準位置を基準にして前記加工位置指定情報で指定された位置を加工することを特徴とする。
【0006】
また、本願において開示される代表的な基板の加工装置は、電子部品が搭載された回路板の加工位置指定情報で指定された位置を加工するようにした回路板の加工装置において、前記電子部品の平面画像を読取るカメラと、当該カメラからの画像データを処理して前記回路板の加工のための基準位置を求める画像処理部とを備え、前記基準位置を基準にして前記加工位置指定情報で指定された位置を加工するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えばLSI等の電子部品が搭載されたプリント基板の如き回路板に加工を行う場合に、加工位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1による加工を説明するための図で、(a)は穴あけ加工後のプリント基板の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】本発明の実施例2による加工を説明するための図で、(a)は穴あけ加工後のプリント基板の平面図、(b)は(a)のB-B断面図である。
【
図3】本発明の実施例3による加工を説明するための図で、外形加工前のプリント基板の平面図を示す。
【
図4】本発明の実施例1となるレーザ穴あけ装置の構成図である。
【
図5】本発明の実施例4となるレーザ穴あけ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図4は、本発明の実施例1となるレーザ穴あけ装置の構成図である。各構成要素や接続線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ穴あけ装置として必要な全てを示している訳ではない。
図4のレーザ穴あけ装置では、穴あけ加工すべきプリント基板1を加工テーブル22に載置し、レーザ発振器23から出射されたレーザをガルバノスキャナ24で偏向しプリント基板1に照射することによって穴あけを行うものである。25は必要な部分を上から光学的に読取るためのCCDカメラである。27は、CCDカメラ25からの読取りデータを画像処理し必要な検出を行うための画像処理部を内蔵し、加工プログラムに従って加工テーブル22、レーザ発振器23、ガルバノスキャナ24の動作を制御する、例えばプログラム制御の処理装置によって実現される全体制御部である。全体制御部27は、例えばプログラム制御の処理装置を中心にして構成され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部は全体制御部27と別個に設けられていてもよい。
【0011】
図1は、本発明の実施例1による加工を説明するための図で、(a)は穴あけ加工後のプリント基板の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
図1において、1は回路板としての電気的配線網が形成されたプリント基板であり、この上にはLSI2が搭載されている。このLSI2の上側から見た形状は四角形となっている。プリント基板1には、
図4のレーザ穴あけ装置により穴4A~4Fをあけるが、これらの穴4A~4Fは、それぞれLSI2の中心5を基準して、X方向とY方向に所定の距離だけ離れた位置にあり、例えばプリント基板1と他の部品との電気的接続を行うために使用される。
【0012】
穴4A~4Fの加工は以下のようにして行われる。
LSI2の大まかな搭載位置の座標はレーザ穴あけ装置内に予め登録されており、それに基づきLSI2の平面画像をCCDカメラ25で読取れる位置に加工テーブル22が相対移動される。
次に、LSI2の平面画像がCCDカメラ25により読取られ、その画像データが画像処理部26に送られる。画像処理部26では、この画像データにより面積重心が計算され、LSI2の中心5の座標が求められる。
なお、LSI2の中心5は、平面画像の面積重心から求めているが、中心が求まるのであれば、必ずしもこの方法でなくてもよい。
【0013】
プリント基板1のどの位置を加工すべきかの加工位置指定情報は、全体制御部27内に加工データとして予め記憶されている。この加工位置指定情報は、中心5に対する穴4A~4Fの相対位置を示す座標情報となっている。そこで、中心5の座標を基準にして、穴4A~4Fの座標情報に基づきレーザ照射系に対して加工テーブル22が相対移動され、それぞれの位置にレーザが照射され、穴4A~4Fがあけられる。
【0014】
以上の実施例1によると、実際のLSI2の搭載位置を基準にして穴4A~4Fが加工できるので、LSI2の実際の搭載位置と穴4A~4Fの位置関係が重要なときには、穴4A~4Fの加工位置精度が向上する。
【実施例2】
【0015】
図2は、本発明の実施例2による加工を説明するための図で、(a)は穴あけ加工後のプリント基板の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
図2において、
図1と同じ記号のものは
図1と同じものを示す。
図1の実施例1と異なるのは、LSI2が4個搭載されている点である。
このプリント基板1を加工する場合、それぞれのLSI2の大まかな搭載位置の座標はレーザ穴あけ装置内に予め登録されており、それぞれのLSI2の平面画像がCCDカメラ25で読取られる。画像処理部26では、それぞれのLSI2の中心6の座標が求められ、さらにそれらのなかでの中心7の座標が求められる。
【0016】
中心7に対する穴4A~4Fの相対位置を示す座標情報は、実施例1と同様、レーザ穴あけ装置内に加工データとして予め記憶されている。そこで、中心7の座標を基準にして、穴4A~4Fの座標情報に基づきレーザ照射系に対して加工テーブル22が相対移動され、それぞれの位置にレーザが照射され、穴4A~4Fがあけられる。
【実施例3】
【0017】
図3は、本発明の実施例3による加工を説明するための図で、外形加工前のプリント基板の平面図を示す。
図3において、
図1と同じ記号のものは
図1と同じものを示す。8はプリント基板1の外形を変える、いわゆる外形加工のための切断線を示す。
【0018】
切断線8の加工は以下のようにして行われる。
LSI2の中心5の座標が、
図1の実施例の場合と同様にして求められる。
中心5に対する切断線8の相対位置を示す座標情報は、実施例1と同様、レーザ穴あけ装置内に加工データとして予め記憶されている。そこで、中心5の座標を基準にして、切断線8の座標情報に基づきレーザ照射系に対して加工テーブル22が相対移動され、それぞれの位置にレーザが照射され、プリント基板1は切断線8の位置で切断される。
【0019】
以上の実施例3によると、実際のLSI2の搭載位置を基準にして、外形加工ができるので、LSI2の実際の搭載位置と切断線8との位置関係が重要なときには、切断線8の加工位置精度が向上する。
【実施例4】
【0020】
基板に搭載する電子部品によっては、電子部品が作動状態になっている方が目的とする加工に対して精度が向上する場合もあり、この場合を実施例4として以下説明する。
図5に示すように、電子部品が搭載されたプリント基板1を複数個平面的に並べて載置した基板保持器28を加工テーブル22上にセットする。この基板保持器28は、プリント基板1を一つずつ順次加工していくに際し、全体制御部27から与えられる制御信号により、加工するプリント基板1に搭載された電子部品だけ電源を供給して作動状態にし、加工を終えたら電源供給を止め当該電子部品を非作動状態にする。
【0021】
電子部品が例えばLEDの如き発光素子の場合は、加工するプリント基板1に搭載されたLEDへの電流供給がオンとなり、LEDの発光状態での平面画像をCCDカメラ25で読取ることになる。この場合、プリント基板1の各々に搭載されるLEDの数は一つでも複数でもよく、後者の場合には、画像処理部26はこれら複数個のLED群の全体としての平面画像を処理し、例えば中心位置を検出するようにしてもよい。
【0022】
以上、実施の形態に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、レーザで加工する場合を説明したが、穴あけや外形加工での切断は、必ずしもレーザでなく、ドリル等、他の加工ツールを用いるようにしてもよい。
また、穴あけする場合、その場所や個数は任意でよく、穴の用途も基板内で回路を構築するために使うものであっても、基板を他の構造体へ固定するために使うものでであってもよく、用途は限定されない。
【符号の説明】
【0023】
1:プリント基板 2:LSI 4A~4F:穴 5、6、7:中心 8:切断線
9:LED 10:特定位置 22:加工テーブル 23:レーザ発振器
24:ガルバノスキャナ 25:CCDカメラ 26:画像処理部
27:全体制御部 28:基板保持器